本開示の実施の形態の説明に先立ち、本開示の着想に至った経緯を簡単に説明する。近年、様々な分野で人工知能(AI)の応用が検討されている。実装基板製造の分野でも製品品質の向上を目的に人工知能の導入が検討されている。人工知能は予め学習させておく必要があるため、生産中の設備から集めた情報を利用して学習用のデータを作成する試みがなされている。しかしながら、生産中の設備から集めた情報だけでは学習用のデータ作成に時間を要することから生産初期の段階で学習結果を利用することが困難である。
本開示は、上述の問題を解決することができる情報処理装置を提供する。
(第1の実施形態)
まず図1を参照して、本開示の第1の実施形態に係る情報処理装置1aを含む実装基板製造システム1について説明する。実装基板製造システム1は、情報処理装置1aと、実装基板製造ラインLとを含む。情報処理装置1aは、実装基板製造システム1において製品品質の向上のための情報処理を行う。情報処理装置1aは、上位システム2と実装プロセス支援装置3とを含む。実装基板製造ラインLは、複数の部品実装用設備を連結して構成されている。
次に、情報処理装置1aについて説明する。上位システム2は、諸情報を管理する機能を有する。諸情報は、例えば、実装基板製造ラインLによる作業対象となる基板や部品などのワークについての情報、生産作業に使用されるプログラムやパラメータなどの生産データ、設備の稼働状態を記録する稼働情報、各作業過程で実行される検査の結果を示す検査情報を含む。
実装プロセス支援装置3は、これら諸情報に基づき、ディープラーニングの手法で構築された学習モデルによる実装品質の分析やパラメータ設定等の支援を目的とした処理を行う機能を有している。
次に図1、図2を参照しながら上位システム2、実装プロセス支援装置3の構成を説明する。図1に示すように、上位システム2は情報管理装置16を含む。情報管理装置16は実装基板製造ラインLを構成する各装置と通信ネットワーク5で接続され、各装置とデータを授受する。さらに、上位システム2は、生産データ記憶部11と、ワークデータ記憶部12と、検査情報記憶部13と、稼働情報記憶部14と、基板サポート情報記憶部19とを含んでいる。
生産データ記憶部11は、図5に示す生産データ40を記憶する。ワークデータ記憶部12は、図3に示すワークデータ30並びに図4に示すリレーションテーブル59を記憶する。検査情報記憶部13は、図6Aに示す検査情報51を記憶する。稼働情報記憶部14は、図6Bに示す稼働情報55を記憶する。基板サポート情報記憶部19は図21Aに示す実装点サポート情報120と図22Aに示すランドサポート情報130とを記憶する。実装点サポート情報120とランドサポート情報130については後述する。
図2に示すように、実装プロセス支援装置3は、データセット作成部21と、データセット記憶部22と、学習部23と、学習モデル部24と、シミュレーション部25と、評価部26と、設備パラメータ設定・分析部27と、品質評価部28と含む。実装プロセス支援装置3は、上位システム2の生産データ記憶部11、ワークデータ記憶部12、検査情報記憶部13、稼働情報記憶部14と、上位階層の通信ネットワーク4を介して接続されている。これにより、上位システム2と実装プロセス支援装置3は、情報処理装置1aを構成する各部との間でデータを授受する。
また上位システム2は温度湿度記録装置15をさらに含む。温度湿度記録装置15は、以下に説明する実装基板製造ラインLにおける温度や湿度などの環境条件の計測結果を環境データとして記録する。温度湿度記録装置15は、例えば、温度センサと、湿度センサと、これらのセンサによる計測結果のデータを記憶する記憶装置と、計測結果を処理して記憶装置を制御するCPU(Central Processing Unit)などの処理装置とを含む。前述のように、上位システム2は情報管理装置16を含み、実装基板製造ラインLを構成する各装置との間でのデータを授受する。
次に、実装プロセス支援装置3の各部の機能の概要について説明する。データセット作成部21は、上位システム2の各記憶部から収集されたデータよりデータセットを作成する。データセット記憶部22は、データセット作成部21により作成されたデータセットを記憶する。学習部23はデータセット記憶部22に記憶されたデータセットを利用して学習モデル部24を学習させる。学習モデル部24は、主に実装基板製造ラインLの各装置で設定される各種パラメータと検査結果との因果関係を学習した学習モデルを格納している。学習モデル部24は機械学習が可能な人工ニューラルネットワークにより構成される。
シミュレーション部25は、実装基板製造ラインLにおける実装基板製造のための製造プロセスのシミュレーションを実行する。シミュレーション部25は実装基板の製造工程におけるはんだの挙動についてシミュレーションを実行する。その結果、シミュレーション部25は、スクリーン印刷によって形成される印刷はんだの形状、部品搭載後の印刷はんだの形状や印刷はんだ上に搭載された部品の状態、リフロー後の部品のはんだ付け状態を予測する。シミュレーション部25は実装基板の製造プロセスの主要な工程であるスクリーン印刷工程、部品搭載工程、リフロー工程におけるはんだの挙動をシミュレーションする。具体的には、スクリーン印刷工程と部品搭載工程では、はんだペーストの動きを数値モデルで予測する。リフロー工程では、はんだペーストに含まれるはんだ粒子が溶融して流動する動きを数値モデルで予測する。
シミュレーション部25は、実際の実装基板の製造工程で使用される基板、部品、マスク、はんだペーストに関する情報を利用してシミュレーションを実行する。これらの情報は、図1に示すワークデータ記憶部12に記憶されたワークデータ30(図3参照)に含まれている。シミュレーション部25はワークデータ記憶部12からシミュレーションに必要な情報を入手する。ワークデータ30は、シミュレーションを実行するための前提条件の一つである。
シミュレーション部25は、スクリーン印刷工程、部品搭載工程、リフロー工程の結果に影響を与えるパラメータを取得(入力)してシミュレーションを実行する。これらのパラメータは部品実装用設備に設定されるパラメータに対応し、シミュレーションにおいてスクリーン印刷工程、部品搭載工程、リフロー工程を再現する前提条件である。パラメータの取得方法としては少なくとも二つの方法が準備されている。
1つは、生産データ記憶部11に記憶された生産データ40(図5参照)から取得する方法であり、もう1つは、後述するディープラーニング用に学習部23から取得(入力)する方法である。前者の場合、印刷設備パラメータ43からスクリーン印刷工程のシミュレーションに必要な印圧、スキージ速度、アタック角等が取得される。また搭載設備パラメータ44からは部品搭載工程のシミュレーションに必要な搭載速度、搭載荷重、押し込み量等が取得される。このようにして、リフロー設備パラメータ45からリフロー工程のシミュレーションに必要な基板搬送速度、リフロー装置内部に配置されたヒータの設定温度等が取得される。
シミュレーション部25は、図5に示す設備セットアップ情報46もシミュレーションを実行するための前提条件として参照する。すなわち実装基板の製造で使用する設備の状態をシミュレーションで再現することは重要であり、これにより設備の状態によって実装基板の品質がどのように変化するのかを学習モデル部24に学習させることが可能となる。
評価部26は、シミュレーション部25によるシミュレーション結果を評価する。一例として、評価部26はシミュレーション結果として得られたスクリーン印刷後の印刷はんだの体積や形状が予め定めた評価基準を満たしているかを評価する。さらに、評価部26はシミュレーション結果として得られた部品搭載後の印刷はんだの形状や印刷はんだ上に搭載された部品の状態が予め定めた評価基準を満たしているかを評価する。具体的には、搭載された部品による印刷はんだの変形具合や、基板のランドと部品と印刷はんだとの位置関係、さらには部品の電極と印刷はんだとの接触状態が評価の対象となる。
さらに、評価部26は、予め定めておいた評価基準に従って、シミュレーション結果として得られた部品のはんだ付け状態を評価する。具体的には、基板のランドと部品の電極とを接合するはんだ接合部の形状や体積、基板の実装点と部品との位置関係等を予め定めておいた評価基準に従って評価する。このように評価部26は、実装基板製造ラインLに配置された検査装置による検査を擬似的に行う。なお、シミュレーション部25は、スクリーン印刷工程、部品搭載工程、リフロー工程のうち、少なくとも1つをシミュレーションの対象としてもよい。
学習部23は、シミュレーションで得られた結果を利用して学習モデル部24の学習を実行するモードを有している。すなわち学習部23は、実測データで作成されたデータセットを教示データとして使用する学習モードと、シミュレーション結果を教示データとして使用する学習モード(ディープラーニング)を有している。これにより、データセット記憶部22にまだ十分なデータセットが準備できていない場合でも、シミュレーションによる模擬実験と機械学習を繰返すディープラーニングによって短時間のうちに学習部23の学習を促進させることができる。これにより生産初期の段階から学習結果を利用することができる。
実装プロセス支援装置3は、学習済みの学習モデルを利用した複数の支援機能を有している。そのために実装プロセス支援装置3は、部品実装用設備に設定されるパラメータや部材の配置について提案や分析を行う設備パラメータ設定・分析部27と、実装基板の製造工程における品質を分析する品質評価部28とを含む。
設備パラメータ設定・分析部27は、学習モデル部24を利用して印刷条件、搭載条件、リフロー条件のうちの少なくとも一つを求める。すなわち設備パラメータ設定・分析部27は、使用予定の基板の基板データと、マスクのマスクデータと、部品に関する部品諸元データとを読み取って、最適な印刷条件、搭載条件、リフロー条件を学習内容から求める。さらに設備パラメータ設定・分析部27は、学習モデル部24を利用して、生産データ記憶部11に記憶されている印刷条件、搭載条件、リフロー条件のうちの少なくとも一つを評価する。すなわち設備パラメータ設定・分析部27は、部品実装用設備に設定されているパラメータの妥当性をパラメータ毎に評価し、不良を誘発する虞のあるパラメータを作業者や管理者に通知する。
品質評価部28は、学習モデル部24を利用してスクリーン印刷工程、部品搭載工程、リフロー工程における不良発生を推定する。すなわち品質評価部28は、ワークデータ30、生産データ40によって定められた条件で実装基板を製造した場合にどれくらいの確率で不良が発生するかを推定する。この推定は、生産ロット別に行うことも可能である。さらに、実装基板の実装点MP(図17A、図17B参照)、接合点SP(図17B参照)、印刷はんだ18aのそれぞれにおける不良の発生率を詳細に分析することもできる。これにより、不良が発生しやすい場所を事前に特定して設計あるいは設備パラメータの設定等に反映させることが可能となる。
また、品質評価部28は、学習モデル部24を利用して不良発生要因を推定する。例えば印刷はんだの形状に不良(体積不足)がある場合、これまでの経験則で考えられる不良発生要因は、図17Aに示すマスク開口80aの寸法や形状、マスク80の厚み、印刷設備パラメータ(印圧、スキージ速度、版離動作関連パラメータ)、はんだペーストの物性、基板17を支えるサポートピンの位置等、非常に多くの項目を検討する必要がある。そのため、熟練した作業者でなければ、発生している不良の要因を絞り込むのは容易ではない。しかし、学習済みの学習モデル部24に不良発生への寄与度の大きな項目を推定させることで、短時間で対策すべき項目を絞り込むことができる。
