JP7268359B2 - 顔料マスターバッチの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、イエロートナー用の顔料マスターバッチの製造方法に関する。
例えば、特許文献1には、樹脂と顔料とを予め混合し、顔料が高濃度で含まれるマスターバッチ(顔料マスターバッチ)を調製した後、得られた顔料マスターバッチと、その他の材料とを混合することにより、トナーを得る方法が記載されている。特許文献1に記載の方法によれば、トナー中の顔料の分散性を高めることができる。
他方、イエロートナー用のイエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー74が知られている。C.I.ピグメントイエロー74は、比較的少ない使用量で高い発色性が得られる。
特開平6-130724号公報
顔料マスターバッチは、通常、樹脂と顔料とを高温で長時間混練することにより形成される。例えば、特許文献1に記載された実施例では、樹脂と顔料とを、処理温度120℃に設定した加圧ニーダーにより混練し、顔料マスターバッチを得ている。そのため、樹脂に分散させるイエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー74を用いると、樹脂とC.I.ピグメントイエロー74とを混練する際に、C.I.ピグメントイエロー74が熱分解する場合がある。C.I.ピグメントイエロー74が熱分解すると、o-アニシジンが発生する場合がある。
C.I.ピグメントイエロー74の熱分解によりo-アニシジンが発生すると、顔料マスターバッチ中のo-アニシジンの含有量が高くなるため、最終製品であるイエロートナー中のo-アニシジンの含有量が高くなる傾向がある。o-アニシジンの含有量が高いイエロートナー(例えば、o-アニシジンの含有量が5質量ppmを超えるイエロートナー)は、台湾グリーンマーク(台湾において環境保全に役立つと認められた商品に表示されるマーク)の取得が困難となる場合がある。そのため、イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー74を用いても、イエロートナー中のo-アニシジンの含有量を低減できる顔料マスターバッチの製造方法が望まれている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー74を用いても、イエロートナー中のo-アニシジンの含有量を低減できる顔料マスターバッチの製造方法を提供することである。
本発明に係る顔料マスターバッチの製造方法は、イエロートナー用の顔料マスターバッチの製造方法であり、準備工程とマスターバッチ成分混練工程とを備える。前記準備工程では、少なくともイエロー顔料を含む顔料成分含有材料を準備する。前記マスターバッチ成分混練工程では、前記顔料成分含有材料と樹脂とを混練する。前記イエロー顔料は、C.I.ピグメントイエロー74を含む。また、本発明に係る顔料マスターバッチの製造方法では、前記マスターバッチ成分混練工程において、混練温度110℃以下かつ混練時間135分以下の条件で、前記顔料成分含有材料と前記樹脂とを混練する。
本発明によれば、イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー74を用いても、イエロートナー中のo-アニシジンの含有量を低減できる顔料マスターバッチの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体、外添剤粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950」)を用いて測定されたメディアン径である。
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、摩擦帯電のし易さである。例えば、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電極性トナー用標準キャリア:N-01、正帯電極性トナー用標準キャリア:P-01)と測定対象(例えばトナー)とを混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば吸引式小型帯電量測定装置(トレック社製「MODEL 212HS」)で測定対象の帯電量を測定する。摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
<顔料マスターバッチの製造方法>
本実施形態に係る顔料マスターバッチ(詳しくは、イエロートナー用の顔料マスターバッチ)の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法で得られる顔料マスターバッチは、イエロートナー(以下、単に「トナー」と記載することがある)の製造に利用することができる。
本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法は、準備工程とマスターバッチ成分混練工程とを備える。準備工程では、少なくともイエロー顔料を含む顔料成分含有材料を準備する。マスターバッチ成分混練工程では、顔料成分含有材料と樹脂とを混練する。イエロー顔料は、C.I.ピグメントイエロー74(以下、PY74と記載することがある)を含む。また、本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法では、マスターバッチ成分混練工程において、混練温度110℃以下かつ混練時間135分以下の条件で、顔料成分含有材料と樹脂とを混練する。
本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法において、混練温度とは、混練する際の処理温度であり、例えば、ニーダーを使用して混練する場合、混練が行われる混練槽内の雰囲気温度である。
