以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
本発明の医療用管状体の製造方法は、JIS B0601に基づく算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸を備えた外表面を有する芯材を管状部材の内腔に配置する工程と、液体および研磨材を備える流体、または、気体および研磨材を備える流体を管状部材の外表面に接触させる工程と、を有しており、流体が管状部材の外表面に接触することにより、管状部材の外表面が研磨され、かつ、管状部材の内表面と芯材とが接触して管状部材の内表面が研磨されるものである。流体が管状部材の外表面に接触することによって管状部材が流動し、管状部材の外表面と内表面とを同時に研磨することにより、医療用管状体の製造工程のリードタイムを短縮することができるとともに、管状部材の外表面と内表面で均一な研磨面を有する医療用管状体を製造することができる。また、研磨材の研磨力を補う、あるいは強化するために流動を激しくした場合であっても、管状部材の内側の芯材が管状部材を支持することによって管状部材の大きな変形を抑制するため、管状部材を破損させることなく研磨することができる。
以下に、本発明に係る医療用管状体の製造方法について、医療用管状体の例としてステントを用い、実施の一形態について図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(医療用管状体)
医療用管状体には、例えば、(1)1本の線状の金属もしくは高分子材料からなるコイル状のタイプ、(2)金属チューブをレーザー等によって切り抜き加工したタイプ、(3)線状の部材をレーザー等で溶接して組み立てたタイプ、(4)複数の線状金属を織って作ったタイプ等がある。
本発明にかかる医療用管状体としては、例えば、体内管腔構造に挿入される大きさである第1の径から、医療用管状体の外表面の少なくとも一部が血管や消化管等の体内管腔壁に接触する第2の径まで拡径するものが挙げられる。特に、血管、尿管、胆管等の体内管腔構造の形成術に用いられる医療用管状体としては、ステントを好ましく用いることができる。
通常、ステントは、病変部まで搬送するためにステントを設置する部位を有するカテーテル等の送達システムに取り付けて用いられる。ステントは、拡張機構の観点から、一般に、(1)バルーン外表面にステントを装着して病変部まで搬送し、病変部でバルーンによってステントを拡張する「バルーン拡張型ステント」、(2)拡張を抑制するシース部材を有するカテーテルに装填して病変部へ搬送し、病変部で拡張を抑制する部材を取り外すことにより自ら拡張していく「自己拡張型ステント」に分類することができる。本発明に係るステントは、バルーン拡張型ステント、自己拡張型ステントのどちらにも好ましく用いることができる。
本発明にかかる医療用管状体は、管状部材の表面を研磨することによって形成される。図1は管状部材11の側面図を表し、図2は図1に示した管状部材11のII-II断面図を表す。
図1に示すように、管状部材11は、環状の略波形構成要素13が一方向となる軸方向に連続して接続することによって形成されている。略波形構成要素13は、ストラット12をつなげることで形成されている。管状部材11は、医療用管状体1の研磨前の内径である内径D1と、医療用管状体1の研磨前の長さである長さL1を有している。なお、管状部材11は、ステントであることが好ましい。
図2に示すように、管状部材11は、体管腔に留置される際に体管腔壁と接する壁面である外表面14と、その外表面14と反対側にある壁面である内表面15とを備える。研磨前の医療用管状体1である管状部材11を形成するストラット12は、通常、四角形もしくはその他の多角形の形状の断面を有しており、その断面を形成する端縁部は、鋭利な形状となっている。
管状部材11を構成する材料としては、医療用管状体1の拡径および縮径等の変形時や体管腔への留置時に耐え得る材料であることが好ましく、例えば、医療用ステンレスである316Lステンレス、タンタル、マグネシウム合金、Co-Cr(コバルトクロム)合金、Ni-Ti(ニッケルチタン)合金等の金属、あるいは、ポリエステル、ポリオレフィン、フッ素樹脂、生体吸収性ポリマー等のポリマーが挙げられる。中でも、管状部材11を構成する材料は、Ni-Ti合金であることが好ましい。管状部材11を構成する材料がNi-Ti合金であることにより、医療用管状体1の強度を高めて十分に拡径および縮径を行うことが可能となる。
金属またはポリマー製の管状部材11を製造する方法としては、金属またはポリマー製の筒状の材料をレーザーによって網目状に切り抜き加工した後、機械研磨を行う方法を好ましく用いることができる。機械研磨は、管状部材11の屈曲した線状部分であるストラット12のレーザー加工、あるいは、レーザー加工後の熱処理等により生成した表面酸化皮膜の除去や、ストラット12の断面の鋭利な端縁部の丸め(ラウンド形状)加工等を目的として行われることが好ましく、最終仕上げ処理である電解研磨に先立って実施されることが好ましい。特に、一度に大量の被研磨物を研磨処理することができる研磨効率の高い、被研磨物を研磨容器(以下、バレルと称することがある。)に収容して研磨石等の研磨材とともに流動させて研磨する方法(以下、バレル研磨、または、タンブリング研磨と称することがある。)を好適に用いることができる。
(製造方法)
図3は従来の医療用管状体の製造方法を示しており、図4は図3に示した従来の製造方法での管状部材11のIV-IV断面図を表す。図3および図4に示すように、従来の製造方法では、管状部材11、および研磨石(メディア)等の研磨材123と水等の液体とを含む流体122を容器121の中に収容し、容器121に回転や振動等を与えて管状部材11と流体122とを流動させることによって、管状部材11を研磨する。
しかしながら、従来の製造方法では、使用する研磨材123の大きさが管状部材11の内径D1より大きいと、管状部材11の外表面14を研磨することはできるが、管状部材11の内腔に研磨材123が入り込めないために内表面15を研磨することができなかった。一方で、研磨材123が管状部材11の内腔に入り込むことができるように、研磨材123の大きさが管状部材11の内径D1よりも小さい場合であっても、研磨材123の大きさが小さいと研磨力も小さくなるため、管状部材11の外表面14と内表面15の両方を十分に研磨することが難しく、十分に研磨するためには非常に長い時間を必要としていた。また、研磨材123の研磨力を補う、あるいは強化するために流動を激しくすると、研磨不均一(研磨ムラ)が発生することや、管状部材11同士が衝突して破損してしまうことがあった。
図5は従来の製造方法により製造された医療用管状体101の断面図を表す。図5に示すように、従来の製造方法では、医療用管状体101を形成するストラット112の断面を形成する端縁部において、外表面14は研磨されて角が丸くなっている一方で、内表面15は全く研磨されていないか、あるいは、研磨されたとしても外表面14と比較して十分には研磨されておらず、角も鋭利な形状のままであった。
