以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、サッシ10が支柱12に仮止めされた状態(図2の状態)を基準として上下方向7が定義され、サッシ10が支柱12より前方であって、上下方向7と直交する方向として前後方向8が定義され、上下方向7及び前後方向8のいずれとも直交する方向として左右方向9が定義される。
[第1実施形態]
第1実施形態では、図1及び図12に示されるように、上弦材21、下弦材22及び転び止め23が用いられるサッシの施工方法100が説明される。
図1に示されるように、サッシ10は、住宅用の矩形のサッシである。サッシ10は、幅が2m以上であって、重さが100kgを超える大型のものである。サッシ10は、枠と障子が組み立てられて工場から施工現場に搬入される。図3に示されるように、施工現場に搬入されたサッシ10は、基礎11上に設けられた窓台13上に固定される。サッシ10は、例えば嵌め殺し窓として施工されてもよい。
図1から図3に示されるように、基礎11は、住宅やマンションに用いられる基礎であって、コンクリート製である。基礎11には、柱や構造用合板等の建物の構造部材が固定される。基礎11は、例えば布基礎であって、逆T字型の断面構造を有し、地面に設置されるベース部(不図示)と、ベース部の上面から上向きに突出する立上がり部とを有する。基礎11は、少なくとも施工される住宅等の外周に沿って形成されているが、本実施形態では、基礎11の一部のみが示されている。
図2に示されるように、支柱12は、木製の角材であり、サッシ10の左右方向9の両端が支柱12に仮止めあるいは固定されてサッシ10を支持する。各支柱12は、基礎11に接合されて上下方向7に延びている。各支柱12と基礎11とは、アンカーボルトや柱脚金物によって接合される。なお、支柱12は、第1支持材の一例である。
図1及び図2に示されるように、窓台13は、木製の角材であり、基礎11上に設置され、窓台13上に載置されるサッシ10を支持する。窓台13は、支柱12の間に設けられる。窓台13と基礎11とは、接合金具等により接合される。
図13(A)に示されるように、防鼠材17は、釘(不図示)によって窓台13に取り付けられる。基礎水切り18は、例えば、ステンレス製の釘92によって窓台13に取り付けられる。防鼠材17は、樹脂によって形成されたものであり、基礎11と窓台13との間の通気を確保しつつ、ネズミなどの小動物が基礎11と窓台13との間を通り抜けることを防止する。基礎水切り18は、アルミニウム板が折り曲げ加工されたものであり、基礎11の上面に雨水が浸入することを防止する。
図1、図4及び図5に示されるように、合板14は、支柱12の前面12Aに接合され、下記詳述の構造用合板93が差し込まれるための支柱12とサッシ10の端部10Aとの隙間を生じさせる。合板14は、支柱12の前面12A(図1参照)のサッシ10側に釘打ちされて接合される。各合板14には、左右方向9におけるサッシ10側の反対の端に切欠き14Aが2つずつ形成されている。各切欠き14Aは、矩形であり、後述される転び止め23と合板14との干渉を防止するために形成されている。
図1に示されるように、クレーン19は、住宅の施工現場にて使用される。クレーン19は、1階の柱、床梁、床、2階の柱、小屋梁などの施工において、施工現場まで運ばれてきた各建築資材を施工位置まで運搬したり、施工中の住宅内の仮置き位置まで運搬したりするために使用される。一般に、クレーン19のような重機はレンタル(賃貸)であるので、使用する日数に比例して費用が増大する。なお、図1では、クレーン19のフック19Aのみが示され、その他の部分が省略されている。フック19Aには、スリング19Bを引っ掛けることができる。スリング19Bは、後述される下弦材22に引っ掛けられて、サッシ10の吊り上げに際して使用される。
図3及び図5に示されるように、転び止め23は、窓台13上に仮置きされたサッシ10を上下方向7に移動可能に支柱12に仮止めされる。転び止め23は、各支柱12に2つずつがねじ止めされて接合される。転び止め23は、図6(A)から(C)に示されるように、本体24と、ガイド25と、押さえ板26と、支柱12と当接するボルト27と、押さえ板26を本体24と結合するボルト28と、を有する。
図6(A)から(C)に示されるように、本体24は、外形が長方形であって一定の厚みの鋼板が、左右方向9に沿った断面がL字形状に折り曲げられて形成されている。本体24は、上下方向7及び前後方向8に沿って拡がる側壁24Aがねじ止めにより支柱12に接合され、上下方向7及び左右方向9に沿って拡がる前壁24Bがサッシ10の左右方向9の両方の端部10Aと当接する。
