本発明者らは上記課題について鋭意検討し、互いに非相溶な2種類の液体を用いて、上記2種類の液体のうち一方の液体(第1の液体)が付与されてなる液層(以下、単に「第1液層」ともいう。)が形成された基材表面に、上記2種類の液体のうち他方の液体(第2の液体)の液滴をインクジェット法で付与して、上記付与された第2の液体の液滴と上記第1の液体とが分離して存在する液層(以下、単に「分離液層」ともいう。)を上記基材表面に接して形成し、その後、上記第1の液体および第2の液体の一方の液体を選択的に硬化させることで、裾の広がりが抑制されたパターンが形成され得ることを見出し、もって本発明を完成させた。
図1は、本発明の一実施形態に関するパターン形成法によりパターンが形成される様子を示す模式図である。上記第1の液体が付与されてなる第1液層に上記第2の液体の液滴をインクジェット法で付与する(図1A参照)。このとき、第1の液体と第2の液体とは相溶せず、また、第2の液体の比重は第1の液体の比重よりも大きいため、付与された第2の液体は第1液層の中に入り込み、基材表面に到達する。これにより、第1の液体と第2の液体とが分離した分離液層が、基材表面に接して形成される(図1B参照)。上記分離液層では、付与された第2の液体の液滴と第1の液体との界面が、第1の液体と第2の液体との間の表面張力の差に応じて、より直線的な形状となっている。そのため、上記付与された第2の液体の液滴は、裾の広がりがより抑制されて、その端部(基材表面から離れる方向に延在する液滴の端面)が基材表面に対してより垂直に近い形状となっている。
この状態で、第1の液体および第2の液体の一方の液体を選択的に硬化し、その後、他方の液体が除去されると、上記分離液層における第2の液体の液滴の形状に基づいた、裾の広がりがより抑制されて、その端部が基材表面に対してより垂直に近い形状の、パターンが形成される。
このとき、第2の液体を選択的に硬化させると、第1の液体が除去された後には、第2の液体が硬化してなる、分離液層中の第2の液体の形状に基づく凸状のパターンが形成される(図1C参照)。一方で、このとき、第1の液体を選択的に硬化させると、第2の液体が除去された後には、第1の液体が硬化してなる硬化物(硬化膜)の一部が、分離液層中の第2の液体の形状に応じて欠落した形状の流路状のパターンが形成される(図1D参照)。
1.パターン形成方法
図2は、本発明の一実施形態に関するパターン形成方法のフローチャートである。
1-1.第1の液体の付与(工程S110)
まず、第1の液体を基材表面に付与する(工程S110)。
本工程において、上記付与された第1の液体は、基材表面に広がって、第1の液体が薄く広がってなる第1液層を基材表面に接して形成する(図1A参照)。
基材は特に限定されず、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙およびキャスト紙を含む塗工紙ならびに非塗工紙を含む吸収性の媒体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブタジエンテレフタレートを含むプラスチックで構成される非吸収性の記録媒体(プラスチック基材)、ならびに金属類およびガラス等の非吸収性の無機記録媒体とすることができる。
上記第1の液体を基材表面に付与する方法は特に限定されず、バーコーター、ロールコーターおよびスピンコーターなどを用いて第1の液体を基材表面に塗布してもよいし、スプレー塗布、浸漬法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの方法で第1の液体を基材表面に付与してもよいし、インクジェット法で第1の液体を基材表面に着弾させてもよい。これらのうち、第1液層の厚みをより均一にして、より均一な形状のパターンを形成する観点や、第1液層の厚みの調整幅を広くする観点からは、第1の液体は基材表面に塗布されることが好ましい。また、微小な領域にのみパターンを形成するときなどに、第1の液体が付与される領域を小さくして必要な第1の液体の量を低減する観点からは、インクジェット法が好ましい。
第1の液体の付与量は、形成するパターンの形状および第2の液体の付与量(付与されて基材表面に到達した第2の液体による液滴が形成するドットの厚み(基材表面からの高さ))に応じて任意に設定することができる。第1の液体の付与量(第1液層の厚み)が、形成するパターンが有する、基材表面から離れる方向に延在するパターンの壁面のうち、裾の広がりが抑制されて基材表面に対してより垂直に近い形状となっている部分の高さを決定する。そのため、上記壁面の高さに応じて第1の液体の付与量を設定すればよい。上記壁面を十分な高さにする観点からは、第1の液体の付与量は、形成される第1液層の厚みが0.5μm以上となる量であることが好ましく、1.0μm以上となる量であることがより好ましい。また、第1の液体の塗布を容易にする観点や、第2の液体を選択的硬化させたときに第1の液体を除去しやすくする観点からは、第1の液体の付与量は、さほど多すぎないことが望ましく、30μm以下となる量であることが好ましい。
図3Aおよび図3Bは、第1液層の厚みに応じて、異なる構成の分離液層が第2の液体の付与により形成される様子を示す模式図である。
第1の液層の厚みが、基材表面に到達した第2の液体の液滴が形成するドットの厚み(ドットの表面のうち、基材表面から最も離れた位置と、基材表面と、の間の距離)よりも大きいときは、図3Aに示すように、第2の液体の液滴を付与したとき(工程S120)に、第2の液体の液滴は、第1液層の内部にその全体が入り込む。このとき、第2の液体の液滴の第1の液体との界面は、基材表面に対してより垂直に近い形状となり、第2の液体の液滴の上面(基材表面側とは反対側)も、より平面状に近い形状となる。つまり、このとき、基材表面に到達した第2の液体の液滴は、基材表面に垂直な断面で上記液滴を切断したときに、より四角形(典型的には、基材に接した辺が対辺よりも長い台形)に近い形状となる。
この状態で第1の液体および第2の液体の一方の液体を選択的に硬化させることにより、図4または図5(いずれも後述)に示す形状のパターン形成物を作製することができる。
なお、このとき、第2の液体の上面を第1の液体が被覆した状態にする観点からは、第1液層の厚みは、基材表面に到達した第2の液体の液滴が形成するドットの厚みの1.1倍以上の厚みであることが好ましい。また、このとき、第1の液体を選択的硬化させた後に第2の液体を除去しやすくする観点からは、第1液層の厚みは、基材表面に到達した第2の液体の液滴が形成するドットの厚みの1.5倍以下の厚みであることが好ましい。
一方で、第1液層の厚みが、基材表面に到達した第2の液体の液滴が形成するドットの厚み(ドットの表面のうち、基材表面から最も離れた位置と、基材表面と、の間の距離)よりも小さいときは、図3Bに示すように、第2の液体の液滴を付与したとき(工程S120)に、第2の液体の液滴の下部側は第1液層の内部に入り込むが、第2の液体の液滴の上部側は第1液層の外部に留まり、第1液層(分離液層)の上面から突出したままとなる。このとき、第2の液体の液滴のうち、分離液層の内部に入り込んだ部分と第1の液体との界面は、基材表面に対してより垂直に近い形状となるが、分離液層の上面から突出した部分と外部(空気)との界面は、略半球状(または略円錐状)に近い形状となる。つまり、このとき、基材表面に到達した第2の液体の液滴は、基材表面に垂直な断面で上記液滴を切断したときに、第1の液体と接する下部側がより四角形(典型的には、基材に接した辺が対辺よりも長い台形)に近い形状となり、第1の液体と接しない上部側がより半円に近い形状となる。
この状態で第1の液体および第2の液体の一方の液体を選択的に硬化させることにより、図6または図7(いずれも後述)に示す形状のパターン形成物を作製することができる。