図6は本発明の実施の形態にかかる医療用管状体1の製造方法を示す概略図を表し、図7は図6に示した製造方法での管状部材11のVII-VII断面図を表し、図8は本発明の実施の形態にかかる製造方法により製造された医療用管状体1の断面図を表す。図6~図8に示すように、医療用管状体1の製造方法は、JIS B0601に基づく算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸を備えた外表面を有する芯材41を管状部材11の内腔に配置する工程と、液体および研磨材23を備える流体22、または、気体および研磨材23を備える流体22を管状部材11の外表面14に接触させる工程と、を有している。なお、図6では、流体22は、液体および研磨材23を備えるものを図示しているが、流体22が気体および研磨材23を備えるものであってもよい。
まず、管状部材11の内腔に芯材41を配置する。芯材41は、JIS B0601に基づく算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸を備えた外表面を有している。芯材41が、算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸を備えた外表面を有していることにより、流体22が管状部材11に接触して管状部材11が流動し、芯材41の外表面が管状部材11の内表面15と接触した際に、管状部材11の内表面15を十分に研磨することができる。特に、電解研磨などの最終仕上げ処理に先立って実施され得る、ステントの屈曲した線状部分であるストラット部分のレーザー加工、あるいは、レーザー加工後の熱処理等により生成した表面酸化皮膜の除去や、ストラット12の断面の鋭利な端縁部の丸め(ラウンド形状)加工等の目的に対して、大きな効果を発揮することができる。なお、算術平均粗さRaは、JIS B0601に基づいて測定される表面粗さパラメータの1つであり、接触式表面粗さ計やレーザー顕微鏡等の表面粗さ測定器により測定することができる。
芯材41の外表面が備えている凹凸の算術平均粗さRaは、1μm以上であればよいが、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましく、20μm以上であることがよりさらに好ましく、25μm以上であることが特に好ましい。芯材41の外表面の凹凸の算術平均粗さRaの下限値を上記の範囲に設定することにより、流体22が管状部材11に接触し、管状部材11が流動して管状部材11の内表面15と芯材41の外表面とが接触した際に、芯材41が管状部材11の内表面15を効率よく研磨することができ、管状部材11の研磨にかかる時間を短縮して医療用管状体1の製造効率を高めることが可能となる。また、芯材41の外表面が備えている凹凸の算術平均粗さRaは、100μm以下であればよいが、90μm以下が好ましく、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることがさらに好ましく、60μm以下であることがよりさらに好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。芯材41の外表面の凹凸の算術平均粗さRaの上限値を上記の範囲に設定することにより、芯材41の外表面が大きな凹凸やうねりのない均一なものとなり、管状部材11の内表面15をムラなく研磨しやすくなる。
芯材41を構成する材料としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、合金鋼、超硬合金、チタン合金等が挙げられる。芯材41を構成する材料は、中でも、炭素鋼であることが好ましい。芯材41を構成する材料が炭素鋼であることにより、芯材41の加工が容易で、かつ、強度と耐久性を高めることができる。
芯材41の外表面が備えている凹凸を構成する材料は、前述の芯材41を構成する材料で構成されていてもよく、芯材41を構成する材料と異なる材料であってもよい。例えば、芯材41の外表面が備えている凹凸を構成する材料としては、ダイヤモンド、グラファイト、セラミックス、樹脂、金属、ガラス、木片やクルミ等の植物等が挙げられ、管状部材11の種類や形状、研磨目的等に合わせて選択することができる。中でも、芯材41の外表面が備えている凹凸を構成する材料は、ダイヤモンドであることが好ましい。芯材41の外表面が備えている凹凸を構成する材料がダイヤモンドであることにより、芯材41の研磨力を高めることが可能となる。
芯材41の外表面に凹凸を形成する方法としては、例えば、焼結、蒸着、めっき、電着、電析、圧着、接着、溶接、放電加工、切削、研削、研磨、エッチング、フォトリソグラフィ等が挙げられる。芯材41の外表面に凹凸を形成する方法は、中でも、電着であることが好ましい。芯材41の外表面に電着によって凹凸を形成することにより、芯材41の外表面に凹凸を形成する材料を強固に固定することができ、芯材41の耐久性を高めることができる。
次に、液体および研磨材23を備える流体22、または、気体および研磨材23を備える流体22を管状部材11の外表面14に接触させる。流体22が管状部材11の外表面14に接触することにより、管状部材11の外表面14が研磨され、かつ、管状部材11の内表面15と芯材41とが接触して管状部材11の内表面15が研磨される。つまり、流体22が管状部材11の外表面14に接触することによって、流体22が含んでいる研磨材23が管状部材11の外表面14を研磨しながら、流体22が管状部材11を流動させて管状部材11の内表面15と芯材41とを接触させることができるため、図8に示すように、ストラット12の角を丸くすることができ、管状部材11の外表面14と内表面15の両方を短時間で十分に研磨し、研磨ムラも少なく均一に研磨することが可能となる。
液体および研磨材23を備える流体22を管状部材11の外表面14に接触させるには、例えば、液体および研磨材23を備える流体22を水槽に満たし、この水槽に管状部材11を収容して流体22を流動させ、管状部材11に接触させる、液体および研磨材23を備える流体22を管状部材11に吹き付ける等の方法が挙げられる。また、気体および研磨材23を備える流体22を管状部材11の外表面14に接触させるには、例えば、気体および研磨材23を備える流体22を管状部材11に吹き付ける等の方法が挙げられる。
液体および研磨材23を備える流体22の場合、用いる液体としては、不活性である液体や粘度の低い液体が好ましく、例えば、水、油等が挙げられる。中でも、液体および研磨材23を備える流体22に用いる液体は、水であることが好ましい。水および研磨材23を備える流体22を管状部材11の外表面14の研磨に用いることにより、研磨後の管状部材11や設備の清掃が容易であって、医療用管状体1の製造効率を向上させることができる。
気体および研磨材23を備える流体22の場合、用いる気体としては、不活性気体であることが好ましく、例えば、空気、窒素ガス等が挙げられる。中でも、気体および研磨材23を備える流体22に用いる気体は、空気であることが好ましい。空気および研磨材23を備える流体22を管状部材11の外表面14の研磨に用いることにより、医療用管状体1の製造コストを低下させることができる。