図6(A)から図7(C)に示されるように、ガイド25は、本体24と押さえ板26との間に配され、押さえ板26の回転角度を制限する。ガイド25は、上下方向7に沿って延びる。ガイド25は、横断面コの字形状であり、左右方向9の両端に立ち上がり部25A、25Bと、挿通孔25Cと、挿通孔25Dと、を有する。立ち上がり部25Aは、立ち上がり部25Bよりサッシ10の外側に位置し、下端が立ち上がり部25Bの下端より下方であって、挿通孔25Dより上方に位置する。挿通孔25Dは、ボルト28が挿通される。挿通孔25Cは、ボルト27が挿通される。
押さえ板26は、サッシ10の端部10Aを後方へ押さえ、端部10Aが本体24に当接した状態を保持する。押さえ板26は、サッシ10が上下方向7に移動することを妨げない。押さえ板26は、本体24とボルト28により結合される。押さえ板26は、ボルト28を中心に回転する。
押さえ板26は、端部10Aと当接する先端部26Aと、立ち上がり部25Aと当接する後端部26Bと、立ち上がり部25Bと当接するサッシ10側の側部26Cと、ボルト28が挿通される挿通孔26Dと、を有する。先端部26Aは、後方へ折り曲げられている。後端部26Bは、押さえ板26が上下方向7に沿った姿勢であるとき、立ち上がり部25Aの下端と当接する。側部26Cは、押さえ板26が左右方向9に沿った姿勢であるとき、すなわち先端部26Aが端部10Aと当接するとき、立ち上がり部25Bの下端と当接する。
ボルト27は、本体24の挿通孔を前後方向8に貫通し、一端が支柱12の前面と当接する。
図1から図4に示されるように、梁15は、支柱12間に横架されて各支柱12に接合されている。接合には、接合金物やドリフトピン等が用いられる。梁15は、第2支持材の一例である。
図8に示されるように、吊り具16は、サッシ10の上端に設けられる上弦材21に連結されてサッシ10の吊り上げに用いられる。吊り具16は、吊りボルト受16Aと、吊りボルト16Bと、ナット16Cと、を有する。
吊りボルト受16Aは、梁15の前面にねじにより接合される。吊りボルト受16Aは、外形が長方形であって一定の厚みの鋼板が、上下方向7に沿った縦断面がL字形状に折り曲げられて形成されている。吊りボルト受16Aは、前後方向8及び左右方向9に沿って拡がる支持部65が下方に位置する。支持部65は、吊りボルト16Bが挿通される挿通孔66を有し、吊りボルト16Bが挿通孔66に挿通された状態で吊りボルト16Bを支持する。
吊りボルト16Bは、上下方向7に沿って延び、吊りボルト受16Aと上弦材21とを連結する。吊りボルト16Bは、頭部67と、胴体部68と、を有する。頭部67は、直径が吊りボルト受16Aの挿通孔66の直径より大きい。頭部67と吊りボルト受16Aとの間には、ワッシャ69が配される。胴体部68は、ねじが切られている。
ナット16Cは、下記詳述の上弦材21の吊りボルト受31の支持部91の下面に溶接されて接合される。ナット16Cは、吊りボルト16Bが挿通される。
図1及び図8に示されるように、上弦材21は、サッシ10の上端に取り付けられる。上弦材21は、主に、サッシ10が吊り具16により吊り上げられるときに用いられる。上弦材21は、吊りボルト受31と、係合部32と、を有する。
吊りボルト受31は、外形が長方形であって一定の厚みの鋼板が、上下方向7に沿った縦断面がL字形状に折り曲げられて形成されている。吊りボルト受31は、サッシ10の上方において左右方向9に沿って延びる。吊りボルト受31は、前後方向8及び左右方向9に沿って拡がる支持部91が上方に位置する。支持部91は、吊りボルト16Bが挿通される2つの挿通孔72を有する。支持部91は、各挿通孔72と各孔の位置が合わされた2つのナット16Cが下面に溶接されて接合される。ねじが切られた各吊りボルト16Bが各ナットと螺合する。吊りボルト16Bが回転することにより、ナットを上下方向7に移動させる力が働き、上弦材21及び上弦材21に係合されたサッシ10が上下方向に移動する。
図8に示されるように、係合部32は、サッシ10の上端と係合する。係合部32は、図9及び図10に示されるように、6つが吊りボルト受31の後面に溶接されて接合される。係合部32は、本体33と、ガイド34と、押さえ板35と、ガイド34と本体33と結合するボルト36と、押さえ板35を本体33と結合するボルト37と、を有する。
本体33は、前面が吊りボルト受31に溶接されて接合される。本体33は、外形が長方形であって一定の厚みの鋼板である。本体33は、上下方向7及び左右方向9に沿って拡がる。本体33は、ボルト36が挿通される挿通孔33Aと、ボルト37が挿通される挿通孔33Bと、を有する。
