JP2023079178A - 硫黄含有重合体、その製造方法、及び、硫黄含有重合体含有組成物 - Google Patents

硫黄含有重合体、その製造方法、及び、硫黄含有重合体含有組成物 Download PDF

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Junichi Nakamura
知紀 石川
Tomonori Ishikawa
光 高橋
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Abstract

【課題】非ハロゲン系溶媒に対する溶解性に優れる、ポリアリーレンスルフィド等の硫黄含有重合体を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)で表される構成単位(U)を有し、且つ、下位一般式(2)で表される構造(V)を有することを特徴とする硫黄含有重合体。
Figure 2023079178000014
式中、Xは、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表す。
Figure 2023079178000015
式中、Xは、置換基としてチオール基を有する2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、硫黄含有重合体に関する。より詳しくは、非ハロゲン系溶媒に対する溶解性に優れる硫黄含有重合体、その製造方法、及び、該硫黄含有重合体を含有する組成物に関する。
高屈折率材料として、芳香環を有するポリカーボネートやフルオレン骨格を有する高分子材料が知られているが、LEDの光取り出し効率を向上する屈折率調整材料や撮像系のレンズ材料としては、アッベ数の大きい、すなわち光分散の小さい材料が求められている。このような高屈折率、かつ、光分散の小さい材料として、硫黄分子やハロゲン分子が導入された材料や金属酸化物ナノ粒子を含有した材料等が開発されている。硫黄を含有した材料としてポリアリーレンスルフィド、中でもポリフェニレンスルフィドは、一般的に耐熱性、耐腐食性、電気絶縁性等に優れる材料として知られているが、近年、高い屈折率を有する光学材料への応用が注目されている。
例えば、特許文献1には、ベンゼン環の特定位置の水素原子がメチル基に置換された、フェニレンスルフィド骨格を繰返し単位とするポリマーが高屈折率且つ溶液状態での成形性に優れるため、該ポリマーを含む成形材料が光学部材を製造するための成形材料として有用であることが示されている。該成形材料を用いたフィルムへの加工方法として、前記ポリマーを溶媒に溶解し、スピンコート法やキャスト法で薄膜を形成させる方法が記載されている。溶媒としてジクロロメタン等が記載されている。
特開2017-52834号公報
ポリアリーレンスルフィド等の硫黄含有重合体は溶媒への溶解性が乏しく特許文献1に記載のようにメチル基を導入することにより溶解性が高まり、特許文献1に記載された一部のハロゲン系溶媒には比較的溶解するものの、ケトン類等の非ハロゲン系溶媒にポリアリーレンスルフィド等の硫黄含有重合体を均一に溶解することは難しかった。環境への負荷の観点からハロゲン系溶媒はその使用が制限されつつある。よって本発明は、非ハロゲン系溶媒に対する溶解性に優れる、ポリアリーレンスルフィド等の硫黄含有重合体を提供することを目的とする。
本発明者は、ポリアリーレンスルフィド等の硫黄含有重合体において、該重合体が特定の構造を有するものとすることにより非ハロゲン系溶媒への溶解性が優れたものとなり、上記課題を解決することができることを見出し本発明を完成した。すなわち、本発明にかかる硫黄含有重合体は、下記一般式(1)で表される構成単位(U)を有し、且つ、下位一般式(2)で表される構造(V)を有することを特徴とする硫黄含有重合体である。
Figure 2023079178000001
(式中、Xは、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表す。)
Figure 2023079178000002
(式中、Xは、置換基としてチオール基を有する2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。)
本発明にかかる硫黄含有重合体は、非ハロゲン系溶媒に対する溶解性に優れる。そのため、高屈折率膜等の光学薄膜をはじめとする各種の光学部材を、環境負荷が小さい溶媒を用いた加工方法により提供することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」または「メタクリロイル」を意味する。また(メタ)アクリレートを(メタ)アクリル酸エステルということもある。
1.硫黄含有重合体
本発明の硫黄含有重合体について詳述する。
本発明にかかる硫黄含有重合体は、下記一般式(1)で表される構成単位(U)を有し、且つ、下位一般式(2)で表される構造(V)を有することを特徴とする、硫黄含有重合体である。
Figure 2023079178000003
(式中、Xは、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表す。)
Figure 2023079178000004
(式中、Xは、置換基としてチオール基を有する2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。)
本発明の硫黄含有重合体は、構成単位(U)を有し、該重合体が有する構成単位(U)の少なくとも一部の構成単位(U)が構造(V)を構成する重合体である、ともいえる。本発明者は、構成単位(U)を有する硫黄含有重合体において、重合体の分子鎖末端以外の2価の芳香族炭化水素基の内、少なくとも1つの2価の芳香族炭化水素基が置換基としてチオール基を有するものとすることにより、重合体の非ハロゲン系溶媒に対する溶解性が優れるものとなることを見いだしたのである。
<構成単位(U)>
本発明の硫黄含有重合体は、構成単位(U)を1つ以上有すればよいが、複数有することが好ましく、構成単位(U)を繰り返し単位として含むことがより好ましい。
なお、上記構成単位(U)を複数有する場合においても、各構成単位(U)における各X、Yは同じであっても異なっていてもよい。より詳細には、硫黄含有重合体に含まれる各構成単位(U-1)における、Xで表される2価の芳香族炭化水素基に結合する置換基の種類、数、結合位置、2価の芳香族炭化水素基における主鎖の結合位置、Yの種類等は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(1)で表される構成単位(U)において、式中、Xは、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。
上記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、トリフェニレン基、ビフェニレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。なかでも、重合体の光分散がより小さくなる点で、上記2価の芳香族炭化水素基は、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ビフェニレン基、トリフェニレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
で表される上記2価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、チオール基であってもよいし、チオール基以外の置換基(「置換基A」とも称する。)であってもよい。
上記置換基Aとしては、好ましくは、反応性官能基、ハロゲン原子、又は、置換基(「置換基B」とも称する。)を有してもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、もしくは硫黄含有炭化水素基等の硫黄含有有機基が挙げられる。
上記反応性官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基、硬化性官能基、およびこれらの官能基を含む基等があげられる。上記酸性官能基としては、カルボキシ基(-COOH)、リン酸基(-OPO(OH))、水酸基(-OH)、スルホ基(-SOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)等があげられる。上記塩基性官能基としてはアミノ基、アンモニウム基、イミノ基、アミド基、イミド基、マレイミド基等の塩基性官能基等があげられる。上記硬化性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、メタリル基等の反応性二重結合を有する基等の反応性不飽和結合を有する基;エポキシ基、オキセタン基等の反応性環状エーテル基を有する基等の反応性イオン結合を有する基等があげられる。
上記これらの官能基を含む基としては、例えば、上述した酸性官能基、塩基性官能基、又は硬化性官能基と、炭化水素鎖や結合基とを有する基等が挙げられる。すなわち、本発明においては、上記反応性官能基には、上述した酸性官能基、塩基性官能基や硬化性官能基だけでなく、これらの官能基と結合鎖を含む基も含まれる。上記結合鎖としては、アルキレン基、アリーレン基等の2価の炭化水素基や、エーテル、エステル、カルボニル、アミド等の結合基や、これらの組み合わせ等が挙げられる。例えば、上記反応性官能基としてカルボキシ基が好ましいという場合、上記反応性官能基として、カルボキシ基、及び/又は、カルボキシ基を含む基であることが好ましいことを意味する。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、なかでも、臭素原子が好ましい。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基等が挙げられる。上記アルキル基としては、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
上記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基等が挙げられる。なかでも、フェニル基が好ましい。上記アリール基の炭素数は、6~30であることが好ましく、6~18であることがより好ましく、6~12であることが更に好ましい。
上記アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルオクチル基等が挙げられる。上記アラルキル基の炭素数は、7~14であることが好ましく、7~9であることが好ましい。
上記硫黄含有有機基としては、硫黄含有炭化水素基、スルホキシド基、スルホン基等があげられる。中でも硫黄含有炭化水素基が好ましい。硫黄含有炭化水素基としては、例えば、チオアルキル基、チオアリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。なかでも、チオアルキル基が好ましい。上記硫黄含有炭化水素基の炭素数は、1~8であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。
上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、及び、硫黄含有有機基は、更に置換基(置換基B)を有してもよく、当該置換基(置換基B)としては、アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記置換基Aの中でも、屈折率が高く、透明性の高い硫黄含有重合体となり易い観点から、アルキル基が好ましく、炭素数1~18のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
で表される上記2価の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基の数は、特に限定されないが、得られる硫黄含有重合体の屈折率がより一層高くなる点で、1~6であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。上記2価の芳香族炭化水素基において、上記置換基が結合する位置は特に制限されない。
なお、本発明の硫黄含有重合体が構成単位(U)を複数有する場合、各構成単位(U)における、上記2価の芳香族炭化水素基の種類、上記2価の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基の種類、数、結合位置等は、同じであっても異なっていてもよい。
上記一般式(1)において、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表す。
ここで、YがSである場合「-S-」はスルフィド基を、YがSOである場合「-SO-」はスルフィニル基を、YがSOである場合「-SO-」はスルホニル基をそれぞれ意味する。Y、Yについても同様である。
なお、本発明の硫黄含有重合体が構成単位(U)を複数有する場合、各構成単位(U)における、上記Yの種類は同じであっても異なっていてもよい。
上記構成単位(U)の好ましい実施形態として、たとえば、Xにおける2価の芳香族炭化水素基がフェニレン基である形態があげられる。Xにおける2価の芳香族炭化水素基がフェニレン基である構成単位(U)を構成単位(U-1)とも称する。
上記構成単位(U-1)において、Xで表されるフェニレン基は置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。上記置換基は、上述したとおり、チオール基であってもよいしチオール基以外の置換基(置換基A)であってもよい。
フェニレン基に結合する置換基の総数は0~4の整数であり、好ましくは1~3であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。上記置換基の位置は特に制限されず、Yが結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、置換基の位置はフェニレン基の2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよい。中でも、4位または2位が好ましく、4位がより好ましい。
上記構成単位(U―1)においても上記置換基Aの種類は上述したとおりであるが、上記フェニレン基が置換基Aを有する場合、置換基Aとしてはアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1~18のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
上記構成単位(U-1)において、Yが結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、フェニレン基に対する他方の主鎖の結合位置は特に制限されない。フェニレン基の2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよい。中でも、2位または3位が好ましく、3位がより好ましい。
上記構成単位(U-1)において、上記Yは、上述したとおりであり、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種であればよい。
本発明の硫黄含有重合体は、上記構成単位(U-1)を複数含むことが好ましく、繰返し単位として含むことが好ましく、さらに繰返し単位として複数含むことがより好ましい。このような場合、硫黄含有重合体に含まれる各構成単位(U-1)における、Xで表されるフェニレン基に結合する置換基の種類、数、結合位置、フェニレン基における主鎖の結合位置、Yの種類等は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
<構造(V)>
本発明の硫黄含有重合体は、上記構造(V)を有する。本発明の硫黄含有重合体は、上記構造(V)を少なくとも1個有すればよいが、2個以上有することが好ましい。上記Xで表される2価の芳香族炭化水素基としては、その好ましい形態も含めて、上記Xで表される2価の芳香族炭化水素基と同様である。また上記Xで表される2価の芳香族炭化水素基に対する主鎖の結合位置は特に制限されない。なお、上記構造(V)を2個以上有する場合においても、各構造(V)における各X、Yは同じであっても異なっていてもよい。より詳細には、硫黄含有重合体に含まれる各構造(V)における、Xで表される2価の芳香族炭化水素基に結合するチオール基の数、結合位置、置換基A2の有無、種類、数、結合位置、Xで表される2価の芳香族炭化水素基に対する主鎖の結合位置、Yの種類、Xで表される芳香族炭化水素基の種類、置換基の有無、種類、数、結合位置、Xで表されるフェニレン基に対する主鎖の結合位置等は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
上記Xで表される上記2価の芳香族炭化水素基が有するチオール基の数は、特に限定されないが、得られる硫黄含有重合体の屈折率がより一層高くなる点で、1~6であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。上記2価の芳香族炭化水素基において、上記チオール基が結合する位置は特に制限されない。
で表される上記2価の芳香族炭化水素基はチオール基以外の置換基(「置換基A2」とも称する。)を有していてもよく、該置換基A2としては、上記置換基Aと同様の基をあげることができ、その好ましい形態も同様である。Xで表される上記2価の芳香族炭化水素基が置換基A2を有する場合、置換基A2の数は特に制限されないが、1~6であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。上記2価の芳香族炭化水素基において、上記置換基A2が結合する位置は特に制限されない。
上記Xは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。上記Xで表される芳香族炭化水素基としては、1価の芳香族炭化水素基であってもよいし、2価以上の芳香族炭化水素基であってもよいが、1価または2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、2価の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。上記Xが2価の芳香族炭化水素基である場合、該Xは好ましくは上記構成単位(U)を構成するXでもある。
上記2価の芳香族炭化水素基は、その好ましい形態も含め、上記Xで表される2価の芳香族炭化水素基と同様である。また上記2価の芳香族炭化水素基に対する主鎖の結合位置は特に制限されない。
上記1価の芳香族炭化水素基としては、たとえば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリフェニル基、ビフェニル基、フェナントリル基等である。なかでも、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、又は、トリフェニル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
またXで表される芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基は、特に制限されない。チオール基であってもよいしチオール基以外の置換基(「置換基A3」とも称する。)であってもよい。上記置換基A3としては、Xで表される上記2価の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基Aと同様の基をあげることができ、好ましい形態も上記置換基Aと同様である。
