JP7275566B2 - 化粧シート - Google Patents

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Description

本発明は、化粧シートに関する。
近年、例えば、特許文献1から特許文献3に示すように、ポリ塩化ビニル製の化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが数多く提案されている。
しかし、これらの化粧シートは塩化ビニル樹脂を使用しないことで、焼却時における有毒ガス等の発生は抑制されるものの、例えば、一般的なポリプロピレンシートもしくは軟質ポリプロピレンシートを使用した場合には、表面の耐擦傷性(耐傷性)が悪くなる傾向がある。このため、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートは、耐傷性の点において、従来のポリ塩化ビニル化粧シートに比べて劣ることがある。
特許第3271022号公報 特許第3861472号公報 特許第3772634号公報
化粧シートの耐傷性を向上させるために、表面保護層に電離放射線硬化性樹脂を塗工・硬化させる方法が知られている。しかしながら、化粧シートにまったく傷がつかないわけではなく、高荷重条件下で耐傷性試験を実施すると化粧シートに傷がつくことがあるといった問題があった。
そこで、高荷重条件下での耐傷性を向上させるために、表面保護層をより硬く、より厚くすることが提案されているが、表面保護層を硬くしすぎると表面保護層が脆くなり、落下物等に対する耐衝撃性が悪化したり、耐候性が悪化したり、コストが掛かったりすることがあるといった問題もあった。
また、高荷重条件下での耐傷性を向上させるために、表面保護層に無機フィラーを加えることが提案されているが、表面保護層に無機フィラーを加えると表面保護層に添加された無機フィラーが表面保護層から大きく突出したり、表面保護層との界面に空隙がある場合、耐傷性試験の際に無機フィラーが破損したり、表面保護層から無機フィラーが欠落することによって、ツヤ変化を引き起こすことがあるといった問題もあった。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、高荷重条件下での耐傷性を向上させた化粧シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、化粧シートに特定のエロージョン率を有する表面保護層を形成することによって、前記課題を解決し得ることを見出した。
本発明の一態様に係る化粧シートは、原反、透明樹脂層、及び表面保護層をこの順に備えた化粧シートであって、前記表面保護層は複層から構成され、前記表面保護層のうち最表面に位置する表面保護層を第1の表面保護層とし、前記第1の表面保護層の下層に位置する表面保護層を第2の表面保護層としたとき、前記第1の表面保護層の、平均粒子径(D50)が1.2μmである多角アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eは、0.1μm/g以上0.4μm/g以下の範囲内であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートによれば、高荷重条件下であっても優れた耐傷性を有する化粧シートを提供することが可能とする。
本発明の化粧シートの実施形態の一例を示す断面図である。
以下に本発明の実施形態に係る化粧シートについて、図1に基づき詳細に説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(エロージョン率Eの測定)
まず、本実施形態において規定する「エロージョン率E」について説明する。
本実施形態におけるエロージョン率Eは、例えば、材料表面精密試験機(マイクロ・スラリージェット・エロージョン試験機、以下MSE試験機、株式会社パルメソ製/装置名ナノ・エム・エス・イー/型式N-MSE-A)を用いて測定される値である。また、エロージョン率Eの具体的な測定方法は、次の通りである。
平均粒子径D50=1.2μmの多角アルミナ粉末を水に分散させて、スラリーの総質量に対して多角アルミナ粉末を3質量%含むスラリーを調製する。化粧シートを台に固定し、その化粧シートと、上記スラリーを噴射するためのノズルとの投射距離を4mmに設定する。ノズルのノズル径は1mm×1mmとする。ノズルから多角アルミナ粉末を含んだスラリーを噴射し、台に固定された化粧シートを表面保護層から順次切削する。この時の噴射強度は、事前に同様の実験条件にて既存のSiウエハを切削し、スラリーの噴射量に対する削れた変位(即ち、スラリー1gを吹き付けた際に切削される深さ)から標準投射力Xを求め、その値に基づいて決定される。多角アルミナ粉末を用いた本実施形態では、既存のSiウエハに対して6.360μm/g削れたときの投射力を標準投射力Xとした。
本実施形態において、多角アルミナ粉末の場合は、X=1/100投射力(既存のSiウエハに対して0.064μm/g削れたときの投射力)とした。
切削された部分を水で洗浄した後に、切削の深さ、即ちエロージョン深さZを測定する。エロージョン深さZは、例えば、触針式表面形状測定器(株式会社小坂研究所製/型式PU-EU1/触針子先端R=2μm/荷重100μN/計測倍率10,000/測長4mm/計測速度0.2mm/sec)を用いて測定する。本実施形態では、上述の投射力より算出した投射粒子量X’[g]とエロージョン深さZ[μm]とを用いて、エロージョン率E[μm/g]を算出した。
なお、エロージョン率Eは、エロージョン率Eの測定を実施する際、深さ方向に存在する下層のエロージョン率Eの大小に影響を受けないことがわかっている。よって、エロージョン率Eを測定する際には、最表面に位置する第1の表面保護層から順にMSE試験を実施した。
(化粧シートの構成)
以下に、本実施形態の化粧シートの各構成について説明する。なお、本実施形態では、表面保護層が2層の場合を想定して説明する。
図1に示す化粧シートは、図面上部側から順に、表面保護層(第1の表面保護層)4b、表面保護層(第2の表面保護層)4a、透明樹脂層1、接着性樹脂層8、接着剤層6(感熱接着剤層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、絵柄層2、原反層7、プライマー層5を備えている。より詳しくは、本実施形態の化粧シートは、透明樹脂層1の一方の面に、絵柄層2及び隠蔽層3を設け、透明樹脂層1の他方の面に、表面保護層4を設けた構成の化粧シートである。
なお、意匠性を向上させるために透明樹脂層1の表面保護層4側の面にエンボス模様1aを適宜設けてもよい。
また、化粧シートの総厚みは、80μm以上250μm以下の範囲内であってもよい。
また、本実施形態の化粧シートは、塩化ビニル樹脂を含有していないものが好ましい。非塩化ビニル系樹脂を用いた化粧シートとすることにより、焼却時における有毒ガス等の発生の心配がなくなる。
以下、本実施形態の化粧シートを構成する各層の詳細について説明する。
<原反層>
原反層(原反)7は、化粧シートが意匠性、耐傷性及び耐後加工性を備えたものである場合には、例えば、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙などの紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンなどのゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属箔などから適宜選択して用いてもよい。また、原反層7は、透明樹脂層1と同一の樹脂組成物からなるシートであってもかまわない。上記のなかでもポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィン系の材料が望ましい。
原反層7に含まれるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。
