1.実施形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るポジワット取引支援装置(5)は、受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷(2)に対して、前記外部からの電力とは別に電力を供給可能な蓄電池(11)と、前記受電点における受電電力の値が入力され、前記受電電力の値に基づいて前記蓄電池の放電電力を制御するとともに、前記受電電力の値が所定の閾値を超えないように前記受電点から前記蓄電池への充電電力を制御する制御装置(10)とを備えた蓄電池システム(1)に接続可能なポジワット取引支援装置(5)である。ポジワット取引支援装置(5)は、ポジワット取引における使用電力の増加を要求するデマンドレスポンス指令に応じて算出した前記受電電力の目標値(Psetx)と、前記受電電力の値(PjA)と、前記所定の閾値(Pcmax)とに基づいて仮想受電電力の値(PjB)を算出し、前記受電電力の値(PjA)に代えて前記制御装置に入力し、前記受電電力の目標値を第1の値から前記第1の値よりも大きい第2の値に変更するとき、前記受電電力の目標値の変化率が所定の変化率以下になるように、前記受電電力の目標値を変化させることを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕に記載のポジワット取引支援装置において前記受電電力の目標値(Psetx)を前記第1の値から前記第2の値に変更するとき、前記受電電力の目標値(Psetx)を前記第1の値から前記第2の値まで、所定時間毎に段階的に変化させてもよい。
〔3〕上記〔2〕に記載のポジワット取引支援装置は、ポジワット取引における使用電力の増加を要求するデマンドレスポンス指令に応じて、前記受電電力の目標値を決定する受電電力目標値決定部と、前記デマンドレスポンス指令に応じて、前記受電電力の値と前記受電電力の目標値との和を前記所定の閾値に加算して前記仮想受電電力の値を算出し、前記制御装置に入力する仮想受電電力算出部と、前記デマンドレスポンス指令に応じた電力調整処理の実行と停止を指示するスケジュール管理部とを有し、前記受電電力目標値決定部は、前記スケジュール管理部が前記電力調整処理の停止を指示した場合に、前記受電電力の目標値を、直前に設定されていた値から前記所定時間毎に段階的にゼロまで変化させてもよい。
〔4〕本発明の代表的な実施の形態に係る方法は、受電点を介して外部から電力の供給を受ける負荷に対して、前記外部からの電力とは別に電力を供給可能な蓄電池と、前記受電点における受電電力の値が入力され、前記受電電力の値に基づいて前記蓄電池の放電電力を制御するとともに、前記受電電力の値が所定の閾値を超えないように前記受電点から前記蓄電池への充電電力を制御する制御装置とを備えた蓄電池システムを用いたポジワット取引を支援するポジワット取引支援方法である。本ポジワット取引支援方法は、ポジワット取引における使用電力の増加を要求するデマンドレスポンス指令を受信する第1ステップと、前記デマンドレスポンス指令に応じて算出した前記受電電力の目標値と、前記受電電力の値と、前記所定の閾値とに基づいて仮想受電電力の値を算出し、前記受電電力の値に代えて前記制御装置に入力する第2ステップと、前記受電電力の目標値を第1の値から前記第1の値よりも大きい第2の値に変更するとき、前記受電電力の目標値の変化率が所定の変化率以下になるように、前記受電電力の目標値を変化させる第3ステップと、を含むことを特徴とする。
〔5〕上記〔4〕のポジワット取引支援方法において、前記第3ステップは、前記受電電力の目標値を前記第1の値から前記第2の値まで、所定時間毎に段階的に変化させるステップを含んでもよい。
2.実施形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るポジワット取引支援装置を既存の蓄電池システムに組み込んだポジワット取引装置の構成を示す図である。
ポジワット取引装置100は、例えば、需要家の敷地内に設置され、バーチャルパワープラントを構成するリソースアグリゲーター等から送信されるデマンドレスポンス指令(以下、「DR指令」とも称する。)に応じて、受電点における受電電力を増加させてポジワット取引を可能にするシステムである。
図1に示すように、ポジワット取引装置100は、蓄電池システム1と、蓄電池システム1(制御装置10)の前段に設けられるポジワット取引支援装置5と、を備えている。
蓄電池システム1は、需要家の受電点における受電電力が供給される負荷2に対して、上記受電電力とは別に電力を供給し、受電点における受電電力によって充電可能な蓄電池を備えた設備である。例えば、蓄電池システム1は、需要家の敷地内に既設のシステムである。
図1に示すように、蓄電池システム1は、制御装置10、蓄電池11、および電力変換部12を備えている。蓄電池システム1は、動作モードとして、蓄電池11を充電する充電モードと、蓄電池11を放電する放電モードとを有している。蓄電池システム1は、充電モードにおいて、受電電力に応じて蓄電池11の充電電力が変化するように動作し、放電モードにおいて、受電電力に応じて蓄電池11の放電電力が変化するように動作する。
蓄電池11は、繰り返しの充電が可能な二次電池であり、例えばナトリウム・硫黄電池である。
電力変換部12は、後述する制御装置10によって制御され、蓄電池11と、負荷2と、系統との間で相互に電力の変換を行う。電力変換部12は、例えば交直変換装置である。例えば、電力変換部12は、充電モードにおいて、制御装置10からの指示に応じて、受電点からの交流電力(AC)を直流電力(DC)に変換して蓄電池11に供給し、放電モードにおいて、制御装置10からの指示に応じて、蓄電池11からの直流電力を交流電力に変換して負荷2に供給する。放電モードにおいては、蓄電池11からの電力Pcと受電点からの電力とが負荷2に供給されることにより、外部(系統)から受電点に供給される電力(受電点電力)を削減することが可能となる。
制御装置10は、電力変換部12を制御して蓄電池11の充放電を制御するための装置である。制御装置10は、ハードウェア資源として、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM等の各種記憶装置と、タイマ(カウンタ)と、A/D変換回路と、D/A変換回路と、入出力I/F回路等の周辺回路とがバスを介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)を備えている。
