JP7272018B2 - 絶縁回路基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板等の絶縁回路基板の製造方法に関する。
パワーモジュール用基板等の絶縁回路基板として、セラミックス基板からなる絶縁基板の一方の面に回路層が形成されるとともに、他方の面に金属層が形成されたパワーモジュール用基板が知られている。
例えば、特許文献1~3に開示されている絶縁回路基板は、AIN(窒化アルミ)、Al(アルミナ)又はSi(窒化ケイ素)からなるセラミックス基板の一方の面に銅又は銅合金からなる回路層が形成され、他方の面に銅又は銅合金からなる金属層が形成されている。このセラミックス基板と回路層及び金属層とは、セラミックス基板と回路層となる金属板、及びセラミックス基板と金属層となる金属板との間にろう材を介した積層体を形成し、この積層体を積層方向に加圧及び加熱することにより接合している。
特許第3211856号公報 特開2014-172802号公報 特開2016-039163号公報
ところで、絶縁回路基板に銅又は銅合金からなる回路層及び金属層を形成する際に、セラミックス基板と回路層となる金属板との間及びセラミックス基板と金属層となる金属板との間にろう材を介して接合する場合、接合信頼性を確保するため、上記各金属板よりもろう材の面積を大きくする必要がある。
しかしながら、上記各金属板よりもろう材の面積を大きくして、セラミックス基板と各金属板とを接合すると、上記積層体を加圧及び加熱する際に、ろう材が溶融することにより生じる溶融ろうが上記各金属板の側面を這い上がって各金属板の表面にまで広がり、いわゆるろうシミとなる現象が発生する。このろうシミが回路層に発生すると、回路層のはんだ濡れ性が低下するという問題がある。
この点、特許文献2に開示されている絶縁回路基板の製造方法では、余剰な溶融ろうの発生を抑制しているものの、溶融ろうが上記各金属板の側面を這い上がる現象を抑制することができない。また、特許文献3に開示されている絶縁回路基板の製造方法では、上記金属板のバリの高さを所定数値範囲内とすることでろうシミを抑制することとしているが、この場合においても、溶融ろうが上記各金属板の側面を這い上がる現象を完全に防止することは難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、回路層の表面におけるろうシミの発生を抑制して、回路層のはんだ濡れ性を向上できる絶縁回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の絶縁回路基板の製造方法は、セラミックス基板の一方の面に金属素材からプレス加工により打ち抜いた金属板をろう材を介して接合することにより絶縁回路基板を製造する絶縁回路基板の製造方法であって、プレス加工の際に前記金属板の厚さ方向の一部を前記金属素材から突出した状態に形成するプレス工程と、突出した前記金属板を前記セラミックス基板の一方の面に前記金属板の面積以上の面積のろう材を介して積層して積層体とする積層体形成工程と、前記積層体をその積層方向に加圧及び加熱して前記金属板を前記セラミックス基板に接合する接合工程と、前記接合工程後に、前記金属板を押圧して前記金属素材と分離させる分離工程と、を備える。
本発明では、金属板とセラミックス基板とをろう材を介して接合する際に、ろう材が溶融することにより生じる溶融ろうが金属板の側面を這い上がっても、金属板の側面の端部が金属素材と一体化しているため、側面を這い上がった溶融ろうが金属板の表面に達することを抑制できる。これにより、金属板の表面におけるろうシミの発生を抑制できる。また、この金属板が回路層として用いられる場合に、回路層の表面のはんだ濡れ性を向上できる。
なお、ろうシミとは、接合工程においてセラミックス基板と金属板との接合面から染み出した溶融ろうが金属板の側面を這い上がり、金属板の表面で固化したものをいう。
本発明の絶縁回路基板の製造方法の一つの態様としては、前記プレス工程では、前記金属素材から前記金属板を打ち抜いた後、打ち抜いた前記金属板を打ち抜き後の前記金属素材の打ち抜き孔内にプッシュバックすることにより、前記金属板の一部を前記金属素材の表面から突出した状態に形成してもよい。
上記態様では、金属板をプッシュバックすることにより金属素材と一体化しているため、接合工程後における分離工程において、金属板を金属素材から容易に分離できる。
本発明の絶縁回路基板の製造方法の他の一つの態様としては、前記プレス工程では、前記金属板を厚さ方向の途中まで打ち抜いて、前記金属板の一部を前記金属素材の表面から突出した状態に形成してもよい。
