本発明は一般には、抗体に基づくトランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスの治療に関連する。具体的には、本発明は、ヒトトランスサイレチン(TTR)およびその抗原に特異的に結合する新規な分子に関連し、特に、TTRのミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態または凝集した形態あるいはそのフラグメントを認識し、かつ、そのような病原性TTRアイソタイプによって誘導される疾患および状態の処置において有用であるヒト由来の組換え抗体、同様にまた、そのフラグメント、誘導体および変異体に関連する。
加えて、本発明は、TTRアミロイドーシスに伴う疾患(例えば、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、老年性全身性アミロイドーシス(SSA)、全身性家族性アミロイドーシス、軟膜/中枢神経系(CNS)アミロイドーシス(アルツハイマー病を含む)、TTR関連眼アミロイドーシス、TTR関連腎アミロイドーシス、TTR関連高チロキシン血症、TTR関連靱帯アミロイドーシス(手根管症候群、肩腱板断裂および腰部脊柱管狭窄を含む)、および子癇前症など)を特定するための診断ツールとして、同様に、TTRアミロイドーシスに伴う疾患(例えば、前記疾患など)に関連づけられる障害を処置するための受動的ワクチン接種戦略としてそれらの両方で有益であるそのような結合性分子、抗体およびそれらの模倣体を含む医薬組成物および診断組成物に関連する。
さらには、本発明は、病原性TTRアイソタイプ(例えば、アミロイド沈着物に存在するミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRなど)によって誘導される疾患または状態を診断する方法であって、病原性TTRアイソタイプのレベルが、抗TTR抗体投与後の対象から得られる体液のサンプルにおいてアッセイされ、ただし、投与前に採取されたコントロールサンプルと比較されたとき、病原性TTRアイソタイプの存在またはそのレベルにおける変化(例えば、TTRと抗TTR抗体との免疫複合体の存在によって求められるようなもの)により、当該疾患および/または状態が示される方法に関連する。
トランスサイレチン(TTR)は、以前にはプレアルブミンと呼ばれていたものであり、体内におけるチロキシンおよびレチノールの輸送に関与する127アミノ酸の可溶性タンパク質(NCBI参照配列:NP_000362.1)である。TTRは、肝臓によって血液内に、また、脈絡叢によって脳脊髄液内に分泌され、膵臓アルファ細胞または網膜上皮のような特定の組織においてもまた発現される。TTR合成は胎児期から始まり、全生涯にわたって継続する。TTRが高濃度で血漿中(3.6μM~7.2μM)およびCSF中(0.04μM~0.4μM)に存在しており、典型的には、生理学的状態のもとでは約55kDaの可溶性のホモ四量体を形成している。
十分に解明されておらず、また、酸性pH、酸化ストレスおよび局所的因子を含むかもしれない特定の状態のもとで、TTRタンパク質は代わりの三次元立体配座を取り、毒性となる。
ミスフォールドしたTTRタンパク質の毒性が、中年期の成人を襲う家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)と呼ばれる希な常染色体優性の神経変性障害を調べることによって発見されている(Plante-Bordeneuve他、Lancet Neurol.、10(2011)、1086~1097)。FAPは、診断後10年間のうちに死に至る進行性の感覚障害、運動障害および自律神経障害によって特徴づけられる。神経病変部には、TTRタンパク質から構成される無定型凝集物およびアミロイド原線維の沈着が伴う。Val30Met置換が、とりわけこの疾患が風土病的である地域(例えば、北部ポルトガルなど)ではFAPを引き起こす最も高頻度の変異であり、しかし、100を超える異なる変異が既にTTR遺伝子において特定されている(下記の表IVを参照のこと)。働いている病態生理学的機構は、これらの変異がTTR四量体の構造的安定性を変化させ、これにより、TTRのミスフォールディングを促進させ、毒性TTR種の形成をもたらすという点で、病原性変異のすべてについて同一である(Saraiva他、Curr.Med.Chem.、19(2012)、2304~2311)。
TTR毒性がまた、Val122Ile変異の結果として認められており、この変異がアフリカ系アメリカ人の住民および西アフリカの住民において高頻度で見出されている(3%~5%)。この変異には、家族性アミロイド心筋症(FAC)、すなわち、心筋における多量のTTR蓄積により、心臓衰弱、そして、最終的には心不全が引き起こされる状態が伴う(Ruberg他、Circulation、126(2012)、1286~1300)。
TTRタンパク質配列における変異がTTR毒性のための絶対的な要件ではなく、野生型TTRタンパク質もまた、ミスフォールディングおよび毒性凝集物の形成を生じさせやすい。例えば、老年性全身性アミロイドーシス(SSA)が、心臓衰弱と、心筋における野生型TTRの凝集物の蓄積とによって特徴づけられる(Ikeda、Amyloid、18 Suppl 1(2011)、155~156;Dungu他、Heart、98(2012)、1546~1554)。野生型TTRの沈着物がまた、手根管症候群、肩腱板断裂および腰部脊柱管狭窄を含めて、靱帯および腱の炎症の多数の事例で認められる(Sueyoshi他、Hum.Pathol.、42(2011)、1259~1264;Gioeva他、Amyloid、20(2013)、1~6)。さらには、TTRアミロイドーシスが最近では、子癇前症に悩む母親の胎盤において報告されている(Kalkunte他、Am.J.Pathol.、183(2013)、1425~1436)。
TTRアミロイドーシスを伴う疾患のための様々な処置は限定的であり、大部分が侵襲的であり、これらの場合、主として処置は、症状に起因して行われるものである。FAPの場合、様々な処置が、神経障害性疼痛を管理するための鎮痛剤、変異したTTRタンパク質の主たる根源を除くための肝移植、および、タファミジスによる処置に頼っている。タファミジスは、TTR四量体に結合し、その立体配座を安定化する小分子である。タファミジスは、TTR四量体の解離、すなわち、毒性TTR種の形成を引き起こすミスフォールディング経路における律速段階を妨げるように作用する。タファミジスが欧州ではFAPの処置のために承認されたが、合衆国では承認されておらず、また、その治療効力は、事例の最も良い場合でも、疾患の進行を遅くすることに限定されている。現在、ミスフォールドしたTTRタンパク質を標的とする利用可能な処置はない。
上記を考慮すると、新規な治療戦略が、TTRアミロイドーシスに伴う疾患の有効かつ安全な治療のために求められている。
この技術的課題が、請求項において特徴づけられ、また、下記においてさらに記載され、また、実施例および図面において例示される実施形態によって解決される。
Plante-Bordeneuve他、Lancet Neurol.、10(2011)、1086~1097
Saraiva他、Curr.Med.Chem.、19(2012)、2304~2311
Ruberg他、Circulation、126(2012)、1286~1300
Ikeda、Amyloid、18 Suppl 1(2011)、155~156
Dungu他、Heart、98(2012)、1546~1554
Sueyoshi他、Hum.Pathol.、42(2011)、1259~1264
Gioeva他、Amyloid、20(2013)、1~6
Kalkunte他、Am.J.Pathol.、183(2013)、1425~1436
本発明は、TTRアミロイドーシスに伴う疾患および状態の予防的処置または治療的処置において使用されるための抗トランスサイレチン(TTR)抗体および同等なTTR結合性分子を提供する。より具体的には、TTRのミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態または凝集した形態を認識する治療的に有用なヒト由来の組換え抗体、同様にまた、そのフラグメントおよび誘導体が提供される。
ミスフォールドしたTTRの凝集物には、細胞ストレス、酸化ストレス、炎症応答およびアポトーシスのマーカーが症状発症の何年も前から伴っている(Macedo他、Mol.Med.、13(2007)、584~91)。正常に折り畳まれなかったタンパク質を認識し、これを分解する身体の自然能力は保護的であり、患者が毒性TTRタンパク質を排除する能力における患者間の違いが間違いなく、疾患発症年齢および疾患進行速度における違いの一因である。この仮説の裏付けとして、FAPドナーからの肝移植を受けている患者は、病原性TTRタンパク質に対する抗体をすぐに発達させることが示されており(Ando他、Transplantation、73(2002)、751~755)、また、変異したTTRタンパク質に対する抗体力価が高いFAP患者は、そのような抗体を有しない患者よりも遅い疾患発症を有することが示されている(Obayashi他、Clin.Chim.Acta.、419(2013)、127~131)。加えて、病原性TTR立体配座に対する能動免疫法では、TTR沈着がFAPトランスジェニックマウスにおいてほぼ完全に除かれることが示されている(Terazaki他、Lab.Invest.、86(2006)、23~31)。
しかしながら、免疫に基づく戦略を治療的介入のために調べることは魅力的であるように思えたかもしれないが、これまでのところ、抗TTR抗体をTTR関連疾患の処置のために使用することは進められていない。例えば、国際特許出願公開WO2010/030203では、TTRに対するある具体的な単離されたマウスモノクローナル抗体が、FAPのためのスクリーニングにおける使用、ならびに、関連疾患の研究および処置における使用のために記載され、提案されている。しかしながら、マウスモノクローナル抗体はヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を誘導するので、ヒトにおける治療には適していない。したがって、この国際特許出願は失効し、また、その後の開発が何ら未だ発表されなかったので、外見上は、抗体に基づく治療的取り組みは今日まで続けられていないようである。むしろ、抗TTR抗体については、TTRアミロイドーシスの患者のためのその診断的利用のみがさらに検討されている;例えば、Phay M.他、Rejuvenation Res.、2013年10月28日[印刷に先立つEpub]を参照のこと。
対照的に、本発明に従って行われた様々な実験は、ヒト身体において成熟化した抗体で、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種、変異したTTR種および/または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメントについて特異的であるヒト由来のモノクローナルなTTR特異的抗体の単離に成功した。ヒト対象およびヒト患者(これらはそれぞれ、ヒト由来のモノクローナル抗TTR抗体と、その可変ドメインをコードするcDNAとがそれぞれ単離されているB細胞の供給源である)は、ミスフォールドしたTTRの実質的な量を示さず、また、症状を有しない病原性アイソタイプに伴う状態であった。しかしながら、本発明の別の実施形態においては、ヒト由来のモノクローナル抗TTR抗体と、その可変ドメインをコードするcDNAとがそれぞれ単離されることがあるB細胞の供給源は、TTRアミロイドーシスに伴う疾患および/または障害の症状を示す患者である。したがって、本発明のヒトモノクローナル抗TTR抗体およびその誘導体が、ヒトにおいて非免疫原性であることに加えて、治療的に有益な効果を示すことを予想することは賢明なことである。
したがって、本発明は、TTRを特異的に認識することができるヒト由来の組換え抗体、抗原結合フラグメントおよび類似する抗原結合性分子に関する。別途示されない場合、「TTRを特異的に認識する」、「TTRに対して/について特異的な抗体」および「TTR抗体」によって、TTRのネイティブな単量体形態に対して特異的に、全般的に、また、総体的に結合する抗体;TTRのいずれの形態に対しても、例えば、変異したTTR、オリゴマー状TTR、原線維性TTRおよび/または非原線維性TTRに対して特異的に結合する抗体が意味される。本明細書中には、TTRの全長型形態および/またはフラグメントならびに/あるいはミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態および/または凝集した形態について選択的であるヒト由来抗体が提供される。
上述の通り、好ましくは本発明の抗TTR抗体は組換え抗体であり、ただし、この組換え抗体では、可変重鎖および/または可変軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、好ましくは2つの相補性決定領域(CDR)またはより好ましくは3つすべての相補性決定領域(CDR)、ならびに/あるいは、実質的には可変領域全体が、抗TTR抗体を産生したヒトメモリーB細胞から得られるmRNAに由来するcDNAによってコードされる。好ましい実施形態において、本発明の抗TTR抗体は、添付されている実施例および図において例示される主題抗体について明らかにされるような結合特性および生物学的特性の少なくとも1つを、好ましくは、例示的抗体のNI-301.59.F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1について明らかにされるような結合特性および生物学的特性の少なくとも1つを任意の組合せでも示す。
本発明の特に好ましい実施形態において、抗TTR抗体またはそのTTR結合フラグメントは、図1に示される可変領域VHおよび/または可変領域VLによって特徴づけられる、抗体の免疫学的結合特性を明らかにする。
抗体の抗原結合フラグメントは、単鎖Fvフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメントおよびF(ab’)2フラグメント、または、どのような他の抗原結合フラグメントも可能である。具体的な実施形態において、とりわけ、抗体またはそのフラグメントはヒトIgGアイソタイプ抗体である。代替では、抗体は、ヒト-齧歯類のキメラ抗体、または、齧歯類化された抗体、例えば、マウス抗体またはマウス化抗体、ラット抗体またはラット化抗体などであり、齧歯類型が、診断方法および動物における研究のために特に有用である。
さらには、本発明は、本発明の抗体またはその活性フラグメントを含む組成物、ならびに、TTRアミロイドーシスに関連づけられる障害の防止、診断または処置においてそのような組成物を使用する免疫治療法および免疫診断法であって、有効量の組成物がその必要性のある患者に投与される方法に関連する。
本発明はまた、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。好ましくは、前記可変領域は、図1に示されるような可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。本発明の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドはcDNAであり、好ましくは、変異型TTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種および/または凝集したTTR種との反応性を有する抗体を産生するヒトメモリーB細胞から得られるmRNAに由来するcDNAである。
したがって、本発明はまた、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、および、該ベクターにより形質転換される宿主細胞ならびにTTRに対して特異的である抗体および同等な結合性分子を製造するためのそれらの使用を包含する。本発明の更なる態様では、抗体又は結合性分子は、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種又はそのフラグメントに結合可能である。抗体およびその模倣体を組換え製造するための様々な手段および方法ならびに競合する結合性分子(これは抗体であってもよく、または抗体でなくてもよい)についてスクリーニングするための様々な方法がこの技術分野では知られている。しかしながら、特にヒトにおける治療的適用に関して本明細書中に記載されるように、本発明の抗体は、当該抗体の適用が、キメラ抗体について、また、ヒト化抗体についても他の場合には認められるそのような抗体に対する免疫応答を実質的に有していないという意味で、ヒト抗体である。
さらに、本明細書中には、TTR(具体的には、変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、または凝集したTTR種またはフラグメント)をサンプルにおいて、および/またはインビボにおいて特定するために使用することができる組成物および方法が開示される。開示された抗TTR抗体およびその結合フラグメントは、ヒトの血液、血漿、血清、唾液、腹腔液、脳脊髄液(「CSF」)および尿を、例えば、ELISAに基づくアッセイまたは表面適合化アッセイを使用することによって、サンプル中のTTRならびに/あるいは変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種あるいはそのフラグメントの存在についてスクリーニングするために使用することができる。1つの実施形態において、本発明は、変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種あるいはそのフラグメントに関連づけられる障害を対象において診断する、またはその進行をモニターする方法であって、診断される対象から得られるサンプルにおける変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、または凝集したTTR種またはフラグメントの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体またはTTR結合性分子、ならびに/あるいは、それらのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、または凝集したTTR種またはフラグメントについての結合性分子を用いて明らかにすることを含み、ただし、この場合、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、または凝集したTTR種またはフラグメントの存在により、当該障害が示される方法に関連する。
さらには、本発明の1つの実施形態において、抗TTR抗体、および、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含むTTR結合性分子が、ヒトまたは動物の身体におけるTTR(具体的には、変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、または凝集したTTR種またはフラグメント)のインビボ検出(これはインビボ画像化とも呼ばれる)のための、あるいは、治療剤および/または診断剤をヒトまたは動物の身体においてTTR(具体的には、変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種あるいはフラグメント)に対して標的化するための組成物を調製するために提供される。本明細書中に開示される方法および組成物は、TTRアミロイドーシスが伴い、かつ、例えば、様々な形態のTTRの出現によって特徴づけられる障害において助けとなることができ、疾患の進行と、対象に施される治療の治療効力とを、例えば、インビボ画像化に関連づけられる診断方法でモニターするために使用することができる。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗TTR抗体および/またはTTR結合性分子が提供され、ただし、この場合、前記インビボ検出(画像化)は、シンチグラフィー、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法または磁気共鳴画像法(MRI)を含む。
したがって、TTRアミロイドーシスに関連づけられる疾患を処置するための、診断するための、または防止するための方法を提供することが、本発明の具体的な目的である。本発明の方法は、効果的な濃度のヒト抗体または抗体誘導体を、当該抗体がTTR又はそのフラグメント、好ましくはミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種又はそのフラグメント、を標的化する対象に投与することを含む。
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体によって特異的に認識されるTTR(好ましくは、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種あるいはそのフラグメント)のエピトープを有するペプチドを提供する。前記ペプチドは、詳細な説明において、また、実施例において下記で示されるようなアミノ酸配列、または、1つもしくは複数のアミノ酸が置換され、欠失され、および/または付加されるその改変された配列を含むか、あるいは、そのようなアミノ酸配列またはそのような改変された配列からなり、ただし、ペプチドは依然として、同族の抗体によって認識される。述べられたように、そのようなペプチドは抗原として使用することができ、すなわち、免疫応答を対象において誘発し、本発明の抗体の産生をインビボにおいて刺激するための免疫原であり、したがって、免疫応答を対象において誘発し、本発明の抗体の産生をインビボにおいて刺激するために有用である。したがって、本発明のペプチドはワクチンとして特に有用である。
加えて、本発明は、TTRアミロイドーシスに伴う疾患を対象において診断するための方法であって、前記ペプチドに結合する抗体の存在を前記対象の生物学的サンプルにおいて明らかにする工程を含む方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、TTRアミロイドーシスに伴う疾患を診断する、または、抗TTR抗体による前記疾患の処置をモニターする、または、抗TTR抗体の診断有用性もしくは治療有用性を明らかにする方法であって、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRのレベルをサンプルにおいて、例えば、抗TTR抗体を対象に投与した後の対象から得られる血液においてアッセイすることを含み、ただし、この場合、コントロール(例えば、抗TTR抗体投与前の前記対象から得られるサンプルなど)と比較して、前記対象のサンプルにおけるミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRの存在または上昇したレベルにより、TTRアミロイドーシスに伴う疾患が示される方法に関連する。
本発明の1つの好ましい実施形態において、特に、非ヒト動物を、実施例13において例示されるような組換えのヒト由来抗体を試験するために使用するとき、一般にはヒトにおける使用のために意図される他の抗TTR抗体を試験するために使用するとき、サンプルにおけるミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRのレベルが、抗TTR抗体と、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRとの間で形成される複合体を、例えば、抗ヒトIgG抗体または抗イディオタイプ抗体による免疫沈殿により測定することによってアッセイされる。
診断態様に関して、特にヒト対象およびヒト患者のための診断態様に関して、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRならびに抗TTR抗体とのその複合体の存在および上昇したレベルはそれぞれ、TTRアミロイド沈着物の存在をヒト身体において、例えば、患者または対象の心臓、末梢神経系(PNS)、眼、筋肉、胃腸管、腎臓、血管系および中枢神経系(CNS)において示している。したがって、本発明の方法は、一方では対象の身体におけるTTRアミロイドーシスに伴う疾患の特定および決定を可能にし、他方では患者の身体からのTTR沈着物の除去(それにより、これもまた、与えられた処置の治療的進展、および、TTRアミロイドーシスを処置するための薬物(例えば、抗TTR抗体など)の効力を示している)を可能にする。
したがって、実施例13において明らかにされるように、本発明の抗TTR抗体は、病理学的TTR沈着物の安定性を変化させるための十分な親和性で、例えば、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRを沈着物から捕獲し、体液内に、具体的には血液内に除くための十分な親和性で、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRと結合することができる。投与後の指定された時間間隔、すなわち、病理学的TTRおよび抗TTR抗体との複合体のレベルがそれぞれ測定される時間枠が、実務医師によって決定される。通常、1週間未満の時間間隔が使用される。好ましい実施形態において、抗TTR抗体またはその抗原結合フラグメントを患者または対象に投与した後の患者または対象からのサンプルにおける病理学的TTRのレベルが48時間以下の後で決定される(実施例13もまた参照のこと)。
本発明はまた、上記で記載される方法におけるいずれかの抗TTR抗体およびTTR結合性分子の使用に関連する。しかしながら、好都合な特性のために、具体的にはヒト由来であることのために、本明細書中に開示される本発明の抗TTR抗体の使用が好ましい。好ましい実施形態において、抗体は、NI-301.59F1、NI-301.35G11、NI-301.37F1、NI-301.2F5、NI-301.28B3、NI-301.119C12、NI-301.5D8、NI-301.9D5、NI-301.104F5、NI-301.21F10、NI-301.9G12、NI-301.12D3、NI-301.37F1-PIMC、NI-301.44E4、NI-301.18C4、NI-301.11A10、NI-301.3C9、NI-301.14D8、NI-301.9X4およびNI-301.14C3から選択されるどのような抗体とも実質的に同じ結合活性および生物学的活性を示す。抗TTR抗体はまた、下記において詳しく記載されるような抗体の標識化を含めて、診断する上記方法の取り扱いを容易にするために変化させることができる。
本発明のさらなる実施形態が下記の説明および実施例から明らかであろう。
NI-301.59F1、NI-301.35G11、NI-301.37F1、NI-301.2F5、NI-301.28B3、NI-301.119C12、NI-301.5D8、NI-301.9D5、NI-301.104F5、NI-301.21F10、NI-301.9G12、NI-301.12D3、NI-301.37F1-PIMC、NI-301.44E4、NI-301.18C4、NI-301.11A10、NI-301.3C9、NI-301.14D8、NI-301.9X4およびNI-301.14C3の各ヒト抗体の可変領域のアミノ酸配列。フレームワーク領域(FR)および相補性決定領域(CDR)が示され、CDRには下線が引かれる。Kabat番号表記スキームが使用された(http://www.bioinf.org.uk/abs/を参照のこと)。
直接的ELISAによる、凝集した野生型TTRおよび変異型TTRに対する結合。A、B、C:ELISAプレートを、凝集したヒト野生型TTR(●)、凝集した組換えV30M-TTR(▼)およびウシ血清アルブミン(BSA)(■)により10μg/mlで被覆し、4pM~400nMの濃度範囲での下記のヒトモノクローナル抗体とインキュベーションした:A)NI-301.59F1、B)NI-301.35G11、および、C)NI-301.37F1。EC50値を、データ点を最小二乗法により当てはめることによって推定した。NI-301.59F1:凝集wt-TTRのEC50=3.0nM、凝集V30M-TTRのEC50=15.5nMNI-301.35G11:凝集wt-TTRのEC50=3.9nM、凝集V30M-TTRのEC50=5.0nMNI-301.37F1:凝集wt-TTRのEC50=0.35nM、凝集V30M-TTRのEC50=0.15nM
ドットブロットでの凝集したTTRについての特異性。ネイティブ立体配座(1)または凝集した立体配座(2)でのヒト野生型TTRタンパク質、および凝集した組換えV30M-TTRタンパク質(3)をニトロセルロースメンブランに置き、下記の抗体とインキュベーションした:A)TTRに対する市販のウサギポリクローナル抗体(Dako-A0002;150ng/ml)、B)NI-301.59F1、C)NI-301.35G11、および、D)NI-301.37F1(B、CおよびD:ヒトモノクローナル抗体、50nM)。
ウエスタンブロットでの凝集したTTRについての特異性。ネイティブ立体配座(1)または凝集した立体配座(2)でのヒト野生型TTRタンパク質(300ng)、および、野生型マウスの肝臓抽出物(10μgの総タンパク質)(3)をSDS-PAGEゲルに載せ、下記の抗体を用いたウエスタンブロットのための処理した:A)TTRに対する市販のウサギポリクローナル抗体(Dako-A0002;150ng/ml)、B)NI-301.59F1、C)NI-301.35G11、および、D)NI-301.37F1(B、CおよびD:ヒトモノクローナル抗体、50nM)。高分子量凝集物の解離を防止するために、凝集したTTRのサンプルを、ゲルに載せる前にグルタルアルデヒドにより架橋した(1%、5分)。
ウエスタンブロットでのヒト血漿中TTRに対する結合の非存在。コントロール(n=5)、無症候性変異保因者(n=5)およびFAP患者(n=4)からの血漿サンプル(0.5μl)をSDS-PAGEゲルに載せ、下記の抗体を用いたウエスタンブロットのための処理した:A)TTRに対する市販のウサギポリクローナル抗体(Dako-A0002;150ng/ml)、B)二次抗体のみ(抗ヒトIgG-HRP、1/10000の希釈)、C)NI-301.35G11、および、D)NI-301.37F1(CおよびD:ヒトモノクローナル抗体、50nM)。
ドットブロットでのヒト血漿中TTRに対する結合の非存在。ネイティブ立体配座および凝集した立体配座での純粋な野生型TTRタンパク質および変異型TTRタンパク質、ならびに、コントロール、無症候性変異保因者およびFAP患者からの血漿サンプルをニトロセルロースメンブランに置き、下記の抗体とインキュベーションした:A)TTRに対する市販のウサギポリクローナル抗体(Dako-A0002;150ng/ml)、B)二次抗体のみ(抗マウスIgG2a-HRP、1/10000の希釈)、および、C)マウスキメラ抗体NI-301.mur35G11(10nM)。サンプル1~6:150ngの1)凝集wt-TTR、2)ネイティブwt-TTR、3)BSA、4)ネイティブV30M-TTR、5)ネイティブL55P-TTR、および、6)ネイティブY78F-TTR。サンプル7~18:2μlの採取された血漿、7~10)コントロール(n=4)、11~14)無症候性変異保因者(n=4)、および、15~18)FAP患者(n=4)。
溶液中の凝集したTTRに対する特異的結合。ネイティブ立体配座および凝集した立体配座でのヒト野生型TTRタンパク質および組換えTTRタンパク質、ならびに、3つの異なる希釈度でのヒト血漿サンプルを、下記の抗体を使用するTTR免疫沈殿(IP)のために使用した:A)TTRに対する市販のウサギポリクローナル抗体(Dako-A0002)、B)NI-301.35G11、および、C)NI-301.37F1。免疫沈殿させたタンパク質をSDS-PAGEに付し、Dako-A0002抗体(150ng/ml)を用いたウエスタンブロット(WB)によって検出した。レーン1~2:WB負荷コントロール:300ngの1)ヒトwt-TTR、2)組換えwt-TTRレーン3~6:純粋なTTRタンパク質に対するIP:3)ヒトネイティブwt-TTR、4)ヒト凝集wt-TTR、5)組換えネイティブwt-TTR、および、6)組換え凝集wt-TTRレーン7~10:PBS希釈のヒト血漿に対するIP、7)10倍、8)100倍、9)1000倍、および、10)PBSのみ
FAPマウス組織におけるTTRに対する特異的結合。ヒトV30M-TTR対立遺伝子をTTRノックアウト(KO)バックグラウンドで発現するトランスジェニックマウスは、様々な組織における無定型TTR沈着物およびアミロイドTTR沈着物を含めて、FAPの組織病理学的特徴を再現する。A)FAPマウスおよびB)TTR-KOマウスから集められた肝臓組織切片および腸組織切片を、下記の抗体を使用する免疫組織化学のために処理した:1)TTRに対する市販のウサギポリクローナル抗体(Dako-A0002;1/1000の希釈)、2)NI-301.35G11、および、3)NI-301.37F1(2および3:ヒトモノクローナル抗体、50nM)。
ヒト組織における、ネイティブTTRではなく、ミスフォールドしたTTR沈着物に対する特異的結合。様々な抗体を、FAP患者皮膚生検および健康なコントロール膵臓からの切片におけるTTRと結合するそれらの能力について特徴づけた:FAPについて特徴的であるミスフォールドしたTTRの蓄積が患者皮膚生検において存在し、これに対して、膵臓アルファ細胞はTTRの内因性発現を示す。切片を、下記の抗体を使用する免疫組織化学のために処理した:1A)TTRに対する市販のウサギポリクローナル抗体(Dako-A0002;1/1000の希釈)、1B)HRP結合の抗ウサギIgG抗体(1/125の希釈)、2A)マウスキメラ抗体NI-301.mur35G11(50nM)、2B)HRP結合の抗マウスIgG2a抗体(1/125の希釈)、3A)NI-301.37F1(50nM)、および、3B)HRP結合の抗ヒトIgG(1/125の希釈)。
ペップスキャン(pepscan)分析によって評価されるTTR結合エピトープ。TTRに対する抗体結合エピトープを、ペプチドスキャン法を使用して決定した。完全なヒト野生型TTR配列を覆うペプチド(スポット1~29)に加えて、選択されたTTR変異もまたメンブラン上に示された(スポット30~44)。ペプチドスキャン用メンブランを50nMでの下記の抗体とインキュベーションした:A)NI-301.59F1、B)NI-301.35G11、および、C)NI-301.37F1。表D)にまとめられるように:NI-301.59F1はEEEFVEGIY(TTR61-69)と結合する;NI-301.35G11はGELHGLTTEEE(TTR53-63)と結合する;L55P変異は抗体結合を妨げる;NI-301.37F1はWEPFA(TTR41-45)と結合する;E42G変異は抗体結合を妨げる。述べられたエピトープの配列要件を決定するために、TTRに対する抗体結合エピトープをさらに、アラニンスキャン法を使用して特定した。ヒト野生型TTRタンパク質の全配列が、TTRタンパク質のどのアミノ酸からでも始まる長さが15アミノ酸の151個の連続するペプチドの一組としてメンブラン上に示された。それぞれのペプチドについて、10位のアミノ酸をアラニンによって、あるいは、最初のアミノ酸がアラニンであるときにはグリシンまたはプロリンによって置換した。ペプチドスキャン用メンブランを20nMでの下記の抗体とインキュベーションした:E)NI-301.59F1、F)NI-301.35G11、および、G)NI-301.37F1。表H)にまとめられるように:NI-301.59F1はEEFXEGIY(TTR62-69)と結合する。NI-301.35G11はELXGLTXE(TTR54-61)と結合する。NI-301.37F1はWEPFA(TTR41-45)と結合し、ただし、Xはアミノ酸を表す;E42のアラニンによる置換は結合を妨害せず、しかし、グアニンによる置換は、Cで報告されるように抗体結合を妨げた。
表面プラズモン共鳴によって評価される溶液中のTTRタンパク質に対する抗体結合速度論。TTRタンパク質に対する抗体NI-301.37F1の結合速度論を表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。抗体NI-301.37F1を抗ヒトIgG抗体によってセンサー上に捕捉し、TTRタンパク質溶液を、3.2nMから316nMにまで及ぶ濃度でセンサー表面を覆って流した。単純な1:1の結合モデルを使用して、データを当てはめ、それぞれの会合定数(ka)および解離定数(kd)ならびに親和性(KD)を導いた。結合特性を、A)ネイティブ立体配座でのヒト野生型TTRタンパク質、B)変性させたヒト野生型TTRタンパク質(ミスフォールドした立体配座)、および、C)組換え変異型TTR-L55Pタンパク質について求めた。ネイティブ野生型TTR:ka=未決定、kd=未決定、KD>316nM変性させた野生型TTR:ka=2.1 104M-1s-1、kd=2.6 10-5s-1、KD=1.2nM組換えTTR-L55P:ka=3.3 104M-1s-1、kd=4.6 10-5s-1、KD=1.4nM
抗TTR抗体による長期処置は病理学的TTR沈着をFAPマウスモデルにおいて低下させる。FAPマウス(Tg(6.0hMet30)×muTTR-KO)に、マウスキメラNI-301.37F1抗体またはアイソタイプコントロール抗体の12週間にわたる3mg/kg(i.p.)での毎週の投与を与えた。処置期間を終了したとき、組織を集め、TTR沈着の程度を免疫蛍光によって定量化した。A)7月齢マウスにおける処置の影響(n=14匹~15匹のマウス/群);B)17月齢マウスにおける処置の影響(n=10匹のマウス/群)。両側非対t検定による群比較。
インビボにおける病理学的TTR沈着物に対する抗体結合。標的関与を、30mg/kg(i.p.)での抗体NI-301.37F1の単回用量またはPBSを投与した48時間後に成体FAPマウス(7月)において特徴づけた。病理学的TTR沈着物と注入抗体の局在化とを免疫蛍光によって同時に検出した。A、D)(A)NI-301.37F1または(D)PBSが注入されたマウスの腎臓における病理学的TTR沈着物。B、E)(B)NI-301.37F1または(E)PBSが注入されたマウスにおけるヒト抗体の検出。C、F)TTRおよびNI-301.37F1を示す重ね合わされた画像、(C)共局在化および(F)非特異的染色の非存在。
組織を使用しない、インビボにおけるミスフォールドしたTTRの検出。成体FAPマウスに、3mg/kg(i.p.)でのNI-301.37F1抗体またはアイソタイプコントロール抗体の単回投与を与えた。血液サンプルを抗体注入前(t=0)および抗体注入後48時間(t=48h)において集めた。血漿サンプルを抗ヒトIgG抗体との免疫沈殿によって処理し、検出のために、A)立体配座非依存的な抗TTRポリクローナル抗体(Dako A0002、150ng/ml)、および、B)NI-301.37F1(20nM)を使用するウエスタンブロットによって分析した。並行して、注入を受けていないFAPマウスから得られる血漿サンプルを処理前にインビトロにおいて抗体NI-301.37F1とインキュベーションした。
ELISAによって凝集性タンパク質に対して評価される抗体特異性。TTRタンパク質についての抗体特異性を、選択された凝集性タンパク質に対する結合を直接的ELISAにより測定することによって評価した。抗体結合を4nMおよび20nMにおいて評価し、シグナル強度を、抗TTR抗体の非存在下でそれぞれのアッセイについて測定されるバックグランドレベルに対する変化倍数で表した。A~B)20nM(A)および4nM(B)でアッセイされるNI-301.37F1結合C~D)20nM(C)および4nM(D)でアッセイされるNI-301.44E4結合。
発明の詳細な説明
本発明は一般には、トランスサイレチン(TTR)の病原性アイソタイプ(多くの場合には変異型アイソタイプおよび/またはミスフォールドしたアイソタイプ)の存在に伴う疾患および状態を検出するための免疫療法方法および非侵襲的方法に関連する。より具体的には、本発明は、選択されたヒトドナー集団から得られる配列情報に基づいて作製され、そのようなTTRアイソタイプおよびその抗原に結合することができる組換えヒト由来モノクローナル抗体およびそれらの抗原結合フラグメントに関連する。本発明の組換えヒト由来モノクローナル抗体は好都合には、病理学的な変化したTTR種の処置および/または診断のための標的化を可能にするミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種、変異したTTR種および/または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメントに特異的に結合することによって特徴づけられる。ヒト由来であるために、本発明の得られた組換え抗体は、治療剤として有効かつ安全であり、かつ、病理学的TTRを、偽陽性を与えることなく検出するための診断試薬として非常に特異的であることが無理なく期待され得る。
加えて、本発明の抗体、同様にまた、その誘導体は、TTRアミロイドーシスを、例えば、その沈着のために、例えば、TTRにおける遺伝性変異または肝臓でのTTRの産生における欠如のために発症することの危険性をそれにもかかわらず有する臓器移植後の患者の併用療法のために使用することができる。したがって、具体的な好都合な実施形態として、本発明は、患者の処置において単独で、あるいは、例えば、臓器移植後の免疫抑制薬物、または、TTRアミロイドーシスに伴う症状のために利用される他の薬剤を受けている患者の処置においてそのどちらでも使用されるための本明細書中に記載されるヒトモノクローナル抗体およびそのどのような誘導体にも関連し、ただし、この場合、本発明の抗体およびその様々な誘導体のいずれもが、免疫抑制薬物および/またはさらなる副作用を抑制する薬剤と同時に投与されるために、あるいは、免疫抑制薬物および/またはさらなる副作用を抑制する薬剤の投与の前または後において連続して投与されるために設計される。これに関連して、本発明の抗TTR抗体およびTTR結合フラグメントは好ましくは、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である。本発明の1つの実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体、または、どのような誘導体であれ、その誘導体と、1つまたは複数の免疫抑制薬物との両方を含む医薬組成物が提供され、および/または、TTRアミロイドーシスに伴う症状のために利用される。
I.定義
別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂および2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。
用語「a」または「an」を伴う実体はそのような実体の1つまたは複数を示すことに留意しなければならない;例えば、「an antibody」(抗体)は1つまたは複数の抗体を表すことが理解される。そのようなものとして、用語「a」(または「an」)、 「one or more」(1つまたは複数)および 「at least one」(少なくとも1つ)は、本明細書中では交換可能に使用され得る。
別途具体的に示されない場合、用語「TTR」は、トランスサイレチン(TTR)の種々の形態を具体的に示すために交換可能に使用される。用語「TTR」はまた、TTRの他の配座異性体(例えば、TTRのオリゴマーならびに/あるいはミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態および/または凝集した形態)を一般に特定するために使用される。用語「TTR」はまた、TTRのすべてのタイプおよび形態(例えば、変異したTTRなど)を総称的に示すために使用される。TTRの用語の前における加えられた文字は、その具体的なオルソログが由来する生物を示すために使用され、例えば、hTTRはヒトTTRについて使用され、または、mTTRはマウス起源について使用される。加えて、別途示される場合を除き、本明細書中で使用されるTTRアミノ酸配列のための番号表記システムは、成熟型TTRタンパク質、すなわち、シグナルペプチドの切断の後で細胞によって分泌されるようなTTRタンパク質を参照する。この番号表記は、患者において見出されるTTR変異(例えば、TTR-V30MまたはTTR-L55Pなど)を規定するために使用されるものであり、しかし、トランスサイレチン前駆体タンパク質配列(NCBI参照配列:NP_000362.1)について使用されるものとは異なる。これに関連して、変異型TTRにおける位置および置換アミノ酸が、異なるが、同等な方式で示されることがある;例えば、「TTR-V30M」および「V30M-TTR」を参照のこと。
