以下、本発明のクレーンの操作支援システムおよび操作支援方法の実施形態について説明する。図中では、クレーン1のトロリ5の走行する方向をX方向、水平方向においてX方向に直交する方向をY方向、鉛直方向(上下方向)をZ方向としている。
図1に例示する実施形態のクレーン1の操作支援システム20は、オペレータによるクレーン1の操作を支援するシステムである。この操作支援システム20は主に、トロリ5から吊り下げられた吊体30を、吊体30の下方に位置する着床ターゲット面31に着床させる着床操作(以下、着床操作という)を支援する。なお、操作支援システム20は着床操作以外のクレーン1の操作においても利用することができる。
前述した吊体30は、クレーン1が備えている吊具7によって置荷を掴みに行く場合には吊具7単体であり、この場合の着床ターゲット面31は荷役対象となる置荷の上面である。吊具7が掴んでいる吊荷を置きに行く場合の吊体30は吊具7および吊荷であり、この場合の着床ターゲット面31は、陸地36や船舶35に配置されている置荷の上面や、陸地36、船舶35の床面、運搬機34の荷台の上面等である。
この実施形態では、船舶35に対してコンテナ32の荷役を行うクレーン1に搭載した場合の操作支援システム20を例示する。以下では、クレーン1が備えているコンテナ用の吊具7(スプレッダともいう)を運搬機34の荷台に載置されている隣り合った2つのコンテナ32の上面に着床させる着床操作を行う場合を例示する。即ち、この実施形態における吊体30は吊具7であり、着床ターゲット面31は2つのコンテナ32の上面である。
図1に例示するように、クレーン1は、脚構造体2と、脚構造体2の上部に支持されたX方向に延在する桁部4と、桁部4に支持されてX方向に移動するトロリ5と、トロリ5からワイヤ6により吊り下げられた吊具7とを備えている。脚構造体2は、Z方向に延在する複数の脚2aと、X方向に隣り合う脚2aどうしを連結する水平桁2bと、Y方向に隣り合う脚2aどうしを連結する水平梁2c(シルビームともいう)とを有して構成されている。それぞれの脚2aの下端には、陸地に敷設されたY方向に延在するレールに沿って走行可能な走行装置3が設置されている。
脚構造体2の上部には機械室8が設けられていて、その機械室8にトロリ5をX方向に移動させる移動装置9と、ワイヤ6を巻き取るあるいは繰り出すことで吊具7をZ方向に昇降させる昇降装置10が設置されている。機械室8には、さらに、走行装置3、移動装置9、および昇降装置10の制御を行うクレーン用制御装置11が設置されている。移動装置9、昇降装置10、およびクレーン用制御装置11の設置位置は機械室8に限らず、例えば、トロリ5などの他の位置に配置することもできる。
この実施形態のクレーン1の操作室12は、クレーン1と離間した位置に配置されている。操作室12には、クレーン用制御装置11に無線アンテナを介して通信可能に接続された操作装置13が設置されている。クレーン1のオペレータは操作室12において、操作装置13を操作することにより、クレーン用制御装置11を介してクレーン1(走行装置3、移動装置9、および昇降装置10)の遠隔操作を行なう。なお、操作室12がクレーン1の構造体に付設されている構成にすることもできる。
図2に例示するように、操作支援システム20は、撮影装置21、処理装置22、表示装置23、および入力手段24を有して構成されている。処理装置22は機能要素として、設定部22a、位置情報取得部22b、生成部22c、および表示制御部22dを有している。処理装置22、表示装置23、および入力手段24は、操作室12に配置されている。処理装置22を構成する各機能要素は操作室12以外の場所に配置することもできる。撮影装置21、表示装置23、および入力手段24はそれぞれ処理装置22に有線または無線によって通信可能に接続されている。
撮影装置21は、吊体30を撮影可能な位置に設置され、吊体30を含む撮影画像P1を逐次撮影する。撮影装置21としては、デジタルビデオカメラなどが例示できる。図1に例示するように、この実施形態の撮影装置21は、側面視(Y方向から見た視点)で、トロリ5のX方向の陸側端部に設置されている。撮影装置21の撮影方向はX方向陸側からX方向海側に斜め下向きに設定されている。
