以下、本発明の麺帯圧延装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
(実施例1)
以下、図1及び図2に基づいて、実施例1における麺帯圧延装置1の全体構成を説明する。
実施例1の麺帯圧延装置1は、うどん、蕎麦、ラーメン、ワンタン等に使用する麺生地を製造するロール式製麺機である。この麺帯圧延装置1は、小麦粉、水、その他の材料を混練して帯状に成形した麺生地(以下、「麺帯M」という)を一対の圧延ロール31、32によって圧延する。このとき、麺帯Mは、巻取り棒10によって予めロール状に巻き取られており、この巻取り棒10に巻き取られた麺帯(以下、「ロール状麺帯m」という)から引き出された麺帯Mが、一対の圧延ロール31、32の間に形成された圧延間隔33に引き込まれる。
麺帯Mの圧延時、巻取り棒10の両端部は、麺帯圧延装置1が備える樋状の麺帯支持レール11(設置部)に支持される。すなわち、麺帯圧延装置1は、麺帯Mを巻き取った巻取り棒10を設置する麺帯支持レール11と、巻取り棒10に巻き取られた麺帯Mを圧延する一対の圧延ロール31、32とを備えている。なお、麺帯支持レール11は、一対の圧延ロール31、32を収容した装置筐体12の上部に取り付けられている。
そして、巻取り棒10を設置する麺帯支持レール11には、回転規制手段20が設けられている。回転規制手段20は、巻取り棒10の両端部を回転可能に支持すると共に、ロール状麺帯mの量が少ない状態の方が、ロール状麺帯mの量が多い状態よりも、巻取り棒10の回転を規制する負荷(以下、「回転規制負荷」)を巻取り棒10に大きく与えるものである。つまり、巻取り棒10はロール状麺帯mの量が少ない状態の方が回転しにくくされる。
ここで、「ロール状麺帯mの量が多い」場合には、ロール状麺帯mは、重量が重く、巻取り径が大きくなる。一方、「ロール状麺帯mの量が少ない」場合には、ロール状麺帯mは、重量が軽く、巻取り径が小さくなる。
以下、図2、図3及び図4に基づいて、実施例1の回転規制手段20の詳細構成を説明する。
回転規制手段20は、麺帯支持レール11の側面に固定される取付板21(固定部材)と、取付板21と協同して巻取り棒10に回転規制負荷を与えるブレーキ板22(可動部材)と、回転規制負荷を調整する引きバネ23(付勢部材)とを備えている。
取付板21は、矩形板部材から形成され、図3及び図4に示すように、上縁部21aに第1段差部21bが設けられ、第1下側上面21cと、第1上側上面21dと、これらをつなぐ第1立上り面21eとが形成されている。この取付板21は、図2に示すように、第1下側上面21cが麺帯支持レール11の上端面11aとほぼ面一にされた状態で、麺帯支持レール11の外側面11bにネジ固定されている。すなわち、この取付板21を麺帯支持レール11にネジ固定することで、麺帯支持レール11に第1段差部21bが形成されることになる。
ブレーキ板22は、矩形板部材から形成され、図3に示すように、上縁部22aに第2段差部22bが設けられ、第2下側上面22cと、第2上側上面22dと、これらをつなぐ第2立上り面22eとが形成されている。このブレーキ板22は、取付板21の外側面21fに重ね合わされ、支持ピン24を介して取付板21に連結されている。このとき、第2立上り面22eと第1立上り面21eとが対向し、その間に巻取り棒10を支持する凹所Kが形成される。また、ブレーキ板22の第2下側上面22cは、第1下側上面21cよりも高い位置に設置される。
支持ピン24は、一端にピン頭24aが形成されており、取付板21及びブレーキ板22を貫通したピン先に形成されたボルト部分が座金24bを介してナット24cで固定されることで抜け止めがなされている。そして、ブレーキ板22は、支持ピン24を中心に取付板21に対して相対回転可能となっている。さらに、この支持ピン24は、図2に示すように、凹所Kよりも、ロール状麺帯mの引出し側に位置している。