図1に示すように、制御装置10は、蓄電池11の放電電力および充電電力を調整する機能を実現するための機能ブロックとして、放電制御部14と、充電制御部15と、モード切替部16と、電力調整値出力部17とを有している。これらの機能ブロックは、例えば、上述した制御装置10を構成するハードウェア資源としてのプログラム処理装置(マイクロコントローラ)において、プロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種演算を実行し、入出力I/F回路やタイマ等の周辺回路を制御することによって、実現される。なお、本実施の形態では、制御装置10の上記機能ブロックがプログラム処理によって実現されるものとして説明するが、一部または全ての機能ブロックがハードウェアロジック回路等によって実現されていてもよい。
負荷電力算出部13は、例えば、入力された受電電力の値と蓄電池11の電力Pcの値とを加算して、負荷電力PLBの値を算出する。
本実施形態では、蓄電池11が放電しているときの電力(放電電力)Pcを正の値で表し、蓄電池11が充電しているときの電力(充電電力)Pcを負の値で表すものとする。
放電制御部14は、放電モードにおいて、蓄電池11の放電電力を制御する。放電制御部14は、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力PLBの値に基づいて、蓄電池11の放電電力の目標値である放電電力調整値Pdaを算出する。具体的には、放電制御部14は、負荷電力PLBの値を監視し、負荷電力PLBの値が予め設定された閾値(負荷追従閾値)を超えないように放電電力調整値Pdaを算出する。
充電制御部15は、充電モードにおいて、蓄電池11の充電電力を制御する。充電制御部15は、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力PLBの値に基づいて、蓄電池11の充電電力の目標値である充電電力調整値Pcaを算出する。充電制御部15の詳細については後述する。
モード切替部16は、蓄電池システム1の動作モードの切り替えを制御する。モード切替部16は、例えば、外部から入力されたモード指定信号Smに応じて、蓄電池システム1の動作モードを切り替える。
例えば、モード切替部16は、放電制御部14と電力調整値出力部17との間に接続されたスイッチ部SWdと、充電制御部15と電力調整値出力部17との間に接続されたスイッチ部SWcと、を有している。
スイッチ部SWdは、放電モードを指定するモード指定信号Smが入力された場合に、オン状態となり、充電モードを指定するモード指定信号Smが入力された場合に、オフ状態となる。一方、スイッチ部SWcは、充電モードを指定するモード指定信号Smが入力された場合に、オン状態となり、放電モードを指定するモード指定信号Smが入力された場合に、オフ状態となる。
したがって、モード指定信号Smによって放電モードが指定された場合、スイッチ部SWdがオンし、スイッチ部SWcがオフすることにより、モード切替部16は、放電制御部14によって算出された放電電力調整値Pdaを出力する。一方、モード指定信号Smによって充電モードが指定された場合、スイッチ部SWdがオフし、スイッチ部SWcがオンすることにより、モード切替部16は、充電制御部15によって算出された充電電力調整値Pcaを出力する。
ここで、モード指定信号Smによる動作モードの指定は、例えば、ユーザが蓄電池システム1の入力インターフェース(例えばタッチパネルや機械スイッチ)を操作することによって行われる。例えば、ユーザが蓄電池システム1の入力インターフェースを操作して動作モードを指定した場合、指定された動作モードに応じたモード指定信号Smがモード切替部16に入力される。モード切替部16は、上述したように、モード指定信号Smによって指定された動作モードに応じた電力調整値(放電電力調整値Pdaまたは充電電力調整値Pca)を出力する。
電力調整値出力部17は、モード切替部16から入力された放電電力調整値Pdaまたは充電電力調整値Pcaを、電力変換部12に対して出力する。例えば、電力調整値出力部17は、モード切替部16から放電電力調整値Pdaが入力された場合には、その放電電力調整値Pdaを電力変換部12に対して出力し、モード切替部16から充電電力調整値Pcaが入力された場合には、その充電電力調整値Pcaを電力変換部12に対して出力する。
電力変換部12は、電力調整値出力部17から入力された電力調整値に従って蓄電池11の充放電を制御する。電力変換部12は、放電モードにおいて、蓄電池11の放電電力が放電電力調整値Pdaに一致するように蓄電池11の放電を制御し、充電モードにおいて、蓄電池11の充電電力が充電電力調整値Pcaに一致するように蓄電池11の充電を制御する。
次に、充電制御部15の詳細について説明する。
充電制御部15は、負荷電力PLBの値を監視し、負荷電力PLBの値が予め設定された閾値(充電時受電点最大電力値Pcmax)を超えないように、充電電力調整値Pcaを算出する。具体的に、充電制御部15は、充電時受電点最大電力設定部150、充電電力調整値算出部151、出力制限部152、および最大値選択部153を有している。
充電時受電点最大電力設定部150は、充電時受電点最大電力値Pcmaxを設定する。ここで、充電時受電点最大電力値Pcmaxは、蓄電池11の充電時に受電点の受電電力が需要家の契約電力を超えないように蓄電池11の充電量を制限するための閾値である。蓄電池システム1では、充電時受電点最大電力値Pcmaxを基準として、蓄電池11の充電電力Pcが調整される。
充電時受電点最大電力値Pcmaxとしては、例えば、需要家の契約電力に準じた値が設定される。例えば、充電時受電点最大電力値Pcmaxを契約電力よりも低い値に設定することにより、蓄電池システム1が余裕をもって動作することが可能となる。なお、充電時受電点最大電力値Pcmaxは1つに限られず、複数設定しておき、どの閾値に基づいて制御を行うかを選択できるようにしてもよい。
充電電力調整値算出部151は、充電電力調整値Pcaを算出する。充電電力調整値Pcaは、受電点の受電電力が充電時受電点最大電力値Pcmaxを超えないように蓄電池11を充電するための、蓄電池11の充電電力の目標値である。
具体的には、充電電力調整値算出部151は、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力PLBの値から充電時受電点最大電力値Pcmaxを減算して、充電電力調整値Pcaを算出する。
出力制限部152は、充電電力調整値算出部151によって算出された充電電力調整値Pcaが入力され、入力された充電電力調整値Pcaが負の値(例えば-9999から0までの範囲の値)である場合には、入力された充電電力調整値Pcaをそのまま出力し、充電電力調整値Pcaが正の値である場合には、充電電力調整値Pcaを“0”として出力する。
最大値選択部153は、出力制限部152から出力された充電電力調整値Pcaと、充電電力設定値Pcstとが入力され、いずれか大きい方をモード切替部16に対して出力する。
