JP7279252B1 - 多層シート - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性および成形性に優れる多層シートを実現する。【解決手段】プロピレン-αオレフィン共重合体を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー、ならびにオレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマーを含み、MFR値が1g/10min(230℃)以上である耐摩耗層(A)と、ポリスチレンを含む基材層(B)と、ポリスチレン、ポリオレフィン、およびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む接着層(C)と、を備える多層シート。【選択図】図1

Description

本発明は、多層性シートに関する。
例えば工場などの製造現場では、ワークを運搬するためのトレイ、箱、仕切り板、パレット等の搬送部材が広く用いられている。ワークは搬送中に搬送部材内で移動・振動するため、ワークが接触する搬送部材の面が剥されることにより粉塵が発生し、ワークを汚すことがある。そのため、搬送部材には耐摩耗性が求められており、従来、搬送部材の材料としては、耐摩耗性に優れたポリプロピレン(PP)、およびポリエチレン(PE)が広く使用されてきた。
例えば、特許文献1には、ポリスチレン系樹脂からなる基材層に、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および相溶化剤を配合した中間層を介して、ポリオレフィン系樹脂からなる表面層が形成された多層構造体が開示されている。
また、特許文献2には、スチレン系樹脂およびオレフィン系樹脂から選択された少なくとも一つの樹脂で構成された基材層と、オレフィン系樹脂および高分子型帯電防止剤で構成された表層とで形成された帯電防止性樹脂シートが開示されている。さらに、耐摩耗性の観点から、オレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とで構成されてもよいことが記載されている。
さらに、特許文献3には、熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む耐摩耗層と、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)を含む基材層と、スチレン系熱可塑性エラストマー、ABS樹脂、および熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む接着層とで構成される多層シートが開示されている。
他にも特許文献4には、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、および充填剤で構成された基材層の少なくとも一方の面に、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、および高分子型帯電防止剤で構成された帯電防止層が積層された、帯電防止性シートが開示されている。
しかしながら、上記特許文献1、2、4のような従来技術は、耐摩耗性の観点でなお改善の余地があった。また、上記特許文献3のような従来技術は、耐摩耗性には優れるが、成形性の観点から改善の余地があった。さらに、上記搬送部材は洗浄し再利用することがあるため、優れた耐水性および界面活性剤への耐性が求められる。さらに搬送部品には金属防食の油性グリースを塗布する場合もあるため、耐油性が求められる。
そこで、本発明者らは、PPおよびPEの代わりにオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を使用した。特定の条件を有するTPOはポリプロピレン等のポリオレフィンよりも耐摩耗性に優れるため、得られる搬送部材の耐摩耗性が向上すると考えられる。また、TPOは熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)に比べて、深絞り形状等の成型が難しい形状の場合でも真空成型性に優れている。さらに、TPOは界面活性剤および油性グリース等に侵されにくい。そのため、TPOを使用することにより、搬送部材の性能バランスが良くなり、汎用性が高くなると考えられる。
特開2004-195905号公報 特開2004-90609号公報 特許第7043678号 特開2009-143031号公報
しかしながら、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を使用する場合、TPOのみの単層では剛性に劣り、ワークを保持出来ないため、基材との多層化を行う必要がある。そして、多層化する場合、1種類のみのTPOを使用するだけでは耐摩耗性に優れている場合でも良好な外観を有する層が形成されず、成形性に劣るという問題があった。
本発明の一態様は、耐摩耗性および成形性に優れる多層シートを実現することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、耐摩耗性および成形性を両立するためには、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)として、プロピレン-αオレフィン共重合体を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー、ならびにオレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマーの2種類のTPOを使用する必要があることを見出した。また、これら2種類のTPOを使用することにより、1種類のTPOを使用するときと比較して耐摩耗性が向上し良好な外観を得ることを見出した。
そして、上述のようにTPOのみの単層では剛性に劣るため、基材層としてポリスチレンを備え、基材層上に2種類のTPOを含む耐摩耗層を備えた積層体(多層シート)を検討した。しかし、基材層上に耐摩耗層を備えた積層体とした場合、ポリスチレンとTPOとは接着性が低いため、基材層と耐摩耗層とを接着する接着層を用いることを検討した。
さらに、本発明者らは、成形性を向上させるためには、前記耐摩耗層において、プラスチックの粘性の指標となるメルトマスフローレイト(MFR)値を特定の範囲とする必要があることも見出し、本発明に至った。本発明は以下の構成を含む。
