以下、本発明の一実施形態に係る部材嵌合装置および部材嵌合方法について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部同士を任意に組み合わせてもよい。また、以下に示す実施形態はあくまで例にすぎず、本発明の部材嵌合装置および部材嵌合方法は、以下の例に限定されることはない。
<部材嵌合装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る部材嵌合装置1の構成の一例を示す側面図である。部材嵌合装置1は、中心軸CL2に沿って延びる軸部APを有する取付部材AMと、中心軸CL1に沿って延びる孔部OP1を有する被取付部材OPとを嵌合させる装置である。部材嵌合装置1は、以下で詳しく述べるように、取付部材AMおよび被取付部材OPを互いに近づく方向に相対移動させることにより、取付部材AMの軸部APと被取付部材OPの孔部OP1とを嵌合させる。本実施形態の部材嵌合装置1の軸部APと孔部OP1との篏合方向は、水平方向に沿うものとされる。
部材嵌合装置1は、たとえば、鋼板を圧延する圧延ロールを研磨するグラインダにおける砥石と、グラインダの回転軸に砥石を固定するためのフランジ部材とを嵌合させるために用いられる。なお、部材嵌合装置1の用途は、フランジ部材と砥石との嵌合に限定されるものではない。部材嵌合装置1は、たとえば、圧延ロールとチョックとの嵌合などに用いられてもよい。以下では、取付部材AMをフランジ部材として、被取付部材OPを砥石として、部材嵌合装置1をフランジ部材AMと砥石OPとの嵌合に用いる場合について説明する。
図2は、フランジ部材AMの軸部APと砥石OPの孔部OP1とが嵌合して、フランジ部材AMが砥石OPに取り付けられた状態の一例を模式的に示す断面図である。なお、本明細書において、「軸部」という用語は、砥石OPの孔部OP1と嵌合する部分のことを意味する。
砥石OPは、図2に示されるように、中心軸CL1に沿って延びる孔部OP1を有している。孔部OP1は、中心軸CL1に対して垂直な断面が略円形で、中心軸CL1に沿って同径で延びる略円柱状に形成されている。図示された例では、砥石OPは、中心軸CL1に沿って延びる略円筒状に形成され、孔部OP1が中心軸CL1に沿って貫通するように設けられている。砥石OPの外周面には、図示しない研磨材が設けられている。ただし、部材嵌合装置1が適用可能な被取付部材OPとしては、取付部材AMの軸部APが嵌合可能な孔部OP1を有していればよく、孔部OP1の周囲の外形などは、図示された形状に限定されることはない。また、孔部OP1としては、取付部材AMの軸部APに対応する形状を有し、取付部材AMの軸部APと嵌合可能であれば、中心軸CL1に対して垂直な断面が略楕円形状などの他の形状であってもよいし、中心軸CL1に沿って貫通していない有底状であっても構わない。
フランジ部材AMは、図2に示されるように、中心軸CL2に沿って延びる軸部APと、軸部APの中心軸CL2が延びる方向の一端側に設けられるフランジ部FLAとを有する。フランジ部材AMは、中心軸CL1と中心軸CL2とが略同軸になるように軸部APが砥石OPの孔部OP1と嵌合し、フランジ部FLAが砥石OPの中心軸CL1の一方側の端面に当接した状態で、砥石OPに取り付けられる。フランジ部材AMは、砥石OPの中心軸CL1の反対側に設けられた別のフランジ部材BMにボルトなどの締結手段BOで固定される。
フランジ部材AMの軸部APは、中心軸CL2に対して垂直な断面が略円形で、中心軸CL2に沿って同径で延びるように形成されている。軸部APの外径は、軸部APが砥石OPの孔部OP1と嵌合可能なように、孔部OP1の内径よりも若干小さい。軸部APは、図示された例では、軸部APの径方向中心部を、中心軸CL2に沿って延びる孔部AP1を有することにより、略円筒状に形成されている。軸部APの内径は、グラインダの回転軸を挿通可能な径である。図2に示す例では、孔部AP1を囲繞する軸部APの内周面は、フランジ部FLAが設けられた軸部APの一端側から他端側に向かって縮径するようにテーパ状となっている。なお、部材嵌合装置1が適用可能な取付部材AMとしては、被取付部材OPの孔部OP1に嵌合可能な軸部APを有していればよく、図示された例に限定されることはない。また、軸部APは、被取付部材OPの孔部OP1に対応する形状を有し、被取付部材OPの孔部OP1に嵌合可能であれば、中心軸CL2に対して垂直な断面が略楕円形状など、他の形状であっても構わない。軸部APの内周面もまた、軸部APの一端側から他端側に向かって同径であってもよい。
