JP7282053B2 - 撓み噛合い式歯車装置、歯車装置のシリーズ、その製造方法及び設計方法 - Google Patents
撓み噛合い式歯車装置、歯車装置のシリーズ、その製造方法及び設計方法 Download PDFInfo
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Description
以下の式で表される指標Aが、2.20×10^-3から2.70×10^-3の範囲内である構成とした。
A=外歯歯車弦歯厚×外歯歯車歯底厚さ×起振体形状係数
×減速比÷PCD^(2.1) ・・・(1)
ただし、
外歯歯車弦歯厚:外歯歯車の歯丈の中央位置における弦歯厚
PCD:起振体に組み込む前の状態における外歯歯車の歯丈の中央を通る円の直径
外歯歯車歯底厚さ:外歯歯車の内周から歯底までの厚さ
起振体形状係数:(起振体長径-起振体相当円直径)÷2
前記第1歯車装置及び前記第2歯車装置の各々は、起振体と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置であり、
前記第1歯車装置と前記第2歯車装置は、
前記外歯歯車のPCD及び減速比の少なくとも一方が異なるとともに、
以下の式で表される指標Aが、2.20×10^-3から2.70×10^-3の範囲内であるものとした。
A=外歯歯車弦歯厚×外歯歯車歯底厚さ×起振体形状係数
×減速比÷PCD^(2.1) ・・・(1)
ただし、
外歯歯車弦歯厚:外歯歯車の歯丈の中央位置における弦歯厚
PCD:起振体に組み込む前の状態における外歯歯車の歯丈の中央を通る円の直径
外歯歯車歯底厚さ:外歯歯車の内周から歯底までの厚さ
起振体形状係数:(起振体長径-起振体相当円直径)÷2
前記第1歯車装置及び前記第2歯車装置の各々は、起振体と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置であり、
前記第1歯車装置と前記第2歯車装置とで、前記外歯歯車のPCD及び減速比の少なくとも一方が異なり、
以下の式で表される指標Aが、2.20×10^-3から2.70×10^-3の範囲内となるように、各々の前記外歯歯車を製造するものとした。
A=外歯歯車弦歯厚×外歯歯車歯底厚さ×起振体形状係数
×減速比÷PCD^(2.1) ・・・(1)
ただし、
外歯歯車弦歯厚:外歯歯車の歯丈の中央位置における弦歯厚
PCD:起振体に組み込む前の状態における外歯歯車の歯丈の中央を通る円の直径
外歯歯車歯底厚さ:外歯歯車の内周から歯底までの厚さ
起振体形状係数:(起振体長径-起振体相当円直径)÷2
前記第1歯車装置及び前記第2歯車装置の各々は、起振体と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置であり、
前記第1歯車装置と前記第2歯車装置とで、
前記外歯歯車のPCD及び減速比の少なくとも一方を異ならせるとともに、
以下の式で表される指標Aを、2.20×10^-3から2.70×10^-3の範囲内に設定するものとした。
A=外歯歯車弦歯厚×外歯歯車歯底厚さ×起振体形状係数
×減速比÷PCD^(2.1) ・・・(1)
ただし、
外歯歯車弦歯厚:外歯歯車の歯丈の中央位置における弦歯厚
PCD:起振体に組み込む前の状態における外歯歯車の歯丈の中央を通る円の直径
外歯歯車歯底厚さ:外歯歯車の内周から歯底までの厚さ
起振体形状係数:(起振体長径-起振体相当円直径)÷2
図1は、本発明に係る撓み噛合い式歯車装置1を示す断面図である。
この図に示すように、撓み噛合い式歯車装置1は、筒型の撓み噛合い式歯車装置であり、起振体軸10、外歯歯車11、第1内歯歯車31G及び第2内歯歯車32G、起振体軸受12、ケーシング33、第1カバー34、第2カバー35を備える。
