JP7292823B2 - スケール厚さ計測装置及びスケール厚さ計測方法 - Google Patents

スケール厚さ計測装置及びスケール厚さ計測方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば伝熱管などの金属配管内表面に多層に付着したスケール厚みを計測するスケール厚さ計測装置及びスケール厚さ計測方法に関するものである。
ボイラと蒸気タービンを用いた発電プラントが知られている。ボイラの伝熱管に流通させるために用いられるボイラへの給水によって、ボイラの伝熱管、系統配管内や蒸気タービンへの蒸気供給系統内での腐食発生、スケール生成及び付着、蒸気タービンへのキャリオーバなどの障害を防止するために、給水への水処理が行われている。このような水処理として、例えば酸素処理が用いられている。酸素処理は、高純度の水中で難溶解性の酸化物を系統配管の鋼材の表面上に密着させて適切に保持することによって、その後の系統配管の鋼材の腐食及び腐食生成物の水中への溶出を抑制させることができるとの考え方に基づいたものである。この処理方式の一つとして、アンモニアの添加によって給水を弱アルカリ性として溶存酸素を共存させる複合水処理(CWT:Combined Water Treatment、又は酸素処理(OT:Oxygenated Feed-Water Treatment)と称される)がある。
CWTを適用したプラントでは、系統配管内でスケール成長速度を抑制するとともに、生成されてスケールとなるヘマタイト(Fe)は溶解度が小さいことから、系統配管からの鉄溶出の低減となる。一方、ボイラの長期運用により、系統配管からボイラへの鉄持ち込み量の増加と、ボイラ火炉壁管内面に形成された硬質スケールの上にヘマタイトスケールが付着する現象が認められる場合がある。へマタイトスケールは、熱伝導率の低い小粒径のポーラス状であることから、パウダースケールと称され、ボイラ火炉壁の伝熱管内に付着するとで、火炉壁蒸発管のメタル温度上昇の要因となっている。
パウダースケールの主成分はヘマタイトであり、例えば給水加熱器のドレン系統などから輸送されてくる給水中の鉄が付着したものである。一方、硬質スケールの主成分はマグネタイト(Fe)であり、伝熱管など母材の自己酸化によるもので緻密な組織である。
ボイラの火炉壁蒸発管などの伝熱管内面に付着したスケールの評価にあたっては、超音波を印加して除去できた物質の量をパウダースケール付着量として計量する場合があるが、正確な定量は困難である。また、ボイラの設置現場において、酸溶解によるパウダースケール付着量評価も場所、時間の制約から採用が困難である。
また、別の手法として伝熱管の一部を抜管し、分析室に持ち込んで試験片として加工した後、スケールが付着したまま樹脂埋めして斜めに切断して観察用の切断面を作り出す。そして、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで、多層付着スケールの厚さを評価する場合があるが、樹脂埋め時にパウダースケールが伝熱管表面から外れて浮いてしまって、正確な厚さ測定が困難である。
また、切断面をSEMで拡大して観察するには観察範囲が狭く、付着物の観察代表点として適切でない可能性もあり、広範囲の付着状況を把握することが困難でもある。
以上の通り、従来の方法では、パウダースケール付着量評価に対して正確さが不足するとともに検査期間が長期化することで定検期間の長期化を招き、経済面でのデメリットが生じ易い課題がある。
例えば、付着層の厚さ評価にあたり、電極を可動させて電極間の電気抵抗値の変化から計測するものがある。下記特許文献1には、導電性耐火物の酸化部と非酸化部に対して可動電極を移動させ、酸化部の厚さを測定する発明が開示されている。
特開平9-287910号公報
しかし、特許文献1に記載された発明は、ヘマタイトスケールのような脆く形状崩壊を起こしやすいパウダースケールを計測対象としておらず、類似方法を用いて正確な計測を行うことは難しい。
また、仮に脆くない付着物であった場合は、付着物層の厚さを計測するには、可動電極の位置決め精度をμmオーダに管理しながら可動電極を膜厚方向に差し込む必要があり、この時にインピーダンスのオーダが大きなものであれば、付着物の厚さを推定することが可能となっている。すなわち、付着物層の正確な電気抵抗値を求めないままに、可動電極の空間位置とそのときの可動電極により付着物層の電気抵抗値を計測することで、可動電極の先端が層のどの位置に達しているかを求めることで、層の厚さを推定することができるものである。一般には層の境界部分を精度良く把握するためには、複数のデータを重ね合わせて判断する必要があるが、複数のデータを短時間で計測することは容易でないために、層の厚さは概略値を推定するに留まっていた。
更に、ボイラの伝熱管等のスケール厚さを求める場合には、伝熱管等の配管内の複数箇所や複数の伝熱管毎に多数の計測を行う必要があり、作業者の負荷を低減するためには、1回当たりの計測が短時間で終了することが望ましい。
さらに、計測に当たっての計測電圧は誤差を少なくするためには、あるオーダの値(少なくともmV単位)があることが望ましく、
測定針診間の計測電圧=被測定抵抗×通過電流
という関係があるため、通過電流を計測電圧は誤差や精度を考慮したオーダの値(1ΩならmA単位)が必要となる。さらに、内部抵抗や計測系の抵抗損失を考慮すると、必要以上に大きな電流値は、発熱による計測系内部抵抗の変化につながり、誤差を拡大する危険性がある。また通過電流を必要以上に大きくした際には印加電圧も高くなるため、作業者の感電への対策を講じる必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ボイラの伝熱管内面などに付着した及び複数層からなるスケール層の厚さを簡便かつ正確に短時間で計測することができるスケール厚さ計測装置及びスケール厚さ計測方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のスケール厚さ計測装置及びスケール厚さ計測方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるスケール厚さ計測装置は、ボイラに設置され、内部にボイラ水の流れる伝熱管の内表面に付着した複数層からなるスケール層の厚さを計測するスケール厚さ計測装置であって、少なくとも2本とされた同一の長さを有する表面計測用探針と、前記表面計測用探針よりも所定の長さを短くされて長さの異なる複数の探針と、前記表面計測用探針及び前記探針の長さと位置を各々規定して支持する台座と、前記台座を支持するとともに、前記表面計測用探針に接続された計測線及び前記探針に接続された計測線を収納する計測線収納箱と、前記計測線から送信されたデータを処理するコンピュータとを備えている。