ガイド34は、本体33と押さえ板35との間に配され、押さえ板35の回転角度を制限する。ガイド34は、左右方向9に沿って延びる。ガイド34の形状は、ガイド25と同じであり、立ち上がり部34A、34Bと、挿通孔34Cと、挿通孔34Dと、を有する。挿通孔34Dは、ボルト36が挿通される。挿通孔34Cは、ボルト37が挿通される。
押さえ板35は、サッシ10の上端の突出部10Bと係合するとともに、サッシ10の上端を前方の本体33へ押さえる。押さえ板35は、本体33とボルト37により結合される。押さえ板35は、突出部10Bと係合する先端が前方へ折り曲げられている。押さえ板35は、突出部10Bと上下方向7において位置が重なる。押さえ板35は、ボルト37を中心に回転する。
押さえ板35は、先端部35Aと、後端部35Bと、サッシ10側の側部35Cと、ボルト37が挿通される挿通孔35Dと、を有する。押さえ板35は、押さえ板26と同じ形状であり、押さえ板35とガイド34との関わり合いは、押さえ板26とガイド25との関わり合いと同様であるため、説明が省略される。
図1及び図11に示されるように、下弦材22は、2つがサッシ10の下端に取り付けられる。各下弦材22は、サッシ10の左右方向9の中央より両端側において左右対称となる位置に配される。下弦材22は、クレーン19によりサッシ10が吊り上げられる際、スリング19Bを引っ掛けるために用いられる。下弦材22は、本体41と、ガイド42と、押さえ板43と、本体41とガイド42とを結合するボルト44と、押さえ板43と本体41と結合するボルト45と、本体41の下部を補強する板材46と、を有する。
本体41は、サッシ10の下方において左右方向9に沿って延び、スリング19Bが引っ掛けられる。本体41は、外形が略H字形状であって一定の厚みの鋼板が前後方向8に折り曲げられて形成されている。本体41は、下方に開口を有する。本体41は、左右方向9の両端の上下方向7に沿った長さ寸法が左右方向9の中央の上下方向7に沿った長さ寸法より長い。スリング19Bは、本体41の左右方向9の中央に引っ掛けられることで、スリング19Bが本体41の左右から抜けることが防がれる。本体41は、下端が内側へ折り曲げられている。スリング19Bは、折り目と当接するため、スリング19Bが損傷することが防がれる。
本体41は、上面に段差が設けられている。本体41は、上面の下段に上下方向7に沿って延びる突出部41Aを有する。サッシ10は、下端の一部が下方に突出する突出部10Cを有する。突出部10Cは、突出部41Aと上面の下段から上段に向かって延びる壁部41Bとの間の凹部41Cに嵌められる。
ガイド42は、本体41と押さえ板43との間に配され、押さえ板43の回転角度を制限する。ガイド42は、左右方向9に沿って延びる。ガイド42の形状は、ガイド25と同じであり、立ち上がり部42A、42Bと、挿通孔42Cと、挿通孔42Dと、を有する。挿通孔42Dは、ボルト44が挿通される。挿通孔42Cは、ボルト45が挿通される。
押さえ板43は、サッシ10の下端の前後方向8及び左右方向9に沿って拡がる端部10Dを本体41の上段に押さえて挟む。押さえ板43は、1つの本体41に対して4つがボルトにより結合される。押さえ板43は、下端の端部を挟む先端部が下方へ折り曲げられている。押さえ板43は、ボルト45を中心に回転可能である。
押さえ板43は、先端部43Aと、後端部43Bと、サッシ10側の側部43Cと、ボルト45が挿通される挿通孔43Dと、を有する。押さえ板43は、押さえ板26と同じ形状であり、押さえ板43とガイド42との関わり合いは、押さえ板26とガイド25との関わり合いと同様であるため、説明が省略される。
板材46は、本体41の左右方向9の両端の下端に、本体41の前方と後方とを渡すように配される。板材46は、前後方向8及び左右方向9に沿って拡がる。板材46は、本体41の下端の前方と後方それぞれに溶接されて接合される。板材46は、サッシ10が窓台13上に仮置きされる際、底面が窓台の上面と当接する。板材46が窓台13と当接するため、本体41が変形することが抑えられる。
図2に示されるように、構造用合板93は、サッシ10と相互に隣り合う壁を形成する部材として施工される。構造用合板93は、サッシ10の端部10A(図5参照)と支柱12との隙間に左右方向9に沿って差し込まれる。
[サッシ10の施工方法100]
以下、図12を参照しつつ、上弦材21、下弦材22及び転び止め23を用いたサッシ10の施工方法100が説明される。施工方法100は、第1工程51から第13工程63までを含む。