本実施形態に係る製造方法で得られた顔料マスターバッチによれば、トナー(詳しくは、本実施形態に係る製造方法により得られた顔料マスターバッチを用いて製造されるイエロートナー)中のo-アニシジンの含有量を低減できる。その理由は、以下のように推測される。
本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法では、混練温度110℃以下かつ混練時間135分以下の条件で、顔料成分含有材料と樹脂とを混練する。これにより、顔料成分含有材料中のPY74の熱分解が抑制されるため、得られる顔料マスターバッチ中のo-アニシジンの含有量を低減できる。このため、本実施形態に係る製造方法により得られた顔料マスターバッチを用いて製造されるトナー中のo-アニシジンの含有量を低減できる。
マスターバッチ成分混練工程における混練温度は、110℃以下であればよく、一定温度であっても、一定温度でなくてもよい。トナー中のo-アニシジンの含有量をより低減するためには、マスターバッチ成分混練工程における混練温度は、105℃以下であることが好ましい。
トナー中のo-アニシジンの含有量をより低減するためには、マスターバッチ成分混練工程における混練時間は、130分以下であることが好ましい。
マスターバッチ成分混練工程において、混練温度の下限及び混練時間の下限は、特に限定されず、使用する樹脂の物性に応じて適宜設定すればよい。トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性に優れるトナーを得るためには、マスターバッチ成分混練工程において、混練温度80℃以上かつ混練時間110分以上の条件で、顔料成分含有材料と樹脂とを混練することが好ましい。
トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性に優れるトナーを得るためには、準備工程で準備された顔料成分含有材料中のPY74の量は、マスターバッチ成分混練工程において顔料成分含有材料と共に混練される樹脂100質量部に対して90質量部以上であることが好ましい。準備工程で準備された顔料成分含有材料中のPY74の量を変更することにより、得られる顔料マスターバッチ中のPY74の量を調整できる。
トナー中のo-アニシジンの含有量をより低減するためには、準備工程で準備された顔料成分含有材料中のPY74の量は、マスターバッチ成分混練工程において顔料成分含有材料と共に混練される樹脂100質量部に対して110質量部以下であることが好ましい。
本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法において、マスターバッチ成分混練工程は、後述する第1混練工程及び第2混練工程を含んでいてもよい。なお、本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法では、マスターバッチ成分混練工程が複数の混練工程からなる場合、複数の混練工程の合計の混練時間が135分以下である。また、本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法では、マスターバッチ成分混練工程が複数の混練工程からなる場合、複数の混練工程の混練温度のいずれも110℃以下である。
また、本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法は、準備工程及びマスターバッチ成分混練工程以外に、別の工程(より具体的には、後述する冷却工程、粉砕工程等)を更に備えていてもよい。以下、各工程について説明する。
[準備工程]
準備工程では、少なくともイエロー顔料を含む顔料成分含有材料を準備する。トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性に優れるトナーを得るためには、顔料成分含有材料は、イエロー顔料と、水(例えばイオン交換水)とを含むことが好ましく、イエロー顔料及び水(例えばイオン交換水)のみを含むことがより好ましい。顔料成分含有材料がイエロー顔料と水とを含む場合、準備工程では、イエロー顔料と水とを混合してペースト状の顔料成分含有材料(以下、ペースト顔料と記載することがある)を調製する。なお、顔料成分含有材料として、市販品を使用してもよい。
また、顔料成分含有材料は、イエロー顔料以外の成分を含んでいなくてもよい。この場合、イエロー顔料が、顔料成分含有材料に相当する。
顔料成分含有材料中のイエロー顔料は、PY74を含む。本実施形態では、顔料成分含有材料中のイエロー顔料が、PY74以外のイエロー顔料(他のイエロー顔料)を含んでいてもよい。他のイエロー顔料としては、例えば、PY74以外の縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される一種以上の化合物を使用できる。PY74以外のイエロー顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、並びにC.I.バットイエローが挙げられる。
顔料成分含有材料がイエロー顔料と水とを含む場合、トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性により優れるトナーを得るためには、準備工程で準備された顔料成分含有材料中のPY74の量は、マスターバッチ成分混練工程前の顔料成分含有材料の全質量に対して10質量%以上であることが好ましい。
トナー中のo-アニシジンの含有量をより低減するためには、準備工程で準備された顔料成分含有材料中のPY74の量は、マスターバッチ成分混練工程前の顔料成分含有材料の全質量に対して30質量%以下であることが好ましい。
なお、顔料成分含有材料は、イエロー顔料としてPY74のみを含んでいてもよい。
[マスターバッチ成分混練工程]