計測用の探針は長さが既知の複数の測定用探針を備えることが望ましい。最も長い表面測定用探針が伝熱管内表面に達した場合、電気抵抗値は伝熱管の電気抵抗となりほぼゼロとなる。これを基準として、より長さの短い複数の測定用の探針で電圧値と電流値を計測される電気抵抗値及び/又は抵抗率を算出することで、該測定用の探針の先端がスケール層のどの位置に到達しているか、あるいはスケール層以外(空気)にあるかが判明する。これにより、作業者が計測装置を一度セットすれば、コンピュータ32の取り込まれた各測定用の探針にてより計測された電気抵抗値及び/又は抵抗率を比較することで、スケール層を構成する複数の層の厚さを短時間で求めることができる。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記表面計測用探針及び前記複数の探針は、それぞれ、前記台座の平面状の取付面に対して垂直に設けられ、前記複数の探針の各々は、探針ガイドで前記台座に絶縁支持されている。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記コンピュータで前記計測線から送信されたデータから得られる前記複数の探針の各々に対する電気抵抗値及び/又は抵抗率と、前記表面計測用探針の長さ及び前記複数の探針の長さから得られる前記複数の探針の各々の位置との関係から、前記スケール層の各複数層の厚さを前記コンピュータで算出する。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記複数の探針で1組の探針群が構成され、前記探針群と長さが同一とされた複数の探針で構成されたもう1組の探針群を備える。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記表面計測用探針の一方から前記伝熱管の内表面を経由して前記複数の探針との各間に順次に所定電流値の定電流を通電させる定電流源と、前記表面計測用探針の他方と前記複数の探針の各間に対する電圧計測回路とを備え、前記電圧計測回路は、前記表面計測用探針と各前記複数の探針との間の電圧測定値を前記コンピュータへ送信して、前記複数の探針の各々に対する電気抵抗値及び/又は抵抗率を得る。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記スケール層は、前記伝熱管の内面側から表面側に向かって第1層と第2層とを有し、前記第1層と前記第2層は抵抗率が一桁以上異なる。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記スケール層は、第1層は、マグネタイトを含む層とされ、前記第1層よりも表面側に付着した第2層は、前記第1層よりも柔らかく、ヘマタイト層を含む。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記取付面を挟んだ前記表面計測用探針及び前記複数の探針の反対側に、ハンドル部が設けられている。
作業者は、取付面を挟んだ各探針の反対側に設けられたハンドル部を持って測定位置の各層に対して各探針を挿入する。このように、測定位置に対して各探針を直交させた方向に移動させる動作だけで計測が可能となり、作業性が向上する。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記取付面の法線に対してオフセットした方向に延在するハンドル部が設けられている。
作業者は、取付面の法線に対してオフセットした方向に延在するハンドル部を持って操作する。これにより、正面からアクセスできない計測位置に対しても各探針を位置させて計測することができる。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記探針の少なくとも1つは所定の管理基準のスケール厚さに相当する長さを備える。
さらに、本発明のスケール厚さ計測装置では、前記表面計測用探針と前記複数の探針の少なくとも1つは、接触圧力検出器を備える。
接触圧力検出器によって各層の硬さの差を得ることができ、各層の境界となる性状の変化部分を推定する情報として、スケール層の各複数層の厚さを算出することができる。電気抵抗値の変化及び/又は抵抗率の変化に加えて、接触圧力の変化を追加することで、スケール層の各複数層の厚さを算出するにあたり、さらに正確な判断ができる。
また、本発明のスケール厚さ計測方法は、内部にボイラ水の流れる伝熱管の内表面に付着した複数層からなるスケール層の厚さを計測するスケール厚さ計測方法であって、少なくとも2本とされた同一の長さを有する表面計測用探針と、前記表面計測用探針より所定の長さを短くされて長さの異なる複数の探針と、前記表面計測用探針及び前記探針の長さと位置を各々規定して支持する台座と、前記台座を支持するとともに前記表面計測用探針と前記探針と接続された計測線を収納する計測線収納箱と、前記計測線から送信されたデータの処理をするコンピュータを備え、前期表面計測用探針を前記伝熱管の内表面に電気的に接触させることで計測位置を決定する。
さらに、本発明のスケール厚さ計測方法では、前記コンピュータは、前記表面計測用探針と前記複数の探針の各間に、所定電流値の定電流を通電させて、前記表面計測用探針と前記複数の探針の各間を順次計測する各電圧測定値から各電気抵抗値及び/又は抵抗率を算出し、前記複数の探針の先端の各位置計測と、これに対応する前記各電気抵抗値及び/又は抵抗率の関係から、前記複層のスケール厚さを算出する。