上記態様では、金属板を金属素材からいわゆる半抜き状態としていることから、金属板と金属素材との間に隙間が生じていないので、接合工程において生じる溶融ろうが金属板の側面を這い上がって、金属板の表面に広がることをより確実に抑制できる。
本発明の絶縁回路基板の製造方法の好ましい態様としては、前記金属板は、銅又は銅合金からなるとよい。
本発明の絶縁回路基板の製造方法の好ましい態様としては、前記絶縁回路基板が、前記セラミックス基板の前記一方の面に金属層が形成された絶縁回路基板であって、前記金属層が、前記金属板であって、前記金属層の表面における端縁からのろうシミの幅が0.2mm以下であり、前記金属層と前記セラミックス基板との接合率が95%以上である。
本発明の絶縁回路基板は、セラミックス基板の一方の面に金属層が形成された絶縁回路基板であって、前記金属層がジルコニウム添加銅合金であり、前記金属層の表面における端縁からのろうシミの幅が0.2mm以下であり、前記金属層と前記セラミックス基板との接合率が95%以上である。
本発明では、金属層の表面における端縁からのろうシミの幅が0.2mm以下で、金属層とセラミックス基板との接合率が95%以上であるので、この金属層が回路層として用いられる場合において、回路層の表面のはんだ濡れ性を向上できる。
本発明によれば、金属板の表面におけるろうシミの発生を抑制して、回路層のはんだ濡れ性を向上できる。
本発明の一実施形態に係る絶縁回路基板を用いたパワーモジュールを示す断面図である。 上記実施形態における絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図(その1)である。 上記実施形態における絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図(その2)である。 上記実施形態における絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図(その3)である。 図1に示す絶縁回路基板の製造方法の接合工程時におけるセラミックス基板の端部近傍を拡大して示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[絶縁回路基板の概略構成]
本発明に係る絶縁回路基板の製造方法により製造される絶縁回路基板1は、図1に示すように、いわゆるパワーモジュール用基板であり、絶縁回路基板1の表面には、図1の二点鎖線で示すように、素子30が搭載されパワーモジュール100となる。この素子30は、半導体を備えた電子部品であり、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の種々の半導体素子が選択される。この場合、素子30は、図示を省略するが、上部に上部電極部が設けられ、下部に下部電極部が設けられており、下部電極部が回路層12の上面にはんだ31等により接合されることで、素子30が回路層12の上面に搭載される。また、素子30の上部電極部は、はんだ等で接合されたリードフレーム等を介して回路層12の回路電極部等に接続され、パワーモジュール100が製造される。
[絶縁回路基板の構成]
絶縁回路基板1は、図1に示すように、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に接合された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に接合された放熱層13とを備える。なお、回路層12及び放熱層13は、本発明の金属層に相当する。
セラミックス基板11は、回路層12と放熱層13の間の電気的接続を防止する絶縁基板であって、例えばAIN(窒化アルミ)、Al(アルミナ)、Si(窒化ケイ素)等により構成されている。このセラミックス基板11は、厚さが0.3mm~1.0mmとされている。また、セラミックス基板11は、平面視で矩形板状に形成され、回路層12及び放熱層13のそれぞれよりも若干大きく形成されている。
回路層12は、無酸素銅等の銅又はジルコニウム添加銅合金等の銅合金により構成されている。この回路層12は、厚さが0.3mm~1.6mmとされている。また、回路層12は、平面視で矩形板状に形成され、セラミックス基板11よりも若干小さく形成されている。この回路層12は、図2及び図3に示すように、回路層12と同じ組成の金属素材120の一部をパンチ等により打ち抜かれた金属板12aがろう材14を介して接合されることにより形成される。