トロリ5に設置した撮影装置21により吊体30を斜め方向から俯瞰で撮影することで、図3に例示するように、トロリ5に付設された運転室でクレーン操作を行っていた従来のオペレータの視界を再現した撮影画像P1を撮影している。なお、撮影装置21は吊体30を含む撮影画像P1を撮影できる条件であれば、設置位置や撮影方向は特に限定されない。撮影装置21は例えば、脚構造体2や桁部4などに配置することもできるし、クレーン1から離間した位置に配置することもできる。撮影装置21で撮影された撮影画像P1は処理装置22に逐次入力される構成になっている。
処理装置22は、撮影画像P1に写り込む被写体の撮影画像P1における二次元座標を取得する。そして、処理装置22は、その取得した被写体の二次元座標に基づいて、図5に例示するように、撮影画像P1に写り込む被写体のうち、吊体30、吊体30を着床させる着床ターゲット面31、または吊体30の荷役経路上に存在する障害物33の少なくともいずれかを含む予め選定された被写体の視認性を、選定されていないその他の被写体(以下、その他の被写体という)の視認性に比して相対的に高くした処理画像P3を生成する。そして、処理装置22は、その生成した処理画像P3を表示装置23に表示させる構成になっている。
撮影画像P1に写り込む被写体の中で、オペレータによるクレーン1の操作に関与する主な被写体は、吊体30と、吊体30を着床させる目標である着床ターゲット面31と、吊体30の荷役経路上にある障害物33である。それ故、この操作支援システム20では、処理装置22によって撮影画像P1に対して画像処理を施して、オペレータが認識する必要性の高い吊体30、着床ターゲット面31、障害物33の少なくともいずれかを撮影画像P1よりも視覚的により識別し易くした処理画像P3を生成する。
前述した障害物33は、具体的には例えば、吊体30の移動範囲内に位置して吊体30に接触、衝突する可能性のある、水平梁2cや、脚構造体2に設置されている付帯設備、船舶35の構造物や設備、船舶35や陸地36に載置されている着床ターゲット面31以外の置荷や設備、吊体30の荷役経路上に存在する人などである。
予め選定された被写体の視認性を、その他の被写体の視認性に比して相対的に高くする画像処理としては、撮影画像P1に対して選定された被写体の外縁部(エッジ)をより強調する加工を施す画像処理(所謂、シャープネス)や、選定された被写体のそれぞれの位置または形状を強調する付加標示50を撮影画像P1の上に重畳させる画像処理や、撮影画像P1に比してその他の被写体の視認性を低下させる画像処理などが例示できる。
処理装置22は、各種情報処理を行うCPU、その各種情報処理を行うために用いられるプログラムや情報処理結果を読み書き可能なうち内部記憶装置、および各種インターフェースなどから構成されるハードウェアである。処理装置22を構成する設定部22a、位置情報取得部22b、生成部22c、および表示制御部22dは、プログラムとして内部記憶装置に記憶されていて、適時、CPUにより実行される。処理装置22を構成する各機能要素は、プログラムの他にそれぞれが独立して機能するPLCとしてもよい。
設定部22aは、視認性を相対的に高くする被写体を選定する。この実施形態の設定部22aは、さらに、生成部22cで実行する撮影画像P1に対する画像処理の選定と、選定した画像処理における表示パターンの選定を行う構成になっている。設定部22aには、視認性を相対的に高くする被写体の候補として、吊体30、着床ターゲット面31、障害物33のうちの少なくともいずれかを含む選択肢が予め記憶されている。この実施形態の設定部22aには、さらに、選択肢に含まれている被写体の視認性を相対的に高くする画像処理の種類の選択肢と、それぞれの画像処理における表示パターンの選択肢が記憶されている。
具体的には、設定部22aには、視認性を相対的に高くする被写体の候補として、例えば、吊体30の外縁部30aや、吊体30の外面部30b、吊体30に設けられている係合金具30c、着床ターゲット面31の外縁部31a、着床ターゲット面31の外面部31b、着床ターゲット面31に設けられている被係合金具31c、障害物33の外縁部33a、障害物33の外面部33bなどを含んだ選択肢が記憶されている。設定部22aに視認性を相対的に高くする被写体の候補として、前述した候補以外の被写体が含まれている構成にすることもできる。