さらに、本発明のスケール厚さ計測方法では、前記電気抵抗値がゼロに近い場合に、前記表面計測用探針が前記伝熱管の内表面に接触したと判断して、前記コンピュータが前記各電気抵抗値及び/又は前記各抵抗率の算出をする。
さらに、本発明のスケール厚さ計測方法では、前記表面計測用探針の少なくとも1つに加わる接触圧力を計測する接触圧力計測部を備え、前記接触圧力検出器によって計測された接触圧力が閾値を超えた場合、及び/又は前記電気抵抗値がゼロに近い場合に、前記表面計測用探針が前記伝熱管の内表面に接触したと判断して、前記コンピュータが前記各電気抵抗値及び/又は前記各抵抗率の算出と、前記複層のスケール厚さを算出する。
ボイラの伝熱管内面などに付着した及び複数層からなるスケール層の厚さを簡便かつ正確に短時間で計測することができる。
本発明のスケール厚さ計測装置を適用するボイラ発電プラントを示した概略構成図である。 図1の火炉を構成する水冷壁を示した部分拡大斜視図である。 伝熱管を拡大して示した部分縦断面図である。 第1実施形態に係るスケール厚さ計測装置の概略構成を示した斜視図である。 探針ガイドを示した側面図である。 探針の配列状態を示し、(a)は直線状に配列した斜視図、(b)はオフセットさせて配列した斜視図、(c)は千鳥状に配列した斜視図である。 ライフル管とされた伝熱管に対する探針の計測位置を示し、(a)は各凹部を計測する正面図、(b)は各凸部を計測する正面図、(c)は凸部及び凹部を計測する正面図である。 探針を用いた計測法を示した模式図である。 2探針式を示した模式図である。 計測例を示し、探針の挿入深さに対する電気抵抗値と抵抗率を示したグラフである。 伝熱管の分岐管部を示した斜視図である。 第2実施形態に係るスケール厚さ計測装置を示した斜視図である。 探針の配列状態を示し、(a)は直線状でかつ平行に並べた斜視図、(b)は交差するように並べた斜視図、(c)は円形に並べた斜視図である。
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1には、本実施形態に係るスケール厚さ計測装置及びスケール厚さ計測方法を適用するボイラ発電プラント1の概略構成が示されている。
ボイラ発電プラント1は、火炉3及び過熱器(又は過熱器及び再熱器)4を有するボイラ2と、過熱器4から導かれた過熱蒸気によって回転駆動される蒸気タービン6と、蒸気タービン6にて膨張して仕事を終えた蒸気を凝縮液化する復水器7とを備えている。蒸気タービン6には、発電機8が接続されており、蒸気タービン6の回転駆動力を得て発電する。
復水器7と火炉3との間には、火炉3の伝熱管9内に給水となるボイラ水を供給するための給水系統10が設けられている。給水系統10には、復水器7側から順に、復水ポンプ12、給水ヒータ13、給水ポンプ14、給水弁15などが設けられている。給水ヒータ13には、蒸気タービン6から図示しない抽気された蒸気によって給水が加熱されるようになっている。
火炉3に設けられた伝熱管9は、例えば炭素鋼や低クロム合金鋼製やSUS304などのステンレス鋼製とされ、火炉3の水冷壁を構成する炉壁管とされており、一部は火炎Fに曝されるように配置されている。伝熱管9は、図2に示すように、例えばフィン11を介して鉛直方向に延在して並列に複数設けられている。給水系統10から伝熱管9内に供給されるボイラ水は、CWT(複合水処理、又は酸素処理(OT)と称される)運用されており、弱アルカリ性にて所定量の溶存酸素が共存している。
図3に示すように、伝熱管9内には、鉄Feを含んだボイラ水Wが供給され、火炎Fに曝される火炉内側が厚くなるようにスケールScが付着する場合がある。このスケールScは、伝熱管9の内表面に形成されたマグネタイトを主成分とする硬質スケール層で、マグネタイトを含む層(第1層:以下「マグネタイト層」という。)の上に、へマタイトを主成分とした小粒径のポーラス状のパウダースケールで脆い付着層で、ヘマタイトを含む層(第2層:以下「ヘマタイト層」という。)から成るものである。なお、図中の矢印はボイラ水Wの流れ方向を示す。スケール厚さ計測装置20は、このスケールScの厚さを計測する。
図4には、スケール厚さ計測装置20が示されている。
スケール厚さ計測装置20は、少なくとも2本の表面計測用探針22aと、複数の探針22と、各探針22が相互に絶縁状態で支持された台座24と、台座24を支持するとともに各探針22a,22に電気的に接続された計測線26を収納する計測線収納箱28と、計測線収納箱28の背面に取り付けられたハンドル部30と、計測線26から送信されたデータを処理するコンピュータ32とを備えている。ハンドル部30の位置は本実施形態の一例であり、限定されるものではない。
台座24は、絶縁体で構成された細長状の直方体形状を有しており、平面状の取付面24aを有している。取付面24aに対して垂直に、かつ、所定間隔を有して探針22が長手方向に沿って取り付けられている。隣り合う探針22間の距離は、既知とされて管理されており、コンピュータ32の記憶部に格納されている。
探針22は、ステンレス材(SUS304など)、タングステン、タングステンカーバイド、モリブデン、カーボンナノチューブ、オスミウム合金、シリコン等の導電性材料で構成されており、少なくとも先端部分の直径は数μmと細くされている。探針22の長さは、それぞれ異なっており、最も長い探針22aが伝熱管9の内表面(金属表面)に接触する表面計測用探針22aとされる。表面計測用探針22aは同じ長さのものを少なくとも2本を設けることで、伝熱管9の内表面付近に対する台座24と取付面24aの位置が決定される。表面計測用探針22aに対して所定長さ短くされた探針22が順次設けられている。表面計測用探針22aに対する長さの差d1,d2,…は、既知とされて管理されており、コンピュータ32の記憶部に格納されている。表面計測用探針22aに対する長さの差d1,d2,…は、測定対象となる層厚さに応じて、例えば1μm単位で調整されて管理することが好ましい。