次に、図1、図3および図4を参照して、砥石OPの孔部OP1とフランジ部材AMの軸部APとを嵌合させることが可能な部材嵌合装置1について説明する。なお、部材嵌合装置1は、図1、図3および図4において、砥石OPの孔部OP1とフランジ部材AMの軸部APとを嵌合させる構成を有するものとして例示されているが、砥石OPの孔部OP1と別のフランジ部材BMの軸部とを嵌合させる構成も同様とすることができるので、その構成の図示および説明は省略する。また、図1、図3および図4では、各要素を見やすくするために、図示を適宜省略している。
図3は、本発明の一実施形態に係る部材嵌合装置1の一例を示す平面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る部材嵌合装置1の一例を示す図であり、図1におけるA方向から見た矢視図である。
なお、本明細書および図面において、方向Hは水平方向を表し、方向Vは鉛直方向を表すものとする。また、方向FBは部材嵌合装置1の前後方向を表し、方向Fは前方向を表し、方向Bは後方向を表すものとする。前後方向FBは、砥石OPの孔部OP1とフランジ部材AMの軸部APとの嵌合方向に沿う方向である。前方向Fは、フランジ部材AMの軸部APから砥石OPの孔部OP1へ向かう方向である。後方向Bは、砥石OPの孔部OP1からフランジ部材AMの軸部APへ向かう方向である。また、方向LRは、部材嵌合装置1の左右方向を表し、矢印Lは左方向を表し、矢印Rは右方向を表すものとする。左右方向LRは、水平面内において前後方向FBと直交する方向である。左方向Lは、フランジ部材AMの軸部APから砥石OPの孔部OP1を見て左側の方向である。右方向Rは、フランジ部材AMの軸部APから砥石OPの孔部OP1を見て右側の方向である。
部材嵌合装置1は、図1、図3および図4に示されるように、砥石OPを保持するための保持部2と、砥石OPおよびフランジ部材AMを互いに対して相対移動させるための移動機構3と、フランジ部材AMの姿勢を調整するための姿勢調整機構4とを備えている。部材嵌合装置1はさらに、フランジ部材AM、移動機構3および姿勢調整機構4を搭載するための搭載部5と、移動機構3および姿勢調整機構4を制御するための制御部6とを備えている。
保持部2は、図1に示されるように、孔部OP1の中心軸CL1が水平方向H(および前後方向FB)に沿うように、砥石OPを保持する。保持部2は、床面FL上に固定されて立設された脚部20と、脚部20に取り付けられた台座部21と、台座部21上に設けられた左右一対の砥石保持部22(図3および図4参照)と、砥石OPを前後方向FBで挟持するように配置された前後で対になったプッシャ23(たとえば、シリンダ装置、図3参照、前側のプッシャは図示を省略)とを含む。保持部2は、台座部21により砥石OPの鉛直方向Vの下方への移動を規制し、左右一対の砥石保持部22により砥石OPの左右方向LRへの移動を規制し、前後で対になったプッシャ23により砥石OPの前後方向FBへの移動を規制する。ただし、保持部2は、少なくとも、砥石OPとフランジ部材AMとが嵌合される際に、フランジ部材AMが当接してもフランジ部材AMに対する移動が規制されるように砥石OPを保持することができれば、図示された例に限定されることはなく、他の公知の保持機構によって砥石OPを保持するように構成されていてもよい。
搭載部5は、床面FL上に固定されて立設された脚部50と、脚部50に取り付けられた上側台座51および下側台座52とを含む。
移動機構3は、前後方向FBに沿って、砥石OPに対して相対的にフランジ部材AMを移動させる。本実施形態では、移動機構3は、フランジ部材AMを砥石OP側へ、および砥石OPから離間する側へ移動させる。詳細には、移動機構3は、フランジ部材AMの姿勢を所定範囲内に維持した状態で、砥石OPの孔部OP1の中心軸CL1に沿って、フランジ部材AMを砥石OPに対して相対的に移動させる。移動機構3は、図1および図3に示されるように、搭載部5に動作可能に固定して搭載される。移動機構3は、フランジ部材AMを保持するための保持機構31と、保持機構31を砥石OPに対して相対的に移送するための移送機構32とを含む。