放熱層13は、無酸素銅等の銅又はジルコニウム添加銅合金等の銅合金により構成されている。この放熱層13は、回路層12と同じ組成であり、その厚さは、0.3mm以上1.6mmとされている。また、放熱層13は、平面視で矩形板状に形成され、回路層12と同じサイズとされている。この放熱層13も回路層12と同様に、図2に示すように、放熱層13の組成と同じ組成の金属素材130の一部をパンチ等により打ち抜かれた金属板13aがろう材14を介して接合されることにより形成される。
[絶縁回路基板の製造方法]
次に、本実施形態の絶縁回路基板1の製造方法について説明する。
その製造方法は、プレス加工の際に金属板12a,13aの厚さ方向の一部を金属素材120,130から突出した状態に形成するプレス工程と、突出した金属板12a,13aをセラミックス基板11にろう材を介して積層して積層体140とする積層体形成工程と、積層体140をその積層方向に加圧及び加熱して金属板12a,13aをセラミックス基板11に接合する接合工程と、接合工程後に、金属板12a,13aを押圧して金属素材120,130と分離させる分離工程と、からなる。以下、この工程順に説明する。
(プレス工程)
まず、図2に示すように、銅又は銅合金により構成される圧延された0.3mm~1.6mの板材(金属素材120,130)をプレス加工により打ち抜き金属板12a,13aを形成する。そして、打ち抜いた金属板12a,13aを打ち抜き後に金属素材120,130の打ち抜き孔121,131にプッシュバックすることにより、金属板12a,13aの一部を金属素材120,130の表面から突出した状態に形成する。具体的には、金属素材120は、金属板12aの上面側の部分を保持しており、金属素材120の下面側(セラミックス基板11側)に突出した状態とされ、金属素材130は、金属板13aの下面側の部分を保持しており、金属素材130の上面側(セラミックス基板11側)に突出した状態とされる。この場合、金属板12a,13aは、金属素材120,130の表面からその厚さ方向の約半分が突出することが好ましく、例えば、0.15mm~0.5mm突出する状態であるとよい。すなわち、金属板12a,13aと金属素材120の打ち抜き孔121,131の端面との厚さ方向の重なり量は、0.1mm~1.1mmであるとよい。
なお、打ち抜きとプッシュバックとは、打ち抜きパンチの1回のストローク内で連続して行われる。
この金属板12a,13aがプッシュバックされた(押し戻された)金属素材120,130のそれぞれは、金属板12a,13aを打ち抜き孔121,131に保持した状態で搬送される。これにより、金属板12a,13aは、図2に示すように、セラミックス基板11にそれぞれ対向する位置に搬送される。
(積層体形成工程)
次に、突出した金属板12aをセラミックス基板11の一方の面にろう材14を介して積層するとともに、突出した金属板13aをセラミックス基板11の他方の面にろう材14を介して積層して積層体140とする。このろう材14は、例えば、Ag-Cu-Ti系ろう材箔により構成され、セラミックス基板11と金属板12a,13aとの接合性の向上を鑑み、平面視で金属板12a,13aよりも若干大きく形成されている。
また、Ag-Cu-Ti系ろう材箔以外にも、ろう材14として、活性金属ろう材ペーストを用いることもできる。活性金属ろう材ペーストとしては、Ag-Cu-Ti系ろう材ペースト、Ag-Ti系ろう材ペースト、Cu-P系ろう材にTi等の活性金属を加えたペーストなどを用いることができる。活性金属ろう材ペーストであっても、平面視で金属板12a,13aよりも若干大きく形成される。
なお、金属板12a,13aは、図3に示すように、金属素材120,130に一体化された状態で積層される。
(接合工程)
次に、図3に示すように、積層体140をカーボン板51,52により挟持し、積層方向に荷重をかけながら真空中で加熱することにより、セラミックス基板11と金属板12a,13aとを接合する。このカーボン板51,52は、打ち抜き孔121,131の平面形状よりわずかに小さい平面形状であり、打ち抜き孔121,131内に挿入され、金属板12a,13aを押圧する。この場合、積層方向への加圧は0.1MPa~1.0MPa、加熱温度は800℃~880℃とするとよい。また、ろう材14は、厚さ3μm~100μmであるとよく、その面積は、金属板12a,13aの面積以上である。さらに、Ag-Cu-Ti系ろう材の他、Cu-P系ろう材を用いることもできる。