本明細書中に開示される抗TTR抗体はTTRおよびそのエピトープと特異的に結合し、また、TTRおよびそのエピトープの様々な立体配座体に特異的に結合する。例えば、本明細書中には、病理学的に変化したTTR種またはそのフラグメント(例えば、TTRのオリゴマー/原線維ならびに/あるいは変異した形態、ミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態および/または凝集した形態あるいはそのフラグメントなど)と特異的に結合する抗体が開示される。TTRの(病理学的に)変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、凝集した/凝集物という用語は、上記形態を具体的に示すために交換可能に使用される。(病理学的に)「凝集した形態」または「凝集物」の用語は、本明細書中で使用される場合、TTRの相互の誤った/病理学的な相互作用に起因する蓄積またはクラスター形成の産物を記述する。これらの凝集物、蓄積物またはクラスター形態は、TTRおよび/またはTTRフラグメントの両方、また、それらの非原線維性オリゴマーおよび/または原線維性オリゴマーならびに原線維である場合があり、あるいは、そのようなものから実質的になる場合があり、あるいは、そのようなものからなる場合がある。本明細書中で使用される場合、TTRと「特異的に結合する」、「選択的に結合する」、または「優先的に結合する」抗体に対する参照は、無関係な他のタンパク質と結合しない抗体を示す。一例において、本明細書中に開示されるTTR抗体はTTRまたはそのエピトープと結合することができ、かつ、他のタンパク質についてはバックグランドの約2倍を超える結合を示さない。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、アルファ-シヌクレイン(α-syn)、タウ、トランス活性応答DNA結合タンパク質43(TDP-43)、血清アミロイドA(SAA)、ハンチンチンタンパク質(HTT)からなる群から選択される無関係なアミロイド形成タンパク質を実質的に認識しない(例えば、図15を参照のこと)。所与のTTR配座異性体と「特異的に結合する」または「選択的に結合する」抗体は、TTRのすべての立体配座とは結合しない抗体、すなわち、少なくとも1つの他のTTR配座異性体とは結合しない抗体を示す。
例えば、本明細書中には、TTRのミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態および/または凝集した形態にインビトロにおいて、また、TTRアミロイドーシスに伴う疾患を有する患者、または、TTRアミロイドーシスに伴う疾患を発症する危険性がある患者から得られる組織においてそれらの両方で優先的に結合することができる抗体が開示される。本発明のTTR抗体の配列はヒト対象から得られているので、本発明の抗体はまた、「ヒト自己抗体」または「ヒト由来抗体」と呼ばれることがあり、これは、そのような抗体が、実際にはヒト対象によって最初に発現されたものであり、合成構築物ではないこと、例えば、ヒト免疫グロブリンを発現するファージライブラリー(このようなファージライブラリーはこれまで、ヒト様抗体を提供しようと試みるための1つの一般的な方法を表していた)によって生じる合成構築物ではないことを強調することを目的とする。
用語「ペプチド」は、その意味の範囲内において、(時には本明細書中では交換可能に使用されることがある)用語「ポリペプチド」および用語「タンパク質」を包含することが理解される。同様に、タンパク質およびポリペプチドのフラグメントもまた包含され、タンパク質およびポリペプチドのフラグメントは本明細書中では「ペプチド」と称される場合がある。それにもかかわらず、用語「ペプチド」は好ましくは、少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、好ましくは少なくとも10個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、より好ましくは少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、さらにより好ましくは少なくとも20個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、特に好ましくは少なくとも25個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味する。加えて、本発明によるペプチドは典型的には、TTRポリペプチドの、最大でも100個の連続するアミノ酸、好ましくは80個未満の連続するアミノ酸、より好ましくは50個未満の連続するアミノ酸、更に好ましくは15個未満の連続するアミノ酸を有する。
ポリペプチド:
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、1つだけの「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直鎖状に連結されるモノマー(アミノ酸)から構成される分子を示す。用語「ポリペプチド」は、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(1つまたは複数)を示し、生成物の特定の長さを示さない。したがって、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「オリゴペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または、2個以上のアミノ酸の鎖(1つまたは複数)を示すために使用される任意の他の用語が、「ポリペプチド」の定義の範囲に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、または、これらの用語のどれとも交換可能に使用される場合がある。
用語「ポリペプチド」はまた、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、および、知られている保護基/ブロック基、タンパク質分解的切断による誘導体化、または、天然に存在しないアミノ酸による修飾を含めて、当該ポリペプチドの発現後修飾の産物を示すことが意図される。ポリペプチドは天然の生物学的供給源に由来してもよく、または、組換え技術によって産生されてもよいが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されない。ポリペプチドは、化学合成による様式を含めて、どのような様式において作製されてもよい。
本発明のポリペプチドは、約3個以上のアミノ酸のサイズ、5個以上のアミノ酸のサイズ、10個以上のアミノ酸のサイズ、20個以上のアミノ酸のサイズ、25個以上のアミノ酸のサイズ、50個以上のアミノ酸のサイズ、75個以上のアミノ酸のサイズ、100個以上のアミノ酸のサイズ、200個以上のアミノ酸のサイズ、500個以上のアミノ酸のサイズ、1,000個以上のアミノ酸、または、2,000個以上のアミノ酸のサイズである場合がある。ポリペプチドは、規定された三次元構造を有する場合があるが、ポリペプチドはそのような構造を必ずしも有さない。規定された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれたとして示される。規定された三次元構造を有するのではなく、むしろ、非常に多数の異なる立体配座を取ることができるポリペプチドは、折り畳まれていないとして示される。本明細書中で使用される場合、糖タンパク質という用語は、アミノ酸残基(例えば、セリン残基またはアスパラギン残基)の酸素含有側鎖または窒素含有側鎖を介して当該タンパク質に結合する少なくとも1つの炭水化物成分に連結されるタンパク質を示す。
「単離された」ポリペプチドあるいはそのフラグメント、変異体または誘導体によって、その天然の環境に存在していないポリペプチドが意図される。特定の精製レベルは何ら要求されない。例えば、単離されたポリペプチドはそのネイティブ環境または天然の環境から取り出され得る。宿主細胞において発現される組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の好適な技術によって分離されているか、分画されているか、あるいは、部分的または実質的に精製されているネイティブポリペプチドまたは組換えポリペプチドのように、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。
「組換え(の)ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質」は、組換えDNA技術によって産生される、すなわち、所望されるペプチドを含む融合タンパク質をコードする外因性の組換えDNA発現構築物によって形質転換される細胞(微生物細胞または哺乳動物細胞)から産生される、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を示す。ほとんどの細菌培養物において発現されるタンパク質またはペプチドは典型的にはグリカンを含まないであろう。酵母において発現されるタンパク質またはペプチドは、哺乳動物細胞において発現されるものとは異なるグリコシル化パターンを有する場合がある。
本発明のポリペプチドとして、前記ポリペプチドのフラグメント、誘導体、アナログまたは変異体、および、それらの任意の組合せも含まれる。用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」および「アナログ」には、天然ペプチドのアミノ酸配列に十分に類似するアミノ酸配列を有するペプチドおよびポリペプチドが含まれる。用語「十分に類似する」は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列が共通の構造的ドメインおよび/または共通の機能的活性を有するように、第2のアミノ酸配列に対する十分な数または最小数の同一アミノ酸残基または等価なアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列を意味する。例えば、共通の構造的ドメインを含むアミノ酸配列で、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または少なくとも約100%が同一であるアミノ酸配列は、十分に類似するとして本明細書中では定義される。好ましくは、変異体は、本発明の好ましいペプチドのアミノ酸配列に、特に、TTR、あるいは、それらのどちらかのフラグメント、変異体、誘導体またはアナログのアミノ酸配列に十分に類似しているであろう。そのような変異体は一般に、本発明のペプチドの機能的活性を保持する。変異体には、1つまたは複数のアミノ酸欠失、アミノ酸付加および/またはアミノ酸置換によって生来型ペプチドおよびwt型ペプチドとはアミノ酸配列においてそれぞれ異なるペプチドが含まれる。これらは、天然に存在する変異体、ならびに、人為的に設計された変異体である場合がある。
さらに、用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」および「アナログ」は、本発明の抗体または抗体ポリペプチドに言及するときには、対応する生来型の結合性分子、抗体またはポリペプチドの抗原結合特性の少なくとも一部を保持するどのようなポリペプチドも含まれる。本発明のポリペプチドのフラグメントには、本明細書中の他のところで議論される具体的な抗体フラグメントに加えて、タンパク質分解的フラグメント、ならびに、欠失フラグメントが含まれる。本発明の抗体および抗体ポリペプチドの変異体には、上記で記載されるようなフラグメント、および、アミノ酸の置換、欠失または挿入に起因する変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。変異体は天然に存在している場合があり、または、天然に存在していない場合がある。天然に存在していない変異体は、この技術分野において知られている変異誘発技術を使用して作製される場合がある。変異体ポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸置換、アミノ酸欠失またはアミノ酸付加を含む場合がある。TTR特異的な結合性分子の誘導体、例えば、本発明の抗体および抗体ポリペプチドの誘導体は、生来型ポリペプチドに対して見出されないさらなる特徴を示すように変化させられているポリペプチドである。例には、融合タンパク質が挙げられる。変異体ポリペプチドは、本明細書中では「ポリペプチドアナログ」として示される場合もある。本明細書中で使用される場合、結合性分子もしくはそのフラグメント、抗体または抗体ポリペプチドの「誘導体」は、官能側鎖基の反応によって化学的に誘導体化される1つまたは複数の残基を有する当該ポリペプチドを示す。また、「誘導体」として、20個の標準的アミノ酸の1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するそのようなペプチドも含まれる。例えば、4-ヒドロキシproリンがproリンの代わりに使用されてもよい;5-ヒドロキシリシンがリシンの代わりに使用されてもよい;3-メチルヒスチジンがヒスチジンの代わりに使用されてもよい;ホモセリンがセリンの代わりに使用されてもよい;また、オルニチンがリシンの代わりに使用されてもよい。
分子の類似性および/または同一性の決定:
2つのペプチドの間における「類似性」が、一方のペプチドのアミノ酸配列を第2のペプチドの配列に対して比較することによって求められる。一方のペプチドのアミノ酸が同一であるか、または、保存的なアミノ酸置換であるならば、一方のペプチドのアミノ酸は第2のペプチドの対応するアミノ酸と類似している。保存的な置換には、Dayhoff,M.O.編、The Atlas of Protein Sequence and Structure 5(National Biomedical Research Foundation、Washington,D.C.(1978))に記載される置換、および、Argos、EMBO J.8(1989)、779~785に記載される置換が含まれる。例えば、下記の群の1つに属するアミノ酸は、保存的な変化または置換を表す:-Ala、Pro、Gly、Gln、Asn、Ser、Thr;-Cys、Ser、Tyr、Thr;-Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;-Lys、Arg、His;-Phe、Tyr、Trp、His;および、-Asp、Glu。
2つのポリヌクレオチドの間における「類似性」が、一方のポリヌクレオチドの核酸配列を所与のポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。一方の核酸が同一であるならば、または、核酸がコード配列の一部である場合、当該核酸を含むそれぞれのトリプレットが、同じアミノ酸または保存的なアミノ酸置換をコードするならば、一方のポリヌクレオチドの核酸は第2のポリヌクレオチドの対応する核酸と類似している。
2つの配列の間におけるパーセント同一性またはパーセント類似性の決定が好ましくは、KarlinおよびAltschul(1993)(Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873~5877)の数学的アルゴリズムを使用して達成される。そのようなアルゴリズムが、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cge)において利用可能なAltschul他(1990)(J.Mol.Biol.215:403~410)のBLASTnプログラムおよびBLASTpプログラムに組み込まれる。
パーセント同一性またはパーセント類似性の決定が、NCBIのウエブページで推奨されるような、また、特定の長さおよび組成の配列に関しての「BLAST Program Selection Guide」に記載されるような、BLASTヌクレオチド検索についてはBLASTnプログラムの標準的なパラメーター、BLASTタンパク質検索についてはBLASTpプログラムの標準的なパラメーターを用いて行われる。
BLASTポリヌクレオチド検索が、BLASTnプログラムを用いて行われる。
一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが1000に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが7に設定される場合があり、これらはNCBIのウエブページにおいて短い配列(20塩基未満)について推奨される通りである。より長い配列については、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが11に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Match/mismatch Scores」が、1、-2に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが直線に設定される場合がある。フィルターおよびマスキングパラメーターについては、「Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Species-specific repeats」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「DUST Filter Settings」にチェックが入れられる場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。一般に、「Search for short nearly exact matches」がこの点に関して使用される場合があり、これにより、上記で示された設定のほとんどが提供される。この点に関してのさらなる情報は、NCBIのウエブページで公開される「BLAST Program Selection Guide」に見出される場合がある。
BLASTタンパク質検索は、BLASTpプログラムを用いて行われる。一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが「3」に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Matrix」ボックスが「BLOSUM62」に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが「Existence:11 Extension:1」に設定される場合があり、「Compositional adjustments”ボックスが“Conditional compositional score matrix adjustment”に設定される場合がある。フィルターおよびマスキングパラメーターについては、“Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。
両方のプログラムの改変、例えば、検索された配列の長さに関しての改変は、NCBIのウエブページにおいてHTML版およびPDF版で公開される「BLAST Program Selection Guide」における推奨に従って行われる。
ポリヌクレオチド:
用語「ポリヌクレオチド」は、1つだけの核酸ならびに複数の核酸を包含することが意図され、単離された核酸分子または核酸構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を示す。ポリヌクレオチドは、従来型のホスホジエステル結合または非従来型の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)に見出されるアミド結合など)を含む場合がある。用語「核酸」は、ポリヌクレオチドに存在するいずれかの1つまたは複数の核酸セグメント(例えば、DNAフラグメントまたはRNAフラグメント)を示す。「単離された」核酸またはポリヌクレオチドによって、そのネイティブ環境から取り出されている核酸分子(DNAまたはRNA)が意図される。例えば、ベクターに含有される、抗体をコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種の宿主細胞において維持される組換えポリヌクレオチド、または、溶液における(部分的または実質的に)精製されたポリペプチドが含まれる。単離されたRNA分子には、本発明のポリヌクレオチドのインビボRNA転写物またはインビトロRNA転写物が含まれる。本発明による単離されたポリヌクレオチドまたは核酸にはさらに、合成的に作製されるそのような分子が含まれる。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーターなどである場合があり、あるいは、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーターなどを包含する場合がある。
本明細書中で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「終止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)はアミノ酸に翻訳されないにもかかわらず、コード領域の一部であると見なされる場合があるが、近接配列はどれも、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコード領域の一部ではない。本発明の2つ以上のコード領域を、1つのポリヌクレオチド構築物において、例えば、1つのベクターに存在させることができ、または、別個のポリヌクレオチド構築物において、例えば、別個の(異なる)ベクターに存在させることができる。さらには、ベクターはどれも、1つだけのコード領域を含有する場合があり、または、2つ以上のコード領域を含む場合があり、例えば、1つのベクターが免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を別々にコードする場合がある。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチドまたは核酸は、結合性分子、抗体、あるいは、そのフラグメント、変異体または誘導体をコードする核酸に融合されて、または融合されずに、異種のコード領域をコードする場合がある。異種のコード領域には、限定されないが、特殊化されたエレメントまたはモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチドまたは異種の機能的ドメインなどが含まれる。
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは通常、1つまたは複数のコード領域と操作可能に連係させられるプロモーターならびに/あるいは他の転写制御エレメントまたは翻訳制御エレメントを含む場合がある。操作可能連係は、遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)のためのコード領域が、当該遺伝子産物の発現を当該調節配列の影響下または制御下に置くような様式で1つまたは複数の調節配列と連係させられるときにおいてである。2つのDNAフラグメント(例えば、ポリペプチドコード領域およびそれと連係させられるプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導により、所望される遺伝子産物をコードするmRNAの転写が生じるならば、また、これら2つのDNAフラグメントの間における連結の性質が、遺伝子産物の発現を導く発現調節配列の能力を妨げないか、または、転写されるDNAテンプレートの能力を妨げないならば、「操作可能に連係させられる」または「操作可能に連結される」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写を達成することができたならば、ポリペプチドをコードする核酸と操作可能に連係させられているであろう。プロモーターは、DNAの実質的な転写を所定の細胞においてのみ導く細胞特異的なプロモーターである場合がある。プロモーターのほかに、他の転写制御エレメントを、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終結シグナルを、細胞特異的な転写を導くためにポリヌクレオチドと操作可能に連係させることができる。好適なプロモーターおよび他の転写制御領域が本明細書中に開示される。
様々な転写制御領域が当業者に知られている。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、サイトメガロウイルス由来のプロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメント(前初期プロモーター、イントロンAとの併用で)、シミアンウイルス40由来のプロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメント(初期プロモーター)、ならびに、レトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメントなど(これらに限定されない)が含まれる。他の転写制御領域には、脊椎動物の遺伝子(例えば、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ-グロビンなど)に由来する転写制御領域ならびに遺伝子発現を真核生物細胞において制御することができる他の配列が含まれる。さらなる好適な転写制御領域には、組織特異的なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに、リンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能であるプロモーター)が含まれる。
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に知られている。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始コドンおよび翻訳終結コドン、ならびに、ピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位、すなわち、IRES、これはまたCITE配列とも称する)が含まれるが、これらに限定されない。
他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドはRNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。
本発明のポリヌクレオチドおよび核酸コード領域は、分泌ペプチドまたはシグナルペプチドをコードし、これにより、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を導くさらなるコード領域と連係させられる場合がある。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、粗面小胞体を横断する成長途中のタンパク質鎖の移行が開始されると、成熟型タンパク質から切断されるシグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドは一般に、当該ポリペプチドのN末端に融合されるシグナルペプチドで、当該ポリペプチドの分泌型形態または「成熟型」形態をもたらすために、完全なポリペプチドまたは「全長」のポリペプチドから切断されるシグナルペプチドを有することを承知している。特定の実施形態において、生来型のシグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖または免疫グロブリン軽鎖のシグナルペプチドが使用されるか、または、操作可能に連係させられるポリペプチドの分泌を導く能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。代替では、異種の哺乳動物シグナルペプチドまたはその機能的誘導体が使用されてもよい。例えば、野生型のリーダー配列がヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列により置き換えられる場合がある。
「結合性分子」は、本発明に関連して使用される場合、主として抗体およびそのフラグメントに関し、しかし、TTRに結合する他の非抗体分子を示す場合もあり、これらには、ホルモン、受容体、リガンド、主要組織適合複合体(MHC)分子、シャペロン(例えば、熱ショックタンパク質(HSP)など)、ならびに、細胞・細胞接着分子(例えば、カドヘリンスーパーファミリー、インテグリンスーパーファミリー、C型レクチンスーパーファミリーおよび免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーなど)が含まれるが、これらに限定されない。したがって、明瞭性だけのために、また、本発明の範囲を限定することなく、下記の実施形態のほとんどが、治療剤および診断剤を開発するための好ましい結合性分子を代表する抗体および抗体様分子に関して議論される。
抗体:
用語「抗体」および用語「免疫グロブリン」は本明細書中では交換可能に使用される。抗体または免疫グロブリンは、重鎖の可変ドメインを少なくとも含み、かつ、通常の場合には重鎖および軽鎖の可変ドメインを少なくとも含む結合性分子である。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は比較的よく理解されている(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)を参照のこと)。
より詳しく下記で議論されるように、用語「免疫グロブリン」は、生化学的に識別することができる様々な幅広いクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、それらの中のいくつかのサブクラス(例えば、γ1~γ4)を伴って分類されることを理解するであろう。抗体の「クラス」を、IgG、IgM、IgA、IgGまたはIgEとしてそれぞれ決定するのが、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などが十分に特徴づけられており、また、機能的な特殊化を与えることが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの改変された型が、本開示を考慮して当業者には容易に認識可能であり、従って、本発明の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが明らかに本発明の範囲内であり、下記の議論は一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関する。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量がおよそ23,000ダルトンである2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量が53,000~70,000である2つの同一の重鎖ポリペプチドとを含む。これら4つの鎖は典型的には、軽鎖が、「Y」字型の口部から始まり、可変領域の終わりまで続く腕木として重鎖を支える「Y」字型の立体配置でジスルフィド結合によって結合される。
軽鎖はカッパまたはラムダ(κ、λ)のどちらかとして分類される。それぞれの重鎖クラスがカッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のどちらかと結合し得る。一般には、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞、または、遺伝子操作された宿主細胞のどれかによって生じるとき、軽鎖および重鎖は互いに共有結合により結合し、2つの重鎖の「テール」部分が共有結合性のジスルフィド連結または非共有結合性の連結によって互いに結合する。重鎖において、アミノ酸配列が、Y字型の立体配置の二叉末端におけるN末端から、それぞれの鎖の底部におけるC末端にまで延びる。
軽鎖および重鎖はともに、構造的および機能的に相同的である領域に分けられる。用語「定常」および「可変」が機能的に使用される。これに関連して、軽鎖部分および重鎖部分の両方の可変ドメイン(VLおよびVH)により、抗原認識および特異性が決定されることが理解されるであろう。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2またはCH3)により、様々な重要な生物学的性質、例えば、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合および補体結合などが与えられる。慣例によって、定常領域ドメインの番号づけは、これらのドメインが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠位になるにつれて大きくなる。N末端部分が可変領域であり、C末端部分が定常領域である;CH3ドメインおよびCLドメインが実際に、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端をそれぞれ含む。
上記で示されるように、可変領域により、抗体は抗原上のエピトープを選択的に認識し、かつ、このエピトープと特異的に結合することができる。すなわち、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、または、抗体の相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさって、三次元の抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この四元抗体構造が、Y字型のそれぞれのアームの端部に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位がVH鎖およびVL鎖のそれぞれにおける3つのCDRによって規定される。TTRに特異的に結合するための十分な構造を含有する抗体または免疫グロブリンフラグメントはどれも、本明細書中では交換可能に、「結合フラグメント」または「免疫特異性フラグメント」として示される。
天然に存在する抗体において、抗体は、抗体がその三次元立体配置を水性環境において取るような抗原結合ドメインを形成するために特異的に配置されるアミノ酸の短い不連続な配列である6つの超可変領域(これらは時には、それぞれの抗原結合ドメインに存在する「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる)を含む。「CDR」には、分子間の変動性をそれほど示さない4つの比較的保存された「フレームワーク」領域または「FR」が近接する。これらのフレームワーク領域は主としてβ-シートの立体配座を取り、CDRにより、このβ-シート構造をつなぐ、また、時にはこのβ-シート構造の一部を形成するループが形成される。したがって、フレームワーク領域は、CDRを鎖間の非共有結合性の相互作用によって正しい配向で配置することを提供する足場を形成するように作用する。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインにより、免疫反応性抗原におけるエピトープに対して相補的な表面が規定される。この相補的な表面は、抗体がその同種エピトープに非共有結合的に結合することを促進させる。CDRおよびフレームワーク領域を構成するアミノ酸が、それらは正確に規定されているので、当業者によっていずれかの所与の重鎖可変領域または軽鎖可変領域についてそれぞれ容易に特定され得る;「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、Kabat,E.他編、U.S.Department of Health and Human Services(1983)、および、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901~917を参照のこと。
この技術分野において使用される、および/または受け入れられる用語の2つ以上の定義が存在する場合には、本明細書中で使用されるような当該用語の定義は、反するようなことが明示的に言及される場合を除き、すべてのそのような意味を包含することが意図される。具体的な一例が、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域の中に見出される不連続な抗原結合部位を記述するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域が、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって、また、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901~917によって記載されており(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)、この場合、それらの定義は、互いに比較されたときにはアミノ酸残基の重複またはサブセットを包含する。それにもかかわらず、抗体またはその変異体のCDRを示すためのどちらかの定義の適用は、本明細書中で定義され、かつ使用されるようなこの用語の範囲内であることが意図される。上記で引用された参考文献のそれぞれによって定義されるようなCDRを包含する適切なアミノ酸残基が、比較として下記において表1に示される。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列およびサイズに依存して変わる。当業者は、どの残基が、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられる抗体のヒトIgGサブタイプの特定の超可変領域またはCDRを含むかを常法により決定することができる。
1表1におけるすべてのCDR定義の番号表記は、Kabat他によって示される番号表記慣例に従う(下記を参照のこと)。
Kabat他はまた、どのような抗体に対しても適用可能である可変ドメイン配列のための番号表記システムを定義した。当業者は、「Kabat番号表記」のこのシステムを、配列そのものを超える実験的データに何ら頼ることなく、どのような可変ドメイン配列に対してでも一義的に割り当てることができる。本明細書中で使用される場合、「Kabat番号表記」は、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって示される番号表記システムを示す。別途指定される場合を除き、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体における具体的なアミノ酸残基位置の番号表記に対する言及は、Kabat番号表記システムに従っており、しかしながら、Kabat番号表記システムは理論的であり、本発明のどの抗体にも等しく適用されない場合がある。例えば、最初のCDRの位置に依存して、その後のCDRはどちらかの方向でずれる場合がある。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、免疫特異性フラグメント、変異体または誘導体には、ポリクローナル性、モノクローナル性、多特異性、ヒト型、ヒト化型、霊長類化型、マウス化型またはキメラ型の抗体、単鎖抗体、エピトープ結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2)、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VLドメインまたはVHドメインのどちらかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーによって作製されるフラグメント、ならびに、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書中に開示される抗体に対する抗Id抗体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。scFV分子がこの技術分野では知られており、例えば、米国特許第5,892,019号に記載される。本発明の免疫グロブリン分子または抗体分子は、免疫グロブリン分子のどのようなタイプのものも(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、どのようなクラスのものも(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはどのようなサブクラスのものも可能である。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、五価構造を有するIgMまたはその誘導体ではない。特に、本発明の具体的な適用において、とりわけ治療的使用において、IgMはIgGおよび他の二価抗体または対応する結合性分子よりも有用でない。これは、IgMは、その五価構造のために、また、親和性成熟化の欠如のために、非特異的な交差反応性および非常に低い親和性を示すことが多いからである。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体はポリクローナル抗体でない。すなわち、本発明の抗体は、血漿の免疫グロブリンサンプルから得られる混合物ではなく、むしろ、1つの特定の抗体種から実質的になる。
単鎖抗体を含めて、抗体フラグメントは、可変領域(1つまたは複数)を単独で、あるいは、下記の全体または一部分との組合せで含む場合がある:ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメイン。また、本発明には、可変領域(1つまたは複数)と、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインとのどのような組合せをも含むTTR結合フラグメントが含まれる。本発明の抗体またはその免疫特異性フラグメントは、鳥類および哺乳動物を含めて、どのような動物起源に由来してもよい。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマまたはニワトリの抗体である。別の実施形態において、可変領域が起源において(例えば、サメからの)コンドリクトイド(condricthoid)である場合がある。
1つの態様において、本発明の抗体は、ヒトから単離されるヒトモノクローナル抗体である。場合により、ヒト抗体のフレームワーク領域がデータベースにおける該当するヒト生殖系列可変領域配列に従ってアライメントされ、それらと一致させられる;例えば、MRC Centre for Protein Engineering(Cambridge、英国)によって提供されるVbase(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)を参照のこと。例えば、真の生殖系列配列から潜在的に逸脱すると見なされるアミノ酸は、クローニング過程の期間中に組み込まれるPCRプライマー配列に起因し得ると思われる。人為的に作製されたヒト様抗体、例えば、ファージディスプレーされた抗体ライブラリーまたは異種マウスに由来する単鎖抗体フラグメント(scFV)などと比較した場合、本発明のヒトモノクローナル抗体は、(i)代理動物の免疫応答ではなく、ヒトの免疫応答を使用して得られること、すなわち、抗体が、ヒト体内におけるその関連する立体配座における天然のTTRに対する応答で作製されていること、(ii)個体を保護しているか、あるいは、TTRの存在について少なくとも有意であること、そして、(iii)抗体がヒト起源であるので、自己抗原に対する交差反応性の危険性が最小限に抑えられることによって特徴づけられる。したがって、本発明によれば、用語「ヒトモノクローナル抗体」、「ヒトモノクローナル自己抗体」および「ヒト抗体」などは、ヒト起源である、すなわち、ヒト細胞(例えば、B細胞またはそのハイブリドーマなど)から単離されているか、あるいは、cDNAがヒト細胞(例えば、ヒトメモリーB細胞)のmRNAから直接クローン化されているTTR結合性分子を示すために使用される。ヒト抗体は、アミノ酸置換が、例えば、結合特性を改善するために、当該抗体においてたとえ行われるにしても、依然として「ヒト」である。
1つの実施形態において、本発明のヒト由来抗体は、天然の存在する抗体と比較して異種の領域を含み、例えば、フレームワーク領域におけるアミノ酸置換、可変領域に外因的に融合される定常領域、および、C末端またはN末端における異なるアミノ酸などを含む。
ヒト免疫グロブリンライブラリーに由来する抗体、あるいは、1つまたは複数のヒト免疫グロブリンについて遺伝子組換えであり、かつ、内因性免疫グロブリンを発現しない動物に由来する抗体(下記において、また、例えば、米国特許第5,939,598号(Kucherlapati他)に記載されるような抗体)は、本発明の真のヒト抗体から区別するためにヒト様抗体として示される。