プロピレン-αオレフィン共重合体を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1)、ならびにオレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(2)を含み、メルトマスフローレイト(MFR)値が1g/10min(230℃)以上である耐摩耗層(A)と、
ポリスチレンを含む、基材層(B)と、
前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、ポリスチレン、ポリオレフィン、およびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、接着層(C)と、を備える多層シート。
本発明の一態様によれば、耐摩耗性および成形性に優れる多層シートを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る多層シートの層構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る多層シートの層構成を模式的に示す断面図である。
本発明の一実施形態について、以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
〔1.多層シート〕
本発明の一実施形態に係る多層シートは、以下のa~cに説明する特徴を有する。
<a>プロピレン-αオレフィン共重合体を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1)、ならびにオレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(2)を含み、メルトマスフローレイト(MFR)値が1g/10min(230℃)以上である耐摩耗層(A)
<b>ポリスチレンを含む、基材層(B)
<c>前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、ポリスチレン、ポリオレフィン、およびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、接着層(C)。
多層シートの構造は特に限定されないが、基材層(B)の一方の表面に、接着層(C)を介して耐摩耗層(A)を有する、例えば図1に示す3層構成であってもよい。また、基材層(B)の両方の表面に、接着層(C)を介して耐摩耗層(A)を有する、例えば図2に示す5層構成であってもよい。
多層シートを構成する各層の比率は、シート全体の厚さに対して、耐摩耗層、基材層および接着層の厚さの合計を100%としたときに、耐摩耗層が5~25%であり、基材層が70~85%であり、接着層が3~10%であることが好ましい。次に、各層の特徴について以下に説明する。
<1.1.耐摩耗層>
本願明細書において、耐摩耗層は、多層シートを構成する層のうち、少なくとも一つの最外層をなす層である。例えば図1に示す多層シートであれば、耐摩耗層は一つの最外層をなしており、図2に示す多層シートであれば、耐摩耗層は二つの最外層をなしている。
耐摩耗層(A)は、プロピレン-αオレフィン共重合体を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1)(本願明細書ではTPO(A)とも称する)、ならびにオレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(2)(本願明細書ではTPO(B)とも称する)の2種類のTPOを含む。
本願明細書において、「プロピレン-αオレフィン共重合体を主成分として含む」とは、TPO(A)の重量を100重量%としたときに、プロピレン-αオレフィン共重合体を50重量%超含むことを指す。TPO(A)におけるプロピレン-αオレフィン共重合体の含有量は、70重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、99重量%以上であることが最も好ましい。また、前記主成分以外にTPO(A)に含まれる成分としては、例えば、スチレン系エラストマー、鉱油等の軟化剤等が挙げられる。
本願明細書において、プロピレン-αオレフィン共重合体とは、プロピレンに基づく単量体単位と炭素原子数2~20のαオレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体である。炭素原子数2~20のαオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等が挙げられる。また、炭素原子数2~20のαオレフィンは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
プロピレン-αオレフィン共重合体は、プロピレンに基づく単量単位と炭素原子数2~20のαオレフィンに基づく単量体単位とに加え、本発明の効果を損なわない範囲において、プロピレンおよび炭素原子数2~20のαオレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を有していてもよい。
プロピレン-αオレフィン共重合体は、プロピレン‐αオレフィンランダム共重合体であることが好ましい。プロピレン‐αオレフィンランダム共重合体は、例えば、プロピレンと1-ブテンとを、メタロセン触媒を用いて共重合させることによって製造することができる。
また、TPO(A)は、非架橋であり、密度が900g/cm以下であることが好ましい。
TPO(A)を用いることにより、得られるシートの耐摩耗性が向上する。TPO(A)のメルトマスフローレイト(MFR)値は、5g/10min(230℃)以上であることが好ましく、10g/10min(230℃)以上であることがより好ましい。本願明細書中のMFR値についての記載において、「(230℃)」とは、230℃でMFR値を測定することを意味する。TPO(A)のMFR値が前記の範囲であれば、良好な耐摩耗性が得られる。さらに、TPO(A)のMFR値が前記の範囲であれば、TPO(A)よりもMFR値が低いTPO(B)と併用した場合に、得られる多層シートの成形性および外観が優れる。また、MFR値が高いTPO(B)を加えることで、MFR値を調整して多層シートの成形性及び外観状況を調整することが可能になる。
TPO(A)としては、例えば、前述した方法によって合成したプロピレン-αオレフィン共重合体に、主成分以外にTPO(A)に含まれ得る前記成分を混合して得たもの、または市販品を用いることができる。
