JP7274921B2 - ナット部材および専用工具 - Google Patents
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Description
また、金属の高騰に起因して、建造物の銘板や面格子などの盗難も起きている。これらも、多くは、ボルト・ナットによって所定個所に固定されているため、レンチなどの一般的な工具を使ってナットを緩めれば、容易に取り外すことができる。
そこで、本願発明者らは、そのような盗難を防止するためのナットおよび専用工具の提案を先の出願において行った(特許文献1)。
つまり、ナット10の外周面13には凹凸が存在しないものの、底面11に近い部分は円柱形状に形成されているため、その部分を挾持力の強いプライヤなどの工具で挾持することにより、ナット10が緩められるおそれのあることが分かった。
また、ナット10の外周面13を総てテーパ面とすれば、工具によって外周面13を挾持することが困難になるが、ナット10の凹部15の内壁15cをポンチなどで叩いてナット10が少し緩み、ナット10の底面11の周縁と締結対象物との間に隙間が形成されると、工具で底面11の周縁を挾持することが可能となり、ナット10が緩められるおそれのあることが分かった。
前述した目的を達成するため、この出願の請求項1に係る発明では、
ボルト(60)に螺合することにより、締結対象物(50,51)を締結するためのナット部材(10)であって、
底面(21)と、
底面(21)と反対側に形成されており、底面(21)の径(φ2)よりも小径(φ1)の上面(22)と、
底面(21)の周縁(21a)と上面(22)の周縁(22a)との間に連続形成されたテーパ面(23)と、
上面(22)から底面(21)に向けて窪んでおり、当該ナット部材(10)の締結に用いる専用工具(40)を装着するための装着部(27)と、
底面(21)から突出した基部(24)と、
基部(24)の底面(24b)に開口形成されており、当該ナット部材(10)を螺合するボルト(60)の先端(61)を挿入するための第1の孔(28c)と、
装着部(27)の底面(27a)に開口形成されており、ボルト(60)の先端(61)が突出するための第2の孔(28a)と、
第1の孔(28c)と第2の孔(28a)との間を連通しており、ボルト(60)の雄ねじ部(62)と噛み合う雌ねじ部(28b)が内壁面に形成されたボルト挿通孔(28)と、
基部(24)の外周面(24a)に回転可能に装着されており、底面(21)の径(φ2)以上の外径(φ7)を有する円環状部材(30)と、を備えており、
基部(24)の底面(24b)が円環状部材(30)から突出しており、
円環状部材(30)から突出した基部(24)の底面(24b)と、基部(24)の外周面(24a)に回転可能に装着された円環状部材(30)との間には、円環状部材(30)の抜け止めをするためのワッシャ(80)が装着されているという技術的手段を用いる。
請求項2に係る発明では、
ボルト(60)に螺合することにより、締結対象物(50,51)を締結するためのナット部材(10)であって、
底面(21)と、
底面(21)と反対側に形成されており、底面(21)の径(φ2)よりも小径(φ1)の上面(22)と、
底面(21)の周縁(21a)と上面(22)の周縁(22a)との間に連続形成されたテーパ面(23)と、
上面(22)から底面(21)に向けて窪んでおり、当該ナット部材(10)の締結に用いる専用工具(40)を装着するための装着部(27)と、
底面(21)から突出した基部(24)と、
基部(24)の底面(24b)に開口形成されており、当該ナット部材(10)を螺合するボルト(60)の先端(61)を挿入するための第1の孔(28c)と、
装着部(27)の底面(27a)に開口形成されており、ボルト(60)の先端(61)が突出するための第2の孔(28a)と、
第1の孔(28c)と第2の孔(28a)との間を連通しており、ボルト(60)の雄ねじ部(62)と噛み合う雌ねじ部(28b)が内壁面に形成されたボルト挿通孔(28)と、
基部(24)の外周面(24a)に回転可能に装着されており、底面(21)の径(φ2)以上の外径(φ7)を有する円環状部材(30)と、を備えており、
基部(24)の底面(24b)が円環状部材(30)から突出しており、