次に、図1を参照しながら、実装基板製造ラインLについて説明する。実装基板製造ラインLは、上流(図1において左側)から、基板供給装置M1、スクリーン印刷装置M2、印刷はんだ検査装置M3、部品搭載装置(#1)M4、部品搭載装置(#2)M5、部品搭載装置(#3)M6、搭載済み部品検査装置M7、リフロー装置M8、リフロー後検査装置M9、基板回収装置M10を直列に連結して構成されている。なお、以下の記述では、部品搭載装置に付番された#1、#2、#3を省略している。各装置は基板搬送コンベアを有し、隣接する2つの装置の基板搬送コンベアは相互に連結され、作業対象の基板を上流側装置から下流側装置へ、または下流側装置から上流側装置へ逆順に搬送できる。
基板供給装置M1は部品実装作業前の基板を複数収納し、下流側装置であるスクリーン印刷装置M2へ供給する。これら複数の基板のそれぞれには、各基板を個別に特定する基板識別情報が付与されており、基板供給装置M1から供給された基板の基板識別情報は、読み取り装置6によって読み取られる。これにより実装基板製造ラインLに供給される各基板を個別に特定することができる。
スクリーン印刷装置M2は、印刷工程を実行する。すなわちスクリーン印刷装置M2は、印刷ステージにセットされた基板のランドに、はんだペーストを印刷して印刷はんだを形成する。これらのランドは基板の実装点に形成され、後工程にて部品がはんだ付けされる。印刷はんだ検査装置M3は、スクリーン印刷装置M2によって印刷された印刷はんだの状態を検査する。
部品搭載装置M4、M5、M6は、部品搭載工程を実行する。すなわち部品搭載装置M4、M5、M6は、印刷はんだ検査装置M3で印刷はんだの検査を終えた基板を受け取って、部品を印刷はんだが形成された基板に装着する。部品搭載装置M4、M5、M6ではそれぞれ、印刷はんだが形成された基板をサポート部材が支持し、その状態で印刷はんだが形成された基板にそれぞれの部品が装着される。
搭載済み部品検査装置M7は、基板に搭載された部品の状態を検査する。リフロー装置M8は、リフロー工程を実行する。すなわちリフロー装置M8は、部品が搭載された基板を加熱して印刷はんだに含まれるはんだ成分を溶融する。リフロー後検査装置M9は、リフロー工程後の基板における部品のはんだ付け状態を検査する。リフロー後検査装置M9としては、二次情報や三次元情報を取得可能な計測部を有する装置や、X線による計測部を有する装置等が使用できる。基板回収装置M10は、リフロー後検査済みの基板を回収する。
これらの各装置は実装ラインレベルの通信ネットワーク5によって相互に接続されており、さらに通信ネットワーク5は上位システム2に含まれる情報管理装置16を介して通信ネットワーク4と接続されている。すなわち情報処理装置1aは、実装基板製造ラインLを構成するスクリーン印刷装置M2と、印刷はんだ検査装置M3と、部品搭載装置M4、M5、M6と、リフロー装置M8とリフロー後検査装置M9との間で通信を行う情報管理装置16を有している。
上記構成において、印刷はんだ検査装置M3、搭載済み部品検査装置M7、リフロー後検査装置M9は、上述の印刷工程、部品搭載工程、リフロー工程の少なくとも一つの工程後の基板の実装点(図17A、図17Bに示す実装点MP参照)を検査する基板検査部に相当する。
次に、上位システム2のワークデータ記憶部12、生産データ記憶部11、検査情報記憶部13、稼働情報記憶部14にそれぞれ記憶されるデータ例について説明する。まず図3を参照してワークデータ記憶部12に記憶されるワークデータ30について説明する。ワークデータ30は、基板データ31、マスクデータ32、はんだペーストデータ33、部品諸元データ34を含んでいる。
さらに基板データ31は基板ID31a、ランド番号31b、実装点番号31c、実装点位置31k、ランド寸法31d、ランド位置31e、基板材質31f、基板厚み31g、接合点番号31hを含んでいる。
基板ID31aは、バーコードラベルなどの基板識別マークであり、基板供給装置M1から取り出された後に読み取り装置6によって読み取られる。ランド番号31bは、作業対象となる基板17(図17A参照)に形成された複数の部品接合用のランド17aを個別に特定するために用いられる。実装点番号31cは、この基板に実装される部品の実装位置である複数の実装点(図17Aに示す実装点MP参照)を個別に特定するために用いられる。実装点位置31kは基板17における実装点の位置を示す情報であり、二次元の座標(X,Y)で記録されている。
ここに示す例では、実装対象の部品は両端に接続用の電極を有するチップ部品であり、これらの電極のそれぞれと基板のランドとをはんだ接合するはんだ接合部位が実装点MPを挟んで2つ存在する。これらはんだ接合部位は、接合点SP(図17B参照)として、同様に基板データ31に接合点番号31hとして記憶されている。
ランド寸法31dは、上述のランド17aのサイズを示す情報である。またランド位置31eは、ランド17aの基板17における位置を示す情報である。すなわち図17Aに示すように、作業対象の基板17には実装点MPに対応して複数のランド17aが形成されている。ここでは、ランド寸法31dとしてランド17aの長さ寸法L1、幅寸法W1、ランド厚さT1が、ランド17aのランド番号31bに関連付けられて記憶されている。
ランド位置31eは、ランド17aの基板17における位置を示す情報である。すなわち図17Aに示すように、ランド17aの基板17における位置が、基板基準位置からの直交座標上での水平距離を示す座標値x1,y1によって示されている。ランド位置31eも同様に、ランド17aのランド番号31bに関連付けられて記憶されている。なお、ランド位置31eが、基板の反り変形を示す高さ位置(Z座標値)の情報を含んでもよい。
ランド寸法31d、ランド位置31e、実装点位置31kはいずれも実測値である。これらの値は、実装基板製造ラインLとは別にオフラインで設けられた専用の計測装置によって事前に取得され、基板データ31としてワークデータ記憶部12に記憶されている。すなわち基板データ31は、ランド17aを計測して得られたランド寸法に関する情報を含んだデータ構成を有する。基板材質31fは、その基板の材質を特定する情報である。基板厚み31gはその基板の厚み情報を記憶する。なお、少なくともランド寸法31d、ランド位置31eは、基板ID単位で、生産予定枚数分が保有されている。
基板データ31は、図15Aに示すようなデータ構造を有し、ランド番号31b毎に、そのランド番号で特定されるランド17aのランド寸法31dや、基板17におけるランド17aの位置を示すランド位置31eを読み出すことができる。
次にマスクデータ32について説明する。図3に示すように、マスクデータ32は、マスク開口番号32a、マスク開口寸法・位置32b、マスク厚み32c、製造元情報32dを含んでいる。マスク開口番号32aは、作業対象となるマスク80に形成された複数のマスク開口80aを個別に特定するための番号である(図17A参照)。マスク開口寸法・位置32bは、マスク開口80aの開口寸法およびマスク80における位置を示す情報である。ここでは、マスク開口寸法としてマスク開口80aの長さ寸法L2,幅寸法W2が、マスク開口80aのマスク開口番号32aに関連付けられて記憶されている。
またマスク開口寸法・位置32bでは、マスク開口80aの位置情報として、図17Aに示すように、マスク開口80aのマスク80における位置が、マスク基準位置からの直交座標上での距離x2,y2によって示されている。マスク開口寸法・位置32bも同様に、マスク80のマスク開口番号32aに関連付けられて記憶されている。
マスク開口寸法・位置32bにおいて、マスク開口80aの寸法・位置はいずれも実測値である。これらの値は、実装基板製造ラインLのオフラインに設けられた専用の検査装置によって事前に取得され、マスクデータ32としてワークデータ記憶部12に記憶されている。すなわちマスクデータ32は、スクリーン印刷装置M2で使用するマスク80のマスク開口80aの寸法を計測して得られたマスク開口寸法に関する情報を含んだデータ構成を有する。
マスク厚み32cは、マスク80の厚み情報を記憶する。また製造元情報32dは、マスク80を製造した製造者を特定するために付与された製造者コードである。このようにワークデータ30が製造元情報32dを含むことにより、個々の製造者に特有の誤差傾向が存在する場合に、それら誤差傾向が品質に及ぼす影響をデータ上で特定することが可能となる。
マスクデータ32は、図15Bに示すようなデータ構造を有しており、マスク開口番号32a毎に、そのマスク開口番号で特定されるマスク開口80aの寸法(L,W)や位置(X,Y)等を読み出すことができる。
次にはんだペーストデータ33について説明する。図3に示すように、はんだペーストデータ33は、はんだ粒子粒径33a、はんだ組成33b、はんだペースト物性33c、製造元情報33dを含んでいる。はんだ粒子粒径33aは、使用されるはんだペーストに含有されるはんだ粒子の粒径に関する情報、例えば平均粒径や粒度分布などのデータである。はんだ組成33bは、使用されるはんだの組成に関するデータであり、はんだペースト物性33cはそのはんだの粘度やチキソ性などの物性値に関するデータである。また製造元情報33dは、そのはんだペーストを製造した製造者を特定するために付与された製造者コードである。
次に部品諸元データ34について説明する。部品諸元データ34は、部品ID34a、部品形状タイプ34b、部品寸法34c、電極タイプ(リードタイプ)34d、電極数(リード数)34e、リード寸法・形状34fを含んでいる。部品ID34aは、実装対象の部品の種類を特定するためのデータである。同一品番で製造者が異なる部品が存在する場合には、製造者毎に異なる部品IDが各部品に付与される。部品形状タイプ34bは、対象となる部品を形状に基づいて区分した分類情報である。例えば一般的な直方体形状、円筒形、異形の特殊形状など、形状上の特徴によって適宜区分した結果が部品形状タイプ34bとして記憶される。
部品寸法34cは、対象となる部品の寸法データである。電極タイプ(リードタイプ)34dは、部品に形成された接続用の電極(リード)のタイプを、端子、ピンなどの種類毎に区分する。電極数(リード数)34eは、接続用の電極(リード)の数についてのデータである。リード寸法・形状34fは、接続用の電極がリードである場合に、そのリードの寸法や形状、例えばストレートであるか、屈曲形状であるかなどの区分を規定するデータである。これらの部品やリードの寸法として、部品メーカーが提供しているカタログ値もしくは測定装置による実測で得られた値を採用することができる。あるいは、部品搭載装置M4、M5、M6において部品認識カメラ110による認識(計測)で得られた値、さらにはこれらの値の統計的な値(平均値等)を部品やリードの寸法として採用することができる。
次に、図4を参照してワークデータ記憶部12に記憶されるリレーションテーブル59について説明する。リレーションテーブル59は、ワークデータ30に含まれるランド番号31b、実装点番号31c、接合点番号31h、マスク開口番号32aの関連性を定義する。リレーションテーブル59は、機械学習で利用されるデータセットを作製する際に参照される。図4に示すリレーションテーブル59では、関連性のあるランド番号31b、実装点番号31c、接合点番号31h、マスク開口番号32aが同じ行に記録される。
次に、この関連性について図17A、図17Bを参照して説明する。基板17には、実装点MPに実装される部品Pのはんだ接合用のランド17aが形成されている。図17Bでは両端に電極Paが形成されたチップ型の部品Pの例を示しており、基板17には、2つの電極Paに対応する2つのランド17aが存在する。また、スクリーン印刷機構のマスク80には、ランド17aに印刷はんだ18aを形成するための2つのマスク開口80aが形成されている。さらに、電極Paは、リフロー工程を経てはんだ接合部である接合点SPによってランド17aにはんだ接合される。