ここで、充電電力設定値Pcstは、蓄電池11の充電電力の上限値であり、例えば、ユーザが蓄電池システム1の入力インターフェースを操作することにより、予め設定されている。
例えば、充電電力設定値Pcstが-2000kW、充電電力調整値算出部151によって算出された充電電力調整値Pcaが-3000kWである場合、最大値選択部153は、充電電力設定値Pcst(=-2000kW)を充電電力調整値Pcaとして出力する。最大値選択部153から出力された充電電力調整値Pcaは、モード切替部16および電力調整値出力部17を介して電力変換部12に入力される。
このように、最大値選択部153が充電電力調整値Pcaと充電電力設定値Pcstのいずれか大きい方を選択することにより、受電点の受電電力(負荷2の電力)が充電時受電点最大電力値Pcmaxよりも十分に低く、蓄電池11に対して多くの充電が可能な状況であっても、蓄電池11の充電電力は充電電力設定値Pcst以下に制限されることになる。
次に、蓄電池システム1の動作について、図を用いて説明する。ここでは、ポジワット取引支援装置5を接続していない既存の受電電力調整機能を有する蓄電池システム1の構成例を用いて、蓄電池システム1の動作を説明する。
図2Aおよび図2Bは、蓄電池システム1の動作を説明するための図である。
図2Aおよび図2Bに示す蓄電池システム1において、充電時受電点最大電力値Pcmax=4000kW、充電電力設定値Pcst=-2000kWに設定され、負荷2の実電力の初期値が1000kWであるとする。図2Aには、放電モードから充電モードに切り替わったときの蓄電池システム1における各電力の数値例が示され、図2Bには、充電モードにおいて負荷の実電力が増加した時の蓄電池システム1における各電力の数値例が示されている。
図2Aおよび図2Bに示すように、ポジワット取引支援装置5が接続されていない既存の受電電力調整機能を有する蓄電池システム1の構成例では、需要家の受電点で受電された実受電電力PjAの値が受電電力の値として制御装置10に直接入力される。
図2Aに示すように、モード指定信号Smによって放電モードが指定されている場合には、モード切替部16によって放電電力調整値Pdaが選択され、放電電力調整値Pdaが電力調整値出力部17を介して電力変換部12に入力される。ここでは、放電電力調整値Pda=0kWであり、電力変換部12は、蓄電池11を放電させていないものとする。
次に、モード指定信号Smによって動作モードが放電モードから充電モードに切り替わった場合を考える。この場合、動作モードが充電モードに切り替わった時点では、蓄電池11は充電も放電もしていないので、蓄電池11の電力Pcは0kWである。一方、図2Aに示すように、負荷2の電力は1000kWであるので、受電点の実受電電力PjAは1000kWとなる。したがって、負荷電力算出部13によって算出される負荷2の負荷電力PLBの値は、実受電電力PjAと同じ値(=1000kW)となる。
充電制御部15は、負荷電力PLB(=1000kW)から充電時受電点最大電力値Pcmax(=4000kW)を減算して充電電力調整値Pca(=-3000kW)を算出する。この場合、算出された充電電力調整値Pca(=-3000kW)が負の値であるので、出力制限部152は、充電電力調整値算出部151によって算出された充電電力調整値Pca(=-3000kW)をそのまま最大値選択部153へ出力する。
この場合、充電電力調整値Pca(=-3000kW)が充電電力設定値Pcst(=-2000kW)よりも小さいので、最大値選択部153は、充電電力設定値Pcst(=-2000kW)をモード切替部16へ出力する。
モード切替部16は、モード指定信号Smによって充電モードが指定されているので、充電制御部15(最大値選択部153)から出力された充電電力設定値Pcst(=-2000kW)を選択し、電力調整値出力部17が充電電力設定値Pcst(=-2000kW)を電力変換部12に対して出力する。これにより、電力変換部12は、蓄電池11の充電を開始し、蓄電池11の充電電力が充電電力設定値Pcst(=-2000kW)に一致するように、受電点から蓄電池11への電力供給を制御する。
蓄電池11への充電が開始されると、受電点から負荷2と蓄電池11に電力が供給されるため、受電点の実受電電力PjAが増加する。蓄電池11の充電電力が目標値の-2000kWに到達したとき、受電点の実受電電力PjAは、当初(図2Aの場合)の値(=1000kW)よりも蓄電池11の電力(=2000kW)の分だけ大きい値(=3000kW)になる。一方、蓄電池11の充電電力Pcは、-2000kWになっているので、負荷電力算出部13によって算出される負荷電力PLBの値は、充電開始時と同じ値(1000kW(=3000kW-2000kW))となり、充電制御が継続して行われることになる。
次に、蓄電池11の充電中に負荷2の実電力が1000kWから3000kWに増加した場合を考える。この場合、図2Bに示すように、負荷の実電力が増加すると、負荷電力算出部13によって算出される負荷電力PLBの値が1000kWから3000kWに増加し、最大値選択部153に入力される充電電力調整値Pcaが-3000kWから―1000kWに増加する。
この場合、充電電力調整値Pca(=-1000kW)が充電電力設定値Pcst(=-2000kW)よりも大きいので、最大値選択部153は、充電電力調整値Pca(=-1000kW)をモード切替部16へ出力する。
モード切替部16は、充電制御部15(最大値選択部153)から出力された充電電力調整値Pca(=-1000kW)を選択し、電力調整値出力部17が充電電力調整値Pca(=-1000kW)を電力変換部12に対して出力する。これにより、電力変換部12は、蓄電池11の充電電力が、充電電力設定値Pcst(=-2000kW)ではなく、充電電力調整値Pca(=-1000kW)に一致するように蓄電池11への電力供給を制御し、実受電電力PjAが4000kWとなる。
このように、蓄電池システム1は、蓄電池11の充電中に負荷2の実電力が増加した場合であっても、充電時受電点最大電力(4000kW)を超えないように充電電力Pcを制御する。
図3は、蓄電池システム1の動作の概要を示すタイミングチャートである。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸は電力を表している。また、図3において、参照符号301は負荷2の実電力を表し、参照符号302は実受電電力PjAを表し、参照符号303は蓄電池11の電力(充電電力)Pcを表している。また、参照符号304は、仮に蓄電池システム1が充電時受電点最大電力制限機能を備えていない場合に、一定の充電電力(=充電電力設定値Pcst)で蓄電池11を充電した場合の実受電電力PjAを表している。
なお、図3では、図示の便宜上、蓄電池11が充電されるときの電力(充電電力)Pcの符号を“正(+)”としている。