基部(24)の外周面(24a)および円環状部材(30)の内周面(34)の一方に形成された突部(26)と、
基部(24)の外周面(24a)および円環状部材(30)の内周面(34)の他方の周方向に連続形成されており、円環状部材(30)を基部(24)に装着する際に突部(26)と嵌合可能な嵌合部(35)と、
を有するという技術的手段を用いる。
請求項3に係る発明では、
請求項3に係る発明では、請求項2に記載のナット部材(10)において、
円環状部材(30)から突出した基部(24)の底面(24b)と、基部(24)の外周面(24a)に回転可能に装着された円環状部材(30)との間には、円環状部材(30)の抜け止めをするための抜け止め部材(80)が装着されているという技術的手段を用いる。
請求項4に係る発明では、請求項3に記載のナット部材(10)において、
抜け止め部材は、ワッシャ(80)であるという技術的手段を用いる。
請求項5に係る発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
上面(22)を平面視した場合に、装着部(27)の内壁(27b)の形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であるという技術的手段を用いる。
請求項6に係る発明では、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
内壁(27b)の上縁にはRが付いているという技術的手段を用いる。
請求項7に係る発明では、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
ボルト挿通孔(28)は、当該ナット部材(10)およびボルト(60)を用いて締結対象物(50,51)を締結した場合に、ボルト(60)の先端(61)が上面(22)から突出する長さに形成されているという技術的手段を用いる。
請求項8に係る発明では、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
テーパ面(23)には、凹凸および角部が形成されていないという技術的手段を用いる。
請求項9に係る発明では、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のナット部材(10)において、
装着部(27)に嵌合可能な蓋(90)を有するという技術的手段を用いる。
請求項10に係る発明では、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のナット部材(10)を回転させるための専用工具であって、
胴部(41)と、
胴部(41)の一端(41a)から突出形成されており、ナット部材(10)の装着部(27)に合致した形状の凸部(42)と、
凸部(42)の一端面(42a)に開口形成されており、凸部(42)が装着部(27)に装着された場合に、第2の孔(28a)から突出したボルト(60)の先端(61)を挿入可能な挿入孔(44)と、を有し、凸部(42)が装着部(27)に装着された状態で胴部(41)を回転させることによりナット部材(10)を回転可能に構成されているという技術的手段を用いる。
請求項1に係る発明によれば、工具でテーパ面を挟んでも、工具とテーパ面との接触面積が小さいため、工具が滑り易いので、ナット部材を回転させることは困難である。
しかも、基部の外周面には、底面の径以上の外径を有する円環状部材が回転可能に装着されているため、工具で底面の周縁を挟もうとしても、円環状部が邪魔になるので、工具で周縁を挟むことができない。また、工具で円環状部材を挟んで回転させても、円環状部材が基部の周りを空回りするだけであり、基部は回転しない。
したがって、ナット部材を緩めることは困難である。
さらに、請求項1に係る発明によれば、円環状部材から突出した基部の底面と、基部の外周面に回転可能に装着された円環状部材との間には、円環状部材の抜け止めをするためのワッシャが装着されているため、円環状部材の抜け止めを図ることができる。
さらに、請求項1に係る発明によれば、ワッシャを基部に装着するという比較的簡単な作業により、円環状部材の基部からの抜け止めを図ることができる。
請求項2に係る発明によれば、工具でテーパ面を挟んでも、工具とテーパ面との接触面積が小さいため、工具が滑り易いので、ナット部材を回転させることは困難である。