順次長さが異なる探針22は探針群として1組で構成されてもよいが、図4に示した例では、順次長さが異なる探針22の探針群と、この探針群の各探針22と長さが同一とされた探針で構成されたもう1組の探針群からなる2組で設けられている。各組のピッチP、すなわち最も短い探針22bから最も長い表面計測用探針22aまでの長手方向(同図において上下方向)の距離は、数mm(例えば1mmから5mm)程度とされる。2組の探針22を採用することによって、一度の計測で同一長さの探針22の計測が2つ得られることができ、計測精度を向上させることができる。
探針22の中で最も長い表面計測用探針22aは、台座24の長手方向における両端にそれぞれ少なくとも1本ずつ設けられている。これにより、両端の表面計測用探針22aが伝熱管9の内表面に接触した際に伝熱管9の内表面位置に対する台座24の取付面24aの位置が決定される。これにより全ての探針22の位置が決まるので、各探針22の姿勢に再現性をもたせることができる。
順次長さが異なる探針22の探針群が1組で構成されるものを用いる場合は、最も長い表面計測用探針22aのみが2本設けられており、最も長い表面計測用探針22aが探針群の両端に配置されるように設けられている。
長さの異なる探針22のうち、長い方の探針22は伝熱管9の内表面側に形成されるマグネタイト層に挿入されて、この探針22の先端位置での電気抵抗値を計測で算出し、短い方の探針22はマグネタイト層上に形成されたヘマタイト層に挿入されて、この探針22の先端位置での電気抵抗値を計測で算出する。したがって、マグネタイト層とヘマタイト層を計測できるように最も長さが長い探針22(表面計測用探針22a)と最も長さが短い探針22bとの長さの差を予め定めておく。
探針22は、先端部分を除いて長いものほど径を太くして強度を確保しておくのが好ましい。長い探針22が到達するマグネタイト層はヘマタイト層よりも硬いからである。
また、図5に示すように、探針22を内部にて支持する探針ガイド23を設けることとしても良い。探針ガイド23は支持にあたり絶縁物であることが好ましく、この直径φD1は例えば約10μm~100μmとされ、探針22の直径φD2は例えば2μm~10μmとされる。探針22の周囲が絶縁物の探針ガイド23で覆われるので、探針22と被計測層(本実施形態ではヘマタイト層及びマグネタイト層)との接触部分が探針22の先端に限定されるので、接触面積による電気抵抗値への影響を抑制することができる。
図6には、探針22の探針群が2組設けられた場合の各探針22の配列が示されている。図6(a)に示すように、共通の直線L1上に1列に各探針22を並べても良い。また、図6(b)に示すように、一方の探針22の探針群を直線L2上に並べ、他方の探針22の探針群を直線L2に対して平行にオフセットした直線L3上に並べても良い。また、図6(c)に示すように、各探針22を千鳥状に並べても良い。千鳥状に各探針22を配置すると、台座24の長手方向サイズを変えることなく探針22間の距離を図6(a)や図6(b)の場合に比べて大きくできる。このため、パウダースケールとされたヘマタイト層のように形状崩壊しやすい層を計測する場合には好適である。
図7には、各探針22の間隔の設定の考え方が示されている。同図に示すように、伝熱管9の内表面には、螺旋状に凹部9aと凸部9bとが形成されており、いわゆるライフル管とされた伝熱管9とされている。このような伝熱管9がライフル管とされている場合、図7(a)に示すように、各探針22を凹部9aに位置させ、かつ隣り合う探針22間の距離x1を、伝熱管9の長手方向に隣り合う凹部9aの間隔とする。これにより、各凹部9aにおける付着層の計測が可能となる。
また、図7(b)に示すように、各探針22を凸部9bに位置させ、かつ隣り合う探針22間の距離x2を、伝熱管9の長手方向に隣り合う凸部9bの間隔としても良い。これにより、各凸部9bにおける付着層の計測が可能となる。
また、図7(c)に示すように、各探針22を凹部9a及び凸部9bに位置させ、かつ隣り合う探針22間の距離x3を、伝熱管9の長手方向に隣り合う凹部9aと凸部9bの間隔としても良い。
ハンドル部30は、図4に示したように、台座24の取付面24aを挟んだ探針22の反対側に設けられている。ハンドル部30は、棒状部材をコの字状に折り曲げられて形成されている。ハンドル部30の形状は、同図に示した形状や取付位置に限定されるものではないが、作業者の手で掴みやすい形状とすることが好ましい。なお、図4における矢印A1は、ハンドル部30を持ってスケール厚さ計測装置20を計測対象の伝熱管9の内表面へと移動させる方向を示している。
コンピュータ32は、表面計測用探針22aと各探針22との間の電位差を順次に通電させた定電電流値により短時間で電気抵抗値の算出及び/又は抵抗率の算出を得て所定の処理を行う。
通電した電流値は、後述するように定電流値としてもよい。また、電気抵抗値に合せて抵抗率を算出しても良い。
抵抗率は、下式により算出される。
(抵抗率)=(電気抵抗値)×(電流通過面積)/(電流通過距離)
電流通過距離は、各探針22と最も長い表面計測用探針22aに対する長さの差(d1,d2,…)から算出される。電流通過面積は探針22の先端のサイズ(例えば図5の直径φD2など)により算出するが、先端形状で多少の変化があるため、抵抗率が既存の層を事前に仮計測して補正しておくと更に好ましい。
コンピュータ32には、マルチメータの機能が組み込まれており、複数の各探針22に対応するチャンネル毎に計測した電位差と算出した電気抵抗値及び/又は抵抗率を保存する。また、コンピュータ32の記憶部には、各探針22の長さ、隣り合う探針22間の距離、探針22の探針群あたりのピッチP等が格納されている。コンピュータ32は、これらのデータを用いて、伝熱管9の内表面に付着したスケールScを付着層の厚み方向でマグネタイト層かヘマタイト層かを区別し、かつ各層の厚さを演算する。
コンピュータ32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