第1の液体は、後述する選択的硬化(工程S130)の際に第1の液体を硬化させるときは、第2の液体とは非相溶な硬化性液体である。硬化性液体とは、光、熱その他の刺激により硬化する液体であり、たとえば、光重合性化合物または熱重合性化合物と、任意に添加される重合開始剤と、を含む液体とすることができる。第1の液体は、重合の開始および制御が容易であることから、光重合性化合物および任意に光重合開始剤を含み、活性光線の照射によって硬化する液体であることが好ましい。上記活性光線の例には、紫外線(UV)、電子線、α線、γ線、およびエックス線などが含まれる。
上記光重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物が含まれる。光重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマーあるいはこれらの混合物のいずれであってもよい。
ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタクリロイルを意味する。
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレートが含まれる。
ラジカル重合性化合物は、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性された(メタ)アクリレート(以下、単に「変性(メタ)アクリレート」ともいう。)を含むことが好ましい。変性(メタ)アクリレートは、感光性がより高い。また、変性(メタ)アクリレートは、高温下でも他の成分とより相溶しやすい。さらには、変性(メタ)アクリレートは、硬化収縮が少ないため活性光線照射時の印刷物のカールがより生じにくい。
カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物が含まれる。
上記エポキシ化合物の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサンおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。
上記ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどを含むのモノビニルエーテル化合物、ならびにエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。
上記オキセタン化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。
硬化性液体である第1の液体中の上記光重合性化合物の含有量は、たとえば、第1の液体の全質量に対して1.0質量%以上97質量%以下とすることができ、30質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。
硬化性液体である第1の液体は、光重合開始剤をさらに含有してもよい。上記光重合開始剤は、上記光重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。たとえば第1の液体がラジカル重合性化合物を有するときは、光重合開始剤は光ラジカル開始剤とすることができ、第1の液体がカチオン重合性化合物を有するときは、光重合開始剤は光カチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。
上記光重合開始剤の含有量は、活性光線の照射によって第1の液体の硬化が開始される範囲において、任意に設定することができ、たとえば、第1の液体の全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは1.0質量%以上12質量%以下とすることができる。なお、電子線の照射により第1の液体を半硬化させるときなど、光重合開始剤がなくても第1の液体の硬化が開始されるときは、光重合開始剤は不要である。
硬化性液体である第1の液体は、形成されるパターンに所望の特性を付与するための樹脂、および形成されるパターンに所望の色調を付与するための色材をさらに含有してもよい。
上記樹脂の例には、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン-アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、および酢酸ビニル系樹脂などが含まれる。上記樹脂は、第1の液体中に分散して分散体を形成するラテックスであってもよいし、水または有機溶剤により第1の液体中に溶解する溶解性樹脂(水溶性樹脂または有機溶剤溶解性樹脂)であってもよい。
上記色材の例には、染料および顔料が含まれる。
硬化性液体である第1の液体は、形成されるパターンに導電性を付与するための導電性材料をさらに含有してもよい。
上記導電性材料の例には、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、およびInなどの微粒子、ならびに、グラファイト、フラーレン、カーボンナノファイバー、およびカーボンナノチューブなどを含む炭素材料の微粒子などを含む導電性微粒子、ならびに、ポリチオフェン類およびポリアニリン類などを含むπ共役系導電性高分子などを含む導電性樹脂などが含まれる。
硬化性液体である第1の液体は、さらに、必要に応じて、界面活性剤、重合禁止剤および紫外線吸収剤などを含有してもよい。
あるいは、第1の液体は、後述する選択的硬化(工程S130)の際に第2の液体を硬化させるときは、第2の液体とは非相溶な非硬化性液体であることが望ましい。非硬化性液体とは、光、熱その他の刺激により第2の液体が硬化する条件下において、硬化しないで流動性を保つ液体である。
非硬化性液体である第1の液体の例には、揮発性または不揮発性の炭化水素系溶剤、シリコーンオイル、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、および植物油などが含まれる。上記非硬化性液体である第1の液体は、水溶性溶剤でもよいし、非水溶性溶剤でもよいが、第2の液体が水性インクであるときは非水溶性溶剤であることが好ましく、第2の液体が溶剤系インクおよび硬化性インクなどの非水系インクであるときは水溶性溶剤であることが好ましい。
上記炭化水素系溶剤の例には、ヘキサン、ヘプタン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、および水添トリイソブチレンなどを含む脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレンなどを含む芳香族炭化水素、ならびに、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、およびトリクロロエチレンなどを含むハロゲン系炭化水素などが含まれる。
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が1000mm2/s以上である高粘度シリコーンオイルでもよいし、25℃における粘度が1000mm2/s未満である低粘度シリコーンオイルでもよい。
第1の液体は、これらの液体のうち、第2の液体の種類に応じて、第2の液体とは非相溶であるものから選択すればよい。たとえば、第2の液体が硬化性液体(光硬化性インク)であるときは、炭化水素系溶剤、シリコーンオイル、エチレングリコールおよびグリセリンなどのアルコール系溶剤、ならびにオリーブ油などの植物油などの、第2の液体とは非相溶である液体から第1の液体を選択することができる。