なお、以下の説明では、回転軸O1に沿った方向を「軸方向」、回転軸O1に垂直な方向を「径方向」、回転軸O1を中心とする回転方向を「周方向」という。また、軸方向のうち、外部の被駆動部材と連結されて減速された運動を当該被駆動部材に出力する側(図中の左側)を「出力側」といい、出力側とは反対側(図中の右側)を「反出力側」という。
このうち、第1内歯歯車31Gは、第1内歯歯車部材31の内周部の該当箇所に内歯が設けられて構成される。一方、第2内歯歯車32Gは、第2内歯歯車部材32の内周部の該当箇所に内歯が設けられて構成される。
起振体軸受12は、外歯歯車11の内側に嵌入される外輪12aと、複数の転動体(コロ)12bと、複数の転動体12bを保持する保持器12cとを有する。
複数の転動体12bは、第1内歯歯車31Gの径方向内方に配置され、周方向に並ぶ第1群の転動体12bと、第2内歯歯車32Gの径方向内方に配置され、周方向に並ぶ第2群の転動体12bとを有する。これらの転動体12bは、起振体10Aの外周面と外輪12aの内周面とを転走面として転動する。外輪12aは、複数の転動体12bの配列に対応して同形状のものが軸方向に二つ並んで設けられている。なお、起振体軸受12は、起振体10Aとは別体の内輪を有してもよい。
オイルシール43は、軸方向の反出力側の端部で、起振体軸10の軸部10Bと第1カバー34との間に配置され、反出力側への潤滑剤の流出を抑制する。オイルシール44は、軸方向の出力側の端部で、起振体軸10の軸部10Cと第2カバー35との間に配置され、出力側への潤滑剤の流出を抑制する。オイルシール45は、ケーシング33と第2内歯歯車部材32との間に配置され、この部分からの潤滑剤の流出を抑制する。
Oリング46,47,48は、第1内歯歯車部材31と第1カバー34との間、第1内歯歯車部材31とケーシング33との間、第2内歯歯車部材32と第2カバー35との間にそれぞれ設けられ、これらの間で潤滑剤が移動することを抑制する。
外歯歯車11は、起振体10Aによる弾性変形や負荷トルクによる変形に加え、各部品の製造誤差の累積による影響等も受けて、運転中に歯当たり状態が変化する。この歯当たり状態が好ましくないと、歯面に過大な歯面圧が発生してしまい、早期損傷の原因となる。そのため、歯面圧の抑制が望まれていた。
そこで、本発明者らは、外歯歯車11の弦歯厚を他の特性値で規格化した指標Aを用いることにより、機種に依らない共通の最適範囲を設定できるようにした。
A=外歯歯車弦歯厚×外歯歯車歯底厚さ×起振体形状係数
×減速比÷PCD^(2.1) ・・・(1)
ただし、図2に示すように、
外歯歯車弦歯厚S:外歯歯車11のPCD位置(歯丈hの中央位置)における弦歯厚
PCD:真円状態の(起振体10Aに組み込む前の状態における)外歯歯車11において歯丈hの中央を通る円の直径
=(歯先円直径d1-歯底円直径d2)÷2+歯底円直径d2
外歯歯車歯底厚さ:外歯歯車11の内周から歯底までの厚さ
=(歯底円直径d2-内径d3)÷2
起振体形状係数:起振体10Aの略楕円形状への変形量
=(起振体10Aの長径-相当真円直径)÷2
相当真円直径:略楕円形状の起振体10Aの周長と等しい周長の真円の直径
減速比:外歯歯車11の歯数÷(第1内歯歯車31Gの歯数-外歯歯車11の歯数)
この図に示すように、指標Aは、歯面圧の急激な上昇が生じる変曲点P1-P2間である2.20×10^-3から2.70×10^-3(0.0022から0.0027)の範囲R1内が好ましい。指標Aがこの範囲R1内であれば、歯面圧の急激な上昇を抑制できる。また、サイズや減速比によらずより確実に歯面圧の上昇を抑制する観点から、指標Aは、2.30×10^-3から2.60×10^-3の範囲R2内がより好ましく、2.37×10^-3から2.50×10^-3の範囲R3内がさらに好ましい。
