(第1実施形態)
図1~図10を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を車両用空調装置1に適用している。車両用空調装置1は、図1の全体構成図に示すように、冷凍サイクル装置10、室内空調ユニット30、高温側熱媒体回路40等を備えている。
冷凍サイクル装置10は、車両用空調装置1において、車室内の空調を行うために、車室内へ送風される送風空気を冷却する機能、および高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を加熱する機能を果たす。従って、冷凍サイクル装置10における冷却対象流体は、送風空気である。
さらに、冷凍サイクル装置10は、冷房モードの冷媒回路、直列除湿暖房モードの冷媒回路、並列除湿暖房モードの冷媒回路、および暖房モードの冷媒回路を切り替え可能に構成されている。
ここで、冷房モードは、送風空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。直列除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。並列除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
これに加えて、冷凍サイクル装置10は、冷房モードとして、通常の冷却能力で送風空気を冷却する第1冷房モード(すなわち、第1冷却モード)、および第1冷房モードよりも高い冷却能力で送風空気を冷却する第2冷房モード(すなわち、第2冷却モード)の運転を実行することができる。
また、冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用しており、圧縮機11から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともにサイクルを循環している。
冷凍サイクル装置10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、車両ボンネット内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置60から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水-冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。水-冷媒熱交換器12は、冷媒通路を流通する高圧冷媒と、水通路を流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱する加熱用熱交換器である。
水-冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1三方継手13aの流入口側が接続されている。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
さらに、冷凍サイクル装置10は、後述するように、第2~第4三方継手13b~13dを備えている。これらの第2~第4三方継手13b~13dの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
これらの第1~第4三方継手13a~13dは、3つの流入出口のうち1つを流入口として用い、2つを流出口として用いた際には、冷媒の流れを分岐する分岐部としての機能を果たす。また、3つの流入出口のうち2つを流入口として用い、1つを流出口として用いた際には、冷媒の流れを合流させる合流部としての機能を果たす。
第1三方継手13aの一方の流出口には、暖房用膨張弁14aの入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口には、バイパス通路22aを介して、第2三方継手13bの一方の流入口側が接続されている。バイパス通路22aには、除湿用開閉弁15aが配置されている。
除湿用開閉弁15aは、バイパス通路22aを開閉する電磁弁である。さらに、冷凍サイクル装置10は、後述するように、暖房用開閉弁15bを備えている。暖房用開閉弁15bの基本的構成は、除湿用開閉弁15aと同様である。
除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、冷媒通路を開閉することで、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、サイクルの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部である。除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、制御装置60から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
暖房用膨張弁14aは、少なくとも車室内の暖房を行う暖房モード時に、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量(質量流量)を調整するものである。暖房用膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
さらに、冷凍サイクル装置10は、後述するように、冷房用膨張弁14bを備えている。冷房用膨張弁14bの基本的構成は、暖房用膨張弁14aと同様である。暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
そして、この全開機能および全閉機能によって、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bは、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bは、冷媒回路切替部としての機能も兼ね備えている。暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bは、制御装置60から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
暖房用膨張弁14aの出口には、室外熱交換器16の冷媒流入ポート162d側が接続されている。室外熱交換器16は、暖房用膨張弁14aから流出した冷媒と図示しない冷却ファンにより送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器16は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、室外熱交換器16に走行風を当てることができる。
ここで、図2を用いて、室外熱交換器16の詳細構成について説明する。なお、図2における上下の各矢印は、室外熱交換器16を車両に搭載した状態における上下の各方向を示している。このことは、他の図面においても同様である。本実施形態の室外熱交換器16は、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器構造のものである。
室外熱交換器16は、複数のチューブ161、一対のタンク162、163、コルゲートフィン164、モジュレータ部165等を有している。これらの各構成部材は、いずれも伝熱性に優れる同種の金属(本実施形態では、アルミニウム合金)で形成されている。室外熱交換器16の各構成部材は、ろう付け接合により一体化されている。
複数のチューブ161は、内部に冷媒が流通する管状部材である。チューブ161は、断面形状が扁平形状に形成された扁平チューブである。チューブ161は、水平方向に延びる形状に形成されている。それぞれのチューブ161は、外表面の平坦面(いわゆる、扁平面)同士が互いに平行となるように、一定の間隔を開けて上下方向に積層配置されている。本実施形態の室外熱交換器16では、具体的に、40本のチューブ161が積層配置されている。
これにより、隣り合うチューブ161同士の間には、外気が流通する空気通路が形成される。そして、チューブ161を流通する冷媒と空気通路を流通する外気の熱交換が可能となっている。つまり、室外熱交換器16では、複数のチューブ161が積層配置されることによって、冷媒と外気とを熱交換させる熱交換部が形成されている。