引きバネ23は、図4に示すように、取付板21の内側面21g側に配置されたコイルバネであり、引っ張り方向(収縮方向)に付勢力を発生する。この引きバネ23は、一端23aが取付板21に設けられた第1取付部25aに固定され、他端23bがブレーキ板22に設けられた第2取付部25bに固定されている。つまり、引きバネ23は、取付板21とブレーキ板22との間に設けられ、ブレーキ板22を引き上げることで凹所Kを閉める力(引張力)を付与している。これにより、ブレーキ板22が支持ピン24を中心に取付板21に対して相対回転する際、引きバネ23の引張力に抗する必要が生じる。
さらに、この引きバネ23は、第1取付部25aと第2取付部25bとの間に凹所Kが位置するように配置されると共に、巻取り棒10を支持していない状態で水平になるように設置されている。しかしながら、引きバネ23と凹所Kとの位置関係や、引きバネ23の設置方向については、このような構成に限らない。支持ピン24を中心とする接線方向に近い向きに引きバネ23を設置し、ブレーキ板22を回転させる力が発生できればよい。この結果、引きバネ23のバネ力を調整することで、ブレーキ板22による巻取り棒10の挟込力を調整することができ、引きバネ23は、ブレーキ板22による巻取り棒10の挟込力を調整する付勢手段となる。
なお、第1取付部25aは、取付板21に固定され、ブレーキ板22側に突出した固定部分が、ブレーキ板22に形成された第2貫通孔22hの内側に位置している。一方、第2取付部25bは、ブレーキ板22に固定され、取付板21側に突出した固定部分が、取付板21に形成された第1貫通孔21hの内側に位置している。ここで、第1貫通孔21h及び第2貫通孔22hは、第1、第2取付部25a、25bよりも十分に大きく、隙間が設けられている。このため、ブレーキ板22の回転時に、第1取付部25aが第2貫通孔22hの内周面に干渉したり、第2取付部25bが第1貫通孔21hの内周面に干渉したりすることで、ブレーキ板22の相対回転が阻害されることを防止することができる。
以下、図1、図5及び図6に基づいて、実施例1の圧延ロール部30の詳細構成を説明する。
圧延ロール部30は、麺帯Mを圧延する一対の圧延ロール31、32と、これらを回転駆動する第1、第2モータ34、35と、他方の圧延ロール32を動かして圧延間隔33を調整する第1、第2ロール間調整部36、37とを備えている。
すなわち、一対の圧延ロール31、32は、図1に示すように、一方の圧延ロール31の回転軸31aの方が他方の圧延ロール32の回転軸32aより高くなるように上下斜めにずらして配置されている。また、一対の圧延ロール31、32は、全長に渡り圧延間隔33を確保して平行に配置されている。これにより、一対の圧延ロール31、32の圧延入口33aは、麺帯Mを受け易いように斜め上方に開放する。
そして、図5及び図6に示すように、一対の圧延ロール31、32は、それぞれ第1モータ34と第2モータ35によって回転させられる。ここで、第1モータ34及び第2モータ35は、個別に駆動制御され、一対の圧延ロール31、32の回転速度を同一にすると共に、一対の圧延ロール31、32の回転方向をそれぞれ麺帯Mが圧延出口33bに向かうように逆向きにする(図1参照)。
また、他方の圧延ロール32は、回転軸32aの一端部32bに第1ロール間調整部36が設けられ、回転軸32aの他端部32cに第2ロール間調整部37が設けられている。