TPO(B)は、オレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含む。「オレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含む」とは、TPO(B)の重量を100重量%としたときに、オレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂の和が50重量%超であることを指す。
前記オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-オクテン共重合体等からなる群より選ばれる1以上を用いることができる。
前記オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂ポリブテン、その他のαオレフィン系樹脂等からなる群より選ばれる1以上を用いることができる。
TPO(B)は、島相と海相とを含む海島構造を有する。例えば、島相の架橋ゴムは、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)および/またはエチレン-プロピレンゴム(EPR)を含む。また、海相のオレフィン系樹脂は、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、およびその他のαオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる1以上の樹脂を含む。
ポリプロピレン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロプレン、ランダムポリプロピレン等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。これらは、エチレン、プロピレン等の単独重合体または共重合体を含む樹脂を指す。また、コモノマーとして1-ブテン等の他のαオレフィンと共重合したものでも良い。その他のαオレフィン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、モノマーとしては1-ブテン、1-ヘキセン等が挙げられる。
TPO(B)を用いることにより、得られるシートの成形性が向上する。また、TPO(B)は、TPO(A)と比較すると劣るものの、得られるシートの耐摩耗性に寄与する。
TPO(B)のMFR値は、2g/10min(230℃)以下であることが好ましい。また、TPO(B)としては、MFR値が異なる2種類のTPOを使用してもよい。2種類のTPOをTPO(B)として使用する場合、2種類のうち少なくとも一方のTPO(B)のMFR値が2g/10min(230℃)以下であれば、もう一方のTPO(B)のMFR値は5g/10min(230℃)以上であってもよい。MFR値が低いTPO(B)と、MFR値が高いTPO(B)とを併用することにより、押し出す工程において材料の流れ等の調整が容易になる。
TPO(B)としてMFR値が異なる2種類のTPOを使用する場合、MFR値が低いTPO(B):MFR値が高いTPO(B)の重量比は、30~100:70~0が好ましい。
TPO(B)は、例えば、オレフィン系樹脂、エチレン系共重合体ゴム、オレフィン系ゴム、ならびに必要に応じて配合される軟化剤、無機充填剤等、および/または添加剤を混合して混合物を得、得られた混合物を溶融状態で混練することで製造することができる。得られたTOB(B)には、必要に応じて、オレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂以外の他の成分を、本発明の効果を損なわない程度に含有させてもよい。TPO(B)は、プロピレン・エチレンランダム共重合体を含むことが好ましい。
TPO(B)としては、例えば、前述した方法によって得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー、または市販品を用いることができる。
耐摩耗層(A)において、TPO(A)とTPO(B)との総重量を100重量%としたときに、TPO(A)とTPO(B)との重量比は、10~40:90~60であることが好ましく、20~40:80~60であることがより好ましい。TPO(A)とTPO(B)との重量比が上記の範囲であれば、得られる多層シートの耐摩耗性および成形性をより良好に両立できる。
TPO(B)としてMFR値が異なる2種類のTPOを使用する場合、耐摩耗層(A)におけるTPO(A):MFR値が低いTPO(B)1:MFR値が高いTPO(B)2の重量比は、10~40:90~20:0~40であることが好ましく、20~40:70~20:0~40であることがより好ましい。TPO(A)と、MFR値が低いTPO(B)1と、MFR値が高いTPO(B)2との重量比が上記の範囲であれば、得られる多層シートの耐摩耗性および成形性をより良好に両立できる。
耐摩耗層(A)には、さらに添加物が含まれていてもよい。添加物としては、軟化剤(流動パラフィン)、改質剤、滑剤(ワックス)等が挙げられるが、これらに限定されない。前記添加物は、耐摩耗層の硬度の調整、成形性と外観とのバランスの調整などの目的に応じて、適宜用いることができる。また、タック防止のためシリコーン等の粘着防止剤を添加することができる。さらに、埃付着を生じさせる静電気の発生を防止する目的で帯電防止剤(低分子系帯電防止剤、高分子系帯電防止剤等)、導電性材料(カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)を添加することができる。
上記添加物が耐摩耗層(A)に含まれる場合、添加剤の配合量は、耐摩耗層(A)の総重量を100重量部としたときに1~15重量部であることが好ましい。
耐摩耗層(A)を調製するための材料は、例えば、TPO(A)、TPO(B)、および必要に応じ前記添加剤を、混練造粒および混合することによって調製することができる。
前記耐摩耗層(A)は、JIS K 6253-3(2012)に基づいて測定したデュロメータD硬さが、耐摩耗性の観点からD30~D65であることが好ましい。前記デュロメータD硬さの上限は、D60以下であることがより好ましい。前記デュロメータD硬さの下限は、タック性を生じにくくする観点から、D35以上であることがより好ましい。デュロメータD硬さは、GS 720N(テクロック製)を使用し、JIS K 6253-3(2012)に基づいて測定することができる。