例えば、ヒト様抗体の重鎖および軽鎖の対形成、例えば、ファージディスプレーから典型的には単離される合成抗体および半合成抗体などは、その対形成が元々のヒトB細胞において生じていたような元の対形成を必ずしも反映していない。したがって、先行技術において一般に使用されるような組換え発現ライブラリーから得られるFabフラグメントおよびscFvフラグメントは、免疫原性および安定性に対するすべての可能な関連した影響に関して人為的であると見なされる。
対照的には、本発明は、その治療的有用性およびヒトにおけるその寛容性によって特徴づけられる、選択されたヒト対象から得られる単離された親和性成熟している抗体を提供する。
本明細書中で使用される場合、用語「齧歯類化(された)抗体」または「齧歯類化(された)免疫グロブリン」は、本発明のヒト抗体に由来する1つまたは複数のCDRと、齧歯類抗体配列に基づくアミノ酸の置換および/または欠失および/または挿入を含有するヒトフレームワーク領域とを含む抗体を示す。齧歯類を示すとき、好ましくは、マウスおよびラットに起源を有する配列が使用され、この場合、そのような配列を含む抗体は、「マウス化された」または「ラット化された」としてそれぞれ示される。CDRを提供するヒト免疫グロブリンは「親」または「アクセプター」と呼ばれ、フレームワークの変化を提供する齧歯類抗体は「ドナー」と呼ばれる。定常領域は存在している必要はないが、定常領域が存在するならば、定常領域は通常、齧歯類抗体の定常領域と実質的に同一であり、すなわち、少なくとも約85%~90%が同一であり、好ましくは約95%以上が同一である。したがって、いくつかの実施形態において、全長のマウス化されたヒト重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンは、マウスの定常領域、ヒトのCDR、および、いくつかの「マウス化する」アミノ酸置換を有する実質的にはヒトのフレームワークを含有する。典型的には、「マウス化抗体」は、マウス化された可変軽鎖および/またはマウス化された可変重鎖を含む抗体である。例えば、マウス化抗体は、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非マウス性であるので、典型的なキメラ抗体を包含しないであろう。「マウス化」のプロセスによって「マウス化」されている改変された抗体は、CDRを提供する親抗体と同じ抗原に結合し、かつ、通常の場合、マウスにおける免疫原性が、親抗体と比較してより低い。「マウス化」抗体に関しての上記説明は、他の「齧歯類化」抗体について、例えば、ラットの配列がマウスの代わりに使用される「ラット化抗体」などについて同様に当てはまる。
本明細書中で使用される場合、用語「重鎖部分」には、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央および/または下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインあるいはそれらの変異体またはフラグメントのうちの少なくとも1つを含む。例えば、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、および、CH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、および、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖;または、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む場合がある。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部分(例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部)を欠く場合がある。上記で示されるように、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)は、天然に存在する免疫グロブリン分子からアミノ酸配列において異なるように改変され得ることが、当業者によって理解されるであろう。
本明細書中に開示されるある特定の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、マルチマーの1つのポリペプチド鎖の重鎖部分が、当該マルチマーの第2のポリペプチド鎖における重鎖部分と同一である。代替では、本発明の重鎖部分を含有するモノマーは同一でない。例えば、それぞれのモノマーが、異なる標的結合部位を含む場合があり、これにより、例えば、二重特異性抗体またはディアボディを形成する。
別の実施形態において、本明細書中に開示される抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、ただ1つのポリペプチド鎖から構成され(例えば、scFv)、潜在的なインビボ治療適用および診断適用のために細胞内で発現させられることになる(細胞内抗体)。
本明細書中に開示される診断方法および処置方法において使用されるための結合性ポリペプチドの重鎖部分が、異なる免疫グロブリン分子に由来してもよい。例えば、ポリペプチドの重鎖部分が、IgG1分子に由来するCH1ドメインと、IgG3分子に由来するヒンジ領域とを含む場合がある。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG4分子に由来するキメラなヒンジを含むことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「軽鎖部分」には、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。好ましくは、軽鎖部分はVLドメインまたはCLドメインの少なくとも一方を含む。
抗体のためのペプチドまたはポリペプチドのエピトープの最小サイズは約4個~5個のアミノ酸であると考えられる。ペプチドまたはポリペプチドのエピトープは好ましくは、少なくとも7個、より好ましくは少なくとも9個、最も好ましくは少なくとも約15個~約30個のアミノ酸を含有する。CDRが抗原性のペプチドまたはポリペプチドをその三次形態で認識できるので、エピトープを構成するアミノ酸は連続している必要はなく、場合によっては、同じペプチド鎖に存在していなくてもよい。本発明において、本発明の抗体によって認識されるペプチドまたはポリペプチドのエピトープは、TTRの少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、より好ましくは少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、または、約15個~約30個の連続するアミノ酸または非連続なアミノ酸の配列を含有する。
「特異的に結合する」または「特異的に認識する」によって、これらは本明細書中では交換可能に使用されており、結合性分子、例えば、抗体が、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および、この結合は、抗原結合ドメインとエピトープとの間における何らかの相補性を伴うことが一般に意味される。この定義によれば、抗体は、抗体がランダムな無関係なエピトープに結合するであろうよりも容易にその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合するとき、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的な親和性を限定するために本明細書中では使用される。例えば、抗体「A」は、所与のエピトープについて、抗体「B」よりも大きい親和性を有すると見なされる場合があり、または、抗体「A」は、関連したエピトープ「D」について有するよりも大きい特異性によりエピトープ「C」に結合すると言われる場合がある。
存在する場合、抗原との抗体の用語「免疫学的結合特性」または他の結合特性はその文法的形態のすべてで、抗体の特異性、親和性、交差反応性および他の結合特性を示す。
「優先的に結合する」によって、結合性分子、例えば、抗体が、関連したエピトープ、類似したエピトープ、相同的なエピトープまたは類似的なエピトープに結合するであろうよりも容易にエピトープに特異的に結合することが意味される。したがって、所与のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、そのような抗体が関連のエピトープと交差反応することがあるとしても、関連のエピトープよりもそのエピトープに結合する可能性が大きいであろう。
非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも小さい解離定数(KD)により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1の抗原と優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
別の非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも小さいオフ速度(k(off))により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、5×10-2sec-1以下、10-2sec-1以下、5×10-3sec-1以下または10-3sec-1以下であるオフ速度(k(off))によりTTRあるいはそのフラグメント、変異体または特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、5×10-4sec-1以下、10-4sec-1以下、5×10-5sec-1以下または10-5sec-1以下、5×10-6sec-1以下、10-6sec-1以下、5×10-7sec-1以下または10-7sec-1以下であるオフ速度(k(off))によりTTRあるいはそのフラグメント、変異体または特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、103M-1sec-1以上、5×103M-1sec-1以上、104M-1sec-1以上または5×104M-1sec-1以上であるオン速度(k(on))によりTTRあるいはそのフラグメント、変異体または特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、105M-1sec-1以上、5×105M-1sec-1以上、106M-1sec-1以上または5x106M-1sec-1以上または107M-1sec-1以上であるオン速度(k(on))によりTTRあるいはそのフラグメント、変異体または特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。
結合性分子、例えば、抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合をある程度阻止する程度にそのエピトープに優先的に結合するならば、そのエピトープに対する参照抗体の結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害が、この技術分野において知られているいずれかの方法によって、例えば、競合的ELISAアッセイによって求められてもよい。抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%または少なくとも50%競合的に阻害すると言われる場合がある。
本明細書中で使用される場合、用語「親和性」は、結合性分子(例えば、免疫グロブリン分子)のCDRとの個々のエピトープの結合の強さの尺度を示す(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988)、27頁~28頁を参照のこと)。本明細書中で使用される場合、用語「アビディティー」は、免疫グロブリンの集合と抗原との複合体の全般的な安定性、すなわち、抗原との免疫グロブリン混合物の機能的結合強度を示す(例えば、Harlow、29頁~34頁を参照のこと)。アビディティーは、特異的なエピトープとの集団内の個々の免疫グロブリン分子の親和性に、およびまた、免疫グロブリンおよび抗原の結合価の両方に関連づけられる。例えば、二価のモノクローナル抗体と、高度に反復するエピトープ構造を有する抗原(例えば、ポリマーなど)との間における相互作用が、高いアビディティーの1つであろう。抗原についての抗体の親和性またはアビディティーを、いずれかの好適な方法(例えば、Berzofsky他、「Antibody-Antigen Interactions」、Fundamental Immunology、Paul,W.E.編、Raven Press New York、NY(1984);Kuby,Janis Immunology、W.H.Freeman and Company、New York、NY(1992)を参照のこと)および本明細書中に記載される方法を使用して実験的に求めることができる。抗原についての抗体の親和性を測定するための一般的な技術には、ELISA、RIAおよび表面プラズモン共鳴が含まれる。特定の抗体-抗原相互作用の測定された親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)のもとで測定されるならば異なる可能性がある。したがって、親和性および他の抗原結合パラメーター(例えば、KD、IC50)の測定は好ましくは、抗体および抗原の標準化された溶液ならびに標準化された緩衝液を用いて行われる。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、それらの交差反応性に関して記載または指定される場合がある。本明細書中で使用される場合、用語「交差反応性」は、抗体(これは1つの抗原について特異的である)が第2の抗原と反応する能力、すなわち、2つの異なる抗原性物質の間における関連度の度合いを示す。したがって、抗体は、その形成を誘導したエピトープとは異なるエピトープに結合するならば、交差反応性である。交差反応性エピトープは一般に、誘導用エピトープと同じ相補的な構造的特徴の多くを含有しており、また、場合により、実際には元のエピトープよりも良好にはまる場合がある。
例えば、ある種の抗体は、関連しているが、同一でないエピトープと結合するという点で、例えば、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法および本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%および少なくとも50%の同一性を有するエピトープと結合するという点で、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法および本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満および50%未満の同一性を有するエピトープと結合しないならば、交差反応性をほとんど有していないか、または全く有していないと言われる場合がある。抗体は、ある特定のエピトープのどのような他のアナログ、オルソログまたはホモログとも結合しないならば、そのエピトープについて「非常に特異的」であると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、TTR及び/又は、変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、及び/又は凝集したTTR種及び/又はそのフラグメントに対するそれらの結合親和性に関して記載または指定される場合がある。好ましい結合親和性には、解離定数つまりKdが5×10-2M未満、10-2M未満、5×10-3M未満、10-3M未満、5×10-4M未満、10-4M未満、5×10-5M未満、10-5M未満、5×10-6M未満、10-6M未満、5×10-7M未満、10-7M未満、5×10-8M未満、10-8M未満、5×10-9M未満、10-9M未満、5×10-10M未満、10-10M未満、5×10-11M未満、10-11M未満、5×10-12M未満、10-12M未満、5×10-13M未満、10-13M未満、5×10-14M未満、10-14M未満、5×10-15M未満または10-15M未満である結合親和性が含まれる。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、下記の表Vにおける例示的抗体について例示されるような種々のTTRアイソタイプについて所与のKdを有しており、すなわち、野生型のネイティブTTRについてはKdが300nM超であり、および/または、変性したTTRについてはKdが15nM以下であり、好ましくは5nM以下であり、最も好ましくは2nM以下であり、および/または、ネイティブTTR-V30MについてはKdが35nM以下であり、好ましくは20nM以下であり、および/または、ネイティブTTR-L55PについてはKdが150nM以下であり、好ましくは5nM以下であり、最も好ましくは2nM以下である。
上記で示されたように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および三次元立体配置が広く知られている。本明細書中で使用される場合、用語「VHドメイン」には、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインが含まれ、用語「CH1ドメイン」には、免疫グロブリン重鎖の第1の(最もアミノ末端側の)定常領域ドメインが含まれる。CH1ドメインはVHドメインに隣接しており、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端側である。
本明細書中で使用される場合、用語「CH2ドメイン」には、従来の番号表記スキームを使用して、例えば、抗体のおよそ残基244から残基360にまで広がる重鎖分子の一部分が含まれる(残基244~残基360、Kabat番号表記システム;残基231~残基340、EU番号表記システム;Kabat EA他(前掲書中)を参照のこと)。CH2ドメインは、別のドメインと密に対形成しないという点で独特である。むしろ、2つのN-連結している分岐した炭水化物鎖が、無傷の生来型IgG分子の2つのCH2ドメインの間に置かれる。CH3ドメインがIgG分子のCH2ドメインからC末端にまで広がり、およそ108残基を含むこともまた広く記録されている。
本明細書中で使用される場合、用語「ヒンジ領域」には、CH1ドメインをCH2ドメインにつなぐ重鎖分子の一部分が含まれる。このヒンジ領域はおよそ25残基を含み、かつ、柔軟であり、したがって、2つのN末端の抗原結合領域が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は3つの異なったドメイン(上部、中央および下部のヒンジドメイン)に細分化することができる(Roux他、J.Immunol.161(1998)、4083~4090を参照のこと)。
本明細書中で使用される場合、用語「ジスルフィド結合」には、2つのイオウ原子の間に形成される共有結合性の結合が含まれる。アミノ酸のシステインは、ジスルフィド結合を形成することができるか、または、第2のチオール基と架橋することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子において、CH1領域およびCL領域がジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖が、Kabat番号表記システムを使用して239位および242位(226位または229位、EU番号表記システム)に対応する位置での2つのスルフィド結合によって連結される。
本明細書中で使用される場合、用語「連結される」、「融合される」または「融合」は交換可能に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲート化または組換え手段を含むどのような手段によってでも、2つ以上の要素または成分を一緒につなぐことを示す。「インフレーム融合」は、2つ以上のポリヌクレオチド・オープンリーディングフレーム(ORF)を、これらの元々のORFの正しい翻訳読み枠を維持する様式で、連続したより長いORFを形成するためにつなぐことを示す。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含有する単一タンパク質である(そのようなセグメントは通常、自然界ではそのようにつながれない)。したがって、読み枠が、融合されたセグメントの全体にわたって連続にされるにもかかわらず、これらのセグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的または空間的に隔てられる場合がある。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドが、インフレーム融合される場合があり、しかし、「融合された」CDRが、連続したポリペプチドの一部として共翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域またはさらなるCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって隔てられる場合がある。
用語「発現」は、本明細書中で使用される場合、遺伝子が生化学物質(例えば、RNAまたはポリペプチド)をもたらすプロセスを示す。このプロセスには、限定されないが、遺伝子ノックダウンならびに一過性発現および安定的発現の両方を含めて、細胞内における遺伝子の機能的な存在のどのような顕在化も含まれる。このプロセスには、限定されないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、小さいヘアピンRNA(shRNA)、小さい干渉性RNA(siRNA)または何らかの他のRNA産物への遺伝子の転写、および、ポリペプチドへのmRNAの翻訳が含まれる。最終的な所望される産物が生化学物質であるならば、発現には、そのような生化学物質および何らかの前駆体を生じさせることが含まれる。遺伝子の発現により、「遺伝子産物」がもたらされる。本明細書中で使用される場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または、転写物から翻訳されるポリペプチドのどちらもが可能である。本明細書中に記載される遺伝子産物にはさらに、転写後修飾(例えば、ポリアデニル化)を伴う核酸、または、翻訳後修飾(例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、および、タンパク質分解的切断など)を伴うポリペプチドが含まれる。
本明細書中で使用される場合、用語「サンプル」は、対象または患者から得られる任意の生物学的材料を示す。1つの態様において、サンプルは、血液、腹腔液、CSF、唾液または尿を含むことができる。別の態様において、サンプルは、全血、血漿、血清、血液サンプルから富化されるB細胞、および、培養された細胞(例えば、対象からのB細胞)を含むことができる。サンプルにはまた、神経組織を含む生検サンプルまたは組織サンプルが含まれ得る。さらに他の態様において、サンプルは、細胞全体および/または細胞の溶解物を含むことができる。血液サンプルをこの技術分野において知られている方法によって集めることができる。1つの態様において、ペレットを、200μlの緩衝液(20mMのTris(pH.7.5)、0.5%のNonidet、1mMのEDTA、1mMのPMSF、0.1MのNaCl、IXのSigmaプロテアーゼ阻害剤、ならびに、IXのSigmaホスファターゼ阻害剤1および2)において4℃でボルテックス処理することによって再懸濁することができる。懸濁物は、断続的なボルテックス処理を行いながら20分間、氷上に保つことができる。15,000×gにおいて5分間、約4℃で遠心分離した後、上清のアリコートを約-70℃で貯蔵することができる。
疾患:
別途言及される場合を除き、用語「障害」および「疾患」は本明細書中では交換可能に使用され、対象、動物、単離された器官、組織または細胞/細胞培養物における望まれない任意の生理学的変化を含む。
トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスは、TTRタンパク質の構造的(すなわち、立体配座的)変化の結果としてのTTRタンパク質の様々な組織における異常な沈着によって特徴づけられる多くの異なる疾患において働いている病態生理学的機構である。ミスフォールドし、ミスアッセンブルしたTTRタンパク質は毒性であり、多くの場合にはTTR遺伝子における変異の結果として生じる。ミスフォールドしたTTRの毒性は局所的な組織損傷を引き起こし、そのような損傷は、時間をかけて蓄積したとき、臓器の機能不全を、そして、臓器不全さえも引き起こす可能性がある。TTRアミロイドーシスの影響を受けやすい多くのタイプの組織および器官が存在する(例えば、末梢神経系および自律神経系、心臓、軟膜、眼、腱、靱帯または腎臓など)。TTRアミロイドーシスによって影響され得る組織の範囲が広いことが、TTRアミロイドーシスを有する患者が示す症状が多様であることの理由である。実際、TTRアミロイドーシスを有する患者は、TTRアミロイドーシスによって最も影響される組織または器官および対応する症状に依存して、種々の疾患に罹患しているとして臨床的に類別される。
これに基づいて、TTRアミロイドーシスが、神経障害性形態で分類されており、この場合、末梢神経系および自律神経系が主に冒され、患者は大抵の場合には、痛み、感覚異常、筋力低下および自律神経機能不全を示す。TTRアミロイドーシスの心臓形態もまた存在し、この場合、心臓が主に冒され、患者は大抵の場合には、起立性の低血圧症または高血圧症、不整脈および心臓肥大を示す。これら2つの形態は相互に排他的でなく、これら2つの組合せを有する多くの患者が存在する。TTRアミロイドーシスが他の組織を冒すとき、これは、硝子体混濁、ドライアイまたは緑内障、タンパク尿、高チロキシン血症、手根管症候群または子癇前症を引き起こす可能性がある。
したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明の抗体、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、細胞および/またはペプチドが、TTRアミロイドーシス疾患の予防的処置および/または治療的処置のための医薬組成物または診断組成物を調製するために、また、疾患の進行および/または処置応答をモニターするために、また、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、老年性全身性アミロイドーシス(SSA)、軟膜/中枢神経系(CNS)アミロイドーシス(アルツハイマー病を含む)、眼アミロイドーシス、腎アミロイドーシス、高チロキシン血症、手根管症候群、肩腱板断裂および腰部脊柱管狭窄、ならびに子癇前症を含むTTRアミロイドーシスに伴う疾患を診断するために使用される。
処置:
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」または「処置」は治療的処置および予防的または防止的な対策の両方を示し、この場合、その目的が、望まれない生理学的変化または障害(例えば、糖尿病の発症など)を防止することまたは抑制すること(緩和すること)である。有益な臨床結果または所望される臨床結果には、検出可能であるか、または検出不能であるかにかかわりなく、症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延または緩速化、疾患状態の改善または緩和、および、寛解(部分的または全体的を問わず)が含まれるが、これに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合の予想された生存と比較して、生存を延ばすことを意味することができる。処置を必要としている人々には、状態または障害を既に有する人々ならびに状態または障害を有する傾向がある人々、あるいは、状態または障害の発現が防止されなければならない人々が含まれる。
別途言及される場合を除き、用語「薬物」、「医薬」または「医薬品」は本明細書中では交換可能に使用され、下記のすべてを包含するものとするが、それに限定されない:(A)体内使用または体外使用のための物品、医薬および調製物、ならびに、ヒトまたは他の動物のどちらかの疾患の診断、治療、緩和、処置または防止のために使用されることが意図されるあらゆる物質または物質の混合物;ならびに、(B)ヒトまたは他の動物の身体の構造またはどのような機能に対してでも影響を及ぼすことが意図される(食物以外)の物品、医薬および調製物;ならびに(C)条項(A)および条項(B)において指定されるあらゆる物品の成分としての使用のために意図される物品。用語「薬物」、「医薬」または「医薬品」は、1つまたは複数の「薬剤」、「化合物」、「物質」または「(化学的)組成物」をフィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして、また、何らかの他の関連では、他の医薬的に不活性な賦形剤もまた、フィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして含有するか、あるいは、「薬物」、「医薬」または「医薬品」の容易な輸送、崩壊、解離、溶解および生物学的利用性を、ヒトまたは他の動物の体内の意図された標的場所(例えば、皮膚、胃内または腸内)において保証する、ヒトまたは他の動物のどちらかでの使用のために意図される調製物の完全な処方を包含するものとする。用語「薬剤」、「化合物」または「物質」は本明細書中では交換可能に使用され、より具体的な関連では、すべての薬理学的に活性な薬剤、すなわち、本発明の方法によって所望の生物学的または薬理学的な効果を誘発するか、あるいは、そのような可能な薬理学的効果を誘発することができることについて研究または試験される薬剤を包含するものとするが、これらに限定されない。
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」によって、診断、予後、防止または治療が望まれるあらゆる対象、特に哺乳動物対象、例えば、ヒト患者が意味される。
医薬用キャリア:
医薬的に許容されるキャリアおよび投与経路を、当業者に知られている対応する文献から選ぶことができる。本発明の医薬組成物は、この技術分野において広く知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0-683-306472);Vaccine Protocols、第2版(Robinson他、Humana Press、Totowa、New Jersey、米国、2003);Banga、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems、第2版(Taylor and Francis(2006)、ISBN:0-8493-1630-8)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野では広く知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、広く知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与を種々の方式によって行うことができる。例には、医薬的に許容されるキャリアを含有する組成物を、経口方法、鼻腔内方法、直腸方法、局所的方法、腹腔内方法、静脈内方法、筋肉内方法、皮下方法、真皮下方法、経皮的方法、クモ膜下腔内方法および頭蓋内方法を介して投与することが含まれる。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤および等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液または他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpHおよび等張性状態に調節される。経口投与用の医薬組成物、例えば、単一ドメイン抗体分子(例えば、「ナノボディー(商標)」)などもまた、本発明において想定される。そのような経口配合物は、錠剤、カプセル、粉末、液体または半固体の形態である場合がある。錠剤は、固体のキャリア、例えば、ゼラチンまたはアジュバントなどを含む場合がある。直腸投与または膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある(O’Hagan他、Nature Reviews,Drug Discovery 2(9)(2003)、727~735もまた参照のこと)。様々なタイプの投与のために好適である配合物に関するさらなる指針を、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mace Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版(1985)および対応する更新版)において見出すことができる。薬物送達のための方法の簡単な総説については、Langer、Science 249(1990)、1527~1533を参照のこと。
II.本発明の抗体
本発明は一般には、ヒト由来抗TTR抗体およびその抗原結合フラグメントに関連し、この場合、これらは好ましくは、実施例において例示される抗体について概略されるような免疫学的結合特性および/または生物学的性質を明らかにする。本発明によれば、TTRについて特異的であるヒトモノクローナル抗体が、健康なヒト対象のプールからクローン化された。しかしながら、本発明の別の態様では、ヒト抗TTRモノクローナル抗体はTTRアミロイドーシスに関連する疾患及び/又は障害の症状を示す患者からもクローン化され得る。
本発明に従って行われた実験の過程において、培養されたヒトメモリーB細胞の馴化培地に存在する様々な抗体が、TTRに対する、また、ウシ血清アルブミン(BSA)を含めて10を超える他のタンパク質に対するそれらの結合能について評価された。このスクリーニングにおいてTTRタンパク質に結合することができ、しかし、他のタンパク質のどれにも結合することができないB細胞上清のみが、抗体クラスおよび軽鎖サブクラスの決定を含めて、さらなる分析のために選択された。選択されたB細胞はその後、抗体クローニングのために処理された。
簡単に記載すると、これは、選択されたB細胞からのメッセンジャーRNAの抽出、RT-PCRによる逆転写、PCRによる抗体コード領域の増幅、プラスミドベクターへのクローニングおよび配列決定を行うことにある。選択されたヒト抗体がその後、HEK293細胞またはCHO細胞における組換え発現および精製によって産生され、続いて、ヒトTTRタンパク質と結合するそれらの能力について特徴づけられた。様々な試験の組合せにより、例えば、HEK293細胞またはCHO細胞における抗体の組換え発現、そして、ヒトTTRタンパク質に対するそれらの結合特異性の引き続いた特徴づけ、ならびに、その病理学的にミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態および/または凝集した形態に対するそれらの弁別的な結合により、TTRについて非常に特異的であり、かつ、TTRタンパク質の病理学的に凝集した形態(例えば、TTR原線維など)を弁別的に認識し、それらと選択的に結合するヒト抗体が今回初めてクローン化されたことが確認された。場合により、マウスキメラ抗体もまた、本発明のヒト抗体の可変ドメインに基づいて作製された。これらのマウスキメラ抗体は、図6および図9において、また、実施例4および実施例8において示されるように、ヒト抗体と同等な、ヒトTTRに対する結合親和性、特異性および選択性を示している。
したがって、本発明は一般には、組換えのヒト由来モノクローナル抗TTR抗体ならびにその結合フラグメント、誘導体および変異体に関連する。本発明の1つの実施形態において、抗体はヒトTTRと結合することができる。
1つの実施形態において、本発明は、抗TTR抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関し、ただし、この場合、前記抗体は、NI-301.59F1、NI-301.35G11、NI-301.37F1およびNI-301.12D3からなる群から選択される参照抗体と同じ、TTRのエピトープに特異的に結合する。エピトープマッピングにより、アミノ酸61-EEEFVEGIY-69(配列番号49)を含むヒトTTR内の配列が、本発明の抗体NI-301.59F1によって認識される特有の線状エピトープとして特定され、アミノ酸53-GELHGLTTEEE-63(配列番号50)を含むヒトTTR内の配列が、本発明の抗体NI-301.35G11によって認識される特有の線状エピトープとして特定され、また、アミノ酸41-WEPFA-45(配列番号51)を含むヒトTTR内の配列が、抗体NI-301.37F1によって認識される特有の線状エピトープとして特定された(図10および実施例9を参照のこと)。したがって、1つの実施形態において、EEEFVEGIY(配列番号49)、GELHGLTTEEE(配列番号50)またはWEPFA(配列番号51)のアミノ酸配列を含むTTRエピトープと特異的に結合する本発明の抗体が提供される。
これに関連して、実施例9において説明されるように、NI-301.59F1、NI301.35G11およびNI-301.37F1の例示的抗体の結合エピトープが、15アミノ酸の長さおよび11アミノ酸の重なりを有する29個の連続するペプチド(すなわち、TTRaa1-15である最初のペプチド、TTRaa5-19である2番目のペプチドなど)からなるパネルを使用することによって分析されており、この場合、抗体NI-301.59F1および抗体NI301.35G11は2つの重なるペプチド((15および16)および(13および14))をそれぞれ認識し、抗体NI-301.37F1は3つの重なるペプチド(9、10および11)を認識する(実施例9および図10を参照のこと)。
したがって、成熟型TTRポリペプチドのアミノ酸配列および対応するペプチドマッピングに関して、このことは、エピトープEEEFVEGIY(配列番号49)に結合する抗体NI-301.59F1は、アミノ酸配列GLTTEEEFVEGIYKV(配列番号85)を有するペプチド、および、アミノ酸配列EEEFVEGIYKVEIDT(配列番号86)を有するペプチドを認識することができることを意味する。
同じように、エピトープGELHGLTTEEE(配列番号50)に結合する抗TTR抗体NI-301.35G11は、アミノ酸配列TSESGELHGLTTEEE(配列番号87)を有するペプチド、および、アミノ酸配列GELHGLTTEEEFVEG(配列番号88)を有するペプチドを認識することができる。
同様に、エピトープWEPFA(配列番号51)に結合する抗TTR抗体NI-301.37F1は、アミノ酸配列FRKAADDTWEPFASG(配列番号89)を有するペプチド、アミノ酸配列ADDTWEPFASGKTSE(配列番号90)を有するペプチド、および、アミノ酸配列WEPFASGKTSESGEL(配列番号91)を有するペプチドを認識することができる。
したがって、実施例において例示される本発明の主題抗体は、これらの言及されたエピトープのいずれかをN末端および/またはC末端のさらなるアミノ酸のみの状況において認識する抗体とは異なる。したがって、本発明の好ましい実施形態において、アミノ酸配列EEEFVEGIY(配列番号49)、アミノ酸配列GELHGLTTEEE(配列番号50)またはアミノ酸配列WEPFA(配列番号51)を含むTTRエピトープに対する抗TTR抗体の特異的結合が、実施例9および図10A~図10Dに従って、15アミノ酸の長さおよび11アミノ酸の重なりを有する連続するペプチドにより明らかにされる。
これに関連して、15アミノ酸の長さおよび14アミノ酸の重なりを有する151個の連続するペプチド(この場合、それぞれのペプチドについて、10位のアミノ酸が、アラニン以外のアミノ酸についてはアラニンによって置換され、これに対して、アラニンがグリシンまたはプロリンによって置換された)からなるパネルを使用する、本発明に従って行われ、実施例9に記載される拡大されたエピトープマッピングでは、抗体NI-301.59F1はエピトープEEFXEGIY(TTRaa-62
69
)と結合し、抗体NI-301.35G11はELXGLTXE(TTRaa54-61)と結合し、一方、さらなる配列要件が抗体NI-301.37F1のエピトープについては決定されなかったことが明らかにされた。したがって、別の実施形態において、所与の抗体が、NI-301.59F1、NI301.35G11およびNI-301.37F1の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを明らかにすることが、実施例9および図10E~図10Hに従って行われる。
エピトープマッピング、および、所与の抗体が、実施例9において使用され、また、図10に示される主題抗体と同じエピトープと結合するかどうかを明らかにすることはまた、図1A~図1Tに示される可変領域を有する実施例に記載される本発明のどのような他の抗TTR抗体に対しても適用できることは言うまでもないことである。
したがって、本発明は一般には、実施例において例示され、かつ、図1A~図1Tのいずれか1つに示されるようなCDRならびに/あるいは可変重鎖領域および可変軽鎖領域を少なくとも有する抗体と同じエピトープに結合するどのような抗TTR抗体および抗体様分子にも関連する。
さらなる実施形態において、抗体は、TTR-L55Pの変異エピトープに対応するアミノ酸配列GELHGPTTEEEではなく、アミノ酸配列GELHGLTTEEE(配列番号50)と特異的に結合し、または、抗体は、TTR-E42Gの変異エピトープに対応するアミノ酸配列WGPFAではなく、アミノ酸配列WEPFA(配列番号51)と特異的に結合する。
さらには、実施例3~実施例8に記載されるような、また、図2、図3、図4、図7および図9に示されるような初期の実験所見によってとらわれることを意図しないが、本発明のヒトモノクローナル抗TTR抗体のNI-301.59F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1は好ましくは、病理学的なミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRに特異的に結合し、生理学的形態でのTTRを実質的に認識しないことにおいて特徴づけられる。したがって、本発明は、診断目的および治療目的のために特に有用である結合特性を有する一組のヒト抗TTR抗体を提供する。したがって、1つの実施形態において、本発明は、TTRの病理学的に凝集した形態と特異的に結合することができる抗体を提供する。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、実施例に記載されるような例示的抗体のNI-301.59F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1の結合特性を示す。本発明の抗TTR抗体は、生理学的なTTRではなく、むしろ、病理学的に変化したTTR(例えば、変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種およびそのフラグメントなど)を優先的に認識する。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、生理学的なTTR種を実質的に認識しない。
用語「実質的に認識しない」は、抗体、そのフラグメント、あるいは、特定の標的分子、特定の抗原、ならびに/または、前記標的分子および/もしくは抗原の特定の立体配座についての結合性分子を含む一群の分子の結合親和性を記述するために本出願において使用されるときには、前述の群の分子が、別の分子、抗原および/または立体配座と結合することについての前述の群の分子の結合親和性の2分の1未満である、3分の1未満である、4分の1未満である、5分の1未満である、6分の1未満である、7分の1未満である、8分の1未満である、または9分の1未満である結合親和性により、前記の分子、抗原および/または立体配座と結合することを意味する。非常に多くの場合、解離定数(KD)が、結合親和性の尺度として使用される。ときには、結合親和性の尺度として使用されるのが、例えば、ELISAアッセイのような特異的アッセイでのEC50である。好ましくは、用語「実質的に認識しない」は、本出願において使用されるときには、前述の群の分子が、別の分子、抗原および/または立体配座に対する結合についての前述の群の前記分子の結合親和性の10分の1未満である、20分の1未満である、50分の1未満である、100分の1未満である、1000分の1未満である、または10000分の1未満である結合親和性により、前記の分子、抗原および/または立体配座と結合することを意味する。