上記Xで表される芳香族炭化水素基が有する上記置換基の数は、特に限定されないが、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。上記芳香族炭化水素基において、上記置換基が結合する位置は特に制限されない。
上記Xで表される芳香族炭化水素基が有するチオール基の数は、特に制限されないが、得られる硫黄含有重合体の屈折率がより一層高くなる点で、1~6であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
上記Xで表される芳香族炭化水素基が有する上記置換基A3の数は、特に限定されないが、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。上記芳香族炭化水素基において、上記チオール基が結合する位置、上記置換基A3が結合する位置はそれぞれ特に制限されない。
上記一般式(1)において、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表す。
なお、本発明の硫黄含有重合体が構造(V)を複数有する場合、各構造(V)における、上記Xで表される2価の芳香族炭化水素基の種類、上記チオール基の数、結合位置、上記置換基A2の種類、数、結合位置、上記Xで表される芳香族炭化水素基の種類、主鎖の結合位置、該芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基の種類、数、結合位置、上記Yの種類等は同じであっても異なっていてもよい。
上記構造(V)の好ましい実施形態として、たとえば、Xで表される2価の芳香族炭化水素基がフェニレン基である形態があげられる。このようにXが置換基としてチオール基を有するフェニレン基である構造(V)を構造(V-1)とも称する。
上記構造(V-1)における、より好ましい形態として、Xで表される芳香族炭化水素基がフェニレン基および/またはフェニル基である形態があげられる。
上記構造(V-1)において、Xで表されるフェニレン基に結合するチオール基の数は1~4の整数である。該チオール基の数は、硫黄含有重合体の屈折率がより一層高くなる点で、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
上記チオール基の結合位置は特に制限されない。Yが結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、上記チオール基の結合位置はフェニレン基の2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよい。中でも、少なくとも4位または2位に結合していることが好ましく、少なくとも4位に結合していることがより好ましい。
上記構造(V-1)において、Xで表されるフェニレン基は、チオール基以外の置換基(置換基A2)を有していてよいし、有していなくてもよい。置換基A2を有する場合、その個数は1~3であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。置換基A2の結合位置は特に制限されない。置換基A2の種類は上述したとおりであるが、中でもアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1~18のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
上記構造(V-1)において、上記Xで表されるフェニレン基に対する他方の主鎖の結合位置は特に制限されない。該結合位置は、上記Yが結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよい。中でも、2位または3位が好ましく、3位がより好ましい。
上記Xで表されるフェニレン基が有していてもよい置換基は、チオール基であってもよいしチオール基以外の置換基(置換基A3)であってもよい。Xで表される芳香族炭化水素基がフェニル基の場合も同様である。
上記Xで表されるフェニレン基における上記置換基A3としては、上述したとおりであるが、アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1~18のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。Xで表される芳香族炭化水素基がフェニル基の場合も同様である。
上記Xで表されるフェニレン基、フェニル基に結合する上記置換基の総数はそれぞれ0~4、0~5の整数であるが、いずれにおいても好ましくは1~3であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
上記Xで表されるフェニレン基、フェニル基に結合するチオール基の数はそれぞれ0~4、0~5の整数であるが、いずれにおいてもチオール基の数は、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
上記Xで表されるフェニレン基における置換基の結合位置は特に制限されない。Yが結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、上記置換基の結合位置はフェニレン基の2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよい。中でも、少なくとも4位または2位に結合していることが好ましく、少なくとも4位に結合していることがより好ましい。上記置換基がチオール基である場合も好ましい結合位置は同様である。Xで表される芳香族炭化水素基がフェニル基の場合も同様である。
上記Xで表されるフェニレン基に対する主鎖の結合位置は特に制限されないが、Yが結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、他方の主鎖の結合位置は、2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよい。中でも、2位または3位が好ましく、3位がより好ましい。
上記構造(V-1)において、上記Yは、上述したとおりであり、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種であればよい。
本発明の硫黄含有重合体は、上記構造(V-1)を複数含むことが好ましい。
上記構造(V-1)を複数含む場合、硫黄含有重合体に含まれる各構造(V-1)における、Xで表されるフェニレン基に結合するチオール基の数、結合位置、置換基A2の有無、種類、数、結合位置、Xで表されるフェニレン基に対する主鎖の結合位置、Yの種類、Xで表される芳香族炭化水素基の種類、置換基の有無、種類、数、結合位置、Xで表されるフェニレン基に対する主鎖の結合位置等は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
<本発明の硫黄含有重合体における好ましい実施形態>
本発明の硫黄含有重合体において、上記一般式(1)で表される構成単位(U)、上記一般式(2)で表される構造(V)について各々好ましい形態について説明したが、本発明の硫黄含有重合体における好ましい実施形態についてさらに説明する。なお、本発明の硫黄含有重合体における、個々の好ましい実施形態を2つ以上組合せたものもまた、本発明の好ましい実施形態である。たとえば、以下に説明する個々の好ましい実施形態は、構成単位(U)として構成単位(U-1)を含む重合体、構造(V)として構造(V-1)を含む重合体においても適用される。
本発明の硫黄含有重合体は、上記構造(V)を含むものであるが、上記構造(V)における下記一般式(2-1)で表される構造(Va)を繰返し単位として含むことが好ましく、該構造(Va)を繰返し単位として複数含むことがより好ましい。
Figure 2023079178000005
上記式(2-1)における、X、Yは、各々の好ましい形態も含め、上記一般式(2)におけるX、Yと同様である。上記構造(Va)を繰返し単位として複数含む場合においても、各構造における各X、Yは同じであっても異なっていてもよい。より詳細には、硫黄含有重合体に含まれる各構造(V)における、Xで表される2価の芳香族炭化水素基に結合するチオール基の数、結合位置、置換基A2の有無、種類、数、結合位置、Xで表される2価の芳香族炭化水素基に対する主鎖の結合位置、Yの種類、Xで表される芳香族炭化水素基の種類、置換基の有無、種類、数、結合位置、Xで表されるフェニレン基に対する主鎖の結合位置等は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明の硫黄含有重合体が、上記構造(Va)を繰返し単位として含む場合、上記構造(Va)同士が隣接して結合し上記構造(Va)のみが複数連結した構造を有するものであってもよいし、上記構造(Va)と上記構造(Va)以外の上記構成単位(U)とが交互に結合した構造を有するものであってもよいし、これら2つの構造を有するものであってもよい。
本発明の硫黄含有重合体において、上記構成単位(U)含有割合は、該重合体中の全構成単位の合計含有量100モル%に対して、構成単位(U)の含有量が1~100モル%であることが好ましい。より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは80mol%以上である。
なお、構成単位(U)の含有量は、後述する構成単位(UA)、構成単位(UB)および構成単位(UC)の合計含有量でもある。
本発明の硫黄含有重合体においては、上述したように、該重合体を構成する構成単位(U)の少なくとも一部の構成単位(U)が構造(V)を構成する。
本発明の硫黄含有重合体における構造(V)の含有量は特に制限されない。本発明の硫黄含有重合体が有する構成単位(U)100モル%に対する、構造(V)の含有量が、1~100モル%が好ましく、5~50モル%がより好ましく、10~20モル%がさらに好ましい。なお、上記構造(V)の含有量は、本発明の硫黄含有重合体が有する構成単位(U)の総量に対する、構造(V)を構成する構成単位(U)の割合を意味し、上記構造(V)の含有量は、構成単位(U)を構成するX100モル%に対する、構造(V)を構成するXの含有量でもある。
本発明の硫黄含有重合体において、構造(V)中の2価の芳香族炭化水素基に置換基として結合するチオール基の含有量は、特に制限されないが、本発明の硫黄含有重合体を構成する構成単位(U)の合計含有量100モル%に対する上記チオール基の含有量が1~400モル%が好ましく、5~100モル%がより好ましく、10~50モル%がさらに好ましい。
本発明の硫黄含有重合体において、全構成単位の2価の芳香族炭化水素基に置換基として結合するチオール基の含有量は、特に制限されないが、本発明の硫黄含有重合体を構成する芳香族炭化水素基の合計含有量100モル%に対する上記チオール基の含有量が1~400モル%が好ましく、5~100モル%がより好ましく、10~50モル%がさらに好ましい。
本発明の硫黄含有重合体は、構成単位(U)の置換基としてチオール基以外の置換基を有していることが好ましい。上記チオール基以外の置換基の含有量は、特に制限されないが、本発明の硫黄含有重合体を構成する構成単位(U)の合計含有量100モル%に対する上記チオール基以外の置換基の含有量が1~200モル%が好ましく、5~100モル%がより好ましく、10~50モル%がさらに好ましい。上記チオール基以外の置換基がアルキル基であり、その含有量が上記範囲であることが特に好ましい。
本発明の硫黄含有重合体が有する構成単位(U)の内、構造(V)を構成する構成単位(U)以外の構成単位(U)としては、Xで表される2価の芳香族炭化水素基が置換基としてチオール基を有しない形態(a)、Yが結合(ここでいう結合は、Xとの結合とは反対側の結合を意味する。)する基が芳香族炭化水素基とは異なる基である形態(b)等があげられる。
上記形態(a)である構成単位(U)の具体例としては、Xで表される2価の芳香族炭化水素基が置換基を有しない形態、Xで表される2価の芳香族炭化水素基が置換基Aのみを有する形態があげられる。
上記形態(b)における「芳香族炭化水素基とは異なる基」としては、たとえば、水素原子、S-R基等があげられる。上記S-R基において、Sは硫黄原子を表し、Rは炭化水素基を表し、SがYに結合する。Rで表される炭化水素基としては、置換基を有していてもよい、1価の芳香族炭化水素基、1価の脂肪族炭化水素基等が好ましく、中でも置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。上記炭化水素基が有していてもよい置換基は、チオール基であってもよいし、チオール基以外の置換基であってもよく、該置換基としては上記の置換基Aと同様の基をあげることができる。
上記形態(b)である構成単位(U)は、たとえば、本発明の硫黄含有重合体の高分子鎖の末端付近に存在することができる。
本発明の硫黄含有重合体において、該重合体が有する構成単位(U)におけるYの種類、その含有割合等によって、該重合体の屈折率等の光学特性、熱的特性、機械的特性等を制御することができる。
上記一般式(1)におけるYがSである構成単位(U)を構成単位(UA)、YがSOである構成単位(U)を構成単位(UB)、YがSOである構成単位(U)を構成単位(UC)とも称する。
本発明の硫黄含有重合体は、上記の構成単位(UA)、構成単位(UB)、構成単位(UC)の少なくともいずれかを有するが、これらの構成単位の内、1種のみを有する形態であってもよいし、これらの構成単位の中から2種以上含む形態であってもよい。2種以上含む形態の具体例としては、たとえば、構成単位(UA)および構成単位(UB)を有する形態、構成単位(UA)および構成単位(UC)を有する形態、構成単位(UB)および構成単位(UC)を有する形態、構成単位(UA)、構成単位(UB)および構成単位(UC)を有する形態があげられる。
硫黄含有重合体の屈折率が高くなり易いという観点から、Yとしては、Sおよび/またはSOが好ましく、SOが好ましい。言い換えれば、本発明の硫黄含有重合体は、構成単位(UA)および/または構成単位(UB)を有する形態が好ましく、構成単位(UB)を含む形態がより好ましい。
本発明の硫黄含有重合体は、上記の構成単位を複数有することが好ましく、上記の構成単位を繰返し単位として含むことがより好ましい。上記の構成単位を複数含む場合、ブロック共重合体のような形態であってもよいし、ランダム共重合体のような形態であってもよい。本発明の硫黄含有重合体に含まれる上記の構成単位における他の構成、たとえば2価の芳香族炭化水素基の種類、2価の芳香族炭化水素基における置換基の種類、数、結合位置等は同じであっても異なっていてもよい。
本発明の硫黄含有重合体における、各構成単位の組合せ各構成単位の含有割合は、上記硫黄含有重合体を用いる目的や用途に応じて適宜選択することができる。例えば、相対的に、屈折率のより高い組成物が得られ易い観点からは、上記構成単位(UA)の含有割合が高い硫黄含有重合体が好ましい。また、上記硫黄含有重合体の加工性に優れる観点から、上記構成単位(UB)および/または(UC)を含有する硫黄含有重合体が好ましく、屈折率と加工性の双方に優れる観点から、上記構成単位(UB)を主成分とする硫黄含有重合体が好ましい。
高屈折率を重視する観点では、上記硫黄含有重合体において、上記構成単位(UA)の含有量は、該重合体中の構成単位(U)の含有量100モル%に対して、50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%がより好ましく、95~100モル%であることがさらに好ましい。それぞれの場合における残分が、該重合体における上記構成単位(UB)及び構成単位(UC)の合計含有量である。
なお、重合体中の構成単位(U)の含有量とは、重合体中の構成単位(UA)、構成単位(UB)および構成単位(UC)の合計含有量を意味する。以下、同様である。
加工性を高める観点では、上記硫黄含有重合体において、上記構成単位(UB)および構成単位(UC)の合計含有量は、該重合体中の構成単位(U)の含有量100モル%に対して、50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%がより好ましく、95~100モル%であることがさらに好ましい。それぞれの場合における残分が、該重合体における上記構成単位(UA)の含有量である。
溶解速度を高め、且つ屈折率をより高いものとする観点からは、上記硫黄含有重合体において、上記構成単位(UB)の含有量は、該重合体中の構成単位(U)の含有量100モル%に対して、20~80モル%であることが好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~60モル%であることがさらに好ましい。それぞれの場合における残分が、該重合体における上記構成単位(UA)および(UC)の合計含有量である。本発明の硫黄含有重合体における、上記構成単位(U)のYが異なる場合の(UA)等の各構成単位の組合せや各構成単位の含有割合等に関する好ましい形態は、上記構成単位(U)が上記構成単位(U-1)である場合についても、そのまま適用される。
本発明の硫黄含有重合体において、該重合体が有する構造(V)におけるYの種類、その含有割合等によっても、該重合体の屈折率等の光学特性、熱的特性、機械的特性等を制御することができる。上記YがSである構造(V)を構造(VA)、YがSOである構造(V)を構造(VB)、YがSOである構造(V)を構造(VC)とも称する。本発明の硫黄含有重合体は、上記の構造(VA)、構造(VB)、構造(VC)の少なくともいずれかを有するが、これらの構造の内、1種のみを有する形態であってもよいし、これらの構造の中から2種以上含む形態であってもよい。2種以上含む形態の具体例としては、たとえば、構造(VA)および構造(VB)を有する形態、構造(VA)および構造(VC)を有する形態、構造(VB)および構造(VC)を有する形態、構造(VA)、構造(VB)および構造(VC)を有する形態があげられる。
としてSおよび/またはSOが好ましく、SOが好ましい。言い換えれば、本発明の硫黄含有重合体の中でも、構造(VA)および/または構造(VB)を有する形態が好ましく、構造(VB)を有する形態がより好ましい。
本発明の硫黄含有重合体において、構造(VA)~(VC)等における各構造の含有割合は、上記硫黄含有重合体を用いる目的や用途に応じて適宜選択することができる。例えば、屈折率のより高い硫黄含有重合体となり易い観点からは、上記構造(VA)の含有割合が高いことが好ましく、硫黄含有重合体の加工性に優れる観点から、上記構造(VB)および/または(VC)の含有割合が高いことが好ましく、屈折率と加工性の双方に優れる観点から、上記構成単位(VB)の含有割合が高いことが好ましい。
高屈折率を重視する観点では、本発明の硫黄含有重合体において、上記構造(VA)の含有量は、該重合体中の構造(V)の含有量100モル%に対して、50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%がより好ましく、95~100モル%であることがさらに好ましい。それぞれの場合における残分が、該重合体における上記構造(VB)及び構造(VC)の合計含有量である。なお、重合体中の構造(V)の含有量とは、重合体中の構造(VA)、構造(VB)および構造(VC)の合計含有量を意味する。以下、同様である。
