以下では、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。また、図面において同一の構成要素は、同じ番号を付し、説明は、適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るシステム全体の構成例を示す図である。
図1の油ちょう食品提供システム1は、通信部2と、制御部3と、記憶部3a、通知部4と、操作部6と、貯蔵部10と、調理容器20と、蓋部31と、搬送部40と、包装部70と、取り出し部80と、フライヤー100と、油供給管100aと、ポンプ101と、油タンク102とを備えている。このうち、フライヤー100は、構成要素として油槽50、油濾過機50a、マイクロ波発振器60を含む。
油ちょう食品提供システム1は、油ちょう食品の調理と包装を自動的に行い、揚げたての油ちょう食品を短時間で提供する。油ちょう食品提供システム1は、同一の筐体内に各構成要素を一体的に収納したものであってもよいし、複数台の筐体を組み合わせて構成したものであってもよい。また、油ちょう食品提供システム1は屋内に設置されていてもよいし、屋外に設置されていてもよく、設置場所については特に問わない。油ちょう食品提供システム1は現金または電子マネーの決済機能を備えていてもよい。これにより、自動販売機のように利用者による油ちょう食品の購入から提供までのすべてのステップを自動化することができる。
通信部2は、電気通信回線5に接続されており、システムの外部とデータを送受信する機能を有する。通信部2は、各種の通信規格を用いることができる。通信規格の例としては、Ethernet、無線LAN、PCI Express、USB、UART、SPI、SDIO、シリアルポート、Bluetoothなどがあるが、方式については特に問わない。電気通信回線5の通信媒体は、有線でも、無線のいずれであってもよい。有線の通信媒体の例としては、光ファイバ、LANケーブル、電話回線、同軸ケーブルなどが挙げられる。
油ちょう食品提供システム1は、通信部2を介して、外部から開始信号、調理対象、各食品の調理条件などを含む信号などを受信することができる。通信部2で受信されたデータは制御部3に転送される。なお、開始信号、調理対象、各食品の調理条件などを含む信号はシステム内の構成要素から、制御部3に送信されてもよい。例えば、後述する操作部6や、認識部などから信号が送信されてもよい。
調理条件とは、少なくとも食用油の加熱温度、食品の油ちょう時間、食品へのマイクロ波の照射時間、マイクロ波の照射開始時刻、マイクロ波の照射終了時刻、マイクロ波に係る信号のデューティ比、マイクロ波の出力のうち、いずれかひとつを含むものとする。調理条件はさらにマイクロ波の照射エネルギー、油ちょう中の調理容器の回転速度、油切り中の調理容器の回転速度、油切り時間を含んでいてもよい。マイクロ波の照射エネルギーが指定された場合、調理条件のいずれかの項目の設定値を調節することによって所望エネルギーのマイクロ波が照射される。なお、調理条件はこれらのすべての設定項目を含んでいなくてもよいし、その他の設定項目を含んでいてもよい。
制御部3は、油ちょう食品提供システム1全体の制御を行う。制御部3は、例えば、貯蔵部10のスライド式ドア14a、14b、14cの開閉、調理容器20の回転、食品の配置確認、調理容器20の移動、フライヤー100による食用油切り、包装、包装完了の通知などの処理に係る指令を各構成要素に送信する。また、制御部3は、それぞれの食品の調理条件に従って、油槽50内の食用油の温度調整、油ちょう時間の調整、マイクロ波の照射時間の調整なども行う。制御部3は時刻の計測のため、クロックやカウンタなどを備えている。クロックやカウンタはソフトウェアにより実現されていてもよいし、水晶振動子やセラミック発振子を使った発振回路によって実現されていてもよい。また、これらの組み合わせを用いてもよい。
制御部3は、半導体回路、FPGA、PLD、ASICなどのハードウェアにより実装されていてもよいし、マイクロプロセッサ上で動作するソフトウェア(プログラム)によって実装されていてもよいし、これらの組み合わせにより実現されていてもよい。なお、制御部3に係るプログラムは、記憶部3aに格納されている。制御部3は通信部2を介して外部からアップデート版のプログラムをダウンロードし、プログラムの更新を行ってもよい。制御部3は通信部2を介して外部から調理条件に係るデータを取得してもよい。
記憶部3aは、プログラムや食品ごとの調理条件などのデータを保存可能な記憶領域である。記憶部3aは、SRAM、DRAMなどの揮発性メモリでも、NAND、MRAM、FRAMなどの不揮発性メモリでもよい。またハードディスク、SSDなどのストレージ装置でもよい。記憶部3aは、油ちょう食品提供システムに内蔵されていてもよいし、油ちょう食品提供システムの外部の記憶装置であってもよい。また、記憶部3aは、SDメモリカード、USBメモリなどの取り外し可能な記憶媒体であってもよい。
なお、制御部3は、油ちょう食品提供システム1がただちに調理を開始できない状態にあるときに通信部2を介して開始信号を受信した場合、記憶部3aに調理対象の食品、調理条件などの情報を保存してもよい。油ちょう食品提供システム1がただちに調理を開始できない状態にあるときの例としては、開始信号の受信時に食品の調理が行われている場合、開始信号の受信時に油ちょう食品提供システム1の保守や点検が行われている場合が挙げられる。この場合、油ちょう食品提供システム1が食品の調理を開始できる状態になったら、次の食品の調理を開始する。
通知部4は、利用者に油ちょう食品が提供可能となった旨など各種の情報を通知する。通知部4は、例えばスピーカーを使い、音声による通知を行ってもよいし、LED、液晶ディスプレイ、有機ELなどを使い、光、文字や映像による通知を行ってもよい。また、音声と光、文字、映像などを組み合わせて通知を行ってもよい。これらの通知方法は一例であり、利用者へのショートメールやメールの送信、電話発信などその他の手段を用いることもできる。また、通知部4で、装置状態の通知や故障通知などを行ってもよい。なお、油ちょう食品提供システム1は通知部4を必ず備えていなくてもよい。
操作部6は、利用者に油ちょう食品提供システム1を操作する手段を提供する。操作部6の例としては、スイッチ、ボタン、ダイヤル、レバー、タッチパネル、キーボード、各種のポインティングデバイス、リモコン、音声認識装置、画像認識装置などが挙げられる。タッチパネルが用いられる場合、通知部4と操作部6は共通のタッチパネルディスプレイにより実現されていてもよい。操作内容の例としては、電源のON/OFF、開始信号の送信、設定や調理条件の変更などがあるが、内容については特に限定しない。
図1に示されている通信部2、制御部3、記憶部3a、通知部4の数はそれぞれ1つずつであるが、これらの構成要素が複数あってもよい。これらの構成要素を複数設けると、システムの冗長化による可用性の向上や負荷分散をはかることができる。また、複数の種類の通知部4を組み合わせることにより、利用者に複数の手段による通知を行い、利用性を改善することができる。
貯蔵部10には、調理前の油ちょう食品を保管する。貯蔵部10における保管形態は、油ちょう食品の種類に応じて決定される。貯蔵部10では、食品を冷却してもよい。例えば冷凍食品を油ちょうする場合、貯蔵部10では食品を冷凍保存する必要がある。未凍結の生産食品を油ちょうする場合、食品を冷蔵保存する。常温の食品を油ちょうする場合、貯蔵部10で食品を常温保存してもよい。すなわち、貯蔵部10は、保冷庫、冷蔵庫、冷凍庫、保管庫、またはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。貯蔵部10は、内蔵の装置であってもよいし、外付けの装置であってもよい。油ちょう食品提供システム1は複数の貯蔵部10を備えていてもよい。貯蔵部10は、食品の待機位置の一例である。なお、貯蔵部10の構成例については、後述する。
調理容器20は、調理中の油ちょう食品が置かれる容器である。調理容器20は例えば、周方向に沿って、複数個の食品を配置可能な平面視略円形の調理容器である。調理容器20の詳細な構造については後述する。蓋部31は、油ちょう中に油槽50を閉鎖する蓋である。蓋部31は、例えば油槽50を上部から覆う蓋である。蓋部31の構造についても後述する。
搬送部40は、調理容器20の回転、垂直方向の移動、水平方向の移動を実現する。搬送部40は、これらの動きを実現するために、回転機構、昇降機構、水平移動機構を備える。回転機構は、食品を調理容器20に載せるときや、油ちょうを行うときに調理容器20を回転させる。昇降機構は、調理容器20の高さを調節し、調理容器20の油槽50への出し入れを実現する。水平移動機構は、調理容器20の位置を、油ちょう食品提供処理の各ステップにおいて変更する。搬送部40の構成例についても後述する。
なお、以降の説明では水平移動と垂直移動を組み合わせた油ちょう食品提供システムの動作を説明しているが、必ず水平移動と垂直移動が組み合わされた動作が行われなくてもよい。例えば、食品を調理容器に搭載する位置から油槽への移動、油槽への出し入れ操作、油槽から提供位置への移動をすべて垂直方向の動きのみで実現してもよい。システムの小型化や構成の簡略化の観点からは、上述のステップにおける移動をすべて垂直方向の移動のみで実現するのが望ましい。
包装部70は、油ちょうした食品の盛り付けまたは包装を行う。包装部70は、油ちょう食品を容器上に盛り付けるだけのものであってもよいし、油ちょう食品を容器に包装するものであってもよい。包装を行う場合、油ちょう食品を密閉して包装してもよいし、完全に密閉せずに包装を行ってもよい。また、包装部70は容器として、例えばフードパック、食品トレー、紙容器、食品用ラップフィルム、アルマイト製の食器、樹脂製の食器、陶磁器、ステンレス製の容器などを用いることができる。以降では、調理容器20と区別するため、包装部70で油ちょうした後の食品を収容する容器を提供容器と呼ぶことにする。
取り出し部80は、利用者が盛り付けまたは包装された油ちょう食品を取り出す位置である。取り出し部80の例としては、略四角形状の取り出し口などがあるが、取り出し部80の形状および位置については特に問わない。
フライヤー100は、油ちょう中の食品に向けてマイクロ波を照射可能なマイクロウェーブフライヤーである。フライヤー100は、調理容器を投入可能な油槽を有し、油ちょう中に、マイクロ波を調理容器へ配置された食品に照射するマイクロウェーブフライヤーである。マイクロ波発振器60は、食品に照射するマイクロ波を生成する。以下では、調理容器を調理容器の底面に対し垂直で、調理容器の中心を通る回転軸について回転することによって、マイクロ波の照射を行う場合を例に説明するが、調理容器を動かさない方法を用いてもよい。
例えば、マイクロ波発振器60に接続されたマイクロ波アンテナに回転動作などの動きを加え、食品へのマイクロ波照射を行ってもよい。マイクロ波アンテナの位置の例としては、油槽の下部、油槽内などがあるが、特に問わない。マイクロ波アンテナの動きは、回転動作以外の動きであってもよい。プレートの形状については特に問わない。
調理容器の動きは、例えばスライド運動など回転運動以外の動作であってもよい。フライヤー100における油温、マイクロ波の照射時間、出力などは制御部3によって制御される。マイクロウェーブフライヤーを用いることにより、マイクロ波を照射しないフライヤーに比べ調理時間を短縮することができる。
フライヤー100の油槽50は、油タンク102と油供給管100aを介して接続されていてもよい。油供給管100aには、ポンプ101が配置されている。ポンプ101が正回転すると、油タンク102内の油は油槽50に供給される。一方、ポンプ101が逆回転すると、油槽50内の食用油は、油タンク102に戻される。これにより、油槽50における油面の高さを調整することができる。油面調整処理と、ポンプ101の制御は制御部3によって行われる。
食品の調理中に油面の高さを調整してもよいし、油槽の清掃時、食用油の交換時など保守作業時に油面の高さを変更してもよく、油面調整処理の実行タイミングについては特に問わない。以降では油供給管100aと、ポンプ101と、油タンク102をまとめて油供給機構と呼ぶものとする。油ちょう食品提供システム1は、必ず油供給機構を備えていなくてもよい。
油濾過機50aは、油槽50の底面や下部に配管を介して接続されている。油濾過機50aは、油槽50内の食用油を濾過し、異物やにおいなどを除去する。油濾過機50aは、例えば、繊維、濾紙、濾布、活性炭、セラミックなどを含むフィルタによる濾過を行う。これらのフィルタの種類は例であり、複数の種類のフィルタの組み合わせやその他の種類のフィルタを用いてもよい。フィルタでは特定の成分の吸着だけでなく、酸化した油を還元する物質の添加などを行ってもよい。油濾過機50aは、油槽50内の使用中に稼働するものであってもよいし、油が加熱されていないときに動作するものであってもよい。なお、油ちょう食品提供システム1は、必ず油濾過機50aを備えていなくてもよい。
図1には、調理容器20、蓋部31、搬送部40、フライヤー100、包装部70がそれぞれ1つずつしか示されていないが、油ちょう食品提供システム1はこれらの構成要素を複数備えていてもよい。油ちょう食品の調理や包装を行う構成要素の数を増やすことにより、油ちょう食品提供処理の各ステップを並列的に実行し、スループットを向上させることができる。システムの並列性を高めると、短期間により多くの油ちょう食品を利用者に提供することが可能となる。