加えて、または、代替において、本発明の抗TTR抗体は、疾患を引き起こすヒトTTRのミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態または凝集した形態に結合する。これに関連して、結合特親和性が、図2、それぞれの図10において例示的抗体のNI-301.59F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1について示されるような範囲である場合があり、すなわち、NI-301.59F1およびNI-301.35G11について示されるようなヒト凝集TTRおよび凝集した組換えTTRについての約1pM~500nMの最大半有効濃度(EC50)、好ましくは約50pM~100nMのEC50、最も好ましくは約1nM~20nMのEC50、または、NI-301.37F1について示されるようなヒト凝集TTRおよび凝集した組換えTTRについての約100pM~1nMのEC50を有する。
具体的には、抗TTR抗体、その結合フラグメントまたは誘導体は、凝集した野生型と結合することについては5nM以下のEC50値に対応する結合親和性、および/または、凝集したV30M-TTRと結合することについては20nM以下のEC50、好ましくは10nM以下のEC50、最も好ましくは1nM以下のEC50に対応する結合親和性を有する(実施例3および図2を参照のこと)。
いくつかの抗体は広範囲の数々の生体分子(例えば、タンパク質)に結合することができる。当業者は理解するであろうように、特異的(な)の用語は、TTRタンパク質またはそのフラグメントでない他の生体分子が抗原結合性分子(例えば、本発明の抗体の1つ)に有意に結合しないことを示すために本明細書中では使用される。好ましくは、TTR以外の生体分子に対する結合のレベルにより、TTRに対する親和性の最大でもほんの20%以下、10%以下、ほんの5%以下、ほんの2%以下、または、ほんの1%以下(すなわち、5分の1未満、10分の1未満、20分の1未満、50分の1未満または100分の1未満、あるいは、それよりも小さいどのような程度でも)である結合親和性がそれぞれもたらされる(例えば、図2を参照のこと)。
1つの実施形態において、本発明の抗TTR抗体は、凝集した形態のTTR、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRならびに/あるいはそれらのフラグメント、誘導体、原線維および/またはオリゴマーに優先的に結合する。別の実施形態において、本発明の抗TTR抗体は、ネイティブTTRと、TTRの病理学的にミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態または凝集した形態との両方に優先的に結合する。
上述の通り、無定型TTR沈着物およびアミロイドTTR沈着物は、体内において、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種および/または凝集したTTR種あるいはそのフラグメントが生じる場所に依存して、種々の疾患を引き起こす可能性がある。例えば、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の患者はTTR沈着物を主に小直径の神経線維において示し、したがって、変化した感覚認知および自律神経機能不全(胃腸機能不全またはインポテンスを含む)などの症状を主に示す;家族性アミロイド心筋症(FAC)または老年性全身性アミロイドーシス(SSA)の患者はTTR沈着物を主に心臓において示し、したがって、心不全または心不整脈などの症状を示す;TTR沈着物を腎臓に有する患者は腎機能不全およびタンパク尿を示す場合がある。
したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、老年性全身性アミロイドーシス(SSA)、全身性家族性アミロイドーシス、軟膜/中枢神経系(CNS)アミロイドーシス(アルツハイマー病を含む)、眼アミロイドーシス、腎アミロイドーシス、高チロキシン血症、靱帯アミロイドーシス(手根管症候群、肩腱板断裂および腰部脊柱管狭窄を含む)および子癇前症、ならびにそれらの症状を処置するために有用である。
本発明はまた、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関するものであり、この場合、当該抗体は、NI-301.59F1、NI-301.35G11、NI-301.37F1、NI-301.2F5、NI-301.28B3、NI-301.119C12、NI-301.5D8、NI-301.9D5、NI-301.104F5、NI-301.21F10、NI-301.9G12、NI-301.12D3、NI-301.44E4、NI-301.18C4、NI-301.11A10、NI-301.3C9、NI-301.14D8、NI-301.9X4、及びNI-301.14C3からなる群から選択される抗体の抗原結合ドメインと同一の抗原結合ドメインを含む。
本発明ではさらに、その可変領域において、例えば、結合ドメインにおいて、図1に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを含むVH可変領域および/またはVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴づけられることがある、いくつかのそのような結合性分子、例えば、抗体およびその結合フラグメントが例示される。上記の可変領域をコードする対応するヌクレオチド配列が、下記において表2にそれぞれ示される。VH領域および/またはVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例示的なセットが図1に示される。しかしながら、下記において議論されるように、当業者は、加えて、または、代替において、様々なCDRが使用されてもよく、この場合、これらのCDRは、それらのアミノ酸配列において、図1にそれぞれ示されるアミノ酸配列から、CDR2およびCDR3の場合には1つ、2つ、3つ、または、それ以上のアミノ酸が異なるという事実を十分に承知している。したがって、1つの実施形態において、図1に示される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、および/または、図1に示されるCDRに1つまたは複数のアミノ酸置換を含んでなるCDRの1つまたは複数をその可変領域に含む本発明の抗体あるいはTTR結合フラグメントが提供される。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、図1に示されるVH領域および/またはVL領域、あるいは、1つまたは複数のアミノ酸置換を含むそのVH領域および/またはVL領域のアミノ酸配列を含む抗体のいずれか1つである。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトB細胞に存在したような重鎖および軽鎖の同族性の対形成の保存によって特徴づけられる。
本発明のさらなる実施形態において、抗TTR抗体、TTR結合フラグメント、それらの合成変異体または生物工学変異体は、標的に対する適切な結合親和性、および、適切な薬物動態学的特性を有するように最適化することができる。したがって、グリコシル化、酸化、脱アミノ化、ペプチド結合切断、イソアスパラギン酸形成および/または不対システインからなる群から選択される修飾を受けやすいCDR領域内または可変領域内の少なくとも1つのアミノ酸が、そのような変化を欠く変異アミノ酸によって置換され、あるいは、少なくとも1つの炭水化物成分が化学的または酵素的に除かれ、または抗体に付加される。アミノ酸最適化のための様々な例を、例えば、国際特許出願公開WO2010/121140および同WO2012/049570に見出すことができる。抗体特性を最適化するさらなる修飾が、Gavel他、Protein Engineering、3(1990)、433~442、および、Helenius他、Annu.Rev.Biochem.、73(2004)、1019~1049に記載される。
代替では、本発明の抗体は、TTRに対する結合について、図1A~Tに示されるようなVH領域および/またはVL領域を有する抗体の少なくとも1つと競合する抗体あるいはその抗原結合フラグメント、誘導体または変異体である。
図2及び実施例3において提供される実験結果から、本発明の抗TTR抗体のいくつかは、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集した形態のヒト抗TTRを引き起こす疾患に、生理学的形態の当該タンパク質よりも優先的に結合することが示唆される。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、及び/又は凝集した形態のヒト抗TTRおよび/またはそのフラグメント及び/又はその誘導体に生理学的形態の当該タンパク質よりも優先的に結合する。
本発明の抗体は、治療適用のためには特に、ヒトの抗体である場合がある。代替では、本発明の抗体は、動物における診断方法および研究のために特に有用である齧歯類抗体、齧歯類化抗体または齧歯類-ヒトのキメラ抗体、好ましくは、マウス抗体、マウス化抗体またはマウス-ヒトのキメラ抗体、あるいは、ラット抗体、ラット化抗体またはラット-ヒトのキメラ抗体である。1つの実施形態において、本発明の抗体は齧歯類-ヒトのキメラ抗体または齧歯類化抗体である。
さらには、1つの実施形態において、本発明のキメラ抗体、すなわち、ヒト抗体(例えば、NI-301.35G11)の可変ドメインと、マウスの一般的な軽鎖定常ドメインおよび重鎖定常ドメインとを含むキメラ抗体は、実施例において記載されるような例示的なマウスキメラ抗体NI-301.mur35G11の結合特性を示す。さらに、本発明のマウスキメラ抗体は、実施例4および実施例8において記載されるようにヒトTTRに大きい親和性で結合する。好ましくは、キメラ抗体の結合親和性はそれらのヒト対応物と類似している。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、培養される単一のB細胞またはオリゴクローナルなB細胞の培養物、および、前記B細胞によって産生される抗体を含有する培養物の上清によって提供され、それらにおける抗TTR抗体の存在および親和性についてスクリーニングされる。スクリーニングプロセスは、合成された全長型TTRペプチドに由来する、或いは例えばヒト血漿又は組換え発現から精製されたhTTRのオリゴマーのような生来型モノマー凝集物、原線維性凝集物または非原線維性凝集物に対する結合についてのスクリーニングを含む。
加えて、または、代替において、抗TTR抗体の存在および親和性についてのスクリーニングプロセスは、高感度な組織アミロイド斑免疫反応性(TAPIR)アッセイ(例えば、国際特許出願公開WO2004/095031(その開示内容が参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載されるアッセイなど)の工程を含む場合がある。さらには、または、代替において、抗TTRに対する結合についての腎臓、心臓切片に対するスクリーニング、例えば、脳切片および脊髄切片について国際特許出願公開WO2008/081008に同様に記載されるスクリーニングなどが行われる場合がある。
上記で述べられるように、ヒト免疫応答でのその生成のために、本発明のヒトモノクローナル抗体は、特定の病理学的関連性を有し、かつ、例えば、マウスモノクローナル抗体の作製のための免疫化プロセス、および、ファージディスプレーライブラリーのインビトロスクリーニングの場合には接近可能でないかもしれないか、またはより低い免疫原性であるかもしれないエピトープをそれぞれ認識するであろう。したがって、本発明のヒト抗TTR抗体のエピトープは独特であること、および、本発明のヒトモノクローナル抗体によって認識されるエピトープに結合することができる他の抗体が存在しないこと(図10もまた参照のこと)を明記することは賢明である。本発明の抗体の独特さについてさらに示すものが、実施例8において示されるように、本発明の抗体NI-301.59F1、NI-301.35G11及びNI-301.37F1はミスフォールドした、ミスアッセンブルした、及び/又は凝集したTTRの立体構造に特異的なエピトープ(これは上記で示されるように、特定の病理学的関連性を有し、かつ、抗体作製のための通常的なプロセス(例えば、免疫化またはインビトロライブラリースクリーニングなど)によって同様に得ることができないかもしれない)と結合するという事実である。
したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、概して、TTRに対する特異的な結合について本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する抗TTR抗体およびTTR結合性分子にまで及ぶ。本発明は、より具体的には、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関するものであり、この場合、当該抗体は、NI-301.59F1、NI-301.35G11、NI-301.37F1及び/又はNI-301.12D3からなる群から選択される参照抗体と同じTTRのエピトープに特異的に結合する。
さらには、1つの実施形態において、本発明はまた、概して、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、及び/又は凝集したTTR種又はそのフラグメントに対する特異的な結合について本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する抗TTR抗体および/または抗TTR結合性分子にまで及ぶ。したがって、本発明は、より具体的にはまた、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関するものであり、この場合、当該抗体は、NI-301.59F1、NI-301.35G11、NI-301.37F1及び/又はNI-301.12D3からなる群から選択される参照抗体と同じ、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、及び/又は凝集したTTR種又はそのフラグメントのエピトープに特異的に結合する。
抗体間の競合が、試験下にある免疫グロブリンが共通の抗原(TTRなど)に対する参照抗体の特異的な結合を阻害するアッセイによって求められる。数多くのタイプの競合的結合アッセイが知られている:例えば、固相での直接的または間接的な放射免疫アッセイ(RIA)、固相での直接的または間接的な酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli他、Methods in Enzymology 9(1983)、242~253を参照のこと)、固相での直接的なビオチン-アビジンEIA(Kirkland他、J.Immunol.137(1986)、3614~3619、および、Cheung他、Virology 176(1990)、546~552を参照のこと)、固相での直接的な標識化アッセイ、固相での直接的な標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1988)を参照のこと)、I125標識を使用する固相での直接的な標識RIA(Morel他、Molec.Immunol.25(1988)、7~15、および、Moldenhauer他、Scand.J.Immunol.32(1990)、77~82を参照のこと)。典型的には、そのようなアッセイは、精製されたTTRまたはミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR(例えば、固体表面、または、これらのどちらかを有する細胞に結合させたオリゴマーおよび/またはその原線維など)と、標識されていない試験用免疫グロブリンおよび標識された参照用免疫グロブリン(すなわち、本発明のヒトモノクローナル抗体)とを使用することを伴う。競合的阻害が、試験用免疫グロブリンの存在下において固体表面または細胞に結合する標識の量を求めることによって測定される。通常、試験用免疫グロブリンは過剰に存在する。好ましくは、競合的結合アッセイが、添付された実施例においてELISAアッセイについて記載されるような条件のもとで行われる。競合アッセイによって特定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、および、立体的障害が生じるために、参照抗体が結合するエピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗体が含まれる。通常の場合、競合抗体が過剰に存在するときには、競合抗体により、共通の抗原に対する参照抗体の特異的な結合が少なくとも50%または75%阻害されるであろう。したがって、本発明はさらに、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関しており、この場合、当該抗体は、NI-301.59F1、 NI-301.35G11、NI-301.37F1、NI-305.2F5、NI-301.28B3、NI-301.119C12、NI-301.5D8、NI-301.9D5、NI-301.104F5、NI-301.21F10、NI-301.9G12、NI-301.12D3、NI.301.44E4、NI-301.18C4NI-301.11A10、NI-301.3C9、NI-301.14D8、NI-301.9X4及び/又はNI-301.14C3からなる群から選択される参照抗体がTTRに結合することを競合的に阻害する。
加えて、本発明はさらに、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体に関しており、この場合、当該抗体は、NI-301.59F1、NI-301.35G11、NI-301.37F1、NI-305.2F5、NI-301.28B3、NI-301.119C12、NI-301.5D8、NI-301.9D5、NI-301.104F5、NI-301.21F10、NI-301.9G12、NI-301.12D3、NI-301.44E4 NI-301.18C4、NI-301.11A10、NI-301.3C9、NI-301.14D8、NI-301.9X4及び/又はNI-301.14C3からなる群から選択される参照抗体が、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種又はそのフラグメントに結合することを競合的に阻害する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、重鎖可変領域のVH-CDRの少なくとも1つ、または、重鎖可変領域のVH-CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH-CDR1のアミノ酸配列、VH-CDR2のアミノ酸配列またはVH-CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VHのVH-CDR1領域、VH-CDR2領域およびVH-CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH-CDR1のアミノ酸配列、VH-CDR2のアミノ酸配列またはVH-CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図1にそれぞれ示される群に関連づけられるVH-CDR1ポリペプチド配列、VH-CDR2ポリペプチド配列およびVH-CDR3ポリペプチド配列を有する。図1は、Kabatシステムによって定義されるVH-CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVH-CDRもまた本発明に含まれ、これらは、図1に示されるデータを使用して当業者によって容易に特定され得る。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH-CDR1領域、VH-CDR2領域およびVH-CDR3領域が、図1にそれぞれ示されるVH-CDR1群、VH-CDR2群およびVH-CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH-CDR1領域、VH-CDR2領域およびVH-CDR3領域が、いずれか1つのVH-CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのアミノ酸置換を除いて、図1にそれぞれ示されるVH-CDR1群、VH-CDR2群およびVH-CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、軽鎖可変領域のVL-CDRの少なくとも1つ、または、軽鎖可変領域のVL-CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL-CDR1のアミノ酸配列、VL-CDR2のアミノ酸配列またはVL-CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VLのVL-CDR1領域、VL-CDR2領域およびVL-CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL-CDR1のアミノ酸配列、VL-CDR2のアミノ酸配列またはVL-CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図1にそれぞれ示されるポリペプチドに関連づけられるVL-CDR1ポリペプチド配列、VL-CDR2ポリペプチド配列およびVL-CDR3ポリペプチド配列を有する。図1は、Kabatシステムによって定義されるVL-CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVL-CDRもまた本発明に含まれる。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL-CDR1領域、VL-CDR2領域およびVL-CDR3領域が、図1にそれぞれ示されるVL-CDR1群、VL-CDR2群およびVL-CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL-CDR1領域、VL-CDR2領域およびVL-CDR3領域が、いずれか1つのVL-CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのアミノ酸置換を除いて、図1にそれぞれ示されるVL-CDR1群、VL-CDR2群およびVL-CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
免疫グロブリンまたはそのコードcDNAがさらに改変される場合がある。したがって、さらなる実施形態において、本発明の方法は、キメラ抗体、マウス化抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、二重特異性抗体、融合抗体、標識化抗体、または、それらのいずれか1つのアナログを製造する工程のいずれか1つを含む。対応する様々な方法が当業者には知られており、例えば、Harlow and Lane、「Antibodies,A Laboratory Manual」、CSH Press、Cold Spring Harbor(1988)に記載される。前記抗体の誘導体がファージディスプレー技術によって得られるとき、BIAcoreシステムにおいて用いられるような表面プラズモン共鳴を、本明細書中に記載される抗体のいずれか1つのエピトープと同じエピトープに結合するファージ抗体の効率を増大させるために使用することができる(Schier、Human Antibodies Hybridomas 7(1996)、97~105;Malmborg、J.Immunol.Methods 183(1995)、7~13)。キメラ抗体の製造が、例えば、国際特許出願公開WO89/09622に記載される。ヒト化抗体を製造するための方法が、例えば、欧州特許出願EP-A10239400および国際特許出願公開WO90/07861に記載される。本発明に従って利用されるための抗体のさらなる供給源は、いわゆる異種抗体である。異種抗体(例えば、ヒト様抗体)をマウスにおいて製造するための一般的原理が、例えば、国際特許出願公開WO91/10741、WO94/02602、WO96/34096およびWO96/33735に記載される。上記で議論されたように、本発明の抗体は、例えば、Fv、FabおよびF(ab)2を含めて、完全な抗体のほかに様々な形態で、ならびに、単鎖で存在する場合がある(例えば、国際特許出願公開WO88/09344を参照のこと)。したがって、1つの実施形態において、単鎖Fvフラグメント(scFv)、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメントおよびF(ab’)2フラグメントからなる群から選択される本発明の抗体が提供される。
本発明の様々な抗体またはそれらの対応する免疫グロブリン鎖はさらに、この技術分野において知られている従来からの技術を使用して、例えば、この技術分野において知られているアミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、アミノ酸付加および/または組換えならびに/あるいはいずれかの他の改変を単独または組合せでのどちらかで使用することによって改変することができる。そのような改変を免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の根底にあるDNA配列に導入するための方法が、当業者には広く知られている;例えば、Sambrook、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)、N.Y.、および、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1994)を参照のこと。本発明の抗体の修飾には、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、および、炭水化物成分または脂質成分および補因子などの連結を含む側鎖修飾、骨格修飾、ならびに、N末端修飾およびC末端修飾を含めて、1つまたは複数の構成アミノ酸における化学的および/または酵素的な誘導体化が含まれる。同様に、本発明は、記載された抗体またはその何らかのフラグメントを異種分子(例えば、カルボキシル末端での免疫刺激リガンドなど)に融合されてアミノ末端において含むキメラなタンパク質の製造を包含する;対応する技術的詳細については、例えば、国際特許出願公開WO00/30680を参照のこと。
加えて、重鎖CDR3(HCDR3)は、より大きい度合いの可変性と、抗原-抗体相互作用における支配的な関与とを有する領域であることがしばしば認められているので、本発明は、上記で記載されるような結合性分子を含有するペプチド、例えば、述べられた抗体のいずれか1つの可変領域のCDR3領域(特に、重鎖のCDR3)を含有するペプチドを含むペプチドを包含する。そのようなペプチドが、本発明に従って有用である結合剤を製造するために容易に合成される場合があり、または、組換え手段によって製造される場合がある。そのような方法は当業者にはよく知られている。ペプチドを、例えば、市販されている自動化されたペプチド合成機を使用して合成することができる。ペプチドはまた、ペプチドを発現するDNAを発現ベクターに組み込むこと、および、細胞を、ペプチドを産生させるために発現ベクターにより形質転換することによる組換え技術によって製造することができる。
したがって、本発明は、上記の抗TTR抗体及び/又は、変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種及び/又はそのフラグメントに結合できる本発明の抗体に向けられ、かつ、述べられた性質を呈示する、すなわち、TTR及び/又は変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種及び/又はそのフラグメントを特異的に認識するどのような結合性分子(例えば、抗体またはその結合フラグメント)にも関連する。そのような抗体および結合性分子は、本明細書中に記載されるようなELISAおよび免疫組織化学によってそれらの結合特異性および結合親和性について試験することができる(例えば、実施例を参照のこと)。抗体および結合性分子のこれらの特性はウエスタンブロットによって同様に試験することができる。
例示的なヒト抗体NI-301.37F1は、ミスフォールドしたTTRの顕著な染色をFAP患者皮膚生検からの切片に対して示し、しかし、健康なコントロール膵臓に対しては染色を何ら示さなかった(この場合、膵臓のアルファ細胞はTTR(すなわち、ネイティブTTR)の内因性発現を示す)(実施例8および図9を参照のこと)。本発明の例示的抗体のNI-301.35G11およびNI-301.37F1はまた、腸を含む様々な組織における異常なTTR沈着物を示すFAPマウス組織に対する陽性の結果を与えた(図8を参照のこと)。ヒトおよび動物の組織におけるTTRの病理学的形態に対するこの結合特異性は、本明細書中に示される生化学的実験(図10を参照のこと)のほかに、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種および/または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメント、誘導体の存在のために好ましくは生じる、TTRアミロイドーシスに伴う疾患の処置および診断において本発明の抗体が使用可能であることを強調している。
免疫グロブリンをB細胞またはBメモリー細胞の培養から直接に得ることの代替として、これらの細胞を、その後の発現および/または遺伝子操作のための、再編成された重鎖遺伝子座および軽鎖遺伝子座の供給源として使用することができる。再編成された抗体遺伝子を、cDNAを作製するために、適切なmRNAから逆転写することができる。所望されるならば、重鎖定常領域を異なるアイソタイプの重鎖定常領域に交換することができ、または、完全に除くことができる。可変領域を、単鎖のFv領域をコードするために連結することができる。多数のFv領域を、2つ以上の標的に対する結合能を与えるために連結することができ、または、重鎖および軽鎖のキメラな組合せを用いることができる。遺伝物質が入手可能であると、所望の標的と結合するそれらの能力をともに保持する上記で記載されるようなアナログの設計は簡単である。抗体可変領域のクローニングおよび組換え抗体の作製のための方法が当業者には知られており、例えば、Gilliland他、Tissue Antigens 47(1996)、1~20;Doenecke他、Leukemia 11(1997)、1787~1792に記載される。
適切な遺伝物質が得られ、かつ、所望されるならば、アナログをコードするために改変されると、コード配列(これは、最低でも重鎖および軽鎖の可変領域をコードする配列を含む)を、標準的な組換え宿主細胞にトランスフェクションされ得るベクターにおいて含有される発現系に挿入することができる。様々なそのような宿主細胞が使用してよい;しかしながら、効率的なプロセシングのためには、哺乳動物細胞が好ましい。この目的のために有用である典型的な哺乳動物細胞株には、CHO細胞、HEK293細胞またはNSO細胞が含まれるが、これらに限定されない。
抗体またはアナログの製造はその後、改変された組換え宿主を、宿主細胞の成長およびコード配列の発現のために適切である培養条件のもとで培養することによって着手される。その後、抗体が、抗体を培養物から単離することによって回収される。発現系は好ましくは、シグナルペプチドを含み、その結果、生じた抗体が培地中に分泌されるように設計される。しかしながら、細胞内産生もまた可能である。
上記によれば、本発明はまた、本発明の抗体または同等な結合性分子をコードするポリヌクレオチドに関連し、抗体の場合には、好ましくは、上で記載される抗体の免疫グロブリン鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。典型的には、ポリヌクレオチドによってコードされる前記可変領域は、前記抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。本発明の一実施形態では、ポリヌクレオチドはcDNAである。
当業者は、上記の可変ドメインを有する抗体の可変ドメインが、所望される特異性および生物学的機能の他のポリペプチドまたは抗体を構築するために使用され得ることを容易に理解するであろう。したがって、本発明はまた、上で記載された可変ドメインの少なくとも1つのCDRを含み、かつ、添付された実施例において記載される抗体と実質的に同じまたは類似する結合性質を好都合には有するポリペプチドおよび抗体を包含する。当業者は、結合親和性が、アミノ酸置換をCDR内において、または、Kabatによって定義されるようなCDRと部分的に重なる超可変ループ(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901~917)の内部において行うことによって強化され得ることを理解している(例えば、Riechmann他、Nature 332(1988)、323~327を参照のこと)。したがって、本発明はまた、述べられたCDRの1つまたは複数が1つまたは複数の、好ましくは2つ以下のアミノ酸置換を含む抗体に関連する。好ましくは、本発明の抗体は、その免疫グロブリン鎖の一方または両方において、図1に示されるような可変領域の2つのCDRまたは3つすべてのCDRを含む。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、当業者によって知られているように、1つまたは複数のエフェクター機能を媒介する定常領域を含むことができる。例えば、補体のC1成分が抗体の定常領域に結合することにより、補体系が活性化される場合がある。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化および溶解において重要である。補体の活性化は炎症応答をも刺激し、自己免疫の過敏性に関与することもある。さらに、抗体は、Fc領域を介して、すなわち、抗体のFc領域におけるFc受容体結合部位が細胞上のFc受容体(FcR)に結合することにより様々な細胞における受容体に結合する。IgG(ガンマ受容体)、IgE(イプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)およびIgM(ミュー受容体)を含めて、異なるクラスの抗体について特異的であるいくつかのFc受容体が存在する。抗体が細胞表面のFc受容体に結合することにより、抗体被覆粒子の貪食および破壊、免疫複合体の排除、キラー細胞による抗体被覆された標的細胞の溶解(これは抗体依存性細胞媒介性細胞傷害またはADCCと呼ばれる)、炎症性媒介因子の放出、胎盤移行および免疫グロブリン産生の制御を含む多数の重要かつ多様な生物学的応答が誘発される。
したがって、本発明の特定の実施形態には、少なくとも定常領域ドメインの1つまたは複数の一部が欠失されているか、さもなければ変化させられており、その結果、所望される生化学的特性を提供するように、例えば、およそ同じ免疫原性の完全な未変化抗体と比較したとき、低下したエフェクター機能、ダイマーを非共有結合により形成することができること、TTRの凝集および沈着の部位に局在化する増大した能力、低下した血清中半減期、あるいは、増大した血清中半減期などを提供するようにされている抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体が含まれる。例えば、本明細書中に記載される診断方法および処置方法において使用されるためのある種の抗体は、免疫グロブリン重鎖に類似するポリペプチド鎖を含むが、1つまたは複数の重鎖ドメインの少なくとも一部を欠くドメイン欠失抗体である。例えば、ある種の抗体では、改変された抗体の定常領域の1つのドメイン全体が欠失されるであろう。例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部が欠失されるであろう。他の実施形態において、本明細書中に記載される診断方法および処置方法において使用されるためのある種の抗体は、グリコシル化を排除するために変化させられる定常領域(例えば、IgG重鎖定常領域)を有しており、これは、本明細書中の他のところでは、非グルコシル化抗体または「agly」抗体として示される。そのような「agly」抗体は、酵素学的に、ならびに、定常領域におけるコンセンサスなグリコシル化部位を操作することによって調製されてもよい。理論によって拘束されることはないが、「agly」抗体は生体内での安全性および安定性の改善されたproフィルを有する場合があると考えられる。所望されるエフェクター機能を有する非グリコシル化抗体を製造する方法が、例えば、国際特許出願公開WO2005/018572に見出される(その全体が参照によって組み込まれる)。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、Fc部分が、この技術分野において知られている技術を使用して、エフェクター機能を低下させるために変異させられる場合がある。例えば、定常領域ドメインの(点変異または他の手段による)欠失または不活性化は、循環する改変された抗体のFc受容体結合を低下させ、それにより、TTRの局在化を増大させる場合がある。他の場合には、本発明と一致する定常領域改変が補体結合を和らげ、したがって、抱合された細胞毒素の血清半減期および非特異的会合を低下させることがあるかもしれない。定常領域のさらに他の改変が、増大した抗原特異性または抗体柔軟性に起因する高まった局在化を可能にするジスルフィド連結またはオリゴ糖成分を改変するために使用される場合がある。そのような改変の得られた生理学的プロフィール、生物学的利用能および他の生化学的影響、例えば、TTRの局在化、生体分布および血清半減期などが、過度な実験を行うことなく、広く知られている免疫学的技術を使用して容易に測定および定量化され得る。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、Fc部分が、例として、Fcγ受容体、LRPまたはThy1受容体
を介する抗体の受容体媒介性エンドサイトーシスを高めることによって、あるいは、「SuperAntibody Technology」(これは、抗体が、生細胞を傷つけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる)(Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237~241)によって抗体の細胞取り込みを増大させるために変異させられる場合があり、または、代わりのタンパク質配列に交換される場合がある。例えば、抗体結合領域と、細胞表面受容体の同族タンパク質リガンドとの融合タンパク質、あるいは、TTRならびに細胞表面受容体に結合する特異的な配列を有する二重特異性抗体または多特異性抗体の作製が、この技術分野において知られている技術を使用して設計される場合がある。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、Fc部分が、その血液脳関門透過を増大させるために変異させられる場合があり、または、代わりのタンパク質配列に交換される場合があり、あるいは、抗体が化学的に改変される場合がある。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体の改変された形態を、この技術分野において知られている技術を使用して完全な前駆体または親抗体から作製することができる。例示的な技術が本明細書中により詳しく議論される。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、この技術分野において知られている技術を使用して作製または製造することができる。特定の実施形態において、抗体分子またはそのフラグメントが「組換え製造され」、すなわち、組換えDNA技術を使用して製造される。抗体分子またはそのフラグメントを作製するための例示的な技術が本明細書中の他のところでより詳しく議論される。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体にはまた、例えば、共有結合による結合により、抗体がその同族エピトープに特異的に結合することが妨げられないように、どのようなタイプの分子でも抗体に共有結合により結合させることによって改変される誘導体が含まれる。例えば、しかし、限定としてではなく、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、知られている保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって改変されている抗体が含まれる。数多くの化学的修飾のどれもが、知られている技術によって行われる場合があり、これらには、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などが含まれるが、これらに限定されない。加えて、誘導体は1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有する場合がある。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、有害な免疫応答を処置されるべき動物において、例えば、ヒトにおいて誘発しないであろう。特定の実施形態において、結合性分子、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは患者、例えば、ヒト患者に由来し、続いて、抗体またはその抗原結合フラグメントが由来する同じ種、例えば、ヒトにおいて使用され、これにより、有害な免疫応答の出現を緩和するか、または最小限に抑える。
脱免疫化もまた、抗体の免疫原性を低下させるために使用することができる。本明細書中で使用される場合、用語「脱免疫化」は、T細胞エピトープを改変するための抗体の変化を包含する(例えば、国際特許出願公開WO98/52976および同WO00/34317を参照のこと)。例えば、出発抗体からのVH配列およびVL配列が分析され、そして、相補性決定領域(CDR)との関連でのエピトープの所在位置、および、配列内の他の重要な残基を示すそれぞれのV領域からのヒトT細胞エピトープ「マップ」が分析される。T細胞エピトープマップからの個々のT細胞エピトープが、最終的な抗体の活性を変化させる危険性が低い代わりのアミノ酸置換を特定するために分析される。アミノ酸置換の組合せを含む様々な代替的なVH配列およびVL配列が設計され、これらの配列が続いて、本明細書中に開示される診断方法および処置方法における使用のために様々な結合性ポリペプチド(例えば、TTR特異的抗体又はその免疫特異性フラグメント)に組み込まれ、その後、これらは機能について試験される。典型的には、12個~24個の間の変化型抗体が作製され、試験される。改変されたV領域およびヒトC領域を含む完全な重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子がその後、発現ベクターにクローン化され、それに続くプラスミドが、完全な抗体の産生のために細胞株に導入される。その後、抗体が、適切な生化学的アッセイおよび生物学的アッセイにおいて比較され、最適な変異体が特定される。
モノクローナル抗体を、ハイブリドーマ技術、組換え技術およびファージディスプレー技術またはそれらの組合せの使用を含むこの技術分野において知られている広範囲の様々な技術を使用して調製することができる。例えば、モノクローナル抗体を、この技術分野において知られているハイブリドーマ技術、および、例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988);Hammerling他、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas、Elsevier、N.Y.、563~681(1981)に教示されるハイブリドーマ技術を含む様々なハイブリドーマ技術を使用して製造することができる(前記参考文献はそれらの全体が参照によって組み込まれる)。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、真核生物クローン、原核生物クローンまたはファージクローンのどのようなものも含めて、ただ1つのクローンに由来する抗体を示し、モノクローナル抗体が製造される方法に由来する抗体を示さない。したがって、用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。特定の実施形態において、本発明の抗体は、本明細書中に記載されるように、エプスタイン・バールウイルスによる形質転換により不死化されているヒトB細胞に由来する。