このように、基板に実装される部品Pが実装される実装点(位置)MPは、実装点番号31cで特定され、部品Pをはんだ接合するためのランド17aは、ランド番号31bで特定されている。同様に、ランド17aに印刷はんだ18aを形成するためのマスク開口80aは、マスク開口番号32aで特定され、部品Pをはんだ接合する接合点SPは、接合点番号31hで特定されている。そして、実装点MP、ランド17a、マスク開口80a、接合点SPは、実装点番号31c、ランド番号31b、マスク開口番号32a、接合点番号31hによって関連付けされる。
次に、実装基板製造ラインLを構成する設備の構成および機能を説明する。まず、図7を参照して、スクリーン印刷装置M2の構成および機能を説明する。基台61のX軸に沿った両側端部にはそれぞれ支持フレーム71が立設されており、支持フレーム71の間にスクリーン印刷装置M2を構成する以下の要素が配設されている。なお本実施の形態においては、図7における左右方向、すなわち印刷作業の対象となる基板17を搬送する基板搬送方向をX軸の方向と定義し、X軸に直交する奥行をY軸と定義している。なおX軸、Y軸に直交する鉛直方向をZ軸の方向と定義している。
基台61には、スクリーン印刷制御部60が内蔵されている。スクリーン印刷制御部60は、スクリーン印刷装置M2の作業動作の制御やスクリーン印刷装置M2に含まれるカメラによって取得された画像の認識処理を行う。例えば基板搬送動作、スクリーン印刷機構による印刷作業、第1のカメラ78、第2のカメラ79による認識処理、マスククリーニング機構(図示省略)によるマスク80の下面のクリーニング作業などの作業動作は、スクリーン印刷制御部60によって制御される。
また、スクリーン印刷制御部60は、上位システム2が保有するワークデータ30や生産データ40から必要なデータをダウンロードして記憶する。本実施形態では、ワークデータ30からは基板データ31、マスクデータ32、はんだペーストデータ33がダウンロードされる。生産データ40からは印刷設備パラメータ43、印刷設備セットアップ情報47がダウンロードされる。また、スクリーン印刷制御部60は、ワークデータ30や生産データ40を上位システム2へアップロードする機能も有する。本実施形態では、スクリーン印刷装置M2で作成または修正した印刷設備セットアップ情報47をアップロードすることができる。
基台61の上面には、印刷ステージ移動機構63によって移動する印刷ステージ62が配設されている。印刷ステージ移動機構63は印刷ステージのXYΘテーブル63xyθの上に第2の昇降機構63zを積層した構成となっている。XYΘテーブル63xyθを駆動することにより印刷ステージ62はX軸、Y軸、Θ方向に沿って水平移動し、第2の昇降機構63zを駆動することにより印刷ステージ62は昇降する。
印刷ステージ62は、上流から搬入される印刷対象の基板17を支持する。すなわち、印刷ステージ62は、搬入された基板17を支持するサポートピン65a(サポート部材)が設けられた基板サポート部65を有する。図17A、図17Bに示すように、基板17には、実装点MPに部品Pがはんだ付けされるランド17aが形成されている。そして印刷ステージ62は、サポートピン65aによって支持された基板17を、以下に説明するスクリーン印刷機構のマスク80に対して位置合わせする基板・マスク位置合わせ動作を行う。なお、基板17を支持するサポート部材はサポートピン65a以外にも様々なものが存在するが本実施形態ではサポートピン65aを例に説明する。
このとき、テーブル63xyθを駆動することにより、基板17をマスク80に対してXYΘ方向に位置合わせし、第2の昇降機構63zを駆動することにより基板17をマスク80の下面に当接させて位置合わせする。
スクリーン印刷機構は、マスク開口80aが形成されたマスク80と、マスク80上でスキージング動作を行う印刷ヘッド73とを有している。印刷ステージ62は、第2の昇降機構63zの上面に結合された昇降テーブル64を有している。昇降テーブル64の上面の両端には支持部材64aが立設されている。図7に示すように、支持部材64aの上端部には印刷ステージコンベア66bが結合されている。印刷ステージコンベア66bはX軸に沿って延びた駆動ベルトにより基板17をX軸に沿って搬送する。
印刷ステージコンベア66bの上流側、下流側の支持フレーム71には、それぞれに設けられた開口部を貫通して搬入コンベア66a、搬出コンベア66cが配置されている。印刷ステージ移動機構63を駆動することにより、印刷ステージコンベア66bは、搬入コンベア66a、搬出コンベア66cと連結される。矢印aで示すように搬入コンベア66aによって搬入された基板17は、印刷ステージコンベア66bに受け渡されて印刷ステージ62によって保持される。印刷ステージ62においてスクリーン印刷が終了した後の基板17は、印刷ステージコンベア66bから搬出コンベア66cに受け渡されて搬出される。
上述の構成において、印刷ステージコンベア66bおよび搬出コンベア66cは、上流から受け取った基板17を印刷ステージ62へ搬入し、印刷ステージ62から下流へ搬出する第1の基板搬送部を構成している。そしてスクリーン印刷制御部60は、少なくとも印刷ヘッド73とこの第1の基板搬送部とを制御する。スクリーン印刷制御部60は、第1の動作モードと、第2の動作モードとを有する。第1の動作モードでは、印刷ステージ62に搬入された基板17に印刷はんだが形成され、印刷はんだが形成された後、基板17は印刷ステージ62から下流へ搬出される。第2の動作モードでは、印刷はんだを形成することなく上流から受け取った基板17が下流へ搬出される。
昇降テーブル64の上面には、バックアップ昇降機構である第1の昇降機構65bが配置され、第1の昇降機構65bの上面には、第1の昇降機構65bによって昇降駆動される基板サポート部65が配置されている。基板サポート部65の上面には、複数のサポートピン65aが、予め作業対象の基板17におけるサポート位置に応じて設定される基板サポートレイアウトにしたがって配置されている。印刷ステージコンベア66bに基板17が搬入された状態で、スクリーン印刷制御部60は、第1の昇降機構65bを駆動して基板サポート部65を上昇させる。この動作により、複数のサポートピン65aは基板17の下面に当接して、基板17を上述のスクリーン印刷機構による印刷高さ位置に支持する。スクリーン印刷機構による印刷が終了した後、スクリーン印刷制御部60は、第1の昇降機構65bを駆動して基板サポート部65を下降させ、持ち上げた基板17を印刷ステージコンベア66bに戻す。
このようにして基板17が下面に当接したマスク80の上面で、スクリーン印刷制御部60は、以下に説明するスクリーン印刷部の印刷ヘッド73にスクリーン印刷動作を行わせる。この動作により、複数のサポートピン65aによって支持された基板17に、マスク80の上面からマスク開口80aを通じて印刷ヘッド73によりはんだペースト18が印刷される(図8参照)。すなわち本実施形態におけるスクリーン印刷装置M2では、実装点MPに部品Pがはんだ付けされるランド17aが形成された基板17を、下方からサポート部材であるサポートピン65aが支持する。スクリーン印刷機構は、その状態でランド17aにはんだペースト18を印刷して印刷はんだ18a(図17B参照)を形成する。
図7において、1対の支持フレーム71の上端には、印刷ヘッド73を支持する印刷ヘッド支持ビーム72が、直動ガイド機構72aを介して、Y軸に沿って移動自在に配置されている。印刷ヘッド支持ビーム72の一端部は、印刷ヘッド移動機構74を介して一方の支持フレーム71に結合されている。印刷ヘッド移動機構74を駆動することにより、印刷ヘッド支持ビーム72によって支持された印刷ヘッド73は、スキージング方向であるY軸に沿った方向(紙面に垂直な奥行方向)に往復移動する。
図8に示すように、印刷ヘッド73に設けられたスキージ保持部73aは、スキージ73bを保持している。スキージ保持部73aはスキージ昇降機構(図示省略)によって昇降駆動される。この昇降によりスキージ73bの下端部はマスク80の上面に対して接離する。マスク80には印刷対象の基板17のランド17aに対応してマスク開口80aが形成されている。基板17をマスク80の下面に当接させた状態では、マスク開口80aはランド17aの上に位置する。
基板17を対象としたスクリーン印刷において、スクリーン印刷制御部60は、マスク80の上面にはんだペースト18を供給した状態で、印刷ヘッド73をスキージング方向(矢印b)へ移動させる。このスキージング動作において、スキージ73bは、マスク80の上面においてはんだペースト18を掻き寄せながら摺動する。この摺動によりマスク開口80a内にははんだペースト18が充填される。次いで基板17をマスク80の下面から離隔させる版離れを実行することにより、基板17のランド17aにはマスク開口80a内のはんだペースト18が転写される。以上の動作により、印刷対象の基板17には、マスク開口80aを介してはんだペースト18が所定の印刷パターンで印刷される。
このスクリーン印刷動作を反復する過程において、スキージ73bによって掻き寄せられるはんだペースト18の残量は次第に減少する。はんだペースト18の残量を検出するため、印刷ヘッド73は距離センサ81を有している。距離センサ81は反射型の光学センサであり、マスク80の上面においてスキージ73bによって掻き寄せられるはんだペースト18の表面の位置を、反射光(矢印c)を受光することにより検出する。
距離センサ81による検出結果を受信することにより、はんだペースト検出部82は、マスク80の上面を移動するはんだペースト18の高さh、またはスキージ73bによってマスク80の上面で流動するはんだペースト18のローリング径dを計測することができる。このようにして計測された高さhまたはローリング径dに基づき、はんだペースト検出部82は、マスク80におけるはんだペースト18の残量を判断する。
図7において、印刷ステージ62の上面とマスク80の下面との間には、第1のカメラ78、第2のカメラ79が取り付けられた移動部材77を、X軸およびY軸に沿って移動させるカメラ移動機構が配設されている。このカメラ移動機構は、カメラX軸移動機構76x、カメラY軸移動機構76yを含む。カメラX軸移動機構76xは、移動部材77を、X軸に平行なカメラX軸ビーム75に沿って移動させる。カメラY軸移動機構76yは、カメラX軸ビーム75を、Y軸に沿って移動させる。支持フレーム71の内側面に配置された直動ガイド機構75cは、カメラX軸ビーム75のY軸に沿った移動をガイドする。
カメラX軸移動機構76xは、カメラX軸モータ75a、送りねじ75bおよびナット部(図示省略)より構成されている。カメラX軸モータ75aを駆動することにより、ナット部に結合された移動部材77はX軸に沿って移動する。カメラY軸移動機構76yは、カメラY軸モータ(図示省略)、送りねじおよびカメラX軸ビーム75に結合されたナット部(図示省略)より構成されている。カメラY軸モータが駆動することにより、カメラX軸ビーム75はY軸に沿って移動する。
ここで第1のカメラ78、第2のカメラ79の機能を説明する。第1のカメラ78は、その撮像方向が下方に向くように配置されており、印刷ステージ62に保持された基板17を撮像する。基板17に形成された認識マーク(図示省略)やランド17aが第1のカメラ78の撮像対象である。第2のカメラ79は、その撮像方向が上方に向くように配置されており、マスク80に形成されたマスク認識マーク(図示省略)を撮像する。第2のカメラ79が撮像した画像を認識処理部(図示省略)によって認識処理することにより、マスク80における中心やマスク開口80aの位置が認識される。
