したがって、本開示の目的は、患者の安全を高め、薬剤の意図しない過剰投与または過少投与を防止する機構を含む注射デバイスを提供することである。注射デバイスは、異なるサイズの用量を設定および投薬する制限された能力を提供するべきである。注射デバイスは、1つのみまたはいくつかの異なるサイズの用量の設定および投薬を少なくとも一時的に提供するべきである。特に、注射デバイスは、薬剤のいくつかのみ、たとえば2つ、3つ、または4つの異なるサイズの用量の繰返しおよび複数の設定および投薬を可能および有効にするように構成されるべきである。
さらなる目的は、副作用に苦しむ患者または視覚障害の患者でも直感的かつ簡単に使用できる注射デバイスを提供することである。注射デバイスは、明確に見えるフィードバックおよび/または機械的もしくは触覚フィードバックを使用者に提供し、それによって所定のサイズの用量が設定されたこと、およびデバイスが投薬処置を開始する用意ができたことを示すべきである。
注射デバイスは、薬剤の所定のまたは事前選択された用量に応じたかなり自動化された用量設定処置をさらに提供するべきである。
一態様では、薬剤の用量の設定および注射または投薬のための注射デバイスが提供される。注射デバイスは、長手方向軸に沿って延びる細長いハウジングを含む。ハウジングは、遠位端および近位端を含む。遠位端は、デバイスの投薬端に最も近く、近位端は、細長いハウジングの反対側の端部に位置する。注射デバイスは、薬剤が充填されたカートリッジのピストンに動作可能に係合するピストンロッドをさらに含む。カートリッジは、典型的に、液体薬剤が充填されたガラス質および管状の筒体などの筒体を含む。カートリッジの遠位端は、たとえばセプタムなどの穿孔可能な封止によって封止される。近位端では、カートリッジは、カートリッジの長手方向に沿って摺動可能に変位可能なピストンによって封止される。ピストンは、注射デバイスの駆動機構によって遠位方向に前進されるように構成されたピストンロッドによって、長手方向軸または軸方向に沿って変位可能である。このようにして、所定の量の薬剤をカートリッジから排出することができる。
注射デバイスは、ピストンロッドに選択的に動作可能に係合可能な用量トラッカをさらに含む。用量トラッカは、用量の設定中および/または用量の設定のために、初期位置から近位方向に少なくとも第1の起動位置へハウジングに対して長手方向に変位可能である。用量の投薬または注射の場合、用量トラッカは、反対の方向に変位可能である。したがって、用量トラッカは、用量の投薬のために、少なくとも第1の起動位置から遠位方向に初期位置へハウジングに対して長手方向に変位可能である。
注射デバイスは、用量トラッカをハウジングに対して近位方向に付勢するためのばねをさらに含む。このようにして、自動用量設定を提供することができる。ばねによって、用量トラッカを初期位置から少なくとも第1の起動位置へ自動的に変位させることができる。注射デバイスは、初期位置で用量トラッカをハウジングに対してロックするためのインターロックをさらに含む。インターロックによって、用量トラッカを少なくとも長手方向または軸方向にハウジングに対して不動化することができる。インターロックによって用量トラッカをハウジングに固定して、意図しない用量設定および/または用量投薬を防止することができる。
注射デバイスは、インターロックを解放するように構成された少なくとも1つの解放部材をさらに含む。典型的に、解放部材は、インターロックに動作可能に係合され、またはインターロックの構成要素である。解放部材は、自動用量設定処置を開始するために使用者によって作動させ、すなわち押し下げまたはダイヤル設定することができるトリガまたは作動部材を含むことができる。ばね、インターロック、および少なくとも1つの解放部材の相互作用によって、用量設定プロセスを容易にすることができる。用量の設定の場合、使用者は、少なくとも1つの解放部材を作動させまたは押し下げてインターロックを解放するだけでよい。インターロックが解放されると、用量トラッカは長手方向変位に関して解放される。次いで用量トラッカは、弛緩ばねの作用を受けて自由に動くことができる。
典型的に、ばねは、用量トラッカに連結または当接された第1の端部を含む。ばねは、注射デバイスのハウジングに連結または当接された第2の端部をさらに含む。このようにして、用量トラッカは、ばねの作用を受けて初期位置から近位方向へ変位可能である。用量の投薬のためおよび投薬中、用量トラッカは、たとえば使用者の親指によって、ばねの作用に逆らって変位可能または押し下げ可能である。したがって、用量投薬中、機械エネルギーをばねに貯蔵することができ、このエネルギーは、後の用量設定処置のために解放することができる。
さらなる例によれば、注射デバイスは、用量トラッカおよびハウジングのうちの一方に設けられた少なくとも第1の追跡止め機能を含む。追跡止め機能は、少なくとも第1の起動位置に到達したとき、ハウジングに対する用量トラッカの長手方向変位をロックおよび/または阻止するように構成される。少なくとも1つの追跡止め機能は、用量トラッカが少なくとも第1の起動位置に到達したとき、ハウジングまたはハウジングに強固に連結された構成要素に機械的に係合するように構成することができる。第1の追跡止め機能がハウジング上に設けられる例では、追跡止め機能は、用量トラッカまたはプリセレクタなどの用量トラッカに強固に連結または結合された構成要素に機械的に係合するように構成される。
少なくとも1つの追跡止め機能によって、用量トラッカの少なくとも第1の起動位置、したがってハウジングに対する用量トラッカの長手方向または軸方向位置を画成することができる。
典型的に、少なくとも1つの追跡止め機能は、注射デバイスのハウジングまたは注射デバイスのハウジングに固定された構成要素に軸方向に当接するように構成される。このようにして、用量トラッカの近位向きの変位を制限することができ、用量トラッカを少なくとも第1の明確な起動位置に固定することができる。
さらなる例では、注射デバイスはプリセレクタを含み、プリセレクタは、少なくとも第1の追跡止め機能に係合するための少なくとも第1のプリセレクタ止め機能を含む。プリセレクタは、少なくとも2つの事前選択位置状態間でハウジングに対して並進運動可能および回転可能のうちの少なくとも一方で変位可能である。プリセレクタ止め機能は、少なくとも第1の追跡止め機能に機械的に係合して、所定の起動位置を越えた用量トラッカの変位を阻止および邪魔するように構成される。プリセレクタ止め機能は、追跡止め機能に係合または当接したとき、用量トラッカの近位向きの変位を阻止するように構成される。
少なくとも第1の追跡止め機能が注射デバイスのハウジング上に設けられる例では、プリセレクタは、用量トラッカに軸方向または長手方向に係合することができる。次いで、用量トラッカに連結または係合されたプリセレクタが少なくとも第1の起動位置に到達したとき、少なくとも第1のプリセレクタ止め機能が少なくとも第1の追跡止め機能に係合する。
プリセレクタは、用量設定処置中のハウジングに対する用量トラッカの変位経路の最大の長さを画成する。この変位経路の長さは、注射デバイスの後の投薬動作中に投薬予定である実際に設定された用量のサイズに相関する。用量の設定中および用量の投薬中、プリセレクタは、ハウジングに対して静止している。プリセレクタは、ハウジングに固定またはロックすることができる。
プリセレクタはハウジングに対して並進運動可能または回転可能のうちの少なくとも一方で変位可能であるため、用量トラッカの少なくとも1つの追跡止め機能に対する少なくとも第1のプリセレクタ止め機能の位置を変動させることができる。このようにして、初期位置から少なくとも第1の起動位置への用量トラッカに対する変位経路を変動させることができる。プリセレクタをハウジングに対して動かすことによって、異なるサイズの事前選択された用量を画成することができる。
プリセレクタがハウジングに対して少なくとも2つの事前選択位置状態間で並進運動可能に変位可能であるとき、用量トラッカの長手方向変位経路の長さをそれぞれ変化させることができる。プリセレクタは、ハウジングに対して回転可能に変位可能である場合、第1のプリセレクタ止め機能だけでなく、第2および/または第3のプリセレクタ止め機能も含むことができる。第1、第2、または第3のプリセレクタ止め機能は、ハウジングの長手方向軸に対して異なる位置に設けることができる。プリセレクタをハウジングに対して回転させることによって、複数のプリセレクタ止め機能のうちの1つのみ、たとえば第1のプリセレクタ止め機能を、用量トラッカの追跡止め機能と位置合わせし、それによってたとえば第1の特有の長さの用量トラッカに対する第1の変位経路を画成することができる。
プリセレクタをハウジングに対して別の位置または回転状態に回転させたとき、別のプリセレクタ止め機能、たとえば第2のプリセレクタ止め機能が追跡止め機能と位置合わせされ、それによって用量トラッカに対する第2の変位経路を画成する。第1のプリセレクタ止め機能の長手方向位置が第2のプリセレクタ止め機能の長手方向位置とは異なるため、第2の変位経路の長さは第1の変位経路の長さとは異なる。このようにして、プリセレクタを1つの位置状態から別の位置状態へ回転させることによって、異なるサイズの用量を設定することができる。
さらなる例によれば、プリセレクタは、少なくとも2つの事前選択位置状態のいずれでも、ハウジングにロック可能である。このため、プリセレクタ上に設けられた第1のロック機能およびハウジング上に設けられた第2のロック機能を設けることができる。第1および第2のロック機能は、ポジティブ係合するように構成することができる。たとえば、第1のロック機能は、キャッチまたは戻り止め構造を含むことができ、第2のロック機能は、キャッチまたは対向戻り止め構造を含むことができる。戻り止め構造および対向戻り止め構造のうちの一方は、突起を含むことができ、戻り止め構造および対向戻り止め構造のうちの他方は、突起を受け入れてロックするための多数の凹部を含む。凹部は、ハウジングに対するプリセレクタの変位方向に対して互いから隔置される。プリセレクタがハウジングに対して回転可能に変位可能である場合、凹部は、ハウジングの側壁の円周に沿って互いから離れて隔置される。プリセレクタがハウジングに対して長手方向に変位可能である場合、凹部は、長手方向に沿って互いから離れて隔置される。凹部は、等距離をあけて隔置することができる。
典型的に、プリセレクタは、使用者にとって、注射デバイスの外側からアクセス可能である。プリセレクタは、ハウジングの外面と同一平面とすることができる。プリセレクタまたはその一部分は、ハウジングの外面から突出することができる。別法として、プリセレクタは、ハウジングの外面の凹部内に配置することができる。最終的に、プリセレクタへの無許可アクセスを邪魔するために、プリセレクタは、粘着ラベルまたは同様のカバーなどのプロテクタによって覆うことができる。プリセレクタは、特有のツールのみによって変位されるように構成することができる。このようにして、プリセレクタの無許可の変位または操作を防止することができる。プリセレクタへのアクセスは、訓練された医療従事者または介護者にのみ提供することができる。
さらなる例では、プリセレクタは、ハウジングおよび用量トラッカのうちの少なくとも一方の上または中に回転可能に支持される(rotationally supported)。プリセレクタは、第1のプリセレクタ止め機能から接線方向および長手方向のうちの少なくとも一方にずれている少なくとも第2のプリセレクタ止め機能を含む。別法として、用量トラッカおよびハウジングのうちの少なくとも一方は、第1の追跡止め機能から接線方向および長手方向のうちの少なくとも一方にずれている少なくとも第2の追跡止め機能を含む。
用量トラッカまたはハウジング上に1つの追跡止め機能だけが設けられる例も可能である。そのような例では、プリセレクタは、少なくとも第1および第2のプリセレクタ止め機能を含み、第1および第2のプリセレクタ止め機能のうちの一方は、プリセレクタの位置状態に応じて追跡止め機能に係合するように構成される。他の例では、1つのプリセレクタ止め機能のみを設けることができる。そのような例では、用量トラッカおよびハウジングのうちの少なくとも一方が、少なくとも第1および第2の追跡止め機能を含み、第1および第2の追跡止め機能のうちの一方は、プリセレクタの位置状態に応じてプリセレクタ止め機能に係合するように構成される。
プリセレクタは、第1のプリセレクタ止め機能から接線方向および長手方向のうちの少なくとも一方にずれている少なくとも第2のプリセレクタ止め機能を含む。事前選択位置状態に応じて、したがってハウジングに対するプリセレクタの回転状態または向きに応じて、第1および第2のプリセレクタ止め機能のうちの一方のみが、用量トラッカの追跡止め機能と長手方向に位置合わせされる。少なくとも1つの解放部材によってインターロックが解放されたとき、用量トラッカは、ばねの作用を受けて近位方向へ変位し、その後、用量トラッカの第1の起動位置または第2の起動位置に到達したとき、用量トラッカの追跡止め機能が、第1または第2のプリセレクタ止め機能のうちの一方に係合する。ここでは、単一の追跡止め機能が提供されるだけで十分である。
代替として、用量トラッカおよびハウジングのうちの少なくとも一方は、少なくとも第1の追跡止め機能と、第1の追跡止め機能から接線方向および長手方向のうちの少なくとも一方にずれている第2の追跡止め機能とを含む。ここではまた、事前選択位置状態に応じて、したがってハウジングに対するプリセレクタの回転状態または向きに応じて、第1および第2の追跡止め機能のうちの一方のみが、プリセレクタ止め機能と長手方向に位置合わせされる。少なくとも1つの解放部材によってインターロックが解放されたとき、用量トラッカは、ばねの作用を受けて近位方向へ変位し、その後、プリセレクタの事前選択位置状態によって画成されたそれぞれの起動位置に到達したとき、プリセレクタ止め機能と位置合わせされた特定の追跡止め機能が、それぞれのプリセレクタ止め機能に係合する。ここでは、単一のプリセレクタ止め機能が提供されるだけで十分である。
プリセレクタ、用量トラッカ、およびハウジングのうちの1つが、互いから所定の長手方向または接線方向の距離をあけて位置する少なくとも第1および第2のプリセレクタ止め機能または少なくとも第1および第2の追跡止め機能を含み、その距離が、プリセレクタがハウジングに対して変位可能である方向に対して非平行に延びるため、ハウジングに対する用量トラッカの様々な明確な止め位置を提供することができ、各止め位置は、異なるサイズの薬剤の用量を画成する。
別の例によれば、少なくとも第1のプリセレクタ止め機能は、追跡止め機能の止め面に当接するための止め面を含む。典型的に、プリセレクタ止め機能および追跡止め機能の止め面は、軸方向または接線方向の止め面である。典型的に、プリセレクタまたはプリセレクタ止め機能の1つまたはそれ以上の止め面は遠位方向を向き、追跡止め機能の1つまたはそれ以上の軸方向の止め面は近位方向を向く。用量トラッカがばねの作用を受けて近位方向へ変位したとき、追跡止め機能の止め面は、第1のプリセレクタ止め機能の止め面または第2もしくは第3のプリセレクタ止め機能のうちのいずれかの他の止め面に軸方向および/または接線方向に当接する。プリセレクタがハウジングに軸方向に固定されたとき、ハウジングに対する用量トラッカのさらなる近位向きの変位が事実上防止される。
さらに、プリセレクタ止め機能は、単一の止め面を含むだけでなく、用量トラッカまたは追跡止め機能の相応の形状の多数の止め面に同時に当接するように構成されたいくつかの止め面も含むことが考えられる。このようにして、プリセレクタと用量トラッカとの間の改善された当接、たとえば軸方向の当接または接線方向の当接を提供することができる。用量トラッカとハウジングとの間で、機械的な力および機械的運動量をかなり確実かつ障害なく伝達することができる。
プリセレクタの止め面を、プリセレクタの第1の止め面と見なすことができる。追跡止め機能の止め面を、追跡止め機能の第1の止め面と見なすことができる。
別の例によれば、少なくとも第2のプリセレクタ止め機能は、第1の止め面から長手方向および/または接線方向にずれている第2の止め面を含む。このようにして、プリセレクタの第2の止め面は、プリセレクタの第1の止め面から長手方向および/または接線方向にずれている。たとえば、第1の止め面は、第2の止め面から近位に位置することができる。第1の止め面は、注射デバイスによって設定および投薬される用量の最大サイズを画成することができる。第1の軸方向止め面が追跡止め機能と位置合わせされた場合、用量トラッカは、用量設定処置中にハウジングに対して最大の長手方向変位を受けることができる。プリセレクタの第2の止め面が追跡止め機能と位置合わせされた場合、用量設定処置中の用量トラッカの軸方向変位はより短くなる。
プリセレクタの第2の止め面が追跡止め機能と位置合わせされたとき、用量トラッカは、ハウジングに対して第2の起動位置へ変位可能である。プリセレクタの第1の止め面が追跡止め機能と位置合わせされた状態で、用量トラッカは、用量設定処置の終了時に第1の起動位置に到達する。ここで、用量トラッカの第1の起動位置は、第2の起動位置から近位にずれて位置することができる。
他の例では、追跡止め機能が第1および第2の止め面を含むことができ、第2の止め面は、第1の止め面から長手方向および/または接線方向にずれている。たとえば、第1の止め面は、第2の止め面から遠位に位置することができる。第1の止め面は、プリセレクタの相応の形状の止め面と位置合わせされたとき、注射デバイスによって設定および投薬される用量の最大サイズを画成することができる。次いで用量トラッカは、用量設定処置中にハウジングに対して最大の長手方向変位を受けることができる。
別の例では、少なくとも第1の追跡止め機能および少なくとも第1のプリセレクタ止め機能のうちの一方が、第1の径方向突起を含み、少なくとも第1の追跡止め機能およびプリセレクタ止め機能のうちの他方が、a)第1の径方向突起に当接する第2の径方向突起、およびb)第1の径方向突起を摺動可能に受けるように構成された溝のうちの少なくとも一方を含む。
ここで、第1の追跡止め機能は、プリセレクタ止め機能の径方向内方へ延びる突起に係合する径方向外方へ延びる突起を含むことができる。第1の追跡止め機能は、プリセレクタ止め機能の長手方向または螺旋状の溝に摺動可能に係合する少なくとも1つの径方向外方へ延びる突起を含むことができる。別の例では、プリセレクタ止め機能は、追跡止め機能の径方向外方へ延びる突起に係合する少なくとも1つの径方向内方へ延びる突起を含む。他の例では、プリセレクタ止め機能は、用量トラッカの外面上の長手方向または螺旋状の溝に摺動可能に係合する径方向内方へ延びる突起を含む。
さらなる例では、プリセレクタ止め機能は、ハウジング上に設けられた追跡止め機能の少なくとも1つの長手方向状または螺旋状の溝に摺動可能に係合する径方向内方へ延びる突起を含む。別法として、ハウジングの追跡止め機能は、プリセレクタ止め機能の少なくとも1つの長手方向状または螺旋状の溝に摺動可能に係合する径方向突起を含む。