コルゲートフィン164は、隣り合うチューブ161同士の間に形成された空気通路に配置されて、冷媒と外気との熱交換を促進する熱交換フィンである。なお、図2では、図示の明確化のため、チューブ161およびコルゲートフィン164の一部のみを図示しているが、チューブ161およびコルゲートフィン164は、熱交換部の全域に亘って配置されている。
一対のタンク162、163は、それぞれチューブ161の両端部に接続されている。一対のタンク162、163の内部には、複数のチューブ161に対して冷媒を分配するための分配空間、あるいは、複数のチューブ161から流出した冷媒を集合させるための集合空間が形成されている。
タンク162、163の内部には、それぞれ内部空間を区画するセパレータ162a、163aが配置されている。これにより、複数のチューブ161は、複数(本実施形態では、2つ)のパスに分けられている。ここで、タンクアンドチューブ型の熱交換器におけるパスとは、一方のタンク内に形成された同一の分配空間内の冷媒を他方のタンク内に形成された同一の集合空間へ向けて同一の方向へ流すチューブ群によって形成される冷媒流路と定義することができる。
本実施形態では、一方のタンク162の上下方向中央部にセパレータ162aが配置されている。このため、一方のタンク162の内部空間は上下方向に略同等の容積の2つの空間に仕切られている。また、他方のタンク163の上下方向中央部にセパレータ163aが配置されている。このため、他方のタンク163の内部空間は上下方向に略同等の容積の2つの空間に仕切られている。
一方のタンク162の下方側の空間を形成する部位には、暖房用膨張弁14a側から流出した冷媒を流入させる冷媒流入ポート162dが接続されている。従って、一方のタンク162内の下方側の空間は、一方のタンク162のうち下方側の空間を形成する部位に接続された複数(具体的には、20本)のチューブ161に対して冷媒を分配する第1分配空間162bとなる。
さらに、他方のタンク163の下方側の空間は、他方のタンク163のうち下方側の空間を形成する部位に接続された複数(具体的には、20本)のチューブ161から流出した冷媒を集合させる第1集合空間163bとなる。そして、第1分配空間162bから第1集合空間163bへ向けて冷媒を流すチューブ群によって、第1パスが形成される。
また、一方のタンク162の上方側の空間を形成する部位には、第3三方継手13cの流入口側へ冷媒を流出させる冷媒流出ポート162eが接続されている。従って、一方のタンク162の上方側の空間は、一方のタンク162のうち上方側の空間を形成する部位に接続された複数(具体的には、20本)のチューブ161から流出した冷媒を集合させる第2集合空間162cとなる。
さらに、他方のタンク163の上方側の空間は、他方のタンク163のうち上方側の空間を形成する部位に接続された複数(具体的には、20本)のチューブ161に対して冷媒を分配する第2分配空間163cとなる。そして、第2分配空間163cから第2集合空間162cへ向けて冷媒を流すチューブ群によって、第2パスが形成される。
また、他方のタンク163のうち第1集合空間163bが形成される部位には、第1集合空間163bから冷媒を流出させる冷媒出口163dが形成されている。冷媒出口163dは、他方のタンク163のうち第1集合空間163bが形成される部位の最上方側に配置されている。この冷媒出口163dには、モジュレータ部165の冷媒入口165a側が接続されている。
モジュレータ部165は、第2冷房モード時に、第1パスを流通する際に外気と熱交換した高圧冷媒の気液を分離して、分離された高圧液相冷媒をサイクル内の余剰冷媒として貯える高圧側貯液部である。モジュレータ部165は、中心軸が複数のチューブ161の積層方向(すなわち、上下方向)に延びる有底筒状に形成されている。モジュレータ部165の冷媒入口165aは、モジュレータ部165の最下方側に配置されている。
モジュレータ部165の冷媒出口165bには、他方のタンク163に形成された冷媒入口163e側が接続されている。冷媒入口163eは、他方のタンク163のうち第2分配空間163cを形成する部位に形成されている。さらに、冷媒入口163eは、モジュレータ部165から第2分配空間163cへ流入した冷媒が、下方側から上方側へ向かう速度成分を有するように下方側に位置付けられている。
以上の説明から明かなように、本実施形態の室外熱交換器16では、第1パスを構成する複数のチューブ161によって、暖房用膨張弁14aから流出した冷媒と外気とを熱交換させる第1熱交換部16aが構成されている。さらに、第2パスを構成する複数のチューブ161によって、モジュレータ部165から流出した冷媒と外気とを熱交換させる第2熱交換部16bが構成されている。
第1熱交換部16aは、第2熱交換部16bよりも上下方向下方側に配置されている。また、第1パスを構成するチューブ161の本数と第2パスを構成するチューブ161の本数が同じになっている。従って、第1熱交換部16aにて冷媒と外気とを熱交換させる熱交換面積と第2熱交換部16bにて冷媒と外気とを熱交換させる熱交換面積が同等となっている。
このように、第2熱交換部16bの熱交換面積が設定されているのは、第2冷房モード時に、第2熱交換部16bを高圧液相冷媒で満たすためである。換言すると、第2熱交換部16bの熱交換面積は、第2冷却モード時に、第2熱交換部16bが高圧液相冷媒で満たされるように設定されている。
また、他方のタンク163の冷媒出口163dは、第1集合空間163bが形成される部位の最上方側に配置されている。つまり、冷媒出口163dは、第1熱交換部16aの最上方側に配置されている。
ここで、冷媒出口163dが、第1熱交換部16aの最上方側に配置されているとは、冷媒出口163dが、第1熱交換部16aを構成する部材の上下方向最上部のみで開口しているという意味に限定されない。冷媒出口163dが、第1熱交換部16aを構成する部材の上下方向最上部あるいは上下方向最上部よりも僅かに低い位置を含むように開口して、実質的に最上部で開口していることを含む意味である。
同様に、モジュレータ部165の冷媒入口165aが、モジュレータ部165の最下方側に配置されているとは、冷媒入口165aが、モジュレータ部165の上下方向最下部のみで開口しているという意味に限定されない。冷媒入口165aが、モジュレータ部165の上下方向最下部あるいは上下方向最下部よりも僅かに位置を含むように開口して、実質的に最下部で開口していることを含む意味である。
室外熱交換器16の冷媒流出ポート162eには、図1に示すように、第3三方継手13cの流入口側が接続されている。第3三方継手13cの一方の流出口には、暖房用通路22bを介して、第4三方継手13dの一方の流入口側が接続されている。暖房用通路22bには、この冷媒通路を開閉する暖房用開閉弁15bが配置されている。
第3三方継手13cの他方の流出口には、第2三方継手13bの他方の流入口側が接続されている。第3三方継手13cの他方の流出口側と第2三方継手13bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、逆止弁17が配置されている。逆止弁17は、第3三方継手13c側から第2三方継手13b側へ冷媒が流れることを許容し、第2三方継手13b側から第3三方継手13c側へ冷媒が流れることを禁止する機能を果たす。
第2三方継手13bの流出口には、冷房用膨張弁14bの入口側が接続されている。冷房用膨張弁14bは、少なくとも冷房モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する減圧部である。
冷房用膨張弁14bの出口には、室内蒸発器18の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器18は、後述する室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内蒸発器18は、冷房用膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器18の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁20の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁20は、室内蒸発器18の着霜を抑制するために、室内蒸発器18における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に維持する機能を果たす。蒸発圧力調整弁20は、室内蒸発器18の出口側冷媒の圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構で構成されている。