また、貯蔵部10、フライヤー100(油槽50、油濾過機50a、マイクロ波発振器60を含む)、包装部70、取り出し部80、油供給管100a、ポンプ101、油タンク102などの構成要素の配置については特に限定しない。搬送部40は、これらの構成要素の配置に合わせて設計される。それぞれの構成要素は、例えば発熱する部品の放熱、冷却、部品の耐熱性などの設計条件を考慮して、配置される。
油ちょう食品提供システム1に係る全構成要素を小型の筐体内に実装するため、設計条件を満たす範囲内で各構成要素を近接配置してもよい。これにより、コンビニエンスストアの店舗や通路の脇など面積が狭い場所に油ちょう食品提供システム1を設置することができる。油ちょう食品提供システム1に係る筐体の全部または一部を透明化し、調理過程を外部から視認できるようにしてもよい。
貯蔵部10、調理容器20、蓋部31、油槽50、油タンク102などの構成要素のサイズは特に限定しない。大量の油ちょう食品を高速で提供するのを優先する場合は、これらの構成要素を大型化してもよいし、上述のように狭い場所への設置を優先する場合には、これらの構成要素を小型化してもよい。一般に、貯蔵部10、調理容器20、蓋部31、油槽50などのサイズは、調理する食品の大きさや、個数などに基づき決定することができる。
図2は、第1の実施形態に係る貯蔵部および配置機構の構成例を示す断面図である。以下では、図2を参照しながら、本実施形態に係る貯蔵部10と配置機構を説明する。
図2では、貯蔵部10と、調理容器20と、軸30と、蓋部31と、回転機構41が示されている。
貯蔵部10は、略六面体状の箱型構造物である。貯蔵部10は、冷凍機11を備えている。冷凍機11により、貯蔵部10の内部は例えば、摂氏マイナス18度以下の低温に冷却される。貯蔵部10の内部は、板12a、12b、12cにより部屋10a、10b、10cに区切られている。部屋10a、10b、10cには、冷凍食品を保管することができる。冷凍食品の例としては、油ちょう前のから揚げ、カツレツ、コロッケ、春巻、餃子、てんぷら、揚げ菓子、パン、揚げかまぼこ、シーフードフライなどがあるが、その他の食品であってもよい。
部屋10a、10b、10cには、それぞれ異なる種類の冷凍食品を貯蔵することができる。冷凍食品は、異なる食材であってもよいし、同じ食材に異なる味付けをしたものであってもよい。以下では、各部屋に異なる種類の冷凍食品が貯蔵されている場合を説明するが、部屋10a、10b、10cに同じ種類の冷凍食品を格納してもよい。
貯蔵部10は、側面に扉17を備えている。扉17を介してそれぞれの部屋10a、10b、10cに格納された冷凍食品の補充や交換を行うことができる。また、部屋10a、10b、10cはそれぞれスライド式ドア14a、14b、14cを備えている。
スライド式ドア14a、14b、14cは、制御部3から送信された信号に基づき、開閉動作をする。スライド式ドアは、例えば歯車、ベルト、チェーンなどをモーターと組み合わせて実装される。このスライド式ドアの構成は一例であり、三日月型の回転子などその他の機構を用いて開閉機能を実現してもよい。
スライド式ドア14a、14b、14cは、食品が1点ずつ通過できる大きさで作られている。スライド式ドアは、食品が1点通過したら閉じるものとする。赤外線センサ、超音波センサ、各種の光電センサ、画像センサなどのセンサを使って食品がスライド式ドア14a、14b、14cを通過したことを確認してもよい。また、板12a、12b、12cにかかっている荷重を検出して、食品がスライド式ドア14a、14b、14cから出されたと推定してもよい。
板12a、12b、12cには、スライド式ドア14a、14b、14cのある面に向かって下り傾斜がつけられている。したがって、スライド式ドア14aが開くと、部屋10aに格納されている冷凍食品Fが自重により、貯蔵部10の外に出される。同様に、スライド式ドア14bが開くと、冷凍食品Gが貯蔵部10の外に出される。スライド式ドア14cが開くと、冷凍食品Hが貯蔵部10の外に出される。
貯蔵部10から出された食品は、滑り台16を滑り落ち、調理容器20の上に乗せられる。このとき冷凍食品は、滑り台16の前面にある調理容器20上のスペース20aに移動される。ここでは、食品が自重により待機位置から調理容器の所定箇所(スペース)に移動する場合を例に説明するが、その他の方法で食品を待機位置から調理容器の所定箇所に移動してもよい。例えば、コンベア、ロボットハンド、ロボットアーム、車両、移動体など、各種の搬送機械を使って、食品を待機位置から調理容器の所定箇所に移動させてもよい。複数の機械や方法を組み合わせて移動を行ってもよく、移動の実現手段については特に限定しない。
以降では食品を移動し、調理容器の所定箇所に配置する機構を配置機構と呼ぶものとする。図2は配置機構の一例である。調理容器20の上は複数のスペースに区切られており、それぞれのスペース上に食品を載せることが可能である。以降では、それぞれのスペースに1点ずつ食品を配置する場合を例に説明するが、それぞれのスペースに複数個の食品を配置してもよい。調理容器20の詳細については後述する。
貯蔵部10の保護部材15は、滑り台16の上部およびスライド式ドア14a、14b、14cの前方を覆っている。保護部材15により、スライド式ドアへの異物の侵入が防止される。また、保護部材15は、冷凍食品がスペース20aより前方の位置に落下するのを防いでいる。
図3は、第1の実施形態に係る調理容器の構成例を示す斜視図である。また、図4は調理容器を正面視したときの構成を示す図である。以下では、図3、図4を参照しながら、本実施形態に係る調理容器20および蓋部31を説明する。
調理容器20は、平面視略円形の容器である。調理容器20は、底板21と、囲い板22と、仕切り板23とを備えている。底板21は、略円盤状の板である。底板21の中心には、軸30の一端が接続されている。軸30は、調理容器20の上方に突出している。囲い板22は、底板21の外周に沿って設けられている。仕切り板23は、調理容器20の中心と、囲い板22の間に配置されている。
仕切り板23は、調理容器20の中心から径方向に向かって設けられており、調理容器20の内側を複数のスペースに区切っている。図3の例では、仕切り板23は軸30と囲い板22を連結しているが、仕切り板23は途中で途切れていてもよい。例えば、軸30と囲い板22を結んだ線分の一部区間のみに仕切り板23が設けられていてもよい。
図3の例では、仕切り板23の高さが囲い板22の高さと等しくなっているが、異なる高さであってもよい。また、囲い板22は、底板21に対し90度の角度をなしているが、囲い板22と底板21の間の角度はこれとは異なっていてもよい。例えば、囲い板22を、底板21に対して90度より大きい角度で配置し、調理容器の外周から底板21に向かって下り傾斜を形成するようにしてもよい。
囲い板22は図3の例のように一体的に形成されていてもよいし、複数の板に分かれていてもよい。例えば、底板21の外周の一部のみに囲い板22が設けられていてもよい。また、囲い板22は底板21に固定されていてもよいし、可動に装着されていてもよい。移動可能な囲い板の例としては、底板に対する角度を調整可能に底板と連結された囲い板が挙げられる。
また、図3では、仕切り板23が調理容器20の中心から60度間隔で配置され、調理容器20を6つの面積が等しいスペースに区切っているが、これは一例に過ぎない。調理容器20上のスペース数はこれとは異なる数であってもよい。また、仕切り板23を使って、調理容器20を面積が異なる複数のスペースに区切ってもよい。また、仕切り板23は固定されていてもよいし、着脱可能または移動可能に装着されていてもよい。仕切り板23が移動可能にすれば、スペースの面積を変更することができるようになる。
調理容器20のそれぞれのスペースに載せられた食品は、囲い板22と仕切り板23によって、当該スペース内に拘束される。これにより水平方向の移動、垂直方向の移動、食用油への投入、食用油内での回転、食用油からの取り出し、油切りなどの動きを伴う工程が実行されたときに、それぞれの食品が調理容器20から脱落したり、位置が大きくずれたりするのを防止する。調理容器20上のスペースの大きさは、調理する食品のサイズに応じて決められる。例えば、調理する食品のサイズが大きい場合には、スペースの面積を広くし、調理する食品のサイズが小さい場合にはスペースの面積を狭くする。調理容器20のスペースは調理容器の所定箇所の一例である。
なお、囲い板22と仕切り板23による、食品の調理容器20上への拘束は一例であり、その他の構造により拘束を実現してもよい。例えば、調理容器に囲い板を設けず、仕切り板によって食品を拘束してもよい。また、底板に設けた凹部により食品を調理容器20上に拘束してもよい。すなわち、食品が調理容器上の所定箇所に拘束されるのであれば、調理容器の構造については特に問わない。食品は調理容器20上に略等間隔に配置されていてもよい。また、食品を調理容器20の周方向に沿って配置してもよい。この場合、調理容器の中心からみた食品の配置角度や距離は特に問わない。また、食品は、周方向に沿って複数列配置されていてもよい。
調理容器上の食品の配置については特に問わないが、すべての食品にマイクロ波が均等に照射されるよう、複数の食品は、調理容器20の周方向に沿って、略等間隔で中心から略等距離に置かれていることが好ましい。
底板21、囲い板22、仕切り板23には多数の円形状の小孔24が設けられている。それぞれの小孔24は、板を貫通している。小孔24があるため、調理容器20が油槽50内の食用油に投入されても、食用油の流動性を確保することができる。小孔24は一定以上の大きさがないと、目詰まりが発生するおそれがあるが、大きすぎるとマイクロ波が通過し、エネルギー損失が大きくなる。したがって、小孔24の直径を例えば、1.0mm~30.0mmの範囲に設定することができる。
なお、小孔24の形状は円形に限られない。小孔24は例えば、楕円や三角形、四角形などの多角形状であってもよい。ここで述べた小孔の形状および大きさは一例であり、異なる形状や大きさの小孔を設けてもよい。
調理容器20は、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタンなど、耐熱性の材料で形成されている。これらの材料は例であり、食用油の温度に耐えられるのであれば、その他の材料を使ってもよい。底板21、囲い板22、仕切り板23は同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で作られていてもよい。上述の調理容器20は、皿状に上面が開放された構造物であったが、調理容器20はこれとは異なる形状であってもよい。食品が収容可能であれば、調理容器20の形状や構造については特に問わない。
回転機構41は、モーターなどの電気機械によって軸30を、回転軸aについて回転する。回転機構41の内部に実装されたモーターは、制御部3から送信される信号によって制御される。軸30は、回転機構41の下部から延出している、棒状の構造物である。軸30は断面が略円形状または略多角形状となっており、充分な耐熱性と機械的な強度を有する材料で形成されている。軸30の材料の例としては、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタンなどが挙げられるが、その他の材料であってもよい。
軸30の回転に伴い、軸30の下端に固定された調理容器20も、回転軸aについて回転する。調理容器20の回転方向については特に限定しないが、以下では、調理容器20は、上面を正面視したときに反時計周りとなる方向(図3、4のL方向)に回転するものとして、説明する。なお、本実施形態では、回転機構41と調理容器20が1本の軸30によって接続されているが、回転機構41と調理容器20を他の構造によって連結してもよく、接続方法については特に問わない。例えば、調理容器20の外周に沿って複数の軸を設け、これらの複数の軸を回転機構41のモーターに連結してもよい。
回転機構41と調理容器20の間には、蓋部31が設けられている。蓋部31は例えば平面視略円形の板状構造物であり、マイクロ波照射中に油槽50を閉鎖し、マイクロ波の漏洩などが発生するのを防止する。蓋部31は、油槽50を閉鎖できるのであれば、その他の形状に係るのものであってもよい。軸30は、蓋部31の中心に位置する孔32を貫通している。蓋部31は、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタンなど、耐熱性の材料で構成されている。充分な耐熱性があるのであれば、蓋部31は、その他の材料で作られていてもよい。
蓋部31は、調理容器20の底板21と略平行に配置されるよう、支持部材31aによって回転機構41に固定されている。支持部材31aは、蓋部31や軸30と同じく、耐熱性を有する金属などの材料で形成されている。なお、蓋部31の調理容器20に対する角度は略平行でなくてもよく、特に限定しない。例えば、油槽50の上端が曲面状であったり、傾斜したりしている場合には、油槽50の上端の形状に合わせた形状に係る蓋部31を、任意の角度で配置してもよい。
図4では、調理容器20における、滑り台16の前面にあるスペース20aの位置が斜線で示されている。上述のように、貯蔵部10から出された食品Fは滑り台16を経由してスペース20aに配置される。図3では、スペース20aの上方に相当する位置にセンサ3bが設けられている。
センサ3bは、スペース20aにおける食品の有無を検出することができる。センサ3bにおける測定結果は、制御部3に送信される。制御部3は、測定結果に基づき回転機構41のモーターを制御する。センサ3bの例としては、赤外線センサ、超音波センサ、各種の光電センサ、画像センサ、重量センサなどが挙げられるが、センサの種類については特に問わない。