別の例では、追跡止め機能は、用量トラッカの側壁から突出する径方向突起を含む。典型的に、径方向突起は、追跡スリーブとして構成された追跡部材の外向き面から突出することができる。追跡止め機能が用量トラッカ上に設けられたとき、追跡止め機能の径方向突起は、径方向外方へ延びる突起を構成することができる。ハウジング上に設けられたとき、追跡止め機能の径方向突起は、径方向内方へ延びる突起を構成することができる。概して、径方向突起は、ピンまたはフランジを構成することができる。
別の例によれば、プリセレクタ止め機能は、プリセレクタの側壁から突出する径方向突起を含む。プリセレクタはまた、スリーブ状の形状を含むことができる。プリセレクタ止め機能は、追跡止め機能の径方向外方へ延びる突起に係合する径方向内方へ延びる突起を含むことができる。別法として、プリセレクタ止め機能の径方向突起は、追跡止め機能の径方向内方へ延びる突起に係合する径方向外方へ延びる突起を構成することができる。
これは特に、追跡止め機能が注射デバイスのハウジング上に設けられた場合に当てはまる。プリセレクタ止め機能の径方向突起は、ピンまたはフランジを構成することができる。典型的に、追跡止め機能の少なくとも1つの径方向突起およびプリセレクタ止め機能の少なくとも1つの径方向突起は、相応または相補形の形状である。これらの径方向突起は、用量トラッカまたはハウジングおよびプリセレクタの特定の部分またはセクション上に配置され、したがって最大用量位置状態に到達したとき、追跡止め機能およびプリセレクタ止め機能の径方向突起は直接機械的に当接し、それによってハウジングに対する用量増分方向への用量トラッカのさらなる変位を邪魔する。
別の例によれば、ハウジングおよび用量トラッカのうちの一方が、第1の追跡止め機能および第2の追跡止め機能を含む。第1および第2の追跡止め機能は各々、溝を含む。したがって、第1の追跡止め機能が第1の溝を含み、第2の追跡止め機能が第2の溝を含む。どちらの溝も、プリセレクタの径方向突起を摺動可能に受けるように構成される。第1および第2の溝は、互いに平行に延びるが、異なる長さを含むことができる。第1の溝の端部に、第1の止め面が設けられる。第2の溝の端部に、第2の止め面が設けられる。第1および第2の止め面はどちらも、径方向突起の止め面に係合するように構成される。
プリセレクタ止め機能の径方向突起は、ハウジングまたは用量トラッカの第1の溝および第2の溝のうちの一方のみに沿って摺動する。プリセレクタが2つの事前選択位置状態のうちの第1の事前選択位置状態にあるとき、径方向突起は、第1の溝に沿って摺動する。プリセレクタが少なくとも2つの事前選択位置状態のうちの第2の事前選択位置状態にあるとき、径方向突起は、第2の溝に沿って摺動する。
第1および第2の溝は、異なる形状を含む。このようにして、第1および第2の溝は、プリセレクタと用量トラッカまたはハウジングとの間の異なる相対変位経路を有効にしかつ提供する。同様に、異なる形状の溝は、それぞれプリセレクタまたはハウジングに対して、初期位置またはゼロ用量位置状態と、少なくとも第1の起動位置または最大用量位置状態との間で、用量トラッカの異なる変位経路長さを提供する。
別法として、プリセレクタが、第1のプリセレクタ止め機能および第2のプリセレクタ止め機能を含むことができる。第1のプリセレクタ止め機能が第1の溝を含み、第2のプリセレクタ止め機能が第2の溝を含む。どちらの溝も、用量トラッカまたはハウジング上に設けられた追跡止め機能の径方向突起を摺動可能に受けるように構成される。第1および第2の溝は、互いに平行に延びるが、異なる長さを含むことができる。第1の溝の端部に、第1の止め面が設けられる。第2の溝の端部に、第2の止め面が設けられる。第1および第2の止め面はどちらも、径方向突起の止め面に係合するように構成される。
さらなる例では、第1の溝は第2の溝に平行に延びる。第2の溝は第1の溝より長い。第1の溝および第2の溝は、合流して連結溝になる。連結溝は、プリセレクタが第1の事前選択位置状態と第2の事前選択位置状態との間で変位可能である方向に実質上平行な方向に沿って延びる。ゼロ用量位置状態にあるとき、追跡止め機能の突起は連結溝内に位置することができる。連結溝の長さに沿ったプリセレクタの変位により、連結溝に沿った突起の摺動運動が生じる。
少なくとも2つの事前選択位置状態のうちの一方に到達したとき、突起はまだ連結溝内にあるが、第1の溝および第2の溝のうちの一方と位置合わせされる。プリセレクタが第1の事前選択位置状態にあるとき、突起は第1の溝と位置合わせされる。プリセレクタが第2の事前選択位置状態に配置されたとき、突起は第2の溝と位置合わせされる。用量設定処置が開始されるとすぐに、突起は、プリセレクタの事前選択位置状態に応じて第1の溝または第2の溝に沿って摺動する。
それぞれの第1および第2の溝の第1の止め面および/または第2の止め面は、連結溝から離れる方を向いている溝の端部に位置する。第1および第2の溝が異なる長さであるため、第1および第2の溝は、それぞれの溝に沿って摺動する径方向突起に対して異なる変位経路を提供する。このようにして、用量トラッカの異なるサイズの最大用量位置状態を提供することができる。径方向突起が、連結溝から離れる方を向いているそれぞれの溝の端部に到達した後、ハウジングに対する用量トラッカのさらなる変位が事実上邪魔される。
別の例によれば、プリセレクタは、プリセレクタスリーブを含む。プリセレクタスリーブは、ハウジングの近位端に配置することができる。プリセレクタスリーブは、用量トラッカの近位部分とハウジングの近位端との間に設けることができる。プリセレクタは、ハウジング上に直接位置することができ、またはハウジングによってハウジングの近位端から所定の距離をあけて支持することができる。ここで、プリセレクタは、ハウジングの近位端から所定の距離だけ遠位にずらして配置することができる。
別の例では、プリセレクタは、用量トラッカに並進運動不能に固定することができるが、用量トラッカに対して自由に回転可能とすることができる。ここで、プリセレクタは、たとえばプリセレクタ止め機能の第1および第2の溝のうちの一方が追跡止め機能に係合することによって、ハウジングに掛止係合またはスプライン連結することができる。
概して、いくつかの例では、プリセレクタは、事前選択位置状態として示す少なくとも2つの異なる個別の位置において、ハウジングの側壁に捕捉可能または固定可能である。事前選択位置状態は、側壁上に等距離をあけて配置することができる。用量トラッカはハウジングに対して完全に1周することができるため、隣接する事前選択位置状態間の距離は、用量トラッカの長手方向前進運動と同一であり、それに対応する。このようにして、最大用量位置状態に到達したとき、追跡止め機能は常にプリセレクタ止め機能に係合することが提供される。
さらなる例によれば、注射デバイスは、用量トラッカに一体的に形成または長手方向に係合されたトリガをさらに含み、少なくとも第1の起動位置にあるとき、トリガおよび用量トラッカの近位端のうちの少なくとも一方が、ハウジングの近位端から突出する。トリガは、用量ボタンを含むことができ、用量トラッカと一体的に形成することができる。任意の他の起動位置でも、用量ボタンは、ハウジングの近位端から突出することができる。初期位置で、用量ボタンは、ハウジングの近位端と実質上同一平面に配置することができる。解放部材を起動し、インターロックを停止状態にすることによって、ばねは、用量トラッカを近位方向に変位させるように構成され、したがってトリガがハウジングの近位端から突出する。次いで、後の用量投薬または用量注射処置のために、トリガまたは用量ボタンは、遠位方向に押し下げ可能である。
典型的に使用者によって提供され、用量トラッカに遠位方向に作用する力は、両方の目的で、すなわちピストンロッドを遠位方向に前進させて薬剤を排出するためにも、ばねを付勢しまたはばねに張力をかけるためにも使用される。
初期位置から少なくとも第1の起動位置への用量トラッカの長手方向変位、したがって初期位置と少なくとも第1の起動位置との間の長手方向距離は、注射デバイスによって投薬または注射される用量のサイズに直接相関することができる。初期位置と少なくとも第1の起動位置との間の距離が大きければ大きいほど、用量のサイズも大きくなる。
用量トラッカは、初期位置から多数の異なる個別の起動位置へ変位可能であることが考えられる。したがって、用量トラッカは、第1の起動位置だけでなく、第2または場合により第3もしくは第4の起動位置でも変位可能および固定可能である。第2、第3、または第4の起動位置で、用量トラッカは、初期位置から段階的に増大する距離に位置する。第2、第3、および第4の起動位置は、細長いハウジングの長手方向軸に沿って、等距離をあけて分離することができる。しかし、第1、第2、第3、および第4の起動位置間の距離は、異なるサイズとすることができ、それぞれの注射デバイスの個々の構成によって決定することができる。
別の例では、ばねは、ハウジングに動作可能に連結された第1の端部と、用量トラッカに動作可能に連結された第2の端部とを有する。第1の端部は、注射デバイスのさらなる構成要素に連結することができ、さらなる構成要素は、ハウジングに対して回転不能もしくは並進運動不能のうちの少なくとも一方でロックされ、またはハウジングに耐トルク係合(torque proof engagement)される。同様に、ばねの第2の端部もまた、用量トラッカに直接連結することができ、または用量トラッカに対して並進運動不能もしくは回転不能のうちの少なくとも一方でロックされた注射デバイスの構成要素に連結することができる。ばねは、用量トラッカを少なくとも初期位置から少なくとも第1の起動位置へ自動的に変位させる機械的駆動を供給および提供することができる。
ばねは、円筒形の形状の圧縮ばねまたは螺旋状に巻かれたねじりばねを含む。ばねは、用量トラッカの少なくとも一部分を囲み、またはばねは、用量トラッカの中空部分内に配置される。ねじりばねとして実施されるとき、ばねは、ハウジングに対する用量トラッカへのトルクを誘起するように構成される。ねじりばねは、用量トラッカがハウジング上に回転可能に支持される場合、または用量トラッカがハウジングにねじ係合される場合は特に有利である。このばねは、用量設定処置中に用量トラッカに駆動力を印加するために、長持ちし、耐久性があり、障害のない機械的駆動を提供する。
用量投薬処置中、用量トラッカ部材は、少なくとも第1の起動位置から、したがって最大用量位置状態から、ゼロ用量位置状態に一致する初期位置へ戻る。この変位は、典型的に、デバイスの使用者によって力がかけられて提供されることによって、手動で行われる。最大用量位置状態からゼロ用量位置状態への用量トラッカの変位は、ばね要素の作用に逆らって行われる。
このようにして、用量の投薬中に用量トラッカにかけられて提供された機械エネルギーは、ばね要素内に少なくとも部分的に貯蔵される。この機械エネルギーは、後の用量設定処置のために、再び解放することができる。その限りにおいて、注射デバイスは、繰り返し使用のために、したがって薬剤の多数の用量の設定および投薬のために構成される。
別の例では、用量トラッカは、ハウジングにねじ係合された追跡スリーブを含む。追跡スリーブは、円筒形の形状とすることができる。追跡スリーブは、ハウジング内に位置することができる。ハウジングにねじ係合されたとき、ばねの第1の端部は、用量トラッカに直接連結することができ、ばねの第2の端部は、ハウジングに直接連結することができる。このようにして、解放部材の作動によって解放されたとき、用量トラッカは、ばねの作用を受けてハウジングに対して自由に回転することができ、または螺旋状に巻くことができる。
このようにして、注射デバイスによって、完全に自動化された用量設定処置を提供することができる。最終使用者は、用量設定プロセスに気を付ける必要がなくなる。最終使用者は、用量設定機構が用量トラッカを少なくとも第1の起動位置へ自動的に変位させることから、解放部材を作動させるだけでよい。設定される用量の選択または修正は、プリセレクタによって排他的に行われる。プリセレクタは、用量設定中ならびに用量投薬中もハウジングに対して固定されて静止したままである。等しいサイズの多数の用量を設定および投薬するために、プリセレクタは、ハウジングに対して静止したままとすることができる。少なくとも、プリセレクタは、プリセレクタを1つの事前選択位置状態から別の事前選択位置状態へ動かすためにプリセレクタを変位させなければならない変位方向に対して静止したままである。使用者による注射デバイスとの対話は、用量の設定のための解放部材の作動、および用量投薬処置をトリガまたは制御するためのトリガまたは注射デバイスの同様のアクチュエータへの駆動力の印加に制限することができる。
別の例によれば、解放部材は、ハウジングの近位端に回転可能に支持された環状リングを含む。環状リングの内面および用量トラッカの外面のうちの一方は、少なくとも1つのキャッチ要素を含み、少なくとも1つのキャッチ要素は、環状リングの内面および用量トラッカの外面のうちの他方の突起に係合する。用量トラッカをハウジングから解放するために、環状リングは、ハウジングの接線方向または円周方向に沿って回転することが意図される。このようにして、少なくとも1つのキャッチ要素は、少なくとも1つの突起から係合解除され、それによってハウジングに対する用量トラッカの変位を自由にする。
解放部材は、ばねの作用に逆らって回転可能とすることができる。このようにして、解放部材をロック位置から解放位置へ回転させた後、ばねは、解放部材をロック位置へ戻す働きをする。キャッチ要素は、突起に係合するための面取りセクション(beveled section)を含むことができる。用量投薬処置の終了時に用量トラッカが初期位置へ戻るとき、突起は、キャッチ要素に沿って摺動し、それによってばねの作用に逆らって解放部材の回転を誘起することができる。初期位置に到達すると、キャッチ要素は、ばねの作用を受けてロック構成へ戻ることができる。
さらなる例では、注射デバイスの少なくとも1つの解放部材は、ハウジングの側壁の凹部内に位置する解放ボタンを含む。解放ボタンは、用量トラッカを解放するためにハウジング内へ押し下げ可能である。解放ボタンは、ハウジングの側壁の外面と実質上同一平面に配置することができる。このようにして、解放ボタンの意図しない押し下げを事実上防止することができる。注射デバイスは、1つだけでなく2つの解放部材をさらに含むことができ、2つの解放部材は、ハウジングの側壁の中または上で対極の部分に位置する。注射デバイスのハウジングは、管状の形状とすることができる。第1および第2の解放ボタンをハウジングの両側に設けることで、患者の安全がさらに増大する。インターロックは、両方の解放部材が作動されたとき、たとえば同時に押し下げられたときのみ解放される。この例では、1つの解放部材を押し下げただけでは、インターロックを解放するには不十分である。このようにして、デバイスの誤使用および1つの解放ボタンだけの意図しない押し下げは、注射デバイスおよびその動作に影響しない。
注射デバイスを動作させるには、少なくとも1つの解放ボタンを押し下げるだけでよい。次いで用量トラッカは、ばねの作用を受けて前進し、ハウジングの近位端から突出する。次いで注射デバイスは、用量の投薬の用意ができる。用量トラッカまたはトリガを押し下げたとき、薬剤の用量の所定のサイズが投薬および注射される。初期位置へ戻ったとき、インターロックは、自動的に再起動して用量トラッカを初期位置でロックするように構成される。後の用量設定および投薬処置のためには、少なくとも1つの解放ボタンを再び押し下げる必要があり、用量トラッカは、上記と実質上同一の方法でハウジングから突出する。使用者は、用量のサイズに気を付ける必要はない。用量のサイズがプリセレクタのそれぞれの位置状態によって画成された後、注射デバイスは、常に同じ量の薬剤を設定および投薬するように構成される。
いくつかの例では、プリセレクタは、患者から隠すことができる。さらに、プリセレクタの事前選択位置状態を修正するために特別なツールが必要になることがある。医療従事者などの許可された人が、プリセレクタへの排他的なアクセスを有することができる。注射デバイスが自己治療のために患者へ渡される前に、医療従事者は、注射デバイスによって投薬される単一の用量サイズを排他的に画成することができる。このようにして、患者自身は、設定および投薬予定の用量のサイズが正しいどうかに気を付ける必要がなくなる。過少投与または過剰投与の危険を低減させることができ、したがって患者の安全を高めることができる。
さらなる例によれば、インターロックは、用量トラッカに連結または一体化された第1の係合構造と、少なくとも1つの解放部材に連結または一体化された第2の係合構造とを含む。典型的に、第1および第2の係合構造は、少なくとも1つの解放部材が初期位置にあり、用量トラッカが初期位置にあるとき、長手方向に対してポジティブ係合するように構成される。第1および第2の係合構造は、少なくとも1つの解放部材が作動され、たとえば押し下げられたとき、係合解除されるように構成される。第1および第2の係合構造は、用量トラッカとハウジングとの間で軸方向の力を伝達するように構成された相互に相応の形状の歯状セクション(toothed section)または径方向突起および/もしくは凹部を含むことができる。第1および第2の係合構造は、相互に対応する戻り止め構造またはスナップ機能を含むことができる。典型的に、第2の係合構造は、第1の係合構造から係合解除されるように径方向に変位可能である。このようにして、第1の係合構造、したがって用量トラッカを解放することができ、ばねの作用を受けて近位方向へ変位させることができる。
別の例では、注射デバイスは、カートリッジをさらに含む。カートリッジは、薬剤が充填された筒体を含む。筒体は、ピストンロッドによって筒体に対して軸方向に変位可能である栓またはピストンによって封止される。投薬動作のためおよび投薬動作中、ピストンロッドは、栓を遠位方向に変位させるように、カートリッジの栓に動作可能に係合可能である。典型的に、カートリッジの遠位端が、セプタムなどの穿孔可能な膜によって封止される。薬剤の投薬のために、この穿孔可能な封止を両頭注射針によって貫通することができる。したがって、相応に前進するピストンロッドによって誘起される栓の遠位向きの変位により、薬剤の用量が排出される。
この文脈では、「遠位」または「遠位端」という用語は、人または動物の注射部位に面する注射デバイスの端部を指す。「近位」または「近位端」という用語は、人または動物の注射部位から最も離れている注射デバイスの反対側の端部を指す。
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4もしくはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4の類似体もしくは誘導体を含む。
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
インスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
エキセンジン-4は、たとえば、H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2配列のペプチドであるエキセンジン-4(1-39)を意味する。