図8には、複数の長さの異なる探針22のうち、1本を代表として、計測例が示されている。同図に示されているように、伝熱管9の内表面上にマグネタイト層34とヘマタイト層35が形成されている場合に、最も長い表面計測用探針22aが伝熱管9の内表面に接触させられ、他方の探針22(長さの異なる探針22)を各探針22長さに応じて、マグネタイト層34又はヘマタイト層35内に先端を位置させる。最も長い表面計測用探針22aの少なくとも2本が伝熱管9の内表面に接触すると、一方の表面計測用探針22aと他方の表面計測用探針22aの間の電気抵抗がほぼ0となることで確認ができる。伝熱管9の内表面とほぼ同電位となる一方の表面計測用探針22aと探針22間の電気抵抗値及び/又は抵抗率を計測で算出することで、探針22が挿入されている層の種類が電気抵抗値及び/又は抵抗率から判定される。
本実施形態では、複数の各探針22の伝熱管9の内表面から先端位置までが異なるので、複数の各探針22の先端位置における伝熱管9の内表面との間の電気抵抗値及び/又は抵抗率を得ることができる。これにより、各探針22の先端位置での層の種類が判断できる。
図9には、2探針式による計測例が示されている。同図に示すように、表面計測用探針22aと探針22間には定電流源37と電圧測定回路38とが接続される。定電流源37は例えば1mA~100mAの電流が印加される様に事前に電圧を設定した定電圧源であっても良いが、下記に示すように定電流源とするとさらに好ましい。
定電流源37からは、例えば1mA~100mAの定電流が印加される。定電流値は計測対象の層の抵抗率や層厚さから、一方の表面計測用探針22aから伝熱管9の内表面と計測対象の層を経由して各探針22間の電圧差が例えば0.1mVから1mV以上となるように、また安全性を考慮して作業者に感電を発生させない低電圧印加となるよう選定される。また、定電流を印加して計測することで、探針22aと探針22とこれらの間の導電線などの計測系の内部抵抗の値や、探針22と計測対象の層との接触抵抗による電圧降下が、計測する電圧差よりも十分に小さくなるように定電流値を選定することができるとともに、この電圧降下の値が計測対象の層によらず一定値以内になるので、計測値の信頼性が向上する。また、本実施形態のように抵抗率の異なる複数の層の計測に当たって、例えば、抵抗率の小さい層を計測する際の電圧差が例えば0.1mVから1mV以上であり、抵抗率の大きな層を計測する際の電圧差が例えば1Vから10V以下となるように電圧計測系の精度から適切な電流値を設定することができるので更に好ましい。
次に、上述したスケール厚さ計測装置20の使用方法について説明する。図2に示したように、先ず、計測対象となる伝熱管9の一部に切欠Cを形成する。このとき、切欠Cの位置は、火炉3内側とは反対側の外側とする。これにより、火炉3内での作業を回避することができるとともに、スケールSc層が厚く形成され易い火炉3内側の計測が容易となる。切欠Cの大きさは、スケール厚さ計測装置20が伝熱管9の内部へ挿入できる大きさであれば良い。したがって、従来のように数m単位の抜管は不要となる。
作業者は、図4に示すスケール厚さ計測装置20のハンドル部30を持ち、スケール厚さ計測装置20の長手方向を上下方向に向けた状態で、水平方向(図2で矢印A2で示した方向)にスケール厚さ計測装置20を計測位置Mに向けて切欠Cから伝熱管9内に挿入する。このように、スケール厚さ計測装置20は、水平探針式測定法として用いられる。
そして、各探針22の先端が付着物の層に突き刺さり、少なくとも2本あり同一長さの最も長い表面計測用探針22aの先端が伝熱管9の内表面に接触する。そうすると、一方の表面計測用探針22aの先端から定電流が導入され伝熱管9の内表面を経由して他方の表面計測用探針22aの先端における電気抵抗値がほぼゼロとなり、また電気抵抗値から算出された抵抗率が例えば数10~数100nΩm(炭素鋼や低クロム合金鋼の場合)程度となり、ゼロに近くなる。このとき、2本設けた最も長い表面計測用探針22aが両方とも伝熱管9の内表面に接触していることになり、各探針22の先端が伝熱管9の内表面から所定の位置に配置される。これにより、作業者には伝熱管9の内表面の適正な位置に表面計測用探針22aを接触させていることがブザー音や点灯などで通知されて、スケール厚さ計測装置20の挿入が停止されるようにしてもよい。
この位置で各探針22における電気抵抗値及び/又は抵抗率が短時間の計測で算出される。一方の表面計測用探針22aと他方の表面計測用探針22aとの間の電気抵抗値がほぼゼロとなったタイミングとほぼ同時にコンピュータ32により、複数の各探針22に対応して計測した電位差と電流値を取込み、電気抵抗値及び/又は抵抗率を算出して保存する。このため、作業者はスケール厚さ計測装置20を伝熱管9内の計測位置Mに短時間だけ接触させることで、適正な位置での計測タイミングをコンピュータ32が判断して計測を行ってスケール厚さを算出するので、ハンドル部30を持った手作業で十分に計測作業を行うことができる。
ここで、計測する被計測層であるヘマタイト層35及びマグネタイト層34の、各探針22の先端と伝熱管9の内表面との間の電圧値や電流値について、ヘマタイト層35及びマグネタイト層34の中に水分が侵入していると、算出される電気抵抗値が変化する可能性がある。計測にあたり、伝熱管9内部の被計測層を乾燥させることが望ましいが、計測までの待機時間が必要になったり、乾燥用の送風機が追加で必要になる。しかしながら、本実施形態では、不十分な乾燥状態でも、ごく短時間で各探針22の先端と伝熱管9の内表面との間の電圧値や電流値を計測して、電気抵抗値や抵抗率の相対比較を行うので、被計測層の乾燥状態の影響を受けずに、正確に各層の厚さを計測することができる。
図10には、上述のように実施した計測の結果が示されている。同図において横軸は探針の挿入深さを示し、図4の表面計測用探針22aに対する長さの差d1,d2,…に対応して算出され、縦軸は計測により得られた電気抵抗値を示すものと、抵抗率を示すものがあり、本図では縦軸を対数スケールで示している。同図に示すように、探針22の挿入深さが最も深い第1深さt1では、最も長い表面計測用探針22aが例えば0.1Ω程度以下のほぼゼロの電気抵抗値(電気抵抗率:ρ1:10~1000nΩm(炭素鋼や低クロム合金鋼の場合)を示す。また、表面計測用探針22aの先端が位置する深さよりも僅かに深さが浅くなると、急激に第1電気抵抗値R1まで増加する。これは、マグネタイト層34の電気抵抗値(抵抗率:ρ2:0.01mΩm~0.1mΩm)を計測しているものと考えられる。
