以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
本実施形態に係る積層セラミック電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサについて説明する。
図1Aに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、少なくとも一対の素子本体4を有する。一対の素子本体4は、本実施形態では、同じ構成を有するが、異なっている構成であってもよい。各素子本体4は、X軸およびY軸を含む平面に実質的に平行な内側誘電体層(絶縁層)10と、内部電極層12とを有し、内側誘電体層10の間に、内部電極層12がZ軸の方向に沿って交互に積層してある。ここで、「実質的に平行」とは、ほとんどの部分が平行であるが、多少平行でない部分を有していてもよいことを意味し、内部電極層12と内側誘電体層10は、多少、凹凸があったり、傾いていたりしてもよいという趣旨である。
内側誘電体層10と内部電極層12とが交互に積層される部分が内装領域13である。また、素子本体4は、その積層方向Z(Z軸)の両端面に、外装領域11を有する。外装領域11は、内装領域13を構成する内側誘電体層10よりも厚い外側誘電体層が複数積層されて形成してある。内装領域13のZ軸方向の厚みは、各素子本体4のトータル厚みz1a,z1bの10~75%の範囲内であることが好ましい。また、2つの外装領域11の合計厚みは、トータル厚みz1a,z1bから内装領域13の厚み、端子電極6,8の厚みを引き算した値である。
なお、以下では、「内側誘電体層10」および「外側誘電体層」をまとめて、「誘電体層」と記載する場合がある。
内側誘電体層10および外装領域11を構成する誘電体層の材質は、同じでもよく、異なっていてもよく、特に限定されず、たとえば、ABO3 などのペロブスカイト構造の誘電体材料を主成分として構成される。
ABO3 において、Aは、たとえばCa、Ba、Srなどの少なくとも一種、Bは、Ti、Zrなどの少なくとも一種である。A/Bのモル比は、特に限定されず、0.980~1.020である。このほか、副成分として、希土類(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)、アルカリ土類金属(MgおよびMn)、遷移金属(V、W、およびMoから選択される少なくとも1種)の酸化物やその混合物、複合酸化物およびガラスとしてSiO2 を含んだ焼結助剤等が含まれていてもよい。
交互に積層される一方の内部電極層12は、素子本体4のY軸方向第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある引出部12aを有する。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、素子本体4のY軸方向第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある引出部12bを有する。
なお、図において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸が、内側誘電体層10および内部電極層12の積層方向に一致し、Y軸が引出部12a,12bが引き出される方向に一致する。
内装領域13は、容量領域と引出領域とを有する。容量領域は、積層方向に沿って内部電極層12が内側誘電体層10を挟んで積層する領域である。引出領域は、端子電極6または8に接続する内部電極層12の引出部12a(12b)の相互間に位置する領域である。さらに、図2A1および図2A2に示すサイドギャップ領域14は、内部電極層12のX軸方向の両端に位置する内部電極層12の保護のための領域であり、一般的には、内側誘電体層10または外装領域11と同様な誘電体材料で構成される。ただし、サイドギャップ領域14は、後述する強化層16となるガラス材などで構成されていてもよい。また、外装領域11も、ガラス材などで構成されてもよい。
内部電極層12に含有される導電材は特に限定されず、Ni、Cu、Ag、Pd、Al、Ptなどの金属、またはそれらの合金を用いることができる。Ni合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95質量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1質量%程度以下含まれていてもよい。
端子電極6,8の材質も特に限定されないが、Ni、Pd、Ag、Au、Cu、Pt、Rh、Ru、Ir等の少なくとも1種、またはそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu、Cu合金、NiまたはNi合金等や、Ag、Ag-Pd合金、In-Ga合金等が使用される。
本実施形態では、端子電極6および8は、それぞれ素子本体4のY軸方向の端面4a,4bに密着して形成され、単一膜でも多層膜であってもよい。本実施形態の端子電極6および8は、それぞれ内部電極層12のリード部12a,12bが引き出される素子本体4の引出端である端面4a,4bを覆う端側電極部6a,8aを有する。また、端子電極6および8は、それぞれ、素子本体4のZ軸に実質的に垂直な外側主面4cの一部に端側電極部6a,8aに連続して形成される主面電極部6b,8bを有する。
ここで「実質的に垂直」とは、概ね垂直であるが、多少垂直でない部分を有していてもよいことを意味し、主面電極部6b,8bは、多少、凹凸があったり、傾いていたりしてもよいという趣旨である。
さらに、図2A1に示すように、端子電極6および8は、それぞれ、X軸に沿って素子本体4の相互に反対側の側面4e,4eに、主面電極部6b,8bおよび端側電極部6a,8a(図1A参照)に連続して形成されるサイド電極部6c,8cを有する。図1Aに示すように、端子電極6および8の相互は、素子本体4の外面でY軸方向に所定距離で離れて絶縁されている。
端子電極6および8のそれぞれの厚みは、主面電極部6b,8b、端側電極部6a,8aおよびサイド電極部6c,8cの相互間で同じでも異なっていてもよく、たとえば2~15μmの範囲内である。本実施形態では、主面電極部6b,8bおよびサイド電極部6c,8cの厚みは、端側電極部6a,8aの厚みよりも100~750%の範囲で大きい。