エキセンジン-4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H-(Lys)4-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)5-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
(ここで、基-Lys6-NH2が、エキセンジン-4誘導体のC-末端に結合していてもよい);
または、以下の配列のエキセンジン-4誘導体:
desPro36エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2(AVE0010)、
H-(Lys)6-desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Lys6-desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(S1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン-4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
から選択される。
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70~110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211~217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH-H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1~R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1~C6アルキル基、場合により置換されたC2~C6アルケニル基、場合により置換されたC6~C10アリール基、または場合により置換されたC6~C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本発明に加えることができることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用されるあらゆる参照番号は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
以下、注射デバイスの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示す注射デバイス1は、管状で細長い形状のハウジング10を含む。注射デバイス1は、充填済みの使い捨て注射デバイスとして構成することができる。別法として、注射デバイス1は、再利用可能な注射デバイスとして構成することもできる。
注射デバイス1は、ニードルアセンブリ15を取り付けることができる遠位端を含む。ニードルアセンブリ15の注射針は、内側ニードルキャップ16によって保護することができ、外側ニードルキャップ17によってさらに保護することができる。注射デバイス1の遠位端は、注射デバイス1のハウジング10に解放可能に係合可能である保護キャップ18によってさらに覆われる。注射デバイス1に取り付けられたとき、保護キャップ18は、注射デバイス1のハウジングの一部分を覆う。この部分は、カートリッジホルダ14としても示されている。カートリッジホルダ14は、薬剤が充填されたカートリッジ6を収容するように構成される。カートリッジ6は、管状の筒体25を含む。筒体25は、穿孔可能な封止26によって遠位方向2に封止される。
近位方向3では、筒体25は、変位可能なピストン7によって封止される。ピストン7は、注射デバイス1の駆動機構8のピストンロッド20によって遠位方向2に変位可能であり、所定の量の薬剤をカートリッジからニードルアセンブリ15の注射針を通って排出する。穿孔可能な封止26は、セプタムとして構成され、ニードルアセンブリ15の近位向きの先端によって穿孔可能である。さらに、カートリッジホルダ14は、その遠位端にねじ付ソケット28を含み、ねじ付ソケット28は、ニードルアセンブリ15の相応のねじ付部分にねじ係合する。ニードルアセンブリ15をカートリッジホルダ14の遠位端に取り付けることによって、カートリッジ6の封止26が貫通され、それによってカートリッジ6の内部への流体伝達アクセスが確立される。
注射デバイス1の近位部分または主ハウジング10は、駆動機構8を収容および収納するように構成される。駆動機構8の全体は、図4および図5に示されている。ここで、駆動機構8は、駆動機構8および用量設定機構9の組合せである。駆動機構8は、薬剤の用量を設定および投薬するように構成される。ここで、駆動機構8は、用量設定機構9に一致することができる。以下、駆動機構8を参照する。
注射デバイス1の動作は次のとおりである。用量の設定のために、使用者は、第1および第2の解放ボタン102、103の形態の解放部材100、101をトリガしなければならない。図17に示すように、解放部材100、101は各々、解放ボタン102、103を含み、解放ボタン102、103は、凹部19内、したがって図23に示すハウジング10の側壁13の貫通口内に位置する。解放部材100、101は、インターロック84に属し、インターロック84は、図18に示す後退位置または初期位置iで用量トラッカ60を維持するように構成される。用量トラッカ60は用量ボタン61を含み、用量ボタン61は、初期位置iにあるとき、ハウジング10の近位端面と実質上同一平面になる。用量トラッカ60は、図16に示すばね80によって近位方向3に付勢される。少なくとも1つの解放部材を起動することによって、典型的にはたとえば両方の解放部材100、101を同時に押し下げることによって、用量トラッカ60とハウジング10との間のインターロック84が停止状態または無効にされ、用量トラッカ60は、ばね80の作用を受けて近位方向3に自由に変位することができる。用量トラッカ60は、ハウジング10に摺動可能に係合される。用量トラッカ60がハウジング10に対して回転することが防止される。用量トラッカ60は、図18および図19の比較から明らかなように、初期位置iから起動位置aへ摺動するように構成される。
図19に示す起動位置aで、用量トラッカ60は、たとえば使用者の親指によって遠位方向2に押し下げ可能であり、それによりピストンロッド20を遠位方向2に前進させて、ピストン7をカートリッジ6に対して変位させる。このようにして、所定の量の薬剤をカートリッジ6から排出することができる。用量の投薬のために、用量トラッカ60は、ピストンロッド20に動作可能に係合される。駆動機構8は、用量トラッカ60の遠位前進摺動運動をピストンロッド20の回転運動に変換する働きをし、ピストンロッド20は、ハウジング10とのねじ係合により、それに応じて遠位方向2に前進する。
用量トラッカ60または用量ボタン61が図18に示す初期位置へ戻ったとき、インターロック84は自動的に再起動されて、ばね80の作用に逆らって用量トラッカ60を初期位置iで維持する。用量トラッカ60の遠位向きの変位は、ばね80によってかけられる力に逆らって作用する。したがって、用量トラッカ60が遠位方向2に変位すると、ばね80は付勢されまたは緊張される。図18に示す初期位置iに戻って到達したとき、インターロック84は係合または再係合する。少なくとも一方、典型的には両方の解放部材100、101を繰り返し押し下げることで、インターロック84が係合解除され、用量トラッカ60をハウジング10に対して近位方向3に起動位置aへ繰り返し変位させることが有効になる。
図18に示す初期位置iと図19~図21に示す起動位置のうちの1つとの間のハウジング10に対する用量トラッカ60の変位経路の長さは、実際に設定された用量のサイズに相関する。用量トラッカ60および用量ボタン61がハウジング10の近位端からより多く突出すればするほど、後の用量投薬処置で投薬される用量のサイズも大きくなる。
用量のサイズを変動させるために、注射デバイス1は、図12および図15に示すプリセレクタ70を備える。プリセレクタ70は、ハウジング10に対して長手方向または回転可能のうちの少なくとも一方で変位可能である。プリセレクタ70は、ハウジング10に対して少なくとも2つの事前選択位置状態間で並進運動可能または回転可能に変位可能である。ここに示されている例では、プリセレクタ70は、ハウジング10に対して回転可能である。プリセレクタ70は、ハウジング10に軸方向に固定される。少なくとも2つの事前選択位置状態のいずれでも、プリセレクタ70はハウジング10に固定可能である。このため、プリセレクタ70およびハウジング10の相互係合は、対応する形状の少なくとも2つまたはそれ以上の凹部のうちの1つに機械的に係合可能な少なくとも1つの突起などのラチェット機構を含むことができる。
プリセレクタ70は、スリーブセクション71を含む。スリーブセクション71は、ハウジング10内に配置される。スリーブセクション71の外向き部分は、ハウジング10の側壁13の内向き部分に面している。ハウジング10は、図18~図21に示すように、ハウジング10の側壁13内に事前選択窓(preselection window)11を含む。プリセレクタ70のスリーブセクション71の外面には、たとえば1、2、3などの1つまたはいくつかの用量標示数字(dose indicating number)の形態の少なくとも1つの事前選択インジケーション(preselection indication)77が設けられる。ハウジング10に対するプリセレクタ70の回転状態に応じて、用量標示数字のうちの1つのみが事前選択窓11内に現れる。図19に示すように、サイズ1の用量が現在事前選択されている。図20ではサイズ2の用量が事前選択されており、図21の構成では、数字3によって特徴付けられた用量サイズが事前選択されている。
数字、または記号もしくは文字などの任意の他のタイプの事前選択インジケーションが、投薬予定の薬剤のいくつかの標準単位を表すことができる。たとえば、事前選択インジケーション77の数字1は、薬剤の10の標準単位を表すことができる。プリセレクタ70を動かして回転させるために、スリーブセクション71の外向き面内に径方向凹部72が設けられる。凹部72は、図23に示すように、ハウジング10の側壁13内の貫通口78と位置合わせされる。ここで、介護者などの許可された人は、ツールを使用して、貫通口78を通してスリーブセクション71の凹部72に係合することができる。次いで、このツールを使用することによって、回転軸である細長いハウジング10の長手方向軸zに対してプリセレクタ70を回転させることができる。したがって、別の事前選択インジケーション77が、事前選択窓11内に現れる。図23に示す貫通口78は、プリセレクタ70の無許可の操作を防止するために、ラベル、粘着テープ、または取り外し可能なカバーによって覆うことができる。
図15にさらに示すように、プリセレクタ70は、多数のプリセレクタ止め機能73、74、75を含む。プリセレクタ止め機能73、74、75は、長手方向に延びており、スリーブセクション71から遠位方向2に突出することができる。プリセレクタ止め機能73、74、75は、プリセレクタ70のスリーブセクション71から軸方向または長手方向に突出する突起76の階段状セクションとして設けることができる。
第1の止め機能73、第2の止め機能74、および第3の止め機能75として示す止め機能73、74、75は各々、それぞれの止め面73a、74a、75aを含む。止め面73a、74a、75aは、遠位方向2を向いている。止め機能73、74、75は、用量トラッカ60の相応の形状の追跡止め機能63に係合するように構成される。追跡止め機能63は、近位向き止め面63aを含む。
図4に示す初期構成では、追跡止め機能63とプリセレクタ止め機能73、74、75のいずれとの間にも長手方向距離および自由空間が存在する。この構成は、用量トラッカ60の初期位置iを表す。インターロック84が解放されると、用量トラッカ60は、弛緩ばね80の作用を受けて、近位向きの前進運動を受ける。用量トラッカ60は長手方向運動を受け、その後、追跡止め機能63の止め面63aが、プリセレクタ止め機能73、74、75のうちの1つのプリセレクタ止め機能の1つの止め面73a、74a、75aに軸方向に当接する。
図5に示す構成で、追跡止め機能63は、第2のプリセレクタ止め機能74に軸方向に係合および当接している。近位向き止め面63aは、遠位向き止め面74aに直接当接している。止め機能63、73、74、75が共通の径方向平面内に位置し、用量トラッカ60がハウジング10に摺動係合しているため、用量の最大サイズ、したがって用量トラッカ60の起動位置は、プリセレクタ止め機能73、74、75のうちの1つに対する追跡止め機能63の長手方向の位置合わせによって管理される。各止め機能73、74、75は、止め面73a、74a、75aを含み、様々な止め機能73、74、75の止め面は、互いに対して軸方向および接線方向にずれている。
図15に示すように、様々なプリセレクタ止め機能73、74、75は、長手方向または軸方向に異なる長さを含む。止め機能73、74、75の止め面73a、74a、75aはまた、互いに対して軸方向にずれて位置する。たとえば、最も遠位の止め機能75が追跡止め機能63と位置合わせされるように、プリセレクタ70がハウジング10に対して回転された場合、追跡止め機能63がそれぞれの止め機能75に軸方向に当接するまで、用量トラッカ60の変位経路は近位方向3に見て比較的短い。
プリセレクタ止め機能73などの別のプリセレクタ止め機能が、追跡止め機能63と長手方向に位置合わせされる場合、初期位置から図21に示す起動位置への用量トラッカ60の動きはかなり長く、これは最大用量サイズに対応する。最も遠位のプリセレクタ止め機能75が追跡止め機能63と長手方向に位置合わせされたとき、最も小さい事前選択インジケーション77、すなわち数字1が、事前選択窓11内に現れる。最も近位のプリセレクタ止め機能73が追跡止め機能63と長手方向に位置合わせされたとき、最も大きい事前選択インジケーション77、すなわち数字3が、事前選択窓11内に現れる。
図5および図20の構成から開始し、プリセレクタ70を注射デバイス1の近位端から見て時計回り方向に回転させたとき、最も近位のプリセレクタ止め機能73が、追跡止め機能63と位置合わせされる。それに応じて、初期位置iと起動位置aとの間の用量トラッカ60の長手方向行程に対する自由経路長が拡大される。図21に示す起動位置aに最終的に到達したとき、用量ボタン61、したがって用量トラッカ60は、別のプリセレクタ止め機能74または75が追跡止め機能63と位置合わせされたプリセレクタの構成と比較すると、ハウジング10の近位端からさらに遠くへ突出する。
ハウジング10は、ハウジング10に対する用量トラッカ60の瞬時の状態または位置が示される用量標示窓(dose indicating window)12をさらに含む。用量標示窓12内には、用量トラッカ60の外面上に設けられた用量サイズインジケータ(dose size indicator)66が現れる。図18に示す初期位置にあるとき、用量サイズインジケータ66は、矢印の形態で現れて、用量トラッカ60を近位方向3へ変位させる必要があることを使用者に示すことができる。図19~図21のいずれかに示す起動位置aに到達したとき、異なるまたは同一の用量サイズインジケータ66が、用量標示窓12内に現れ、それによって注射デバイス1が薬剤の用量を投薬および排出する用意ができたことを使用者に示す。ここで、用量サイズインジケータ66は、遠位方向2を指す矢印を示すことができる。
注射デバイス1は、図13に示す支持体90をさらに含む。支持体90は、ハウジング10内に固定される。支持体90は、駆動機構8のいくつかの他の構成要素のための取り付け支持体または取り付けプラットフォームとして働く。支持体90はまた、ハウジング10と一体的に形成することができる。注射デバイス1を組み立てる目的で、支持体90をハウジング10内に組み立てられて固定される別個の構成要素として提供することが有益である。
支持体90は、細長い形状の本体91を含む。近位端では、本体91は、径方向に広がっているフランジセクション97を含み、フランジセクション97は、対極に位置する2つの凹部98を有する。用量トラッカ60は、2つの細長い脚部64、65を含み、脚部64、65は各々、凹部98のいずれか1つにおいて長手方向に案内される。このようにして、用量トラッカ60は、ハウジング10および支持体90に対して長手方向に変位可能である。用量トラッカ60は、支持体90に対して長手方向に摺動することは可能にされるが、支持体および/またはハウジング10に対して回転することは妨害される。
支持体90は、2つの幾何的に対向する長手方向に延びる支柱セクション92、93を含み、支柱セクション92、93は各々、遠位面94を有する。たとえば図23に示す最終アセンブリ構成で、支柱セクション92、93は、ねじ付インサート44またはハウジング10の径方向内方へ延びるフランジセクションに軸方向に当接する。ねじ付インサート44は、図6に別個に示されている。ねじ付インサート44は、ハウジング10の側壁13の内向き部分と一体的に形成することができる。ねじ付インサート44は、スリーブセクション45を含み、ピストンロッド20は、スリーブセクション45を通って長手方向に延びる。スリーブセクション45、したがってねじ付インサート44は、内側ねじ山43を含み、内側ねじ山43は、ピストンロッド20の外側ねじ山23にねじ係合する。
ねじ付インサート44は、スリーブセクション45から径方向外方へ延びる径方向に広がるソケットセクション47を含む。ソケットセクション47は、ハウジング10の側壁13に連結される。ソケットセクション47は、径方向外方へ延びる肩部分48を形成および構成する。図23に示すように、支柱セクション92、93の遠位面94は、肩部分48に軸方向に当接する。このようにして、支持体90は、ハウジング10内に軸方向に固定することができる。用量トラッカ60の細長い脚部64、65は各々、初期位置iに到達したとき、たとえば用量投薬処置の終了時に、ねじ付インサート44の肩部分48に軸方向に当接するように構成された遠位面67を含む。このようにして、用量トラッカ60の遠位向きの変位を阻止および制限し、それによって用量投薬処置を終了することができる。
用量トラッカ60は、管状またはノブ状の用量ボタン61をさらに含み、用量ボタン61は、遠位向きの支持面61aを有する。用量ボタン61は、用量トラッカ60の近位端を形成する。用量ボタン61の遠位端面は、たとえば図23に示すように、支持体90のフランジセクション97に軸方向に当接して、用量トラッカ60の遠位向きの変位を制限し、用量トラッカ60の初期位置iを画成することができる。
図23に示す初期位置iで、支持面61aは、支持体90のフランジセクション97に軸方向に当接する。支持体90と用量トラッカ60との間に、ばね80が設けられる。図23に示すように、支持体90は中心孔を含み、この中心孔内にばね80の遠位端81が位置する。ばねの反対側の端部、したがって近位端82は、用量トラッカ60または用量ボタン61の孔に位置する。ばね80の遠位端および/または近位端81、82は、支持体90および用量トラッカ60に固定され、または支持体90および用量トラッカ60のそれぞれの当接面に当接する。