前述した吊体30の外縁部30aは、吊具7や吊荷(コンテナ32)の輪郭を示す部分(エッジなど)である。吊体30の外面部30bは、吊具7や吊荷の外側に露出している上面部分や側面部分である。吊体30に設けられている係合金具30cは、吊具7でコンテナ32を掴む際にコンテナ32の上部の四隅に設けられたそれぞれの被係合金具31cに係合させる、吊具7の下部に突設された金具(所謂、ツイストロックピン)である。この実施形態では、吊具7の四隅の4ヶ所と吊具7の中央の4ヶ所の計8ヶ所にそれぞれ係合金具30cが設けられているが、吊具7の四隅の4ヶ所だけに係合金具30cが設けられている場合もある。
着床ターゲット面31の外縁部31aは、陸地36や船舶35に配置されている荷役対象となる置荷(コンテナ32)の上面や、陸地36、船舶35の床面、運搬機34の荷台の上面などの、吊体30を着床させる目標となる面の輪郭を示す部分である。着床ターゲット面31の外面部31bは、前述した吊体30を着床させる目標となる面の面部分である。着床ターゲット面31の被係合金具31cは、荷役対象となるコンテナ32の上部の四隅に設けられた係合金具30cを係合させる金具(隅金具ともいう)である。
障害物33の外縁部33aは、吊体30が接触、衝突する可能性のある障害物33の輪郭を示す部分(エッジなど)である。障害物33の外面部33bは、障害物33の吊体30が接触、衝突する可能性のある面部分である。
設定部22aには、選定された被写体の視認性を相対的に高くする画像処理の候補として、例えば、撮影画像P1に対して選定された被写体の外縁部(エッジ)をより強調する加工を施す画像処理や、選定された被写体のそれぞれの位置または形状を強調する付加標示50を撮影画像P1の上に重畳させる画像処理や、撮影画像P1に比して選定されていないその他の被写体の視認性を低下させる画像処理などを含む画像処理の種類の選択肢が記憶されている。
前述した付加標示50を撮影画像P1の上に重畳させる画像処理としては、例えば、選定された被写体の外縁部30a、31a、33aの上に強調線51(イメージ線)を重ねて表示する画像処理や、選定された被写体の外面部30b、31b、33bや係合金具30c、被係合金具31cなどの上に着色部52を重ねて表示する画像処理や、選定された被写体の位置を示す目印53を選定された被写体の上や被写体の近傍に表示する画像処理などの選択肢が記憶されている。
その他の被写体の視認性を低下させる画像処理としては、例えば、その他の被写体の外縁部をぼかす画像処理や、その他の被写体が写っている領域をぼかす画像処理、その他の被写体が写っている領域の透過度を高める画像処理、その他の被写体が写っている領域を覆い隠す画像処理(マスキング)などの選択肢が記憶されている。
また、設定部22aには、画像処理における表示パターンを設定する項目として、例えば、被写体の外縁部(エッジ)を強調する度合いや、付加標示50の線種や配色や形状、その他の被写体の視認性を低下させる度合い(解像度や透過率)などを設定する選択肢が記憶されている。
設定部22aに記憶されている選択肢に従って、オペレータが入力手段24を用いて設定部22aにデータを入力することで、視認性を相対的に高くする被写体の選定と、生成部22cで実行する画像処理の選定と、画像処理の表示パターンの選定とを行える構成になっている。
この実施形態では、設定部22aにおいて、視認性を相対的に高くする被写体として、吊体30の外縁部30aおよび係合金具30c、着床ターゲット面31の外縁部31aおよび被係合金具31c、障害物33の外縁部33aおよび外面部33bが選定された場合を例示する。また、生成部22cで実行する画像処理として、付加標示50を撮影画像P1の上に重畳させる画像処理が選定され、付加標示50として、強調線51、着色部52、および目印53が選定された場合を例示する。以下では、設定部22aにおいて選定された、視認性を相対的に高くする被写体のデータ、生成部22cで実行する画像処理のデータ、および画像処理の表示パターンのデータをそれぞれ、被写体に関する選定データ、画像処理に関する選定データ、表示パターンに関する選定データとする。
設定部22aにおいて選定された被写体に関する選定データは、位置情報取得部22bと生成部22cにそれぞれ入力され、画像処理に関する選定データおよび表示パターンに関する選定データは生成部22cに入力される構成になっている。なお、設定部22aに記憶されている被写体の選択肢や、画像処理の選択肢、表示パターンの選択肢は例示した選択肢に限定されず、その他の選択肢が記憶されている構成にすることもできる。