本明細書において、第1の液体と第2の液体とは非相溶であるとは、市販の振盪器(たとえば、株式会社ヤヨイ製のModel-YS-LD)を用いて第1の液体と第2の液体とをストローク数100回/分で5秒間振盪し、その後5分間放置したときに、第1の液体と第2の液体とが分離している状態を観察できることを意味する。たとえば、第1の液体および第2の液体の一方が所定の色調を有する液体である場合は、上記放置後の液体の全体が着色しているときには第1の液体と第2の液体とが分離していない(相溶である)と判断できる。なお、第1の液体および第2の液体の双方が透明であっても、上記放置後の液体が分離しているか否かは目視で判断可能である。
なお、これらの非硬化性液体である第1の液体のうち、後述する液体の除去(工程S140)を容易にする観点からは、揮発性の炭化水素系溶剤が好ましく、環境への影響を低減する観点からは、不揮発性であるシリコーンオイルおよび不揮発性の炭化水素系溶剤が好ましい。また、後述する液体の除去(工程S140)で回収した第1の液体を再利用し、コストを抑制する観点からは、不揮発性であるシリコーンオイルおよび不揮発性の炭化水素系溶剤が好ましい。
また、第1の液体をインクジェット法で基材表面に付与するときは、第1の液体の粘度は100mPa・s以下であることが好ましく、80mPa・s以下であることがより好ましい。
1-2.第2の液体の付与(工程S120)
次に、第1の液体が付与されて第1液層が形成された基材表面に、第1の液体とは非相溶であり、かつ、第1の液体よりも比重が大きい液体である、第2の液体の液滴をインクジェット法で付与する(工程S120)。
本工程では、上記付与された第2の液体の液滴は、第1液層の中に入り込み、基材表面に到達する。これにより、第2の液体の液滴と第1の液体とが基材表面に対して平行となる方向に分離して存在する分離液層が、基材表面に接して形成される(図1B参照)。
具体的には、本工程では、ステージに配置された基材表面に対して、インクジェットヘッドのノズルから第2の液体の液滴を吐出する。吐出された液滴は、第1液層の表面に到達(着弾)すると、第1の液体と第2の液体との間の比重の違いにより、第1液層の中に入り込んで基材表面に到達する。
第2の液体を付与する際の、インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式およびコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型等の電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(バブルジェットはキヤノン社の登録商標)型等の電気-熱変換方式等のいずれでもよい。
このとき、インク流路を加熱して、吐出される第2の液体の温度を調整してもよい。吐出される第2の液体の温度は、特に限定されないが、50℃以上90℃以下であることが好ましい。
第2の液体の液滴のサイズ(液滴量)は、第1液層の厚み、および形成しようとするパターンの幅および形状などに応じて選択すればよい。
第2の液体は、第1液層が形成された基材表面のうち、形成しようとするパターンに応じた位置に付与すればよい。たとえば、第2の液体を線状に付与し、かつ、線の延びる方向に隣り合う位置に付与された第2の液体の液滴が合一するように上記第2の液体の液滴を付与する位置を調整することで、線状のパターンを形成することができる。このとき、第2の液体を複数の線状に付与することで、複数の線状パターンを形成することができる。また、第2の液体を互いに平行な複数の線状に付与し、かつ、上記互いに平行な複数の線のうち2つ(あるいは3つ以上)の線を形成するための第2の液体の液滴が合一するように上記互いに平行な複数の線の位置を調整することで、上記線状のパターンの幅を調整することもできる。
第2の液体は、インクジェット法で吐出することができる限りにおいて特に限定されないが、後述する選択的硬化(工程S130)の際に第2の液体を硬化させるときは、第1の液体とは非相溶な硬化性液体とする。硬化性液体とは、光、熱その他の刺激により硬化する液体であり、たとえば、光重合性化合物または熱重合性化合物と、任意に添加される重合開始剤と、を含む液体とすることができる。第2の液体は、重合の開始および制御が容易であることから、光重合性化合物および任意に光重合開始剤を含む液体であることが好ましい。
上記光重合性化合物および光重合開始剤は、第1の液体について上述した化合物などから適宜選択すればよい。
硬化性液体である第2の液体は、形成されるパターンに所望の特性を付与するための樹脂、形成されるパターンに所望の色調を付与するための色材、形成されるパターンに導電性を付与するための導電性材料、ならびに、必要に応じて、界面活性剤、重合禁止剤および紫外線吸収剤などをさらに含有してもよい。
上記光重合性化合物、光重合開始剤、樹脂、色材および導電性材料は、第1の液体について上述した化合物などから適宜選択すればよい。
硬化性液体である第2の液体は、温度変化により第2の液体をゾルゲル相変化させるゲル化剤をさらに含有してもよい。
上記ゲル化剤は、加熱されると第2の液体をゾル化させてインクジェット法により吐出可能とし、常温程度に冷却されると第2の液体をゲル化させて分離液層中での第2の液体の形状変化を制限する化合物であればよい。ゲル化剤は、結晶性ゲル化剤でもよいし網状オルガノゲル化剤でもよいが、結晶性ゲル化剤であることが好ましく、結晶化してカードハウス構造を形成するゲル化剤であることがより好ましい。
結晶化してカードハウス構造を形成するゲル化剤の例には、ケトンワックス、エステルワックス、石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油、変性ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、ヒドロキシステアリン酸、N-置換脂肪酸アミドおよび特殊脂肪酸アミドを含む脂肪酸アミド、高級アミン、ショ糖脂肪酸のエステル、合成ワックス、ジベンジリデンソルビトール、ダイマー酸ならびにダイマージオールなどが含まれる。
上記ケトンワックスの例には、ジリグノセリルケトン、ジベヘニルケトン、ジステアリルケトン、ジエイコシルケトン、ジパルミチルケトン、ジラウリルケトン、ジミリスチルケトン、ミリスチルパルミチルケトンおよびパルミチルステアリルケトンが含まれる。
上記エステルワックスの例には、ベヘニン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸パルミチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、セロチン酸ミリシル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸オレイル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン脂肪酸エステルが含まれる。
上記高級脂肪酸の例には、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸が含まれる。
上記高級アルコールの例には、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールが含まれる。
上記脂肪酸アミドの例には、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミドおよび12-ヒドロキシステアリン酸アミドが含まれる。
分離液層中での第2の液体の形状変化をより制限する観点からは、ゲル化剤は、ケトンワックス、エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコールおよび脂肪酸アミドが好ましく、下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスがさらに好ましい。
一般式(G1):R1-CO-R2