ばね80は、螺旋状に巻かれた圧縮ばね83を含む。用量トラッカ60の初期位置で、ばね80は、少なくとも所定の程度の張力が事前にかけられており、したがってインターロック84を解放したとき、用量トラッカ60は、支持体90に対する近位向きの摺動運動を受ける。
インターロック84は、図12、図17、および図23により詳細に示されている。インターロック84は、用量トラッカ60に連結または一体化された第1の係合構造68b、69bと、少なくとも1つの解放部材100、101に連結または一体化された第2の係合構造109とを含む。用量トラッカ60は、対極に位置して長手方向に延びる2つのインターロック部材68、69を含む。インターロック部材68、69は、長手方向に延びる直線状のアームまたは脚部を含み、これらのアームまたは脚部は、用量ボタン61の遠位端から軸方向に延びる。インターロック部材68、69は、用量トラッカ60の脚部64、65の長さに実質上平行に延びる。円周方向に見て、2つのインターロック部材68、69は、対極に位置する脚部64、65間に接線方向または円周方向に位置する。
インターロック部材68、69は各々、フランジセクション97において支持体90の近位端に設けられた別の凹部99または貫通口を通って延びる。図17により詳細に示すように、インターロック部材68、69は各々、細長いアーム68a、69aを含む。インターロック部材68、69は各々、係合構造68b、69bを含む。この例では、係合構造68b、69bは、解放部材100、101の相応の形状の係合セクション109に選択的に係合可能である鋸歯状または歯状の表面を含む。
解放部材100、101は、支持体90と一体的に形成することができる。代替として、解放部材100、101は、別個の構成要素として設けられる。解放部材100、101およびそれぞれの解放ボタン102、104は、支持体90の弾性アーム106、107の自由端に設けられ、アーム106、107は、径方向に偏向可能である。図13に示すように、弾性アーム106、107は、支持体90の本体91から径方向外方へ突出する支持体90のフランジセクション104に提供および配置される。
弾性アーム106、170は、インターロック部材68、69のアーム68a、69aに実質上平行に延びる。弾性アーム106のうちインターロック部材68の方を向いている側には、係合構造68bに解放可能に係合するように構成された歯状セクションの形態の係合構造109が設けられる。弾性アーム107のうちインターロック部材69の方を向いている側には、歯状セクション109の形態の相応の形状の係合セクションが設けられる。係合セクション68b、69b、109の歯は、鋸歯プロファイルを含み、したがって解放部材100、101およびそれぞれの弾性アーム106、107に対する用量トラッカ60の遠位向きの摺動変位を可能にする。
係合構造68b、69b、109の鋸歯プロファイルは、解放部材100、101、解放ボタン102、103、および弾性アーム106、107が初期の非押し下げ構成にある限り、用量トラッカ60、したがって用量トラッカ60のインターロック部材68、69の近位向きの摺動変位が妨害されるようになっている。
図17にさらに示すように、インターロック部材68、69、したがって細長いアーム68a、69aは、解放ボタン102、103とそれぞれの弾性アーム106、107との間に長手方向に延びる。言い換えれば、インターロック部材68、69は各々、歯状セクション109と対応する解放ボタン102、103との間の間隙を通って延びる。解放ボタン102、103は、図13に示す径方向に延びる連結片108によって、弾性アーム106、107に連結される。連結片108の径方向の長さは、それぞれインターロック部材68、69の径方向の厚さより大きい。
両方の解放部材100、101、したがって両方の解放ボタン102、103を同時に押し下げることによって、それぞれの弾性アーム106、107は径方向内方へ変位され、それによって解放部材100、101の係合セクション109をそれぞれインターロック部材68、69の係合セクション68b、69bから係合解除する。このようにして、インターロック84は解放され、用量トラッカ60は、ばね80の作用を受けて近位方向3に自由に変位することができる。
支持体90は、遠位向きの歯状セクション96をさらに含む。歯状セクション96は、2つの支柱セクション92、93が遠位方向2に延びるフランジセクション95の領域内またはフランジセクション95上に設けることができる。歯状セクション96は環状の形状であり、遠位方向を向いている。歯状セクション96は、鋸歯状プロファイルを含む。
ピストンロッド20は、ピストンロッド20の遠位端上に回転可能に支持されたプレッシャフット(pressure foot)22を含む。このようにして、ピストンロッド20は、プレッシャフット22がカートリッジ6のピストン7の近位推力受け面(proximal thrust receiving surface)に軸方向に当接しているとき、プレッシャフット22に対して回転することが可能になる。ピストンロッドの詳細図が図6に示されている。ピストンロッド20は、外側ねじ山23を含み、外側ねじ山23は、ねじ付インサート44の内側ねじ山43にねじ係合される。代替として、ピストンロッド20は、ハウジング10のねじ孔を通って延びる。ピストンロッド20は、外側ねじ山23を交差する2つの細長い直線状の軸方向に延びる溝21をさらに含む。図7に示すように、反対側に位置する溝21は、ドライバ30の径方向内方へ延びる突起38にスプライン係合している。
ドライバ30は、ピストンロッド20の軸方向の一部分を囲むスリーブセクション31を含む。ドライバ30は、その遠位端付近または遠位端に、径方向に広がっているフランジ32をさらに含む。フランジ32は、クラッチばね40に軸方向に当接する。図10に示すクラッチばね40は、ねじ付インサート44の近位面46とドライバ30の遠位端との間に軸方向に挟まれている。
ドライバ30の反対側の端部、したがってその近位端には、第1の歯状セクション36が設けられており、第1の歯状セクション36は、支持体90の歯状セクション96に係合する。第1の歯状セクション36もまた、鋸歯状プロファイルであり、環状の形状を含む。第1の歯状セクション36および歯状セクション96はどちらも、一種の冠歯車を構成または形成することができる。第1の歯状セクション36および歯状セクション96は鋸歯プロファイルであるため、図9に示す第1の回転方向に沿ったドライバ30の回転が恒久的に防止される。
ドライバ30は、突起38を介してピストンロッド20にスプライン係合しているため、近位方向3へのピストンロッド20の逆回転または後退が事実上邪魔および防止される。
第1の回転方向4とは反対の第2の回転方向5に沿った回転は、歯状セクション36、96の係合によって支持されて可能になる。第2の回転方向5に沿ったトルクがドライバ30に印加された場合、第1の歯状セクション36の歯は、支持体90の歯状セクション96の歯に沿って摺動し、それによってクラッチばね40に軸方向に張力をかけ、その後、第1の歯状セクション36の歯の先端が、歯状セクション96の歯のそれぞれの先端を通過する。相互に対応する歯が通過するとすぐに、クラッチばね40がドライバ30を近位方向に付勢し、したがって第1の歯状セクション36の歯が、支持体90の歯状セクション96の円周方向に連続した歯に係合する。
したがって、第2の回転方向に沿った回転中、したがって用量の投薬中、ドライバ30は、段階的な個別の回転方向変位を受け、それに付随して、歯状セクション36、96の歯の軸方向の高さに応じて、わずかな軸方向変位が生じる。ドライバ30は、スリーブセクション31の外周に沿って延びる第2の歯状セクション34をさらに含む。第2の歯状セクション34は、鋸歯形状の歯を含む。
ドライバ30の少なくとも一部分を囲むクラッチがさらに設けられる。図9および図10に示すように、クラッチ50は、ドライバ30のフランジ32の近位側に軸方向に当接する遠位面57を含む。クラッチ50は、外側ねじ山52を含み、外側ねじ山52は、用量トラッカ60の遠位セクション上に設けられた内側ねじ山62にねじ係合する。内側ねじ山62は、用量トラッカ60の2つの脚部64、65上に提供および/または分散されている。このようにして、用量トラッカ60の長手方向の摺動変位をクラッチ50の回転に変換することができる。
用量トラッカ60とクラッチ50との間のねじ係合は、クラッチ50に対する用量トラッカ60の近位向きの変位が、第1の回転方向4に沿ったクラッチ50の回転を招くようになっている。クラッチ50に対する遠位方向2への用量トラッカ60の変位は、第2の回転方向5に沿ったクラッチ50の回転を招く。クラッチ50は、図8に示す係合セクション55、56をさらに含む。係合セクション55、56は、クラッチ50の近位端に設けられた弾性変形可能な弧状のラチェット部材53、54の端部に設けられる。
係合セクション55、56は、ドライバ30の第2の歯状セクション34の歯に恒久的に係合する。第2の歯状セクション34の鋸歯プロファイルのため、クラッチ50のラチェット部材53、54は、用量設定プロセス中、用量トラッカが近位向きの変位を受けている間に、第1の回転方向4に沿って、第2の歯状セクション34に沿って第2の歯状セクション34に対して摺動する。第1の回転方向4に沿ったクラッチ50の回転に付随して、可聴クリック音が生じる。そのようなクリック音は、係合セクション55、56が第2の歯状セクション34の歯の先端を通過するたびに生成される。クラッチ50が第1の回転方向4に沿って回転すると、ドライバ30は、第1の歯状セクション36および歯状セクション96によって支持体90に耐トルク係合し、その状態のままである。ドライバ30は、ハウジング10に回転不能にロックされたままである。
ラチェット部材53、54の各々の自由端は、第2の歯状セクション34の歯の急勾配フランクに接線方向または円周方向に当接する。第2の回転方向5の回転を受けたとき、係合セクション55は、第2の歯状セクション34の1つまたはいくつかの歯の急勾配フランクに当接したままであり、それによって第2の回転方向5に沿ったそれぞれの角運動量をドライバ30に伝達する。
クラッチ50は、支持体90のフランジセクション95とドライバ30のフランジ32との間に軸方向または長手方向に挟まれる。このようにして、クラッチ50は、ハウジング10内で軸方向に固定される。クラッチ50の近位面58は、支持体90に軸方向に当接する。
注射デバイス1の動作は次のとおりである。患者または消費者に渡されたとき、注射デバイス1は投薬の用意ができている。注射デバイスは、プライミング処置が必要ないように事前構成または製造することができる。別法として、ピストンロッド20のプレッシャフット22がカートリッジ6のピストン7に直接当接していることを確実にするために、注射デバイスがプライミング処置またはエアショットを受けなければならないことが考えられる。
使用者は、2つの解放部材100、101を同時に押し下げなければならない。このようにして、その2つのセクション109およびインターロック部材68、69は係合解除され、互いから動作可能に解放される。次いで用量トラッカ60は、解放ばね80の作用を受けて、近位方向3に自由に変位することができる。用量トラッカ60のこの近位向きの変位は、用量トラッカ60の追跡止め機能63がプリセレクタ止め機能73、74、75のうちの1つに軸方向に当接するまで続く。次いで、用量トラッカ60の近位向きの変位のため、たとえば図20に示すように、その用量ボタン61がハウジング10の近位端から突出する。次いでデバイスは、薬剤の用量の投薬または排出の用意ができる。事前選択窓11内に、用量の事前選択されたサイズが示される。対応する用量標示窓12内には、たとえば2つの矢印が現れ、したがってここで用量ボタン61を遠位方向2に押し下げることができることを使用者に示す。
用量トラッカ60の近位変位に付随して、図9に示す第1の回転方向4へのクラッチ50の回転が生じる。ドライバ30は静止した状態で維持され、歯状セクション36および96によって支持体90に非回転係合したままである。この回転インターロックは、ドライバ30を付勢して支持体90に対して単方向に耐トルクおよび非回転で係合させるように構成されたクラッチばね40によってさらに支持される。
用量トラッカ60がばね80の作用に逆らって遠位方向2に押し下げられる用量投薬処置中、クラッチ50は、第2の回転方向5に沿った回転を受ける。クラッチ50のラチェット部材53、54および係合セクション55、56は、クラッチ50からの角運動量をドライバ30へ伝達するように構成される。その限りにおいて、ドライバ30はまた、第2の回転方向5に沿って回転し始める。ドライバ30の径方向内方へ延びる突起38は、ピストンロッド20のそれぞれの長手方向溝21にスプライン係合する。したがって、第2の回転方向5に沿ったドライバ30の回転が、ピストンロッド20のそれぞれの回転に変換される。ハウジング10に対するピストンロッド20のねじ係合により、ピストンロッド20は、それぞれの遠位向きの前進運動を受け、それによってカートリッジ6からそれぞれの量の薬剤を排出する。
初期位置iとそれぞれの起動位置aとの間のハウジング10に対する用量トラッカ60の長手方向行程は、プリセレクタ70の位置状態によって決定される。プリセレクタ70は、少なくとも1つの軸方向に延びる突起76を含む。図15に示すように、プリセレクタ70は、対極に位置する対称に構成された2つの突起76をさらに含むことができ、突起76は各々、多数のプリセレクタ止め機能75、74を有する。突起76の底部、したがってプリセレクタ70のスリーブセクション71の縁は、別のプリセレクタ止め機能73を形成または構成することができる。プリセレクタ止め機能73、74、75は各々、明確な止め面73a、74a、75aを含む。止め面73a、74a、75aのうちの1つは、追跡止め機能63と軸方向に位置合わせすることができる。追跡止め機能63と、追跡止め機能63と軸方向に位置合わせされたその特定の止め面73a、74a、75aとの間の自由空間により、初期位置iと少なくとも1つの起動位置aとの間で用量トラッカ60を変位させることができる軸方向距離が決定される。
用量の事前選択の修正には、回転軸である注射デバイスの長手方向軸に対してプリセレクタ70を回転させる必要がある。このようにして、プリセレクタ止め機能73、74、75のうちの別のプリセレクタ止め機能を、追跡止め機能63と長手方向に位置合わせすることができる。プリセレクタ止め機能73、74、75の軸方向位置はすべて異なるため、用量トラッカ60の相応に修正された長手方向変位経路を実施することができる。
ドライバ30は、ピストンロッド20の軸方向の一部分を囲むドライバスリーブセクション31を含む。ドライバ30は、その遠位端付近または遠位端に、径方向に広がっているフランジ32を含む。フランジ32は、クラッチばね40に軸方向に当接する。図10に示すクラッチばね40は、ねじ付インサート44の近位面46とドライバ30の遠位端との間に軸方向に挟まれている。クラッチばね40は、圧縮ばねとして構成され、または圧縮ばねを含む。クラッチばね40の一方の端部は、ねじ付インサート44の近位面46によって支持され、クラッチばね40の反対側の端部は、ドライバ30のフランジ32に当接する。別法として、クラッチばね40の遠位端は、ハウジング10の近位面、縁、または径方向内方へ延びるフランジセクションに当接することができる。
図6、図7、および図9にさらに示すように、ドライバ30は、ドライバ30の近位端またはドライバ30の近位端付近に、第1の歯状セクション36および第2の歯状セクション34を含む。第1の歯状セクション36は、ドライバの軸方向面35、典型的には軸方向端面35に設けられる。第1の歯状セクション36は、近位軸方向端面に設けられる。第1の歯状セクション36は、支持体90の相応の形状の歯状セクション96に係合するように構成される。支持体90は、図13に別個に示されている。第1の歯状セクション36は環状の形状であり、ドライバスリーブセクション31の円周に沿って互いに隣接して配置された多数の歯36aを含む。典型的に、第1の歯状セクション36の歯36aは、ハース歯(hirth toothing)に類似しまたはそれを構成しており、歯36aの先端は軸方向に突出し、連続した歯36a間の溝は、ドライバスリーブセクション31の管状の形状に対して径方向に延びる。
第1の歯状セクション36の歯36aは、鋸歯プロファイルを含む。したがって、第1の歯状セクション36の歯36aは各々、鋸歯36aを含む。第1の歯状セクション36の鋸歯36aは、急勾配のエッジと、浅いまたは平坦なエッジとを含む。図6および図9に示すように、第1の歯状セクション36の歯36aの急勾配のエッジは、第1の回転方向または第1の方向4を向いている。第1の歯状セクション36の鋸歯36aの浅いまたは平坦なエッジは、図9に示す第2の回転方向または第2の方向5を向いている。
支持体90は、図10および図13に示すように、相応の形状の歯状セクション96を含む。相応の形状の歯状セクション96もまた、第1の歯状セクション36の鋸歯36aと比較すると実質上同一の形状およびサイズである多数の鋸歯を含む。ドライバ30がクラッチばね40によって近位方向3に付勢されるため、ドライバ30の近位端面35に設けられた第1の歯状セクション36は、支持体90の相応の形状の歯状セクション96に当接および係合した状態で維持される。第1の歯状セクション36および相応の形状の歯状セクション96の相互に対応する鋸歯状のプロファイルのため、第1の方向4に沿ったドライバ30の回転が恒久的に防止される。反対の方向、したがって第2の方向5に沿った回転は、可能にされて支持される。
ドライバ30が第2の方向5に回転したとき、第1の歯状セクション36および相応の形状の歯状セクション96の浅いまたは平坦な形状のエッジは、互いに対して摺動することが可能になる。支持体90の歯状セクション96に対する第1の歯状セクション36のそのような回転運動に付随して、長手方向(z)へのドライバ30のわずかな軸方向変位が生じる。
第1の歯状セクション36の歯36aおよび相応の形状の歯状セクション96の浅いエッジが円周方向における相対摺動変位を受けると、歯状セクション36、96の歯の鋸歯状プロファイルの軸方向の傾斜によって、ドライバ30の遠位向きの摺動運動が生じ、その後、相互に係合された歯状セクション36、96の歯の頂上または先端が互いを通過する。相互に対応する歯状セクション36、96の歯の先端を通過するとすぐに、クラッチばね40はドライバ30を近位方向3に付勢し、したがって歯状セクション36の先端または頂上が、相応の形状の歯状セクション96の溝に係合し、逆も同様である。
したがって、第2の方向5に沿った第2の方向5へのドライバ30の回転に付随して、長手方向におけるドライバ30の前後運動が生じる。さらに、支持体90およびハウジング10に対するドライバ30の段階的なラチェット状の回転運動に付随して、可聴クリック音が生じ、したがって投薬または薬物送達動作が現在処理中であるという可聴フィードバックを、使用者または医療従事者に提供することができる。
