JP2005538790A - 粗表面を有するステント及びその製造 - Google Patents

Abstract

外側表面の少なくとも一部が粗表面化され、該表面に薬剤又は治療剤が適用されたステントを提供する。本発明によって、低コストで製造することができ、更に血栓の生成や狭窄を防止することができる向上したステントが得られる。

Description

発明の詳細な説明

本発明は、一般に、患者の体内の血管又は管腔内部（endoluminal）の位置において埋め込み又は展開させて、その位置において管腔を開いた状態又は閉塞のない状態に保つステント、並びに、特にそのようなステントの改良に関する。

第１に、ステントは患者の管腔内部に配置され及び拡張される種々の用途に幅広く用いられている。これらのステントは、冠状動脈又はその他の血管系（脈管構造系（vasculature))内で、並びに、その他の体の通路及び導管の中で尿路系、胆管系及び腸管系の中で用いることができる。

一般に、ステントは円筒形状部材であって、縮小した直径から拡張した直径へ拡開することができる。そのようなステントは、典型的に、ステントの直径を収縮させた状態でバルーンカテーテルに装着されている。ステント表面のバリ及びシャープな角部によってバルーンが損傷を受けることを防止するため、及び血栓の生成を防止するため、ステントは高度に研磨されている。このことは、例えば、表面をサンドブラスト処理して欠陥部分を取り除き、及びその後ステントを研磨すること等によって行われており、それによって滑らかな表面が得られている。残念ながら、バルーンカテーテルに装着されたステントは、高度に研磨された表面のために、体の脈管を通して予め選択された部位への案内する際に膨らんでいないバルーンから外れてしまうことがある。更に、血栓の生成を防止するために用いられる研磨され及び滑らかな表面は、ステントに内皮細胞が食い込み難いため、再狭窄を引き起こし得るという問題点を有している。

従来技術において、内側表面がサンドブラスト処理され、バルーン上におけるステント保持の向上が図られたステントがある。

米国特許（ＵＳ-Ａ）第６２５４６３１号（Ｂ１）には、滑らかな表面仕上げが達成されるように、外側表面が研磨されたステントが開示されている。粗い表面仕上げを有する内側表面は、ステントとバルーンとの間の摩擦力を向上させるため、外側表面の表面仕上げよりも粗くなっている。

更に、米国特許（ＵＳ-Ａ）第６２１７６０７号（Ｂ１）には、貴金属の第１の層が設けられたステントが開示されている。更に、セラミックのような金属（ceramic like metal）、例えば、イリジウム酸化物又はチタニウムニトレートからなる最も外側の第２の層が設けられている。第２の層は、脈管の中を通るステント供給システムを進行させる間、バルーン上での向上した摩擦係数及び保持を提供するために、粗い表面を有して形成されている。

ＷＯ９９／０７３０８には、ステント支持構造の一部が、治療剤及び薬剤を支持するためのキャリヤとして用いることができる、ポリマー製で薄い可撓性の被覆によって包囲されたステントが開示されている。更に、その支持構造は、好ましくは薄い可撓性の被覆によって包囲されていない部分のみが、多孔質の外側表面を形成するように更に処理されている。そのような多孔質の外側表面（porous exterior surface）は、血栓の生成を減らす一方で、組織の成長を促進することによって、支持構造の露出する部分、例えば遠位端及び近位端の生体適合性をより向上させることができる。

従来技術におけるそのようなステントは、製造が困難で（製造に手が掛かり）、高コストであるという問題点を有している。

本発明の目的は、低コストにて製造することができ、更に血栓の生成及び狭窄を防止することができる向上したステントを提供することである。
この目的は、本願の特許請求の範囲に記載する特徴によって達成することができる。

