JP7265506B2 - アルミニウム合金クラッド材、熱交換器用部材および熱交換器の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、自動車用熱交換器は、ろう付熱処理によって各他部材と接合することが必要であることから、当該用途には犠牲材、芯材、ろう材からなるアルミニウム合金クラッド材が使用されることが多い。しかし、このような用途に使用される熱交換器は種々の形態をとり、また、複雑な構造を持つこともあり、例えば犠牲効果のあるフィンを配置することにより防食する場合がある。
特許文献1では、芯材にMgを含有することで強度を高めている。特許文献2では、犠牲材にSnを含有することで、犠牲陽極効果を高めている。
さらに、ろう付時にフラックスを多量に塗布する場合や、真空ろう付にてろう付を行う場合では、ろう付中に材料中のZnが蒸発することによりフィンの腐食形態が悪化し、フィンの早期消耗により犠牲陽極効果が無くなってしまう。
Mn:0.7~1.8%
Mnは強度を向上させる元素である。ただし、含有量が少ないと、所望の効果が十分に得られず、過大に含有すると製造性(鋳造性,圧延性)を悪化させる。これらの理由により、Mn含有量は上記範囲とする。同様の理由により、Mn含有量の下限は0.7%、上限は、1.6%とするのが望ましい。
Siは強度を向上させる元素である。ただし、Si含有量が少ないと、所望の効果が得られず、過大に含有すると融点が低下することで、ろう付熱処理時にフィンが座屈してしまいろう付性が低下する。これらの理由により、Siを含有する場合は、Si含有量は上記範囲内とする。同様の理由により、下限は0.3%、上限は1.1%とするのが望ましい。
Feは強度を向上させる元素である。ただし、含有量が過大であると、鋳造時に巨大金属間化合物が発生し製造性を悪化させ、耐食性も劣化する。また、下限については、鋳造時の原料に不純物として存在しているため、下限未満とすると製造コストが増大となる。これらの理由により、Fe含有量は上記範囲内とする。同様の理由により、下限を0.05%、上限を0.4%とするのが望ましい。
Znは、犠牲陽極効果を増大させるために含有させる。ただし、Zn含有量が少ないと、所望の効果が得られず、含有量が過大であると、腐食速度促進により早期に犠牲陽極効果が喪失する。同様の理由により、下限を1.0%、上限を2.5%とするのが望ましい。
芯材の両面には犠牲材が配置される。それぞれの面の犠牲材は同一の組成でもよく、また、以下の組成の範囲内において組成が異なるものであってもよい。
Mnは、強度向上のため含有させる。ただし、含有量が過大であると、製造性(鋳造性、圧延性)を劣化させる。さらに、犠牲材のMn含有量が芯材の含有量よりも過大となると、ろう付熱処理後に犠牲材と芯材に固溶しているMnの差が取れなくなり、犠牲材が残存したまま芯材まで腐食が生じ、腐食形態が悪化する。また、下限については、鋳造時の原料に不純物として存在しているため、下限未満とすると製造コストが増大となる。これらの理由により、Fe含有量は上記範囲内とする。なお、同様の理由により、Mn含有量は下限を0.005%、上限を0.5%とするのが望ましい。
Feは、強度向上のため含有させる。ただし、含有量が過大であると、鋳造時の巨大金属間化合物が生成することで製造性を悪化させ、耐食性も劣化させる。また、下限については、鋳造時の原料に不純物として存在しているため、下限未満とすると製造コストが増大となる。これらの理由により、Fe含有量は上記範囲に定める。なお、同様の理由により、Fe含有量は、上限を0.2%とするのが望ましい。
Znは、犠牲陽極効果を増加させる。ただし、含有量が過小であると所望の効果が得られず、孔食の発生や犠牲材が残存したまま芯材まで腐食が生じ、腐食形態が悪化する。一方、含有量が過大であると、腐食速度促進により早期に犠牲陽極効果が喪失する。さらに、フィレットの優先腐食が生じる。これらの理由によりZnの含有量は上記範囲に定める。