ドライバが第1の方向4に沿ったトルクを受けた場合でも、第1の歯状セクション36の歯36aの急勾配のエッジは、支持体90の相応の形状の歯状セクション96の鋸歯の相応の形状の急勾配のエッジに耐トルク係合し、その状態のままである。このようにして、第1の方向4に沿ったドライバ30の回転が事実上防止される。
ドライバ30は、突起38を介してピストンロッド20に恒久的にスプライン係合しているため、近位方向3に沿ったまたは近位方向3へのピストンロッド20の逆回転または後退が事実上邪魔および防止される。第1の回転方向または方向4とは反対の第2の方向5または第2の回転方向に沿った回転は、歯状セクション36、96の係合によって支持されて可能になる。
注射デバイス1は、中空内部59を有するクラッチ50をさらに含む。クラッチ50は、ドライバ30の少なくとも一部分を中空内部59内に受け入れるように構成される。少なくともドライバスリーブセクション31の一部分および/またはドライバ30の一部分が、クラッチ50の中空内部59内に配置される。このようにして、ドライバ30およびクラッチ50の入れ子状または交互配置状の構成を提供することができる。これにより、注射デバイス1の駆動機構8のかなり安定した丈夫な構造が可能になる。
さらに、少なくとも部分的に入れ子状または交互配置状の配置および構成により、注射デバイス1のかなり小型で空間節約的な設計が有効になる。部分的に交互配置状または入れ子状の構成もまた、ドライバ30およびクラッチ50がハウジング10に対する回転に関して相互の支持を提供するという点で有益である。たとえば、ドライバ30は、ピストンロッド20によって機械的に支持され、ドライバ30とクラッチ50との間の交互配置状または入れ子状の配置により、クラッチ50に対する回転可能な支持が提供される。クラッチ50がドライバスリーブセクション31の少なくとも一部分を受け入れるため、クラッチ50は、ドライバ30によって回転可能に支持される。これは、クラッチ50とドライバ30との間のトルク伝送係合にとって有益であり、注射デバイス1の様々な構成要素間の機械公差およびバックラッシュを低減させることができる。
図9および図10に示すように、クラッチ50、特にそのクラッチスリーブセクション51は、ドライバ30のフランジ32の近位側に軸方向に当接する遠位面57を含む。クラッチ50は、外側ねじ山52をさらに含み、外側ねじ山52は、用量トラッカ60のセクション上に設けられた内側ねじ山62にねじ係合する。内側ねじ山62は、用量トラッカ60の2つの脚部64、65上に提供および/または分散されている。このようにして、用量トラッカ60の長手方向の摺動変位をクラッチ50の回転に変換することができる。用量トラッカ60とクラッチ50との間のねじ係合は、ハウジング10またはクラッチ50に対する用量トラッカ60の近位向きの変位が、第1の方向4に沿ったクラッチ50の回転を招くようになっている。
ハウジング10、したがってクラッチ50に対する遠位方向2への用量トラッカ60の反対向きの摺動変位は、第2の方向5に沿ったクラッチ50の回転を招く。クラッチ50および用量トラッカ60は、恒久的にねじ係合されている。ハウジング10および/またはクラッチ50に対する用量トラッカ60のあらゆる軸方向の摺動変位は、第1の方向または第2の方向に沿ったクラッチ50のそれぞれの回転に変換される。
クラッチ50は、ドライバ30に単方向にトルク伝達係合される。これは、ドライバスリーブセクション31の側壁37の外面上に設けられた第2の歯状セクション34によって実現される。第2の歯状セクション34もまた、多数の鋸歯34aを含み、鋸歯34aは各々、図7に示すように、側壁37の外面から径方向外方へ突出する。鋸歯34aは各々、第1の方向4にまたは第1の方向4に沿って向いている急勾配のエッジを含む。鋸歯34aはまた、第2の方向5を向いている浅いまたは平坦なエッジを含む。
第2の歯状セクション34は、第1の歯状セクションに軸方向に隣接して配置することができる。歯36a、34aの急勾配のエッジおよび平坦または浅いエッジは、径方向に位置合わせすることができ、または径方向に同一平面とすることができる。したがって、第1の歯状セクション36および第2の歯状セクション34は、等しい数の連続した歯を含む。
クラッチ50は、少なくとも1つの係合セクション55、56を含む。典型的に、図8に示すように、クラッチ50は、第1および第2の係合セクション55、56を含む。係合セクション55、56は、それぞれ第1および第2のラチェット部材53、54の自由端53a、54aに位置する。概して、クラッチ50は、径方向に弾性変形可能である少なくとも1つのラチェット部材53、54を含む。ここに示す例では、クラッチ50は、2つのラチェット部材、すなわち第1のラチェット部材53および第2のラチェット部材54を含む。ラチェット部材53、54は、クラッチ50の近位端、したがってクラッチスリーブセクション51の近位端に設けられる。
クラッチ50の近位面58は、第1および第2のラチェット部材53、54によって形成または構成される。少なくとも第1および第2のラチェット部材53、54の各々は、クラッチスリーブセクションの側壁51aに共形である弧状の幾何形状を含む。したがって、ラチェット部材53、54は、クラッチスリーブセクション51の側壁51aと軸方向に同一平面である。ラチェット部材53、54は、クラッチ50、したがってクラッチスリーブセクション51と一体的に形成される。クラッチ50は、射出成形プラスチック構成要素を含むことができ、または射出成形プラスチック構成要素からなることができる。
ラチェット部材53、54の自由端53a、54aは、クラッチスリーブセクション51の側壁51a内の長手方向またはL字形のスリットによって、クラッチスリーブセクション51から分離される。係合セクション55、56は、第2の歯状セクション34の鋸歯34aの急勾配のエッジに係合するために、径方向内方へ延びる突起を含むことができる。しかし、ラチェット部材53、54の端面が鋸歯34aの急勾配のエッジに係合するだけでも十分である。
これは、鋸歯34aの先端で測定される第2の歯状セクション34の外径が、第1および第2のラチェット部材53、54の領域内のクラッチスリーブセクション51の内径よりわずかに大きいときに達成することができる。このようにして、第2の歯状セクション34が少なくとも2つのラチェット部材53、54間の自由空間内に位置するとき、ラチェット部材53、54は径方向外方へ弾性変形する。
別法として、ラチェット部材53、54が径方向内方へ付勢され、したがって初期構成で、ラチェット部材53、54、したがって係合セクション55、56の自由端が、クラッチスリーブセクション51の側壁51aの内面から径方向内方へ突出することも考えられる。クラッチ50がドライバ30を受け入れるとき、ラチェット部材53、54は、第2の歯状セクション34に係合すると、径方向外方へ少なくともわずかに付勢される。
この例は、弾性変形可能なラチェット部材53、54を示す。しかし、注射デバイス1は決して、弾性変形可能なラチェット部材に限定されるものではない。ラチェット部材53、54は、クラッチ50上に旋回可能に支持されることも考えられる。ラチェット部材53、54は、ここではこれ以上説明しないが、ばねによって提供される復元力に逆らって、径方向外方へ旋回可能とすることができる。このようにして、類似のラチェット作用を達成することができる。
図9に示すように、係合セクション55、56は、ドライバ30の第2の歯状セクション34の鋸歯34aに恒久的に係合する。第2の歯状セクション34の鋸歯状プロファイルは、用量設定処置中にクラッチ50が第1の方向4に沿って回転するとき、クラッチ50のラチェット部材53、54が第2の歯状セクション34に沿って第2の歯状セクション34に対して摺動するように選択される。支持体90との係合によって、ドライバ30が第1の方向4に沿って回転することが妨害されるため、ドライバ30は、用量トラッカ60の近位向きの変位によって誘起されるクラッチ50の回転に追従することはできない。
第1の方向4に沿ったクラッチ50の回転に付随して、ラチェット部材53、54が第2の歯状セクション34の歯34aの先端を通過すると、可聴クリック音が生成される。クリック音は、係合セクション55、56が第2の歯状セクション34の歯34aの先端を通過するたびに生成され、それによって用量設定処置が進行中であるという可聴フィードバックを、注射デバイス1の使用者に提供する。クラッチ50が第1の方向4に回転するとき、ドライバ30は、支持体90に耐トルク係合し、その状態のままである。
クラッチ50が第2の方向5の回転を受けたとき、係合セクション55、56は、第2の歯状セクション34の歯34aの急勾配のフランジまたは急勾配のエッジに当接したままであり、それによって第2の方向5に沿ってそれぞれの角運動量またはトルクをドライバ30へ伝達する。したがって、ドライバ30は第2の方向5に回転し、この回転は、ピストンロッド20の回転に等しく変換される。
ねじ付インサート44とのそのねじ係合のため、ピストンロッド20は遠位方向2に前進して、薬剤の設定された用量をカートリッジ6から排出する。
クラッチ50は、支持体90のフランジセクション95とドライバ30のフランジ32との間に軸方向または長手方向に挟まれている。このようにして、クラッチ50は、ハウジング10内で軸方向に拘束される。クラッチ50の近位面58は、支持体90に軸方向に当接する。クラッチの遠位面57は、ドライバ30のフランジ32の近位側に軸方向に当接する。用量トラッカ60が遠位方向2に押し下げられたとき、クラッチ50は、遠位向きの変位を受けることができ、その後、用量トラッカ60とのねじ係合により回転し始める。
クラッチ50の遠位面57は、フランジ32の近位側に当接し、その状態のままであるため、用量投薬処置の開始時のクラッチ50の軸方向遠位向きの変位は、ドライバ30のそれぞれの軸方向変位に変換される。このようにして、第1の歯状セクション36を支持体90の歯状セクション96から係合解除することができる。それに応じて、ドライバ30は、支持体90との接触から解放されて、第2の方向5に沿って回転し始めることができる。したがって、たとえば使用者の親指によって、用量トラッカ60が押し下げられている限り、第1の歯状セクション36と支持体90の対応する形状の歯状セクション96との間の摩擦がなくなるため、用量トラッカ60に遠位方向2に印加すべき投薬力を減少させることができる。
注射デバイス1の動作は次のとおりである。患者または消費者に渡されたとき、注射デバイス1は投薬の用意ができている。注射デバイスは、プライミング処置が必要ないように事前構成または製造することができる。別法として、ピストンロッド20のプレッシャフット22がカートリッジ6のピストン7に直接当接していることを確実にするために、注射デバイスがプライミング処置またはエアショットを受けなければならないことが考えられる。
使用者は、2つの解放部材100、101を同時に押し下げなければならない。このようにして、その2つのセクション109およびインターロック部材68、69は係合解除され、互いから動作可能に解放される。次いで用量トラッカ60は、解放ばね80の作用を受けて、近位方向3に自由に変位することができる。用量トラッカ60のこの近位向きの変位は、用量トラッカ60の追跡止め機能63がプリセレクタ止め機能73、74、75のうちの1つに軸方向に当接するまで続く。次いで、用量トラッカ60の近位向きの変位のため、たとえば図20に示すように、その用量ボタン61がハウジング10の近位端から突出する。次いでデバイスは、薬剤の用量の投薬または排出の用意ができる。事前選択窓11内に、用量の事前選択されたサイズが示される。対応する用量標示窓12内には、たとえば2つの矢印が現れ、したがってここで用量ボタン61を遠位方向2に押し下げることができることを使用者に示す。
用量トラッカ60の近位変位に付随して、図9に示す第1の回転方向4へのクラッチ50の回転が生じる。ドライバ30は静止した状態で維持され、歯状セクション36および96によって支持体90に非回転係合したままである。この回転インターロックは、ドライバ30を付勢して支持体90に対して単方向に耐トルクおよび非回転係合させるように構成されたクラッチばね40によってさらに支持される。
用量トラッカ60がばね80の作用に逆らって遠位方向2に押し下げられる用量投薬処置中、クラッチ50は、第2の回転方向5に沿った回転を受ける。クラッチ50のラチェット部材53、54および係合セクション55、56は、クラッチ50からの角運動量をドライバ30へ伝達するように構成される。その限りにおいて、ドライバ30はまた、第2の回転方向5に沿って回転し始める。ドライバ30の径方向内方へ延びる突起38は、ピストンロッド20のそれぞれの長手方向溝21にスプライン係合する。したがって、第2の回転方向5に沿ったドライバ30の回転が、ピストンロッド20のそれぞれの回転に変換される。ハウジング10に対するピストンロッド20のねじ係合により、ピストンロッド20は、それぞれの遠位向きの前進運動を受け、それによってカートリッジ6からそれぞれの量の薬剤を排出する。
初期位置iとそれぞれの起動位置aとの間のハウジング10に対する用量トラッカ60の長手方向行程は、プリセレクタ70の位置状態によって決定される。プリセレクタ70は、少なくとも1つの軸方向に延びる突起76を含む。図15に示すように、プリセレクタ70は、対極に位置する対称に構成された2つの突起76をさらに含むことができ、突起76は各々、多数のプリセレクタ止め機能75、74を有する。突起76の底部、したがってプリセレクタ70のスリーブセクション71の縁は、別のプリセレクタ止め機能73を形成または構成することができる。プリセレクタ止め機能73、74、75は各々、明確な止め面73a、74a、75aを含む。止め面73a、74a、75aのうちの1つは、追跡止め機能63と軸方向に位置合わせすることができる。追跡止め機能63と、追跡止め機能63と軸方向に位置合わせされたその特定の止め面73a、74a、75aとの間の自由空間により、初期位置iと少なくとも1つの起動位置aとの間で用量トラッカ60を変位させることができる軸方向距離が決定される。
用量の事前選択の修正には、回転軸である注射デバイスの長手方向軸に対してプリセレクタ70を回転させる必要がある。このようにして、プリセレクタ止め機能73、74、75のうちの別のプリセレクタ止め機能を、追跡止め機能63と長手方向に位置合わせすることができる。プリセレクタ止め機能73、74、75の軸方向位置はすべて異なるため、用量トラッカ60の相応に修正された長手方向変位経路を実施することができる。
図24に示す注射デバイス1は、図1または図2に関連して上述したデバイスの構造に類似している外部構造を含む。注射デバイス1は、充填済みの使い捨て注射デバイスとして構成することができ、注射デバイスはハウジング10を含み、ハウジング10に注射針15を取り付けることができる。別途記載しない限り、図24によるデバイス1の類似または同一の構成要素は、図1または図2の注射デバイス1に関連して使用したものと同様および同一の参照番号によって示す。
図24にさらに示すように、ハウジング10は、投与量窓(dosage window)113を含み、投与量窓113は、ハウジング10内のアパーチャの形態とすることができる。投与量窓113により、使用者は、用量ダイヤル112が回されまたは回転すると動くように構成された数字スリーブ(number sleeve)180の制限された部分を見ることが可能になる。このようにして、現在設定されている用量の視覚インジケーションを提供することができる。用量ダイヤル112は、用量の設定および/または投薬もしくは排出中に回されると、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転する。
注射デバイス1は、用量ダイヤル112を回すことで、機械的クリック音によって使用者に音声フィードバックが提供されるように構成することができる。数字スリーブ180は、カートリッジ6内のピストンと機械的に相互作用する。針15が患者の皮膚部分を刺し、トリガ111または注射ボタンが押されたとき、表示窓113内に表示されているインシュリン用量が、注射デバイス1から排出される。トリガ111が押されてから特定の時間にわたって、注射デバイス1の針15が皮膚部分内に留まったとき、用量の大部分は患者の体内へ実際に注射される。薬剤の用量の排出もまた、機械的クリック音を引き起こすことができるが、このクリック音は、用量ダイヤル112を使用したときに生じた音とは異なる。
この実施形態では、インシュリン用量の送達中、用量ダイヤル112は、軸方向運動で、すなわち回転なく、その初期位置へ戻され、数字スリーブ180は、回転してその初期位置へ戻り、たとえばゼロ単位の用量を表示する。
注射デバイス1は、カートリッジ6が空になるまで、または注射デバイス1内の薬剤の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に到達するまで、いくつかの注射プロセスに対して使用することができる。
さらに、注射デバイス1を最初に使用する前に、たとえば薬剤の2単位を選択し、針15を上に向けて注射デバイス1を保持しながらトリガ111を押下することによって、いわゆる「プライムショット」を実行して、カートリッジ6および針15から空気を除去することが必要な可能性がある。提示を簡単にするために、以下、排出される量は、注射される用量に実質上対応するものとし、したがって、たとえば注射デバイス1から排出される薬剤の量は、使用者によって受け取られる用量に等しい。
図24により詳細に示す排出または駆動機構8は、多数の機械的に相互作用する構成要素を含む。ハウジング10のフランジ状の支持体は、ねじ付の軸方向貫通口を含み、このねじ付の軸方向貫通口は、ピストンロッド120の第1のねじ山または遠位ねじ山122にねじ係合される。ピストンロッド120の遠位端は、支承部121を含み、支承部121上ではプレッシャフット123が、回転軸であるピストンロッド120の長手方向軸に対して自由に回転することができる。プレッシャフット123は、カートリッジ6の栓7の近位向きの推力受け面に軸方向に当接するように構成される。投薬動作中、ピストンロッド120は、ハウジング10に対して回転し、それによってハウジング10、したがってカートリッジ6の筒体25に対する遠位向きの前進運動を受ける。その結果、カートリッジ6の栓7は、ハウジング10に対するピストンロッド120のねじ係合により、遠位方向2に明確な距離だけ変位される。
ピストンロッド120には、その近位端に第2のねじ山124がさらに設けられる。遠位ねじ山122および近位ねじ山124は、向きが反対である。
ピストンロッド20を受け入れるための中空内部を有するドライバ130が、さらに設けられる。ドライバ130は、駆動スリーブを構成または形成することができる。ドライバ130は、内側ねじ山を含み、内側ねじ山は、ピストンロッド120の近位ねじ山124にねじ係合される。さらに、ドライバ130は、その遠位端に外側ねじ付セクション131を含む。ねじ付セクション131は、遠位フランジ部分132と、遠位フランジ部分132から所定の軸方向距離をあけて位置する別のフランジ部分133との間に、軸方向に制限される。2つのフランジ部分132、133間には、半円形ナットの形態の最終用量制限部材(last dose limiting member)135が設けられ、最終用量制限部材135は、ドライバ130のねじ付セクション131に嵌合する内部ねじ山を有する。