また、本実施形態では、素子本体4の外側主面4cとZ軸方向に沿って反対側に位置する素子本体4の内側主面4dには、端子電極6,8が実質的に形成されていない。すなわち、素子本体4の内側主面4dでは、端子電極6,8に覆われておらず、素子本体4の内側主面4dの全体が、素子本体4の相互間で空隙層62が形成してある接着層60を介して相互に向き合っている。それぞれの内側主面4dは、端子電極6,8に覆われていないことから、段差状凸部が無く、平坦性に優れている。空隙層62が形成してある接着層60に関しては、後で詳細に説明する。
本実施形態では、一対の主面電極部6b,8bの間に位置する素子本体4の外側主面4cを覆う外側主面被覆層18が、主面電極部6b,8bの表面と実質的に面一となるように密着して存在している。外側主面被覆層18は、主面電極部6b,8bの間で、素子本体4の外側主面4cを覆うようになっている。
なお、「実質的に面一」とは、概ね面一であるが、多少段差を有していてもよいことを意味し、たとえば、(外側主面被覆層18の平均厚み/主面電極部6b,8bの平均厚み)×100の式から求められる外側主面被覆層18の相対厚みが70~110%であればよい。これにより、素子本体4の外側主面4c側の段差を軽減し、積層セラミックコンデンサ2が低背化しても段差への応力の集中を抑制することができ、積層セラミックコンデンサ2の曲げ強度を高めることができる。また、真空吸着により積層セラミックコンデンサ2をピックアップし易い。
外側主面被覆層18の材質は特に限定されず、たとえばガラス、アルミナ系コンポジット材料、ジルコニア系コンポジット材料、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アラミド繊維、繊維強化プラスチックなどが例示されるが、外装領域11および主面電極部6b,8bとの密着性を高めて、曲げ強度を向上させる観点から、軟化点が600℃以上850℃以下であるガラスが好ましい。
上記の観点から、外側主面被覆層18に用いられるガラスの軟化点は600℃以上850℃以下であることがより好ましい。このようなガラスとしては、たとえば、Si-B-Zn-O系ガラスおよびSi-Ba-Al-Oなどが挙げられ、この他ガラス成分として、BaO、Al2 O3 、アルカリ金属、CaO、SrOを含んでもよい。
外側主面被覆層18を構成するガラス成分はガラス成分中にSiO2 を30~70質量%含み、B2 O3 を1~20質量%含み、ZnOを1~60質量%含むことが好ましい。これによりガラスの軟化点を適切な範囲内にし易くなる。
また、本実施形態の外側主面被覆層18を構成するガラス成分中にSiO2 とB2 O3 とZnOが合計で70~100質量%含まれることが好ましい。これによりガラスの軟化点を適切な範囲にし易くなる。外側主面被覆層18は外側主面4c側の段差を軽減する観点から、主面電極部6b,8bおよび外装領域11との密着性を重視して材質が選択される。
また、本実施形態の外側主面被覆層18は、誘電体層に比べて弾性率が低い材質であることが好ましい。これにより、外部からの応力衝撃を緩和するため、後工程でのクラック、割れを抑制することができる。
さらに、本実施形態の外側主面被覆層18は、誘電体層に比べて線熱膨張係数が低い材質であることが好ましい。これにより、線膨張係数差を利用した応力調整による強度の向上を可能にすることができる。
図1Aに示すように、一対の素子本体4の内側主面4d同士は、空隙層62を有する接着層60で接合してある。接着層60は、樹脂層で構成してある。樹脂層としては、耐熱性に優れたポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などで構成される。
本実施形態では、図3A1に示すように、X軸およびY軸を含む平面に平行な断面で接着層60を切断した場合に、接着層60は、図1Aに示す素子本体4の内側主面4dの外周を囲むように形成してある枠状接着層60aを有する。また、枠状接着層60aの内部に位置する空隙層62は、枠状接着層60aに連続する仕切り用接着層60bで仕切られて複数に分割されていてもよい。
なお、仕切り用接着層60bは、Z軸方向ではなく、図3A2に示すように、Y軸に沿って形成しても良く、また、図3A3に示すように、2つ以上で形成しても良い。図3A3に示す接着層60では、空隙層62が4つに分割される。また、図3A4に示すように、枠状接着層60aおよび仕切り用接着層60bは、その延びる方向に沿って均一な幅である必要はなく、徐々に変化する形状でも良い。その場合には、空隙層62の平面形状は、矩形に限定されず、円形や楕円形であってもよい。
さらにまた、図3A5に示すように、仕切り用接着層60bは、X軸またはY軸に対して、傾斜する方向に延びるように形成しても良い。その場合には、空隙層62の平面形状は、矩形ではなく、三角形になることもある。また、図示しないが、仕切り用接着層60bは、直線状ではなく、曲線状に延びても良く、あるいは、ジグザグ形状に延びても良い。枠状接着層60aも同様である。空隙層62の形状は、それらの形状に合わせて変化する。
また、図3A6に示すように、仕切り用接着層60bは、相互に異なる方向に延びる仕切り用接着層60b同士が、相互に交差するように形成しても良い。さらにまた、図3A7に示すように、仕切り用接着層60bを形成することなく、あるいは、仕切り用接着層60bと共に、これらに連続しない島状接着層60cを空隙層62の内部に形成してもよい。
図3A8~図3A12に示すように、島状接着層60cの形状は、四角に限定されず、丸や三角あるいは楕円や多角形状であってもよく、さらに配置や数も、特に限定されず、1つ以上で、種々に改変できる。また、図3A13に示すように、接着層60は、枠状接着層60aのみで構成してもよい。さらにまた、図3A14に示すように、接着層60の枠状接着層60aおよび仕切り用接着層60bは、切り欠きやスリット60dなどで分断されていてもよい。
本実施形態では、枠状接着層60aを有することで、たとえば図1Aに示す本実施形態の積層セラミックコンデンサ2を、図5に示すように、多層基板40の内部に埋め込む際に、埋め込みのための樹脂が、空隙層62の内部に入り込み難くなり、空隙層62の効果を維持することができる。