原反層7として、ポリオレフィン系材料のような表面が不活性な基材を用いる場合には、原反層7の表裏に、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。さらには、原反層7と絵柄層2との間に密着を確保させるためにプライマー層(図示せず)を設けてもよい。
化粧シートに隠蔽性を付与したい場合には、原反層7に隠蔽性の着色シートを使用してもよいし、原反層7の上層であって絵柄層2の下層に隠蔽層3を設けてもよい。原反層7として着色シートを使用する場合は、原反層7を構成する樹脂材料に着色剤を添加して着色することができる。着色剤としては、例えば、無機顔料(酸化チタンやカーボンブラック等)や有機顔料(フタロシアニンブルー等)の他、染料も使用することができる。本実施形態の着色剤は、公知または市販の着色剤から1種類または2種類以上を選択して用いることができ、所望の隠蔽性と意匠性とが得られるように添加量も調整可能である。
原反層7には、必要に応じて、例えば、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤、つや消し剤など各種添加剤を加えてもよい。
原反層7の厚みとしては、印刷作業性、コストを考慮して30μm以上150μm以下の範囲内が好ましい。
<絵柄層・隠蔽層>
絵柄層2、隠蔽層3を設ける方法としては、原反層7または透明樹脂層1に、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インキジェット印刷などを行う方法がある。また、特に隠蔽層3を施す場合は、例えば、コンマコーター、ナイフコーター、リップコーター、金属蒸着あるいはスパッタ法等を用いてもよい。なお、隠蔽層3は、一般的には、原反層7の上層であって絵柄層2の下層に設けられる。
絵柄層2の形成にインキを使用する場合は、当該インキに含まれるバインダーは、例えば、硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定すればよい。これらは水性、溶剤系、エマルションタイプのいずれでも問題なく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでも任意に選定可能である。
さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させることも可能である。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いてイソシアネートで硬化させる方法である。
上記バインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤が添加されていてもよい。特によく用いられる顔料には、例えば、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等がある。また、インキの塗布とは別に、各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
隠蔽層3に使用される材料も基本的には絵柄層2と同じ材料でよい。隠蔽層3は、その目的として隠蔽性を持たせる必要があるために、顔料として、例えば、不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また、隠蔽性を向上させるために、例えば、金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。塗布厚み、即ち隠蔽層3の厚みは、2μmに満たない場合には隠蔽性を付与しにくく、10μmを超える場合には樹脂層の凝集力が弱くなる。このため、隠蔽層3の厚みは、2μm以上10μm以下の範囲内が妥当である。
<接着剤層>
接着剤層6には、任意の材料選定が可能であり、接着剤層6を用いた接着方法としては、例えば、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート等がある。接着剤層6に含まれる接着剤は、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の材料から選定できる。接着剤層6に含まれる接着剤は、通常はその凝集力から2液硬化タイプのものが望ましく、特にイソシアネートを用いたポリオールとの反応で得られるウレタン系の材料を用いることが望ましい。
<接着性樹脂層>
接着剤層6と透明樹脂層1との間には、接着性樹脂層8を設けてもよい。接着性樹脂層8は、特に押出ラミネート方法においてさらなるラミネート強度を求める場合に設けることがある。なお、透明樹脂層1と接着性樹脂層8とは、共押出法でラミネートされて成形される場合が一般的である。
接着性樹脂層8に含まれる樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したものが望ましく、その厚みは接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。接着性樹脂層8の厚みが2μmに満たない場合には、十分な接着力が得にくい。また、接着性樹脂層8の厚みは、その厚みが厚すぎると、折角、高結晶性の透明樹脂層1で表面硬度を向上させたにも関わらず、接着性樹脂層8自体の柔らかさの影響を受けるため、20μm以下が望ましい。
<透明樹脂層>
透明樹脂層1は接着性樹脂層8上に形成されており、その厚みは40μm以上170μm以下の範囲内である。透明樹脂層の厚みが40μmに満たない場合には、耐候性や耐傷性が低下することがある。透明樹脂層の厚みが170μmを超える場合には、製造コストが高くなり、また可撓性が低下することがある。
透明樹脂層1は、製膜によって成形されたシートであってもよいし、既に成形したシートを積層したものであってもよい。透明樹脂層1は、例えば、高結晶性ポリプロピレン樹脂からなっている。
また、透明樹脂層1の片面または両面は、必要に応じて、例えばコロナ処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等で活性化してもよい。また、隠蔽層3の基材(上記化粧シートが貼り合わせられる木質ボード類、無機系ボード類、金属板等の基材)に対する接着性に問題があれば、重ねてプライマー層5を適宜設けてもかまわない。
透明樹脂層1を製膜によるシートで成形する場合には、例えば、押出機を用いる方法を用いるのが一般的である。
透明樹脂層1を積層して成形する場合は、特に規制はなく、例えば、熱圧を応用した方法、押出ラミネート法及びドライラミネート法等を用いるのが一般的である。また、エンボス模様1aを施す場合には、一旦各種方法でラミネートしたシートに、例えば、後から熱圧によりエンボスを入れる方法や、冷却ロールに凹凸模様を設け、その冷却ロールを用いて押出ラミネートと同時にエンボスを施す方法がある。より詳しくは、エンボス模様1aは、透明樹脂層1である、例えば高結晶性ポリプロピレンシートに直接付与され、その方法は製膜された前記シートに熱及び圧力により凹凸模様を有するエンボス版を用いてエンボス模様を付与する方法や、押出機を用いて製膜する際に凹凸模様を有する冷却ロールを用いて冷却と同時にエンボスを設ける方法などがある。ここではエンボス部としてのエンボス模様1aにインキを埋め込み、さらに意匠性を向上させることも可能である。
なお、エンボス模様1aは必要であれば設ければよく、不要な場合は設けなくてもよい。
透明樹脂層1には、必要に応じて、例えば、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、そして、本実施形態の特徴を損なわない範囲で、例えば、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種添加剤を添加することもできる。