マスターバッチ成分混練工程では、顔料成分含有材料と樹脂とを混練する。顔料成分含有材料がイエロー顔料及び水を含む場合、トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性により優れるトナーを得るためには、マスターバッチ成分混練工程は、以下で説明する第1混練工程及び第2混練工程を含むことが好ましい。以下、顔料成分含有材料がイエロー顔料及び水を含み、かつマスターバッチ成分混練工程が第1混練工程及び第2混練工程を含む場合について説明する。
(第1混練工程)
第1混練工程は、例えば混練装置(より具体的には、ニーダー等)を用いて顔料成分含有材料と樹脂とを混練することにより、顔料成分含有材料から樹脂へイエロー顔料を移行させると共に、顔料成分含有材料中に含まれる水の少なくとも一部を除去する工程(所謂、「フラッシング工程」)である。第1混練工程では、顔料成分含有材料中のイエロー顔料が樹脂(詳しくは溶融樹脂)に移行して、水相と、イエロー顔料を含む樹脂組成物相とが分離しつつ、水相を構成する水の少なくとも一部が、例えば混練装置の排水口から装置外へ流出する。第1混練工程の初期段階では、混練装置内の排水口から流出する排水は着色されているが、混練時間が経過するにつれ、徐々に色が薄くなり、移行が完了すると、排水の色が無色になる。よって、イエロー顔料が樹脂に移行したか否かは、排水の色で確認できる。
トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性により優れるトナーを得るためには、第1混練工程後の混練物に含まれる水の含有量は、混練物の全質量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
顔料成分含有材料と共に混練する樹脂としては、例えばトナーの結着樹脂として使用可能な熱可塑性樹脂が挙げられる。顔料成分含有材料と共に混練する樹脂は、後述するトナー材料の一成分(詳しくは、結着樹脂の一部)となる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N-ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン-アクリル酸エステル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂等)も、顔料成分含有材料と共に混練する樹脂として使用できる。
熱可塑性樹脂は、一種以上の熱可塑性単量体を、付加重合、共重合、又は縮重合させることで得られる。なお、熱可塑性単量体は、単独重合により熱可塑性樹脂になる単量体(より具体的には、アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体等)、又は縮重合により熱可塑性樹脂になる単量体(例えば、縮重合によりポリエステル樹脂になる多価アルコール及び多価カルボン酸の組合せ)である。
トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性に優れるトナーを得るためには、顔料成分含有材料と共に混練する樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。
トナー中のo-アニシジンの含有量をより低減するためには、第1混練工程において、混練温度90℃以下かつ混練時間110分以下の条件で、顔料成分含有材料と樹脂とを混練することが好ましい。
トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性に優れるトナーを得るためには、第1混練工程において、混練温度85℃以上かつ混練時間100分以上の条件で、顔料成分含有材料と樹脂とを混練することが好ましい。
なお、第1混練工程における混練温度は、一定温度であっても、一定温度でなくてもよい。
(第2混練工程)
第2混練工程は、例えば混練装置(より具体的には、ニーダー等)を用いて、第1混練工程で得られた混練物を更に混練する工程である。
トナー中のo-アニシジンの含有量をより低減するためには、第2混練工程において、混練温度110℃以下かつ混練時間35分以下の条件で、第1混練工程で得られた混練物を更に混練することが好ましい。
トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性に優れるトナーを得るためには、第2混練工程において、混練温度95℃以上かつ混練時間20分以上の条件で、第1混練工程で得られた混練物を更に混練することが好ましい。
なお、第2混練工程における混練温度は、一定温度であっても、一定温度でなくてもよい。
トナー中のo-アニシジンの含有量を更に低減しつつ、トナー中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性に更に優れるトナーを得るためには、第1混練工程において、混練温度85℃以上90℃以下かつ混練時間100分以上110分以下の条件で、顔料成分含有材料と樹脂とを混練し、第2混練工程において、混練温度95℃以上110℃以下かつ混練時間20分以上35分以下の条件で、第1混練工程で得られた混練物を更に混練することが好ましい。
なお、マスターバッチ成分混練工程は、単独の混練工程(例えば、顔料成分含有材料と樹脂とを、110℃以下の一定温度で混練する工程)であってもよい。
[冷却工程]
本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法は、マスターバッチ成分混練工程後に冷却工程を更に備えてもよい。冷却工程は、マスターバッチ成分混練工程において得られた混練物に空気を吹き付けることにより、混練物を冷却する工程である。本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法が冷却工程を更に備えることにより、混練物中のPY74の熱分解がより抑制されるため、得られる顔料マスターバッチ中のo-アニシジンの含有量をより低減できる。そのため、本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法が冷却工程を更に備えると、最終製品であるトナー中のo-アニシジンの含有量をより低減できる。