研磨材23は、管状部材11を研磨するための研磨材料であり、砥粒、金属粒、樹脂粒、これらを結合材にて結合させた、あるいは焼成結合させた研磨石等が挙げられる。研磨石を構成する材料としては、例えば、ダイヤモンド、グラファイト、セラミックス、樹脂、金属、ガラス、木片やクルミ等の植物等が挙げられる。研磨石を構成する材料は、中でも、管状部材11よりもモース硬度が高いものであることが好ましく、アルミナまたはジルコニアを含んでいることが好ましい。研磨材23がアルミナまたはジルコニアを含んでいることにより、研磨材23を有している流体22の研磨力を向上させ、管状部材11の外表面14を短時間で研磨することができる。
研磨材23の形状としては、例えば、多角柱形状、多角錐形状、円柱形状、斜円柱形状、球形状等が挙げられる。研磨材23の形状は、中でも、多角柱形状または多角錐形状であることが好ましく、三角柱形状または三角錐形状であることがより好ましい。研磨材23の形状が多角柱形状または多角錐形状であることにより、研磨する力を高めて、管状部材11の外表面14を十分に研磨できる。
研磨材23の大きさは、管状部材11と芯材41との間に入らない大きさであることが好ましい。つまり、研磨材23の大きさは、芯材41の外径D2と管状部材11の内径D1との差よりも大きいことが好ましい。研磨材23の大きさが芯材41と管状部材11の大きさの差よりも大きいことにより、研磨材23が管状部材11の内表面15と芯材41の外表面との間の隙間に挟まって管状部材11が動かなくなることを防止し、流体22が管状部材11に接触することによって管状部材11が流動し、管状部材11の内表面15と芯材41の外表面とが接触して、管状部材11の内表面15を効率的に研磨することができる。
図7に示すように、流体22は、複数種の研磨材23(23aおよび23b)を有していることが好ましい。流体22が研磨材23aおよび研磨材23bを有している場合、研磨材23aの形状と研磨材23bの形状は異なっていることが好ましい。また、研磨材23aと研磨材23bの少なくとも一方は、球形状であることがより好ましい。流体22が複数種の研磨材23を有していることにより、研磨材23同士が干渉し合って研磨効果を増大させることができるため、研磨ムラを少なく均一に管状部材11を研磨しやすくなる。
流体22が複数種の研磨材23(23aおよび23b)を有している場合、図7に示すように、研磨材23bの体積は、研磨材23aの体積よりも小さいことが好ましい。つまり、流体22は、第1の研磨材23aと、第1の研磨材23aよりも体積の小さい第2の研磨材23bを有していることが好ましい。流体22が研磨材23aと、研磨材23aよりも体積の小さい研磨材23bを有していることにより、体積の大きい研磨材23aが管状部材11の全体を研磨し、体積の小さい研磨材23bが管状部材11の表面を平滑にするため、短時間で効率的に管状部材11の外表面14の研磨を行うことが可能となる。
研磨材23bの体積は、研磨材23aの体積の90%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。研磨材23bの体積と研磨材23aの体積との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、研磨材23aが研磨した管状部材11の外表面14の研磨を促進し、さらに外表面14の形状を整えることができる。また、研磨材23bの体積は、研磨材23aの体積の0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、1%以上であることがさらに好ましい。研磨材23bの体積と研磨材23aの体積との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、管状部材11の外表面14の研磨を短時間で行うことができる。
研磨材23bよりも体積の大きい研磨材23aの体積は、0.1cm3以上であることが好ましく、0.5cm3以上であることがより好ましく、1cm3以上であることがさらに好ましい。研磨材23aの体積の下限値を上記の範囲に設定することにより、管状部材11の外表面14を効率的に研磨することが可能となる。また、研磨材23aの体積は、100cm3以下であることが好ましく、90cm3以下であることがより好ましく、80cm3以下であることがさらに好ましい。研磨材23aの体積の上限値を上記の範囲に設定することにより、管状部材11の研磨中に管状部材11を破損させにくくすることができる。
研磨材23aよりも体積の小さい研磨材23bの体積は、0.001cm3以上であることが好ましく、0.005cm3以上であることがより好ましく、0.01cm3以上であることがさらに好ましい。研磨材23bの体積の下限値を上記の範囲に設定することにより、短時間で管状部材11の外表面14を十分に研磨することが可能となる。また、研磨材23bの体積は、1cm3以下であることが好ましく、0.9cm3以下であることがより好ましく、0.8cm3以下であることがさらに好ましい。研磨材23bの体積の上限値を上記の範囲に設定することにより、研磨力を高め、管状部材11の外表面14をきめ細かく、均一に研磨することができる。
流体22は、研磨補助剤をさらに有していることが好ましい。研磨補助剤は、管状部材11の研磨を補助する役割で添加され、研磨力向上、脱脂、洗浄、平滑化、光沢化、スケール除去、防錆、消泡、打痕防止、チッピング抑制等の効果を得るために用いられる。研磨補助剤としては、例えば、ダイヤモンド、グラファイト、セラミックス、樹脂、金属、ガラス、木片やクルミ等の植物、石鹸、オイル、有機溶剤、酸、アルカリ、界面活性剤等の粉末材料や液体材料が挙げられ、管状部材11の種類や形状、研磨目的等に合わせて選択することができる。
芯材41は、算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸を、芯材41の外表面の50%以上の面積分有していることが好ましく、65%以上の面積分有していることがより好ましく、80%以上の面積分有していることがさらに好ましく、100%の面積分、つまり芯材41の外表面の全体に有していることが最も好ましい。芯材41の外表面の面積と、芯材41が有している算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸の面積の比率を上記の範囲に設定することにより、芯材41が有している算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸と管状部材11の内表面15とが接触する面積を確保することができ、また、管状部材11を流動させた際に芯材41が有している算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸と管状部材11の内表面15とを十分に接触させることができるため、管状部材11の内表面15に研磨ムラが生じにくく、かつ短時間の研磨にて十分な研磨を行うことができる。
