JP7294140B2 - ガラスロービング及び複合材並びにガラスロービングの製造方法 - Google Patents

ガラスロービング及び複合材並びにガラスロービングの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガラスロービング及びガラスロービングに樹脂を含浸してなる複合材並びにガラスロービングの製造方法に関する。
一般に、ガラスロービングは、以下のようにして製造される。すなわち、多数の成形ノズルを有するブッシングによって溶融ガラスから多数のガラス繊維を成形し、アプリケータを用いて各ガラス繊維に集束剤を塗布した後、これらのガラス繊維をギャザリングシューにより集束させてストランドを構成する。次に、このストランドをコレット等により巻き取ることで円筒状のケーキを得る。そして、このケーキを乾燥させること(乾燥工程)で、円筒状のガラスロービングが完成する(例えば特許文献1、2参照)。
上記のように構成されるガラスロービングからストランドを引き出すとともに、当該ストランドに樹脂(例えば熱可塑性樹脂)を含浸させることにより、ガラス繊維及び樹脂からなる複合材が製造される(例えば特許文献3参照)。複合材は、樹脂を含浸させたストランドを所定長さに切断することにより、長繊維ペレットとなる。この長繊維ペレットは、例えば各種の成形品を製造する場合にその原料として使用される。
特表2001-524442号公報 特開平1-261246号公報 特開2016-217679号公報
上記のガラスロービングにおいて、熱可塑性樹脂を含浸させる場合に、含浸不良(ペレットの形状不良)が発生することがあった。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、含浸不良の少ないガラスロービングを提供することを技術的課題とする。
上記のガラスロービングにおいて、ストランドに水分が多く残存していると、熱可塑性樹脂を含浸させる場合に、当該水分が揮発することに起因する含浸不良(ペレットの形状不良)が発生することがわかった。通常、ガラスロービングの水分量を低下させるために、上記の如く乾燥工程が実施されるのであるが、当該ガラスロービングの外面と内部との間で、水分の残量に差が生じてしまい、水分残量の多いストランドの部位で樹脂の含浸不良が発生し易くなることがわかった。
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、筒状に構成される本体部を備えるガラスロービングであって、前記本体部は、第一端面と、第二端面とを備えており、前記第一端面における平衡水分率(Wa1)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa1/Wb)、及び前記第二端面における平衡水分率(Wa2)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa2/Wb)が0.1以上5.5以下であることを特徴とする。ガラスロービングの端面に係る平衡水分率と内部に係る平衡水分率との比を上記の範囲とすることで、ガラスロービングに樹脂を含浸させる場合における含浸不良の発生を効果的に防止できる。
上記構成のガラスロービングにおいて、前記第一端面における平衡水分率(Wa1)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa1/Wb)が0.5以上2.0以下である、または前記第二端面における平衡水分率(Wa2)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa2/Wb)が0.5以上2.0以下であることが望ましい。ガラスロービングの第一端面に係る平衡水分率と内部に係る平衡水分率との比または第二端面に係る平衡水分率と内部に係る平衡水分率との比を上記の範囲とすることで、ガラスロービングに樹脂を含浸させる場合における含浸不良の発生を効果的に防止できる。
上記構成のガラスロービングにおいて、前記第一端面における平衡水分率(Wa1)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa1/Wb)、及び前記第二端面における平衡水分率(Wa2)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa2/Wb)が0.5以上2.0以下であることが望ましい。ガラスロービングの第一端面及び第二端面に係る平衡水分率と内部に係る平衡水分率との比を上記の範囲とすることで、ガラスロービングに樹脂を含浸させる場合における含浸不良の発生をさらに効果的に防止できる。