先ず、充電電力設定値Pcstが設定され、充電モードに切り替わった場合、図3に示すように、制御装置10は、充電電力Pcが充電電力設定値Pcstに一致するように蓄電池11の充電電力Pcを制御する。
この場合に、制御装置10は、実受電電力PjAが充電時受電点最大電力値Pcmaxを超えない期間(例えば、時刻t1から時刻t2までの期間)では、充電電力Pcが充電電力設定値Pcstに一致するように蓄電池11の充電電力Pcを制御し、実受電電力PjAが充電時受電点最大電力値Pcmaxを超える期間(例えば、時刻t0から時刻t1までの期間および時刻t2から時刻t3までの期間)では、充電時受電点最大電力値Pcmaxと負荷2の実電力との差分だけ、蓄電池11を充電させる。
一方、負荷2の実電力が充電時受電点最大電力値Pcmaxよりも大きい期間(例えば、時刻t3から時刻t4までの期間)では、制御装置10は、蓄電池11の充電を停止する。
このように、蓄電池システム1の制御装置10は、充電モード時に、受電電力と蓄電池11の充電電力Pcとの合計値が充電時受電点最大電力値Pcmaxを超えないように蓄電池11の充電電力Pcを制御するので、蓄電池11の充電を行うことによって実受電電力PjAが契約電力を超えることを防止することが可能となる。仮に、蓄電池システム1が充電時受電点最大電力制限機能を備えていない場合に、負荷2の実電力によらず一定の充電電力(=充電電力設定値Pcst)で蓄電池11が充電したとすると、参照符号304に示すように、実受電電力PjAが大きくなり、契約電力を超える可能性が非常に高くなる。
次に、ポジワット取引支援装置5について説明する。
ポジワット取引支援装置5は、上述した蓄電池システム1におけるフィードバック系の目標値に代えて、ポジワット取引のトリガとなるDR指令値(デマンドレスポンスで指定する値)に応じた値を新たな目標値として、蓄電池システム1を制御するための装置である。
ポジワット取引支援装置5は、ハードウェア資源として、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM等の各種記憶装置と、タイマ(カウンタ)と、A/D変換回路と、D/A変換回路と、入出力I/F回路等の周辺回路とがバスを介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)を備えている。また、ポジワット取引支援装置5は、例えば、リソースアグリゲーター等の上位装置や蓄電池システム1との間で有線または無線により通信を行うための通信回路等も備えている。
ポジワット取引支援装置5は、ポジワット取引における使用電力の増加を要求するデマンドレスポンス指令(ポジワット指令)に応じて算出した受電電力の目標値と、受電電力の値と、所定の閾値(充電時受電点最大電力値Pcmax)とに基づいて仮想受電電力の値を算出し、受電電力の値に代えて蓄電池システム1の制御装置10に入力する。
ポジワット取引支援装置5は、上述した蓄電池システム1の制御周期(制御タイミング)とポジワット取引支援装置5からの仮想受電電力の入力タイミングとの不一致に起因する誤動作を防止するために、受電電力の目標値を第1の値から第1の値よりも大きい第2の値に変更するとき、受電電力の目標値の変化率が所定の変化率以下になるように、受電電力の目標値を変化させる。
具体的に、ポジワット取引支援装置5は、受電電力の目標値を第1の値から第2の値に変更するとき、受電電力の目標値を第1の値から第2の値まで、所定時間毎に段階的に変化させる。例えば、ポジワット指令に基づく電力調整処理(DR)を終了させるとき、DR中の受電電力の目標値がP1、DR終了後の受電電力の目標値がP2(>P1)である場合、ポジワット取引支援装置5は、受電電力の目標値をP1からP2まで、所定時間ΔT毎にΔPずつ段階的(階段状)に変化させる。
図1に示すように、ポジワット取引支援装置5は、上述した蓄電池システム1を用いたポジワット取引を支援する機能を実現するための機能ブロックとして、DR指令受信部51、スケジュール管理部52、受電電力目標値決定部53、ベースライン算出部54、ポジワット設定部57、および仮想受電電力算出部59を有している。これらの機能ブロックは、例えば、上述したプログラム処理装置(マイクロコントローラ)において、プロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種演算を実行し、入出力I/F回路やタイマ等の周辺回路および上記通信回路を制御することによって、実現される。
なお、本実施の形態では、ポジワット取引支援装置5の上記機能ブロックがプログラム処理によって実現されるものとして説明するが、これらの機能ブロックの一部または全部がハードウェアロジック回路等によって実現されていてもよい。
以下、ポジワット取引支援装置5を構成する各機能ブロックについて詳細に説明する。
DR指令受信部51は、例えばリソースアグリゲーター等の上位装置からDR指令を受信する。DR指令には、例えば、DR発動時間のデータ510と、DRによる電力の削減量の目標値(以下、「目標削減量」とも称する。)Ptのデータ511とが含まれている。
例えば、DR発動時間のデータ510には、DRを発動させる期間を指定する情報として、DRを発動させる時刻を指定する情報(DR開始時刻)と、DRを停止する時刻を指定する情報(DR終了時刻)とが含まれている。また、受電電力の削減を指示するDR指令(ネガワット指令)の場合、正の値の目標削減量Ptが入力され、受電電力の増加を指示するDR指令(ポジワット指令)の場合、負の値の目標削減量Ptが入力される。例えば、500kWの電力の削減を指示するネガワット指令の場合、目標削減量Pt=500kWとなり、1000kWの電力の増加を指示するポジワット指令の場合、目標削減量Pt=-1000kWとなる。
ベースライン算出部54は、ベースラインP0の値を算出する。
ここで、ベースラインP0とは、ネガワット取引およびポジワット取引において、需要家がDR指令に応じて受電電力を削減するときの基準となる値である。例えば、ベースラインP0は、その需要家における、所定時刻における負荷電力または受電電力の過去数日間に亘る平均値である。例えば、過去5日間において30分毎に特定した負荷電力の平均値をそのDR発動期間におけるベースラインP0の値とすることができる。DR発動時において、需要家における当日の負荷電力PLBとベースラインP0とは近接した値となっていることが好ましい。なお、本実施形態では、DRが発動する直前の受電電力に準じた値がベースラインP0の値として算出されるものとして説明する。
スケジュール管理部52は、DR指令に基づいて受電点の受電電力を調整する電力調整処理の実行(以下、「DRの発動」とも称する。)と電力調整処理の停止(以下、「DRの停止」とも称する。)を制御する。スケジュール管理部52は、DR指令受信部51によって受信したDR指令に含まれるDR発動時間のデータ510に基づいて、DRの発動の可否を示すDR発動指令信号Xを出力する。