熱安定剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系等を、任意の組み合わせで添加するのが一般的である。特に、本用途に用いる場合は耐候性を考慮する必要があり、その場合には透明樹脂層1に紫外線吸収剤と光安定剤と添加してもよく、添加量はそれぞれ透明樹脂層1を100重量%として、0.1重量%以上2.0重量%以下の範囲内が適量である。
透明樹脂層1は、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化処理された結晶核剤(ナノサイズの造核剤)を含んでもよい。
超臨界逆相蒸発法による具体的なベシクル化処理は、超臨界二酸化炭素と分散剤としてのリン脂質と内包物質としての添加剤の混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって超臨界二酸化炭素と水相のエマルションが生成する。その後、減圧すると二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が添加剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセルが生成する。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、添加剤粒子表面で分散剤が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。なお、多重膜のカプセルとしたい場合には、リン脂質、添加剤、水相の混合流体中に超臨界二酸化炭素を注入することにより容易に作製することができる。ベシクルを調製する際に用いるリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセルロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質などが挙げられる。当該ベシクルは、リン脂質からなる外膜を具備することにより樹脂材料との優れた相溶性を実現することができる。
透明樹脂層1が上述したナノサイズの造核剤を含んだ樹脂層からなる場合には、結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分として90重量%以上100重量%以下の範囲内で含み、ナノサイズの添加剤としての造核剤を含むことが重要である。より好ましくは、当該ナノサイズの添加剤をベシクルの状態(造核剤ベシクル)で含有させることである。この場合には、造核剤ベシクルは、平均粒子径が可視光の波長の1/2以下とされていることが好ましい。具体的には、可視光の波長領域が400~750nmであるので、ナノサイズの造核剤の平均粒子径は375nm以下であることが好ましい。このような透明樹脂層1においては、製膜時の冷却条件を調整することによって、ヘイズ値が15%以下、より好ましくは10%以下、引張弾性率が800MPa以上2,000MPa以下の範囲内、引張破断伸度が200%以上とされていることが重要である。
また、結晶性ポリプロピレン樹脂は、ペンタッド分率の異なるアイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン及びこれらの混合物から適宜選択して設計することができる。より好ましくは、結晶性ポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)95%以上、より好ましくは96%以上のプロピレンの単独重合体、すなわちホモポリマーである高結晶性ホモポリプロピレン樹脂とされることが重要である。なお、透明樹脂層1を構成する結晶性ポリプロピレン以外の樹脂は、結晶性ポリプロピレンの物性に著しく悪影響を与えないならば、その配合の目的によって適宜選定が可能である。但し、V溝曲げ加工適性を維持するためには透明樹脂層1を構成する結晶性ポリプロピレン樹脂との相溶性がよいものが好ましい。
このような、透明樹脂層1は、その厚さが20μm以上250μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、40μm以上170μm以下の範囲内である。
ナノサイズの造核剤は、その粒子径がナノサイズと極めて小さいことにより、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の3乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、ポリプロピレン樹脂に添加して1つの造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、当該造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長していた結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長がとまるので、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒子径を極めて小さくすることができる。
このため、透明樹脂層1に対してナノサイズの造核剤を含有させることにより、従来の造核剤と比較して、樹脂中により微細かつ大量の結晶核を発生させて、その結果、結晶部における結晶核同士の距離を短くして、個々の結晶の成長を抑制し、球晶の平均粒子径を極めて小さくさせることに成功した。そして、このような結晶性ポリプロピレン樹脂においては、ヘイズ値が15%以下という極めて高い透明性を実現している。
さらに、当該ナノサイズの造核剤をベシクルの状態、すなわち造核剤ベシクルとして含有させることにより、造核剤同士が凝集することを防いで樹脂材料に対する高い分散性を実現している。樹脂組成物中においては、当該造核剤ベシクルの外膜が部分的に崩壊して造核剤が露出した状態となり、樹脂材料の結晶化過程において、ナノサイズの造核剤粒子を結晶核とする球晶が形成される。
この時、特に、超臨界逆相蒸発法によって得られた造核剤ベシクルは極めて小さいサイズとされている。このため、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における、球晶の平均粒子径を極めて小さくすることができるとともに、結晶部の結晶化度を飛躍的に向上させることができる。
本実施形態の化粧シートにおいては、透明樹脂層1に対してナノサイズの造核剤、より好ましくは、造核剤ベシクルを含有させていることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶部における球晶の平均粒子径を極めて小径として、優れた耐傷性を実現している。特に、透明樹脂層1に造核剤ベシクルを含有させることにより、結晶性ポリプロピレン樹脂中に造核剤を均一に分散させて、結晶性ポリプロピレンの結晶化度をコントロールして透明樹脂層1の硬度及び靭性が最適となるように調整することができる。また、透明樹脂層1に造核剤ベシクルを含有させることにより、引張弾性率が800MPa以上2000MPa以下の範囲内、かつ、引張破断伸度が200%以上の優れた耐傷性及び耐後加工性を実現することができる。
以下、簡単に上記説明において用いた用語の説明をする。
造核剤とは、樹脂の結晶化時において、結晶核の生成を促進させる、もしくは、造核剤自体を結晶核とするために添加されるものである。造核剤には、添加時に基材の樹脂に溶融し再度析出して結晶核を生成する溶融型もしくは基材に添加した核剤が溶融することなくそのままの粒径で結晶核となる非溶融型の造核剤がある。ポリプロピレン樹脂の造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、本実施形態においては、ナノ化処理との効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