トナーの製造コストを低減しつつ、トナー中のo-アニシジンの含有量を更に低減するためには、冷却工程において、混練物に、温度10℃以上20℃以下の空気を吹き付けることが好ましい。
トナーの製造コストを低減しつつ、トナー中のo-アニシジンの含有量を更に低減するためには、冷却工程における冷却時間(混練物に空気を吹き付ける時間)が、150分以上200分以下であることが好ましい。冷却工程後の混練物の温度は、例えば15℃以上25℃以下の範囲内である。
[粉砕工程]
本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法は、マスターバッチ成分混練工程後、又は冷却工程後に、混練物を粉砕する粉砕工程を更に備えてもよい。本実施形態に係る顔料マスターバッチの製造方法が粉砕工程を更に備えることにより、取り扱い性に優れる顔料マスターバッチが得られる。取り扱い性により優れる顔料マスターバッチを得るためには、粉砕工程において、粉砕機を用いて設定粒子径1mm以下の条件で混練物を粉砕することが好ましい。
以上説明した方法により、トナー中のo-アニシジンの含有量を低減できる顔料マスターバッチが得られる。トナー中のo-アニシジンの含有量をより低減するためには、顔料マスターバッチ中のo-アニシジンの含有量は、70質量ppm以下であることが好ましく、65質量ppm以下であることがより好ましい。顔料マスターバッチ中のo-アニシジンの含有量の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はそれに準ずる方法である。
<顔料マスターバッチの用途>
上述した実施形態に係る製造方法で得られた顔料マスターバッチ(以下、顔料マスターバッチMBと記載することがある)を用いたトナーの製造方法の一例について説明する。なお、以下で説明する顔料マスターバッチMBを用いたトナーの製造方法を、製造方法PAと記載することがある。また、製造方法PAで得られるトナーを、トナーTAと記載することがある。
トナーTAは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。トナーTAは、例えばキャリアと共に2成分現像剤を構成することができる。
トナーTAは、後述する粉砕工程を経て得られる粉砕物(以下、トナー粒子と記載することがある)の集合体(例えば粉体)である。トナー粒子は、外添剤を備えていてもよい。トナー粒子が外添剤を備える場合には、トナー粒子はトナー母粒子と外添剤とを備える。外添剤はトナー母粒子の表面に付着する。トナー母粒子は、結着樹脂と、イエロー顔料とを含む。トナー母粒子は、必要に応じて、イエロー顔料以外の内添剤(例えば、離型剤、及び電荷制御剤の少なくとも1つ)を含有してもよい。なお、内添剤は、トナー母粒子に含まれる成分のうち、結着樹脂以外の成分である。また、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。外添剤を割愛する場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。
画像形成に適したトナーTAを得るためには、トナー母粒子の体積中位径(D50)は、4μm以上9μm以下であることが好ましい。
トナー粒子は、シェル層を備えないトナー粒子であってもよいし、シェル層を備えるトナー粒子(以下、カプセルトナー粒子と記載する)であってもよい。カプセルトナー粒子では、トナー母粒子が、トナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層とを備える。シェル層は、樹脂を含む。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーTAの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散されていてもよい。シェル層は、トナーコアの表面全体を覆っていてもよいし、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。
製造方法PAは、溶融混練工程と粉砕工程とを含む。また、製造方法PAは、溶融混練工程及び粉砕工程以外に、別の工程(例えば、後述する混合工程、微粉砕工程、分級工程、シェル層形成工程及び外添工程の少なくとも1つ)を更に含んでもよい。以下、各工程について説明する。なお、製造方法PAの説明において、結着樹脂の量、顔料マスターバッチMBの量、及び内添剤の量は、それぞれトナー材料中の量を指す。また、製造方法PAの説明において、顔料マスターバッチMB中の樹脂を「結着樹脂R1」と記載し、溶融混練工程において顔料マスターバッチMBと共に溶融混練される樹脂を「結着樹脂R2」と記載する。また、製造方法PAの説明において、結着樹脂R1及び結着樹脂R2を、まとめて「結着樹脂」と記載する。
[混合工程]
製造方法PAでは、溶融混練工程の前に混合工程を実施してもよい。混合工程では、例えばFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、結着樹脂R2、顔料マスターバッチMB及び必要に応じて添加する他の内添剤を混合して混合物(トナー材料)を得る。トナーTAを用いて高画質の画像を形成するためには、トナー材料に含まれる顔料マスターバッチMB中のイエロー顔料の量は、トナー材料中の結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。以下、混合工程において混合される成分(トナー材料に含有される成分)のうち、顔料マスターバッチMB以外の成分について説明する。
(結着樹脂R2)
