1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
[1]本発明の代表的な実施の形態に係るネガワット取引支援装置(4)は、受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷(3)に対して、前記外部からの電力とは別に電力を供給可能な蓄電池(12)と、前記受電点における受電電力の値を入力とし、前記受電電力の値が第1の閾値を超えないように、前記蓄電池(12)の出力電力の値を制御する制御装置とを備えた蓄電池システム(1)と、受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷(3)に対して、前記外部からの電力とは別に電力を供給可能な発電機(21)と、前記受電点における受電電力の値を入力とし、前記受電電力の値が第2の閾値を超えないように、前記発電機(21)の発電電力の値を制御する制御装置とを備えた発電機システム(2)とに接続可能なネガワット取引支援装置(4)であって、ネガワット取引における電力の削減を要求するデマンドレスポンス指令に応じて、前記第1の閾値よりも大きい第1の仮想受電電力の値を算出し、該算出した第1の仮想受電電力を、前記受電電力の値に代えて前記蓄電池システム(1)の前記制御装置(10)に入力するとともに、前記蓄電池(12)の出力電力の値に基づいて、第2の閾値よりも大きい第2の仮想受電電力の値を算出し、該算出した第2の仮想受電電力を、前記受電電力の値に代えて前記発電機システム(2)の前記制御装置に入力することを特徴とする。
[2]上記[1]のネガワット取引支援装置は、前記デマンドレスポンス指令に基づいて、前記受電電力の目標値を取得する目標値取得部と、前記受電電力の目標値に基づいて第1の仮想受電電力を算出して前記蓄電池システムの前記制御装置に入力する第1の仮想受電電力処理部と、前記受電電力の目標値に基づいて第2の仮想受電電力を算出して前記発電機システムの前記制御装置に入力する第2の仮想受電電力処理部とを備え、前記第1の仮想受電電力処理部は、前記受電電力の目標値に前記第1の閾値を加えることによって受電電力の第1のバイアス値を算出する第1のバイアス値算出部と、前記第1のバイアス値を前記受電電力の値に加算して第1の仮想受電電力を算出して、前記蓄電池システムの前記制御装置に入力する第1の仮想受電電力算出入力部とを有し、前記第2の仮想受電電力処理部は、前記受電電力の目標値に前記第2の閾値を加えることによって受電電力の第2のバイアス値を算出する第2のバイアス値算出部と、前記第2のバイアス値に前記蓄電池の出力電力の値を加えた第3のバイアス値を算出する第3のバイアス値算出部と、第3のバイアス値を前記受電電力の値に加算して第2の仮想受電電力を算出して、前記発電機システムの前記制御装置に入力する第2の仮想受電電力算出入力部とを有していてもよい。
[3]上記[2]のネガワット取引支援装置において、前記第3のバイアス値算出部は、前記蓄電池の出力電力の値に所定の係数を乗算した値を前記第2のバイアス値に加えた第3のバイアス値を算出してもよい。
[4]上記[2]または[3]のネガワット取引支援装置において、前記デマンドレスポンス指令は、受電電力の削減量を指定した削減量指定値を含み、前記目標値取得部は、前記削減量指定値をベースラインから差し引くことにより、前記受電電力の目標値を取得してもよい。
[5]上記[2]または[3]のネガワット取引支援装置において、前記デマンドレスポンス指令は、受電電力の指令値を含み、前記目標値取得部は、前記受電電力の指令値を前記受電電力の目標値として取得してもよい。
[6]本発明の代表的な実施の形態に係るネガワット取引支援方法は、受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷に対して、前記外部からの電力とは別に電力を供給可能な蓄電池と、前記受電点における受電電力の値を入力とし、前記受電電力の値が第1の閾値を超えないように、前記蓄電池の出力電力の値を制御する制御装置とを備えた蓄電池システムと、受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷に対して、前記外部からの電力とは別に電力を供給可能な発電機と、前記受電点における受電電力の値を入力とし、前記受電電力の値が第2の閾値を超えないように、前記発電機の発電電力の値を制御する制御装置とを備えた発電機システムとを用いたネガワット取引を支援するネガワット取引支援方法であって、ネガワット取引における電力の削減を要求するデマンドレスポンス指令に基づいて、前記受電電力の目標値を取得する第1ステップと、前記受電電力の目標値に基づいて第1の仮想受電電力を算出して前記蓄電池システムの前記制御装置に入力する第2ステップと、前記受電電力の目標値に基づいて第2の仮想受電電力を算出して前記発電機システムの前記制御装置に入力する第3ステップとを含み、前記第2ステップは、前記受電電力の目標値に前記第1の閾値を加えることによって受電電力の第1のバイアス値を算出する第1サブステップと、前記第1のバイアス値を前記受電電力の値に加算して第1の仮想受電電力を算出して、前記蓄電池システムの前記制御装置に入力する第2サブステップとをさらに含み、前記第3ステップは、前記受電電力の目標値に前記第2の閾値を加えることによって受電電力の第2のバイアス値を算出する第3サブステップと、前記第2のバイアス値に前記蓄電池の出力電力の値を加えた第3のバイアス値を算出する第4サブステップと、第3のバイアス値を前記受電電力の値に加算して第2の仮想受電電力を算出して、前記発電機システムの前記制御装置に入力する第5サブステップとをさらに含むことを特徴とする。
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るネガワット取引支援装置を既存の発電機システムに組み込んだネガワット取引装置の構成を示す図である。
ネガワット取引装置100は、例えば、受電電力調整需要家の敷地内に設置され、バーチャルパワープラントを構成するリソースアグリゲーター等から送信されるデマンドレスポンス指令(以下、「DR指令」とも称する。)に応じて、受電点における受電電力を削減してネガワット取引を可能にするシステムである。
図1に示すように、ネガワット取引装置100は、蓄電池システム1と、発電機システム2と、蓄電池システム1(制御装置10)および発電機システム2(制御装置20)の前段に設けられるネガワット取引支援装置4と、を備えている。
蓄電池システム1は、受電電力調整需要家の受電点における受電電力が供給される負荷3に対して、上記受電電力とは別に電力を供給可能な蓄電池12を備えた受電電力調整設備である。
図1に示すように、蓄電池システム1は、制御装置10と電力変換器11と蓄電池12とを備えている。蓄電池システム1は、受電電力に応じて、電力変換器11を介した蓄電池12の出力電力Pg1が変化するように構成されている。すなわち、蓄電池システム1において、制御装置10が、入力された受電電力PjB1の値と蓄電池12の出力電力Pg1の値とに基づいて、蓄電池12の発電電力(以下、「蓄電池出力」とも称する。)を調整するための蓄電池出力電力調整値Pga1を決定して電力変換器11へ出力し、電力変換器11が蓄電池出力電力調整値Pga1に応じて調整した出力電力を出力する。
制御装置10は、電力変換器11を制御して蓄電池12の出力電力を調整するための装置である。制御装置10は、ハードウェア資源として、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM等の各種記憶装置と、タイマ(カウンタ)と、A/D変換回路と、D/A変換回路と、入出力I/F回路等の周辺回路とがバスを介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)を備えている。