スケジュール管理部52は、例えば計時を行うタイマを有しており、DR指令受信部51がDR指令を受信すると、DR発動時間のデータ510に含まれるDR開始時刻とDR終了時刻とが上記タイマに設定される。
スケジュール管理部52は、通常、DRの発動停止を指示するDR発動指令信号X(=0)を出力している。スケジュール管理部52は、計測している時刻が設定された開始時刻と一致した場合に、DRの発動を指示するDR発動指令信号X(=1)を出力する。その後、計測している時刻が設定されたDR終了時刻と一致した場合には、再び、DRの発動停止を指示するDR発動指令信号X(=0)を出力する。
受電電力目標値決定部53は、DR指令に応じて、受電電力目標値Psetxを決定する。受電電力目標値Psetxは、DR指令に応じて受電点の受電電力を調整するときの受電電力の目標値である。
また、受電電力目標値決定部53は、スケジュール管理部52が電力調整処理の停止(DRの停止)を指示した場合に、受電電力目標値Psetxを、直前に設定されていた値から所定時間毎に段階的にゼロまで変化させる。
具体的に、受電電力目標値決定部53は、制御目標値算出部530と、制御目標値出力部533と、出力制御部534とを有する。制御目標値算出部530は、DR指令受信部51が受信したDR指令に含まれる目標削減量Ptと、ベースライン算出部54によって算出されたベースラインP0とに基づいて、制御目標値Psetを算出する。
ここで、制御目標値Psetとは、DR指令で指定された目標削減量Ptを達成するために必要な受電電力の目標値である。
制御目標値算出部530は、ベースラインP0の値から目標削減量Ptを減算して、制御目標値Pset(=P0-Pt)を算出する。
制御目標値出力部533は、DR発動指令信号Xに基づいて、制御目標値Psetの出力を制御する。制御目標値出力部533は、例えば乗算回路であって、DR発動指令信号X(=“1”または“0”)と制御目標値Psetとを掛けた値を出力する。
制御目標値出力部533は、DR発動指令信号XがDRの発動停止を指示する値(X=0)である場合に、制御目標値Psetを“0”として出力し、DR発動指令信号XがDRの発動を指示する値(X=1)である場合に、制御目標値算出部530から出力された制御目標値Psetをそのまま出力する。
出力制御部534は、受電電力目標値Psetxの出力を制御する。
具体的に、出力制御部534は、ポジワット指令に応じた電力調整処理を実行するとき(DR発動指令信号X=1のとき)、制御目標値出力部533から出力された制御目標値Psetに“-1”を掛けた値を、受電電力目標値Psetx(=-Pset)として出力する。一方、ポジワット指令に応じた電力調整処理が停止しているとき(DR発動指令信号X=0のとき)、受電電力目標値Psetxを“0”として出力する。
また、出力制御部534は、ポジワット指令に応じた電力調整処理の実行を停止するとき(DR発動指令信号Xが“1”から“0”に切り替わったとき)、受電電力目標値Psetxを、直前に制御目標値出力部533から出力されていた制御目標値Psetに“-1”を掛けた値(第1の値)から“0(第2の値)”まで、所定時間ΔT毎にΔPずつ段階的に変化させて出力する。
ここで、受電電力目標値Psetxが第1の値Pxから第2の値Pyまで変化するときの時間は、蓄電池システム1の制御周期、例えば、最大値選択部153が充電電力調整値Pcaと充電電力設定値Pcstとの大小関係を判定する周期よりも長いことが好ましい。例えば、蓄電池システム1の制御周期が10秒であった場合、第1の値Pxから第2の値Pyまで変化する時間を60秒に設定する。
より好ましくは、蓄電池システム1に入力する受電電力目標値Psetxを第1の値Pxから第2の値Pyまで変化させるとき、受電電力目標値Psetxの変化率ΔP/ΔTは、所定の変化率α以下になるように設定されている。
ここで、所定の変化率αは、ポジワット取引装置100に利用する蓄電池システム1の仕様に基づいて決定される蓄電池システム1固有の値である。例えば、所定の変化率αは、対象となる蓄電池システムの最大値選択部153が充電電力調整値Pcaと充電電力設定値Pcstとの大小関係を判定する周期と、最大値選択部153による大小関係の比較対象のパラメータの一つである充電電力設定値Pcstに基づいて決定される。例えば、蓄電池システム1の制御周期が10秒、充電電力を2000kWとした場合、所定の変化率α=200である。
図4は、出力制御部534の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、出力制御部534は、例えば、入力値選択部540、加算部542、サンプル・ホールド部541、出力制限部545、出力部546、乗算部543、調整値設定部544、およびサンプリングタイミング決定部547を有する。
入力値選択部540は、制御目標値出力部533から出力された制御目標値Psetと後述する乗算部543から出力された値とを加算して、後述するサンプル・ホールド部541の入力値INとして出力する。
サンプル・ホールド部541は、入力値選択部540から出力された値を入力値INとし、所定の周期で入力値INをサンプリングして保持し、出力値OUTとして出力する。サンプル・ホールド部541は、サンプリングタイミング決定部547からの指示に応じて、入力値INをサンプリングして保持し、出力値OUTとして出力する。
サンプリングタイミング決定部547は、サンプル・ホールド部541による入力値INのサンプリングタイミングを決定する機能部である。具体的には、サンプリングタイミング決定部547は、所定時間ΔT毎に、サンプル・ホールド部541に対して入力値INのサンプリングを指示する。
例えば、サンプリングタイミング決定部547は、一定の周期ΔTのサンプリング信号(パルス)Ssを出力して、サンプル・ホールド部541による入力値INのサンプリングタイミングを決定する。例えば、サンプル・ホールド部541は、サンプリングタイミング決定部547から出力されたサンプリング信号(パルス)Ssの立ち上がりエッジに応じて入力値INをサンプリングして出力値OUTとして出力し、次のサンプリング信号(パルス)Ssの立ち上がりエッジを検出するまで、入力値INによらず出力値OUTを保持する。
ここで、所定時間ΔTは、受電電力目標値Psetxの変化率ΔP/ΔTを規定するパラメータの一つであり、サンプル・ホールド部541のサンプリング周期、すなわち受電電力目標値Psetxが更新される周期を規定する値である。例えば、所定時間ΔT(以下、「サンプリング周期ΔT」とも称する。)は、ユーザ等によって予め任意に設定することが可能となっている。