探針22の先端の第1深さt1から深さが順次浅くなっていくと、各探針22が示す電気抵抗値が徐々に大きくなり、第2深さt2で第2電気抵抗値R2を示す。第1電気抵抗値R1から第2電気抵抗値R2まで漸次増加した電気抵抗値は、マグネタイト層34の厚さに起因する電気抵抗の増加である。したがって、深さt1と深さt2との差分がマグネタイト層34の厚さとなる。このときマグネタイト層34の層厚により各探針22の先端と伝熱管9の内表面の相対位置が異なることで、電気抵抗値は絶対値が変わるが、抵抗率ρ2はオーダが大きく変わらない安定した値を得ることになる。
探針22の先端の第2深さt2から僅かに深さが浅くなると、急激に電気抵抗値が第3電気抵抗値R3まで増加する。これは、ヘマタイト層35の電気抵抗値(抵抗率:ρ3:1kΩm~100kΩm)を計測しているものと考えられる。したがって、第2深さt2は、マグネタイト層34とヘマタイト層35との界面と考えられる。
ヘマタイト層35とマグネタイト層34は抵抗率が一桁以上異なるので、ヘマタイト層35とマグネタイト層34との界面の位置で電気抵抗値の変化も大きくなり、また抵抗率は一桁以上の急激な変化を判断することになり、界面の位置を判断し易い。
探針22の先端の第2深さt2から深さが順次浅くなっていくと、各探針22が示す電気抵抗値が徐々に大きくなり、第3深さt3で第4電気抵抗値R4を示す。第3電気抵抗値R3から第4電気抵抗値R4まで漸次増加した電気抵抗値は、ヘマタイト層35の厚さに起因する電気抵抗の増加である。したがって、深さt2と深さt3との差分がヘマタイト層35の厚さとなる。このときヘマタイト層35の層厚により各探針22の先端と伝熱管9の内表面の相対位置が異なることで、電気抵抗値は絶対値が変わるが、抵抗率ρ3はオーダが大きく変わらない安定した値を得ることになる。
探針22の先端の第3深さt3から僅かに深さが浅くなると、急激に電気抵抗値及び抵抗率(ρ4)が計測レンジを超えるまで増加する。この第3深さt3は、ヘマタイト層35とヘマタイト層35の外側(空気)との界面と考えられる。
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
少なくとも2本あり同一長さの最も長い表面計測用探針22aがヘマタイト層35及びマグネタイト層34を貫通して伝熱管9の内表面に到達したときの表面電気抵抗値を計測し、さらに、各長さが異なる複数の探針22がヘマタイト層35を貫通してマグネタイト層34に各探針22の先端が位置したときの電気抵抗値及び/又は抵抗率を計測で算出し、またヘマタイト層35に各探針22の先端が位置したときの電気抵抗値及び/又は抵抗率を計測で算出することで、電気抵抗値の急な変化及び/又は抵抗率の急な変化から伝熱管9の内表面とマグネタイト層34とヘマタイト層35とを区別することができる。そして、マグネタイト層34における電気抵抗値及び/又は抵抗率を計測で算出して急な変化をしたときの探針22の先端と伝熱管9の内表面との距離と、ヘマタイト層35の電気抵抗値及び/又は抵抗率を計測で算出して急な変化をしたときの探針22の先端と伝熱管9の内表面との距離とから、マグネタイト層34及びヘマタイト層35の厚さを得ることができる。このように、表面計測用探針22aと各探針22を突き刺して電気抵抗値及び/又は抵抗率と、及び距離を得ることとしたので、マグネタイト層34よりも柔らかいヘマタイト層35が形状崩壊を抑制して、正確に各層の厚さを計測することができる。
表面計測用探針22aと、これよりも短く長さの異なる複数の探針22とを備えることによって、表面計測用探針22aと各探針22との間における電気抵抗値及び/又は抵抗率とを一度に計測することができる。また、それぞれの探針22の長さが既知とされているので、伝熱管9の内表面からの距離も電気抵抗値及び/又は抵抗率の計測で算出することと同時に得ることができる。
長さが異なる複数の探針22とすることで、各探針22の先端と伝熱管9の内表面との距離が異なるものの電気抵抗値及び/又は抵抗率を計測で算出するので、マグネタイト層34及びヘマタイト層35における層の厚さ方向の各位置での電気抵抗値及び/又は抵抗率を得ることができる。
最も長さが長い表面計測用探針22aを同一長さとされた少なくとも2本の探針とすることで、伝熱管9の内表面に少なくとも2本の表面計測用探針22aが伝熱管9の内表面に対して例えば略垂直など適正な姿勢に挿入されて良好に接触した状態を確認することができる。この状態を得た際には、他の全ての探針22の伝熱管9の内表面からの位置が決まり、かつ各探針22が伝熱管9の内表面に対して略垂直など適正な姿勢に挿入されたことが確認できるので、伝熱管9の内表面に対する各探針22の姿勢を同一に保つことができ、再現性があり信頼性の高い電気抵抗値及び/又は抵抗率の計測で算出が可能となる。
各探針22が平面状の取付面24aに対して垂直に取り付けられているので、各探針22の取付面24aからの長さを容易に管理することができる。これにより、伝熱管9の内表面からの各探針22の先端までの距離を精度良く得ることができる。
作業者は、取付面24aを挟んだ各探針22の反対側に設けられたハンドル部30を持って伝熱管9の内表面の計測位置Mの各層に対して各探針22を挿入して、伝熱管9の内表面の適正な位置に最も長さが長い表面計測用探針22aを接触させる。このとき各探針22との間の電気抵抗値及び/又は抵抗率を順次に短時間で算出する。このように、計測位置Mに対して各探針を直交させた水平方向に移動させて表面計測用探針22aを短時間だけ接触させる動作だけで計測が可能となり、作業性が向上する。
また、作業者は、伝熱管9の内表面に対する計測位置を変えて多くの計測位置での各位置の電気抵抗値及び/又は抵抗率の算出を行うことができ、電気抵抗値の変化量及び/又は抵抗率の変化量で伝熱管9の内表面や、マグネタイト層34、ヘマタイト層35の区別をして、短時間で各計測位置での各層の厚さを計測することができる。これにより各探針22の先端の位置により、マグネタイト層34とヘマタイト層35の厚さの分布状態を計測したり、多数の各層の厚さデータを平均化することで、信頼性の高い判断をすることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