最終用量制限部材135は、その外周に径方向凹部または突起をさらに含み、径方向凹部または突起は、ハウジング10の側壁の内側にある相補形の凹部または突起に係合する。このようにして、最終用量制限部材135は、ハウジング10にスプライン連結される。連続用量設定処置中の用量増分方向4または時計回り方向へのドライバ130の回転により、ドライバ130に対する最終用量制限部材135の累積的な軸方向変位が生じる。フランジ部分133の近位向き面に軸方向に当接する環状ばね140が、さらに設けられる。さらに、管状のクラッチ160が設けられる。第1の端部では、クラッチ160に、一連の円周方向向きの鋸歯が設けられる。クラッチ160の第2の反対側の端部には、径方向内方向きのフランジが位置する。
数字スリーブ180は、ばね140およびクラッチ160の外側に設けられ、ハウジング10の径方向内方に位置する。数字スリーブ180の外面の周りに、螺旋溝181が設けられる。ハウジング10には、投与量窓113が設けられ、投与量窓113を介して、数字スリーブ180の外面の一部を見ることができる。ハウジング10には、インサート片162の内側壁部分にある突起163または螺旋リブがさらに設けられ、螺旋リブは、数字スリーブ180の螺旋溝181内に着座される。管状のインサート片162は、ハウジング10の近位端内へ挿入される。インサート片162は、ハウジング10に回転不能および軸方向に固定される。数字スリーブ180がハウジング10に対して螺旋運動で回転する用量設定処置を制限するために、ハウジング10上に第1および第2の止め具を設けることができる。より詳細に以下に説明するように、止め具のうちの少なくとも1つは、プリセレクタ170上に設けられたプリセレクタ止め機能171によって提供される。
用量ダイヤルグリップの形態の用量ダイヤル112は、数字スリーブ180の近位端の外面の周りに配置される。典型的に、用量ダイヤル112の外径が、ハウジング10の外径に対応および整合する。用量ダイヤル112と数字スリーブ180との間の相対運動を防止するために、用量ダイヤル112は数字スリーブ180に固定される。用量ダイヤル112には、中心開口部が設けられる。
用量ボタンとしても示すトリガ111は、実質上T字形である。トリガ111は、注射デバイス1の近位端に設けられる。トリガ111の心棒164が、用量ダイヤル112内の開口部を通り、ドライバ130の延長部の内径を通って、ピストンロッド120の近位端にある受け入れ凹部内へ延びる。心棒164は、ドライバ130内の軸方向運動が制限されるように、ドライバ130に対して回転しないように保持される。トリガ111のヘッドは、略円形である。トリガの側壁またはスカートは、ヘッドの周辺部から延び、用量ダイヤル112の近位からアクセス可能な環状凹部内に着座するようにさらに適用される。
用量をダイヤル設定するために、使用者は、用量ダイヤル112を回転させる。ばね140がクリッカとしても作用し、クラッチ160が係合された状態で、ドライバ130、ばねまたはクリッカ140、クラッチ160、および数字スリーブ180は、用量ダイヤル112とともに回転する。用量がダイヤル設定されたという可聴および触覚フィードバックが、ばね140およびクラッチ160によって提供される。ばね140とクラッチ160との間で、鋸歯を介してトルクが伝送される。数字スリーブ180上の螺旋溝181およびドライバ130内の螺旋溝は、同じリードを有する。これにより、数字スリーブ180がハウジング10およびドライバ130から延びて、同じ速度でピストンロッド120を上ることが可能になる。行程の限界で、数字スリーブ180内の径方向止め具が、プリセレクタ170上に設けられたハウジング10上に設けられた第1の止め具または第2の止め具に係合して、用量増分方向4へのさらなる動きを防止する。ピストンロッド120上の全体的に駆動されるねじ山の方向が反対であるため、ピストンロッド120の回転が防止される。
ハウジング10に掛止された最終用量制限部材135は、ドライバ130の回転によって、ねじ付セクション131に沿って前進される。最終用量投薬位置(final dose dispensed position)に到達したとき、最終用量制限部材135の表面上に形成された径方向止め具が、ドライバ130のフランジ部分133上の径方向止め具に当接し、最終用量制限部材135およびドライバ130がどちらもさらに回転することを防止する。
使用者が不注意で所望の投与量を超えてダイヤル設定した場合でも、ペン注射器として構成された注射デバイス1では、カートリッジ6から薬剤を投薬することなく、投与量をダイヤルダウンすることが可能である。このため、用量ダイヤル112は、用量減分方向5に簡単に逆回転する。これにより、システムは逆に作用する。次いで、ばねまたはクリッカ140の可撓アームは、ラチェットとして作用し、ばね140が回転することを防止する。クラッチ160を介して伝送されるトルクにより、鋸歯は互いを載り越えて、ダイヤル設定された用量の低減に対応するクリックを生み出す。典型的に、鋸歯は、各鋸歯の円周方向の範囲が1単位用量に対応するように配置される。
所望の用量がダイヤル設定されたとき、使用者は、トリガ111を押し下げることによって、設定された用量を簡単に投薬することができる。これにより、クラッチ160が数字スリーブ180に対して軸方向に変位し、その犬歯が係合解除される。しかし、クラッチ160は、ドライバ130に回転不能に掛止されたままである。数字スリーブ180および用量ダイヤル112はここで、螺旋溝181に応じて自由に回転することができる。
この軸方向運動により、ばね140の可撓アームが変形し、投薬中に鋸歯が緩まないことが確実になる。これにより、ドライバ130は、ハウジング10に対して回転することが防止されるが、それでもなおハウジング10に対して軸方向に自由に動くことができる。次に、この変形を使用して、遠位向きの投薬圧力がトリガ111から除去されたとき、ばね140およびクラッチ160をドライバ130に沿って後方へ付勢し、クラッチ160と数字スリーブ180との間の連結を復元する。
ドライバ130の長手方向の軸方向運動により、ピストンロッド120がハウジング10の支持体の貫通口を通って回転し、それによってカートリッジ6内で栓7を前進させる。ダイヤル設定された用量が投薬された後、用量ダイヤル112から延びる複数の部材と対応する複数の止め具との接触によって、数字スリーブ180のさらなる回転が防止される。数字標示スリーブ180の部材の軸方向に延びるエッジのうちの1つが、ハウジング10の対応する止め具に当接することによって、ゼロ用量位置が最終的に決定される。
上述した排出機構または駆動機構8は、使い捨てペン注射器内で概して実施可能である複数の異なる構成の駆動機構のうちの1つに対する単なる例示である。上述した駆動機構は、全体を参照によって本明細書に組み入れる、たとえばWO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1に、より詳細に説明されている。
文献WO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1のいずれか1つに記載されている注射デバイスと比較すると、図24~図47による注射デバイスには、プリセレクタ170;270、370、470、570がさらに設けられている。プリセレクタ170は、用量トラッカの複数の起動位置のうちの1つまたは用量トラッカ150の最大用量位置状態を画成するために、少なくとも2つの事前選択位置状態間でハウジング10に対して変位可能である。図24の例では、用量トラッカ150は、螺旋溝181を有する数字スリーブ180を含むことができ、螺旋溝181は、ハウジング10またはハウジング10に固定されたインサート162にねじ係合する。ここで、以下の実施形態では、数字スリーブ180は、用量トラッカ150に相当することができ、または用量トラッカ150に一致することができる。
数字スリーブ180の外面上には、投与量窓113内に現れる連続した数字を設けることができる。用量の視覚化の選択およびインジケーションは、図25~図47に関連して後述する注射デバイスの様々な例によって修正される。図25~図47に示す様々な例では、数字スリーブ180、したがって用量トラッカ150は、薬剤の用量の設定ならびに投薬のために、ハウジング10に対してトリガ111と一緒に変位可能である。
図25~図28の例では、少なくとも2つの事前選択位置状態p1およびp2間でハウジング10に対して変位可能であるプリセレクタ170が設けられる。各事前選択位置状態p1、p2は、用量トラッカに対する最大用量位置状態dmを画成する。この例では、プリセレクタ170は、管状のハウジング10に回転不能に固定されたプリセレクタスリーブを含む。
図25~図28に示すように、プリセレクタ170は、ハウジング10の近位端142に設けられ、回転可能に支持される。プリセレクタ170は、ハウジング10の側壁13上に回転可能に支持することができる。2つの利用可能な事前選択位置状態p1、p2のうちの少なくとも1つを選択するために、プリセレクタ170は、ハウジング10の長手方向軸に平行に延びる回転軸に対して回転可能である。プリセレクタ170は、少なくとも2つの事前選択位置状態p1、p2のうちのいずれか1つで、ハウジング10に対してロック可能または固定可能である。このようにして、プリセレクタ170が第1の事前選択位置状態p1にあるとき、ハウジング10に対するプリセレクタ170の自己作動変位が妨害および邪魔される。
プリセレクタ170は、第1のプリセレクタ止め機能171を含む。図27に示すプリセレクタ止め機能171は、第1の溝201を含む。プリセレクタ170は、第2のプリセレクタ止め機能172をさらに含む。第2のプリセレクタ止め機能172は、第2の溝202を含む。溝201、202は、プリセレクタ170のスリーブの内向き面上に設けられる。用量トラッカ150は、追跡止め機能151を含む。追跡止め機能151は、用量トラッカ150の外面から径方向外方へ突出する径方向突起156を含む。ここで、用量トラッカ150は、細長いハウジング10内に回転可能および並進運動可能に支持された追跡スリーブ155を含む。
典型的に、用量トラッカ150は、ハウジング10にねじ係合する。図27に示すように、ゼロ用量位置状態にあるとき、追跡止め機能151は、連結溝204内に位置し、第1の溝201および第2の溝202を相互連結する。第1の溝201の一方の端部、たとえば第1の端部は、連結溝204に合流する。第2の溝202の第1の端部も、連結溝204に合流する。連結溝204は、第1の溝201および第2の溝202の長さに対して所定の角度で延びる。典型的に、第1および第2の溝201、202は、互いに平行に延びる。示されているように、第2の溝202は、第1の溝201と比較するとより大きい長手方向の長さを含む。第3の溝203も設けられる。第3の溝203もまた、第1の溝201および第2の溝202に平行に延びる。第3の溝203は、第2の溝202の長さより大きい長さを含む。さらに示されているように、第2の溝202は、第1の溝201と第3の溝203との間に位置する。
連結溝204は、プリセレクタ170が少なくとも2つの事前選択位置状態p1、p2間で変位したとき、プリセレクタ170の変位方向と位置合わせおよび/または一致される長さを含む。プリセレクタ170を図25に示す第1の事前選択位置状態p1から図26に示す第2の事前選択位置状態p2へ移動および変位させるために、プリセレクタ170は、ハウジング10に対して、たとえば反時計回り方向に回転可能である。それに応じて、連結溝204は、管状のハウジング10または管状のプリセレクタ170に対して円周方向または接線方向に延びる。
図25および図26にさらに示すように、ハウジング10、特にその側壁13に、事前選択インジケーション143が設けられる。事前選択インジケーション143は、プリセレクタ170の変位経路に沿って配置された多数の数字または記号を含む。プリセレクタ170は、たとえば矢印の形態の対応する形状の事前選択インジケーション175を含む。提供される事前選択位置状態p1、p2の各々で、プリセレクタ170の事前選択インジケーション175は、ハウジング10の事前選択インジケーション143のうちの1つと位置合わせされる。
ここで、代替実装も考えられ、事前選択インジケーション143は、ポインタまたは矢印を含み、事前選択インジケーション175は、プリセレクタ170の変位経路に沿って配置された多数の数字または記号を含む。事前選択インジケーション143と位置合わせされた事前選択インジケーション175は、事前選択位置状態p1、p2のうちのどちらが注射デバイス1にとって実際に有効であるかを使用者に示す。この例では、事前選択位置状態に対して3つまたはそれ以上を設けることができる。第1の事前選択位置状態で、追跡止め機能151は、第1の溝201と位置合わせされる。第2の事前選択位置状態で、追跡止め機能151は、第2の溝202と位置合わせされる。
また、インターロック184が設けられる。インターロック184は、ハウジング10および用量トラッカ150のうちの一方に連結される。インターロック184は、用量トラッカ150とハウジング10との間に解放可能な係合を確立するために、ハウジングおよび用量トラッカのうちの他方にさらに連結可能である。インターロック184は、解放部材190をさらに含むことができ、または解放部材190に動作可能に係合することができる。解放部材190は、インターロック184を解放して、ハウジング10に対する用量トラッカ150の動きを自由にかつ有効にするように構成される。インターロック184および解放部材190の相互作用は、図27に示す初期位置iまたはゼロ用量位置状態d0にあるとき、用量トラッカ150がハウジング10にロックされるようになっている。この例では、ばね144の形態の機械エネルギーリザーバがさらに設けられる。ばね144は、ハウジング10に連結された第1の端部145を含み、ばね144は、用量トラッカ150に連結された第2の端部146を含む。解放部材190が用量トラッカ150を自由にしまたは解放するように作動された場合、用量トラッカ150は、弛緩ばね144の作用を受けて、ハウジング10に対して回転し始める。
示されているように、ばね144は、円筒形に巻かれたねじりばね147を含む。ばね144は、用量トラッカ150の追跡スリーブ155の外面の少なくとも一部分を囲む。このようにして、解放されたとき、ばね144は、用量トラッカ150へのトルクを誘起するように構成される。
所与の事前選択位置状態p1、p2で、プリセレクタ170は、ハウジング10に回転不能に固定される。ここで、追跡止め機能151と溝201、202、203のうちの1つとの係合により、用量トラッカ150とハウジング10との間のねじ係合が提供される。プリセレクタ170は、ハウジング10に並進運動不能または軸方向に固定されるため、用量トラッカ150は、近位向きの変位の受け、したがって図28に示す最大用量位置状態dmに到達したとき、用量トラッカ150の近位端154が、プリセレクタ170の近位端および/またはハウジング10の近位端142から突出する。
ハウジング10に対する用量トラッカ150の変位経路の長さの変位量は、実際に設定された用量のサイズを示し、そのサイズに直接相関する。溝201、202、203は各々、連結溝204から離れる方を向いている第2の端部を含む。溝201、202、203の第2の端部は各々、追跡止め機能151に対する端部止め具を提供する。第2の端部で、溝201、202、203は各々、止め面を含み、この止め面は、追跡止め機能151の突起156の対応する形状の止め面に係合または当接する。追跡止め機能151がその突起156とともに、図26または図28に示す第2の溝202の第2の端部に到達した後、プリセレクタ170および/またはハウジング10に対する用量増分方向、すなわち近位方向への用量トラッカ150のさらなる変位は、事実上邪魔および阻止される。
最大用量位置状態dmに到達した後、注射デバイス1は、用量投薬処置に対して準備され、用意ができる。このため、使用者は、図24に関連して上述したように、トリガ111を遠位方向に押し下げなければならない。投薬処置中、用量トラッカ150はその初期位置iへ戻り、したがって再びゼロ用量位置状態d0へ戻る。用量トラッカ150は、それぞれの溝201、202、203によって提供される螺旋経路に応じて、この螺旋経路に沿ってハウジング10に対して用量減分方向5に回転する。図25および図27に示す初期位置iに到達したとき、インターロック184は、用量トラッカ150をハウジング10に再係合し、位置的に固定する。
その後、必要とされる場合、プリセレクタ170を別の事前選択位置状態へ移動させて、用量のサイズを変動させることができる。そうでない場合、プリセレクタ170は、現在の事前選択位置状態に留まる。解放部材190の作動を繰り返すことで、インターロック184が解放され、したがって初期位置iから起動位置aへの用量トラッカ150のさらなる自動変位が有効になる。それに応じて、別の投薬処置を行うことができる。
図25~図28の例では、用量トラッカ150は、追跡止め機能151がプリセレクタ170のプリセレクタ止め機能171に沿って摺動することのみを介して、ハウジング10にねじ係合することができる。概して、図24に関連して説明したインサート162は、プリセレクタ170に置き換えられることが考えられる。このようにして、制限された数のみの異なる用量サイズの事前選択を実施するために、文献WO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1のいずれかに記載されている注射デバイス1で、若干の修正を実施するだけでよい。
図29および図30で、注射デバイス1の別の例が示されている。図25~図28の例と比較して同一の構成要素は、同一の参照番号によって示されている。図25~図28の例と比較して類似の構成要素は、それぞれの参照番号を100だけ増大させた番号によって示されている。
図27および図28の例と比較すると、図29および図30の例は、ハウジング10に固定されたインサート162を含む。インサート162は、典型的に、ハウジング10の側壁13に固定される。インサート162は、ねじ付インサートである。インサート162は、径方向内方へ延びる突起163を含む。突起163は、螺旋形の形状を含むことができる。突起163は、用量トラッカ250の外面上の外側ねじ山または螺旋溝181にねじ係合することができる。またここで、用量トラッカ250は、数字スリーブ180に一致することができる。プリセレクタ270は、スリーブ状の形状である。プリセレクタ270は、ハウジング10の近位端または近位端付近で回転可能に支持される。プリセレクタ270は、ハウジング10に軸方向または長手方向に固定される。