位置情報取得部22bは、撮影装置21から入力される撮影画像P1と、設定部22aから入力される被写体に関する選定データとに基づいて、設定部22aにおいて予め選定された被写体のそれぞれの撮影画像P1における二次元座標を逐次取得する。位置情報取得部22bで取得した被写体の二次元座標は、生成部22cに逐次入力される構成になっている。
この実施形態の位置情報取得部22bは、撮影装置21から入力される撮影画像P1の画像解析を行うことで、設定部22aにおいて選定されたそれぞれの被写体の撮影画像P1における二次元座標を取得する構成になっている。この実施形態の位置情報取得部22bは、設定部22aにおいて選定された吊体30の外縁部30aおよび係合金具30cと、着床ターゲット面31の外縁部31aおよび被係合金具31cと、障害物33(水平梁2c)の外縁部33aおよび外面部33bの、それぞれの撮影画像P1における二次元座標を取得している。
位置情報取得部22bを構成する画像解析のプログラムやソフトなどは特に限定されず種々のプログラムやソフトを適用できる。位置情報取得部22bは、具体的には例えば、公知の画像解析技術であるパターンマッチングや特徴ベースマッチングなどを利用したプログラムやソフトで構成できる。
位置情報取得部22bは、撮影画像P1における被写体の二次元座標を取得できれば上記の構成に限定されず、他の構成にすることもできる。位置情報取得部22bは例えば、センサや測定機器により撮影画像P1における被写体となる対象物の三次元位置座標を取得し、その取得した三次元位置座標と撮影装置21の撮影条件(設置位置や撮影方向等)に基づいて、撮影画像P1における被写体の二次元座標を算出する構成にすることもできる。
被写体となる対象物の三次元位置座標を取得する手段は、例えば、吊体30、着床ターゲット面31、障害物33などの被写体の形状を認識するトロリ5に設置した三次元レーザーセンサや、トロリ5に対する吊体30の振れ角を検出する振れ角センサなどで構成できる。前述した手段は、他にも例えば、吊具7に設置したGPS受信器や、吊具7を吊り下げているワイヤ6の繰り出し量や巻き取り量を測定するセンサ、吊具7に設置された三次元レーザーセンサなどで構成することもできる。また、前述した手段は、例えば、吊体30を含む複数の画像を撮影するステレオカメラと、そのステレオカメラで撮影した複数の画像に基づいて対象物の三次元位置情報を、マッチング技術を用いて検出する位置検出機器とで構成することもできる。
生成部22cは、設定部22aから入力される被写体に関する選定データと、画像処理に関する選定データと、表示パターンに関する選定データと、位置情報取得部22bから入力される被写体の二次元座標とに基づいて、撮影画像P1に対して画像処理を施す。そして、設定部22aにおいて予め選定された被写体の視認性を選定されていないその他の被写体の視認性に比して相対的に高くした処理画像P3を生成する。生成部22cは、撮影画像P1を加工して処理画像P3を生成する構成にすることもできるし、撮影画像P1の上に上層画像P2を重畳させた複数のレイヤーからなる処理画像P3を生成する構成にすることもできる。
図4に例示するように、この実施形態では、生成部22cにより、予め選定された被写体のそれぞれの位置または形状を強調する付加標示50を含む上層画像P2を生成している。そして、図5に例示するように、その生成した上層画像P2を撮影画像P1の上に重畳させた処理画像P3を生成している。
図4および図5に例示するように、この実施形態で生成している上層画像P2には、付加標示50として、吊体30の外縁部30aと、着床ターゲット面31の外縁部31aと、障害物33の外縁部33aとをそれぞれ強調する強調線51が含まれている。さらに、上層画像P2には、付加標示50として、係合金具30cと、被係合金具31cと、障害物33の外面部33bとをそれぞれ撮影画像P1における色とは異なる色で着色して強調する着色部52と、着床ターゲット面31の中心位置を示す目印53が含まれている。
図4および図5では、強調線51を太線で示し、着色部52を斜線部で示し、着床ターゲット面31の中心位置を示す目印53を白抜きの円と十字線を組み合わせた印で示している。付加標示50は、被写体毎に線の太さや、線種、配色などを異ならせて互いに区別しやすい標示にするとよい。着床ターゲット面31の中心位置を示す目印53の形状や配色、表示サイズなどは、この実施形態に限定されず、他にも例えば多角形や二重丸、矢印などにすることもできる。生成部22cで生成された処理画像P3は、表示制御部22dに逐次入力される構成になっている。
