第1の発明の乾燥機は、乾燥対象物を収容する槽と、乾燥対象物を槽内に出し入れするために開かれる扉体と、槽に収容された乾燥対象物に含有される水分を加熱して乾燥対象物を乾燥するために槽内に電磁波を照射する照射部と、少なくとも扉体及び槽から構成され、照射部から照射された電磁波の漏洩を抑制するための電磁波シールドと、電磁波シールドの外側に設けられ、漏洩電磁波の強度を検知する検知部と、を備える。この態様によると、電磁波シールドの外側の漏洩電磁波の強度をより精確に検出することができるので、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御することができる。
第2の発明の乾燥機は、乾燥対象物を収容する槽と、乾燥対象物を槽内に出し入れするために開かれる扉体と、槽に収容された乾燥対象物に含有される水分を加熱して乾燥対象物を乾燥するために槽内に電磁波を照射する照射部と、槽及び扉体の内側に設けられ、槽内の電磁波の強度を検知する検知部と、を備える。この態様によると、槽内の電磁波の強度をより精確に検出することができるので、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御することができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、照射部は、2.45GHz帯又は915MHz帯の周波数の電磁波を槽内に照射し、検知部は、2.45GHz帯又は915MHz帯の周波数の電磁波の強度を検知するように構成されたものである。この態様によると、マイクロ波加熱装置が利用可能な周波数帯のマイクロ波を利用して、電磁波シールドの外側又は槽内の電磁波の強度を精確に検出することができる。
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、照射部を制御する制御部を更に備え、制御部は、検知部により検知された電磁波の強度を取得する強度取得部と、強度取得部により取得された電磁波の強度に応じて、照射部の出力を調整する出力調整部と、を備えるように構成されたものである。この態様によると、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御し、スパークの発生を抑えることができる。
第5の発明は、第4の発明において、出力調整部は、強度取得部により取得された電磁波の強度が所定値を超えた場合に、照射部の出力を下げるように構成されたものである。この態様によると、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御し、スパークの発生を抑えることができる。
第6の発明は、第4又は第5の発明において、照射部は、槽内に照射する電磁波の周波数を変更可能であり、制御部は、乾燥対象物の乾燥中に照射部が槽内に照射する電磁波の周波数を変更する周波数変更部を更に備え、強度取得部は、乾燥対象物の乾燥中に、異なる複数の周波数の電磁波のそれぞれの強度を検知部から取得し、出力調整部は、強度取得部により取得された異なる複数の周波数の電磁波のそれぞれの強度に応じて、照射部の出力を調整するように構成されたものである。この態様によると、電磁波シールドの外側又は槽内の電磁波の強度をより精確に検出することができるので、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御し、スパークの発生を抑えることができる。
第7の発明は、第4又は第5の発明において、異なる複数の周波数の電磁波を槽内に照射する第2の照射部を更に備え、制御部は、乾燥対象物の乾燥中に第2の照射部が槽内に照射する電磁波の周波数を変更する周波数変更部を更に備え、強度取得部は、乾燥対象物の乾燥中に、異なる複数の周波数の電磁波のそれぞれの強度を検知部から取得し、出力調整部は、強度取得部により取得された異なる複数の周波数の電磁波のそれぞれの強度に応じて、照射部の出力を調整するように構成されたものである。この態様によると、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御し、スパークの発生を抑えることができる。
第8の発明は、第7の発明において、第2の照射部は、照射部が槽内に照射する電磁波とは異なる周波数の電磁波を槽内に照射するように構成されたものである。この態様によると、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御し、スパークの発生を抑えることができる。
第9の発明は、第7又は第8の発明において、第2の照射部は、照射部よりも低い強度の電磁波を槽内に照射するように構成されたものである。この態様によると、低出力の照射部を利用可能であるので、乾燥機の製造コストを低減させることができる。
第10の発明は、第6から第9のいずれかの発明において、出力調整部は、異なる複数の周波数の電磁波のそれぞれの強度の平均値が所定値を超えた場合に、照射部の出力を低くするように構成されたものである。この態様によると、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御し、スパークの発生を抑えることができる。
第11の発明は、第4から第10のいずれかの発明において、制御部は、槽内に照射された電磁波の強度と、検知部により検知された電磁波の強度との比に基づいて、乾燥対象物に含有される水分の量を推定する水分量推定部を更に備えるように構成されたものである。この態様によると、乾燥対象物に含有される水分の量をより精確に推定することができる。
第12の発明は、第11の発明において、出力調整部は、水分量推定部により推定された水分の量が所定値を下回った場合に、照射部の出力を下げるように構成されたものである。この態様によると、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御し、スパークの発生を抑えることができる。また、水分の量が乾燥完了とされる所定値まで少なくなったときに、照射部の出力を停止し、制御部は、乾燥工程を終了させることができる。