広く知られているハイブリドーマプロセス(Kohler他、Nature 256(1975)、495)では、哺乳動物から得られる比較的短命の、すなわち、いつかは死滅するリンパ球、例えば、本明細書中に記載されるようなヒト対象に由来するB細胞が、不死性の腫瘍細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)と融合され、このようにして、不死性であり、かつ、B細胞の遺伝子コードされた抗体を産生することができるハイブリッド細胞、すなわち、「ハイブリドーマ」がもたらされる。得られたハイブリッドは、選抜、希釈および再成長によって単一の遺伝的形質に分離され、それぞれの個々の株が単一抗体の形成のための特定の遺伝子を含む。それらにより、所望の抗原に対して均質であり、そして、それらの純粋な遺伝的起源に関連して、「モノクローナル」と呼ばれる抗体が産生される。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、融合されていない元の骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つまたは複数の物質を好ましくは含有する好適な培養培地において播種され、成長させられる。当業者は、ハイブリドーマの形成、選抜および成長のための試薬、細胞株および培地がいくつかの供給源から市販されており、また、標準化されたプロトコルが十分に確立されていることを理解するであろう。一般に、ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地が、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、インビトロアッセイによって、例えば、本明細書中に記載されるような免疫沈殿、放射免疫アッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などによって求められる。所望される特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、当該クローンは限界希釈手法によってサブクローン化され、標準的な方法によって成長させられる場合がある(例えば、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、59頁~103頁(1986)を参照のこと)。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体が、従来からの精製手段によって、例えば、プロテインA、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって、培養培地、腹水または血清から分離され得ることがさらに理解されるであろう。
別の実施形態において、リンパ球を顕微操作によって選択することができ、可変性遺伝子を単離することができる。例えば、末梢血単核細胞を、免疫化された哺乳動物または生まれつき免疫性の哺乳動物(例えば、ヒト)から単離し、約7日間にわたってインビトロ培養することができる。培養物を、スクリーニング基準を満たす特異的なIgGについてスクリーニングすることができる。陽性のウェルからの細胞を単離することができる。個々のIg産生B細胞を、FACSによって、または、Ig産生B細胞を補体媒介溶血プラークアッセイで特定することによって単離することができる。Ig産生B細胞をチューブの中に顕微操作することができ、VH遺伝子およびVL遺伝子を、例えば、RT-PCRを使用して増幅することができる。VH遺伝子およびVL遺伝子を抗体発現ベクターにクローン化し、発現のための細胞(例えば、真核生物細胞または原核生物細胞)にトランスフェクションすることができる。
代替では、抗体産生の細胞株が、当業者に広く知られている技術を使用して選択および培養される場合がある。そのような技術が様々な実験室マニュアルおよび一次刊行物に記載されている。これに関連して、下で記載されるような本発明における使用のために好適である技術が、Current Protocols in Immunology、Coligan他編、Green Publishing Associates and Wiley-Interscience、John Wiley and Sons、New York(1991)に記載される(これは、増刊を含めて、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
特異的なエピトープを認識する抗体フラグメントが、知られている技術によって作製され得る。例えば、FabフラグメントおよびF(ab’)2フラグメントが、組換えによって、あるいは、例えば、パパイン(Fabフラグメントを製造するために)またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを製造するために)などの酵素を使用する免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって製造され得る。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含有する。そのようなフラグメントは、例えば、免疫グロブリンの免疫特異性部分を検出用試薬(例えば、放射性同位体など)に連結することを伴う免疫診断手順における使用のために十分である。
1つの実施形態において、本発明の抗体は抗体分子の少なくとも1つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも2つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも3つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも4つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも5つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも6つのCDRを含む。主題となるこれらの抗体に含まれ得る少なくとも1つのCDRを含む例示的な抗体分子が本明細書中に記載される。
本発明の抗体は、抗体を合成するためにこの技術分野において知られているいずれかの方法によって、特に、化学合成によって、または、好ましくは、本明細書中に記載されるような組換え発現技術によって製造することができる。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、1つまたは複数のドメインが部分的または完全に欠失される合成された定常領域を含む(「ドメイン欠失抗体」)。特定の実施形態において、適合し得る改変された抗体は、CH2ドメイン全体が除かれているドメイン欠失の構築物または変異体(ΔCH2構築物)を含むであろう。他の実施形態については、短い連結ペプチドが、動きの柔軟性および自由を可変領域に与えるために欠失ドメインの代わりに使用される場合がある。当業者は、そのような構築物が抗体の異化速度に対するCH2ドメインの調節的特性のために特に好ましいことを理解するであろう。ドメイン欠失された構築物を、IgG1ヒト定常ドメインをコードするベクターを使用して得ることができる(例えば、国際特許出願公開WO02/060955および同WO02/096948A2を参照のこと)。このベクターは、CH2ドメインを欠失し、かつ、ドメイン欠失されたIgG1定常領域を発現する合成ベクターを提供するために操作される。
特定の実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はミニボディ(minibody)である。ミニボディを、この技術分野において記載される方法を使用して作製することができる(例えば、米国特許第5,837,821号または国際特許出願公開WO94/09817を参照のこと)。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、モノマーサブユニット間の会合を可能にする限り、数個のアミノ酸の欠失もしくは置換、または、1個だけのアミノ酸の欠失もしくは置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。例えば、CH2ドメインの選択された領域における1個だけのアミノ酸の変異が、Fc結合を実質的に低下させるために、そして、それにより、TTRの局在化を増大させるために十分である場合がある。同様に、調節されるべきエフェクター機能(例えば、補体結合)を制御する1つまたは複数の定常領域ドメインのその部分を単に欠失することが望ましい場合がある。定常領域のそのような部分的欠失は抗体の選択された特性(血清半減期)を改善し、一方で、当該定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能を損なわないままにし得る。そのうえ、上記において暗に示されるように、開示された抗体の定常領域は、生じた構築物のプロフィールを高める1つまたは複数のアミノ酸の変異または置換により合成物である場合がある。これに関連して、改変された抗体の立体配置および免疫原性プロフィールを実質的に維持しながら、保存されている結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を妨げることが可能である場合がある。さらに他の実施形態は、1つまたは複数のアミノ酸を、望ましい特性(例えば、エフェクター機能など)を高めるために、あるいは、細胞毒素または炭水化物のより多くの結合を提供するために定常領域に付加することを含む。そのような実施形態では、選択された定常領域ドメインに由来する特異的な配列を挿入すること、または複製することが望ましい場合がある。
本発明はまた、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)を含む抗体、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)から本質的になる抗体、あるいは、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)からなる抗体を提供し、そのような抗体またはそのフラグメントはTTRに免疫特異的に結合する。当業者に知られている様々な標準的技術を、抗体をコードするヌクレオチド配列に変異を導入するために使用することができ、そのような技術には、アミノ酸置換をもたらす部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、変異体(誘導体を含む)は、基準となるVH領域、VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL領域、VL-CDR1、VL-CDR2またはVL-CDR3に対して50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換または2未満のアミノ酸置換をコードする。「保存的(な)アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換である。類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーがこの技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-分岐した側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。代替において、変異を、例えば、飽和変異誘発などによってコード配列の全体または一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた変異体を、活性(例えば、TTR、及び/又は、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種及び/又はそのフラグメントと結合する能力)を保持する変異体を特定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。
例えば、変異を抗体分子のフレームワーク領域においてのみに、または、抗体分子のCDR領域においてのみに導入することが可能である。導入された変異はサイレント変異または中立のミスセンス変異である場合があり、例えば、抗体の抗原結合能に対する影響を全く有しないか、またはほとんど有しない場合があり、実際、いくつかのそのような変異はアミノ酸配列を全く変化させない。これらのタイプの変異は、コドン使用を最適化するために、または、ハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用である場合がある。本発明の抗体をコードするコドン最適化コード領域が本明細書中の他のところで開示される。代替において、非中立的なミスセンス変異により、抗体の抗原結合能が変化する場合がある。ほとんどのサイレント変異および中立的ミスセンス変異の位置はフレームワーク領域内である可能性が高く、一方、ほとんどの非中立的ミスセンス変異の位置はCDR内である可能性が高く、だが、このことは絶対的要件でない。当業者であれば、所望される性質、例えば、抗原結合活性における変化がないことまたは結合活性における変化(例えば、抗原結合活性における改善または抗体特異性における変化)などを有する変異体分子を設計し、試験することができるであろう。変異誘発後、コードされたタンパク質が常法により発現させられる場合があり、そして、コードされたタンパク質の機能的活性および/または生物学的活性(例えば、TTR、及び/又は、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種及び/又はそのフラグメントと免疫特異的に結合する能力)を、本明細書中に記載される技術を使用して、または、この技術分野において知られている技術を常法により改変することによって求めることができる。
III.抗体をコードするポリヌクレオチド
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドは、どのようなポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチド(これらは非修飾のRNAまたはDNAあるいは修飾されたRNAまたはDNAである場合がある)からでも構成され得る。例えば、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖である場合がある、あるいは、より典型的には、二本鎖である場合があるか、または、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物である場合があるDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。加えて、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNAまたはDNA、あるいは、RNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域から構成され得る。抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドはまた、安定性または他の理由のために改変される1つまたは複数の修飾された塩基あるいはDNA骨格またはRNA骨格を含有してもよい。「修飾(改変)(された)」塩基には、例えば、トリチル化塩基および非通常的塩基(例えば、イノシンなど)が含まれる。様々な修飾をDNAおよびRNAに対して行うことができる;したがって、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的または代謝的に改変された形態を包含する。
免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンの重鎖部分または軽鎖部分)に由来するポリペプチドの非天然型変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドを、1つまたは複数のアミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失が、コードされたタンパク質に導入されるように、1つまたは複数のヌクレオチド置換、ヌクレオチド付加またはヌクレオチド欠失を免疫グロブリンのヌクレオチド配列に導入することによって作出することができる。変異は、標準的な技術によって、例えば、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などによって導入される場合がある。好ましくは、保存的なアミノ酸置換が1つまたは複数の非必須アミノ酸残基において行われる。
よく知られているように、RNAが、標準的な技術、例えば、イソチオシアン酸グアニジウム抽出および沈殿化、その後、遠心分離またはクロマトグラフィーなどによって、元のB細胞、ハイブリドーマ細胞または他の形質転換細胞から単離される場合がある。望ましい場合、mRNAが、標準的な技術、例えば、オリゴdTセルロースでのクロマトグラフィーなどによって総RNAから単離される場合がある。好適な技術がこの技術分野では熟知されている。1つの実施形態において、抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAが、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼをよく知られている方法に従って使用して、同時または別個に作製される場合がある。PCRが、コンセンサスな定常領域プライマーによって、または、公開された重鎖および軽鎖のDNA配列およびアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって開始される場合がある。上記で議論されるように、PCRはまた、抗体の軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用される場合がある。この場合、ライブラリーが、コンセンサスなプライマーまたはより大きい相同的プローブ(例えば、ヒト定常領域プローブなど)によってスクリーニングされる場合がある。
DNA、典型的にはプラスミドDNAが、この技術分野において知られている技術を使用して細胞から単離され、そして、例えば、組換えDNA技術に関連する前記の参考文献に詳しく示される標準的なよく知られている技術に従って制限酵素マッピングおよび配列決定に供される場合がある。当然のことながら、DNAは、単離プロセスまたはその後の分析の期間中のどの時点であっても、本発明に従う合成物である場合がある。
この関連において、本発明はまた、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメインまたは可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。1つの実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、または、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、重鎖可変領域のCDRの少なくとも1つ、または、重鎖可変領域のVH-CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH-CDR1のアミノ酸配列、VH-CDR2のアミノ酸配列またはVH-CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VHのVH-CDR1領域、VH-CDR2領域またはVH-CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH-CDR1のアミノ酸配列、VH-CDR2のアミノ酸配列またはVH-CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVH-CDR1ポリペプチド配列、VH-CDR2ポリペプチド配列またはVH-CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、または、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、軽鎖可変領域のVL-CDRの少なくとも1つ、または、軽鎖可変領域のVL-CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL-CDR1のアミノ酸配列、VL-CDR2のアミノ酸配列またはVL-CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VLのVL-CDR1領域、VL-CDR2領域またはVL-CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL-CDR1のアミノ酸配列、VL-CDR2のアミノ酸配列またはVL-CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVL-CDR1ポリペプチド配列、VL-CDR2ポリペプチド配列またはVL-CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、または、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、VH-CDR1領域、VH-CDR2領域およびVH-CDR3領域が、図1に示されるVH-CDR1群、VH-CDR2群およびVH-CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。
この技術分野において知られているように、2つのポリペプチドまたは2つのポリヌクレオチドの間における「配列同一性」が、一方のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのアミノ酸配列または核酸配列を第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。本明細書中で議論されるとき、任意の特定のポリペプチドが別のポリペプチドと少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%同一であるかどうかを、この技術分野において知られている方法およびコンピュータープログラム/ソフトウエア(例えば、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、WI、53711)(これに限定されない)など)を使用して決定することができる。BESTFITでは、Smith and Waterman(Advances in Applied Mathematics 2(1981)、482~489)の局所的相同性アルゴリズムを、2つの配列の間における相同性の最も良いセグメントを見出すために使用する。BESTFITまたはいずれかの他の配列アライメントプログラムを使用して、特定の配列が、例えば、本発明による参照配列と95%同一であるかどうかを決定するときには、当然のことながら、同一性の百分率が参照ポリペプチド配列の全長にわたって計算され、かつ、参照配列におけるアミノ酸の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように、パラメーターが設定される。
本発明の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、表2に示されるような、抗TTR抗体および/または、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種及び/又はそのフラグメントを認識する抗体のVH領域またはVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、あるいは、そのような核酸から本質的になるか、あるいは、そのような核酸からなる。これに関連して、当業者は、軽鎖および/または重鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドが両方の免疫グロブリン鎖または一方の免疫グロブリン鎖のみの可変ドメインをコードし得ることを容易に理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表2に示されるような、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種及び/又はそのフラグメントを認識する抗TTR抗体のVH領域およびVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、あるいは、そのような核酸から本質的になるか、あるいは、そのような核酸からなる。
表2:変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種及び/又はそのフラグメントを認識する抗体のVH領域およびVL領域のヌクレオチド配列
クローニング戦略に起因して、重鎖および軽鎖のN末端およびC末端におけるアミノ酸配列は潜在的にはプライマー誘発変化をFR1およびFR4に含有する場合があり、しかしながら、この変化は抗体の生物学的活性には実質的な影響を与えない。コンセンサスなヒト抗体を提供するために、最初のクローンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をデータベースにおける該当するヒト生殖系列可変領域配列とアライメントし、それらと一致させることができる;例えば、上記で記載されるようなVbase2を参照のこと。ヒト抗体のアミノ酸配列は、N末端およびC末端のアミノ酸配列が、潜在的にはPCRプライマーに起因してコンセンサスな生殖系列配列から逸脱すると見なされるとき、したがって、プライマー誘発変異補正(PIMC)によって置き換えられているときには太字で示される(表IIIを参照のこと)。したがって、本発明の1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表IIIに示されるようなVHのポリヌクレオチド配列と、表IIに示されるような抗TTR抗体の対応するVL領域とを有する核酸を含むか、または、そのような核酸から本質的になるか、または、そのような核酸からなる。
表III:PIMC(太字)による置換を示す、変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメントを認識する抗体のV
H領域およびV
L領域のヌクレオチド配列。
本発明にはまた、他のところで記載されるように、本発明のポリヌクレオチドのフラグメントが含まれる。加えて、本明細書中に記載されるように、融合ポリヌクレオチド、Fabフラグメントおよび他の誘導体をコードするポリヌクレオチドも本発明によって包含される。
ポリヌクレオチドは、この技術分野において知られているいずれかの方法によって作製または製造される場合がある。例えば、抗体のヌクレオチド配列が知られているならば、当該抗体をコードするポリヌクレオチドが、例えば、Kutmeier他、BioTechniques 17(1994)、242に記載されるように、化学合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てられる場合があり、これには、簡単に記載すると、抗体をコードする配列の一部分を含有する重複するオリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、ならびに、連結されたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を伴う。
代替において、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドが、好適な供給源から得られる核酸から作製される場合がある。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンが入手できず、しかし、抗体分子の配列が知られているならば、当該抗体をコードする核酸が化学合成される場合があるか、あるいは、好適な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、あるいは、TTR特異的抗体を発現するいずれかの組織もしくは細胞(例えば、抗体を発現させるために選択されるハイブリドーマ細胞など)から作製されるcDNAライブラリー、または、そのようなものから単離される核酸、好ましくはポリA+RNA)から、配列の3’末端および5’末端にハイブリダイゼーション可能である合成プライマーを使用するPCR増幅によって得られる場合があり、または、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを特定するために特定の遺伝子配列について特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得られる場合がある。PCRによって生じる増幅された核酸がその後、この技術分野において広く知られているいずれかの方法を使用して、複製可能なクローニングベクターにクローン化される場合がある。従って、本発明の1つの実施形態では、抗体、免疫グロブリン鎖、又はそのフラグメントをコードするcDNAが抗TTR抗体の製造に使用される。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、そのヌクレオチド配列が、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製するために、例えば、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入をもたらすために、ヌクレオチド配列の操作についてこの技術分野においてよく知られている方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなどを使用して操作される場合がある(例えば、Sambrook他、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)、および、Ausubel他編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1998)に記載される技術を参照のこと。これらはともに、それらの全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
IV.抗体ポリペプチドの発現
単離された遺伝物質が、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を提供するために操作された後、抗体をコードするポリヌクレオチドは典型的には、所望される量の抗体を産生させるために使用されることがある宿主細胞への導入のために発現ベクターに挿入される。抗体あるいはそのフラグメント、誘導体またはアナログ(例えば、標的分子に結合する抗体の重鎖または軽鎖)の組換え発現が本明細書中に記載される。本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖あるいはその一部分(好ましくは重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインを含有するその一部分)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子を産生させるためのベクターが、この技術分野においてよく知られている技術を使用する組換えDNA技術によって作製される場合がある。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製するための方法が本明細書中に記載される。当業者によく知られている方法を、抗体コード配列ならびに適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術およびインビボ遺伝子組換えが含まれる。したがって、本発明は、本発明の抗体分子あるいはその重鎖または軽鎖あるいは重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列をproモーターに機能的に連結されて含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む場合があり(例えば、国際特許出願公開WO86/05807およびWO89/01036、ならびに、米国特許第5,122,464号を参照のこと)、また、抗体の可変ドメインが、重鎖全体または軽鎖全体を発現させるためにそのようなベクターにクローン化される場合がある。
用語「ベクター」または「発現ベクター」は、所望される遺伝子を宿主細胞に導入し、その遺伝子をその宿主細胞において発現させるためのビヒクルとして本発明に従って使用されるベクターを意味するために本明細書中では使用される。当業者には知られているように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルスおよびレトロウイルスからなる群から容易に選択される場合がある。一般に、本発明と適合し得るベクターは、選択マーカー、所望される遺伝子のクローニングを容易にするための適切な制限部位、ならびに、真核生物細胞または原核生物細胞における進入能および/または複製能を含む。本発明の目的のために、数多くの発現ベクター系が用いられる場合がある。例えば、1つのクラスのベクターでは、動物ウイルス、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウイルスなどに由来するDNAエレメントが利用される。他では、内部リボソーム結合部位を伴う多シストロン系の使用を伴う。加えて、DNAをその染色体に組み込んでいる細胞が、トランスフェクションされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたは複数のマーカーを導入することによって選択される場合がある。マーカーにより、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤抵抗性(例えば、抗生物質)、または、重金属(例えば、銅など)に対する抵抗性が与えられる場合がある。選択マーカー遺伝子は、発現させられるDNA配列に直接に連結することができるか、または、共形質転換によって同じ細胞に導入することができる。さらなるエレメントがまた、mRNAの最適な合成のために必要となる場合がある。これらのエレメントには、シグナル配列、スプライス信号ならびに転写プロモーター、エンハンサーおよび終結シグナルが含まれる場合がある。
特に好ましい実施形態において、クローン化された可変領域遺伝子が、上記で議論されるような重鎖定常領域遺伝子および軽鎖定常領域遺伝子(好ましくはヒトの遺伝子)と一緒に発現ベクターに挿入される。このベクターは、サイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサー、マウスのベータグロビン主要プロモーター、SV40の複製起点、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼのエキソン1およびエキソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼの遺伝子およびリーダー配列を含有する。このベクターは、可変領域遺伝子および定常領域遺伝子の取り込み、CHO細胞におけるトランスフェクション、それに続く、G418含有培地における選択、および、メトトレキサート増幅を行ったとき、抗体の非常に高いレベルの発現をもたらすことが見出されている。当然のことながら、発現を真核生物細胞において誘発することができる発現ベクターはどれも、本発明において使用される場合がある。好適なベクターの例には、プラスミドのpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAX1およびpZeoSV2(これらはInvitrogen(San Diego、CA)から入手可能である)、ならびに、プラスミドのpCI(これはPromega(Madison、WI)から入手可能である)が含まれるが、これらに限定されない。一般に、非常に多数の形質転換細胞を、好適に高レベルの免疫グロブリンの重鎖および軽鎖を発現する形質転換細胞についてスクリーニングすることは、例えば、ロボットシステムによって行うことができる日常的な実験である。ベクター系はまた、米国特許第5,736,137号および第5,658,570号に教示される(これらのそれぞれがその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。この系は、例えば、30pg/細胞/日を超える高い発現レベルを提供する。他の例示的なベクター系が、例えば、米国特許第6,413,777号に開示される。
他の好ましい実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体が、多シストロン構築物、例えば、米国特許出願公開第2003-0157641号A1(その全体が本明細書中に組み込まれる)に開示される多シストロン構築物などを使用して発現させられる場合がある。これらの発現系において、目的とする多数の遺伝子産物(例えば、抗体の重鎖および軽鎖など)がただ1つの多シストロン構築物からもたらされる場合がある。これらの系では、配列内リボソーム進入部位(IRES)が、比較的高いレベルの抗体を提供するために都合よく使用される。適合し得るIRES配列が米国特許第6,193,980号(これもまた本明細書中に組み込まれる)に開示される。当業者は、そのような発現系が、本出願において開示される抗体の完全な範囲を効果的に産生するために使用されることがあることを理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、本発明は、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメインまたは可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含むベクターを提供する。
より一般的には、抗体のモノマーサブユニットをコードするベクターまたはDNA配列が調製されると、発現ベクターが、適切な宿主細胞に導入される場合がある。宿主細胞へのプラスミドの導入を、当業者にはよく知られている様々な技術によって達成することができる。これらには、例えば、Fugene(登録商標)またはリポフェクタミンを使用するリポトランスフェクションを含むトランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、包まれたDNAを用いた細胞融合、顕微注入、および、無傷のウイルスによる感染が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、宿主へのプラスミド導入が、標準的なリン酸カルシウム共沈殿法により行われる。発現構築物を有する宿主細胞が、軽鎖および重鎖を産生させるために適切である条件のもとで成長させられ、重鎖および/または軽鎖のタンパク質合成についてアッセイされる。例示的なアッセイ技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)または蛍光活性化細胞分取器分析(FACS)および免疫組織化学などが含まれる。
発現ベクターが従来からの技術によって宿主細胞に移され、トランスフェクションされた細胞がその後、抗体を本明細書中に記載される方法における使用のために産生させるため従来からの技術によって培養される。したがって、本発明には、好ましくは異種プロモーターに機能的に連結される、本発明の抗体またはその重鎖もしくは軽鎖、あるいは、少なくともその免疫グロブリンの結合ドメインまたは可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が含まれる。加えて、または、代替において、本発明にはまた、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメインまたは可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含む本明細書中上記で定義されるようなベクターを含む宿主細胞が含まれる。二重鎖抗体を発現させるための好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードする単一のベクターまたは複数のベクターが、下記で詳述されるように、完全な免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞において共発現させられる場合がある。
宿主細胞が本発明の2つの発現ベクターにより共トランスフェクションされる場合があり、この場合、第1のベクターが重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2のベクターが軽鎖由来のポリペプチドをコードする。これら2つのベクターは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含有する場合がある。代替では、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方をコードするただ1つのベクターが使用される場合がある。そのような状況では、軽鎖が好都合には、毒性のない重鎖の過剰を避けるために重鎖の前に置かれる(Proudfoot、Nature 322(1986)、52;Kohler、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、2197を参照のこと)。重鎖および軽鎖のためのコード配列がcDNAまたはゲノムDNAを含む場合がある。
本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」は、組換えDNA技術を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターを有する細胞を示す。抗体を組換え宿主から単離するためのプロセスの記載において、用語「細胞」および「細胞培養(物)」が、別途明確に指定される場合を除き、抗体の供給源を示すために交換可能に使用される。別の言い方をすれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、遠心分離された細胞全体から、または、培地および懸濁された細胞の両方を含有する細胞培養物からのどちらをも意味する場合がある。
様々な宿主-発現ベクター系が、本明細書中に記載される方法において使用されるための抗体分子を発現させるために利用される場合がある。そのような宿主-発現系は、目的とするコード配列が産生され、続いて精製されることがあるビヒクルを表し、しかし、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換またはトランスフェクションされたとき、本発明の抗体分子をその場で発現する細胞もまた表す。これらには、微生物、例えば、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクターまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換される細菌(例えば、E.coli、B.subtilis);抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換される酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)が感染させられる昆虫細胞系;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV)が感染させられるか、または、抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換される植物細胞系;あるいは、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、NSO細胞、BLK細胞、293細胞、3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、完全な組換え抗体分子の発現のためにはとりわけ、細菌細胞(例えば、大腸菌など)、より好ましくは真核生物細胞が、組換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、ベクター(例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要前初期遺伝子プロモーターエレメントなど)と併せての哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などが、抗体のための効果的な発現系である(例えば、Foecking他、Gene 45(1986)、101;Cockett他、Bio/Technology 8(1990)、2を参照のこと)。