制御部3は、スライド式ドアの開放後、スペース20aに食品が配置されていることを確認したら、回転機構41のモーターを制御し、次の食品が配置できるように調理容器20を回転させる。スライド式ドアの開放後、スペース20aに食品が配置されていない場合、制御部3は、調理容器20を回転させず、スライド式ドアを再度開放し、食品の再投入を試みる。
また、本実施形態では、センサによってスペース20aにおける食品の有無のみを確認しているが、調理容器20全体の食品の配置や個数を計測してもよい。また、図3におけるセンサの配置は例であり、これとは異なる位置にセンサを設置してもよい。また、複数のセンサによる計測を行うことを妨げない。
本実施形態に係る配置機構は、貯蔵部10の制御と、滑り台16と、上述の回転機構41の制御により、調理容器20の周方向に複数個の食品を配置する。配置機構の動作例については、後述する。
図5および図6は、第1の実施形態に係る搬送部の構成例を示している。以下では、図5、図6を参照しながら、搬送部40の詳細について説明する。
搬送部40は、上述の調理容器20の回転移動を実現する回転機構41以外に、鉛直方向に移動する昇降部42と、水平方向に移動する水平移動部44を有する。
まず、鉛直方向の移動を実現する昇降機構の例について説明する。本実施形態に係る昇降機構は、昇降部42と、フレーム43と、ガイドレール43aとを含む。
フレーム43は、ガイドレール43aが鉛直方向になるように配置されている。昇降部42は、ガイドレール43aに沿って、移動可能に支持されたスライダである。また、昇降部42は、支持部42aを介して回転機構41に連結されている。支持部42a、昇降部42、フレーム43、ガイドレール43aの材質の例としては、アルマイト処理されたアルミニウムなどがあるが、その他の材料で形成されていてもよい。
フレーム43には、サーボモーターが内蔵されている。フレーム43の内部では、ボールねじ機構または、台形ねじ、ラックアンドピニオンなどの歯車機構により、サーボモーターの回転運動を直線運動に変換している。サーボモーターの制御は、制御部3が直接行ってもよいし、専用のコントローラが行ってもよい。この移動機構は一例であり、サーボモーターの代わりに直線運動を実現するリニアモーターなどを使ってもよい。
昇降機構によって昇降部42が鉛直方向に移動されると、回転機構41、蓋部31、調理容器20の高さが調整される。昇降機構による鉛直方向の移動操作は、例えば油槽50への調理容器20を出し入れ時に実行される。したがって、フレーム43、ガイドレール43aとして当該操作に充分な長さを有するものを選定する必要がある。
次に、水平方向の移動を実現する、水平移動機構の例について説明する。本実施形態に係る水平移動機構は、水平移動部44と、フレーム45と、ガイドレール45aとを含む。
フレーム45は、ガイドレール45aが水平方向になるように配置されている。水平移動部44は、ガイドレール45aに沿って、移動可能に支持されたスライダである。また、水平移動部44には、昇降機構のフレーム43が連結されている。このため、垂直移動機構、回転機構41、蓋部31、調理容器20は水平移動部44にしたがい、水平方向に移動する。水平移動部44、フレーム45、ガイドレール45aの材質の例としては、アルマイト処理されたアルミニウムなどがあるが、その他の材料で形成されていてもよい。
フレーム45には、サーボモーターが内蔵されている。フレーム45の内部では、ボールねじ機構または、台形ねじ、ラックアンドピニオンなどの歯車機構により、サーボモーターの回転運動を直線運動に変換している。サーボモーターの制御は、制御部3が直接行ってもよいし、専用のコントローラが行ってもよい。この移動機構は一例であり、サーボモーターの代わりに直線運動を実現するリニアモーターなどを使ってもよい。
水平移動機構により、油ちょう食品提供処理の各ステップにおいて、調理容器20の貯蔵部10の側面、油槽50、包装部70の間の移動が可能となる。
図5、図6では、スライダ式の電動アクチュエータを使って昇降機構と水平移動機構を実現しているが、これは一例に過ぎない。スライダ式の電動アクチュエータに代わり、電動シリンダ、油圧シリンダ、エアシリンダ、ジップチェーンアクチュエータなど、その他の種類のアクチュエータを用いてもよい。また、昇降機構と水平移動機構は必ず同じ種類のアクチュエータでなくてもよく、別の種類のアクチュエータであってもよい。
図6の右下には、食品が油切りされているときのフライヤーが示されている。以下では、図6を参照しながら、本実施形態に係るフライヤー100を説明する。
フライヤー100は、略円筒形の油槽50を有する。略円筒形の油槽は一例であり、これとは異なる形状の油槽を用いることを妨げるものではない。油槽50の上面は、開放されている。また、油槽50の内径は調理容器20の外径より大きくなっている。このため、図6に示されているように、油槽50の内側に調理容器20を挿入することができる。油槽50の素材として、例えばステンレス鋼などを用いることができるが、充分な耐熱性があるのであれば、その他の素材であってもよい。
油槽50は、内壁の上部に吸気口51と、排気口52を備えている。吸気口51と排気口52は、油槽50の内壁に対向するように配置されているのが望ましい。これにより吸気口51からの空気の流入方向と排気口52からの空気の流出方向が一致する。ただし、吸気口51と排気口52の配置はこれに限定されない。例えば、空気の流入方向と空気の流出方向が90度から180度の間の角度をなすよう、吸気口51と排気口52を配置してもよい。なお、吸気口51および排気口52にはダクトが接続されていてもよい。ダクトの接続先は屋外でも、屋内のいずれであってもよい。
油槽50の内部には、食用油が注入されている。油槽50への食用油の供給と、油面53の高さの調整は油供給機構によって自動的に行われてもよい。また、油槽50の上面から手動で食用油の注入や油面53の調整を行ってもよい。図6の場合、油面53は、吸気口51および排気口52の下端と、導波管61の上端の間の高さに調整される。この油面53は一例であり、油面53をこれとは異なる高さに調整してもよい。なお、図6では油供給管100aと、ポンプ101と、油タンク102を含む油供給機構と、油濾過機50aは省略されている。
油槽50に注入された食用油は、ヒーター55によって加熱される。ヒーター55は、例えば電熱線による加熱を行う電熱線ヒーターである。ヒーター55は油槽50の底面に配置されているため、食用油を制御部3により指定された設定温度へすみやかに加熱することができる。油ちょう時における食用油の設定は例えば、摂氏160度から摂氏180度の間に設定される。食用油をこれとは異なる温度に設定してもよい。例えば、システムが油ちょう処理の実行されていない、スタンバイ状態にあるときには、食用油をこれより低い温度に保温(予熱)してもよい。
ヒーター55はその他の方式のものであってもよい。例えば、ヒーター55は電磁誘導加熱(IH)方式のヒーターであってもよいし、ガス方式であってもよい。また、図6、図7の例では、直接加熱方式が用いられているが、ヒーター55の配置および形状はこれとは異なっていてもよい。例えば、油槽内を通したヒートパイプにより食用油を加熱してもよい。
油槽50の側面には、導波管61が接続されている。導波管61は、油槽50の反対側でマイクロ波を生成するマイクロ波発振器60と連結されている。マイクロ波発振器60は、例えばマグネトロンまたは半導体回路などを内蔵した、マイクロ波を生成する装置である。マイクロ波発振器60で生成されたマイクロ波は、導波管61内を伝達し、油槽50の径方向に照射される。マイクロ波発振器60として、出力が例えば500W~1500Wの装置を用いることができる。この出力値は例であり、これとは異なる出力のマイクロ波発振器を使ってもよい。マイクロ波発振器60の出力は固定されていてもよいし、可変であってもよい。また、複数のマイクロ波発振器が設置されている場合には、稼働するマイクロ波発振器の台数を変更することによって、全体の出力を調整してもよい。
図6におけるマイクロ波発振器60と導波管61の配置は一例に過ぎない。例えば、導波管61を油槽50の上部に設け、油面53より高い位置からマイクロ波を照射してもよい。ただし、マイクロ波の照射を油面53の上方から行うと反射などによるエネルギー損失が大きくなる場合がある。
次に、フライヤー100によって食品が油ちょうされるときの配置について説明する。図7は、食品Fが調理されているときのフライヤー100を示している。以下では、図6と比較しながら、フライヤー100による油ちょう処理について説明する。
食品の油ちょう処理を行うとき、水平移動機構は食品が載った調理容器20を油槽50の上方に移動する。すなわち、制御部3は、水平移動機構に制御信号を送信し、水平移動部44をガイドレール45aに沿って移動する。制御部3は、水平移動部44を油槽50の上方に相当する座標位置で停止させる。
次に、昇降機構によって食品が載った調理容器20を降下させる。制御部3は、昇降機構に制御信号を送信し、昇降部42をガイドレール43aに沿って移動させる。制御部3は、蓋部31が油槽50の上端に接触したら、昇降部42の移動を停止する。これにより、油槽50は図7のように上面が蓋部31によって閉塞される。なお、図6および図7では、昇降部42は回転機構41の背面に位置している。
このとき、調理容器20の上端は、油面53より低い位置となる。調理容器20に載せられた食品の全体が食用油につけられた状態となっていることが望ましいが、食品の一部が食用油につけられていてもよい。図7の例では、食品Fと調理容器20が導波管61とほぼ同じ高さに配置されている。これにより、油ちょう中の食品Fへの効率的なマイクロ波の照射が可能となる。以降では、図7に示された調理容器20の位置を、調理容器20の油ちょう時配置と呼ぶ。
調理容器20は、食品の油ちょう時と油切り時に回転される。具体的には、制御部3は、回転機構41に制御信号を送信し、回転機構41内にあるモーターを回転させる。制御部3が送信する制御信号は、回転方向や回転速度に係る設定情報を含んでいてもよい。これにより、モーターと連結された軸30および調理容器20が設定情報に基づき回転する。調理容器20の回転速度として、例えば5rpm~180rpmの値を設定することができる。この回転速度の値は一例であり、これとは異なる値を用いてもよい。また、油ちょう時と油切り時における回転方向については特に問わない。
油ちょう中に油槽50内の食品を回転させ、それぞれの食品がマイクロ波を均一に吸収できるようにする。油槽内の位置によってマイクロ波の照射量が偏っている場合でも、各食品のマイクロ波の吸収量を均質化する。
食品Fの油ちょう後に調理容器20を回転することにより、食品Fに付着した食用油を飛ばすことができる。図6の右下には、食品が油切りされているときの調理容器20の位置が示されている。図6の例では、調理容器20が油槽50の上端と、油面53の間の高さに調整されている。すなわち、制御部3は油ちょう期間の経過後、昇降機構に制御信号を送信し、調理容器20を油面53より高い位置に移動させる。このような位置で油切りをすれば、食用油が油槽50の外に飛散せず、周囲を汚すことがなく、油槽内の油の減少も防ぐことができる。また、調理容器20の回転速度を高くすれば、食用油を高速に飛ばすことが可能になるため、油切り作業にかかる時間を短縮することができる。なお、後述のように回転動作以外の動きによって、食品の油切りを行ってもよい。
調理容器20が油ちょう時配置となったとき、調理容器20の底面下側は油槽50の底面の中心から上方に突出した軸54と接する。図6に示したように調理容器20の底面下側の中心には、軸54を受けるため、凹部25が設けられている。調理容器20の凹部25には、スラスト軸受などが配置されていてもよい。調理容器20が油ちょう時配置にあるとき、軸54と凹部25は、回転機構41による回転軸a上に位置する。すなわち、軸54は油ちょう時配置にある調理容器20を下から支え、調理容器20のぶれを軽減し、調理容器20の回転を安定化させる。調理容器20の回転の安定化は、油槽50の内壁への衝突を防止するとともに、食品への均一なマイクロ波の照射にも寄与する。
以降では、このような機構を回転安定化機構と呼ぶものとする。なお、回転安定化機構の実装は必須ではないが、軸30が長い場合や、設置環境における揺れや衝撃などが予想される場合には、システムに実装をするのが望ましい。
図6および図7に示された回転安定化機構は一例であり、これとは異なる構造を用いてもよい。例えば、軸30が調理容器20を貫通しており、軸30を受けるスラスト軸受が油槽50の底面に設けられた構成を用いることができる。
図8および図9は、調理済み食品が包装されるときの動作を示している。一方、図10は、このときに調理容器を正面視したときの構成を示している。以下では、図8~10を参照しながら、包装部70の動作例について説明する。
包装部70では調理容器20に載せられた食品を提供容器81に移し替える。本実施形態に係る包装部70は、フラップ71と、軸部72と、滑り台73を含む。フラップ71は、一辺で軸部72と連結している板状の構造物である。軸部72は、略円筒形状の構造物であり、フラップ71の位置を固定している。軸部72は、電動アクチュエータなどの機械によって移動可能に固定されていてもよい。この場合、軸部72の移動は、制御部3から送信される信号に基づいて制御される。
フラップ71と軸部72は、例えばポリウレタン、ゴムなどの弾力性のある素材で形成されている。フラップ71の材料に抗菌剤を添加してもよい。なお、軸部72の内部には金属製の棒などが埋め込まれていてもよい。これらの材料は一例であり、その他の材料を用いることを妨げるものではない。滑り台73は、例えばステンレス鋼などの金属で形成されているが、その他の材料で作られていてもよい。