出力制限部545は、所謂リミッタである。出力制限部545は、サンプル・ホールド部541から出力された出力値OUTが入力され、入力された出力値OUTが正の値である場合には、入力された出力値OUTをそのまま出力し、出力値OUTが負の値である場合には、出力値OUTを“0”として出力する。
出力部546は、出力制限部545から出力された値に“-1”を掛けた値を、受電電力目標値Psetxとして出力する。
加算部542は、サンプル・ホールド部541から出力された出力値OUTから、調整値設定部544によって設定された調整値ΔPを減算して出力する。
ここで、調整値ΔPは、受電電力目標値Psetxの変化率ΔP/ΔTを規定するためのパラメータの一つであり、所定時間(サンプリング周期)ΔT当たりの受電電力目標値Psetxの変化量である。調整値ΔPは、例えば、ユーザ等によって予め任意に設定することが可能となっている。調整値設定部544は、予め設定された調整値ΔPを加算部542に入力する。
乗算部543は、DR発動指令信号X(=“1”または“0”)の反転信号と加算部542の出力値(OUT-ΔP)とを掛けた値を出力する。例えば、乗算部543は、DR発動指令信号XがDRの発動停止を指示する値(X=0)である場合に、加算部542の出力値(OUT-ΔP)をそのまま出力し、DR発動指令信号XがDRの発動を指示する値(X=1)である場合に、加算部542の出力値(OUT-ΔP)を“0”として出力する。
次に、出力制御部534の動作について説明する。
図5は、出力制御部534の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図5には、上から順に、サンプリング信号Ss、DR発動指令信号X、サンプル・ホールド部541の入力値IN、サンプル・ホールド部541の出力値OUT、受電電力目標値Psetxが示されている。
図5に示すように、時刻t0において、DR発動指令信号XがDRの発動を指示する値(X=1)であり、制御目標値Pset=P0であるとする。また、P0>P1>P2>P3>P4(=0)>P5であるとする。
この場合、時刻t1のサンプリングタイミングでは、時刻t0と同様に、X=1、制御目標値Pset=P0であるから、入力値選択部540には、制御目標値出力部533から制御目標値Pset=P0が入力され、乗算部543から0(=(OUT-ΔP)×0)が入力される。これにより、サンプル・ホールド部541には、入力値INとしてPset=P0が入力される。
サンプル・ホールド部541は、サンプリング信号Ssに応じて入力値IN=P0をサンプリングして、出力値OUT=P0を出力し、その値を保持する。出力制限部545は、出力値OUT(=P0)>0であることから、出力値OUT(=P0)をそのまま出力する。出力部546は、出力制限部545から出力された出力値OUT(=P0)に“-1”を掛けた値(-P0)を、受電電力目標値Psetxとして出力する。
次に、時刻t2において、DR発動指令信号XがDRの発動を指示する値(X=1)からDRの停止を指示する値(X=0)に切り替わったとする。このとき、入力値選択部540には、制御目標値出力部533から0が入力され、乗算部543から(P0-ΔP)が入力される。これにより、サンプル・ホールド部541の入力値INは、P0からP1(=P0-ΔP)に切り替わる。しかしながら、このとき、サンプル・ホールド部541にはサンプリング信号Ssが入力されていないため、出力値OUTは、更新されず、“P0”である。
その後、時刻t3において、サンプリング信号Ssが入力されると、サンプル・ホールド部541は、入力値IN=(P0-ΔP)をサンプリングし、出力値OUTをP0からP1=(P0-ΔP)に切り替えて、保持する。
出力制限部545は、出力値OUT(=P1)>0であることから、出力値OUT(=P1)をそのまま出力する。出力部546は、出力制限部545から出力された出力値OUT(=P1)に“-1”を掛けた値(-P1=-(P0―ΔP))を、受電電力目標値Psetxとして出力する。
また、時刻t3において出力値OUTがP0からP1(=P0-ΔP)に切り替わったとき、加算部542は、P2(=P0-2ΔP)を出力する。これにより、サンプル・ホールド部541の入力値INは、P1からP2(=P0-2ΔP)に切り替わる。
その後、時刻t4、t5においても時刻t3と同様に、サンプリング信号Ssが入力される度に、サンプル・ホールド部541によって入力値INがサンプリングされ、出力値OUTが更新される。これにより、サンプリング周期ΔT毎に、受電電力目標値PsetxがΔPずつ増加し、時刻t6において受電電力目標値Psetx=-P4=0となる。
このように、図4に示した構成を有する出力制御部534によれば、ポジワット指令に応じた電力調整処理を実行するとき(DR発動指令信号X=1のとき)には、受電電力目標値Psetx(=-Pset)は、制御目標値Psetに“-1”を掛けた値となり、ポジワット指令に応じた電力調整処理の実行を停止するとき(DR発動指令信号Xが“1”から“0”に切り替わったとき)には、受電電力目標値Psetxは、一定の変化率ΔP/ΔTで“0”まで変化する。
ここで、受電電力目標値Psetxの変化率ΔP/ΔTは、上述した蓄電池システム1の仕様によって決定される所定の変化率αよりも小さくなるように設定されている。変化率ΔP/ΔTは、サンプリング周期ΔTと受電電力目標値Psetxの変化量(調整値)ΔPの値を調整することにより、適切な値に設定することができる。
次に、本実施形態に係るポジワット取引装置100の動作について、図を用いて説明する。
図6は、第1の実施形態に係るポジワット取引装置100におけるDR発動前後の各電力の変化を示すタイミングチャートである。図7A~図7Eは、図6における所定の時刻におけるポジワット取引装置100の各電力を示す図である。
図6において、横軸は時間を表し、縦軸は電力〔MW〕を表している。また、図6において、参照符号600はベースラインP0を表し、参照符号601は実受電電力PjAを表し、参照符号602は受電電力目標値Psetxを表し、参照符号603は充電時受電点最大電力値Pcmaxを表し、参照符号604は蓄電池11の電力(充電電力)Pcを表している。なお、図6では、図示の便宜上、蓄電池11が充電されるときの電力(充電電力)Pcの符号を“正(+)”としている。
図7Aには、図6の時刻t0におけるポジワット取引装置100の各電力の数値例が示され、図7Bには、図6の時刻t1におけるポジワット取引装置100の各電力の数値例が示され、図7Cには、図6の時刻t2におけるポジワット取引装置100の各電力の数値例が示され、図7Dには、図6の時刻t3におけるポジワット取引装置100の各電力の数値例が示され、図7Eには、図6の時刻t4におけるポジワット取引装置100の各電力の数値例が示されている。