表示制御部22dは、生成部22cから入力された処理画像P3を表示装置23に逐次表示させる。表示装置23は、処理装置22から出力された処理画像P3が表示されるモニタである。この実施形態の表示装置23は、入力手段24が内蔵されたタッチパネル式のモニタで構成されている。
入力手段24は設定部22aにデータを入力する手段であり、例えば、タッチパネルやタッチパッド、ボタン、ジョイスティック、マウス、キーボード等で構成される。この実施形態の入力手段24は表示装置23に内蔵されたタッチパネルで構成されている。入力手段24は操作装置13に付属させることもできる。
次にこの操作支援システム20を利用したクレーン1の操作支援方法を説明する。
オペレータはクレーン1による荷役作業を開始する前に、操作支援システム20の事前設定として、入力手段24を操作して、視認性を相対的に高くする被写体の選定と、生成部22cで実行する画像処理の選定と、画像処理における表示パターンの選定とを行う。この実施形態では、オペレータが、表示装置23の画面に表示されている設定のアイコンをタップすると、表示装置23の画面に、設定部22aに記憶されている、視認性を相対的に高くする被写体の選択肢と、画像処理の選択肢と、画像処理における表示パターンの選択肢とがそれぞれ表示される構成になっている。
オペレータが、表示装置23の画面をタッチして視認性を相対的に高くする被写体、画像処理、および表示パターンの選定を完了すると、選定された被写体に関する選定データは位置情報取得部22bおよび生成部22cに入力され、画像処理に関する選定データおよび表示パターンに関する選定データは生成部22cに入力される。以上により、操作支援システム20の事前設定が完了する。
なお、この実施形態では、操作支援システム20の事前設定をオペレータが行う場合を例示しているが、視認性を相対的に高くする被写体、画像処理、および表示パターンが予め選定されている事前設定データが設定部22aに予め記憶されている構成にすることもできる。この場合には、前述した事前設定の作業を省略できる。
図6に例示するように、操作支援システム20の事前設定が完了し、オペレータが操作装置13によりクレーン1の操作を開始すると、撮影装置21により吊体30を含む撮影画像P1が撮影され、その撮影された撮影画像P1のデータが生成部22cに入力される(S10)。次いで、位置情報取得部22bにより、設定部22aにおいて予め選定された被写体の撮影画像P1における二次元座標が取得され、その取得された二次元座標のデータが生成部22cに入力される(S20)。
次いで、生成部22cにより、撮影装置21から入力された撮影画像P1のデータと位置情報取得部22bから入力された被写体の二次元座標のデータとに基づいて、設定部22aにおいて予め選定されている被写体の視認性を、選定されていないその他の被写体の視認性に比して相対的に高くした処理画像P3が生成され、その生成された処理画像P3が表示制御部22dに入力される(S30)。
次いで、表示制御部22dにより、生成部22cから入力された処理画像P3が表示装置23に表示される(S40)。ステップS40が完了するとスタートに戻る。上述したステップS10からステップS40が所定の周期で繰り返し連続して実行されることで、表示装置23に、処理画像P3が連続して表示される映像がリアルタイムに近い状態で表示される。上述したステップS10~ステップS40は、オペレータが操作装置13によるクレーン1の操作を終了するまで繰り返し実行される。
この操作支援システム20では、ステップS10からステップS40が繰り返し実行されている間においても、事前設定を行ったときと同様の操作を行うことで、視認性を相対的に高くする被写体、画像処理、および表示パターンに関する選定データの変更、更新を行える構成になっている。選定データの変更、更新が行われると、次の周期からは、更新された選定データに基づいてステップS10からステップS40が実行される。
この実施形態では、さらに、表示装置23の画面に表示された処理画像P3に写っている被写体の表示位置をタップすることで、視認性を相対的に高くする被写体、画像処理、および表示パターンに関する選定データの変更、更新を簡易に行える構成になっている。