加工性を高める観点では、本発明の硫黄含有重合体において、上記構造(VB)および構造(VC)の合計含有量は、該重合体中の構造(V)の含有量100モル%に対して、50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%がより好ましく、95~100モル%であることがさらに好ましい。それぞれの場合における残分が、該重合体における上記構造(VA)の含有量である。
溶解速度を高め、且つ屈折率をより高いものとする観点からは、本発明の硫黄含有重合体において、上記構造(VB)の含有量は、該重合体の構造(V)の含有量100モル%に対して20~80モル%であることが好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~60モル%であることがさらに好ましい。それぞれの場合における残分が、該重合体における上記構造(VA)および(VC)の合計含有量である。
本発明の硫黄含有重合体における、上記構造(V)のYが異なる場合の(VA)等の各構造の組合せや各構造の含有割合等に関する好ましい形態は、上記構造(V)が上記構造(V-1)である場合についても、そのまま適用される。
上述したように、本発明の硫黄含有重合体は、上記構成単位(U)を有し、且つ、構造(V)を有する。よって構成単位(U)に含まれる硫黄原子Sを含み、該重合体が有する構成単位が構成単位(UB)、(UC)を含む場合は、これらの構成単位に含まれる、硫黄原子Sに結合した酸素原子Oを含む。本発明の硫黄含有重合体は、上記酸素原子Oと上記硫黄原子Sとの元素含有比率(O/S)が、0.1~1.5であることが好ましい。上記元素含有比率(O/S)は、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることが更に好ましく、屈折率をより一層高くすることができる点で、1.3以下であることがより好ましく、1.1以下であることが更に好ましい。上記元素含有比率は、X線光電子分光装置(XPS)を用いて、酸素原子の1s軌道(O1s)、炭素原子の1s軌道(C1s)、硫黄原子の2p軌道(S2p)のピーク強度を評価測定することにより求めることができる。
本発明の硫黄含有重合体は、鎖状構造であってもよいし環状構造であってもよいし、これらの混合物であってもよい。中でも本発明の硫黄含有重合体は、溶解性や機械強度に優れる観点から、鎖状構造を主成分とするものが好ましい。具体的には本発明の硫黄含有重合体は、硫黄含有重合体100質量%に対する鎖状構造からなる重合体の含有量が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の硫黄含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、500~10000000であることが好ましい。重量平均分子量が上述の範囲であると、光学材料として好適に使用することができる。上記重量平均分子量は、機械特性向上の観点で、1000以上であることがより好ましく、1100以上であることがより好ましく、1500以上であることが更に好ましい。一方、無機粒子の分散性向上の観点で、1000000以下であることがより好ましく、100000以下であることが更に好まし、10000以下であることが更に好ましい。
本発明の硫黄含有重合体の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1以上、10以下であることが好ましい。上記分散度が上述の範囲であると、成形が容易となる。成形性がより一層向上しうる点で、上記分散度は、5以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。上記重量平均分子量、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定して求めることができ、具体的には後述する実施例に記載の方法により求めることができる。分散度は、重量平均分子量を数平均分子量で除することにより求めることができる。
本発明の硫黄含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が80~250℃であることが好ましい。ガラス転移温度が上述の範囲であると、成形加工を容易に行うことができる。上記ガラス転移温度は、耐熱性を高くするという観点で、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましく、成形加工を容易に行うという観点で、200℃以下であることがより好ましい。上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで昇温(昇温速度10℃/分)して得られたDSC曲線から、ベースラインと変曲点での接線の交点により評価する方法により求めることができる。
本発明の硫黄含有重合体は、屈折率が1.69以上であることが好ましい。屈折率が上述の範囲であると、光学材料(部材)等に好適に使用することができる。上記屈折率は、1.7以上であることがより好ましく、1.71以上であることが更に好ましい。上記屈折率は、測定試料として、上記重合体を用いて厚み50nmの膜を製膜し、分光エリプソメーターUVISEL(HORIBA Scientific社製)を使用し、NaD線(589nm)を用いて測定することにより求めることができる。
本発明の硫黄含有重合体は、アッベ数が10以上であることが好ましい。アッベ数が上述の範囲であると、光分散が小さく、レンズに適した光学材料とすることができる。上記アッベ数は、15以上であることがより好ましく、18以上であることが更に好ましい。上記アッベ数は、光分散性を調整するという観点で、60以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましい。上記アッベ数は、上記屈折率の測定時と同様の方法で、本発明の重合体を用いて製膜し、上記分光エリプソメーターを使用してD線(589.3nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率を測定し、下記の計算式を用いて求めることができる。
アッベ数(vD)=(nD-1)/(nF-nC)。
式中、nD、nF、nCはそれぞれ、フラウンホーファーのD線(589.3nm)、F線(486.1nm)、C線(658.3nm)における屈折率を表す。
本発明の硫黄含有重合体は、重金属量が硫黄含有重合体(固形分)に対して1200ppm以下であることが好ましい。硫黄含有重合体が重金属を含むと加熱により着色する原因となり易い。そのような観点から、上記重金属含有量は、本発明の硫黄含有重合体(固形分)に対して500ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが更により好ましい。一方、本発明の硫黄含有重合体を含む硫黄含有重合体含有組成物を用いて得られる成形物のじん性が高くなる傾向にある観点からは、上記重金属含有量は、本発明の硫黄含有重合体(固形分)に対して、0.0001ppm以上、0.001ppm以上であることがより好ましく、0.01ppm以上であることが更に好ましい。上記重金属含有量は、ICP発光分光分析により求めることができる。
本発明の硫黄含有重合体は、鉄含有量が硫黄含有重合体(固形分)に対して10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、500ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが更により好ましい。一方、下限値については重金属量の場合と同様の理由から、硫黄含有重合体(固形分)に対して0.01ppm以上であることがより好ましく、0.1ppm以上であることが更に好ましい。上記鉄含有量は、上記重金属含有量と同様の分析方法により求めることができる。
2.本発明の硫黄含有重合体の製造方法
本発明の硫黄含有重合体の製造方法は、特に制限されないが、下記一般式(3)で表される構成単位(W)を有する重合体に、スルホン化剤および還元性物質を反応させる工程を含むことを特徴とする硫黄含有重合体の製造方法が好ましい。
Figure 2023079178000006
(式中、Xは、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表す。)
上記製造方法について詳述する。上記構成単位(W)を有する重合体を重合体(W)とも称する。上記工程により、上述した本発明の硫黄含有重合体が得られる。上記工程をチオール基導入工程(S)とも称する。
<チオール基導入工程(S)>
チオール基導入工程(S)は、重合体(W)に、スルホン化剤および還元性物質を反応させる工程である。上記一般式(3)中、Xは、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。上記2価の芳香族炭化水素基としては、上記Xで表される2価の芳香族炭化水素基として例示した基と同様の基をあげることができる。
上記置換基は、チオール基であってもよいし、チオール基以外の置換基(「置換基A4」とも称する。)であってもよい。上記2価の芳香族炭化水素基は、好ましくは、置換基を有しないか、置換基を有する場合は置換基A4のみを有することが好ましい。置換基A4は、上記置換基Aとして例示した基と同様の基をあげることができ、好ましい形態も同様である。
上記2価の芳香族炭化水素基における置換基の結合数は、特に制限されないが、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。置換基が置換基A4である場合も同様である。上記2価の芳香族炭化水素基における置換基の結合位置は、特に制限されない。
上記Xで表される2価の芳香族炭化水素基は、フェニレン基であることが好ましい。
上記Xで表される2価の芳香族炭化水素基がフェニレン基である構成単位(W)を構成単位(W-1)とも称する。上記構成単位(W-1)における、フェニレン基に結合する上記置換基の数、置換基の結合位置、フェニレン基に対する主鎖の結合位置等は特に制限されない。
上記構成単位(W-1)においてフェニレン基に結合する上記置換基の結合数は、1~4であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。置換基が置換基A4である場合も同様である。上記構成単位(W-1)においてフェニレン基に結合する置換基の結合位置は、Yが結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、置換基の結合位置はフェニレン基の2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよいが、4位または2位が好ましく、4位がより好ましい。置換基が置換基A4である場合も同様である。
上記構成単位(W―1)において、Yが結合するフェニレン基の炭素原子を1位としたとき、フェニレン基に対する他方の主鎖の結合位置は、フェニレン基の2位であってもよいし、3位であってもよいし、4位であってもよい。中でも、2位または3位が好ましく、3位がより好ましい。
上記重合体(W)は、構成単位(W)を複数有することが好ましく、構成単位(W)を繰返し単位として含むことがより好ましい。重合体(W)は、構成単位(W-1)を複数有することが好ましく、構成単位(W-1)を繰返し単位として含むことがより好ましい。
上記重合体(W)が構成単位(W)を複数有する場合、重合体(W)に含まれる各構成単位(W)における、2価の芳香族炭化水素基の種類、Xで表される2価の芳香族炭化水素基に結合する置換基の種類、数、結合位置、2価の芳香族炭化水素基に対する主鎖の結合位置、Yの種類等は同じであってもよいし、異なっていてもよい。構成単位(W-1)を複数含む重合体(W)においても同様のことがいえる。
上記一般式(3)中、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表す。重合体(W)において、該重合体が有する構成単位(W)におけるYの種類、その含有割合等によって、得られる本発明の硫黄含有重合体の光学特性、熱的特性、機械的特性等を制御することができる。
上記一般式(3)におけるYがSである構成単位(W)を構成単位(WA)、YがSOである構成単位(W)を構成単位(WB)、YがSOである構成単位(W)を構成単位(WC)とも称する。
上記重合体(W)は、上記の構成単位(WA)、構成単位(WB)、構成単位(WC)の少なくともいずれかを有するが、これらの構成単位の内、1種のみを有する形態であってもよいし、これらの構成単位の中から2種以上含む形態であってもよい。2種以上含む形態の具体例としては、たとえば、構成単位(WA)および構成単位(WB)を有する形態、構成単位(WA)および構成単位(WC)を有する形態、構成単位(WB)および構成単位(WC)を有する形態、構成単位(WA)、構成単位(WB)および構成単位(WC)を有する形態があげられる。YとしてSおよび/またはSOが好ましく、SOが好ましい。構成単位(W)を有する硫黄含有重合体は、構成単位(WA)および/または構成単位(WB)を有する形態が好ましく、構成単位(WB)を含む形態がより好ましい。
上記重合体(W)は、上記の各構成単位の内、少なくとも1種を複数有することが好ましく、上記の各構成単位の内、少なくとも1種を繰返し単位として含むことがより好ましい。このように構成単位を複数含む場合、ブロック共重合体のような形態であってもよいし、ランダム共重合体のような形態であってもよい。
上記重合体(W)における、構成単位(WA)、(WB)、(WC)等の各構成単位の含有割合は、本発明の製造方法により得られる本発明の硫黄含有重合体を用いる目的や用途に応じて適宜選択することができる。すなわち、本発明の硫黄含有重合体において、屈折率や加工性等のいくつかの観点から、構成単位(UA),(UB)、(UC)等の好ましい含有割合を例示したが、重合体(W)における構成単位(WA)、(WB)、(WC)等の各構成単位の含有割合は、重合体(W)を用いて製造する本発明の硫黄含有重合体における各構成単位(UA),(UB)、(UC)の含有割合となるよう、適宜選択すればよい。
例えば、屈折率のより高い硫黄含有重合体を製造する場合、用いる重合体(W)としては上記構成単位(WA)の含有割合が高い重合体が好ましい。また、加工性に優れる硫黄含有重合体を製造する場合、用いる重合体(W)としては上記構成単位(WB)および/または(WC)を含有する重合体が好ましく、屈折率と加工性の双方に優れる硫黄含有重f重合体を用いることが好ましい。具体的な好ましい含有割合は、本発明の硫黄含有重合体において示した各構成単位((UA),(UB)、(UC))の好ましい含有割合に準じる。
本発明の製造方法における、上記構成単位(W)のYが異なる場合の(WA)等の各構成単位の組合せや各構成単位の含有割合等に関する好ましい形態は、上記構成単位(W)が上記構成単位(W-1)である場合についても、そのまま適用される。
上記重合体(W)において、上記構成単位(W)の含有割合は、該重合体中の全構成単位の合計含有量100モル%に対して、構成単位(W)の含有量が1~100モル%であることが好ましい。より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上である。
なお、構成単位(W)の含有量は、上記の構成単位(WA)、構成単位(WB)および構成単位(WC)の合計含有量である。
上記重合体(W)の重量平均分子量、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、本発明の製造方法により得られる硫黄含有重合体の重量平均分子量、分散度を考慮して適宜選択すればよいが、通常、重合体(W)におけるこれらの好ましい範囲は、本発明の硫黄含有重合体において説明したこれらの好ましい範囲に準じ、該説明を準用することができる。一方、製法上、チオール基導入反応を行い易い観点から、重量平均分子量は、200~1000000であることが好ましく、500~50000であることがより好ましく、1000~10000であることがさらに好ましい。
上記チオール基導入工程(S)において用いることのできるスルホン化剤は、芳香族炭化水素基にスルホニル基を導入できる化合物であれば、特に制限されない。たとえば、濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、クロロスルホニル等があげられる。中でも、クロロスルホン酸が好ましい。
上記スルホン化剤の使用量は、特に制限されないが、重合体(W)100質量%に対し、スルホン化剤を0.1~10000質量%で用いることが好ましい。より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、また、より好ましくは1000質量%以下、さらに好ましくは500質量%以下である。
上記チオール基導入工程(S)において用いることのできる還元性物質としては、特に制限されないが、たとえば、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、ブチルリチウム、ジボラン、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリブチルスズ、リチウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド等の金属あるいは半金属の水素化物やその錯化合物(アート錯体);金属スズ、金属亜鉛等の金属;鉄の2価イオン、スズの2価イオン等の低原子価金属イオン含有化合物;ギ酸、シュウ酸等の酸系有機化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン系有機化合物;ヒドラジン等の無機化合物が好ましく挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも金属が好ましく、金属亜鉛がより好ましい。亜鉛を用いた場合、重合体(W)を製造する過程で触媒に用いた重金属が残存していた場合でも該重金属を除去することができ、着色の抑制された、硫黄含有重合体が得られ易い。
また還元性物質として金属を用いる場合、その形態は特に制限されないが、微粒子状であることが好ましい。
上記還元性物質の使用量は、特に制限されないが、重合体(W)100質量%に対し、還元性物質を0.01~1000質量%で用いることが好ましい。より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、また、より好ましくは100質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
上記チオール基導入工程(S)においては、重合体(W)に含まれる構成単位(W)におけるXで表される2価の芳香族炭化水素基に、スルホン化剤によりスルホニル基が導入され、該スルホニル基が還元性物質の作用によりチオール基に還元されるメカニズムで反応が進行すると考えられる。
上記重合体(W)に対する、スルホン化剤、還元性物質の混合順序は特に制限されない。たとえば、重合体(W)にスルホン化剤を混合し、上記2価の芳香族炭化水素基にスルホニル基を導入する反応を行わせた後、スルホニル基が導入された重合体に、還元性物質を混合し、導入されたスルホニル基をチオール基に還元する反応を行わせる方法(1)、重合体(W)にスルホン化剤および還元性物質を実質的に同時に混合する方法(2)、重合体(W)に還元性物質を先に混合し、次にスルホン化剤を混合する方法(3)等があげられる。中でも方法(1)が好ましい。
上記チオール基導入工程(S)における反応は、溶媒中で行われることが好ましく、