なお、同様の理由により、Zn含有量は下限を1.5%、上限を3.5%とするのが望ましい。
犠牲材のZn含有量が芯材のZn含有量よりも質量%で0.2%以上高い。
犠牲材のZn含有量を芯材のZn含有量よりも、0.2%以上高くすることで、犠牲材が優先的に腐食し、フィンの腐食形態が良化する。犠牲材のZn含有量が芯材のZn含有量よりも低い場合は、犠牲材が残存したまま芯材にも腐食が進行し、腐食形態の悪化が生じる。
ろう付熱処理時には、材料中の元素が拡散するため、犠牲材に添加されているZnが芯材に拡散してしまう。その場合、犠牲材と芯材の電位差が小さくなってしまい、腐食が板厚方向に進行しやすくなる。一方、Mnはろう付熱処理時ではほとんど拡散しないため、犠牲材と芯材の電位差が小さい場合でも、芯材のMn固溶量を犠牲材よりも高くすることで、犠牲材と芯材の界面近傍の電位差が大きくなり、犠牲材が優先的に腐食し、フィンの腐食形態が良化する。以上の理由により、Mn固溶量は上記範囲に定める。
ろう付熱処理としては、一例として室温から600℃まで20分間で昇温し、600℃で3分間保持する条件が挙げられる。以下も同様である。ただし、本発明としてはろう付条件が上記に限定されるものではない。
芯材のろう付熱処理後の電位が-720~-870mVの範囲
所定の電位を有することで犠牲陽極効果が得られる。電位が高すぎると、所望の効果が得られず、電位が低すぎると腐食速度促進により早期に犠牲陽極効果が喪失する。
上記電位差を有することで、フィンの腐食形態が良化する。電位差が過小であると、犠牲材が残存したまま芯材も腐食が生じ、腐食形態が悪化する。電位差が過大であると腐食速度促進により早期に犠牲陽極効果が喪失する。
本発明の組成を有する芯材用アルミニウム合金および犠牲材用アルミニウム合金を用意する。これら合金は、常法により製造することができ、その製法は特に限定されない。例えば、半連続鋳造によって製造することができる。
犠牲材用アルミニウム合金には、質量%で、Mn:0.005~0.7%、Fe:0.05~0.3%、Zn:1.0~4.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有する合金を用いる。
なお、組成の選定では、犠牲材のZn含有量が芯材のZn含有量も質量%で0.2%以上高いように設定するのが望ましい。
一般的に高温の熱処理を行うと金属間化合物の析出・成長が促進され、Mn固溶度は低くなり、逆に低温で熱処理を行うと金属間化合物の析出・成長が抑制されMn固溶度は高くなる。また、均質化処理により析出する金属間化合物を微細にすると、ろう付熱処理により析出物が再度溶融し、材料中に固溶するためろう付熱処理後のMn固溶量は増加する。一方、均質化処理により析出する金属間化合物を粗大にすると、ろう付熱処理中では化合物の一部は溶融するが、完全には溶融しないためろう付熱処理後のMn固溶量は減少する。
本発明では、芯材のMn固溶量が犠牲材のMn固溶量よりも質量%で0.2%以上高くすることでフィンの腐食形態が良化するため、均質化処理や熱間圧延、焼鈍温度条件を適切に組み合わせることでMn固溶量を制御する必要がある。
熱間圧延では、仕上げ温度を設定することができる。
通常熱間圧延は500℃前後の高温で負荷されるが、圧延終了後にコイル化され室温まで冷却される。この場合、熱間圧延の仕上げ温度により高温で保持される時間が変わるため、金属間化合物の析出挙動に影響を及ぼす。
本発明としては、クラッド材のクラッド率は特に限定されるものではないが、例えば犠牲材の片面の厚さ5~25%、芯材厚さ50~90%などが用いられる。
なお、上記では、芯材に直接犠牲材が重ね合わされるものとして説明したが、他の層が介在するものとしてもよい。
熱交換器用フィン材は、チューブなど、適宜の被ろう付部材とろう付接合される。