フラップ71と滑り台73は調理容器20の水平方向の移動を遮らない位置に配置されている。図8は、調理容器20が油槽50から包装部70内の所定の位置に移動する前の構成を示している。図8の例に示されているように、調理容器20は、包装部70内の所定の位置に達するまで水平方向に移動される。
包装部70内の所定の位置では、調理容器20の上端がフラップ71の下端より低くなり、調理容器20の下端が滑り台73の上端の高さに等しくなる。また、調理容器20底面の外周は滑り台73の上端に接するか、近接する。図10では、調理容器20の、滑り台73の上端に面したスペース20bを斜線で示している。後述するように、このスペース20bにある食品は、調理容器20より押し出され、滑り台73上に落下する。
なお、包装部70の内部にセンサを設け、調理容器20が所定の位置にあることを検出できるようにしてもよい。センサの例としては、赤外線センサ、超音波センサ、各種の光電センサ、画像センサなどが挙げられるが、センサの種類については特に問わない。制御部3は当該センサにより調理容器20が所定の位置まで移動したことを検出したら、調理容器20の水平移動を停止することができる。
図9は、調理容器20が包装部70の所定の位置に移動した後の構成を示している。図9は斜視図となっている。図10も同じく調理容器20が包装部70の所定の位置に移動した後の構成を示している。図10は調理容器20を平面視したときの平面図となっている。なお、図10では、調理容器20上の食品Fが省略されている。
調理容器20が包装部内の所定の位置に配置されたら、回転機構41は調理容器20の回転を開始する。図8~10の例の場合、調理容器20は上面を正面視したときに反時計周りとなる方向(図8~10のL´方向)に回転している。回転動作に伴い、調理容器20上の食品Fは、フラップ71に押し付けられる。このとき、食品Fは反作用としてフラップ71から滑り台73の方向に力を加えられる。
なお、図8、図9の例における回転方向は一例であり、これとは異なる方向に調理容器20を回転してもよい。
力を加えられた食品Fは、調理容器20から押し出され、滑り台73に落とされる。調理容器20の囲い板22が可動に装着されている場合、食品Fか力を加えられた囲い板22は外側に傾けられる。滑り台73には、調理容器20側からみて下り傾斜がつけられているため、食品Fは滑り台73を滑り落ちる。滑り台73の下方には、提供容器81が配置されているため、食品Fは提供容器81の中に収納される。提供容器81は、滑り台73の下方の位置に自動的に配置されてもよいし、利用者が手動で配置してもよい。センサにより提供容器81の設置有無の確認を行い、提供容器81が設置されていない場合には、パッケージストッカーから提供容器81を取り出し、滑り台73の下方に配置する機構を実装してもよい。パッケージストッカーとは、複数の提供容器81を格納できる構造物のことをいう。パッケージストッカーの形状や構造は特に限定しない。使用する提供容器81の形状や種類によって応じたパッケージストッカーを選ぶことができる。パッケージストッカーは提供容器81の格納位置の一例である。
図8、図9の例に示された提供容器81はカップ型の紙容器であるが、その他の形状や種類の容器を使ってもよい。また、図8、図9の例では調理済みの食品を収納した提供容器81の内部を密封していないが、さらに提供容器81の蓋を閉じたり、ポリエチレンラップなどで密封したりしてもよい。
調理容器20を360度回転させると、調理容器20上のすべての食品を提供容器81に収納することができる。すべての食品が提供容器81に入れられたら、調理容器20を包装部70内の所定の位置から、貯蔵部10の側面など、システムのその他の場所に移動することができる。
ここまで説明した包装部70の機構は一例に過ぎない。これとは異なる方法で調理済みの食品を提供容器に収納してもよい。例えば、調理容器20を傾斜させ、食品を提供容器81内に落下させてもよい。また、調理容器20の小孔24に充分な大きさがあるのであれば、調理容器20の下側から食品を持ち上げて、調理容器20の外に出してもよい。この場合、例えば小孔24の配置に合わせた突起を有する部材、ブラシ、弾力性のあるゴム、ウレタン、スポンジなどを調理容器20の底面に押しつける。油槽50から持ち上げられた調理容器20の下に、提供容器81を水平移動し、食品を提供容器81に収容してもよい。
図11、図12は、油ちょう食品提供処理のフローチャートである。以下では、図11および図12を参照しながら、本実施形態に係る油ちょう食品提供処理を説明する。
最初に、油ちょう食品提供システム1は調理対象(少なくとも食品の種類または個数のいずれか)、調理条件を含む、開始信号を受信する(ステップS101)。通信部2により受信された開始信号は、制御部3に転送される。開始信号を送信する機器の種類と送信タイミングは特に問わない。開始信号は、例えば電子レジスター、POS端末、発注端末、コンビニエンスストアのマルチメディアステーション、専用のリモコン、装置上の操作ボタン、セルフオーダー端末、自動販売機、データセンター内のサーバ、パソコン、デジタルテレビ、スマートフォンなどの情報処理装置から送信される。
開始信号の送信タイミングの例としては、食品の注文時、バーコードやQRコードなどの読み取り時、代金支払い完了時、食品の購入時、調理開始ボタン押下時、什器に保管された食品の数がしきい値を下回ったとき、販売データを分析し所定の条件を満たしたとき、調理データを分析し所定の条件を満たしたとき、端末で所定の操作が行われたとき、ウェブサーバで注文が受理されたとき、タイマが所定の時刻に達したとき、プログラムにおいて所定のイベントが発生したときなどが挙げられる。また、開始信号の送信タイミングは、調理対象の食品や送信元の装置によって異なっていてもよい。
なお、什器に保管された食品の数は、収納物の重量、扉の開閉回数、赤外線センサ、超音波センサ、各種の光電センサ、画像センサなどの計測値などに基づいて推定することができる。什器に保管された食品の数は、食品の種類ごとに測定してもよい。販売データの分析では、時間当たりの販売数が多い食品を特定してもよいし、過去の販売データから需要が高まることが予想される食品の特定を行ってもよい。
食品の種類は、から揚げ、カツレツ、コロッケ、春巻、餃子、てんぷら、揚げ菓子、パン、揚げかまぼこ、シーフードフライなどの食材や、塩、醤油、味噌、カレー、チーズ、辛口、シナモン、メープル、きな粉などの味付けなどによって区別される。これらの食材および味付けは例であり、その他の食材や味付けの食品を提供してもよい。ステップS101で指定される複数の種類の食品を指定してもよい。例えば、塩味とチーズ味と辛口のから揚げを同時に指定してもよい。また、例えばカツレツとコロッケを同時に指定してもよい。
食品の個数とは、油ちょうする食品の数である。食品の個数は1点であってもよいし、複数点であってもよい。指定される食品の個数は、調理容器20のスペースの数に等しくてもよいし、それより少なくてもよい。複数の種類の食品を指定する場合、食品の種類ごとに個数を指定してもよい。開始信号で食品の個数が指定されない場合には、調理容器20のスペースの数に等しい数の食品を調理してもよい。顧客に揚げたての商品を提供することを優先する場合、食品の数を例えば、販売における1食分に含まれる食品の数に設定することができる。なお、調理対象では他に食品の重量または体積の指定を行ってもよい。
調理条件には、上述のように調理時の細かい条件を設定することができる。細かい条件を設定することにより、食材に合わせた最適な調理を行うことができる。
調理条件を開始信号の受信後に別途取得してもよい。例えば、開始信号から食品の種類に係る情報を抽出し、外部のサーバなどから当該食品に対応する調理条件をダウンロードしてもよい。また、調理条件を常に油ちょう食品提供システム1の外部から取得しなくてもよい。各食材の調理条件に係るデータが予め記憶部3aに保存されているのであれば、当該データを利用して調理を行ってもよい。すなわち、油ちょう食品提供システム1は食品の種類、個数、調理条件を開始信号とは別の信号で受信してもよい。
なお、油ちょう食品提供システム1における調理対象の食品が1種類のみである場合は、食品の種類を指定しなくてもよい。この場合、油ちょう食品提供システム1は開始信号を受信したら、当該食品に特化した条件で調理を始める。
そして、油ちょう食品提供システム1は指定された食品を貯蔵部10から出し、調理容器20に載せる(ステップS102)。食品を貯蔵部10から出し、調理容器20に載せるときの動作は図2の説明で述べた通りである。ここでは、指定された食品が貯蔵された部屋のスライド式ドアを開く。複数の種類の食品が同時に指定された場合には、ステップS102が実行される回によって、異なる部屋のスライド式ドアが開けられる。
次に、食品が調理容器20に載っているかを判定する(ステップS103)。制御部3は、センサ3bによる計測値に基づき、食品が調理容器20に載せられているか否かを判断することができる。ステップS103における判定結果によって処理が分岐する。食品が調理容器20に載っていると判断された場合、次のステップS104の処理に進む。食品が調理容器20に載っていないと判定された場合、制御部3は、ステップS102に戻り、スライド式ドアを開放して調理容器20への食品の再投入を試みる。
食品が滑り台16の前面にあるスペース20aに載せられたら、調理容器20を回転する(ステップS104)。上述のように、制御部3は食品がスペース20aの位置にあることを、センサ3bが検出してから、調理容器20を回転してもよい。調理容器20上の別の空きスペースが滑り台16の前面に配置されるよう、回転角度が調節される。調理容器20の回転角度の詳細については、後述する。
次に、所定の数の食品が調理容器20上に載せられたか否かを確認する(ステップS105)。ステップS105における所定の数は、調理容器20のスペース数以下であればよい。例えば、ステップS101で食品の個数が指定された場合、指定された個数の食品が調理容器20に載せられたかを確認する。食品の個数が指定されない場合、スペース数に等しい数の食品が調理容器20に載せられたかを確認してもよい。
ステップS105における判定結果によって、処理が分岐する。所定の数の食品が調理容器20に載せられていると判定された場合、ステップS106に進む。調理容器20に載せられている食品の数が所定の数に満たないと判定された場合、ステップS102に戻り、次の食品を調理容器20に載せる。
調理容器20に載せられた食品の数は、センサ3bによる食品の検出回数をカウントすることによって求めてもよいし、調理容器20を回転した回数によって求めてもよいし、調理容器20にかかっている荷重に基づき推定してもよい。また、これらの方法を組み合わせてもよいし、その他の方法で食品の数を求めてもよい。
図13~図22は、本実施形態に係る配置機構の動作例を示している。図13~図22では、配置機構が調理容器20のすべてのスペース(所定箇所)に食品Fを配置する場合の動作が示されている。以下では、図13~図22を参照しながら、本実施形態に係る配置機構による、調理容器20の周方向への複数の食品の配置に係る工程の一例を説明する。
図13は、図3に示した調理容器20を回転したものである(ステップS104)。すなわち、制御部3はセンサ3bより調理容器上に食品Fが載せられていることを検出するので(ステップS103)、調理容器20を回転する(ステップS104)。本実施形態に係る調理容器20は、60度ごとに区切られたスペースを6つ備えている。既に第1の食品Fが載せられているスペースに隣接する空きスペースに次の食品Fを載せる場合、調理容器20を60度回転する必要がある。よって、図13では図3に比べて調理容器20がL方向に60度回転されている。図13では、調理容器20上に1点の食品Fしか載せられておらず、所定の数(6点)に満たない。ステップS105の判定により、処理はステップS102に戻る。
次に、第2の食品Fが貯蔵部10から出し、調理容器20上のスペースに載せる(ステップS102)。図14は、図13に示した調理容器20に第2の食品Fを載せたものである。第1の食品Fと第2の食品Fは同じ種類の食品であってもよいし、異なる種類の食品であってもよい。食品Fは調理容器20に載せられているため(ステップS103)、次の食品Fを調理容器20に載せられるよう、調理容器20を回転する(ステップS104)。図15は、図14に示した調理容器20をL方向に60度回転したものである。図15では、調理容器20上の食品Fは2点であり、所定の数(6点)に満たない。ステップS105の判定により、処理はステップS102に戻る。
次に、第3の食品Fが貯蔵部10から出し、調理容器20上のスペースに載せる(ステップS102)。図16は、図15に示した調理容器20に第3の食品を載せたものである。第3の食品Fは、第2の食品Fと同じ種類の食品であってもよいし、異なる種類の食品であってもよい。食品Fは調理容器20に載せられているため(ステップS103)、次の食品Fを調理容器20に載せられるよう、調理容器20を回転する(ステップS104)。図17は、図16に示した調理容器20をL方向に60度回転したものである。図17では、調理容器20上の食品Fは3点であり、所定の数(6点)に満たない。ステップS105の判定により、処理はステップS102に戻る。
次に、第4の食品を貯蔵部10から出し、調理容器20上のスペースに載せる(ステップS102)。図18は、図17に示した調理容器20に第4の食品を載せたものである。第4の食品Fは、第3の食品Fと同じ種類の食品であってもよいし、異なる種類の食品であってもよい。食品Fは調理容器20に載せられているため(ステップS103)、次の食品Fを調理容器20に載せられるよう、調理容器20を回転する(ステップS104)。図19は、図18に示した調理容器20をL方向に60度回転したものである。図19では、調理容器20上の食品Fは4点であり、所定の数(6点)に満たない。ステップS105の判定により、処理はステップS102に戻る。