溶媒としては、たとえば、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、スルホラン等のスルホン系溶剤;1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン(DMI)等の尿素系溶剤;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;クロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素;シクロヘキサノン等のカルボニル化合物等の有機溶剤;酢酸エチル等のエステル等の有機溶剤、水が好ましく挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でもスルホン系溶剤、尿素系溶剤がより好ましく、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、スルホランがさらに好ましい。上記溶媒の使用量は特に制限されないが、重合体(W)100質量部に対し、0.5~50000質量部であることが好ましく、より好ましくは10~5000質量部である。
上記チオール基導入工程(S)における反応温度は、上記のスルホン化反応および還元反応が進行する温度であれば、特に限定されないが、-20~250℃であることが好ましく、-5℃以上がより好ましく、5℃以上が更に好ましく、また、副反応を抑制する点で、150℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。上記反応の反応時間は、特に限定されないが、0.1~100時間であることが好ましく、0.5時間以上がより好ましく、2時間以上がより好ましく、また生産性に優れる観点から、50時間以下であることがより好ましく、20時間以下であることがさらに好ましい。
上記チオール基導入工程(S)において、スルホン化剤および還元性物質を用いた反応により、重合体(W)中の構成単位(W)の2価の芳香族炭化水素基にチオール基が導入された重合体(「重合体(S)」とも称する)を含む組成物を得ることができる。
上記重合体(S)は、本発明の硫黄含有重合体として用いることができるが、上記組成物には、少なくとも上記チオール基導入工程(S)で用いたスルホン化剤、還元性物質、副生成物等に由来する不純物を含む。これらの不純物は硫黄含有重合体の光学特性や熱的特性等の物性に影響し得る。よって上記組成物より重合体(S)を単離し精製することは、本発明の硫黄含有重合体の品質向上の観点から好ましい。よって本発明の硫黄含有重合体の製造方法は、精製工程を有するものであることが好ましい。精製工程については後述する。
<本発明の硫黄含有重合体の製造方法における好ましい実施形態>
本発明の硫黄含有重合体の製造方法は、上記チオール基導入工程(S)を含むことを特徴とするが、さらに、上記チオール基導入工程(S)で用いる重合体(W)を製造する工程および/または精製工程を含むことが好ましい。上記チオール基導入工程(S)で用いる重合体(W)を製造する方法は特に制限されないが、たとえば、芳香族ジスルフィド化合物および/または芳香族チオール化合物を含む単量体成分を酸化重合し、必要に応じて、酸化重合により得られた重合体を酸化する酸化工程を含む製造方法が好ましい。上記製造方法において、重合反応時の条件を選択することにより、また酸化工程をさらに行うことにより、上記重合体(W)における、たとえば、上記構成単位(WA)、(WB)及び(WC)の含有比率等を調整することができる。その結果、重合体を構成する各構成単位(UA)、(UB)及び(UC)の含有比率等が制御された本発明の硫黄含有重合体を製造することが可能となる。
よって、本発明の製造方法における好適な実施形態としては、たとえば、上記チオール基導入工程(S)を含み、さらに、重合工程(P)、あるいは重合工程(P)および酸化工程(O)を含む製造方法である。上記製造方法において、重合工程(P)を行い、得られた重合体を重合体(W)としてチオール基導入工程(S)を行う方法、または、重合工程(P)後に酸化工程(O)を行い、得られた重合体を重合体(W)としてチオール基導入工程(S)を行う方法がより好ましい。
本発明の製造方法は、上述したように、精製工程(F)を含むことが好ましい。精製工程を行う時期は特に制限されず、重合工程(P)後であってもよいし、酸化工程(O)後であってもよいし、チオール基導入工程(S)後であってもよい。各工程について詳述する。
上記重合工程(P)は、芳香族ジスルフィド化合物および/または芳香族チオール化合物を含む単量体を含む単量体成分を酸化重合して、芳香環がスルフィド基(-S-)等を介して結合してなる構造を繰返し含む重合体を得る重合工程である。上記酸化重合により得られる重合体を重合体(P)とも称する。
上記酸化重合は、単量体成分を加熱溶融した状態で行うこともできるが、単量体成分を溶媒に分散または溶解した組成物中で行うことが好ましい。なお、上記組成物、すなわち、単量体成分と溶媒とを含む組成物を原料組成物とも称し、重合反応が開始してから重合反応が終了するまでの組成物を反応組成物とも称する。また重合反応により得られた組成物を重合体組成物とも称する。
上記単量体成分としては、芳香族ジスルフィド化合物および/または芳香族チオール化合物を含む。これらの中でも、芳香族ジスルフィド化合物を含むことが好ましい。
上記芳香族ジスルフィド化合物としては、下記一般式(4)で表されるジアリールジスルフィド化合物がより好ましく、上記芳香族チオール化合物としては下記一般式(5)で表されるチオアリール化合物がより好ましい。
Figure 2023079178000007
Figure 2023079178000008
(式(4)及び(5)中、A及びAは、同一又は異なって、置換基を有してもよい1価の芳香族炭化水素基を表す。)
及びAで表される上記1価の芳香族炭化水素基としては、たとえば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリフェニル基、ビフェニル基、フェナントリル基等である。なかでも、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、又は、トリフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。A及びAで表される上記1価の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては上記一般式(3)中のXで表される2価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基をあげることができ、置換基の数や芳香族炭化水素基への結合位置は上記一般式(3)中のXで表される2価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基の場合に準じる。
上記ジアリールジスルフィド化合物としては、ジフェニルジスルフィド化合物が好ましく、上記チオアリール化合物としてはベンゼンチオール化合物が好ましい。中でもジフェニルジスルフィド化合物が好ましい。これらの化合物は、置換基を有していてもよく、置換基の種類は上記ジアリールジスルフィド化合物、上記チオアリール化合物における置換基と同様である。
上記ジフェニルジスルフィド化合物が有することができる置換基の数は0~10個であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。上記ジフェニルジスルフィド化合物におけるフェニル基に対する置換基の結合位置は特に制限されないが、ジスルフィド基が結合した炭素原子(1位)に対し、パラ位(4位)を含むことが好ましい。
上記ベンゼンチオール化合物が有することができる置換基の数は0~5個であり、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1~2である。上記ベンゼンチオール化合物におけるフェニル基に対する置換基の結合位置は特に制限されないが、チオール基が結合した炭素原子(1位)に対し、パラ位(4位)を含むことが好ましい。
上記ジフェニルスルフィド化合物の具体的としては、例えば、3,3’-ジメチルジフェニルジスルフィド、2,2’-ジメチルジフェニルジスルフィド、4,4’-ジメチルジフェニルジスルフィド(ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド)、2,2’,3,3’-テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’-テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’-テトラメチルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサメチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタメチルジフェニルジスルフィド、2,2’-ジエチルジフェニルジスルフィド、3,3’-ジエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’-テトラエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’-テトラエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’-テトラエチルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’-テトラエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサエチルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタエチルジフェニルジスルフィド、2,2’-ジプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’-ジプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’-テトラプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’-テトラプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’-テトラプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’-テトラプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’-ジイソプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’-ジイソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,6,6’-テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’-テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,5,5’-テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、3,3’,5,5’-テトライソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサイソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサイソプロピルジフェニルジスルフィド、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタイソプロピルジフェニルジスルフィド等が挙げられる。
上記ベンゼンチオール化合物の具体的としては、例えば、3-メチルベンゼンチオール、2-メチルベンゼンチオール、4-メチルベンゼンチオール、チオフェノール(ベンゼンチオール)、2,3-ジメチルベンゼンチオール、2,5-ジメチルベンゼンチオール、2,6-ジメチルベンゼンチオール、3,5-ジメチルベンゼンチオール等が挙げられる。
上記ジスルフィド化合物は、チオール化合物の酸化によっても調製することができる。そのため、上記重合工程においては、上記ジスルフィド化合物の前駆体として、チオール化合物を使用することもできる。チオール化合物2分子を酸化的に結合させることにより、ジスルフィド化合物を得ることができる。上記酸化的に結合させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
上記酸化重合は、特に限定されないが、キノン系化合物を用いる酸化重合や、触媒を用いる酸化重合が好ましい。廃液量が少なくて済む観点より、触媒を用いる酸化重合がより好ましい。
触媒を用いる酸化重合について説明する。たとえば、溶媒に上記単量体成分および触媒を溶解または分散させた組成物を加熱することにより、重合反応を行うことがより好ましい。上記触媒としては、特に限定されないが、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)等の金属元素を含む物質が好ましく、1種または2種以上を混合して用いることができる。
上記金属元素を含む物質の中でも、酸化重合に対する触媒活性が高い点で、金属元素としてバナジウム、鉄をそれぞれ含む物質(これらをそれぞれバナジウム含有物質、鉄含有物質とも称する)が好ましい。上記バナジウム含有物質としては、バナジウムを含む金属、バナジウム化合物分子内にV=O結合を有するオキソバナジウム化合物が好ましい。上記オキソバナジウム化合物としては、例えば、バナジルアセチルアセトナート、オキソバナジウムサレン錯体、N,N’-ビスサリチリデンエチレンジアミンオキソバナジウム、フタロシアニンオキソバナジウム、テトラフェニルポルフィリンオキソバナジウム等が挙げられる。鉄含有物質としては、分子内に塩素を有する鉄化合物が好ましい。また酸化数が3以上の鉄を含む化合物が好ましい。そのような鉄含有物質としては、たとえば、塩化第二鉄(Fe(Cl))、5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィン塩化鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)等があげられる。
上記重合において用いる上記触媒の量は、特に制限されないが、上記単量体成分100モル%に対する、上記触媒に含まれる金属元素の合計含有量が、0.001~50モル%の範囲であることが好ましく、触媒残差による物性への影響が小さくなる傾向がある観点から、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、分子量が高い硫黄含有重合体が得られ易いと観点から0.01モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上がさらに好ましく、1モル%以上が特に好ましい。
上記重合は、酸素存在下で行うことが好ましい。酸素存在下で行うことにより、酸化重合反応が促進される。具体的な実施形態としては、上記重合反応中に酸素含有ガスを供給する方法が好ましい。すなわち、上記重合は、酸素含有ガスの供給下で行うことが好ましい。たとえば、重合反応中、気相部分に酸素含有ガスを供給する方法、重合反応中の反応組成物に酸素含有ガスをバブリングする方法等が採用される。酸化重合を促進し易い観点から、重合反応中の反応組成物に酸素含有ガスを連続的に供給する方法が好ましく、中でもバブリングする方法が好ましい。
酸素含有ガスは酸素分子(O)を含有するガスであることが好ましい。酸素含有ガスは酸素分子(O)以外のガス成分を含んでいてもよい。酸素含有ガスに含まれる酸素分子(O)以外のガス成分としては、特に制限されないが、好ましくは、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)等の希ガス類;窒素(N)などの不活性ガスがあげられる。上記不活性ガス以外に炭酸ガス(CO)、水蒸気等が含まれていてもよい。
酸素含有ガスにおける酸素分子(O)の含有率は、特に制限されないが、常温(25℃)、1気圧下において、酸素含有ガスにおける酸素分子(O)の体積割合が酸素含有ガス100体積%に対し0.1~100体積%であることが好ましい。より好ましくは、1体積%以上であり、さらに好ましくは10体積%以上である。上限は60体積%以下がより好ましく、さらに好ましくは、30体積%以下である。酸素含有ガスにおける残分は、たとえば不活性ガスである。
酸素含有ガスとしては、特に制限されないが、たとえば、酸素ガス、酸素と窒素との混合ガス、空気等があげられる。経済性に優れる観点から、空気を用いることが好ましい。酸素含有ガス中の水蒸気濃度は、特に制限されないが、1000g/m以下が好ましく、10g/m以下がより好ましく、1g/m以下が更に好ましく、0.1g/m以下が最も好ましく、乾燥空気が好ましい。
酸素含有ガスの供給量は、反応速度を促進でき且つ制御し易い観点から、反応組成物の総容積1mあたり、1分間当たりの酸素(O)の供給量(供給速度)として、0.00002m/分~2m/分であることが好ましく、より好ましくは0.0001~0.2m/分以上であり、さらに好ましくは0.0002~0.02m/分以上である。
上記重合工程において、さらに酸および/またはその塩を用いることが好ましい。
上記触媒と共に酸および/またはその塩を併用することにより、重合反応により得られる重合体の分子量を高い範囲まで制御し易くなり、短時間でも、高分子量の硫黄含有重合体が得られ易くなる。
上記酸としては、ブレンステッド酸が好ましく、中でも、酸解離定数が-19~4である酸が好ましい。より好ましくは酸解離定数が3以下であり、また-8以上である。酸解離定数が-19~4の酸としては、たとえば、リン酸、硝酸、硫酸、過硫酸、亜硫酸、塩酸、臭化水素酸等の無機酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸等のスルホン酸;クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸等のクロロカルボン酸;フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロプロピオン酸、パーフルオロ酪酸、4-フルオロ安息香酸等のフルオロカルボン酸等があげられる。なかでも、10-カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、過硫酸が好ましい。
上記酸の塩としては、上記酸の塩であれば特に制限されないが、たとえば、ナトリウム、カリウム等の周期律表第1族金属元素、マグネシウム、カルシウム等の周期律表第2族金属元素、アンモニウム等と上記酸との塩が好ましい。中でも、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム等が好ましい。上記酸および/またはその塩は、1種のみ使用してもよいし、2種以上使用してもよい。酸および/またはその塩の使用量は、単量体成分100モル%に対し、0.01~100モル%であることが好ましく、0.1~10モル%であることがより好ましく、0.5~5モル%であることが更に好ましい。
上記重合においては、溶媒を使用してもよい。上記溶媒は特に制限されないが、好ましい溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。上記溶媒の使用量は特に制限されないが、原料である上記単量体成分100質量部に対し、1~10000質量部であることが好ましく、より好ましくは10~1000質量部である。上記溶媒の中でも、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、シクロペンチルメチルエーテル等の非ハロゲン系溶媒を使用することが好ましい。