図1に示すように、制御装置10は、蓄電池12の出力電力を調整する機能を実現するための機能ブロックとして、負荷電力算出部13と、負荷追従閾値設定部14と、出力電力調整値算出部15とを有している。これらの機能ブロックは、例えば、上述したプログラム処理装置(マイクロコントローラ)において、プロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種演算を実行し、入出力I/F回路やタイマ等の周辺回路を制御することによって、実現される。
負荷電力算出部13は、例えば、入力された受電電力の値と蓄電池12の出力電力Pg1の値とを加算して、負荷電力の値PLB1を算出する。
負荷追従閾値設定部14は、蓄電池システム1の出力目標(出力電力の値Pg1)を決定するための閾値(以下、「負荷追従閾値」とも称する。)Pgref1(第1の閾値に相当)を設定する。
負荷追従閾値Pgref1としては、例えば、受電電力調整需要家の契約電力に準じた値が設定される。例えば、負荷追従閾値Pgref1を契約電力に等しい値に設定してもよいが、契約電力よりも低い値に設定することにより、蓄電池システム1が余裕をもって動作することが可能となる。なお、負荷追従閾値Pgref1は1つに限られず、複数設定しておき、どの閾値に基づいて制御を行うかをさらに設定できるようにしてもよい。
出力電力調整値算出部15は、負荷電力PLB1が負荷追従閾値Pgref1を超えないように、蓄電池12の出力電力の目標値である出力電力調整値Pga1を算出する機能部である。出力電力調整値算出部15は、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力の値PLB1から負荷追従閾値Pgref1を減算して、出力電力調整値Pga1を算出する。算出された出力電力調整値Pga1は、「0」以上である場合に制御装置10から電力変換器11に出力される。算出された出力電力調整値Pga1が「0」未満である場合は、「0」が制御装置10から電力変換器11に出力される。
ここで、蓄電池システム1の動作について、図を用いて説明する。ここでは、ネガワット取引支援装置4を接続していない既存の受電電力調整設備の構成例を用いて、蓄電池システム1の動作を説明する。
図2Aから図2Cは、蓄電池システム1の動作を説明するための図である。
図2Aから図2Cに示す蓄電池システム1において、負荷追従閾値Pgref1=2300kWであるとする。また、図2Aには、負荷3の大きさが2000kWである場合の出力電力等の数値例が示され、図2Bには、負荷3の大きさが2000kWから2500kWに変化した直後の出力電力等の数値例が示され、図2Cには、負荷3の大きさが2500kWである場合の出力電力等の数値例が示されている。
図2Aから図2Cに示すように、ネガワット取引支援装置4が接続されていない既存の受電電力調整設備の構成例では、受電電力調整需要家の受電点で受電された実受電電力PjAの値が受電電力の値として、制御装置10に入力される。
図2Aに示すように、負荷3の大きさが、負荷追従閾値Pgref1=2300kWを下回る2000kWである場合、蓄電池12は電力を出力していない。すなわち、受電点の実受電電力PjA=2000kWであるので、負荷電力算出部13によって算出される負荷電力の値PLB1は、実受電電力PjAと等しい値(=2000kW)となる。
出力電力調整値算出部15は、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力の値PLB1(=2000kW)から負荷追従閾値Pgref1(=2300kW)を減算して、出力電力調整値Pga1としてマイナス300kWが算出されるが、これは「0」未満であるので、出力電力調整値Pga1として「0」を、電力変換器11に入力する。この場合は、負荷3には外部(系統)からの電力のみが入力される。なお、出力電力調整値算出部15はリミッタ機能を有しており、負荷電力の値PLB1から負荷追従閾値Pgref1を減算した値が「0」未満となる場合は、「0」に補正して出力電力調整値Pga1として出力する。
次に、負荷3の大きさが2000kWから2500kWに変化した場合を考える。変化直後では、図2Bに示すように、まだ蓄電池12は電力を出力していないので、受電点の実受電電力PjAは負荷3の値と等しい2500kWに変化する。さらに負荷電力算出部13によって算出される負荷電力の値PLB1は、まだ蓄電池12は電力を出力していないので、実受電電力PjAと等しい値(=2500kW)となる。
出力電力調整値算出部15は、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力PLB1の値(=2500kW)から負荷追従閾値Pgref1(=2300kW)を減算して、出力電力調整値Pga1(=200kW)を算出し、電力変換器11に入力する。
これにより、次の制御タイミングでは、負荷3に対して、蓄電池12から200kWの電力が供給され、図2Cに示すように、受電点の実受電電力PjAは、当初(図2Bの場合)の値(2500kW)よりも蓄電池12の出力電力(200kW)の分だけ少ない値(2300kW)になる。すなわち、受電点の実受電電力PjA(=2300kW)が負荷追従閾値Pgref1(=2300kW)と等しくなる。この場合も負荷電力算出部13によって算出される負荷電力の値PLB1は、実受電電力PjA(=2300kW)に蓄電池の出力電力(200kW)を加えた値(=2500kW)となる。
出力電力調整値算出部15は、図2Bと同様に、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力PLB1の値(=2500kW)から負荷追従閾値Pgref1(=2300kW)を減算して、出力電力調整値Pga1(=200kW)を算出し、電力変換器11に入力する。その後、制御装置10は、実受電電力PjA(=2300kW)が負荷追従閾値Pgref1(=2300kW)を超えないように、蓄電池12の出力電力を調整する。
このように、蓄電池システム1の制御装置10は、負荷の値が負荷追従閾値Pgref1を超えた場合に蓄電池12の電力を出力させ、蓄電池12からの電力の出力後は、受電点の電力が負荷追従閾値Pgref1を超えないように、蓄電池12から負荷3に供給する出力電力を制御する。すなわち、制御装置10は、受電電力を入力とし、受電電力と蓄電池12の出力電力との合計値(負荷電力PLB1)が負荷追従閾値Pgref1に収束するように蓄電池12の出力電力を制御する、所謂PI制御のフィードバック系を構成している。
図1に戻って、発電機システム2は、受電電力調整需要家の受電点における受電電力が供給される負荷3に対して、上記受電電力とは別に電力を供給可能な発電機21を備えた受電電力調整設備である。
図1に示すように、発電機システム2は、制御装置20と発電機21を備えている。発電機システム2は、受電電力に応じて、発電機21の発電電力Pg2が変化するように構成されている。すなわち、発電機システム2において、制御装置20が、入力された受電電力PjAの値と発電機21の発電電力Pg2の値とに基づいて、発電機21の発電電力を調整するための発電電力調整値Pga2を決定して発電機21へ出力し、発電機21が発電電力調整値Pga2に応じて調整した発電電力を出力する。
ここで、発電機21は、例えば重油等の化石燃料に基づいて力学的エネルギー(回転エネルギー)を発生させる原動機(不図示)と、原動機で発生した回転エネルギーに基づいて発電し、負荷3に電力を供給する発電部(不図示)とを有している。
制御装置20は、発電機21の発電電力を調整するように制御ための装置である。制御装置20は、ハードウェア資源として、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM等の各種記憶装置と、タイマ(カウンタ)と、A/D変換回路と、D/A変換回路と、入出力I/F回路等の周辺回路とがバスを介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)を備えている。