保持機構31は、フランジ部材AMの姿勢を所定範囲内に維持した状態でフランジ部材AMを保持する機構である。詳細には、保持機構31は、以下で詳しく述べるように、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2に対して略垂直な面内において所定範囲内でフランジ部材AMが揺動可能なように、フランジ部材AMを保持する。なお、本明細書において「中心軸CL2に対して略垂直な面」とは、中心軸CL2に対して厳密な意味で垂直な面に限定されることはなく、中心軸CL2に対して垂直な面からわずかに傾斜した面も含む意味で用いられる。「中心軸CL2に対して略垂直な面」は、その中心軸CL2に対する角度が、フランジ部材AMの形状(および、その形状によって定まる、後述するプッシャ320の軸部APに対する相対位置)に応じて変化する場合があるが、その変化し得る範囲内で、中心軸CL2に対して垂直な面から傾斜した面を含む概念であり、後述する効果と同様の効果を奏することができる範囲内のものを含む概念である。保持機構31は、図1および図3に示されるように、フランジ部材AMの軸部APが砥石OPの孔部OP1に対向するように、フランジ部材AMを保持する。本実施形態では、フランジ部材AMは、軸部APが前方向Fに位置し、フランジ部FLAが後方向Bに位置するように配置される。保持機構31は、移送機構32に接続され、移送機構32によって砥石OPに対して相対的に移送される。保持機構31は、図1に示されるように、フランジ部材AMの鉛直方向Vの下方への移動を規制する支持部310と、支持部310に対するフランジ部材AMの後方向Bへの移動を規制する後方支持部(プッシャ320)と、支持部310に対するフランジ部材AMの前方向Fへの移動を規制する前方支持部(係止機構33)とを備えている。
支持部310は、フランジ部材AMを支持部310に対して揺動可能に支持するように構成される。たとえば、支持部310は、砥石OPの中心軸CL1に対するフランジ部材AMの中心軸CL2の傾斜角度が変更され得るように、フランジ部材AMを支持部310に対して揺動可能に支持する。したがって、以下で詳しく述べる姿勢調整機構4によって、砥石OPの中心軸CL1に対するフランジ部材AMの中心軸CL2の傾斜角度の調整を容易に行うことができる。また、支持部310は、フランジ部材AMが保持機構31に保持された状態で、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2に対して略垂直な面内で、フランジ部材AMが支持部310に対して揺動し得るように、フランジ部材AMを支持部310に対して揺動可能に支持する。したがって、以下で詳しく述べるように、フランジ部材AMの中心軸CL2が、砥石OPの中心軸CL1のある鉛直平面から左右いずれかにわずかにずれた状態で、フランジ部材AMの軸部APが砥石OPの孔部OP1の開口端縁OP2に当接したとしても、フランジ部材AMの中心軸CL2に対して略垂直な面内でフランジ部材AMが揺動して、中心軸CL1と中心軸CL2とが略同一の鉛直平面内で揃うことになる。
支持部310は、図1および図3に示されるように、移送機構32に接続されて、移送機構32によって砥石OPに対して前後方向FBに相対的に移動させられるように構成される。本実施形態では、支持部310は、移送機構32のアーム部材321aの上面に設けられ、アーム部材321aを介して移送機構32のスライダ321に接続される。支持部310は、本実施形態では、フランジ部材AMの孔部AP1内に配置され、孔部AP1の内部から、孔部AP1を囲繞するフランジ部材AMの内周面に向けて突出し、フランジ部材AMの内周面における周方向の上側部分を支持する。
図5は、本発明の一実施形態に係る部材嵌合装置1における支持部310の構成の一例を示す側面図である。支持部310は、本実施形態では、図5に示されるように、支持部310の上部に、略球面状の支持面3100を有している。支持面3100は、フランジ部材AMの孔部AP1を囲繞するフランジ部材AMの内周面に対して点接触することで、フランジ部材AMを支持部310に対して揺動可能に支持する。ただし、支持部310は、フランジ部材AMを揺動可能に支持することができれば、図示された例に限定されることはなく、たとえばフランジ部材AMの中心軸CL2に沿って延びるように設けられ、フランジ部材AMの内周面と線接触するように構成されていてもよい。支持部310は、たとえば、支持部310上にフランジ部材AMを固定することなく載置できるように構成されていれば、形状にかかわらず、フランジ部材AMを揺動可能に支持することができる。