第1工程51は、上弦材21及び下弦材22をサッシ10の枠に取り付ける工程である。作業者は、各押さえ板35、43を回転させて所定位置の枠に上弦材21及び下弦材22をそれぞれ取り付ける。第1工程51は、工場にて行われる。上弦材21及び下弦材22が取り付けられたサッシ10は、工場から住宅の施工現場であってクレーン19の近傍へトラック等で運搬される。
第2工程52は、1階用の柱、床梁及び梁15を施工する工程である。支柱12を含む1階用の柱は、施工現場の仮置きされた位置から基礎11に接合された柱脚金物までクレーン19で運搬されて施工される。床梁及び梁15も同様に、施工現場の仮置きされた位置から接合箇所までクレーンで運搬される。
第3工程53は、窓台13及び合板14を施工する工程である。窓台13は、サッシ10の施工位置、すなわち支柱12間に施工される。合板14は、支柱12の前面12A(図1参照)のサッシ10側に釘打ちされて接合される。合板14は、施工現場の仮置きされた位置から施工位置まで作業者によって運搬される。なお、合板14が施工される前に、入隅との間隔を配慮して入隅下地が施工されることが好ましい。
第4工程54は、転び止め23を設ける工程である。第4工程54では、図5に示されるように、転び止め23が支柱12にねじ止めされる。このとき、押さえ板26は、上下方向7に沿った状態とされている。
第5工程55は、サッシ10を窓台13に仮置きする工程である。サッシ10は、施工現場のクレーン19のフック19Aが届く範囲に仮置きされている。サッシ10は、図1に示されるように、2本のスリング19Bが下弦材22の下方に掛け回されて、クレーン19により吊り上げられて、上下方向7に沿って延びる支柱12間に設けられた窓台13上に仮置きされる。仮置き後に、スリング19Bは下弦材22から外されて除去される。サッシ10は、仮置きされるので、第5工程55において窓台13とは接合されない。なお、第5工程55は、仮置き工程の一例である。
第6工程56は、窓台13上に仮置きされたサッシ10を転び止め23により支柱12に仮止めする工程である。このとき、図5に示されるように、転び止め23は、押さえ板26が、左右方向9に沿った状態とされる。仮止めされたサッシ10は、上下方向7に移動可能である。なお、第6工程56は、仮止め工程の一例である。
第7工程57は、2階の床パネル及び2階の柱を施工する工程である。2階の床パネル及び2階の柱は、施工現場の仮置きされた位置から接合箇所までクレーン19で運搬される。
第8工程58は、小屋梁及び屋根を施工する工程である。小屋梁並びに屋根の棟木、垂木及び母屋は、施工現場の仮置きされた位置から接合箇所までクレーン19で運搬される。野地板及びルーフィング材は、作業者が人力で屋根まで運ぶ。クレーン19は、小屋梁並びに屋根の棟木、垂木及び母屋の運搬後、施工現場から撤去される。
第9工程59は、防鼠材17及び基礎水切り18を窓台13に取り付ける工程である。
第10工程60は、図13及び図14に示されるように、吊り具16によりサッシ10を窓台13から離れた状態に吊り上げる工程である。吊り具16は、第10工程60に際して、サッシ10の上方に位置する梁15に固定され、上弦材21と連結される。吊り具16は、吊りボルト16Bがインパクトレンチ等で締められることにより、上弦材21並びにサッシ10を吊り上げる。なお、第10工程60は、吊り上げ工程の一例である。
第11工程61は、下弦材22をサッシ10から取り外す工程である。
第12工程62は、吊り具16により吊り上げられたサッシ10を下方に移動させて、窓台13に固定する工程である。吊り具16は、吊りボルト16Bがインパクトレンチ等で第10工程60とは反対向きに回転させられることにより、上弦材21並びにサッシ10が下方に移動させられる。サッシ10は、窓台13に載るまで下方に移動される。サッシ10の固定後、吊り具16及び上弦材21は、それぞれ取り外される。
第13工程63は、構造用合板93を施工する工程である。構造用合板93は、耐力壁となる部材であり、図2に示されるように、サッシ10の左右方向9の両側に配される。構造用合板93は、合板14同様、施工現場の仮置きされた位置から施工位置まで作業者によって運搬され、施工される。
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態に係る施工方法100によれば、サッシ10には、下弦材22が取り付けられるため、サッシ10をクレーンにより窓台13上まで運搬してもサッシの枠が歪むことが防がれる。また、サッシ10を吊り上げる際、スリング19Bを下弦材22に引っ掛けることができる。
