JP7275820B2 - エンジン補機の取付構造 - Google Patents

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Description

本発明は、電動発電機などの補機をエンジンに取り付ける構造に関する。
エンジンに対してオルタネータなどの補機を取り付ける構造として、エンジン側のブラケットにスルーボルトを挿入可能なスリットを形成し、補機側の取付片にボルト挿通穴を形成したものが、特許文献1に記載されている。この取付構造では、ナット部材を用いてボルト挿通穴に仮組みした状態のスルーボルトを、スリットに挿入して締結させている。この構成により、エンジンへの補機の取付作業性の向上を図っている。
特開2001-115852号公報
特許文献1のエンジン補機の取付構造では、エンジン側のブラケットに形成したスリットが、開口部へ向けて斜め上方に延びている。そのため、スリット内部に水が溜まりやすく、スリットに挿通したスルーボルトに錆が発生して耐久性が低下しやすいという問題がある。
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、締結用のボルトの耐久性に優れるエンジン補機の取付構造を提供することを目的とする。
本発明は、一対の脚部を有し、一方の脚部に設けた貫通穴と他方の脚部に設けたネジ穴が同軸上に配置されるエンジン補機と、エンジン本体の側壁から突出して一対の脚部の間に位置する取付部と、取付部に設けられ、貫通穴とネジ穴を連絡する取付穴と、取付穴の一部を構成し、貫通穴側の端部から軸方向の所定範囲で周面の一部を切り欠いた切欠穴と、貫通穴と取付穴を貫通し、ネジ穴に締結されるボルトと、を有するエンジン補機の取付構造において、切欠穴は、斜め下方に向けて開口し、エンジン本体は、内部にシリンダを有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックの端部に取り付けられるチェーンケースとを有し、取付部は、シリンダブロックに設けられる第1の取付部と、チェーンケースに設けられる第2の取付部とで構成され、切欠穴は、第1の取付部に形成される第1の切欠穴と、第2の取付部に形成される第2の切欠穴とで構成され、第1の切欠穴は、下方に位置する下壁が開口に向けて斜め下方に延び、上方に位置する上壁が水平方向に延び、第2の切欠穴は、下方に位置する下壁と上方に位置する上壁がいずれも、開口に向けて斜め下方に延びることを特徴とする。
本発明によれば、締結用のボルトの耐久性に優れるエンジン補機の取付構造を得ることができる。
本実施の形態のエンジンの端面図である。 エンジンの正面図である。 図1のIII-III線に沿う断面図である。 図2のIV-IV線に沿う断面図である。 電動発電機を取り外した状態のエンジンの斜視図である。 エンジンに対する電動発電機の取り付け部分の斜視図である。 シリンダブロックの斜視図である。 シリンダブロックの端面図である。 シリンダブロックの正面図である。
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。以下の説明における各方向(前後、左右、上下)は、エンジン10を車両に搭載した状態での当該車両における各方向を意味する。
図1、図2、図5に示すように、エンジン10の本体を構成する要素として、シリンダブロック11と、シリンダブロック11の上部に位置するシリンダヘッド12と、シリンダヘッド12の上部に位置するシリンダヘッドカバー13と、右側の端面に位置するチェーンケース14と、シリンダブロック11の下部に位置するオイルパン15と、を有している。エンジン10の前面側には、エンジン補機である電動発電機16が取り付けられる。
図7に示すように、シリンダブロック11内には、左右方向に並ぶ4つのシリンダ20が形成されている。それぞれのシリンダ20内には、上下方向に往復移動可能なピストン(図示略)が配置されており、ピストンはコンロッド(図示略)を介してクランク軸21(図1、図8参照)に接続している。各シリンダ20内のピストンが往復移動すると、クランク軸21が回転する。
シリンダヘッド12内には、各シリンダ20の上端に連通する燃焼室(図示略)が形成されている。インジェクタから噴射された燃料が、車外側から吸気通路(図示略)を通して取り込まれた空気と混ざって混合気を生成し、吸気バルブ(図示略)の開弁に伴って混合気が燃焼室内に流入する。