これにより、蒸発圧力調整弁20は、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器18の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(本実施形態では、1℃)以上に維持している。蒸発圧力調整弁20の出口には、第4三方継手13dの他方の流入口側が接続されている。第4三方継手13dの流出口には、アキュムレータ21の冷媒入口212a側が接続されている。
アキュムレータ21は、冷房モード時等に、室内蒸発器18から流出した冷媒の気液を分離して、分離された低圧液相冷媒をサイクル内の余剰冷媒として貯える低圧側貯液部である。アキュムレータ21の気相冷媒出口213bには、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
ここで、図3を用いて、アキュムレータ21の詳細構成について説明する。アキュムレータ21は、冷媒容器211、入口側パイプ212、出口側パイプ213等を有している。
冷媒容器211は、有底円筒状に形成された金属製(本実施形態では、アルミニウム製)のものである。冷媒容器211は、その中心軸が上下方向に延びるように配置されている。冷媒容器211の内部には、冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を貯える貯留空間が形成されている。
入口側パイプ212は、冷媒容器211と同じ金属で形成された配管部材である。入口側パイプ212は、上下方向に延びる形状に形成されている。入口側パイプ212の一方の端部は、冷媒容器211の外部の上方側に配置されて、第4三方継手13dから流出した冷媒を流入させる冷媒入口212aを形成している。入口側パイプ212の他方の端部は、冷媒容器211の内部に配置されて、冷媒出口212bを形成している。
出口側パイプ213は、冷媒容器211と同じ金属で形成された配管部材である。出口側パイプ213は、U字状に湾曲した湾曲部を有する形状に形成されている。出口側パイプ213の一方の端部は、冷媒容器211の外部の上方側に配置されて、圧縮機11の吸入口側へ気相冷媒を流出させる気相冷媒出口213bを形成している。出口側パイプ213の他方の端部は、冷媒容器211の内部に配置されて、冷媒容器211の内部で分離された気相冷媒を流入させる気相冷媒入口213aを形成している。
より詳細には、気相冷媒入口213aは、アキュムレータ21内に液相冷媒が貯えられた際に、液面よりも上方側であって、さらに、入口側パイプ212の冷媒出口212bよりも上方側に配置されている。従って、気相冷媒入口213aから出口側パイプ213へ液相冷媒が流入してしまうことはない。
さらに、出口側パイプ213の湾曲部は、アキュムレータ21内に液相冷媒が貯えられた際に、液面よりも下方側に配置されている。湾曲部の最下部には、オイル戻し穴213cが形成されている。オイル戻し穴213cは、アキュムレータ21内に液相冷媒が貯えられた際に、冷凍機油が溶け込んだ液相冷媒を吸い込んで、圧縮機11へ吸入させるために形成された穴である。
次に、高温側熱媒体回路40について説明する。高温側熱媒体回路40は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側熱媒体回路40には、水-冷媒熱交換器12の水通路、高温側熱媒体ポンプ41、ヒータコア42等が配置されている。
高温側熱媒体ポンプ41は、高温側熱媒体を水-冷媒熱交換器12の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。高温側熱媒体ポンプ41は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
水-冷媒熱交換器12の水通路の出口には、ヒータコア42の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア42は、水-冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器18を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する熱交換器である。ヒータコア42は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。ヒータコア42の熱媒体出口には、高温側熱媒体ポンプ41の吸入口側が接続されている。
つまり、本実施形態では、水-冷媒熱交換器12および高温側熱媒体回路40の各構成機器によって、圧縮機11から吐出された冷媒を熱源として、送風空気を加熱する加熱部が構成されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内の空調のために適切な温度に調整された送風空気を車室内の適切な箇所へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
室内空調ユニット30は、図1に示すように、送風空気の空気通路を形成する空調ケース31内に、送風機32、室内蒸発器18、ヒータコア42等を収容したものである。空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
空調ケース31の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置33が配置されている。内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入するものである。内外気切替装置33の駆動用の電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、送風機32が配置されている。送風機32は、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風するものである。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器18、ヒータコア42が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器18は、ヒータコア42よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
空調ケース31内には、室内蒸発器18通過後の送風空気を、ヒータコア42を迂回させて流す冷風バイパス通路35が設けられている。さらに、空調ケース31内の室内蒸発器18の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア42の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
エアミックスドア34は、室内蒸発器18通過後の送風空気のうち、ヒータコア42側を通過する送風空気の風量と冷風バイパス通路35を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア34の駆動用の電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
空調ケース31内のヒータコア42および冷風バイパス通路35の送風空気流れ下流側には、混合空間が配置されている。混合空間は、ヒータコア42にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路35を通過して加熱されていない送風空気とを混合させる空間である。さらに、空調ケース31の送風空気流れ下流部には、混合空間にて混合されて温度調整された送風空気を、車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。
開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
従って、エアミックスドア34が、ヒータコア42を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。そして、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度が調整される。
