JP7272018B2 - 絶縁回路基板の製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1~3に開示されている絶縁回路基板は、AIN(窒化アルミ)、Al2O3(アルミナ)又はSi3N4(窒化ケイ素)からなるセラミックス基板の一方の面に銅又は銅合金からなる回路層が形成され、他方の面に銅又は銅合金からなる金属層が形成されている。このセラミックス基板と回路層及び金属層とは、セラミックス基板と回路層となる金属板、及びセラミックス基板と金属層となる金属板との間にろう材を介した積層体を形成し、この積層体を積層方向に加圧及び加熱することにより接合している。
しかしながら、上記各金属板よりもろう材の面積を大きくして、セラミックス基板と各金属板とを接合すると、上記積層体を加圧及び加熱する際に、ろう材が溶融することにより生じる溶融ろうが上記各金属板の側面を這い上がって各金属板の表面にまで広がり、いわゆるろうシミとなる現象が発生する。このろうシミが回路層に発生すると、回路層のはんだ濡れ性が低下するという問題がある。
なお、ろうシミとは、接合工程においてセラミックス基板と金属板との接合面から染み出した溶融ろうが金属板の側面を這い上がり、金属板の表面で固化したものをいう。
本発明の絶縁回路基板の製造方法の好ましい態様としては、前記絶縁回路基板が、前記セラミックス基板の前記一方の面に金属層が形成された絶縁回路基板であって、前記金属層が、前記金属板であって、前記金属層の表面における端縁からのろうシミの幅が0.2mm以下であり、前記金属層と前記セラミックス基板との接合率が95%以上である。
本発明に係る絶縁回路基板の製造方法により製造される絶縁回路基板1は、図1に示すように、いわゆるパワーモジュール用基板であり、絶縁回路基板1の表面には、図1の二点鎖線で示すように、素子30が搭載されパワーモジュール100となる。この素子30は、半導体を備えた電子部品であり、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の種々の半導体素子が選択される。この場合、素子30は、図示を省略するが、上部に上部電極部が設けられ、下部に下部電極部が設けられており、下部電極部が回路層12の上面にはんだ31等により接合されることで、素子30が回路層12の上面に搭載される。また、素子30の上部電極部は、はんだ等で接合されたリードフレーム等を介して回路層12の回路電極部等に接続され、パワーモジュール100が製造される。
絶縁回路基板1は、図1に示すように、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に接合された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に接合された放熱層13とを備える。なお、回路層12及び放熱層13は、本発明の金属層に相当する。
セラミックス基板11は、回路層12と放熱層13の間の電気的接続を防止する絶縁基板であって、例えばAIN(窒化アルミ)、Al2O3(アルミナ)、Si3N4(窒化ケイ素)等により構成されている。このセラミックス基板11は、厚さが0.3mm~1.0mmとされている。また、セラミックス基板11は、平面視で矩形板状に形成され、回路層12及び放熱層13のそれぞれよりも若干大きく形成されている。
次に、本実施形態の絶縁回路基板1の製造方法について説明する。
その製造方法は、プレス加工の際に金属板12a,13aの厚さ方向の一部を金属素材120,130から突出した状態に形成するプレス工程と、突出した金属板12a,13aをセラミックス基板11にろう材を介して積層して積層体140とする積層体形成工程と、積層体140をその積層方向に加圧及び加熱して金属板12a,13aをセラミックス基板11に接合する接合工程と、接合工程後に、金属板12a,13aを押圧して金属素材120,130と分離させる分離工程と、からなる。以下、この工程順に説明する。
まず、図2に示すように、銅又は銅合金により構成される圧延された0.3mm~1.6mの板材(金属素材120,130)をプレス加工により打ち抜き金属板12a,13aを形成する。そして、打ち抜いた金属板12a,13aを打ち抜き後に金属素材120,130の打ち抜き孔121,131にプッシュバックすることにより、金属板12a,13aの一部を金属素材120,130の表面から突出した状態に形成する。具体的には、金属素材120は、金属板12aの上面側の部分を保持しており、金属素材120の下面側(セラミックス基板11側)に突出した状態とされ、金属素材130は、金属板13aの下面側の部分を保持しており、金属素材130の上面側(セラミックス基板11側)に突出した状態とされる。この場合、金属板12a,13aは、金属素材120,130の表面からその厚さ方向の約半分が突出することが好ましく、例えば、0.15mm~0.5mm突出する状態であるとよい。すなわち、金属板12a,13aと金属素材120の打ち抜き孔121,131の端面との厚さ方向の重なり量は、0.1mm~1.1mmであるとよい。
なお、打ち抜きとプッシュバックとは、打ち抜きパンチの1回のストローク内で連続して行われる。