それぞれの燃焼室に点火プラグ(図示略)が設けられている。点火プラグの点火によって、燃焼室内の混合気が着火されて燃焼する。混合気の燃焼により、シリンダ20内でピストンが往復移動し、ピストンの往復運動がクランク軸21の回転運動に変換される。燃焼室内で燃焼した後の排ガスは、排気バルブ(図示略)の開弁に伴って排気通路に入り、車両外部に排出される。
シリンダヘッドカバー13内に形成される動弁室(図示略)内に、吸気用カムシャフト(図示略)と排気用カムシャフト(図示略)がそれぞれ回転自在に軸支されている。吸気用カムシャフトと排気用カムシャフトは、左右方向に延びている。吸気用カムシャフトに設けられたカム(図示略)により、吸気バルブの開閉が制御される。排気用カムシャフトに設けられたカム(図示略)により、排気バルブの開閉が制御される。
チェーンケース14は、シリンダブロック11とシリンダヘッド12とシリンダヘッドカバー13の右側の端面部分を覆っている。図7及び図8に示すように、シリンダブロック11の右側の端部には合わせ面22が形成されている。図示を省略するが、シリンダヘッド12とシリンダヘッドカバー13の右側の端部にも、合わせ面22に続く合わせ面が形成されている。これらの合わせ面に対して、チェーンケース14側の合わせ面(図示略)が合わせられ、複数のボルト24(図1及び図5参照)によってチェーンケース14が固定される。シリンダブロック11の合わせ面22上には、ボルト24が螺合する複数のボルト穴25が形成されている。シリンダブロック11には、合わせ面22に囲まれる位置に、左右方向へ貫通する貫通部26が形成されている。貫通部26を通してクランク軸21がチェーンケース14内まで延びている。
チェーンケース14の内側には、クランク軸21と吸気用及び排気用の各カムシャフトとを同期回転させるタイミングチェーン機構(図示略)が配置されている。タイミングチェーン機構は、クランク軸21に設けたタイミングロータと、吸気側及び排気側の各カムシャフトに設けたカムスプロケットとに、タイミングチェーンを巻き掛けて構成されている。
オイルパン15の内部に潤滑用のオイルが貯留されている。オイルパン15内のオイルは、オイルポンプ(図示略)によって汲み上げられ、オイル通路を通してエンジン10内の各部に供給される。オイル通路の一部として、シリンダブロック11の前面寄りには、左右方向に延びるオイルギャラリ27が形成されている。図7及び図8に示すように、オイルギャラリ27は貫通部26の前方に位置しており、オイルギャラリ27の一部(オイルギャラリ27を形成する壁部)が、シリンダブロック11の前側の側壁から前方に向けて膨出している。
以上の構成のエンジン10を車両に搭載した状態で、クランク軸21の回転は変速機(図示略)に伝達される。クランク軸21と変速機の間には、接続状態と切断状態に動作可能なクラッチ(図示略)が設けられており、クラッチの接続状態でクランク軸21から変速機への回転力伝達が行われる。変速機は、クランク軸21から伝達された回転を変速してドライブシャフト(図示略)に伝達し、ドライブシャフトに接続する駆動輪(図示略)が回転して、エンジン10を搭載した車両が走行する。クラッチと変速機は、エンジン10の左側に配置される。
電動発電機16は、クランク軸21から入力される動力によって発電する発電機の機能と、バッテリ(図示略)から供給される電力によって動力を発生してクランク軸21に伝達する電動機の機能とを備えた、いわゆるモータジェネレータである。電動機としての電動発電機16は、エンジン10を停止状態からクランキングさせて始動させることと、エンジン10の動力を補って走行用の動力(ドライブシャフトを回転させる力)を与える駆動アシストを行うことが可能である。発電機としての電動発電機16は、クランク軸21から回転力を受けて発電を行う。より詳しくは、エンジン10が燃料を消費してクランク軸21を駆動するときに回転力を受けて電動発電機16が発電を行う場合と、車両の減速時に、回生トルクによってドライブシャフトからの回転エネルギーを電動発電機16で電力に変換する場合とがある。
電動発電機16は、クランク軸21と平行な回転軸(図示略)を備える。電動発電機16の回転軸とクランク軸21の間に伝動ベルト(図示略)が掛け渡されており、伝動ベルトを介して、クランク軸21と電動発電機16との間で動力伝達が可能になっている。なお、エンジン10側と電動発電機16側の間に設ける動力伝達機構は、伝動ベルトを用いるタイプ以外のものでもよい。