芯材41の軸方向の長さは、管状部材11の長さL1よりも長いことが好ましい。芯材41の軸方向の長さが管状部材11の長さL1よりも長いことにより、管状部材11の内表面15の全体に芯材41が接触することができるため、管状部材11の内表面15の全体を短時間で研磨することが可能となる。
芯材41の軸方向の長さは、管状部材11の長さL1の1.1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2.1倍以上であることがさらに好ましく、2.5倍以上であることがよりさらに好ましく、3倍以上であることが特に好ましく、3.5倍以上であることが最も好ましい。芯材41の軸方向の長さと管状部材11の長さL1との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、管状部材11の両端部の内表面15にも芯材41が十分に接触することができ、管状部材11の内表面15の全体を芯材41によって研磨することができる。さらに、芯材41の軸方向の長さと管状部材11の長さL1との比率を2.1倍以上とすることによって、1本の芯材41に複数の管状部材11を配置することが可能となり、一度に複数の管状部材11を研磨することができ、医療用管状体1の製造の効率を高めることができる。また、芯材41の軸方向の長さは、管状部材11の長さL1の10倍以下であることが好ましく、8倍以下であることがより好ましく、6倍以下であることがさらに好ましい。芯材41の軸方向の長さと管状部材11の長さL1との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、芯材41の軸方向の長さが過度に大きくなることを防ぎ、芯材41を管状部材11の内腔に配置する際等に芯材41が取り扱いやすくなる。
芯材41の外径D2は、管状部材11の内径D1よりも小さいことが好ましい。芯材41の外径D2が管状部材11の内径D1よりも小さいことにより、流体22が管状部材11に接触して管状部材11が流動した際に、芯材41上を管状部材11が移動することが可能となり、管状部材11の内表面15と芯材41の外表面とが接触して、管状部材11の内表面15を研磨することができる。
芯材41の外径D2と管状部材11の内径D1との差は、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。芯材41の外径D2と管状部材11の内径D1との差の下限値および上限値を上記の範囲に設定することにより、芯材41上を管状部材11が移動することができ、かつ、芯材41の外表面と管状部材11の内表面15とが十分に接触するため、管状部材11の内表面15を研磨しやすくなる。
芯材41の外径D2と管状部材11の内径D1との差は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましい。芯材41の外径D2と管状部材11の内径D1との差の下限値を上記の範囲に設定することにより、芯材41上を管状部材11が芯材41の軸方向および周方向へ移動しやすくなり、管状部材11の内表面15が芯材41の外表面によって研磨されやすくなる。また、芯材41の外径D2と管状部材11の内径D1との差は、5.0mm以下であることが好ましく、4.0mm以下であることがより好ましく、3.0mm以下であることがさらに好ましい。芯材41の外径D2と管状部材11の内径D1との差の上限値を上記の範囲に設定することにより、研磨時に管状部材11が芯材41上を激しく動いて芯材41に衝突する等して破損することを防ぎ、かつ、芯材41の外表面の大きさを十分なものとして管状部材11の内表面15を効率的に研磨することができる。
芯材41は、JIS B0601に基づく最大高さ粗さRzが10μm以上800μm以下の凹凸を備えていることが好ましい。芯材41が、最大高さ粗さRzが10μm以上800μm以下の凹凸を備えていることにより、芯材41の外表面が管状部材11の内表面15を研磨する力を高めて、短時間で研磨を行うことが可能となる。なお、最大高さ粗さRzは、JIS B0601に基づいて測定される表面粗さパラメータの1つであり、接触式表面粗さ計やレーザー顕微鏡等の表面粗さ測定器により測定することができる。
芯材41の外表面が備えている凹凸の最大高さ粗さRzは、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。芯材41の外表面が備えている凹凸の最大高さ粗さRzの下限値を上記の範囲に設定することにより、芯材41の外表面が有する研磨力を高め、管状部材11の内表面15を研磨する時間を短縮することが可能となる。また、芯材41の外表面が備えている凹凸の最大高さ粗さRzは、800μm以下であることが好ましく、700μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることがさらに好ましい。芯材41の外表面が備えている凹凸の最大高さ粗さRzの上限値を上記の範囲に設定することにより、研磨後の管状部材11の内表面15に大きな凹凸やうねり等が残りにくく、研磨ムラが発生しにくくなる。
図9は本発明の他の実施の形態にかかる研磨方法を示す概略図を表す。図9に示すように、芯材41は、管状部材11の軸方向の外側に係止部材61を有していることが好ましい。研磨時において、管状部材11の両方の端部は、隣接構造のない自由端であるため、管状部材11のその他の部分と比べて研磨材23の影響を受けやすく、研磨されやすい傾向にあり、特に長い研磨時間を要した場合には、均一に研磨を行うことが困難となることもあった。芯材41が管状部材11の軸方向の外側に対応する位置に係止部材61を有していることにより、研磨時に芯材41上を管状部材11が移動し、管状部材11の端部が係止部材61と接したり離れたりすることによって、管状部材11の端部に対する研磨材23の研磨の影響を抑制し、管状部材11全体において研磨ムラの少ない均一な研磨を施しやすくなる。
係止部材61は、芯材41に1つ配置されていてもよいが、芯材41における管状部材11の両側に1つずつ配置されていることがより好ましい。係止部材61が芯材41の管状部材11の両側に1つずつ配置されていることにより、芯材41上での管状部材11の大きな移動を効果的に制限することが可能となり、管状部材11の両端部が他の箇所よりも多く研磨されてしまうことを防止し、管状部材11の全体で均一に研磨することができる。
係止部材61は、芯材41上を摺動可能に配置されていることが好ましい。係止部材61が芯材41上を摺動可能に配置されていることにより、係止部材61を芯材41に着脱することが容易となり、芯材41を管状部材11の内腔に挿入する工程、および芯材41から管状部材11を除去する工程が行いやすくなる。