ヘイズ値とは、物体の一方の面から入射した光が他方の面に出射する場合に、他方の面から出射した光線のすべての積分値(全光線透過率)から他方の面から出射した光線のうち直線成分のみの積分値(直線透過率)を指し引いた値(拡散透過率)を、全光線透過率で除した値を百分率で表した値である。そのため、ヘイズ値が小さいほど透明性が高いことを表す。このヘイズ値は、結晶部における結晶化度や球晶サイズなどの物体の内部の状態によって決まる内部ヘイズと、入射面及び出射面の凹凸の有無などの物体の表面の状態によって決まる外部ヘイズとによって決定付けされる。なお、本実施形態においては、単にヘイズ値と称する場合には、内部ヘイズ及び外部ヘイズとによって決定される値を意味する。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量数13の炭素C(核種)を用いた13C-NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、透明樹脂層1を構成する樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックペンタッド分率とは、13C-NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。そして、このようなアイソタクチックペンタッド分率は、主に表面の耐傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはアイソタクチックペンタッド分率が高いほどシートの結晶化度が高くなるため、耐傷性が向上する。
<表面保護層>
本実施形態の表面保護層4は、表面保護層4aと表面保護層4bとを備えている。表面保護層4bが、特定のエロージョン率Eを有することによって、優れた表面の耐傷性を有する化粧シートを提供することが可能となる。
また、本実施形態の表面保護層4bが、さらに特定の塗膜厚さと静摩擦係数とを有し、疎水化処理及び表面保護層4bとの結合を強化した無機フィラーを含むことによって、さらに優れた表面の耐傷性を有する化粧シートを提供することが可能となる。
以下、表面保護層4について、詳しく説明する。
表面保護層4は、複層から構成されている。表面保護層4のうち最表面に位置する表面保護層を「表面保護層4b」とし、表面保護層4bの下層に位置する表面保護層を「表面保護層4a」としたとき、表面保護層4bの、平均粒子径(D50)が1.2μmである多角アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eは、0.1μm/g以上0.4μm/g以下の範囲内である。表面保護層4bのエロージョン率Eが0.1μm/gに満たない場合には、エロージョン率Eが小さく、表面保護層4aとの密着性が低下するおそれがある。そのため、耐衝撃性が低下することがある。表面保護層4bのエロージョン率Eが0.4μm/gを超える場合には、耐傷性に劣る傾向がある。なお、表面保護層4aと表面保護層4bとは、互いに異なる樹脂で形成されていてもよい。
表面保護層4bの厚みは、2μm以上7μm以下の範囲内であってもよい。表面保護層4bの厚みが2μmに満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下することがある。また、耐候性や耐傷性が低下し、バラつきが大きくなることがある。表面保護層4bの厚みが7μmを超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることがある。また、可撓性が低下することがある。
表面保護層4aの厚みは、2μm以上14μm以下の範囲内であってもよい。表面保護層4aの厚みが2μmに満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下することがある。また、耐候性や耐傷性が低下し、バラつきが大きくなることがある。表面保護層4aの厚みが14μmを超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることがある。また、可撓性が低下することがある。
表面保護層4全体での厚みは、4μm以上21μm以下の範囲内であってもよい。表面保護層4全体の厚みが4μmに満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下することがある。また、耐候性や耐傷性が低下し、バラつきが大きくなることがある。表面保護層4全体の厚みが21μmを超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることがある。また、可撓性が低下することがある。
本実施形態の化粧シート、即ち表面保護層4bの静摩擦係数μs(JISK7 125に準拠)は、0.25以上0.5以下の範囲内であってもよい。表面保護層4bの静摩擦係数μsが0.25に満たない場合には、化粧シートの最表層である表面保護層4bの表面がよく滑るため、高荷重条件下においても傷がつきにくいが、床材として用いる際に人が転倒するリスクが高まるという点で適切でないことがある。表面保護層4bの静摩擦係数μsが0.5を超える場合には、シート表面に接触する物体とシート表面との摩擦が大きくなるため、高荷重条件下において表面に傷がつきやすい。
表面保護層4を設ける方法は、隠蔽層3や絵柄層2を設ける方法と同様で何ら規定されるものではない。
表面保護層4に使用される材料も特に規定されず、例えば、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッソ系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルション、溶剤系のいずれでも可能で、且つ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでもよい。それらの中でもイソシアネート反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。
イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体や各種プレポリマーなどの硬化剤から適宜選択して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤を使用することが好ましい。
化粧シートの表面の硬度をさらに向上させるためには、表面保護層4として紫外線や電子線照射で硬化する樹脂、即ち電離放射線硬化性樹脂を使用することが望ましい。表面保護層4、特に表面保護層4bを構成する樹脂100質量部のうち、電離放射線硬化性樹脂の含有量は、65質量部以上100質量部以下の範囲内であってもよい。電離放射線硬化性樹脂の含有量が65質量部に満たない場合には、エロージョン率Eが上昇し、耐傷性が低下することがある。
なお、電離放射線硬化性樹脂以外の樹脂、例えば、熱硬化性樹脂のほうが、電離放射線硬化性樹脂に比べてエロージョン率Eは大きい。
さらに耐候性を向上させるために、表面保護層4、特に表面保護層4bに紫外線吸収剤及び光安定剤を適宜添加してもよい。また、各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行える。
また、光硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、アクリルアクリレート系などから適宜選択して用いることができるが、特に、耐候(光)性が良好なウレタンアクリレート系及びアクリルアクリレート系のものを用いることが好ましい。光硬化性樹脂の硬化方法としては、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化することが作業性の観点から好ましい。
熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂との混合物については、例えば、熱硬化性樹脂としてのアクリルポリオールとイソシアネートとを反応し得られるウレタン系樹脂と、光硬化性樹脂としてのウレタンアクリレート系樹脂とを混合して用いることが好ましい。熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂との混合物を用いることによって、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制及び無機微粒子(無機フィラー)との密着性を向上させることができる。
電子線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては180nm~400nmが好ましい。
表面の耐傷性の向上、あるいは意匠性付与に伴う艶調整のため、表面保護層4に無機フィラーを加えることが望ましい。
無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、シリカ、ベーマイト、酸化鉄、酸化マグネシウム、アルミノシリケート、ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロポレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、ガラス繊維等を添加してもよい。無機フィラーとして、平均粒子径が1μm以上30μm以下の範囲内の無機微粒子を用いることができ、特に1μm以上10μm以下の範囲内の無機微粒子が好適である。無機フィラーの平均粒子径が1μmに満たない場合には、艶消し効果を得にくい傾向がある。これは、艶消し効果を発揮するためには、無機フィラーが添加された膜(層)の厚みと同程度、もしくは大きな粒子径であることが理想的であるためである。無機フィラーの平均粒子径が30μm、より確実には10μmに満たない場合には、高荷重条件下で無機フィラーが表面保護層4から脱落しやすく、艶が変化し表面が悪化して見える傾向がある。
例えばグラビア印刷を選択した場合、一層の塗布厚みは通常2μm~12μmが妥当である。この場合は、上述のように、一度に塗布可能な厚み以下から同程度の平均粒子径を有する無機フィラーを選択するのが好ましい。しかしながら、表面保護層4が複層からなる場合、下層に位置する表面保護層4aの膜厚よりも大きな平均粒子径を有する無機フィラーを加えることも可能である。
無機フィラーの含有量は、表面保護層4bを構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下の範囲内であってもよい。無機フィラーの含有量が1質量部に満たない場合には、耐傷性が低下することがある。無機フィラーの含有量が20質量部を超える場合には、表面の艶が非常に低下するため、意匠を損なう可能性がある。また、耐候性や耐汚染性が低下することがある。
無機フィラーには、表面処理を施すことが望ましい。無機フィラーに表面処理を施すことで、表面保護層との結合強化を図ることができる。なお、表面保護層4のような下層に位置する表面保護層4には表面が未処理の無機フィラーを添加してもよい。
また、表面処理を施す際は、無機フィラー表面の疎水化及び表面保護層4との反応性を付与する官能基を有することが望ましい。
無機フィラーの表面処理を実施する際は、手法は特に限定せず、公知の方法を選ぶことができる。
無機フィラーの表面処理に用いられる表面処理剤としては、界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、シリコーン、ワックス、及び変性樹脂のうち少なくとも1つを使用することができる。本実施形態の表面処理剤としては、例えば、シリコーンオイル系、アルキルシラザン系、トリメチルシリル化剤、アルコキシシラン系、シロキサンや知らんカップリング剤の他、チタンカップリング剤やリン酸系・脂肪酸系界面活性剤などを選ぶことができ、1種類でも複数種の掛け合わせたものであっても構わない。
シリコーンオイル系処理剤としては、例えば、ストレートシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなど)や変性シリコーンオイル(アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性変性、異種官能基変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸含有変性、フッ素変性シリコーンオイルなど)を選択することができる。
アルキルシラザン系処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルシラザンなどを選択することができる。
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトシキシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシランなどのクロロシラン化合物を選択することができる。
トリメチルシリル化剤としては、シランカップリング剤中のアルコキシシラン化合物を選択することができる。
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネーと、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2ジアリルオキシメチルー1ブチル)ビス(ジートリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、などを選択することができる。
アルミネート系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどを選択できる。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性界面活性剤などを選択することができる。
上述した表面処理剤を、上述した超臨界逆相蒸発法によってベシクル化処理して分散させた後、表面処理に用いることによって、表面処理時の反応率が向上する。
超臨界逆相蒸発法を用いて処理した表面処理剤を用いて、公知の方法で表面処理を実施することによって、優れた表面処理フィラーを得ることができる。
上述のように、本実施形態の化粧シートの特徴(発明特定事項)の一つは、「無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、超臨界逆相蒸発法によりベシクルに表面処理剤を内包させた表面処理剤内包ベシクルである」ことにある。そして、表面処理剤をベシクルに内包させた状態で無機フィラーと反応させることで、表面処理剤と無機フィラーとの反応性が飛躍的に向上するという効果が奏するが、その特徴を、完成された化粧シートの状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。ベシクルの状態で添加された表面処理剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、高い反応確率で無機フィラーと反応する。しかしながら、表面処理剤をベシクルの状態で無機フィラーと反応させて表面保護層を作製した後の、化粧シートの作製工程においては、通常、積層体への圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施されるが、このような処理によって、表面処理剤を内包するベシクルの外膜が破砕や化学反応して、表面処理剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高く、その外膜が破砕や化学反応している状態が化粧シートの処理工程によってばらつくためである。そして、この表面処理剤が外膜で包含されていないなどの状況は、物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか表面処理剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。このように、本願発明は、従来に比して、表面処理剤と無機フィラーとの反応性が飛躍的に向上している点で相違があるものの、表面処理剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シートの状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