タンパク質発現のために使用される宿主細胞株は多くの場合、哺乳動物起源である;当業者には、宿主細胞株において発現させられる所望の遺伝子産物のために最もよく適する特定の宿主細胞株を優先的に決定する能力があると思われる。例示的な宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFR欠損)、HELA(ヒト子宮頸ガン)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40のT抗原を有するCVIの誘導体)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)および293(ヒト腎臓)が含まれるが、これらに限定されない。CHO細胞および293細胞が特に好ましい。宿主細胞株は典型的には、商用サービスから、すなわち、American Tissue Culture Collectionから入手可能であり、または、発表された文献から入手可能である。
加えて、挿入された配列の発現を調節するか、あるいは、遺伝子産物を所望される特定の様式で修飾し、また、プロセシングする宿主細胞系統が選ばれる場合がある。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)が当該タンパク質の機能のために重要である場合がある。種々の宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後のプロセシングおよび修飾のための特徴的かつ特異的な機構を有する。適切な細胞株または宿主系を、発現される外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを保証するために選ぶことができる。この目的を達成するために、一次転写物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用される場合がある。
組換えタンパク質の長期間にわたる高収量の産生のためには、安定的発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株が操作される場合がある。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、むしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)および選択マーカーによって制御されるDNAにより形質転換することができる。外来DNAを導入した後、操作された細胞は富化培地において1日間~2日間にわたって成長させられる場合があり、その後、選択培地に切り換えられる。組換えプラスミドにおける選択マーカーは選択に対する抵抗性を与え、また、細胞がプラスミドをその染色体に安定的に組み込み、成長して、結果としてクローン化され、かつ、細胞株に拡大することができる増殖巣を形成することを可能にする。この方法は、抗体分子を安定的に発現する細胞株を操作するために都合よく使用される場合がある。
数多くの選択システムが使用される場合があり、これらには、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler他、Cell 11(1977)、223)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska&Szybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48(1992)、202)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy他、Cell 22(1980)、817)をtk-細胞、hgprt-細胞またはaprt-細胞においてそれぞれ用いることができる。また、代謝拮抗物質抵抗性を下記の遺伝子のための選択の基礎として使用することができる:dhfr、これはメトトレキサートに対する抵抗性を与える(Wigler他、Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、357;O’Hare他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、1527);gpt、これはミコフェノール酸に対する抵抗性を与える(Mulligan&Berg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、2072);neo、これはアミノグリコシドG-418に対する抵抗性を与える(Goldspiel他、Clinical Pharmacy 12(1993)、488~505;Wu and Wu、Biotherapy 3(1991)、87~95;Tolstoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32(1993)、573~596;Mulligan、Science 260(1993)、926~932;ならびに、Morgan and Anderson、Ann.Rev.Biochem.62(1993)、191~217;TIB TECH 11(1993)、155~215);および、hygro、これはヒグロマイシンに対する抵抗性を与える(Santerre他、Gene 30(1984)、147)。使用することができる、組換えDNA技術の技術分野において一般に知られている様々な方法が、Ausubel他(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1993);Kriegler、Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990)に記載さされ、また、第12章および第13章、Dracopoli他(編)、Current Protocols in Human Genetics、John Wiley&Sons、NY(1994);Colberre-Garapin他、J.Mol.Biol.150:1(1981)に記載される(これらはその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
抗体分子の発現レベルをベクター増幅によって増大させることができる(総説については、Bebbington and Hentschel、The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning、Academic Press、New York、第3巻(1987)を参照のこと)。抗体を発現させるベクター系におけるマーカーが増幅可能であるときには、宿主細胞の培養において存在する阻害剤のレベルにおける増大はマーカー遺伝子のコピー数を増大させるであろう。増幅された領域は抗体遺伝子に付随するので、抗体の産生もまた増大するであろう(Crouse他、Mol.Cell.Biol.3(1983)、257を参照のこと)。
インビトロ産生では、スケールアップにより、多量の所望されるポリペプチドを与えることが可能である。組織培養条件のもとでの哺乳動物細胞培養のための様々な技術がこの技術分野において知られており、これらには、均一懸濁培養、例えば、エアーリフト型リアクターまたは連続撹拌槽リアクターにおける培養、あるいは、固定化細胞または包括化細胞の培養、例えば、中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズまたはセラミックカートリッジにおける培養が含まれる。必要および/または所望されるならば、ポリペプチドの溶液を、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的な生合成の後で、あるいは、本明細書中に記載されるHICクロマトグラフィー工程の前または後で、慣例的なクロマトグラフィー方法、例えば、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-セルロースでのクロマトグラフィー、または、(免疫)アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードする遺伝子はまた、哺乳動物以外の細胞、例えば、細菌細胞または昆虫細胞または酵母細胞または植物細胞において発現させることができる。核酸を容易に取り込む細菌には、腸内細菌科のメンバー、例えば、大腸菌またはサルモネラ属の菌株など;バチルス科、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)など;肺炎球菌(Pneumococcus);連鎖球菌属(Streptococcus)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が含まれる。細菌において発現させられるとき、異種ポリペプチドは典型的には封入体の一部となることがさらに理解されるであろう。異種ポリペプチドは単離され、精製され、その後、機能的な分子に組み立てられなければならない。四価形態の抗体が所望される場合、そのサブユニットは四価抗体に自己集合するであろう(例えば、国際特許出願公開WO02/096948を参照のこと)。
細菌系において、多数の発現ベクターが、抗体分子が発現されるための意図される使用に依存して、都合よく選択される場合がある。例えば、多量のそのようなタンパク質が抗体分子の医薬組成物の作製のために産生させられることになるときには、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を導くベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターには、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther他、EMBO J.2(1983)、1791)(この場合、抗体コード配列がlacZコード領域とインフレームでベクターに個々に連結され、その結果、融合タンパク質が産生されるようにされる場合がある);pINベクター(Inouye&Inouye、Nucleic Acids Res.13(1985)、3101~3109;Van Heeke&Schuster、J.Biol.Chem.24(1989)、5503~5509)などが含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクターもまた、外来ポリペプチドをグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させるために使用される場合がある。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズのマトリックスへの吸着および結合、その後の遊離したグルタチオンの存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビンまたは第Xa因子のプロテアーゼ切断部位を含み、その結果、クローン化された標的遺伝子産物がGST成分から放出され得るように設計される。
原核生物に加えて、真核生物の微生物もまた使用される場合がある。サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、すなわち、普通のパン酵母が、真核生物の微生物の中で最も一般に使用されるが、多くの他の菌株が一般に利用可能である(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))。サッカロミセス属における発現のために、例えば、プラスミドYRp7(Stinchcomb他、Nature 282(1979)、39;Kingsman他、Gene 7(1979)、141;Tschemper他、Gene 10(1980)、157)が一般に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の変異菌株(例えば、ATCC第44076号またはPEP4-1(Jones、Genetics 85(1977)、12))のための選択マーカーを提供するTRP1遺伝子を既に含有する。その場合、酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1損傷の存在により、形質転換をトリプトファンの不在下での成長によって検出するための効果的な環境が提供される。
昆虫系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が典型的には、外来タンパク質を発現させるためのベクターとして使用される。このウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞において成長する。抗体コード配列がウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)の中に個々にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれる場合がある。
本発明の抗体分子が組換え発現させられると、本発明の完全な抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖および重鎖または他の免疫グロブリン形態を、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に、プロテインAの後での特異的抗原についてのアフィニティー、および、サイズ分画カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈澱)、または、タンパク質の精製のためのいずれかの他の標準的な技術によることを含めて、この技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(例えば、Scopes、「Protein Purification」、Springer Verlag、N.Y.(1982)を参照のこと)。代替では、本発明の抗体の親和性を増大させるための好ましい方法が米国特許出願公開第2002-0123057号A1に開示される。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、抗TTR抗体、又は変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTR種及び/又はそのフラグメントを認識する抗体、或いはその免疫グロブリン鎖を調製するための方法であって、
(a)本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチドまたはベクターを含む本明細
書中上記で定義されるような宿主細胞を培養すること、および
(b)前記抗体またはその免疫グロブリン鎖を培養物から単離すること
を含む方法を提供する。
さらには、1つの実施形態において、本発明はまた、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチドによってコードされる抗体またはその免疫グロブリン鎖、あるいは、抗TTR抗体またはその免疫グロブリン鎖を調製するための前記方法によって得ることができる抗体またはその免疫グロブリン鎖に関連する。
V.融合タンパク質およびコンジュゲート
特定の実施形態において、抗体ポリペプチドは、通常の場合には抗体に付随しないアミノ酸配列あるいは1つまたは複数の成分を含む。例示的な改変が下記においてより詳細に記載される。例えば、本発明の単鎖Fv抗体フラグメントは柔軟なリンカー配列を含む場合があり、または、機能的成分(例えば、PEG、薬物、毒素または標識(例えば、蛍光性、放射性、酵素、核磁気性および重金属など))を付加するために改変される場合がある。
本発明の抗体ポリペプチドは融合タンパク質を含む場合があり、融合タンパク質から本質的になる場合があり、または、融合タンパク質からなる場合がある。融合タンパク質は、例えば、少なくとも1つの標的結合部位を伴う免疫グロブリンのTTR結合ドメインと、少なくとも1つの異種部分、すなわち、自然界では生来的に連結されない部分とを含むキメラ分子である。これらのアミノ酸配列は、融合ポリペプチドにおいて一緒にされる別個のタンパク質において正常に存在する場合があり、または、同じタンパク質において正常に存在する場合があるが、融合ポリペプチドにおいては新しい配置で置かれる。融合タンパク質が、例えば、化学合成によって、または、ペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作出し、翻訳することによって作出される場合がある。
用語「異種(の)」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに適用される場合、当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、比較されている実体の残部のものとは異なる実体に由来することを意味する。例えば、本明細書中で使用されるように、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体またはアナログに融合されるための“異種ポリペプチド”は、同じ種の非免疫グロブリンポリペプチド、あるいは、異なる種の免疫グロブリンポリペプチドまたは非免疫グロブリンポリペプチドに由来する。本明細書中の他のところでより詳細に議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はさらに、N末端またはC末端において異種ポリペプチドに組換え融合される場合があり、あるいは、ポリペプチドまたは他の組成物に化学的にコンジュゲート化される場合がある(共有結合によるコンジュゲート化および非共有結合によるコンジュゲート化を含む)。例えば、抗体が、検出アッセイにおいて標識として有用である分子に、また、エフェクター分子(例えば、異種ポリペプチド、薬物、放射性核種または毒素など)に組換え融合されるか、またはコンジュゲート化される場合がある(例えば、国際特許出願公開WO92/08495、WO91/14438、WO89/12624、米国特許第5,314,995号および欧州特許出願EP0396387を参照のこと)。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、ペプチド結合または修飾型ペプチド結合(すなわち、ペプチドアイソスター)によって互いにつながれるアミノ酸から構成されることが可能であり、また、遺伝子によりコードされる20個のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含有する場合がある。抗体は、天然のプロセス(例えば、翻訳後プロセシングなど)によって、または、この技術分野ではよく知られている化学的修飾技術によって改変される場合がある。そのような修飾が、基礎的な教本において、また、より詳しいモノグラフにおいて、ならびに、膨大な数の研究文献において十分に記載されている。修飾を、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含めて、抗体においてどこにでも、あるいは、炭水化物などの成分に対して行うことができる。同じタイプの修飾が、所与の抗体において、いくつかの部位において同じ程度または種々の程度で存在する場合があることが理解されるであろう。また、所与の抗体が多くのタイプの修飾を含有する場合がある。抗体は、例えば、ユビキチン化の結果として分岐する場合があり、また、分岐を伴って、または伴うことなく、環状である場合がある。環状の抗体、分岐した抗体、および、分岐した環状の抗体が、翻訳後の天然のプロセスから生じる場合があり、または、合成的方法によって作製される場合がある。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合連結、ヘム成分の共有結合連結、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合連結、脂質または脂質誘導体の共有結合連結、ホスファチジルイノシトールの共有結合連結、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加(例えば、アルギニル化など)、および、ユビキチン化が含まれる(例えば、Proteins-Structure And Molecular Properties、T.E.Creighton、W.H.Freeman and Company、New York、第2版(1993);Posttranslational Covalent Modification Of Proteins、B.C.Johnson編、Academic Press、New York、1頁~12頁(1983);Seifter他、Meth.Enzymol.182(1990)、626~646;Rattan他、Ann.NY Acad.Sci.663(1992)、48~62を参照のこと)。
本発明はまた、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体と、異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。1つの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、本発明の抗体のVH領域のいずれか1つまたは複数のアミノ酸配列、あるいは、本発明の抗体のVL領域またはそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つまたは複数のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法および処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVH-CDRまたはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列、あるいは、抗体のVL-CDRまたはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。1つの実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体のVH-CDR3またはそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含み、そのような融合タンパク質はTTRに特異的に結合する。別の実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体の少なくとも1つのVH領域のアミノ酸配列と、本発明の抗体の少なくとも1つのVL領域またはそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、融合タンパク質のVH領域およびVL領域は、TTRと特異的に結合する単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメントまたはFabフラグメント)に対応する。さらに別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法および処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVHCDRのいずれか1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸配列と、抗体のVLCDRまたはそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つ、2つ、3つまたそれ以上のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、VH-CDRまたはVL-CDRの2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上が、本発明の単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメントまたはFabフラグメント)に対応する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子もまた本発明によって包含される。
文献に報告される例示的な融合タンパク質には、下記の融合物が含まれる:T細胞受容体(Gascoigne他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84(1987)、2936~2940);CD4(Capon他、Nature 337(1989)、525~531;Traunecker他、Nature 339(1989)、68~70;Zettmeissl他、DNA Cell Biol.USA 9(1990)、347~353;およびByrn他、Nature 344(1990)、667~670);L-セレクチン(ホーミング受容体)(Watson他、J.Cell.Biol.110(1990)、2221~2229;およびWatson他、Nature 349(1991)、164~167);CD44(Aruffo他、Cell 61(1990)、1303~1313);CD28およびB7(Linsley他、J.Exp.Med.173(1991)、721~730);CTLA-4(Lisley他、J.Exp.Med.174(1991)、561~569);CD22(Stamenkovic他、Cell 66(1991)、1133~1144);TNF受容体(Ashkenazi他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(1991)、10535~10539;Lesslauer他、Eur.J.Immunol.27(1991)、2883~2886;およびPeppel他、J.Exp.Med.174(1991)、1483~1489(1991));ならびにIgE受容体a(Ridgway and Gorman、J.Cell.Biol.115(1991)、アブストラクト番号:1448)。
本明細書中の他のところで議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、ポリペプチドのインビボ半減期を増大させるために、または、この技術分野において知られている方法を使用する免疫アッセイにおける使用のために異種ポリペプチドに融合される場合がある。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の抗体に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる(例えば、Leong他、Cytokine、16(2001)、106~119;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;またはWeir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512を参照のこと)。
そのうえ、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、マーカー配列(例えば、それらの精製または検出を容易にするためのペプチドなど)に融合することができる。好ましい実施形態において、マーカーのアミノ酸配列は、多くのものが市販されているが、とりわけ、ヘキサ-ヒスチジンペプチド(HIS)であり、例えば、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)において提供されるタグなどである。例えば、Gentz他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)、821~824に記載されるように、ヘキサ-ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製をもたらす。精製のために有用である他のペプチドタグには、「HA」タグ(これは、インフルエンザの赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する)(Wilson他、Cell 37(1984)、767)、GST、c-mycおよび「flag」タグが含まれるが、これらに限定されない(例えば、エピトープタグ化技術の総説については、Bill Brizzard、BioTechniques 44(2008)、693~695を、また本発明において使用可能である最も一般的なエピトープタグを列挙するその694頁における表1を参照のこと。これらの主題は、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる)。
融合タンパク質を、この技術分野においてよく知られている方法を使用して調製することができる(例えば、米国特許第5,116,964号および第5,225,538号を参照のこと)。融合が行われるまさにその部位が、融合タンパク質の分泌または結合特性を最適化するために経験的に選択される場合がある。融合タンパク質をコードするDNAがその後、本明細書中上で記載されるように行われる発現のために宿主細胞にトランスフェクションされる。
本発明の抗体は非コンンジュゲート化形態で使用される場合があり、あるいは、例えば、分子の治療的性質を改善するために、標的検出を容易にするために、または、患者の画像化もしくは治療のために様々な分子の少なくとも1つにコンジュゲート化される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、精製が行われるときには精製前または精製後のどちらでも標識化またはコンジュゲート化することができる。特に、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節物質、医薬剤またはPEGにコンジュゲート化される場合がある。
従来の抗体を含む免疫毒素であるコンジュゲートがこの技術分野において幅広く記載されている。毒素が従来からのカップリング技術によって抗体にカップリングされる場合があり、または、タンパク質毒素部分を含有する免疫毒素を融合タンパク質として作製することができる。本発明の抗体は、そのような免疫毒素を得るための対応する方法で使用することができる。そのような免疫毒素を例示するものが、Byers、Seminars Cell.Biol.2(1991)、59~70、および、Fanger、Immunol.Today 12(1991)、51~54によって記載される免疫毒素である。
当業者は、コンジュゲートがまた、コンジュゲート化されるための選択された薬剤に依存して様々な技術を使用して組み立てられ得ることを理解するであろう。例えば、ビオチンとのコンジュゲートが、例えば、TTR結合ポリペプチドをビオチンの活性化エステル(例えば、ビオチンN-ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)と反応することによって調製される。同様に、蛍光性マーカーとのコンジュゲートがカップリング剤(例えば、本明細書中に列挙されるカップリング剤)の存在下で調製される場合があり、または、イソチオシアン酸塩との反応によって、好ましくはイソチオシアン酸フルオレセインとの反応によって調製される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体のコンジュゲートが同様な様式で調製される。
本発明はさらに、診断剤または治療剤にコンジュゲート化される本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を包含する。抗体を、例えば、TTRアミロイドーシスの存在を明らかにして、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTRに関連付づけられる疾患に罹る危険性を示すために、そのような疾患(すなわち、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、又は凝集したTTRの出現を示す、あるいは、それらに関連づけられる疾患)の発症または進行をモニターして、又は臨床検査手順の一部として、例えば、所与の処置療法および/または防止療法の効力を明らかにするために、診断的に使用することができる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能に標識される抗体に関連する。さらには、1つの実施形態において、本発明は、薬物に結合させられる抗体に関連する。検出を、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を検出可能な物質にカップリングすることによって容易にすることができる。検出可能な物質または標識は一般に、酵素、重金属(好ましくは金)、色素(好ましくは蛍光性色素または発光性色素)または放射性標識である場合がある。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光性物質、発光性物質、生物発光性物質、放射性物質、様々な陽電子放出断層撮影法を使用する陽電子放出金属、および、非放射性常磁性金属イオンが含まれる(本発明に従って診断剤として使用されるために抗体にコンジュゲート化することができる金属イオンについては、例えば、米国特許第4,741,900号を参照のこと)。好適な酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;好適な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;好適な蛍光性物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられる;発光性物質の一例として、ルミノールが挙げられる;生物発光性物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられる;好適な放射性物質の例として、125I、131I、111Inまたは99Tcが挙げられる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能な標識が、酵素、放射性同位体、蛍光団および重金属からなる群から選択される検出可能に標識された抗体を提供する。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識することができる。化学発光標識された抗体の存在がその後、化学反応の経過の期間中に生じる発光の存在を検出することによって求められる。特に有用な化学発光性の標識用化合物の例が、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体が検出可能に標識され得る方法の1つは、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を酵素に連結し、連結された生成物を酵素免疫アッセイ(EIA)において使用することによってである(Voller,A.、「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」、Microbiological Associates Quarterly Publication、Walkersville、Md.、Diagnostic Horizons 2(1978)、1~7);Voller他、J.Clin.Pathol.31(1978)、507~520;Butler、Meth.Enzymol.73(1981)、482~523;Maggio,E.(編)、Enzyme Immunoassay、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1980);Ishikawa,E.他(編)、Enzyme Immunoassay、Kgaku Shoin、Tokyo(1981))。酵素は、抗体に結合しているので、例えば、分光光度法的手段、蛍光定量法的手段または目視的手段によって検出することができる化学的成分を生成するような様式で、適切な基質(好ましくは発色性基質)と反応するであろう。抗体を検出可能に標識するために使用することができる酵素には、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。加えて、検出を、酵素のための発色性基質を用いる比色法によって達成することができる。検出はまた、類似して調製された標準物との比較における基質の酵素反応の程度の目視比較によって達成される場合がある。
検出はまた、様々な他の免疫アッセイのいずれかを使用して達成される場合がある。例えば、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を放射能標識することによって、抗体を放射免疫アッセイ(RIA)の使用により検出することが可能である(例えば、Weintraub,B.、Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society(March、1986)を参照のこと。これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。放射性同位体を、ガンマカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィー(これらに限定されない)を含む手段によって検出することができる。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、蛍光放射金属(例えば、ランタニド系列の152Euなど)を使用して検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート化基を使用して抗体に結合させることができる。
様々な成分を抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体にコンジュゲート化するための技術がよく知られている;例えば、Arnon他、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeld他(編)、243頁~56頁、Alan R.Liss,Inc.(1985);Hellstrom他、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinson他(編)、Marcel Dekker,Inc.、623頁~53頁(1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies‘84:Biological And Clinical Applications、Pinchera他(編)、475頁~506頁(1985);「Analys
is,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwin他(編)、Academic Press、303頁~16頁(1985)、および、Thorpe他、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62(1982)、119~158を参照のこと。
述べられたように、特定の実施形態において、結合性分子、例えば、結合性ポリペプチド、例えば、抗体またはその免疫特異性フラグメントの安定性または効力を高める成分をコンジュゲート化することができる。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の結合性分子に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる。Leong他、Cytokine、16(2001)、106;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;または、Weir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512。
VI.組成物および使用方法
本発明は、本明細書中前記で定義されるように、上記で述べられたTTR結合性分子(例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントあるいはそれらの誘導体または変異体)、あるいは、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、細胞またはペプチドを含む組成物に関連する。1つの実施形態において、本発明の組成物は医薬組成物であり、かつ、医薬的に許容される担体をさらに含む。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、インターロイキンまたはインターフェロンなど)を含む場合がある。変異したTTR、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRの出現を示すか、あるいは、変異したTTR、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRに関連づけられる疾患または障害(例えば、TTRアミロイドーシスなど)を処置することにおける使用のために、さらなる薬剤が、小さい有機分子、抗TTR抗体およびそれらの組合せからなる群から選択される場合がある。したがって、特定の好ましい実施形態において、本発明は、TTRアミロイドーシスに伴う疾患または障害の予防的処置および治療的処置、TTRアミロイドーシスに伴う疾患または障害の進行またはTTRアミロイドーシスの処置に対する応答を対象においてモニターすること、あるいは、TTRアミロイドーシスに伴う疾患または障害を発症することについての対象の危険性を明らかにすることのための医薬組成物または診断組成物を調製するための、TTR結合性分子の使用、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメント、あるいは、それらのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞の使用に関連する。
したがって、1つの実施形態において、本発明は、TTRおよび/またはミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTR、凝集したTTRの、罹患した系および器官(例えば、末梢神経系、自律神経系、中枢神経系、胃腸系、血管系(とりわけ、軟膜)、リンパ系(とりわけ、リンパ節)、筋骨格系(とりわけ、腱および靱帯)、心臓、眼、腎臓、肺、皮膚、舌、甲状腺および膀胱など)における異常な蓄積および/または沈着によって特徴づけられる疾患または障害を処置する方法であって、その必要性のある対象に、本発明の上記で記載されたTTR結合性分子、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞またはペプチドのいずれか1つの治療有効量を投与することを含む方法に関連する。
本発明の治療的取り組みの特定の利点が、本発明の組換え抗体は、例えば、無症候性の変異を有する、凝集したTTRの出現を示す、または、凝集したTTRに関連づけられる疾患の徴候または症状を何ら有しない健康なヒト対象から得られるB細胞またはメモリーB細胞に由来しており、したがって、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTR、変異したTTRおよび/または凝集したTTRに関連づけられる臨床的に明白な疾患を防止することが、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患または障害の出現の危険性を減らすことが、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患または障害の発症または進行を遅らせることが、ある程度の確率で可能であるという事実にある。典型的には、本発明の抗体はまた、体細胞変異、すなわち、抗体の可変領域の体細胞変化による標的TTR分子に対する高親和性結合における選択性および有効性に関しての最適化を既に首尾良く経ている。
そのような細胞は生体内において、例えば、ヒト体内において、自己免疫学的反応またはアレルギー反応の意味で、関連した、または他の生理学的なタンパク質または細胞構造によって活性化されていないという認識はまた、臨床試験段階を首尾よく生き残るという相当に増大した可能性がこれにより意味されるので、非常に医学的に重要である。いわば、効率、許容性および耐容性が、少なくとも1名のヒト対象において予防的抗体または治療的抗体の前臨床開発および臨床開発の前に既に実証されている。したがって、本発明のヒト抗TTR抗体は、治療剤としてのその標的構造特異的効率と、副作用のその低下した可能性との両方により、成功のその臨床的可能性を著しく増大させることが予想され得る。
