JP7257530B2 - 高分子材料、その製造方法、及び高分子材料組成物 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、2の水素原子がメチル基に置換されたベンゼン環と硫黄原子を主鎖に含む繰り返し単位を有し、分散度3.0以上であることにより、溶液状態での成形性に優れた成形材料が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、1の水素原子がメチル基に置換されたベンゼン環と硫黄原子を主鎖に含む繰り返し単位を有するポリマーを含有することにより、溶液状態での成形性に優れるとともに、高い屈折率を有する光学部材を形成することができる成形材料が記載されている。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の高分子材料は、主鎖にスルホキシド骨格を有することを特徴とする。本発明の高分子材料が、主鎖にスルホキシド骨格を有することにより、可視光領域(380~800nm)の着色が低減され、高屈折率で、かつ光分散が小さくなるのは、スルホキシド構造が導入されることにより、屈折率の低減が抑制されたり、硫黄上のローンペアのn-π*遷移により可視域の吸収バンドが消失する等のように、sp2軌道の共役の切断が可能になることにより、可視光域での透過性が向上したりするためと推測される。
主鎖にスルホキシド骨格を有するとは、重合体の主鎖上に、少なくとも1のスルフィニル基(-S(=O)-)を含む構造を有することを意味する。
上記芳香環構造としては、特に限定されず、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、ペンタセン環、ビフェニル環、ジフェニル環、トリフェニル環等が挙げられる。なかでも、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、トリフェニル環が好ましい。
また、なかでも、上記高分子材料のアッベ数を大きくする、すなわち光分散がより小さくなるという観点で、上記芳香環構造は、炭素数6~20の芳香環構造を含むことが好ましく、炭素数6~18の芳香環構造を含むことがより好ましく、炭素数6~12の芳香環構造を含むことが更に好ましく、ベンゼン環を含むことが更により好ましい。
また、金属酸化物の分散性を向上しうる点で、上記2価の芳香族炭化水素基が有する置換基としては、水酸基、上記硫黄含有置換基がより好ましく、水酸基、チオアルキル基、チオアリール基が更に好ましく、水酸基が特に好ましい。
上記一般式(1-1)中、Rで表される各置換基は、上記2価の芳香族炭化水素基が有する置換基とそれぞれ同じであり、その具体例や好ましい態様等も同じである。
上記一般式(1-1-1)中、Rで表される置換基の種類及び好ましい態様等は、上記一般式(1-1)中のRで表される置換基と同様である。
上記高分子材料は、上記構成単位(A)を1種のみ有してもよいし、2種以上有してもよい。
上記A2で表される2価の芳香族炭化水素基としては、上記一般式(1)中のA1で表される2価の芳香族炭化水素基と同様の基が挙げられる。
なかでも、上記一般式(2)で表される構成単位は、下記一般式(2-1)で表される構成単位であることが好ましい。
上記一般式(3)及び(4)中の、A3及びA4で表される2価の芳香族炭化水素基としては、上記一般式(1)中のA1で表される2価の芳香族炭化水素基と同様の基が挙げられる。なかでも、A3及びA4で表される2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ビフェニレン基、トリフェニレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
なかでも、屈折率、アッベ数をより一層高くすることができる点で、上記2価の芳香族炭化水素基が有する置換基としては、メチル基、チオアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
また、金属酸化物の分散性を向上しうる点で、上記2価の芳香族炭化水素基が有する置換基としては、水酸基、チオアルキル基、チオアリール基が更に好ましく、水酸基が特に好ましい。
上記高分子材料は、上記構成単位(B)を1種のみを有してもよいし、2種以上を有してもよい。上記構成単位(B)を2種以上有する場合、上記構成単位(B)の割合は、それらの合計量である。