上記構成のガラスロービングにおいて、前記第一端面と前記内部との前記平衡水分率の差の絶対値、及び前記第二端面と前記内部との前記平衡水分率の差の絶対値が50ppm以下であることが望ましい。また、前記平衡水分率の最大値が100ppm未満であることが望ましい。
本発明に係る複合材は、上記の課題を解決するためのものであり、上記いずれかのガラスロービングに樹脂が含浸されてなることを特徴とする。
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、ガラスロービングを製造する方法であって、ブッシングのノズルからガラス繊維を引き出す工程と、アプリケータにより前記ガラス繊維に集束剤を塗布する工程と、複数の前記ガラス繊維を束ねてストランドを形成する工程と、前記ストランドを巻き取ってケーキを形成する工程と、前記ケーキを乾燥させて上記構成のガラスロービングを形成する工程と、を備え、前記ガラス繊維に前記集束剤を塗布する工程において、前記アプリケータの外表面における温度が、20~80℃であることを特徴とする。
本方法によれば、ガラス繊維に集束剤を塗布する工程においてアプリケータの温度を所定の温度範囲に設定することで、ストランドに含まれる水分量を最適化でき、樹脂の含浸不良の発生を効果的に防止できるガラスロービングを製造できる。
本発明によれば、含浸不良の少ないガラスロービングを提供することが可能である。
ガラスロービングの製造装置を示す概略図である。 乾燥装置を示す斜視図である。 ガラスロービングを示す斜視断面図である。 複合材の製造装置を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図4は、本発明に係るガラスロービング及び複合材を製造する方法及び装置を示す。
図1は、ガラスロービングの製造装置を示す概略図である。ロービング製造装置は、ガラス溶融炉1と、ガラス溶融炉1に接続されたフォアハース2と、フォアハース2に接続されたフィーダ3と、フィーダ3から引き出された溶融ガラスGを冷却する噴霧器4と、集束剤をガラス繊維Gmに塗布するアプリケータ5と、ガラス繊維Gmを集束してストランドGsを構成するギャザリングシュー6と、ストランドGsを巻き取るコレット7とを備える。
溶融ガラスGは、ガラス溶融炉1からフォアハース2を通じてフィーダ3に供給されると共に、フィーダ3内に貯留される。図1では一つのフィーダ3を図示しているが、ガラス溶融炉1には複数のフィーダ3が接続されていてもよい。
フィーダ3の底部には、ブッシングブロック等を介してフィーダ3に取り付けられているブッシング8が配置される。ブッシング8の底部には、複数のノズル9が設けられている。各ノズル9の近傍には冷却手段としての冷却管10が設けられている。ブッシング8に設けられた複数のノズル9からフィーダ3内に貯留された溶融ガラスGが下方に引き出され、ガラス繊維(モノフィラメント)Gmとして成形される。
ブッシング8、ノズル9及び冷却管10は、少なくとも一部が白金又は白金合金(例えば、白金ロジウム合金)により形成されている。
噴霧器4は、ブッシング8の下方に配置される。噴霧器4は複数のノズルを備えており、当該ノズルから冷却水を側方に噴射する。溶融ガラスGは、この冷却によりガラス繊維Gmとして構成される。
噴霧器4のノズルとしては、冷却水をミスト状に噴射(スプレー)するもの又はシャワー状に噴射するものがある。噴霧器4は、シャワー噴射型のノズル及びミスト噴射型のノズルの一方又は両方を備え得る。冷却水をミスト状に噴射する噴霧器4の場合、ミストを構成する水の粒径は、20~50μmとされることが好ましい。この場合における水量(全てのノズルから噴射される冷却水の総量)は、150~800ml/分とされることが好ましい。冷却水をシャワー状に噴射する噴霧器4の場合、ノズルのオリフィス径は、0.1~1mmとされることが好ましい。この場合における水量(全てのノズルから噴射される冷却水の総量)は、500~1500ml/分とされることが好ましい。
アプリケータ5は、ノズル9から下降する複数のガラス繊維Gmに集束剤を塗布するローラとして構成される。集束剤には、カップリング剤の他、結束剤、潤滑剤、帯電防止剤、消泡剤等が含まれる。例えば、カップリング剤としてアミノシラン等、結束剤として酸変性樹脂等が挙げられる。潤滑剤としては、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩等、帯電防止剤としては、ポリエーテル化合物、スルホン酸化合物類、ベタイン化合物、導電ポリマー等が挙げられる。
ギャザリングシュー6は、100~10000本のガラス繊維を集束し、一本のストランドGsを構成する。コレット7は、ギャザリングシュー6を通過したストランドGsを巻き取ることにより、ケーキCを構成する。本実施形態では、一個のギャザリングシュー6を例示するが、これに限らず、ロービング製造装置は、複数のギャザリングシュー6を備え得る。複数のギャザリングシュー6によって形成された複数のストランドGsを合糸してコレット7により巻き取ることで、ガラスロービングGr(ケーキC)を形成してもよい。