無機フィラーの表面処理の方法は、特に限定されない。表面処理の方法としては、一般的に用いられるのは乾式法、湿式法、またはインテグラルブレンド法のいずれかを選択することができる。乾式法では、表面が未処理の無機フィラーに水もしくは有機溶剤に希釈した表面処理剤を噴霧等によって添加し、その後攪拌・養生等を行い、反応を進行させて表面処理フィラーを得る。
さらに、表面保護層4側の透明樹脂層1の面にエンボス模様1aを施した場合には、このエンボス模様1aの中に、表面保護層4bを形成するインキをワイピング加工により埋め込んで意匠性を向上させることも可能である。
耐候性の面からは、基材としての透明樹脂層1を守るために、上記のように表面保護層4及び透明樹脂層1にそれぞれ耐候性を付与する方法もある。また、それだけではなく、絵柄層2を守るために接着性樹脂層8、接着剤層6、絵柄層2自体にそれぞれ紫外線吸収剤及び光安定剤を添加する方法もある。
光開始剤の添加量は特に限定されず、主剤樹脂100質量部に対し、0.1~15質量部程度が好ましい。
光開始剤の種類は特に限定されない。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光開始剤として、例えば、アセトフェノン系やベンゾフェノン系、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピルーN,Nジメチルアミノベンゾエートなどの少なくとも1種類を選択することができる。好ましくは光源や生産環境に合わせて、複数種を組み合わせて設計することが望ましい。
また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光開始剤として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩などの少なくとも1種が選択できる。
<プライマー層>
プライマー層5に使用される材料は、基本的には絵柄層2や隠蔽層3と同じ材料でよい。また、化粧シートの裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、プライマー層5に例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。塗布厚み、即ちプライマー層5の厚みは、基材である原反層7との密着を確保することが目的であるので、0.1μm以上10.0μm以下の範囲内が妥当であり、より好ましくは0.1μm以上3.0μm以下の範囲内である。
プライマー層5は、原反層7がオレフィン系材料のように表面が不活性な場合には必要であるが、表面が活性な基材の場合は特に必要ではない。
[実施例]
以下に、本発明の化粧シートの具体的な実施例について検討する。
<共通の材料>
実施例1~10、比較例1~2においては、表面保護層4b以外は同様の材料を使用した。
<透明樹脂層の作製>
図1の構成における化粧シートを作製した。具体的には、アイソタクチックペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2,000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2,000PPMと、ナノ造核剤1,000PPMとを添加した樹脂を、溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。なお、押出製膜時の冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は8.5%となった。
<超臨界逆相蒸発法を用いた造核剤のナノ化処理>
本実施例における超臨界逆相蒸発法を用いた造核剤のナノ化処理方法について、以下説明する。
まず、メタノール100重量部、リン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-11、ADEKA社製)82重量部、ホスファチジルコリン5重量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした。その後、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100重量部注入した。容器内の温度及び圧力を保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによって造核剤が内包されたリン脂質からなる外膜を具備する造核剤ベシクルを得た。
<絵柄層・隠蔽層の作製>
得られた透明樹脂シートを透明樹脂層1とし、その透明樹脂層1の一方の面に、2液硬化型ウレタンインキ(V351:東洋インキ製造(株)製)にて柄印刷を行い、絵柄層2を形成した後、絵柄層2に重ねて隠蔽性のある2液硬化型ウレタンインキ(V351:東洋インキ製造(株)製)を塗布量6g/mにて塗布して隠蔽層3を形成した。
<プライマー層の作製>
また、この隠蔽層3に重ねて、プライマーコートとして2液硬化型ウレタンインキ(PET-E、レジウサー:大日精化(株)製)を塗布量1g/mにて塗布してプライマー層5を形成した。
<エンボス模様の作製>
次に、透明樹脂層1の他方の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様1aを施した。
<表面保護層4aの作製>
エンボス模様1a面上に2液硬化型ウレタントップコート(TD365URワニス、Z202硬化剤:ともに東洋インキ(株)製)を塗布量10g/mにて塗工した。
<表面処理フィラーの作製>
各実施例、及び各比較例で使用した表面処理無機微粒子NVC-X1は、無機微粒子(L-121:AGCエスアイテック(株)製)を、末端にOH基を有する表面処理剤を用いて表面処理することで得た。
表面処理は乾式で実施した。具体的には、噴霧が可能なノズル口を付けたヘンシェルミキサーに対し、L-121(無機微粒子)を100重量部投入し、攪拌しながら表面処理剤を10重量部噴霧して、無機微粒子と表面処理剤とを反応させた。
<表面保護層4a、4bの作製>
表面保護層4bは、トップコートA剤~D剤を用いて構成した。
<表面保護層4bに用いるトップコート剤>
トップコート剤をトップコートA剤、B剤、C剤、D剤とする。
トップコートA剤、B剤は、主剤がそれぞれ電離放射線硬化型の樹脂W、Xで構成されており、トップコートC剤、D剤は、主剤がそれぞれ熱硬化型の樹脂Y、Zで構成されている。
主剤Wは、3~15の官能基を有する多官能ウレタンアクリレートオリゴマーであり、主剤Xは、2~9の官能基を有する多官能ウレタンアクリレートオリゴマーである。
主剤Yは、ガラス転移温度が約100℃、重量平均分子量Mwが約50,000、水酸基価が15であるアクリルポリオールであり、主剤Zは、ガラス転移温度が約45℃、重量平均分子量Mwが約150,000、水酸基価が15であるアクリルポリオールである。
トップコートA剤、B剤、C剤、D剤では、主剤W、X、Y、Zのそれぞれ100部に対し、紫外線吸収剤としてTinuvin479(BASF(株)製)を5部、光安定剤としてTinuvin123(BASF(株)製)を3部、希釈溶剤として酢酸エチルを50部、更にトップコートC剤およびD剤を用いる際は、硬化剤としてデュラネートTAP-100(旭化成(株)製)を更に5部加え、配合した。
<表面保護層4aに用いるトップコートE剤>
表面保護層4aに用いるトップコート剤をトップコートE剤とする。
トップコートE剤は、主剤を熱硬化型の樹脂Nで構成されている。
主剤Nは、ガラス転移温度が約100℃、重量平均分子量Mwが約40,000、水酸基価が12であるアクリルポリオールである。