また、指標Aは、所望の許容歯面圧に応じて設定されてもよい。撓み噛合い式歯車装置1がロボットの関節や工作機械等の通常の用途に使用される場合、外歯歯車11は、ピークトルクがかかった時の歯面圧が許容歯面圧以下であることが求められる。ピークトルクとは起動停止時に許容される最大トルクである。許容歯面圧は、主として外歯歯車11の素材と歯面の表面硬さに基づいて決定される。この場合、撓み噛合い式歯車装置1の外歯歯車11に使用されることの多い機械構造用合金鋼や炭素鋼において実現できる表面硬さに対応する許容歯面圧に基づいて、指標Aを設定すればよい。
続いて、撓み噛合い式歯車装置1の減速動作について説明する。
モータ等の駆動源により起振体軸10の回転駆動が行われると、起振体10Aの運動が外歯歯車11に伝わる。このとき、外歯歯車11は、起振体10Aの外周面に沿った形状に規制され、軸方向から見て、長軸部分と短軸部分とを有する楕円形状に撓んでいる。さらに、外歯歯車11は、固定された第1内歯歯車31Gと長軸部分で噛合っている。このため、外歯歯車11は起振体10Aと同じ回転速度で回転することはなく、外歯歯車11の内側で起振体10Aが相対的に回転する。そして、この相対的な回転に伴って、外歯歯車11は長軸位置と短軸位置とが周方向に移動するように撓み変形する。この変形の周期は、起振体軸10の回転周期に比例する。
以上のように、本実施形態によれば、外歯歯車11の弦歯厚Sに関する指標Aが2.20×10^-3から2.70×10^-3の範囲R1内であるので、歯面圧が変曲点P1-P2間に抑えられる。これにより、外歯歯車11の歯面圧の急激な上昇を抑制することができ、ひいては、外歯歯車11の早期損傷を防止できる。
また、特に小モジュールの歯車加工は困難であり、外歯歯車11の加工精度を緩和したいとの要求があるところ、単純に製造しやすさの観点で設定した寸法範囲の外歯歯車11では、耐久性に大きなばらつきがあった。この点、本実施形態では、弦歯厚Sに関する指標Aという定量的な設計指標を適用したことにより、外歯歯車11の耐久性のばらつきを好適に抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、単体の撓み噛合い式歯車装置1の構成の観点で説明した。しかし、本発明は、共通する指標Aの範囲を有する第1歯車装置1Aと第2歯車装置1Bとを含む、撓み噛合い式歯車装置の製品群(歯車装置のシリーズ)として捉えることもできる。この場合、第1歯車装置1Aと第2歯車装置1Bは、外歯歯車11のPCD及び減速比の少なくとも一方が異なる。また、第1歯車装置1A及び第2歯車装置1Bの各外歯歯車11の指標Aは、上述のとおり範囲R1内となっている。
さらに、本発明は、シリーズに含まれる各歯車装置をどのように構築・設計するかという観点で見れば、歯車装置のシリーズ(歯車装置群)の構築方法や設計方法と捉えることもできる。また、複数の歯車装置を含む歯車装置のシリーズ(歯車装置群)をどのように製造するかという観点で見れば、歯車装置のシリーズ(歯車装置群)の製造方法と捉えることもできる。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1A 第1歯車装置
1B 第2歯車装置
10 起振体軸
10A 起振体
11 外歯歯車
d1 歯先円直径
d2 歯底円直径
d3 内径
h 歯丈
S 弦歯厚
31G 第1内歯歯車
32G 第2内歯歯車
O1 回転軸
A 指標
R1 範囲
P1、P2 変曲点
Claims (8)
- 起振体と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置であって、
以下の式で表される指標Aが、2.20×10^-3から2.70×10^-3の範囲内である、
撓み噛合い式歯車装置。
A=外歯歯車弦歯厚×外歯歯車歯底厚さ×起振体形状係数
×減速比÷PCD^(2.1) ・・・(1)
ただし、
外歯歯車弦歯厚:外歯歯車の歯丈の中央位置における弦歯厚
PCD:起振体に組み込む前の状態における外歯歯車の歯丈の中央を通る円の直径