一般式(G1)において、R1およびR2は、いずれも炭素数が9以上25以下である直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基である。
一般式(G2):R3-COO-R4
一般式(G2)において、R3およびR4は、いずれも炭素数が9以上25以下である直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基である。
ゲル化剤の含有量は、第2の液体の全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下とすることができ、であることが好ましい。1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。
あるいは、第2の液体は、後述する選択的硬化(工程S130)の際に第1の液体を硬化させるときは、第1の液体とは非相溶な非硬化性液体であることが望ましい。非硬化性液体とは、光、熱その他の刺激により第1の液体が硬化する条件下において、硬化しないで流動性を保つ液体である。
上記非硬化性液体の例には、インクジェット法で吐出可能な水系インクおよび溶剤系インクが含まれる。
上記水系インクは、水および水溶性有機溶剤を含有するインクである。
上記水溶性有機溶剤の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノールおよびt-ブタノールを含むアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、およびペンタンジオールを含むグリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールおよび1,2-ヘプタンジオールを含む多価アルコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミンおよびテトラメチルプロピレンジアミンを含むアミン、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドを含むアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2-オキサゾリドンおよび1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを含む複素環化合物、ジメチルスルホキシドを含むスルホキシド、ならびにエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを含むグリコールエーテルが含まれる。
上記水溶性有機溶剤の含有量は、たとえば、第2の液体の全質量に対して5.0質量%以上30質量%以下とすることができる。
また、第2の液体をインクジェット法で基材に付与する際に、インクジェットヘッドからの吐出時にノズル近傍で第2の液体が乾燥することによるノズル詰まりの発生を抑制する観点からは、上記水溶性有機溶剤は、多価アルコールを含むことが好ましい。このとき、第2の液体中の多価アルコールの含有量は、第2の液体の全質量に対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
上記溶剤系インクは、有機溶剤を主体とするインクである。上記有機溶剤の例には、上記水系インクに用いられ得る水溶性有機溶剤および非水溶性有機溶剤が含まれる。
上記非水溶性有機溶剤の例には、ペンタン、ヘキサン、i-ヘキサン、ヘプタン、i-ヘプタン、オクタン、i-オクタン、およびデカンを含む炭素数が5以上15以下の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、およびシクロオクタンを含む炭素数が5以上15以下の脂環族炭化水素、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7-シクロオクタテトラエン、シクロドデセンを含む炭素数が5以上15以下の環状不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン、o-キシレン、m-キシレンおよびp-キシレンを含む炭素数が6以上12以下の芳香族炭化水素、ヘプタノール、ヘキサノール、メチルヘキサノール、エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ウンデシルアルコール、およびラウリルアルコールを含む炭素数が5以上15以下の1価のアルコール、メチル-i-ブチルケトン、ジ-i-ブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、およびシクロオクタノンを含む炭素数が5以上15以下の脂環族ケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-i-プロピル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酢酸アミル、酢酸-i-アミル、酢酸2-エチルヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸アミル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、デカン酸エチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シクロオクチル、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、およびフタル酸ジブチルを含むエステル化合物、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロペンタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロトルエン、およびニトロキシレンを含むニトロ化合物、アセトニトリル、ベンゾニトリルを含むニトリル類、ならびにγ-ブチロラクトン、およびε-カプロラクトンを含むラクトン類が含まれる。
第2の液体が溶剤系インクであるときの上記非水溶性有機溶剤の含有量は、たとえば、第2の液体の全質量に対して1.0質量%以上98質量%以下とすることができ、20質量%以上95質量%以下とすることがより好ましく、40質量%以上90質量%以下とすることがさらに好ましい。
非硬化性液体である第2の液体は、必要に応じて、界面活性剤などをさらに含有してもよい。
付与された第2の液体の液滴を、第1液層の中に入り込みやすくして基材表面に到達しやすくし、かつ、選択的硬化(工程S130)の際まで基材表面に接して滞留しやすくする観点からは、第2の液体は、第1の液体よりも25℃における比重が大きい液体とする。このとき、たとえば、第1の液体は、25℃における比重が0.75g/cm3以上1.5g/cm3以下の液体とすることができ、0.75g/cm3以上1.1g/cm3以下の液体であることが好ましい。また、第2の液体は、25℃における比重が0.75g/cm3以上5.0g/cm3以下の液体とすることができ、1.1g/cm3以上5.0g/cm3以下の液体であることが好ましい。また、第1の液体と第2の液体との間の25℃における比重の差は、0.02g/cm3以上であることが好ましく、0.1g/cm3以上であることがより好ましい。
第1の液体および第2の液体の25℃における比重は、文献などで公知の値を用いることができるが、液体の体積および質量を測定して得られた値としてもよい。