低温定着性に優れるトナーTAを得るためには、トナー材料は、結着樹脂R2として熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。結着樹脂R2としては、例えば上述した顔料マスターバッチの製造方法の説明において、顔料成分含有材料と共に混練する樹脂として例示した樹脂から選択される一種以上が挙げられる。
結着樹脂R2は、結着樹脂R1と同種の樹脂であってもよく、結着樹脂R1とは異なる種類の樹脂であってもよい。トナー材料中のイエロー顔料の分散性を高めて発色性に優れるトナーTAを得るためには、結着樹脂R2は、結着樹脂R1と同種の樹脂であることが好ましい。また、低温定着性に優れるトナーTAを得るためには、結着樹脂R2としては、ポリエステル樹脂が好ましい。
(離型剤)
トナー材料は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、耐オフセット性に優れるトナーTAを得る目的で使用される。耐オフセット性に優れるトナーTAを得るためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、エステルワックス、ポリオレフィンワックス(より具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、マイクロクリスタリンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、及びカスターワックスが挙げられる。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(より具体的には、カルナバワックス、ライスワックス等)、及び合成エステルワックスが挙げられる。製造方法PAでは、一種の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナー材料に添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナー材料は、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、帯電安定性又は帯電立ち上がり特性に優れるトナーTAを得る目的で使用される。トナーTAの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーTAを帯電させることができるか否かの指標になる。
トナー材料に負帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーTAのアニオン性(負帯電性)を強めることができる。また、トナー材料に正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナーTAのカチオン性(正帯電性)を強めることができる。
正帯電性の電荷制御剤の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2-チアジン、1,3-チアジン、1,4-チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-オキサジアジン、1,3,4-オキサジアジン、1,2,6-オキサジアジン、1,3,4-チアジアジン、1,3,5-チアジアジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、1,2,4,6-オキサトリアジン、1,3,4,5-オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ-ンBH/C、アジンディープブラックEW、アジンディープブラック3RL等の直接染料;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等の酸性染料;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩等の4級アンモニウム塩;4級アンモニウムカチオン基を含む樹脂が挙げられる。これらの電荷制御剤の一種のみを使用してもよく、二種以上の電荷制御剤を組み合わせて使用してもよい。
負帯電性の電荷制御剤の例としては、キレート化合物である有機金属錯体が挙げられる。有機金属錯体としては、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体、及びこれらの塩が好ましい。
帯電安定性に優れるトナーTAを得るためには、電荷制御剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
[溶融混練工程]
溶融混練工程では、結着樹脂R2と顔料マスターバッチMBとを含むトナー材料を溶融混練することにより、溶融混練物を得る。トナー材料としては、例えば上述した混合工程で得られる混合物が使用できる。トナー材料を溶融混練する方法としては、例えば、2軸押出機等の溶融混練装置を用いてトナー材料を溶融混練する方法が挙げられる。なお、製造方法PAでは、混合工程を実施せずに、溶融混練装置にトナー材料の各成分を投入し、溶融混練装置内で、各成分を混合しながら溶融混練してもよい。
トナー材料を均一に溶融混練するためには、トナー材料を100℃以上の温度で溶融混練することが好ましい。また、トナーTA中のo-アニシジンの含有量をより低減するためには、トナー材料を110℃以下の温度で溶融混練することが好ましい。
[粉砕工程]
粉砕工程では、溶融混練工程で得られた溶融混練物を、例えば室温(25℃)まで冷却した後、粉砕することにより、粉砕物を得る。溶融混練物を粉砕する方法としては、例えば粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて粉砕する方法が挙げられる。製造方法PAでは、粉砕工程で得られた粉砕物をトナー粒子の粉体として用いることができる。また、製造方法PAでは、粉砕工程で得られた粉砕物を用いて以下の工程のうちの1つ以上を実施することで、トナー粒子の粉体を製造することもできる。
[微粉砕工程]