また、仮止めによって、仮置きされたサッシ10の転倒が防止されるため、サッシ10の仮置き後に、防鼠材17又は基礎水切り18を窓台13に取り付ける作業が可能となる。したがって、サッシ10の運搬をクレーン19で行った後に、クレーン19を施工現場に留めて置く必要がないので、クレーン19を使用する費用が抑制される。また、サッシ10が下弦材22上にある間に防鼠材17又は基礎水切り18を窓台13に取り付けるため、作業性がよい。
また、サッシ10には、上弦材21が取り付けられ、吊り具16と連結されるため、サッシ10と直接吊り具16を連結させなくてよい。
[第2実施形態]
第2実施形態では、図15から図19に示されるように、窓台13が仮固定されたサッシ10をクレーン19により吊り上げるサッシ10の施工方法200が説明される。第2実施形態に係る施工方法200では、第1実施形態に係る転び止め23の代わりに、転び止め114を用いている。また、第2実施形態では、上弦材21、下弦材22及び吊り具16が用いられない。第2実施形態におけるその他の部材は第1実施形態の部材と同様なので、詳細な説明が省略される。
図16に示されるように、転び止め114は、窓台13上に仮置きされたサッシ10を前後方向8に移動可能に支柱12に仮止めする。転び止め114は、各支柱12に2つずつがねじ止めされて接合される。転び止め114は、本体115と、ガイド116と、後方の押さえ板117と、前方の押さえ板118と、支柱12と当接するボルト119と、押さえ板117を本体115と結合するボルト120と、を有する。
本体115は、ねじ止めにより支柱12に接合される。本体115は、一定の厚みの鋼板により、左右方向9に沿った断面がF字形状に形成されている。本体115は、基部115Aと、第1片115Bと、第2片115Cと、を有する。基部115Aは、支柱12の側面に位置してねじ止めにより支柱12に接合される。基部115Aは、第1片115Bが左右方向9に沿って前方端からサッシ10側へ延び、第2片115Cが左右方向9に沿って第1片115Bの後方において第1片115Bと間隔を設けてサッシ10側へ延びる。第2片115Cは、サッシ10を仮止めした際、サッシ10の端部10Aと当接する。第1片115Bは、サッシ10を前方へ移動させた際、端部10Aと当接する押さえ板118を支持する。
ガイド116は、本体115と押さえ板117との間に配され、押さえ板117の回転角度を制限する。ガイド116は、左右方向9に沿って延びる。ガイド116の形状は、ガイド25と同じであり、立ち上がり部116A、116Bと、ボルト120が挿通される挿通孔と、ボルト119が挿通される挿通孔と、を有する。
押さえ板117は、サッシ10の端部10Aを後方へ押さえ、端部10Aが本体115に当接した状態に保持する。押さえ板117は、第2片115Cにボルト120により結合される。押さえ板117は、端部10Aと当接する先端部が後方へ折り曲げられている。押さえ板117は、ボルト120を中心に回転可能である。
押さえ板118は、サッシ10が前方へ引き出された際、サッシ10の端部10Aが押さえ板118より前方へ移動することを妨げる。押さえ板118は、第1片115Bにボルト120により結合される。押さえ板118は、端部10Aと当接する先端部が後方へ折り曲げられている。押さえ板118は、ボルト120を中心に回転可能である。
押さえ板117は、先端部117Aと、後端部117Bと、サッシ10側の側部117Cと、ボルト120が挿通される挿通孔117Dと、を有する。押さえ板118は、先端部118Aと、後端部118Bと、サッシ10側の側部118Cと、ボルト120が挿通される挿通孔118Dと、を有する。押さえ板117、118は、押さえ板26と同じ形状であり、押さえ板117、118とガイド116との関わり合いは、押さえ板26とガイド25との関わり合いと同様であるため、説明が省略される。
ボルト119は、第2片115Cの挿通孔を前後方向8に貫通し、一端が支柱12の前面と当接する。ボルト119は、第2片115Cが支柱12と密着することを防ぐ。
[サッシ10の施工方法200]
以下、図17を参照しつつ、転び止め114を用いたサッシ10の施工方法200が説明される。施工方法200は、第1工程71、第2工程52、第3工程53、第4工程74、第5工程75、第6工程76、第7工程57、第8工程58、第9工程79、第10工程80、第11工程81、第12工程82を含む。第2実施形態では、第1実施形態で施工された第1工程51、第4工程54から第6工程56まで、第9工程59から第12工程62までが施工されない。第2実施形態における第2工程52、第3工程53、第7工程57、第8工程58は、第1実施形態の工程と同様なので、詳細な説明が省略される。また、第12工程82は、第13工程63と同様なので、詳細な説明が省略される。