次に、第5の食品は貯蔵部10から出し、調理容器20上のスペースに載せる(ステップS102)。図20は、図19に示した調理容器20に第5の食品を載せたものである。第5の食品Fは、第4の食品Fと同じ種類の食品であってもよいし、異なる種類の食品であってもよい。食品Fは調理容器20に載せられているため(ステップS103)、次の食品Fを調理容器20に載せられるよう、調理容器20を回転する(ステップS104)。図21は、図20に示した調理容器20をL方向に60度回転したものである。図21では、調理容器20上の食品Fは5点であり、所定の数(6点)に満たない。ステップS105の判定により、処理はステップS102に戻る。
次に、第6の食品は貯蔵部10から出し、調理容器20上のスペースに載せる(ステップS102)。図22は、図21に示した調理容器20に第6の食品を載せたものである。第6の食品Fは、第5の食品Fと同じ種類の食品であってもよいし、異なる種類の食品であってもよい。食品Fは調理容器20に載せられているため(ステップS103)、次の食品Fを調理容器20に載せられるよう、調理容器20を回転する(ステップS104)。調理容器20はL方向に60度回転される。調理容器20上には食品Fが6点載せられており、所定の数に等しい。ステップS105の判定により、処理はステップS106に進む。
上述の動作は一例にしか過ぎない。例えば、第6の食品Fを調理容器20に載せた時点で、食品の数が所定の数に達したことを検出し、ステップS106に進んでもよい。これにより、余分な回転操作を省略することができる。
油ちょうする食品の個数は、調理容器20のスペース数より少なくてもよい。例えば、指定された食品の個数が4点である場合には、図18または図19の段階で、次の処理に進むことができる。また、調理容器20が一度に回転する角度は60度でなくてもよい。例えば、指定された食品の個数が3点である場合には、ステップS104で120度の回転を行ってもよい。
調理容器20のスペース数と、指定された食品の個数に基づき、それぞれの食品が調理容器20の中心に対して略等しい角度をなすよう、配置することができる。例えば、調理容器20のスペース数が指定された食品の個数で割り切れる数である場合、中心に対して略等しい角度をなす配置とは、食品を中心に対して互いに同じ角度をなすスペースに配置することをいう。例えば、調理容器20のスペース数が指定された食品の個数で割り切れない場合、中心に対して略等しい角度をなす配置とは、それぞれの食品が調理容器20の中心に対してなす角度が可能な限り均等になるよう、食品を配置するスペースを決めることをいう。
上述のような、調理容器20への食品の配置を行い、調理容器20に配置された食品へ均等にマイクロ波が照射されるよう、指定された食品の個数と、食品が配置されるスペースの対応関係を示したデータを記憶部3aに保存してもよい。
以下では、再び図11および図12のフローチャートの説明に戻る。
調理容器20に所定の数の食品が載せられたら、制御部3は水平移動機構および垂直移動機構に制御信号を送信する。これにより、調理容器20は貯蔵部10の側面から油槽50の内部に移動される。調理容器20の移動方向と移動量は、油ちょう食品提供システム1の構成要素の配置に依存する。すなわち、食品が載った調理容器20は、油槽50に投入され、油槽50が蓋部31により閉鎖される(ステップS106)。安全性を確保するため、センサなどによって、油槽の蓋が閉められたことを確認する処理を行ってもよい。以下では、調理容器20が油槽に投入された時刻を調理開始時刻tsと定義する。
ステップS106の時点までに、油槽50内の食用油は調理条件で定められた温度に加熱されているものとする。食用油の温度制御の方法については特に問わない。例えば、油ちょう食品提供システム1が電源に接続され、スタンバイ状態にあるとき、140度~160度に食用油の温度を維持する。この場合、開始信号を受信したら食品の種類に応じた温度まで食用油を加熱することができる。油ちょう食品の提供を高速化するのであれば、開始信号の有無に関わらず、食用油の温度を特定の食品の調理条件で定められた温度に設定してもよい。
また、油槽50内の食用油を高速に加熱することができるのであれば、油ちょう食品提供システム1がスタンバイ状態にあるときの予熱の温度を下げてもよいし、予熱を行わなくてもよい。これにより、食用油の加熱時間が必要となるものの、ランニングコストを抑えることができる。また、上述のスタンバイ時の予熱温度は一例であり、これとは異なる温度で食用油を加熱してもよい。
そして、食品の油ちょう処理に並行して提供容器の準備を開始する(ステップS107)。この提供容器は、現在調理している食品の盛り付けや収納を行うためのものである。提供容器は食品の調理の完了までに包装部70内の所定の位置に設置されていればよい。したがって、ステップS107の実行タイミングは図11と異なっていてもよい。提供容器の準備は装置によって自動的に行われてもよいし、手動で行われてもよい。提供容器が自動的に用意される場合、パッケージストッカーから提供容器を取り出し、所定の位置に設置する。パッケージストッカー内の提供容器の残個数が少ない場合、通知部4から通知を行ったり、通信部2から外部の端末にメッセージなどを送信したりしてもよい。また、食品の種類によって使用する提供容器の種類や包装方法を変更してもよい。
食品が油槽50内に投入されたら、調理容器を回転しながら、油槽内の食品にマイクロ波を照射する(ステップS108)。調理容器の回転と、マイクロ波の照射は調理条件に基づいて行われる。食品の均一な加熱のためには、少なくともマイクロ波の照射時間の間に、調理容器を回転するのが望ましい。なお、調理容器の回転速度と回転方向については特に問わない。
図23~図25は、マイクロ波の照射パターンの例を示している。以下では、図23~図25を参照しながら、マイクロ波の照射パターンについて説明する。
図23~図25のグラフでは、縦軸がマイクロ波の出力(マイクロ波電力)Eを示している。一方、横軸は時刻を示している。図23~図25では上段と下段に異なる照射パターンが対比的に示されている。
マイクロ波はパルス信号によって照射してもよいし、連続信号によって照射してもよい。図23~図25では、例としてパルス信号のマイクロ波が照射されている場合を示している。マイクロ波の照射は、調理開始時刻tsから油ちょう時間pyが経過するまでの間、すなわち時刻[ts、ts+py]の期間内に行うことができる。
図23の上段では、油ちょう時間pyとマイクロ波照射時間pmが等しくなっており、全油ちょう期間においてマイクロ波の照射が行われている。一方、図23の下段では、py>pmとなっており、油ちょう期間の一部についてのみマイクロ波の照射が行われている。このように、油ちょうがされている一部の期間についてのみマイクロ波の照射を行ってもよい。マイクロ波の照射時間pmを変更することによって、食品へのマイクロ波の照射量を調整することができる。図23の例では、下段のグラフより、上段のグラフの方がマイクロ波の照射量が多い。また、油ちょう時間内pyにおけるマイクロ波の照射時間pmの長さを変更してもよいし、開始時刻や終了時刻を変更してもよいし、マイクロ波照射の開始と終了を繰り返してもよい。
図24の上段では、パルス信号のデューティ比(Duty Cycle)が図23の例に比べて小さくなっている。一方、図24の下段では、パルス信号のデューティ比が図23の例に比べて小さくなっている。このように、パルス信号のデューティ比を調整し、食品へのマイクロ波の照射量を調整してもよい。図24の例では、上段のグラフより、下段のグラフの方がマイクロ波の照射量が多い。
図25の上段では、信号の出力が図23、図24の例に比べて大きくなっている。一方、図25の下段では、信号の出力が図23、図24の例に比べて小さくなっている。このように、信号の出力値を変更して、食品へのマイクロ波の照射量を調整してもよい。図25の例では、下段のグラフより、上段のグラフの方がマイクロ波の照射量が多い。
上述ではマイクロ波の照射量(照射エネルギー)の調整方法をいくつか説明した。それぞれの例では、異なる種類のパラメータを調整していた。複数の種類のパラメータを調整し、マイクロ波の照射量を変更してもよい。また、マイクロ波の照射期間の途中でパラメータ設定を変更してもよい。すなわち、ある時刻でパルス信号のデューティ比や信号の出力などが変化してもよい。同様に、マイクロ波照射中の調理容器20の回転速度は一定であってもよいし、途中で変化してもよい。
調理条件において、ある食品への照射エネルギーの合計値が指定されている場合には、実際に照射されるエネルギーが指定値と等しくなるよう、照射時間pm、パルス信号のデューティ比、マイクロ波の電力などの値を調整する。この場合、制御部3で動作するプログラムや回路などが、それぞれのパラメータに係る設定値を計算する。フライヤー100の機能上の制約により、これらのすべてのパラメータが制御できない場合には、一部のパラメータのみを使って照射エネルギーの合計値を調整してもよい。調理条件において、照射エネルギーの合計値が指定されていると、マイクロウェーブフライヤーの機種ごとの差異を吸収できる利点がある。
一般に、マイクロ波の照射量は、調理する食品の種類に応じて決定される。食品内部の水分量が多い場合には、マイクロ波照射による加熱効果が大きくなる。一方、食品内部の水分量が少ない場合には、マイクロ波照射による加熱効果は限定的である。また、食品のマイクロ波の吸収効率が低い場合、マイクロ波の照射量を増やす必要がある。一方、マイクロ波の吸収効率が高いと、マイクロ波の照射量を大きく増やさなくてもよい。食品内部の水分量、マイクロ波の吸収効率などの物性値は、例えば、同一の食材と調味料を使い、同一の手順で調理した食品サンプルからの計測値を用いることができる。
食品の物性値から求めたマイクロ波の照射量に基づいて、調理条件におけるパラメータの値を決めてもよい。また、同一の食品を複数の条件において調理し、最適な調理条件を実験や経験値などから求めてもよい。調理条件は、調理後の食品の食味や調理時間の長さなどから決めることができる。
以下では、再び図11および図12のフローチャートの説明に戻る。
制御部3は、定期的に現在時刻tcを取得し、調理開始時刻からの経過時間tc-tsが油ちょう時間pyに達したか否かを確認する(ステップS109)。まだ油ちょう時間pyが経過していない場合には、ステップS108に戻り油ちょう処理を継続する。油ちょう時間pyを経過している場合には、次のステップS110に進む。油ちょう時間の管理に並行し、マイクロ波の照射設定の確認も行われる。すなわち、調理条件で定められたマイクロ波の照射時間pmが経過しているか否かを確認する。時間pmが経過している場合には照射を停止し、時間pmが経過していない場合には、照射を継続する。
次に、食品が載った調理容器20を油面53より上に引き上げる(ステップS110)。このとき、調理容器20は昇降機構によって、図6右側に示された、油面53と油槽50の上端の間の高さに移動される。この操作により、調理容器20上の食品は油面53から離れる。そして、油槽50内で、調理容器20上の食品の油切りを行う(ステップS111)。調理容器20上の食品の油切りは、例えば、回転機構41による調理容器20の回転によって行う。回転動作による油切りを行う場合、調理容器20は、マイクロ波の照射時から継続して回転されていてもよいし、回転を一度停止し、油切り時に回転を再開してもよい。
回転以外の動作によって食品の油切りを行ってもよい。例えば、昇降機構によって調理容器20を上下方向に揺らし、油切りを行ってもよい。また、水平移動機構によって調理容器20を水平方向に揺らして油切りを行ってもよい。さらに、回転、昇降、水平移動のいずれかを組み合わせて油切りを行ってもよい。すなわち、調理容器20に何らかの動きが加えられるのであれば、油切りの方法については特に問わない。調理条件で油切りの時間や油切りの方法が指定されている場合には、指定された時間または方法による油切りを行ってもよい。また、油ちょう食品提供システム1で規定された時間および方法による油切りを行ってもよい。
油切りの処理が終了したら、食品が載った調理容器20を油槽50の外に出す(ステップS112)。昇降機構は、調理容器20全体を油槽50の外に出す。必要であれば水平移動機構も使い、調理容器20を包装部70内の所定の位置に移動する。
調理容器20が包装部70内の所定の位置に移動されたら、調理容器20上の食品を提供容器に収容する(ステップS113)。包装部70における動作は図8、図9に係る説明で述べた通りである。ステップS113ではどのような種類の提供容器を用いてもよい。ステップS113における包装は、厳密な意味での包装に限らず、単なる盛り付けなど、容器への収容操作であってもよい。すなわち、ステップS113で食品は提供容器に密閉状態で包装されてもよいし、食品を密閉せずに容器に格納してもよい。また、食品を提供容器の上に単に載せる操作だけを行ってもよい。
最後に、利用者へ油ちょう食品を提供する(ステップS114)。利用者は取り出し部80の取り出し口から、油ちょう食品が入った提供容器を取り出すことができる。油ちょう食品は、箸、フォーク、楊枝などとともに提供されてもよい。提供容器の取り出しは、店員が行ってもよいし、顧客が行ってもよい。また、通知部4によって食品の調理が完了した旨の通知を行ってもよい。
