JP7276058B2 - 導電性組成物 - Google Patents
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例えば特許文献1には、硬化時の銅の酸化を脂肪族モノカルボン酸とアミンと4-アミノサリチル酸を組み合わせることで抑制できることが報告されている。
また、特許文献2には、水系表面処理剤で処理された金属粒子、カップリング剤、有機カルボン酸、キレート剤、界面活性剤を組み合わせた導電性ペーストが耐酸化性に優れ、イオンマイグレーションを起こしにくいことが報告されている。
そこで本発明は、スクリーン印刷性と導電性に優れ、且つはんだ付けが可能な導電性組成物の提供を目的とする。
すなわち本発明は、(a)銅粒子100質量部に対し、(b)炭素数8~24の脂肪族モノカルボン酸を0. 1~5質量部、(c)式(1)で示されるアミン化合物を0.1~5質量部、および(d)バインダ樹脂を3~20質量部含有する導電性組成物である。
なお、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量の範囲など)を段階的に記載した場合、各下限値および上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載は、「10~90」、「20~100」、「10~20」または「90~100」に変更することができる。また、記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限値および下限値)の数値を含むものとする。例えば、「2~5」は2以上5以下を表す。
以下、各成分について説明する。
本発明で用いられる成分(a)は導電性粒子であり、例えば銅粒子などの無機導電性粒子を用いることができる。銅粒子は、特に限定されず、銅ペーストや銅インクに一般的に用いられる公知の銅粒子を用いることができる。
銅粒子は銅のみからなっていてよいが、銀や白金などの銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有していてもよく、表面層や突起物を形成するなどどのような形状であってもよい。銅粒子が銅以外の金属、金属酸化物、金属硫化物を更に含有する場合、銅粒子中の銅の質量比率は50質量%以上とすることが好ましい。
これにより導電性粒子表面は、アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆される。好ましくは、第1被覆層は導電性粒子表面に形成され、第2被覆層は第1被覆層上に形成される。
アミン化合物により形成された第1被覆層と、脂肪族モノカルボン酸により形成された第2被覆層とで被覆された表面被覆導電性粒子の製造方法としては、例えば、アミン化合物で表面を被覆した表面被覆導電性粒子を、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加する方法が挙げられる。なお、脂肪族モノカルボン酸の溶液に添加した後に、必要に応じて、加熱することができる。
導電性粒子の平均粒径が大きすぎると、導電性粒子の充填率が低くなり、導電パスの形成が困難となり、電子部品を起動できる程度の抵抗値を有する硬化膜を作成することが困難になることがある。また、導電性粒子の平均粒径が小さすぎると、はんだ付け性が急激に低下することがある。この理由は、明確ではないが、硬化膜表面の凹凸が少なくなり、はんだ濡れ性に寄与する凸状の金属部が減ることに起因していると推察される。
なお、導電性粒子のBET比表面積は、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製「モノソーブ」)を用いてBET1点法により測定することができる。
本発明で用いられる成分(b)は炭素数が8~24、好ましくは10~20の脂肪族モノカルボン酸である。
脂肪族モノカルボン酸の炭素数が短すぎると、導電性粒子の分散効果が小さくなり、導電性組成物中に気泡を挟み込み、硬化時に凹凸が生じやすくなる。気泡を起因とする硬化膜の凹凸は、導電性粒子由来の凹凸と異なり、はんだ濡れ性を低下させ、はんだ付けが困難になることがある。また、炭素数が長すぎると、炭素数の増加に見合った効果を得ることができず、入手も困難となることがある。
炭素数8~24の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸が挙げられる。炭素数8~24の直鎖不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸等が挙げられる。炭素数8~24の分岐飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸などが挙げられる。
成分(b)の含有量が少なすぎると、導電性粒子の分散性が低下して、脂肪族モノカルボン酸の炭素数が短すぎる場合と同様の現象が発生し、はんだ付けが困難になることがある。また、成分(b)の含有量が多すぎると、過剰な脂肪族モノカルボン酸がペースト状の導電性組成物と基材との密着性を阻害することがある。