支持部310に対するフランジ部材AMの後方向Bへの移動を規制する後方支持部は、図1に示されるように、後述する移送機構32のプッシャ320により構成することができる。プッシャ320は、フランジ部材AMを後方から前方向Fに押圧することによって、フランジ部材AMの後方向Bへの移動を規制する。プッシャ320は、係止機構33と協働して、フランジ部材AMを前後方向FBで挟持することで、フランジ部材AMの前後方向FBの移動を規制する。プッシャ320の詳細は後述する。
支持部310に対するフランジ部材AMの前方向Fへの移動を規制する前方支持部は、図1に示されるように、係止機構33により構成することができる。係止機構33は、フランジ部材AMを前方から後方向Bへ押圧することによって、フランジ部材AMの前方向Fへの移動を規制する。係止機構33は、プッシャ320と協働して、フランジ部材AMを前後方向FBで挟持することで、フランジ部材AMの前後方向FBの移動を規制する。
係止機構33は、図1および図4に示されるように、フランジ部材AMと前後方向FBで係合する係止部330と、係止部330を支持部310に対して前後方向FBに移動させる移動装置331とを含む。係止機構33は、移動装置331により係止部330を支持部310に対して後方向Bに移動させることで、フランジ部材AMを前方から後方向Bへ押圧して、フランジ部材AMの前方向Fへの移動を規制する。係止機構33の係止部330は、本実施形態では複数(図4参照、図示された例では3つ)設けられ、フランジ部材AMの周方向に等間隔で配置されている。これにより、フランジ部材AMの後方向Bへの移動をより安定して規制することができる。ただし、係止部330の数は特に限定されることはない。
係止部330は、図1および図4に示されるように、フランジ部材AMの軸部APにおける前側の端部と前後方向FBで係合する係止爪3300と、係止爪3300を、フランジ部材AMと係合する係合位置(図1の実線、図4参照)とフランジ部材AMとの係合が解除される係合解除位置(図1の破線参照)との間で移動させるリンク機構3301とを含む。係止爪3300は、リンク機構3301によって、フランジ部材AMの軸部APの径方向に沿って、具体的には図1に矢印ROで示す方向に回動することにより、係合位置と係合解除位置との間で移動する。リンク機構やリンク機構を動作させる機構は、特に限定されることはなく、公知の機構を用いることができる。
移動装置331は、移送機構32の後述するスライダ321に取り付けられ、スライダ321に対して係止部330を前後方向FBに移動させる。移動装置331は、図1に示されるように、係止部330が接続されるロッド3310と、ロッド3310を駆動するためのサーボモータなどの駆動部(図示せず)とを含む。ロッド3310は、駆動部の駆動により移送機構32(スライダ321)に対して前後方向FBで移動して、係止部330を前後方向FBで移動させる。ロッド3310を駆動するための駆動部としてサーボモータを採用することにより、ロッド3310の位置を精度よく制御することができる。
移送機構32は、砥石OPに対して相対的に保持機構31(およびフランジ部材AM)を前後方向FBに移送する。移送機構32は、本実施形態では、図1および図3に示されるように、搭載部5に動作可能に固定して搭載され、床面FLに対して保持機構31を前後方向FBに移動させることで、砥石OPに対して相対的に保持機構31(およびフランジ部材AM)を前後方向FBに移動させる。本実施形態では、移送機構32は、フランジ部材AMを前方向Fに押圧するためのプッシャ320と、フランジ部材AMを支持する支持部310およびフランジ部材AMと係合する係止機構33を前後方向FBに移動させるスライダ321とを含む。移送機構32は、プッシャ320およびスライダ321が同期して動作することにより、保持機構31およびフランジ部材AMを前後方向FBに移送する。