なお、埋め込みのための樹脂が入り込まない程度のスリットや切り欠きや孔が、枠状接着層60aに形成してあっても良い。また、埋め込みのための樹脂などを用いない場合には、枠状接着層60aには、樹脂が入り込んでもよい程度のスリットや切り欠きや孔が、枠状接着層60aに形成してあっても良い。
いずれにしても、図1Aに示す一対の素子本体4の内側主面4dに接触する空隙層62の面積は、いずれか一方の素子本体4の内側主面4dの面積の10%超、好ましくは、20%~65%の範囲内である。
素子本体4の内側主面4dに接触する空隙層62の面積割合が小さすぎると、本実施形態の作用効果が小さく、大きすぎると、強度が不足してしまう傾向にある。なお、図1Aに示す空隙層62の厚み(接着層60の厚みに対応する)z2は、特に限定されないが、好ましくは1~5μmである。
なお、図3A14に示すように、接着層60に切り欠きや孔やスリット60dなどが形成されている場合には、これらの切り欠きや孔やスリット60dの面積も、空隙層62の面積に含まれる。また、内側主面4dの面積は、本実施形態では、外側主面4cの面積と略同一であり、素子本体4の外面の内で、最大の面積を有する面である。
図1Aに示すように、本実施形態では、端側電極部6a,8aの外面は、それぞれ導電膜9で覆われていても良い。すなわち、Z軸方向の上側に位置する素子本体4の端側電極部6aと、下側に位置する素子本体4の端側電極部8aとは、導電膜9により接続され、Z軸方向の上側に位置する素子本体4の端側電極部8aと、下側に位置する素子本体4の端側電極部6aとは、導電膜9により接続されていてもよい。その場合には、Z軸方向の上側に位置する素子本体4のコンデンサ回路と、下側に位置する素子本体4のコンデンサ回路とは、並列に接続される。
なお、導電膜9は、端側電極部6a,8aの外面に形成されていなくてもよく、その場合には、積層セラミックコンデンサ2の内部には、独立した2つ以上のコンデンサが形成される。導電膜9としては、特に限定されないが、導電性接着剤、樹脂電極などで構成される。
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態では、積層セラミックコンデンサ2のZ軸方向のトータル厚みz0を、たとえば100μm以下、好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下、特に好ましくは60μm以下と薄くすることができ、積層セラミックコンデンサ2の低背化に寄与する。
なお、本実施形態では、コンデンサ2の長手方向長さであるY軸方向の長さy0を、厚みz0の3倍以上、好ましくは300μm以上、好ましくは400~1200μmとすることができる。また、コンデンサ2のX軸方向の幅x0は、厚みz0の2倍以上、好ましくは200μm以上、好ましくは200~600μmとすることができる。
また、上記では、積層セラミックコンデンサ2の長手方向をY軸方向とし、積層セラミックコンデンサ2の短手方向をX軸方向としたが、積層セラミックコンデンサの長手方向をX軸方向とし、積層セラミックコンデンサの短手方向をY軸方向に設計することもできる。すなわち、向かい合う2つの外部電極6,8の間の距離を、向かい合う2つの側面4e,4eの間の距離よりも短くすることができる。この場合、X軸方向の長さx0を、厚みz0の3倍以上、好ましくは300μm以上、好ましくは400~1200μmとすることができる。また、積層セラミックコンデンサ2のy軸方向の幅y0は、厚みz0の2倍以上、好ましくは200μm以上、好ましくは200~600μmとすることができる。
また、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2では、一対の素子本体4の内側主面4d同士が、特定の面積割合の空隙層62を含む接着層60で接合してある。このような空隙層62が存在することにより、いわゆる音鳴き現象を低減することができる。たとえば本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2を、図5に示すように、多層基板40の内部に内蔵させたとしても、空隙層62を持つ接着層60が、音鳴きの音源となる振動を吸収し、音鳴き現象を低減することができる。
また、多層基板40内で生じる固有の振動を、空隙層62を持つ接着層60が吸収し、本実施形態の積層セラミックコンデンサ2へのダメージの影響が少なくなり、低背化が故に破損し易いコンデンサ2の保護を図ることが容易である。さらに、接着層60と空隙層62とにより、積層セラミックコンデンサ2に加わる外力による機械的衝撃を和らげることができ、コンデンサ2の破損を、より効果的に抑制することができる。
また、それぞれの素子本体4の内側主面4dは、平坦面であることで、素子本体4の内側主面4d同士を接着層60により接着しやすくなり、内側主面4dの間に、接着層60と略同じ厚みz2の空隙層62を形成しやすくなる。
しかも、端子電極6,8が、素子本体4のY軸の方向の端部を覆いY軸の方向に相互に向き合う一対の端側電極部6a,8aと、素子本体6の外側主面4cの一部を端側電極部6a,8aにそれぞれ連続して覆う一対の主面電極部6b,8bと、を有する。このような端子電極6,8を、各素子本体4に形成することで、たとえば図5に示すように、多層基板40の内部に、積層セラミックコンデンサ2を埋め込みやすくなる。
図5では、積層セラミックコンデンサ2の端子電極6,8の主面電極部6b,8bに、多層基板40に形成してある配線パターン42がスルーホール電極などを通して接続してある。なお、本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、図6に示すように回路基板40aの上に、たとえば異方導電性接着剤50などを用いて実装されてもよい。
また、本実施形態において、図1Aに示す素子本体4の外側主面4cまたは内側主面4dを構成する外装領域11は、内側誘電体層10よりも強度が高い誘電体材料で構成してあってもよい。このように構成することで、積層セラミックコンデンサ2の曲げ強度が、さらに向上する。また、強度が向上することで、素子本体4の長手方向寸法y0または幅寸法x0(図3B参照)を長くすることが容易になり、素子本体4の内部における内部電極層12の相互間の対向面積が広くなり、静電容量などの特性が向上する。さらに、図2A1および図2A2に示すサイドギャップ領域14も内側誘電体層10よりも強度が高い誘電体材料で構成してあってもよい。