上記重合は、溶媒の沸点以下の温度で常圧で重合を行ってもよいし、リフラックス条件で重合を行ってもよいし、沸点以上の温度に加熱しながら加圧状態で重合を行ってもよい。上記重合において、重合温度は酸化重合が進行する温度であれば、特に限定されないが、安価な設備で酸化重合反応を行いやすい点で、0~250℃であることが好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましく、一方上限は、200℃以下がより好ましく、180℃以下が更に好ましい。重合時間は、特に限定されないが、通常、0.1~100時間であり、1~80時間であることが好ましく、5~50時間であることがより好ましく、10~24時間であることが更に好ましい。
上述した酸化重合により、主鎖が、芳香族ジスルフィド化合物および/または芳香族チオール化合物に含まれる芳香族炭化水素基がスルフィド基(-S-)等により結合した構成単位を、通常は複数しかも繰返し単位として含む重合体(P)を含む組成物(重合体組成物)を得ることができる。
単量体成分として、上記一般式(4)で表されるジアリールジスルフィド化合物および/または上記一般式(5)で表されるチオアリール化合物を用いた場合には、通常、上記構成単位(W)、より具体的には、上記構成単位(WA)、(WB)、および(WC)からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位を含む重合体(P)を得ることができる。また単量体成分として、上記のジフェニルジスルフィド化合物および/またはベンゼンチオール化合物を用いることにより、構成単位(W)として構成単位(W-1)を含む重合体(P)を得ることができる。
なお、上記重合工程(P)において上述した好ましい条件で酸化重合を行った場合、上記構成単位(WA)、(WB)、および(WC)の中でも構成単位(WA)の含有割合が相対的に高い重合体(P)が得られ易い。
上記重合工程(P)で得られた上記重合体(P)を重合体(W)としてチオール基導入工程(S)に用いることもできるし、酸化工程(O)に供することもできる。上記酸化工程(O)は、上記重合工程で得られた重合体(P)を酸化する工程である。上記酸化工程(O)により得られる重合体を重合体(O)とも称する。
上記酸化は、酸化剤を使用した酸化反応により行うことができる。上記酸化剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、キノン系化合物、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、四酢酸鉛、酸酢酸タリウム、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、セリウム(IV)アセチルアセトネート、マンガン(III)アセチルアセトネート、過酸化物、塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸を発生し得る化合物等が挙げられる。
なかでも、主鎖上に含まれる硫黄原子(スルフィド基、-S-)を適度に酸化して、スルホキシド(スルフィニル基)(-SO-)を形成することができる点で、過酸化物、塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、および次亜塩素酸を発生し得る化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を使用することがより好ましい。上記過酸化物としては、例えば、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸、t-ブチルハイドロパーオキシド等が挙げられる。
上記酸化剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記酸化剤の添加量は、重合体(P)中の硫黄原子1モルに対し、1~1000モルであることが好ましく、10~500モルであることがより好ましく、100~400モルであることが更に好ましい。
上記酸化反応の反応温度は、上記酸化反応が進行し易い観点から、0~200℃あることが好ましく、10℃以上がより好ましく、15℃以上が更に好ましく、副反応を抑制し易い観点から180℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。上記酸化反応の反応時間は、通常、0.1~100時間であり、1~80時間であることが好ましく、5~50時間であることがより好ましく、10~24時間であることが更に好ましい。
-SO-まで、酸化させる場合は、上述した反応時間よりも長時間で反応させればよい。また、この場合の酸化剤の添加量は、所望の硫黄原子の酸化反応が進行するのであれば特に限定されないが、通常、重合体中の硫黄原子1モルに対し、1.5~100モルであることが好ましく、2~50モルであることがより好ましく、2~10モルであることが更に好ましい。
上記酸化反応においては、溶媒を使用してもよい。使用する溶媒としては、上記重合工程(P)において使用する溶媒と同様の溶媒が好ましく挙げられる。
上記酸化工程により、重合体(O)または重合体(O)を含む組成物が得られる。該重合体(O)もまた上記重合体(W)として上記チオール基導入工程(S)に供することができる。該重合体(O)は、重合体(P)の主鎖にあるスルフィド基(-S-)中の硫黄原子が酸化されて「-SO-」や「-SO-」が形成される結果、酸化工程前の重合体(P)に比べて、構成単位(WB)や構成単位(WC)の含有比率が、高くなった重合体である。
上記チオール基導入工程(S)で得られた重合体または重合体を含む組成物は、少なくとも上記チオール基導入工程(S)で用いたスルホン化剤、還元性物質、副生成物等に由来する不純物を含む。また上記重合工程(P)で得られた重合体(P)または重合体(P)を含む重合体組成物は、少なくとも上記重合工程(P)で用いた溶媒の他、用いた触媒の残差(触媒残差)等の物質、いわゆる不純物を含む。また上記酸化工程(O)により得られた重合体(O)または重合体(O)を含む組成物は、酸等が残存している可能性がある。これらの不純物は硫黄含有重合体の光学特性や耐熱性等に影響することがあるため、重合体を単離するとともに、これらの不純物を低減することが好ましい。よって、本発明の硫黄含有重合体の製造方法は、精製工程をさらに含むことが好ましい。
上記精製工程(F)は、重合工程(P)、酸化工程(O)、チオール基導入工程(S)の各工程後に行ってもよいし、いずれかの工程の後に行ってもよい。上記精製工程(F)において用いる精製方法としては、従来公知の精製方法を用いることができる。たとえば、再沈殿法を用いることが好ましい。再沈殿法としては、特に限定されないが、たとえば、上記重合体組成物を、塩酸酸性メタノール中に滴下して重合体を沈殿させ、これをろ過して沈殿物を得て、得られた沈殿物を水やメタノール等の低級アルコールで洗浄する方法等が挙げられる。上記精製工程(F)としては、上記酸化工程(O)で用いた酸化剤由来の成分や重合工程(P)由来の不純物成分等を除去するために従来公知の吸着材を用いた方法を用いることもできる。上記再沈殿法と吸着材を用いる方法を併用することも好ましい。
上記硫黄含有重合体の製造方法においては、上述したチオール基導入工程(S)、重合工程(P)、酸化工程(O)、精製工程(F)の他に、さらに他の工程を有していてもよい。上記他の工程としては、例えば、熟成工程、中和工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、溶媒置換工程、溶解工程等が挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。上述した製造方法により、本発明の硫黄含有重合体を得ることができる。
3.硫黄含有重合体含有組成物
本発明の硫黄含有重合体含有組成物は、本発明の硫黄含有重合体を含む組成物である。本発明の硫黄含有重合体含有組成物を本発明の組成物とも称する。本発明の組成物は、他の成分を含むことが好ましい。上記他の成分としては、特に制限されず、本発明の組成物を用いる目的、用途に応じて公知の成分の中から適宜選択することができる。たとえば、上記他の成分としては、無機粒子、架橋性化合物、溶媒等があげられる。上記他の成分として無機粒子を含むことにより、本発明の組成物において屈折率等の光学特性、誘電特性、熱伝導性等の種々の物性を制御することができる。また上記他の成分として溶媒を含むことにより本発明の組成物に薄膜形成性等の加工性を付与することができる。また上記他の成分として、架橋性化合物を含むことにより、本発明の組成物に硬化性を付与することができる。
本発明の組成物における硫黄含有重合体の含有量は、その他の成分の種類、使用目的等によるが、本発明の組成物100質量%に対して0.1~100質量%であることが好ましく、1~80質量%であることがより好ましく、10~70質量%であることが更に好ましい。本発明の組成物において、固形分の含有量100質量%に対する硫黄含有重合体の含有量は1~100質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることが更に好ましい。なお、上記固形分には、上記硫黄含有重合体や上記無機粒子等の不揮発分だけでなく、上記架橋性化合物等のように仮に揮発性であっても、組成物中での反応により硬化物、膜、成形材料等の固形分となり得る化合物も包まれる。
本発明の組成物における、固形分の含有量は、上記組成物の総量100質量%に対して5~100質量%であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。上記組成物が、たとえば塗布用組成物として用いる場合、固形分の含有量は5~60質量%であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、上限値は50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。本発明の組成物を、たとえば成形用組成物として用いる場合、固形分の含有量は80~100質量%であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。
3-1.無機粒子含有組成物
本発明の組成物は、無機粒子を含むことが好ましい。無機粒子を含むことにより、たとえば、本発明の組成物における屈折率等の光学特性、誘電特性、熱伝導性等の種々の物性を制御し易くなる。本発明の組成物が、無機粒子を含む組成物を、無機粒子含有組成物とも称し、本発明の組成物における好ましい実施形態の一つである。
上記無機粒子を構成する材質としては、例えば、金属、無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機硫化物、無機水酸化物等が挙げられる。上記無機粒子は、これらの1種の材質から構成されていてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
上記金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、錫、ケイ素、セシウム、インジウム等が挙げられる。
上記無機酸化物としては、金属元素を含む金属酸化物が好ましい。上記金属酸化物としては、1種の金属元素からなる単一金属酸化物、2種以上の金属元素からなる酸化物である複合酸化物、上記単一金属酸化物又は上記複合酸化物に異種元素が固溶した固溶体酸化物が挙げられる。上記異種元素は、金属元素であってもよいし、酸素以外の、窒素やフッ素等の非金属元素であってもよい。金属元素としては、上述した金属元素が挙げられる。上記単一金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化インジウム等が挙げられる。上記複合酸化物としては、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムジルコニウムストロンチウム、チタン酸バリウムジルコニウム、ジルコン酸チタン酸鉛等のペロブスカイト型複合酸化物;スピネル、チタン酸リチウム等のスピネル型複合酸化物;チタン酸アルミニウム等の複合酸化物が挙げられる。上記固溶体酸化物としては、上記単一金属酸化物又は複合酸化物に異種金属元素及び/又は酸素以外の非金属元素、例えば窒素、フッ素が固溶したものである固溶体酸化物等が挙げられる。
上記無機窒化物としては、金属窒化物が好ましく、例えば、窒化ホウ素、窒化炭素、窒化アルミニウム等が挙げられる。上記無機炭化物としては、金属炭化物が好ましく、例えば、炭化ケイ素、炭化カルシウム、炭化チタン、炭化ホウ素等が挙げられる。上記無機硫化物としては、金属硫化物が好ましく、例えば、硫化銅、硫化亜鉛、硫化カドミウム等が挙げられる。上記無機水酸化物としては、金属水酸化物が好ましく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
なかでも、上記無機粒子を構成する材質としては、ワイドバンドギャップ(可視光透明)である点で、無機酸化物であることが好ましく、金属酸化物であることがより好ましい。また、上記無機粒子のなかでも、可視光領域に吸収がない、又は、少ないために、無機粒子による着色が抑制された組成物が得られ易い点で、Ti、Zr、Ce、Zn、In、Al、Si、Snを金属元素の主成分とする酸化物がさらに好ましく、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化セリウム(CeO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)が特に好ましい。
上記材質のなかでも、本発明の組成物の屈折率を制御し易い点や、本発明の組成物の低線膨張化ができる点では、酸化ジルコニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素がより好ましく、本発明の組成物の屈折率を向上させる観点では、酸化ジルコニウム、酸化チタンがより好ましい。また比誘電率が高く、本発明の組成物に強誘電体特性、圧電特性等を付与し易い観点からは、ペロブスカイト型複合酸化物が好ましい。熱伝導率が高く、本発明の組成物の放熱性を向上させ易い観点では、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、チタン酸アルミニウムが好ましい。
本発明の組成物に無機粒子の添加による着色を抑えながら、帯電防止性あるいは導電性を付与させる観点では、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)又は酸化スズ(SnO)に、異種金属元素あるいはフッ素等の添加元素を固溶させた固溶体酸化物が好ましく、例えばIn、Al又はGaを固溶した酸化亜鉛、Sn、又はTiを固溶した酸化インジウム、Sb又はFを固溶した酸化スズ等がより好ましい。
上記無機粒子の形状は、特に限定されず、不定形、粒状、板状、柱状、針状等のいずれであってもよいが、粒状が好ましい。上記無機粒子は、表面処理が行われていてもよい。上記表面処理としては、本発明の効果に影響がない範囲であれば、特に限定されず、シランカップリング剤を用いる方法、リン酸基を有する化合物を反応させる方法、カルボン酸基を有する化合物を反応させる方法等、公知の方法が挙げられる。
上記無機粒子の平均粒子径は、1nm以上、1000nm以下であることが好ましい。上記無機粒子の平均粒子径が上述の範囲であると、可視光領域、赤外線領域の光透過性を向上できる。上記無機粒子の平均粒子径は、5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、また、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。上記平均粒子径は、上記無機粒子をSEM(倍率1000~10万倍、好ましくは1万倍)で観察し、得られた画像を解析することにより、約10~1000個の個々の粒子(一次粒子)の粒子径(円面積相当径)を求め、個数基準の粒度分布による50%粒径を評価することにより求められる。画像解析には、公知の画像解析ソフト(例えば、マウンテック社製Mac-View)を用いることができる。
上記無機粒子の含有量は、特に限定されず、上記無機粒子含有組成物の使用目的、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、上記無機粒子の含有量は、上記無機粒子含有組成物に含まれる硫黄含有重合体100質量%に対して、1~2000質量%であることが好ましい。上記無機粒子含有組成物、該組成物より得られる膜や硬化物等の屈折率を調整し易くなる観点や低線膨張化し易い観点から、上記無機粒子含有組成物に含まれる硫黄含有重合体100質量%に対して、100質量%以上であることがより好ましく、500質量%以上であることが更に好ましい。また上記無機粒子含有組成物、該組成物より得られる膜や硬化物等の機械的強度等の観点から、上記無機粒子の含有量は、上記無機粒子含有組成物に含まれる硫黄含有重合体100質量%に対して、1000質量%以下であることがより好ましく、800質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の無機粒子含有組成物は、さらに上記架橋性化合物および/または上記溶媒等を含むことができ、これらの成分を含む無機粒子含有組成物もまた、本発明の組成物における好ましい実施形態の一つである。
3-2.溶媒含有組成物
本発明の組成物は、溶媒を含むことが好ましい。溶媒を含むことにより本発明の組成物に薄膜形成性等の加工性を付与することができる。本発明の組成物が、溶媒を含む組成物を、溶媒含有組成物とも称し、本発明の組成物における好ましい実施形態の一つである。
上記溶媒は、特に制限されないが、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼン、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、スルホラン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン(DMI)等の非ハロゲン系溶媒等があげられ、1種または2種以上を用いることができる。中でも、非ハロゲン系溶媒が好ましく、中でも、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフレン、N-メチルピロリドン等からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含むことがより好ましい。
本発明の溶媒含有組成物における、上記溶媒の含有量は、特に限定されないが、上記溶媒の含有量が、溶媒含有組成物に含まれる硫黄含有重合体100質量%に対して、10~20000質量%であることが好ましく、100~10000質量%であることがより好ましく、50~5000質量%であることが更に好ましい。
本発明の溶媒含有組成物は、さらに上記架橋性化合物および/または上記無機粒子等を含むことができ、これらの成分を含む溶媒含有組成物もまた、本発明の組成物における好ましい実施形態の一つである。
3-3.硬化性組成物
本発明の組成物は、熱可塑性組成物としても硬化性組成物としても用いることができるが、硬化性組成物として用いることが好ましい。硬化性組成物と用いるためには、本発明の組成物において、架橋性化合物を含むことが好ましい。上記架橋性化合物を含むことにより、本発明の組成物に硬化性を付与することができ、該組成物より得られる膜等の機械的強度や耐熱性等を向上することが可能となる。すなわち、本発明の組成物の好ましい一実施形態として架橋性化合物を含む硬化性組成物があげられる。