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、フェイスドア、フットドア、およびデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドア、フットドア、およびデフロスタドアは、運転モードに応じて対応する開口穴を開閉する開閉部である。
これらのドアは、リンク機構等を介して、共通する駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。これらのドアの駆動用の電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、本実施形態の電気制御部の概要について説明する。制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器11、14a、14b、15a、15b、32、41等の作動を制御する。
また、制御装置60の入力側には、図4のブロック図に示すように、内気温センサ61、外気温センサ62、日射センサ63、第1~第4冷媒温度センサ64a~64d、蒸発器温度センサ64f、第1、第2冷媒圧力センサ65a、65b、高温側熱媒体温度センサ66a、空調風温度センサ69等が接続されている。そして、制御装置60には、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ61は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ62は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ63は、車室内へ照射される日射量Tsを検出する日射量検出部である。
第1冷媒温度センサ64aは、圧縮機11から吐出された冷媒の温度T1を検出する吐出冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ64bは、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の温度T2を検出する第2冷媒温度検出部である。第3冷媒温度センサ64cは、室外熱交換器16から流出した冷媒の温度T3を検出する第3冷媒温度検出部である。第4冷媒温度センサ64dは、室内蒸発器18から流出した冷媒の温度T4を検出する第4冷媒温度検出部である。
蒸発器温度センサ64fは、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。本実施形態の蒸発器温度センサ64fは、具体的に、室内蒸発器18の熱交換フィンの温度を検出している。
第1冷媒圧力センサ65aは、水-冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の圧力P1を検出する第1冷媒圧力検出部である。第2冷媒圧力センサ65bは、室内蒸発器18から流出した冷媒の圧力P2を検出する第2冷媒圧力検出部である。
高温側熱媒体温度センサ66aは、水-冷媒熱交換器12の水通路から流出した高温側熱媒体の温度である高温側熱媒体温度TWHを検出する高温側熱媒体温度検出部である。空調風温度センサ69は、混合空間から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
さらに、制御装置60の入力側には、図4に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70が接続され、この操作パネル70に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル70に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、室内蒸発器18で送風空気の冷却を行うことを要求するエアコンスイッチ、送風機32の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード切替スイッチ等がある。
なお、本実施形態の制御装置60は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、制御装置60のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を制御する構成は、吐出能力制御部60aを構成している。また、減圧部である冷房用膨張弁14bの作動(具体的には、冷房用膨張弁14bの絞り開度)を制御する構成は、減圧制御部60bを構成している。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態の車両用空調装置1は、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行うことができる。さらに、冷凍サイクル装置10は、車室内の空調のために、冷房モード、直列除湿暖房モード、並列除湿暖房モード、および暖房モードの運転を切り替える。
冷凍サイクル装置10の各運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、操作パネル70のオートスイッチが投入(ON)されて、自動制御運転が設定された際に実行される。
空調制御プログラムのメインルーチンでは、上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および各種空調操作スイッチからの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下数式F1に基づいて算出する。
具体的には、目標吹出温度TAOは、以下数式F1によって算出される。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×As+C…(F1)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度(車室内設定温度)、Trは内気温センサ61によって検出された内気温、Tamは外気温センサ62によって検出された外気温、Tsは日射センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
そして、操作パネル70のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている場合には、運転モードが冷房モードに切り替えられる。
また、操作パネル70のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが予め定めた除湿暖房基準温度βよりも高くなっている場合には、運転モードが直列除湿暖房モードに切り替えられる。
また、操作パネル70のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが除湿暖房基準温度β以下になっている場合には、運転モードが並列除湿暖房モードに切り替えられる。
また、エアコンスイッチの冷房スイッチが投入されていない場合には、運転モードが暖房モードに切り替えられる。
このため、冷房モードは、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に実行される。直列除湿暖房モードは、主に春季あるいは秋季に実行される。並列除湿暖房モードは、主に早春季あるいは晩秋季のように直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で送風空気を加熱する必要のある場合に実行される。暖房モードは、主に冬季の低外気温時に実行される。以下に各運転モードにおける作動を説明する。
(a)冷房モード
本実施形態の冷凍サイクル装置10では、前述の如く、冷房モードとして、第1冷房モードおよび第2冷房モードの2つの運転モードを実行することができる。
第1冷房モードと第2冷房モードとの切り替えは、図5に示す制御フローが実行されることによって行われる。図5に示す制御フローは、空調制御プログラムのメインルーチンのサブルーチンとして実行される。図5に示す制御フローは、メインルーチンにて、冷房モードが選択された際に、所定の周期毎に実行される。図5の制御フローの詳細については、後述する。
まず、第1冷房モードおよび第2冷房モードに共通する冷房モードの基本的な作動について説明する。冷房モードでは、制御装置60が、暖房用膨張弁14aを全開状態とし、冷房用膨張弁14bを減圧作用を発揮する絞り状態とする。また、制御装置60は、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。