第1ロール間調整部36は、回転軸32aの一端部32bを押し引きする機構であり、第1調整モータ36aと、第1ブラケット36bと、第1固定部36cとを有している。第1調整モータ36aは、外周面に雄ネジが形成された第1回転軸36dを回転駆動する。第1ブラケット36bは、第1調整モータ36aを、回転軸32aの一端部32bに連結させる。第1固定部36cは、装置筐体12の内部に設けられ、第1、第2ロール間調整部36、37の間に配置されたフレーム(不図示)に固定され、第1回転軸36dが貫通する貫通孔36eを有している。この貫通孔36eの内周面には、第1回転軸36dの雄ネジが噛合する雌ネジが形成されている。そして、この第1ロール間調整部36では、第1調整モータ36aによって第1回転軸36dを回転させることで、第1固定部36cに対し、第1調整モータ36a及び第1ブラケット36bを一体的に相対移動させる。これにより、回転軸32aの一端部32bを押し引きし、圧延間隔33を調整する。なお、第1固定部36cから回転軸32aの一端部32bまでの距離は、図示しない位置センサによって検出可能となっている。
また、第2ロール間調整部37は、回転軸32aの他端部32cの水平方向の位置を調整する機構であり、第2調整モータ37aと、第2ブラケット37bと、第2固定部37cとを有している。第2調整モータ37aは、外周面に雄ネジが形成された第2回転軸37dを回転駆動する。第2ブラケット37bは、第2調整モータ37aを、回転軸32aの他端部32cに連結させる。第2固定部37cは、装置筐体12の内部に設けられ、第1、第2ロール間調整部36、37の間に配置されたフレーム(不図示)に固定され、第2回転軸37dが貫通する貫通孔37eを有している。この貫通孔37eの内周面には、第2回転軸37dの雄ネジが噛合する雌ネジが形成されている。そして、この第2ロール間調整部37では、第2調整モータ37aによって第2回転軸37dを回転させることで、第2固定部37cに対し、第2調整モータ37a及び第2ブラケット37bを一体的に相対移動させる。これにより、回転軸32aの他端部32cを押し引きし、圧延間隔33を調整する。なお、第2固定部37cから回転軸32aの他端部32cまでの距離は、図示しない位置センサによって検出可能となっている。
なお、回転軸32aの一端部32b及び他端部32cを押し引きすることで、他方の圧延ロール32と共に、この圧延ロール32を回転駆動する第2モータ35も移動する。
ここで、第1調整モータ36aと第2調整モータ37aとは、個別に駆動制御される。このとき、一対の圧延ロール31、32を軽く接触させ、圧延間隔33をゼロにした位置で、図示しない位置センサのゼロ点調整を行う。これにより、装置起動時等の定期的に、回転軸31aと回転軸32aとの平行状態のずれを自動で修正することができる。
以下、図7に基づいて、ロール状麺帯mを圧延する際の課題について説明する。
巻取り棒10に巻き取られた麺帯(ロール状麺帯m)は、麺帯Mを巻取り棒10の周面に順次巻き付けていくことで成形される。このとき、ロール状麺帯mは、巻取り中心に近い麺帯Mほど締付力を強く受け、図7に示すように、巻取り中心側の麺帯Mほど幅方向に広がり、ロール状麺帯mの両端部は円錐状となる。このため、巻取り中心側の麺帯Mの幅寸法が、一対の圧延ロール31、32の幅寸法よりも大きくなることがある。
そして、一対の圧延ロール31、32の幅寸法よりも麺帯Mの幅寸法が大きいと、一対の圧延ロール31、32の間に引き込まれた麺帯Mが圧延間隔33からはみ出し、幅方向の両端部が狭められたり、折り畳まれたりしてしわになり、適切に圧延できないことがある。
そこで、巻取り棒10を支持する凹所Kを開口に向かって次第に広がるようにV字型に形成し、傾斜させた内側面で巻取り棒10を支持することで、巻取り棒10に回転を規制する負荷(回転規制負荷)を掛けることが考えられている。巻取り棒10に回転規制負荷を掛けることで、一対の圧延ロール31、32で麺帯Mを引き込むときに、麺帯Mに長さ方向の張力を作用させることができ、この結果麺帯Mが幅方向に縮むことが分かっている。