上記架橋性化合物としては、チオール基と架橋構造を形成する化合物であれば特に限定されないが、チオール基と反応しうるラジカル重合性基を有するか、チオール基と反応し得る基を分子内に2個以上有する化合物であれば、特に制限されない。上記硬化性組成物中の硫黄含有重合体が有するチオール基と、架橋性化合物が分子内に有するチオール基と反応し得る基とが反応することにより、架橋構造を形成することが可能となる。上記チオール基と反応し得る基としては、エチレン性不飽和二重結合基、開環重合性基、イソシアネート基、オキサゾリン基等があげられる。上記架橋性化合物が有する2個以上の上記チオール基と反応し得る基は、同一であっても異なっていてもよい。
上記架橋性化合物としては、チオール基と反応し得る基の少なくとも1つがエチレン性不飽和二重結合基である化合物(1)、チオール基と反応し得る基を分子内に2個以上有し、チオール基と反応し得る基の少なくとも1つが開環重合性基である化合物(2)、チオール基と反応し得る基を分子内に2個以上有し、チオール基と反応し得る基の少なくとも1つがイソシアネート基である化合物(3)、チオール基と反応し得る基を分子内に2個以上有し、チオール基と反応し得る基の少なくとも1つがオキサゾリン基である化合物(4)が好ましい。
上記化合物(1)としては、たとえば、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタアクリルアミド基、アリル基、又は、ビニル基、マレイミド基等のラジカル硬化性基及び/又は付加硬化性基を有する化合物が挙げられ、具体例としては、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系モノマー;ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族アリル系モノマー;N-ベンジル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドモノマー;ポリ酢酸ビニル等のビニルエステルモノマー;(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート、トリス[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリアジンベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸(1-ナフチル)メチル、2‐ナフタレン(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸(デカヒドロ‐1,4:5,8‐ジメタノナフタレン)-2-イル、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエチル(メタ)アクリレート、ファノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール-(EO)付加-(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール-(EO)2-(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-(EO)付加-(メタ)アクリレート、ビスフェノールS(メタ)アクリレート、ビスフェノールS-(EO)付加-(メタ)アクリレート、ウレンタン(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、硫黄含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸1H,1H,2H,2H-ヘプタフルオロデシル、アダマンチル骨格を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー;トリアリルシアヌレート等があげられる。また化合物(1)としては、分子内にエチレン性不飽和二重結合基を2個以上含む化合物、及び/又は、芳香族を含む(メタ)アクリレート化合物が好ましい。また化合物(1)としては、エチレン性不飽和二重結合基と、エチレン性不飽和二重結合基以外のチオール基と反応し得る基を化合物も好ましい。そのような化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4―エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等が挙げられる。
上記化合物(2)としては、分子内に開環重合性基を2個以上有する化合物が好ましく、たとえば、エポキシ基、オキセタン基、エチレンスルフィド基、アジリジン基等の開環重合性基を有する化合物が挙げられ、具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ化合物等の芳香族エポキシ化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等の脂肪族エポキシ化合物、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等の水添エポキシ化合物、1,2-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等の脂肪族オキセタン化合物;フェノールノボラックオキセタン、ビフェニル骨格を有するジオキセタン化合物(宇部興産社製、ETERNACOLL(登録商標)OXBP)、フェニル骨格を有するジオキセタン化合物(宇部興産社製、ETERNACOLL(登録商標)OXTP)、フルオレン骨格を有するジオキセタン化合物等の芳香族オキセタン化合物、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン等の脂肪族エピスルフィド化合物;1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン等の芳香族エピスルフィド化合物;3-メルカプトプロピレンスルフィド、4-メルカプトブテンスルフィド等のメルカプト基含有エピチオ化合物等があげられる。
上記化合物(3)としては、分子内にイソシアネート基を2個以上含む化合物が好ましく、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物; ビス(イソチオシアナトエチル)ジスルフィド等の脂肪族ポリイソチオシアネート化合物;3,9-ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソチオシアネート化合物;トリレンジイソチオシアネート等の芳香族ポリイソチオシアネート化合物;2,5-ジイソチオシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)チオフェン等の含硫複素環ポリイソチオシアネート化合物等があげられる。
上記化合物(4)としては、分子内にオキサゾリン基を2個以上含む化合物が好ましく、たとえば、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス-(2-オキサゾリン)、日本触媒製、エポクロス(登録商標)等のオキサゾリン基含有ポリマー等があげられる。
上記硬化性組成物において上記架橋性化合物の含有量は、特に限定されないが、上記架橋性化合物の含有量が、上記硬化性組成物中の硫黄含有重合体100質量%に対して、0.1~99質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、20~80質量%であることが更に好ましい。
上記硬化性組成物は、重合開始剤をさらに含むことが好ましい。該重合開始剤としては従来公知の熱重合開始剤、光重合開始剤の中から適宜選択して用いることができる。たとえば、好ましい重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等があげられる。上記重合開始剤の含有量は特に制限されないが、たとえば、上記多官能重合性モノマー100質量%に対して、0.01~20質量%の範囲であることが好ましく、0.05~10質量%であることが更に好ましく、0.1~5質量%であることが更により好ましい。
上記硬化性組成物を硬化する方法は、特に制限されず、たとえば、加熱による方法(熱硬化)、活性エネルギー線を用いる方法など従来公知の方法を用いることができる。加熱による方法の場合、加熱温度は、特に制限されないが、50~400℃が好ましく、100~300℃がより好ましい。また加熱時間は、特に制限されないが、0.01~10時間が好ましく、0.1~2時間がより好ましい。上記活性エネルギー線を用いる方法の場合、活性エネルギー線としては紫外線、または電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。紫外線照射を行う場合、紫外線照射量(積算露光量)は特に制限されないが、0.001~100J/cmの範囲となるよう照射することが好ましく、より好ましくは、0.01~50J/cm、さらに好ましくは0.05~10J/cmである。光源としては、各種水銀灯等を用いることができるが、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプが好ましい。
上記硬化方法により硬化性組成物より硬化物を得ることができる。
上記硬化性組成物は、さらに上記無機粒子や上記溶媒等を含んでいてもよい。上記硬化性組成物が、さらに上記無機粒子および/または上記溶媒を含む形態は、本発明の組成物の好ましい実施形態の一つである。また上記硬化性組成物より得られる硬化物もまた、本発明の組成物の好ましい実施形態の一つである。本発明の組成物は、上述したように、その他の成分により、種々の好ましい実施形態をとることができる。
3-4.塗布用組成物、成形用組成物
本発明の組成物は、塗布用組成物、成形用組成物として好適に用いることができる。
上記塗布用組成物としては、上述した各種の好ましい実施形態の組成物を用いることができるが、たとえば、上記溶媒含有組成物を用いることが好ましく、架橋性化合物を含む溶媒含有組成物を用いることが、硬化物からなる膜が得られ易く、より好ましい。上記塗布用組成物としては、上記架橋性化合物および上記無機粒子を含む溶媒含有組成物を用いることがさらに好ましい。
塗布方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用することができる。中でも、スピン塗布、バーコート塗布、スキージ塗布、インクジェット塗布等が好ましい。塗布する厚みは、特に制限されず、得られる膜の用途等に応じて適宜選択すればよい。たとえば光学材料として用いる場合、得られる膜の厚みが0.1~1000μmとなるよう塗布厚みを調整することが好ましい。上記塗布厚みは、より好ましくは0.5~100μmであり、さらに好ましくは1~10μmである。
塗布した膜(塗膜)に対し、加熱および/または活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。塗膜に含まれる溶媒を、加熱することにより蒸発除去することができる。上記塗布用組成物が上記架橋性化合物を含む場合は、加熱することにより、あるいは活性エネルギー線照射を行うことにより、塗膜に含まれる架橋性化合物と硫黄含有重合体との架橋反応を促進し、硬化物よりなる膜を得ることができる。
加熱する場合、加熱温度は、特に制限されないが、50~400℃が好ましく、100~300℃がより好ましい。また加熱時間は、特に制限されないが、0.01~10時間が好ましく、0.1~2時間がより好ましい。
上記活性エネルギー線としては紫外線、または電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。紫外線照射を行う場合、紫外線照射量(積算露光量)は特に制限されないが、0.001~100J/cmの範囲となるよう照射することが好ましく、より好ましくは、0.01~50J/cm、さらに好ましくは0.05~10J/cmである。光源としては、各種水銀灯等を用いることができるが、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプが好ましい。
塗布する基材は、特に制限されないが、たとえば、ガラス板、石英板、有機樹脂フィルム、有機樹脂成形物、これらの表面に透明無機酸化物層を有するフィルム、シート、板等の光透過性基板;Si半導体基板、InGaAs等の化合物半導体基板等の受光基板;LED、有機EL、レーザーダイオード(半導体レーザー)等の発光基板等が好ましい。
上述した方法により、本発明の塗布用組成物を用いて、膜を製造することができる。
本発明の組成物を成形用組成物として用いる場合、上述した各種の好ましい実施形態の組成物を用いることができる。中でも上記硬化性組成物または上記無機粒子含有組成物を用いることが好ましく、さらに無機粒子を含有する硬化性組成物を用いることがより好ましい。
成形方法としては、従来公知の方法、たとえば、射出成形法、Tダイ法、インフレーション法、インプリント成形法、ナノインプリント成形法等の金型、樹脂型を用いた成形法、キャスト法等があげられる。
上記成形方法においても、成形用組成物として硬化性組成物を用いる場合、架橋反応を促進する等の目的で、たとえば成形した後に、加熱および/または活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。加熱する場合の加熱温度、時間は、採用する成形方法において適宜選択すればよい。活性エネルギー線照射に関する好ましい態様、条件についても同様である。上記方法により、所望の形状、たとえば、レンズ、シート、フィルム等の形状に成形された材料が得られる。
本発明の組成物は、熱可塑性材料として用いることもできる。その場合の成形方法としては、特に限定されず、射出成形、押出成形、Tダイ法、インフレーション法等の、一般に熱可塑性樹脂の加工方法として公知の方法が挙げられる。また、キャスト法や塗布等の方法によって、所望の形状に成形してもよい。上記形状としては、特に限定されず、レンズ、シート、フィルム等の公知の種々の形状が挙げられる。
本発明の組成物は、上述した硫黄含有重合体、無機粒子、溶媒、架橋性化合物等の他に、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、樹脂、反応性希釈剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、熱重合開始剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等の成分を含有してもよい。これらの成分は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの成分は、公知のものから適宜選択して使用することができる。また、これらの配合量は、適宜設定することができる。
本発明の組成物が光学材料用である場合は、光学材料の用途に応じて適宜その他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては、具体的には、紫外線吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、洗料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、消泡剤等が好適に挙げられる。
4.用途
本発明の硫黄含有重合体、本発明の組成物、該組成物を用いて得られる硬化物、膜、成形材料等(これらをまとめて「本発明の硫黄含有重合体等」ともいう)は、光学材料、オプトデバイス部材、表示デバイス部材等に好適に使用される。このような用途として具体的には、例えば、眼鏡レンズ、(デジタル)カメラや携帯電話用カメラや車載カメラ等のカメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光学用粘接着材、光伝送用接合材料、フィルター、回折格子、回折光学素子、プリズム、光案内子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;フォトセンサー(光学センサー(CMOSセンサー、TOFセンサー等))、フォトスイッチ、LED、マイクロLED、発光素子、光導波管、合波器、分波器、断路器、光分割器、光ファイバー接着剤等のオプトデバイス用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、タッチパネル等に使用するインデックスマッチング材、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム、防曇フィルム、LED・有機EL等光取出し向上剤等の表示デバイス用途等が挙げられる。
これらの中でも撮像レンズ、フィルター、回折格子、回折光学素子、プリズム、光案内子、LED、マイクロLED、発光素子、カラーフィルター、タッチパネルがより好ましい。また、本発明の硫黄含有重合体は、通常、可視域、赤外域に吸収を持たない領域が広いものとなり易い。このような重合体は、可視域、赤外域の光学材料としても、好適に使用される。
本発明の硫黄含有重合体等の用途は光学用途に限られない。機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に使用される。たとえば、本発明の硫黄含有重合体等は、通常、耐熱性に優れるものとなり易く、耐熱材料、強誘電材料、放熱材料、電池材料のセパレータ、ガス分離膜や液分離膜等のフィルター、燃料電池、Li電池等の電極材料、電解質材料等の電池部材等にも使用可能である。また、低誘電性を利用した絶縁材料、アンテナ材料等としても好適に使用することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。各実施例、比較例で得られた硫黄含有重合体、硫黄含有重合体含有組成物、該組成物を用いたコーティング膜等の評価は下記の方法に従い行った。
<重金属量の測定>
各実施例、比較例等で得られた重合体について、下記の方法で重金属量を評価した。
ICP発光分光分析装置ICP-8100(島津製作所製)を用い、適切なプラズマ条件(高周波出力1.4kW、クーラントガス20.0L/min、プラズマガス1.40L/min、キャリアガス0.60L/min、プラズマ光源)にて測定を行い、検量線を基に重合体中の重金属量(鉄量)を評価し、重合体に対する重金属量(ppm)を求めた。測定サンプルとして、重合体の濃度が0.1~10質量%となるように、溶媒として、N-メチルピロリドンを用い、適宜希釈したものを用いた。
<MALDI(飛行時間型質量分析)>
各実施例、比較例等で得られた重合体について、下記の条件でMALDI測定を行った。
装置:飛行時間型質量分析装置(Bruker AutoflexIII)。
サンプル調製:1.0gのテトラヒドロフランに約2mgの測定試料、マトリックス剤として、20mgの2,5-ジヒドロキシ安息香酸、イオン化剤として、2.0mgのヨウ化ナトリウムを溶解させ、調整した溶液を測定用ターゲットプレートに塗布後、室温で100分程乾燥した。
H-NMR>
各実施例、比較例等で得られた重合体について、下記の条件でH-NMR測定を行った。
装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置(400MHz、600MHz)。
測定溶媒:重ジクロロメタン、重クロロホルム。
サンプル調製:得られた重合体の数mg~数十mgを測定溶媒に溶解した。
<13C-NMR>
各実施例、比較例等で得られた重合体について、下記の条件で13C-NMR測定を行った。
装置:日本電子株式会社製、核磁気共鳴装置(400MHz)。