スクリーン印刷装置M2がスクリーン印刷を実行する際、第1のカメラ78、第2のカメラ79による認識によって検出された基板17の位置ずれ、マスク80の位置ずれに基づいて、スクリーン印刷制御部60は、印刷ステージ移動機構63に位置補正動作を実行させる。この動作により、基板17は、マスク80に対して位置合わせされる。そしてこの位置合わせ結果は、図6Bに示す印刷稼働情報56の基板・マスク位置合わせ情報56aとして稼働情報記憶部14に記憶される。
次に図9を参照して、印刷はんだ検査装置M3の構成および機能を説明する。基台91には印刷はんだ検査制御部90が内蔵されている。印刷はんだ検査制御部90は、印刷はんだ検査装置M3における各種の作業動作や処理、例えば基板搬送動作、撮像部97による基板17の撮像処理、撮像により得られた画面の認識処理等を行う。また、印刷はんだ検査制御部90は、上位システム2が保有する印刷はんだ検査プログラム50aをダウンロードして記憶する。
基台91のX軸に沿った両側端部にはそれぞれ支持フレーム91aが立設されている。2つの支持フレーム91aの上端部には、水平な頂板91bが設けられている。支持フレーム91a、頂板91bで閉囲される空間に、印刷はんだ検査装置M3を構成する以下の要素が配設されている。なお本実施形態においては、図9における左右方向、すなわち印刷はんだ検査の対象となる基板17を搬送する基板搬送方向をX軸の方向と定義し、X軸に直交する奥行をY軸と定義している。
基台91の上面には、検査ステージ移動機構93と、検査ステージ移動機構93によって移動する検査ステージ92が配設されている。検査ステージ移動機構93は、検査ステージのXYΘテーブル93xyθと、XYΘテーブル93xyθの上に積層された移動部材93aとを有する。XYΘテーブル93xyθを駆動することにより検査ステージ92はX軸、Y軸、Θ方向に水平移動する。
検査ステージ92は、上流から搬入されるペースト印刷済みの基板17を支持する。すなわち、検査ステージ92は、搬入された基板17を支持するサポートピン95aが設けられた基板バックアップ部95を有する。また検査ステージ92は、サポートピン95aによって支持された基板17を、以下に説明する印刷はんだ検査機構の撮像部97に対して位置合わせする位置合わせ動作を行う。このとき、XYΘテーブル93xyθを駆動することにより、検査ステージ92は、基板17をマスク80に対してXYΘ方向に位置合わせする。
撮像部97は、頂板91bから下垂して設けられた鏡筒部97aを有している。鏡筒部97aの上部には、カメラ98が、その撮像方向を下向きにして内蔵されている。鏡筒部97aは検査ステージ92の上方に位置しており、カメラ98によって検査ステージ92に保持された基板17を撮像することができる。鏡筒部97aの下端部には、上段照明99a、下段照明99bを内蔵した照明部97bが装着されている。
カメラ98による撮像時には、撮像対象に適した照明条件に応じて上段照明99a、下段照明99bのいずれかまたは双方が点灯される。さらに鏡筒部97aの側面には同軸照明99cが設けられている。同軸照明99cが点灯することにより、鏡筒部97aの内部に配置されたハーフミラー97cを介して基板17をカメラ98の撮像方向と同軸方向から照明することができる。
このように、照明条件を切り替えることにより、同一のカメラ98によって異なる用途の検査を実行することができる。すなわち、印刷はんだ検査装置M3は、印刷はんだ検査部としての機能と、ランド計測部としての機能とを有している。印刷はんだ検査部として、印刷はんだ検査装置M3は、印刷はんだが形成された基板17の、撮像部97で取得した画像に基づいて印刷はんだの状態を検査する。またランド計測部として、印刷はんだ検査装置M3は、印刷はんだが形成されていない基板17の、撮像部97で取得した画像に基づいてランド17aを計測する。
検査ステージ92は、移動部材93aの上面に結合されたバックアップ昇降機構94を有している。移動部材93aの上面の両端には支持部材93bが立設されており、支持部材93bの上端部には検査ステージコンベア96bが結合されている。検査ステージコンベア96bはX軸に沿って延びた駆動ベルトにより基板17をX軸に沿って搬送する。
検査ステージコンベア96bの上流側、下流側の支持フレーム91aには、それぞれに設けられた開口部を貫通して搬入コンベア96a、搬出コンベア96cが配置されている。検査ステージ移動機構93を駆動することにより、検査ステージコンベア96bは、搬入コンベア96a、搬出コンベア96cと連結される。矢印dで示すように搬入コンベア96aによって搬入された基板17は、検査ステージコンベア96bに受け渡されて検査ステージ92によって保持される。検査ステージ92において印刷はんだ検査が終了した後の基板17は、検査ステージコンベア96bから搬出コンベア96cに受け渡されて搬出される。
上述構成において、搬入コンベア96a、検査ステージコンベア96b、搬出コンベア96cは、第2の基板搬送部を構成している。この第2の基板搬送部は、印刷はんだが形成された基板17を上流から受け取って検査ステージ92へ搬入し、印刷はんだの検査が終了した基板17を検査ステージ92から下流へ搬送する。そして印刷はんだ検査制御部90は、少なくとも撮像部97と前述の印刷はんだ検査部とランド計測部と第2の基板搬送部とを制御する。
この構成において、印刷はんだ検査制御部90は、以下に説明する印刷はんだ検査モードと基板計測モードを選択的に実行する。印刷はんだ検査モードで、印刷はんだ検査制御部90は、印刷はんだが形成された基板17を検査ステージ92へ搬入して印刷はんだを検査し、印刷はんだの検査が終了した基板17を検査ステージ92から下流へ搬送する。また基板計測モードでは、印刷はんだ検査制御部90は、印刷はんだが形成されていない基板17を検査ステージ92へ搬入してランド17aを計測し、ランド17aの計測が終了した基板17を検査ステージ92から上流へ戻す。
そしてスクリーン印刷装置M2においてスクリーン印刷制御部60は、第3の動作モードを実行する。第3の動作モードでスクリーン印刷制御部60は、印刷はんだ検査装置M3の検査ステージ92から上流へ戻された基板17を印刷ステージ62に搬入して印刷はんだを形成し、印刷はんだが形成された基板17を印刷ステージ62から下流へ搬出する。上記構成において、実装基板製造システム1は印刷はんだ検査装置M3と通信可能な情報管理装置16を有している。情報管理装置16は、印刷はんだ検査装置M3から、印刷はんだの検査結果と、ランド17aの計測結果とを受け取る。
移動部材93aの上面には、バックアップ昇降機構94と、バックアップ昇降機構94によって昇降駆動される基板バックアップ部95とが配置されている。基板バックアップ部95の上面には、複数のサポートピン95aが、予め作業対象の基板17におけるサポート位置に応じて設定される基板サポートレイアウトにしたがって配置されている。印刷はんだ検査制御部90は、検査ステージコンベア96bに基板17が搬入された状態で、バックアップ昇降機構94を駆動して基板バックアップ部95を上昇させる。この動作により、複数のサポートピン95aは基板17の下面に当接して、基板17を上述の撮像部97による撮像高さ位置に支持する。
撮像部97による撮像が終了した後には、印刷はんだ検査制御部90は、再びバックアップ昇降機構94を駆動して基板バックアップ部95を下降させ、持ち上げた基板17を検査ステージコンベア96bに戻す。このようにして印刷はんだ検査が終了した後の基板17は、検査ステージコンベア96bから搬出コンベア96cに受け渡されて搬出される。
次に、図10を参照して、部品搭載装置M4、M5、M6の構成および機能を説明する。部品搭載装置M4、M5、M6は同様の構成なので、代表して部品搭載装置M4について説明する。基台101には、部品搭載制御部100が内蔵されている。部品搭載制御部100は、以下に説明する部品搭載装置M4の作業動作の制御や部品搭載装置M4に設けられた種々のカメラによって取得された画像の認識処理を行う。部品搭載制御部100は、例えば基板搬送動作、部品搭載機構による部品搭載作業、部品認識カメラ110、基板認識カメラ111による認識処理などを制御する。
部品搭載制御部100は、上位システム2が保有するワークデータ30や生産データ40から必要なデータをダウンロードして記憶する。本実施形態では、図3に示すワークデータ30からは基板データ31、部品諸元データ34がダウンロードされ、生産データからは搭載設備パラメータ44、搭載設備セットアップ情報48がダウンロードされる。また、部品搭載制御部100は、ワークデータ30や生産データ40を上位システム2へアップロードする。本実施形態では、部品搭載制御部100は、搭載設備セットアップ情報48をアップロードすることができる。
基台101の上面には、一対の基板搬送コンベア102が基板搬送方向であるX軸の方向(図10において紙面に垂直な方向)に配置されている。基板搬送コンベア102は、作業対象の基板17をX軸に沿って搬送し、以下に説明する部品搭載機構による搭載作業位置に位置決めする。基台101の上面において一対の基板搬送コンベア102の間には、基板下受け部103が配備されている。基板下受け部103は、複数のサポートピン103aとサポートピン昇降機構103bとを含む。サポートピン昇降機構103bは、複数のサポートピン103aを昇降させる。基板17が搭載作業位置に搬入された状態において、部品搭載制御部100は、サポートピン昇降機構103bを駆動してサポートピン103aを上昇させることにより、複数のサポートピン103aによって基板17の下面を支持する。
基台101のY軸に沿った両側には、それぞれ部品供給用の台車104がセットされている。台車104の上面には、部品供給ユニットであるテープフィーダ105が装着されている。テープフィーダ105は、基板17に搭載される部品を収納したキャリアテープをピッチ送りすることにより、以下に説明する部品搭載機構による部品取り出し位置に部品を供給する。
次に部品搭載機構の構成を説明する。基台101によって支持されたフレーム部106には、ヘッド移動機構107がY軸に沿って配置されている。ヘッド移動機構107には、移動部材108を介して搭載ヘッド109が装着されている。ヘッド移動機構107を駆動することにより、搭載ヘッド109はX軸およびY軸に沿って移動する。これにより、搭載ヘッド109は基板搬送コンベア102に位置決め保持された基板17とテープフィーダ105との間で移動する。搭載ヘッド109の下端部には部品保持ノズル109a設けられている。搭載ヘッド109は、部品保持ノズル109aによってテープフィーダ105から取り出した部品を基板17に搭載する。
基板搬送コンベア102とテープフィーダ105との間には部品認識カメラ110が配置されている。テープフィーダ105から部品を取り出した搭載ヘッド109を部品認識カメラ110の上方に位置させることにより、部品認識カメラ110は搭載ヘッド109に保持された部品を下方から撮像する。これにより、搭載ヘッド109に保持された状態の部品が認識され、部品の識別や位置ずれの検出が行われる。
移動部材108には、基板認識カメラ111が、その撮像方向が下向きになるように、配置されている。基板認識カメラ111を搭載ヘッド109とともに移動させて基板17の上方に位置させることにより、基板認識カメラ111は基板搬送コンベア102に保持された基板17を撮像することができる。これにより基板17に形成された認識マークや実装点が認識され、基板17の位置が検出される。部品搭載装置M4による部品搭載においては、部品認識カメラ110、基板認識カメラ111による撮像によって取得された画像を認識処理した結果に基づいて、部品搭載機構による部品搭載動作が補正される。