しかしながら、V字型の凹所Kで巻取り棒10を支持する場合、巻取り棒10に掛かる回転規制負荷は、ロール状麺帯mの量が多くて大きく重いときに大となり、ロール状麺帯mの量が少なくて小さく軽いときに小となる。そのため、V字型の凹所Kによって巻取り棒10を支持する場合では、巻取り中心に近いほど締め付けられて麺帯幅が広がった巻取り中心側の麺帯Mが引き込まれるときに回転規制負荷が小さくなり、幅方向に縮ませるために必要な張力を作用させることが難しかった。
以下、図8及び図9に基づいて、実施例1の麺帯圧延装置1の巻取り棒支持作用を説明する。
実施例1の麺帯圧延装置1では、麺帯Mを巻き取った巻取り棒10の両端部を、麺帯支持レール11に設けられた回転規制手段20の幾分閉じた凹所Kに挿入し、ブレーキ板22の第2下側上面22cに載せる。これにより、ブレーキ板22は下方に押され、引きバネ23の引張力に抗して、凹所Kが開くようにブレーキ板22が回される。このようにして、麺帯支持レール11に巻取り棒10を設置する。
ここで、凹所Kは、ロール状麺帯mの量が多くて重いほどより大きく開き、麺帯Mが引き出されてロール状麺帯mの量が少なくて軽くなるに従い、次第に閉じていく。すなわち、ロール状麺帯mの量が多いときには、回転規制手段20に掛かるロール状麺帯mの重量Fgが大きくなる。そのため、図8に示すように、ブレーキ板22は引きバネ23の引張力に抗して支持ピン24を中心に凹所Kを開く方向に回転し、第1立上り面21eと巻取り棒10との間に隙間が生じる。これにより、巻取り棒10には、ブレーキ板22による巻取り棒10の挟込力Fが作用せず、回転規制負荷を軽減することができる。
そして、回転規制負荷を軽減した結果、巻取り棒10を円滑に回転させることができ、麺帯Mに対して長さ方向の引張力が必要以上に作用してしまうことを防止できる。また、麺帯Mが薄くなりすぎたり、破断したりすることを防ぐことが可能となる。
なお、ブレーキ板22は、巻取り棒10が第1下側上面21cに干渉するまで押し下げ可能となっている。そのため、凹所Kの開き状態は、ブレーキ板22の第2下側上面22cは、第1下側上面21cとの高さの差によって調整することができる。
一方、ロール状麺帯mの量が少なくなっていくと、回転規制手段20に掛かるロール状麺帯mの重量Fgが次第に小さくなる。そのため、図9に示すように、引きバネ23の引張力によってブレーキ板22が支持ピン24を中心に戻る方向(凹所Kを閉める方向)に回転する。これにより、第1立上り面21eと第2立上り面22eとで巻取り棒10を押圧し、ブレーキ板22と取付板21の第1段差部21bとの間に巻取り棒10を挟み込むことができる。この結果、巻取り棒10には、ブレーキ板22による巻取り棒10の挟込力Fが作用し、ロール状麺帯mの量が少なくなるほど巻取り棒10により大きな回転規制負荷を掛けることができる。
また、一対の圧延ロール31、32に引き込まれる麺帯Mには、一対の圧延ロール31、32による麺帯Mの引き込み力と、巻取り棒10に掛かる回転規制負荷とによって、相反する長さ方向の張力が作用し、麺帯Mが長さ方向に伸びて幅方向に縮む。そして、ロール状麺帯mの量が少なくなるほど回転規制負荷を大きくすることで、強い締付力を受けて幅方向に広がった巻取り中心側の麺帯Mであっても麺帯幅を適切に縮ませることができ、所期の麺帯幅に調整することができる。
また、この回転規制手段20は、麺帯支持レール11に形成した第1段差部21bと、巻取り棒10を第1段差部21bとの間に挟み込むブレーキ板22と、ブレーキ板22による巻取り棒10の挟込力を調整する引きバネ23とを備えている。
