以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るフューエルキャップ保持構造を備えた車両の一部を示す斜視図である。図1において、本実施形態のフューエルキャップ保持構造1は、車両の給油時にフューエルキャップ2を保持するために搭載されている。
車体3の側部には、凹状のリッドボックス4が設けられている。リッドボックス4の底部には、給油ガン5により給油を行うための給油口6が設けられている。フューエルキャップ2は、給油口6に着脱可能に取り付けられている。
フューエルキャップ2は、図2に示されるように、給油口6を覆うキャップ本体部7と、このキャップ本体部7と一体化された略円筒状のキャップ底部8とを有している。キャップ本体部7の上部には、ツマミ部9が設けられている。キャップ底部8の先端面8a(下端面)は、キャップ本体部7の下端面7aよりも突出している(図3参照)。キャップ底部8の外周面には、雄ネジ8bが形成されている。
車体3には、リッドボックス4が取り付けられている。リッドボックス4には、フューエルリッド10が開閉可能に取り付けられている。具体的には、フューエルリッド10は、リッドボックス4にヒンジ部(図示せず)を介して開閉可能に取り付けられている。従って、フューエルリッド10は、車体3に開閉可能に取り付けられている。
フューエルキャップ保持構造1は、給油口6から取り外したフューエルキャップ2をフューエルリッド10に保持する構造である。なお、図1(a)は、フューエルキャップ2が給油口6に装着された状態を示している。図1(b)は、フューエルキャップ2がフューエルリッド10に保持された状態を示している。
フューエルキャップ保持構造1は、ベース部11と、キャップホルダ12とを備えている。ベース部11及びキャップホルダ12は、一体的に形成されている。ベース部11は、フューエルリッド10の内面10aに固定されている。フューエルリッド10の内面10aは、フューエルリッド10の車室内側(給油口6側)の面である。
キャップホルダ12は、図3に示されるように、ベース部11の上部に車体3の上下方向(図3中のZ方向)に対して傾斜するように配置されている。キャップホルダ12は、フューエルキャップ2に設けられたキャップ底部8を保持する。このようにキャップ底部8を保持することにより、給油ガン5のスペースGを確保することができる。
キャップホルダ12は、図3及び図4に示されるように、ベース部11の上部に設けられた円環状の突壁部13と、キャップホルダ12の傾斜方向(図3中のS方向)の上側部分に配置された複数(ここでは5つ)の上側保持部14と、この上側保持部14よりもキャップホルダ12の傾斜方向の上側部分に配置された保持壁部15と、キャップホルダ12の傾斜方向の下側部分に配置された複数(ここでは2つ)の下側保持部16とを有している。
上側保持部14及び下側保持部16は、ベース部11から上方に突出したリブ構造を有している。上側保持部14及び下側保持部16は、突壁部13に沿って円周方向に間欠的に配置されている。下側保持部16は、上側保持部14と離間するように配置されている。
上側保持部14は、フューエルリッド10がリッドボックス4に対して閉じた状態で、車体3の車幅方向の外側に配置された第1保持部である。上側保持部14の外壁面には、上側保持部14の突出方向に延びる突起17が設けられている。上側保持部14の外壁面は、上側保持部14の上側の壁面である。上側保持部14の突出方向は、突壁部13の軸方向に相当する。突起17の先端面は、図5に示されるように、キャップホルダ12がフューエルキャップ2のキャップ底部8を保持したときに、フューエルキャップ2の自重によりキャップ底部8の内周面8cが当接する当接面18となっている。なお、突起17は、無くてもよい。この場合には、上側保持部14の外壁面が当接面18となる。
保持壁部15は、各上側保持部14の当接面18と対向する壁面15aを有している。壁面15aは、各上側保持部14の配列方向に沿って湾曲状に延びている。保持壁部15は、各上側保持部14と協働して、フューエルキャップ2のキャップ底部8が差し込まれる収容部19を形成している。図5に示されるように、上側保持部14の当接面18と保持壁部15の壁面15aとの隙間Wは、キャップ底部8の板厚Dよりも大きい。
なお、キャップ底部8は、図5に示されるように、キャップホルダ12に保持された状態において、キャップ底部8の先端面8aが収容部19の底面19aに当接するような長さ寸法を有している。
下側保持部16は、フューエルリッド10がリッドボックス4に対して閉じた状態で、車体3の車幅方向の内側に配置された第2保持部である。下側保持部16の外壁面は、キャップホルダ12がフューエルキャップ2のキャップ底部8を保持したときに、フューエルキャップ2の自重によりキャップ底部8の内周面8cの先端部が当接するテーパ面20となっている。下側保持部16の外壁面は、下側保持部16の下側の壁面である。