ステップS114で油ちょう食品をただちに利用者に提供せず、什器、ショーケースやゴンドラなどに保管してもよい。油ちょう食品の保管は自動的に行われてもよいし、手動で行われてもよい。以上で油ちょう食品の調理および提供に係る処理は完了する。
本発明の油ちょう食品提供システムにより、揚げたての油ちょう食品を、短時間(例えば、食品の投入から約2分以内)で提供することができるようになる。これにより、什器保管を経ていない油ちょう食品の提供が可能となり、什器保管に伴う品質や食味の低下に係る問題を解決することができる。また、調理から提供までの処理が自動的に実行されるため、油ちょう食品の調理と提供に長い時間や大きな労力がかからなくなる。
また、本発明のシステムを用いると、油ちょう処理が自動化されるため、手作業でフライヤーに食品を出し入れする場合に比べ、安全性が高い。また、人の手に触れることなく、調理から包装までの工程が行われるため、良好な衛生状態で食品を提供することができる。
また、コンビニエンスストアなどでは、調理済みの油ちょう食品が売り切れた場合、次回に店員が調理を行うまでに販売機会を喪失してしまう問題があった。しかし、本発明に係るシステムでは、顧客の購入時に必要な分だけを調理し提供するため、このような販売機会損失の問題は発生しない。
顧客の購入後、短時間で揚げたての油ちょう食品を提供できるのであれば、油ちょう食品が什器保管される割合を減らすことが可能である。什器保管される食品の量を減らせるのであれば、保管期限を超えた調理済み食品の廃棄量を削減できる。
また、本発明に係るシステムを使うと、複数個の食品が均質に油ちょうされ、加熱ムラや焦げの発生を防止する。したがって、関連技術によるフライヤーを使って調理をする場合に比べ、良好な食味を得ることができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係る油ちょう食品提供システムでは、外部の情報処理装置などから送信される開始信号から食品の種類や調理条件に係る情報を取得していた。食品の種類や調理条件はその他の手段によって取得されてもよい。第2の実施形態に係る油ちょう食品提供システムでは、提供容器から食品の種類や調理条件に係る情報を読み取り、調理を行う。
図26は、第2の実施形態に係るシステム全体の構成例を示している。以下では、図26を参照しながら、第1の実施形態との差異点を中心に説明する。
図26の油ちょう食品提供システム1は、取り出し部80の内部に認識部90を備えている。認識部90は、提供容器が有する識別情報を読み取り、食品の種類や調理条件などを取得する。なお、識別情報は食品の個数、重量や体積を含んでいてもよい。図27は、提供容器と認識部の配置例を示している。なお、認識部90は取り出し部80の外部にあってもよく、認識部90の配置については特に問わない。
なお、調理対象となる食品や調理条件の設定操作は利用者が行い、識別情報を設定された食品の種類、個数、購入者のうち、少なくともいずれかの照合のために用いてもよい。この場合、購入者が取り出し部80にセットした容器が正しいものであるか否かの判断を行うことができる。利用者は食品や調理条件の設定を、例えば操作部6を使って行うことができる。
図27の例では、側面に光学式センサ91を備えた認識部90の前面に、提供容器81が配置されている。提供容器81の前面下部には二次元コード82が付されている。二次元コード82は提供容器81に直接印字されていてもよいし、シールなどによって貼り付けられたものであってもよい。二次元コード82の例としてはQRコードなどがある。QRコード以外に1次元のバーコードなど、その他の種類のコードを用いてもよい。
認識部90は光学式センサ91により二次元コード82を読み取る。認識部90は、二次元コード82に含まれる識別情報を抽出し、制御部3に送信する。識別情報には、食品の種類や調理条件が含まれているため、油ちょう食品提供システム1は外部の情報処理装置などにアクセスすることなく、調理を開始することができる。油ちょう食品提供システム1は、識別情報を読み取ったら、ただちに調理を開始してもよいし、開始ボタンの押下をもって調理を開始してもよい。また、外部からの開始信号の受信をもって調理を開始してもよい。識別情報に食品の個数、重量や体積などが含まれている場合、指定された個数、重量または体積の食品の調理を始める。
制御部3は、識別情報に含まれる食品の種類や調理条件をそのまま使って調理を開始してもよいし、フライヤー100の特性に適合するよう、調理条件を変換してから調理を行ってもよい。また、油ちょう食品提供システム1で調理される食品が1種類である場合には、識別情報に食品の種類に係る情報を含めなくてもよい。また、図26の油ちょう食品提供システム1は、通信部2を備えているが、二次元コード82から必要な情報をすべて取得できるのであれば、通信部2を備えていなくてもよい。
また、図27の認識部90と提供容器81の配置は一例にしか過ぎない。取り出し部80の形状や二次元コード82の配置に合わせ、認識部90の構成を決めることができる。
提供容器にその他の方法により識別情報を付してもよい。例えば、提供容器上の絵や色彩を画像認識によって認識し、対応する食品の種類や調理条件を特定してもよい。また、提供容器にマイクロチップを埋め込み、認識部90がマイクロチップと無線通信を行うことによって識別情報を取得してもよい。油ちょう食品提供システム1のその他の構成要素の機能と構造は第1の実施形態と同様である。
図28、図29は第2の実施形態に係る油ちょう食品提供処理のフローチャートである。以下では、図28、図29を参照しながら第1の実施形態に係るフローチャートとの差異点を中心に説明する。
最初に、識別情報が付された提供容器を所定の位置に配置する(ステップS201)。提供容器が置かれる所定の位置の例としては、取り出し部80内の認識部90の前面が挙げられるが、その他の位置であってもよい。ステップS201の作業は店員によって行われてもよいし、顧客などが行ってもよい。顧客がステップS201の作業を行う場合、手順は次の通りとなる。顧客は、例えば、レジで油ちょう食品の対価を支払い、識別情報が付された提供容器を受け取る。顧客は、識別情報が付された提供容器を取り出し部80内に置き、操作部6の調理開始ボタンを押下する。
次にステップS202で、提供容器から食品の種類や調理条件が読み取られる。以降の処理は、提供容器の準備を行う処理がない点を除けば、第1の実施形態に係るフローチャートと同様である。
(第3の実施形態)
上述の各実施形態では、貯蔵部から自動的に調理前の食品が投入されていたが、調理前の食品を手動でシステムに投入してもよい。第3の実施形態では、食品が手動で投入される場合について説明する。
図30は、第3の実施形態に係るシステム全体の構成例を示している。以下では、図30を参照しながら第1の実施形態との差異点について説明する。
第3の実施形態に係る油ちょう食品提供システムは、第1の実施形態に係るシステムに比べ構成が単純化されている。具体的には、本実施形態に係るシステムでは、通信部と、油供給管、ポンプ、油タンクなどの油供給機構と認識部90が省略されている。また、本実施形態に係るシステムでは、貯蔵部に代わり、食品投入部103が設けられている。
図31は、本実施形態に係る食品投入部の構成例を示す断面図である。食品投入部103は、例えば食品投入口103aを備えた滑り台状の構造物である。利用者が、油ちょう前の食品Fを食品投入口103aに入れると、食品Fは、食品投入部103内を自重により滑り落ちる。食品Fはさらに、滑り台16を介して調理容器20のスペース20aに落下する。食品Fは例えば、冷凍庫から取り出された直後の冷凍食品である。食品Fが常温の食品や冷蔵された食品であってもよいのは、上述の各実施形態と同様である。
図31の食品投入部103の構造は一例であり、これとは異なる構造であってもよい。例えば、食品投入口103aに食品Fを複数投入した場合に、食品Fが1点ずつ調理容器20に落下する機構を実装してもよい。また、図31には、食品Fを冷却する手段がないが、冷凍機などを追加し冷凍食品の鮮度を維持できるようにしてもよい。また、食品投入部103のような自重で食品を調理容器20に落下させる構造を設けずに、利用者が手作業で食品を調理容器20に配置してもよい。その他の構成要素の機能と構造は、第1の実施形態に係るシステムと同様である。
図32、図33は第3の実施形態に係る油ちょう食品提供処理のフローチャートである。食品の種類、個数、調理条件を含む開始信号を受信するステップ(ステップS101)と、食品を貯蔵部から出し、調理容器に載せるステップ(ステップS102)と、食品が調理容器に載っているかを確認するステップ(ステップS103)と、調理容器を回転させるステップ(ステップS104)、所定の数の食品が調理容器上にあるのかを確認するステップ(ステップS105)がなくなり、代わりに調理前の食品を手動で調理容器上に配置するステップ(ステップS301)と、利用者が提供容器を所定の位置に置くステップ(ステップS302)と、利用者の操作により、操作部から調理条件が設定されるステップ(ステップS303)が追加されている点を除けば、第1の実施形態に係るフローチャートと処理は同様である。
(第4の実施形態)
上述の各実施形態では、調理容器に配置された食品を加熱された食用油中に投入し、さらに食用油中の食品に対してマイクロ波を照射することによって食品を調理していた。しかし、この調理方法は一例にしかすぎない。食品に対するマイクロ波の照射が行われ、加熱された食用油が食品の表面に付着されるのであれば、上述の各実施形態とは異なる方法で食品を調理してもよい。例えば、食品全体を食用油に浸けずに、食品の表面に加熱された食用油を散布することによって油ちょうを行うことも可能である。以下では、加熱された食用油の散布による油ちょうが行われる、油ちょう食品提供システムおよび油ちょう食品提供方法について説明する。
図34は、第4の実施形態に係るシステムの構成例を示したブロック図である。
図34の油ちょう食品提供システム1aは、通信部2と、制御部3と、記憶部3aと、通知部4と、操作部6と、蓋部31と、マイクロ波発振器60と、包装部70と、取り出し部80と、油タンク102aと、チェンバー110と、回転機構113と、ヒーター115と、ポンプ114と、配置調整機構116と、投入部130と、開閉機構140と、搬出機構141とを備えている。チェンバー110は、内部の構成要素としてノズル111と、ステージ112とを備えている。
油ちょう食品提供システム1aは、第1~第3の実施形態に係る油ちょう食品提供システムとは異なり、食品全体を食用油に浸けずに、食品へ食用油を散布することによって油ちょうを行う。このため、食品全体を食用油に浸けて油ちょうを行う場合と比べ、食用油の使用量を抑制し、コストの削減をはかることができる。また、食品に散布される食用油の量を調整することにより、油ちょう食品のカロリーを減らすことも可能となる。また、食品の油っぽさを抑え、良好な風味と食感を有する油ちょう食品を提供することも可能となる。
通信部2は、外部の装置との間でデータ通信を行うための機能を提供する通信回路である。通信部2の機能は、第1の実施形態に係る通信部2と同様である。なお、油ちょう食品提供システム1aは、必ず通信部2を備えていなくてもよい。
制御部3は、油ちょう食品提供システム1aの各構成要素の制御を行うハードウェア回路である。制御部3は、各構成要素に制御信号を送信し、各ステップの処理を実現する。例えば、制御部3は、各食品の調理条件にしたがって、食用油の温度調整、食用油の噴射タイミングの調整、マイクロ波の照射タイミングの調整などを行ってもよい。制御部3は第1の実施形態と同様、時刻の計測のため、クロックやカウンタなどを備えていてもよい。
制御部3は、第1の実施形態と同様、各種のハードウェア回路で実現されてもよい。また、制御部3の機能は、プロセッサおよびプロセッサ上で実行されるプログラムまたは命令の組み合わせによって実現されていてもよい。この場合、プログラムまたは命令は記憶部3aに保存されていてもよい。
なお、油ちょう食品提供システム1aが通信部2を備えている場合、制御部3は通信部2を介して外部の装置から、決済が完了した旨の信号を受信し、当該信号の受信を条件に食品の投入、調理を開始してもよい。
記憶部3aは、命令、プログラム、プログラムの実行に必要なデータ、各食品の調理時における各構成要素の制御方法などのデータを保存可能な記憶領域を提供するデバイスである。記憶部3aの種類、配置については特に限定しない。
通知部4は、油ちょう食品提供システム1aの利用者または管理者に各種の情報を通知するデバイスである。通知部4の構成は第1の実施形態と同様である。
なお、油ちょう食品提供システム1aが通信部2を備えている場合、ショートメールまたは電子メールの送信、電話発信、ウェブサイトの更新などの手段によって各種の情報の通知を行ってもよい。なお、油ちょう食品提供システム1aは必ず通知部4を備えていなくてもよい。
操作部6は、利用者または管理者に油ちょう食品提供システム1aを操作する手段を提供するデバイスである。操作部6の構成は、第1の実施形態と同様である。投入部130からは調理対象の食品が油ちょう食品提供システム1aに投入される。投入部の詳細については後述する。
図35はチェンバー110の構成例を示した斜視図である。チェンバー110は上面が開放された容器である。図35のチェンバー110は略円筒形状となっているが、チェンバー110の形状はこれに限定されない。チェンバー110の材料の例としては、ステンレス鋼などの金属が挙げられるが、チェンバー110はどのような種類の材料で構成されていてもよい。図35に示されたように、チェンバー110の空間内では、食品の調理(油ちょう)が行われる。図35の蓋部31はチェンバー110を上方から閉鎖しているが、蓋部31は開閉機構140によって開閉可能に構成されているものとする。