ここで、回転規制負荷の大きさは、引きバネ23の引張力と、ブレーキ板22を押し下げるロール状麺帯mの重量Fgとのバランスで規定される。引きバネ23の引張力を強くすると、ロール状麺帯mの重量Fgがより重くなければブレーキ板22は押し下げられず、回転規制負荷を軽減することができない。一方、引きバネ23の張力を弱くすれば、ロール状麺帯mの重量Fgが軽くてもブレーキ板22は押し下げられ、回転規制負荷を軽減することが可能となる。換言すれば、ロール状麺帯mの量が一定であっても、引きバネ23の引張量が強いほど、回転規制負荷を大きくすることができる。そのため、引きバネ23によるブレーキ板22を引き上げる力(引張力)を調整することで、巻取り棒10に掛かる回転規制負荷の大きさを容易に制御することができる。
さらに、実施例1の麺帯圧延装置1では、第1段差部21bが、麺帯支持レール11に着脱可能に取り付け可能な取付板21に形成されている。また、引きバネ23は、ブレーキ板22を取付板21に連結している。そのため、回転規制手段20を麺帯支持レール11の任意との位置に取り付けることができ、麺帯Mの材質や、ロール状麺帯mの大きさ等に応じて麺帯圧延に最適な位置で巻取り棒10を支持することができる。
以下、図10に基づいて、第1比較例の圧延ロール部の構成及び課題を説明する。
第1比較例の圧延ロール部100では、図10に示すように、一つのモータ101で一方の圧延ロール31を回転駆動し、同調ギア102、103を介して回転力を他方の圧延ロール32に伝達することで一対の圧延ロール31、32を回転駆動する。そのため、ロール軸寸法L1は、圧延ロール31、32の長さと同調ギア102、103の厚みを合算したものとなる。また、この圧延ロール部100では、一つのモータ101の動力で一対の圧延ロール31、32を回転駆動することになるため、このモータ101を大型化する必要がある。そのため、モータ101の軸方向寸法L2も比較的長いものとなる。
また、一般的に、一対の圧延ロール31、32によって麺帯Mを圧延する際、一対の圧延ロール31、32は、圧延間隔33に引き込んだ麺帯Mから、圧延間隔33を広げようとする方向の反力Fαを受ける。このため、この圧延ロール部100では、同調ギア102、103にも、ギア同士を引き離そうとする方向の力(半径方向荷重)Fβが掛かる。そして、これらの合力が、一対の圧延ロール31、32を支持する軸受38a、38bへのラジアル荷重として作用する。例えば、麺帯Mが硬い等の理由で一対の圧延ロール31、32が受ける反力Fαが大きくなると、圧延ロール31、32を回転させるために必要なトルクがより高くなる。そのときには、半径方向荷重Fβも大きくなり、軸受38a、38bに作用するラジアル荷重も高くなる。この結果、一対の圧延ロール31、32を支持する軸受38a、38bがダメージを受け、軸受38a、38bの剥離寿命が短くなることがある。
さらに、一対の圧延ロール31、32によって麺帯Mを圧延する際、圧延する麺帯Mが厚い場合には、圧延間隔33を広げる必要がある。しかしながら、圧延ロール部100において圧延間隔33を広げると、同調ギア102、103の中心間距離も広がり、十分な動力伝達ができなくなる。しかも、これにより同調ギア102、103の刃が破損するおそれがあるため、同調ギア102、103のギア強度が担保できる範囲でしか圧延間隔33を広げることができない。
以下、実施例1の一対の圧延ロール31、32の回転駆動作用を説明する。
実施例1の麺帯圧延装置1の圧延ロール部30では、一対の圧延ロール31、32のそれぞれが第1モータ34と第2モータ35とによって個別に回転駆動されている。そのため、この圧延ロール部30では、同調ギア102、103を不要とすることができ、圧延ロール部100のロール軸寸法L1と比べて、同調ギア102、103の厚みの分だけロール軸寸法La(図6参照)を短縮化することができる。また、第1、第2モータ34、35は、それぞれ圧延ロール31、32を一本ずつ回転駆動するため、例えば圧延ロール部100にて用いるモータ101の半分程度の出力の小型のモータを適用することが可能となる。これにより、第1、第2モータ34、35の軸方向寸法Lb(図6参照)も、圧延ロール部100のモータ101の軸方向寸法L2と比べて短縮化することができる。このため、実施例1の麺帯圧延装置1は、第1比較例の圧延ロール部100よりもロール軸方向の寸法を短くし、装置全体の小型化を図ることができる。