図2は、乾燥装置を示す斜視図である。乾燥装置は、ケーキCを誘電加熱で乾燥させる第一乾燥部11と、第一乾燥部11で乾燥されたケーキCを雰囲気加熱で乾燥させる第二乾燥部12と、ケーキCを搬送する搬送部13とを備える。
第一乾燥部11は、その内側の両側方に誘電加熱のための電極が配設されている。第一乾燥部11による誘電加熱は、ケーキC内の水分子を回転又は振動させるための条件であれば特に制限は無く、誘電加熱に高周波を使用する場合は、周波数が例えば4~80MHzのものを使用できる。また、誘電加熱にマイクロ波を使用してもよい。
第二乾燥部12による雰囲気加熱としては、例えば熱風加熱や赤外線加熱等が挙げられる。雰囲気加熱として熱風加熱を採用している場合には、第二乾燥部12は、その内側の両側方に、熱風を生じさせるための熱源と、熱風を送風するためのファンが配設される。雰囲気加熱として赤外線加熱を採用している場合には、第二乾燥部12は、その内側の両側方に、赤外線ヒータが配設される。
搬送部13は、ベルトコンベアで構成される。搬送部13は、ケーキCを、連続的に第一乾燥部11に搬入及び搬出し、その後、第二乾燥部12に搬入及び搬出する。搬送部13は、これに限定されず、例えば台車等の別の手段で構成されてもよい。
図3は、乾燥装置を通過したガラスロービングGrを示す。ガラスロービングGrは、円筒状の本体部GBを備える。本体部GBは、内径が100~300mm、外径が150~600mm、長さが100~700mmとされることが望ましい。
本体部GBは、軸方向の端面である第一端面GE1及び第二端面GE2を備える。第一端面GE1及び第二端面GE2の平衡水分率Wa1,Wa2は、0.01~100ppmとされることが望ましい。本体部GBにおける、軸方向の端面、内径及び外径部表面以外の部分である内部GIの平衡水分率Wbは、0.01~100ppmとされることが望ましい。ここで、本明細書において、「平衡水分率」は、ガスクロマトグラフィ質量分析法(GC-MS)に基づいて求める。具体的には、ガラスロービングGr中に含まれる水分子のピークの面積を積分することにより求められる。なお、導入するガスの温度は、初期は110℃であり、15℃/分で170℃までガスの温度を上げる。
第一端面GE1の平衡水分率Wa1と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa1/Wb、及び第二端面GE2の平衡水分率Wa2と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa2/Wbは、0.1以上5.5以下とされる。第一端面GE1の平衡水分率Wa1と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa1/Wbと、第二端面GE2の平衡水分率Wa2と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa2/Wbとについては、いずれか一方が0.5以上2.0以下とされることが望ましく、両方とも0.5以上2.0以下とされることがより望ましい。
ガラスロービングGrにおける第一端面GE1、第二端面GE2及び内部GIの各平衡水分率Wa1,Wa2,Wbの差の絶対値(Wa1とWa2との差、Wa1とWbとの差、Wa2とWbとの差)は、0ppm以上50ppm以下であることが望ましい。また、平衡水分率Wa1,Wa2,Wbの最大値は、100ppm未満であることが望ましく、30ppm以下であることがより望ましい。
図4は、複合材の製造装置を示す。複合材の製造装置は、ガラスロービングGrから引き出されたストランドGsに張力を付与する複数のテンションバー14と、当該ストランドGsに熱可塑性樹脂を含浸させる含浸装置15と、樹脂含浸後のストランドGsを切断する切断装置16とを備える。
テンションバー14は金属製(例えば真鍮製)であり、ガラスロービングGrから引き出されたストランドGsに対して適切な張力を付与する。含浸装置15は、溶解した熱可塑性樹脂を収容するレジンバス15aを備える。切断装置16は、熱可塑性樹脂を含浸させたストランドGsを切断して、複合材である長繊維ペレットPを形成する。切断装置16は、複数の刃を有する切断ローラ16aと、ストランドGsを支持する支持ローラ16bとを備える。
以下、上記の各装置を用いて、ガラスロービングGr及び長繊維ペレットPを製造する方法について説明する。