第13の発明は、第1から第12のいずれかの発明において、槽は、洗濯物を収容し、収容された洗濯物を洗浄水で洗濯可能に設けられ、照射部は、槽に収容された洗濯物を洗濯する際には、洗浄水を加熱するために槽内に電磁波を照射し、槽に収容された乾燥対象物を乾燥する際には、乾燥対象物に含有される水分を加熱するために槽内に電磁波を照射するように構成されたものである。この態様によると、洗濯及び乾燥の効率及び効果を向上させることができる。
第14の発明は、第13の発明において、照射部から槽内に電磁波を照射して槽に収容された洗濯物又は乾燥対象物に含有される水分を加熱することにより洗濯物又は乾燥対象物を加熱殺菌する機能を有するように構成されたものである。この態様によると、乾燥機の付加価値を向上させることができる。
第15の発明の制御装置は、槽に収容された乾燥対象物に含有される水分を加熱して乾燥対象物を乾燥するために槽内に電磁波が照射されたときに、槽から漏洩した電磁波の強度、又は槽内の電磁波の強度を取得する強度取得部と、強度取得部により取得された電磁波の強度に応じて、槽内に電磁波を照射する照射部の出力を調整する出力調整部と、を備える。この態様によると、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御し、スパークの発生を抑えることができる。また、水分の量が乾燥完了とされる所定値まで少なくなったときに、照射部の出力を停止し、乾燥工程を終了させることができる。
第16の発明の制御プログラムは、コンピュータを、槽に収容された乾燥対象物に含有される水分を加熱して乾燥対象物を乾燥するために槽内に電磁波が照射されたときに、槽から漏洩した電磁波の強度、又は槽内の電磁波の強度を取得する強度取得部、強度取得部により取得された電磁波の強度に応じて、槽内に電磁波を照射する照射部の出力を調整する出力調整部、として機能させる。この態様によると、槽の内部の電磁波の強度をより的確に制御し、スパークの発生を抑えることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、複数の実施の形態に記載された内容において、可能な範囲で組み合わされることは問題ない。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る洗濯乾燥機の構成を概略的に示す縦断面図である。本実施の形態の洗濯乾燥機50は、衣類などの洗濯物を洗濯して乾燥する機能を有しており、洗濯機能のみを実行する洗濯機としても、乾燥機能のみを実行する乾燥機としても、洗濯機能と乾燥機能を実行する洗濯乾燥機としても機能する。
図1に示されるように、洗濯乾燥機50は、洗浄水が溜められる有底円筒形状に形成された水槽3を備えている。水槽3は、その下方に設けられたダンパ4によって筐体2(本体)内に揺動自在に支持されている。衣類などの洗濯物(乾燥機能に言及するときは「乾燥対象物」ともいう)が収容される回転槽1が、水槽3内に回転自在に設けられている。この回転槽1は、有底円筒形状に形成されている。回転槽1は、その回転軸を水平に対して前上がりに傾斜させて設けられている。
水槽3の背面には、駆動モータ6が取り付けられている。この駆動モータ6は、回転槽1を回転軸まわりに正方向及び逆方向に回転させる。洗濯乾燥機50は、駆動モータ6の駆動による回転槽1の回転によって、回転槽1内に収容された洗濯物に対し、撹拌たたき洗浄、すすぎ、及び乾燥を行なう。
筐体2の前部には、回転槽1及び水槽3の開口端側に対向させて扉体5が設けられている。使用者は、扉体5を開くことによって回転槽1に対して洗濯物(衣類)を出し入れすることができる。
また、水槽3の前部開口部の縁部には全周にわたって、弾性を有するシール部材が備えられている。使用者が扉体5を閉じると、シール部材が扉体5によって押圧され、弾性変形することによって、水槽3の機外に対する水密性及び気密性が確保される。
給水管13が水槽3の上部に接続されている。給水弁12が給水管13の途中に設けられている。給水弁12は、給水管13を経由して水槽3内に水を供給する。また、排水管11が水槽3の最下部に接続されている。排水弁10が排水管11の途中に設けられている。排水弁10は、水槽3内の水を排水管11を経由して機外に排出する。
水槽3の下方には、ダンパ4が設けられている。ダンパ4は、水槽3を支えるとともに、脱水時等に、回転槽1内の衣類の偏りなどに起因して発生する水槽3の振動を減衰させる。このダンパ4には、布量検知部(図示せず)が取り付けられている。布量検知部は、回転槽1内の衣類などによる重量変化によって、ダンパ4の軸が上下に変位する変位量を検知する。洗濯乾燥機は、この布量検知部によって検知された変位量に基づいて、回転槽1内の衣類の量を検知する。
また、洗濯乾燥機50は、水槽3及び回転槽1内の空気を循環させる循環風路7と、回転槽1内の衣類の水分を加熱するマイクロ波加熱装置30とを備えている。乾燥対象物を加熱する加熱部を構成するマイクロ波加熱装置30は、水槽3内に設けられたマイクロ波照射口32から電磁波の一種であるマイクロ波を回転槽1内に照射し、回転槽1内の衣類の水分を加熱する。
循環風路7は、乾燥工程において衣類を乾燥させるための空気循環風路として構成されている。空気循環風路には、水槽3及び回転槽1が含まれる。循環風路7は、水槽3の上部側面に設けられた吹出口8(乾燥用空気吹出口)と水槽3の後部側面に設けられた排出口9(乾燥用空気排出口)と水槽3とに接続させて設けられている。
送風ファン16が、送風装置として、循環風路7内に設けられている。送風ファン16は、水槽3及び回転槽1内の乾燥用空気を循環風路7内に循環させる。
循環風路7には、吸気風路14と排気風路15とが、それぞれ接続されている。吸気風路14は、筐体2内の空気を循環風路7内に取り込むものである。排気風路15は、循環風路7内の空気を循環風路7外に排出するものである。吸気風路14及び排気風路15の循環風路7に接続されていない側の端部は、それぞれ循環風路7外に解放されている。排気風路15は、吸気風路14より乾燥用空気の流れの上流側に設けられている。また、排気風路15を設けずに、排水管11を通して、空気を循環風路7外に排出してもよい。