前記耐摩耗層(A)は、MFR値が1g/10min(230℃)以上であり、2.5g/10min(230℃)以上であることが好ましく、3g/10min(230℃)以上であることがより好ましい。また、耐摩耗層(A)のMFR値の上限は特に限定されないが、30g/10min(230℃)以下であることが好ましく、15g/10min(230℃)以下であることがより好ましい。なお、耐摩耗層(A)のMFR値は、例えばTPO(A)と併用するTPO(B)のMFR値を調整すること、またはTPO(A)とTPO(B)との重量比を調整することにより、所望の値に調整することができる。また、滑剤、軟化剤等を添加することにより、耐摩耗層(A)のMFR値を調整することもできる。さらに、MFR値のより低い添加剤を加えることにより、耐摩耗層(A)のMFR値を低下させても良い。ただし、添加剤を加えてMFR値を調整する場合、耐摩耗性等の性能が低下する場合があるため、注意しなければならない。
本発明の一実施形態に係る多層シートの成形性は、基材層(B)のMFR値に比べ、耐摩耗層(A)のMFR値が低すぎないことが好ましい。例えば、基材層(B)のMFR値が4.7g/10min(230℃)である場合、耐摩耗層(A)のMFR値は3~15/10min(230℃)が好ましい。
耐摩耗層(A)のMFR値が前記の範囲であれば、得られる多層シートの成形性および外観が優れる。一方で、耐摩耗層(A)のMFR値が低すぎる場合には、押し出す工程における材料の流れ等の調整性に劣る。また、耐摩耗層(A)のMFR値が低すぎる場合には、界面荒れ、および/またはスクリューマーク等が発生する。本願明細書中において「スクリューマーク」とは、スクリューを使用した場合に、得られた多層シートの表面に生じる、樹脂が流れた跡等の模様を指す。
本発明において、前記耐摩耗層(A)のメルトマスフローレイト(MFR)値は以下の条件で測定する。
測定規格:JIS K 7210-1(2014)
測定条件:
・測定温度:230℃
・荷重:21.2N。
前記耐摩耗層のMFR値を上記の範囲にすることで、シート表面の外観が良好で、巾方向に均一な押出が可能になり、また、過負荷状態での押し出しを回避し、ドローダウンをより効果的に防止することができる。
<2.2.基材層>
基材層(B)は、ポリスチレン(PS)を含む。ポリスチレンは、安価で成形性が良い。そのため、真空成型する工程において、細かく複雑な形状、または深絞りの形状の場合にもシートのコーナー部の奥部形状まで成型できる。また、ポリスチレンは収縮が少ないため、寸法精度を高くすることができる。トレイ等の搬送部材は、真空成型(圧空成型)によって成形するため、得られるシートは伸縮性が良く、加熱によって軟化するがドローダウンが低いことが必要である。したがって、上記のような性質を有するポリスチレンは、基材層として適している。
基材層(B)のポリスチレンの全部または一部は、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)および/または非耐衝撃性ポリスチレン(GPPS)であってもよい。基材層の主成分がポリスチレンの場合、前記「主成分」とは、基材層(B)の重量を100重量%としたときに、ポリスチレンが50重量%超含まれることを言う。基材層(B)におけるポリスチレンの割合は、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記割合は90重量%以上であることが好ましく、100重量%であってもよい。
基材層(B)は、ポリスチレン以外にさらに、相溶化剤、タルク等のフィラー、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)等を含んでいてもよい。基材層(B)にTPSが含まれることにより、接着層(C)と基材層(B)との接着性がより向上する。TPSとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)が好ましい。なお、SBSの添加により耐衝撃性向上の効果がある。
基材層(B)は、例えば、ポリスチレンと、前記相溶剤等とを混練造粒および混合することによって調製することができる。基材層(B)は、ポリスチレン以外に、無機フィラー、および/または強化材等を含んでいてもよい。これらを添加することにより、基材層(B)の剛性を向上させることができる。
基材層(B)の剛性を向上させるために添加し得る強化材としては、繊維状強化材、板状強化材、粒状強化材等が挙げられる。繊維状強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。板状強化材としては、マイカ、タルク、クレー、ガラスフレーク等が挙げられる。粒状強化材としては、シリカ、炭酸カルシウム、もしくは珪酸カルシウム等の金属の酸化物、炭酸塩、硫酸塩、もしくはガラスビーズ等の粉末、またはカーボンブラック等が挙げられる。また、基材層の樹脂としてリサイクル材を用いてもよい。
また、基材層(B)は、他の非結晶性樹脂を含んでもよい。非結晶性樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルスチレン(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
<2.3.接着層>
耐摩耗層(A)に含まれるTPOと、基材層(B)に含まれるPSとは互いに接着しにくいため、接着層(C)を用いる必要がある。接着層(C)は、ポリスチレン、ポリオレフィン(PO)、およびスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)を含む。前記ポリスチレンの全部または一部は、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)であることが好ましい。また、前記ポリオレフィンの全部または一部は、ポリプロピレンであることが好ましい。さらに、ポリプロピレンは、メタロセン触媒を用いて合成されたランダム共重合体を含むものであることがより好ましい。
TPSは、TPOおよびPSの双方に相溶性が高い。また、TPOとの接着性が高いPO、および基材層(B)に含まれ得るHIPSを接着層(C)に含めることにより、TPSを単独で含む場合と比較して、押出成形時に均一な層を得ることができる。すなわち、接着層(C)にHIPS、PO、およびTPSを含むことにより、より良好な接着性および成形性を得ることができる。
TPSは、特に限定されず、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。さらに、TPSの全部または一部は、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーであることが好ましく、水素添加スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーであることがより好ましい。水素添加スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等が挙げられる。その他のTPSとしては、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