次に、突出した金属板12aをセラミックス基板11の一方の面にろう材14を介して積層するとともに、突出した金属板13aをセラミックス基板11の他方の面にろう材14を介して積層して積層体140とする。このろう材14は、例えば、Ag-Cu-Ti系ろう材箔により構成され、セラミックス基板11と金属板12a,13aとの接合性の向上を鑑み、平面視で金属板12a,13aよりも若干大きく形成されている。
また、Ag-Cu-Ti系ろう材箔以外にも、ろう材14として、活性金属ろう材ペーストを用いることもできる。活性金属ろう材ペーストとしては、Ag-Cu-Ti系ろう材ペースト、Ag-Ti系ろう材ペースト、Cu-P系ろう材にTi等の活性金属を加えたペーストなどを用いることができる。活性金属ろう材ペーストであっても、平面視で金属板12a,13aよりも若干大きく形成される。
なお、金属板12a,13aは、図3に示すように、金属素材120,130に一体化された状態で積層される。
次に、図3に示すように、積層体140をカーボン板51,52により挟持し、積層方向に荷重をかけながら真空中で加熱することにより、セラミックス基板11と金属板12a,13aとを接合する。このカーボン板51,52は、打ち抜き孔121,131の平面形状よりわずかに小さい平面形状であり、打ち抜き孔121,131内に挿入され、金属板12a,13aを押圧する。この場合、積層方向への加圧は0.1MPa~1.0MPa、加熱温度は800℃~880℃とするとよい。また、ろう材14は、厚さ3μm~100μmであるとよく、その面積は、金属板12a,13aの面積以上である。さらに、Ag-Cu-Ti系ろう材の他、Cu-P系ろう材を用いることもできる。
なお、溶融して金属板12a,13aの側面を這い上がった溶融ろうは、図5に示すように、金属板12a,13a及び金属素材120,130のセラミックス基板11側の面で固化して、残存ろう14aとなる。
接合工程後、図4に示すように、金属板12a,13aをセラミックス基板11側に押圧して押し出すことにより、金属板12a,13aを金属素材120,130と分離させる。この場合、金属板12a,13aは、打ち抜き後、プッシュバックされることによりその一部が金属素材120,130から突出している状態であることから、金属板12a,13aを軽く押し出すだけでこれらを分離できる。すなわち、分離工程では、金属板12a,13aをセラミックス基板11に向けて軽く押し出すことにより金属素材120,130から分離させることができ、金属素材120,130に荷重がかかることを抑制している。
これにより、セラミックス基板11の一方の面に回路層12が形成され、他方の面に放熱層13が形成された絶縁回路基板1が形成される。そして、上記方法により製造された絶縁回路基板1は、回路層12及び放熱層13の表面の端縁から延びるろうシミの幅が0.2mm以下となる。
なお、金属板12a,13aは、完全に打ち抜いた後に打ち抜き孔121,131内に押し戻したものであるため、接合工程後における分離工程において、金属板12a,13aを金属素材120,130から容易に分離できる。
上記実施形態では、プレス工程においては、金属素材120,130から金属板12a,13aを打ち抜いた後、打ち抜いた金属板12a,13aを打ち抜き後の金属素材120,130の打ち抜き孔121,131内にプッシュバックすることにより、金属板12a,13aの一部を金属素材120,130の表面から突出した状態に形成することとしたが、これに限らない。例えば、プレス工程では、金属板12a,13aを厚さ方向の途中まで打ち抜いて、金属板12a,13aの一部を前記金属素材の表面から突出した状態に形成してもよい。具体的には、金属板12a,13aを金属素材120,130の厚さの半分以上を打ち抜き、かつ、金属素材120,130がせん断から破断に移行する直前まで打ち抜く。これにより、金属板12a,13aは、金属素材120,130の表面から0.15mm~0.5mm突出する状態となる。
この場合、金属板12a,13aの厚さは、0.2mm以上5.0mm以下であることが好ましい。また、プレス工程において、金属板12a,13aは、金属素材120,130の表面から0.1mm~3.0mm突出する状態、すなわち、金属板12a,13aと金属素材120,130の打ち抜き孔121,131の端面との厚さ方向の重なり量は、0.1mm~2.0mmであるとよい。
また、接合工程において、金属板12a,13aとセラミックス基板11とは、Al-Si系、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系、Al-Mn系、又はAl-Si-Mg系ろう材からなるろう材14を介して接合されるとよい。ろう材14としては、箔材やペーストの形で用いることが可能である。このろう材14の厚さは、3μm以上100μm以下であるとよい。さらに、接合工程において、積層方向への加圧は0.1MPa~1.0MPa、加熱温度は600℃~660℃とするとよい。