第1工程71は、窓台13をサッシ10に仮固定する工程である。窓台13は、工場で仮固定され、工場から施工現場に搬入される。窓台13は、ビスによりサッシ10に仮固定される。
第4工程74は、転び止め114を設ける工程である。第4工程74では、転び止め114が支柱12にねじ止めされる。このとき、各押さえ板117は、上下方向7に沿った状態とされている。
第5工程75は、下方に窓台13が仮固定されたサッシ10をクレーン19により吊り上げて、上下方向7に沿って延びる支柱12間に仮置きして、窓台13を固定する工程である。図15に示されるように、スリング19Bは、窓台13に引っ掛けられる。
第6工程76は、仮置きされたサッシ10と窓台13との仮固定を解除して、窓台13に支持された状態でサッシ10を前方へ移動可能に支柱12に仮止めする工程である。サッシ10と窓台13とは、ビスが取り外されることにより、仮固定が解除される。サッシ10は、窓台13と仮固定が解除された後も、窓台13に載置された状態を維持される。仮止めは、転び止め114により行われる。転び止め114の第2片の押さえ板117は、左右方向9に沿った状態とされる。なお、第6工程76は、仮止め工程の一例である。
第9工程79は、図18及び図19に示されるように、サッシ10を前方へ引き出す工程である。サッシ10を引き出す際、図16(B)に示されるように、第1片の押さえ板117は、左右方向9に沿った状態とされ、第2片の押さえ板117は、上下方向7に沿った状態とされる。サッシ10は、第2片の押さえ板117から解放されるため、第1片の押さえ板117まで前方への移動が可能となる。なお、第9工程79は、引出工程の一例である。
第10工程80は、サッシ10と窓台13との間において、防鼠材17及び基礎水切り18を窓台13に取り付ける工程である。サッシ10は、窓台13と前後方向8に離れているため、サッシ10の下端が防鼠材17及び基礎水切り18の取り付けの妨げとならない。なお、第10工程80は、取付工程の一例である。
第11工程81は、引き出されたサッシ10を戻して窓台13に固定する工程である。サッシ10は、後方へ戻され窓台13にビス等により固定される。このとき、転び止め114は取り外される。なお、第11工程81は、固定工程の一例である。
[第2実施形態の作用効果]
仮止めによって仮置きされたサッシ10の転倒が防止されるため、サッシ10の仮置き後に、防鼠材17又は基礎水切り18を窓台に取り付ける作業が可能となる。したがって、サッシ10の運搬をクレーン19で行った後に、クレーン19を施工現場に留めて置く必要がなく、クレーン19を使用する費用が抑制される。
また、サッシ10は前後方向8へ移動し、上下方向7に移動する必要がないため、作業者の負担が少ない。
[第3実施形態]
第3実施形態では、図20及び図22に示されるように、サッシ10に取り付けられた上弦材121及び下弦材122と、上弦材121及び下弦材122を連結する連結材123と、筋交い124と、棒材125と、を具備するサッシ支持具300が用いられる例が説明される。第3実施形態に係るサッシ支持具300は、第1実施形態に係る上弦材21及び下弦材22の代わりとなるものである。第3実施形態におけるその他の部材は第1実施形態の部材と同様なので、詳細説明が省略される。
サッシ支持具300は、工場においてサッシ10に取り付けられる。図20(A)及び図20(B)に示されるように、サッシ支持具300は、上弦材121と、下弦材122と、連結材123と、筋交い124と、棒材125と、を有する。
図20及び図21に示されるように、上弦材121は、サッシ10の上端に取り付けられる。上弦材121は、サッシ10が吊り具により吊り上げられるときにも用いられる。上弦材121は、サッシの窓面と交差する方向すなわち前後方向8の両方に突出している。上弦材121は、吊りボルト受131と、係合部132と、後方の枠材133と、前方の枠材134と、を有する。
吊りボルト受131は、外形が長方形であって一定の厚みの鋼板が、上下方向7に沿った縦断面がL字形状に折り曲げられて形成されている。吊りボルト受131は、サッシ10の上方において左右方向9に沿って延びる。吊りボルト受131は、前後方向8及び左右方向9に沿って拡がる支持部171が上方に位置する。支持部171は、吊りボルト16Bが挿通される2つの挿通孔172を有する。支持部171は、各挿通孔172と各孔の位置が合わされた2つのナット16Cが下面に溶接されて接合される。ねじが切られた各吊りボルト16Bが各ナットと螺合する。吊りボルト16Bが回転することにより、ナットを上下方向7に移動させる力が働き、上弦材121及び上弦材121に係合されたサッシ10が上下方向7に移動する。