本方法では、まず、ロービング製造装置によりガラスロービングGrを製造する(ロービング製造工程)。このロービング製造工程では、フィーダ3内の溶融ガラスGをノズル9を介して下方に引き出す。引き出された溶融ガラスGは、噴霧器4から噴射した冷却水により冷却され、ガラス繊維Gmとなる。なお、溶融ガラスGの粘度は、102.0~103.5dPa・sの範囲内に設定されることが好ましく、より好ましくは102.5~103.3dPa・sである。
その後、ガラス繊維Gmは、さらに下降し、アプリケータ5を通過する。アプリケータ5のローラは、成形された全てのガラス繊維Gmに接触し、各ガラス繊維Gmに集束剤を塗布する。この場合において、アプリケータ5の周囲の温度は、一定に維持されることが望ましい。例えば、アプリケータ5(ローラ)の外表面における温度は、20~80℃とされる。これにより、アプリケータ5により各ガラス繊維Gmに塗布された集束剤に含まれる水分が塗布後適切に揮発し、平衡水分率を低くすることができる。なお、アプリケータ5の外表面の温度は、例えば、非接触温度計により測定した値である。なお、アプリケータ5の外表面の温度は、例えば、集束剤の温度を調整することや、アプリケータ5内部に、温度を調整する機構を設けることや、噴霧器4のノズルから噴霧される冷却水の温度を調整することにより調整することができる。なお、アプリケータ5の外表面における温度は、20℃以上、40℃以下が望ましい。
集束剤が塗布されたガラス繊維Gmは、ギャザリングシュー6を通過する。これにより、ガラス繊維Gmは紡糸され、一本のストランドGsとして構成される。ストランドGsは、コレット7により巻き取られることで、ケーキCとなる。なお、本実施形態では、フィラメント繊維径は6~30μmとされ、ストランドGsの番手は250~6000texとされる。
その後、乾燥装置によってケーキCを乾燥する。ケーキCは、搬送部13によって搬送されることにより、第一乾燥部11及び第二乾燥部12を通過する。なお、第二乾燥部12による加熱温度は、120℃~140℃とされることが望ましい。この乾燥装置によるケーキCの加熱時間は、1時間~5時間とされることが望ましい。
乾燥装置を通過することで、水分率が好適に調整されたガラスロービングGrが完成する。なお、乾燥前におけるケーキCの水分率が低すぎると、紡糸時にストランドGsが損傷し、毛羽が多く発生してしまう。一方、乾燥前におけるケーキCの水分率が高すぎると、樹脂含浸時の含浸不良が発生し易くなる。このため、乾燥前におけるケーキCの水分率は1~8wt%程度であることが望ましい。ケーキCの水分率は、乾燥前と乾燥後の重量差から求めることができる。
その後、ガラスロービングGrを複合材の製造装置に設置する。複合材の製造装置は、ガラスロービングGrからストランドGsを引き出すとともに、テンションバー14を介して当該ストランドGsを含浸装置15に移送する。ストランドGsは、レジンバス15aに収容されている熱可塑性樹脂に連続的に浸漬される(含浸工程)。これにより、ストランドGsに熱可塑性樹脂が含浸される。その後、ストランドGsはレジンバス15aから引き上げられ、切断装置16へと搬送される。熱可塑性樹脂は、切断装置16への搬送途中に冷却され、固化する。切断装置16の切断ローラ16aは、連続的に導入されるストランドGsを一定長さに切断する(切断工程)。これにより、複合材として多数の長繊維ペレットPが形成される(図4参照)。
以上説明した本実施形態に係るガラスロービングGr及び複合材(長繊維ペレットP)によれば、本体部GBの第一端面GE1の平衡水分率Wa1と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa1/Wb、及び第二端面GE2の平衡水分率Wa2と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa2/Wbを、0.1以上5.5以下とすることで、長繊維ペレットPを製造する場合における樹脂の含浸不良の発生を効果的に抑制できる。
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記の実施形態では、本体部GBの第一端面GE1の平衡水分率Wa1と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa1/Wb、及び第二端面GE2の平衡水分率Wa2と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa2/Wbの両方を、0.1以上5.5以下とした例を示したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、例えば、第一端面GE1及び第二端面GE2のうち、いずれか一方の端面における平衡水分率Waと、本体部GBの内部GIにおける平衡水分率Wbとの比Wa/Wbが0.5以上2.0以下とすることで、ガラスロービングに樹脂を含浸させる場合における含浸不良の発生を効果的に防止できる。また、本発明は、本体部GBの第一端面GE1の平衡水分率Wa1と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa1/Wb、及び第二端面GE2の平衡水分率Wa2と内部GIの平衡水分率Wbとの比Wa2/Wbの両方を、0.5以上2.0以下とすることで、ガラスロービングに樹脂を含浸させる場合における含浸不良の発生をより効果的に防止できる。