接着層(C)において、PSが占める割合は、接着層(C)の重量を100重量%として、30重量%以上90重量%以下であることが好ましく、40重量%以上70重量%以下であることがより好ましい。
接着層(C)において、POが占める割合は、接着層(C)の重量を100重量%として、10重量%以上70重量%以下であることが好ましく、15重量%以上50重量%以下であることがより好ましい。
接着層(C)において、TPSが占める割合は、接着層(C)の重量を100重量%として、3重量%以上40重量%以下であることが好ましく、5重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。
接着層(C)を調製するための材料は、例えば、PS、POおよびTPSを混練造粒および混合することによって調製することができる。接着層(C)は、本発明の効果を損なわない程度に、他の成分を含有していてもよい。
〔3.多層シートの製造方法〕
本発明の一実施形態に係る多層シートの製造方法は、特に限定されないが、例えば、共押出多層Tダイとしては、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、マルチスロットルダイ方式等が挙げられる。フィードブロック方式は、安価であり金型の構造が比較的簡略でメンテナンスが容易であるため生産効率に優れてはいるが、フィードブロック内で各層の樹脂材料が合流するため、各層の厚さや巾方向の流れ等のコントロールに劣る。
一方、本発明の一実施形態に係る多層シートは、既に説明した構成を備えており、前述したように、安価なフィードブロック法であっても十分に均一な多層共押出を容易に実現することができるという利点を有する。
前記製造方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。すなわち、まず、必要な材料を混練造粒および混合することによって、耐摩耗層調製用の材料、接着層調製用の材料、および基材層調製用の材料をそれぞれ調製する。次に、調製した各材料を、それぞれ異なる押出機に供給し、各押出機の設定温度条件を、約130℃から金型先端へ向かって徐々に180℃~230℃程度まで上昇させた条件で混錬溶融させ均一にして各々押し出す。続いて、押し出された各層の材料を、190℃~220℃の温度条件にて、Tダイの直前に設けられたフィードブロック内で合流させてからTダイへ供給し、Tダイ内のシングルマニフォールドで拡幅して、基材層と耐摩耗層とが接着層によって接着された多層シートを得る。
〔4.用途〕
本発明の一実施形態に係る多層シートは、例えば、トレイ成形用、搬送ケースとその仕切り板、または搬送用のシートとして使用することができる。前記多層シートを有するトレイ成形用、搬送ケース、仕切り板、搬送ラックのフレームの被覆に用いる保護板、または搬送用のシートは、前記多層シートが既に説明した構成を備えるため、多層共押出性、成形性および接着性に優れ、かつ、優れた耐摩耗性を有する。そのため、真空成型方法、圧空成形方法、又は切削加工等により、所望の形状へ成形することが容易であり、かつ、金属等との接触に対しても優れた抵抗性を示すことができる。したがって、前記多層シートは、例えば工場などの製造現場で用いられる、製品および部品等の重量物を運搬するためのトレイ、箱、仕切り板、金属製またはプラスチック製ラック、パレット等の搬送部材の製造に好適に用いることができる。
〔5.まとめ〕
本発明には、以下の態様が含まれる。
<1>
プロピレン-αオレフィン共重合体を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1)、ならびにオレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(2)を含み、メルトマスフローレイト(MFR)値が1g/10min(230℃)以上である耐摩耗層(A)と、
ポリスチレンを含む、基材層(B)と、
前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、ポリスチレン、ポリオレフィン、およびスチレン系熱可塑性エラストマーを含む、接着層(C)と、
を備える多層シート。
<2>
前記耐摩耗層(A)において、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1)と、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(2)との総重量を100重量%としたときに、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1)と、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(2)との重量比が、10~40:90~60である、<1>に記載の多層シート。
<3>
前記接着層(C)における前記スチレン系熱可塑性エラストマーの全部または一部が、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーである、<1>または<2>に記載の多層シート。
<4>
前記耐摩耗層(A)は、JIS K 6253-3(2012)に基づいて測定したデュロメータD硬さがD30~D65である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の多層シート。
<5>
前記接着層(C)における前記ポリオレフィンの全部または一部が、ポリプロピレンである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の多層シート。
<6>
前記基材層(B)における前記ポリスチレンの全部または一部が、耐衝撃性ポリスチレンおよび/または非耐衝撃性ポリスチレンである、<1>~<5>のいずれか1つに記載の多層シート。
<7>
前記基材層(B)が、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体をさらに含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の多層シート。
<8>