プッシャ320は、スライダ321と同期して動作して、フランジ部材AMを前方向Fに押圧することで、フランジ部材AM(および保持機構31)を前方向Fに移動させる。プッシャ320は、図1および図3に示されるように、搭載部5に動作可能に固定して搭載されて、床面FLに対してフランジ部材AMを前方向Fに押圧する。プッシャ320は、本実施形態では複数(図4に示された例では3つ)設けられているが、1つ、2つ、または4つ以上であってもよい。プッシャ320は、たとえば、電動シリンダ装置などのシリンダ装置である。各プッシャ320は、フランジ部材AMを押圧する押出ロッド3200と、押出ロッド3200を前後方向FBに進退させる駆動部3201とを含む。駆動部3201は、たとえば、サーボモータである。駆動部3201として、サーボモータを採用することにより、押出ロッド3200の位置を精度良く制御することができる。
図6は、本実施形態におけるプッシャ320のフランジ部材AMに対する位置の一例を示す図である。3つのプッシャ320は、図6に示されるように、フランジ部材AMのフランジ部FLAを押圧するように、フランジ部材AMの周方向で等間隔に配置されている。これにより、3つのプッシャ320が同時にフランジ部材AMを押圧することで、フランジ部材AMの周方向で均等の力を加えることができるので、フランジ部材AMの姿勢をより安定して維持しながらフランジ部材AMを移動させることができる。3つのプッシャ320はそれぞれ、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2よりも上方でかつ中心軸CL2よりも左側の位置と、中心軸CL2よりも上方でかつ中心軸CL2よりも右側の位置と、中心軸CL2の真下の位置とに配置されている。プッシャ320は、以下で詳しく述べるように、フランジ部材AMの姿勢を調整する機能も有しており、それぞれのプッシャ320のストロークを調整することで、フランジ部材AMの中心軸CL2の砥石OPの中心軸CL1に対する傾斜角度を調整することができる。
スライダ321は、支持部310および係止機構33を前後方向FBに移動させることで、フランジ部材AMを前後方向に移動させる。スライダ321は、図1および図3に示されるように、搭載部5に対して前後方向FBに移動可能なように、搭載部5に搭載される。また、スライダ321には、アーム部材321aを介して支持部310が接続されるとともに、係止機構33が動作可能に接続される。スライダ321は、サーボモータなどの駆動部(図示せず)によって前後方向FBに沿って移動する。スライダ321の駆動部にサーボモータを採用することで、スライダ321の位置を精度よく制御することができる。スライダ321は、プッシャ320と同期して前方向Fに移動することで、支持部310がフランジ部材AMを支持し、係止機構33がフランジ部材AMを係止した状態を維持しながら、支持部310および係止機構33を前方向Fに移動させて、フランジ部材AMを前方向Fに移動させることができる。また、スライダ321は、プッシャ320と同期して後方向Bに移動することで、支持部310がフランジ部材AMを支持し、係止機構33がフランジ部材AMを係止した状態を維持しながら、支持部310および係止機構33を前方向Fに移動させて、フランジ部材AMを前方向Fに移動させることができる。
図7は、本実施形態に係る部材嵌合装置1における姿勢調整機構4の動作の一例を模式的に示す部分断面図である。姿勢調整機構4は、フランジ部材AMの姿勢を調整する。より具体的には、姿勢調整機構4は、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2の、砥石OPの孔部OP1の中心軸CL1に対する角度θを調整する。姿勢調整機構4は、フランジ部材AMを保持する保持機構31を構成する要素と同じ要素で構成することができる。より具体的には、姿勢調整機構4は、図7に示されるように、フランジ部材AMの下方への移動を規制する支持部310と、フランジ部材AMを後方から前方向Fへ押圧する後方押圧部(プッシャ320)と、フランジ部材AMを前方から後方向Bへ押圧する前方押圧部(係止機構33)とを含む。