循環風路7には、乾燥用空気を加熱するヒータ17が組み込まれている。このヒータ17は、吸気風路14より下流側で、水槽3の吹出口より手前に設けられている。このヒータ17もマイクロ波加熱装置30と同様に乾燥対象物を加熱する加熱部を構成し、マイクロ波加熱装置30と同時に、又はマイクロ波加熱装置30に代えて通電される。なお、加熱部により乾燥対象物を加熱する方法としては、マイクロ波により直接加熱する方法、ヒータなどにより循環する空気を加熱したり、回転槽1の内壁を加熱したりして間接的に加熱する方法などがあり、特に限定するものではない。
本実施の形態の洗濯乾燥機50は、マイクロ波加熱装置30からマイクロ波照射口32を介して回転槽1内に照射されるマイクロ波により乾燥対象物を乾燥するが、乾燥対象物の衣類などにボタンやファスナーなどの金属がついていてスパークが発生する可能性が高い場合には、マイクロ波加熱装置30から回転槽1内に照射するマイクロ波の出力を低減させ、又は停止して、ヒータ17による乾燥に切り替える。
本実施の形態の洗濯乾燥機50では、回転槽1内にマイクロ波が照射されるので、洗濯乾燥機50の外部に漏洩する電磁波の強度が、使用される地域において定められた基準値以下になるように構成する必要がある。そのため、本実施形態の洗濯乾燥機50は、マイクロ波照射口32から照射された電磁波の漏洩を抑制するための電磁波シールドを備える。電磁波シールドは、少なくとも扉体5及び回転槽1から構成される。例えば、電磁波シールドは、マイクロ波を反射又は吸収することが可能な金属などの電磁波遮蔽材料を含む材料で形成された扉体5及び回転槽1と、扉体5と回転槽1との間隙から漏洩する電磁波を遮蔽又は減衰させるために扉体5と回転槽1との接点に形成されたチョーク構造により構成されてもよい。チョーク構造としては、電子レンジなどの技術分野において知られている任意のチョーク構造を採用可能である。水槽3又は筐体2の一部或いは全部が、電磁波遮蔽材料を含む材料で形成されてもよい。
漏洩電磁波に関する規格として、例えば、周波数が2.45GHz帯の電磁波(マイクロ波)によって食品の加熱を行う定格高周波出力2kW以下の電子レンジ及びそれに付加装置をもつ電子レンジについて規定した日本工業規格「JIS C9250」がある。同規格の5.8には、「同規格の8.2.12に規定される漏れ電波の電力密度試験により測定された漏れ電波の電力密度が、(1)扉を閉めているときは、1mW/cm2以下であること、(2)発振管の発振停止装置が動作する直前の最大の位置まで扉を開いて固定したときは、5mW/cm2以下であること、(3)主たる発振停止装置以外の発振停止装置を拘束した状態で5mW/cm2以下であること」と規定されている。また、電気用品安全法第八条第一項に規定された、経済産業省令で定める技術上の基準を定める「電気用品の技術上の基準を定める省令」の解釈についての通達の別表第八の2(95)ト項にも、ほぼ同様の内容が規定されている。洗濯乾燥機についても、電子レンジと同様の基準が妥当すると考えられる。
また、各国の専門家による科学的根拠に基づいて作成された国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインを人体防護の暴露限度値として採用することがWHO(世界保健機関)により推奨されている。このガイドラインでは、曝露制限値が0.08W/kg(1mW/cm2)と規定されている。国際電気標準会議(IEC)により制定された国際規格「IEC62233」及びそれに基づいて制定された日本工業規格「JIS 1912」には、家庭用電気機器及び類似機器からの人体ばく露に関する電磁界の測定方法が規定されている。同規格に規定された測定方法において、電磁界を検知するセンサの信号に対して重みづけを行うことにより、曝露制限値に対する割合として電磁界が測定され、ICNIRPのガイドラインに規定された曝露制限値を超えていなければ、ICNIRPのガイドラインに適合すると判定される。電磁波シールドは、これらの規格に準拠するように構成される。
次に乾燥空気の流れについて説明する。送風ファン16が駆動されると、回転槽1内で洗濯物から奪われた水分によって多湿状態となった乾燥用空気は、水槽3の側面下部に設けられた排出口9を通って、循環風路7又は排気風路15に流入する。排気風路15を設けない場合は、循環風路7又は排水管11に流入する。排気風路15に流入した空気は、循環風路7外に排気される。一方、循環風路7に流入した空気は、送風ファン16によってヒータ17に向けて送られ、ヒータ17が動作している場合は、ヒータ17によって加熱される。
吸気風路14は、送風ファン16の吸気側の循環風路7に連通するように設けられている。吸気風路14は、また、ヒータ17より上流側の循環風路7に連通するように設けられている。したがって、吸気風路14から吸気された循環風路7外の空気は、循環風路7側へ流れた乾燥用空気と混合された後、ヒータ17を通過する。この際に、ヒータが動作している場合、混合された空気は、ヒータ17によって加熱される。また、循環風路7外の空気が乾燥用空気に混合されることにより、混合前と比較して混合後の乾燥用空気の湿度は低くなる。
ヒータ17を通過した空気は、吹出口8を通過して、再び回転槽1内に吹き出される。なお、洗濯機能を有しない衣類乾燥機においては、洗浄水を溜める水槽3や給水弁12、給水管13及び排水弁10は備えられていない。そして、回転する回転槽1と循環風路7との接続は、フェルトなどのシール部材に回転槽1が摺動するように構成されている。
流入温度検知部18が、循環風路7内の吹出口8近傍又はヒータ17近傍に設けられている。流入温度検知部18は、回転槽1に流入する乾燥用空気の温度を検知する。流入温度検知部18は、例えばサーミスタ等によって構成される。
制御装置20が筐体2内に備えられている。制御装置20は、送風ファン16及びマイクロ波加熱装置30等を制御する。制御装置20は、また、駆動モータ6、給水弁12、排水弁10等を制御し、洗浄、すすぎ、乾燥の各工程を逐次実行する。