<1>~<7>のいずれか1つに記載の多層シートを有する、トレイ成形用または搬送用のシート。
以下に、本発明の具体的な実施例を示す。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
下記の構成材料を用いて、表1および2に示す組み合わせで、シート全体の厚さが0.5~2.0mmの多層シートを作製し、以下の評価方法で評価した。
〔実施例および比較例で用いた材料〕
・プロピレン-αオレフィン共重合体を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO(A)):住友化学製のタフセレン、三井化学製のタフマー、または三菱ケミカル製のテファブロック
・オレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO(B))1(MFR値が2g/10min(230℃)以下):住友化学製のエスポレック、三井化学製のミラストマー、または三菱ケミカル製のサーモラン
・オレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO(B))2(MFR値が5g/10min(230℃)以上):住友化学製のエスポレック、三井化学製のミラストマー、または三菱ケミカル製のサーモラン
・ポリプロピレン(PP):サンアロマー製のサンアロマー、住友化学製のノーブレン、日本ポリプロ製のノバテック、またはプライムポリマー製のプライムポリプロ
・ランダムポリプロピレン(ランダムPP):日本ポリプロ製のウインテック
・HIポリスチレン(HIPS):PSジャパン製のPSJ-HIPS、またはデイ・アイ・シー製のディックスチレンHIPS
・GPポリスチレン(GPPS):PSジャパン製のPSJ-GPPS、またはデイ・アイ・シー製のディックスチレンGPPS
・高密度ポリエチレン(HDPE):プライムポリマー製のハイゼックス
・熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU):大日精化工業製のレザミンP
・スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS):旭化成製のタフテックまたはタフプレン、クラレ製のセプトンまたはハイブラー、ENEOSマテリアル製のTR
〔多層シートの製造方法〕
実施例および比較例において、まず、耐摩耗層調製用の材料、接着層調製用の材料、および基材層調製用の材料をそれぞれ以下の方法で調製した。次に、前記各材料を、それぞれ異なる押出機(日立造船製、スクリュー径φ100、およびIKG製スクリュー径φ65)に供給し、約130℃から徐々に昇温して各々押し出した。押し出された各層の材料は、Tダイの直前に設けられたフィードブロック内で合流させてからTダイへ供給し、約190℃~220℃の条件でTダイ内のシングルマニフォールドで拡幅して、基材層と耐摩耗層とが接着層によって接着された多層シートを得た。
実施例1では、耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を20重量%、TPO(B)1を70重量%、TPO(B)2を10重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は2.9g/10min(230℃)であった。次に、接着層の重量を100重量%として、PPを30重量%、PSを60重量%、TPSを10重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。さらに、基材層の重量を100重量%として、HIPSを50重量%、GPPSを45重量%、TPSを5重量%配合することにより、基材層調製用の材料を調製した。
実施例2では、耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を20重量%、TPO(B)1を60重量%、TPO(B)2を20重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は3.2g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
実施例3では、耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を30重量%、TPO(B)1を70重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は4.0g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
実施例4では、耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を40重量%、TPO(B)1を60重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は4.5g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
実施例5では、耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を40重量%、TPO(B)1を20重量%、TPO(B)2を40重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は13.8g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
実施例6では、耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を15重量%、TPO(B)1を65重量%、TPO(B)2を20重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は2.4g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
実施例7では、耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を20重量%、TPO(B)1を70重量%、TPO(B)2を10重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は2.9g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