上記の実施形態では、レジンバス15aにより熱可塑性樹脂を含浸させた後に切断することで、複合材(長繊維ペレットP)を形成する例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば複合材は、樹脂を含浸させたストランドを再び巻き取って円筒状に構成したものであってもよい。
以下、ガラスロービングの実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
直径19μm、4000本のガラス単繊維にアプリケータにより集束剤を塗布し、ギャザリングシューにより集束してストランドを構成し、当該ストランドをコレットにより巻き取ることで実施例1~3に係るケーキを作製した。ストランドを形成する工程において、ケーキの水分率が3wt%(実施例1)、6wt%(実施例2)、4wt%(実施例3)となるように、アプリケータに係るローラの回転数、及び噴霧器から噴射する冷却水の量を調整した。また、アプリケータに係るローラにおける温度(アプリケータ温度)を、各実施例1~3の各々に対して、65℃、30℃、35℃とした。
このようにして得られた各ケーキを乾燥装置により乾燥し、実施例1~3に係る円筒状のガラスロービングを製造した。各ガラスロービングの内径は150mm、外径は270mm、長さは325mmである。
また、上記と同様な製法により、乾燥前の水分率を14wt%とした比較例1に係るケーキを製作した。比較例1に係るケーキを作製する場合、アプリケータの温度(アプリケータ表面温度)を28℃に維持した。比較例1に係るケーキを実施例1~3と同様な条件で乾燥させることで、比較例1に係るガラスロービングを製造した。比較例1に係るガラスロービングの寸法は、実施例1~3と同じである。
実施例1~3及び比較例1に係るガラスロービングにおいて、第一端面、第二端面、及び内部の各部から約60mgの試験片を各々九個採取した。なお、第一端面及び第二端面の試料片は、ガラスロービングにおける、外表面を形成する部分のストランドを切り取り採取した。内部の試料片は、ガラスロービングの内径及び外径部表面を構成していないストランド(内径及び外径部表面から2mm以上内部に位置するストランド)を切り取り採取した。各試験片をカラムに詰め、He雰囲気下で150℃に加熱した。さらに各試験片について、GC-MS分析計による分析を行った。この分析により、各試験片に含まれる水分子におけるピークの面積を積分することで、その平衡水分率Wa1,Wa2,Wb(ppm)を求めた。この結果を用いて、実施例1~3及び比較例1における第一端面と内部、第二端面と内部に係る平衡水分率の比Wa1/Wb,Wa2/Wbを求めた。
分析結果を以下の表1に示す。なお、表1において、ガラスロービングにおける第一端面、第二端面及び内部の各平衡水分率Wa1,Wa2,Wbは、九個の試験片の平均値を示す。
Figure 0007294140000001
表1に示すように、実施例1では、第一端面と内部との平衡水分率の差の絶対値|Wa1-Wb|は3ppmであり、第二端面と内部との平衡水分率の差の絶対値|Wa2-Wb|は4ppmである。実施例1に係る平衡水分率は、いずれも100ppm未満である。実施例1では、Wa1/Wb、及びWa2/Wbが1.2となった。
実施例2では、第一端面と内部との平衡水分率の差の絶対値|Wa1-Wb|は130ppmであり、第二端面と内部との平衡水分率の差の絶対値|Wa2-Wb|は24ppmである。実施例2に係る平衡水分率の最大値は、185ppmである。実施例2では、Wa1/Wbが3.4、及びWa2/Wbが1.4となった。
実施例3では、第一端面と内部との平衡水分率の差の絶対値|Wa1-Wb|は32ppmであり、第二端面と内部との平衡水分率の差の絶対値|Wa2-Wb|は17ppmである。実施例3に係る平衡水分率の最大値は76ppmである。実施例3では、Wa1/Wbが1.7、及びWa2/Wbが1.4となった。
比較例1では、Wa2/Wbは2.1であったが、Wa1/Wbは6.4であった。また、比較例1では、第一端面と内部との平衡水分率の差の絶対値が91ppmであり、平衡水分率の最大値が108ppmである。
