JP7264961B2 - フラン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、HMFにおいては、酸化して得られる2,5-ジホルミルフランや5-ホルミルフラン-2-カルボン酸を、長鎖アミン類と反応させて界面活性剤とする方法、或いは、酸化して得られるフラン-2,5-ジカルボン酸や選択的水素化により得られる2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランを、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等の原料とする方法、或いは、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランを水素化分解して得られる2,5-ジメチルフランあるいはHMFから直接水素化および水素化分解をして得られる2,5-ジメチルフランをガソリンの代替物とする方法等が知られている。
また、HMFの精製方法は、複数の手法が報告されているが、HMFは水酸基とホルミル基が分子内に置換されているため、加熱等によって容易に重合するなどの反応が起こりやすい。そのため不純物があると蒸留などの手法が使えない。
また、特許文献3では、抽出によって精製する手法が記載されている。即ち、反応液を濾過して水に不溶の不純物が生成するが、これらは糖の分子間脱水による無水物や糖縮合物、更に生成したHMF同士の縮重合体、更にはHMF、糖、反応中間体、およびHMFが更に反応した生成物から得られると考えられる総称フミン質と思われ、これらを除去した後、HMFが両親媒性であることを利用して反応液に疎水性の溶媒を添加して、HMF純度が60%以上の比較的高選択的に得られたHMFの反応液からHMFを抽出して溶媒を留去後、HMFを含む抽出液に蒸留水またはイオン交換水または純水を加えて、更に疎水性溶媒を再度加えて抽出精製をする。この手法は、溶媒留去に減圧したり時間がかかったりすること、HMFがもともと比較的高い純度の反応液からでしか適応できず、更に最終的なHMFの純度は90%程度にまでしか向上できない。そのため純粋なHMFを得るには再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィーでの精製などの更なる操作が必要であることなど、一般的な有機化合物の精製法との差は無い。
しかし精製されたHMFを用いているため、原料となるHMFの価格からコスト的に不利である。
[1]糖類から5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを合成した後に得られる、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを含む溶液を用いてフラン誘導体を製造する方法であって、
前記5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを含む溶液を蒸留することなく、吸着剤により不純物を除去して得られた溶液を用いて、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの酸化反応又は還元反応によりフラン誘導体を製造する、フラン誘導体の製造方法。
[2]前記糖類が、セルロース、でんぷん、グルコース及びフルクトースから選ばれる少なくも1つである、[1]に記載のフラン誘導体の製造方法。
[3]前記吸着剤が、酸化マンガン、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、及びゼオライトから選ばれる少なくとも1つである、[1]又は[2]に記載のフラン誘導体の製造方法。
[4]5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの酸化反応により、2,5-ジホルミルフランを生成させる、[1]~[3]のいずれかに記載のフラン誘導体の製造方法。
[5]酸素を酸化剤とし、触媒としてルテニウム担持アルミナを用いる、[4]に記載のフラン誘導体の製造方法。
[6]二酸化マンガンを酸化剤として用いる、[4]に記載のフラン誘導体の製造方法。
[7]5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの還元反応により、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランを生成させる、[1]~[3]のいずれかに記載のフラン誘導体の製造方法。
[8]5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの還元反応により、2,5-ジメチルフランを生成させる、[1]~[3]のいずれかに記載のフラン誘導体の製造方法。
フルフラールは、水酸基を有しないので、酸化反応には進まないが、本発明の方法によれば、フミン質などの不純物が除去されるため、粗HMF中に含まれる粗フルフラールも、精製されたフルフラールと同じように還元反応に用いることができる。
転化率は、下記の通りの手法で求めた。
合成した反応液で各粗HMF液に含まれるHMFを、液体クロマトグラフィーを用いてそのピーク面積から予め作成していた検量線を用いてHMFの濃度を求めた後、溶液に含まれる全HMFのモル数を求めた。次に反応後の溶液から、同様に液体クロマトグラフィーを用いてHMFの濃度を求め、反応後の溶液に残ったHMFのモル数を求め、用いたHMFのモル数に対する残ったHMFのモル数の百分率を回収率とした。最後に100%から回収率の差を転化率とした。
転化率(%)=100(%)-回収率(%)
収率は、下記の通りの手法で求めた。
反応液に残った目的物のモル数を液体クロマトグラフィーから求め、用いたHMFのモル数に対する得られた目的物のモル数の百分率を収率とした。
収率(%)=目的物のモル数/用いたHMFのモル数×100(%)
選択率は、HMFの転化率に対する目的物の収率の百分率とした。
選択率(%)=目的物の収率/HMFの転化率×100(%)
グルコース(0.5mol/L)の水-ブタノール混合液(ブタノール5%含有)を流通式で反応させて粗HMF溶液(HMF選択率30%、HMF含有濃度0.1~0.2M、400mL)を得た。得られた溶液に食塩で塩析を行い濾別でフミン質を除去した。濾液に酢酸エチルを400mL加えHMFを抽出した。抽出率は90%であった。また、この抽出液のガスクロマトグラフィーで測定したHMF純度は、30%であった。