トップコートE剤では、主剤N100部に対し、紫外線吸収剤としてTinuvin479(BASF(株)製)を5部、光安定剤としてTinuvin123(BASF(株)製)を3部、希釈溶剤として酢酸エチルを50部、光沢調整剤として、無機フィラーL-121(AGCエスアイテック(株)製)を15部、硬化剤としてデュラネートTAP-100(旭化成(株)製)を5部、配合して調整した。
<実施例1>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤を50:50で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を8部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、実施例1の表面保護層4bを形成した。
<実施例2>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤とC剤を40:40:20で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を8部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、実施例2の表面保護層4bを形成した。
<比較例1>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤とD剤を40:40:20で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を8部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、比較例1の表面保護層4bを形成した。
<比較例2>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤とC剤を30:30:40で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を8部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、比較例2の表面保護層4bを形成した。
<実施例3>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤を25:75で配合し、無機微粒子は加えなかった塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、比較例2の表面保護層4bを形成した。こうして、実施例3の表面保護層4bを形成した。
<実施例4>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤を25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を10部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、実施例4の表面保護層4bを形成した。
<実施例5>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤を25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径8μmの無機微粒子NVC-X1を10部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、実施例5の表面保護層4bを形成した。
<実施例6>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤を25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径17μmの無機微粒子NVC-X1を10部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、実施例6の表面保護層4bを形成した。
<実施例7>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤を25:75で配合し、表面処理を施していない平均粒子径5μmの無機微粒子L―121を10部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、実施例7の表面保護層4bを形成した。
<実施例8>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤を25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を5部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、実施例8の表面保護層4bを形成した。
<実施例9>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤を25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を20部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、実施例9の表面保護層4bを形成した。
<実施例10>
表面保護層4aの面上に、電離放射線硬化型トップコートA剤とB剤を25:75で配合し、表面処理を施した平均粒子径5μmの無機微粒子NVC-X1を35部加えた塗工液を、塗布量5g/mにて塗工した。こうして、実施例10の表面保護層4bを形成した。
実施例1~10及び比較例1~2で得られた各々化粧シートのエロージョン率Eの測定方法について、以下説明する。
平均粒子径D50=1.2μmの多角アルミナ粉末を水に分散させて、スラリーの総質量に対して多角アルミナ粉末を3質量%含むスラリーを調製した。化粧シートを台に固定し、その化粧シートと、上記スラリーを噴射するためのノズルの投射距離を4mmに設定した。ノズルのノズル径は1mm×1mmとした。ノズルから多角アルミナ粉末を含んだスラリーを噴射し、台に固定された化粧シートを表面保護層から順次切削した。この時の噴射強度は、事前に同様の実験条件にて既存のSiウエハを切削し、スラリーの噴射量に対する削れた変位(即ち、スラリー1gを吹き付けた際に切削される深さ)から標準投射力Xを求め、その値に基づいて決定した。多角アルミナ粉末を用いた本実施例では、既存のSiウエハに対して6.360μm/g削れたときの投射力を標準投射力Xとした。
本実施例において、多角アルミナ粉末の場合は、X=1/100投射力(既存のSiウエハに対して0.064μm/g削れたときの投射力)とした。
切削された部分を水で洗浄した後に、切削の深さ、即ちエロージョン深さZを測定した。
エロージョン深さZは、触針式表面形状測定器(株式会社小坂研究所製/型式PU-EU1/触針子先端R=2μm/荷重100μN/計測倍率10,000/測長4mm/計測速度0.2mm/sec)で測定された値である。より詳しくは、まず、計測長の中で摩耗していない両端基準エリアA、Bを用いて傾き補正を実施した。次に、基準となる回帰直線から摩耗痕中心部C(50μm幅の平均値)までの段差を測定した。次に、0g投射での段差データと、各投射量での段差データとの差分をとり、エロージョン深さZを取得した。取得した投射量-エロージョン深さZの各データから、エロージョン進行グラフおよびエロージョン率分布グラフを作成した。こうして、エロージョン深さZを特定した。
本実施例では、上記エロージョン処理と、上記形状測定器による形状測定を設定回数(N回)繰り返して実施し、N回分の形状計測データを取得した。
また、本実施例では、上述の投射力より算出した投射粒子量X’[g]とエロージョン深さZ[μm]とを用いて、エロージョン率E[μm/g]を算出した。