図1に示すように、制御装置20は、発電機21の発電電力を調整する機能を実現するための機能ブロックとして、負荷電力算出部23と、負荷追従閾値設定部24と、発電電力調整値算出部25と、発電機起動制御部26とを有している。これらの機能ブロックは、例えば、上述したプログラム処理装置(マイクロコントローラ)において、プロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種演算を実行し、入出力I/F回路やタイマ等の周辺回路を制御することによって、実現される。
負荷電力算出部23は、例えば、入力された受電電力の値と発電機21の発電電力Pg2の値とを加算して、負荷電力の値PLB2を算出する。
負荷追従閾値設定部24は、発電機システム2の出力目標(発電電力の値Pg2)を決定するための閾値(以下、「負荷追従閾値」とも称する。)Pgref2(第2の閾値に相当)を設定する。
負荷追従閾値Pgref2としては、例えば、受電電力調整需要家の契約電力に準じた値が設定される。例えば、負荷追従閾値Pgref2を契約電力に等しい値に設定してもよいが、契約電力よりも低い値に設定することにより、発電機システム2が余裕をもって動作することが可能となる。なお、負荷追従閾値Pgref2は1つに限られず、複数設定しておき、どの閾値に基づいて制御を行うかをさらに設定できるようにしてもよい。
発電機システム2において設定される負荷追従閾値Pgref2は、蓄電池システム1において設定される負荷追従閾値Pgref1と同じであってもよいが、異なる値を設定してもよい。
発電電力調整値算出部25は、負荷電力が負荷追従閾値Pgref2を超えないように、発電機21の発電電力の目標値である発電電力調整値Pga2を算出する機能部である。発電電力調整値算出部25は、負荷電力算出部23によって算出された負荷の電力の値PLB2から負荷追従閾値Pgref2を減算して、発電電力調整値Pga2を算出する。算出された発電電力調整値Pga2は、「0」以上である場合に、制御装置20から発電機21に出力される。算出された発電電力調整値Pga2が「0」未満である場合は、「0」が制御装置20から発電機21に出力される。
発電機起動制御部26は、発電機21の起動を制御するための機能部である。発電機起動制御部26は、発電機21を起動する旨の指示信号が入力された場合に、発電機21を起動させる。発電機21を起動する旨の指示信号は発電機システム2に設けられた入力インタフェースにより入力することができる。なお、発電機21は、起動する旨の指示信号を受けて起動した場合、暖機運転として低出力運転をすることができる。
ここで、発電機システム2の動作について、図を用いて説明する。ここでは、ネガワット取引支援装置4を接続していない既存の受電電力調整設備の構成例を用いて、発電機システム2の動作を説明する。
図3Aから図3Cは、発電機システム2の動作を説明するための図である。
図3Aから図3Cに示す発電機システム2において、発電機21は直前にあらかじめ起動しており、負荷追従閾値Pgref2=2300kWであるときに、負荷3の大きさが2000kWから2500kWに変化した場合を例に挙げて説明する。また、図3Aには、負荷3の大きさが2000kWから2500kWに変化した直後の発電電力Pg2等の数値例が示され、図3Bには、負荷3の大きさが2000kWから2500kWに変化して少し経過したときの発電電力Pg2等の数値例が示され、図3Cには、負荷3の大きさが2000kWから2500kWに変化してある程度経過して安定したときの発電電力Pg2等の数値例が示されている。
図3Aから図3Cに示すように、ネガワット取引支援装置4が接続されていない既存の受電電力調整設備の構成例では、受電電力調整需要家の受電点で受電された実受電電力PjAの値が受電電力の値として、制御装置20に入力される。
図3Aに示すように、負荷3の大きさが2000kWから2500kWに変化した直後は、発電機21の発電量は0kWである。この場合において、受電点の実受電電力PjAは負荷3の大きさと等しい2500kWとなる。さらに、負荷電力算出部23によって算出される負荷電力の値PLB2は、実受電電力PjAと等しい値(=2500kW)となる。
発電電力調整値算出部25は、負荷電力算出部23によって算出された負荷電力の値PLB2(=2500kW)から負荷追従閾値Pgref2(=2300kW)を減算して、発電電力調整値Pga2(=200kW)を算出し、発電機21に入力する。
しかしながら、蓄電池12と異なり、発電機21は、発電電力Pg2が発電電力調整値Pga2(=200kW)に一致するように発電量を上げるが、発電電力調整値Pga2(=200kW)に直ぐに適応することができない。すなわち、負荷3の大きさが変化して少し経過したタイミングでは、図3Bに示すように、発電電力Pg2は、発電電力調整値Pga2(=200kW)の半分の100kWでしかない。この場合、実受電電力PjAは、2400kWとなる。
その後、さらに経過して、図3Cに示すように、発電電力Pg2が十分に駆動すると、発電電力調整値Pga2(=200kW)に一致する。
このように、発電機システム2の制御装置20は、蓄電池システム1の制御装置10と同様に、系統からの受電電力の値を入力とし、受電電力の値と発電機21の発電電力の値との合計値(負荷電力PLB2)が負荷追従閾値Pgref2に収束するように発電機21の発電電力を制御する、所謂PI制御のフィードバック系を構成している。
また、発電機システム2の制御装置20は、発電機21が起動した状態において、受電点の電力が負荷追従閾値Pgref2を超えないように負荷3に供給すべき発電電力Pg2を算出して発電電力調整値Pga2によって発電機21を制御する。このとき発電機21は発電電力Pg2が発電電力調整値Pga2に一致するように駆動が開始されるが、実際の発電電力Pg2の値が発電電力調整値Pga2に一致するまでにはある程度の時間が必要となる。
図2、図3を用いて説明したように、蓄電池システム1における蓄電池12の出力電力Pg1は制御装置10からの制御信号Pga1にすぐに一致するが、発電機システム2の発電機21の発電電力Pg2が制御装置20からの制御信号Pga2に一致するまでにはある程度の時間を要する。ここで、正確なネガワット取引を実現するためには、補助電力源が蓄電池システムのように応答性がよいことが求められるが、蓄電池は容量に制限があるため、蓄電池の容量をなるべく温存したいという要請もある。一方で、発電機は容量に制限はないが、その応答性があまりよくない。そこで、本実施形態のネガワット取引支援装置4では、発電機システムを優先的に駆動させつつ、負荷3の急激な増大に対しては蓄電池システムで対応することによって、正確なネガワット取引の実現を可能としている。
次に、ネガワット取引支援装置4について説明する。
ネガワット取引支援装置4は、上述した既存の蓄電池システム1および既存の発電機システム2におけるフィードバック系の目標値に代えて、ネガワット取引のトリガとなるDR指令値(デマンドレスポンスで指定する値)で指定された値を新たな目標値として、蓄電池システム1および発電機システム2を制御する装置である。
ネガワット取引支援装置4は、ハードウェア資源として、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM等の各種記憶装置と、タイマ(カウンタ)と、A/D変換回路と、D/A変換回路と、入出力I/F回路等の周辺回路とがバスを介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)を備えている。また、ネガワット取引支援装置4は、例えば、リソースアグリゲーター等の上位装置や発電機システム2との間で有線または無線により通信を行うための通信回路等も備えている。
図1に示すように、ネガワット取引支援装置4は、蓄電池システム1を用いたネガワット取引を支援する機能を実現するための機能ブロックとして、蓄電池DR部5と、発電機システム2を用いたネガワット取引を支援する機能を実現するための機能ブロックとして、発電機DR部6とを備えている。
蓄電池DR部5は、DR指令受信部51と、受電電力目標値算出部52と、第1のバイアス値算出部53と、DR発動指令部54と、仮想受電電力算出部55と、スケジュール管理部56と、ベースライン算出部57と、負荷追従閾値入力部58とを備えて構成されている。
