JP7279461B2 - 皮膚浸透促進剤 - Google Patents
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Description
しかし、経口投与の場合には、小腸から吸収された薬物は、門脈を通り肝臓を経て全身循環血に移行するが、肝臓には多くの酵素が存在し、それら酵素による分解や代謝を受ける。かかる肝初回通過効果によって、薬物の全身循環血への移行量が減少し、場合によっては薬効が発現しない場合がある。
注射による投与の場合、経口投与のように消化管を経由することなく、全身循環血に直接薬物を入れられる反面、医師等の専門家による投与が必要であり、かつ痛みを伴う方法である。
一方、経皮投与は、経口投与のように消化管を経由することがなく、また、注射による投与のように専門家によらずに簡便に投与でき、さらに痛みを伴うことが少なく、必要に応じて投与を中止できるというメリットがある。
一方、アスコルビン酸またはその誘導体、トラネキサム酸またはその誘導体、コウジ酸、カテキン等は、美白効果、抗酸化効果等が期待されるものの、オクタノール/水分配係数(LogKO/W、LogPO/W)が-5~0と親水性であるため、皮膚に浸透しにくいことが知られている。
現在、親水性薬物の皮膚浸透促進剤として、例えばリポペプチド化合物(特許文献1)、糖変性直鎖状シリコーン(特許文献2)等が知られている。しかし、従来の皮膚浸透促進剤では、親水性薬物の浸透促進効果は未だ十分に満足できるものではない。
[1]式[I]で表されるポリオキシプロピレンメチルグルコシドを含有する、LogPが-5~0である生理活性物質の皮膚浸透促進剤。
[2]LogPが-5~0である生理活性物質1重量部に対し、ポリオキシプロピレンメチルグルコシドが0.01重量部~100重量部となるように含有される、[1]に記載の皮膚浸透促進剤。
本発明の皮膚浸透促進剤は、LogPが-5~0である親水性の生理活性物質とともに皮膚外用剤に含有されることにより、前記生理活性物質の皮膚浸透性を向上させて、前記生理活性物質の生理活性を良好に発揮させることができる。
本発明は、皮膚浸透促進剤を提供する。
本発明の皮膚浸透促進剤は、下記式[I]で表されるポリオキシプロピレンメチルグルコシドを含有する。
また、式[I]中、xで示されるオキシプロピレン基(PO)の平均付加モル数は、3~7であり、4~6であることが好ましい。
式[I]で表されるポリオキシプロピレンメチルグルコシドにおいては、オキシプロピレン基は、メチルグルコシドの遊離の水酸基のすべてに付加される。
本発明においては、上記の方法により製造して得たものを用いてもよいが、「マクビオブライド(登録商標)MG-20P」(日油株式会社製)等の市販の製品を用いることもできる。
ポリプロピレングリコールとしては、プロピレンオキシドの平均付加モル数が7~15であるものが好ましく、9~13であるものがより好ましい。かかるポリプロピレングリコールは、プロピレンオキシドのアニオン開環重合反応等、公知の製造方法により得ることができる。
本発明においては、上記の方法により製造して得たものを用いてもよいが、「ユニオール(登録商標)D-700」(日油株式会社製)等の市販の製品を用いることもできる。
本発明の皮膚浸透促進剤におけるポリプロピレングリコールの含有量は、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド1重量部に対し、0.01重量部~10重量部であることが好ましく、0.1重量部~1重量部であることがより好ましい。また、後述する生理活性物質1重量部に対する添加量が、0.01重量部~10重量部となる量であることが好ましく、0.1重量部~1重量部となる量であることがより好ましい。
本発明の皮膚浸透促進剤の製造に際し、さらに、製剤化に際して汎用される一般的な添加剤を加えることもできる。
かかる添加剤としては、溶解補助剤、可溶化剤、懸濁化剤、分散剤、乳化剤、安定化剤、抗酸化剤、粘稠化剤、保存剤、pH調整剤、香料、着色剤等が挙げられ、これらは、本発明の特徴を損なわない範囲で、1種または2種以上を用いることができる。
LogPが-5~0である親水性の生理活性物質としては、例えば、美白剤、抗炎症剤、抗酸化剤、保湿剤、育毛剤、ビタミン類、アミノ酸類、鎮痛解熱剤などが挙げられる。
具体的には、美白剤として、L-アスコルビン酸及びその誘導体(リン酸L-アスコルビルナトリウム、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、L-アスコルビン酸-2-グルコシドなど)、アルブチン(4-ヒドロキシフェノールの配糖体)等のハイドロキノン誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、コウジ酸及びその誘導体、プラセンタエキス、グルタチオンなどが挙げられる。