テーパ面20は、図5に示されるように、キャップホルダ12によりキャップ底部8が保持された状態において、キャップ底部8の軸方向(図5中のJ方向)に平行に切った断面でキャップ底部8の内周面8cに対して傾斜している。キャップ底部8の軸方向は、キャップホルダ12の収容部19に対するキャップ底部8の差し込み方向に相当する。テーパ面20は、車体3の下側に向かうに従ってキャップ底部8の軸方向に対して拡がるように傾斜している。
以上のようなフューエルキャップ保持構造1において、給油口6から取り外したフューエルキャップ2をキャップホルダ12に保持するときは、図5(a)に示されるように、フューエルキャップ2のキャップ底部8がキャップホルダ12の収容部19に差し込まれるように、フューエルキャップ2をキャップホルダ12上に置く。このとき、上側保持部14側に位置するキャップ底部8の先端面8aが収容部19の底面19aに当たると共に、下側保持部16側に位置するキャップ底部8の内周面8cの先端部が下側保持部16のテーパ面20に当たる。
フューエルキャップ2がキャップホルダ12上に置かれると、フューエルキャップ2の自重によって、フューエルキャップ2が傾斜方向(図5中のS方向)の下側に移動する。このため、図5(b)に示されるように、上側保持部14側に位置するキャップ底部8の内周面8cが上側保持部14の当接面18に当たる。また、フューエルキャップ2の自重によって、下側保持部16側に位置するキャップ底部8の内周面8cの先端部が上側保持部14側に位置するキャップ底部8を支点としてテーパ面20に沿って車体3の下側に滑り落ちる。
これにより、キャップ底部8と上側保持部14及び下側保持部16とのガタが詰まり、キャップ底部8がキャップホルダ12により保持された状態となる。
図6は、比較例としてのフューエルキャップ保持構造のキャップホルダにフューエルキャップが保持された状態を示す断面図である。図6において、本比較例のフューエルキャップ保持構造50では、キャップホルダ51は、キャップホルダ51の傾斜方向(図6中のS方向)の上側部分に配置された保持部52と、キャップホルダ51の傾斜方向の下側部分に配置された複数の荷重受け部53とを有している。
保持部52は、突壁部13に沿って間欠的に配置された複数の内壁54と、各内壁54よりもキャップホルダ51の傾斜方向の上側部分に配置された外壁55とを有している。外壁55は、各内壁54の配列方向に沿って湾曲状に延びている。
内壁54及び外壁55は、図7に示されるように、協働してフューエルキャップ2のキャップ底部8が差し込まれる収容部56を形成している。内壁54は、外壁55と対向するテーパ面54aを有している。外壁55は、内壁54と対向するテーパ面55aを有している。テーパ面54a,55aは、収容部56の底面56aに向かって先細りとなるように形成されている。
キャップホルダ51にキャップ底部8が保持された状態では、キャップ底部8と荷重受け部53との間には隙間が設けられている。荷重受け部53は、フューエルキャップ2に荷重がかかったときに荷重を受ける部分であり、キャップ底部8の保持には寄与していない。
このようにフューエルキャップ保持構造50では、キャップホルダ51の傾斜方向の上側部分に配置された保持部52のみによってフューエルキャップ2のキャップ底部8が保持されているため、衝撃等が加わると、フューエルキャップ2が外れやすい。従って、フューエルキャップ2が安定して保持することが困難である。
また、フューエルキャップ2は、同一車種でも仕向により種類が異なり、キャップ底部8の板厚のバラツキが大きい。また、保持部52における収容部56の幅(内壁54と外壁55との距離)にも、バラツキがある。そのようなキャップ底部8の板厚のバラツキ及び収容部56の幅のバラツキを許容するために、内壁54及び外壁55にキャップ底部8のくわえ込み用のテーパ面54a,55aがそれぞれ設けられている。
しかし、キャップ底部8の板厚が大きい場合には、キャップ底部8が収容部56の奥まで入らない(図7の2点鎖線参照)。この場合には、キャップ底部8が浮いた状態でキャップホルダ51に保持されることになるため、フューエルキャップ2が僅かな衝撃で外れてしまう。