次に、本発明の一実施形態としての積層セラミックコンデンサ2の製造方法について具体的に説明する。
まず、焼成後に図1Aに示す内側誘電体層10を構成することになる内側グリーンシートおよび外装領域11を構成することとなる外側グリーンシートを製造するために、内側グリーンシート用ペーストおよび外側グリーンシート用ペーストを準備する。内側グリーンシート用ペーストおよび外側グリーンシート用ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
セラミック粉末の原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末の原料は、本実施形態では、平均粒子径が0.45μm以下、好ましくは0.1~0.3μm程度の粉体として用いられる。なお、内側グリーンシートをきわめて薄いものとするためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、アセトン、メチルエチルケトン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、グリーンシート用ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。
可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
次に、焼成後に図1Aに示す内部電極層12を構成することになる内部電極パターン層を製造するために、内部電極層用ペーストを準備する。内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
焼成後に図1Aに示す端子電極6,8を構成することになる端子電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記にて調製した内側グリーンシート用ペーストおよび内部電極層用ペーストを使用して、内側グリーンシートと、内部電極パターン層と、を交互に積層し、内部積層体を製造する。そして、内部積層体を製造した後に、外側グリーンシート用ペーストを使用して、外側グリーンシートを形成し、積層方向に加圧してグリーン積層体を得る。
なお、グリーン積層体の製造方法としては、上記の他、外側グリーンシートに直接内側グリーンシートと内部電極パターン層とを交互に所定数積層して、積層方向に加圧してグリーン積層体を得てもよい。
具体的には、まず、ドクターブレード法などにより、支持体としてのキャリアシート(たとえばPETフィルム)上に、内側グリーンシートを形成する。内側グリーンシートは、キャリアシート上に形成された後に乾燥される。
次に、内側グリーンシートの表面に、内部電極層用ペーストを用いて、内部電極パターン層を形成し、内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを得る。次に、内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを複数積層して、内部積層体を製造した後に、内部積層体の上下に外側グリーンシート用ペーストを使用して、適宜の枚数の外側グリーンシートを形成し、積層方向に加圧してグリーン積層体を得る。
次に、グリーン積層体を個片状に切断してグリーンチップを得る。なお、内部電極パターン層の形成方法としては、特に限定されず、印刷法、転写法の他、蒸着、スパッタリングなどの薄膜形成方法により形成されていてもよい。
グリーンチップは、固化乾燥により可塑剤が除去され固化される。固化乾燥後のグリーンチップは、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を行うことにより、素子本体4が得られる。脱バインダ工程、焼成工程およびアニール工程は、連続して行なっても、独立して行なってもよい。
次に、素子本体4のY軸方向の両端面に、端子電極用ペーストを塗布して焼成し、端子電極6,8を形成する。端子電極6,8を形成するに際しては、たとえば図4に示すように、二つの素子本体4,4のそれぞれの内側主面4d,4dの間に、ダミーブロック20を仮接着し、これらを一体化させたワーク22を、まず形成する。
ダミーブロック20は、後工程において除去可能な材料で構成されることが好ましく、端子電極用ペーストが付着し難い材料であることが好ましい。ダミーブロック20は、たとえばシリコンゴム、ニトリルゴム、ポリウレタン、フッ素樹脂、PET樹脂、PEN樹脂などで構成される。ダミーブロック20のX軸方向幅およびY軸方向幅は、素子本体4のサイズと略同じであることが好ましい。ダミーブロック20のZ軸方向の厚みは、素子本体4のZ軸方向厚みと同等、またはそれより薄くても厚くてもよい。
なお、ダミーブロック20を設けることなく、二つの素子本体4,4のそれぞれの内側主面4d,4dを、後工程で剥離可能な接着剤で直接に接着してワーク22を形成してもよい。接着剤としては、たとえば変性シリコーンポリマー、PVA水溶液のり、水溶性アクリル樹脂水溶液のり、変性ポリウレタン、変性シリコーン+エポキシ樹脂の2液型、デンプンのりなどが好ましい。また、ダミーブロック20の代わりに、一つ以上の素子本体4を、二つの素子本体4,4の間に接着してワーク22を形成してもよい。
ワーク22は、二つ以上の素子本体4,4が組み合わされているために、仮に素子本体4,4自体のZ軸方向厚みが薄くても、十分に取り扱いやすい厚みを持ち、従来と同様にして、保持板30の貫通孔32にワーク22を取り付けて、端子電極6および8の形成を行うことができる。なお、端子電極6,8の形成方法についても特に限定されず、端子電極用ペーストの塗布・焼付け、メッキ、蒸着、スパッタリングなどの適宜の方法を用いることができる。必要に応じ、端子電極6,8表面に、メッキ等により被覆層を形成する。被覆層としては、Niメッキ、Snメッキ、AuメッキまたはCuメッキなどが例示される。