次に図5を参照して、生産データ記憶部11に記憶される生産データ40について説明する。生産データ記憶部11には実装基板製造ラインLの各装置による生産に使用される生産データ40が格納されている。生産データ40は、装着プログラム41、設備パラメータ42、設備セットアップ情報46、検査プログラム50を含んでいる。装着プログラム41は、実装基板製造ラインLによる部品装着作業を実行するための作業動作プログラムである。
図15Cは、部品搭載装置M4、M5、M6による部品搭載工程において使用される装着プログラム41を示している。装着プログラム41では、装着シーケンスデータに規定された装着順41aに、部品ID34a、実装点番号31c、部品供給位置44gが対応している。部品ID34aは、搭載対象の部品を特定する。実装点番号31cは、その部品が実装される実装点の番号を示す。部品供給位置44gは、装着位置41bおよびテープフィーダ105においてその部品が供給されるスロット位置を特定する。装着位置41bは、図3に示す基板データ31の実装点位置31kとほぼ同じである。
図5において、設備パラメータ42は、作業動作を実行する上で必要とされる設備パラメータ、すなわちその設備を作動させる際に設定されるマシンパラメータなどの情報である。設備パラメータ42としては、印刷設備パラメータ43、搭載設備パラメータ44、リフロー設備パラメータ45が規定されている。印刷設備パラメータ43は、スクリーン印刷装置M2に設定されて前述の印刷工程で実際に使用された印刷条件を示す。搭載設備パラメータ44は、部品搭載装置M4、M5、M6に設定されて前述の部品搭載工程で実際に使用した搭載条件を示す。リフロー設備パラメータ45は、リフロー装置M8に設定されてリフロー装置M8における加熱温度を含むリフロー条件を示す。本実施の形態に示す情報処理装置1aでは、前述の基板データ31、マスクデータ32、印刷条件、搭載条件およびリフロー条件が、実装プロセス支援装置3が有するデータセット記憶部22(記憶部)に記憶される。
さらに印刷設備パラメータ43には、設備ID43a、印圧43b、スキージ速度43c、アタック角43d、版離動作関連パラメータ43e、マスククリーニング関連パラメータ43fが規定されている。設備ID43aは使用されるスクリーン印刷装置M2を個別に特定する装置識別情報である。印圧43bはスクリーン印刷装置M2においてスキージ73bをマスク80に対して押し当てる際の圧力値である。
スキージ速度43cは、図8に示すスキージ73bをマスク80上で摺動させるスキージング動作時のスキージ73bの移動速度である。アタック角43dはスキージング動作時のマスク80に対するスキージ73bの設定角度である。版離動作関連パラメータ43eは、スキージング後にマスク80の下面から基板17を離隔させる版離動作における動作パラメータであり、例えば版離れ動作速度や変速パターンなどの動作条件を規定する。マスククリーニング関連パラメータ43fは、スクリーン印刷動作においてはんだペースト18のにじみなどのマスク80下面の汚損を拭き取って除去するマスククリーニング動作の実行に関する。
図5において、搭載設備パラメータ44は、設備ID44a、搭載速度44b、搭載荷重44c、押し込み量44d、使用ノズル44e、使用ヘッド44f、部品供給位置44g、フィーダID44hを含む。設備ID44aは、使用される部品搭載装置M4、M5、M6を個別に特定する装置識別情報である。搭載速度44bは、図10に示す搭載ヘッド109によって部品を基板に搭載する際の搭載ヘッド109の下降速度であり、搭載荷重44cは搭載ヘッド109によって部品を基板17に押圧する際の荷重値を示している。
押し込み量44dは、部品搭載動作において基板17上に着地した部品を搭載ヘッド109によってさらに押し下げる際の押し下げ量を示す。使用ノズル44e、使用ヘッド44fは、その部品の搭載動作に使用される部品保持ノズル109a、搭載ヘッド109の種類をそれぞれ示している。部品供給位置44gは、部品搭載装置M4、M5、M6の部品供給部において、その部品が搭載ヘッド109に供給された位置、すなわち部品供給に使用されたテープフィーダ105が装着されたフィーダスロットを特定する。フィーダID44hは、その部品の部品供給に使用されたテープフィーダ105を個別に特定する。
図15Dは、部品搭載装置M4、M5、M6による部品搭載工程において適用される搭載設備パラメータ44を示している。搭載設備パラメータ44では、部品ID34aによって特定される部品毎に、その部品の吸着に使用される使用ノズル44eを特定するノズルID44e*に、部品吸着動作におけるマシンパラメータが対応している。これらのマシンパラメータには、部品保持ノズル109aの吸着高さ44i、吸着速度44j、吸着停止時間44kおよび押し込み量44dが例示されている。
図5において、リフロー設備パラメータ45は、設備ID45a、基板搬送速度45b、設定温度45cを含む。設備ID45aは、使用されるリフロー装置M8を個別に特定する装置識別情報である。基板搬送速度45bは、リフロー装置M8において加熱雰囲気下で基板17を搬送する際の搬送速度である。設定温度45cは、リフロー装置M8のゾーン毎に予め規定された加熱温度である。
設備セットアップ情報46は、実装基板製造ラインLにおける生産機種の切り替え時に際し、各設備の状態を生産対象に応じて切り替えるセットアップ作業の内容を示す。設備セットアップ情報46としては、印刷設備セットアップ情報47、搭載設備セットアップ情報48およびリフロー設備セットアップ情報49が規定されている。印刷設備セットアップ情報47、搭載設備セットアップ情報48、リフロー設備セットアップ情報49はそれぞれ、スクリーン印刷装置M2、部品搭載装置M4、M5、M6、リフロー装置M8を対象とする。
印刷設備セットアップ情報47は、基板サポートレイアウト47a、マスク情報47b、スキージ情報47c、コンベア幅情報47dを含んでいる。基板サポートレイアウト47aは、スクリーン印刷装置M2における基板サポート(図7に示すサポートピン65a参照)の配置を示す情報である。基板サポートレイアウト47aは印刷ステージ62におけるサポートピン65aの座標であり、後述するランドサポート情報130を作成する際に参照される。マスク情報47bは、スクリーン印刷装置M2にセットされたマスク80の種類に関する情報である。スキージ情報47cは、スクリーン印刷装置M2の印刷ヘッド73に装着されるスキージ73bの種類に関する。コンベア幅情報47dは、スクリーン印刷装置M2において基板17を搬送する基板搬送コンベアの幅寸法を規定する。
搭載設備セットアップ情報48は、基板サポートレイアウト48a、コンベア幅情報48bを含んでいる。基板サポートレイアウト48aは、部品搭載装置M4、M5、M6における基板サポート(図10に示すサポートピン103a参照)の配置を示す情報である。基板サポートレイアウト48aは基板下受け部103におけるサポートピン103aの座標であり、後述する基板サポート情報を作成する際に参照される。コンベア幅情報48bは、部品搭載装置M4、M5、M6において基板17を搬送する基板搬送コンベアの幅寸法を規定する。またリフロー設備セットアップ情報49はコンベア幅情報49aを含んでいる。コンベア幅情報49aは、リフロー装置M8において基板17を搬送する基板搬送コンベアの幅寸法を規定する。
検査プログラム50は、実装基板製造ラインLに配置された検査装置による検査に使用される。検査プログラム50は、印刷はんだ検査装置M3において使用される印刷はんだ検査プログラム50aと、搭載済み部品検査装置M7において使用される搭載済み部品検査プログラム50bと、リフロー後検査装置M9において使用されるリフロー後検査プログラム50cとを含む。これらの各検査装置がそれぞれの検査プログラムを実行することにより、作業対象の基板17を対象として、印刷半田検査、搭載済み検査、リフロー後検査が実行される。
次に図6A、図6Bを参照して、検査情報記憶部13に記憶される検査情報51、および稼働情報記憶部14に記憶される稼働情報55について説明する。検査情報51は、実装基板製造ラインLに配置された検査装置による検査結果に関する。また稼働情報55は、実装基板製造ラインLに配置された作業装置の稼働状態に関する。
図6Aに示すように、検査情報51は、印刷はんだ検査情報52、搭載済み部品検査情報53、リフロー後検査情報54を含む。印刷はんだ検査情報52は、印刷はんだ検査装置M3によって印刷が実行された後の基板17を対象とした検査によって取得される。印刷はんだ検査情報52は、印刷半田検査における検査結果、すなわち印刷の良否判定や印刷状態を示す印刷はんだ検査結果52aと、印刷されたはんだの面積や体積などの計測結果を示す印刷はんだ計測データ52bとを含む。
搭載済み部品検査情報53は、部品搭載装置M4、M5、M6によって部品搭載が実行された後の基板17を対象とした検査によって取得される。搭載済み部品検査情報53は、搭載済み部品検査における検査結果、すなわち搭載状態の良否判定を示す搭載済み部品検査結果53aと、搭載済み部品の位置ずれ量などの計測結果を示す搭載済み部品計測データ53bとを含む。
リフロー後検査情報54は、リフロー装置M8によりリフローが実行された後の基板17を対象とした検査によって取得される。リフロー後検査情報54は、リフロー後検査における検査結果、すなわちリフロー後の部品接合状態の良否判定を示すリフロー後検査結果54aと、リフロー後部品の位置ずれ量などの計測結果を示すリフロー後計測データ54bとを含む。
図6Bに示すように、稼働情報55は、印刷稼働情報56と、搭載稼働情報57と、リフロー稼働情報58とを含む。印刷稼働情報56は、印刷はんだ検査装置M3による印刷作業の稼働状態を示す情報であり、以下に説明する情報が時系列的に取得タイミングと関連づけられて記憶されている。
印刷稼働情報56は、基板・マスク位置合わせ情報56aと、はんだ補給情報56bと、マスククリーニング情報56cと、残量56dとを含む。基板・マスク位置合わせ情報56aは、スクリーン印刷装置M2における基板17とマスク80の位置合わせ状態に関し、印刷動作に先立って基板17およびマスク80を位置認識した認識結果に基づき検出される。はんだ補給情報56bは、スクリーン印刷装置M2におけるはんだ補給の実行履歴を示す。
マスククリーニング情報56cは、スクリーン印刷動作を反復実行する過程におけるマスククリーニングの実行履歴を示す。残量56dは、スクリーン印刷装置M2の印刷ヘッド73におけるはんだの残量を示す。図8に示すように、マスク80の上面においてスキージ73bによってかき寄せられるはんだペースト18の高さhまたはローリング径d(参照)がはんだの残量の指標とされている。
搭載稼働情報57は、部品搭載装置M4、M5、M6による部品搭載作業の稼働状態を示す。搭載稼働情報57は、部品認識情報57aと、補正情報57bと、フィードバック情報57cとを含む。部品認識情報57aは、部品搭載装置M4、M5、M6において部品認識カメラ110によって部品を認識して得られた結果や、基板認識カメラ111によって基板17を認識して位置検出を行った結果に関する。部品を認識して得られた結果としては、部品保持ノズル109aに保持された部品の位置や部品の寸法(長さ、幅、厚み、リード寸法等)が含まれる。補正情報57bは、部品搭載装置M4、M5、M6において基板17、部品を認識した結果に基づいて搭載位置の補正を行った補正履歴に関する。またフィードバック情報57cは、後工程装置から部品搭載装置M4、M5、M6に対して行われたフィードバックの履歴を示す。