発電機DR部6は、DR指令受信部61と、受電電力目標値算出部62と、第2のバイアス値算出部63と、第3のバイアス値算出部69と、DR発動指令部64と、仮想受電電力算出部65と、スケジュール管理部66と、ベースライン算出部67と、負荷追従閾値入力部68と、蓄電池出力値入力部60とを備えて構成されている。
ネガワット取引支援装置4のこれらの機能ブロックは、例えば、上述したプログラム処理装置(マイクロコントローラ)において、プロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種演算を実行し、入出力I/F回路やタイマ等の周辺回路および上記通信回路を制御することによって、実現される。
蓄電池DR部5において、DR指令受信部51は、例えばリソースアグリゲーター等の上位装置からDR指令を受信する。
DR指令には、例えば、DR発動時間のデータ(以下、「DR発動時間情報」とも称する。)と、DRによる電力の削減量の目標値(以下、「目標削減量」とも称する。)のデータPtとが含まれている。例えば、DR発動時間のデータには、DRを発動させる期間を指定する情報として、DRを発動させる時刻を指定する情報(DR発動時刻)と、DRの発動を停止させる時刻を指定する情報(DR停止時刻)とが含まれている。
ベースライン算出部57は、ベースラインP0の値を算出する。
ここで、ベースラインP0とは、ネガワット取引において、需要家がDR指令に応じて、受電電力を削減する際の基準となる値である。例えば、ベースラインP0は、その需要家における、所定時刻時間における負荷3の値または受電電力の過去数日間に亘る平均値である。例えば、過去5日間において30分毎に特定した負荷3の値の平均値をDR発動期間におけるベースラインP0の値とすることができる。DR発動時において、需要家における当日の負荷3の値とベースラインP0とは近接した値となっていることが好ましい。
受電電力目標値算出部52は、DR指令受信部51によって受信した目標削減量Ptと、ベースラインP0とに基づいて、受電電力目標値Psetを決定する。この受電電力目標値Psetが蓄電池システム1を用いてネガワット取引を実現するための新たな目標値となる。
受電電力目標値Psetは、DR指令に応じて受電点の受電電力を削減する場合における、受電電力の目標値である。受電電力目標値算出部52は、ベースラインP0から目標削減量Ptを減算して、受電電力目標値Pset(=P0-Pt)を算出する。
負荷追従閾値入力部58は、蓄電池システム1の制御装置10におけるフィードバック目標値を受電電力目標値Psetに変換するために必要な負荷追従閾値Pgref1を出力する機能部である。負荷追従閾値Pgref1は、蓄電池システム1における制御装置10の負荷追従閾値設定部14から入力される負荷追従閾値Pgref1をキャンセルする値となる。したがって、負荷追従閾値入力部58には、蓄電池システム1の制御装置10と同じ負荷追従閾値Pgref1が設定されており、負荷追従閾値入力部58は、負荷追従閾値Pgref1を第1のバイアス値算出部53に与える。
第1のバイアス値算出部53は、受電電力指定値Psetと負荷追従閾値入力部58から出力された負荷追従閾値Pgref1とに基づいて、受電電力目標バイアス値Pbias1を算出する。
受電電力目標バイアス値Pbias1は、蓄電池システム1を用いてネガワット取引を実現するために、蓄電池システム1の制御装置10に入力される受電電力の値を受電点における実受電電力PjAよりも大きく見せる補正値である。
具体的に、第1のバイアス値算出部53は、負荷追従閾値Pgref1から受電電力指定値Psetを減算して受電電力目標バイアス値Pbias1を算出し、DR発動指令部54に与える。
スケジュール管理部56は、DR指令に基づく電力削減処理の実行(DRの発動)と停止を制御する機能部である。スケジュール管理部56は、DR指令受信部51によって受信したDR指令に含まれるDR発動時間情報に基づいて、DRの発動の可否を示すDR発動指令信号Xを出力する。
スケジュール管理部56は、例えば計時を行うタイマを有しており、DR指令受信部51がDR指令を受信すると、DR発動時間の情報に含まれるDRの開始時刻とDRの終了時刻とが上記タイマに設定される。スケジュール管理部56は、通常、DR指令に基づく電力削減処理の停止を指示するDR発動指令信号X(=0)を出力している。スケジュール管理部56は、計測している時刻が設定された開始時刻と一致した場合に、DR指令に基づく電力削減処理の実行を指示するDR発動指令信号X(=1)を出力する。その後、計測している時刻が設定された停止時刻と一致した場合には、DR指令に基づく電力削減処理の停止を指示するDR発動指令信号X(=0)を出力する。
DR発動指令部54は、DR発動指令信号Xに基づいて、受電電力目標バイアス値Pbias1の出力を制御する。DR発動指令部54は、DR発動指令信号XがDR指令に基づく電力削減処理の停止を指示する値(例えば0)である場合には、例えば“0”を出力する。一方、DR発動指令信号XがDR指令に基づく電力削減処理の実行を指示する値(例えば1)である場合には、第1のバイアス値算出部53によって算出された受電電力目標バイアス値Pbias1を出力する。
仮想受電電力算出部55は、蓄電池システム1の制御装置10に入力すべき受電電力の値を補正した仮想受電電力PjB1を算出する機能部である。仮想受電電力算出部55は、受電点における実受電電力PjAにDR発動指令部54から出力された値を加算して、仮想受電電力PjB1を算出する。仮想受電電力算出部55によって算出された仮想受電電力PjB1は、例えば4-20mAの電流信号によって、制御装置10に入力される。
例えば、DRが発動していない場合(DR発動指令信号X=0の場合)には、DR発動指令部54から“0”が出力されるので、仮想受電電力算出部55は、実受電電力PjAの値に“0”を加算して仮想受電電力PjB1を算出する。すなわち、DR発動の指示されていない場合(DR発動指令信号X=0の場合)には、実受電電力PjAの値がそのまま受電電力PjB1として出力され、制御装置10(負荷電力算出部13)は、実受電電力PjAを用いて負荷電力PLB1を算出する。
一方、DRが発動している場合(DR発動指令信号X=1の場合)には、DR発動指令部54から“受電電力目標バイアス値Pbias1”が出力されるので、仮想受電電力算出部55は、実受電電力PjAの値に“受電電力目標バイアス値Pbias1”を加算して仮想電力PjB1を算出する。すなわち、DRが発動している場合には、実受電電力PjAの値を“受電電力目標バイアス値Pbias1”だけかさ上げした(バイアスした)値が、受電電力PjB1として出力され、制御装置10(負荷電力算出部13)は、実受電電力PjAの代わりに仮想受電電力PjB1を用いて負荷電力PLB1を算出する。
一方、発電機DR部6において、DR指令受信部61は、例えばリソースアグリゲーター等の上位装置から蓄電池DR部5のDR指令受信部51と同じDR指令を受信する。
さらに、発電機DR部6のベースライン算出部67および受電電力目標値算出部62は、蓄電池DR部5のベースライン算出部57および受電電力目標値算出部52と同様に、ベースラインP0の値を算出し、受電電力目標値Psetを決定する。
負荷追従閾値入力部68は、発電機システム2の制御装置20におけるフィードバック目標値を受電電力目標値Psetに変換するために必要な負荷追従閾値Pgref2を出力する機能部である。負荷追従閾値Pgref2は、発電機システム2における制御装置20の負荷追従閾値設定部24から入力される負荷追従閾値Pgref2をキャンセルする値となる。したがって、負荷追従閾値入力部68には、制御装置20と同じ負荷追従閾値Pgref2が設定されており、負荷追従閾値入力部68は、負荷追従閾値Pgref2を第2のバイアス値算出部63に与える。
第2のバイアス値算出部63は、受電電力指定値Psetと負荷追従閾値入力部68から出力された負荷追従閾値Pgref2とに基づいて、受電電力目標バイアス値Pbias2を算出する。