端子電極6および8を形成した後には、ダミーブロック20を除去するなどで、二つの素子本体4,4を分離すれば、図1Aに示す一対の素子本体4が得られる。すなわち、それぞれの素子本体4の内側主面4dには、端子電極6,8が実質的に形成されておらず、素子本体4の内側主面4dの全体が外部に露出している素子本体4が得られる。
次に、上記素子本体4のZ軸に垂直な外側主面4cに外側主面被覆層18を形成する。外側主面被覆層18を形成する方法は特に限定されず、たとえば、ディップ、印刷、塗布、蒸着、スパッタリング等が挙げられる。
たとえば、塗布により外側主面被覆層18を形成する場合には、素子本体4の外側主面4cに被覆層用ペーストを塗布し、焼き付けることにより外側主面被覆層18を形成することができる。被覆層用ペーストが塗布された素子本体4の焼き付け条件は特に限定されず、たとえば、加湿N2 または乾燥N2 の雰囲気において、600~1000℃、0.1~3時間保持し、焼き付けられる。
次に主面電極部6b,8bの表面、外側主面被覆層18の表面のZ軸方向の端部が面一になるように研磨する。なお、主面電極部6b,8bの表面にメッキ膜が形成されている場合は、メッキ膜と外側主面被覆層18の表面が面一となるように研磨してもよい。
次に、このようにして製造された一対の素子本体4,4のそれぞれの内側主面4d,4dを、図1Aに示す空隙層62を有する接着層60で接着して接合すれば、図1Aに示す積層セラミックコンデンサ2が得られる。
なお、図4に示す工程で、ダミーブロック20を設けることなく、二つの素子本体4,4のそれぞれの内側主面4d,4dを、図1Aに示す空隙層62を有する接着層60で接着し、その後の工程でも、素子本体4,4を分離しないで、そのまま端子電極6,8を直接に形成してもよい。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、たとえば図6に示すように、プリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。あるいは、図5に示すように、多層基板40の内部に、積層セラミックコンデンサ2を埋め込まれて使用される。本実施形態の積層セラミックコンデンサ2の具体的な用途としては好ましくは、デカップリングコンデンサが挙げられるが、これに限定されず、高耐圧コンデンサ、低ESLコンデンサ、大容量コンデンサなどとしても使用される。
第2実施形態
図2A2に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2では、以下に示す以外は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ2と同様である。この積層セラミックコンデンサ2では、素子本体4のX軸の方向に沿って向き合う側面4eに第1実施形態の外側主面被覆層18に連続して具備されるサイド被覆層18aを有している。このように構成することで、積層セラミックコンデンサ2の強度がさらに向上する。
サイド被覆層18aの材質は特に限定されず、外側主面被覆層18と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、サイド被覆層18aの厚みも特に限定されず、外側主面被覆層18と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
サイド被覆層18aを形成する方法は特に限定されず、たとえば外側主面被覆層18と同様の方法により形成される。
第3実施形態
図1Bおよび図2Bに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2aでは、以下に示す以外は、第1実施形態の積層セラミックコンデンサ2と同様である。この積層セラミックコンデンサ2aでは、少なくともいずれか一方の素子本体4の外側主面4cは、内側誘電体層10よりも強度が高い材料で構成してある外側主面の強化層16を含む。
外側主面の強化層16は、第1実施形態と同様にして素子本体4を形成した後に、端子電極6,8を形成する前に、素子本体4の外側主面4cに形成される。外側主面の強化層16の材質としては、特に限定されないが、たとえばガラス、アルミナ系コンポジット材料、ジルコニア系コンポジット材料、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アラミド繊維、繊維強化プラスチックなどが例示される。また、外側主面の強化層16の材質は外側主面被覆層18の材質と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
このように構成することで、積層セラミックコンデンサ2aの曲げ強度がさらに向上する。また、強度が向上することで、素子本体4を薄くしても、素子本体4の長手方向寸法y0または幅寸法x0(図3B参照)を長くすることが容易になり、素子本体4の内部における内部電極層12の相互間の対向面積が広くなり、静電容量などの積層セラミックコンデンサ2aの特性が、さらに向上する。
上記の観点から、(外側主面の強化層16の平均厚み/主面電極部6b,8bの平均厚み)×100の式から求められる外側主面の強化層16の相対厚みは20~133%であることが好ましい。
なお、外側主面の強化層16を構成するガラス成分は特に限定されないが、SiO2 、BaO、Al2 O3 、アルカリ金属、CaO、SrO、B2 O3 を含むことが好ましい。外側主面の強化層16を構成するガラス成分として含まれるSiO2 は、外側主面の強化層16のガラス成分中に30~70質量%含まれることが好ましい。SiO2 を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも少ない場合に比べて、網目形成酸化物が十分な量となり、耐めっき性を良好にする。SiO2 を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、軟化点が高くなりすぎるのを防ぎ、作業温度が高くなり過ぎるのを防ぐ。