係止部材61は、管状部材11の端部から所定の距離をあけて配置されていることが好ましい。係止部材61と管状部材11の端部との距離は、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましく、7mm以上であることがよりさらに好ましい。係止部材61と管状部材11の端部との距離の下限値を上記の範囲に設定することにより、研磨時に管状部材11が芯材41上を移動することができ、管状部材11の全体において均一な研磨を行うことが容易となる。また、係止部材61と管状部材11の端部との距離は、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、30mm以下であることがさらに好ましく、15mm以下であることがよりさらに好ましい。係止部材61と管状部材11の端部との距離の上限値を上記の範囲に設定することにより、管状部材11の端部が係止部材61と接したり離れたりしやすく、管状部材11の端部に対する研磨材23の研磨の影響を軽減して均一な研磨を行いやすくなる。
係止部材61の形状は、芯材41上を摺動可能に取り付けることができる形状であることが好ましく、例えば、リング形状、筒に切れ込みが入った断面C字状の形状、線材を巻回したコイル形状等が挙げられる。係止部材61の形状は、中でも、リング形状であることが好ましい。係止部材61がリング形状であることにより、係止部材61と管状部材11とが接する面積を大きくし、芯材41上にて管状部材11の移動を抑制する効果を高めることが可能となる。
係止部材61を構成する材料は、研磨により影響を受けにくい樹脂材料を用いることが好ましく、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、または、PTFE等のフッ素系樹脂等が挙げられる。係止部材61を構成する材料は、中でも、フッ素系樹脂であることが好ましい。係止部材61を構成する材料がフッ素系樹脂であることにより、研磨の影響を受けにくく、かつ、表面の摺動性が高いため、芯材41に係止部材61を容易に取り付けることができる。
医療用管状体1の製造方法における管状部材11の研磨時間は、1回につき1分以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましく、10分以上であることがさらに好ましい。管状部材11の1回の研磨時間の下限値を上記の範囲に設定することにより、管状部材11に対する流体22の研磨力を高めて、管状部材11を十分に研磨することができる。また、管状部材11の研磨時間は、1回につき600分以下であることが好ましく、300分以下であることがより好ましく、120分以下であることがさらに好ましい。管状部材11の1回の研磨時間の上限値を上記の範囲に設定することにより、研磨中に管状部材11の破損や変形をおこりにくくし、医療用管状体1の製造効率を高めることができる。なお、管状部材11の研磨は、複数回実施してもよく、その際に研磨時間や研磨材23の種類等の条件を変更してもよい。
管状部材11に付着した汚染物質を取り除き、管状部材11に対する研磨の効果を高める、あるいは、研磨後の管状部材11である医療用管状体1の状態をよりよくするために、液体および研磨材23を備える流体22、または、気体および研磨材23を備える流体22を管状部材11の外表面14に接触させる工程の前と後の少なくとも一方に、管状部材11を洗浄する工程を実施することが好ましい。
液体および研磨材23を備える流体22、または、気体および研磨材23を備える流体22を管状部材11の外表面14に接触させる工程の前に実施する、管状部材11を洗浄する工程における洗浄液は、例えば、水、有機溶剤、水系洗浄剤、準水系洗浄剤等が挙げられる。上記の洗浄工程における洗浄液は、中でも、水系洗浄剤または準水系洗浄剤であることが好ましく、中性洗浄剤またはアルカリ性洗浄剤であることがより好ましく、アルカリ性洗浄剤であることが最も好ましい。上記の洗浄工程における洗浄液が水系洗浄剤または準水系洗浄剤であることにより、管状部材11の表面から油脂類の加工変性により形成された油脂固着層および微粉状の汚染物を容易に除去することが可能となる。
液体および研磨材23を備える流体22、または、気体および研磨材23を備える流体22を管状部材11の外表面14に接触させる工程の後に実施する、医療用管状体1を洗浄する工程における洗浄液は、例えば、水、有機溶剤等が挙げられる。上記の洗浄工程における洗浄液は、中でも、水であることが好ましい。また、上記の洗浄工程では、水を用いて超音波洗浄を行うことがより好ましい。上記の洗浄工程が水を用いた超音波洗浄であることにより、医療用管状体1の表面から汚染物を離脱除去して清浄化することができる。
(製造装置)
以下に、本発明に係る医療用管状体の製造装置について、医療用管状体の例としてステントを用い、実施の一形態について図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の説明において、上記の説明と重複する部分は説明を省略する。
図6および図7に示すように、医療用管状体1の製造装置は、管状部材11の内腔に配置されている芯材41と、液体および研磨材23を備える流体22、または、気体および研磨材23を備える流体22を収容する容器21と、を有する医療用管状体1の製造装置であって、芯材41は、JIS B0601に基づく算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸を備えた外表面を有するものである。医療用管状体1の製造装置が、算術平均粗さRaが1μm以上100μm以下の凹凸を備えた外表面を有する芯材41と、液体および研磨材23を備える流体22、または、気体および研磨材23を備える流体22を収容する容器21とを有していることにより、流体22が管状部材11の外表面14に接触することによって管状部材11の外表面14が研磨され、同時に、管状部材11が流動し、管状部材11の内表面15と芯材41とが接触することによって管状部材11の内表面15が研磨されるため、管状部材11の外表面14と内表面15を均一に研磨した医療用管状体1を効率的に製造することが可能となる。また、管状部材11の内腔に芯材41が配置されているため、研磨材23の研磨力を補うことや強化すること等を目的として流体22の流動を激しくしても、芯材41が管状部材11の大きな変形を防止し、管状部材11を破損させることなく研磨を施すことができる。
容器21内にて流体22と管状部材11とを流動させるには、例えば、容器21に流体22を収容して容器21に力を加えることや、容器21の内部にて管状部材11へ流体22を噴射すること等が挙げられる。流体22が液体および研磨材23を備える場合、容器21に流体22を収容して容器21に力を加えることによって、容器21内にて流体22と管状部材11とを流動させることが好ましい。容器21に力を加えるには、例えば、容器21を回転させる、容器21に振動を与える等の方法が挙げられる。流体22が気体および研磨材23を備える場合、容器21内にて管状部材11に向かって流体22を噴射して、流体22と管状部材11とを流動させることが好ましい。
液体および研磨材23を備える流体22を容器21内にて流動させる場合、管状部材11の研磨方式としては、例えば、回転バレル、振動バレル、遠心バレル、渦流バレル等が挙げられる。液体および研磨材23を備える流体22を用いる場合の研磨方式は、中でも、遠心バレル方式であることが好ましい。遠心バレル方式によって管状部材11を研磨することにより、管状部材11を短時間で均一に研磨しやすくなる。