抗炎症剤として、グリチルリチン酸及びその塩(グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウムなど)、グリチルレチン酸およびその誘導体(グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸ピリドキシン、サクシニルグリチルレチン酸二ナトリウム等)、アラントインおよびその誘導体(アスコルビン酸アラントイン、アラントイングリチルレチン酸等)、アズレン類(アズレン、グアイアズレン、グアイアズレンスルホン酸エチル、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム等)等が挙げられる。
抗酸化剤として、チオタウリン、カテキンおよびその誘導体、ルチン等のクェルセチンの配糖体などが挙げられる。
保湿剤として、尿素、グリセリン、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、D-グルコサミン、N-アセチル-D-グルコサミンなどが挙げられる。
育毛剤として、アデノシン、パントテニルエチルエーテルなどが挙げられる。
ビタミン類として、ニコチン酸及びその誘導体(例えば、ニコチン酸アミド等)、パントテン酸などが挙げられる。
アミノ酸として、ヒドロキシプロリン、セリン、グルタミン酸、アルギニン、アラニン、トリプトファン、ヒスチジン、L-カルニチンなどが挙げられる。
鎮痛解熱剤としては、カフェイン等が挙げられる。
かかる生理活性物質としては、L-アスコルビン酸誘導体(L-アスコルビン酸-2-グルコシド、リン酸L-アスコルビルマグネシウムなど)、アルブチン等のハイドロキノン誘導体、グルタチオン、グリチルリチン酸及びその塩(グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム等)、カテキンおよびその誘導体、ルチン等のクェルセチンの配糖体、アデノシン、パントテニルエチルエーテル、パントテン酸、トリプトファン等が挙げられ、L-アスコルビン酸誘導体(L-アスコルビン酸-2-グルコシド、リン酸L-アスコルビルマグネシウム)、アルブチン、グリチルリチン酸ジカリウム等がより好ましい。
ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(20P.O.)を実施例1の皮膚浸透促進剤とし、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(20P.O.)1重量部に対し、ポリプロピレングリコール(12P.O.)を0.15重量部加えて、実施例2の皮膚浸透促進剤とした。
また、ポリプロピレングリコール(12P.O.)を比較例1の皮膚浸透促進剤とした。
(1)皮膚外用剤の調製
表1に示す処方に従い、皮膚外用剤1~8を調製した。
また、皮膚外用剤2および6において、実施例1の皮膚浸透促進剤の代わりに、表2に示す皮膚浸透促進剤代替成分をそれぞれ用い、表2に示す処方に従って、皮膚外用剤9~16を調製した。
さらに、皮膚外用剤2において、生理活性成分としてメチルパラベン0.1重量%を用い、表2に示す処方に従って、皮膚外用剤17を調製した。
さらにまた、皮膚外用剤3において、実施例2の皮膚浸透促進剤の代わりに、比較例1の皮膚浸透促進剤0.45重量%を用い、皮膚外用剤18を調製した。
上記皮膚外用剤の調製に用いた原材料は、以下の通りである。
(i)ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(20P.O.)(式[I]中、x=5);商品名:「マクビオブライド(登録商標)MG-20P」、日油株式会社製
(ii)ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(10P.O.)(式[I]中、x=2.5);商品名:「マクビオブライド(登録商標)MG-10P」、日油株式会社製
(iii)ポリオキシエチレンメチルグルコシド(20E.O.);商品名:「マクビオブライド(登録商標)MG-20E」、日油株式会社製
(iv)ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(14P.O.);商品名:「SC-P1000」、阪本薬品工業株式会社製
(v)サーファクチンナトリウム;商品名:「カネカ・サーファクチン」、株式会社カネカ製
(vi)L-アスコルビン酸-2-グルコシド;商品名:「アスコルビン酸-2-グルコシド」、富士フィルム和光純薬株式会社製(LogP=-4.0)
(vii)アデノシン;商品名:「Adenosine」、東京化成工業株式会社製(LogP=-3.7)
(viii)コウジ酸;商品名:「Kojic acid」、シグマ アルドリッチ社製(LogP=-1.4)