また、分離液層における、第2の液体の液滴の端部(第1の液体との界面)を、基材表面に対してより垂直に近い形状とする観点からは、第2の液体は、第1の液体よりも25℃における表面張力が大きい液体であることが好ましい。このとき、たとえば、第1の液体は、25℃における表面張力が17mN/m以上45mN/m以下の液体とすることができ、25mN/m以上35mN/m以下の液体であることが好ましい。また、第2の液体は、25℃における表面張力が25mN/m以上55mN/m以下の液体とすることができ、25mN/m以上35mN/m以下の液体であることが好ましい。また、第1の液体と第2の液体との間の25℃における表面張力の差は、3mN/m以上であることが好ましく、10mN/m以上であることがより好ましい。
第1の液体および第2の液体の25℃における表面張力は、文献などで公知の値を用いることができるが、たとえば、バブルプレッシャー動的表面張力計(KRUSS社製、BP100など)で測定して得られた値としてもよい。
なお、パターン形成物の特性は、第1の液体および第2の液体のうち、選択的硬化される硬化性液体の組成による影響を大きく受けると考えられる。そのため、形成するパターン形成物の特性にあわせて、第1の液体および第2の液体のうち、選択的硬化される硬化性液体の種類または組成を決定し、当該硬化性液体の組成に応じて、選択的に硬化されない非硬化性液体の種類または組成を決定すればよい。
1-3.選択的硬化(工程S130)
次に、第1の液体および第2の液体の一方の液体を選択的に硬化させる(工程S130)。
本実施形態において、第1の液体および第2の液体の一方の液体は、硬化性液体である。本工程では、上記硬化性液体である一方の液体のみが硬化する条件を、分離液層に対して付与すればよい。
たとえば、上記一方の液体が光により硬化する液体であるときは、分離液層に対して、上記一方の液体を硬化させる活性光線を照射すればよい。
上記活性光線は、紫外線LEDからの紫外線であることが好ましい。一般的な紫外線の光源として、メタルハライドランプなどが知られているが、紫外線LEDを光源とすることで、光源の輻射熱によって上記一方の液体が硬化した後に再び溶けることによる硬化不良を抑制できる。たとえば、上記紫外線LEDのピーク波長は、385nm以上400nm以下とすることができる。
活性光線の照射条件は、上記一方の液体の組成などに応じて適宜設定されうる。たとえば、紫外線LEDを有する光源を、一方の液体の表面における最高照度が0.5W/cm2以上10.0W/cm2以下、より好ましくは1W/cm2以上5W/cm2以下となるように設置すればよい。なお、活性光線の照射について、分離液相の厚みは無視できる範囲であるので、上記最高照度の調整は、基材表面での最高照度の調整によって行ってもよい。硬化した上記一方の液体の変形を抑制するため、照射される活性光線の積算光量は、100mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下であることが好ましい。
あるいは、上記一方の液体が熱により硬化する液体であるときは、分離液層を、上記一方の液体が硬化する温度に加熱すればよい。
上記加熱の到達温度は、上記一方の液体が硬化し、かつ、基材の変形、および、他方の液体の蒸発(揮発)による分離液層中における第2の液体の液滴の変形、などが生じない程度で任意に設定すればよい。
なお、このとき上記一方の液体のみを選択的に硬化させることができる限りにおいて、第1の液体および第2の液体の他方の液体も硬化性液体であってもよい。このとき、本工程においては、上記一方の液体のみが硬化し、上記他方の液体は硬化しないような条件を、分離液層に対して付与する。ただし、上記付与される条件の制御を容易にする観点からは、上記他方の液体は、非硬化性液体であることが好ましい。
第1の液体と第2の液体との組み合わせによっては、分離液層が形成された後、時間が経つと、第2の液体が流動して、上述した第2の液体の液滴の界面が基材表面に対してより垂直に近い形状(図3Aおよび図3B参照)が崩れることがある。そのため、本工程は、第2の液体が付与された後、短時間で行うことが好ましい。たとえば、第2の液体が、第1の液体よりも比重または表面張力が大きい液体である場合、上記形状は比較的崩れにくいので、本工程は、第2の液体が付与された後、30秒以内に行えばよく、5秒以内に行うことが好ましい。
1-4.液体の除去(工程S140)
次に、第1の液体および第2の液体の他方の液体を除去してもよい(工程S140)。
上記他方の液体は、選択的硬化(工程S130)の際に硬化しなかった液体である。上記他方の液体が揮発性の液体であるときは、加熱、送風および静置などにより上記他方の液体を揮発させればよい。あるいは、上記他方の液体を不織布などの吸収部材で吸収したり、上記他方の液体と親和性が高い液体で上記他方の液体を洗い流したりしてもよい。また、上記他方の液体は、基材に対して第1の液体および第2の液体が付与された側の表面側から除去してもよいし、基材を浸透させて、基材に対して分離液層が形成された表面とは反対側の表面側から除去してもよい。
これにより、硬化させた一方の液体の硬化物のみが残存したパターンが形成される。
2.パターン形成物
上述したパターン形成方法で形成されたパターン形成物は、インクジェット法により基材表面に付与された液体が硬化して形成されたパターン形成物であって、分離液層における第2の液体の液滴に応じた形状を有する、上記液体の硬化物からなるパターンが基材表面に接して形成されたパターン形成物である。
図4A、図4Bおよび図4Cは、第1液層の厚みが、基材表面に到達した第2の液体の液滴が形成するドットの厚み(基材表面からの高さ)よりも大きいとき(図3A参照)に、第2の液体を選択的に硬化させて形成されるパターン形成物の断面形状を示す模式図である。なお、図4Aは、上記パターン形成物の模式的な平面図を、図4Bは、上記パターン形成物の模式的な正面図を、図4Cは、上記パターン形成物の図4Aにおける線4C-4Cで切断した模式的な断面図を、それぞれ表す。
このとき、分離液層中の第2の液体の形状に応じた形状であり、四角形(典型的には、基材に接した辺が対辺よりも長い台形)に近い形状の断面を有する、第2の液体が硬化してなる硬化物からなる凸状のパターンが形成される。
図5A、図5Bおよび図5Cは、第1液層の厚みが、基材表面に到達した第2の液体の液滴が形成するドットの厚み(基材表面からの高さ)よりも大きいとき(図3A参照)に、第1の液体を選択的に硬化させて形成されるパターン形成物の断面形状を示す模式図である。なお、図5Aは、上記パターン形成物の模式的な平面図を、図5Bは、上記パターン形成物の模式的な正面図を、図5Cは、上記パターン形成物の図5Aにおける線5C-5Cで切断した模式的な断面図を、それぞれ表す。
このとき、第1の液体が硬化してなる硬化物(硬化膜)の内部の一部に、分離液層中の第2の液体の形状に応じた形状であり、四角形(典型的には、基材に接した辺が対辺よりも長い台形)に近い形状の上面が閉じた閉鎖流路状の空間が形成された断面を有する、流路状のパターンが形成される。
図6A、図6Bおよび図6Cは、第1液層の厚みが、基材表面に到達した第2の液体の液滴が形成するドットの厚み(基材表面からの高さ)よりも小さいとき(図3B参照)に、第2の液体を選択的に硬化させて形成されるパターン形成物の断面形状を示す模式図である。なお、図6Aは、上記パターン形成物の模式的な平面図を、図6Bは、上記パターン形成物の模式的な正面図を、図6Cは、上記パターン形成物の図6Aにおける線6C-6Cで切断した模式的な断面図を、それぞれ表す。
このとき、分離液層中の第2の液体の形状に応じた形状であり、基材に接した領域は四角形(典型的には、基材に接した辺が対辺よりも長い台形)に近い形状であり、基材から離れた領域は略半球(または略円錐状)に近い形状の断面を有する、第2の液体が硬化してなる硬化物からなる凸状のパターンが形成される。