本発明によれば、少なくとも予め決められた程度で粗表面化された外側表面部分を有するステントが提供され、その表面に薬剤又は治療剤を適用することができる。

このことによって、本発明のステントには、更なる薬剤デポジット部（drug depost）、例えば、薬剤又は治療剤を保持するのに好適なポリマー層を設ける必要がないという利点がもたらされる。薬剤は粗表面に直接的に適用することができ、並びに、ステントを内腔の所望の位置に配置した後で所定の時間にて薬剤を放出することができる。更に、滑らかな表面よりも粗表面化した外側表面に対して細胞がより円滑に付着し、それによって内皮細胞の成長が促進されるため、そのような粗表面化した外側表面によってステント内再狭窄（in-stent restenosis）が低減する。脈管内膜細胞は粗表面上で成長して、粗表面に付着することができ、そこでは血管又は内腔の内皮細胞化（endotherialization）が促進される。内皮細胞層は非常に滑らかであって、従って、血栓の生成及び狭窄を防止することができる。

好ましい態様では、薬剤、例えばタクロリムス（Tacrolimus）を噴霧によってその粗表面に適用する。このことは、薬剤の適用を、効果的、簡単及び低コストで行うという利点を有する。

本発明の更に好ましい態様において、欠陥、例えばバリなどは、ステントの表面の少なくとも一部を粗表面化する前に除去される。このことによって、表面をより一様なように粗くして、より良好な流体力学的特性をもたらすことができるという利点も得られる。このようにして、表面における乱流（turbulences）がより減少し、その結果として狭窄の程度を減らすことができる。

本発明の好ましい態様では、表面はサンドブラスト処理によって所定の程度まで粗表面化（又は粗く(roughened))される。更に、サンドブラスト処理によって、疲労挙動の向上がもたらされる。更に、ステントの耐久性及び表面結合性も向上させることができる。粗い表面によって、薬剤又は治療剤を取り付ける（又は配置する）ために向上した表面領域ももたらされる。更に、より薄い肉厚で、より高い半径方向の力を有し、従ってより少ない材料からなるステントを達成することができ、これは再狭窄の低減ももたらされる。表面のサンドブラスト処理はより良好に制御及び製造することができ、更に、より均一で外傷の程度がより低い表面（trauma less surface）を達成することができる。

更に、コランダムをサンドブラスト処理に用いることによって、一般的なサンドブラスト処理とは技術的に異なる表面をもたらすことができる。バリを除去するためのサンドブラスト処理と比べて、この仕上げサンドブラスト処理は、使用すべきエネルギー及び／又は時間がより少なくて済むという利点を有する。更に、サンドブラスト処理した表面は「キャビティ（cavities）」に関してより小さな深さを有している。更に、そのようなステントの化学的挙動は、一般的に知られている電解研磨された（electropolished）ステントとは異なっている。サンドブラスト粒子が表面に入り込むために、表面の化学的特性（又は界面化学（surface chemistry))は異なるものとなっている。迅速に再不活性化（又は再不動態化（repassivated))された表面は、平衡状態で不活性化された表面よりも、より化学的に安定な不活性化層（passive layers）をもたらす。

表面をブラスト処理する際に、得られる表面格子欠陥（例えば、空孔欠陥（vacancy)、転位（dislocation))並びに更に可能性のある相転位（phase transitions）によって、表面エネルギーの向上がもたらされ、従って化学的により反応性である表面がもたらされる。このことによって、平衡状態よりも、より速い化学的反応及び／又は追加の化学反応がもたらされ得る。

更に好ましい態様において、ステントは、表面を所望の程度まで粗表面化した後、アニーリング（焼きなまし（annealing))に付されて、より可撓性を有するものとされる。

図１〜１４に示す本発明のステントの態様例では、コランダムを用いて、表面全体、即ち、外側表面、内側表面及び側方表面をサンドブラスト処理している。本発明は、そのような態様例に限定されないことは明らかであり、表面の一部のみを粗表面化する態様も本発明に含まれる。

図１５〜１８では、ステントのサンプルの含量及び放出について調べている。この点に関して、通常の様にして製造したステントを、本発明に従って更に処理したステントと対比している。図に示す例に基づいて、本発明のステントの向上した特性を示すことができる。