図2は、実施の形態1に係るマイクロ波加熱装置30の構成を示す。マイクロ波加熱装置30は、マイクロ波照射部31と、導波管34と、マイクロ波照射口32と、マイクロ波制御装置40と、反射部33と、マイクロ波検知部36とを有している。マイクロ波照射部31は、マイクロ波を照射する。導波管34は、照射されたマイクロ波を回転槽1内へ導く。マイクロ波照射口32は、導波管34の先端で水槽3内に設けられる。マイクロ波制御装置40は、マイクロ波照射部31から照射するマイクロ波の出力を調整する。反射部33は、マイクロ波照射部31とマイクロ波照射口32の間に設けられ、回転槽1から反射されたマイクロ波の一部又は全部を反射して回転槽1内に照射する。マイクロ波検知部36は、電磁波シールドの外側に設けられ、電磁波シールドの外側に漏洩したマイクロ波の強度を検知する。
マイクロ波照射部31は、マグネトロンなどのマイクロ波発振器であり、マイクロ波加熱装置が使用可能な2.45GHz帯の周波数の電磁波を発振する。なお、ISM(Industry Science Medical)バンドとして割り当てられた2.45GHz帯に限られるものではなく、同様に割り当てられた915MHz帯などの周波数の電磁波でもよい。マイクロ波制御装置40により任意の出力に調整されたマイクロ波がマイクロ波照射部31から照射される。照射されたマイクロ波は、導波管34及びマイクロ波照射口32を通じて、回転する回転槽1内に照射され、衣類などの乾燥対象物に含有される水分を加熱する。この際に、送風ファン16から回転槽1内の衣類に乾燥用空気を送風することにより、乾燥対象物から蒸発した水分は、乾燥用空気とともに、排出口9から排気風路15を通じて水槽3外へ排出される。もしくは排水管11を通じて水槽3外へ排出される。これにより、衣類の乾燥が促進される。
回転槽1内に照射されたマイクロ波のうち、乾燥対象物に含有される水分により吸収されなかったマイクロ波の一部は、反射波として、回転槽1からマイクロ波照射口32を通じてマイクロ波照射部31に戻る。マイクロ波照射部31に戻ったマイクロ波は、熱に変換され排熱として処理される。
マイクロ波検知部36は、マイクロ波照射部31が照射する2.45GHz帯の周波数のマイクロ波を検知可能であり、電磁波シールドの外側に漏洩したマイクロ波の強度を検知する。後述するように、回転槽1内に照射された電磁波の強度と、電磁波シールドの外側に漏洩した電磁波の強度との比に基づいて、乾燥対象物に含有される水分の量を推定する場合には、回転槽1内に照射されるマイクロ波の強度も検知される。
反射部33は、回転槽1から反射されてマイクロ波照射部31に戻る方向へ進む反射波の一部又は全部を反射して、マイクロ波照射部31から照射されたマイクロ波と共に、再度、回転槽1内へ入射させる。これにより、エネルギーロスを低減し、乾燥時間を短縮することができる。
図3は、実施の形態1に係るマイクロ波制御装置40の構成を示す。マイクロ波制御装置40は、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、集積回路などのハードウェアにより実現される。
マイクロ波制御装置40は、強度取得部41、出力調整部42、及び水分量推定部43を備える。これらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどにより実現され、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、又はハードウエアとソフトウエアの組合せなど、いろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
マイクロ波制御装置40は、制御装置20により制御される洗浄工程、すすぎ工程、又は乾燥工程において、制御装置20からの指示にしたがってマイクロ波照射部31を制御する。マイクロ波制御装置40は、洗浄工程において洗浄水を加熱したり、すすぎ工程においてすすぎ水を加熱したり、乾燥工程において乾燥対象物に含有される水分を加熱したり、洗濯物又は乾燥対象物に付着している菌を加熱殺菌したりするために、マイクロ波照射部31から回転槽1内へマイクロ波を照射させる。なお、洗浄水又はすすぎ水を加熱するときには、これらが溜められる水槽3内にマイクロ波を照射させてもよい。
強度取得部41は、マイクロ波検知部36により検知されたマイクロ波の強度を取得する。出力調整部42は、強度取得部41により取得された漏洩電磁波の強度に応じて、マイクロ波照射部31の出力を調整する。具体的には、出力調整部42は、強度取得部41により取得された漏洩電磁波の強度が所定値を超えた場合に、マイクロ波照射部31の出力を下げる。これにより、回転槽1内における電界強度の上昇を的確に検知してマイクロ波照射部31の出力を下げることができるので、回転槽1内の乾燥対象物に含まれる金属などによるスパークの発生を抑制することができる。マイクロ波検知部36は電磁波シールドの外側に設けられていれば設置位置はとくに限定しない。例えば、洗濯乾燥機50内に設けてもよいし、洗濯乾燥機50とは別体に設けてもよい。洗濯乾燥機50とは別体に設ける場合、例えば、携帯端末や別体の測定装置を利用してもよい。マイクロ波検知部36とマイクロ波制御装置40とは有線信号又は無線信号で接続される。
水分量推定部43は、漏洩電磁波の強度に基づいて、又は、回転槽1内に照射された入射波の強度と漏洩電磁波の強度との比に基づいて、乾燥対象物に含有される水分の量を推定する。例えば、入射波及び漏洩電磁波の強度の比に基づく場合、水分量推定部43は、入射波の強度を検知する図示しないマイクロ波検知部及び漏洩電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36から強度取得部41により取得された入射波の強度と漏洩電磁波の強度との比を変数とする数式や、強度比と水分量の対応関係を示すテーブル又はグラフなどを使用して、入射波と漏洩電磁波の強度比から残存している水分量を推定する。入射波と漏洩電磁波の強度比から水分量を推定するための数式、テーブル、又はグラフは、マイクロ波制御装置40に備えられた記憶装置に予め格納される。