しかも、基部の外周面には、底面の径以上の外径を有する円環状部材が回転可能に装着されているため、工具で底面の周縁を挟もうとしても、円環状部が邪魔になるので、工具で周縁を挟むことができない。また、工具で円環状部材を挟んで回転させても、円環状部材が基部の周りを空回りするだけであり、基部は回転しない。
したがって、ナット部材を緩めることは困難である。
さらに、円環状部材を基部に嵌合することができるため、円環状部材が基部から離脱するおそれがない。しかも、嵌合部が周方向に連続形成されているため、円環状部材を基部の外周面に沿って回転させると、突部が嵌合部に嵌合された状態で、突部および嵌合部の一方が他方に沿って移動するので、円環状部材を滑らかに回転させることができる。
したがって、工具で円環状部材を挟んで回転させても、その回転力はナットを回転させる力としては作用しないため、ナット部材を緩めることがより一層困難になる。
請求項3に係る発明によれば、請求項2に係る発明において、円環状部材から突出した基部の底面と、基部の外周面に回転可能に装着された円環状部材との間には、円環状部材の抜け止めをするための抜け止め部材が装着されているため、円環状部材の抜け止めを図ることができる。
請求項4に係る発明によれば、請求項3に係る発明において、ワッシャを基部に装着するという比較的簡単な作業により、円環状部材の基部からの抜け止めを図ることができる。
請求項5に係る発明によれば、上面を平面視した場合に、装着部の内壁の形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であるため、タガネやポンチなどの先端によって装着部の内壁を叩くことによりナット部材を回転させようとしても、その先端が内壁で滑ってしまうので、ナット部材を回転させることが困難である。
つまり、一般的な工具によってはナット部材を緩めることは困難である。
請求項6に係る発明によれば、内壁の上縁にはRが付いているため、専用工具の先端を装着部に装着する際に、先端が内壁の上縁に引っ掛かることなく、Rに沿って内壁の底方向に案内されるので、専用工具を装着部に容易に装着することができる。
請求項7に係る発明によれば、ボルト挿通孔は、当該ナット部材およびボルトを用いて締結対象物を締結した場合に、ボルトの先端が上面から突出する長さに形成されているため、マイナスやプラスのドライバーなど、専用工具以外の工具を装着部に挿入しようとしても、上面から突出したボルトが邪魔になるので、ナット部材を緩めることが困難である。
請求項8に係る発明によれば、テーパ面には、凹凸および角部が形成されていないため、工具の先端を凹凸または角部に係止してナット部材を緩めるという手法を封じることができる。
請求項9に係る発明によれば、装着部に嵌合可能な蓋を有するため、装着部に工具を挿入することができなくなるので、ナット部材を緩めることがより一層困難になる。
しかも、雨水や塵芥などが装着部に浸入することを阻止することができるため、ナット部材およびボルトが錆びたりしてナット部材を緩めることができなくなるおそれもない。
請求項10に係る発明の専用工具を用いれば、第2の孔から突出したボルトの先端を挿入孔に挿入し、凸部をナットの装着部に嵌合した状態で胴部を回転させることにより、ナット部材を締めたり緩めたりすることができる。
本発明に係るナット部材の第1実施形態について図1ないし図7を参照して説明する。
[ナット部材の構造]
図1に示すように、本実施形態のナット部材10は、ナット本体20と、ナット本体20に回転可能に装着された円環状部材30とを備えている。
(ナット本体20の構造)
図1(b)に示すように、ナット本体20は、底面21と、上面22と、テーパ面23と、装着部27(図2(a))と、基部24と、第1の孔28c(図2(b),(c))と、第2の孔28a(図2(a))と、ボルト挿通孔28(図2)と、を備えている。底面21は円形に形成されており、その反対側には、円形の周縁22aを有する上面22が形成されている。図3(a)に示すように、上面22の径φ1は底面21の径φ2よりも小さい。底面21の円形の周縁21aと上面22の円形の周縁22aとの間にはテーパ面23が連続形成されている。換言すると、底面21と、上面22と、テーパ面23とにより、円錐台形状を形成している。また、テーパ面23には凹凸および角部が一切形成されていない。