受電電力目標バイアス値Pbias2は、蓄電池システム1を用いてネガワット取引を実現するために、蓄電池システム1の制御装置10に入力される受電電力の値を受電点における実受電電力PjAよりも大きく見せるための補正値である。
蓄電池出力値入力部60は、受電電力目標バイアス値Pbias2に対して、蓄電池の出力電力値Pg1をさらなる補正値として出力する機能部である。蓄電池出力値入力部60には、蓄電池システム1の出力電力値Pg1が入力されており、蓄電池出力値入力部60は、この値Pg1を補正値として第3のバイアス値算出部69に与える。
蓄電池出力値入力部60によって、蓄電池システム1によって出力される電力の値Pg1を入力することによって、蓄電池システム1による電力出力によって実際には受電電力PjAが低下するにもかかわらず、その影響をキャンセルして発電機システム2の制御に用いることにより、発電機システム2の出力を増加させることができる。これにより、出力が立ち上がりやすい蓄電池システム1から影響を受けることなく、発電機システム2が駆動される。
第3のバイアス値算出部69は、受電電力目標バイアス値Pbias2と蓄電池出力値入力部60から出力された補正値とに基づいて、受電電力目標バイアス値Pbias3を算出する。
具体的に、第3のバイアス値算出部69は、受電電力目標バイアス値Pbias2と蓄電池出力値入力部60から出力された補正値とを加算して受電電力目標バイアス値Pbias3を算出し、DR発動指令部64に与える。
スケジュール管理部66は、DR指令に基づく電力削減処理の実行(DRの発動)と停止および発電機の起動を制御する機能部である。スケジュール管理部66は、DR指令受信部61によって受信したDR指令に含まれるDR発動時間情報に基づいて、DRの発動の可否を示すDR発動指令信号Xを出力する。また、スケジュール管理部66は、DRの開始が予定されている時刻よりも前の時刻において、発電機システム2の発電機起動制御部26に対して起動することを指示する信号を入力する。
スケジュール管理部66は、例えば計時を行うタイマを有しており、DR指令受信部61がDR指令を受信すると、DR発動時間の情報に含まれるDRの開始時刻とDRの終了時刻とが上記タイマに設定される。スケジュール管理部66は、通常、DR指令に基づく電力削減処理の停止を指示するDR発動指令信号X(=0)を出力している。スケジュール管理部66は、計測している時刻が設定された開始時刻と一致した場合に、DR指令に基づく電力削減処理の実行を指示するDR発動指令信号X(=1)を出力する。その後、計測している時刻が設定された停止時刻と一致した場合には、DR指令に基づく電力削減処理の停止を指示するDR発動指令信号X(=0)を出力する。
DR発動指令部64は、DR発動指令信号Xに基づいて、受電電力目標バイアス値Pbias3の出力を制御する。DR発動指令部64は、DR発動指令信号XがDR指令に基づく電力削減処理の停止を指示する値(例えば0)である場合には、例えば“0”を出力する。一方、DR発動指令信号XがDR指令に基づく電力削減処理の実行を指示する値(例えば1)である場合には、第3のバイアス値算出部69によって算出された受電電力目標バイアス値Pbias3を出力する。
仮想受電電力算出部65は、発電機システム2の制御装置20に入力すべき受電電力の値を補正した仮想受電電力PjB2を算出する機能部である。仮想受電電力算出部65は、受電点における実受電電力PjAにDR発動指令部64から出力された値を加算して、仮想受電電力PjB2を算出する。仮想受電電力算出部65によって算出された仮想受電電力PjB2は、例えば4-20mAの電流信号によって、制御装置20に入力される。
例えば、DRが発動していない場合(DR発動指令信号X=0の場合)には、DR発動指令部64から“0”が出力されるので、仮想受電電力算出部65は、実受電電力PjAの値に“0”を加算して仮想受電電力PjB2を算出する。すなわち、DR発動の指示されていない場合(DR発動指令信号X=0の場合)には、実受電電力PjAの値がそのまま受電電力PjB2として出力され、制御装置20(負荷電力算出部23)は、実受電電力PjAを用いて負荷電力PLB2を算出する。
一方、DRが発動している場合(DR発動指令信号X=1の場合)には、DR発動指令部64から“受電電力目標バイアス値Pbias3”が出力されるので、仮想受電電力算出部65は、実受電電力PjAの値に“受電電力目標バイアス値Pbias3”を加算して仮想電力PjB2を算出する。すなわち、DRが発動している場合には、実受電電力PjAの値を“受電電力目標バイアス値Pbias3”だけかさ上げした(バイアスした)値が、受電電力PjB2として出力され、制御装置20(負荷電力算出部23)は、実受電電力PjAの代わりに仮想受電電力PjB2を用いて負荷電力PLB2を算出する。
このように、ネガワット取引支援装置4を蓄電池システム1および発電機システム2の前段に設けることにより、制御装置10および制御装置20は、DRが発動していない場合には、ネガワット取引支援装置4を設けられていない場合と同様に、実受電電力PjAを用いて負荷電力PLB1、PLB2を算出し、DRが発動している場合には、実受電電力PjAではなく仮想受電電力PjB1、PjB2に基づいて負荷電力PLB1、PLB2を算出する。これにより、ネガワット取引装置100は、ネガワット取引支援装置4と既存の蓄電池システム1および既存の発電機システム2とによって、DR指令に応じた電力の削減(ネガワット取引)を行うことが可能となる。
次に、ネガワット取引装置100の動作について、図を用いて説明する。
図4A~図4Fは、第1の実施形態に係るネガワット取引装置100の動作を説明するための図である。図5は、第1の実施形態に係るネガワット取引装置100におけるDR発動前後の電力の変化を示すタイミングチャートである。図6は、DR発動直後の蓄電池出力Pg1と発電機出力Pg2との変動を詳細に示す図である。図7および図8は第1の実施形態に係るネガワット取引装置100とは設定を変えた場合のタイミングチャートであり、比較のために示した。図7は、ネガワット取引装置100において、蓄電池DR部5のDR発動指令部54を常に「0」に設定した場合であり、図8は、発電機DR部6の蓄電池出力値入力部60の出力を常に「0」に設定した場合である。
図5および図7から図8において、横軸は時間を示し、縦軸は電力を示している。また、図5から図7には、ベースラインP0、受電電力PjA、負荷3、蓄電池出力Pg1、発電機出力Pg2の変化が示されている。
図4Aには、図5のT=t0におけるネガワット取引装置100の発電機出力Pg2等の数値例が示され、図4Bには、図6のT=t11におけるネガワット取引装置100の発電機出力Pg2等の数値例が示され、図4Cには、図6のT=t12におけるネガワット取引装置100の発電機出力Pg2等の数値例が示され、図4Dには、図6のT=t13におけるネガワット取引装置100の発電機出力Pg2等の数値例が示され、図4Eには、図6のT=t14におけるネガワット取引装置100の発電機出力Pg2等の数値例が示され、図4Fには、図6のT=t14におけるネガワット取引装置100の発電機出力Pg2等の数値例が示されている。T=t11からt15は図5のT=t1からその直後を詳細に示したものである。
図4A~図4Fに示すネガワット取引装置100においては、負荷追従閾値Pgref1、Pgref2=7000kWであり、ベースラインP0は、6500kWであるとする。
図5、図6の動作例においては、DR発動前に、T=t1からt5までの時間に目標削減量が2000kWである目標値データPtを含むDR指令を上位装置から受信しているものとする。
(T=t0)