具体的には、表示装置23の画面における、視認性を相対的に高くする被写体として選定データに含まれている被写体の表示位置をロングタップするとその被写体が、選定データから除外され、選定データから除外されている被写体をロングタップするとその被写体が、視認性を相対的に高くする被写体として選定データに追加される構成になっている。例えば、オペレータが、障害物33に付されている付加標示50を消したい場合には、障害物33の表示位置をロングタップすることで、障害物33に付されている付加標示50を簡易に消せるようになっている。
また、この実施形態では、表示装置23の画面における、選定データに含まれている被写体の表示位置をダブルタップすると、その被写体に施す画像処理の種類が変更される構成になっている。例えば、オペレータが、吊体30に対して、撮影画像P1に写る吊体30の外縁部30aの上に強調線51を重ねて表示する画像処理から、撮影画像P1を加工して吊体30の外縁部30a(エッジ)を強調する画像処理(シャープネス)に変更したい場合には、吊体30の表示位置をダブルタップすることで、吊体30に施す画像処理の種類を簡易に変更できるようになっている。
また、表示装置23の画面における、画像処理が施されている被写体の表示位置をシングルタップすると、その被写体に施されている画像処理の表示パターンが変更される構成になっている。例えば、オペレータが、着床ターゲット面31に付されている強調線51の線の色を変更したい場合には、着床ターゲット面31の表示位置をシングルタップすることで、強調線51の線の色を簡易に変更できるようになっている。
なお、選定データの変更、更新を行う際のタッチパネルの操作方法は、上述した操作方法に限定されず他の操作方法に設定することもできる。即ち、例えば、視認性を相対的に高くする被写体を変更する操作をロングタップではなく、ダブルタップやシングルタップで行う構成にすることもできる。また、この実施形態では、入力手段24がタッチパネルで構成されている場合を例示したが、例えば、入力手段24をマウスやタッチパッドで構成して、処理画像P3上に表示されるカーソルを被写体の上に移動させてクリックすることで、選定データの変更、更新を行える構成にすることもできる。
このように、操作支援システム20によれば、撮影装置21が撮影した撮影画像P1に写っている被写体のうち、吊体30、着床ターゲット面31、または障害物33の少なくともいずれかを含む予め選定された被写体の視認性を、選定されていないその他の被写体の視認性よりも高めた処理画像P3を表示装置23に表示させる。これにより、表示装置23に撮影画像P1をそのまま表示させる場合よりも、クレーン1を操作するオペレータが、荷役作業を行う際に認識する必要性の高い吊体30や、着床ターゲット面31、障害物33などの特定の被写体の位置や形状をより把握し易くなる。それ故、オペレータによるクレーン1の操作の作業性を向上できる。さらに、オペレータが荷役作業中に注視する被写体を絞ることができ、認識する必要の低い被写体に必要以上に神経を使う必要がなくなるため、オペレータの軽労化を図ることができる。
この実施形態のように、処理画像P3が、撮影画像P1に比して吊体30の外縁部30a、外面部30b、または係合金具30cの少なくともいずれかの視認性を高めた画像であると、荷役作業において認識する必要性の高い吊体30の位置や形状を非常に把握し易くなる。それ故、クレーン1の操作の作業性を向上させるには有利になる。視認性を高める吊体30の部位や画像処理の種類はこの実施形態に限定されず適宜設定できる。例えば、視認性を高める吊体30の部位を吊体30の四隅のコーナー部分のみに設定することもできるし、吊体30の外面部30bに着色部52を重ねて表示する構成にすることもできる。
処理画像P3が撮影画像P1に比して着床ターゲット面31の外縁部31a、外面部31b、または被係合金具31cの少なくともいずれかの視認性を高めた画像であると、着床操作において認識する必要性の高い着床ターゲット面31の位置や形状を非常に把握し易くなる。それ故、着床操作の作業性を向上させるには有利になる。視認性を高める着床ターゲット面31の部位や画像処理の種類はこの実施形態に限定されず適宜設定できる。例えば、視認性を高める着床ターゲット面31の部位を着床ターゲット面31の四隅のコーナー部分のみに設定することもできるし、着床ターゲット面31の外面部31bに着色部52を重ねて表示する構成にすることもできる。