さらに、テーパ面23には凹凸および角部が一切形成されていないため、工具の先端を凹凸または角部に係止してナット部材10を緩めるという手法を封じることができる。
図2に示すように、装着部27は、専用工具40の凸部42(図6)を装着するための部分であり、上面22から底面21に向けて窪んで形成されている。装着部27の底部には、上面22と相対向する底面27aが形成されている。底面27aには、六角ボルト60の先端61が突出するための第2の孔28aが開口形成されている。図3および図5(b),(c)に示すように、第1の孔28cと第2の孔28aとの間には、六角ボルト60を挿通するためのボルト挿通孔28が連通している。ボルト挿通孔28の内壁面には、六角ボルト60の雄ねじ部62(図7)と噛み合う雌ねじ部28bが形成されている。六角ボルトはボルトの一例である。
したがって、マイナスやプラスのドライバーなど、専用工具以外の工具を装着部27に挿入しようとしても、上面22から突出した六角ボルト60が邪魔になるため、ナット部材10を緩めることは困難である。
したがって、タガネやポンチなどの先端を装着部27に挿入してナット部材10を回転させようとしても、その先端が内壁27bで滑ってしまうので、ナット部材10を回転させることが困難である。
つまり、装着部27の内壁27bの形状に合致した凸部42を有する専用工具40(図6)を用いなければナット部材10を緩めることができない。
また、内壁27bの上縁には、上面22に近い第1の上縁27eと、底面27aに近い第2の上縁27fとが形成されており、第1の上縁27eと第2の上縁27fとの間は、外向きの曲線に形成されている。つまり、内壁27bの上縁にはRが付いている。
図1(a)に示すように、円環状部材30は、ナット本体20の基部24の周面に回転可能に装着されている。ナット本体20の基部24の底面24bが円環状部材30から突出している。図4に示すように、円環状部材30は、平面視円環状に形成されており、その外径φ7は、ナット本体20の底面21の径φ2(図3)よりも僅かに大きい(図1(a))。このため、図1(a)に示すように、円環状部材30をナット本体20の基部24に装着すると、円環状部材30の外周面33がナット本体20の底面21の周縁21aから僅かに突出した状態になる。これにより、工具により底面21の周縁21aを挟もうとしても、円環状部材30が邪魔になるため、挟むことができない。
したがって、ナット部材10を締結する際に、円環状部材30が回転可能に装着されたナット本体20を持っても、円環状部材30がナット本体20から外れないため、ナット部材10の締結作業を行い易い。また、円環状部材30がナット本体20に装着された状態で保管することができるため、ナット本体20および円環状部材30の一方が紛失するおそれがない。
これにより、基部24に装着された円環状部材30が基部24を回転軸にして回転自在となる。
つまり、工具で円環状部材30の外周面33を挾持してナット部材10を回転させようとしても、円環状部材30が基部24を中心に回転するだけで、ナット本体20は回転しないため、ナット部材10を緩めることは困難である。
次に、ナット部材10を締めたり緩めたりするための専用工具の構造について図6を参照して説明する。
挿入孔44は貫通形成しないで有底にしても良い。また、胴部41の外周面を六角形状に形成し、工具によって挾持する範囲を長くすることもできる。この場合、六角部43を設けないようにしても良い。
次に、ナット部材10および専用工具40の使用方法について図7を参照して説明する。ここでは、金属製の板状に形成された締結対象物を締結する場合を説明する。