図4Aおよび図5に示すように、先ず、ネガワット取引支援装置4がDR指令を受信していない時刻t0では、スケジュール管理部56、66が、DR発動指令信号Xを“0”として出力しているので、DR発動指令部54、64が“0”を出力し、仮想受電電力算出部55、65が、仮想受電電力PjB1、PjB2(6500kW)として、実受電電力PjA(6500kW)をそのまま蓄電池システム1の制御装置10と発電機システム2の制御装置20とに入力する。各制御装置10、20において、入力された仮想受電電力PjB1、PjB2(6500kW)は負荷追従閾値Pgref1、2(7000kW)よりも小さい値となるので、制御装置10、20の出力Pga1、Pga2は「0」となり、蓄電池システム1からの電力出力Pg1および発電機システム2からの発電出力Pg2は「0」となる。
また、DR指令受信部51、61は、DR発動時刻以前にDR指令を受信すると、DR指令に含まれるDR発動時間のデータをスケジュール管理部56、66に与える。スケジュール管理部56、66は、あらかじめ、DR指令受信部51、61から与えられたDR発動時刻のデータに基づいて、DR発動時刻t1(=t11)とDR停止時刻t5を内部のタイマにセットする。このとき、スケジュール管理部56、66は、引き続き、DR発動指令信号Xを“0”として出力するので、仮想受電電力算出部55、65も、実受電電力PjA(6500kW)を仮想受電電力PjB1、PjB2(6500kW)として出力する。
DR発動時刻t1直前においても、受電電力目標値算出部52、62は、DR指令受信部51、61から与えられた目標削減量Pt(=2000kW)をベースライン算出部57、67によって算出されたベースラインP0(6500kW)から減算することにより、受電電力目標値Pset(=4500kW)を算出し、第1のバイアス値算出部53、第2のバイアス値算出部63に与えることができる。
蓄電池DR部5の第1のバイアス値算出部53は、負荷追従閾値Pgref1(=7000kW)から受電電力目標値Pset(=4500kW)を減算して受電電力目標バイアス値Pbias1(2500kW)を算出し、DR発動指令部54に与える。
また、発電機DR部6の第2のバイアス値算出部63は、負荷追従閾値Pgref2(=7000kW)から受電電力目標値Pset(=4500kW)を減算して受電電力目標バイアス値Pbias2(2500kW)を算出し、第3のバイアス値算出部69に与える。
発電機DR部6の第3のバイアス値算出部69では、蓄電池出力値入力部60からの値(この実施形態では蓄電池出力の値Pg1そのままの値)を受電電力目標バイアス値Pbias2(2500kW)と加算するが、DR発動前およびDR発動時点では、蓄電池出力Pg1は「0」であるので、第3のバイアス値算出部69は、受電電力目標バイアス値Pbias2(2500kW)そのままの値を受電電力目標バイアス値Pbias3(2500kW)としてDR発動指令部64に与える。
(T=t11)
図4Bおよび図6、(図5)に示すように、DR発動時刻t11(=t1)において、スケジュール管理部56、66による計測時刻がタイマにセットしたDR発動時刻と一致した時刻t11となったとき、スケジュール管理部56、66は、図4Bに示すように、DR発動指令信号Xを“0”から“1”に切り替える。これにより、DR発動指令部54、64が、第1および第3のバイアス値算出部53、69から与えられた受電電力目標バイアス値Pbias1、3(2500kW)を出力し、仮想受電電力算出部55、65が、DR発動指令部54、64から出力された受電電力目標バイアス値Pbias1、3(=2500kW)を実受電電力PjAに加算して仮想受電電力PjB1、2を算出し、蓄電池システム1および発電機システム2に与える。
これと同時に、図5に示すように発電機DR部6のスケジュール管理部66は、DRの開始時刻t1に発電機を起動する信号(ON信号)を発電機システム2に入力する。発電機システム2の制御装置20における発電機起動制御部26は、発電機21に対してON指令Sgを出力する。発電機21は、ON指令に基づいて起動する。
このとき、蓄電池システム1にも発電機システム2にも、同じように、実受電電力PjAに受電電力目標バイアス値Pbias1、3(=2500kW)が加算された仮想受電電力PjB1、2が入力される。蓄電池システム1では、この急激な入力の変動(2500kWへの急上昇)に応じて、その蓄電池出力Pg1も急激に上昇(2000kWへの急上昇)することができる。しかしながら、発電機システム2では、この急激な入力の変動に応じて、その発電機出力Pg2を上昇させることができない(0kWのまま)。
このように蓄電池出力Pg1の急激な変化にともなって、図4Bに示すように、実受電電力PjAは急激に4500kWとなるとともに、発電機DR部6では、蓄電池出力値入力部60に蓄電池出力Pg1として2000kWの入力がなされるので、受電力目標バイアス値Pbias3が4500kWに上昇する。これに伴い、発電機DR部6において算出される仮想受電電力PjB2の値も、実受電電力PjA(=4500kW)と第3の受電電力目標バイアス値Pbias3(=4500kW)とを合計して、9000kWとなる。
このようにDR発動とほぼ同時に、蓄電池出力Pg1は2000kWとなっている。蓄電池システム1では、制御装置10の負荷電力算出部13において、仮想受電電力算出部55から受け取った仮想受電電力PjB1(=7000kW)を蓄電池出力Pg1(=2000kW)と加算して負荷電力PLB1(=9000kW)を算出し、出力電力調整値算出部15に出力している。
発電機システム2では、制御装置20の負荷電力算出部23において、仮想受電電力算出部65から受け取った仮想受電電力PjB2(=9000kW)を発電機出力Pg2(=0kW)と加算して負荷電力PLB2(=9000kW)を算出し、発電電力調整値算出部25にそれぞれ出力している。
出力電力調整値算出部15は、負荷電力PLB1(=9000kW)から負荷追従閾値Pgref1(=7000kW)を減算して出力電力調整値Pga1(=2000kW)を算出し、電力変換器11に入力する(図4B参照)。これにより、出力電力調整値Pga1(=2000kW)が蓄電池出力の目標値として設定されている。
発電電力調整値算出部25は、負荷電力PLB2(=9000kW)から負荷追従閾値Pgref2(=7000kW)を減算して発電電力調整値Pga2(=2000kW)を算出し、発電機21に入力する(図4B参照)。これにより、発電電力調整値Pga2(=2000kW)が発電電力(発電機出力Pg2)の目標値として設定されている。
(T=t12)
次いで、DR発動直後の時刻t12では、図4Cおよび図6に示すように、発電機システム2では、発電電力調整値Pga2(=2000kW)に応じて、実際の発電機出力Pg2が600kWまで上昇する。一方で、蓄電池システム1では、蓄電池出力Pg1がt=11のときと同じ2000kWであったとすると、発電機出力Pg2の上昇により受電電力PjAが一瞬3900kWになるのに応じて、蓄電池出力Pg1が下がる(=1400kW)こととなる。このように、本実施形態のネガワット取引装置100では、蓄電池出力Pg1と発電機出力Pg2との合計が常にDR目標削減量Pt(=2000kW)となるように動作することになる。なお、蓄電池システム1がすぐに蓄電池出力Pg1(1400kW)を下げるため、受電電力PjAはすぐに4500kWまで戻り(4500kWに落ち着き)、発電機システム2側への影響はない。
図4Cおよび図6の時刻t12では、蓄電池出力Pg1が出力電力調整値Pga1(=1400kW)に制御されており、発電機DR部6では、蓄電池出力の値Pg1(=1400kW)が入力される。発電機DR部6では、第3のバイアス値算出部69は、受電電力目標バイアス値Pbias2(2500kW)に蓄電池出力の値Pg1(=1400kW)を加算して、受電電力目標バイアス値Pbias3(3900kW)をDR発動指令部64に出力している。
蓄電池DR部5の仮想受電電力算出部55では、DR発動指令部54から出力された受電電力目標バイアス値Pbias1(=2500kW)を実受電電力PjA(=4500kW)に加算して仮想受電電力PjB1(=7000kW)を算出し、蓄電池システム1に与えている。
発電機DR部6の仮想受電電力算出部65では、DR発動指令部64から出力された受電電力目標バイアス値Pbias3(=3900kW)を実受電電力PjA(=4500kW)に加算して仮想受電電力PjB2(=8400kW)を算出し、発電機システム2に与えている。