図7A、図7Bおよび図7Cは、第1液層の厚みが、基材表面に到達した第2の液体の液滴が形成するドットの厚み(基材表面からの高さ)よりも小さいとき(図3B参照)に、第1の液体を選択的に硬化させて形成されるパターン形成物の断面形状を示す模式図である。なお、図7Aは、上記パターン形成物の模式的な平面図を、図7Bは、上記パターン形成物の模式的な正面図を、図7Cは、上記パターン形成物の図7Aにおける線7C-7Cで切断した模式的な断面図を、それぞれ表す。
このとき、第1の液体が硬化してなる硬化物(硬化膜)の一部に、分離液層中の第2の液体の形状に応じた形状であり、四角形(典型的には、基材に接した辺が対辺よりも長い台形)に近い形状の上面が開いた開放流路状(溝状)の空間が形成された断面を有する、流路状のパターンが形成される。
なお、図4~図7は、幅が1ドット、長さが4ドットのパターンを形成したときの様子を示す図面であるが、パターンの幅、長さその他の形状(屈折の有無など)は、パターン形成物の用途に応じて任意に設定することができる。第2の液体を付与するとき(工程S120)、パターンの長さ方向(図4A、図5A、図6A、図7AのX方向)または幅方向(図4A、図5A、図6A、図7AのY方向)に複数の第2の液体の液滴を連続して付与し、このとき、上記複数の第2の液体の液滴のそれぞれにより形成されたドットのうち隣り合うドットが合一するように、それぞれの第2の液体の液滴を付与する位置を調整することで、長さまたは幅が異なる様々なパターンのパターン形成物を形成することができる。
上記した各パターンのうち、第2の液体が硬化してなる、分離液層中の第2の液体の形状に応じた断面を有するパターン(図4C、図6C参照)は、たとえば配線パターンなどとして使用することができる。このとき、上記配線パターンを形成するための第2の液体は、導電性材料を含んでいることが好ましい。また、上記した各パターンのうち、第1の液体が硬化してなる硬化膜の一部に、分離液層中の第2の液体の形状に応じた形状の空間が形成されたパターン(図5C、図7C参照)は、たとえば流路などとして使用することができる。
上述したパターン形成方法では、分離液層中で、第2の液体の液滴の第1の液体との界面が基材表面に対してより垂直に近い形状となり、このような第2の液体の液滴に応じたパターンが基材表面に接して形成される。そのため、上記パターンは、その基材表面に接した壁面が、基材表面に対してより垂直に近い形状を有する。具体的には、上記パターン形成物は、基材表面から離れる方向に延在する壁面と、上記基材表面と、の間の角度が45°以上であるパターン形成物である。
図8Aは、インクジェット法で基材表面に付与された硬化性液体を硬化してなる、従来のパターンの模式的な断面を示す図面である。図8Bは、本実施形態に関する、第2の液体を硬化させて得られるパターンの模式的な断面を示す図面である。図8Cは、本実施形態に関する、第1の液体を硬化させて得られるパターンの模式的な断面を示す図面である。
通常、インクジェット法によって基材表面に付与した硬化型インクを硬化させた硬化物からなるパターンは、断面形状が略半球状(または略円錐状)であり、上記パターンの、基材表面から離れる方向に延在する壁面と、上記基材表面と、の間の角度θは、せいぜい40°未満にしかならない(図8A参照)。これに対し、上記パターン形成物は、上記硬化物の壁面と基材表面との間の角度θをより大きくして、パターンの壁面を基材表面に対してより垂直に近い形状とすることができる(図8Bおよび図8C参照)。そのため、パターンの断面中での電気抵抗および流体の流れ抵抗などのばらつきを抑制することができるほか、隣接するパターン間の距離(パターンが線状または流路状であるときは、上記配線または流路の中心線間の距離)を小さくして、より高密度で複数のパターンを配置することができる。
上記パターンの壁面と基材表面との間の角度は、第1の液体と第2の液体との間の表面張力の差などによって調整することができる。上記抵抗のばらつきをより抑制したり、かつ複数の配線をより高密度で配置したりする観点からは、上記角度は、60°以上であることが好ましく、70°以上であることがより好ましい。
上記パターンの壁面と基材表面との間の角度は、形状測定レーザーマイクロスコープで測定された値とすることができる。なお、閉鎖流路状の空間が形成されたパターンが形成されたりして、上記壁面にレーザーを直接照射することが困難である場合などは、パターン形成物を幅方向に切断して、切断面を上記形状測定レーザーマイクロスコープで測定して、上記パターンの壁面と基材表面との間の角度を測定すればよい。
上記パターンの形状は、パターン形成物の用途などに応じて任意に定めることができる。本実施形態では、第2の液体をインクジェット法で付与するため、微細なパターンとすることが可能である。たとえば、上記パターンは、線状または流路状のパターンの幅(対向する壁面間の距離の最小値)が、1μm以上100μm以下のパターンとすることができ、5μm以上100μm以下のパターンであることが好ましい。
3.パターン形成装置
上述したパターン形成方法は、第1の液体を基材表面に付与する第1液体付与部と、第1の液体が付与された前記基材表面に、第1の液体とは非相溶である第2の液体の液滴をインクジェット法で付与して、分離液層を基材表面に接して形成する第2液体付与部と、第1の液体および第2の液体の一方の液体を選択的に硬化させる選択的硬化部と、を有する、パターン形成装置によって実行可能である。
図9は、上述したパターン形成方法を実行するパターン形成装置100の構成例を示す模式図である。
パターン形成装置100は、基材Pを搬送する搬送部110と、搬送部110によって搬送される基材Pの表面に第1の液体を付与する第1液体付与部120と、第1の液体が付与された基材表面に第2の液体を付与する第2液体付与部130と、第1の液体および第2の液体の一方の液体を選択的に硬化させる選択的硬化部140と、第1の液体および第2の液体の他方の液体を除去する液体除去部150と、を有する。第1液体付与部120、第2液体付与部130、選択的硬化部140、および液体除去部150は、搬送部110に対向して、基材Pの搬送方向上流側から下流側に向けて、この順で配置される。
搬送部110は、たとえば、ローラー112および114にループ状に張架された搬送ベルト116により構成される。たとえば、ローラー112および114の一方は駆動ローラーとして構成され、搬送ベルト116は、図9において反時計回りに駆動される。これにより、搬送ベルト116に保持された基材Pは、図9に示す右側(搬送方向上流側)から左側(搬送方向下流側)へ搬送される。なお、搬送部110は、複数の搬送ベルトによって構成されてもよいし、ドラムなどによって構成されてもよい。
第1液体付与部120は、搬送部100によって搬送される基材Pの表面に第1の液体を付与し、これにより第1液層を基材Pの表面に接して形成する。第1液体付与部120は、基材Pの表面のうち、少なくとも第2の液体の付与によって形状が決定されるパターンの幅よりも広い範囲に第1の液体を付与すればよい。たとえば、第1液体付与部120は、バーコーター、ロールコーターおよびスピンコーターなどを用いて第1の液体を基材Pの表面に塗布してもよいし、スプレー塗布、浸漬法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの方法で第1の液体を基材Pの表面に付与してもよいし、インクジェット法で第1の液体を基材Pの表面に着弾させてもよい。
図9では、第1液体付与部120は、第1の液体を供給するディスペンサー122と、ディスペンサー122から供給された第1の液体をフィルム状に塗布する塗布ローラー124と、を有する。
第2液体付与部130は、第1の液体が付与されて第1液相が形成された基材Pの表面に、インクジェット法により第2の液体を付与し、これにより分離液層を基材Pの表面に接して形成する。第2液体付与部130は、基材Pの表面に対し、形成すべきパターンの形状に応じた位置に第2の液体を付与すればよい。