先ず、ワッシャ(座金)70に挿通された六角ボルト60の先端61を貫通孔50aから貫通孔51aに挿通する。次に、ナット本体20のテーパ面23を指などで摘み、ナット本体20を時計回りに回転させながら、貫通孔51aから突出した六角ボルト60の先端61にナット本体20のボルト挿通孔28を螺合する。そして、専用工具40の凸部42をナット本体20の装着部27に嵌合する。このとき、装着部27の内壁27b(図5(a))の上縁にはRが付いているため、専用工具40の凸部42の先端が内壁27bの上縁に当接した場合でも、その上縁に引っ掛かることなく、内壁27bに沿って底面27aに向けて滑らかに案内される。そして、専用工具40の凸部42をナット部材10の装着部27に嵌合した後、ボックスレンチ、ソケットレンチおよびスパナなどの工具によって専用工具40の六角部43を挾持し、その工具を時計回りに回転させ、ナット部材10を締結対象物51に締付ける。そして、ナット部材10の締結トルクが所定の締付トルクに達した時点でナット部材10の締付を停止し、専用工具40の凸部42をナット部材10の装着部27から外し、ナット部材10の締付け作業を終了する(図7)。
このように、専用工具40を用いれば、専用工具40の凸部42をナット部材10の装着部27に嵌合した状態で六角部43を回転させることにより、ナット部材10を締めたり緩めたりすることができる。
また、円環状部材30の外径φ7(図4(c))は20.0mmであり、ナット本体20の底面21の径φ2(19.0mm)よりも1.0mm(=20.0mm-19.0mm)大きい。つまり、円環状部材30を基部24に装着すると、円環状部材30の外周面33が、底面21の周縁21aから上下でそれぞれ0.5mm(=1.0mm×1/2)突出する。
つまり、突部26の高さd1は0.3mmであり、嵌合部35の深さd3は0.41mmであるから、嵌合部35に突部26が嵌合した状態では、突部26の外周面26aと、嵌合部35の底面35cとの間には、0.11mm(=0.41mm-0.3mm)の隙間が形成されるため、円環状部材30は基部24の外周面24aに対して回転自在な状態になる。
ボルト挿通孔28は、締結対象物に対するナット部材10の締結を完了したときに、六角ボルトの先端が上面22から2.0~3.0mm突出する長さに形成されている。
なお、上記各数値は一例であり、ボルトおよび締結対象物に応じて適宜変更可能である。たとえば、円環状部材30がナット本体20に回転可能に装着されており、かつ、円環状部材30がナット本体20から容易に外れなければ、突部26の突出高さd1は、0.05~0.25mmでも良い。
上述したように、本実施形態のナット部材10および専用工具40を実施すれば、緩めることがより一層困難であり、防犯効果をより一層高めることができるナット部材を提供することができる。
次に、本発明の第2実施形態について図8ないし図10を参照しつつ説明する。
本実施形態のナット部材10は、ワッシャ(座金)80を備えている。ワッシャ80は、平ワッシャ(平座金)である。図8に示すように、ナット本体20の基部24の外周面24aと底面24bとの間には、段部24dが形成されている。段部24dは、基部24と同軸上に形成されており、略円筒形状に形成されている。円環状部材30は、基部24の外周面24aに回転可能に装着され、ワッシャ80は、段部24dの外周面に装着固定される。また、図8(a)に示すように、基部24の底面、つまり段部24dの底面24bは、ワッシャ80から突出している。なお、底面24bとワッシャ80とは面一でも良い。このように、ワッシャ80は、ナット本体20の基部24の一部を形成する段部24dに装着固定され、円環状部材30の基部24からの抜け止めを図るものである。また、本実施形態のナット部材10は、ワッシャ80を基部24に装着固定することにより円環状部材30の抜け止めを図るため、基部24の外周面24aには突部26(図3)が形成されていない。また、円環状部材30の内周面34には嵌合部35(図4)が形成されていない。
上述したように、本実施形態のナット部材10を実施すれば、ワッシャ80を基部24の段部24dに装着するという比較的簡単な作業により、円環状部材30の基部24からの抜け止めを図ることができる。
次に、本発明の第3実施形態について図11および図12を参照しつつ説明する。
図11は、本実施形態に係るナット部材に用いる蓋の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。図12は、図7に示すナット部材に図11に示す蓋を装着した状態を示す説明図である。