上記構成単位(B)が2種以上含む場合、上記構成単位(B)のモル比は、2種以上の構成単位(B)の合計量である。
ここで、本発明において、上記硫黄原子Sに対する酸素原子Oの元素比率とは、主鎖の硫黄原子Sに結合した酸素原子Oと、該主鎖の硫黄原子Sとの元素比率(O/S)を意味する。
上記主鎖の硫黄原子Sとは、具体的には、例えば、上記一般式(1)又は(2)で示される構成単位において、主鎖にある-SO-の硫黄原子Sを意味する。また、上記一般式(3)で示される構成単位では、主鎖にある-S-の硫黄原子Sを意味し、上記一般式(4)で示される構成単位では、主鎖にある-SO2-の硫黄原子Sを意味する。
上記主鎖の硫黄原子Sに結合した酸素原子とは、具体的には、例えば、上記一般式(1)又は(2)で示される構成単位において、主鎖にある-SO-の酸素原子Oを意味し、上記一般式(4)では、主鎖にある-SO2-の酸素原子Oを意味する。
上記元素比率は、X線光電子分光装置(XPS)を用いて、酸素原子の1s軌道(O1s)、炭素原子の1s軌道(C1s)、硫黄原子の2p軌道(S2p)のピーク強度を評価測定することにより求めることができ、具体的には後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで昇温(昇温速度10℃/分)して得られたDSC曲線から、ベースラインと変曲点での接線の交点により評価する方法により求めることができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により求められる。
上記S-O結合エネルギーは、X線光電子分光法(XPS)により測定して得られる硫黄原子の2p3/2軌道のピークトップの位置を評価することにより求めることができ、具体的には後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
上記屈折率は、1.7以上であることがより好ましく、1.71以上であることが更に好ましい。
上記屈折率は、測定試料として、上記高分子材料を用いて厚み50nmの膜を製膜し、分光エリプソメーターUVISEL(HORIBA Scientific社製)を使用し、Na D線(589nm)を用いて測定することにより求めることができ、具体的には後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
上記アッベ数は、上記屈折率と同様に、上記高分子材料を用いて製膜し、上記分光エリプソメーターを使用してD線(589.3nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率を測定し、下記の計算式を用いて求めることができ、具体的には後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
アッベ数(vD)=(nD-1)/(nF-nC)
式中、nD、nF、nCはそれぞれ、フラウンホーファーのD線(589.3nm)、F線(486.1nm)、C線(658.3nm)における屈折率を表す。
上記可視光透過率は、平行線透過率であり、上記高分子材料からなる0.02mm厚みの薄膜を用いて、又は、0.02mmに厚みを規格化することで、分光光度計(例えば、日本分光製紫外可視赤外分光光度計V-700 series)により、積分球を使用せずに、空気対象で400nm~700nmの範囲を測定し、透過率の最低値を評価することで求めることができる。
上記吸光度は、上記高分子材料をクロロホルム溶液に溶解した溶液の吸光度を、日本分光製V-700 series等の紫外可視赤外分光光度計を用いて、測定することにより求めることができ、具体的には後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
本発明の高分子材料を製造する方法としては、上述した主鎖にスルホキシド骨格を有する重合体を製造することができる方法であれば特に限定されず、硫黄含有単量体を含む単量体成分を公知の方法で重合することができる。