具体的には、実施例1については、金属素材を上記サイズで打ち抜いた後、打ち抜いた金属板を打ち抜き後の金属素材の打ち抜き孔内にプッシュバックすることにより、金属板の一部を金属素材の表面から0.4mm突出させた状態とし、金属板より大きいサイズで厚さ13μmのAg-Ti10質量%のろう材箔介してセラミックス基板に積層して積層体を形成し、積層体を積層方向に加圧及び加熱してこれらを接合した後、金属板を押圧して金属素材から分離させて実施例1の試料とした。
また、実施例2については、金属素材を上記サイズで厚さ方向の途中まで打ち抜いて、金属板の一部を金属素材の表面から0.4mm突出させた状態とした。そして、表1に示す大きさの厚さ13μmのAg-Ti10質量%のろう材箔介してセラミックス基板に積層して積層体を形成し、積層体を積層方向に加圧及び加熱してこれらを接合した後、金属板を押圧して金属素材から分離させて実施例2の試料とした。
なお、上記ろう材箔の大きさにおいて、金属板より大きいサイズとは、ろう材箔の各辺が金属板の各辺より100μm大きいことを意味している。
なお、実施例1~4及び比較例1~4の試料においては、積層方向への加圧は0.2MPa、加熱温度は820℃で60分間行うことにより、セラミックス基板と金属板とを接合した。
そして、得られた各試料につき、以下の実験を行うことによりセラミックス基板と金属板との接合率、及び金属板の表面に生じたろうシミ量を評価した。
セラミックス基板と金属板との接合率について、超音波探傷装置(日立パワーソリューションズ社製FINESAT)を用いて、セラミックス基板と金属板の界面を測定し、以下の式から算出した。ここで、接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち金属板の面積とした。超音波探傷像を二値化処理した画像において接合されていない領域は白色部で示されることから、この白色部の面積を非接合部面積とした。この接合率が95%以上のものを良好「A」と評価し、接合率が95%未満のものを不可「C」と評価した。結果を表1に示す。
(接合率)(%)={(接合面積)-(非接合部面積)}/(接合面積)×100
ろうシミ量の評価は、光学顕微鏡を用いて、金属板の表面(セラミックス基板との接合面とは反対側の面)の各辺のランダムな三か所のろうシミ幅を測定した。このろうシミ幅は、金属板の表面の各辺(端縁)から表面の中心に向かう幅を測定し、これらの最大値をろうシミ幅とした。このろうシミ幅が0.1mm未満のものを良好「A」と評価し、ろうシミ幅が0.1mm以上0.2mm未満のものを可「B」と評価し、ろうシミ幅が0.2mmを超えているものについては不可「C」と評価した。
なお、接合率は、ろう材箔の大きさが金属板の大きさ以上(金属板の大きさと同じか、それより大きい)のものがすべて良好「A」であることから、ろう材箔の大きさ(面積)を金属板の面積以上とすることで、金属板とセラミックス基板との接合率を向上できることがわかった。
11 セラミックス基板
12 回路層(金属層)
12a 金属板
13 放熱層(金属層)
13a 金属板
14 ろう材14a 残存ろう
30 素子
31 はんだ
100 パワーモジュール
120 130 金属素材
121 131 打ち抜き孔
Claims (5)
- セラミックス基板の一方の面に金属素材からプレス加工により打ち抜いた金属板をろう材を介して接合することにより絶縁回路基板を製造する絶縁回路基板の製造方法であって、
前記プレス加工の際に前記金属板の厚さ方向の一部を前記金属素材から突出した状態に形成するプレス工程と、
突出した前記金属板を前記セラミックス基板の一方の面に前記金属板の面積以上の面積のろう材を介して積層して積層体とする積層体形成工程と、
前記積層体をその積層方向に加圧及び加熱して前記金属板を前記セラミックス基板に接合する接合工程と、
前記接合工程後に、前記金属板を押圧して前記金属素材と分離させる分離工程と、を備えることを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。 - 前記プレス工程では、前記金属素材から前記金属板を打ち抜いた後、打ち抜いた前記金属板を打ち抜き後の前記金属素材の打ち抜き孔内にプッシュバックすることにより、前記金属板の一部を前記金属素材の表面から突出した状態に形成することを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板の製造方法。
- 前記プレス工程では、前記金属板を厚さ方向の途中まで打ち抜いて、前記金属板の一部を前記金属素材の表面から突出した状態に形成することを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板の製造方法。
- 前記金属板は、銅又は銅合金からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
- 前記絶縁回路基板が、前記セラミックス基板の前記一方の面に金属層が形成された絶縁回路基板であって、
前記金属層が、前記金属板であって、
前記金属層の表面における端縁からのろうシミの幅が0.2mm以下であり、前記金属層と前記セラミックス基板との接合率が95%以上であることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
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