リフロー稼働情報58は、リフロー装置M8によるリフローの稼働状態を示す。リフロー稼働情報58は、ゾーン温度58aと、基板搬送速度58bとを含む。ゾーン温度58aは、リフロー装置M8の内部を区分して設定された複数の加熱ゾーンのそれぞれにおける加熱温度を時系列に記録した情報である。基板搬送速度58bは、基板17の各加熱ゾーンにおける滞留時間など、リフロー装置M8内における基板17の搬送状態(プロファイル)を示す。
次に、図21A~図22Bを参照して基板サポート情報記憶部19に記憶される実装点サポート情報120とランドサポート情報130について説明する。実装点サポート情報120は、部品搭載装置M4、M5、M6において部品搭載工程における基板17の実装点MPとサポートピン103aとの相対的な位置関係に関する。すなわち、実装点サポート情報120は、部品搭載工程において実装点MPがサポートピン103a等の支持部材でどのように支持されているかを意味する。
実装基板の製造では基板17を支持するサポートピン103aの配置が部品搭載工程やその後のリフロー工程での品質に少なからず影響する。したがって、サポートピン103aの配置と不良との因果関係についても学習モデル部24に学習させる必要がある。本実施形態では、学習可能な情報として、実装点MPとサポートピン103aとの相対的な位置関係を示す実装点サポート情報120が学習モデル部24に提供される。
実装点MPとサポートピン103aとの相対的な位置関係については様々な規定方法が考えられるが、本実施形態では、実装点MPから所定の範囲内に存在するサポートピン103aの数で規定する。図21Bに示すように、実装点MPのそれぞれ(MP1、MP2、MP3)を中心とする半径D1の領域R1を設定し、領域R1内に存在するサポートピン103aの数によって実装点MPのそれぞれのサポート状態を示している。
図21Aは、このようにして作成された実装点サポート情報120を示している。実装点サポート情報120では、実装点MPを個別に特定する実装点番号120a(1001,1002,・・・)に、サポートタイプ120b、サポート数120c、コンベア近傍120dが対応している。サポートタイプ120bは、実装点MPを支持するサポート態様、すなわち用いられているサポート部材がピンタイプであるか面タイプであるかを示している。サポート数120cは、実装点MPについての領域R1内におけるサポート部材の数を示している。なお、実装点番号120aとしてはワークデータの実装点番号31cを使用する。
コンベア近傍120dは、実装点MPが基板17の側端を支持する基板搬送コンベア102の近傍にあって、領域R1が基板搬送コンベア102に重なっている状態にあるか否かを示す。ここでは、実装点MPが基板搬送コンベア102の近傍にある場合には、その旨を示す記号(ここでは1)が実装点MPのコンベア近傍120dに入力される。このような実装点サポート情報120を作成することにより、学習モデル部24に実装点MPのそれぞれのサポート状態を学習させることができる。
ランドサポート情報130は、スクリーン印刷装置M2において印刷工程における基板17のランド17aとサポートピン65aとの相対的な位置関係に関する。すなわちランドサポート情報130は、印刷工程においてランド17aがサポートピン65a等の支持部材でどのように支持されているかを意味する。印刷工程では基板17を支持するサポートピン65aの配置が印刷はんだの品質に大きく影響する。したがって、サポートピン65aの配置と不良の因果関係についても学習モデル部24に学習させる必要がある。本実施形態では、学習可能な情報として、ランド17aとサポートピン65aとの相対的な位置関係を示すランドサポート情報130が学習モデル部24に提供される。
ランド17aとサポートピン65aとの相対的な位置関係については様々な規定方法が考えられるが、本実施の形態では実装点サポート情報120と同じ思想で規定する。図22Bに示すように、ランド17aのそれぞれを中心とする半径D2の領域R2を設定し、領域R2内に存在するサポートピン65aの数によってランド17aのそれぞれのサポート状態を示している。
図22Aは、ランドサポート情報130を示している。ランドサポート情報130では、ランド17aを個別に特定するランド番号130a(1001-1,1001-2,1002-1,・・・)に、サポートタイプ130b、サポート数130c、コンベア近傍130dが対応している。なお、ランド番号130aとしては、ワークデータのランド番号31bを使用する。このようなランドサポート情報130を作成することにより、学習モデル部24にランド17aのそれぞれのサポート状態を学習させることができる。
実装点サポート情報120とランドサポート情報130は情報管理装置16によって作成される。情報管理装置16は、ワークデータ30の基板データ31と設備セットアップ情報46に含まれる基板サポートレイアウト47a、48aとから、実装点サポート情報120とランドサポート情報130とを作成する。情報管理装置16は、作成した実装点サポート情報120とランドサポート情報130とを基板サポート情報記憶部19に記憶させる。このように、情報管理装置16は、基板17における実装点MPもしくはランド17aの位置に関する情報(実装点位置31k、ランド位置31e)と、各設備におけるサポート部材の位置に関する情報(基板サポートレイアウト47a、48a)とに基づいて基板サポート情報を作成する。すなわち、情報管理装置16は、基板サポート情報作成部として機能する。
情報管理装置16は、基板17における実装点MPの位置を示す情報として、ワークデータ30の基板データ31から実装点位置31kを読み取る。また情報管理装置16は、部品搭載装置M4,M5、M6におけるサポートピン103aの位置を示す情報として、設備セットアップ情報46から基板サポートレイアウト48aを読み取る。そして情報管理装置16は、図21Aに例示した実装点サポート情報120を作成する。なお、部品搭載装置M4、M5、M6でサポートピン103aのレイアウトが異なる場合、情報管理装置16は、部品搭載装置M4,M5、M6のそれぞれに対して実装点サポート情報120を作成する。このように、情報管理装置16は実装点サポート情報作成部として機能する。なお、基板17における実装点MPの位置を示す情報として実装点位置31kの代わりに生産データ40の装着プログラム41に含まれる装着位置41b(図15C参照)を使用してもよい。
情報管理装置16は、基板17におけるランド17aの位置を示す情報として、ワークデータ30の基板データ31からランド位置31eを読み取る。また情報管理装置16は、スクリーン印刷装置M2におけるサポートピン65aの位置を示す情報として、設備セットアップ情報46から基板サポートレイアウト47aを読み取る。そして情報管理装置16は、図22Aに例示したランドサポート情報130を作成する。このように、情報管理装置16はランドサポート情報作成部として機能する。
次に実装基板製造システム1における実装基板生産準備工程について、図11を参照して説明する。まず実装基板生産前には、生産データ40およびワークデータ30の準備が行われる(ST1)。すなわち、情報管理装置16は、生産データ40を構成する装着プログラム41、設備パラメータ42、設備セットアップ情報46、検査プログラム50を準備して生産データ記憶部11に記憶させる。合わせて、情報管理装置16は、ワークデータ30を構成する基板データ31、マスクデータ32、はんだペーストデータ33、部品諸元データ34を準備してワークデータ記憶部12に記憶させる。基板データ31は基板識別番号単位で準備され、基板データ31のランド寸法31d、ランド位置31eは、実装基板製造ラインLとは別個に設けられた専用の計測装置を用いて取得される。
なお、設備パラメータ42については設備パラメータ設定・分析部27を利用して準備されてもよい。すなわち、学習モデル部24の学習レベルが十分なレベルに達している場合、設備パラメータ設定・分析部27は、学習モデル部24を利用して印刷設備パラメータ43、搭載設備パラメータ44、リフロー設備パラメータを求める。設備パラメータ設定・分析部27は、求めた設備パラメータ42を生産データ記憶部11へ格納する。これにより、設備パラメータ42の準備が完了する。このように、設備パラメータ設定・分析部27は、学習済みの学習モデル部24を利用して、実装基板製造を実施する装置のパラメータを設定する設備パラメータ設定部として機能する。
次に情報管理装置16は、準備された生産データ40を、情報管理装置16のデータ送信機能により実装基板製造ラインLの各設備へ送信する(ST2)。これにより、各設備には生産対象のワークに応じた装着プログラム41、設備パラメータ42、設備セットアップ情報46、検査プログラム50が取り込まれる。次に情報管理装置16は、設備セットアップ情報46に基づいて、各設備をセットアップする(ST3)。これにより、各設備において生産対象に応じた機種切り替え作業が行われ、その機種を対象とした生産が可能な状態となる。なお、機種切り替え作業に設備が自動で行ってもよく、作業者が設備セットアップ情報46を確認しながら行ってもよい。
次に基板サポート情報(実装点サポート情報120、ランドサポート情報130)が作成される。情報管理装置16は、基板データ31と、設備セットアップ情報46とを参照して実装点サポート情報120とランドサポート情報130を作成する。作成された基板サポート情報は基板サポート情報記憶部19に記憶される。
次に実装基板生産工程について、図12を参照して説明する。図12は基板17の一枚に着目した工程を示している。まず基板供給装置M1が基板17を供給する(ST11)。次に基板識別情報が読み取られる(ST12)。すなわち読み取り装置6が基板識別情報(基板ID31a)を読み取る。次に温度と湿度の計測値が読み取られる(ST13)。ここでは、読み取り装置6による基板ID31aの読み取りをトリガとして、温度湿度記録装置15が温度と湿度の計測値を読み取り、情報管理装置16が、これらの計測値に基板ID31aおよび計測時刻を付して、稼働情報記憶部14に記憶させる。
次いで印刷工程を実行する(ST14)。すなわちスクリーン印刷装置M2がはんだペースト18を基板17のランド17aに印刷する。このとき、情報管理装置16は、印刷工程における印刷稼働情報56(図6B参照)を基板ID31a、設備ID43aとともに稼働情報記憶部14に記憶させる。
次に印刷はんだ検査を実行する(ST15)。すなわち印刷はんだ検査装置M3が、はんだペースト18が印刷された基板17を検査する。そして情報管理装置16は、印刷はんだ検査結果を、基板ID31a、設備ID44a、マスク開口番号32aと関連づけて稼働情報記憶部14に記憶させる。
図16Aは、印刷はんだ検査装置M3による印刷はんだ検査結果52aを示している。ここでは、印刷はんだ検査が実行される項目毎に付された印刷はんだ検査番号52nと、検査対象となるマスク開口を特定するマスク開口番号32aとに、検査結果を示すデータが対応付けられている。検査結果を示す項目としては、印刷はんだの位置ずれ、面積、体積を含む計測結果52b*と、検査の合否を示す判定結果52a*が含まれている。
次に部品搭載工程を実行する(ST16)。すなわち印刷はんだ検査後の基板17に部品搭載装置M4、M5、M6が部品を搭載する。このとき情報管理装置16は、部品搭載工程における搭載稼働情報57を、基板ID31a、設備ID44a、実装点番号31cと関連づけて稼働情報記憶部14に記憶させる。