容器21の形状としては、管状部材11や芯材41、流体22等を内部に収容し、管状部材11を研磨することができる形状であればよく、例えば、断面形状が円形である円柱形状の輪郭を有する筒型容器、断面形状が多角形である多角柱形状の輪郭を有する筒型容器、内周面にヒダ構造を有する筒型容器等を用いることができる。なお、容器21の内部の底面が、芯材下部固定部91を兼ねていてもよい。
容器21を構成する材料としては、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、または、PTFE等のフッ素系樹脂等の樹脂、セラミックス、金属等が挙げられる。容器21を構成する材料は、中でも、樹脂であることが好ましく、ポリウレタンであることがより好ましい。容器21を構成する材料が樹脂であることにより、容器21の遠心や回転の運動に対して耐久性を付与し、管状部材11の研磨に影響を与えにくくすることができる。
芯材41の両端部の少なくとも一方は、容器21に固定されていることが好ましい。芯材41の少なくとも一方の端部を容器21に固定することにより、容器21内にて流体22を流動させた際に、芯材41から管状部材11が離脱することを防ぎ、管状部材11を十分に研磨することができる。
芯材41の一方の端部を容器21の底面に着脱可能に固定し、芯材41の他方の端部を容器21の上面に着脱可能に固定することがより好ましい。芯材41の一方端部を容器21の底面に、芯材41の他方端部を容器21の上面にそれぞれ着脱可能に固定することにより、管状部材11の内腔へ芯材41を挿入および除去することが容易となる。
液体および研磨材23を備える流体22、または、気体および研磨材23を備える流体22の量は、容器21の容積に対して、1体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることがより好ましく、10体積%以上であることがさらに好ましい。容器21の容積に対する流体22の量の下限値を上記の範囲に設定することにより、管状部材11の研磨に寄与する流体22の量を増やし、管状部材11を十分に研磨することができる。また、液体および研磨材23を備える流体22、または、気体および研磨材23を備える流体22の量は、容器21の容積に対して、90体積%以下であることが好ましく、80体積%以下であることがより好ましく、70体積%以下であることがさらに好ましい。容器21の容積に対する流体22の量の上限値を上記の範囲に設定することにより、容器21内にて流体22が流動しやすくなり、管状部材11の研磨を行いやすくすることができる。
図10は本発明の実施の形態にかかる医療用管状体1の製造装置の概略図を表し、図11は本発明の他の実施の形態にかかる医療用管状体1の製造装置の概略図を表す。図10および図11に示すように、容器21は、容器21の上下方向に延在する軸を回転軸85として回転可能であることが好ましい。容器21が回転可能であることにより、容器21内に収容している流体22を流動させやすく、管状部材11の外表面14および内表面15の全体を均一に研磨することができる。
医療用管状体1の製造装置は、容器21の上下方向に延在する軸を回転軸85として回転可能とする容器回転機構83を有していることが好ましい。医療用管状体1の製造装置が容器回転機構83を有していることにより、容器21の回転速度や回転時間等、容器21の回転を容易に制御することが可能となる。容器回転機構83としては、例えば、容器21を回転駆動する駆動モーターを有する機構等が挙げられる。
図10に示すように、容器21を載置するテーブル81を有しており、テーブル81は、テーブル81の上下方向に延在する軸を回転軸84として回転可能であることが好ましい。テーブル81が軸を回転軸84として回転可能であることにより、容器21に遠心力を与えて容器21内の流体22を流動させ、管状部材11を効率的に研磨することが可能となる。
医療用管状体1の製造装置は、テーブル81の上下方向に延在する軸を回転軸84として回転可能とするテーブル回転機構82を有していることが好ましい。医療用管状体1の製造装置がテーブル回転機構82を有していることにより、テーブル81の回転の速度や時間等を制御することが容易となる。テーブル回転機構82としては、例えば、テーブル81を回転駆動する駆動モーターを有する機構等が挙げられる。
医療用管状体1の製造装置は、容器21が容器21の上下方向に延在する軸を回転軸85として回転可能であり、かつ、テーブル81がテーブル81の上下方向に延在する軸を回転軸84として回転可能であることが好ましい。つまり、医療用管状体1の製造装置は、容器21の上下方向に延在する軸を回転軸85として回転可能とする容器回転機構83、および、テーブル81の上下方向に延在する軸を回転軸84として回転可能とするテーブル回転機構82を有していることが好ましい。容器21とテーブル81の両方がそれぞれ回転可能であることにより、テーブル81上にて容器21が回転軸85を中心に回転(自転)し、テーブル81が回転軸84を中心に回転(公転)することによって、容器21内に収容されている流体22に遠心力を与えて効率的に流動させることができ、管状部材11を短時間で均一に研磨しやすくすることが可能となる。なお、このとき、容器21の回転方向は、テーブル81の回転方向と同じ方向であってもよく、逆方向であってもよい。
医療用管状体1の製造装置が容器回転機構83およびテーブル回転機構82を有する場合、医療用管状体1の製造装置の構造としては、例えば、テーブル81を回転駆動する駆動モーターによるテーブル回転機構82と、テーブル81の回転を伝動ベルトや遊星歯車機構によって容器21の回転軸85に伝達して容器21を回転させる構成を用いることができる。
容器21の回転速度は、1rpm以上であることが好ましく、5rpm以上であることがより好ましく、10rpm以上であることがさらに好ましい。容器21の回転速度の下限値を上記の範囲に設定することにより、容器21に収容されている流体22が流動しやすくなり、流体22の研磨力を高めて管状部材11を効率的に研磨することが可能となる。また、容器21の回転速度は、1000rpm以下であることが好ましく、800rpm以下であることがより好ましく、500rpm以下であることがさらに好ましい。容器21の回転速度の上限値を上記の範囲に設定することにより、容器21の回転によって管状部材11へ大きな遠心力が加わりにくく、管状部材11が破断することや変形することを防ぎ、医療用管状体1の製造効率を向上させることができる。
テーブル81の回転速度は、1rpm以上であることが好ましく、5rpm以上であることがより好ましく、10rpm以上であることがさらに好ましい。テーブル81の回転速度の下限値を上記の範囲に設定することにより、容器21に収容されている流体22を十分に流動させることができ、管状部材11に対する研磨力を確保することができる。また、テーブル81の回転速度は、1000rpm以下であることが好ましく、800rpm以下であることがより好ましく、500rpm以下であることがさらに好ましい。テーブル81の回転速度の上限値を上記の範囲に設定することにより、研磨時に管状部材11へ遠心力が大きく加わり、管状部材11に破断や変形が生じることを防止できる。