測定溶媒:重クロロホルム。
サンプル調製:得られた重合体の数十mg~数百mgを測定溶媒に溶解した。
<FAB-MS>
各実施例、比較例等で得られた重合体について、下記の条件でFAB-MS測定を行った。
装置:日本電子株式会社製、高分解能二重収束質量分析計(JMS-700)。
サンプル調製:1.0gのクロロホルムに約1mgの測定試料、マトリックス剤として、5mgの3-ニトロベンジルアルコールを溶解させた。
<IR>
各実施例、比較例等で得られた重合体について、下記の条件でIR測定を行った。
装置:JASCO社製フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR-6100)。
サンプル調製:約2mgのサンプルを約300mgの乾燥臭化カリウム(KBr)で希釈した。混合物を乳鉢および乳棒ですりつぶし、成型した。
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定して、各実施例、比較例等で得られた重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。
装置1:SHIMAZU、CBM-20A。
装置2:アジレント・テクノロジー 1260 Infinity。
検出器:示差屈折率検出器(RI)(SHIMAZU、SPD-20MA)、及び、紫外可視赤外分光光度計(SHIMAZU、SPD-20MA)。
カラム:TOSOH、TSKgel SuperHM-N。
カラム温度:40℃。
流速:0.3ml/min。
検量線:Polystyrene Standards。
溶離液:テトラヒドロフラン。
<元素含有比率O/S比>
各実施例、比較例等で得られた重合体を10重量%となる様に有機溶媒(クロロホルム)に溶解させた重合体溶液を調製した。調製した重合体溶液0.25mlを、シリコンウェハ上にスピンコートすることにより製膜したものを試料とし、JEOL社製光電子分光装置(JPS-9010TR、XPS装置、光源:Mg、X線出力:400W)を用い、硫黄原子の2p軌道由来のピーク強度と酸素原子の1s軌道由来のピーク強度を測定し、その積分比を計算することでO/S比を算出した。必要に応じて、炭素原子の1s軌道由来のピーク強度も測定、その結果も考慮してO/S比を算出した。なお、測定方法及び結合エネルギーの位置等は、Handbook of X-ray Photoelectron Spectroscopy(JEOL社、1991年3月発行)を参考とした。1H-NMR測定により、スルフィドとスルホキシドのピーク分離が可能であるものに関しては、それぞれの積分比を計算することでO/S比を算出した。
<結合エネルギー>
各実施例、比較例等で得られた重合体を10重量%となる様に有機溶媒(クロロホルム)に溶解させた重合体溶液を調製した。調製した重合体溶液0.25mlを、シリコンウェハ上にスピンコートすることにより製膜したものを試料として、JEOL社製光電子分光装置(JPS-9010TR、XPS装置)を用い、硫黄原子の2p3/2軌道のピーク位置より結合エネルギーを計測した。
<有機元素分析>
各実施例、比較例等で得られた重合体について、下記の装置で元素分析測定を行った。
装置:ジェイ・サイエンス・ラボJM10。
<UV硬化>
各実施例、比較例で調整した各組成物をスライドガラスにスピンコートし、乾燥した膜をUV-LED装置を用い硬化膜を作製した。下記UV照射装置を用い、塗膜にUV光(波長365nm、照度100mW/cm2)を60秒照射し、硬化膜を得た。照度は、EIT社製 UV Power PuckIIを用い、UVA領域(320~390nm)で評価した。
装置:クォークテクノロジー社製 UV-LED照射装置 QEL-2020-SQ3W-CW。
なお、上記<元素含有比率O/S比>、<結合エネルギー>、<UV硬化>の各評価におけるスピンコートは、下記装置を用い、各組成物をスピンコーター上に設置した基板(スライドガラス、シリコンウエハ等)表面に滴下し、回転数1000rpmで20秒間回転させる条件で行った。
装置:ミカサ社製 スピンコーター1H-D7。
<硫黄含有重合体の溶解性>
各実施例、比較例で得られた硫黄重合体について、各重合体粉末を重合体が20重量%となる様にシクロヘキサノンに混合し、室温にて1時間攪拌し、更に、室温にて1時間静置した後の混合液を試料として溶解性を評価した。その評価の方法は以下のとおりである。まず、沈殿物の有無を目視により確認し、沈殿物が存在しないと評価された試料については、ヘイズ(濁度)を測定した。ヘイズの測定は、下記の装置を用い、調整した試料を光路長1cm石英セルに充填した状態で行った。測定時の試料の温度は25℃である。
装置:日本電色工業社製 濁度計 HAZE METER NDH5000。
上記方法による評価結果に基づき、溶解性を下記基準により判定した。
(評価基準)
〇:沈殿物がなく、且つ、ヘイズが10%以下である。
×:沈殿物がある、及び/または、ヘイズが10%超である。
<組成物における溶解状態>
各実施例、比較例で調整した各組成物を無色透明なスクリュー管に一部採取し、室温にて1時間、静置した後の組成物を試料として、溶解状態を判定した。評価の方法、評価基準は<硫黄含有重合体の溶解性>における評価の方法、評価基準と同様である。
<屈折率>
屈折率は、各実施例、比較例で作製したコーティング膜付きスライドガラスにおけるコーティング膜の反射率より求めた。屈折率は下記の装置を用い、測定した反射率から算出した589nmにおける屈折率の値を評価した。
装置:フィルメトリクス社製 膜厚測定システムF-20。
標準ファイバー ステージSS-1 スポット径1.5mm。
<透明性>
透明性は、ヘイズの測定により判定した。
各実施例、比較例で作製したコーティング膜付きスライドガラスのヘイズ測定を行い、得られた測定値より、基板として用いたスライドガラス基板のヘイズ測定値を差引いたものを、コーティング膜のヘイズとした。
ヘイズは下記の装置を用いた。
装置:日本電色工業社製 濁度計 HAZE METER NDH5000。
<耐湿熱性試験>
各実施例、比較例で作製したコーティング膜付きスライドガラスに対して加速劣化試験を行った。下記の装置を用い、湿度85%温度85℃の条件下に100時間晒すことで硬化膜の耐久性を判定した。
装置:エスペック社製 小型環境試験機SH-242。
判定基準は以下のとおりである。
◎:硬化膜の屈折率の低下が0.5以下かつ、ヘイズの増加が0.5以下である。
〇:硬化膜の屈折率の低下が0.5以下かつ、ヘイズの増加が0.5超、2.0以下である。
△、×:硬化膜の屈折率の低下が0.5超またはヘイズの増加が2.0超であって、
屈折率の低下が1.0以下かつ、ヘイズの増加が10.0以下である場合を△、屈折率の低下が1.0超またはヘイズの増加が10.0超であるか、硬化膜の剥離またはクラックにより、判定不能である場合を×とした。
(モノマーの合成)
[合成例1]
500mLの三口フラスコに、水(98mL)、p-トルエンチオール(4-メチルベンゼンチオール)(18.2g、0.147mol)、テトラブチルアンモニウムヨージド(54.3mg、0.147mol)を加え、さらに、30%過酸化水素水(15.2mL、0.147mol)を1mL/分で滴下し、2時間60℃にて撹拌した。室温に冷却後、上澄み(水層)を除去し、ついでチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、2時間室温にて撹拌し、上澄み(水層)を除去した。反応固体を濾過し、純水、メタノールの順番で洗浄し、真空乾燥を経てビス(4-メチルフェニル)ジスルフィドを回収した。収率は98%であった。H-NMR、13C-NMR、及びFAB-MSによりビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド(4,4’-ジメチルジフェニルジスルフィド)であることを確認した。
(硫黄含有重合体の合成)
[実施例1-1]
<硫黄含有重合体(Po1a)の製造>
3.0Lの三口フラスコに、ジフェニルジスルフィド(218.33g、1.00mol)、上記の合成例1で得られた、ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド(49.21g、0.20mol)、塩化鉄(III)(9.73g、60.00mmol)、(+)-CSA((+)-10-カンファースルホン酸)(2.79g、12.00mmol)、Na(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)(2.57g、12.00mmol)を加えた。次いで、三口フラスコを160℃に加熱しながら窒素フロー(20mL/分)を10分間行った後、空気バブリング(150mL/分)に切り替え、40時間攪拌することで酸化重合を行った。重合終了後、空気バブリングを停止し、N-メチルピロリドンを240mL加えて10分間撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却し、さらに溶媒としてTHF(2.2L)を加え、10分間攪拌後、純水を192mL加え、5分間攪拌した。次いで、ナスフラスコを氷冷バスで氷冷しながら、トリクロロイソシアヌル酸(122.11g、0.66mol)を添加し、2時間攪拌後、亜鉛粉末(31.53g、0.48mol)を加え、室温で14時間攪拌した。反応終了後、反応液にメタノール(12L)を加えることで生成物を析出させ、析出した沈殿を濾過後、メタノールと純水で洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥を行うことで、白色の重合体(Po1a)粉末を得た。収率は92%であった。得られた重合体(Po1a)の構造は、H-NMR、XPS、ICP、IR、GPC、元素分析、MALDI測定により同定した。その結果、H-NMR(CDCl,400MHz,ppm):δ=7.56(m,17H),δ=7.19(m,6H),2.35(m,3H)、XPSよりスルフィド基:スルホキシド基:スルホン酸基=45:55:0mol%であることが確認され、IRより、2570cm-1付近にメルカプト由来のピークが観測され、GPCより、Mw=2400、Mn=1150と確認し、末端構造を-SHと確認した。Mn=1150より、末端の芳香環(構成単位)の割合は、全芳香環(全構成単位)100モル%に対して9.5モル%であることが確認された。
元素分析により重合体中の塩素原子含有量は検出限界以下であることを確認した。
<硫黄含有重合体(Po1)の製造>
2.0Lの三口フラスコに、上記硫黄含有重合体(Po1a)を200.0g加え、スルホランを溶媒として1.1L添加した。次いで、三口フラスコを130℃に加熱しながら窒素フロー(0.5L/分)を10分間行った後、室温になるまで放冷した。放冷後、水冷バスに三口フラスコを浸し、窒素フロー(0.25L/分)を行いながら、クロロ硫酸98.3g.を徐々に滴下した。滴下完了後、室温で2時間撹拌し、再び、三口フラスコを水冷バスで冷却しながら亜鉛16.6gを添加し、14時間攪拌した。反応終了後、得られた反応溶液をメタノール5.5Lに滴下することで生成物を析出させ、析出した沈殿を濾過後、メタノールと純水で洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥を行うことで、重合体(Po1)粉末を得た。収率は90%であった。得られた重合体(Po1)の構造は、H-NMR、ICP、GPC、IR、元素分析、より同定した。その結果、H-NMR(CDCl,600MHz,ppm):δ=7.53(m,10H),δ=7.24(m,12H),2.34(m,3H)、IRより、2570cm-1付近にメルカプト由来のピークが観測され、GPCより、Mw=2370、Mn=1150と確認でき、全芳香環に対して27.7mol%のチオール(-SH)基が存在することを確認した。重合体(Po1a)のチオール(-SH)基の含有量が全芳香環(全構成単位)100モル%に対して9.5モル%であると考えられることから、本反応で導入されたチオール基の量は18.2mol%であると考えられる。元素分析により重合体中の塩素原子含有量は検出限界以下であり、反応前の硫黄含有重合体(Po1a)よりも重合体(Po1)は、硫黄原子重量比が増加していることを確認した。
<硫黄含有重合体(Po1)のSH基の定量>
20mLの試験管に、硫黄含有重合体(Po1)を2.0g加えた後、1,2-エポキシシクロヘキサンを5.0g添加し、80℃で2時間撹拌した。反応終了後、THF(5mL)を加え、得られた溶液を塩酸酸性メタノール溶液50mLに滴下することで生成物を析出させ、析出した沈殿を濾過後、メタノールと純水で洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥を行うことで、重合体(Po1t)粉末を得た。収率は89%であった。得られた重合体(Po1t)の構造は、H-NMR、ICP、GPC、IR、元素分析により同定した。その結果、H-NMR(CDCl,600MHz,ppm):δ=7.53(m,6H),δ=7.24(m,8H)、3.16(m,1H)、2.69(m,1H)、2.34(m,2H)、1.79(m,4H)、1.32(m,4H)、IRより、2570cm-1付近にメルカプト由来のピークが観測され、GPCより、Mw=2410、Mn=1150と確認でき、元素分析により重合体中の塩素原子含有量は検出限界以下であり、反応前の硫黄含有重合体(Po1)よりも重合体(Po1t)は、硫黄原子の重量比が増加していることを確認した。H-NMRより、重合体(Po1t)中に全芳香環中の27.7mol%にチオール基が導入されたことを確認したことから、重合体(Po1)は、全芳香環の27.7mol%にチオール基が導入されていることが分かり、GPCのMnより全構成単位に対して末端に9.5mol%のチオール基が存在することが算出でき、側鎖に18.2mol%のチオール基導入されたことを確認した。
[実施例1-2]
<硫黄含有重合体(Po2)の製造>
2.0Lの三口フラスコに、上記硫黄含有重合体(Po1a)を100.0g加え、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン(DMI)を溶媒として727g添加した。次いで、三口フラスコを100℃に加熱しながら窒素フロー(0.5L/分)を10分間行った後、室温になるまで放冷した。放冷後、水冷バスに三口フラスコを浸し、窒素フロー(0.25L/分)を行いながら、クロロ硫酸183gを徐々に滴下した。滴下完了後、室温で4時間撹拌し、テトラヒドロフラン(THF)を669g添加し、再び、三口フラスコを水冷バスで冷却しながら亜鉛61.4gを添加し、室温にて16時間攪拌した。反応終了後、得られた反応溶液をメタノール5.5Lに滴下することで生成物を析出させ、析出した沈殿を濾過後、メタノールと純水で洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥を行うことで、重合体(Po2)粉末を得た。収率は87%であった。得られた重合体(Po2)の構造は、1H-NMR、ICP、GPC、IR、元素分析、より同定した。その結果、1H-NMR(CDCl3,600MHz,ppm):δ=7.53(m,10H),δ=7.24(m,12H),2.34(m,3H)、IRより、2570cm-1付近にメルカプト由来のピークが観測され、GPCより、Mw=2410、Mn=1180と確認でき、全芳香環に対して40.1mol%のチオール(-SH)基が存在することを確認した。重合体(Po1a)のチオール(-SH)基の含有量が全芳香環(全構成単位)100モル%に対して9.5モル%であると考えられることから、本反応で導入されたチオール基の量は30.6mol%であると考えられる。元素分析により反応前の硫黄含有重合体(Po1a)よりも重合体(Po2)は、硫黄原子重量比が増加していることを確認した。
[実施例1-3]
<硫黄含有重合体(Po3)の製造>
3.0Lの三口フラスコに、ジフェニルジスルフィド(218.33g、1.00mol)、上記の合成例1で得られた、ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド(49.21g、0.20mol)、塩化鉄(III)(9.73g、60.00mmol)、(+)-CSA((+)-10-カンファースルホン酸)(2.79g、12.00mmol)、Na2S2O8(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)(2.57g、12.00mmol)を加えた。次いで、三口フラスコを160℃に加熱しながら窒素フロー(20mL/分)を10分間行った後、空気バブリング(150mL/分)に切り替え、40時間攪拌することで酸化重合を行った。重合終了後、空気バブリングを停止し、窒素フロー(0.5L/分)に切り替えた後、降温し、内温が120℃となった時に、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン(DMI)を1.3L加えて10分間撹拌した。攪拌後、室温になるまで放冷し、氷冷バスに三口フラスコを浸し、窒素フロー(0.25L/分)を行いながら、クロロ硫酸225gを徐々に滴下した。滴下完了後、室温で4時間撹拌し、テトラヒドロフラン(THF)を1.1L、純粋92.1mL添加し、再び、三口フラスコを氷冷バスで氷冷しながら、トリクロロイソシアヌル酸(122.11g、0.66mol)を添加し、2時間攪拌後、亜鉛粉末(63.19g、0.96mol)を加え、室温で14時間攪拌した。反応終了後、反応液をメタノール(12L)に加えることで生成物を析出させ、析出した沈殿を濾過後、メタノールと純水で洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥を行うことで、白色の重合体(Po3)粉末を得た。収率は81%であった。得られた重合体(Po3)の構造は、1H-NMR、XPS、ICP、IR、GPC、元素分析、MALDI測定により同定した。その結果、1H-NMR(CDCl3,600MHz,ppm):δ=7.53(m,10H),δ=7.24(m,13H),2.34(m,3H)、IRより、2570cm-1付近にメルカプト由来のピークが観測され、GPCより、Mw=2580、Mn=1200と確認した。元素分析により硫黄含有重合体(Po1a)よりも重合体(Po3)は、硫黄原子重量比が高いことを確認した。
[比較例1-1]
実施例1-1の<硫黄含有重合体(Po1a)の製造>と全く同様にして、白色の重合体(PoC1)粉末を得た。収率は92%であった。得られた重合体(PoC1)の構造を、H-NMR、XPS、ICP、IR、元素分析、MALDI測定により同定した。その結果、H-NMR(CDCl,400MHz,ppm):δ=7.56(m,17H),δ=7.19(m,6H),2.35(m,3H)、IRより、2570cm-1付近にメルカプト由来のピークが観測され、元素分析により重合体中の塩素原子含有量は検出限界以下であり、末端構造を-SHと確認した。
[比較例1-2]