ここで、積層体140を上記条件に基づいて加圧及び加熱すると、ろう材14は溶融して溶融ろうとなり、セラミックス基板11と金属板12a,13aとの接合に用いられない余剰な溶融ろうが発生する。この余剰な溶融ろうは、例えば、図5に示すように、金属板12a,13aの側面を這い上がる。この点、本実施形態では、金属板12a,13aは、それぞれ金属素材120,130にプッシュバックされた状態、すなわち、金属板12a,13aの端部が金属素材120,130と一体化しているため、金属板12a,13aを這い上がった溶融ろうは、金属板12a,13aの表面(セラミックス基板11とは反対側の面)に達することを抑制している。
なお、溶融して金属板12a,13aの側面を這い上がった溶融ろうは、図5に示すように、金属板12a,13a及び金属素材120,130のセラミックス基板11側の面で固化して、残存ろう14aとなる。
(分離工程)
接合工程後、図4に示すように、金属板12a,13aをセラミックス基板11側に押圧して押し出すことにより、金属板12a,13aを金属素材120,130と分離させる。この場合、金属板12a,13aは、打ち抜き後、プッシュバックされることによりその一部が金属素材120,130から突出している状態であることから、金属板12a,13aを軽く押し出すだけでこれらを分離できる。すなわち、分離工程では、金属板12a,13aをセラミックス基板11に向けて軽く押し出すことにより金属素材120,130から分離させることができ、金属素材120,130に荷重がかかることを抑制している。
これにより、セラミックス基板11の一方の面に回路層12が形成され、他方の面に放熱層13が形成された絶縁回路基板1が形成される。そして、上記方法により製造された絶縁回路基板1は、回路層12及び放熱層13の表面の端縁から延びるろうシミの幅が0.2mm以下となる。
上記実施形態では、金属板12a,13aとセラミックス基板11とをろう材14を介して接合する際に、ろう材が溶融することにより生じる溶融ろうが金属板12a,13aの側面を這い上がっても、金属板12a,13aの側面の端部が金属素材120,130と一体化しているため、側面を這い上がった溶融ろうが金属板12a,13aの表面に達することを抑制でき、金属板12a,13aの表面にろうシミが発生することを抑制できる。特に、回路層12となる金属板12aの表面にろうシミが発生していないので、回路層12のはんだ濡れ性を向上できる。
なお、金属板12a,13aは、完全に打ち抜いた後に打ち抜き孔121,131内に押し戻したものであるため、接合工程後における分離工程において、金属板12a,13aを金属素材120,130から容易に分離できる。
その他、細部構成は実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記実施形態では、プレス工程においては、金属素材120,130から金属板12a,13aを打ち抜いた後、打ち抜いた金属板12a,13aを打ち抜き後の金属素材120,130の打ち抜き孔121,131内にプッシュバックすることにより、金属板12a,13aの一部を金属素材120,130の表面から突出した状態に形成することとしたが、これに限らない。例えば、プレス工程では、金属板12a,13aを厚さ方向の途中まで打ち抜いて、金属板12a,13aの一部を前記金属素材の表面から突出した状態に形成してもよい。具体的には、金属板12a,13aを金属素材120,130の厚さの半分以上を打ち抜き、かつ、金属素材120,130がせん断から破断に移行する直前まで打ち抜く。これにより、金属板12a,13aは、金属素材120,130の表面から0.15mm~0.5mm突出する状態となる。
この場合、金属板12a,13aを金属素材120,130からいわゆる半抜き状態としていることから、金属板12a,13aと金属素材120,130との間に隙間が生じていないので、接合工程において生じる溶融ろうが金属板12a,13aの側面を這い上がって、金属板12a,13aの表面に広がることをより確実に抑制できる。また、金属素材120,130の半分以上を打ち抜いていることから、金属板12a,13aを軽く押圧することで、一気に破断でき、容易に金属板12a,13aを分離できる。
上記実施形態では、金属素材120,130及び金属板12a,13aは、銅又は銅合金からなることとしたが、これに限らない。例えば、金属素材120,130及び金属板12a,13aは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることとしてもよい。