出力調整部42は、水分量推定部43により推定された水分の量が所定値を下回った場合に、マイクロ波照射部31の出力を下げてもよい。回転槽1内の乾燥対象物に含有される水分の量が少なくなると、水分により吸収されるマイクロ波の量が減少するので、同じ強度のマイクロ波を回転槽1内に照射し続けると回転槽1内の電界強度が高くなってスパークが生じやすくなる。このようなときであっても、回転槽1内に照射するマイクロ波の出力を下げることにより、スパークが生じる可能性を低減させることができる。水分の量は、強度取得部41により取得された漏洩電磁波の強度に基づいて算出されるので、この場合も、出力調整部42は、強度取得部41により取得された漏洩電磁波の強度に応じてマイクロ波照射部31の出力を調整していることになる。
図4は、マイクロ波検知部36により検知された漏洩電磁波の強度と含水量の例を示す。照射するマイクロ波の出力は一定としている。含水量は、例えば、回転槽1に設けられたロードセルなどにより測定された乾燥対象物の重量から求めることが可能である。乾燥対象物の含水量が減少するにつれて、回転槽1内に照射されたマイクロ波を吸収する水分が減少する。これにより、回転槽1内の電界強度が上昇するとともに、漏洩電磁波の強度も上昇する。回転槽1内の電界強度が上昇すると、回転槽1内に存在する金属によりスパークが発生する可能性も上昇するので、出力調整部42は、回転槽1内の電界強度がスパークを生じるほど高くなる前に、回転槽1内に照射するマイクロ波の出力を下げる。これにより、乾燥の効率を維持しつつ、スパークの発生を抑制することができる。なお、水分量推定部43は、乾燥対象物の乾燥の度合いを算出し、出力調整部42は、この度合いに基づいてマイクロ波の出力を調整してもよい。
図5は、乾燥対象物と乾燥時間において、出力調整部42によるマイクロ波照射部31の出力の調整の例を示す。乾燥工程が開始されてから、乾燥対象物に比較的多くの水分が含有されている間は、回転槽1に照射された電磁波の多くが水分に吸収されて加熱に寄与するので、回転槽1内の電界強度は過度に高くならず、漏洩電磁波の強度も低い。このときは、乾燥対象物に金属のボタンやファスナーなどがついていたとしても、スパークが発生する可能性は低いので、任意の出力の電磁波がマイクロ波照射部31から照射されてもよい。マイクロ波照射部31の出力は、乾燥対象物に含有されると推定される水分量、回転槽1に設けられたロードセルなどにより測定された乾燥対象物の重量、使用者により設定された乾燥時間、室温、湿度などに応じて決定されてもよい。
水分量推定部43により推定された水分の量が所定値を下回った場合、出力調整部42は、マイクロ波照射部31の出力を下げる。出力調整部42は、図5に示すように、複数の閾値を用いて段階的にマイクロ波照射部31の出力を下げてもよい。また、出力調整部42は、水分量が少なくなるにつれて連続的にマイクロ波照射部31の出力を下げてもよい。
出力調整部42が漏洩電磁波の強度に応じてマイクロ波照射部31の出力を調整する場合も、同様に、漏洩電磁波の強度が所定値を上回った場合にマイクロ波照射部31の出力を下げてもよいし、複数の閾値を用いて段階的にマイクロ波照射部31の出力を下げてもよいし、漏洩電磁波の強度が上昇するにつれて連続的にマイクロ波照射部31の出力を下げてもよい。逆に、漏洩電磁波の強度が減少したときには、出力調整部42は、マイクロ波照射部31の出力を上げることにより乾燥効率を向上させてもよい。
水分量推定部43により推定された水分量は、制御装置20が洗濯乾燥機50の運転を制御するために使用されてもよい。例えば、制御装置20は、水分量が乾燥完了とされる所定値まで少なくなったときに、マイクロ波照射部31の出力を停止し、乾燥工程を終了させてもよい。乾燥工程を終了させるか否かを判定するための水分量の閾値は、乾燥対象物の種類に応じて定められてもよいし、使用者による設定を受け付けてもよい。例えば、含有される水分の量を比較的多めに残して、しっとりとした肌触りに仕上げたい乾燥対象物は、閾値を高めに設定し、乾燥対象物に含有される水分の量が比較的多い状態で乾燥を終了させてもよい。また、例えば、制御装置20は、マイクロ波照射部31の出力を停止してから、送風運転を実行するなどしたのち、乾燥工程を終了させてもよい。
このように、漏洩電磁波の強度から推定される回転槽1内の電界強度や、入射波と漏洩電磁波の強度比から推定される回転槽1内の含水量に応じて、マイクロ波照射部31の出力を調整することにより、回転槽1内の電界強度が過度に高くなるのを防ぎ、スパークの発生を抑えることができる。また、乾燥工程の全域において、乾燥対象物に付いている金属からのスパークを適切に抑えつつ、マイクロ波により乾燥対象物に含有された水分を直接加熱することを可能にするので、乾燥効率を向上させ、乾燥時間を短縮することができる。そして、水分量が乾燥完了とされる所定値まで少なくなったときに、マイクロ波照射部31の出力を停止し、乾燥工程を終了させることができる。
図6は、入射波、反射波、及び漏洩電磁波の強度の関係を示す。回転槽1内に入射されるマイクロ波の強度を100%とすると、回転槽1から反射されてマイクロ波照射部31に戻る反射波の強度は17%程度であり、電磁波シールドの外側に漏洩する電磁波の強度は0.0001%程度である。このように、マイクロ波検知部36により検知される漏洩電磁波の強度は、入射波の強度に比べて相当微弱であるから、マイクロ波検知部36に減衰器などの構成を付加する必要がない。これにより、洗濯乾燥機50の構成を簡略化することができるので、洗濯乾燥機50の製造コスト及びサイズを抑えることができる。また、電磁波シールドの外側には定在波が発生しにくいので、より精確に回転槽1内の電磁波の強度を推定することができる。
[実施の形態2]
図7は、実施の形態2に係る洗濯乾燥機50の構成を示す。実施の形態2に係る洗濯乾燥機50は、回転槽1及び扉体5の内側に設けられ、回転槽1内の電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36を備える。マイクロ波検知部36は、回転槽1の回転動作と関係なく固定された位置が望ましいが、それに限定しない。その他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。実施の形態1と異なる点について主に説明する。