次いで搭載済み部品検査を実行する(ST17)。すなわち搭載済み部品検査装置M7が部品搭載後の基板17を検査する。そして情報管理装置16は、搭載済み部品検査結果53aを、基板ID31a、実装点番号31cと関連づけて稼働情報記憶部14に記憶させる。
図16Bは、搭載済み部品検査装置M7による搭載済み部品検査結果53aを示している。ここでは、搭載済み部品検査が実行される項目毎に付された搭載済み部品検査番号53nと、検査対象となる実装点MPを特定する実装点番号31cとに、検査結果を示すデータが対応づけられている。検査結果を示す項目としては、搭載済み部品の位置計測結果を示す位置ずれ53b*と、搭載済み部品の装着状態を示す装着状態53a*が含まれている。
次にリフロー工程を実行する(ST18)。すなわち搭載済み部品検査後の基板17をリフロー装置M8に搬入して加熱することにより印刷はんだを溶融固化させて、部品を基板17のランド17aにはんだ接合する。このとき、情報管理装置16は、リフロー工程におけるリフロー稼働情報58を、基板ID31aと関連づけて稼働情報記憶部14に記憶させる。
次いでリフロー後検査を実行する(ST19)。すなわちリフロー後検査装置M9が、リフロー後の基板17を検査する。そして情報管理装置16は、リフロー後検査結果54a1(図16C参照)(部品はんだ付け状態)を基板ID31a、実装点番号31cと関連づけて稼働情報記憶部14へ記憶させる。また情報管理装置16は、リフロー後検査結果54a2(図16D)(電極はんだ付け状態)を基板ID31a、接合点番号31hと関連づけて稼働情報記憶部14へ記憶させる。
図16C、図16Dは、リフロー後検査装置M9によるリフロー後検査結果54aを示している。ここで、図16Cは、部品はんだ付け状態を対象とするリフロー後検査結果54a1である。リフロー後検査結果54a1では、リフロー後検査が実行される項目毎に付されたリフロー後検査番号(1)54n1および検査対象となる実装点MPを特定する実装点番号31cに、検査結果を示すデータが対応づけられている。検査結果を示す項目としては、リフロー後部品の位置ずれの計測結果を示す位置ずれ54b*と、部品はんだ付け状態の良否を示す部品はんだ付け状態54a1*が含まれている。
図16Dは、電極はんだ付け状態を対象とするリフロー後検査結果54a2である。リフロー後検査結果54a2では、リフロー後検査が実行される項目毎に付されたリフロー後検査番号(2)54n2および検査対象となる接合点SPを特定する接合点番号31hに、検査結果を示すデータが対応づけられている。検査結果を示す項目としては、接合点SPのはんだ部の状態を示すはんだ部状態54a2*が含まれている。
はんだ部状態54a2*としては、撮像した画像を画像認識することにより検出可能な種々の状態が含まれる。これらの状態には、正常にはんだ接合されている状態を示す「良好」、半田が濡れていない「不濡れ」、電極Paがランド17aから離れている「浮き」、はんだ量が過剰または不足である「はんだ過多/不足」、隣接したランド17a間ではんだが接続した状態で固化した「ブリッジ」が含まれる。
以上のような実装基板製造工程で実装基板の製造枚数が増えるにしたがい、検査情報51と稼働情報55も増加する。
次に、データセット作成部21によるデータセット作成処理について、図13を参照して説明する。以下のST20~ST23は、ランド番号単位のデータセットを作成する処理である。まずデータセット[DS]の作成対象となる、基板ID31aが割り当てられた基板17についてランド番号31bを取得する(ST20)。ランド番号31bとしては、データセットが作成されていない番号が取得される。
次いで、データセット作成部21は、ランド番号31bに関連する情報でデータセット[DS]を構成する情報を生産データ記憶部11、ワークデータ記憶部12、検査情報記憶部13、稼働情報記憶部14、基板サポート情報記憶部19から収集する。そしてデータセット作成部21は、データセット[DS]を作成し(ST21)、データセット記憶部22にデータセット[DS]を記憶させる(ST22)。そして全てのランド番号についてデータセットの作成が完了したら次のステップ移行し、データセット未作成のランド番号があればST21へ戻って処理を繰返す(ST23)。データセット作成部21は、リレーションテーブル59を参照して、ランド番号31bに関連する情報を検索して収集する。
すなわち、生産データ記憶部11、ワークデータ記憶部12、検査情報記憶部13、稼働情報記憶部14、基板サポート情報記憶部19に記憶される情報は、ランド番号31b、マスク開口番号32a、実装点番号31c、接合点番号31hのいずれかで特定することができる。したがって、データセット作成部21は、同一基板IDを有する情報であってリレーショナルテーブルで関連付けされた情報を収集してデータセット[DS]を作成する。
図14は、データセット[DS]の例を示している。データセット[DS]では、実装品質評価における効果を示す結果に、実装品質評価における要因に相当する情報が対応している。実装品質評価における効果を示す結果は、印刷はんだ検査結果52a、搭載済み部品検査結果53a、リフロー後検査結果54aを含む。実装品質評価における要因に相当する情報は、基板情報31*、マスク情報32*、はんだ情報33*、印刷工程情報43*、部品搭載工程情報44*、リフロー工程情報45*、環境情報15*を含む。なお、環境情報15*では、図1に示す温度湿度記録装置15が計測した温度や湿度などの計測結果が、読み取り装置6によって識別された基板ID31aと関連づけられている。
基板情報31*、マスク情報32*、はんだ情報33*、印刷工程情報43*、部品搭載工程情報44*、リフロー工程情報45*は、具体的には以下のようなデータ項目を含んでいる。基板情報31*は、基板データ31である基板ID31a、ランド番号31b、ランド寸法31d、ランド位置31eを含んでいる。マスク情報32*は、マスクデータ32であるマスク開口番号32a、マスク開口寸法・位置32b、マスク厚み32cを含んでいる。はんだ情報33*は、はんだペーストデータ33であるはんだ粒子粒径33a、はんだ組成33b、はんだペースト物性33cを含んでいる。
印刷工程情報43*は、基板ID31a、設備ID43a、印圧43b、スキージ速度43c、残量56d、はんだ補給情報56b、マスククリーニング情報56c、ランドサポート情報130を含んでいる。部品搭載工程情報44*は、設備ID43a、実装点番号31c、基板ID31a、接合点番号31h、部品ID34a、設備ID44a、搭載速度44b、搭載荷重44c、押し込み量44d、使用ノズル44e、使用ヘッド44f、部品供給位置44g、フィーダID44h、コンベア幅情報48b、実装点サポート情報120、部品認識情報57a、補正情報57b、フィードバック情報57c、実装点位置31kを含んでいる。
リフロー工程情報45*は、設備ID45a、基板ID31a、基板搬送速度45b、設定温度45c、ゾーン温度58aを含む。環境情報15*は、基板ID31a、温度15a、湿度15b、計測時刻15cを含む。
なお本実施の形態で示したデータセット[DS]は一例であり、データセット[DS]を構成する情報の組み合わせは学習モデル部24に学習させる内容や目的に応じて変更することができる。
図13において、全てのランド番号についてデータセットの作成が終了したら、実装点単位のデータセット作成へ移行する(ST24~ST27)。まずデータセット作成部21は、データセット[DS]の作成対象となる基板ID31aに対応する基板17について、実装点番号31cを取得する(ST24)。実装点番号31cとしてはデータセットが作成されていない番号が取得される。次いで、データセット作成部21は、実装点番号31cに関連する情報でデータセット[DS]を構成する情報を生産データ記憶部11、ワークデータ記憶部12、検査情報記憶部13、稼働情報記憶部14、基板サポート情報記憶部19より収集する。そしてデータセット作成部21は、データセット[DS]を作成し(ST25)、データセット記憶部22に記憶させる(ST26)。データセット作成部21は、全ての実装点番号31cについてデータセットの作成が完了するまでST24~ST27を繰り返す(ST27)。
このようにしてデータセット記憶部22に記憶されたデータセット[DS]は、学習部23によって学習モデル部24の学習に使用される。データセット[DS]において、ワークデータ30、生産データ40などが主な“学習データ”であり、検査情報51が“正解ラベル”となる。このように“学習データ”と“正解ラベル”を含んだデータセット[DS]を作成して、学習部23は学習モデル部24に学習させる。
次に、図18を参照して、ディープラーニングについて説明する。ディープラーニングは、実装基板の生産が全くなされていない、もしくは生産数が少ないために十分な数のデータセット[DS]が準備されていないときに実施される。
はじめに、図2に示すシミュレーション部25がシミュレーションに必要な基礎データを取得する(ST50)。具体的には、生産を予定している実装基板のワークデータ30と、設備パラメータ42以外の生産データ40とが、基礎データとして収集される。基礎データは、シミュレーションの中では原則として定数もしくはそれに準じたものとして取り扱われる。ワークデータ30としては実測で得られたデータを使用するのが好ましい。
次に、設備パラメータが設定される(ST51)。すなわちシミュレーション部25に、シミュレーションで使用する設備パラメータが入力される。最初に入力される設備パラメータとして、生産データ40の設備パラメータ42が使用される。設備パラメータ42が入力されたら、シミュレーション部25がシミュレーションを実行する(ST52)。シミュレーション部25は実装基板の製造工程をシミュレートし、スクリーン印刷工程、部品搭載工程、リフロー工程の結果を予測する。
シミュレーションで重視されるのは、実装基板において部品Pと基板17のランド17aとを接合するはんだの挙動の予測である。スクリーン印刷工程では、マスク80上を移動するはんだペーストのローリング、マスク開口80a内へのはんだペーストの充填、ランド17aへの印刷はんだ18aの転写などのはんだペーストの動きをシミュレーションの対象とする。また、部品搭載工程では部品Pによって押しつぶされる印刷はんだ18aの変形や崩れをシミュレーションの対象とする。リフロー工程では基板17の温度変化やそれに伴って溶融するはんだ(溶融はんだ)の流動をシミュレーションの対象とする。
なお、シミュレーションの対象としてはスクリーン印刷工程、部品搭載工程、リフロー工程のうち、少なくとも1つであればよい。また、シミュレーション部25がシミュレーションの対象とする「はんだの挙動」として上述した「はんだペーストの動き」、「印刷はんだの変形」、「溶融はんだの流動」は一例であり、その他の工程におけるはんだの挙動をシミュレーションの対象にしてもよい。
次に、図2に示す評価部26が、シミュレーション結果を評価する(ST53)。評価部26はシミュレーション結果として得られた印刷はんだの体積や形状、部品搭載後の印刷はんだの形状、リフロー後のはんだ付け状態を評価する。次いで、学習部23が学習モデル部24を学習させる(ST54)。具体的には、学習部23は、基礎データやST51で入力された設備データを“学習データ”にし、シミュレーション結果や評価部26の評価結果を“正解ラベル”として学習モデル部24に学習させる。