姿勢調整機構4は、図7に示されるように、フランジ部材AMを支持部310で支持した状態で、プッシャ320(押出ロッド3200)および係止機構33(係止部330)の前後方向FBにおける互いに対する相対動作位置を調整することにより、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2の、砥石OPの孔部OP1の中心軸CL1に対する角度θを調整する。ここで、フランジ部材AMは、支持部310に対して揺動可能に支持されて、支持部310を中心として回転可能に支持されている。それにより、姿勢調整機構4は、プッシャ320(押出ロッド3200)および係止機構33(係止部330)の前後方向FBにおける互いに対する相対動作位置を調整するだけで、フランジ部材AMの砥石OPに対する角度θを容易に調整することができる。
たとえば、フランジ部材AMの中心軸CL2を砥石OPの中心軸CL1に対して傾斜させる場合、姿勢調整機構4は、図7に示されるように、支持部310によりフランジ部材AMの軸部APの内周面を支持し、かつ、係止機構33の係止部330によりフランジ部材AMの軸部APにおける前側の端部の下側部分を後方向Bへ押圧した状態において、上側および下側のプッシャ320の押出ロッド3200の押し出し長さ(ストローク)を異ならせる。より具体的には、たとえばフランジ部材AMの中心軸CL2を砥石OPの中心軸CL1に対して砥石OP側へ斜め上向きに傾斜させる場合、上側のプッシャ320のストロークを、下側のプッシャ320のストロークよりも短くすることにより、上側のプッシャ320の押出ロッド3200の先端部を、下側のプッシャ320の押出ロッド3200の先端部よりも後方に位置させる。これにより、前後方向FBにおいて、上側のプッシャ320によるフランジ部材AMの押圧位置が、下側のプッシャ320によるフランジ部材AMの押圧位置よりも後方に位置することになるため、フランジ部材AMの中心軸CL2を、砥石OPの中心軸CL1に対して砥石OP側へ斜め上向きに傾斜させることができる。
また、フランジ部材AMの中心軸CL2を砥石OPの中心軸CL1に対して略平行に戻す場合、姿勢調整機構4は、支持部310によりフランジ部材AMの軸部APの内周面を支持し、かつ、係止機構33の係止部330によりフランジ部材AMの軸部APにおける前側の端部の下側部分を後方向Bへ押圧した状態において、上側および下側のプッシャ320の押出ロッド3200のストロークを同じ長さに揃える。それにより、前後方向FBにおいて、上側のプッシャ320によるフランジ部材AMの押圧位置と、下側のプッシャ320によるフランジ部材AMの押圧位置とが同じになるため、フランジ部材AMの中心軸CL2を、砥石OPの中心軸CL1と略平行にすることができる。
また、フランジ部材AMの中心軸CL2と砥石OPの中心軸CL1との間の水平方向H(水平面内)における角度を調整する場合は、上述したのと同様の方法で、左右のプッシャ320(図6参照)の押出ロッド3200のストロークを調整すればよい。
ここで、上述したように、本実施形態では、フランジ部材AMは、フランジ部FLAが後側に位置するように配置される。このため、フランジ部材AMの重心は、フランジ部材AMにおける前後方向FBの中央部よりも後側にある。このようなフランジ部材AMを、たとえばフランジ部材AMの前後方向FBの略中心で支持部310により支持すれば、フランジ部材AMの中心軸CL2が砥石OPの中心軸CL1に対して砥石OP側へ斜め上向きに傾斜するように、フランジ部材AMが自然と傾斜する。姿勢調整機構4は、フランジ部材AMの中心軸CL2が砥石OPの中心軸CL1に対して砥石OP側へ斜め上向きに傾斜させる場合には、このようなフランジ部材AMの自然な傾斜を利用することで、フランジ部材AMの姿勢を容易に調整することができる。
制御部6は、移動機構3の動作を制御して、フランジ部材AMを前後方向FBに移動させ、姿勢調整機構4の動作を制御して、フランジ部材AMの姿勢を調整する。制御部6は、任意で、保持部2を制御して、保持部2による砥石OPの保持動作を制御してもよい。制御部6は、移動機構3および姿勢調整機構4、ならびに任意で保持部2に、それぞれを制御可能に接続される。制御部6は、移動機構3および姿勢調整機構4の動作を制御することができれば、特に限定されることはなく、たとえば、集中演算処理装置(CPU)、HDDなどの記憶装置、RAMやROMなどのメモリ、液晶ディスプレイなどの表示装置、キーボードやマウスなどの入力装置を含む公知のコンピュータを用いることができる。なお、1つの制御部6が、移動機構3、姿勢調整機構4および保持部2のすべてを制御してもよいし、複数の制御部6が、移動機構3、姿勢調整機構4および保持部2のそれぞれを制御してもよい。