本実施形態の外側主面の強化層16を構成するガラス成分として含まれるBaOは、外側主面の強化層16のガラス成分中に20~60質量%含まれることが好ましい。BaOを上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも少ない場合に比べて、誘電体層との密着性を良好にしてデラミネーションを生じにくくする。また、熱膨張係数が小さくなり過ぎるのを防ぎ、クラックを生じにくくする。さらに、誘電体層がBaTiO3 の場合、Baがガラス成分に溶出してしまうのを防止し、HALT信頼性が低下することを抑制する。BaOを上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、ガラス化を良好にし、さらに、耐めっき性を良好にする。
本実施形態の外側主面の強化層16を構成するガラス成分として含まれるAl2 O3 は、外側主面の強化層16のガラス成分中に1~15質量%含まれることが好ましい。Al2 O3 を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも少ない場合に比べて、耐めっき性が良好である。Al2 O3 を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、軟化点が上昇し過ぎるのを防ぐ。
本実施形態の外側主面の強化層16を構成するガラス成分中にSiO2 とBaOとAl2 O3 が合計で70~100質量%含まれることが好ましい。これにより誘電体層と外側主面の強化層16の界面でBa-Ti-Si-O相が形成され易くなる。
本実施形態の外側主面の強化層16を構成するガラス成分として含まれるアルカリ金属としては、Li、Na、Kが挙げられるが、熱膨張係数の観点から、K、Naがより好ましい。本実施形態の外側主面の強化層16を構成するガラス成分として含まれるアルカリ金属は、外側主面の強化層16のガラス成分中に0.1~15質量%含まれることが好ましい。これにより熱膨張係数を、高めることができる。アルカリ金属を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、耐めっき性を良好にできる。
本実施形態の外側主面の強化層16を構成するガラス成分として含まれるCaOは、外側主面の強化層16のガラス成分に0~15質量%含まれることが好ましい。これにより熱膨張係数を高めることができ、耐めっき性を良好にできる。
本実施形態の外側主面の強化層16を構成するガラス成分として含まれるSrOは、外側主面の強化層16のガラス成分に0~20質量%含まれることが好ましい。これにより熱膨張係数を高めることができ、耐めっき性を良好にできる。SrOを上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、SrOがBaTiO3 と反応することを防ぎ、チップの絶縁性と信頼性を向上できる。
本実施形態の外側主面の強化層16を構成するガラス成分として含まれるB2 O3 は、外側主面の強化層16のガラス成分に0~10質量%含まれることが好ましい。これによりガラスの網目形成酸化物としての効果を発揮できる。B2 O3 を上記の範囲で含む場合、上記の範囲よりも多い場合に比べて、耐めっき性を良好にできる。
本実施形態では、外側主面の強化層16は、外装領域11の外面側の一部のみを構成しているが、外装領域11の大部分、または全てを占めていてもよい。外側主面の強化層16は、素子本体4の外側主面4cまたは内側主面4dに強化層用ペーストを塗布し、焼き付けることにより形成することができる。
この強化層用ペーストは、たとえば上記したガラス原料と、エチルセルロースを主成分とするバインダと分散媒であるターピネオールおよびアセトンとをミキサーで混練して得られる。素子本体4への強化層用ペーストの塗布方法は特に限定されず、たとえば、ディップ、印刷、塗布、蒸着、噴霧等の方法が挙げられる。
強化層用ペーストが塗布された素子本体4の焼き付け条件は特に限定されず、たとえば、加湿N2 または乾燥N2 の雰囲気において、700℃~1300℃、0.1時間~3時間保持し、焼き付けられる。
第4実施形態
図2Cに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2bでは、以下に示す以外は、第3実施形態の積層セラミックコンデンサ2aと同様である。この積層セラミックコンデンサ2bでは、素子本体4のX軸方向に沿って向き合う側面4eに第3実施形態の外側主面の強化層16に連続して具備されているサイド強化層16aを有している。このように構成することで、積層セラミックコンデンサ2の強度がさらに向上する。
なお、図2Cでは、サイド強化層16aは、サイドギャップ領域14の側面4e側の一部のみを構成しているが、サイドギャップ領域14の全体を占めていてもよい。すなわち、サイド強化層16aは、内部電極層12のX軸方向の端部に接触していてもよい。
サイド強化層16aの材質は特に限定されず、外側主面の強化層16と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、サイド強化層16aの厚みも特に限定されず、外側主面の強化層16と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
サイド強化層16aを形成する方法は特に限定されず、たとえば外側主面の強化層16と同様の方法により形成される。
第5実施形態
図1Cに示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2cでは、以下に示す以外は、図1Bに係る実施形態の積層セラミックコンデンサ2aと同様である。この積層セラミックコンデンサ2cでは、図1Bに示す素子本体4の外側主面4cに形成してある強化層16と同様な強化層16を、素子本体4の内側主面4dに形成してある。その他の構成と作用効果は、前述した実施形態と同様である。強化層16は、図1Cに記載した構成(素子本体4に先に強化層16を形成し、後に第1端子電極6、第2端子電極8を形成する手法)に限定されず、逆の手法(先に素子本体4に先に第1端子電極6、第2端子電極8を形成し、後に強化層16を形成する手法)を適宜用いてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、図4に示すダミーブロック20の代わりに、一つ以上の素子本体4を配置して接着した場合には、それらの素子本体4には、端側電極部6a,8aとサイド電極部6c,8cのみが形成される。すなわち、その場合には、素子本体4の内側主面4dおよび外側主面4cの双方に端子電極6,8が実質的に形成されない端子電極を持つ素子本体4が得られる。これらの素子本体4は、素子本体4の内側主面4dおよび外側主面4cの双方に端子電極6,8が実質的に形成されない端子電極を持つ。そのため、このような素子本体4は、たとえば図1Aに示す一対の素子本体4の間に、空隙層62を持つ接着層60を介して接合することができる。その場合には、3つ以上の素子本体4が、積層セラミック電子部品を構成することになる。