実施の形態2に係るマイクロ波制御装置40の構成は、図3に示した実施の形態1に係るマイクロ波制御装置40の構成と同様である。強度取得部41は、マイクロ波検知部36により検知された回転槽1内のマイクロ波の強度を取得する。出力調整部42は、強度取得部41により取得された回転槽1内のマイクロ波の強度に応じて、マイクロ波照射部31の出力を調整する。具体的には、出力調整部42は、強度取得部41により取得された回転槽1内のマイクロ波の強度が所定値を超えた場合に、マイクロ波照射部31の出力を下げる。これにより、回転槽1内における電界強度の上昇を的確に検知してマイクロ波照射部31の出力を下げることができるので、回転槽1内の乾燥対象物に含まれる金属などによるスパークの発生を抑制することができる。
水分量推定部43は、回転槽1内の電磁波の強度に基づいて、乾燥対象物に含有される水分の量を推定する。例えば、水分量推定部43は、マイクロ波検知部36から強度取得部41により取得された回転槽1内の電磁波の強度を変数とする数式や、強度と水分量の対応関係を示すテーブル又はグラフなどを使用して、回転槽1内の電磁波の強度から残存している水分量を推定する。回転槽1内の電磁波の強度から水分量を推定するための数式、テーブル、又はグラフは、マイクロ波制御装置40に備えられた記憶装置に予め格納される。
出力調整部42は、水分量推定部43により推定された水分の量が所定値を下回った場合に、マイクロ波照射部31の出力を下げてもよい。回転槽1内の乾燥対象物に含有される水分の量が少なくなると、水分により吸収されるマイクロ波の量が減少するので、同じ強度のマイクロ波を回転槽1内に照射し続けると回転槽1内の電界強度が高くなってスパークが生じやすくなる。このようなときであっても、回転槽1内に照射するマイクロ波の出力を下げることにより、スパークが生じる可能性を低減させることができる。水分の量は、強度取得部41により取得された回転槽1内の電磁波の強度に基づいて算出されるので、この場合も、出力調整部42は、強度取得部41により取得された回転槽1内の電磁波の強度に応じてマイクロ波照射部31の出力を調整していることになる。
図8は、マイクロ波検知部36により検知された回転槽1内の電磁波の強度と含水量の例を示す。照射するマイクロ波の出力は一定としている。乾燥対象物の含水量が減少するにつれて、回転槽1内に照射されたマイクロ波を吸収する水分が減少するので、回転槽1内の電磁波の強度が上昇する。回転槽1内の電磁波の強度が上昇すると、回転槽1内に存在する金属によりスパークが発生する可能性も上昇するので、出力調整部42は、回転槽1内の電界強度がスパークを生じるほど高くなる前に、回転槽1内に照射するマイクロ波の出力を下げる。これにより、乾燥の効率を維持しつつ、スパークの発生を抑制することができる。
出力調整部42は、実施の形態1と同様に、複数の閾値を用いて段階的にマイクロ波照射部31の出力を下げてもよいし、水分量が少なくなって回転槽1内の電磁波の強度が上昇するにつれて連続的にマイクロ波照射部31の出力を下げてもよい。
このように、回転槽1内の電磁波の強度や、回転槽1内の電磁波の強度から推定される回転槽1内の含水量に応じて、マイクロ波照射部31の出力を調整することにより、回転槽1内の電界強度が過度に高くなるのを防ぎ、スパークの発生を抑えることができる。また、乾燥工程の全域において、乾燥対象物に付いている金属からのスパークを適切に抑えつつ、マイクロ波により乾燥対象物に含有された水分を直接加熱することを可能にするので、乾燥効率を向上させ、乾燥時間を短縮することができる。そして、水分量が乾燥完了とされる所定値まで少なくなったときに、マイクロ波照射部31の出力を停止し、乾燥工程を終了させることができる。
実施の形態2においては、回転槽1内の電磁波の強度を直接検知してマイクロ波の出力を調整するので、より的確に回転槽1内の電界強度を調整し、スパークの発生を抑えることができる。回転槽1内の複数の位置にマイクロ波検知部36を設け、回転槽1内の複数の位置における電磁波の強度を検知してもよい。これにより、回転槽1内に定在波が発生している状況においても、回転槽1内の電磁波の強度を的確に把握してマイクロ波照射部31の出力を調整することができる。また、回転槽1内の電磁波の強度分布から水分量の分布を推定し、水分量の分布に応じて定在波の位置などを調整することにより、回転槽1内の電磁波の強度分布を調整してもよい。これにより、乾燥効率をより向上させることができる。
[実施の形態3]
図9は、実施の形態3に係るマイクロ波制御装置40の構成を示す。実施の形態3に係るマイクロ波制御装置40は、図3に示した実施の形態1及び2に係るマイクロ波制御装置40の構成に加えて、マイクロ波照射部31から回転槽1に照射するマイクロ波の周波数を変更する周波数変更部44を備える。その他の構成及び動作は、実施の形態1又は2と同様である。実施の形態1及び2と異なる点について主に説明する。
実施の形態1及び2では、マグネトロンなど、周波数が可変でないマイクロ波発振器をマイクロ波照射部31として使用することが想定されていた。このため、マイクロ波検知部36は、マイクロ波照射部31から一定の周波数のマイクロ波が照射されたときの漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度を検知した。しかし、実施の形態3では、異なる複数の周波数のマイクロ波を発振可能な半導体素子などをマイクロ波照射部31として使用し、マイクロ波照射部31から回転槽1に照射するマイクロ波の周波数を周波数変更部44により変更することができる。このため、マイクロ波検知部36は、異なる複数の周波数のマイクロ波を回転槽1に照射したときの漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波をそれぞれ検知する。
周波数変更部44は、洗浄、すすぎ、又は乾燥運転中の任意のタイミングにおいて、マイクロ波照射部31から回転槽1内に照射されるマイクロ波の周波数を変化させる。これにより、回転槽1内に照射されたマイクロ波の伝播経路が変化し、マイクロ波が乾燥対象物へ照射される角度や、回転槽1内のマイクロ波の強度の分布が変化するので、漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度もそれに応じて変化する。