蓄電池システム1の負荷電力算出部13では、仮想受電電力算出部55から受け取った仮想受電電力PjB1(=7000kW)を蓄電池出力Pg1(=1400kW)と加算して負荷電力PLB1(=8400kW)を算出し、出力電力調整値算出部15に出力する。出力電力調整値算出部15は、負荷電力PLB1(=8400kW)から負荷追従閾値Pgref1(=7000kW)を減じて、出力電力調整値Pga1(=1400kW)が蓄電池出力の目標値として設定されている。
発電機システム2の負荷電力算出部23では、仮想受電電力算出部65から受け取った仮想受電電力PjB2(=8400kW)を発電機出力Pg2(=600kW)と加算して負荷電力PLB2(=9000kW)を算出し、発電電力調整値算出部25に出力する。発電電力調整値算出部25は、負荷電力PLB2(=9000kW)から負荷追従閾値Pgref2(=7000kW)を減じて、発電電力調整値Pga2(=2000kW)が発電機の発電目標値として設定されている。
(T=t13)
図4Dおよび図6の時刻t13では、蓄電池出力Pg1が出力電力調整値Pga1(=1000kW)に制御されており、発電機DR部6では、蓄電池出力の値Pg1(=1000kW)が入力される。発電機DR部6では、第3のバイアス値算出部69は、受電電力目標バイアス値Pbias2(2500kW)に蓄電池出力の値Pg1(=1000kW)を加算して、受電電力目標バイアス値Pbias3(3500kW)をDR発動指令部64に出力している。
蓄電池DR部5の仮想受電電力算出部55では、DR発動指令部54から出力された受電電力目標バイアス値Pbias1(=2500kW)を実受電電力PjA(=4500kW)に加算して仮想受電電力PjB1(=7000kW)を算出し、蓄電池システム1に与えている。
発電機DR部6の仮想受電電力算出部65では、DR発動指令部64から出力された受電電力目標バイアス値Pbias3(=3500kW)を実受電電力PjA(=4500kW)に加算して仮想受電電力PjB2(=8000kW)を算出し、発電機システム2に与えている。
蓄電池システム1の負荷電力算出部13では、仮想受電電力算出部55から受け取った仮想受電電力PjB1(=7000kW)を蓄電池出力Pg1(=1000kW)と加算して負荷電力PLB1(=8000kW)を算出し、出力電力調整値算出部15に出力する。出力電力調整値算出部15は、負荷電力PLB1(=8000kW)から負荷追従閾値Pgref1(=7000kW)を減じて、出力電力調整値Pga1(=1000kW)が蓄電池出力の目標値として設定されている。
発電機システム2の負荷電力算出部23では、仮想受電電力算出部65から受け取った仮想受電電力PjB2(=8000kW)を発電機出力Pg2(=1000kW)と加算して負荷電力PLB2(=9000kW)を算出し、発電電力調整値算出部25に出力する。発電電力調整値算出部25は、負荷電力PLB2(=9000kW)から負荷追従閾値Pgref2(=7000kW)を減じて、発電電力調整値Pga2(=2000kW)が発電機の発電目標値として設定されている。
(T=t14)
図4Eおよび図6の時刻t14では、蓄電池出力Pg1が出力電力調整値Pga1(=800kW)に制御されており、発電機DR部6では、蓄電池出力の値Pg1(=800kW)が入力される。発電機DR部6では、第3のバイアス値算出部69は、受電電力目標バイアス値Pbias2(2500kW)に蓄電池出力の値Pg1(=800kW)を加算して、受電電力目標バイアス値Pbias3(3300kW)をDR発動指令部64に出力している。
蓄電池DR部5の仮想受電電力算出部55では、DR発動指令部54から出力された受電電力目標バイアス値Pbias1(=2500kW)を実受電電力PjA(=4500kW)に加算して仮想受電電力PjB1(=7000kW)を算出し、蓄電池システム1に与えている。
発電機DR部6の仮想受電電力算出部65では、DR発動指令部64から出力された受電電力目標バイアス値Pbias3(=3300kW)を実受電電力PjA(=4500kW)に加算して仮想受電電力PjB2(=7800kW)を算出し、発電機システム2に与えている。
蓄電池システム1の負荷電力算出部13では、仮想受電電力算出部55から受け取った仮想受電電力PjB1(=7000kW)を蓄電池出力Pg1(=800kW)と加算して負荷電力PLB1(=7800kW)を算出し、出力電力調整値算出部15に出力する。出力電力調整値算出部15は、負荷電力PLB1(=7800kW)から負荷追従閾値Pgref1(=7000kW)を減じて、出力電力調整値Pga1(=800kW)が蓄電池出力の目標値として設定されている。
発電機システム2の負荷電力算出部23では、仮想受電電力算出部65から受け取った仮想受電電力PjB2(=7800kW)を発電機出力Pg2(=1200kW)と加算して負荷電力PLB2(=9000kW)を算出し、発電電力調整値算出部25に出力する。発電電力調整値算出部25は、負荷電力PLB2(=9000kW)から負荷追従閾値Pgref2(=7000kW)を減じて、発電電力調整値Pga2(=2000kW)が発電機の発電目標値として設定されている。
(T=t15)
図4Fおよび図6の時刻t15では、蓄電池出力Pg1が出力電力調整値Pga1(=600kW)に制御されており、発電機DR部6では、蓄電池出力の値Pg1(=600kW)が入力される。発電機DR部6では、第3のバイアス値算出部69は、受電電力目標バイアス値Pbias2(2500kW)に蓄電池出力の値Pg1(=600kW)を加算して、受電電力目標バイアス値Pbias3(3100kW)をDR発動指令部64に出力している。
蓄電池DR部5の仮想受電電力算出部55では、DR発動指令部54から出力された受電電力目標バイアス値Pbias1(=2500kW)を実受電電力PjA(=4500kW)に加算して仮想受電電力PjB1(=7000kW)を算出し、蓄電池システム1に与えている。
発電機DR部6の仮想受電電力算出部65では、DR発動指令部64から出力された受電電力目標バイアス値Pbias3(=3100kW)を実受電電力PjA(=4500kW)に加算して仮想受電電力PjB2(=7600kW)を算出し、発電機システム2に与えている。
蓄電池システム1の負荷電力算出部13では、仮想受電電力算出部55から受け取った仮想受電電力PjB1(=7000kW)を蓄電池出力Pg1(=600kW)と加算して負荷電力PLB1(=7600kW)を算出し、出力電力調整値算出部15に出力する。出力電力調整値算出部15は、負荷電力PLB1(=7600kW)から負荷追従閾値Pgref1(=7000kW)を減じて、出力電力調整値Pga1(=600kW)が蓄電池出力の目標値として設定されている。
発電機システム2の負荷電力算出部23では、仮想受電電力算出部65から受け取った仮想受電電力PjB2(=7600kW)を発電機出力Pg2(=1400kW)と加算して負荷電力PLB2(=9000kW)を算出し、発電電力調整値算出部25に出力する。発電電力調整値算出部25は、負荷電力PLB2(=9000kW)から負荷追従閾値Pgref2(=7000kW)を減じて、発電電力調整値Pga2(=2000kW)が発電機の発電目標値として設定されている。
図5に示すように、その後のDR発動中の時刻t2においては、発電機21の発電機出力Pg2が発電電力調整値Pga2(=2000kW)まで到達したとき、受電点の実受電電力PjA(=4500kW)は、負荷3の値6500kWよりも発電機21の発電機出力Pg2(=2000kW)だけ低い値となっている。このとき蓄電池12の出力Pg1はゼロ「0」である。
このように、本実施形態のネガワット取引装置100によれば、蓄電池出力Pg1と発電機出力Pg2との合計が常にDR目標削減量Pt(=2000kW)となるように制御することができる。すなわち、本実施形態のネガワット取引支援装置によれば、DR発動時点の発電機がすぐに立ち上がらない間は、蓄電池が出力することによって、DR指令に正確に対応し、発電機の立ち上がりとともに、蓄電池の出力が減り、DR指令が長く継続する場合でも蓄電池容量の制限なく、DR指令に正確に対応することができる。