被ろう付部材の材質、形状などは本発明としては特に限定されるものではなく、適宜のアルミニウム材料を用いることが可能である。
ろう付熱処理後には、芯材のMn固溶量が犠牲材のMn固溶量も質量%で0.2%以上高くなっているのが望ましい。
なお、被防食部材である、ろう付相手部材の芯材の電位は一般的に用いられるAl-Mn系合金を考慮しているため、芯材の電位のみを規定している。
電位は、材料の組成および製造条件により調製する。
最終圧延後の板厚0.20mmの供試材にろう付熱処理を実施し、腐食試験に供する材料とした。
コルゲート加工された板厚0.20mmの供試材を、板厚0.3mmのブレージングシート(クラッド構成:ろう材(10%)/芯材(75%)/犠牲材(15%)、ろう材:JIS A4045合金、芯材:Al-1.0Mn-0.5Cu合金、犠牲材:JIS A7072合金)のろう材面に組み付けたものに、ろう付熱処理を実施した。
×;芯材の優先腐食が発生(芯材:板厚中央部のみが優先的に腐食)
〇;一部孔食が見られる(一部、犠牲材を溶け残して芯材が腐食)
〇〇;大部分が面状腐食であるが、極一部孔食が見られる。
〇〇〇;全面が面状腐食
×;ブレージングシートに貫通孔が発生。
〇;ブレージングシートに生じた腐食深さが板厚の半分(0.125mm)以上、貫通
未満
〇〇;ブレージングシートに生じた腐食深さが板厚の半分(0.125mm)未満
〇〇〇;ブレージングシートに生じた腐食深さが板厚の1/4(0.06mm)未満
5%NaCl溶液を酢酸によりpHを3.0に調整した溶液で、銀塩化銀電極を用いて、フィンの芯材および犠牲材の自然電位を測定した。
ろう付相当熱処理後の材料をJIS5号試験片形状にフライス加工し、引張試験により強度を測定した。
×;ろう付熱処理後の引張強さが90MPa未満
○;ろう付熱処理後の引張強さが90MPa以上、120MPa未満
○○;ろう付熱処理後の引張強さが120MPa以上
ろう付熱処理後のフィン材を10%NaOH溶液によりエッチングし、芯材および犠牲材のみサンプルを作製した。その後、フェノールにより芯材、および犠牲材をそれぞれ溶解し、得られた溶液をICP発光分光分析にかけることでMnの固溶量を測定した。
なお、本明細書では、課題、効果においてアウターフィンを代表的に用いて説明しているが、本発明がアウターフィンに限定されるものでなく、アウターフィン以外のフィンやその他の用途においても同様の効果を得ることができる。
2 芯材
3a 犠牲材
3b 犠牲材
4 熱交換器
5 フィン
6 チューブ
Claims (3)
- 芯材の両面に犠牲材が配置され、前記芯材の組成が質量%で、Mn:0.7~1.8%、Si:0.3~1.3%、Fe:0.05~0.7%、Zn:0.5~3.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、前記犠牲材の組成が質量%で、Mn:0.005~0.7%、Fe:0.05~0.3%、Zn:1.0~4.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなり、前記犠牲材のZn含有量が前記芯材のZn含有量よりも質量%で0.2%以上高く、前記芯材のろう付熱処理後の電位が-700~-870mVの範囲にあることを特徴とするアルミニウム合金クラッド材。
- 前記犠牲材と前記芯材の電位差(芯材電位-犠牲材電位)が、ろう付熱処理後に20~100mVであることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金クラッド材。
- 前記芯材のろう付熱処理後のMn固溶量が、前記犠牲材のMn固溶量よりも質量%で0.2%以上高いことを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム合金クラッド材。
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