図7A~図7Eに示すポジワット取引装置100において、蓄電池システム1の動作モードが充電モードであり、充電時受電点最大電力値Pcmax=5000kW、充電電力設定値Pcst=-3000kWであるとする。また、DR発動前後において負荷2の電力が3500kWであり、実受電電力PjAが3500kW、ベースラインP0は実受電電力PjAと同一の3500kWに設定されているものとする。
また、図6の時刻t0よりも前の時刻において、ポジワット取引支援装置5が「時刻t1から時刻t3の期間に受電電力を2000kW増加させる」ことを指示するDR指令(ポジワット指令)を受信しており、スケジュール管理部52にDR開始時刻t1およびDR終了時刻t3が設定され、受電電力目標値決定部53に目標削減量Pt=-2000kWが設定されているものとする。
図6,図7Aに示すように、例えば、DR発動前の時刻t0において、スケジュール管理部52は、DR発動指令信号Xを“0”として出力している。これにより、受電電力目標値決定部53は、上述したように、受電電力目標値Psetx=0を出力する。
仮想受電電力算出部59は、ポジワット設定部57から出力された充電時受電点最大電力値Pcmax(=5000kW)と、実受電電力PjA(=3500kW)と、受電電力目標値決定部53から出力された受電電力目標値Psetx(=0)とを加算した値を、仮想受電電力PjB(=PjA+Pcmax+Psetx=8500kW)として、蓄電池システム1の制御装置10に入力する。
蓄電池システム1において、時刻t0では、蓄電池11は充電を行っていないので、充電電力Pc=0kWである。そのため、負荷電力算出部13は、仮想受電電力PjB(=PjA+Pcmax=8500kW)と同じ値を、負荷2の負荷電力PLB(=8500kW)として出力する。充電電力調整値算出部151は、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力PLBの値(8500kW)から充電時受電点最大電力値Pcmax(=5000kW)を減算して、充電電力調整値Pca(=3500kW)を算出し、出力制限部152に与える。出力制限部152は、充電電力調整値Pca(=3500kW)が正の値であるので、充電電力調整値Pcaを“0”として最大値選択部153に出力する。
最大値選択部153は、出力制限部152から出力された充電電力調整値Pca(=0kW)が充電電力設定値Pcst(=-3000kW)よりも大きいので、充電電力調整値Pca(=0kW)を選択してモード切替部16に入力する。
上述したように、蓄電池システム1の動作モードが充電モードであるので、モード切替部16は、最大値選択部153から入力された充電電力調整値Pca(=0kW)を電力調整値出力部17に入力し、電力調整値出力部17が充電電力調整値Pca(=0kW)を電力変換部12に対して出力する。これにより、時刻t0では、蓄電池11の充電は開始されない。
次に、時刻がDR開始時刻t1になった場合を考える。このとき、図6、図7Bに示すように、スケジュール管理部52によってDR発動指令信号Xが“0”から“1”に切り替わる。これにより、受電電力目標値決定部53は、受電電力目標値Psetx(=P0-Pt=3500kW-(-2000kW)=5500kW)に“-1”を掛けた値(-5500kW)を、受電電力目標値Psetxとして出力する。
仮想受電電力算出部59は、ポジワット設定部57から出力された充電時受電点最大電力値Pcmax(=5000kW)と、実受電電力PjA(=3500kW)と、受電電力目標値決定部53から出力された受電電力目標値Psetx(=-5500kW)とを加算した値を、仮想受電電力PjB(=PjA+Pcmax+Psetx=3000kW)として、蓄電池システム1の制御装置10に入力する。
すなわち、ポジワット取引支援装置5は、DR発動に応じて、受電点の受電電力が実受電電力PjA(=3500kW)よりも小さく見えるように補正した仮想受電電力PjB(=3000kW)を、蓄電池システム1に入力する。
蓄電池システム1において、時刻t1では、充電電力Pc=0kWであるので、負荷電力算出部13は、ポジワット取引支援装置5から与えられた仮想受電電力PjBと同じ値を、負荷2の負荷電力PLB(=3000kW)として出力する。
充電電力調整値算出部151は、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力PLBの値(3000kW)から充電時受電点最大電力値Pcmax(=5000kW)を減算して、充電電力調整値Pca(=-2000k)を算出する。出力制限部152は、充電電力調整値Pca(=-2000kW)が負の値であるので、充電電力調整値算出部151によって算出された充電電力調整値Pca(=-2000kW)をそのまま最大値選択部153に入力する。
このとき、充電電力調整値Pca(=-2000kW)は充電電力設定値Pcst(=-3000kW)よりも大きいので、最大値選択部153は、充電電力調整値Pca(=-2000kW)を選択してモード切替部16に入力する。モード切替部16および電力調整値出力部17は、入力された充電電力調整値Pca(=-2000kW)を電力変換部12に対して出力する。
電力変換部12は、蓄電池11の充電電力Pcが充電電力調整値Pca(=-2000kW)に一致するように、蓄電池11の充電を開始する。これにより、蓄電池11の充電電力Pcは、速やかに-2000kWとなる。
時刻t1以降では、電力変換部12は、蓄電池11の充電電力Pcが充電電力調整値Pca(=-2000kW)に一致するように、蓄電池11の充電を制御する。例えば、充電電力Pcが充電電力調整値Pca(=-2000kW)と一致している時刻t2では、図7Cに示すように、受電点の実受電電力PjAは、負荷2の実電力(=3500kW)と蓄電池11への充電電力|Pc|(=2000kW)との和(=5500kW)となる。これにより、仮想受電電力算出部59によって算出される仮想受電電力PjBは、5000kW(=PjA+Pcmax+Pset=5500kW+5000kW-5500kW)となる。
図6、図7Cに示すように、時刻t2では、蓄電池システムにおいて充電電力Pc=-2000kWであるので、負荷電力算出部13は、仮想受電電力PjB(=5000kW)に充電電力Pc(=-2000kW)を加算した値(=3000kW)を、負荷2の負荷電力PLBとして出力する。充電電力調整値算出部151は、負荷電力算出部13によって算出された負荷電力PLBの値(3000kW)から充電時受電点最大電力値Pcmax(=5000kW)を減算して、充電電力調整値Pca(=-2000kW)を算出する。