従って、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12(→暖房用膨張弁14a)→室外熱交換器16→逆止弁17→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁20→アキュムレータ21→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置60は、出力側に接続された各種制御対象機器へ出力される制御信号等を適宜決定し、決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。
例えば、制御装置60は、蒸発器温度センサ64fによって検出された蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOに近づくように、圧縮機11の回転数Ncを調整するための制御信号を決定する。目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶された冷房モード用の制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標蒸発器温度TEOが上昇するように決定される。さらに、目標蒸発器温度TEOは、室内蒸発器18の着霜を抑制可能な範囲(具体的には、1℃以上)の値に決定される。
また、制御装置60は、予め定めた冷房モード用の水圧送能力を発揮するように、高温側熱媒体ポンプ41へ出力される制御電圧を決定する。
また、制御装置60は、目標吹出温度TAO、蒸発器温度Tefin、高温側熱媒体温度センサ66aによって検出された高温側熱媒体温度TWHに基づいて、エアミックスドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。この制御信号は、車室内へ吹き出される送風空気の温度が目標吹出温度TAOに近づくように決定される。
このため、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12および室外熱交換器16を凝縮器として機能させ、室内蒸発器18を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。従って、冷房モードでは、室内蒸発器18にて冷却された送風空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
次に、図5を用いて、第1冷房モードと第2冷房モードとの切り替えについて説明する。まず、ステップS10では、蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOに到達しているか否かが判定される。
ステップS10にて、蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOになっていると判定された場合は、ステップS30へ進み、ステップS30~S50に示される第1冷房モードの制御を行う。ステップS10にて、蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOになっていないと判定された場合、すなわち、蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOよりも高くなっている場合は、ステップS20へ進む。
ステップS20では、圧縮機11の回転数Ncが最大回転数NcMaxに到達しているか否かが判定される。最大回転数NcMaxとしては、圧縮機11の耐久性能から決定される最大回転数や、運転条件に応じて騒音抑制等のために決定される最大回転数を採用することができる。
ステップS20にて、圧縮機11の回転数Ncが最大回転数NcMaxになっていると判定された場合は、ステップS100へ進み、ステップS100~S140に示される第2冷房モードでの運転を行う。ステップS20にて、圧縮機11の回転数Ncが最大回転数NcMaxになっていないと判定された場合、すなわち、圧縮機11の回転数Ncが最大回転数NcMaxに到達していないと判定された場合は、ステップS30へ進み、第1冷房モードでの運転を行う。
ステップS30では、室外熱交換器16から流出して冷房用膨張弁14bへ流入する冷媒の過冷却度SCの目標値として、第1冷房モード用の目標過冷却度SCO1を決定して、ステップS40へ進む。目標過冷却度SCO1は、図5のステップS30の制御特性図に示す制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、外気温Tamに基づいて、サイクルの成績係数(COP)が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO1を決定する。
ステップS40では、過冷却度SCが目標過冷却度SCO1に近づくように、冷房用膨張弁14bの絞り開度の変化量ΔEVC1を決定して、ステップS50へ進む。過冷却度SCは、第3冷媒温度センサ64cによって検出された温度T3および第1冷媒圧力センサ65aによって検出された圧力P1を用いて算定される。
ステップS50では、冷房用膨張弁14bの絞り開度の変化量ΔEVCが決定されて、ステップS60へ進む。ステップS50では、変化量ΔEVCとして、ステップS40で決定された変化量ΔEVC1が採用される。
ステップS60では、冷房用膨張弁14bの前回の絞り開度EVCn-1にステップS70で決定された変化量ΔEVCが加算されて、今回の絞り開度EVCnが決定される。そして、今回の絞り開度EVCnとなるように、冷房用膨張弁14bへ出力される制御信号が決定されて、メインルーチンへ戻る。
一方、ステップS100では、過冷却度SCの目標値として、第2冷房モード用の目標過冷却度SCO2を決定して、ステップS110へ進む。目標過冷却度SCO2は、図5のステップS100の制御特性図に示す制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、ステップS30で決定される目標過冷却度SCO1に対して所定量(本実施形態では、10℃)を加算した値となるように、目標過冷却度SCO2を決定する。
ステップS110では、過冷却度SCが目標過冷却度SCO2に近づくように、冷房用膨張弁14bの絞り開度の変化量ΔEVC1を決定して、ステップS120へ進む。
ステップS120では、室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHの目標値として、第2冷房モード用の目標過熱度SHO2を決定して、ステップS130へ進む。本実施形態では、目標過熱度SHO2を、10℃に決定する。
ステップS130では、過熱度SHが目標過熱度SHO2に近づくように、冷房用膨張弁14bの絞り開度の変化量ΔEVC2を決定して、ステップS140へ進む。ステップS140では、冷房用膨張弁14bの絞り開度の変化量ΔEVCが決定されて、ステップS60へ進む。ステップS140では、変化量ΔEVCとして、ステップS110で決定された変化量ΔEVC1およびステップS130で決定された変化量ΔEVC2のうち、大きい方の値が採用される。
ここで、ステップS100で決定される目標過冷却度SCO2は、充分に高い値となるように設定されている。より詳細には、実際の過熱度SHが目標過熱度SHO2となるように冷房用膨張弁14bの絞り開度が決定されても、実際の過冷却度SCが目標過冷却度SCO2に到達しない程度に高い値となるように設定されている。
このため、ステップS110で決定された変化量ΔEVC1は、冷房用膨張弁14bの絞り開度を低下させるために負の値となり、ステップS130で決定された変化量ΔEVC2よりも小さい値となりやすい。従って、第2冷却モードのステップS70では、変化量ΔEVCとして、変化量ΔEVC2が採用されることが多い。
以上の説明から明かなように、ステップS30、S100は、冷房用膨張弁14bへ流入する冷媒の目標過冷却度SCO1、SCO2を決定する目標過冷却度決定部である。また、ステップS120は、室内蒸発器18の出口側冷媒の目標過熱度SHO2を決定する目標過熱度決定部である。