チェンバー110は、食品が安全に調理される空間を提供する構造物である。チェンバー110は油槽の一例である。したがって、チェンバー110内の空間に、食用油を溜めることが可能である。
調理対象の食品の例としては、鶏肉を含む各種の肉類、魚肉を含む各種の魚介類、野菜類、穀類を原材料とする澱粉質の食材、これらの組み合わせ、餃子や春巻などの点心類、菓子類などが挙げられるが、どのような種類の食品であってもよい。調理対象の食品は冷凍食品であってもよいし、冷蔵された食品、または常温の食品であってもよい。すなわち、チェンバー110内に投入されるときの食品の温度については特に問わない。
ステージ112は調理対象の食品Fが載せられる構造物の一例である。ステージ112として、織金網、亀甲金網、クリンプ金網、ひし形金網、溶接金網などの金網を使うことができるが、どのような種類の金網を用いてもよい。ステージ112は例えば、ステンレス鋼、銅、黄銅、アルミニウムなどの金属材料で構成されているものとするが、ステージ112はどのような種類の材料で構成されていてもよい。したがって、金属以外の材料で形成されたメッシュが使われてもよく、ステージ112はどのような材料で形成されていてもよい。また、メッシュの編み方、線径、ピッチについては特に問わない。ただし、食品底面の固着および焦げ付きの防止、食用油の流下の容易性、食品底部への食用油の付着の容易性、油切りのしやすさの観点からは、食品底面との接触面積が少なく、ワイヤ間の間隙が大きいメッシュを用いることが好ましい。ただし、ワイヤ間の間隙の大きさや、食品底面との接触面積は、調理対象の食品を破損したり、変形させたりすることなく、当該食品を支持できる範囲内のものであることが好ましい。なお、ステージ112として、パンチングメタルなど、穿孔の施された板状の構造物を用いてもよい。穿孔の施された板状の構造物は金属以外の材料で形成されていてもよい。ステージ112として、接面に凹凸を設けられたプレート状の構造物を用いてもよい。
また、図35のステージ112は平面視略円形状となっているが、ステージ112の形状については特に限定しない。ステージ112は軸74を介して回転機構113と連結されているものとする。このため、回転機構113の稼働時において、ステージ112は破線a´を回転軸とした回転運動を行う。回転機構113は、回転運動を行う機械である。回転機構113の例としては、モーターなどの電気機械が挙げられるが、どのような種類の機械を使ってもよい。
なお、ステージ112は必ず軸74を介して回転機構113と連結されていなくてもよい。すなわち、回転機構113の動力をステージ112に伝達させる方法については特に問わない。例えば、ステージ112を回動可能な構造物の上に載置または固定し、当該構造物をモーターによって回転させることによって、ステージ112の回転動作を実現してもよい。例えば、チェンバー110の底板を回動可能に構成することができる。図35のように、回転機構113の動力を軸によってステージ112に伝達してもよい。また、回転機構113の動力が歯車やベルトなどによって伝達されてもよい。このように、ステージ112へ回転機構113の動力を伝達する機構の構成については特に限定しない。
ステージ112は第1~第3の実施形態における調理容器に相当する。すなわち、第1~第3の実施形態の調理容器は食品の載置されるステージの一例である。上述のように、油ちょう食品提供システム1aでは、食品Fの全体を食用油に投入することなく、食品Fの油ちょうを行うため、油ちょう中の食品が食用油の中を浮遊することはない。このため、第1~第3の実施形態の調理容器のように食品を所定箇所に拘束する構造(例えば、調理容器20の仕切り板23で区切られたスペース)が不要となる。
ステージ112上の食品は決まった箇所に配置される必要はなく、ステージ112上の任意の位置に置かれればよい。また、メッシュ状のステージ112を使うことにより、油ちょうによる食品の底面の固着や焦げ付きを抑えることができる。このように、本実施形態のようなステージ112を使うことによって食品Fの投入と取り出しをより容易に行えるメリットがある。
ノズル111は、チェンバー110の側面から延出したノズルであり、シャワー孔が設けられている。また、後述するように、蓋部31の下面側にノズルが設けられてもよい。ノズル111のシャワー孔はステージ112の方向に設けられていてもよいし、これとは異なる方向に設けられていてもよい。シャワー孔はスリット状であっても、略円形状であっても、略楕円形状であってもよく、形状、大きさについては特に限定しない。また、シャワー孔の個数や密度についても特に問わない。食品の調理中において、ノズル111から加熱された食用油が吐出される。吐出された食用油の一部は、ステージ112上に置かれた食品Fに付着する。ステージ112の回転運動により、複数の食品Fに対して均一に食用油を付着させることができる。なお、ノズル111は、必ずチェンバー110の側面から延出していなくてもよい。例えば、チェンバー110の蓋部31の下面側にノズルが形成されていてもよい。すなわち、ノズルの配置については特に限定しない。
図35のノズル111は、ステージ112上の食品の上方から加熱した食用油を散布しているが、食用油の散布(噴射)が行われる方向については特に限定しない。例えば、チェンバー110の側面にノズルが設けられている場合には、食品の側面から食用油の散布(噴射)が行われてもよい。また、ステージ112の下方にノズルが設けられている場合には、食品の下方から食用油が噴射されてもよい。また、加熱した食用油の散布に使われるノズルの形状や構造については特に限定しない。例えば、回転しながら加熱された食用油を散布する回転ノズルを使ってもよい。これにより、食用油の散布量の偏りを少なくすることができる。
ノズル111から散布された食用油の一部は食品Fに付着する。また、食品Fの存在しない領域に散布された食用油と、食品Fの表面を滴り落ちた食用油はステージ112の網目(ワイヤ間の間隙)の間を降下し、チェンバー110の底部に溜まる。チェンバー110の底部に溜まった食用油は配管119を介してチェンバー110外に排出される。ノズル111に供給される食用油の流量を制御することにより、チェンバー110における油面53の高さを調整することが可能である。例えば、ノズル111に供給される食用油の流量を、配管119を経由した食用油の排出量より大きく設定すれば、油面53を上昇させることができる。また、ノズル111に供給される食用油の流量を、配管119を経由した食用油の排出量より小さく設定すれば、油面53を下げることができる。
ノズル111は加熱された食用油をステージ112に置かれた食品Fの上方から散布するため、食品Fの上側は油ちょうされやすい。一方、食品Fのノズル111と対向しない部分にはノズル111から散布された食用油が付きにくく、充分に油ちょうができないおそれがある。このような食用油の付着しにくい部分の例としては、食品Fの底面および底面近傍を含む底部が挙げられる。そこで、チェンバー110の底部に溜められた食用油を使って食品Fの底部を油ちょうすることができる。
図35の例では、ステージ112に置かれた食品Fの底部が食用油に触れるよう、ステージ112の上面までが食用油に浸される高さに油面53が調整されている。すなわち、食品Fの底部より上方の部分は食用油の外に露出している。したがって、ノズル111から散布された食用油を使って食品Fの底部より上方の部分を油ちょうし、チェンバー110の底部に溜められた食用油を使って食品Fの底部を油ちょうすることができる。食品Fが配置されるステージ112はワイヤ間に間隙にある構造物であるため、ステージ112によって下方から支持されている食品Fの底部に食用油を付着させることが可能となっている。
油面53の高さは、チェンバー110の側面に設けられた液面センサ3cによって計測される。液面センサ3cの詳細については後述する。本実施形態ではチェンバー110に食用油が溜められる構成を例に説明するが、ステージ112を食用油に浸すことが可能なのであれば、食用油をチェンバー110とは別の容器に溜めてもよい。
なお、図35に示した構成は一例にしか過ぎない。したがって、必ず食品Fの底部を食用油に浸漬させなくてもよい。例えば、食品Fの底部を油ちょうする必要がない場合には、食品Fの底部を食用油に浸さなくてもよい。すなわち、必ずステージ112の下方に食用油を溜めなくてもよい。また、調理中に食品Fをひっくり返し、食品Fの両側にノズル111から散布された食用油が付着されるようにしてもよい。
チェンバー110の側面には開口61aが設けられている。開口61aは導波管61の開口部に相当する。導波管61はマイクロ波発振器60に接続されている。マイクロ波発振器60の動作時には、開口61aからマイクロ波が照射される。開口61aは導波管カバーで覆われていてもよい。導波管カバーとしては、雲母製の板を使うことができるが、導波管カバーはどのような材料で構成されていてもよい。ステージ112の回転運動により、開口61aから放出されるマイクロ波は複数の食品Fに対して均一に当てられる。
はじめに、食品がチェンバー110内に投入されるときの動作について説明する。図36は、油ちょう食品提供システム1aの概略的な構成を示した図である。図36では、開閉機構140によって蓋部31が持ち上げられ、チェンバー110の上面が開放された状態となっている。投入部130において、食品Fは滑り台104を経由してチェンバー110内のステージ112上に置かれる。
投入部130に投入された食品は、調理条件に基づいて調理される。本実施形態において調理条件は、少なくとも食用油の加熱温度、マイクロ波の照射が行われるタイミング、食用油の付着が行われるタイミング、付着される食用油の量、食品の油ちょう時間、食品へのマイクロ波の照射時間マイクロ波に係る信号のデューティ比、マイクロ波の出力のうち、いずれかの内容を含むものとする。また、調理条件はマイクロ波の照射エネルギー、ステージの回転速度、油切りが行われる時間の長さに関する情報の少なくともいずれかを含んでいてもよい。また、調理条件にその他の情報が含まれていてもよい。
制御部3は、調理条件をどのような方法で取得してもよい。例えば、制御部3はプログラムで規定された手順に基づいて食品Fの調理を行ってもよいし、記憶部3aに保存されているいずれかの調理条件に係る情報に基づいて食品Fの調理を行ってもよい。また、制御部3は、通信部2を介して外部の装置から調理条件に係る情報をダウンロードし、ダウンロードした調理条件に基づいて食品Fの調理を行ってもよい。なお、上述の図27で説明したように、取り出し部80に配置された提供容器上の二次元コードを読み取る構成を用いることを妨げるものではない。
油タンク102aは配管119を介してチェンバー110の底部に接続されている。したがって、チェンバー110の底部に蓄えられた食用油は油タンク102aに排出される。ポンプ114は、油タンク102aから食用油を汲み上げ、食用油をノズル111に供給する。ヒーター115はポンプ114によって汲み上げられた食用油を加熱する。ポンプ114、ヒーター115は制御部3によって制御されているものとする。このため、制御部3はノズル111から供給される食用油の流量およびノズル111から供給される食用油の温度を制御することができる。
包装部70では、調理の終わった食品Fが提供容器に収納される。提供容器はどのような種類の容器であってもよい。また、包装部70は食品Fが収納された提供容器を密封してもよい。取り出し部80には、提供容器に収納された調理済みの食品Fが置かれる。利用者は、取り出し部80から提供容器に入った食品Fを取り出すことができる。取り出し部80は包装部70と同一の空間であってもよいし、異なる空間にあってもよい。
配置調整機構116は、チェンバー110内のステージ112の上に配置された食品の配置を調整する。搬出機構141は、調理完了後の食品Fをチェンバー110の外に搬出する。搬出機構141の詳細については後述する。
サイズの小さい食品を調理対象とする場合、食品がステージ上に片寄って配置される場合がある。このような食品の例としては、カット野菜(例えば、馬鈴薯、玉葱、カボチャ)や魚介類の切り身(例えば、イカ、タコ、鱈、エビ)が挙げられるが、どのような種類の食品であってもよい。例えば、複数の食品が側面側に固まって配置され、ステージ112上に均一に配置されていない場合、すべての食品に食用油を付着させることができなくなるおそれがある。また、調理中に食品F´どうしが固着してしまうおそれもある。そこで、配置調整機構116を使って、ステージ112上の食品の配置を均一化させてもよい。配置調整機構116の例としては、ステージ112上の食品を押し出す機構、ステージ112を搖動させる機構が挙げられるが、回転機構113を使ってもよい。
次に、食品の油ちょう時における油ちょう食品提供システム1aの動作について説明する。図37は、チェンバー内の食品の油ちょう時における動作の例を示している。図37では、開閉機構140によってチェンバー110の蓋部31が閉じられている。チェンバー110の内部空間が閉鎖されているため、調理時におけるマイクロ波の漏洩や食用油のチェンバー110外への飛散を防止することができる。図37の例では、マイクロ波発振器60で生成されたマイクロ波が導波管61を介してステージ112上の食品Fに照射されている。また、ノズル111からはヒーター115によって加熱された食用油がステージ112上の食品Fに食品に散布されている。そして、食品Fの底部はチェンバー110の底部に溜まった加熱済みの食用油に浸漬されている。ステージ112上の食品は回転機構113によって回転させられている。図37における各構成要素の動作の詳細については、図34および図35の説明で述べた通りである。