実施例8では、耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を10重量%、TPO(B)1を90重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は1.3g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
比較例1では、耐摩耗層に配合するTPOは1種類のみとした。耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(B)1を100重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は0.9g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
比較例2では、耐摩耗層に配合するTPOは1種類のみとした。耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を30重量%、PPを70重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は5.6g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
比較例3では、耐摩耗層に配合するTPOは1種類のみとした。耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を20重量%、PPを80重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は4.7g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
比較例4では、耐摩耗層の重量を100重量%として、TPO(A)を20重量%、TPO(B)1を70重量%、TPO(B)2を10重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は2.9g/10min(230℃)であった。当該比較例では、接着層にPPおよびPSを配合しなかった。接着層の重量を100重量%として、水素添加TPSを100重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。さらに、基材層の重量を100重量%として、HIPSを50重量%、GPPSを45重量%、TPSを5重量%配合することにより、基材層調製用の材料を調製した。
比較例5では、耐摩耗層にTPOを配合しなかった。耐摩耗層の重量を100重量%として、PPを100重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で1重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は0.1g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
比較例6では、耐摩耗層にTPOを配合しなかった。耐摩耗層の重量を100重量%として、PPを30重量%、HDPEを70重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は0.2g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
比較例7では、耐摩耗層にTPOを配合しなかった。耐摩耗層の重量を100重量%として、ランダムPPを30重量%、HDPEを70重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は0.4g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
比較例8では、耐摩耗層にTPOを配合しなかった。耐摩耗層の重量を100重量%として、ランダムPPを40重量%、HDPEを60重量%配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は0.5g/10min(230℃)であった。接着層および基材層は実施例1に同じ。
比較例9では、耐摩耗層にTPOを配合しなかった。耐摩耗層の重量を100重量%として、TPUを85重量%、TPSを15重量%配合し、さらに、その他添加剤として軟化剤、改質剤、および滑剤等を、TPO100重量部に対して合計で20重量部となるように配合することにより、耐摩耗層調製用の材料を調製した。このとき、耐摩耗層のMFR値は11.5g/10min(220℃)であった。次に、接着層の重量を100重量%として、アミン変成水素添加TPSを100重量%配合することにより、接着層調製用の材料を調製した。さらに、基材層の重量を100重量%として、HIPSを50重量%、GPPSを45重量%、TPSを5重量%配合することにより、基材層調製用の材料を調製した。
〔評価方法〕
(多層共押出性)
多層シートを製造する際の積層性、ロールへの貼り付き、押出機への負荷などを総合評価した。
〇:巾方向、長さ方向、厚さ方向とも厚さ変動が無く、また各層の比率が全方向で均一に押出成形されており、合格である。
△:各方向の寸法変動、又は各層の比率に若干のバラ付きがある。外観が許容範囲ではあるが多少不具合がある。いずれも許容範囲で合格であるが、生産の安定性に欠ける。
×:各方向の寸法変動が多い。各層の流れが不均一である。ドローダウンが発生する。等の不具合があり不合格である。
(シート表面の外観状況)
成形したシートの表面に界面荒れ、スクリューマーク、フィッシュアイ、ゲル、気泡(ボイド)、凸凹がないか、およびシート端部に、耐摩耗層、又は接着層が巾方向に均一に押出されず、樹脂材料が偏ったり、はみ出す不具合がないか目視で確認した。
(評価基準)
〇:問題無し
△:外観に若干問題はあるが合格範囲である。シート端部に異常は無い。
×:外観に問題がある、および/またはシート端部に異常が有る。
(層間の接着性)
シート状態で切り込みを入れた後、切断端面から耐摩耗層をめくり、剥離が生じるかを確認した。
(評価基準)
〇:剥離無し
×:剥離有り
-:良好なシート成形品が得られず試験は未実施
(耐摩耗性)
耐摩耗性は、摩耗損失量の測定、および剥離状況の観察を行うことにより評価した。
摩耗損失量の測定は、テスター産業(株)製のテーバー摩耗試験機(型式:AB-101)を用い、荷重:1000g、摩耗輪:CS-17、回転数:1000回転、試験片サイズ:100mm×100mmの条件で行い、摩耗量を測定した。また、耐摩耗層の剥離を目視で確認した。