本発明で用いられる成分(c)は、下記式(1)で示されるアミン化合物である。
R1は、水素原子、アミノエチル、フェニルの何れかであり、スクリーン印刷性を高めたい場合は、水素、フェニルが好ましく、はんだ付け性を高めたい場合は、アミノエチルが好ましい。R2~R4は、それぞれ独立してメチルまたはエチルである。
成分(c)の含有量が少なすぎると、はんだ濡れ性が低下し、また、はんだ付け時に硬化膜が酸化し易くなることがある。成分(c)の含有量が多すぎると、過剰量のアミン化合物が不純物として働き導電性が低下することがある。
本発明で用いられる成分(d)はバインダ樹脂である。
成分(d)としては、導電性ペースト等に用いられる公知のバインダ樹脂を用いることができ、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、オキサジン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、キシレン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂などが挙げられる。これらのバインダー樹脂から選ばれるいずれか1種類を単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
レゾール型フェノール樹脂は、市販品としても入手可能である。レゾール型フェノール樹脂の市販品の例としては、レヂトップ(RESITOP:登録商標)PL-5208、PL-2407、およびPL-6317(群栄化学工業株式会社製)を挙げることができる。レゾール型フェノール樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(d)の含有量が少ないと、はんだ付け性が高くなるものの、少なすぎると、導電性組成物から形成された硬化膜が付着する基材との密着性が大幅に低下することがある。また、成分(d)の含有量が多いと、スクリーン印刷性が高くなるものの、多すぎると、過剰なバインダ樹脂がはんだ濡れ性を阻害して、はんだ濡れ性が大きく低下することがある。
本組成物では、一般的な組成に比べ、成分(a)の導電性粒子の含有率が高いので、相対的に成分(d)のバインダ樹脂の量が少なくなっており、大気表面に露出する導電性粒子が多くなっている。その結果、耐酸化性が低い銅粒子などの導電性粒子は酸化が進行し、硬化膜の導電性が低下するおそれがある。
しかし、本組成物は成分(b)の脂肪族モノカルボン酸を含有し、この脂肪族モノカルボン酸がバインダの代わりに導電性粒子表面をコートすることで表面酸化が抑制され、硬化膜の導電性の低下が抑えられる。一方、はんだ付け時に高い熱量が加わると、導電性粒子表面をコートする脂肪族モノカルボン酸は融点以上となるため溶融し、導電性粒子表面が露出するので、ハンダ濡れ性を阻害しない。
本発明の導電性組成物は、希釈剤を含有してもよい。
希釈剤としては、例えば、エーテル系アルコール類、非エーテル系アルコール類、エステル類、ケトン類、テルペン類、その他炭化水素類等が挙げられる。
本発明の導電性組成物は、成分(a)~成分(d)を少なくとも含有し、更に必要に応じて希釈剤を含有する。これら各成分の合計の含有量は、導電性組成物全量基準で、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
本発明の導電性組成物は、基材の表面上に塗布し塗布膜を形成させ、次いで該塗布膜を硬化させて硬化体を形成させることができる。このようにして、基材と、該基材上に設けられた導電性組成物の硬化体とを備える積層体を得ることができる。
各実施例および比較例の方法で製造した導電性組成物を、以下の評価方法により評価した。
各実施例および比較例の方法で製造した導電性組成物を、L/S=500μm/500μmのくし形パターンが描かれたスクリーン版(SUS200)上に展開し、スクリーン印刷機(MT-320、マイクロテック社製)で印刷速度50mm/secでガラス基板上に塗布した。ガラス基板上にパターニングされた導電性組成物の印刷形状を目視観察により次の基準で評価した。
〔評価基準〕
印刷パターンに擦れ/欠損無し:◎(極めて良好)
印刷パターンに欠損無し:○(良好)
印刷パターンに擦れ/欠損有り:×(不良)
各実施例および比較例の方法で製造した導電性組成物の硬化物の体積抵抗率を、JIS K7194に準拠し、下記に示す方法により評価した。
〔評価方法〕
測定機器種:低抵抗率計 MCP-T610((株)三菱ケミカルアナリテック製)
測定条件:4探針法
プローブ:ASP
測定試料(硬化体):導電性組成物を幅1cm、長さ3cm、厚み30μmとなるように基材上に塗布した後、150℃×15分で硬化し得られた硬化体の体積抵抗率を測定した。
測定回数:5回測定し、体積抵抗率の平均値を算出した。
各実施例および比較例の方法で製造した導電性組成物の硬化物のはんだ付け性は、硬化膜へのはんだの濡れ性を評価することで行った。具体的には以下に示す方法により評価した。