図8~図12は、部材嵌合装置1によるフランジ部材AMと砥石OPとの嵌合動作を示す一連の図である。以下では、図8~図12を参照して、制御部6による制御を説明する。
まず、部材嵌合装置1によるフランジ部材AMと砥石OPとの嵌合動作を行なう前段階として、砥石OPが、砥石OPの孔部OP1の中心軸CL1が水平方向H(および前後方向FB)に沿うように、保持部2に配置される(図1参照)。このとき、砥石OPは、孔部OP1の開口端縁OP2(フランジ部材AMの軸部APが挿入される側)が後方向Bを向くように設置される。制御部6は、前後で対になったプッシャ23(図3参照、前側のプッシャは図示を省略)により砥石OPを前後方向FBで挟持することで、砥石OPを保持部2に保持させる制御を行なう。また、フランジ部材AMは、軸部APが前方向Fを向くように、保持機構31にセットされる(図1参照)。本実施形態では、フランジ部材AMは、係止機構33の係止部330が係合解除状態にされた状態で、フランジ部材AMの孔部AP1の後方(フランジ部FLA側)から支持部310が孔部AP1内に挿入されて、支持部310に支持される。このとき、フランジ部材AMは、図8に示されるように、後述する第1の姿勢制御が容易になるように、中心軸CL2が前方向Fに向かって斜め上向きに傾斜するように支持部310に支持されるように設置されることが望ましい。制御部6は、図8に示されるように、係止機構33の係止部330をフランジ部材AMの軸部APにおける前側の端部の下側部分に対して係合状態とする制御を行ない、フランジ部材AMの前方向Fへの移動が規制されるようにフランジ部材AMを係止する。
つぎに、制御部6は、図9に示されるように、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2が、砥石OPの孔部OP1の中心軸CL1に対して、砥石OP側へ斜め上向きに所定範囲内で傾斜するように姿勢調整機構4を制御する第1の姿勢制御を行う。具体的には、制御部6は、第1の姿勢制御において、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2の、砥石OPの孔部OP1の中心軸CL1に対してなす角度θが、所定の範囲に収まるように、上側および下側のプッシャ320のストロークを調整する。このとき、フランジ部材AMの中心軸CL2の砥石OPの中心軸CL1に対する角度θは、後述する第2の姿勢制御が可能な範囲とされることが好ましい。ただし、フランジ部材AMの中心軸CL2の砥石OPの中心軸CL1に対する角度θは、以下の工程の途中において、第2の姿勢制御が可能な範囲内に調整されてもよい。第2の姿勢制御が可能な範囲については、以下で詳しく説明する。
つぎに、制御部6は、図10に示されるように、フランジ部材AMの軸部APの外周面が、砥石OPの孔部OP1の開口端縁OP2における下側部分に当接し、軸部APが孔部OP1における第1の深さ位置に進入するまで、移動機構3を制御する第1の移動制御を行う。ここで、「開口端縁OP2における下側部分」とは、開口端縁OP2における上側の部分に対して下側の部分という意味で用いられ、開口端縁OP2における最下点という意味に限定されるものではなく、開口端縁OP2の概ね中間高さから下側の部分を意味する。また、第1の深さ位置は、たとえば、軸部APにおける先端から後述の許容挿入深さhに相当する長さの部分までが孔部OP1内に挿入されたときの、孔部OP1内における軸部APの先端の位置とすることができる。軸部APを許容挿入深さhまで挿入することで、後述する第2の姿勢制御において、軸部APが孔部OP1から抜け出ることを抑制しながら、軸部APの姿勢をより確実に調整することができる。ただし、第1の深さ位置は、これに限定されるものではなく、たとえば、軸部APの先端から許容挿入深さhに相当する長さより小さい長さの部分までが孔部OP1内に挿入されたときの、軸部APの先端の位置であってもよい。制御部6は、本実施形態では、第1の移動制御において、フランジ部材AMの軸部APの外周面が、砥石OPの孔部OP1の開口端縁OP2における下側部分に当接し、軸部APが孔部OP1における第1の深さ位置に進入するまで、移動機構3のスライダ321を前進させるとともに、移動機構3のすべてのプッシャ320のストロークを同じ長さだけ大きくする。