なお、ネガワット取引装置100において、蓄電池DR部のDR発動指令部54を常に「0」に設定した場合、すなわち蓄電池システム1からの蓄電池出力Pg1を常に「0」に設定した場合は、図7に示すように、受電電力PjAがDR発動時点において直線的な立ち上がりとならない。これはDR指令に正確に対応できていないことを意味する。
また、蓄電池出力値入力部60がない場合は、図8に示すように、DR発動時点において蓄電池出力Pg1のみが直線的に立ち上がったままとなり、発電機出力Pg2はあまり大きくならない。この場合は、DR指令が長くした場合は、蓄電池容量が足りなくなり、DR指令に正確に対応することができなくなる。
以上、第1の実施形態に係るネガワット取引支援装置4は、ネガワット取引における電力の削減を要求するデマンドレスポンス指令(DR指令)に応じて、第1の閾値(Pgref1)よりも大きい第1の仮想受電電力の値(仮想受電電力PjB1)を算出し、該算出した第1の仮想受電電力PjB1を、受電電力の値(実受電電力PjA)に代えて蓄電池システム1の制御装置10に入力する。その一方で、蓄電池の出力電力の値Pg1に基づいて、第2の閾値(Pgref2)よりも大きい第2の仮想受電電力の値(仮想受電電力PjB2)を算出し、該算出した第2の仮想受電電力(仮想受電電力PjB2)を、受電電力の値(実受電電力PjA)に代えて前記発電機システム2の前記制御装置20に入力する。これによれば、蓄電池出力Pg1と発電機出力Pg2との合計が常にDR目標削減量Ptと一致するように制御することができ、その結果、蓄電池システムと発電機システムとを併設した補助電力源を用いてネガワット取引に利用する場合に、発電機システムを優先的に駆動しつつ、DR指令に正確に対応することが可能となる。
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態のネガワット取引支援装置を既存の発電機システムに組み込んだネガワット取引装置の構成を示す図である。第1の実施形態では、ネガワット取引支援装置は、発電機DR部6の蓄電池出力値入力部60により蓄電池の出力をそのまま使用して第3のバイアス値を算出していた。第2の実施形態では、蓄電池出力値入力部60の出力に係数乗算部70を設けて、蓄電池の出力に対して、係数を乗算した値を使用して第3のバイアス値を算出する。その他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、その説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
この実施形態のネガワット取引支援装置では、係数乗算部70において乗算する係数の値によって、第3のバイアス値算出部69に入力される値が異なる。第3のバイアス値が異なると、仮想受電電力PjB2が異なるので、制御目標値が変化し、結果として蓄電池システム1および発電機システム2のそれぞれからの出力電力の比率が第1の実施形態とは異なる。
図10および図11は、係数乗算部70において乗算する係数を変化させた場合の出力電力変化の様子を示す図である。図10は蓄電池システム1の最大可能出力が2000kWであり、発電機システム2の最大可能出力が2000kWである場合において、DR量が2000kWであり、(a)は係数=1、(b)は係数=0.5、(c)は係数=0、(d)は係数=0.2としている。
図10(a)に示すように、係数=1の場合、すなわち蓄電池の出力電力値Pg1をそのまま入力して発電機システム2に与える仮想受電電力PjB2を算出すると、発電機出力がDR量と等しい2000kWとなる一方で、蓄電池出力が完全に“0”になる。
図10(b)に示すように、係数=0.5の場合、すなわち蓄電池の出力電力値Pg1の半分の値を入力して発電機システム2に与える仮想受電電力PjB2を算出すると、発電機出力がDR量の半分1000kWまで増加する一方で、蓄電池出力もDR量の半分の1000kWまで下がる。
図10(c)に示すように、係数=0の場合、すなわち蓄電池の出力電力値Pg1を全く与えないで発電機システム2に与える仮想受電電力PjB2を算出すると、発電機出力は0kWのままである一方で、蓄電池出力は2000kWのままとなる。
図10(d)に示すように、係数=0.2の場合、すなわち蓄電池での出力電力値Pg1の2割を入力して発電機システム2に与える仮想受電電力PjB2を算出すると、発電機出力が蓄電池出力電力値の2割の400kWとなる一方で、蓄電池出力は、1600kWまでしか下がらない。
図11は蓄電池システム1の最大可能出力が1000kWであり、発電機システム2の最大可能出力が2000kWである場合において、DR量が1000kWであり、(a)は係数=1、(b)は係数=0.5、(c)は係数=0、(d)は係数=0.2としている。
図11(a)に示すように、係数=1の場合、すなわち蓄電池の出力電力値Pg1をそのまま入力して発電機システム2に与える仮想受電電力PjB2を算出すると、発電機出力が1000kWとなる一方で、蓄電池出力が完全に“0”になる。
図11(b)に示すように、係数=0.5の場合、すなわち蓄電池の出力電力値Pg1の半分の値を入力して発電機システム2に与える仮想受電電力PjB2を算出すると、発電機出力がDR量の半分500kWまで増加する一方で、蓄電池出力もDR量の半分の500kWまで下がる。
図11(c)に示すように、係数=0の場合、すなわち蓄電池の出力電力値Pg1を全く与えないで発電機システム2に与える仮想受電電力PjB2を算出すると、発電機出力は0kWのままである一方で、蓄電池出力は1000kWのままとなる。
図11(d)に示すように、係数=0.2の場合、すなわち蓄電池の出力電力値Pg1の2割を入力して発電機システム2に与える仮想受電電力PjB2を算出すると、発電機出力が蓄電池出力電力値の2割の200kWとなる一方で、蓄電池出力は、800kWまでしか下がらない。
このように、第2の実施形態に係るネガワット取引支援装置4では、発電機DR部6の蓄電池出力値入力部60から入力する蓄電池の出力値Pg1に係数をかけることによって得られた値に基づいて、発電機システム2のそれぞれに与える仮想受電電力PjB2を算出する。
以上、第2の実施形態に係るネガワット取引支援装置4は、第1の実施形態において、蓄電池出力値入力部60によって蓄電池の出力電力の値を出力して、そのまま使用して、第2の閾値よりも大きい第3のバイアス値(仮想受電電力PjB2)を算出していた。この算出に際し、第2の実施形態では、蓄電池出力値入力部60の出力に係数乗算部70を設けて、蓄電池の出力電力の値Pgに係数をかけて第3のバイアス値(仮想受電電力PjB2)を算出する。これによれば、蓄電池システムと発電機システムとを併設した補助電力源を用いてネガワット取引に利用する場合に、蓄電池と発電機の出力比率を制御しながら、DR指令に正確に対応することが可能となる。
(実施の形態の拡張)
以上の実施形態では、DR指令として、目標削減量Ptを受け取り、この目標削減量Ptに基づいて受電電力目標値算出部52、62が受電電力目標値Psetを決定する構成を例に挙げて説明した。しかしながら、ネガワット取引支援装置4はこの構成に限定されない。たとえば、DR指令受信部51、61において、DR指令として受電電力目標値Psetを受け取り、これを第1のバイアス値算出部53または第2のバイアス値算出部63に出力するようにしてもよい。この場合、ベースライン算出部57、67と受電電力目標値算出部52、62は、省略してもよい。
さらに、ネガワット取引支援装置4は、DR指令として目標削減量Ptが含まれる場合と、受電電力目標値Psetが含まれる場合との両方に対応することができるように、DR指令受信部51、61は、受け取ったDR指令の内容に基づいて、受電電力目標値算出部52、62と第1のバイアス値算出部53または第2のバイアス値算出部63とのいずれかに選択的に目標削減量Ptまたは受電電力目標値Psetを入力するようにしてもよい。