出力制限部152は、入力された充電電力調整値Pca(=-2000kW)が負の値であるので、入力された充電電力調整値Pca(=-2000kW)をそのまま最大値選択部153に出力する。最大値選択部153は、充電電力調整値Pca(=-2000kW>-3000kW)を選択し、モード切替部16および電力調整値出力部17は、充電電力調整値Pca(=-2000kW)を電力変換部12に対して出力する。
このように、DR発動期間においては、充電時受電点最大電力値Pcmax(=5000kW)よりも電力の目標増加量(=PjA+Psetx=3500-5500=2000kW)の分だけ小さくなるように補正された仮想受電電力PjB(=3000kW)が蓄電池システム1に入力されるので、蓄電池11は、充電電力Pc=-2000kWで充電される。これにより、DR発動期間では、受電点の実受電電力PjAが負荷2の実電力の約3500kW(ベースラインP0)よりも2000kW大きい5500kWとなり、ポジワット指令に基づく目標削減量(=-2000kW)を実現することができる。
次に、図6に示すように、時刻がDR終了時刻t3になった場合を考える。このとき、図7Dに示すように、スケジュール管理部52によってDR発動指令信号Xが“1”から“0”に切り替えられる。これにより、受電電力目標値決定部53は、上述したように、DR発動指令信号Xが“1”から“0”に切り替わる直前の制御目標値Psetをサンプリング周期ΔT毎に調整値ΔPずつ段階的に変化させることにより、受電電力目標値Psetxを生成する(図5参照)。すなわち、図6に示すように、受電電力目標値Psetxは、DR発動指令信号Xが“1”から“0”に切り替わった時刻t3以降、変化率ΔP/ΔTで緩やかに増加し、時刻t5において“0”となる。
これにより、図6に示すように、時刻t3から、受電電力目標値Psetxが-3500kWになる時刻t4までの期間では、蓄電池の充電電力Pcおよび実受電電力PjAが緩やかに変化し、時刻t4において蓄電池11の充電が停止する(Pc=0kW)。そして、受電電力目標値Psetxが0kWになった時刻t5において、図7Eに示すように、仮想受電電力PjBおよび実受電電力PjAの値は、DR開始前(時刻t0)の状態に戻る。
以上、本実施形態に係るポジワット取引支援装置5は、ポジワット取引における使用電力の増加を要求するデマンドレスポンス指令(DR指令)に応じて、受電電力(実受電電力PjA)の値よりも小さくなるように補正した仮想受電電力PjBの値を算出し、受電電力の値に代えて蓄電池システム1の制御装置10に入力する。
具体的には、上述したように、ポジワット取引支援装置5は、蓄電池システム1において蓄電池11を充電する際の受電点電力の上限値である充電時受電点最大電力値Pcmaxに対して、受電点の実受電電力PjAとポジワット指令に応じた制御目標値Psetとの差分、すなわち受電点の実受電電力PjAと受電電力目標値Psetxとの和(ポジワット指令に基づく電力の目標増加量に相当)を加算した値を、仮想受電電力PjBとして蓄電池システム1に入力する。
これによれば、蓄電池システム1は、DR発動期間において、受電点の実受電電力PjAとポジワット指令に応じた制御目標値Psetとの差分、すなわちポジワット指令に基づく電力の目標増加量の分だけ、蓄電池11を充電するように動作するので、DR指令によって指定された量だけ受電電力を増加させることが可能となる。
また、ポジワット取引支援装置5は、受電電力目標値Psetxを第1の値(例えば、図5の-P0)から第1の値よりも大きい第2の値(例えば、図5の-P4)に変更するとき、受電電力目標値Psetxの変化率(ΔP/Δt)が、所定の変化率(例えば、最大値選択部153が充電電力調整値Pcaと充電電力設定値Pcstとの大小関係を判定する周期に基づいて決定された変化率)以下になるように設定されている。
これによれば、ポジワット指令に基づく蓄電池の充電を停止する際に、受電電力目標値Psetxが変化する時間、すなわち、DR実行時の受電電力目標値Psetxの値(第1の値)からDR終了時の受電電力目標値Psetx(第2の値)まで変化する時間を、蓄電池システム1の制御周期よりも長くすることが可能となる。
これによれば、蓄電池システム1の制御周期(制御タイミング)とポジワット取引支援装置5の制御周期を同期させることなく、受電電力目標値Psetxの変化に応じて蓄電池システム1が蓄電池の充電電力の制御量を適切に更新することが可能となるので、蓄電池システムの誤動作を防止することが可能となる。
例えば、上述した事象、すなわち、最大値選択部153の入力信号としての制御入力値(充電電力調整値Pca)が急激に低下して、制御入力値(充電電力調整値Pca)と計画運転値(充電電力設定値Pcst)との大小関係が切り替わったにもかかわらず、最大値選択部153によって選択すべき値が制御入力値(充電電力調整値Pca)から計画運転値(充電電力設定値Pcst)に切り替わらないまま、急激に低下した制御入力値(充電電力調整値Pca)が選択され続けて蓄電池システム1が誤動作する事象を、防止することが可能となる。
また、本実施の形態に係るポジワット取引支援装置5は、受電電力目標値Psetxを第1の値から第2の値に変更するとき、図5に示すように、受電電力目標値Psetxを第1の値から第2の値まで、所定時間ΔT毎に段階的に変化させる。
これによれば、受電電力目標値Psetxの変化率(ΔP/ΔT)を所望の値に設定することが容易となる。例えば、受電電力目標値Psetxを、所定時間ΔT毎にΔPずつ変化させる場合、ΔTとΔPの値を調整することにより、受電電力目標値Psetxの変化率(ΔP/ΔT)が所定の変化率以下になるように設定することが容易となる。
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態では、ベースラインP0の値がポジワット取引支援装置5内(ベースライン算出部54)で算出される場合を例示したが、これに限られない。例えば、ベースラインP0の値は、リソースアグリゲーター等の上位装置によって需要家毎に管理され、上位装置からポジワット取引支援装置5に送信されて、ポジワット取引支援装置5内に設定されてもよい。
また、上記実施形態では、DR指令として目標削減量Ptを受信する場合を例示したが、DR指令として制御目標値Psetを受信してもよい。この場合には、受電電力目標値決定部53は、制御目標値算出部530が不要となり、受信した制御目標値Psetを制御目標値出力部533に入力すればよい。
また、上記実施形態では、DR指令に基づく電力調整処理を停止するとき(X=1からX=0に切り替えるとき)に、受電電力目標値Psetxを所定時間毎に段階的に変化させる場合について説明したが、これに限られない。例えば、DR発動中(X=1)に受電電力目標値Psetxを変化させる場合においても同様に、受電電力目標値Psetxを所定時間毎に段階的に変化させてもよい。これによれば、DR発動中に目標削減量Ptが変化する場合においても蓄電池システム1が誤動作し難くなる。