なかでも、主鎖にスルホキシド骨格を有する重合体を効率良く製造することができる点で、硫黄含有単量体を含む単量体成分を重合して硫黄含有重合体を得る工程と、酸化剤を使用して上記硫黄含有重合体を酸化させる工程を有し、上記酸化剤は、過酸化物、及び/又は、塩素酸であることが好ましい。このような、硫黄含有単量体を含む単量体成分を重合して硫黄含有重合体を得る工程と、酸化剤を使用して上記硫黄含有重合体を酸化させる工程を含み、上記酸化剤は、過酸化物、及び、塩素酸からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする高分子材料の製造方法もまた、本発明の一つである。
工程(1)
本発明の高分子材料の製造方法は、まず、硫黄含有単量体を含む単量体成分を重合して硫黄含有重合体を得る工程を含む。
A5及びA6で表される上記1価の芳香族炭化水素基は、上記一般式(1)中のA1で表される2価の芳香族炭化水素基を1価の基にしたものと同様の基である。
A5及びA6で表される上記1価の芳香族炭化水素基が有する置換基及びその数は、上記一般式(1)中のA1で表される2価の芳香族炭化水素基が有する置換基と同様である。
上記チオアリール化合物は、下記一般式(6-1)で表される化合物であることが好ましい。
上記置換基を有してもよい、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基、もしくは硫黄含有置換基は、それぞれ、上述した一般式(1-1)においてRで表されるものと同様であることが好ましい。
上記R9は、炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
上記硫黄含有重合体を得るために使用される単量体成分は、上記硫黄含有単量体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
上記酸としては、特に限定されず、例えば、硫酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルフォン酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロプロピオン酸、パーフルオロ酪酸等が挙げられる。なかでも、酸性度を高くする点で、トリフルオロ酢酸が好ましい。上記酸は、1種のみ使用してもよいし、2種以上使用してもよい。
本発明の高分子材料の製造方法においては、次いで、工程(1)で得られた硫黄含有重合体を、特定の酸化剤を使用して酸化させる工程を含む。
上記酸化剤としては、過酸化物、及び、塩素酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。このような特定の酸化剤を使用することにより、主鎖上に含まれる硫黄原子(-S-)の多くは、スルホニル(-SO2-)まで酸化されることはなく、適度に酸化されてスルホキシド(スルフィニル基)(-SO-)になる。
なかでも、上記硫黄含有重合体を溶解することができる溶剤と同じ溶剤に溶解できる点で、上記酸化剤は、過酸化物であることが好ましく、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素であることがより好ましい。重合体が析出する水を用いない点に関して、また、過剰の酸化剤でスルホキシドまで酸化されることを抑制するという点では、上記酸化剤は、メタクロロ過安息香酸であることが更に好ましい。
また、上記過酸化剤として、過酸化水素を使用する場合には、重合体の析出を抑制するという観点で、水の量を抑制しつつ、トリフルオロアセトン等の相関移動触媒を用いる事が好ましい。
本発明の高分子材料は、他の成分を組み合わせて、高分子材料組成物とすることができる。上記他の成分としては、特に限定されず、高分子材料組成物の目的、用途に応じて公知の成分の中から適宜選択すればよい。なかでも、上記高分子材料に金属酸化物を組み合わせると、透明性が格段に向上する。そのような、上述した高分子材料、及び、金属酸化物を含むことを特徴とする高分子材料組成物もまた、本発明の一つである。
上記平均粒子径は、上記金属酸化物をSEM(倍率1000~10万倍、好ましくは1万倍)で観察し、得られた画像を解析することにより、約10~1000個の個々の粒子(一次粒子)の粒子径(円面積相当径)を求め、個数基準の粒度分布による50%粒径を評価することにより求められる。画像解析には、公知の画像解析ソフト(例えば、マウンテック社製Mac-View)を用いることができる。
上記ガラス転移温度は、上述した高分子材料のガラス転移温度の測定方法と同様の方法により求めることができる。