製造方法PAにおいて、粉砕工程で得られた粉砕物の小径化が必要な場合は、粉砕物を更に粉砕する工程(微粉砕工程)を実施することができる。微粉砕工程では、粉砕工程で得られた粉砕物を、例えば粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルRS型」)を用いて微粉砕することで粉砕物を小径化する。以下、「粉砕物」には、微粉砕工程において微粉砕された粉砕物(微粉砕物)も含まれる。
[分級工程]
製造方法PAにおいて、粉砕物の粒子径を揃える場合は、粉砕物を分級する工程(分級工程)を実施することができる。分級工程では、粉砕物を、例えば風力分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて分級することで粉砕物の粒子径を揃える。
[シェル層形成工程]
製造方法PAでは、粉砕物の表面にシェル層を形成する工程(シェル層形成工程)を実施してもよい。シェル層形成工程を実施することにより、粉砕物であるトナーコアと、このトナーコアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー母粒子が得られる。シェル層の形成方法の例としては、in-situ重合法、液中硬化被膜法、及びコアセルベーション法が挙げられる。以下、「粉砕物」には、上述した方法で得られた粉砕物であるトナーコアと、このトナーコアの表面を覆うシェル層とを備えるトナー母粒子も含まれる。
[外添工程]
製造方法PAでは、粉砕物の表面に外添剤を付着させる工程(外添工程)を実施してもよい。外添工程を実施することにより、粉砕物であるトナー母粒子と、このトナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子が得られる。粉砕物(トナー母粒子)の表面に外添剤を付着させる方法としては、例えば、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、粉砕物であるトナー母粒子の粉体と、外添剤粒子の粉体とを混合する方法が挙げられる。
外添剤粒子としては、無機粒子が好ましく、シリカ粒子、及び金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等)の粒子が特に好ましい。製造方法PAでは、一種類の外添剤粒子を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤粒子を併用してもよい。
トナー母粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量(複数種の外添剤粒子を使用する場合には、それら外添剤粒子の合計量)が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
外添剤粒子は、表面処理されていてもよい。例えば、外添剤粒子としてシリカ粒子を使用する場合、表面処理剤によりシリカ粒子の表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等)、シラザン化合物(より具体的には、鎖状シラザン化合物、環状シラザン化合物等)、及びシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)が挙げられる。表面処理剤としては、シランカップリング剤及びシラザン化合物が特に好ましい。シランカップリング剤の好適な例としては、シラン化合物(より具体的には、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン等)が挙げられる。シラザン化合物の好適な例としては、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)が挙げられる。シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数の水酸基(-OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、水酸基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。
以下、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。また、以下において、試料中のo-アニシジンの含有量は、欧州連合(EU)が定めたEN14362-1:2012に記載の測定方法のうち、ガスクロマトクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)による分析と、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析とを組合せた方法により測定された値である。o-アニシジンの含有量を測定した試料としては、顔料、顔料マスターバッチ、及びトナーを用いた。
<顔料マスターバッチの作製>
以下、顔料マスターバッチMB-1~MB-7の作製方法について説明する。
[顔料マスターバッチMB-1の作製]
(準備工程)
PY74(大日精化工業株式会社製「セイカファースト(登録商標)イエロー2021」、o-アニシジンの含有量:30質量ppm)と、イオン交換水とを混合して、PY74の含有量が20質量%のペースト顔料PPを得た。
(第1混練工程)
次いで、PY74換算で100質量部のペースト顔料PPと、100質量部のポリエステル樹脂(花王株式会社製「タフトン(登録商標)NE-410」)とを、ニーダー(株式会社井上製作所製「KH-2-S」)に投入した。次いで、上記ニーダーを用いて、ミキサーブレードの回転速度100rpmかつ混練温度85℃の条件で、ペースト顔料PPとポリエステル樹脂とを100分間混練した。この混練により、ペースト顔料PPからポリエステル樹脂へPY74を移行させると共に、ペースト顔料PP中に含まれる水の一部を除去した。第1混練工程で得られた混練物に含まれる水分は、混練物の全質量に対して5質量%以下であった。