また、実施例1の麺帯圧延装置1では、同調ギア102、103を不要とすることで、半径方向荷重Fβが発生することがない。そのため、軸受38a、38bに作用するラジアル荷重を抑制し、軸受38a、38bの剥離寿命の長寿命化を図ることが可能となる。
さらに、実施例1の麺帯圧延装置1では、同調ギア102、103が不要であることから、同調ギア102、103の歯のかかりを考慮することなく圧延間隔33を調整することができる。しかも、圧延ロール部100では、圧延間隔33を広げると、同調ギア102、103のバックラッシが広がり、歯の干渉音が大きくなる問題が生じる。しかし、実施例1の麺帯圧延装置1は、そもそも同調ギア102、103がないため、圧延間隔33の大きさによらず静粛性を担保することができる。
なお、一般的に、麺帯圧延装置において、一対の圧延ロールに回転速度差が生じた場合、圧延中の麺帯Mの表面が荒れてしまい、場合によっては麺帯Mが破れてしまうことが知られている。この現象は、一対の圧延ロールの直径寸法が異なっている(一方のロール径が大きい)場合に生じることが多く、問題となっていた。しかしながら、実施例1の麺帯圧延装置1では、一対の圧延ロール31、32を独立した第1、第2モータ34、35で個別に回転制御を行っている。そのため、例えば片方の圧延ロールの回転速度が速くても、回転速度が速い圧延ロールに負荷がかかり失速する。そのため、回転速度差が自然と収束し、麺帯Mの荒れや破れの発生を防止することができる。
以下、図11に基づいて、第2比較例の圧延ロール部の構成及び課題を説明する。
第2比較例の圧延ロール部200は、図11に示すように、他方の圧延ロール32の回転軸32aの両端部に、それぞれウォームギアユニット201、202を設け、これらのウォームギアユニット201、202のそれぞれに、ハンドル203のハンドル軸204を連結する。
そして、この圧延ロール部200では、ハンドル203を手動で回転させ、ハンドル軸204を介してウォームギアユニット201、202をそれぞれ駆動する。これにより、二つの圧延ロール201、202を押し引きし、圧延間隔33を調整する。なお、モータ205のモータ軸をウォームギアユニット201、202に連結し、電動で圧延間隔33を調整するようにしてもよい。
ここで、圧延間隔33を調整する際、回転軸31a、32aの平行状態がずれると、圧延される麺帯Mの厚みが均一にならず製麺品質が低下する。そのため、一対の圧延ロール31、32の回転軸31a、32aの平行状態を維持する必要がある。
しかしながら、圧延ロール部200では、各ウォームギアユニット201、202やハンドル軸204のずれや、ハンドル軸204の撓み等により、回転軸31a、32aの平行が出ないという問題が生じる。
以下、実施例1の一対の圧延ロール31、32の間隔調整作用を説明する。
実施例1の麺帯圧延装置1の圧延ロール部30では、他方の圧延ロール32の回転軸32aの一端部32bに、第1ロール間調整部36が設けられ、回転軸32aの他端部32cに第2ロール間調整部37が設けられている。これにより、回転軸32aの両端部32b、32cにそれぞれ駆動力を入力することができる。
そのため、回転軸32aを回転軸31aに対して平行状態にしたまま移動させることができる。また、一対の圧延ロール31、32を接触させた状態で位置センサ(不図示)のゼロ点調整を行い、この位置センサによって回転軸32aの両端部32b、32cの位置を監視することで、回転軸32aの平行状態のずれの発生を防止することができる。特に、位置センサのゼロ点調整を装置起動時等の定期的に実行することで、初期の組付精度や圧延ロール31、32の使用中の振動等による平行状態の崩れを抑制し、平行状態の維持精度を向上することができる。