導電性組成物を幅1cm、長さ3cm、厚み30μmとなるように基材上に塗布した後、150℃×15分で硬化膜付き基材を得た、次に、すず/鉛の棒はんだを250℃のはんだごてで溶融し硬化膜上にはんだを接合させた。その後、硬化膜上のはんだの接触角を接触角計により測定し次の基準で評価した。
〔評価基準〕
接触角60°未満:◎(極めて良好)
接触角60°以上、90°未満:○(良好)
接触角90°以上:×(不良)
水1000gに対し塩化アンモニウム5gを溶解した塩化アンモニウム水溶液を調製した。三井金属鉱業株式会社製の球状銅粒子1200Y[粒径(D50)2.1μm、比表面積0.39m2/g]を500g、該塩化アンモニウム水溶液に添加し、窒素バブリング下、30℃で60分間攪拌した。撹拌には、メカニカルスターラーを使用し、回転数150rpmで実施した。以下、撹拌は同様の撹拌装置を使用して同じ回転数で行った。攪拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別し、つづいて、桐山ロート上で150gの水により銅粒子の洗浄を2回行った。
洗浄した銅粒子を、40質量%のジエチレントリアミン水溶液2500gに添加し、窒素バブリンクをしながら60℃下で1時間の加熱攪拌を行った。
撹拌を止めて5分間静置した後、上澄み液の約2000gを抜き取って除去した。つづいて、沈殿物に洗浄用溶剤としてイソプロパノール2000gを添加し、30℃で3分間攪拌を行った。撹拌を止めて5分間静置した後、上澄み液の約2000gを抜き取って除去した。その後、2質量%のラウリン酸イソプロパノール溶液2500gを添加し、30℃で30分間攪拌した。攪拌終了後、5C濾紙の桐山ロートを用いて減圧濾過にて銅粒子を濾別した。得られた銅粒子を25℃で3時間減圧乾燥することにより表面被覆銅粒子を得た。
次に、プラネタリーミキサー[ARV-310、(株)シンキー製]を用いて、室温下、回転数1500rpmで30秒間攪拌し、1次混練を行った。
次に3本ロールミル[EXAKT-M80S、(株)永瀬スクリーン印刷研究所製]を用いて、室温、ロール間距離5μmの条件下で5回通すことで、2次混練をおこない、導電性組成物を得た。
得られた導電性組成物について、上記のスクリーン印刷性、硬化体の導電性、はんだ付け性をそれぞれ評価した。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
レゾール型フェノール樹脂の固形分の量を7.5質量部にした以外は実施例1と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
レゾール型フェノール樹脂の固形分の量を3.7質量部にした以外は実施例1と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
脂肪族モノカルボン酸をステアリン酸に変更した以外は実施例2と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
脂肪族モノカルボン酸をオレイン酸に変更した以外は実施例2と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
アミン化合物をN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(表1中のアミン化合物C2)に変更した以外は実施例2と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
アミン化合物をN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(表1中のアミン化合物C3)に変更した以外は実施例2と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
脂肪族モノカルボン酸をカプロン酸に変更した以外は実施例2と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
アミン化合物をトリエタノールアミンに変更した以外は実施例2と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
アミン化合物を用いなかった以外は実施例2と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
脂肪族モノカルボン酸を用いなかった以外は実施例2と同様にして導電性組成物を調製し、実施例1と同様の各評価を行った。導電性組成物の各成分の配合量、および評価結果を表2に示す。
これに対して、比較例1では、本要件外の脂肪族モノカルボン酸を用いているので、はんだ付け性が低下する結果となった。
比較例2では、本要件外のアミン化合物を用いているので、印刷性、導電性、はんだ付け性のいずれもが低下する結果となった。
比較例3では、アミン化合物を用いていないので、導電性とはんだ付け性が低下する結果となった。
比較例4では、脂肪族モノカルボン酸を用いていないので、印刷性、導電性、はんだ付け性のいずれもが低下する結果となった。
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