上述した第1実施形態では、探針22の長手方向に向けてスケール厚さ計測装置20を水平方向に移動させる水平探針式測定法について説明したが、本実施形態では水平探針式では計測が困難な箇所に用いられる。なお、本実施形態は、探針を突き刺して電気抵抗値を計測する点で第1実施形態と同様である。したがって、以下の実施形態では、第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付しその説明を省略する。
図11に示すように、伝熱管9には、U字形状の曲がり部に対して直管が接続されている分岐管部(バイファケート部)が存在する。この分岐管部では、U字形状の曲がり部でかつ直管の延長方向が交差する位置にスケールScの生成が見られる場合がある。したがって、このような下側に向いた位置を計測位置M’とすると、第1実施形態のような水平探針式では計測が困難となる。この場合には、直管の側面に長手方向に沿って切欠C’を形成し、この切欠C’から以下に説明するスケール厚さ計測装置50を挿入して計測を行う。
図12に示すように、スケール厚さ計測装置50は、複数の探針22が取り付けられた平面状の取付面24aを有する台座24に対してクランク形状に屈曲した計測線収納箱52を備えている。
計測線収納箱52は、台座24に接続され台座24の長手方向(図12において上下方向)に延在した後に略直角方向(水平方向)にL字形状に曲がる第1接続部52aと、第1接続部52aに接続され台座24の長手方向(図12において上下方向)と平行にL字状に曲がる第2接続部52bと、第2接続部52bに接続され台座24の長手方向と平行に延在するハンドル部52cとを備えている。したがって、計測線収納箱52のハンドル部52cは、台座24の長手方向すなわち取付面24aの法線方向に対してオフセットした方向に延在している。
作業者は、ハンドル部52cを持って図11に示した切欠C’から矢印A3で示すように探針22を挿入し、図12の矢印A4に示す方向に探針22を上方へ移動させることによって、計測位置M’へとアクセスすることができる。
図13には、取付面24aに取り付けた探針22の配列が示されている。図13(a)に示すように、取付面24aの両側部に沿って直線状に各探針22を配列する。また、図13(b)に示すように、×印状に交差するように各探針22を配列しても良い。また、図13(c)に示すように、円形状に各探針22を配列しても良い。
上述のように、本実施形態よれば、作業者は、取付面24aの法線に対してオフセットした方向に延在するハンドル部52cを持って操作する。これにより、正面からアクセスできない計測位置M’に対しても各探針22を位置させて計測することができる。
スケールScの付着層厚さが管理基準値に到達しているか否かを判定する目的で、少なくとも2本あり同じ長さの最も長さが長い表面計測用探針22aとスケールの管理基準に相当する長さの探針22’を備えたスケール厚さ計測装置を使用することができる。本実施形態によれば、ボイラ発電プラント1の停止期間が短い期間でしかない場合であっても伝熱管9の火炎Fに曝される火炉内側のスケール厚さを短時間に複数個所を計測することができる。例えば、熱電対温度計による温度の異常が認められた際に、ボイラ2を短期間停止させて該当部分のスケールScの付着層厚さを計測することで、ボイラ発電プラント1を長期間停止させてメンテナンスを行うか否かを、複数の探針22で計測された電気抵抗値について特別な解析を行うことなく決定することができる。
なお、スケール厚さ計測装置20,50の最も長さが長い表面計測用探針22aには、表面計測用探針22aを絶縁支持する部分や、表面計測用探針22aと探針ガイド23の根元部分との間に接触圧力検出器(図示なし)が設けられていても良い。なお、接触圧力検出器は表面計測用探針22aの支持部分が移動することなく接触圧力を計測できることが好ましい。ハンドル部30,52cを操作することで、探針22a,22を伝熱管9の内表面に移動させて計測位置M,M’へとアクセスして、表面計測用探針22aの先端が伝熱管9の内表面に接触する。このとき、一方の表面計測用探針22aの先端と他方の表面計測用探針22aの先端の間における電気抵抗値がゼロに近くなることで、接触を確認できるが、更に、表面計測用探針22aに加わる接触圧力検出器(図示なし)により接触圧力値が閾値となる所定値を超えると、伝熱管9の内表面と表面計測用探針22aとの接触が良好で安定して実施されているかを判断して確認することができる。複数の各探針22での電気抵抗値及び/又は抵抗率の計測で算出するにあたり、一層に再現性があり信頼性の高い電気抵抗値の計測が可能となる。接触圧力検出器(図示なし)としては、歪ゲージや圧電素子などを用いることができる。
なお、上述した各実施形態では、ボイラ2を用いた発電プラントについて説明したが、ガスタービン複合発電(GTCC:Gas Turbine Combined Cycle)の排熱回収ボイラに対してCWT(複合水処理、又は酸素処理(OT)と称される)が運用されている場合にも適用することができる。
また、上述した各実施形態では、マグネタイト層34とヘマタイト層35とが付着したスケールScについて説明したが、付着層はこれに限定されるものではなく、例えば、マグネタイト層の表面側が酸化してヘマタイト化しているスケールに対しても適用することができる。また付着層は2層でなくてもよく、3層以上であっても同様に対応して適用が可能である。
また、各実施形態の各探針22に対して探針22と探針ガイド23の根元部分での間に圧電素子や歪ゲージ等の接触圧力検出器を計測するセンサを設けて、それぞれの探針22に加わる圧力を計測するようにしても良い。これにより、各層の硬さの差の情報を得ることができ、各層の境界となる性状の変化部分を推定する情報として、電気抵抗値や抵抗率の変化に加えて追加することで、さらに正確な判断ができる。
1 ボイラ発電プラント
2 ボイラ
3 火炉
4 過熱器
6 蒸気タービン
7 復水器
8 発電機
9 伝熱管
10 給水系統
12 復水ポンプ
13 給水ヒータ
14 給水ポンプ
15 給水弁
20,50 スケール厚さ計測装置