電動発電機16は、エンジン10の本体部分を構成するシリンダブロック11及びチェーンケース14に対して固定されている。図3に示すように、電動発電機16は、左右方向に離間する一対の脚部31と脚部32を有している。エンジン10には、前側の側壁から前方に突出して脚部31と脚部32の間に位置する取付部TAが設けられる。取付部TAは、シリンダブロック11に設けた第1の取付部40と、チェーンケース14に設けた第2の取付部50とによって構成される。脚部31と脚部32の間に取付部TAを位置させ、これらをボルト60によって締結することで、電動発電機16が取り付けられる。以下、電動発電機16の取付構造の詳細を説明する。
図7及び図8に示すように、シリンダブロック11の右端側には、端部リブ41が形成されている。図7に示すように、端部リブ41の右側面が合わせ面22であり、合わせ面22上に開口して左右方向へ延びる複数のボルト穴25が、端部リブ41に形成されている。
端部リブ41は、オイルギャラリ27の上方に、前方への突出量を部分的に大きくした突出部42を有する。突出部42には、左右方向に向けて貫通する第1の切欠穴43が形成されている。第1の切欠穴43は、下方に位置する下壁43aと、上方に位置する上壁43bを有し、下壁43aと上壁43bの前方側が開口している。下壁43aは、前方の開口に向けて斜め下方に延びている。上壁43bは、概ね水平方向に延びている。下壁43aと上壁43bの間の最奥部は、円弧状の湾曲壁43cで接続されている。湾曲壁43cが位置する奥側から前方側の開口に向けて、下壁43aと上壁43bが互いに間隔を大きくしながら延びている。
突出部42にはさらに、第1の切欠穴43の左側に隣接して、第1の切欠穴43に通じる貫通穴44が形成されている。貫通穴44は周方向に開口を有さない閉鎖断面の穴であり、左右方向に軸線が向く円筒状の内面を有している。貫通穴44の内径は、第1の切欠穴43における下壁43aと上壁43bの間の幅よりも小さい。
チェーンケース14の周縁部分には、シリンダブロック11側の端部リブ41と重なるフランジ51が形成されている。図6に示すように、フランジ51は、突出部42の右側に重なる突出部52を有する。突出部52には、左右方向に向けて貫通する第2の切欠穴53が形成されている。第2の切欠穴53は、下方に位置する下壁53aと、上方に位置する上壁53bを有し、下壁53aと上壁53bの前方側が開口している。下壁53aと上壁53bはいずれも、前方の開口に向けて斜め下方に延びている。下壁53aと上壁53bの間の最奥部は、円弧状の湾曲壁53cで接続されている。湾曲壁53cが位置する奥側から前方側の開口に向けて、下壁53aと上壁53bが略平行に延びている。
突出部42と第1の切欠穴43と貫通穴44によって、第1の取付部40が構成されている。突出部52と第2の切欠穴53によって、第2の取付部50が構成されている。図3及び図6に示すように、シリンダブロック11とチェーンケース14が互いに固定された状態で、第2の切欠穴53と第1の切欠穴43と貫通穴44が左右方向に並んで連通する。第2の切欠穴53と第1の切欠穴43と貫通穴44は、取付部TAにおける取付穴TBを構成する。
第1の切欠穴43と第2の切欠穴53はいずれもその周方向で斜め下方に向かって開口する。より詳しくは、図4に示すように、第1の切欠穴43の下壁43aと、第2の切欠穴53の下壁53a及び上壁53bはそれぞれ、湾曲壁43c及び湾曲壁53cから斜め下方に向けて延びる。これに対し、第1の切欠穴43の上壁43bは、湾曲壁43cから水平方向に延びる。
図3及び図6に示すように、第1の取付部40と第2の取付部50の近傍(後方)で、ボルト24によるシリンダブロック11とチェーンケース14の締結が行われている。また、第1の取付部40と第2の取付部50の近傍の下方には、シリンダブロック11の外面に膨出するオイルギャラリ27が形成されており、オイルギャラリ27によって周囲の断面強度が高くなっている。従って、取付部TAを構成する第1の取付部40と第2の取付部50は、エンジン10における強度の高い箇所で、強固に固定された関係にある。