さらに、本実施形態では、ステップS10、S20に記載されているように、蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOになっておらず、かつ、圧縮機11の回転数Ncが最大回転数NcMaxになっている際に、室内蒸発器18における送風空気の冷却能力が不足していると判定される条件、すなわち冷却能力不足条件が成立したものとしている。
次に、図6~図10を用いて、第1冷房モードおよび第2冷房モードの詳細作動について説明する。図6~図8は、各運転モード時における室外熱交換器16内の液相冷媒の分布を模式的に表したものであり、液相冷媒が分布する領域を斜線ハッチングで模式的に示している。図9では、図6~図8に示す状態となる冷房用膨張弁14bの絞り開度を、それぞれA~Cで示している。図10では、第1冷房モード時の冷媒の状態の変化を破線で示し、第2冷房モード時の冷媒の状態の変化を太実線で示している。
まず、第1冷房モードでは、前述の如く、過冷却度SCが目標過冷却度SCO1に近づくように冷房用膨張弁14bの絞り開度が制御される。この絞り開度は、図9では、絞り開度Aで示される。
第1冷房モードでは、図6に示すように、室外熱交換器16の第1熱交換部16a、および第2熱交換部16bの冷媒流れ上流側の領域が、冷媒を凝縮させる凝縮部になる。さらに、第2熱交換部16bの冷媒流れ下流側の領域が、液相冷媒を過冷却する過冷却部になる。このため、サイクルの余剰冷媒は、図9に示すように、アキュムレータ21内に貯えられる。
従って、第1冷房モードでは、図10のモリエル線図の破線で示すように、圧縮機11が、アキュムレータ21から、冷凍機油が溶け込んだ液相冷媒を含む比較的乾き度の高い気液二相冷媒(図10のa1点)を吸入して圧縮する。圧縮機11から吐出された冷媒は、室外熱交換器16へ流入し、外気と熱交換して放熱する(図10のb1点→c1点)。この際、室外熱交換器16から流出した冷媒(図10のc1点)の過冷却度SCは、目標過冷却度SCO1に近づく。
室外熱交換器16から流出した冷媒は、冷房用膨張弁14bにて減圧される(図10のc1点→d1点)。冷房用膨張弁14bにて減圧された冷媒は、室内蒸発器18にて送風空気から吸熱して蒸発する(図10のd1点→a1点)。これにより、送風空気が冷却される。室内蒸発器18から流出した冷媒は、アキュムレータ21へ流入して気液分離される。
これにより、第1冷房モードの冷凍サイクル装置10では、サイクルのCOPが極大値になるように、送風空気を冷却する。
次に、冷却能力不足条件が成立して、第2冷房モードへ移行すると、過冷却度SCの目標値として、目標過冷却度SCO1よりも高い値に決定される目標過冷却度SCO2が採用される。このため、第1冷房モードよりも過冷却度SCを上昇させるために、冷房用膨張弁14bの絞り開度が減少する。図9では、絞り開度Aから絞り開度Bへ減少する。
これにより、図7に示すように、室外熱交換器16の第1熱交換部16aが凝縮部になる。さらに、第2熱交換部16bの全域が高圧液相冷媒で満たされて過冷却部になる。
また、図9に示すように、第1冷房モードよりも、アキュムレータ21内に貯えられた余剰冷媒が減少する。また、室外熱交換器16における冷媒凝縮圧力が上昇する。さらに、目標過冷却度SCO2は目標過冷却度SCO1に対して充分に高い値に設定されているので、実際の過冷却度SCは、目標過冷却度SCO2に到達していない。
第2冷房モードでは、過冷却度SCの目標値として、目標過冷却度SCO2が採用されるだけでなく、室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHの目標値として、目標過熱度SHO2(具体的には、10℃)が採用される。このため、冷房用膨張弁14bの絞り開度がさらに減少する。図9では、絞り開度Bから絞り開度Cへ減少する。
これにより、図8の斜線ハッチングで示すように、モジュレータ部165内も高圧液相冷媒で満たされる。つまり、アキュムレータ21内に貯えられていたサイクルの余剰冷媒が、モジュレータ部165内へ移動する。その結果、アキュムレータ21内の冷媒および室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHが、目標過熱度SHO2(具体的には、10℃)へ上昇する。
この際、アキュムレータ21内に貯えられていたサイクルの余剰冷媒が、モジュレータ部165内へ移動しても、凝縮部となる第1熱交換部16aの熱交換面積は縮小しない。このため、第2冷房モードでは、冷房用膨張弁14bの絞り開度が、絞り開度Bより減少しても、室外熱交換器16における冷媒凝縮圧力が上昇してしまうことはない。
従って、第2冷房モードでは、図10のモリエル線図の太実線に示すように、圧縮機11が、アキュムレータ21から、過熱度を有する気相冷媒(図10のa2点)を吸入して圧縮する。圧縮機11から吐出された冷媒は、室外熱交換器16にて、外気と熱交換して放熱する(図10のb2点→c2点)。そして、サイクルの余剰冷媒が高圧液相冷媒となってモジュレータ部165に貯えられる。
室外熱交換器16から流出した冷媒は、冷房用膨張弁14bにて減圧される(図10のc2点→d2点)。冷房用膨張弁14bにて減圧された冷媒は、室内蒸発器18にて送風空気から吸熱して蒸発する(図10のd2点→a2点)。これにより、送風空気が冷却される。この際、室内蒸発器18の出口側冷媒の過熱度SHは、目標過熱度SHO2に近づく。室内蒸発器18から流出した過熱度を有する冷媒は、アキュムレータ21へ流入する。
このため、第2冷房モードでは、図10に示すように、室内蒸発器18の出口側冷媒のエンタルピから室内蒸発器18の入口側冷媒のエンタルピを減算したエンタルピ差Δie2が、第1冷房モード時のエンタルピ差Δie1よりも増大する。つまり、第2冷房モードの冷凍サイクル装置10では、第1冷房モードよりも高い冷却能力で、送風空気を冷却することができる。
(b)直列除湿暖房モード
直列除湿暖房モードでは、制御装置60が、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置60は、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを閉じる。
従って、直列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→逆止弁17→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁20→アキュムレータ21→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置60は、冷房モードと同様に、出力側に接続された各種制御対象機器へ出力される制御信号等を適宜決定し、決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。
例えば、制御装置60は、空調風温度センサ69にて検出された送風空気温度TAVが、目標吹出温度TAOに近づくように、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bへ出力される制御信号を決定する。従って、直列除湿暖房モードでは、サイクルの余剰冷媒がアキュムレータ21内に貯えられる。
より具体的には、制御装置60は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度を減少させ、冷房用膨張弁14bの絞り開度を増加させるように制御信号を決定する。
このため、直列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、室内蒸発器18を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
さらに、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、室外熱交換器16を凝縮器として機能させ、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、室外熱交換器16を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
そして、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器16の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器16における冷媒の放熱量を減少させることができる。これにより、水-冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させて、ヒータコア42における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