摩耗損失量が少ない程、例えば、15.0mg以下であれば、耐摩耗性に優れていると言える。また、耐摩耗層(A)の剥離(粉状の摩耗物では無く、外層が捲れあがった状態)の有無を目視で確認し、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
〇:剥離無し
×:剥離有り
-:試験は未実施
(深絞り成型性)
真空成型性は、深絞り形状の成型にて成型性を確認することにより評価した。
実施例および比較例の多層シートを深い絞り形状の金型を用いて真空成型し、その後、型の角部分の成形状態を確認した。金型の寸法は、入り口径×深さ=64mm×115mmであった。また、真空成型は以下の条件で行った。
(成型条件)
加熱温度:320~350℃
加熱時間:65~70秒間
ヒータとシートとの距離:90mm
(評価基準)
〇:成型品が金型表面の全域にわたり密着され、良好な形状に成型された。特に金型のコーナー部分で、シートが伸びて型に密着している。
×:金型のコーナー部分で、耐摩耗層の伸びが悪く、亀裂が発生、または密着が不十分である。
-:シートの成形性または耐摩耗性が基準に達しないため、試験は未実施
Figure 0007279252000002
Figure 0007279252000003
表1および表2から、TPO(A)およびTPO(B)を含み、メルトマスフローレイト(MFR)値が1g/10min(230℃)以上である耐摩耗層(A)と、PSを含む、基材層(B)と、前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、PS、PO、およびTPSを含む、接着層(C)と、を備える構成とすることにより、耐摩耗性および成形性に優れる多層シートが得られることが確認できた。また、上記の構成を備えることにより、得られる多層シートは、耐摩耗性および成形性だけではなく、多層共押出性、シート端部の外観、および層間の接着性にも優れることが確認された。
具体的には、実施例と比較例1との比較から、耐摩耗層のMFR値を特定の範囲とすることにより、多層共押出性およびシート表面の外観が優れることが確認できた。また、実施例と、比較例1、2、および3との比較から、耐摩耗層にTPO(A)およびTPO(B)の2種類のTPOが含まれることにより、得られる多層シートは耐摩耗性に優れることが確認された。さらに、実施例と比較例4との比較により、接着層がPP、PS、およびTPSを含むことにより、得られる多層シートの多層共押出性、シート表面の外観、および層間の接着性が優れることが確認された。実施例と、比較例5との比較により、耐摩耗層にTPO(A)およびTPO(B)の両方が含まれ、MFR値が特定の範囲であることにより、耐摩耗性、多層共押出性、およびシート表面の外観に優れることが確認された。
その他、実施例および比較例1~9の摩耗損失量から、耐摩耗層にTPUおよびTPSが含まれる場合、耐摩耗層にTPO(A)およびTPO(B)が含まれる場合、耐摩耗層にPPおよびHDPEが含まれる場合の順で、得られる多層シートの耐摩耗性が高い傾向にあることが確認された。一方で、耐摩耗層にTPO(A)およびTPO(B)が含まれることにより、耐摩耗性、多層共押出性、シートの外観、深絞り成型性の全てにおいて優れた性質を有することが確認された。
本発明の一態様は、金属部品および/または重量物の運搬容器(トレイ等)等に使用されるシートの分野で好適に利用することができる。
A:耐摩耗層
B:基材層
C:接着層

Claims (7)

  1. プロピレン-αオレフィン共重合体を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(1)、ならびにオレフィン系ゴムおよびオレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(2)を含む耐摩耗層であって、
    前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(2)の含有量は、前記耐摩耗層の重量を100重量%として60重量%以上90重量%以下であり、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1)と、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(2)との総重量を100重量%としたときに、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(1)と、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(2)との重量比が、10~40:90~60であり
    メルトマスフローレイト(MFR)値が1g/10min(230℃)以上である耐摩耗層(A)と、
    ポリスチレンを主成分として含む、基材層(B)と、
    前記耐摩耗層と前記基材層とを接着する接着層であって、ポリスチレン、ポリオレフィン、およびスチレン系熱可塑性エラストマーを含
    前記接着層の重量を100重量%として、前記ポリスチレンの含有量は30重量%以上70重量%以下であり、前記ポリオレフィンの含有量は10重量%以上50重量%以下であり、前記スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は3重量%以上40重量%以下である、接着層(C)と、
    を備える多層シート。
  2. 前記接着層(C)における前記スチレン系熱可塑性エラストマーの全部または一部が、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載の多層シート。
  3. 前記耐摩耗層(A)は、JIS K 6253-3(2012)に基づいて測定したデュロメータD硬さがD30~D65である、請求項1に記載の多層シート。
  4. 前記接着層(C)における前記ポリオレフィンの全部または一部が、ポリプロピレンである、請求項1に記載の多層シート。
  5. 前記基材層(B)における前記ポリスチレンの全部または一部が、耐衝撃性ポリスチレンである、請求項1に記載の多層シート。
  6. 前記基材層(B)が、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体をさらに含む、請求項1に記載の多層シート。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の多層シートを有する、トレイ成形用または搬送用のシート。
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