3.0Lの三口フラスコに、ジフェニルジスルフィド(218.33g、1.00mol)、上記の合成例1で得られた、ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド(49.21g、0.20mol)、塩化鉄(III)(9.73g、60.00mmol)、(+)-CSA((+)-10-カンファースルホン酸)(2.79g、12.00mmol)、Na(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)(2.57g、12.00mmol)を加えた。次いで、三口フラスコを160℃に加熱しながら窒素フロー(20mL/分)を10分間行った後、空気バブリング(150mL/分)に切り替え、40時間攪拌することで酸化重合を行った。重合終了後、空気バブリングを停止し、N-メチルピロリドンを240mL加えて10分間撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却し、さらに溶媒としてTHF(2.2L)を加え、10分間攪拌後、得られた反応液を塩酸酸性メタノール溶液(40L)に滴下することで生成物を析出させ、析出した沈殿を濾過後、メタノールと純水で洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥を行うことで、白色の重合体(PoC2)粉末を得た。収率は84%であった。得られた重合体(PoC2)の構造は、H-NMR、XPS、ICP、IR、元素分析、MALDI測定により同定した。その結果、H-NMR(CDCl,400MHz,ppm):δ=7.20(m,23H),2.25(m,3H)、XPS測定より、160.1-164.8eVにピークが認められ、ピーク分離により160.1-164.8eV(スルフィド)と163.5-164.8eV(ジスルフィド)にピークが分離でき、スルフィドとジスルフィドのピーク面積比は、96:4であった。また、MALDI測定によりm/z107.95、m/z122.02の繰り返しピークが見られ、構成単位として、-C6H4S-、-C6H3(CH3)S-を含む重合体であることを確認した。
各実施例、比較例で得られた各重合体粉末のシクロヘキサノンに対する溶解性を評価した結果を表1に示す。
Figure 2023079178000009
<硫黄含有重合体含有組成物の製造および製膜>
[実施例2-1]
上記の実施例1-1で得られた重合体(Po1)を2.0g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを12.0g添加し、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は透明な溶液であった、得られた組成物を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、5分間加熱保持することにより乾燥膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
[実施例2-2]
上記の実施例1-1で得られた重合体(Po1)を2.0g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを12.0g添加し、更に、アクリレートモノマーとして大阪ガスケミカル株式会社製のOGSOL EA-F5710を0.8g、光重合開始剤としてIrgacure907を28.0mg加え、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は透明な溶液であった、得られた組成物を、ピペットを使用しスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、1分間保持することで溶媒を除去し、室温になるまで放冷したスライドガラス上のコーティング膜に対してUV-LED照射(波長365nm、照度100mW/cm)を60秒間行うことで硬化膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
[実施例2-3]
実施例2-2において、添加するシクロヘキサノン溶媒量を12.0gから4.0gに変更した以外は実施例2-2と同様にして、組成物を調製し、さらに、硬化膜(コーティング膜付きスライドガラス)を得た。
[実施例2-4]
5000mlナスフラスコに、実施例1―1において得られた重合体(Po1)を100g、溶媒としてTHFを542gとNMP(N-メチルピロリドン)を361g加え、10分攪拌することにより、重合体が溶解した溶液を調製した。酸化ジルコニウムがトルエンに分散した分散液(数平均粒子径15nm、ZrO2含有量16質量%)1750gに、前記重合体溶液を滴下し、25℃で16時間攪拌した。次いで、ヘキサンを3000g添加し、25℃で1時間攪拌した後、0.5時間静置した。その結果、沈殿物が生成した。その後、ろ過し、ヘキサンを用いてろ物を洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥し、複合体(Po-Zr1)粉末を得た(収率95%)。
得られた複合体(Po-Zr1)の構造は、1H-NMR、XPS、ICP、IR、元素分析、SEM-EDS分析により同定した。その結果、1H-NMR(CD2Cl2,400MHz)よりPo1以外の有機物は殆ど観測されず、0.5wt%未満と推定された。SEM-EDS分析より、Po1:ZrO2の組成比(質量比)が25質量%:75質量%であることを確認した。なお、上記分散液における数平均粒子径は動的光散乱法により測定した個数基準の平均粒子径である。
得られた複合体(Po-Zr1)2.0g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを18.0g添加し、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は透明な溶液であった。得られた組成物を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、5分間加熱保持することにより乾燥膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
[実施例2―5]
上記の実施例2-4で得られた重合体(Po-Zr1)を37.4g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを59.9g添加し、更に、モノマーとして株式会社ダイセル製のサイクロマーM100を1.1g、共栄社化学株式会社製のライトアクリレートNMT―Aを6.7g、共栄社化学株式会社製のライトエステル G101Pを2.4g、光重合開始剤としてIGM Resins B.V.社製のOmnirad907を0.31g、IGM Resins B.V.社製のOmniradITXを0.06g加え、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は乳白色の溶液であった。得られた組成物を、ピペットを使用しスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、1分間保持することで溶媒を除去し、室温になるまで放冷したスライドガラス上のコーティング膜に対してUV-LED照射(波長365nm、照度100mW/cm2)を60秒間行い、その後、150℃に加熱したホットプレート上に5分間静置し、硬化膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
また、1μmの間隔、高さを有するインプリント基板をUV硬化前に樹脂膜に転写可能なことを確認した。
[実施例2-6]
上記の実施例1-2で得られた重合体(Po2)を2.0g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを12.0g添加し、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は透明な溶液であった。得られた組成物を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、5分間加熱保持することにより乾燥膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
[実施例2-7]
上記の実施例1-2で得られた重合体(Po2)を2.0g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを12.0g添加し、更に、アクリレートモノマーとして大阪ガスケミカル株式会社製のOGSOL EA-F5710を0.8g、光重合開始剤としてIrgacure907を28.0mg加え、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は透明な溶液であった。得られた組成物を、ピペットを使用しスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、1分間保持することで溶媒を除去し、室温になるまで放冷したスライドガラス上のコーティング膜に対してUV-LED照射(波長365nm、照度100mW/cm)を60秒間行うことで硬化膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
[実施例2-8]
実施例2-7において、添加するシクロヘキサノン溶媒量を12.0gから4.0gに変更した以外は実施例2-7と同様にして、組成物を調製し、さらに、硬化膜(コーティング膜付きスライドガラス)を得た。
[実施例2-9]
5000mlナスフラスコに、実施例1―2において得られた重合体(Po2)を100g、溶媒としてTHFを542gとNMP(N-メチルピロリドン)を361g加え、10分攪拌することにより、重合体が溶解した溶液を調製した。酸化ジルコニウムがトルエンに分散した分散液(数平均粒子径15nm、ZrO2含有量16質量%)1750gに、前記重合体溶液を滴下し、25℃で16時間攪拌した。次いで、ヘキサンを3000g添加し、25℃で1時間攪拌した後、0.5時間静置した。その結果、沈殿物が生成した。その後、ろ過し、ヘキサンを用いてろ物を洗浄した。次いで、得られた粉末を室温で真空乾燥し、複合体(Po-Zr1)粉末を得た(収率95%)。
得られた複合体(Po-Zr2)の構造は、1H-NMR、XPS、ICP、IR、元素分析、SEM-EDS分析により同定した。その結果、1H-NMR(CD2Cl2,400MHz)よりPo2以外の有機物は殆ど観測されず、0.5wt%未満と推定された。SEM-EDS分析より、Po1:ZrO2の組成比(質量比)が25質量%:75質量%であることを確認した。なお、上記分散液における数平均粒子径は動的光散乱法により測定した個数基準の平均粒子径である。
得られた複合体(Po-Zr2)2.0g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを18.0g添加し、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は透明な溶液であった。得られた組成物を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、5分間加熱保持することにより乾燥膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
[実施例2―10]
上記の実施例2-9で得られた重合体(Po-Zr2)を37.4g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを59.9g添加し、更に、モノマーとして株式会社ダイセル製のサイクロマーM100を1.1g、共栄社化学株式会社製のライトアクリレートNMT―Aを6.7g、共栄社化学株式会社製のライトエステル G101Pを2.4g、光重合開始剤としてIGM Resins B.V.社製のOmnirad907を0.31g、IGM Resins B.V.社製のOmniradITXを0.06g加え、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は乳白色の溶液であった。得られた組成物を、ピペットを使用しスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、1分間保持することで溶媒を除去し、室温になるまで放冷したスライドガラス上のコーティング膜に対してUV-LED照射(波長365nm、照度100mW/cm2)を60秒間行い、その後、150℃に加熱したホットプレート上に5分間静置し、硬化膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
また、1μmの間隔、高さを有するインプリント基板をUV硬化前に樹脂膜に転写可能なことを確認した。
[実施例2-11]
上記の実施例1-3で得られた重合体(Po3)を2.0g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを12.0g添加し、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は透明な溶液であった。得られた組成物を、ピペットを使用してスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め150℃に加熱したホットプレート上に静置し、5分間加熱保持することにより乾燥膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
[実施例2-12]
上記の実施例1-3で得られた重合体(Po3)を2.0g加えたサンプルビンに、シクロヘキサノンを12.0g添加し、更に、アクリレートモノマーとして大阪ガスケミカル株式会社製のOGSOL EA-F5710を0.8g、光重合開始剤としてIrgacure907を28.0mg加え、10分間撹拌した。調製した溶液は、0.45μmのフィルターで濾過することにより組成物を得た。得られた組成物は透明な溶液であった。得られた組成物を、ピペットを使用しスピンコーター上のスライドガラスに滴下し、1000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。作製したスライドガラス上のコーティング膜は、予め60℃に加熱したホットプレート上に静置し、1分間保持することで溶媒を除去し、室温になるまで放冷したスライドガラス上のコーティング膜に対してUV-LED照射(波長365nm、照度100mW/cm)を60秒間行うことで硬化膜(コーティング膜付きスライドガラス)を作製した。
[比較例2-1]
実施例2-1において、使用する重合体(Po1)を比較例1-1で得られた重合体(PoC1)に変更し、添加する溶媒をシクロヘキサノンからクロロホルムに変更した以外は実施例2-1と同様にして組成物を調製し、さらに乾燥膜(コーティング膜付きスライドガラス)を得た。
また、添加する溶媒としてシクロヘキサノンを用いた場合は、調製した組成物において重合体(PoC1)はほとんど溶解しておらず、コーティング膜の作製はできなかった。
[比較例2-2]
実施例2-2において、使用する重合体(Po1)を比較例1-1で得られた重合体(PoC1)に変更し、添加する溶媒をシクロヘキサノンからクロロホルムに変更した以外は実施例2-2と同様にして組成物を調製し、さらに硬化膜(コーティング膜付きスライドガラス)を得た。
また、添加する溶媒としてシクロヘキサノンを用いた場合は、調製した組成物において重合体(PoC1)はほとんど溶解しておらず、コーティング膜の作製はできなかった。
[比較例2-3]
実施例2-1において、使用する重合体(Po1)を比較例1-2で得られた重合体(PoC2)に変更し、添加する溶媒をシクロヘキサノンからクロロホルムに変更した以外は実施例2-1と同様にして組成物を調製し、さらに乾燥膜(コーティング膜付きスライドガラス)を得た。
また、添加する溶媒としてシクロヘキサノンを用いた場合は、調製した組成物において重合体(PoC2)はほとんど溶解しておらず、コーティング膜の作製はできなかった。
[比較例2-4]
実施例2-2において、使用する重合体(Po1)を比較例1-2で得られた重合体(PoC2)に変更し、添加する溶媒をシクロヘキサノンからクロロホルムに変更した以外は実施例2-2と同様にして組成物を調製し、さらに硬化膜を得た。
また、添加する溶媒としてシクロヘキサノンを用いた場合は、調製した組成物において重合体(PoC2)はほとんど溶解しておらず、コーティング膜の作製はできなかった。
実施例2-1~2-12、比較例2-1~2-4において得られた組成物の溶解状態、コーティング膜付きスライドガラスの屈折率等を評価した結果を表2に示す。
表1に示すように、実施例1-1~1-3で得られた硫黄含有重合体は、比較例1-1および1-2で得られた重合体に対し、シクロヘキサノンに対する溶解性に優れるものであった。この結果は、硫黄含有重合体の側鎖にチオール基を導入することにより、非ハロゲン系溶媒に対する重合体の溶解性が顕著に改善されることを示すものである。
また、表2に示すように、実施例1-1~1-3で得られた硫黄含有重合体は、比較例1-1および1-2で得られた重合体に対し、シクロヘキサノンを溶媒とする組成物における溶解状態にも優れるものであった。また、表2に示すように、実施例で得られたコーティング膜は比較例で得られたコーティング膜に比べて、屈折率が高く、透明性にも優れるものであった。たとえば、実施例2-1で得られた乾燥膜の屈折率、透明性は、比較例2-1(溶媒:クロロホルム)で得られた乾燥膜の屈折率、透明性よりも高かった。また、実施例2-2で得られた硬化膜の屈折率は、比較例2-2(溶媒:クロロホルム)、比較例2-4(溶媒:クロロホルム)でそれぞれ得られた硬化膜の屈折率よりも大幅に高く、透明性にも優れるものであった。また実施例2-2で得られた硬化膜の耐湿熱性は、比較例2-2(溶媒:クロロホルム)、比較例2-4(溶媒:クロロホルム)でそれぞれ得られた硬化膜の耐湿熱性よりも優れるものであった。各実施例における、コーティング膜の屈折率、透明性、耐湿熱性等における向上は、本質的には、各実施例で用いた硫黄含有重合体の非ハロゲン系溶媒に対する溶解性の向上効果に基づくものと考えられる。すなわち、該効果に基づき、組成物全体に対する相溶性が向上し、ち密な膜が形成されたため、膜の屈折率、透明性が高くなったと考えられる。また実施例2-2および2-3のように架橋性化合物を含むモノマーを用いた場合は、硫黄含有重合体中のチオール基とモノマーとの反応率が向上し硬化膜中の架橋密度が向上した効果も加わって、膜の耐湿熱性が向上したと考えられる。
Figure 2023079178000010

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表される構成単位(U)を有し、且つ、下位一般式(2)で表される構造(V)を有することを特徴とする硫黄含有重合体。
    Figure 2023079178000011
    (式中、Xは、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表す。)
    Figure 2023079178000012
    (式中、Xは、置換基としてチオール基を有する2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。)
  2. 請求項1に記載の硫黄含有重合体を含むことを特徴とする硫黄含有重合体含有組成物。
  3. 請求項2に記載の硫黄含有重合体含有組成物の硬化物。
  4. 請求項1に記載の硫黄含有重合体の製造方法であって、下記一般式(3)で表される構成単位(W)を有する重合体に、スルホン化剤および還元性物質を反応させる工程を含むことを特徴とする硫黄含有重合体の製造方法。
    Figure 2023079178000013
    (式中、Xは、置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基を表し、Yは、S、SO、およびSOからなる群から選択される少なくとも1種を表す。)
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