そのような不具合に対し、本実施形態では、フューエルキャップ2を保持するときは、フューエルキャップ2をキャップホルダ12上に置く。このとき、キャップホルダ12は、ベース部11の上部に車体3の上下方向に対して傾斜するように配置されている。このため、フューエルキャップ2の自重によって、フューエルキャップ2のキャップ底部8の内周面8cがキャップホルダ12の傾斜方向の上側部分に当接する。また、キャップホルダ12の傾斜方向の下側部分には、フューエルキャップ2の自重によりキャップ底部8の内周面8cの先端部が当接するテーパ面20が設けられている。このため、フューエルキャップ2の自重によって、キャップ底部8の内周面8cの先端部がキャップホルダ12の傾斜方向の下側部分に当接する。このようにキャップホルダ12の傾斜方向の上側部分及び下側部分において、キャップ底部8がキャップホルダ12に保持された状態となる。従って、衝撃等が加わっても、フューエルキャップ2がキャップホルダ12から外れにくい。これにより、略円筒状のキャップ底部8を有するフューエルキャップ2が安定して保持される。
また、本実施形態では、フューエルキャップ2をキャップホルダ12上に置くと、フューエルキャップ2の自重によって、フューエルキャップ2のキャップ底部8の内周面8cが上側保持部14の当接面18に当接すると共に、キャップ底部8の内周面8cの先端部が下側保持部16のテーパ面20に当接する。このようにキャップ底部8が上側保持部14及び下側保持部16に保持された状態となるため、略円筒状のキャップ底部8を有するフューエルキャップ2が確実に安定して保持される。
また、本実施形態では、フューエルキャップ2のキャップ底部8がキャップホルダ12に保持されるときは、上側保持部14と保持壁部15との間の収容部19にキャップ底部8が差し込まれる。従って、衝撃等が加わっても、フューエルキャップ2がキャップホルダ12から更に外れにくい。
また、本実施形態では、キャップ底部8が収容部19に差し込まれた状態では、キャップ底部8の先端面8aが収容部19の底面19aに当接する。従って、キャップ底部8がキャップホルダ12に保持された状態において、キャップ底部8が収容部19から抜けにくくなるため、フューエルキャップ2がキャップホルダ12から一層外れにくい。
また、本実施形態では、上側保持部14の当接面18と保持壁部15との隙間Wは、キャップ底部8の板厚Dよりも大きい。従って、キャップ底部8の板厚Dのバラツキ、または上側保持部14の当接面18と保持壁部15との隙間Wのバラツキがあっても、キャップ底部8が収容部19に差し込まれるため、フューエルキャップ2がキャップホルダ12から外れにくい。
また、本実施形態では、上側保持部14は、ベース部11の上部に設けられた円環状の突壁部13における傾斜方向の上側部分と一体化され、下側保持部16は、突壁部13における傾斜方向の下側部分と一体化されている。このため、上側保持部14及び下側保持部16は、円周方向に沿って配置されることになる。従って、略円筒状のキャップ底部8が上側保持部14及び下側保持部16に安定して保持される。
また、本実施形態では、複数の上側保持部14及び下側保持部16が円周方向に沿って間欠的に配置されている。従って、キャップホルダ12の軽量化及び低コスト化を図りつつ、キャップホルダ12にキャップ底部8が保持される。
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、上側保持部14及び下側保持部16の数は複数ずつであるが、上側保持部14及び下側保持部16の数としては、特にそれには限られない。
上側保持部14及び下側保持部16の合計数が少なくとも3つであれば、キャップホルダ12の軽量化及び低コスト化を図りつつ、キャップホルダ12によりフューエルキャップ2のキャップ底部8を保持することができる。また、上側保持部14及び下側保持部16が突壁部13の周方向に延びていれば、上側保持部14及び下側保持部16の数は1つずつであってもよい。
また、上記実施形態では、フューエルキャップ2のキャップ底部8が収容部19に差し込まれた状態では、キャップ底部8の先端面8aが収容部19の底面19aに当接しているが、特にその形態には限られず、キャップ底部8の先端面8aが収容部19の底面19aに当接していなくてもよい。
また、上記実施形態では、上側保持部14よりもキャップホルダ12の傾斜方向の上側部分には、上側保持部14と協働してフューエルキャップ2のキャップ底部8が差し込まれる収容部19を形成する保持壁部15が配置されているが、そのような保持壁部15は、特に無くてもよい。
また、上記実施形態では、ベース部11の上部に円環状の突壁部13が設けられているが、特にその形態には限られず、上側保持部14及び下側保持部16が円周方向に沿って配置されていれば、そのような突壁部13は、特に無くてもよい。
また、上記実施形態では、キャップホルダ12の上側保持部14及び下側保持部16にフューエルキャップ2のキャップ底部8が保持されているが、キャップホルダ12の構成としては、特にそのような形態には限られない。キャップホルダは、キャップ底部8を保持したときに、キャップホルダの傾斜方向の下側部分に、フューエルキャップ2の自重によりキャップ底部8の内周面の先端部が当接するテーパ面が設けられていれば、例えば円錐台構造を有していてもよい。