(実施例2)
実施例2における麺帯圧延装置1Aは、麺帯Mを巻き取った巻取り棒10を支持する回転規制手段40の段差部13が、回転規制手段40を設けた設置部である麺帯支持レール11に形成された例である。なお、実施例2の麺帯圧延装置1Aにおいても、一対の圧延ロール(不図示)を備えている。しかしながら、実施例2の一対の圧延ロールについては、実施例1と共通の構成であるため、ここでは説明を省略する。
実施例2の麺帯圧延装置1Aの回転規制手段40は、図12に示すように、樋状の麺帯支持レール11(設置部)に設けられている。ここで、麺帯支持レール11の上縁部11αには、段差部13が設けられている。この段差部13が設けられたことで、麺帯支持レール11の上縁部11αには、図13及び図14に示すように、第1下側上面13aと、第1上側上面13bと、これらをつなぐ第1立上り面13cとが形成されている。
実施例2の回転規制手段40は、図13及び図14に示すように、麺帯支持レール11の側面に固定される固定用板41と、麺帯支持レール11と協同して巻取り棒10に回転規制負荷を与えるブレーキ板42(可動部材)と、回転規制負荷を調整する引きバネ43(付勢部材)とを備えている。
固定用板41は、矩形板部材から形成され、図13及び図14に示すように、上端面41aが麺帯支持レール11の第1下側上面13aとほぼ面一にされた状態で、麺帯支持レール11の外側面11bにネジ固定されている。
ブレーキ板42は、矩形板部材から形成され、図13に示すように、上縁部42aに第2段差部42bが設けられ、第2下側上面42cと、第2上側上面42dと、これらをつなぐ第2立上り面42eとが形成されている。このブレーキ板42は、固定用板41の外側面41fに重ね合わされ、支持ピン44を介して固定用板41に連結されている。このとき、第2立上り面42eと第1立上り面13cとが対向し、その間に巻取り棒10を支持する凹所Kが形成される。また、ブレーキ板42の第2下側上面42cは、固定用板41の上端面41a及び麺帯支持レール11の第1下側上面13aよりも高い位置に設置される。
支持ピン44は、一端にピン頭44aが形成されており、固定用板41及びブレーキ板42を貫通したピン先に形成されたボルト部分が座金44bを介してナット44cで固定されることで抜け止めがなされている。そして、ブレーキ板42は、支持ピン44を中心に固定用板41に対して相対回転可能となっている。さらに、この支持ピン44は、図12に示すように、凹所Kよりも、ロール状麺帯mの引出し側に位置している。
引きバネ43は、図14に示すように、固定用板41の内側面41g側に配置されたコイルバネであり、引っ張り方向(収縮方向)に付勢力を発生する。この引きバネ43は、一端43aが固定用板41に設けられた第1取付部45aに固定され、他端43bがブレーキ板42に設けられた第2取付部45bに固定されている。つまり、引きバネ43は、固定用板41とブレーキ板42との間に設けられ、ブレーキ板22を引き上げることで凹所Kを閉める力(引張力)を付与している。これにより、ブレーキ板42が支持ピン44を中心に固定用板41に対して相対回転する際、引きバネ43の引張力に抗する必要が生じる。
さらに、この引きバネ43は、第1取付部45aと第2取付部45bとの間に凹所Kが位置するように配置されると共に、巻取り棒10を支持していない状態で水平になるように設置されている。この結果、引きバネ43のバネ力を調整することで、ブレーキ板42による巻取り棒10の挟込力を調整することができ、引きバネ43は、ブレーキ板42による巻取り棒10の挟込力を調整する付勢手段となる。