チェンバー110の側面には、液面センサ3cが設けられている。制御部3は液面センサ3cを介して油面53の高さに関する情報を取得する。制御部3は、液面センサ3cの計測値に基づいて、ポンプ114の吐出量を制御し、ノズル111から供給される食用油の流量を変更してもよい。例えば、油面53を上げる場合にはポンプ114の吐出量を増やし、油面53を下げる場合にはポンプ114の吐出量を減らす。液面センサ3cの方式については特に問わない。例えば、油面53までの距離に基づいて油面53の高さを推定するセンサを使ってもよいし、チェンバー110の底にかかる圧力を検出して油面53の高さを推定するセンサを使ってもよい。なお、油ちょう食品提供システム1aは必ずチェンバー110の底部における油面53の高さを計測するセンサを備えていなくてもよい。
図37の例では、マイクロ波の照射と食用油の散布が同時に行われている。ただし、必ずマイクロ波の照射と食用油の散布を常に同時に行わなくてもよい。図38は、マイクロ波の照射タイミングと食用油の噴射タイミングの例を示している。図38にはタイムチャート200、201が示されている。タイムチャート200、201において、横軸はいずれも時刻を示している。タイムチャート200に示されているように、マイクロ波の照射と加熱された食用油の散布を同時に開始してもよい。しかし、タイムチャート201のように加熱された食用油の散布を行う前に、マイクロ波の照射を開始してもよい。また、マイクロ波の照射を開始する前に、加熱された食用油の散布を行ってもよい。このように、マイクロ波の照射開始時刻と食用油の散布開始時刻は必ず一致していなくてもよい。
また、第1~第3の実施形態に係る食品提供システムにおいても、食品を加熱された食用油に浸漬させる前に、マイクロ波の照射を開始してもよい。ただし、食品を加熱された食用油に浸漬させずにマイクロ波の照射を行いたい場合、油槽50の油面53を食品Fより低く調整するか、食品Fが載せられた調理容器20を油面53より高い位置に移動させる必要がある。一方、第4の実施形態に係る食品提供システムでは、単にノズル111への食用油の供給を止めればよいため、食用油の散布を行わずに、食品へのマイクロ波の照射を行うことは容易である。第1~第3の実施形態に係る食品提供システムにおいて、マイクロ波の照射を開始する前に、食品を加熱された食用油に浸漬させてもよい。
また、マイクロ波の照射終了時刻と食用油の散布終了時刻は同時刻であってもよいし、マイクロ波の照射終了時刻と食用油の散布終了時刻が一致していなくてもよい。また、マイクロ波の照射が複数回繰り返されてもよいし、食用油の散布が複数回行われてもよい。すなわち、マイクロ波の照射期間が複数あってもよいし、食用油の散布期間が複数あってもよい。マイクロ波の照射期間と食用油の散布期間の少なくとも一部に時間的な重なりがあってもよいし、マイクロ波の照射と食用油の散布が異なる期間に行われてもよい。このように、マイクロ波の照射タイミングと食用油の散布タイミングについては特に限定しない。なお、マイクロ波の照射期間において、上述の図23~図25で説明したマイクロ波の照射パターンを使ってもよい。
食品に対するマイクロ波の照射と食用油の散布が終了したら、食品の油切りが行われる。油切り時に、制御部3はポンプ114の稼働を停止させる。このため、ノズル111からチェンバー110内への食用油の供給が止まる。チェンバー110の底部に溜められた食用油は配管119を通じて油タンク102aへ流出しているため、ノズル111からの食用油の供給が止まると油面53は低下する。油面53がステージ112より下方に低下したら、ステージ112上の食品の油切りを行うことができる。油切り時においては、油面53がステージ112より低ければよく、必ずチェンバー110内に溜められた食用油のすべてをチェンバー110の外に排出しなくてもよい。
ステージ112は軸74を介して回転機構113と連結されている。したがってステージ112に回転運動を加えることができる。これにより、ステージ112上の食品Fの表面に付着した余剰な食用油を飛ばすことができる。油切りにおいて飛ばされた食用油はチェンバー110の底部に落下し、配管119を介して油タンク102aに流れ出る。なお、油切り時におけるステージ112の回転速度および、油切りの行われる期間の長さについては特に限定しない。
なお、ここで述べた油切りの方法は一例にしかすぎず、これとは異なる方法を用いることを妨げない。例えば、ステージ112を搖動させてもよいし、ステージ112上の食品Fに対して送風を行って余剰な食用油を飛ばしてもよい。また、食品が載せられたステージ112を油面53より高い位置に移動させた後に食品の油切りを行ってもよい。すなわち、必ず油切りのために油面の高さを調整しなくてもよい。
次に、食品がチェンバーから取り出され、提供容器に収容されるまでの動作について説明する。図39は、チェンバーの内の食品を取り出す方法の例を示している。図39では、チェンバー110の側面に設けられた側面蓋118が開いている。側面蓋118は、制御部3によって制御された蓋開閉機構118aによって開閉される。側面蓋118の形状や開閉方法については特に問わない。図39のように、チェンバー110の側面に側面蓋118が設けられていてもよい。また、側面蓋118より、食品をチェンバー110内に入れてもよい。すなわち、油ちょう食品提供システムでは、蓋部31と側面蓋118の両方を有する構成を使ってもよい。また、チェンバー110の上面の蓋部31が省略され、側面蓋118を有する構成を使ってもよい。蓋部31が省略された場合、チェンバー110の上面は開閉可能ではなく、常に閉鎖された状態となる。
側面蓋118の反対側には、搬出機構141が設けられている。搬出機構141は、チェンバー110の外側に設置され、伸縮自在な軸部を備えたアクチュエータである。搬出機構141は、チェンバー110の外側からチェンバー110の側面を貫通している軸部と、軸部の先端に設けられたパッドとを備えている。
搬出機構141は調理済みの食品Fを側面蓋118よりチェンバー110の外側に押し出す。チェンバー110の外側に押し出された食品Fは滑り台105を経由して提供容器84内に収容される。提供容器84の上方に配置された滑り台105は包装部70の構成例となっている。上述のように、チェンバー110の側面から食品Fを取り出してもよい。ただし、図39に示された食品のチェンバーからの取り出し方法、包装方法は一例にしかすぎない。したがって、これとは異なる機構によって食品をチェンバーから取り出してもよいし、図39とは異なる方向から食品の取り出しを行ってもよい。例えば、チェンバー110の下方または上方から調理済みの食品を取り出してもよい。また、提供容器の種類によって、食品を異なる方法で包装することができる。
次に本実施形態に係る油ちょう食品提供システムによって実行される処理について説明する。図40は、第4の実施形態に係る油ちょう食品提供処理の例を示したフローチャートである。以下では、図40を参照しながら、処理を説明する。
はじめに、投入部130より、食品をシステムに投入する(ステップS401)。ステップS401は手動で行われてもよいし、機械によって自動的に行われてもよい。ここで、必要があればチェンバー110の蓋部31を開き、チェンバー110の上面を開放する。
そして、食品をチェンバー110内のステージ112上に配置する(ステップS402)。ステップS402の処理の詳細については、図36に係る説明で述べた通りである。次に、ステージ112上の食品の配置を調整する(ステップS403)。ステップS403の処理の詳細については、図37~図39の説明で述べた通りである。なお、ステップS403の処理については省略してもよい。
そして、チェンバー110の蓋を閉じる(ステップS404)。ステップS404の処理とステップS403の処理が実行される順序は入れ替わっていてもよい。ステップS404が実行された後、食品の油ちょう処理が実行される。すなわち、チェンバー110内のステージ112を回転させながら、食品に加熱された油を散布する(ステップS405)。また、食品の底面に加熱された食用油を付着させる(ステップS406)。ステップS406では、チェンバー内の油面の高さを調整する処理を実行してもよい。ステップS406の処理を省略してもよい。また、チェンバー110内のステージ112を回転させながら、ステージ112上の食品にマイクロ波を照射する(ステップS407)。
なお、図38の説明で述べたように、マイクロ波の照射期間と食用油の散布期間が実行されるタイミングについては問わない。したがって、ステップS405~S407のうち、少なくともいずれかのステップが並行して実行されてもよいし、異なる期間に実行されていてもよい。また、ステップS405~S407の少なくともいずれかのステップが繰り返し実行されてもよい。すなわち、ステップS405~S407の実行順序と実行回数は図40と異なっていてもよく、実行される順序と回数については特に問わない。
そして、食品へのマイクロ波の照射と、加熱された食用油の散布が終了したら、食品が載せられたステージ112を食用油から離し、食品の油切りを行う(ステップS408)。上述のように、ステージ112を食用油から離す方法と、食品の油切りを行う方法については特に限定しない。次に、チェンバー内から食品を取り出す(ステップS409)。チェンバー内から食品を取り出す方法の例については、図39で説明したが、これとは異なる方法を使ってもよい。
最後に、食品を提供容器に収容し、利用者に油ちょう食品を提供する(ステップS410)。ここで、使用される提供容器の種類については特に問わない。ステップS410では、通知部4を使って、利用者に食品の提供が可能となった旨の通知を行ってもよい。
(第5の実施形態)
本実施形態では、食品の含まれる格納容器が投入される貯蔵部の例について説明する。本実施形態に係る油ちょう食品提供システムの貯蔵部は、格納容器を貯蔵し、貯蔵されている格納容器内の食品を調理開始時にシステムに投入する。本実施形態で説明する貯蔵部は、上述の各実施形態に係る油ちょう食品提供システムに適用することが可能である。
本実施形態に係る貯蔵部の待機位置より、食品Fが格納された容器(格納容器)が投入される。格納容器は筒状であってもよいし、袋状であってもよいし、箱状であってもよく、缶詰であってもよく、どのような種類の容器であってもよい。格納容器には、識別情報が付されていてもよい。識別情報の例としては、調理条件などの情報を含む2次元バーコードが挙げられる。この場合、格納容器に付された調理条件や食材の種類に関する情報に基づき、格納容器内の食品の調理が行われる。
格納容器の投入は手動で行われてもよいし、機械によって自動的に行われてもよい。また、格納容器内に食品Fが封入されている場合には、開封機構を使って格納容器を開封してから食品Fの投入を行ってもよい。格納容器の開封方法の例としては、格納容器の切開、蓋の取り外し、シールやテープの取り外し、接着された箇所の取り外しなどがあるが、どのような方法で格納容器を開封してもよい。なお、格納容器の開封操作が不要である場合には、開封機構を省略してもよい。
格納容器は、提供容器と共通の容器であってもよい。提供容器と格納容器が共通の容器である場合、食品の投入が完了した格納容器は包装部70に移動される。そして、包装部70において、調理後の食品が格納容器に入れられる。そして、包装部70では調理後の食品が収容された格納容器に封を行ってもよい。
また、貯蔵部は複数の格納容器を貯蔵する機能を備えていてもよい。以下では、複数の格納容器を貯蔵する機能を備えた貯蔵部について説明する。
図41は、貯蔵部210の構成例を示している。待機部210は、各部屋の床12A~12Cがスライド式ドア14a~14cの外側まで続いている点、保護部材15および滑り台16が省略されている点を除けば、第1の実施形態に係る貯蔵部10と同様の構成となっている。貯蔵部210の各部屋には、格納容器83aが収容されている。それぞれの格納容器83aには、調理前の食品が格納されている。すなわち、貯蔵部210の各部屋は食品の待機位置として使われる。なお、各部屋の格納容器83aには、異なる種類の食品が格納されていてもよい。
図41の貯蔵部210は、第1~第3の実施形態で説明した、食品が加熱された食用油に浸漬される方式のフライヤーに適用可能である。すなわち、第1の実施形態における貯蔵部10を貯蔵部210に置き換えることができる。ただし、第1~第3の実施形態では格納容器から取り出された食品を調理容器上の所定の位置に置く必要がある。一方、第4~第8の実施形態に係るシステムでは、格納容器から取り出された食品をステージ112に置くだけでもよい。したがって、貯蔵部210を第1~第3の実施形態に係るシステムと組み合わせると、処理ステップを単純化することが可能となる。
このように、貯蔵部210を備えた構成を用いることにより、調理前の食品の投入から、食品の利用者への提供までのステップのすべてを自動化することが可能となる。制御部3は、通信部2が開始信号を受信したことを契機に、調理前の食品の投入を開始してもよい。なお、本実施形態に係る油ちょう食品提供システムのその他の構成要素の機能および構成は上述の各実施形態に係る油ちょう食品提供システムと同様である。なお、必ず格納容器を貯蔵する構成物である貯蔵部から食品が油ちょう食品提供システムに投入されなくてもよい。例えば、外部より食品が格納された格納容器が手動または自動で油ちょう食品提供システムに投入されてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲の限定することは意図していない、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。