本発明はまた、上記で記載された成分(例えば、本発明の抗TTR抗体、その結合フラグメント、誘導体もしくは変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞および/またはペプチド)の1つまたは複数により満たされる1つまたは複数の容器を含む医薬用および診断用のパックまたはキットをそれぞれ提供する。そのような容器には、医薬品または生物学的製造物の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められる形式での通知が伴い得る(ただし、そのような通知は、製造、使用または販売の当局によるヒト投与のための承認を反映する)。加えて、または、代替において、キットは、適切な診断アッセイにおいて使用されるための試薬および/または説明書を含む。本発明の組成物、例えば、キットは、当然のことながら、変異したTTR、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRの存在が付随する疾患または障害のリスク評価、診断、防止および処置のために特に適しており、具体的には、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、老年性全身性アミロイドーシス(SSA)、全身性家族性アミロイドーシス、軟膜/中枢神経系(CNS)アミロイドーシス(アルツハイマー病を含む)、TTR関連眼アミロイドーシス、TTR関連腎アミロイドーシス、TTR関連高チロキシン血症、TTR関連靱帯アミロイドーシス(手根管症候群、肩腱板断裂および腰部脊柱管狭窄を含む)、および子癇前症などの疾患および/または障害を含む、TTRアミロイドーシスによって一般には特徴づけられる障害を処置するために適用可能である。
本発明の医薬組成物はこの技術分野においてよく知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0-683-306472)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野ではよく知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、よく知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与が、種々の方法によって、例えば、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、局所的投与または皮内投与あるいは脊髄送達または脳送達によって行われる場合がある。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤および等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液または他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpHおよび等張性状態に調節される。直腸投与または膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある。
投薬計画が主治医および臨床上の要因によって決定されるであろう。医療技術分野ではよく知られているように、どのような患者であれ、患者のための投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与されるべき具体的な化合物、性別、投与時間および投与経路、全身の健康状態、ならびに、同時に投与されている他の薬物を含めて、多くの要因に依存する。典型的な用量が、例えば、0.001μg~1000μgの範囲(あるいは、この範囲における発現または発現阻害のための核酸の範囲)であり得る;しかしながら、この例示的な範囲よりも少ない用量または大きい用量が、とりわけ上述の要因を考慮して想定される。一般に、投薬量は、例えば、宿主体重の約0.0001~100mg/kgの範囲が可能であり、より通常的には0.01~5mg/kg(例えば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)が可能である。例えば、投薬量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重、あるいは、1~10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであり得る。上記範囲において中間的である用量もまた、本発明の範囲内で意図される。対象には、そのような用量を毎日、1日おきに、毎週、または、経験的分析によって決定されるいずれかの他のスケジュールに従って投与することができる。例示的な処置は、例えば、少なくとも6ヶ月の長期間にわたる多数回の投薬での投与を伴う。さらなる例示的な処置計画は、2週間毎に1回、または、1ヶ月に1回、または、3ヶ月毎~6ヶ月毎に1回での投与を伴う。例示的な投薬スケジュールには、連続した毎日での1~10mg/kgまたは15mg/kg、1日おきでの30mg/kg、あるいは、毎週での60mg/kgが含まれる。一部の方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、そのような場合、投与されるそれぞれの抗体の投薬量が、示される範囲内である。進行を定期的な評価によってモニターすることができる。非経口投与のための調製物には、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁物およびエマルションが含まれる。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油など)、および、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)が挙げられる。水性キャリアには、生理的食塩水および緩衝媒体を含めて、水、アルコール性溶液/水溶液、エマルションまたは懸濁物が含まれる。非経口用ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは固定油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、流体および栄養補充液および電解質補充液(例えば、リンゲルブドウ糖に基づくものなど)などが含まれる。保存剤および他の添加剤もまた存在する場合がある(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガスなど)。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、ドーパミンまたは精神薬理学的薬物など)を含む場合がある。
さらには、本発明の好ましい実施形態において、例えば、本発明の医薬組成物がTTR抗体あるいはその結合フラグメント、誘導体または変異体を受動免疫化のために含むならば、医薬組成物はワクチンとして配合される場合がある。背景の節で述べられたように、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種、変異したTTR種および/または凝集したTTR種ならび/あるいはそのフラグメントまたは誘導体がTTRアミロイドーシスの主要な誘因である。したがって、本発明のヒト抗TTR抗体および同等なTTR結合性分子による受動免疫化は、能動免疫化療法概念のいくつかの有害な影響を回避すること、そして、TTRの軽減された凝集をもたらすことを助けるであろうと予想することは賢明なことである。したがって、本発明の抗TTR抗体およびその同等物は、凝集したTTRの存在を示すか、または、凝集したTTRによって引き起こされる疾患または障害の防止または緩和のためのワクチンとして、例えば、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、老年性全身性アミロイドーシス(SSA)、全身性家族性アミロイドーシス、軟膜/中枢神経系(CNS)アミロイドーシス(アルツハイマー病を含む)、TTR関連眼アミロイドーシス、TTR関連腎アミロイドーシス、TTR関連高チロキシン血症、TTR関連靱帯アミロイドーシス(手根管症候群、肩腱板断裂および腰部脊柱管狭窄を含む)、および子癇前症などの防止または緩和のためのワクチンとして特に有用であろう。
1つの実施形態において、本発明の抗体の組換えFabフラグメント(rFab)および単鎖フラグメント(scFv)を使用することが有益である場合がある。これは、それらがより容易に細胞膜に浸透するかもしれないからである。例えば、Robert他、Protein Eng.Des.Sel.(2008)(Oct 16);S1741-0134(これはオンライで事前に発表された)は、AβのN末端領域におけるエピトープを認識するモノクローナル抗体WO-2のキメラな組換えFabフラグメント(rFab)および単鎖フラグメント(scFv)の使用を記載する。操作されたフラグメントは、(i)アミロイド原線維化を防止することができ、(ii)事前に形成されたAβ1-42原線維を解凝集することができ、かつ、(iii)Aβ1-42オリゴマー媒介の神経毒性を完全なIgG分子と同じくらい効率的にインビトロで阻害することができた。エフェクター機能を欠く小さいFabおよびscFvの操作された抗体様式を使用することの認識された利点には、血液脳関門をより効率的に通過すること、および、炎症性の副反応を誘発する危険性を最小限に抑えることが含まれる。さらには、scFVおよび単鎖ドメイン抗体は全長抗体の結合特異性を保持することのほかに、それらは単一遺伝子として発現させることができ、また、折り畳み、相互作用、修飾、または、それらの標的の細胞内局在化の変化についての潜在的可能性が伴うが、細胞内抗体として哺乳動物細胞において細胞内に発現させることができる(総説については、例えば、Miller and Messer、Molecular Therapy、12(2005)、394~401を参照のこと)。
異なる取り組みにおいて、Muller他、Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237~241は、抗体が、生細胞を傷づけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる技術基盤(いわゆる「SuperAntibody Technology」)を記載する。そのような細胞浸透抗体により、新しい診断範囲および治療範囲が開拓される。用語「TransMabs」がこれらの抗体のために案出されている。
さらなる実施形態において、変異した、ミスフォールドした、ミスアッセンブルした、及び/又は凝集したTTRの出現に関連づけられる疾患又は障害を処置するために有用である他の抗体の共投与または逐次投与が望ましい場合がある。1つの実施形態において、そのようなさらなる抗体が本発明の医薬組成物において含まれる。対象を処置するために使用することができる抗体の例には、CD33、SGLT2、IL-6およびIL-1を標的化する抗体が含まれるが、これらに限定されない。
さらなる実施形態において、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTR、変異したTTRおよび/または凝集したTTRに関連づけられる疾患または障害を処置するために有用である他の薬剤の共投与または逐次投与が望ましい場合がある。1つの実施形態において、そのようなさらなる薬剤が本発明の医薬組成物には含まれる。対象を処置するために使用することができる薬剤の例には、下記の薬剤が含まれるが、それらに限定されない:TTR四量体を安定化する薬剤、例えば、タファミジス、メグルミン、ジフルシナール(diflusinal)、ウルソデオキシコール酸を伴うドキシサイクリン(doxycyclin)など;抗炎症剤、例えば、ジフルシナール、コルチコステロイド類、2-(2,6-ジクロルアニリノ)フェニル酢酸(ジクロフェナク)、イソ-ブチルプロパノイックフェノール酸(iso-butyl-propanoic-phenolic acid)(イブプロフェン)など;利尿剤、没食子酸エピガロカテキン、メルファラン塩酸塩、デキサメタゾン、ボルテゾミブ、ボルテゾミブ-メルファラン、ボルテゾミブ-デキサメタゾン、メルファラン-デキサメタゾン、ボルテゾミブ-メルファラン-デキサメタゾン;抗うつ剤、抗精神病薬、神経遮断剤、抗痴呆剤(例えば、NMDA受容体アンタゴニストのメマンチン)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジルHCl、リバスチグミン、ガランタミン)、グルタミン酸アンタゴニストおよび他の向知性剤血圧薬剤(例えば、ジヒドララジン、メチルドパ)、細胞増殖抑制剤、グルココルチコイド類、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;抗炎症剤、または、どのような組合せであれ、それらの組合せ。臨床での臓器移植の後における臓器拒絶を処置または防止するために使用されることがある薬剤の例には、免疫系の弱化を引き起こす一群の薬剤、すなわち、例えば、カルシニューリン阻害剤などを含む免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンおよびタクロリムスなど、増殖の阻害剤、例えば、エベロリムスおよびシロリムス(ラパマイシン)を含むmTOR阻害剤など、同様にまた、代謝拮抗剤、例えば、アザチオプリン、ミコフェノラート、モフェチル/MMFおよびミコフェノール酸が含まれるが、それらに限定されず、また、コルチコステロイド類、例えば、コルチゾンおよびコルチゾールなど、同様にまた、合成物質、例えば、プレドニソンまたはプレドニソロンなどを使用することができる。加えて、様々な抗体を使用することができる:例えば、抗IL2受容体モノクローナル抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、同様にまた、抗CD3モノクローナル抗体(例えば、ムロモナブ-CD3)、および、ポリクローナル組成物、例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG);ならびにグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニスト(例えば、Noguchi他、Acta Med.Okayama、60(2006)、および、国際特許出願公開WO2012/088157を参照のこと)。さらに、さらなる薬剤には、臓器移植後の感染症および他の副作用の予防および/または処置のための薬剤が含まれる場合があり、これらには、バルガンシクロビル、サイトメガリエ(cytomegalie)-免疫グロブリン、ガンシクロビル、アムホテリシンB、ピリメタミン、ラニチジン、ラミプリル、フロセミド、ベンズブロマロンが含まれる。したがって、1つの実施形態において、TTRアミロイドーシスを処置するために有用であり、かつ/あるいは、例えば、臨床での肝臓移植の後における臓器拒絶を処置または防止することにおいて有用であるさらなる薬剤をさらに含む組成物が提供される。本発明の医薬組成物と同時に使用されることがある他の薬剤の様々な例がこの技術分野において記載される(例えば、国際特許出願公開WO2009005672、同WO2010128092、同WO2012088157または欧州特許出願EP11158212.8を参照のこと)。
治療効果的な用量または量は、症状または状態を改善するために十分である有効成分のそのような量を示す。そのような化合物の治療効力および毒性を、細胞培養または実験動物における標準的な薬学手順によって、例えば、ED50(集団の50%において治療効果的な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)によって求めることができる。治療効果と毒性影響との間における用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50の比率として表すことができる。
前記から、本発明は、上記抗体の少なくとも1つのCDRを含むTTR結合性分子および/またはそのフラグメントのどのような使用をも包含し、具体的には、上記で述べられるような、変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメントに関連づけられる疾患または障害(例えば、TTRアミロイドーシスなど)の診断および/または処置のためのそのような分子のどのような使用をも包含することが明らかである。好ましくは、前記結合性分子は本発明の抗体またはその免疫グロブリン鎖である。加えて、本発明は、本明細書中前記で記載される述べられた抗体のいずれかの1つの様々な抗イディオタイプ抗体に関連する。これらは、抗原結合部位の近くにおいて抗体の可変領域に位置する特有の抗原性ペプチド配列に結合する抗体または他の結合性分子であり、例えば、対象から得られるサンプルにおける抗TTR抗体を検出するために有用である。1つの実施形態において、本発明は、TTRに関連づけられる疾患または障害の予防的処置、治療的処置、ならびに/あるいは、TTRに関連づけられる疾患または障害の進行または処置に対する応答をモニターすることにおいて使用されるための、本明細書中上記において、また下記で定義されるような抗体、または、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するTTR結合性分子、本明細書中で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞、あるいは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物または診断組成物を提供し、好ましくは、この場合、前記障害は、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、老年性全身性アミロイドーシス(SSA)、全身性家族性アミロイドーシス、軟膜/中枢神経系(CNS)アミロイドーシス(アルツハイマー病を含む)、TTR関連眼アミロイドーシス、TTR関連腎アミロイドーシス、TTR関連高チロキシン血症、TTR関連靱帯アミロイドーシス(手根管症候群、肩腱板断裂および腰部脊柱管狭窄を含む)、および子癇前症を含む群から選択される。上記の疾患群または障害群は、TTRアミロイドーシスに関連づけられる障害の群として示されるであろう。
別の実施形態において、本発明は、本発明の上記で記載されたTTR結合性分子、抗体、抗原結合フラグメント、ポリヌクレオチド、ベクターあるいは細胞のいずれか1つと、場合により、検出のための好適な手段(例えば、免疫または核酸に基づく診断方法において従来から使用される試薬など)とを含む診断組成物に関連する。本発明の抗体は、例えば、抗体を液相において利用することができるか、または、固相キャリアに結合させることができる免疫アッセイにおける使用のために適している。本発明の抗体を利用することができる免疫アッセイの例が、直接的様式または間接的様式でのどちらであれ、競合的免疫アッセイおよび非競合的免疫アッセイである。そのような免疫アッセイの例が、放射免疫アッセイ(RIA)、サンドイッチアッセイ(イムノメトリックアッセイ)、フローサイトメトリーアッセイおよびウエスタンブロットアッセイである。本発明の抗原および抗体は多くの異なるキャリアに結合させることができ、また、それらに特異的に結合する細胞を単離するために使用することができる。よく知られているキャリアの例には、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトが含まれる。キャリアの性質は本発明の目的のために可溶性または不溶性のどちらでも可能である。多くの異なる標識および標識化方法が当業者には知られている。本発明において使用することができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位体、コロイド状金属、蛍光性化合物、化学発光化合物および生物発光化合物が含まれる(本明細書中上記で議論された実施形態もまた参照のこと)。
さらなる実施形態によって、TTR結合性分子はまた、特に、本発明の抗体はまた、血液サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、リンパサンプルまたはいずれかの他の体液サンプル(例えば、唾液サンプルまたは尿サンプルなど)である場合がある体液サンプルを検査された個体から得ること、および、体液サンプルを、抗体-抗原複合体の形成を可能にする条件のもとで本発明の抗体と接触させることによって、障害を個体において診断するための方法において使用される場合がある。そのような複合体のレベルがその後、この技術分野において知られている方法によって求められ、コントロールサンプルにおいて形成されるレベルよりも有意に大きいレベルにより、疾患が、検査された個体において示される。同じ様式で、本発明の抗体が結合する特異的抗原もまた使用される場合がある。したがって、本発明は、結合性分子、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを含むインビトロ免疫アッセイに関連する。
本発明のさらなる実施形態において、本発明のTTR結合性分子(具体的には抗体)はまた、個体における疾患または障害の診断を、皮膚、唾液腺、毛根、心臓、結腸、神経、皮下脂肪の生検物、または、いずれかの罹患器官からの生検物であり得る生検物を試験された個体から得ることによって行うための方法において使用される場合がある。
この関連において、本発明はまた、この目的のために具体的に設計される手段に関連する。例えば、抗体に基づくアレイが使用される場合があり、アレイには、例えば、TTRを特異的に認識する本発明の抗体またはその同等な抗原結合性分子が負荷される。マイクロアレイでの免疫アッセイの設計が、Kusnezow他、Mol.Cell Proteomics 5(2006)、1681~1696において要約される。したがって、本発明はまた、本発明に従って特定されるTTR結合性分子が負荷されるマイクロアレイに関連する。
1つの実施形態において、本発明は、変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種および/または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメントに関連づけられる疾患または障害を対象において診断する方法であって、診断される対象から得られるサンプルにおけるTTRならびに/あるいはミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体、そのTTR結合フラグメント、または、それらのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するTTR結合性分子を用いて明らかにすることを含み、この場合、病理学的に変異したTTR、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRの存在が、TTRアミロイドーシスについて示すものであり、また、生理学的TTRのレベルとの比較において、病理学的にミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRのレベルの増大が、前記対象のTTRアミロイドーシスの進行について示すものである方法に関連する。
診断される対象は疾患について無症候性または病状発現前である場合がある。好ましくは、コントロール対象が、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRに伴う疾患(例えば、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)または老年性全身性アミロイドーシス(SSA))を有しており、ただし、この場合、病理学的にミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRのレベルと、参照標準との間における類似性により、診断される対象はTTRアミロイドーシスを有するか、または、TTRアミロイドーシスを発症する危険性があることが示される。代替において、または、加えて、第2のコントロールとして、コントロール対象はTTRアミロイドーシスを有しておらず、ただし、この場合、生理学的TTRのレベルならびに/あるいはミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRのレベルと、参照標準との間における違いにより、診断される対象はTTRアミロイドーシスを有するか、または、TTRアミロイドーシスを発症する危険性があることが示される。好ましくは、診断される対象と、コントロール対象とは、年齢が一致する。分析されるサンプルは、どのような体液であれ、病理学的にミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRを含有することが疑われる体液である場合があり、例えば、血液、血漿、血清、尿、腹腔液、唾液または脳脊髄液(CSF)である場合がある。
生理学的TTRのレベルならびに/あるいはミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRまたは凝集したTTRのレベルが、例えば、ウエスタンブロット、免疫沈殿、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、二次元ゲル電気泳動、質量分析法(MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化-飛行時間型MS(MALDI-TOF)、表面増強レーザー脱離イオン化-飛行時間(SELDIーTOF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、多次元液体クロマトグラフィー(LC)それに続くタンデム質量分析(MS/MS)、および、レーザーデンシトメトリーから選ばれる1つまたは複数の技術によってTTRを分析することを含む、この技術分野において知られているいずれかの好適な方法によって評価される場合がある。好ましくは、TTRの前記インビボ画像化は、シンチグラフィー、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法または磁気共鳴画像法(MRI)を含む。
さらなる態様において、本発明は、TTRアミロイドーシスの診断、この疾患の処置をモニターすること、および、抗TTR薬物の診断有用性または治療有用性を、組織および生検を使用しない方法で、すなわち、非侵襲的方法で明らかにすることに関連する。
通常、体液(例えば、血漿)において検出することができるTTR凝集物および/またはミスフォールドしたTTRの濃度は非常に低く、したがって、TTRアミロイドーシスの診断は面倒であり、時間がかかる。特に、TTRアミロイドーシス疾患の診断は困難かつ冗長なプロセスである。これは、様々な疾患が、非常に類似した徴候および症状を示し、その結果、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)および老年性全身性アミロイドーシス(SSA)の正式な診断は典型的には、組織生検物の採取、および、複雑な組織学的染色技術によるTTRアミロイド沈着物の特定を必要とするようになるからである。組織生検物は非常に小さく、また、TTRアミロイド沈着物が分散されているので、TTRアミロイドーシスの組織学的決定は典型的には、患者については高頻度の偽陰性結果および遅れが伴う。
しかしながら、本発明によれば、驚くべきことに、主題となる抗TTR抗体のただ1回だけの投与の後で、血液における抗TTR抗体に結合した凝集物および/またはミスフォールドしたTTRの測定が可能であることを示すことができた(実施例13および図14を参照のこと)。したがって、TTRをアミロイド形成性TTR沈着物から除き、血液内に移送する本発明の抗TTR抗体のおそらくは特有の性質のために、ミスフォールドしたTTR、変異したTTRおよび/または凝集したTTRに伴う障害を患者または対象において診断する新規な方法が開発され、この場合、そのような方法は、TTRアミロイド疾患の診断プロセスにおいて組織生検および組織学的分析に取って代わる潜在的可能性を有する。この方法は、TTRタンパク質の病理学的立体配座について特異的である抗体を使用することに依拠しており、この場合、抗体が患者に注射され、患者の身体のどこにおいてでも、ミスフォールドしたTTRタンパク質および/または凝集したTTRタンパク質の存在についてプローブ探査するために使用される。患者における抗体注入の後しばらくして、例えば、2日後に、血液サンプルが、抗体が、ミスフォールドしたTTR粒子および/または凝集したTTR粒子をTTR沈着物から捕捉し、引き離しているかを検出するために採取され、使用される。組織学と比較してのこの方法の主要な利点が、抗TTR抗体が患者に直接に注射され、血液循環により、どの組織および器官も通過するその循環が可能となること、そして、ミスフォールドしたTTRタンパク質沈着物および/または凝集したTTRタンパク質沈着物がその局在化に関係なく検出されることと関係している。
したがって、さらなる態様において、本発明は、TTRアミロイドーシスに伴う疾患を診断する方法であって、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRのレベルを対象への抗TTR抗体の投与の後における対象からのサンプルにおいてアッセイすることを含み、ただし、この場合、コントロール(例えば、抗TTR抗体投与前の前記対象から得られるサンプルなど)と比較して、前記対象のサンプルにおけるミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRの存在または上昇したレベルにより、TTRアミロイドーシスに伴う疾患が示される方法に関連する。さらには、実施例13において示されるように、この新規な方法はまた、抗TTR薬物と、TTRアミロイドーシスの処置の経過とをそれぞれ特徴づけるために有用であるので、本発明のこの新規な方法はまた、抗TTR抗体による疾患の処置をモニターするために、あるいは、抗TTR抗体の診断有用性または治療有用性を明らかにするために意図される。これに関連して、当業者は、本発明の方法が、抗TTR抗体の治療有用性および治療効力を調べることに限定されるのではなく、TTRアミロイド沈着物を分解することができる他の種類の抗TTR薬物に対しても適用可能であることを認識するであろう。例えば、本発明の抗TTR抗体は別の抗TTR薬物と併せて投与される場合があり、処置されたことがある対象のサンプルにおけるミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRのレベルが、抗TTR抗体および抗TTR薬物の両方が投与される前で、しかし、抗TTR抗体処置の後だけの対象から得られるコントロールに対して比較される。
本発明の1つの好ましい実施形態において、特に、非ヒト動物を、実施例13において例示されるような組換えのヒト由来抗体を試験するために使用するとき、一般にはヒトにおける使用のために意図される他の抗TTR抗体を試験するために使用するとき、サンプルにおけるミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRのレベルが、抗TTR抗体と、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRとの間で形成される複合体を、例えば、抗ヒトIgG抗体または抗イディオタイプ抗体による免疫沈殿により測定することによってアッセイされる。代替において、TTRを薬物候補の抗TTR抗体のエピトープとは実質的に異なるエピトープにおいて認識し、その結果、薬物候補の抗TTR抗体とTTRとによって形成される複合体と結合し、したがって、その存在を、例えば、ELISAまたは免疫沈殿によって検出するようにする第2の抗TTR抗体が使用される場合がある。
診断態様に関して、特にヒト対象およびヒト患者のための診断態様に関して、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRならびに抗TTR抗体とのその複合体の存在および上昇したレベルはそれぞれ、TTRアミロイド沈着物の存在をヒト身体において、例えば、患者または対象の心臓、末梢神経系(PNS)、眼、筋肉、胃腸管、腎臓、血管系および中枢神経系(CNS)において示している。したがって、本発明の方法は、一方では対象の身体におけるTTRアミロイドーシスに伴う疾患の特定および決定を可能にし、他方では患者の身体からのTTR沈着物の除去(それにより、これもまた、与えられた処置の治療的進展、および、TTRアミロイドーシス特異的薬物(例えば、抗TTR抗体など)の効力を示している)を可能にする。
したがって、実施例13において明らかにされるように、本発明の抗TTR抗体は、病理学的TTR沈着物の安定性を変化させるための十分な親和性で、例えば、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRを沈着物から捕獲し、体液内に、具体的には血液内に除くための十分な親和性で、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRと結合することができる。
本発明の方法に従って使用されることになる抗TTR抗体は、TTRの病理学的立体配座について特異的である、すなわち、ミスフォールドしたTTR、変異したTTRおよび/または凝集したTTRについて特異的であるどのようなTTR抗体であってもよい。しかしながら、好ましい実施形態において、組織を使用しない方法において利用される抗TTR抗体は、本明細書中に記載される、また、実施例において例示される本発明の抗TTR抗体またはTTR結合性分子である。
これに関連して、抗TTR抗体は修飾される場合があり、例えば、本明細書中前記の他の実施形態のいずれかについて記載されるように、検出可能な標識に結合させられる場合がある。加えて、この技術分野では知られており、また、本発明の抗TTR抗体およびペプチドに基づく他の診断方法および使用について記載される様々な免疫アッセイ(例えば、ウエスタンブロット、ドットブロット、(サンドイッチ)ELISAなど)が、本発明の新規TTRアミロイドアッセイに適合化される場合がある。
TTRアミロイドアッセイを使用する実施例13および図14において示されるように、本発明の抗TTR抗体は、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRをTTRアミロイド沈着物から捕捉し、引き離すことができ、対応する免疫複合体が体液(具体的には患者または対象の血液)のサンプルにおいて測定され得ることを示すことができた(実施例13および図14を参照のこと)。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗TTR抗体は、例えば、心臓、末梢神経系(PNS)、眼、筋肉、胃腸管、腎臓、血管系および中枢神経系(CNS)からのミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRの正味の流出を変化させるための十分な親和性で、ミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRと結合することができる。
抗TTR抗体に結合する捕捉され、引き離されているミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRが存在する体液サンプル(好ましくは、対象からの血液またはCSF)が、投与後の指定された時間間隔で得られる。投与後のこの指定された時間間隔は典型的には1週間未満である。好ましい実施形態において、抗TTR抗体投与後のこの時間間隔は48時間以下である。
上記で述べられたように、組織を使用しない上記方法はまた、処置の成功を明らかにするために、すなわち、抗TTR抗体によって捕捉されるミスフォールドしたTTR種および/または凝集したTTR種の処置前および処置後での測定によって明らかにするために利用することができる。したがって、さらなる実施形態または付加的な実施形態において、組織を使用しない本発明の方法はさらに、体液のサンプルにおけるミスフォールドしたTTRおよび/または凝集したTTRのレベルを、抗TTR抗体が投与される前の対象から得られるサンプルに対して比較することを含む場合がある。したがって、1つの実施形態において、本発明の方法は、TTRアミロイドーシスの処置の有効性を明らかにするために、あるいは、患者または対象における病理学的TTRに伴う疾患または障害の進行をモニターするために使用される。
述べられたように、上記で記載される方法において利用される対象のサンプルは抗TTR抗体の投与前または投与後において得ることができる。しかしながら、サンプルはまた、医療施設または実務医師から、同様にまた、対象からの臨床サンプルを得ることができる他の機関から得ることができる。施設、医師などは、抗TTR抗体の対象への投与、および、上記方法において使用されるための適切なサンプルの採取を行うことができるだけでなく、患者のモニターおよび/または処置を、すなわち、抗体の投与量、投与時間、投与頻度を変更することによって、治療を中断することによって、抗TTR抗体を少なくとも別の抗TTR抗体または治療剤によって置き換えるか、または組み合わせることによって行うことができる。TTRのレベルを、どのような方法であれ、この技術分野において知られている好適な方法によって評価することができる。好適である様々な方法が下記および国際特許出願公開WO2013/066818(その開示内容は参照によって本明細書中に組み込まれる)において記載される。
本発明の1つの態様において、本発明の抗体または前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するTTR結合性分子、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞、あるいは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物または診断組成物が、TTRに関連づけられる疾患または障害の予防的処置、治療的処置、ならびに/あるいは、そのような疾患または障害の進行または処置に対する応答をモニターすることにおける使用のために提供される。したがって、一般には、本発明はまた、対象におけるTTRに関連づけられる疾患または障害(例えば、TTRアミロイドーシスなど)を診断する、またはその進行をモニターする方法であって、診断される前記対象からのサンプルにおけるTTRの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体または前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するTTR結合性分子を用いて明らかにすることを含み、ただし、この場合、変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種あるいはそのフラグメントの存在が、前記疾患または障害について示すものである方法に関連する。1つの実施形態において、対象におけるTTRアミロイドーシスを診断する、またはその進行をモニターする前記方法であって、診断される対象からのサンプルにおける変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメントの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体または前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するTTR結合性分子を用いて明らかにすることを含み、ただし、この場合、変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメントの存在が、前駆症状的、前駆的または臨床的なTTRアミロイドーシスを示すものであり、また、生理学的TTRのレベルに対する比較において、あるいは、健康なコントロール対象に由来する参照サンプル、または、同じ対象からのコントロールサンプルに対する比較において、TTRオリゴマー、TTR凝集物またはTTR原線維のレベルの増大が、症状発現前、前駆的または立証されたTTRアミロイドーシスの進行について示すものである方法が提供される。1つの実施形態において、前記方法は、本明細書中上記で定義されるようなTTRに関連づけられる障害の一群からのいずれか他の疾患または障害を診断するために、あるいはその進行をモニターするために同様にまた使用されることが、当業者によって理解されるであろう。
上記で示されるように、本発明の抗体、そのフラグメント、および、本発明の抗体およびそのフラグメントと同じ結合特異性の分子は、インビトロだけでなく、インビボにおいても同様に使用される場合があり、診断的適用のほかに、治療的適用が同様に実行される場合がある。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、ヒトまたは動物の身体におけるTTRのインビボ検出のための組成物、あるいは、治療剤および/または診断剤をヒトまたは動物の身体においてTTRに対して標的化するための組成物を調製するための、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含むTTR結合性分子に関連する。潜在的可能性のある治療剤および/または診断剤が、本明細書中上記で示されるような、TTRアミロイドーシスの処置において有用である治療剤、および、潜在的可能性のある標識の非網羅的な列挙から選ばれる場合がある。インビボ画像化に関して、1つの好ましい実施形態において、本発明は、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記TTR結合性分子を提供し、前記インビボ画像化が、陽電子放出断層撮影法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法または磁気共鳴画像法(MRI)を含む。さらなる実施形態において、本発明はまた、本明細書中上記で定義されるように、対象におけるTTRに関連づけられる疾患又は障害を診断するか、またはその進行をモニターする方法において使用するための、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記TTR結合性分子、あるいは、上記で指定されるインビボ画像化方法のための組成物を調製するための前記分子を提供する。
VII.凝集特異的なTTRエピトープを有するペプチド
さらなる態様において、本発明は、本発明のいずれかの抗体によって特異的に認識されるTTRのエピトープを有するペプチドに関連する。好ましくは、そのようなペプチドは、抗体、あるいは、1つまたは複数のアミノ酸が置換され、欠失され、および/または付加されるその改変された配列によって認識される独特な直鎖状エピトープとして、配列番号49、配列番号50または配列番号51に示されるようなアミノ酸配列を含むか、または、そのようなアミノ酸配列からなり、ペプチドは本発明のいずれかの抗体によって認識され、好ましくは、抗体NI-301.59F1、抗体NI-301.35G11、抗体NI-301.37F1又は抗体NI-301.12Dによって認識される。
本発明の1つの実施形態において、そのようなペプチドは、対象におけるミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメントに関連づけられる疾患または障害(例えば、TTRアミロイドーシスなど)を診断するために、またはモニターするために使用される場合があり、ただし、この場合、これは、前記対象の生物学的サンプルにおいてペプチドに結合する抗体の存在を明らかにする工程を含み、本発明の上記ペプチドを認識する抗体のレベルを測定すること、および、測定結果を、同等の年齢および性別の健康な対象において見出されるレベルに対して比較することによって前記対象におけるそのような疾患の診断のために使用される。したがって、1つの実施形態において、本発明は、対象における前駆症状的または臨床的なFAPおよび/またはFACを暗示するTTRアミロイドーシスを診断するための方法であって、上記で定義されるようなペプチドに結合する抗体の存在を前記対象の生物学的サンプルにおいて明らかにすることを含む方法に関連する。この方法によれば、本発明の前記ペプチドについて特異的である測定された抗体の上昇したレベルが、前駆症状的または臨床的なFAPおよび/またはFACを前記対象において診断することについて、あるいは、本明細書中上記で定義されるようなTTRに関連づけられる障害の一群からのいずれか他の疾患または症状を前記対象において診断することについて示すものである。さらには、本発明のペプチドは、ヒトに由来する治療的効果的な抗体のエピトープを含有するので、そのようなペプチドは当然のことながら、抗原として、すなわち、免疫応答を対象において誘発させ、インビボでの本発明の抗体の産生を刺激するための免疫原として使用することができる。本発明のペプチドは、本明細書中前記で記載されるように、アレイ、キットおよび組成物(例えば、ワクチンなど)においてそれぞれ配合される場合がある。これに関連して、本発明はまた、TTRアミロイドーシスを診断すること、またはその進行をモニターすることにおいて有用なキットであって、本発明の少なくとも1つの抗体または前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するTTR結合性分子、本明細書中上記でそれぞれ定義されるようなポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞および/またはペプチドを、必要な場合には使用のための試薬および/または説明書と一緒に含むキットに関連する。