電動発電機16の本体部の前方下部に、脚部31と脚部32が設けられている。図3に示すように、脚部31と脚部32は、電動発電機16の本体部から前方に突出している。脚部31には、左右方向に貫通する貫通穴33が形成され、脚部32には、左右方向に貫通するネジ穴34が形成されている。貫通穴33は内面にネジを有さず、ネジ穴34の内面にのみネジが形成されている。貫通穴33とネジ穴34は同軸上に位置する。
貫通穴33とネジ穴34が形成された位置における脚部31と脚部32の左右方向の間隔は、第1の切欠穴43、貫通穴44及び第2の切欠穴53が形成された位置における第1の取付部40と第2の取付部50を合わせた左右方向の厚みに対応している。従って、第1の取付部40と第2の取付部50からなる取付部TAを、脚部31と脚部32の間に挿入することができる。この挿入状態で、取付部TAに形成されている取付穴TB(第2の切欠穴53と第1の切欠穴43と貫通穴44)は、貫通穴33とネジ穴34を連絡する。取付穴TBは、その周面の一部を、貫通穴33側の端部から軸方向の所定範囲で切り欠いた切欠穴(第1の切欠穴43と第2の切欠穴53)を有している。
図3に示すように、ボルト60は、軸部61の一端に近い領域にネジ部62が形成されており、軸部61の他端側に頭部63を有している。ネジ部62の外周面には、電動発電機16側のネジ穴34に対して螺合可能なネジが形成されている。頭部63は軸部61よりも外径が大きい。ボルト60は、頭部63を六角柱形状とした六角ボルトである。
図3に示すように、ボルト60は、脚部31の貫通穴33と、取付部TAの取付穴TB(第2の切欠穴53と第1の切欠穴43と貫通穴44)に対して軸部61を挿通させ、脚部32のネジ穴34にネジ部62を螺合させて取り付けられる。図4に示すように、第2の切欠穴53における下壁53aと上壁53bの間隔は、軸部61の外径と略同じであり、軸部61は、第2の切欠穴53の最奥部(下壁53aと上壁53bと湾曲壁53cに囲まれる領域)に嵌まるように挿通される。また、軸部61は貫通穴44に挿通されて、貫通穴44の内周面によって軸部61が囲まれる。従って、取付穴TBに挿通させた状態のボルト60は、取付部TAに対して径方向(前後方向や上下方向)への移動が規制される。電動発電機16の脚部31と脚部32は、ボルト60に対して径方向(前後方向や上下方向)への移動が規制される。なお、図4に示すように、第1の切欠穴43は、ボルト60の軸部61に対するクリアランスが第2の切欠穴53よりも大きい。そのため、第1の取付部40は、第1の切欠穴43ではなく貫通穴44によってボルト60との位置関係が定まる。
図3に示すように、ネジ穴34にネジ部62が螺合し、頭部63が脚部31の右側の側面に当て付くことによって、貫通穴33及び取付穴TBに対するボルト60のそれ以上の挿入が規制される。この状態でボルト60の頭部63に対して所定の締め付けトルクを与えると、脚部31と脚部32を左右方向で接近させようとする力が加わり、脚部31と脚部32の間に取付部TAが挟持され、電動発電機16がエンジン10に対して締結固定される。
図1に示すように、エンジン10に対する電動発電機16の締結箇所は、ボルト60を用いる下方の締結箇所の他に、ボルト65を用いる上方の締結箇所が存在する。
エンジン10から電動発電機16を取り外す場合には、ネジ穴34に対するネジ部62の螺合を解除し、貫通穴44から抜ける位置までボルト60を軸方向(右方向)へ移動させる。この位置にボルト60が達すれば、ボルト60を軸方向へ完全に引き抜くことなく、斜め下方に電動発電機16を移動させて、第1の切欠穴43及び第2の切欠穴53の開口を通してボルト60の軸部61を取付穴TBから離脱させて、取り外すことができる。
エンジン10に電動発電機16を取り付ける場合には、電動発電機16側の貫通穴33にボルト60の軸部61を挿入して、軸部61の先端が脚部31と脚部32の間(貫通穴44よりも右側)に位置するようにする。そして、第1の切欠穴43及び第2の切欠穴53の開口から奥側に向けて(斜め上方に向けて)軸部61を挿入させながら、電動発電機16の脚部31と脚部32の間に取付部TAが位置するようにする。軸部61が第2の切欠穴53の最奥部(湾曲壁53c)に当て付く位置(図4参照)まで移動させると、軸部61の延長上に貫通穴44が位置するようになる。そして、軸部61が貫通穴44を貫通するまでボルト60を軸方向(左方向)に移動させて、ネジ穴34に対してネジ部62を螺合させる。上述のように、頭部63が脚部31の右側の側面に当て付いた状態で、頭部63に対して所定の締め付けトルクを与えると、電動発電機16がエンジン10に対してボルト60を用いて締結固定される。