上記屈折率は、上述した高分子材料の屈折率の測定方法と同様の方法により求めることができる。
上記アッベ数は、上述した高分子材料のアッベ数の測定方法と同様の方法により求めることができる。
上記可視光透過率は、平行線透過率であり、上述した高分子材料の可視光透過率の測定方法と同様の方法により求めることができる。
本発明の高分子材料、及び、高分子材料組成物は、可視光領域の着色が抑制され、高屈折率で、光分散が小さい材料であるので、可視光領域の着色が少なく、屈折率が高く、光分散が小さいことが要求される用途に好適に使用される。
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定して、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量を求めた。分散度は、重量平均分子量を数平均分子量で除して算出した。
装置:SHIMAZU、CBM-20A
検出器:示差屈折率検出器(RI)(SHIMAZU、SPD-20MA)、及び、紫外可視赤外分光光度計(SHIMAZU、SPD-20MA)
カラム:TOSOH、TSKgel SuperHM-N
カラム温度:40℃
流速:0.3ml/min
検量線:Polystyrene Standards
溶離液:クロロホルム
重合体溶液0.25mlを、シリコンウェハ上にスピンコートすることにより製膜した試料を用いて、JEOL社製光電子分光装置(JPS-9010TR、XPS装置、光源:Mg、X線出力:400W)を用い、硫黄原子の2p軌道由来のピーク強度と酸素原子の1s軌道由来のピーク強度を測定し、その積分比を計算することでO/S比を算出した。必要に応じて、炭素原子の1s軌道由来のピーク強度も測定、その結果も考慮してO/S比を算出した。
なお、測定方法及び結合エネルギーの位置等は、Handbook of X-ray Photoelectron Spectroscopy(JEOL社、1991年3月発行)を参考とした。
重合体溶液0.25mlを、シリコンウェハ上にスピンコートすることにより製膜した試料を用いて、JEOL社製光電子分光装置(JPS-9010TR、XPS装置)を用い、硫黄原子の2p3/2軌道のピーク位置より結合エネルギーを計測した。
重合体溶液又は高分子材料組成物30mgを、1,1,2,2-テトラクロロエタン(1ml)に溶解させ、孔径0.2μmのメンブレンフィルターに通した。フィルターを通過した溶液を0.4ml採り、ガラス基板(2cm×2cm)上にドロップキャストし、膜厚50μmの膜を得た。得られた膜について、HORIBA Scientific社製分光エリプソメーターUVISELを用い、入射前後の偏光の位相差と反射偏角比を測定した。入射光の波長(450nm)と入射角度(75°)は予め設定した値を使用し、複素屈折率が求められ、190-2000nmでの屈折率を算出し、波長589.3nmにおける屈折率を求めた。
上記屈折率の測定と同様の方法で、膜厚50μmの膜を得た。得られた膜について、HORIBA Scientific社製分光エリプソメーターUVISELを用い、D線(589.3nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)を用いて、屈折率を測定し、下記の計算式(A)を用いて計算し、アッベ数(vD)を求めた。
アッベ数(vD)=(nD-1)/(nF-nC) (A)
式中、nD、nF、nCはそれぞれ、フラウンホーファーのD線(589.3nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率を示す。
日本分光製紫外可視赤外分光光度計(V-700 series、使用セル:光路長1cmのセル)を用いて200~800nmにおける吸光度を測定した。試料溶液として、重合体又は高分子材料組成物のクロロホルム溶液(0.01mg/ml)を用いた。
セイコー電子工業製示差走査熱量計を使用し、リファレンスとしてα-アルミナを使用して、昇温速度10℃/分で、室温から250℃まで昇温して得られたDSC曲線から、ベースラインと変曲点での接線の交点により評価して求めた。