これらの実施形態および他の実施形態が本発明の記載および実施例によって開示され、また、包含される。本発明に従って用いられるための材料、方法、使用法および化合物のいずれか1つに関するさらなる文献が、例えば、電子デバイスを使用して、公開されている図書館およびデータベースから検索され得る。例えば、公開されているデータベースの「Medline」が利用され得る(このデータベースは国立バイオテクノロジー情報センターおよび/または国立衛生研究所の国立医学図書館によって提供される)。さらなるデータベースおよびウェブアドレスが、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)(これは欧州分子生物学研究所(EMBL)の一部である)のデータベースなどが当業者には知られており、これらもまた、インターネット検索エンジンを使用して得ることができる。バイオテクノロジーにおける特許情報、ならびに、遡及的検索および現在の認識のために有用な特許情報の関連原典の調査の概略が、Berks、TIBTECH 12(1994)、352~364に示される。
上記開示は本発明を概して記載する。別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂および2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。いくつかの文書が本明細書の本文を通して引用される。完全な書誌的引用が請求項の直前において明細書の最後に見出される場合がある。すべての引用された参考文献(本出願明細書を通して引用されるような文献参照物、発行された特許、公開された特許出願、および、製造者の仕様書、説明書などを含む)の内容が、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる;しかしながら、どのような文書であれ、引用される文書は実際に本発明に関して先行技術であることを何ら認めるものではない。より完全な理解を、例示のみの目的のために本明細書中に提供され、かつ、本発明の範囲を限定するために意図されない下記の具体的な実施例を参照することによって得ることができる。
実施例1:抗TTR抗体の単離および特定
TTRならびに/あるいは変異したTTR種、ミスフォールドしたTTR種、ミスアッセンブルしたTTR種および/または凝集したTTR種ならびに/あるいはそのフラグメントを標的とする様々なヒト由来抗体を、国際特許出願公開WO2008/081008(その開示内容は参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載される方法を改変とともに利用して特定した。具体的には、ヒト血漿からの精製によって得られるヒト野生型TTRタンパク質、ならびに、組換え発現によって得られる野生型TTRタンパク質および変異型TTRタンパク質を、TTR標的化抗体を特定するためのネイティブな立体配座およびミスフォールド-凝集した立体配座の両方で使用した。ミスフォールド-凝集した立体配座体を、Colon W.他、Biochemistry、31(1992)、8654~8660に記載される手順に類似する手順を小幅な改変とともに使用して酸性条件下のインビトロで生成させた。
実施例2:抗体配列の決定
上記で特定された抗TTR抗体の可変領域のアミノ酸配列をそれらのmRNA配列に基づいて決定した(図1を参照のこと)。簡単に記載すると、選択された不死化されていないメモリーB細胞培養物の生存B細胞を集めた。続いて、選択された抗TTR抗体を産生する細胞からのmRNAを抽出し、cDNAに転換し、抗体の可変領域をコードする配列をPCRによって増幅し、プラスミドベクターにクローン化し、配列決定した。簡単に記載すると、ヒト免疫グロブリン生殖系列レパートリーのすべての配列ファミリーを表すプライマーの組合せを、リーダーペプチド、VセグメントおよびJセグメントの増幅のために使用した。1回目の増幅を、5’末端におけるリーダーペプチド特異的プライマーと、3’末端における定常領域特異的プライマーとを使用して行った(Smith他、Nat Protoc.、4(2009)、372~384)。重鎖およびカッパ軽鎖のために、2回目の増幅を、5’末端におけるVセグメント特異的プライマーと、3’末端におけるJセグメント特異的プライマーとを使用して行った。ラムダ軽鎖のために、2回目の増幅を、5’末端におけるVセグメント特異的プライマーと、3’末端におけるC領域特異的プライマーとを使用して行った(Marks他、Mol.Biol.、222(1991)、581~597;de Haard他、J.Biol.Chem.、26(1999)、18218~18230)。
所望の特異性を有する抗体クローンの特定を、完全な抗体を組換え発現させたときにELISAでの再スクリーニングによって行った。完全なヒトIgG1抗体の組換え発現が、可変重鎖配列および可変軽鎖配列を、可変領域配列を5’末端において、リーダーペプチドをコードする配列により補い、かつ、3’末端において、適切な定常ドメインをコードする配列により補う発現ベクターに「正しい読み枠で」挿入したときに達成された。その目的を達成するために、プライマーは、抗体発現ベクターへの可変重鎖配列および可変軽鎖配列のクローニングを容易にするために設計される制限部位を含有した。重鎖免疫グロブリンを、免疫グロブリン重鎖のRT-PCR産物を、シグナルペプチドとヒトまたはマウスの免疫グロブリンガンマ1の定常ドメインとを有する重鎖発現ベクターに読み枠を合わせて挿入することによって発現させた。カッパ軽鎖免疫グロブリンを、カッパ軽鎖のRT-PCR産物を、シグナルペプチドとヒトカッパ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを提供する軽鎖発現ベクターに読み枠を合わせて挿入することによって発現させた。ラムダ軽鎖免疫グロブリンを、ラムダ軽鎖のRT-PCR産物を、シグナルペプチドとヒトまたはマウスのラムダ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを提供するラムダ軽鎖発現ベクターに読み枠を合わせて挿入することによって発現させた。
機能的な組換えモノクローナル抗体を、Ig重鎖発現ベクターと、カッパIg軽鎖発現ベクターまたはラムダIg軽鎖発現ベクターとをHEK293細胞またはCHO細胞(あるいは、どのようなレシピエント細胞株であれ、ヒト起源またはマウス起源の他の適切なレシピエント細胞株)に共トランスフェクションしたときに得た。組換えヒトモノクローナル抗体を続いて、標準的なプロテインAカラム精製を使用して馴化培地から精製した。組換えヒトモノクローナル抗体を、一過性トランスフェクション細胞または安定的トランスフェクション細胞のどちらかを使用して無限の量で産生させることができる。組換えヒトモノクローナル抗体を産生する細胞株を、Ig発現ベクターをそのまま使用することによって、または、Ig可変領域を異なる発現ベクターに再クローニングすることによってそのどちらでも樹立することができる。誘導体、例えば、F(ab)、F(ab)2およびscFvなどもまた、これらのIg可変領域から作製することができる。
フレームワーク領域および相補性決定領域をデータベース(例えば、Abysis(http://www.bioinf.org.uk/abysis/)など)において利用可能な参照抗体配列との比較によって決定し、これらの領域に、Kabat番号表記スキーム(http://www.bioinf.org.uk/abs/)を使用して注釈を付けた。フレームワーク領域(FR)および相補性決定領域(CDR)の指示を含む、NI-301.59F1、NI-301.35G11、NI-301.37F1、NI-301.2F5、NI-301.28B3、NI-301.119C12、NI-301.5D8、NI-301.9D5、NI-301.104F5、NI-301.21F10、NI-301.9G12、NI-301.12D3、NI-301.37F1-PIMC、NI-301.44E4、NI-301.18C4、NI-301.11A10、NI-301.3C9、NI-301.14D8、NI-301.9X4およびNI-301.14C3の各主題抗体の可変領域のアミノ酸配列が図1A~図1Tに示される。
下記では、ミスフォールド-凝集したTTRの立体配座体に対する主題抗体の親和性は大きく、かつ、ネイティブな野生型TTRの立体配座体に対する結合を実質的に欠くこと(したがって、このことは、変異型TTR、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRについての強い選択性を明らかにする)が、NI-301.59.F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1の抗体について例示的に例示される。しかしながら、他の主題抗体についての予備的実験では、NI-301.59.F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1の抗体のように、生理学的TTR種を上回る、変異型TTR、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRに対する実質的に同じ優先的な結合が示唆される。
実施例3:直接的ELISAを利用する抗TTR抗体の結合親和性およびEC50決定 TTRならびに/あるいはTTRのミスフォールドした形態、ミスアッセンブルした形態および/または凝集した形態と結合する抗体能力を、様々な抗体濃度での直接的ELISAアッセイによって評価した。これは、それぞれの抗体について、その最大半有効濃度(EC50)(これは抗体結合親和性の代用として一般に使用される)をこのアッセイで求めることを可能にする(図2を参照のこと)。簡単に記載すると、ELISAプレート(高結合型、透明ポリスチレン、半領域、平底)を、ミスフォールド-凝集したヒト野生型TTR、ミスフォールド-凝集した組換えV30M-TTR(これらはともに、実施例1に記載されるように調製された)およびウシ血清アルブミン(BSA)によりリン酸塩緩衝生理的食塩水(PBS)において10μg/mlの濃度で37℃において1時間被覆し、続いて、PBSにおける2%BSAおよび0.1%ツィーン-20の溶液(PBS-T)により室温(RT)で1時間にわたってブロッキング処理した。TTRに対する抗体を、4nMから400nMにまで及ぶ11の異なる濃度でPBSにおいて希釈し、ELISAプレートにおいて4℃で一晩インキュベーションした。PBS-Tによる3回の洗浄の後、ELISAプレートをHRP結合のヒトIgG特異的二次抗体とRTで1時間インキュベーションした(1/4000の希釈)。PBS-Tによる3回の洗浄の後、ELISA反応を、RTにおいて正確に10分間、TMBにより発色させ、450nmにおける光学密度(OD450nm)を測定することによって定量化した。
NI-301.59F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1の例示的抗体は、強い結合を、コントロールのBSAに対してではなく、ミスフォールド-凝集した野生型TTRおよび変異型TTRに対して示した(図2A~図2Cを参照のこと)。続いて、抗体のEC50を、これらの条件のもとでの抗体結合親和性を推定するために、データを、最小二乗法を使用する非線形回帰により当てはめることによって求めた。
NI-301.59F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1の例示的抗体は、ミスフォールド-凝集したヒト野生型TTRについては、3.0nM、3.9nMおよび0.35nMのEC50にそれぞれ対応する大きい親和性を示した。これらの例示的抗体はまた、ミスフォールド-凝集した組換え変異型V30M-TTRについては、15.5nM、5.0nMおよび0.15nMのEC50にそれぞれ対応する大きい親和性を示した。
実施例4:ドットブロットを利用する抗TTR抗体の結合選択性
TTR抗体および/またはそのフラグメントの結合選択性を、ネイティブTTRあるいはミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRの立体配座体について評価するために、ネイティブな立体配座またはミスフォールド-凝集した立体配座でのヒト野生型TTRタンパク質と、ミスフォールド-凝集した立体配座での組換えV30M-TTRタンパク質とを4つの異なる濃度でPBSにおいて希釈し、真空ろ過によってニトロセルロースメンブランに沈着させた。メンブランを短時間乾燥させ(10分間)、PBS-Tにおける3%ミルクによりRTで1時間にわたってブロッキング処理し、続いて、抗TTR抗体と4℃で一晩インキュベーションした。RTでの5分間のPBS-Tによる洗浄を3回行った後、メンブランを適切な二次抗体(HRP結合;1/10000の希釈)とRTで1時間インキュベーションした。PBS-Tによる3回の洗浄の後、メンブランをルミノールにより発色させ、シグナル強度を、発光を測定することによって定量化した。
例示的な市販の抗TTR抗体は、ネイティブTTRの立体配座体、同様にまた、ミスフォールド-凝集したTTRの立体配座体に、類似する親和性により結合し、それにより、この例示的な市販の抗TTR抗体は、ネイティブTTRあるいはミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRの立体配座については結合選択性がないことを明らかにした(図3Aを参照のこと)。対照的に、NI-301.59.F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1の例示的抗体は、ミスフォールド-凝集したTTRの立体配座体のみに大きい親和性で結合し、ネイティブTTRの立体配座体に対する結合を全く示さず、それにより、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRについての強い選択性を明らかにした(図3のB2、C2、D2)。したがって、抗体NI-301.35G11および抗体NI-301.37F1はまた、図3のC3およびD3において示されるように、ミスフォールド-凝集した組換えV30M-TTRタンパク質に対する強い結合を示した。
抗体結合選択性をさらに特徴づけるために、野生型および変異型のネイティブな立体配座体およびミスフォールド-凝集した立体配座体を含む様々なTTR調製物と、12個のヒト血漿サンプルからなる集団とを、マウスキメラ抗TTR抗体と、検出のためのHRP結合の抗マウスIgG2a二次抗体とを使用するドットブロットによる分析のために同様に処理した(図6)。
市販の抗体は、強い結合を、野生型および変異型のネイティブTTR調製物およびミスフォールド-凝集したTTR調製物を含めてすべてのTTR調製物に対して示し、また、TTRをすべてのヒト血漿サンプルにおいて検出することができた。このことはさらに、ネイティブな立体配座体または凝集した立体配座体については選択性がないことを明らかにする(図6Aを参照のこと)。対照的に、例示的なマウスキメラ抗体NI-301.mur35G11は、非常に強い結合をミスフォールド-凝集した野生型TTRサンプルに対して示し(図6のC1)、同様に、強い結合を変異型V30M-TTRタンパク質に対して示し(図6のC4)、また、変異型Y78F-TTRタンパク質に対して示した(図6のC6)。しかしながら、NI-301.mur35G11抗体はヒト血漿サンプルにおいてTTRには結合しなかった。このことはさらに、変異したTTRタンパク質、ミスフォールドしたTTRタンパク質、ミスアッセンブルしたTTRタンパク質および/または凝集したTTRタンパク質についてのNI-301.mur35G11の強い選択性を明らかにする。
実施例5:ウエスタンブロットを利用する抗TTR抗体の結合親和性および結合選択性 抗TTR抗体の結合親和性および結合選択性をウエスタンブロットによって評価した(図4を参照のこと)。簡単に記載すると、ネイティブな立体配座またはミスフォールド-凝集した立体配座でのヒト野生型TTRタンパク質(300ng)と、野生型マウス肝臓抽出物(10μgの総タンパク質)とをSDS-PAGEゲルに載せ、セミドライ転写システムを使用してニトロセルロースメンブランに転写した。メンブランを続いて、PBS-Tにおける2%BSAによりRTで1時間にわたってブロッキング処理し、ブロッキング緩衝液で希釈される抗TTR抗体と4℃で一晩インキュベーションした。RTでの5分間のPBS-Tによる洗浄を4回行った後、メンブランを適切な二次抗体(HRP結合;ブロッキング緩衝液での1/10000の希釈)とRTで1時間インキュベーションした。PBS-Tによる3回の洗浄およびPBSにおける最後の1回の洗浄の後、メンブランをルミノールにより発色させ、シグナル強度を、発光を測定することによって定量化した。使用直前に、ミスフォールド-凝集したTTRサンプルは、SDS-PAGEのための調製プロセスの期間中におけるTTR凝集物の解離を防止するためにグルタルアルデヒドによる架橋に付した(1%、5分、37℃)。対照的に、ネイティブTTRサンプルは使用前に架橋されず、その結果、TTR四量体(これは生理学的状態のもとではネイティブTTR立体配座である)が単量体および二量体にほぼ完全に解離するようにした。
市販の抗TTR抗体は、非常に強い結合をヒトネイティブTTRサンプルのTTR単量体およびTTR二量体に対して示し(図4のA1)、同様に強い結合を架橋されているミスフォールド-凝集したTTRサンプルに対して示し(図4のA2)、それにより、ネイティブなTTRあるいはミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRの立体配座体についての選択性がないことを明らかにした。対照的に、NI-301.59F1、NI-301.35G11およびNI-301.37F1の例示的抗体は、非常に強い結合を架橋されているミスフォールド-凝集したTTRサンプルに対して示し(図4のB2、C2、D2)、しかし、ヒトネイティブTTRサンプルのTTR単量体およびTTR二量体に対しては結合を全く示さず(図4のB1、C1、D1)、それにより、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRの立体配座体についてはネイティブTTRの立体配座体を上回る強い選択性を明らかにした。
それに加えて、市販の抗TTR抗体および例示的な抗TTR抗体は、マウス肝臓抽出物に含有されるタンパク質に対する非常に低いレベルの結合を有した(図4のA3、B3、C3、D3)。実験のために使用された肝臓タンパク質の量が多いこと、そして、それらの結合親和性に関して抗体濃度が大きいことを考慮すると、このことは、例示的抗体はTTRについての顕著な特異性を有しており、他のタンパク質には有意に結合しないことを示している。さらには、例示的抗体は、マウス肝臓抽出物に大きいレベルで含有されるマウスTTRタンパク質には結合しないようであり、このことは、例示的抗体は特異性をヒトのミスフォールドしたTTRタンパク質について示すことを示している。しかしながら、抗体NI-301.37F1のエピトープがラットおよびマウスのTTRタンパク質に存在している。したがって、このエピトープの一次アミノ酸配列は、ミスフォールドしたTTRを検出するために必ずしも決定的ではなく、立体配座のために決定的であるかもしれない。
ネイティブTTRタンパク質に対する抗体結合能、または、ネイティブTTRタンパク質に対する抗体結合能の非存在をさらに特徴づけるために、例示的抗体を、本明細書中上記で記載されるのと同じウエスタンブロット技術を使用して、ヒト血漿サンプルに含有されるTTRタンパク質に結合するそれらの能力について評価した(図5)。唯一の技術的違いが、約25kDa~30kDaでのゲルの上部部分を取り除くこと、そして、ゲルの下部部分のみをニトロセルロースメンブランへのタンパク質の転写のために使用することにあった。これは、分析を潜在的には妨害する可能性があるかもしれない、血漿サンプルに高濃度で存在するヒト抗体の重鎖および軽鎖を除くためである。
参照として使用される市販の抗体とは対照的に、例示的抗体のNI-301.35G11およびNI-301.37F1では、ヒト血漿サンプルに含有されるヒトTTRタンパク質が全く検出されず、それにより、分析されたサンプルにはこれらの条件のもとで存在しないTTR立体配座体についての結合選択性が示された。
実施例6:免疫沈殿を利用する溶液における抗TTR抗体の結合選択性
本発明の抗TTR抗体の結合選択性をさらに確認するために、ネイティブな立体配座およびミスフォールド-凝集した立体配座でのヒト野生型TTRタンパク質および組換えTTRタンパク質と、PBSにおける3つの異なる希釈度でのヒト血漿サンプルとをTTR免疫沈殿(IP)のために使用した。簡単に記載すると、プロテインAで被覆された磁石粒子を、製造者の結合緩衝液で希釈される抗TTR抗体とRTで30分間インキュベーションした。抗体/プロテインA複合体を回収し、TTR調製物およびヒト血漿サンプルと4℃で一晩インキュベーションした。洗浄後、抗体/プロテインA複合体をSDS負荷緩衝液に再懸濁し、90℃で5分間加熱し、ウエスタンブロット分析のために処理した。
図7に示されるように、例示的TTR抗体のNI-301.35G11およびNI-301.37F1は、市販のTTR抗体(Dako A0002)とは対照的に、血漿サンプルに対する結合を何ら示さず(図7のA7~9、B7~9、C7~9)、同様にまた、ネイティブな野生型TTRサンプルおよび組換えTTRサンプルに対する結合を何ら示さなかった(図7のB3、C3、B5、C5)。しかしながら、強い結合が、TTRのミスフォールド-凝集した形態が存在するサンプルにおいて評価された(図7のB4、C4、B6、C6)。
これらの結果は、例示的抗体のNI-301.35G11およびNI-301.37F1は溶液中におけるミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRの立体配座体と結合することができ、かつ、顕著な選択性をこれらの立体配座体について示すことを示している。
実施例7:FAPマウス組織における病理学的TTR凝集物に対する結合
例示的な抗TTR抗体を、マウスTTRタンパク質ではなく、ヒトV30M-TTRタンパク質をもっぱら発現するトランスジェニックマウス(これは以降、FAPマウスと呼ばれる)の組織に存在するような病理学的TTRタンパク質および非病理学的TTRタンパク質と結合するそれらの能力について免疫組織化学(IHC)によって評価した。これらの抗体はまた、TTRタンパク質を何ら発現しないTTRノックアウト(TTR-KO)マウスからの組織における非特異的結合についても評価した。対応するトランスジェニックマウス系統およびノックアウト系統は、Suichiro Maeda教授によって最初に作製され、記載された(Kohno K.他、American Journal of Pathology、140(4)(1997)、1497~1508)。簡単に記載すると、免疫組織化学を、3μm~5μmの厚さの切片に切断されたパラフィン包埋のマウス切片に対して行った。切片を最初に脱ろう処理し、再水和し、メタノールにおける3%H2O2によりRTで20分間処理した。ブロッキング緩衝液(PBS+5%血清(ウマ/ヤギ)+4%BSA)をRTで1時間にわたって適用し、そして、4℃での一晩のインキュベーションのために、PBSで希釈される抗TTR抗体により置き換えた。PBSにおける3回の洗浄の後、切片を、適切なビオチン化二次抗体(抗ヒトIgG、抗ウサギIgG、PBSにおける1/125での希釈、RTでの1時間のインキュベーション)およびアビジン-HRP検出システム(PBSにおける1/125での希釈、RTでの1時間のインキュベーション)と連続してインキュベーションした。反応を、RTにおいて正確に15分間、ジアミノベンジジンにより発色させた。組織切片をRTで1分間にわたってヘマラン(hemalun)により対比染色し、エタノール段階系列で脱水し、カバーガラスにより覆った。
図8に示されるように、市販のTTR抗体(Dako A0002)は、強い染色をFAPマウスの肝臓切片および腸切片において生じさせ、対応するTTR KO切片では染色を何らもたらさなかった(図8の1A、1B)。例示的なTTR抗体のNI-301.35G11は、類似するパターンおよび強度の染色をFAPマウスの肝臓切片および腸切片の両方において生じさせた(図8の2A)。対照的に、例示的抗体のNI-301.37F1は、強い染色を、FAPマウスの肝臓切片に対してではなく、腸切片においてのみ生じさせた(図8の3A)。このことは、NI-301.37F1抗体が、FAPマウスの胃腸管に時間をかけて蓄積する病理学的(すなわち、非生理学的)TTR凝集物に対してのみ結合し、肝臓によって合成されるようなネイティブ立体配座でのTTRには結合しないことを示している。
それに加えて、例示的抗体のNI-301.35G11およびNI-301.37F1はともに、染色をTTR-KOマウスからの肝臓組織切片および腸組織切片において何ら生じさせなかった(図8の2B、3B)。抗体の結合親和性に関してこの実験で使用される抗体濃度が大きいことを考慮すると、TTR-KOの切片に対する染色がこのようにないことは、結合特異性がTTRタンパク質については大きいことを示している。
実施例8:ヒト組織におけるミスフォールドしたTTR沈着物、ミスアッセンブルしたTTR沈着物および/または凝集したTTR沈着物についての結合選択性
本発明の抗体をまた、ヒト組織における病理学的TTR沈着物と結合するそれらの能力についても評価した。FAP患者からの皮膚生検物の切片と、健康な個体からの膵臓組織の切片とを、実施例7(上記)で記載されるのと同じ手順を使用する免疫組織化学のために処理した。皮膚生検物はかなりの量の病理学的なTTRアミロイド沈着物を含有するので、皮膚生検物をこの実験のために選択した。対照的に、膵臓のアルファ細胞はTTRを大きいレベルで発現するので、膵臓組織をこの実験では使用した。
図9に示されるように、市販の抗体(Dako A0002)により、皮膚における病理学的TTR沈着物および膵臓アルファ細胞におけるネイティブTTRの同等に強い染色が明らかにされた(図9の1A)。同様に、例示的なマウスキメラ抗体のNI-301.mur35G11は、皮膚における病理学的TTR沈着物および膵臓アルファ細胞におけるネイティブTTRの両方の同等に強い染色をもたらした(図9の1B)。対照的に、抗体NI-301.37F1は皮膚における病理学的TTR沈着物のみを染色し、膵臓アルファ細胞におけるネイティブTTRを染色しなかった(図9の3A)。この結果は、NI-301.37F1は、変異したTTR、ミスフォールドしたTTR、ミスアッセンブルしたTTRおよび/または凝集したTTRの立体配座体を含めて、病理学的TTR沈着物についてIHCによって非常に選択的であることを明らかにする。
図9のパネル1B、パネル2Bおよびパネル3Bに示される「二次抗体のみ」のコントロール条件により、一次抗体の非存在下で生じる組織染色が明らかにされる。染色の非存在(2B)または非常に低いレベル(1B、3B)は、パネル1A、パネル2Aおよびパネル3Aにおいて認められる染色が、対応する一次抗体について実際に特異的であることを示している。
実施例9:TTR抗体の結合エピトープの評価
NI-301.59F1、NI301.35G11およびNI-301.37F1の例示的抗体の結合エピトープを決定するために、TTRアミノ酸配列全体を、15アミノ酸の長さおよび11アミノ酸の重なりを有する29個の連続するペプチドからなるパネルをメンブランに共有結合させて使用して分析した。選択された変異を含むさらなるペプチドもまた、メンブランにプロットした。メンブランをRotiブロッキング緩衝液において4℃で一晩ブロッキング処理し、最初に、ブロッキング緩衝液で希釈される抗TTR抗体とRTで2時間インキュベーションし、次いで、HRP結合の抗ヒトIgG抗体とRTで45分間インキュベーションした(TBSにおける1/20000の希釈)。反応をルミノールにより発色させ、発光によって画像化した。
抗体NI-301.59F1は、全長のヒト野生型TTRにおける配列61-EEEFVEGIY-69(配列番号49)に対応するスポット15、スポット16およびスポット44を認識する(図10Aを参照のこと)。抗体NI-301.35G11は、全長のヒト野生型TTRにおける配列53-GELHGLTTEEE-63(配列番号50)に対応するスポット13、スポット14、スポット42およびスポット44を認識する(図10Bを参照のこと)。しかしながら、抗体NI-301.35G11はスポット43を認識せず、このことは、この抗体は、L55P-TTR変異体に対応する配列53-GELHGPTTEEE-63と結合することができないことを示している。抗体NI-301.37F1は、全長のヒト野生型TTRにおける配列41-WEPFA-45(配列番号51)に対応するスポット9、スポット10、スポット11、スポット38およびスポット40を認識する(図10Cを参照のこと)。しかしながら、抗体NI-301.37F1はスポット43を認識せず、このことは、この抗体は、E42G-TTR変異体に対応する配列41-WGPFA-45と結合することができないことを示している。
NI-301.59F1、NI301.35G11およびNI-301.37F1の例示的抗体の結合エピトープの決定を精密化するために、TTRアミノ酸配列全体を、15アミノ酸の長さおよび14アミノ酸の重なりを有する151個の連続するペプチドからなるパネルをメンブランに共有結合させて使用して分析した。それぞれのペプチドについて、10位のアミノ酸を、アラニン以外のアミノ酸についてはアラニンによって置換し、これに対して、アラニンはグリシンまたはプロリンによって置換された。メンブランをRotiブロッキング緩衝液において4℃で一晩ブロッキング処理し、最初に、ブロッキング緩衝液で希釈される抗TTR抗体とRTで2時間インキュベーションし、次いで、HRP結合の抗ヒトIgG抗体とRTで45分間インキュベーションした(1/20000の希釈)。反応をルミノールにより発色させ、発光によって画像化した。
抗体NI-301.59F1はスポット77およびスポット83のみを認識し、このことは、E61およびV65が、59F1が結合するために要求されず、これに対して、E62、E63、F64、E66、G67、I68およびY69が抗体結合のために要求されることを示している。K70のまさにその寄与は解釈の問題である:図10Aに示されるペプチド44に対する強い抗体結合は、C末端位置におけるK70の非存在が抗体結合を妨げないことを明瞭に示している;しかしながら、図10Eに示されるその後の実験では、このペプチドにおける10位でのK70A置換は抗体結合を妨げた。これらの一見して逆の結果は、NI-301.59F1がアミノ酸配列62-EEFXEGIY-69(配列番号58;式中、Xはどのようなアミノ酸でも可能である)の特定の立体配座に結合することを示唆している。
抗体NI-301.35G11は、スポット68、スポット71、スポット72、スポット73、スポット74およびスポット75を認識し、このことは、G53が、35G11が結合するために要求されず、これに対して、E54、L55、G57およびL58が抗体結合のために要求されることを示している。35G11結合パターンはまた、E61またはE62の存在が抗体結合のために要求されることを示している。T59およびT60の正確な寄与をこの実験では明らかにすることができなかったが、これら2つのチロシンの一方の存在が抗体結合のために要求されることが仮定される。まとめると、アラニンスキャンでのNI-301.35G11結合プロフィールは、この抗体が配列54ELXGLTXE61(配列番号59、式中、Xはすべての既知アミノ酸を包含し得る)を認識することを示している(図10Fを参照のこと)。
抗体NI-301.37F1は、アラニンスキャン用メンブランにおけるスポット50、スポット52、スポット55、スポット56およびスポット58~スポット62に結合し、スポット51、スポット53、スポット54およびスポット57には全く結合しない。このことは、W41、P43、F44およびA45が抗体結合のために要求されることを示している。変異E42Gが抗体結合を乱すという以前の所見(図10C)と組み合わされると、これらの結果は、NI-301.37F1が配列41-WEPFA-45(配列番号60)に結合することを示している(図10Gを参照のこと)。
実施例10:表面プラズモン共鳴による抗体結合特性の決定
様々な可溶性TTR調製物に対する抗体結合特性を、Biorad Proteon XPR36装置を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって明らかにした(表Vを参照のこと)。
SPR分析を、GLMセンサーチップが装着されたBioRad ProteOn XPR36で行った。Fcガンマドメインに対する抗ヒト抗体を検出表面に共有結合させ、研究中の抗体により飽和させた。ネイティブな立体配座およびミスフォールドした立体配座での野生型TTRタンパク質および変異型TTRタンパク質を3.2nMから316nMにまで及ぶ濃度でHBS-T緩衝液において希釈した。抗体-抗原の会合を180秒の間分析し、解離を600秒の間分析した。ラングミュア結合モデル(単純な1:1の会合)を使用して、データを当てはめ、会合定数(ka)および解離定数(kd)ならびに親和性(KD)を導いた。
抗ヒトIgG-Fcγ抗体を検出表面に共有結合により被覆し、ヒトTTR特異的抗体を捕捉するために使用した。抗体を、ネイティブな野生型TTRおよびミスフォールド-凝集した野生型TTRならびにネイティブなV30MおよびL55PのTTR変異体を含めて、4つの異なるTTR調製物によりプローブ探査した(すべてをHBS-T緩衝液(10mM Hepes、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05% Tween20、pH7.4)において3.2nM~316nMの濃度で調製した)。ミスフォールド-凝集した野生型TTRを酢酸塩緩衝液(50mM酢酸塩HCl、100mM KCl、1mM EDTA、pH3.0)における65℃での80分間の酸性変性によって調製し、続いて、HBS-Tとの緩衝液交換を行った。59F1、35G11および37F1は、ラングミュアモデルが最もよく当てはまる線形の結合特性および解離特性を示した。
結果は、これら3つの抗体が、ミスフォールド-凝集した野生型TTR調節物と同様に、大きい親和性で溶液中のV30M-TTR変異体およびL55P-TTR変異体と結合することを示す。対照的に、これらの例示的抗体は溶液中のネイティブな野生型TTRと結合しない。
したがって、結果は、NI-301.37F1が、大きい親和性で、溶液中のミスフォールドしたヒト野生型TTRタンパク質に1.2nMのKDにより結合し、しかし、そのネイティブな立体配座での同じタンパク質には結合しないことを示す。類似する結合親和性(KD=1.4nM)が変異型TTR-L55Pタンパク質について測定された。
表V:表面プラズモン共鳴による抗体結合特性の決定
実施例11:キメラなヒト-マウス組換え抗TTR抗体による、ヒトVal30Met
TTR(これは組織TTR沈着を示す)についてのトランスジェニックマウスの受動免疫化は沈着の除去をもたらす
受動免疫化を、国際特許出願公開WO2010/030203(特に実施例3)に記載されるのと同様に行った(その開示内容は、それに引用される参考文献であるKohno他、Am.J.Pathol.(1997)、1497~1508、および、Sousa他、Am.J.Pathol.(2002)、1935~48の開示内容と同様に、参照によって本明細書中に組み込まれる)。
簡単に記載すると、モノクローナル抗体を7月齢および17月齢のFAPマウスに3mg/kgの用量で12週間にわたって毎週、腹腔内投与した(これらのFAPマウスはヒトVal30Met-TTR対立遺伝子について遺伝子組換えであり、マウスTTR遺伝子についてノックアウトされた;Kohno他(1997)、上掲)。最後の服用の5日後、動物を屠殺し、様々な組織を採取し、パラホルムアルデヒド溶液において固定処理し、パラフィンに包埋した。3μm~5μmの切片を、上記で記載される市販の抗TTR抗体を使用する免疫組織化学のために切断し、処理した。標準的な免疫蛍光手順を使用した。この手順は、実施例7において示される手順と非常に類似していたが、蛍光性二次抗体が検出のために使用されるという違いのみがあった。TTR沈着物が侵入する組織の表面を定量化し、総組織面積の百分率として表した。処置影響の統計学的分析を両側非対t検定により行った。
このトランスジェニックマウス系統は、TTR四量体の分解と、毒性かつ不溶性のアミロイド形成性立体配座体へのTTR単量体のミスフォールディングとに本質がある、TTRアミロイド疾患に共通する重要な病理学的機構を再現する。FAP患者のように、これらのトランスジェニックマウスは典型的には、月齢に依存するTTR沈着を示す。処置効力の評価を、処置開始時において7月齢および17月齢(すなわち、TTR沈着が相当になる月齢、および、多くの胃腸組織に侵入している月齢)であるトランスジェニックマウスの2つの群で調べた。顕著なことに、例示的抗体NI-301.37F1による受動免疫化には、TTR沈着が侵入する組織表面における統計学的に有意な低下が、処置が7月齢から開始されたときには伴っていた(図12Aを参照のこと)。処置は、年取ったマウスでは類似した影響を有しており、TTR沈着におけるほとんど有意な低下をもたらした(図12Bを参照のこと)。
実施例12:ヒト由来の組換え抗TTR抗体は病理学的TTR沈着物にインビボで結合する
ヒト由来の組換え抗TTR抗体が病理学的TTR沈着物にインビボで結合することができるかどうかを明らかにするために、7月齢の成体FAPマウスに抗体NI-301.37F1を30mg/kg(i.p.)で、または比較のためにPBSを注入した。48時間後、これらのマウスを経心腔的灌流に付し、組織を組織学的分析のために処理した。病理学的TTR沈着物を、ウサギポリクローナル抗TTR抗体を蛍光標識された抗ウサギIgG抗体との組合せで使用して検出し、これに対して、注入された抗体NI-301.37F1の局在化を蛍光標識された抗ヒトIgG抗体により検出した。具体的には、免疫沈殿を下記のように行った。
NI-301.37F1、および、マウス血漿サンプルからのアイソタイプコントロール抗体の免疫沈殿を、抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch、#709-005-098)が負荷されたプロテインA/G結合の磁石ビーズ(Pierce、#88803)を使用してRTで2時間行った。PBS-Tによる3回の洗浄の後、サンプルを0.2Mグリシン緩衝液(pH2.5)により磁石ビーズから溶出し、1M TrisHCl(pH8.0)により中和し、LDS負荷緩衝液(Life technologies、#NP0007)と混合し、90℃で10分間加熱した。その後、サンプルを4~12%のbis-trisゲル(Life technologies、#WG1403A)に負荷し、MOPS泳動緩衝液において200Vで40分間泳動した。ニトロセルロースメンブランへのタンパク質転写の後、TTRタンパク質を、立体配座非依存的TTR抗体(Dako、#A0002、150ng/ml)または抗体NI-301.37F1(20nM)のいずれかをHRP結合プロテインA(Life technologies、#10-1023、1/10000の希釈)および発光画像化との組合せで使用して検出した。
図13において記載されるようなインビボ標的関与を、30mg/kg(i.p.)での抗体NI-301.37F1またはPBSの単回注入を受けた成体FAPマウス(7月齢)において行った。48時間後、マウスをPBSにより灌流し、臓器を組織学的分析のために採取し、処理した。病理学的TTR沈着物を、市販のウサギポリクローナル抗TTR抗体(Dako、#A0002、4.8μg/ml)をCy5コンジュゲート化抗ウサギ抗体(Jackson Immunoresearch、#711-175-152、1/200の希釈)との組合せで使用して免疫蛍光によって検出した。NI-301.37F1の存在(または非存在)を、Cy3コンジュゲート化抗ヒト抗体(Jackson Immunoresearch、#709-165-149、1/200の希釈)を使用して同時に検出した。同じ走査パラメーターを、NI-301.37F1注入組織およびPBS注入組織を画像化するために使用し、画像は、同じ表示調節を受けた。
図13に示されるように、NI-301.37F1に依存する染色が、予想されたように、NI-301.37F1注入マウスにおけるTTR染色と非常に共局在化し、しかし、PBS注入マウスでは完全に存在していなかった。この結果は、抗TTR抗体NI-301.37F1が病理学的TTR沈着物にインビボで結合しつつあることを示している。
実施例13:ミスフォールドしたTTRタンパク質沈着物のインビボでの検出は組織生検物を必要としない
凝集したTTR、変異したTTRおよび/またはミスフォールドしたTTRに伴うTTRアミロイド疾患の診断プロセスにおいて組織生検および組織学的分析に取って代わるこの診断手順が本明細書中下記において例証され、図14に例示される。具体的には、実験を、上記で記載されるように7月齢のFAPマウスを用いて行った(実施例11(上掲)を参照のこと)。これらのマウスはFAPの中核的な病態生理学的機構を再現し、そして、患者のように、月齢に依存するTTR沈着を様々な組織において示す。2匹のFAPマウスが、3mg/kgの用量でのヒト由来の組換え抗TTRモノクローナル抗体NI-301.37F1の単回腹腔内注射を受けた。抗体注入前(t=0)および注入後2日(t=48h)において、少量の血液サンプルを採取し、血漿を分析のために調製した。血漿サンプルを(注入されたヒト抗TTR抗体を回収するために)抗ヒトIgG抗体との免疫沈殿に付した(t=0のサンプルを陰性コントロールとして使用した)。その後、免疫沈殿サンプルを、マウスに注入された抗TTR抗体が、インビボにおいて循環する場合の48時間の間にいくらかのミスフォールドしたTTRタンパク質を捕捉したかどうかを検出するためにウエスタンブロットによって処理した。ウエスタンブロットを、立体配座特異的な抗TTR抗体および立体配座非依存的な抗TTR抗体の両方を使用して行った。コントロール実験を、(TTRタンパク質と結合することができない)アイソタイプコントロール抗体を陰性コントロールとして用いて行った。さらなるコントロールが、処置されなかったFAPマウスからの血漿サンプルを抗体NI-301.37F1とインキュベーションし、上記で記載されるように処理することにあった。
図14に示される結果は、抗体NI-301.37F1がインビボでの48時間のインキュベーション期間の間にいくらかのミスフォールドしたTTRタンパク質を捕捉したことを示している。このことが抗体NI-301.37F1については特異的に認められ、アイソタイプコントロール抗体については認められなかった。さらには、抗体NI-301.37F1によって捕捉されるミスフォールドしたTTRタンパク質は、非処置マウスから採取された血漿サンプルには存在していなかった。まとめると、これらの結果は、抗体NI-301.37F1は、ミスフォールドしたTTRタンパク質を不溶性のTTR沈着物からインビボで除くことができたこと、したがって、不溶性TTR沈着物の存在が、組織生検物を必要とすることなく検出され得るであろうことを示している。この診断試験をヒトにおいて使用するための1つの技術的調節が、ヒト血漿サンプルからのその回収を可能にする抗TTR抗体を、例えば、ビオチンタグまたはヒスチジンタグまたはストレプトアビジンタグにより標識することにあるであろう。代替において、非修飾の抗TTR抗体が、抗イディオタイプ抗体によってヒト血漿サンプルから回収され得るであろう。
表IV:TTR遺伝子における変異
略号凡例:
AN=自律神経障害;CTS=手根管症候群;E=眼;H=心臓;K=腎臓;L=肝臓;LM=軟膜;N=神経障害;PN=多発性神経障害;CNS=中枢神経系