この場合、金属板12a,13aの厚さは、0.2mm以上5.0mm以下であることが好ましい。また、プレス工程において、金属板12a,13aは、金属素材120,130の表面から0.1mm~3.0mm突出する状態、すなわち、金属板12a,13aと金属素材120,130の打ち抜き孔121,131の端面との厚さ方向の重なり量は、0.1mm~2.0mmであるとよい。
また、接合工程において、金属板12a,13aとセラミックス基板11とは、Al-Si系、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系、Al-Mn系、又はAl-Si-Mg系ろう材からなるろう材14を介して接合されるとよい。ろう材14としては、箔材やペーストの形で用いることが可能である。このろう材14の厚さは、3μm以上100μm以下であるとよい。さらに、接合工程において、積層方向への加圧は0.1MPa~1.0MPa、加熱温度は600℃~660℃とするとよい。
上記実施形態では、絶縁回路基板1をパワーモジュール用基板として用いる例を説明したが、この絶縁回路基板1は、LED素子用基板等、各種の絶縁基板として用いることもできる。
次に、本発明の効果について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1~4及び比較例1~4の試料を構成する部材には、板厚0.32mm、46mm×46mmの窒化珪素セラミックスからなるセラミックス基板を用意するとともに、板厚0.8mmの無酸素銅からなる金属素材を37mm×37mmのサイズで打ち抜いた金属板を用意した。
具体的には、実施例1については、金属素材を上記サイズで打ち抜いた後、打ち抜いた金属板を打ち抜き後の金属素材の打ち抜き孔内にプッシュバックすることにより、金属板の一部を金属素材の表面から0.4mm突出させた状態とし、金属板より大きいサイズで厚さ13μmのAg-Ti10質量%のろう材箔介してセラミックス基板に積層して積層体を形成し、積層体を積層方向に加圧及び加熱してこれらを接合した後、金属板を押圧して金属素材から分離させて実施例1の試料とした。
また、実施例2については、金属素材を上記サイズで厚さ方向の途中まで打ち抜いて、金属板の一部を金属素材の表面から0.4mm突出させた状態とした。そして、表1に示す大きさの厚さ13μmのAg-Ti10質量%のろう材箔介してセラミックス基板に積層して積層体を形成し、積層体を積層方向に加圧及び加熱してこれらを接合した後、金属板を押圧して金属素材から分離させて実施例2の試料とした。
また、実施例3については、実施例1と同様の方法を用いたが、表1に示すようにろう材箔の大きさを異ならせ、金属板と同じ大きさのろう材箔を用いた。また、実施例4については、実施例2と同様の方法を用いたが、表1に示すようにろう材箔の大きさを異ならせ、金属板と同じ大きさのろう材箔を用いた。
なお、上記ろう材箔の大きさにおいて、金属板より大きいサイズとは、ろう材箔の各辺が金属板の各辺より100μm大きいことを意味している。
比較例1については、実施例1と同様の方法を用いたが、表1に示すように、ろう材箔の大きさを異ならせ、金属板より小さいサイズのろう材箔を用いた。なお、金属板より小さいサイズとは、ろう材箔の各辺が金属板の各辺より100μm小さいことを意味している。比較例2~4については、金属素材を上記サイズで打ち抜いた後、打ち抜いた金属板を表1に示す大きさのAg-Ti10質量%のろう材箔介してセラミックス基板に積層して積層体を形成し、積層体を積層方向に加圧及び加熱してこれらを接合した後、金属板を押圧して金属素材から分離させて比較例2~4の試料とした。具体的には、比較例2では、金属板より大きいサイズのろう材箔を用い、比較例3では、金属板より小さいサイズのろう材箔を用い、比較例4では、金属板と同じサイズのろう材箔を用いた。
なお、実施例1~4及び比較例1~4の試料においては、積層方向への加圧は0.2MPa、加熱温度は820℃で60分間行うことにより、セラミックス基板と金属板とを接合した。
そして、得られた各試料につき、以下の実験を行うことによりセラミックス基板と金属板との接合率、及び金属板の表面に生じたろうシミ量を評価した。
(接合率の評価)
セラミックス基板と金属板との接合率について、超音波探傷装置(日立パワーソリューションズ社製FINESAT)を用いて、セラミックス基板と金属板の界面を測定し、以下の式から算出した。ここで、接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち金属板の面積とした。超音波探傷像を二値化処理した画像において接合されていない領域は白色部で示されることから、この白色部の面積を非接合部面積とした。この接合率が95%以上のものを良好「A」と評価し、接合率が95%未満のものを不可「C」と評価した。結果を表1に示す。