第1の取付部40における第1の切欠穴43と、第2の取付部50における第2の切欠穴53は、閉鎖断面の穴ではなく、周方向の一部が開かれた形状である。電動発電機16の取り付け時や取り外し時には、これらの切欠穴43、53の周方向の開口部分を通して、ボルト60の軸部61を取付穴TBに対して挿脱させることができる。そのため、エンジン10を収容するエンジンルーム内の狭い空間であっても、電動発電機16を着脱させやすくなる。特に、ボルト60を軸方向に完全に引き抜かずに、第1の切欠穴43及び第2の切欠穴53内に軸部61が位置する状態で電動発電機16を取り外したり、第1の切欠穴43及び第2の切欠穴53に対応する位置まで軸部61を挿入させた状態で電動発電機16を取り付けたりできるので、左右方向のスペースに制約がある場合に、作業性向上の効果が高い。
また、電動発電機16の取り付け時には、貫通穴33にボルト60の軸部61を挿通させておき、軸部61が第2の切欠穴53の最奥部(湾曲壁53c)に位置するまでスライドさせることで、エンジン10の取付部TAに対する電動発電機16の適切な組み付け位置を、容易に定めることができる。例えば、ボルト60が完全に引き抜かれた状態でエンジン10に電動発電機16を取り付けようとすると、貫通穴33及びネジ穴34が取付穴TBに一致するように位置合わせしながら、ボルト60を挿入する必要があり、作業性が悪い。これに対して、ボルト60を仮組みした状態で切欠穴43、53に沿って電動発電機16を取り付けると、上記のように、エンジン10に対する電動発電機16の位置決め作業を簡単にすることができる。
第1の切欠穴43と第2の切欠穴53はいずれも、斜め下方に向かって開口している。より詳しくは、下壁43aと下壁53aがそれぞれ、奥側の湾曲壁43c及び湾曲壁53cから離れて前方の開口部分に向かうにつれて、徐々に低くなる傾斜形状になっている。この構成により、第1の切欠穴43や第2の切欠穴53の内部に水が浸入した場合に、重力によって水が斜め下方の開口側に流れて排出され(水抜きされ)、第1の切欠穴43や第2の切欠穴53の内部には水が滞留しにくい。すると、取付穴TBに挿入した状態のボルト60の軸部61が水分に触れるおそれが低く、ボルト60に錆が発生しにくくなる。従って、切欠穴43、53によってエンジン10に対する電動発電機16の着脱作業性を向上させつつ、錆などによるボルト60の耐久性低下を防止することができる。
特に、ボルト60により固定されるエンジン補機が電動発電機16の場合、電動発電機16内の回転軸が回転するときに、当該回転による振動がボルト60に伝わる。そのため、ボルト60には継続的な振動に耐えられる高い強度が必要とされる。本実施の形態の取付構造は、ボルト60に錆などが生じにくく耐久性に優れるため、取り付けの対象が電動発電機16である場合に非常に高い効果が得られる。
下壁53aと上壁53bが略平行に延びているのに対し、上壁43bは、下壁43aとは平行でなく、水平方向に延びている。この第1の切欠穴43の形状は、鋳造などでシリンダブロック11を製造する際に、前後方向に移動する型によって形成可能である。図5や図7に示すように、シリンダブロック11の前面側の各部は、前方へ向けて突出する部分や、前方へ向けて開口する部分によって構成されており、前後方向に移動する型での製造が適している。そして、第1の切欠穴43についても、前後方向に移動する型で形成可能な形状にしたことにより、シリンダブロック11を製造するための型構造の複雑化を防ぎ、製造コストを抑えることができる。
また、取付部TAのすぐ下側にオイルギャラリ27が形成されており、切欠穴43、53を有する取付部TAに対して、オイルギャラリ27が補強材として機能する。従って、取付部TAの剛性が高くなり、電動発電機16を強固に支持することができる。特に、オイルギャラリ27は、取付部TAのうち、シリンダブロック11に形成した第1の切欠穴43の下側に位置しており、第1の取付部40に対する補強効果が高い。
以上説明したように、本実施形態の電動発電機16の取付構造によれば、斜め下方に向かって開口する第1の切欠穴43及び第2の切欠穴53を取付部TAに備えるという簡単な構成によって、エンジン10への電動発電機16の取付作業性と、締結用のボルト60の耐久性とを向上させることができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成や制御等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