(第2混練工程)
次いで、上記ニーダー内の混練物(第1混練工程で得られた混練物)を、上記ニーダーを用いて、ミキサーブレードの回転速度100rpmかつ混練温度105℃の条件で30分間混練した。
(冷却工程)
次いで、上記ニーダー内の混練物(第2混練工程で得られた混練物)に、180分間にわたって温度15℃の空気を吹き付けることにより、上記混練物を冷却した。冷却工程後の混練物の温度は、20℃であった。なお、冷却工程において、上記ニーダー内の混練物を10分に1回の頻度で回転させて、混練物全体が冷却されるようにした。
(粉砕工程)
次いで、冷却工程後の混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて設定粒子径1mmの条件で粉砕し、顔料マスターバッチMB-1(PY74の含有量:50質量%、o-アニシジンの含有量:62質量ppm)を得た。
[顔料マスターバッチMB-2~MB-7の作製]
第1混練工程及び第2混練工程の条件(詳しくは、混練温度及び混練時間)を表1に示すとおりとしたこと以外は、顔料マスターバッチMB-1の作製と同じ方法で、顔料マスターバッチMB-2~MB-7をそれぞれ作製した。
Figure 0007268359000001
<トナーの作製>
以下、トナーTA-1、TA-2及びTB-1~TB-6の作製方法について説明する。
[トナーTA-1の作製]
(混合工程)
80質量部の結着樹脂(花王株式会社製「タフトン(登録商標)NE-410」、成分:ポリエステル樹脂)と、PY74換算で5質量部の顔料マスターバッチMB-1と、5質量部の離型剤(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP-9」、成分:エステルワックス)と、5質量部の電荷制御剤(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P-51」、成分:4級アンモニウム塩)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)に投入し、回転速度2000rpmかつジャケット温度20℃の条件で5分間混合した。これにより、混合物(トナー材料)を得た。
(溶融混練工程)
続けて、得られた混合物(トナー材料)を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM-30」、スクリューの長さ:65cm、スクリューの径:30mm)を用いて、材料供給速度6kg/時、軸回転速度160rpm、溶融混練温度(シリンダー温度)100℃の条件で溶融混練した。なお、上記2軸押出機において、材料入口部と材料出口部との距離は65cmであった。
(粉砕工程、微粉砕工程及び分級工程)
続けて、上記2軸押出機の材料出口部から排出された溶融混練物を、圧延ロールで圧延しながら、その温度が25℃になるまで冷却した。続けて、冷却された溶融混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて粗粉砕した(粉砕工程)。続けて、得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルRS型」)を用いて微粉砕した(微粉砕工程)。続けて、得られた微粉砕物を、風力分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)を用いて分級した(分級工程)。その結果、体積中位径(D50)7μmのトナー母粒子が得られた。
(外添工程)
続けて、得られたトナー母粒子を外添処理した。詳しくは、100質量部のトナー母粒子と、1.5質量部のシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)と、1.5質量部の導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC-100」)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10B」)を用いて回転速度3000rpmかつジャケット温度20℃の条件で5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子及び導電性酸化チタン粒子)を付着させた。
続けて、上記外添工程で得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、正帯電性のトナーTA-1が得られた。
[トナーTA-2及びTB-1~TB-5の作製]
混合工程において、顔料マスターバッチMB-1の代わりに後述する表2に記載の顔料マスターバッチを使用したこと以外は、トナーTA-1の作製と同じ方法で、トナーTA-2及びTB-1~TB-5をそれぞれ得た。得られたトナーTA-2及びTB-1~TB-5は、いずれも正帯電性のトナーであった。なお、トナーTA-2及びTB-1~TB-5の作製において、顔料マスターバッチのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)への投入量は、いずれもPY74換算で5質量部であった。
[トナーTB-6の作製]
参考例として、以下に示す変更点以外は、トナーTA-1の作製と同じ方法で正帯電性のトナーTB-6を作製した。
(変更点)
トナーTB-6の作製では、混合工程において、結着樹脂(花王株式会社製「タフトン(登録商標)NE-410」、成分:ポリエステル樹脂)のFMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)への投入量を、85質量部に変更した。トナーTB-6の作製では、混合工程において、PY74換算で5質量部の顔料マスターバッチMB-1の代わりに、5質量部のPY74(大日精化工業株式会社製「セイカファースト(登録商標)イエロー2021」、o-アニシジンの含有量:30質量ppm)を使用した。
<発色性の評価>