テーブル81の回転速度は、容器21の回転速度よりも速いことが好ましい。テーブル81の回転速度を容器21の回転速度よりも速めることにより、管状部材11に加わる遠心力を小さくして管状部材11の破損のおそれを低減しながら、容器21内の流体22を流動させやすくし、管状部材11を均一に、かつ短時間で研磨することが可能となる。
テーブル81の回転速度は、容器21の回転速度の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。テーブル81の回転速度と容器21の回転速度との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、容器21の内部に収容されている流体22を大きく流動させやすくすることができる。また、テーブル81の回転速度は、容器21の回転速度の10倍以下であることが好ましく、9倍以下であることがより好ましく、8倍以下であることがさらに好ましい。テーブル81の回転速度と容器21の回転速度との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、管状部材11へ大きな遠心力が加わりにくくなり、管状部材11が破損しにくくなる。
管状部材11の研磨中において、容器21の回転速度およびテーブル81の回転速度は、一定であることが好ましい。容器21の回転速度およびテーブル81の回転速度を一定とすることにより、管状部材11への研磨力も一定とすることができ、研磨ムラが発生しにくくすることができる。なお、管状部材11の研磨を複数回行い、その際に容器21の回転速度およびテーブル81の回転速度等の条件を変更してもよい。
容器21の回転軸85と、テーブル81の回転軸84とがなす角度は、0度超90度未満であることが好ましい。容器21の回転軸85とテーブル81の回転軸84とがなす角度が0度超90度未満であることにより、容器21とテーブル81の回転中に容器21が鉛直方向に対して傾斜し、容器21内に収容されている流体22を大きく流動させやすく、管状部材11の研磨の効率を高めることが可能となる。
容器21の回転軸85とテーブル81の回転軸84とがなす角度は、0度超であることが好ましく、5度以上であることがより好ましく、10度以上であることがさらに好ましい。容器21の回転軸85とテーブル81の回転軸84とがなす角度の下限値を上記の範囲に設定することにより、容器21およびテーブル81の回転時に鉛直方向に対して容器21が傾斜して容器21に収容されている流体22が流動しやすくなり、容器21内の流体22が流動して管状部材11に接触した際に管状部材11が芯材41上を移動しやすくなって管状部材11の全体が均一に研磨されやすくなる。また、容器21の回転軸85とテーブル81の回転軸84とがなす角度は、90度未満であることが好ましく、80度以下であることがより好ましく、70度以下であることがさらに好ましい。容器21の回転軸85とテーブル81の回転軸84とがなす角度の上限値を上記の範囲に設定することにより、容器21とテーブル81とが回転した際に容器21から流体22が外部へ漏れ出にくくし、管状部材11に接触する流体22が十分な量となるように確保することができる。
図11に示すように、容器21の回転軸85と、芯材41の延在方向の軸93とがなす角度θ1は、0度超90度未満であることが好ましい。容器21の回転軸85と芯材41の延在方向の軸93とがなす角度θ1が0度超90度未満であることにより、容器21内に収容されている流体22が容器21の回転時に流動しやすく、流体22と接触した管状部材11が芯材41上で移動することが容易となって、管状部材11の外表面14および内表面15を短時間で均一に研磨することが可能となる。
容器21の回転軸85と、芯材41の延在方向の軸93とがなす角度θ1は、0度超であることが好ましく、5度以上であることがより好ましく、10度以上であることがさらに好ましい。容器21の回転軸85と芯材41の延在方向の軸93とがなす角度θ1の下限値を上記の範囲に設定することにより、管状部材11の研磨時に管状部材11に対してかかる遠心力が、芯材41に対して垂直な方向に管状部材11を動かす力と、芯材41に対して平行な方向に管状部材11を動かす力に分かれて働くため、管状部材11が研磨中に破損しにくく、かつ、管状部材11を均一に研磨することができる。また、容器21の回転軸85と、芯材41の延在方向の軸93とがなす角度θ1は、90度未満であることが好ましく、80度以下であることがより好ましく、70度以下であることがさらに好ましい。容器21の回転軸85と芯材41の延在方向の軸93とがなす角度θ1の上限値を上記の範囲に設定することにより、芯材41へ管状部材11を配置することや取り外すことが行いやすく、医療用管状体1の製造効率を向上させることができる。
芯材41の数は、複数であることが好ましい。芯材41の数が複数であることにより、複数の管状部材11を同時に研磨することができ、医療用管状体1の製造効率を高めることが可能となる。
1本の芯材41に1つの管状部材11を配置してもよいが、複数の管状部材11を配置し、複数の管状部材11の間に係止部材61を配置することが好ましい。芯材41に複数の管状部材11を配置し、複数の管状部材11の間に係止部材61を配置することにより、同時に複数の管状部材11の研磨を行うことができるため医療用管状体1の製造効率がよく、また、管状部材11の端部同士が互いに接触することを係止部材61が妨げるため管状部材11の端部が破損することや変形することを防止することができる。
図11に示すように、芯材41は、容器21内に設置されている芯材下部固定部91に配置されることが好ましい。芯材下部固定部91は、芯材41の外径D2を挿通することができる大きさの穴を有しており、この穴に芯材41の下部を挿通して固定することが好ましい。また、芯材下部固定部91は、複数の芯材41を配置することが可能であることが好ましい。芯材41が芯材下部固定部91に配置されることにより、容器21内に芯材41を適切な位置に設けることが容易となる。なお、芯材下部固定部91と芯材41とが一体化されていてもよい。
芯材下部固定部91を構成する材料としては、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、または、PTFE等のフッ素系樹脂等の樹脂、セラミックス、ステンレス等の金属等が挙げられる。芯材下部固定部91を構成する材料は、中でも、樹脂であることが好ましい。芯材下部固定部91を構成する材料が樹脂であることにより、管状部材11の研磨時に流体22の流動によって管状部材11が芯材41上を移動し、管状部材11が芯材下部固定部91に接触した場合であっても管状部材11が破損や変形しにくくすることが可能である。