主鎖酸化前のポリマーはクロロホルムで5wt%に溶解し、主鎖酸化後のポリマーはヘキサフルオロ-2-プロパノールで5wt%に溶解させる等、ポリマーを溶解可能な有機溶媒を用いて5%程度に溶解させた溶液を調製した。得られた溶液を、可視光に殆ど吸収を有さないガラス基板上に、500rpm程度×60sでスピンコートし、100℃で10分乾燥して薄膜(厚さ1μm)を形成した。得られた薄膜の透過率を、分光光度計(日本分光製紫外可視赤外分光光度計V-700 series)により測定した。可視光透過率を評価するために、400nmの透過率、及び、400~700nmの平均透過率で比較した。なお、空気を対照サンプルとした。
上記薄膜の透過率の評価で用いた薄膜を260℃にて10分間加熱し、加熱後の透過率を、上記薄膜の透過率の評価方法と同様の方法で測定した。加熱前後の透過率差が小さく、可視光透過率の高い方が、耐熱性が良好で、好ましい。
(合成例1)
<モノマーの合成>
1000mlのコニカルビーカーに、クロロホルム(300ml)、m-トルエンチオール(24.8g、0.2mol)を加え、さらに、ヨウ素(25.4g、0.1mol)入りのメタノール溶液(300ml)を加え、1時間室温にて撹拌した。ついでチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、ヨウ素を除去し、溶媒を留去した。反応液をジエチルエーテルに分散し、塩酸水溶液(3質量%)、水酸化ナトリウム水溶液(5質量%)、純水の順番で分液洗浄し、脱水、溶媒除去、真空乾燥を経てビス(3-メチルフェニル)ジスルフィドを回収した。収率は80%であった。1H-NMR、13C-NMR及びFAB-MSにより構造を確認した。
[ビス(3-メチルフェニル)ジスルフィド]
1H-NMR(CD2Cl2,500MHz,ppm):δ=7.30(s,2H,Ph-H),7.28(d,2H,Ph-H),7.16(t,2H,Ph-H),7.01 (d,2H,Ph-H),2.78(s,6H,methyl-H)
13C-NMR(CD2Cl2,ppm):δ=139.5,137.1,129.2,128.4,128.3,124.9,21.4
Mass:m/z 245.7(found),246.4(calcd).
50mlの三口フラスコに、ジフェニルジスルフィド(3.64g、16.67mmol)と、上記<モノマーの合成>で得られた、ビス(3-メチルフェニル)ジスルフィド(0.821g、3.33mmol)を、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-パラベンゾキノン(DDQ、1M)とトリフルオロ酢酸(1M)のジクロロメタン溶液(20ml)に加え、20時間室温にて撹拌することで酸化重合を行った。グラスフィルターで重合溶液中の副生成物を除去したのち、その重合溶液を塩酸酸性メタノールに滴下して生成ポリマーを沈殿させ、グラスフィルターでろ過して沈殿物を粉末として回収した。その後、水酸化カリウム水溶液(0.1M)、純水、メタノールで順に洗浄し、真空乾燥させて、下記式(A)で表される繰り返し単位を有するポリマーAを得た。1H-NMR、13C-NMRによりポリマーAを同定した。得られたポリマーAの重量平均分子量Mwは2700、Mnは1300であった。ガラス転移温度は73℃であった。屈折率は1.79であった。XPS測定により、ポリマーA中の硫黄原子Sに対する酸素原子Oの元素比率(O/S)は、0.04(0.04/1)であった。S-O結合エネルギーは162-164eVであった。つまり、Sはスルフィドが100%であった。ポリマーAの収率は72%であった。式(A)中のxは、0.833であった。
[ポリマーA]
1H-NMR(CD2Cl2,500MHz,ppm):δ=7.23(m,23H,Ph-H),2.25(s,3H,methyl-H)
13C-NMR(CD2Cl2,ppm):δ=141.2,136.5,134.1,131.1,127.9,127.4,20.7
50mlナスフラスコ中で、上記で得られたポリマーA(0.302g)をメタクロロ過安息香酸(mCPBA、0.25M)のクロロホルム溶液10mLに加え、20時間室温にて撹拌し酸化させた。次いで、反応液を塩酸酸性メタノールに滴下し、遠心分離、真空乾燥することにより、下記式(A-1)で表される繰り返し単位を有する重合体(熱可塑性高分子材料)A-1を得た。収率は97%であった。得られた重合体の構造は、1H-NMR、IR、XPSにより同定した。XPS測定により、硫黄原子Sに対する酸素原子Oの元素比率(O/S)は0.92(0.92/1)であった。S-O結合エネルギーは165eVと163eVにピークが見られ、ピーク分離により164-168eV(スルホキシド)、162-168eV(スルフィド)にピークを分離でき、スルホキシドとスルフィドのピーク面積は47.8対4.4であった。