プリセレクタ270は、プリセレクタ止め機能271を含む。用量トラッカ250は、対応する形状の追跡止め機能251を含む。図27および図28の例と比較すると、追跡止め機能251が、第1の溝201を含む第1の追跡止め機能151と、第2の溝202を含む第2の追跡止め機能152と、第3の溝203を含む第3の追跡止め機能153とを含む。溝201、202、203は、図25~図28に関連して上述したものと同様に、連結溝204によって連結される。プリセレクタ止め機能171は、溝201、202、203、204のうちの1つに摺動係合する径方向突起176を含む。
図28aおよび図28bで、図25~図28に示すデバイスの修正が示されている。ここで、注射デバイスは、補足クラッチ166を具備しており、補足クラッチ166は、突起156、したがって用量トラッカ150の追跡止め機能151に係合するための凹部167を有する。補足クラッチ166は、クラッチスリーブを含むことができる。補足クラッチ166は、管状の側壁168を有する管状の本体を含むことができる。クラッチ166は、ハウジング10に取り付けられる。クラッチ166は、ハウジング10の外面上に位置することができる。クラッチ166は、ハウジング10に対して長手方向に変位可能とすることができる。クラッチ166は、ハウジング10に回転不能に固定される。クラッチ166は、ハウジング10にスプライン係合することができる。したがって、クラッチ166がハウジング10に対して回転することが妨害される。クラッチ166は、ハウジング10に長手方向に摺動および回転抑制係合することができる。
図28aに示す用量トラッカ150のゼロ用量位置状態d0で、用量トラッカ150の追跡止め機能151、したがってその突起156は、クラッチ166の凹部167内に位置する。凹部167は、突起156のそれぞれのサイズまたは幅に実質上整合する接線方向または円周方向の幅を含む。凹部167の幅またはサイズは、凹部167への突起156の平滑な挿入を有効にするために、突起のサイズよりわずかに大きくすることができる。凹部167は、近位方向3へ開いている。
クラッチ166は、ばね165の作用に逆らって、遠位方向2に軸方向に変位可能である。ばね165の一方の端部は、クラッチ166に係合され、ばね165の反対側の端部は、ハウジング10に係合される。ばね165は、圧縮ばねを含むことができる。ばね165は、クラッチ166を近位方向3へ付勢または駆動するように構成することができる。突起156が凹部167内に位置する限り、突起156および凹部167の相互係合により、用量トラッカ150がばね144の作用を受けて回転することが妨害される。
用量トラッカ150がゼロ用量位置状態d0にあるとき、凹部167の位置は突起156の位置に整合および重複する。クラッチ166を遠位方向に押し下げることによって、凹部167はそれに応じて遠位方向に動かされる。その結果、突起156は、凹部167内で保持されなくなり、用量トラッカ150は、ばね144の作用を受けて自由に回転することができる。
プリセレクタ170は、クラッチ166に軸方向に係合される。プリセレクタ170は、クラッチ166に軸方向または長手方向に固定される。長手方向または軸方向へのクラッチ166の動きは、プリセレクタ170のそれぞれの動きに等しく変換される。プリセレクタ170は、クラッチ166に対して回転可能である。その回転状態のいずれでも、プリセレクタ170は、クラッチ、したがってハウジング10に回転不能に固定可能である。プリセレクタ170は、ハウジング10またはクラッチ166に一種のスナップ嵌め係合またはラチェット係合で係合することができる。これにより、追跡止め機能がゼロ用量位置状態にあるとき、プリセレクタ止め機能171、172、173のうちの1つを追跡止め機能151と軸方向または長手方向に位置合わせするために、回転軸である注射デバイスの長手方向軸に対するプリセレクタ170の専用の回転が可能になって支持される。ハウジング10および/またはクラッチ166に対するプリセレクタ170の回転に付随して、可聴クリック音または触覚フィードバックを生じることができる。
ゼロ用量位置状態d0にあるとき、プリセレクタ170は、特定のサイズの用量を事前選択するために、ハウジング10ならびにクラッチ166に対して回転可能である。たとえば、図28aに示すように、第2のプリセレクタ止め機能172、したがって溝202、特にプリセレクタ止め機能172の遠位端および溝202の遠位端は、凹部167、したがって突起156または突起156内に位置する追跡止め機能151と長手方向に位置合わせされる。
プリセレクタ170は、クラッチ166に軸方向に連結されているため、クラッチ166の遠位向きの変位は、プリセレクタ170のそれぞれの遠位向きの変位に等しく変換され;逆も同様である。その結果、追跡止め機能151、したがって突起156は、凹部167から滑り出て、プリセレクタ止め機能172、すなわち溝202に入る。ハウジング10に対するプリセレクタ170のこの軸方向変位を介して、突起156は溝202に入る。次いで突起156は、溝202によって提供される螺旋経路に沿って摺動することが可能になる。このようにして、用量トラッカ150全体が、図25~図28に関連して上述したように、ばね144の作用を受けて自由に回転することができるため、ハウジング10に対する近位向きの螺着運動を受ける。
用量トラッカ150が遠位方向2に動かされ、用量トラッカ150がゼロ用量位置状態d0へ戻る用量送達処置の終了時に、追跡止め機能151、したがって突起156は、凹部167に再び入る。用量投薬または注射処置が終了すると、追跡止め機能151または突起156と凹部167との相互係合により、用量トラッカ150が回転することが妨害される。
図28aおよび図28bの例で、解放部材190は、クラッチ166に置き換えることができる。ここで、クラッチ166は、インターロック184ならびに解放部材190の両方を提供することができる。図28aに示す近位位置で、クラッチ166は、ハウジング10に対する用量トラッカ150の回転を防止するように構成されたインターロック184を提供する。図28bに示す遠位位置で、クラッチ166は、解放部材190がインターロック184を係合解除することを提供し、したがってハウジング10に対する用量トラッカ150の回転を可能にして支持する。
図28aおよび図28bに示すクラッチ166は、図24に示すクラッチ160と一体的に形成することができる。クラッチ166は、クラッチ160の一部分とすることができる。さらなる例では、クラッチ166およびクラッチ160は、別個の部材とすることができる。
図29に示す初期位置iで、プリセレクタ止め機能271は、連結溝204に摺動可能に係合される。ハウジング10に対するプリセレクタ270の回転により、溝201、202、203のうちの1つに対するプリセレクタ止め機能271の位置合わせが提供される。解放部材190の作動による用量トラッカ250の解放後、用量トラッカ250は、ハウジング10に対して、したがってそれぞれの事前選択位置状態でハウジング10に回転不能に固定されたプリセレクタ170に対して、インサート162とのねじ係合に応じて回転し始める。
図30に示すように、プリセレクタ止め機能171、特にスリーブ状のプリセレクタ170の内向き側壁上に設けられた径方向内方へ延びる突起176は、溝202に沿って摺動し、その後、プリセレクタ止め機能171に対する止め面が設けられた溝202の第2の端部に到達する。この最大用量位置状態dmで、突起176と溝202の第2の端部との相互係合を介して、用量トラッカ150のさらなる近位向きの変位は阻止される。図29および図30によるデバイスの動作モードは、図25~図28によるデバイスに関連して説明した動作モードと同一でない場合でも同等である。
図31および図32のさらなる例は、図29および図30に関連して説明した例にある程度類似している。またここで、用量トラッカ350は、追跡止め機能351を含む。用量トラッカ350は、インサート162にねじ係合する追跡スリーブ355を含む。またここで、プリセレクタ370は、スリーブ状の形状である。プリセレクタ370はまた、ハウジング10、特にその側壁13に長手方向または軸方向に固定される。プリセレクタ370は、少なくとも2つの事前選択位置状態p1、p2間で、ハウジング10上に、またはハウジングに対して、静止して支持される。
プリセレクタ370は、第1のプリセレクタ止め機能371を含み、第1のプリセレクタ止め機能371は、プリセレクタ270の側壁から径方向内方へ突出する径方向突起276として実施される。用量トラッカ350の対応する形状の追跡止め機能351は、追跡スリーブ355の外面部分上に設けられる。追跡止め機能351は、径方向外方へ延びる突起356を含む。用量の設定および初期位置iまたはゼロ用量位置状態d0から起動位置aまたは最大用量位置状態dmへの用量トラッカ350の移動のために、用量トラッカ350は、ハウジング10とのねじ係合に応じて回転する。
プリセレクタ370の事前選択位置状態、したがってその回転軸に対するプリセレクタ370の向きは、少なくとも追跡止め機能351がプリセレクタ止め機能371に当接したとき、位置状態、したがってハウジング10に対する用量トラッカ350の長手方向の位置および/または向きを画成する。図31および図32に示すように、プリセレクタ370は、多数のプリセレクタ止め機能371、372、および373、したがって第1のプリセレクタ止め機能371、第2のプリセレクタ止め機能372、および第3のプリセレクタ止め機能373を含むことができる。様々なプリセレクタ止め機能371、372、373はすべて、径方向内方へ延びる突起376を含む。様々なプリセレクタ止め機能371、372、373は、プリセレクタ370の内向き側壁部分の所定の位置に位置する。第1および第2のプリセレクタ止め機能371、372は、互いに対して軸方向および接線方向のうちの少なくとも一方にずれて位置することができる。
プリセレクタ止め機能371、372、373は、プリセレクタ370の長さまたは内周に沿って、所定の異なる軸方向および/または長手方向の位置に位置する。プリセレクタ止め機能371、372、373は、プリセレクタ370の側壁から径方向内方へ突出するフランジを含むことができる。フランジの接線方向または円周方向の延長は、対応する形状の追跡止め機能351の接線方向または円周方向の範囲より大きくことができる。プリセレクタ止め機能371、372、373の接線方向または円周方向の延長は、プリセレクタ370の内周に対して180°、90°、または45°より短い。
このようにして、プリセレクタ370の回転状態に応じて、追跡止め機能351は、最大用量位置状態へのその途中で、プリセレクタ止め機能373および372のうちの少なくとも1つを通過することができる。最大用量位置状態に到達したとき、追跡止め機能351は、プリセレクタ止め機能のうちの1つに軸方向および/または接線方向に係合し、そのプリセレクタ止め機能は、プリセレクタ370の位置状態p1、p2のため、追跡止め機能351と位置合わせされる。
図33~図36によるさらなる例で、プリセレクタ470は、用量トラッカ450に恒久的に並進運動不能に固定される。プリセレクタ470は、用量トラッカ450に対して回転可能である。図29~図32に関連してすでに上述したように、用量トラッカ450は、たとえばねじ付インサート162を介して、ハウジング10にねじ係合される。またここで、初期位置iから起動位置aへの用量トラッカ450の自動変位を提供するために、ねじりばね147の形態のばね144が設けられる。
初期位置iで、用量トラッカ450は、インターロック184および解放部材190によって、ハウジング10に位置的にロックされる。示されている例では、プリセレクタ470はスリーブを含み、スリーブは、ハウジング10の側壁13の外向き面に面する内向き面を有する。したがって、プリセレクタ470は、ハウジング10の近位端142を受け入れるために、カップ状のレセプタクルを含む。他の構成も考えられ、少なくともプリセレクタ470の遠位端が、スリーブ状のハウジング10内へ挿入可能である。
図15および図36に示す例で、プリセレクタ470上に設けられたプリセレクタ止め機能471は、追跡止め機能451に係合するために、径方向内方へ延びる突起476を含む。上述した例とは対照的に、追跡止め機能451は、ハウジング10の側壁13上に設けられる。追跡止め機能451は、側壁13の外面上に設けられる。第1の追跡止め機能451、第2の追跡止め機能452、および第3の追跡止め機能453が設けられる。第1の追跡止め機能451は第1の溝201を含み、第2の追跡止め機能452は第2の溝202を含み、第3の追跡止め機能は第3の溝203を含む。3つの溝201、202、203はすべて合流し、第1の端部を有する連結溝204になる。溝201、202、203は、異なる長さを含む。溝201、202、203は、互いに平行に延びる。溝201、202、203の第2の端部は、互いに対して長手方向にずれて位置する。第2の端部で、溝201、202、203は各々、止め面を含み、この止め面は、プリセレクタ止め機能471の突起476の対応する形状の止め面に当接または係合する。
このようにして、溝201、202、203の長さは、用量トラッカ450の最大用量位置状態dmを画成する。プリセレクタ470の位置状態に応じて、溝201、202、203のうちの1つが、追跡止め機能451と位置合わせされ、それによってインターロック184が解放されたときに用量トラッカ450が近位方向3へ動くことができる最大距離を画成する。追跡止め機能451は、ハウジング10の側壁13の外向き面部分の上または中に設けられる。
プリセレクタ470の側壁の内向きセクションから径方向内方へ突出するプリセレクタ止め機能471は、溝201、202、203、204のうちの少なくとも1つに恒久的な係合する。図35に示すゼロ用量位置状態d0で、プリセレクタ止め機能471、したがって径方向突起476は、連結溝204内に位置する。プリセレクタ470をハウジング10に対して回転させることによって、プリセレクタ止め機能471は、溝201、202、203のうちの1つと位置合わせされる。その後、解放部材190の作動によって用量トラッカ450を解放したとき、ばね144は、用量トラッカ450の回転を誘起し、用量トラッカ450は、ハウジング10とのねじ係合に応じて、ハウジング10に対する螺旋運動を受ける。
溝201、202、203は、ハウジング10の長さに平行に延びる。溝201、202、203は、たとえば連結溝204の長さに直交して延びる。プリセレクタ470は、用量トラッカ450に対して自由に回転可能であるが、用量トラッカ450に軸方向および長手方向にロックおよび拘束されたままであるため、用量トラッカがハウジング10に対する長手方向運動を受けるとすぐに、プリセレクタ止め機能471は、選択された溝203に沿って摺動し始める。
溝203に対するプリセレクタ止め機能471の係合はまた、用量トラッカ450の用量設定運動中のハウジング10に対するプリセレクタ470の回転を防止する。最大用量位置状態dmに到達したとき、プリセレクタ止め機能471は、溝203の第2の端部に当接し、それによってプリセレクタ470のさらなる近位向きの変位が邪魔される。プリセレクタ470と用量トラッカ450との間の恒久的な長手方向のインターロックまたは係合のため、用量トラッカ450のさらなる回転は邪魔および防止される。
用量トラッカ450はハウジング10にねじ係合されるため、そのさらなる回転は、ハウジング10に対する長手方向のさらなる変位を必要とするはずである。これは、用量トラッカ450が最大用量位置状態dmにあるとき、事実上阻止および邪魔される。図36に示す最大用量位置状態dmで、上述したように、トリガ111を押し下げて用量投薬処置を誘起することができる。
概して、プリセレクタ470は、事前選択位置状態で、ハウジングまたは用量トラッカ450に対して個別の位置に固定することができる。支持された事前選択状態は、用量トラッカ450の連続した完全な1周に対応することができる。この例では、用量トラッカ450は、プリセレクタ止め機能471に係合するために、2つまたはちょうど3つの追跡止め機能451、452、453を含む。別法として、プリセレクタ470もまた、追跡止め機能451、452、453に係合するために、2つまたはそれ以上のプリセレクタ止め機能を含むことができる。このようにして、最大用量位置状態は、ハウジング10に対する用量トラッカ450の1周の2分の1または3分の1ごとに割り当てることができる。さらに、2つまたはそれ以上の追跡止め機能451、452、453が、対応する形状の2つまたはそれ以上のプリセレクタ止め機能471に同時に係合することが考えられる。このようにして、用量トラッカ450とプリセレクタ470との間の当接の機械的な相互作用および丈夫さを強化および増大させることができる。
図37~図47による注射デバイスのさらなる例で、図24に示す注射デバイス1は、基礎として働く。図37に示す注射デバイス1は、上述した注射デバイス1の強化された機能を提供するために、以下に説明するいくつかの追加の機能を含む。
示されているように、注射デバイス1のハウジング10の全体を封入または収容する外側ハウジング200が設けられる。ハウジング10の外側に、用量トラッカ550が設けられる。図40に示す用量トラッカ550は、2つの構成要素、すなわち遠位部材552および近位部材553を含む。遠位部材552および近位部材553は、単体化または一体化された形状の用量トラッカ550として設けることができる。注射デバイス1のアセンブリの理由のためにのみ、用量トラッカ550は、2つの別個の構成要素に分離される。
遠位部材552および近位部材553は、互いに恒久的かつ強固に連結される。遠位部材552および近位部材553は、長手方向(z)ならびにハウジング10に対する回転に対してロックされる。遠位部材552および近位部材553のうちの一方の長手方向変位または回転変位は、遠位部材552および近位部材553のうちの他方に等しく伝達される。
この例では、遠位部材552は、長手方向に延びる少なくとも1つまたはそれ以上の細長いリブ557を含む。リブ557は、外側ハウジング200に対する掛止および長手方向摺動係合を提供する。外側ハウジング200は、対応する形状の長手方向溝107を含むことができ、長手方向溝107内で、1つまたはそれ以上のリブ557が摺動可能に案内される。用量トラッカ550は、外側ハウジング200に回転不能にロックされるが、長手方向または軸方向(z)に外側ハウジング200に対して並進運動可能に変位可能である。用量トラッカ550はまた、追跡スリーブ555および追跡止め機能551を含む。
図40にさらに示すように、プリセレクタ止め機能571を有するプリセレクタ570が設けられる。プリセレクタ570は、用量トラッカ550の外向き面上に回転可能に支持されたスリーブを含む。典型的に、追跡スリーブ555の遠位部材552および近位部材553は、管状の形状である。図40、図46、および図47に示すように、遠位部材552の近位部分が、近位部材553の遠位部分にあるレセプタクル内に受け入れられる。重複領域内で、近位部材553の遠位部材552は相互に係合され、恒久的にインターロックされる。