容器21は、容器21の上方に芯材上部固定部92が設けられており、芯材41の上部が芯材上部固定部92に固定されることが好ましい。つまり、芯材41は、芯材41の下部を芯材下部固定部91に固定され、芯材41の上部を芯材上部固定部92に固定されることが好ましい。芯材上部固定部92は、芯材41の外径D2を挿通することができる大きさの穴を有しており、この穴に芯材41の上部を挿通して固定することが好ましい。また、芯材上部固定部92は、芯材41を複数配置可能であることが好ましい。芯材41が芯材下部固定部91および芯材上部固定部92によって固定されることにより、芯材41を適切な位置および角度にて容器21内に配置することを容易かつ迅速に行うことができ、医療用管状体1の製造の効率を高めることが可能となる。
芯材上部固定部92を構成する材料としては、芯材下部固定部91を構成する材料として挙げたものを用いることができる。芯材上部固定部92を構成する材料としては、中でも、樹脂であることが好ましい。芯材上部固定部92を構成する材料が樹脂であることにより、芯材下部固定部91と同じく、管状部材11の研磨時に管状部材11が芯材41上を移動して、管状部材11が芯材上部固定部92に接触しても、管状部材11が破損することや変形することを防ぐことができる。
図示していないが、容器21は、開閉可能に密閉された施蓋構造であることが好ましい。容器21が施蓋構造であることにより、研磨中に管状部材11や芯材41、流体22等の容器21内に収容しているものが外部へ出ることを防止することができる。施蓋構造としては、容器21の上部に蓋体を設け、密閉構造とするのがよい。蓋体は、金具等で確実に固定されて、研磨中に意図せず開閉しないような構造になっていることが好ましい。なお、蓋体は、芯材上部固定部92を兼ねていてもよい。
図示していないが、医療用管状体1の製造装置は、装置操作部、起動・停止スイッチ、速度設定部、運転時間設定部、運転速度・運転時間等の運転パラメータを制御・記録するための電子機器等を備えていることが好ましい。医療用管状体1の製造装置が、装置操作部、起動・停止スイッチ、速度設定部、運転時間設定部、運転パラメータを制御・記録するための電子機器等を備えていることにより、医療用管状体1の製造効率を高め、安定的に製造を行うことができる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
なお、以下の実施例および比較例は、図10に示すような医療用管状体1の製造装置を用いて、管状部材11を研磨した。
(実施例1)
内径D1が3.0mmのニッケルチタン合金製の管状部材11を用意した。また、ダイヤモンドを含有した算術平均粗さRaが32.0μm、最大高さ粗さRzが202.0μmの凹凸を備えた表面を全面に有する、外径D2が2.8mmのS45C製の芯材41を用意した。なお、カットオフ値2.5mm、評価長さ8mmで、レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-9510)を用いて、JIS B0601に基づき3回測定し、その平均値として算術平均粗さRaと最大高さ粗さRzをそれぞれ測定した。
まず、管状部材11の内腔に芯材41を挿通し、管状部材11の軸方向の外側であって、管状部材11の両端部からそれぞれ10mm距離をあけた位置にPTFE製の係止部材61を配置した。芯材下部固定部91と芯材上部固定部92との間に、芯材41を容器21の回転軸85に対して30度傾斜させて固定し、容積が2.0Lであり断面形状が円形であって円柱形状の輪郭を有する筒型のポリウレタン製の容器21の中に設置した。なお、容器21内には、管状部材11を1つ配置した芯材41を1本設置した。
次に、容器21の中に、水に一辺が3mmの正三角形の底面で高さが3mmの三角柱形状のアルミナ製の研磨材23(23a)を50体積%、直径が0.5mmの球形状のアルミナ製の研磨材23(23b)を10体積%、および研磨補助剤として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)を0.1g混合した流体22を全量で0.8L加えた。
そして、容器21に蓋をして金具で密閉し、テーブル81上に配置された容器回転機構83の上に固定した。なお、遠心回転のバランスをとるために、同程度の重量の容器21を用意して、容器21同士を対角線上に配置した。
さらに、テーブル81の回転(公転)速度を200rpmに設定し、容器21の回転(自転)速度を40rpmに設定して60分間研磨し、医療用管状体1を得た。
(比較例1)
内径D1が3.0mmのニッケルチタン合金製の管状部材11を用意して、容積が2.0Lであり断面形状が円形であって円柱形状の輪郭を有する筒型のポリウレタン製の容器21の中に、芯材41を使用せずに非拘束状態で設置した。それ以外は、実施例1と同様の方法で管状部材11の研磨を行った。
(比較例2)
内径D1が3.0mmのニッケルチタン合金製の管状部材11を用意した。また、ダイヤモンドを含有した算術平均粗さRaが0.63μm、最大高さ粗さRzが7.39μmの凹凸を備えた表面を全面に有する、外径D2が2.8mmのS45C製の芯材41を用意した。なお、カットオフ値0.25mm、評価長さ0.25mmで、レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-9510)を用いて、JIS B0601に基づき3回測定し、その平均値として算術平均粗さRaと最大高さ粗さRzをそれぞれ測定した。それ以外は、実施例1と同様の方法で管状部材11の研磨を行った。
(比較例3)
内径D1が3.0mmのニッケルチタン合金製の管状部材11を用意した。また、ダイヤモンドを含有した算術平均粗さRaが127.8μm、最大高さ粗さRzが829.1μmの凹凸を備えた表面を全面に有する、外径D2が2.8mmのS45C製の芯材41を用意した。なお、カットオフ値2.5mm、評価長さ8mmで、レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-9510)を用いて、JIS B0601に基づき3回測定し、その平均値として算術平均粗さRaと最大高さ粗さRzをそれぞれ測定した。それ以外は、実施例1と同様の方法で管状部材11の研磨を行った。
(結果)
実施例1、比較例1~3の管状部材11の研磨の結果、いずれの例においても研磨を行うことができた。研磨後の管状部材11の外観の観察をデジタルマイクロハイスコープ(キーエンス、VHX1000)を用いて、200倍の倍率で実施した。
実施例1では、管状部材11の外表面14と内表面15の両方を均一に研磨することができた。一方で、比較例1では、管状部材11の外表面14の研磨は行えているものの、内表面15はほとんど研磨できておらず、管状部材11のストラット12の一部に破断が生じていた。比較例2では、管状部材11の外表面14の研磨は行えており、管状部材11のストラット12に破損は見られなかったが、内表面15はほとんど研磨できていなかった。比較例3では、管状部材11の外表面14の研磨は行えており、内表面15も研磨されているものの研磨ムラが多く、管状部材11のストラット12の一部にキズが見られた。
これらのことから、本発明は、管状部材の研磨において、簡易な方法および装置を用いて、短時間で効率よく、管状部材が破損することなく、研磨ムラを少なく均一に研磨を達成できる医療用管状体の製造方法および製造装置であるといえる。