なお、第1取付部45aは、固定用板41に固定され、ブレーキ板42側に突出した固定部分が、ブレーキ板42に形成された第2貫通孔42hの内側に位置している。一方、第2取付部45bは、ブレーキ板42に固定され、固定用板41側に突出した固定部分が、固定用板41に形成された第1貫通孔41hの内側に位置している。ここで、第1貫通孔41h及び第2貫通孔42hは、第1、第2取付部45a、45bよりも十分に大きく、隙間が設けられている。このため、ブレーキ板42の回転時に、第1取付部45aが第2貫通孔42hの内周面に干渉したり、第2取付部45bが第1貫通孔41hの内周面に干渉したりすることで、ブレーキ板42の相対回転が阻害されることを防止することができる。
以下、図15及び図16に基づいて、実施例2の麺帯圧延装置1Aの巻取り棒支持作用を説明する。
実施例2の麺帯圧延装置1Aにおいて、回転規制手段40によって麺帯Mを巻き取った巻取り棒10を支持する際、この回転規制手段40の凹所Kに巻取り棒10の両端部を挿入し、ブレーキ板42の第2下側上面22cに載せる。
このとき、ロール状麺帯mの量が多いくて重いときには、回転規制手段40に掛かるロール状麺帯mの重量Fgが大きくなる。そのため、図15に示すように、ブレーキ板42は引きバネ43の引張力に抗して支持ピン44を中心に凹所Kを開く方向に回転し、第1立上り面13cと巻取り棒10との間には隙間が生じる。これにより、巻取り棒10には、ブレーキ板42による巻取り棒10の挟込力Fが作用せず、回転規制負荷を軽減することができる。
一方、ロール状麺帯mの量が少なくなっていくと、回転規制手段40に掛かるロール状麺帯mの重量Fgが次第に小さくなる。そのため、図16に示すように、引きバネ43の引張力によってブレーキ板42が支持ピン44を中心に戻る方向(凹所Kを閉める方向)に回転する。これにより、第1立上り面13cと第2立上り面42eとで巻取り棒10を押圧し、ブレーキ板42と麺帯支持レール11の段差部13との間に巻取り棒10を挟み込むことができる。この結果、巻取り棒10には、ブレーキ板42による巻取り棒10の挟込力Fが作用し、ロール状麺帯mの量が少なくなるほど巻取り棒10により大きな回転規制負荷を掛けることができる。
このように、実施例2の麺帯圧延装置1Aにおいても、ロール状麺帯mの巻取り量に応じてブレーキ板42による巻取り棒10の挟込力Fを変化させ、ロール状麺帯mの量が少ないときの方が、このロール状麺帯mの量が多いときよりも巻取り棒10の回転を規制する回転規制負荷を大きくすることができる。これにより、一対の圧延ロール(ここでは図示せず)の間に引き込まれる麺帯Mを適切な麺帯幅に縮ませ、所期の麺帯幅に調整することができる。
また、実施例2の回転規制手段40では、設置部である麺帯支持レール11に段差部13を形成している。これにより、既存の構造を利用して巻取り棒10を支持することが可能となる。
以上、本発明の麺帯圧延装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、第1立上り面21eが、第1下側上面21c及び第1上側上面21dに対して直交する方向に起立し、第2立上り面22eが、第2下側上面22c及び第2上側上面22dに対して直交する方向に起立する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、凹所Kが開口に向かって次第に広がるように、第1、第2立上り面21e、22eを傾斜させてもよい。
また、実施例1及び実施例2では、ブレーキ板22、42(可動部材)による巻取り棒10の挟込力Fを調整する付勢部材として、コイルバネからなる引きバネ23、43を用いる例を示したが、これに限らない。回転を阻止する方向にブレーキ板22、42(可動部材)を引っ張る付勢部材であればよいため、例えば引き型の油圧シリンダやゴム等であってもよい。