(接合率)(%)={(接合面積)-(非接合部面積)}/(接合面積)×100
(ろうシミ量の評価)
ろうシミ量の評価は、光学顕微鏡を用いて、金属板の表面(セラミックス基板との接合面とは反対側の面)の各辺のランダムな三か所のろうシミ幅を測定した。このろうシミ幅は、金属板の表面の各辺(端縁)から表面の中心に向かう幅を測定し、これらの最大値をろうシミ幅とした。このろうシミ幅が0.1mm未満のものを良好「A」と評価し、ろうシミ幅が0.1mm以上0.2mm未満のものを可「B」と評価し、ろうシミ幅が0.2mmを超えているものについては不可「C」と評価した。
Figure 0007272018000001
表1からわかるように、プレス加工の際に金属板の厚さ方向の一部を金属素材から突出した状態とした実施例1~4は、ろうシミの評価が可「B」以上であり、特に金属板を厚さ方向の途中まで打ち抜いた(半抜き)状態でセラミックス基板と金属板とを接合した実施例1及び3は、ろうシミの評価が良好「A」であった。一方、プレス加工により打ち抜いた金属板をそのままセラミックス基板と接合した比較例2及び4では、ろうシミの評価が不可「C」であった。このため、金属板の表面にろうシミが生じることを抑制するには、プレス加工の際に金属板の厚さ方向の一部を金属素材から突出した状態とすることが有効であることを確認できた。一方、比較例3もプレス加工により打ち抜いた金属板をそのままセラミックス基板と接合しているものの、ろう材箔の大きさが金属板より小さかったため、溶融ろうの量が少なかったため、ろうシミの評価は、良好「A」であった。
なお、接合率は、ろう材箔の大きさが金属板の大きさ以上(金属板の大きさと同じか、それより大きい)のものがすべて良好「A」であることから、ろう材箔の大きさ(面積)を金属板の面積以上とすることで、金属板とセラミックス基板との接合率を向上できることがわかった。
1 絶縁回路基板
11 セラミックス基板
12 回路層(金属層)
12a 金属板
13 放熱層(金属層)
13a 金属板
14 ろう材14a 残存ろう
30 素子
31 はんだ
100 パワーモジュール
120 130 金属素材
121 131 打ち抜き孔

Claims (5)

  1. セラミックス基板の一方の面に金属素材からプレス加工により打ち抜いた金属板をろう材を介して接合することにより絶縁回路基板を製造する絶縁回路基板の製造方法であって、
    前記プレス加工の際に前記金属板の厚さ方向の一部を前記金属素材から突出した状態に形成するプレス工程と、
    突出した前記金属板を前記セラミックス基板の一方の面に前記金属板の面積以上の面積のろう材を介して積層して積層体とする積層体形成工程と、
    前記積層体をその積層方向に加圧及び加熱して前記金属板を前記セラミックス基板に接合する接合工程と、
    前記接合工程後に、前記金属板を押圧して前記金属素材と分離させる分離工程と、を備えることを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
  2. 前記プレス工程では、前記金属素材から前記金属板を打ち抜いた後、打ち抜いた前記金属板を打ち抜き後の前記金属素材の打ち抜き孔内にプッシュバックすることにより、前記金属板の一部を前記金属素材の表面から突出した状態に形成することを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板の製造方法。
  3. 前記プレス工程では、前記金属板を厚さ方向の途中まで打ち抜いて、前記金属板の一部を前記金属素材の表面から突出した状態に形成することを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板の製造方法。
  4. 前記金属板は、銅又は銅合金からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
  5. 前記絶縁回路基板が、前記セラミックス基板の前記一方の面に金属層が形成された絶縁回路基板であって、
    前記金属層が、前記金属板であって、
    前記金属層の表面における端縁からのろうシミの幅が0.2mm以下であり、前記金属層と前記セラミックス基板との接合率が95%以上であることを特徴とする請求項1から
    4のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
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