ST54が終わると学習部23は、学習を継続するかどうかを判断し(ST55)、継続する場合は次のST56の処理を経てST51へ戻り、ST51~ST56を繰り返す。なお、処理を繰り返す場合は、実際の基板17や部品Pのばらつきを再現するためにワークデータ30が変更される(ST56)。またシミュレーション部25に入力する設備パラメータも必要に応じて変更される。この際、学習モデル部24で求めた設備パラメータを入力してもよい。
このように、ディープラーニングでは、シミュレーションの前提条件となるワークデータや設備パラメータを少しずつ変えながら膨大な数の組み合わせについてシミュレーションを実行し、その結果を学習モデル部24に学習させる。これにより学習モデル部24の学習レベルを急速に高めることができる。
次に図19を参照して、学習済みの学習モデル部24を利用した各種機能のうち、設備パラメータ設定・分析部27による設備パラメータ設定機能について説明する。
まず図2に示す設備パラメータ設定・分析部27が、使用予定の基板17の基板データ31と、使用予定のマスク80のマスクデータ32とを読み取る(ST30)。次いで、設備パラメータ設定・分析部27は、学習モデル部24に設備パラメータを問合わせる(ST30)。具体的には、設備パラメータ設定・分析部27は、ST30で読み取ったデータを学習モデル部24に出力し、学習モデル部24から出力された設備パラメータを受け取る。この設備パラメータはスクリーン印刷工程、部品搭載工程、リフロー時工程で良好な結果を得ることができると学習モデル部24が算定した値である。
次に、設備パラメータ設定・分析部27は、学習モデル部24から出力された設備パラメータを生産データ記憶部11に記憶させる(ST32)。これにより設備パラメータ42の各設備の設備パラメータが新たに設定される。このように、設備パラメータ設定・分析部27によって生産データ記憶部11の設備パラメータが設定あるいは更新されると、対象の設備は設定あるいは更新された設備パラメータをダウンロードする。このようにして、学習モデル部24から出力された設備パラメータは各設備に反映される。
次に、図20を参照して、設備パラメータの評価処理について説明する。この処理では、設備パラメータ設定・分析部27が生産データ記憶部11に記憶された印刷条件、搭載条件、リフロー条件として設定されている設備パラメータ(現在の設備パラメータ)を評価する。まず設備パラメータ設定・分析部27は、使用予定の基板17の基板データ31と使用予定のマスク80のマスクデータ32とを読み取る(ST40)。次いで、設備パラメータ設定・分析部27は、学習モデル部24に設備パラメータを問合わせる(ST41)。次に現在の設備パラメータと学習モデル部24で求めた設備パラメータとを比較する(ST42)。
そして設備パラメータ設定・分析部27は、現在の設備パラメータを評価する(ST43)。評価の方法としては、現在の設備パラメータと学習モデル部24で求めた設備パラメータとの差が予め決めておいた許容範囲から外れているかを判断する。そして設備パラメータ設定・分析部27は、ST43の評価結果を出力する(ST44)。具体的には、モニタや携帯端末の表示部に評価結果を表示して、実装基板の製造ラインの管理者やオペレータ等、設備パラメータの設定権限を有する者に報知する。差異が許容範囲を超える場合には、不良となる可能性有りと判断して、設備パラメータ設定・分析部27は、その旨をモニタに表示して報知する。なお、評価の手法は一例であり本実施形態以外の方法を採用してもよい。
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態では、対象となる基板17の基板データ31に含まれるランド寸法31d、ランド位置31eを取得するために、オフラインの専用装置が基板17を計測している。これに対し、図23に示す第2の実施形態では、実装基板製造ラインLを構成する設備が有するインライン基板計測機能によって、ランド寸法31d、ランド位置31eを取得する。
図23において、上段に示す実装基板製造ラインLでは、基板供給装置M1、スクリーン印刷装置M2、印刷はんだ検査装置M3、部品搭載装置(#1)M4のみを示している。基板供給装置M1は、部品実装作業前の基板17を下流へ供給する。
スクリーン印刷装置M2は、上流の搬入口から搬入された基板17にはんだペーストを印刷し、印刷後の基板17を下流の搬出口から搬出する。またスクリーン印刷装置M2は、上流の搬入口から搬入された基板17にはんだペーストを印刷することなく下流の搬出口から搬出する。さらに、スクリーン印刷装置M2は、基板17を逆方向に搬送することにより下流の搬出口から搬入してはんだペーストを印刷し、印刷後の基板17を下流の搬出口から部品搭載装置M4へ搬出する。さらに上述の印刷機能に加えて、スクリーン印刷装置M2は、マスク認識用の第2のカメラ79(図7参照)を使用して、マスク開口80aの寸法や位置を計測する機能を有している。
印刷はんだ検査装置M3は、上流の搬入口から搬入された基板17に印刷されたはんだペーストを2次元、3次元に計測し、計測後の基板17を下流の搬出口から搬出する。また印刷はんだ検査装置M3は、上流の搬入口から搬入されたはんだペーストが印刷されていない生の基板17のランド17aを2次元、3次元に計測し、計測後の基板17を上流の搬入口から上流のスクリーン印刷装置M2に戻す。
実装基板製造システム1は、上述の構成の実装基板製造ラインLを有する。すなわち、実装基板製造システム1は、基板17のランド17aにはんだペーストを印刷して印刷はんだを形成するスクリーン印刷装置M2と、印刷はんだを検査する印刷はんだ検査装置M3と、印刷はんだの検査を終えた基板17に部品を装着する部品搭載装置M4とを含む。次に、実装基板製造システム1における実装基板の製造方法について説明する。
この実装基板の製造方法では、以下に示す作業処理工程が実行される。まず第1工程として、基板17が搬送される。すなわち基板供給装置M1が基板17をスクリーン印刷装置M2に供給し、スクリーン印刷装置M2は、印刷はんだを形成することなく、上流から受け取った基板17を下流の印刷はんだ検査装置M3へ搬出する。
次に第2工程としてランド17aが計測される。すなわち、印刷はんだ検査装置M3がカメラ98等(図9参照)を使用して、印刷はんだが形成されていない基板17のランド17aを計測する。なお、最初の基板17については、スクリーン印刷装置M2に基板17を搬入してスクリーン印刷装置M2が第2のカメラ79(図7参照)を使用してマスク開口計測を実行する。次いで、第3工程として基板17の戻し入れが行われる。すなわちランド17aの計測を終えた基板17を、印刷はんだ検査装置M3がスクリーン印刷装置M2へ戻す。
そして第4工程としてはんだペーストが印刷される。すなわち、印刷はんだ検査装置M3から戻された基板17に、スクリーン印刷装置M2が印刷はんだを形成する。この後、第5工程として基板17が搬出される。すなわち、印刷はんだが形成された基板17をスクリーン印刷装置M2が印刷はんだ検査装置M3へ搬送する。
次いで第6工程として印刷はんだ検査が実行される。すなわち、印刷はんだ検査装置M3が基板17の印刷はんだを検査する。この後、第7工程として基板17が搬出される。すなわち、印刷はんだの検査を終えた基板17を、印刷はんだ検査装置M3が部品搭載装置M4に搬出する。
実装基板製造ラインLによる実装基板の製造においては、上述の第1工程から第7工程を反復する回数Nが予め設定されている。実装基板製造ラインLは、上述処理をN回繰り返すことにより、N枚分の基板17の実測データを取得する。次いで取得されたN枚分の実測データの平均値を求め、この平均値を実測値として採用する。そしてN+1枚目以降は、第2、第3工程を行わずに通常通りの手順で処理される。すなわち基板供給装置M1からスクリーン印刷装置M2への基板の搬送→スクリーン印刷装置M2による印刷はんだの形成→印刷はんだ検査装置M3による印刷はんだの検査→印刷はんだ検査装置Mから部品搭載装置M4への基板の搬送の順で処理される。このように、実装基板製造ラインLを構成する設備が有するインライン基板計測機能によって、基板17の実測データが取得される。これにより、専用の基板計測装置を追加することなく、基板の計測情報を取得することができる。
本開示の第1の実施形態および第2の実施形態は以上であるが、本開示は発明の要旨を逸脱しない範囲で変更を加えて実施してもよい。例えば、基板データ31のランド寸法31d、ランド位置31e、実装点位置31kには実測により得られたデータ(実測値)を使用する例を説明したが、設計値(CAD(Computer Aided Design)データ)を使用してもよい。同様に、マスクデータ32、部品諸元データについても実測に基づくデータではなく設計値やカタログ値を使用してもよい。
図24は、コンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。上述した各実施の形態における実装プロセス支援装置3や情報管理装置16の機能は、例えば、コンピュータ2100が実行するプログラムにより実現される。
コンピュータ2100は、入力ボタン、タッチパッド等の入力装置2101、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置2102、CPU2103、ROM(Read Only Memory)2104、RAM(Random Access Memory)2105を有する。また、コンピュータ2100は、ハードディスク装置、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置2106、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体から情報を読み取る読取装置2107、ネットワークを介して通信を行う送受信装置2108を有する。上述した各部は、バス2109により接続されている。
そして、読取装置2107は、上記各部の機能を実現するためのプログラムを記録した非一時的な記録媒体からそのプログラムを読み取り、記憶装置2106に記憶させる。特に、あるいは、送受信装置2108が、ネットワークに接続されたサーバ装置と通信を行い、サーバ装置からダウンロードした上記各部の機能を実現するためのプログラムを記憶装置2106に記憶させる。
そして、CPU2103が、記憶装置2106に記憶されたプログラムをRAM2105にコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAM2105から順次読み出して実行することにより、実装プロセス支援装置3の、データセット記憶部22、学習モデル部24以外の機能ブロックや情報管理装置16の機能が実現される。また、プログラムを実行する際、RAM2105または記憶装置2106には、上述の各種処理で得られた情報が記憶され、適宜利用される。
なお、他の例として、実装プロセス支援装置3の機能ブロックや情報管理装置16は、専用のIC(integrated circuit)、LSI(large-scale integration)などの物理的な回路として実現することもできる。あるいは、このような汎用コンピュータとソフトウェアの組み合わせと専用回路とを組み合わせて実装プロセス支援装置3の機能ブロックや情報管理装置16を構成してもよい。
上位システム2に含まれる各記憶部および実装プロセス支援装置3のデータセット記憶部22、学習モデル部24は、ハードディスク装置、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置や、そのいずれかを含むサーバ装置で構成される。これらの記憶部のうち、2つ以上を、物理的に一体の記憶装置やサーバ装置で構成してもよい。またこれらの記憶部および学習モデル部24のうち、1つ以上をクラウドサーバに構成してもよい。