また、実施例1~10及び比較例1~2で得られた各々化粧シートを、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、コインスクラッチ試験・ホフマンスクラッチ試験・スチールウール磨耗試験にて表面硬度を判定した。また、実施例1~10及び比較例1~2で得られた各々化粧シート表面の白化の程度を判定した。その評価結果を下記表1~表4に示した。
以下に、各評価試験の試験方法を簡単に説明する。
<ホフマンスクラッチ試験>
ホフマンスクラッチ試験は、ホフマンスクラッチハードネステスター(BYK-Gardner社製)を用いて、荷重200g~2000gについて、200g毎・試験長5cm、木質基材に貼り合せた各化粧シートの表面を一定の速度で引っ掻き、化粧シートの表面の傷つきが発生した荷重を示した。
◎:ホフマンスクラッチ1600g以上
〇:ホフマンスクラッチ1200g
△:ホフマンスクラッチ800g以上
×:ホフマンスクラッチ600g未満
なお、本ホフマンスクラッチ試験において、「◎」、「○」、「△」を合格とした。
<コインスクラッチ試験>
コインスクラッチ試験は、100円または10円硬貨を用い、化粧シートに対してコインの角度を45±1°に固定して、当該コインに1kg~5kg(1~4kgは10円硬貨、5kgは100円硬貨)の荷重を付加した状態で5cmスライドさせて化粧シートに3mm以上の傷が形成されるか否かの判定を行い、引っ掻き傷が形成された荷重を化粧シートの表面硬度として示す。
◎:コインスクラッチ3kg以上
〇:コインスクラッチ2kg
△:コインスクラッチ1kg
×:コインスクラッチ1kg未満
なお、本コインスクラッチ試験において、「◎」、「○」、「△」を合格とした。
<スチールウールラビング試験>
スチールウールラビング試験は、木質基材に貼り合せた各化粧シートの表面に対し、スチールウールを当接させた状態で治具を用いて固定し、当該治具に500g/cmの荷重をかけたまま一定の速度で、距離50mm、50往復の条件にて擦らせて、化粧シートの表面の傷つきの有無を目視にて判定した。スチールウールは、ボンスター#0(日本スチールウール(株)製)を1cm角に丸めて使用した。
◎:ツヤ変化及び傷なし
〇:わずかなツヤ変化が確認できるが、傷はなし
△:ツヤ変化がありわずかに傷が発生
×:ツヤ変化があり多数の傷が発生
なお、本スチールウールラビング試験において、「◎」、「○」、「△」を合格とした。
<白化測定>
白化測定は、株式会社堀場製作所製ハンディ光沢計<グロスチェッカ> IG-320を用いて、入射角60°の条件で、化粧シートの表面における光沢値を測定した。
○:白化していない(光沢値が1.0未満)
×:白化している(光沢値が1.0以上)
なお、本白化測定において、「○」を合格とした。
Figure 0007275566000001
Figure 0007275566000002
Figure 0007275566000003
Figure 0007275566000004
表1から表4より明らかなように、本発明の実施例1~10による化粧シートは、耐傷性にバランスよく優れる結果となった。
表面保護層4bの樹脂組成が電離放射線硬化性樹脂を65%以上含む場合や剛直な骨格からなる熱硬化性樹脂を含む場合、エロージョン率Eが小さく、特にホフマンスクラッチやスチールウールラビング試験が優れる結果となった。
また、表面保護層4bに加えた無機フィラーが表面処理されていて、かつ平均粒子径が適切な場合や添加量が適切な場合は、静摩擦係数が小さく、抵抗が少ないため、同様に特にホフマンスクラッチやスチールウールラビング試験が優れる結果となった。
また、表面保護層4bに無機微粒子を含む条件はホフマンスクラッチに優れる結果となった。
なお、本発明の実施例1~9による化粧シートであれば、優れた耐傷性を備えるとともに、表面の白化を低減することができる。
本発明の化粧シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明
の特徴を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。
1 透明樹脂層
1a エンボス模様
2 絵柄層
3 隠蔽層
4a 表面保護層
4b 表面保護層
5 プライマー層
6 接着剤層
7 原反層
8 接着性樹脂層

Claims (10)

  1. 原反、透明樹脂層、及び表面保護層をこの順に備えた化粧シートであって、
    前記表面保護層は複層から構成され、
    前記表面保護層のうち最表面に位置する表面保護層を第1の表面保護層とし、
    前記第1の表面保護層の下層に位置する表面保護層を第2の表面保護層としたとき、
    前記第1の表面保護層の、平均粒子径(D50)が1.2μmである多角アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eは、0.1μm/g以上0.4μm/g以下の範囲内であり、
    前記表面保護層が無機フィラーを含有し、
    前記無機フィラーの平均粒子径は、1μm以上10μm以下の範囲内であり、
    前記無機フィラーは、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、ガラス、ベーマイト、酸化鉄、酸化マグネシウム、及びダイヤモンドのうち少なくとも1つであり、
    前記第1の表面保護層を構成する樹脂100質量部のうち、電離放射線硬化性樹脂の含有量は、65質量部以上100質量部以下の範囲内であることを特徴とする化粧シート。
  2. 前記第1の表面保護層の厚みは、2μm以上7μm以下の範囲内であり、
    前記第2の表面保護層の厚みは、2μm以上14μm以下の範囲内であり、
    前記表面保護層全体での厚みは、4μm以上21μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記化粧シートの静摩擦係数μs(JISK7 125に準拠)は、0.25以上0.5以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
  4. 前記透明樹脂層の厚みは、40μm以上170μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化粧シート。
  5. 前記無機フィラーの含有量は、前記第1の表面保護層を構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧シート。
  6. 前記無機フィラーは、表面処理が施されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧シート。
  7. 前記無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、シリコーン、ワックス、及び変性樹脂のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項6に記載の化粧シート。
  8. 前記無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、前記第1の表面保護層を構成する主剤樹脂と反応する反応基を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化粧シート。
  9. 前記無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、超臨界逆相蒸発法によりベシクルに表面処理剤を内包させた表面処理剤内包ベシクルであることを特徴とする請求項8に記載の化粧シート。
  10. 前記化粧シートは、塩化ビニル樹脂を含有していないことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の化粧シート。
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