ガスクロマトグラフィーで測定したHMF純度は、活性炭又はセライトを用いた場合を除き、60~80%程度に向上した。その結果、二酸化マンガン、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ゼオライトが良好な結果を示すことが分かった。
以下の表に、結果を示す。
アルミナで不純物を除去した粗HMFを含む酢酸エチル溶液から溶媒を留去した後に得られた粗HMF(2.0g)を反応容器に入れ、酸化剤として二酸化マンガンを加えて、ジクロロメタン溶液中、酸化反応を行った。反応後、反応溶液を濾過した。淡黄色の濾液を溶媒留去したところ、淡黄色の固体が得られた。得られた固体は2,5-ジホルミルフランで純度は93%であった。更に再結晶を行うことで、白色の2,5-ジホルミルフラン(純度99%以上)が得られた。HMFから2,5-ジホルミルフランの収率は99%以上で、不純物を除去することによって、その後の反応が精製したHMFと同等であることが分かった。
アルミナで不純物を除去した粗HMFを含む酢酸エチル溶液から溶媒を留去した後に得られた粗HMF(0.28g)を反応容器に入れ、トルエン(5mL)を加え、触媒として5wt%ルテニウム担持アルミナを加えて懸濁させた。該反応容器に、酸素ガスを充填したガス採集袋を取り付け、アスピレーターを用いて反応容器内部を酸素置換した。反応液を強く撹拌しながら80℃で42時間反応させた後、ろ過により触媒を除去し、母液を減圧留去したところ、淡黄色の固体が得られた。得られた生成物を分析した結果、原料は完全に消失し目的の2,5-ジホルミルフランの収率は99%以上であった。
なお、アルミナに代えて、酸化マンガン、シリカ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、活性炭、又はゼオライトで不純物を除去した粗HMFを用いて、同じ条件で酸化反応を試みたところ、活性炭とゼオライトで除去した場合以外は、全て目的の2,5-ジホルミルフランの収率は99%以上であった(上記[表1]参照)。
アルミナで不純物を除去した粗HMFを含む酢酸エチル溶液から溶媒を留去した後に得られた粗HMF100mgを反応容器に入れ、水2mLを加え、触媒として5wt%白金担持メソポーラスシリカを加えて懸濁させた。水素ガスで反応容器内を0.8MPaまで加圧した後、35℃で2時間反応させた。反応後、濾過により触媒を除去し、濾液を減圧留去し、クロマトグラフィーで得られた成分を分析したところ、転化率99%以上で、下記の式で表される2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランが選択率98%、収率98%で得られることが分かった。
実施例4と同様の条件で、アルミナを用いて不純物を除去した粗HMF100mgを用いて、触媒として5wt%パラジウム担持カーボンを反応容器に入れ、水1mLを加えた後、水素ガスで反応容器内を1MPaまで加圧した後、二酸化炭素を10MPa加えて、80℃で2時間反応させた。反応後、濾過により触媒を除去し、濾液をそのままクロマトグラフィーで得られた成分を分析したところ、転化率99%以上で、2,5-ジメチルフランが99%以上得られた。
試薬会社から購入したHMF(アルドリッチ社、純度98%、100mg)に、酸化剤として二酸化マンガンを加えてジクロロメタン溶液中、酸化反応を行った。反応後、反応液を濾別して濾液を溶媒留去した結果、淡黄色の固体が得られた。得られた固体は2,5-ジホルミルフランで、純度は95%であった。HMFから2,5-ジホルミルフランの収率は99%以上であった。
試薬会社から購入したHMF(アルドリッチ社、純度98%、98mg)にトルエン(5mL)を加え、触媒として5wt%ルテニウム担持アルミナを加え懸濁させた。酸素ガスを充填したガス採集袋を取り付け、アスピレーターを用いて反応容器内部を酸素置換した。反応液を強く撹拌しながら80℃で24時間反応させた後、ろ過により触媒を除去し、母液を減圧留去した。得られた生成物を分析した結果、原料は完全に消失し目的の2,5-ジホルミルフランの収率は98%であった。
アルミナ等の吸着剤を入れずに得たHMF溶液を濃縮して冷蔵庫(10℃)で保管していたところ、時間経過に従ってHMFが消失し、1ヶ月後は30%程度あったHMFはほぼ消失したため、酸化反応を行うことができなかった。なお、室温(28℃)では、45%あったHMFは2日後に消失した。
Claims (7)
- (1)糖類から5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを合成する工程、
(2)前記(1)の工程で得られる5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドを含む溶液を蒸留することなく、酸化マンガン、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、及びゼオライトから選ばれる少なくとも1つの吸着剤により不純物を除去する工程、及び
(3)前記(2)の工程で得られる溶液を用いて、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの酸化反応又は還元反応によりフラン誘導体を製造する工程、
を含むフラン誘導体の製造方法。 - 前記糖類が、セルロース、でんぷん、グルコース及びフルクトースから選ばれる少なくも1つである、請求項1に記載のフラン誘導体の製造方法。
- 5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの酸化反応により、2,5-ジホルミルフランを生成させる、請求項1又は2に記載のフラン誘導体の製造方法。
- 酸素を酸化剤とし、触媒としてルテニウム担持アルミナを用いる、請求項3に記載のフラン誘導体の製造方法。
- 二酸化マンガンを酸化剤として用いる、請求項3に記載のフラン誘導体の製造方法。
- 5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの還元反応により、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランを生成させる、請求項1又は2に記載のフラン誘導体の製造方法。
- 5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドの還元反応により、2,5-ジメチルフランを生成させる、請求項1又は2に記載のフラン誘導体の製造方法。
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