図10は、実施の形態3に係る洗濯乾燥機50のマイクロ波検知部36により検知された漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の周波数とその強度の例を示す。照射するマイクロ波の出力は一定としている。図10に示される(a)、(b)は、それぞれ、マイクロ波の照射を開始してから20分後、60分後の漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度分布を示す。マイクロ波の照射時間が長くなるにつれて、漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度は全体的に強くなっているが、漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度のピークの位置や形状が変化している。このため、特定の周波数に着目すると、照射時間の経過に伴って強度が強くなっていない周波数もある。そのような周波数の漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波のみをマイクロ波検知部36により検知する場合、精確に水分量を推定することができない場合がある。
さらに、マイクロ波照射部31から回転槽1内に照射されたマイクロ波の伝播経路は周波数によって異なるので、漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度は、回転槽1内の乾燥対象物に含有される水分量だけでなく、回転槽1内での乾燥対象物の位置や水分の分布にも依存する。そのため、回転槽1内における乾燥対象物や水分の分布状況によって、回転槽1内の電界強度又は水分量と、マイクロ波検知部36により検知される漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度との間の相関関係に誤差が生じうる。
本実施の形態では、強度取得部41は、周波数変更部44によりマイクロ波照射部31から異なる複数の周波数のマイクロ波を回転槽1に照射させたときの漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度をそれぞれ取得する。出力調整部42は、取得した漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度の平均値又は積分値に基づいてマイクロ波の出力を調整する。これにより、乾燥対象物や水分の分布の変化に起因する漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度の変動を平滑化することができるので、より精確に回転槽1内の電界強度や水分量を推定することができ、より適切にマイクロ波の出力を調整することができる。さらに、複数の周波数で漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度を取得して平滑化する上記動作を短時間に複数回繰り返すことにより、さらに精確に水分量を推定してマイクロ波の出力を調整することができる。
図11は、実施の形態3に係る洗濯乾燥機50のマイクロ波検知部36により検知された漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度と含水量の関係を示す。照射するマイクロ波の出力は一定としている。洗濯乾燥機50の定格容量に対して、100%、50%、25%の衣類を乾燥したときの漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度の平均値と含水量の関係はほぼ同じであり、乾燥対象物の量によらず、同じ曲線を用いて漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度から含水量を推定することができることが示された。
周波数変更部44は、洗浄、すすぎ、又は乾燥運転中、所定のタイミング、例えば所定の間隔で定期的に、異なる複数の周波数のマイクロ波をマイクロ波照射部31から回転槽1に照射させる。周波数変更部44は、周波数を所定の間隔で段階的又は連続的に変更し、所定の範囲を走査してもよい。例えば、図10に示すように、2.45GHzを中心に、所定の範囲で周波数を走査してもよい。この場合、ISMバンドを考慮すれば、2.4GHz~2.5GHzの範囲で可能である。強度取得部41は、それぞれの周波数のマイクロ波が回転槽1内に照射されたときに、漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の強度をマイクロ波検知部36から取得する。水分量推定部43は、異なる複数の周波数の漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の平均値を算出し、漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波の平均値と含水量との関係を示した曲線の近似方程式を用いて含水量を推定する。出力調整部42は、水分量推定部43により推定された水分量に応じて、マイクロ波照射部31の出力を調整する。
このように、本実施の形態の技術によれば、より精確に回転槽1内の水分量を推定することができるので、回転槽1内の電界強度が過度に高くなるのを防ぎ、スパークの発生を抑えることができる。また、乾燥工程の全域において、乾燥対象物に付いている金属からのスパークを適切に抑えつつ、マイクロ波により乾燥対象物に含有された水分を直接加熱することを可能にするので、乾燥効率を向上させ、乾燥時間を短縮することができる。
[実施の形態4]