式(A-1)中のxは0.08であり、yは、0.92であった。
[重合体A-1]
1H-NMR(CD2Cl2,500MHz,ppm):δ=7.55(m,23H,Ph-H),2.34(s,3H,methyl-H)
IR(cm-1):1045(νS=O)
上記で得られた熱可塑性高分子材料A-1 10mgと、ジルコニアナノ粒子分散液(粒径11nm、溶液メチルエチルケトン中、固形分70%)28.6mgとを、1,1,2,2-テトラクロロエタン1mlに溶解させて熱可塑性組成物(高分子材料組成物)を得た。
実施例1において、[ポリマー主鎖の酸化反応]を行わない点以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性高分子材料を得た。すなわち、実施例1におけるポリマーAが、比較例1の熱可塑性高分子材料に相当する。
実施例1において、[ポリマー主鎖の酸化反応]を下記の方法で行った以外は、実施例1と同様の方法で、熱可塑性高分子材料を得た。
[ポリマー主鎖の酸化反応B]
50mlナスフラスコ中で、上記で得られたポリマーA(0.302g)をメタクロロ安息香酸(mCPBA)のクロロホルム溶液(1M)10mLに加え、20時間室温にて撹拌し酸化させた。次いで、反応液を塩酸酸性メタノールに滴下し、遠心分離、真空乾燥することにより、式(B-1)で表される繰り返し単位を有する重合体(熱可塑性高分子材料)B-1を得た。収率は104%であった。得られた重合体B-1の構造は、粉末状態でIRにより同定した。IRによりスルホキシド由来のピークが観測された。
[重合体B-1]
IR(cm-1):1155,1325(νO=S=O)
得られた重合体のガラス転移温度は159℃であった。XPS測定により、硫黄原子Sに対する酸素原子Oの元素比率(O/S)は2.0(2.0/1)であった。S-O結合エネルギーは168-170eV(スルホン酸)であった。
<ポリマーの合成>
実施例1の<ポリマーの合成>において、ジフェニルジスルフィドとビス(3-メチルフェニル)ジスルフィドを使用する代わりに、ビス(3-メチルフェニル)ジスルフィド(10.92g、44.41mmol)のみを使用し、反応時間を40時間とした以外は、実施例1のポリマーAと同様に合成し、ポリマーCを得た。1H-NMR、13C-NMRによりポリマーCを同定した。得られたポリマーCの重量平均分子量Mwは6500、Mnは1650であった。S-O結合エネルギーは162-164eVであった。つまり、Sはスルフィドが100%であった。ポリマーCの収率は65%であった。式(A)中のxは、0であった。
50mlナスフラスコ中で、上記で得られたポリマーC(0.330g)を、メタクロロ過安息香酸(mCPBA、0.25M)のクロロホルム溶液10mLに加え、20時間室温にて撹拌し酸化させた。次いで、反応液を塩酸酸性メタノールに滴下し、遠心分離、真空乾燥することにより、重合体(熱可塑性高分子材料)C-1を得た。収率は96%であった。得られた重合体の構造は、1H-NMR、IR、XPSにより同定した。XPS測定により、硫黄原子Sに対する酸素原子Oの元素比率(O/S)は0.92(0.92/1)であった。
(ブロモ含有ポリマーDの合成)
300mL三口フラスコに、PMPS(ポリ(2,6-ジメチルジスルフィド)、2.7242g、20mmol、0.2M)を加え、クロロベンゼン(100mL)に溶解させた。続いて、NBS(N-ブロモスクシンイミド、3.5998g、20mmol、1eq.for PMPS)、AIBN(アゾイソブチロニトリル、98.526mg、0.6mmol、0.03eq.for PMPS)を加えて、室温で30分間窒素通気(バブリング)した。その後、80℃に昇温し、窒素雰囲気下で5時間還流した。反応終了後、氷浴中で冷却するとNBS由来の析出物が出てきたため、濾別した。続いて回収した濾液をエバポレーターにより濃縮後、塩酸酸性メタノール(MeOH800mL/HClaq.5vol%)へ滴下し沈殿精製を行った。沈殿物を遠心分離により回収し、減圧乾燥を経て、薄黄色粉末として、ポリマーDを得た(収率:89%)。