さらに、上記の実施形態では一対の主面電極部6b,8bの間に位置する素子本体4の外側主面4cを外側主面被覆層18が覆っているが、素子本体4の外側主面4cを外側主面被覆層18が覆っていなくてもよい。
また、本発明の積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他の積層電子部品に適用することが可能である。その他の積層電子部品としては、誘電体層(絶縁層)が内部電極を介して積層される全ての電子部品であり、たとえばバンドパスフィルタ、インダクタ、積層三端子フィルタ、圧電素子、PTCサーミスタ、NTCサーミスタ、バリスタなどが例示される。
さらに、本発明の積層セラミック電子部品では、接着層60を介して組み合わされる素子本体と素子本体とは、異なる種類の電子部品であってもよい。たとえば一方の素子本体が、積層セラミックコンデンサであり、他方が、インダクタでなどであってもよい。
さらにまた、図3A14に示すように、接着層60がY軸に沿って二つに分離されて絶縁される場合には、これらの二つの接着層60を、たとえば異方導電性接着剤などで構成してもよい。その場合には、図1Aに示す導電膜9を用いることなく、Z軸方向の上側に位置する素子本体4の端側電極部6aと、下側に位置する素子本体4の端側電極部8aとは、導電性接着剤から成る一方の接着層60で接続される。また、Z軸方向の上側に位置する素子本体4の端側電極部8aと、下側に位置する素子本体4の端側電極部6aとは、導電性接着剤から成る他方の接着層60で接続される。その場合には、Z軸方向の上側に位置する素子本体4のコンデンサ回路と、下側に位置する素子本体4のコンデンサ回路とは、並列に接続される。
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
試料番号1
下記の通り、試料番号1の積層セラミックコンデンサ2を作製した。
まず、BaTiO3 系セラミック粉末:100質量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10質量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5質量部と、溶媒としてのアルコール:100質量部とをボールミルで混合してペースト化し、内側グリーンシート用ペーストを得た。
また、上記とは別に、Ni粒子44.6質量部と、テルピネオール:52質量部と、エチルセルロース:3質量部と、ベンゾトリアゾール:0.4質量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
上記にて作製した内側グリーンシート用ペーストを用いて、PETフィルム上に内側グリーンシートを形成した。次に、内部電極層用ペーストを用いて、内部電極パターン層を所定パターンで形成した後、PETフィルムからシートを剥離し、内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを得た。
このようにして得られた内部電極パターン層を有する内側グリーンシートを交互に積層し、内部積層体を製造した。
次に、内部積層体の上下に外側グリーンシート用ペーストを使用して、適宜の枚数の外側グリーンシートを形成し、積層方向に加圧接着してグリーン積層体を得た。外側グリーンシート用ペーストは、内側グリーンシート用ペーストと同様の方法により得た。
次に、グリーン積層体を切断してグリーンチップを得た。
次に、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、素子本体4を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度60℃/時間、保持温度:260℃、保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度200℃/時間、保持温度1000℃~1200℃とし、温度保持時間を2時間とした。冷却速度は200℃/時間とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN2 +H2 混合ガスとした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:500℃~1000℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN2 ガスとした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを使用した。
次に、図4に示すように、二つの素子本体4,4のそれぞれの内側主面4d,4dの間に、ダミーブロック20を仮接着し、これらを一体化させたワーク22を、まず形成して、保持板30の貫通孔32にワーク22を取り付けた。
次に、平均粒径0.4μmの球状のCu粒子とフレーク状のCu粉の混合物100質量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂5質量部をブチルカルビトール95質量部に溶解したもの)30質量部、およびブチルカルビトール6質量部とを混練し、ペースト化した端子電極用ペーストを得た。
得られた端子電極用ペーストをセラミック焼結体のY軸方向の端面にディップにより塗布し、N2 雰囲気で850℃にて10分間焼成して、素子本体4の表面に端子電極6,8を形成した。
次に、ダミーブロック20を除去して、二つの素子本体4,4を分離した。次に、このようにして製造された一対の素子本体4,4のそれぞれの内側主面4d,4dを、図1Aおよび図3A1に示す空隙層62を有する接着層60で接着して接合して、図1Aに示す積層セラミックコンデンサ2を得た。素子本体4の内側主面4dに対する空隙層62の面積割合は、表1に示すように、35%であった。