プリセレクタ570は、プリセレクタ止め機能571を有する環状リングまたはスリーブを含む。図40に示すように、プリセレクタ止め機能571は、プリセレクタ570の近位側に多数の軸方向凹部を含む。これらの凹部は、異なる軸方向の長さまたは異なる長さのスロットを形成することができる。プリセレクタのスリーブの遠位端または遠位エッジは、第1のプリセレクタ止め機能571を形成することができる。凹部501は、第2のプリセレクタ止め機能572を形成することができ、さらなる凹部502は、第3のプリセレクタ止め機能573を形成することができる。凹部501、502は、図40に示すように、長手方向に異なる長さを含む。どちらの凹部501、502も、遠位端、したがって追跡止め機能551へ開いている。凹部501、502は、互いに接線方向または円周方向に隣接および近接して位置する。
プリセレクタ570の回転位置に応じて、第1の凹部501または第2の凹部502は、追跡止め機能551と長手方向に位置合わせされる。用量トラッカ550、したがってその追跡止め機能551は、ハウジングに対して長手方向または軸方向にのみ摺動することができ、プリセレクタ570は、外側ハウジング200に軸方向または長手方向に固定されているため、追跡止め機能551と凹部501、502の近位端との間の距離は、用量の設定のための用量トラッカ550に対する最大変位経路を画成する。回転状態、したがってプリセレクタ570の事前選択位置状態p1、p2に応じて、用量トラッカ550に対する最大変位経路を要求に応じて修正することができる。
凹部501、502またはスロットは、追跡スリーブ555の外面から径方向外方へ突出する追跡止め機能551を受け入れて係合するように構成される。この例では、追跡止め機能551は、径方向外方へ延びる突起556を含み、突起556は、遠位部材552に一体的に形成されており、近位部材553の側壁にある対応する形状の凹部を通って径方向外方へ突出する。突起556は同様に、近位部材553に一体的に形成することもできる。
突起556の径方向の延長は、プリセレクタ止め機能571の径方向の延長または径方向の位置に整合する。プリセレクタ570は、上述したように、少なくとも2つの事前選択位置状態間で回転可能である。事前選択位置状態のいずれでも、プリセレクタ570は、外側ハウジング200に回転不能にロックされる。プリセレクタ570はまた、ハウジング10に恒久的に長手方向にロックされる。たとえば、プリセレクタ570の近位端572またはエッジは、外側ハウジング200または注射デバイスの別の構成要素に軸方向に当接することができ、たとえば外側ハウジング200に軸方向に固定された解放部材590に軸方向に当接することができる。このようにして、プリセレクタ570は、長手方向または軸方向に対して外側ハウジング200にロックされる。
注射デバイス1には、インターロック584がさらに設けられる。インターロックは、プリセレクタ570の凹部または貫通口を通って延びるロック機能575を含む。ロック機能575は、プリセレクタを外側ハウジング200から一時的に解放するために径方向に押し下げ可能であるばね付勢アクチュエータを含むことができる。ロック機能575は、ねじまたは同様の締結要素を含むことができ、ねじまたは同様の締結要素は、ロック機能575、したがってプリセレクタ570を外側ハウジング200から一時的に解放して外側ハウジング200に対するプリセレクタ570の摺動運動または回転を有効にするために、対応する形状のツールを必要とする。プリセレクタ570の選択された事前選択位置状態に応じて、用量トラッカ550に対する最大用量位置状態dmを画成することができる。
プリセレクタ570が第1の事前選択位置状態p1にあり、第1の凹部501が追跡止め機能551と長手方向に位置合わせされる場合、用量トラッカ550が外側ハウジング200に対して長手方向に変位可能である最大距離は、プリセレクタ570が第2の事前選択位置状態p2にあり、第2の凹部502が追跡止め機能551と長手方向に位置合わせされる構成と比較するとより短い。
図40にさらに示すように、プリセレクタ570の外面部分上に、多数の事前選択インジケーション576が設けられる。外側ハウジング200内に設けられる事前選択窓213には、1つの事前選択インジケーション576が常に位置合わせされる。図37および図46に示すように、数字20が事前選択窓213内に現れ、薬剤の20単位の事前選択が事前選択されていることを使用者に示している。たとえば第2の凹部502が追跡止め機能551と位置合わせされるように、プリセレクタ570をダイヤル設定または変位させることで、より大きい数字、たとえば数字30を事前選択窓213内に見せることができる。
解放部材590と用量トラッカ550との間の相互作用について、図41~図45に関連して説明する。解放部材590は環状リング591を含み、環状リング591は、図41に示すように、その内向き部分に多数のキャッチ要素592を含む。解放部材590は、環状リング591の近位端付近に環状溝593を含む。溝593は、図47に示すように、外側ハウジング200にある径方向内方へ延びる締結具214にポジティブ係合される。締結具214は、径方向内方へ延びる突起を含み、この突起は、溝593にポジティブ係合される。このようにして、解放部材590は、外側ハウジング200に対して自由に回転可能であるが、外側ハウジング200に長手方向に恒久的にロックされる。
図42~図45の順で、キャッチ要素592および環状リング591の近位部分のみについて示す。環状リング591の外側セクションは、例示の目的で、様々なキャッチ要素592と、用量トラッカ550の外面部分上に設けられた径方向外方へ延びる突起562との相互係合を見せるために、切欠または消去されている。示されているように、突起562は、ピン状の構造である。突起562は、近位部材553の近位端付近で径方向外方へ延びる。キャッチ要素592および突起562は、それぞれ用量トラッカ550の外周および環状リング591の内周に沿って、規則的に等距離をあけて配置される。
キャッチ要素592は、長手方向に対して所定の角度で延びる。各キャッチ要素592は、かなり直線状の面取りセクション594を含み、面取りセクション594は、遠位方向に延びて曲線状セクション595につながる。曲線状セクション595は、さらに延びてアンダーカットセクション596につながる。曲線状セクション595は、面取りセクション594からアンダーカットセクション596へ延びる。曲線状セクション595は、アンダーカットセクション596にさらに重複することができる。アンダーカットセクション596の自由端は、面取りセクション594から所定の接線方向または円周方向の距離をあけて位置する。図43および図44の比較によって示すように、突起562は、解放部材590に対して遠位方向に変位すると、面取りセクション594に接触して、面取りセクション594に沿って摺動し、その後、曲線状セクション595に到達する。
曲線状セクション595は、少なくとも円の2分の1または円の3分の1の形状であり、そのような形状を描く。曲線状セクション595は、約270°の円の円周を描く。曲線状セクション595の底部は、キャッチ要素592の遠位端を形成する。曲線状セクション595のため、そのボタンは、アンダーカットセクション596と長手方向に重複する構成である。突起562が遠位方向に変位し、ゼロ用量位置状態d0へ戻ると、解放部材590は、それぞれ面取りセクション594および曲線状セクション595の延長および傾斜に応じて回転を受ける。突起562は、曲線状セクション595の底部に到達すると、アンダーカットセクション596と曲線状セクション595との間の自由空間に接線方向に入る。
図44に示す構成で、トリガ511を解放することで、用量トラッカ550の近位向きのわずかな変位がばねによって駆動されることを有効にすることができる。しかし次いで、突起562は、アンダーカットセクション596に当接し、それによって解放部材590、したがって外側ハウジング200に対する近位方向3への用量トラッカ550のさらなる変位を邪魔する。
用量トラッカ550の解放のために、解放部材590を時計回り方向に回転させなければならない。このようにして、アンダーカットセクション596が、用量トラッカ550のわずかであるが別個の初期遠位変位を誘起した後、突起562が、キャッチ要素592のアンダーカットセクション596と面取りセクション594との間の自由空間に入る。複数のキャッチ要素592および突起562の規則的な配置のため、突起562およびキャッチ要素592は、相互に同時に係合および係合解除される。突起562がキャッチ要素592から係合解除された後、用量トラッカ550は、外側ハウジング200に対して近位方向に自由に摺動することができる。
環状リング591、したがって解放部材590はまた、ばね付勢することができ、たとえばここではそれ以上示されていないさらなるねじりばねによって付勢することができる。このようにして、解放部材590は、図45に示すインターロック構成で維持することができる。解放部材590の解放運動は、そのような戻しばねの作用に逆らって行わなければならない。
また、図46または図47に関連して図39に示すように、ねじりばね147として実施されるばね144が設けられる。ばね144の第1の端部45は、用量トラッカ550、特にその遠位部材552に恒久的に連結される。用量トラッカ550は、外側ハウジング200に回転不能に固定されているため、ばね144の第1の端部45は、外側ハウジング200、したがってハウジング10に事実上連結される。言い換えれば、ばね144の第1の端部145は、ハウジング10に間接的に連結または結合される。
ばね144の反対側の第2の端部146は、用量ダイヤル112またはたとえば図39に示す別個のスリーブ状の締結具216に連結される。締結具216は、環状の形状であり、リング構造を含む。締結具216は、注射デバイス1の近位端に設けられた用量ダイヤル112に恒久的にロックされまたは取り付けられる。締結具216は、用量ダイヤル112に接着剤によって取り付けることができる。ばね144の第2の端部146は、締結具216に耐トルクで連結される。たとえば解放部材590を作動させることによって、用量設定機構を自由にすることで、数字スリーブ180の回転および用量ダイヤル112のそれぞれの回転が有効になる。さらに示されているように、締結具216は、締結具216の外面上に縁217および凹状部分218を含む。縁217は、径方向のステップ219または肩を介して延び、凹状部分218につながる。
図28に示すように、用量トラッカ550、特に近位部材553は、径方向内方へ延びる突起または縁558を含み、縁558は、ステップ219に軸方向に当接する。その限りにおいて、縁217は、縁558に軸方向に当接する。ばね144が、締結具216、したがって用量ダイヤル112の用量増分回転を誘起すると、数字スリーブ180は、ハウジング10に対して回転し始める。インサート162と数字スリーブ180との間のねじ係合のため、数字スリーブ180、したがって用量ダイヤル112ならびに締結具216は、外側ハウジング200に対して近位向きの変位を受ける。締結具216のこの近位変位は、縁217と縁558との間の相互の軸方向の当接および係合のため、用量トラッカ550に等しく伝達される。
したがって、数字スリーブ180のばね駆動回転は、用量トラッカ550の長手方向の摺動および近位変位に変換され、その後、その追跡止め機能551が、プリセレクタ止め機能571に係合する。図46および図47に示すように、注射デバイス1のトリガ111を覆う別個のトリガ511が設けられる。トリガ511は、トリガ111を覆うように設けられて構成される。トリガ511は、トリガ111の断面と比較するとより大きい断面を含む。トリガ511は、トリガ111に接着剤によって取り付けることができる。トリガ511は、外側ハウジング200の近位端を覆うように構成される。
図48および図49に、インターロック184および解放部材190のより詳細な例示的な実装が示されている。ここで、インターロック184は、用量トラッカ150上に設けられた第1のロック機能を含み、解放部材190上に設けられた第2のロック機能をさらに含む。ここで、第1のロック機能は、用量トラッカ150から径方向外方へ突出するキャッチ157として実施される。キャッチ157は、用量トラッカ150と一体的に形成することができる。解放部材190は、対応する形状のキャッチ197を含み、キャッチ197は、解放部材190から径方向内方へ突出する。キャッチ197はまた、解放部材190に一体的に形成することができる。
解放部材190は、旋回可能なレバー191として構成される。レバー191は、ピボット軸192上に旋回可能に支持される。ピボット軸は、ハウジング10の全体的な幾何形状に対して接線方向または円周方向に延びる。レバー191は、図48に示す初期構成iで、ハウジング10の側壁13の外面と同一平面とすることができる。
レバー191は、キャッチ197と、反対側の端部にある押し下げ可能端部分とを含む。押し下げ可能端部分およびキャッチ197は、レバー191の反対側の端部に設けられる。押し下げ可能端を径方向内方へ押し下げることによって、反対側の端部、したがってキャッチ197は、径方向外方へ引き上げまたは持ち上げられ、したがって図49に示すように、用量トラッカ150のキャッチ157から係合解除される。解放部材190には、ここでは示されていないが、戻しばねをさらに設けることができる。戻しばねは、解放部材190を図48に示す初期構成へ戻すように、ピボット軸192に配置することができ、初期構成で、解放部材190のキャッチ197は、用量トラッカ150の対応する形状のキャッチ157に軸方向に当接および係合する。
キャッチ157は、近位方向を向いている軸方向当接面を含む。キャッチ197は、遠位方向を向いている対応する形状の軸方向当接面を含む。図48に示す初期構成で、2つの当接面は軸方向に当接し、したがって用量トラッカ150の近位向きの変位を抑制する。
一実施形態では、解放部材190は、径方向外方へ隆起した部分193を含むことができ、隆起部分193は、デバイスの使用者によって押し下げられるように構成される。径方向に上昇または隆起した部分193は、ハウジング10の側壁13の外面からわずかに突出する。その限りにおいて、このそれぞれの隆起部分193が、径方向内方へ押し下げられるように構成されることで、使用者への触覚フィードバックを提供する。使用者が隆起部分193を押し下げた後、レバー191の反対側に位置する端部セクションが引き上げられ、したがって相互に対応する当接面157、197が係合解除される。用量トラッカ150、したがってインターロック184が自由になると、用量トラッカ150は、たとえば図25~図28に関連して上述したように、ばね140の作用を受けて自由に回転しまたは長手方向に近位に動くことができる。
キャッチ157は、面取りセクション158をさらに含む。キャッチ197はまた、対応する形状の面取りセクション198を含む。用量トラッカ150の面取りセクション158は、遠位方向2を向いており、解放部材190の面取りセクション198は、近位方向3を向いている。用量送達中、したがって用量投薬処置の終了時に、用量トラッカ150は、遠位向きの変位を受け、したがって図48および図49で左側への変位を受ける。キャッチ157が図48に示す初期構成または初期軸方向位置に接近すると、面取りセクション158は、面取りセクション198に沿って摺動する。そのような摺動運動に付随して、解放部材198は径方向外方へ持ち上げられ、したがってキャッチ157、197の最も外側および最も内側の径方向先端が相互に通過し、その後、軸方向の当接面157、197は、図48に示す係合構成に戻る。
解放部材190またはそのレバー191がばねによって付勢された場合、キャッチ197は、それぞれのばねの作用に逆らって径方向外方へ引き上げまたは持ち上げられる。当接面197、157が位置合わせされるとすぐに、レバー191は、ばねの作用を受けて、図48に示す初期構成にカチッと留まる。
図50および図51に、インターロック284および解放部材290のさらに考えられる実装が示されている。ここで、用量トラッカ250は、弾性部分256を含む。弾性部分256は、用量トラッカ250から軸方向に突出することができる。別法として、弾性部分256は、用量トラッカ250の側壁に一体化することができる。弾性部分256は、U字形のスリットに沿って、用量トラッカの側壁から分離することができる。ここで、用量トラッカ250は、ハウジング10の側壁13の内向き部分に設けられたキャッチ297に対応する形状のキャッチ257を含む。キャッチ257は、近位方向3を向いている上述した軸方向の当接面を含む。ハウジング10の対応する形状のキャッチ297は、当接面257に係合または当接する遠位向きの当接面を含む。
キャッチ257ならびにキャッチ297はどちらも、面取りセクション258、298を含み、面取りセクション258、298は、用量トラッカ250が図50に示す初期構成へ戻ると、弾性部分256のわずかな径方向内方向きの弾性変形を有効にして誘起する。
インターロック284は、用量トラッカ250およびハウジング10の相互に対応するキャッチ257、297によって形成される。インターロック284を解放するために、押し下げ可能ボタン291の形態の解放部材290が設けられる。解放部材290は、ある程度平面の形状のまたはわずかに隆起したボタン291を含み、ボタン291は、長手方向に延びる心棒292に一体的に形成される。心棒292は、径方向内方へ延び、ハウジング10の側壁13内の凹部または貫通口と交差する。ボタン291は、ハウジング10の側壁13の外面からわずかに突出する。ボタン291は、ばね295の作用に逆らって、ハウジング10上に径方向に変位可能に支持される。ばね295は、側壁13の外面上の凹部293内に位置する。凹部293は、側壁13の外面と比較すると凹んでいる底部294を含む。底部294は、ばね295に対する支持を提供する。ばね295の反対側の端部は、ボタン291の下面に当接する。
心棒292の内側自由端299は、側壁13の内面から径方向内方へ突出する。自由端299には、横方向の突起296が設けられ、自由端299および突起296は、心棒292が延びる側壁13の凹部の内径より大きい距離だけ分離される。このようにして、心棒292およびボタン291全体が、ばね295の作用を受けてハウジング10から押し出されることが妨害される。
図50に示す初期構成で、心棒292の自由端299は、用量トラッカ250の弾性部分256と軸方向に重複している。解放部材290、したがってボタン291を径方向内方へ押し下げることによって、心棒292は、図50および図51に示すように、下方へ前進する。自由端299が弾性部分256の外面部分に当接するため、そのような押し下げにより、弾性部分256の局所的な径方向内方向きの変形が生じる。この弾性変形は、キャッチ297、298を係合解除して、用量トラッカ250の近位向きの変位を自由にするのに十分な大きさである。
図48~図51の例は、インターロック184、284および解放部材190、290に対する例示のみを目的とし、概して図1~図47に示す例のいずれにおいても実施することができる。