22 探針
22a 表面計測用探針
23 探針ガイド
24 台座
24a 取付面
26 計測線
28 計測線収納箱
30 ハンドル部
32 コンピュータ
34 マグネタイト層(第1層)
35 ヘマタイト層(第2層)
37 定電流源
38 電圧測定回路
40 定電流電源
41 電流計
42 電位差測定計器
52 計測線収納箱
52a 第1接続部
52b 第2接続部
52c ハンドル部
C,C’ 切欠
F 火炎
Fe 鉄
M,M’ 計測位置
Sc スケール
W ボイラ水

Claims (12)

  1. ボイラに設置され、内部にボイラ水の流れる伝熱管の内表面に付着した複数層からなるスケール層の厚さを計測するスケール厚さ計測装置であって、
    少なくとも2本とされた同一の長さを有する表面計測用探針と、
    前記表面計測用探針よりも所定の長さを短くされて長さの異なる複数の探針と、
    前記表面計測用探針及び前記探針の長さと位置を各々規定して支持する台座と、
    前記台座を支持するとともに、前記表面計測用探針に接続された計測線及び前記探針に接続された計測線を収納する計測線収納箱と、
    前記計測線から送信されたデータを処理するコンピュータと、
    前記表面計測用探針の一方から前記伝熱管の内表面を経由して前記複数の探針との各間に順次に所定電流値の定電流を通電させる定電流源と、
    前記表面計測用探針の他方と前記複数の探針の各間に対する電圧計測回路と、
    を備え、
    前記スケール層は、前記伝熱管の内表面側から前記伝熱管の内面側から表面側に向かって第1層と第2層とを有し、
    前記第1層は、マグネタイト層を含み、
    前記第1層よりも表面側に付着した前記第2層は、前記第1層よりも柔らかく、ヘマタイト層を含み、
    前記探針の直径は2μm~10μmとされ、
    前記電圧計測回路は、前記表面計測用探針と各前記複数の探針との間の電圧測定値を前記コンピュータへ送信して、前記複数の探針の各々に対する電気抵抗値及び/又は抵抗率を得るスケール厚さ計測装置。
  2. 前記表面計測用探針及び前記複数の探針は、それぞれ、前記台座の平面状の取付面に対して垂直に設けられ、
    前記複数の探針の各々は、探針ガイドで前記台座に絶縁支持されている請求項1に記載のスケール厚さ計測装置。
  3. 前記コンピュータで前記計測線から送信されたデータから得られる前記複数の探針の各々に対する電気抵抗値及び/又は抵抗率と、前記表面計測用探針の長さ及び前記複数の探針の長さから得られる前記複数の探針の各々の位置との関係から、
    前記スケール層の各複数層の厚さを前記コンピュータで算出する請求項1又は2に記載のスケール厚さ計測装置。
  4. 前記複数の探針で1組の探針群が構成され、前記探針群と長さが同一とされた複数の探針で構成されたもう1組の探針群を備える請求項1から3のいずれかに記載のスケール厚さ計測装置。
  5. 記第1層と前記第2層は、抵抗率が一桁以上異なる請求項1から4のいずれかに記載のスケール厚さ計測装置。
  6. 前記取付面を挟んだ前記表面計測用探針及び前記複数の探針の反対側に、ハンドル部が設けられている請求項に記載のスケール厚さ計測装置。
  7. 前記取付面の法線に対してオフセットした方向に延在するハンドル部が設けられている請求項に記載のスケール厚さ計測装置。
  8. 前記探針の少なくとも1つは管路基準のスケール厚さに相当する長さを備える請求項1から4のいずれかに記載のスケール厚さ計測装置。
  9. 前記表面計測用探針と前記複数の探針の少なくとも1つは、接触圧力検出器を備える
    請求項1から4のいずれかに記載のスケール厚さ計測装置。
  10. 部にボイラ水の流れる伝熱管の内表面に付着した複数層からなるスケール層の厚さを計測するスケール厚さ計測方法であって、
    少なくとも2本とされた同一の長さを有する表面計測用探針と、
    前記表面計測用探針より所定の長さを短くされて長さの異なる複数の探針と、
    前記表面計測用探針及び前記探針の長さと位置を各々規定して支持する台座と、
    前記台座を支持するとともに前記表面計測用探針と前記探針と接続された計測線を収納する計測線収納箱と、
    前記計測線から送信されたデータの処理をするコンピュータを備え、
    前期表面計測用探針を前記伝熱管の内表面に電気的に接触させることで計測位置を決定するスケール厚さ計測方法であって、
    前記スケール層は、前記伝熱管の内表面側から前記伝熱管の内面側から表面側に向かって第1層と第2層とを有し、
    前記第1層は、マグネタイト層を含み、
    前記第1層よりも表面側に付着した前記第2層は、前記第1層よりも柔らかく、ヘマタイト層を含み、
    前記探針の直径は2μm~10μmとされ、
    前記コンピュータは、
    前記表面計測用探針の一方から前記伝熱管の内表面を経由して前記複数の探針の各間に、順次に所定電流値の定電流を通電させて、
    前記表面計測用探針の他方と前記複数の探針との各間に対する各電圧測定値から各電気抵抗値及び/又は各抵抗率を算出し、
    前記複数の探針の先端の各位置計測と、これに対応する前記各電池抵抗値及び/又は前記各抵抗率の関係から、前記複数層のスケール厚さを算出するスケール厚さ計測方法。
  11. 前記電気抵抗値がゼロに近い場合に、前記表面計測用探針が前記伝熱管の内表面に接触したと判断して、
    前記コンピュータが前記各電気抵抗値及び/又は前記各抵抗率の算出を行う請求項1に記載のスケール厚さ計測方法。
  12. 前記表面計測用探針の少なくとも1つに加わる接触圧力を計測する接触圧力計測部を備え、
    前記接触圧力計測部によって計測された接触圧力が閾値を超えた場合、及び/又は前記電気抵抗値がゼロに近い場合に、
    前記表面計測用探針が前記伝熱管の内表面に接触したと判断して、
    前記コンピュータが前記各電気抵抗値及び/又は前記各抵抗率の算出と、前記複層のスケール厚さを算出する請求項1又は1に記載のスケール厚さ計測方法。
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