図12は、実施の形態4に係るマイクロ波加熱装置30の構成を示す。実施の形態4に係るマイクロ波加熱装置30は、図2に示したマイクロ波加熱装置30の構成に加えて、第2のマイクロ波照射部37を備える。第2のマイクロ波照射部37は、実施の形態3で説明したマイクロ波照射部31と同様、半導体素子などにより構成された周波数可変のマイクロ波照射部である。その他の構成及び動作は、実施の形態1~3と同様である。マイクロ波検知部36として、実施の形態1で説明した漏洩電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36aが設けられてもよいし、実施の形態2で説明した回転槽1内の電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36bが設けられてもよいし、双方が設けられてもよい。
図13は、実施の形態4に係るマイクロ波制御装置40の構成を示す。実施の形態4に係るマイクロ波制御装置40において、マイクロ波照射部31は、実施の形態1及び2のマイクロ波照射部31と同様、発振するマイクロ波の周波数が可変でないマグネトロンなどにより構成されており、2.45GHz帯のマイクロ波を回転槽1内に照射して回転槽1内の水分を加熱する。第2のマイクロ波照射部37は、実施の形態3のマイクロ波照射部31と同様、発振するマイクロ波の周波数が可変な半導体素子などにより構成されており、主に、回転槽1内の電界強度や水分量を推定するために使用される。
実施の形態4では、第2のマイクロ波照射部37がマイクロ波照射部31とは別に設けられている。第2のマイクロ波照射部37の設置場所は、回転槽1内にマイクロ波を照射できる場所であれば、特に限定されない。第2のマイクロ波照射部37は、マイクロ波照射部31が回転槽1内に照射する2.45GHz帯のマイクロ波とは異なる周波数の電磁波を回転槽1内に照射してもよい。第2のマイクロ波照射部37が、回転槽1内の水分の量を推定するために回転槽1内に照射する電磁波は、水により吸収されうる電磁波であれば任意の周波数の電磁波であってもよい。具体的には、ISMバンドの周波数帯が存在する10MHz~25GHzの電磁波が好ましい。
また、第2のマイクロ波照射部37は、マイクロ波照射部31よりも低い強度の電磁波を回転槽1内に照射してもよい。第2のマイクロ波照射部37は、回転槽1内の水分を加熱するために設けられているのではないから、回転槽1内の水分を加熱するのに必要な強度のマイクロ波を回転槽1内に照射する必要はなく、マイクロ波検知部36が漏洩電磁波又は回転槽1内の電磁波を検知することができる程度の強度のマイクロ波を回転槽1内に照射すればよい。そのため、第2のマイクロ波照射部37として、小型で低出力な半導体素子を利用することができる。これにより、洗濯乾燥機50の製造コストを低減することができる。
なお、マイクロ波検知部36として、漏洩電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36aと、回転槽1内の電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36bの双方を設ける場合は、マイクロ波照射部31及び第2のマイクロ波照射部37から照射するマイクロ波の周波数又は照射する出力に応じて、マイクロ波検知部36aとマイクロ波検知部36bとを使い分けてもよい。或いは、マイクロ波検知部36aとマイクロ波検知部36bとで検知した電磁波の強度の和を用いてもよい。
[実施の形態5]
図14は、実施の形態5に係る洗濯乾燥機50の構成を示す。実施の形態5に係る洗濯乾燥機50は、図1に示した実施の形態1に係る洗濯乾燥機50の構成のうち、マイクロ波加熱装置30に代えて、水分量推定装置60を備える。
図15は、実施の形態5に係る水分量推定装置60の構成を示す。実施の形態5に係る水分量推定装置60は、図12に示した実施の形態4に係るマイクロ波加熱装置30の構成のうち、マイクロ波照射部31及び反射部33を省略したものである。
図16は、実施の形態5に係る水分量推定装置60に備えられるマイクロ波制御装置40の構成を示す。実施の形態5に係るマイクロ波制御装置40は、図13に示した実施の形態4に係るマイクロ波制御装置40の構成のうち、出力調整部42を省略したものである。
なお、マイクロ波検知部36として、実施の形態1で説明した漏洩電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36aが設けられてもよいし、実施の形態2で説明した回転槽1内の電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36bが設けられてもよいし、双方が設けられてもよい。漏洩電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36aと、回転槽1内の電磁波の強度を検知するマイクロ波検知部36bの双方を設ける場合は、マイクロ波照射部31及び第2のマイクロ波照射部37から照射するマイクロ波の出力に応じて、マイクロ波検知部36aとマイクロ波検知部36bとを使い分けてもよい。或いは、マイクロ波検知部36aとマイクロ波検知部36bとで検知した電磁波の強度の和を用いてもよい。
実施の形態5に係る洗濯乾燥機50は、従来の乾燥機と同様に、ヒータ17により加熱した乾燥空気を回転槽1内に送風することにより乾燥対象物を乾燥するものであり、乾燥対象物に含有される水分量を推定するために第2のマイクロ波照射部37を使用する。第2のマイクロ波照射部37は、実施の形態3で説明したように、発振するマイクロ波の周波数を変更可能な半導体素子などにより構成されることが望ましい。また、マグネトロンにより発振されたマイクロ波の周波数を周波数変調器などにより変調してもよい。これにより、より高い精度で乾燥対象物に含有される水分量を推定することができる。半導体素子は、一般に、マグネトロンなどのマイクロ波発振器よりも高価であるが、実施の形態4で説明したように、第2のマイクロ波照射部37として比較的安価である低出力な半導体素子を利用可能であるから、洗濯乾燥機50の製造コストを抑えることができる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
なお、本発明の適用範囲は、上記実施の形態において説明されたドラム式の衣類乾燥機(洗濯乾燥機)に限定されるものではない。例えば、ドラム式以外の吊り干し乾燥方式やパルセータ方式の縦型洗濯乾燥機等に適用されてもよい。