第2液体付与部130は、インクジェットヘッド132を備え、インクジェットヘッド132のノズル134から第2の液体の液滴を吐出して、搬送部130によって搬送される基材Pの表面に上記液滴を着弾させて、第2の液体を基材Pの表面に供給(付与)し、分離液層を形成する。
インクジェットヘッド132は、オンデマンド方式およびコンティニュアス方式のいずれのインクジェットヘッドでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドの例には、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型を含む電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(バブルジェットはキヤノン社の登録商標)型を含む電気-熱変換方式などが含まれる。
また、インクジェットヘッド132は、基材Pの搬送方向に直行する方向に必要個数並べて、基材Pの搬送方向とは直交する方向に複数回走査することによりパターンを形成するマルチパス方式(スキャン方式)のインクジェットヘッドでもよいし、基材Pの搬送方向に必要な個数のインクジェットヘッドを並べて1回の走査によりパターンを形成するシングルパス方式(ライン式)のインクジェットヘッドであってもよい。
なお、第2液体付与部130は、吐出前の第1の液体を貯蔵するためのインクタンク(不図示)、およびインクタンクとインクジェットヘッド132とを第1の液体が流通可能に連通するインク流路(不図示)などをさらに備えてもよい。また、インクタンク、インク流路は、加熱手段を有していてもよく、これらの温度をヘッドの使用温度に合わせ適宜調整をすることが好ましい。
なお、第2の液体が、ゲル化剤を含有して温度変化によりゾルゲル相変化する液体であるときは、第2の液体をゾル化して吐出性を高める観点から、インクジェットヘッド132は、第2の液体の温度を調整して第2の液体を低粘度に調整するための温度調整手段を有してもよい。温度調整手段の例には、パネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水による加熱手段が含まれる。
第1液体付与部120および第2液体付与部130は、典型的には、一方の付与部が硬化性液体を付与し、他方の付与部が非硬化性液体を付与する。
選択的硬化部140は、第1の液体および第2の液体が付与されて形成された分離液層に対し、第1の液体および第2の液体の一方の液体を選択的に硬化させる条件を付与する。たとえば、上記一方の液体が活性光線の照射によって硬化する液体であるときは、選択的硬化部140は、上記一方の液体を硬化させる活性光線を、基材Pの表面に形成された分離液層に照射する。あるいは、上記一方の液体が熱の付与によって硬化する液体であるときは、選択的硬化部140は、上記一方の液体を硬化させる熱を、基材Pの表面に形成された分離液層に付与する。
上記活性光線の波長および照度、ならびに上記熱の付与量などは、上記一方の液体のみが選択的に硬化され、第1の液体および第2の液体の他方の液体は少なくとも流動性を保持する程度で、任意に調整すればよい。
図9では、選択的硬化部140は、光源142を備えて、基材Pの表面に形成された分離液層に、光源142から活性光線を照射する。光源の輻射熱によって上記一方の液体が硬化した後に再び溶けることによる硬化不良を抑制する観点から、光源142は発光ダイオード(LED)であることが好ましい。上記活性光線を照射することができるLED光源の例には、Phoseon Technology社製、395nm、水冷LEDが含まれる。
液体除去部150は、上記他方の液体を除去する。たとえば、液体除去部150は、上記一方の液体が選択的に硬化された基材Pの表面を加温または基材Pの表面に送風して、上記他方の液体を除去する。あるいは、液体除去部150は、不織布などの吸収部材で吸収を上記他方の液体に接触させて、上記他方の液体を吸収したり、上記他方の液体が溶解する液体を基材Pの表面に対して付与して、上記他方の液体を洗い流したりしてもよい。なお、上記他方の液体が揮発性の液体であるときなどは、パターン形成装置100は液体除去部150を有さなくてもよい。
図9では、液体除去部150は、IRヒーターまたは温風ドライヤーなどの乾燥機であり、上記一方の液体が選択的に硬化された基材Pの表面をIRヒーターにより加温したり、温風ドライヤーにより加温しつつ基材Pの表面に対して送風したりして、上記他方の液体を除去する。なお、図9では、基材Pに対して、第1の液体および第2の液体が付与された側の表面側から加温または送風しているが、基材Pの第1の液体および第2の液体が付与された側の表面とは反対側の表面側から加温、送風または不織布の接触などを施し、上記反対側の表面側から上記他方の液体を除去してもよい。
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
1.第1の液体・第2の液体
以下に示す液体を用意して、第1の液体または第2の液体として使用した。
1-1.非硬化性液体(NC-1~NC-6)
・NC-1 :揮発性の炭化水素系溶剤(出光興産株式会社製、IPソルベント2028)
・NC-2 :低粘度シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製 KF-96L-5cs)
(25℃における粘度: 5.0 mm2/s)
・NC-3 :高粘度シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製 KF-96L-10000cs)
(25℃における粘度: 10000 mm2/s)
・NC-4 :オリーブ油(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・NC-5 :エチレングリコール(富士フィルム和光純薬株式会社製 試薬特級)
・NC-6 :水(純水)
1-2.硬化性液体(C-1)
(顔料分散液の調製)
以下に示す顔料分散剤、光重合性化合物および重合禁止剤をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレートで加熱しながら、1時間加熱攪拌して混合液を作製した。
・顔料分散剤: アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製) 9 質量部
・光重合性化合物: トリプロピレングリコールジアクリレート 70 質量部
・重合禁止剤: BASF社製 Irgastab UV10 0.02 質量部
上記混合液を室温まで冷却した後、顔料として21質量部のPigment Red 122(大日精化工業株式会社製、クロモファインレッド6112JC)を加え、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した。その後、ジルコニアビーズを除去して顔料分散液を得た。
以下に示す光重合性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、および上記顔料分散剤1を混合し、100℃に加熱して攪拌した。その後、得られた液体を、加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後に冷却して、硬化性液体を調製した。
顔料分散液: 19.0 質量部
光重合性化合物: ポリエチレングリコール#400ジアクリレート 29.8 質量部
光重合性化合物: 4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート 15.0 質量部
光重合性化合物: 6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 23.0 質量部
光重合開始剤: BASF社製 DAROCUR TPO 6.0 質量部