係合部132は、6つが吊りボルト受131の前面に接合される。係合部132は、吊りボルト受131との間にサッシ10の上端の突出部10Bを挟む。係合部132は、押さえ板132Aと、ボルト132Bと、を有する。押さえ板132Aは、吊りボルト受131とボルト132Bにより結合される。押さえ板132Aは、突出部10Bと当接する先端が後方へ折り曲げられている。押さえ板132Aは、突出部10Bと前後方向8において位置が重なる。押さえ板132Aは、ボルト132Bを中心に回転する。
枠材133は、吊りボルト受131より後方に配される。枠材133は、外形が長方形であって一定の厚みの鋼板が、上下方向7に沿った縦断面が略C字形状に折り曲げられて形成されている。枠材133は、下方に開口する。枠材133は、左右方向9に沿って延びる。枠材133は、左右方向9に沿った長さ寸法がサッシ10の左右方向9に沿った長さ寸法より長く、吊りボルト受131の左右方向9に沿った長さ寸法と同一である。
枠材133は、上面が吊りボルト受131の支持部171と同一平面をなす。枠材133は、後方に突出する突出端127を有する。突出端127は、上下方向7及び左右方向9に沿って拡がる。枠材133は、ボルト132Bにより吊りボルト受131と結合されている。
枠材134は、枠材133の上面の後端から吊りボルト受131より前方まで左右方向9に沿って拡がる。枠材134は、外形が長方形であって一定の厚みの鋼板が、前方端において2度直角に前後方向8に折り曲げられて形成されている。枠材134は、サッシ10の前方に突出する突出端126を有する。突出端126は、上下方向7及び左右方向9に沿って拡がる。
図20及び図21に示されるように、下弦材122は、サッシ10の下端に取り付けられる。下弦材122は、サッシ10がクレーン19で吊り上げられる際、スリングが引っ掛けられる。下弦材122は、サッシの窓面と交差する方向すなわち前後方向8の両方に突出している。下弦材122は、本体141と、ガイド42と、押さえ板43と、枠材143と、を有する。
本体141は、サッシ10の下方において左右方向9に沿って延びる。本体41は、外形が長方形であって一定の厚みの鋼板が前後方向8に折り曲げられて形成されている。本体141は、下方に開口を有する。本体141は、左右方向9に沿った長さ寸法が上弦材121の左右方向9に沿った長さ寸法と同じである。本体141は、下端が内側へ折り曲げられている。
本体141は、上面に段差が設けられている。本体141は、上面の下段に上下方向7に沿って延びる突出部を有する。サッシ10の突出部は、本体141の突出部と上面の下段から上段に向かって延びる壁部との間の凹部に嵌められる。
本体141は、下弦材122がサッシ10に取り付けられた状態において、サッシ10の後方に突出する突出端128を有する。突出端128は、上下方向7及び左右方向9に沿って拡がる。突出端128は、枠材133の突出端127と同一平面上に設けられる。
押さえ板43は、本体141に対して8つがボルトにより結合される。押さえ板43の構造は、第1実施形態と同様であるため、詳細説明が省略される。
枠材143は、窓台13に仮置きされた際、窓台13と当接する。枠材143は、外形が長方形であって一定の厚みの鋼板が、前方端において2度直角に前後方向8に折り曲げられて形成されている。枠材143は、本体141の下端に、本体141の前方と後方とを渡し、本体141の前方へ突出するように配される。
枠材143は、下弦材122がサッシ10に取り付けられた状態において、サッシ10の前方に突出する突出端129を有する。突出端129は、上下方向7及び左右方向9に沿って拡がる。突出端129は、吊りボルト受131の突出端126と同一平面上に設けられる。
連結材123は、上弦材121と下弦材122とを連結する。連結材123は、長尺の筒形状であって、金属製である。連結材123は、2本が上下方向7に沿って平行に延び、サッシ10の左右方向9の両側面の後方に配される。各連結材123は、上弦材121の突出端127及び下弦材122の突出端129にねじ止めされて接合される。各連結材123は、上端が上弦材121より上方に突出し、下端が下弦材122の下端と同じか上方に位置する。各連結材123は、上端がクレーン19のスリング19Bに連結される。