外歯歯車歯底厚さ:外歯歯車の内周から歯底までの厚さ
起振体形状係数:(起振体長径-起振体相当円直径)÷2 - 前記外歯歯車は、機械構造用合金鋼又は機械構造用炭素鋼から構成される、
請求項1に記載の撓み噛合い式歯車装置。 - 前記内歯歯車として第1内歯歯車及び第2内歯歯車を有する筒型の撓み噛合い式歯車装置である、
請求項1又は請求項2に記載の撓み噛合い式歯車装置。 - 前記指標Aが、2.30×10^-3から2.60×10^-3の範囲内である、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の撓み噛合い式歯車装置。 - 前記指標Aが、2.37×10^-3から2.50×10^-3の範囲内である、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の撓み噛合い式歯車装置。 - 第1歯車装置と第2歯車装置とを含む歯車装置のシリーズであって、
前記第1歯車装置及び前記第2歯車装置の各々は、起振体と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置であり、
前記第1歯車装置と前記第2歯車装置は、
前記外歯歯車のPCD及び減速比の少なくとも一方が異なるとともに、
以下の式で表される指標Aが、2.20×10^-3から2.70×10^-3の範囲内である、
歯車装置のシリーズ。
A=外歯歯車弦歯厚×外歯歯車歯底厚さ×起振体形状係数
×減速比÷PCD^(2.1) ・・・(1)
ただし、
外歯歯車弦歯厚:外歯歯車の歯丈の中央位置における弦歯厚
PCD:起振体に組み込む前の状態における外歯歯車の歯丈の中央を通る円の直径
外歯歯車歯底厚さ:外歯歯車の内周から歯底までの厚さ
起振体形状係数:(起振体長径-起振体相当円直径)÷2 - 第1歯車装置と第2歯車装置とを含む歯車装置群の製造方法であって、
前記第1歯車装置及び前記第2歯車装置の各々は、起振体と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置であり、
前記第1歯車装置と前記第2歯車装置とで、前記外歯歯車のPCD及び減速比の少なくとも一方が異なり、
以下の式で表される指標Aが、2.20×10^-3から2.70×10^-3の範囲内となるように、各々の前記外歯歯車を製造する、
歯車装置群の製造方法。
A=外歯歯車弦歯厚×外歯歯車歯底厚さ×起振体形状係数
×減速比÷PCD^(2.1) ・・・(1)
ただし、
外歯歯車弦歯厚:外歯歯車の歯丈の中央位置における弦歯厚
PCD:起振体に組み込む前の状態における外歯歯車の歯丈の中央を通る円の直径
外歯歯車歯底厚さ:外歯歯車の内周から歯底までの厚さ
起振体形状係数:(起振体長径-起振体相当円直径)÷2 - 第1歯車装置と第2歯車装置とを含む歯車装置群の設計方法であって、
前記第1歯車装置及び前記第2歯車装置の各々は、起振体と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置であり、
前記第1歯車装置と前記第2歯車装置とで、
前記外歯歯車のPCD及び減速比の少なくとも一方を異ならせるとともに、
以下の式で表される指標Aを、2.20×10^-3から2.70×10^-3の範囲内に設定する、
歯車装置群の設計方法。
A=外歯歯車弦歯厚×外歯歯車歯底厚さ×起振体形状係数
×減速比÷PCD^(2.1) ・・・(1)
ただし、
外歯歯車弦歯厚:外歯歯車の歯丈の中央位置における弦歯厚
PCD:起振体に組み込む前の状態における外歯歯車の歯丈の中央を通る円の直径
外歯歯車歯底厚さ:外歯歯車の内周から歯底までの厚さ
起振体形状係数:(起振体長径-起振体相当円直径)÷2
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