光重合開始剤: DKSHジャパン株式会社製 ITX 1.0 質量部
光重合開始剤: BASF社製 DAROCUR EDB 1.0 質量部
重合禁止剤: BASF社製 Irgastab UV10 0.1 質量部
界面活性剤: KF-352(信越化学社製) 0.1 質量部
ゲル化剤: 花王株式会社製 ルナックBA(ベヘニン酸) 5.0 質量部
1-3.相溶性の評価
容積9ccのスクリュー管に、5ccの上記非硬化性液体のいずれかを入れた後、1ccの上記硬化性液体を滴下した。このスクリュー管を、振盪器(株式会社ヤヨイ製、Model-YS-LD)に装填して、ストローク数100回/分で5秒間振盪し、その後5分間放置した後のスクリュー管の内部を目視で観察して、非硬化性液体と硬化性液体との間の相溶性を評価した。具体的には、非硬化性液体の全体が硬化性液体の色に染まっているときは、非硬化性液体と硬化性液体とは相溶であると判断した。一方、硬化性液体が固まり状のまま存在し、非硬化性液体の全体が硬化性液体の色に染まっているときは、非硬化性液体と硬化性液体とは非相溶であると判断した。
1-4.比重の測定
上記非硬化性液体および硬化性液体の25℃における比重を、当該液体の体積および質量を測定して得られた値から計算した。
1-5.表面張力の測定
上記非硬化性液体および硬化性液体の25℃における表面張力を、バブルプレッシャー動的表面張力計(KRUSS社製、BP100)で測定した。
1-6.小まとめ
上記非硬化性液体のそれぞれについての上記硬化性液体との相溶性の評価結果、ならびに上記非硬化性液体および硬化性液体のそれぞれの比重および表面張力を、表1に示す。
2.パターン形成
上記非硬化性液体および硬化性液体のいずれかを第1の液体または第2の液体として使用し、パターンを形成した。
2-1.パターン形成方法
2-1-1.第1の液体の付与
基材としてPETフィルムを使用し、第1の液体をバーコーター(三井電機精機株式会社製、卓上塗工機TC-1)で膜厚2μmまたは10μmとなるように基材表面に塗布して、第1液層を形成した。なお、形成した第1液層の単位面積あたりの質量を測定し、上記測定された質量と、第1の液体として使用した液体の比重と、から、膜厚が2μmまたは10μmとなっていることを確認した。
2-1-2.第2の液体の付与
インクを吐出するインクジェットヘッド(コニカミノルタ株式会社製品、KM512SHX)を装填したインクジェット記録装置を用い、上記形成された第1液層の表面に、第2の液体をインクジェット法で付与した。射出条件は以下のように設定した。
射出速度: 7 m/sec
ヘッドと基材との間の距離: 1 mm
1ドットあたりの射出量: 4 pl
ヘッドの加熱温度: 80 ℃
基材の加熱温度: 30 ℃
着弾位置の形状(パターン形状): 幅1ドット×長さ100ドット
2-1-3.選択的硬化
第2の液体を付与した5秒後に、第1の液体および第2の液体が付与された基材表面に、紫外線照射装置(HOYA株式会社製、LS160-V4-MF1)から紫外線を照射した。紫外線の照射条件は以下のように設定した。
波長: 395 nm
基材表面での最大照度: 16 W/cm2
2-1-4.第1の液体の除去
選択的硬化の後、第1の液体を、当該液体に応じた以下の方法で除去した。
揮発性の炭化水素系溶剤: 放置(揮発)
低粘度シリコーンオイル: 不織布(日本製紙クレシア株式会社製 キムテックス)による吸収
(「キムテックス」はキンバリー社の登録商標)
高粘度シリコーンオイル: 不織布(日本製紙クレシア株式会社製 キムテックス)による吸収
エチレングリコール: 不織布(日本製紙クレシア株式会社製 キムテックス)による吸収
なお、上記条件で硬化性液体を基材表面に付与し、硬化させたときのドットの厚みは、5μm程度である。
2-2.試験1~試験11
第1の液体として上記非硬化性液体のいずれかを、第2の液体として上記硬化性液体を、それぞれ使用して、上記手順でパターンを形成した。第1の液体の種類および付与量を表2に示すように変更して、パターン形成物1~パターン形成物11を得た。
2-3.試験12~試験13
第1の液体として上記硬化性液体を、第2の液体として上記非硬化性液体のいずれかを、それぞれ使用して、上記手順でパターンを形成した。第1の液体の付与量を表2に示すように変更して、パターン形成物12~パターン形成物13を得た。
2-4.試験14~試験15
第1の液体を付与しなかった以外は試験1と同様にして、パターン形成物14~パターン形成物15を得た。
2-5.試験16~試験17
第1の液体を純水(NC-6)にした以外は試験1および試験3と同様にして、それぞれ、パターン形成物16~パターン形成物17を得た。
3.評価
それぞれの試験で得られたパターン形成物の断面形状を、形状測定レーザーマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VK-X250)で測定し、パターン形成物を構成する硬化物の上面の形状、および上記硬化物により形成されるパターンの壁面と基材表面との間の角度を測定した。
なお、試験13は、閉鎖流路状のパターン形成物が形成され、上記壁面にレーザーを直接照射することが困難だったため、パターン形成物を幅方向に切断して、切断面を上記形状測定レーザーマイクロスコープで測定して、上記パターンの壁面と基材表面との間の角度を測定した。
試験1~試験17における、第1の液体および第2の液体の種類、第1の液体および第2の液体の比重、第1の液体および第2の液体の表面張力、塗布された第1の液体の膜厚、硬化物の上面の形状、ならびに上記パターンの壁面と基材表面との間の角度を、表2に示す。
第1の液体を基材表面に付与する工程と、第1の液体が付与された前記基材表面に、上記第1の液体とは非相溶である第2の液体の液滴をインクジェット法で付与する工程と、上記第1の液体および第2の液体の一方の液体を選択的に硬化させる工程と、を有するパターン形成方法により形成されたパターン形成物1~パターン形成物9およびパターン形成物12~パターン形成物13は、パターンの壁面と基材表面との間の角度の角度がより垂直に近く、裾の広がりがより抑制された形状のパターンとなっていた(試験1~試験9、試験12~試験13)。
このとき、第2の液体を選択的に硬化させたパターン形成物1~パターン形成物9(試験1~試験9)も、第1の液体を選択的に硬化させたパターン形成物12~パターン形成物13(試験12~試験13)も、同様に裾の広がりがより抑制された形状のパターンとなっていた。
さらには、第1の液体を付与してなる第1液層の膜厚と、第2の液体の付与によって形成されるドットの厚みと、の関係を調整することで、形成されるパターンの断面形状を変更することもできた(試験1と試験2および試験3との対比、試験4と試験5との対比、試験6と試験7との対比、試験8と試験9との対比、および試験12と試験13との対比)。
一方で、第2の液体の比重が第1の液体の比重よりも小さいときに形成されたパターン形成物10およびパターン形成物11は、パターンの壁面と基材表面との間の角度の角度がより水平に近く、裾が大きく広がった形状のパターンとなっていた(試験10~試験11)。これは、第2の液体が第1液層の中に入り込んでいかず、第1の液体の表面に薄く塗れ広がった第2の液体が硬化したためと考えられる。
また、従来と同様に、第1液層を形成せずに第2の液体の付与および硬化のみを行って形成されたパターン形成物14およびパターン形成物15は、パターンの壁面と基材表面との間の角度の角度がより水平に近く、裾が大きく広がった形状のパターンとなっていた(試験14~試験15)。
また、互いに相溶である第1の液体および第2の液体を用いてパターンを形成しようとしたところ、第1の液体と第2の液体とが混じり合ってしまって選択的硬化ができず、明確なパターンは形成されなかった(試験16~試験17)。