連結材123は、上弦材121及び下弦材122の後方に位置し、上弦材121及び下弦材122は、サッシ10の前方に突出する。上弦材121、下弦材122及び連結材123が取り付けられたサッシ10は、複数が平積みされたとき、下方のサッシ10の上弦材121の突出端126及び下弦材122の突出端128は、上方のサッシ10の連結材123と当接することとなる。
各連結材123は、連結材123同士が対向する側に、挿通孔を有する突片をそれぞれ2つずつ有する。各突片は、連結材123の上下方向7の中央から上方と下方とに配されている。
筋交い124は、2本が一対の連結材123の間に設けられる。筋交い124は、連結材123の間で交差するように配される。第3実施形態では、筋交い124にターンバックルが用いられる。筋交い124は、各端部がボルトにより連結材123の各突片と接合される。
棒材125は、連結材123同士が平行である状態を維持する。棒材125は、長尺の筒形状であって、金属製である。棒材125は、2本が左右方向9に沿って平行に延びる。棒材125は、一対の連結材123の間であって、筋交い124の前方に位置する。棒材125は連結材123の上下方向7の中央から上方と下方とに配されている。棒材125は、各端部が連結材123とL字状の金具とボルトによりそれぞれ結合される。
なお、連結材123、筋交い124及び棒材125は、第6工程においてサッシ10が仮止めされた後、サッシ10から取り外される。
[第3実施形態の作用効果]
連結材123が取り付けられた複数のサッシ10が、図22に示されるように、上弦材121同士及び下弦材122同士が当接されることによって平積みされるため、平積み状態においてサッシ10同士が接触しない。
また、筋交い124が連結材123同士を連結するため、サッシ支持具300の強度が増す。
[変形例]
上記実施形態では、支柱12が用いられたが、支柱12に代えて壁パネルが用いられてもよい。また、支柱12に接合された合板14は、用いられなくともよい。
また、上記実施形態では、梁15が用いられたが、2階の床パネルや支柱12間を横架する仮設材であってもよい。
また、吊りボルト16Bは、吊り具16の支持部65の挿通孔66に挿通され前後方向8及び左右方向9の位置が固定されていたが、吊りボルト16Bは、サッシ10と共に前後方向8に沿ってスライド可能とされてもよい。例えば、挿通孔66は、左右方向9に沿った長さ寸法より前後方向8に沿った長さ寸法が長く形成される。また、下弦材22は、板材46の下側に板材46と重ねられた板状の台材を有していてもよい。当該台材は、前後方向8に沿った寸法が板材46の前後方向8に沿った寸法より長く形成される。当該台材は、板材46から後方へ突出する一部の下面が窓台13上に載置されてもよい。
また、防鼠材17及び基礎水切り18は、必ずしも設けられずともよく、いずれか一方のみが設けられてもよい。
また、転び止め23の本体24は、左右方向9に沿った断面がL字形状に折り曲げられて形成されていたが、当該断面がL字形状でなくともよく、支柱12に接合された状態おいて、前面視が矩形の平板形状であってもよい。また、本体24は、上下方向7における中央付近が前方へ盛り上がり、支柱12との間に隙間を生じさせるものであってもよい。
また、転び止め23は、ガイド25を有していたが、ガイド25を有さずともよく、本体24は、前方へ延びる突出部を有していてもよい。突出部は、押さえ板26の回転を制限するためのものである。例えば、突出部は、本体24の一部が切り出されて板バネとして形成されてもよい。押さえ板26は、左右方向9に沿った姿勢であるとき、側部26Cが突出部と当接する。
第1実施形態及び第3実施形態では、吊りボルト受16Aと、吊りボルト16Bと、を有する吊り具16が用いられたが、吊り具16に代えて、先端に結合部材が付されたワイヤと、ワイヤが延出する長さを変えることができるリールが用いられてもよい。
また、吊りボルト16Bは、頭部67が吊りボルト受16Aの支持部65に支持され、胴体部68が吊りボルト受31の支持部91の下面に溶接されたナット16Cと螺合した。しかし、吊りボルト16Bは、頭部67が吊りボルト受31の支持部91の下面と当接し、胴体部68が吊りボルト受16Aの支持部65の上面に溶接されたナット16Cと螺合してもよい。
第3実施形態では、連結材123が上弦材121及び下弦材122の後方に配されたが、連結材123は、上弦材121及び下弦材122の左右方向9の両端に配されてもよい。このとき、筋交い124及び棒材125は用いられない。また、連結材123は、第5工程55において取り外される。