上記実施形態では、第1の切欠穴43の上壁43bが水平方向に延びている。これとは異なり、上壁43bを斜め上向きに傾斜する形状にすることも可能である。少なくとも、下壁43aが斜め下向きであれば、上壁43bの向きに関わらず、第1の切欠穴43に入った水を排出する効果が得られる。そして、上壁43bが斜め上向きであっても、前後方向に移動する型によって第1の切欠穴43を形成可能であり、シリンダブロック11の製造コストを抑える効果が得られる。なお、鋳造用の型による生産性などを考慮しない場合には、第1の切欠穴43の上壁43bを斜め下向きの形状にすることも可能である。
上記実施形態では、シリンダブロック11に設けた第1の取付部40と、チェーンケース14に設けた第2の取付部50とによって、エンジン10側の取付部TAを構成している。しかし、エンジン本体における取付部の位置や、取付部を構成する部材は、変更してもよい。例えば、シリンダブロック11単独で取付部を構成してもよい。あるいは、シリンダヘッド12などに取付部を設けることも可能である。
上記実施形態では、エンジン10に取り付けるエンジン補機を、モータジェネレータである電動発電機16としているが、これ以外のエンジン補機の取り付けに適用することも可能である。一例として、発電専用のオルタネータなどの取り付けに適用してもよい。
以上説明したように、本発明によるエンジン補機の取付構造は、エンジン本体に対するエンジン補機の取付作業性と、締結用のボルトの耐久性に優れるという効果を有し、特に、取付部付近に水がかかりやすいレイアウトのエンジンに有用である。
10 :エンジン
11 :シリンダブロック(エンジン本体)
12 :シリンダヘッド(エンジン本体)
13 :シリンダヘッドカバー(エンジン本体)
14 :チェーンケース(エンジン本体)
15 :オイルパン(エンジン本体)
16 :電動発電機(エンジン補機)
20 :シリンダ
21 :クランク軸
27 :オイルギャラリ
31 :脚部
32 :脚部
33 :貫通穴
34 :ネジ穴
40 :第1の取付部
43 :第1の切欠穴
43a :下壁
43b :上壁
44 :貫通穴
50 :第2の取付部
53 :第2の切欠穴
53a :下壁
53b :上壁
60 :ボルト
61 :軸部
62 :ネジ部
63 :頭部
TA :取付部
TB :取付穴

Claims (2)

  1. 一対の脚部を有し、一方の前記脚部に設けた貫通穴と、他方の前記脚部に設けたネジ穴が同軸上に配置されるエンジン補機と、
    エンジン本体の側壁から突出して前記一対の脚部の間に位置する取付部と、
    前記取付部に設けられ、前記貫通穴と前記ネジ穴を連絡する取付穴と、
    前記取付穴の一部を構成し、前記貫通穴側の端部から軸方向の所定範囲で、周面の一部を切り欠いた切欠穴と、
    前記貫通穴と前記取付穴を貫通し、前記ネジ穴に締結されるボルトと、を有するエンジン補機の取付構造において、
    前記切欠穴は、斜め下方に向けて開口し、
    前記エンジン本体は、内部にシリンダを有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックの端部に取り付けられるチェーンケースとを有し、
    前記取付部は、前記シリンダブロックに設けられる第1の取付部と、前記チェーンケースに設けられる第2の取付部とで構成され、
    前記切欠穴は、前記第1の取付部に形成される第1の切欠穴と、前記第2の取付部に形成される第2の切欠穴とで構成され、
    前記第1の切欠穴は、下方に位置する下壁が前記開口に向けて斜め下方に延び、上方に位置する上壁が水平方向に延び、
    前記第2の切欠穴は、下方に位置する下壁と上方に位置する上壁がいずれも、前記開口に向けて斜め下方に延びることを特徴とするエンジン補機の取付構造。
  2. 前記第1の取付部は、前記第1の切欠穴に隣接して、前記ボルトが挿通される閉鎖断面の貫通穴を有し、
    前記第1の切欠穴は、前記第2の切欠穴よりも、前記ボルトに対するクリアランスが大きいことを特徴とする請求項に記載のエンジン補機の取付構造。
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