本実施形態のナット部材10は、装着部27に装着する蓋90を備えている。蓋90は、平面視円形の覆い部91と、覆い部91の底面から突出形成された突部92とを備えている。覆い部91は、ナット本体20の上面22の周縁22a(図2(b))と同じ径に形成されている。突部92は、円筒形状に形成されており、ナット本体20の第2の孔28aから突出した六角ボルト60の先端61を挿入するための挿入部93が内部に形成されている。また、覆い部91には、蓋90をナット本体20から外す際に、ピンなどの先端が尖った工具を挿入するための切欠部94が形成されている。
図12に示すように、蓋90をナット本体20の装着部27に装着すると、六角ボルト60の先端61が挿入部93に挿入され、かつ、覆い部91の外周縁とナット本体20の周縁22aとが一致する。つまり、ナット本体20の装着部27は、蓋90によって封止される。
本実施形態では、蓋90は合成樹脂により形成されており、可撓性を有する。また、突部92の内径は、六角ボルト60の呼び径よりも僅かに小さく、六角ボルト60の先端61を挿入すると、突部92が僅かに弾性変形し、六角ボルト60の雄ねじの山が突部92の内壁に圧着され、容易に外れないようになっている。
しかも、雨水や塵芥などが装着部27に浸入することを阻止することができるため、ナット部材10および六角ボルト60が錆びたりしてナット部材10を緩めることができなくなるおそれもない。
(1)本発明のナット部材は、バッテリーを車両に固定するための部材に用いることにより、バッテリーの盗難防止効果を高めることができる。たとえば、車両に搭載されるバッテリーは、バッテリーの上部を跨ぐステーと、このステーの両端にそれぞれ挿通された一対のボルトと、各ボルトに螺合される一対のナットとによって車両に固定されるため、それら各ナットとして本発明のナット部材を用いれば、ナット部材を緩めることが困難になるため、バッテリーの盗難を防止することができる。特に、トラック、クレーン車、フォークリフト、その他の特殊車両など、バッテリーが車外に露出しており、盗難に遭いやすい車両に適用すれば盗難防止効果が高い。
(3)近年、屋外に設置されているソーラーパネルの盗難被害が多発している。屋外に設置されるソーラーパネルが、ボルトおよびナットを使って設置台に取付けられている場合において、そのナットとして本発明のナット部材を用いることにより、屋外に設置されているソーラーパネルの盗難防止効果を高めることができる。
(5)また、公園などに設置されている遊具には、ボルトおよびナットが多用されているため、そのナットとして本発明のナット部材を用いることにより、ナットを緩めるといういたずらを防止する効果を高めることができる。
(1)装着部27の形状は、ヘクサロビュラ穴の形状の他、5組または7組以上の曲面27c,27dを組み合わせた形状でも良い。また、装着部27の形状は、3角形、4角形、5角形、6角形などの多角形でも良く、専用工具40の凸部42の形状もその装着部27に嵌合する形状に形成しても良い。
(2)突部26(図3)を円環状部材30の内周面34(図4(c))に沿って形成し、嵌合部35(図4(c))を基部24の外周面24a(図3)に形成することもできる。
(4)嵌合部35を突部26に嵌合可能な凹形状に形成することもできる。
(5)ナット本体20を鉄により形成し、円環状部材30に磁性を帯びさせ、円環状部材30を磁力によってナット本体20の基部24に装着することもできる。この場合、突部26および嵌合部35を形成する必要がない。
(7)第3実施形態において蓋90をゴム製材料、または、金属製材料により形成することもできる。
21・・底面
21a・周縁
22・・上面
22a・周縁
24・・基部
24a・外周面
24b・底面
26・・突部
27・・装着部
27a・底面
28・・ボルト挿通孔
28a・第2の孔
28b・雌ねじ部
28c・第1の孔
30・・円環状部材
34・・内周面
35・・嵌合部
40・・専用工具
60・・六角ボルト
61・・先端
23・・テーパ面
φ1・・上面22の径
φ2・・底面21の径
φ7・・円環状部材30の外径
Claims (10)
- ボルトに螺合することにより、締結対象物を締結するためのナット部材であって、
底面と、
前記底面と反対側に形成されており、前記底面の径よりも小径の上面と、
前記底面の周縁と前記上面の周縁との間に連続形成されたテーパ面と、
前記上面から前記底面に向けて窪んでおり、当該ナット部材の締結に用いる専用工具を装着するための装着部と、
前記底面から突出した基部と、