この実施形態のように、処理画像P3が撮影画像P1に比して吊体30の係合金具30cと着床ターゲット面31の被係合金具31cの視認性を高めた画像であると、オペレータが係合金具30cと被係合金具31cとの相対的な位置関係をより把握し易くなるので、着床操作における係合金具30cと被係合金具31cとの位置合わせをより行い易くなる。それ故、着床操作の作業性を向上させるには益々有利になる。
撮影画像P1では、吊体30が接触、衝突する可能性がある障害物33と、吊体30が接触、衝突する可能性のないその他の被写体とを判別することは難しいが、この実施形態のように、処理画像P3が障害物33の外縁部33aまたは外面部33bの視認性を高めた画像であると、注意すべき障害物33の位置や形状を非常に把握し易くなる。それ故、荷役作業中に吊体30を障害物33に接触、衝突させることを回避するには有利になる。
処理画像P3が、撮影画像P1の上に予め選定された被写体の位置または形状を強調する付加標示50を重畳させた画像であると、被写体の外縁部や外面部、金具等の形状や位置を付加標示50によって明瞭に示すことができるので、予め選定された被写体の形状や位置が非常に把握し易くなる。さらに、それぞれの被写体に付する付加標示50の線種や配色などの表示パターンを異ならせれば、視認性を高めている被写体どうしがより見分け易くなる。
図7に本発明の操作支援システム20の別の実施形態を例示する。
図7に例示するように、この実施形態の処理装置22の生成部22cは、撮影画像P1に比して選定されていない被写体の視認性を低下させる画像処理を行なうことで、予め選定された被写体の視認性を、選定されていないその他の被写体の視認性に比して相対的に高くした処理画像P3を生成している。より具体的には、この実施形態では、撮影画像P1に対して予め選定された被写体が写っていない範囲をぼかす画像処理(解像度を下げる画像処理等)を施して、選定されていないその他の被写体を目立たなくすることで、相対的に予め選定された被写体を視覚的により識別し易くした処理画像P3を生成している。図7では、予め選定された被写体を実線で示し、ぼかしを入れているその他の被写体を破線で示している。
選定されていないその他の被写体の視認性を低下させる画像処理としては、ぼかしを入れる画像処理の他に、透過度を高める画像処理や、覆い隠す画像処理(マスキング)、モザイクを入れる画像処理等が例示できる。被写体の視認性を低下させる画像処理は、撮影画像P1を加工する方法で行ってもよいし、撮影画像P1の上に上層画像P2を重畳させる方法で行ってもよい。
このように、処理画像P3が、撮影画像P1に比して選択されていないその他の被写体の視認性を低下させた画像であると、荷役作業中にオペレータの目に入る情報を、荷役作業中に視認する必要性の高い被写体に絞ることができる。それ故、オペレータの軽労化を図るには有利になる。
この実施形態では、さらに、予め選定された被写体の位置または形状を強調する付加標示50として、吊体30の係合金具30cと着床ターゲット面31の被係合金具31cのそれぞれの位置を示す目印53を処理画像P3に表示させている。図7では、目印53を黒塗りの矢印で例示しているが目印53の形状や色はこの実施形態に限定されず、種々の図形や配色を適用できる。このように、処理画像P3に被写体の位置を示す目印53を表示させる構成にすると、オペレータが被写体の位置を非常に把握し易くなる。
なお、既述した実施形態では、予め選定された被写体の視認性を相対的に高くする画像処理として種々の画像処理を例示したが、生成部22cで実行する画像処理の組み合わせは既述した実施形態に限定されず、適宜組み合わせることができる。例えば、撮影画像P1に対して、予め選定された被写体の外縁部を強調する画像処理と、選択されていないその他の被写体にぼかしを入れる画像処理とを両方適用して処理画像P3を生成することもできる。また、予め選定された被写体の視認性を選定されていないその他の被写体の視認性に比して相対的に高くする画像処理であれば、上記で例示した画像処理に限定されず、その他の画像処理を適用して処理画像P3を生成することもできる。
既述した実施形態では、岸壁クレーンに適用した操作支援システム20を例示したが、操作支援システム20は、岸壁クレーンに限らず、コンテナターミナルにおいて、運搬機や蔵置レーンに対してコンテナ32の荷役をする門型クレーンや天井クレーンに適用することもできる。また、操作支援システム20は、コンテナ32の荷役をするコンテナクレーンに限らず、その他の荷役対象物の荷役をする様々なクレーンに適用することができる。