また、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器16の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、水-冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させて、ヒータコア42における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
従って、直列除湿暖房モードでは、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。さらに、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bの絞り開度を調整することによって、水-冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を調整して、ヒータコア42における送風空気の加熱能力を調整することができる。
(c)並列除湿暖房モード
並列除湿暖房モードでは、制御装置60が、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを絞り状態とする。また、制御装置60は、除湿用開閉弁15aを開き、暖房用開閉弁15bを開く。
これにより、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→暖房用通路22b(暖房用開閉弁15b)→アキュムレータ21→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→バイパス通路22a(除湿用開閉弁15a)→冷房用膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁20→アキュムレータ21→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。すなわち、室外熱交換器16と室内蒸発器18が冷媒流れに対して並列的に接続される冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置60は、出力側に接続された各種制御対象機器へ出力される制御信号等を適宜決定し、決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。
例えば、制御装置60は、第1冷媒圧力センサ65aによって検出された圧力P1が、目標凝縮圧力PDOに近づくように、圧縮機11の回転数Ncを制御する制御信号を決定する。この制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標凝縮圧力PDOが上昇するように決定される。
また、制御装置60は、第1冷房モードと同様に、COPが極大値に近づくように、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bへ出力される制御信号を決定する。従って、並列除湿暖房モードでは、サイクルの余剰冷媒がアキュムレータ21内に貯えられる。
このため、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、室外熱交換器16および室内蒸発器18を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
従って、並列除湿暖房モードでは、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア42にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
さらに、蒸発圧力調整弁20の作用によって、室内蒸発器18の着霜を招くことなく、室外熱交換器16における冷媒の蒸発温度を、室内蒸発器18における冷媒の蒸発温度よりも低下させることができる。その結果、直列除湿暖房モード時よりも室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を増加させて、送風空気の加熱能力を増加させることができる。
(d)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60が、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とする。また、制御装置60は、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを開く。
これにより、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、圧縮機11→水-冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁14a→室外熱交換器16→暖房用通路22b(暖房用開閉弁15b)→アキュムレータ21→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置60は、並列除湿暖房モードと同様に、出力側に接続された各種制御対象機器へ出力される制御信号等を適宜決定し、決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。
例えば、制御装置60は、第1冷房モードと同様に、COPが極大値に近づくように、暖房用膨張弁14aへ出力される制御信号を決定する。従って、暖房モードでは、サイクルの余剰冷媒がアキュムレータ21内に貯えられる。
このため、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水-冷媒熱交換器12を凝縮器として機能させ、室外熱交換器16を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。従って、暖房モードでは、ヒータコア42にて加熱された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
以上の如く、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒回路を切り替えて各種運モードの運転を行うことができる。これにより、車両用空調装置1では車室内の快適な空調を実現することができる。
さらに、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、低圧側貯液部であるアキュムレータ21を備えている。従って、運転モードに応じて凝縮器として機能する熱交換器が変化しても、アキュムレータ21に余剰冷媒を確実に貯えることができる。
ところが、本実施形態の第1冷房モードのように、アキュムレータ21に余剰冷媒を貯える運転モードでは、室内蒸発器18にて発揮される送風空気の冷却能力を向上させにくい。その理由は、第1冷房モードでは、室内蒸発器18の出口側冷媒のエンタルピから室内蒸発器18の入口側冷媒のエンタルピを減算したエンタルピ差Δieを拡大させにくいからである。
より詳細には、第1冷房モードでは、室内蒸発器18の出口側冷媒が飽和気相冷媒に近づくので、室内蒸発器18の出口側冷媒のエンタルピを増加させることによって、エンタルピ差Δieを拡大させることは難しい。
さらに、本実施形態のように、オイル戻し穴21eが形成されたアキュムレータ21を備える冷凍サイクル装置10では、圧縮機11へ吸入される冷媒が、乾き度の高い気液二相冷媒となる。このため、室内蒸発器18の出口側冷媒が飽和気相冷媒よりもエンタルピの低い気液二相冷媒となってしまい、より一層、エンタルピ差Δieを拡大させることが難しい。
また、第1冷房モード時に、室外熱交換器16から流出する冷媒の過冷却度を増加させ、室内蒸発器18の入口側冷媒のエンタルピを低減させることによって、エンタルピ差Δieを拡大させる手段が考えられる。
しかし、室外熱交換器16から流出する冷媒の過冷却度を増加させると、室外熱交換器16における冷媒凝縮圧力が上昇するので、サイクル構成機器の耐久寿命に悪影響を与えてしまうおそれがある。そのため、第1冷房モードのように、アキュムレータ21に余剰冷媒を貯える運転モードでは、室内蒸発器18における冷却能力を向上させにくい。