(ix)アルブチン;商品名:「アルブチン」、ナカライテスク株式会社製(LogP=-0.5)
(x)ニコチン酸アミド;商品名:「Nicotinamide」、東京化成工業株式会社製(LogP=-0.5)
(xi)カフェイン;商品名:「Caffeine」、東京化成工業株式会社製(LogP=0)
(xii)メチルパラベン;商品名:「Methyl 4-Hydroxybenzoate」、東京化成工業株式会社製(LogP=2.0)
(xiii)ポリプロピレングリコール(12P.O.);商品名:「ユニオール(登録商標)D-700」、日油株式会社製
上記の通り調製した皮膚外用剤に含有される各生理活性物質の皮膚浸透促進効果を、拡散セルアレイシステム(「ディフュージョンセルアレイシステム」、株式会社イントロテック製)を用いて、評価した。
拡散セルアレイシステム(有効拡散面積=0.785cm2)のサーモプレートシェイカー(「ディフュージョンセルアレイシステム」付属品)に48ウェルプレートを設置し、37℃に加温した。次に、各ウェル内にレセプター液(100mMリン酸緩衝液(pH=7.2)、容量=1.34mL)と、攪拌用のステンレスボール(「ディフュージョンセルアレイシステム」付属品)を入れ、人工皮膚膜(経皮拡散試験用、「Strat-M(登録商標)メンブレン」、メルクミリポア社製)を、レセプター液を入れた各ウェル上に設置した。
続いて、人工皮膚膜をセットした48ウェルプレート上に、12穴ドナーセル(「ディフュージョンセルアレイシステム」付属品)を設置し、各ウェルに試料1.0mLを添加した後、37℃にて、150rpm/minで攪拌した。
試料としては、皮膚外用剤1~18、ならびに、皮膚外用剤1~18において、実施例1、2および比較例1の各皮膚浸透促進剤およびその代替成分をすべて水に代替した水溶液(すなわち、皮膚外用剤1~18に含有される各生理活性物質の水溶液)を用いた。
8時間経過後に、12穴ドナーセル中の試料を完全に吸引除去し、レセプター液をシリンジで吸引して回収した。回収したレセプター液中の生理活性物質の含有量を、下記に示す測定条件にて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。
定量結果より、下記の式を用いて、生理活性物質のそれぞれについて皮膚浸透促進率を算出した。
式中、Aは、試料として各皮膚外用剤を用いた場合のレセプター液中の生理活性物質の含有量を示し、Bは、各生理活性物質の水溶液を試料として用いた場合のレセプター液中の生理活性物質の含有量を示す。Cは、ドナーセルに添加した試料における生理活性物質の当初の含有量を示す。
(i)L-アスコルビン酸-2-グルコシドおよびアルブチン
分析機器:HPLC(「EZChrom Elite」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)
分析カラム:「Capcepack ODS C18」、4.6mm×150mm、粒子径=5μm、株式会社資生堂製)
移動相組成:0.02mol/mL リン酸二水素カリウム水溶液(リン酸でpH=2.0に調製)
移動相速度:1.0mL/min
オーブン温度:40℃
測定波長:225nm(紫外吸光光度計)
分析機器:HPLC(「EZChrom Elite」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)
分析カラム:「Capcepack ODS C18」、4.6mm×150mm、粒子径=5μm、株式会社資生堂製)
移動相組成:水/メタノール(50/50(v/v))
移動相速度:1.0mL/min
オーブン温度:40℃
測定波長:254nm(紫外吸光光度計)
分析機器:HPLC(「EZChrom Elite」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)
分析カラム:「Capcepack ODS C18」4.6mm×150mm、粒子径=5μm、株式会社資生堂製)
移動相組成:0.02mol/mL リン酸二水素カリウム水溶液/メタノール(95/5(v/v))
移動相速度:1.0mL/min
オーブン温度:40℃
測定波長:333nm(紫外吸光光度計)
分析機器:HPLC(「EZChrom Elite」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)
分析カラム:「Capcepack ODS C18」4.6mm×150mm、粒子径=5μm、株式会社資生堂製)
移動相組成:(5mmol/L ヘキサンスルホン酸ナトリウム+20mmol/L リン酸、pH=2.3)/アセトニトリル(91/9(v/v))
移動相速度:1.0mL/min
オーブン温度:40℃
測定波長:210nm(紫外吸光光度計)
分析機器:HPLC(「EZChrom Elite」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)