50mLフラスコにポリマーD(0.98481g、5.0mmol、0.25M)を加えクロロホルム(20mL)に溶解させた。続いて、mCPBAを1当量加えて、室温、大気下で20時間反応させた。反応終了後、反応溶液にクロロホルムを添加し、析出物を分散させ、塩酸酸性メタノール(MeOH600mL/HClaq.5vol%)へ滴下し沈殿精製を行った。沈殿物を遠心分離により回収し、減圧乾燥を経て白色粉末として、重合体D-1を得た(収率:77%、mCPBAの反応率を100%として算出した)。
50mLフラスコに重合体D-1(0.42003g、2.0mmol、0.2M)を加え、NMP(N-メチル-2-ピロリドン、10mL)に溶解させた。続いて、H2O(1mL、10vol% for NMP)を添加して、100℃で90時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を塩酸酸性メタノール(MeOH 500mL/HCl aq.5vol%)へ滴下し沈殿精製を行った。沈殿物を遠心分離により回収し、減圧乾燥を経て薄茶色~灰白色粉末として、重合体D-1-1を得た(収率:78%、ブロモ基が100%ヒドロキシ基に置換されたとして算出した)。
また、各重合体のガラス転移温度(Tg)、フラウンホーファーのD線(589.3nm)における屈折率(nD)、アッベ数(vD)について、上記の方法で評価した。結果を表4に示す。
(ヒドロキシ基含有重合体D-1-1とTiO2とのハイブリット化)
10mLサンプル瓶中で重合体D-1-1(20mg、0.03M)をDMAc(ジメチルアセトアミド、4mL)に溶解後、塩酸([HCl]/[Ti]=2)を加えて30分間撹拌した。続いて、オルトチタン酸テトラブチルのブタノール溶液(1.47M Ti solution)を重合体D-1-1に対して、表5に示される質量組成で添加し、更に30分間撹拌することでハイブリッド溶液(高分子材料組成物)を調製した。
また、図5に、実施例における実験例1と4の高分子材料組成物の屈折率の測定データを示した図を示す。図中、実線は実験例1を示し、破線は実験例4を示す。
また、図6に、実施例における実験例1~4で得られたハイブリッド膜の写真を示す。
Claims (8)
- 主鎖にスルホキシド骨格を有し、
下記一般式(1)で示される構成単位(A)を繰り返し単位として有する重合体である高分子材料であり、
該高分子材料は、該構成単位(A)を重合体の全構成単位100質量%に対して10~100質量%有し、構成単位(B)を重合体の全構成単位100質量%に対して0~90質量%有し、
該構成単位(B)は、下記一般式(2)で表される構成単位、下記一般式(3)で表される構成単位、及び、下記一般式(4)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種である
ことを特徴とする高分子材料。
- 硫黄原子Sに対する酸素原子Oの元素比率(O/S)が、0.1~1.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子材料。
- ガラス転移温度が80~250℃であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高分子材料。
- 前記高分子材料は、熱可塑性高分子材料であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の高分子材料。
- 光学用であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の高分子材料。
- 請求項1~6のいずれかに記載の高分子材料、及び、金属酸化物を含むことを特徴とする高分子材料組成物。
- 請求項1~6のいずれかに記載の高分子材料の製造方法であって、
該製造方法は、硫黄含有単量体を含む単量体成分を重合して硫黄含有重合体を得る工程と、酸化剤を使用して該硫黄含有重合体を酸化させる工程とを含み、
該酸化剤は、過酸化物、及び、塩素酸からなる群より選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする高分子材料の製造方法。
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