これに対して、本実施形態の冷凍サイクル装置10の冷房モードでは、アキュムレータ21に余剰冷媒を貯える第1冷房モードから、モジュレータ部165に余剰冷媒を貯える第2冷房モードに切り替えることができる。
この第2冷房モードでは、図9、図10を用いて説明したように、室外熱交換器16における冷媒凝縮圧力を不必要に上昇させてしまうことなく、室外熱交換器16から流出する冷媒の過冷却度を増加させることができる。すなわち、室外熱交換器16における冷媒凝縮圧力を不必要に上昇させてしまうことなく、室内蒸発器18の入口側冷媒のエンタルピを低減させることができる。
さらに、第2冷房モードでは、サイクルの余剰冷媒がモジュレータ部165内に貯えられているので、アキュムレータ21へ過熱度を有する低圧気相冷媒を流入させることができる。従って、室内蒸発器18の入口側冷媒のエンタルピを増加させることができる。
その結果、第2冷房モードでは、第1冷房モードよりもエンタルピ差Δieを拡大させて、室内蒸発器18における冷却能力を向上させることができる。すなわち、本実施形態の冷凍サイクル装置10によれば、室内蒸発器18における冷却能力を充分に向上させることができる。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、図5のステップS10、S20で説明した冷却能力不足条件が成立した際に、目標過冷却度を上昇させる。これによれば、室内蒸発器18における送風空気の冷却能力が不足した際に、確実に第1冷房モードから第2冷房モードへ移行させて、冷却能力を向上させることができる。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、第2冷房モードへ移行した際に、目標過熱度を上昇させる。これによれば、第2冷房モードへ移行した際に、室内蒸発器18の出口側冷媒のエンタルピを低減させることができるので、より一層、冷却能力を向上させることができる。
また、本実施形態の室外熱交換器16では、第2冷房モードへ移行した際に、第2熱交換部16bが高圧液相冷媒で満たされるように、第2熱交換部16bの熱交換面積が設定されている。これによれば、第2冷房モード時に、第2熱交換部16bの全域を過冷却部として利用することができ、室外熱交換器16から流出して冷房用膨張弁14bへ流入する冷媒の過冷却度SCを目標過冷却度SCO2に近づけることができる。
さらに、本発明者らの検討によれば、室外熱交換器16の体格を、車両用空調装置に適用される一般的な冷凍サイクル装置の室外熱交換器(いわゆる、コンデンサ)と同等とした場合、第1熱交換部16aの熱交換面積と第2熱交換部16bの熱交換面積と同等に設定することで、第2冷房モード時に過冷却度SCを確実に増加させて目標過冷却度SCO2に近づけることができることが確認されている。
また、本実施形態の室外熱交換器16では、第1熱交換部16aの冷媒出口163dが、第1熱交換部16aの最上方側に配置されている。これによれば、モジュレータ部165の容積が不必要に拡大してしまうことを抑制することができる。
さらに、モジュレータ部165の冷媒入口165aが、モジュレータ部165の最下方側に配置されている。これによれば、第1熱交換部16aから流出したモジュレータ部165へ流入する際に、冷媒が流れ淀んでしまう領域が形成されにくく、モジュレータ部165内の底部側に、液相冷媒に溶け込んだ冷凍機油が滞留してしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態の室外熱交換器16では、第1熱交換部16aを、第2熱交換部16bよりも下方側に配置している。そして、モジュレータ部165の内部空間から他方のタンク163の第2分配空間163cへ流入した冷媒が、下方側から上方側へ向かう速度成分を有するようにしている。
これによれば、暖房モード時のように、室外熱交換器16を蒸発器として用いる際に、第2分配空間163cへ流入した冷媒が、重力の作用によって第2分配空間163cの下方側に偏在してしまうことを抑制することができる。従って、第2パスを構成するそれぞれのチューブ161へ均等な流量の冷媒を分配することができ、第2熱交換部16bにて、均等に冷媒を蒸発させることができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図11に示すように、室外熱交換器16の構成を変更した例を説明する。本実施形態の室外熱交換器16では、第2熱交換部16bが、第1熱交換部16aよりも上下方向下方側に配置されている。
より具体的には、本実施形態の室外熱交換器16では、一方のタンク162の上方側の空間を形成する部位に、冷媒流入ポート162dが接続されている。また、一方のタンク162の下方側の空間を形成する部位に、冷媒流出ポート162eが接続されている。
従って、一方のタンク162の上方側に、第1分配空間162bが形成される。さらに、一方のタンク162の下方側に、第2集合空間162cが形成される。また、他方のタンク163の上方側に、第1集合空間163bが形成される。さらに、他方のタンク163の下方側に、第2分配空間163cが形成される。
つまり、本実施形態の室外熱交換器16では、第1実施形態の室外熱交換器16に対して、冷媒の流れ方向が逆転する。
ここで、第1実施形態で説明したように、室外熱交換器16では、第1熱交換部16aの熱交換面積と第2熱交換部16bの熱交換面積が同等となっている。このため、本実施形態においても、第2熱交換部16bの熱交換面積は、第2冷却モード時に、第2熱交換部16bが高圧液相冷媒で満たされるように設定されていることになる。
その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施形態の冷凍サイクル装置10においても、室内蒸発器18における冷却能力を充分に向上させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を、車両用空調装置1適用した例を説明したが、冷凍サイクル装置10の適用はこれに限定されない。車両用に限定されることなく、定置型の空調装置、冷蔵装置等に適用してもよい。
(2)冷凍サイクル装置の各構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機11として、電動圧縮機を採用した例を説明したが、内燃機関を有する車両に適用する場合等には、エンジン駆動式の圧縮機を採用してもよい。さらに、エンジン駆動式の圧縮機としては、吐出容量を変化させることによって冷媒吐出能力を調整可能に構成された可変容量型圧縮機を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、暖房用膨張弁14aおよび冷房用膨張弁14bとして、全閉機能を有するものを採用した例を説明したが、全閉機能を有しない電気式膨張弁と開閉弁とを直列的に接続したものを採用してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、複数の運転モードに切り替え可能な冷凍サイクル装置10について説明したが、冷凍サイクル装置10の運転モードの切り替えはこれに限定されない。少なくとも、第1冷房モードと第2冷房モードとの切り替えを実行可能であれば、室内蒸発器18にて発揮される冷却能力を充分に向上させることができる。
(3)上述の実施形態では、水-冷媒熱交換器12および高温側熱媒体回路40の各構成機器によって構成された加熱部を採用したが、加熱部はこれに限定されない。例えば、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と送風空気とを直接的に熱交換させる室内凝縮器を採用し、室内凝縮器をヒータコア42と同様に空調ケース31内に配置してもよい。
(4)上述の実施形態では、蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOになっており、かつ、圧縮機11の回転数Ncが最大回転数NcMaxになっている際に、冷却能力不足条件が成立したと判定しているが、冷却能力不足条件はこれに限定されない。例えば、冷房モード時に、空調風温度センサ69によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOより高くなっている際に、冷却能力不足条件が成立したと判定してもよい。