上記のように製造された実施例1~3に係るガラスロービングのストランドに熱可塑性樹脂を含浸させたところ、含浸不良は認められなかった。これに対し、比較例1に係るガラスロービングのストランドに熱可塑性樹脂を含浸させたところ、複数箇所において含浸不良(形状不良)が認められた。
5 アプリケータ
8 ブッシング
9 ブッシングのノズル
C ケーキ
Gm ガラス繊維
Gr ガラスロービング
Gs ストランド
GB 本体部
GE1 第一端面
GE2 第二端面
GI 内部
P 長繊維ペレット(複合材)

Claims (8)

  1. 筒状に構成される本体部を備えるガラスロービングであって、
    前記本体部は、第一端面と、第二端面とを備えており、
    前記本体部の前記第一端面における平衡水分率(Wa1)は、前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)と異なっており、
    前記本体部の前記第二端面における平衡水分率(Wa2)は、前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)と異なっており、
    前記第一端面における平衡水分率(Wa1)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa1/Wb)、及び前記第二端面における平衡水分率(Wa2)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa2/Wb)が1.2以上3.4以下であることを特徴とするガラスロービング。
  2. 前記第一端面における平衡水分率(Wa1)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa1/Wb)、または前記第二端面における平衡水分率(Wa2)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa2/Wb)が1.2以上2.0以下である請求項1に記載のガラスロービング。
  3. 前記第一端面における平衡水分率(Wa1)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa1/Wb)、及び前記第二端面における平衡水分率(Wa2)と前記本体部の内部における平衡水分率(Wb)との比(Wa2/Wb)が1.2以上2.0以下である請求項1又は2に記載のガラスロービング。
  4. 前記第一端面と前記内部との前記平衡水分率の差の絶対値、及び前記第二端面と前記内部との前記平衡水分率の差の絶対値が50ppm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載のガラスロービング。
  5. 前記平衡水分率の最大値が100ppm未満である請求項1から4のいずれか一項に記載のガラスロービング。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載のガラスロービングから複合材を製造する方法において、
    前記ガラスロービングは、複数のガラス繊維を集束させてなるストランドを円筒状に巻き取ることにより構成されており、
    前記ガラスロービングから引き出した前記ストランドに樹脂を含侵させる含侵工程と、
    前記含侵工程後に前記ストランドを切断する切断工程と、を備えることを特徴とする複合材の製造方法。
  7. 請求項1から5のいずれか一項に記載のガラスロービングから複合材を製造する方法において、
    前記ガラスロービングは、複数のガラス繊維を集束させてなるストランドを円筒状に巻き取ることにより構成されており、
    前記ガラスロービングから引き出した前記ストランドに樹脂を含侵させる含侵工程と、
    前記含侵工程後に前記ストランドを円筒状に巻き取る工程と、を備えることを特徴とする複合材の製造方法。
  8. ガラスロービングを製造する方法であって、
    ブッシングのノズルからガラス繊維を引き出す工程と、
    アプリケータにより前記ガラス繊維に集束剤を塗布する工程と、
    複数の前記ガラス繊維を束ねてストランドを形成する工程と、
    前記ストランドを巻き取ってケーキを形成する工程と、
    前記ケーキを乾燥させて請求項1から5のいずれか一項に記載のガラスロービングを形成する工程と、を備え、
    前記ガラス繊維に前記集束剤を塗布する工程において、前記アプリケータの外表面における温度が、20~80℃であることを特徴とするガラスロービングの製造方法。
JP2019560926A 2017-12-19 2018-12-03 ガラスロービング及び複合材並びにガラスロービングの製造方法 Active JP7294140B2 (ja)

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