図１は、本発明のステントのサンドブラスト処理した外側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図２は、本発明のステントのサンドブラスト処理した外側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図３は、本発明のステントのサンドブラスト処理した外側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図４は、本発明のステントのサンドブラスト処理した外側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図５は、本発明のステントのサンドブラスト処理した外側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図６は、本発明のステントのサンドブラスト処理した外側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図７は、本発明のステントのサンドブラスト処理した外側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図８は、本発明のステントのサンドブラスト処理した内側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図９は、本発明のステントのサンドブラスト処理した内側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図１０は、本発明のステントのサンドブラスト処理した内側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図１１は、本発明のステントのサンドブラスト処理した内側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図１２は、本発明のステントのサンドブラスト処理した内側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図１３は、本発明のステントのサンドブラスト処理した内側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図１４は、本発明のステントのサンドブラスト処理した内側表面又は側方表面の拡大した写真である。 図１５は、表面に適用された薬剤の含有及び放出を調べるために用いたステントのサンプルのリストを含む表１を示している。 図１６は、そこに記載する量に関するいくつかのサンプルの結果を示す表２及び３を示している。 図１７は、薬剤タクロリムスの放出に関して調べたサンプルを示す表４及び５を示している。 図１８は、時間との関係でのサンプルの薬剤タクロリムスの放出のダイヤグラムを示している。

Claims (20)

1. 体腔内に配置するためのステントであって、収縮した状態から拡張した状態へ拡張させることができ、
   ａ）外側表面、内側表面及び側方表面を有しており、
   ｂ）外側表面の少なくとも一部が所定の程度まで粗表面化されて、薬剤により被覆されていることを特徴とするステント。
2. 少なくとも一部が所定の程度まで粗表面化されている内側表面を有する請求項１記載のステント。
3. 少なくとも一部が所定の程度まで粗表面化されている側方表面を有する請求項１又は２記載のステント。
4. 外側表面及び／又は内側表面及び／又は側方表面が薬剤、好ましくはタクロリムスによって被覆されている請求項１〜３のいずれかに記載のステント。
5. 前記ステントはステンレス鋼を有する請求項１〜４のいずれかに記載のステント。
6. 請求項１〜５のいずれかに記載するステントを有してなり、チューブ状ステントを挿入するためのバルーンカテーテルデバイス。
7. 体腔内に配置するためのステントを製造する方法であって、
   ａ）前記ステントは外側表面、内側表面及び側方表面を有しており、収縮した状態から拡張した状態へ用いることができるチューブを形成する工程、
   ｂ）外側表面の少なくとも一部を所定の程度へ粗表面化する工程、
   ｃ）前記表面を薬剤により被覆する工程
   を有してなる方法。
8. 内側表面の少なくとも一部を所定の程度へ粗表面化する工程を含む請求項７記載の方法。
9. 側方表面の少なくとも一部を所定の程度へ粗表面化する工程を含む請求項７又は８記載の方法。
10. サンドブラスト処理によって表面を粗表面化する請求項７〜９のいずれかに記載の方法。
11. 前記工程ａ）の後で、
    ｄ）チューブの表面からシャープなエッジ及びバリ等の欠陥を除去する工程
    を更に含む請求項７〜１０のいずれかに記載の方法。
12. バーリングによって欠陥を除去する請求項１１記載の方法。
13. 電解研磨によって欠陥を除去する請求項１１又は１２記載の方法。
14. サンドブラスト処理によって欠陥を除去する請求項７〜１３のいずれかに記載の方法。
15. サンドブラスト処理に砂を用いる請求項１０〜１４のいずれかに記載の方法。
16. サンドブラスト処理にガラスビーズを用いる請求項１０〜１５のいずれかに記載の方法。
17. サンドブラスト処理にコランダムを用いる請求項１０〜１６のいずれかに記載の方法。
18. 薬剤がタクロリムスである請求項７〜１７のいずれかに記載の方法。
19. 粗表面に噴霧によって薬剤を適用する請求項７〜１８のいずれかに記載の方法。
20. チューブの焼きなましを行う請求項７〜１９のいずれかに記載の方法。
    

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