積層セラミックコンデンサ2の厚みz0は、表1に示すように、80μmであった。また、主面電極部6b,8bの厚みは15μmであり、端側電極部6a,8aの厚みは10μmであった。また、図1Aに示す外側主面被覆層18は、形成しなかった。
試料番号2~7
試料番号2~7では、接着層60の線幅を変えて、空隙層62の面積割合を変化させた以外は、試料番号1と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号2~7の仕様を表1に示す。なお、試料番号1~5では、接着層60の線幅は、各試料番号で、枠状接着層60aと仕切り用接着層60bとで同じとした。また、試料番号6は、試料番号3と空隙面積割合が同じであるが、試料番号6では、枠状接着層60aの線幅と仕切り用接着層60bの線幅とが同じではなく、仕切り用接着層60bの幅を20%増加させ、枠上接着層60aの幅を10%減少させ、トータルの面積では同一となるように変化させた。さらに、試料番号7は、試料番号5と空隙面積割合が同じであるが、試料番号7では、枠状接着層60aの線幅と仕切り用接着層60bの線幅とが同じではなく、仕切り用接着層60bの幅を20%増加させ、枠上接着層60aの幅を10%減少させ、トータルの面積では同一となるように変化させた。
試料番号8
試料番号8では、図1Bに示すように、素子本体4の外側主面4cに、外側主面の強化層16を、Si-B-Zn-O系ガラスで形成した以外は、試料番号1と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号8の仕様を表1に示す。
試料番号9~14
試料番号9~14では、図1Bに示すように、素子本体4の外側主面4cに、外側主面の強化層16を、Si-B-Zn-O系ガラスで形成した以外は、試料番号2~7と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号9~14の仕様を表1に示す。
試料番号15
試料番号15では、外側主面の強化層16を、ポリイミド樹脂で形成した以外は、試料番号8と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号15の仕様を表1に示す。
試料番号16
試料番号16では、外側主面の強化層16を、エポキシ樹脂で形成した以外は、試料番号8と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号15の仕様を表1に示す。
試料番号17
試料番号17では、外側主面の強化層16を形成することなく、図1Cに示すように、内側主面の強化層16を形成した以外は、試料番号8と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号17の仕様を表1に示す。
試料番号18
試料番号18では、内側主面の強化層16を、ポリイミド樹脂で形成した以外は、試料番号17と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号18の仕様を表1に示す。
試料番号19
試料番号19では、内側主面の強化層16を、エポキシ樹脂で形成した以外は、試料番号17と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号19の仕様を表1に示す。
試料番号20~32
試料番号20~32では、図3A2~図3A14に示すように、接着層60の形成パターンを変化させた以外は、試料番号1と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号20~32の仕様を表1に示す。
試料番号33および34
試料番号33および34では、接着層60の線幅を変えて、空隙層62の面積割合を変化させた以外は、試料番号1と同様にして積層セラミックコンデンサ2を作製した。試料番号33および34の仕様を表1に示す。
試料番号35
試料番号35では、図4において、ダミーブロック無しで、従来の方法で作成した厚み100μmの単一の素子本体4のみを、保持板30で保持し、素子本体4の両端面に、それぞれ端子電極6および8を形成して積層セラミックコンデンサを作製した。試料番号35の仕様を表1に示す。
<3点曲げ強度>
得られた積層セラミックコンデンサ2に対して、測定器(商品名:5543、Instron社製)を用いて3点曲げ強度を測定した。測定時に試験片を支える2点間の治具距離は400μmとし、測定速度は0.5mm/minとし、、試験数10個で測定して得られた値の平均値(単位:MPa)を測定した。試料番号2の3点曲げ強度を100%としたときの各試料の相対値を表1に示す。なお、試料番号1の3点曲げ強度は200MPaであった。
<音鳴きの有無>
音鳴きは、各コンデンサ試料を積層基板の内部に埋め込み実装し、コンデンサに試験用駆動電圧を印加し、音圧レベルを測定することにより評価した。
音圧レベルの測定は、FAV-3簡易型無響箱(国洋電気工業製)、信号発生器、確認用のオシロスコープ及び解析ソフトDS-0221(小野測器製)を用い、無響箱内にマイク及びサンプル(コンデンサが実装された回路基板)を入れ、サンプルをマイクから5cm離して配置した状態で、信号発生器によって周波数:3kHz、DCバイアス:10Vという発振条件で交流電圧を印加し、その時に回路基板に発生する音圧を測定した。
音圧レベルに関しては、一般的に不快に感じる音圧の水準となる30dBを基準とした。表において、音鳴きの評価を有無で表した。本評価では30dB以下を良好=音鳴きが『無』とし、音圧レベルが30dBを超える場合には、音泣きがあるとして、『有』とした。
表1より、特定面積割合の空隙層を有する接着層が存在することにより、いわゆる音鳴き現象を低減することができ、さらに、曲げ強度も十分な積層セラミックコンデンサが得られることが確認できた。また、外側主面の強化層または内側主面の強化層を形成することで、強度がさらに向上することが確認できた。さらに、接着層の形成パターンを、図3A6などのように、仕切り用接着層60bは、相互に異なる方向に延びる仕切り用接着層60b同士が、相互に交差とすることで、強度がさらに向上することが確認できた。