分析カラム:「Capcepack ODS C18」4.6mm×150mm、粒子径=5μm、株式会社資生堂製)
移動相組成:水/メタノール(50/50(v/v))
移動相速度:1.0mL/min
オーブン温度:40℃
測定波長:254nm(紫外吸光光度計)
分析機器:HPLC(「EZChrom Elite」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)
分析カラム:「Wakosil C18」、4.6mm×150mm、粒子径=5μm、富士フィルム和光純薬株式会社製)
移動相組成:アセトニトリル/0.1(w/v)%リン酸水溶液(35/65(v/v))
移動相速度:1.0mL/min
オーブン温度:40℃
測定波長:254nm(紫外吸光光度計)
皮膚浸透促進率の算出結果を表1、2に併せて示した。
表1に示されるように、実施例1の皮膚浸透促進剤(ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(20P.O.))を含有する皮膚外用剤1および2では、生理活性物質として含有されるL-アスコルビン酸-2-グルコシド(LogP=-4.0)の皮膚浸透性が顕著に向上しており(10倍および321倍)、実施例1の皮膚浸透促進剤であるポリオキシプロピレンメチルグルコシド(20P.O.)は、濃度依存的にL-アスコルビン酸-2-グルコシドの皮膚浸透性を向上させることが認められた。
さらに、実施例2の皮膚浸透促進剤(ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(20P.O.)およびポリプロピレングリコール(12P.O.))を含有する皮膚外用剤3では、生理活性物質として含有されるL-アスコルビン酸-2-グルコシド(LogP=-4.0)の皮膚浸透性がより顕著に向上した(506倍)。
また、実施例1の皮膚浸透促進剤(ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(20P.O.))と、生理活性物質として、アデノシン(LogP=-3.7)、コウジ酸(LogP=-1.4)、アルブチン(LogP=-0.5)、ニコチン酸アミド(LogP=-0.5)およびカフェイン(LogP=0)をそれぞれ含有する皮膚外用剤4~8においても、各生理活性物質の皮膚浸透性の顕著な向上が認められた(5.5倍~414倍)。
また、皮膚外用剤2において、実施例1の皮膚浸透促進剤の代わりに、オキシエチレン基が付加されたポリオキシエチレンメチルグルコシド(20E.O.)を含有する皮膚外用剤10、および、ポリオキシプロピレンメチルグルコシドのメチルグルコシド骨格がグリセリル骨格に変更されたポリオキシプロピレングリセリルエーテル(14P.O.)を含有する皮膚外用剤11では、生理活性物質として含有されるL-アスコルビン酸-2-グルコシドの皮膚浸透性の向上は認められなかった。
皮膚外用剤6において、実施例1の皮膚浸透促進剤の代わりに、オキシプロピレン基の平均付加モル数が12モル未満(式[I]中、x<3)であるポリオキシプロピレンメチルグルコシド(10P.O.)、オキシエチレン基が付加されたポリオキシエチレンメチルグルコシド(20E.O.)のそれぞれを含有する皮膚外用剤13および14では、生理活性物質として含有されるアルブチンの皮膚浸透性の向上は認められなかった。
皮膚外用剤6において、実施例1の皮膚浸透促進剤の代わりに、ポリオキシプロピレンメチルグルコシドのメチルグルコシド骨格がグリセリル骨格に変更されたポリオキシプロピレングリセリルエーテル(14P.O.)、サーファクチンナトリウムのそれぞれを含有する皮膚外用剤15および16では、生理活性物質として含有されるアルブチンの皮膚浸透性の若干の向上は認められたが、皮膚浸透性の向上の程度は、皮膚外用剤6における皮膚浸透率に比べて、非常に小さいものであった。
なお、LogPが2.0であるメチルパラベンを含有する皮膚外用剤17では、実施例1の皮膚浸透促進剤を含有するものの、メチルパラベンの浸透促進率は1.9にとどまっており、本発明の皮膚浸透促進剤は、LogPが-5~0でなく、親水性ではない生理活性物質に対しては、十分な皮膚浸透促進作用を示さないことが示唆された。
さらに、皮膚外用剤3において、実施例2の皮膚浸透促進剤の代わりに比較例1の皮膚浸透促進剤を含有する皮膚外用剤18では、生理活性物質として含有されるL-アスコルビン酸-2-グルコシドの皮膚浸透性の向上は認められなかった。
本発明の皮膚浸透促進剤を、LogPが-5~0である親水性の生理活性物質とともに皮膚外用剤に含有させることにより、前記生理活性物質の皮膚浸透性を向上させて、良好な生理活性を発揮させることができる。
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