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa5551ci」用キャリア)100質量部と、トナー(評価対象:トナーTA-1、TA-2及びTB-1~TB-6のいずれか)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価用の2成分現像剤を調製した。
評価用画像形成装置としては、複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5551ci」)を用いた。前述のようにして調製した2成分現像剤を上記複合機(評価用画像形成装置)のイエロー用現像装置に投入し、補給用トナー(評価対象:トナーTA-1、TA-2及びTB-1~TB-6のいずれか)を上記複合機(評価用画像形成装置)のイエロー用トナーコンテナに投入した。
上記のようにして準備した評価用画像形成装置を用いて、温度23℃かつ湿度60%RHの環境下、紙(A4サイズの普通紙:富士ゼロックス株式会社製「C2」)に、トナー載り量0.5mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像を形成した。続けて、得られたソリッド画像を目視観察し、以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
A(良い):イエローの発色性が実用上問題のないレベルであった。
B(良くない):イエローの発色性が実用上問題のあるレベルであった。
トナーTA-1、TA-2及びTB-1~TB-6について、使用した顔料マスターバッチ、トナー中のo-アニシジンの含有量、及び発色性の評価結果を、それぞれ表2に示す。トナー中のo-アニシジンの含有量については、5質量ppm以下の場合、「トナー中のo-アニシジンの含有量を低減できている」と評価し、5質量ppmを超える場合、「トナー中のo-アニシジンの含有量を低減できていない」と評価した。
Figure 0007268359000002
トナーTA-1及びTA-2の作製に用いた顔料マスターバッチの作製方法では、第1混練工程及び第2混練工程のいずれの混練工程においても、混練温度が110℃以下であった。トナーTA-1及びTA-2の作製に用いた顔料マスターバッチの作製方法では、第1混練工程と第2混練工程との合計の混練時間が135分以下であった。
表2に示すように、トナーTA-1及びTA-2では、トナー中のo-アニシジンの含有量が5質量ppm以下であった。この結果から、トナーTA-1及びTA-2の作製に用いた顔料マスターバッチによれば、トナー中のo-アニシジンの含有量を低減できることが示された。
トナーTB-1~TB-4の作製に用いた顔料マスターバッチの作製方法では、第2混練工程の混練温度が110℃を超えていた。トナーTB-1~TB-3及びTB-5の作製に用いた顔料マスターバッチの作製方法では、第1混練工程と第2混練工程との合計の混練時間が135分を超えていた。
表2に示すように、トナーTB-1~TB-5では、トナー中のo-アニシジンの含有量が5質量ppmを超えていた。
以上の結果から、本発明の製造方法で得られた顔料マスターバッチによれば、最終製品であるトナー中のo-アニシジンの含有量を低減できることが示された。
本発明の製造方法により得られる顔料マスターバッチは、イエロートナーを製造するために利用することができる。

Claims (7)

  1. イエロートナー用の顔料マスターバッチの製造方法であって、
    少なくともイエロー顔料を含む顔料成分含有材料を準備する準備工程と、
    前記顔料成分含有材料と樹脂とを混練するマスターバッチ成分混練工程と
    を備え、
    前記イエロー顔料は、C.I.ピグメントイエロー74を含み、
    前記マスターバッチ成分混練工程において、混練温度80℃以上110℃以下かつ混練時間110分以上135分以下の条件で、前記顔料成分含有材料と前記樹脂とを混練する、顔料マスターバッチの製造方法。
  2. 前記準備工程で準備された前記顔料成分含有材料中の前記C.I.ピグメントイエロー74の量は、前記樹脂100質量部に対して90質量部以上110質量部以下である、請求項1に記載の顔料マスターバッチの製造方法。
  3. 前記マスターバッチ成分混練工程において得られた混練物に空気を吹き付けることにより、前記混練物を冷却する冷却工程を更に備える、請求項1又は2に記載の顔料マスターバッチの製造方法。
  4. 前記顔料成分含有材料は、水を更に含み、
    前記マスターバッチ成分混練工程は、第1混練工程と第2混練工程とを含み、
    前記第1混練工程は、前記顔料成分含有材料と前記樹脂とを混練することにより、前記顔料成分含有材料から前記樹脂へ前記イエロー顔料を移行させると共に、前記顔料成分含有材料中に含まれる前記水の少なくとも一部を除去する工程であり、
    前記第2混練工程は、前記第1混練工程で得られた混練物を更に混練する工程である、請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料マスターバッチの製造方法。
  5. 前記第1混練工程において、混練温度90℃以下かつ混練時間110分以下の条件で、前記顔料成分含有材料と前記樹脂とを混練する、請求項4に記載の顔料マスターバッチの製造方法。
  6. 前記第2混練工程において、混練温度110℃以下かつ混練時間35分以下の条件で、前記第1混練工程で得られた前記混練物を更に混練する、請求項4又は5に記載の顔料マスターバッチの製造方法。
  7. 前記準備工程で準備された前記顔料成分含有材料中の前記C.I.ピグメントイエロー74の量は、前記顔料成分含有材料の全質量に対して10質量%以上30質量%以下である、請求項4~6のいずれか一項に記載の顔料マスターバッチの製造方法。
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