前記基部の底面に開口形成されており、当該ナット部材を螺合するボルトの先端を挿入するための第1の孔と、
前記装着部の底面に開口形成されており、前記ボルトの先端が突出するための第2の孔と、
前記第1の孔と前記第2の孔との間を連通しており、前記ボルトの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が内壁面に形成されたボルト挿通孔と、
前記基部の外周面に回転可能に装着されており、前記底面の径以上の外径を有する円環状部材と、を備えており、
前記基部の底面が前記円環状部材から突出しており、
前記円環状部材から突出した前記基部の底面と、前記基部の外周面に回転可能に装着された前記円環状部材との間には、前記円環状部材の抜け止めをするためのワッシャが装着されていることを特徴とするナット部材。 - ボルトに螺合することにより、締結対象物を締結するためのナット部材であって、
底面と、
前記底面と反対側に形成されており、前記底面の径よりも小径の上面と、
前記底面の周縁と前記上面の周縁との間に連続形成されたテーパ面と、
前記上面から前記底面に向けて窪んでおり、当該ナット部材の締結に用いる専用工具を装着するための装着部と、
前記底面から突出した基部と、
前記基部の底面に開口形成されており、当該ナット部材を螺合するボルトの先端を挿入するための第1の孔と、
前記装着部の底面に開口形成されており、前記ボルトの先端が突出するための第2の孔と、
前記第1の孔と前記第2の孔との間を連通しており、前記ボルトの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が内壁面に形成されたボルト挿通孔と、
前記基部の外周面に回転可能に装着されており、前記底面の径以上の外径を有する円環状部材と、を備えており、
前記基部の底面が前記円環状部材から突出しており、
前記基部の外周面および前記円環状部材の内周面の一方に形成された突部と、
前記基部の外周面および前記円環状部材の内周面の他方の周方向に連続形成されており、前記円環状部材を前記基部に装着する際に前記突部と嵌合可能な嵌合部と、
を有することを特徴とするナット部材。 - 前記円環状部材から突出した前記基部の底面と、前記基部の外周面に回転可能に装着された前記円環状部材との間には、前記円環状部材の抜け止めをするための抜け止め部材が装着されていることを特徴とする請求項2に記載のナット部材。
- 前記抜け止め部材はワッシャであることを特徴とする請求項3に記載のナット部材。
- 前記上面を平面視した場合に、前記装着部の内壁の形状が、ヘクサロビュラ穴の形状であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のナット部材。
- 前記内壁の上縁にはRが付いていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のナット部材。
- 前記ボルト挿通孔は、当該ナット部材および前記ボルトを用いて前記締結対象物を締結した場合に、前記ボルトの先端が前記上面から突出する長さに形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のナット部材。
- 前記テーパ面には、凹凸および角部が形成されていないことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のナット部材。
- 前記装着部に嵌合可能な蓋を有することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のナット部材。
- 請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のナット部材を回転させるための専用工具であって、
胴部と、
前記胴部の一端から突出形成されており、前記ナット部材の装着部に合致した形状の凸部と、
前記凸部の上面に開口形成されており、前記凸部が前記装着部に装着された場合に、前記第2の孔から突出したボルトの先端を挿入可能な挿入孔と、を有し、前記凸部が前記装着部に装着された状態で前記胴部を回転させることにより前記ナット部材を回転可能に構成されていることを特徴とする専用工具。
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