ここで、第1の移動制御を行なった際、図13の実線で示されるように、フランジ部材AMの軸部APの外周面と砥石OPの孔部OP1の開口端縁OP2とが接触した当初では、軸部APの中心軸CL2が孔部OP1の中心軸CL1に対して左右方向LRにずれている場合がある(図示された例では左方向Lにずれている)。このようなずれが生じた状態では、砥石OPの孔部OP1の開口端縁OP2における軸部APの外周面との接触箇所P1は、孔部OP1の開口端縁OP2における下端箇所P2から左右方向LRにずれてしまう(図示された例では左方向Lにずれている)。しかしながら、本実施形態では、上述したように、フランジ部材AMは、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2に対して略垂直な面内で支持部310に対して揺動し得るように、保持機構31に保持されている。したがって、フランジ部材AMの軸部APは、砥石OPの孔部OP1の開口端縁OP2に当接し、孔部OP1における第1の深さ位置まで進入する過程において、開口端縁OP2からの反作用の力RFと、フランジ部材AMが受ける重力GFとにより、開口端縁OP2に沿って矢印Sで示す方向へスライドし、これにより、中心軸CL1に対する中心軸CL2の左右方向LRのずれが自動的に修正される。このように、フランジ部材AMを支持部310に載置するだけという簡単な構成で、フランジ部材AMを支持部310に対して揺動可能に支持して、フランジ部材AMの砥石OPに対する位置調整を容易に行うことができる。特に、本実施形態では、フランジ部材AMは、中心軸CL2に対して略垂直な面内で支持部310を中心として回転するようにガイドされているので、矢印Sで示す方向へスライドしやすく、ずれの修正がよりスムーズに行われる。
つぎに、制御部6は、図11に示されるように、フランジ部材AMの軸部APの外周面が砥石OPの孔部OP1の開口端縁OP2における下側部分に当接した状態において、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2が砥石OPの孔部OP1の中心軸CL1と略平行となるように姿勢調整機構4を制御する第2の姿勢制御を行う。具体的には、制御部6は、第2の姿勢制御において、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2と、砥石OPの孔部OP1の中心軸CL1とが略平行となるように、姿勢調整機構4の各プッシャ320のストロークを調整する。たとえば、制御部6は、各プッシャ320のストロークを同じ長さに調整する。
つぎに、制御部6は、図12に示されるように、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2が砥石OPの孔部OP1の中心軸CL1と略平行となった状態において、フランジ部材AMの軸部APが砥石OPの孔部OP1における第2の深さ位置まで進入するように移動機構3を制御する第2の移動制御を行う。具体的には、制御部6は、第2の移動制御において、フランジ部材AMの軸部APが砥石OPの孔部OP1内の第2の深さ位置まで進入するように、移動機構3のスライダ321を前進させるとともに、移動機構3のすべてのプッシャ320のストロークを同じ長さだけ大きくする。本実施形態では、第2の移動制御により、フランジ部材AMのフランジ部FLAが砥石OPの後側の端面に当接するまで、フランジ部材AMが移動させられる。ここで、第2の深さ位置は、フランジ部材AMの軸部APと砥石OPの孔部OP1との嵌合が完了した際に、軸部APが孔部OP1内に侵入したときの軸部APの先端の位置である。第2の深さ位置は、フランジ部材AMの軸部APおよび砥石OPの孔部OP1の大きさや形状などに応じてや、要求される嵌合深さに応じて画定される。本実施形態では、第2の深さ位置は、フランジ部材AMの軸部APの全体が砥石OPの孔部OP1内に進入したときの、軸部APの先端の位置である。
フランジ部材AMの軸部APと砥石OPの孔部OP1との嵌合動作が完了すると、制御部6は、互いに嵌合したフランジ部材AMおよび砥石OPを部材嵌合装置1から取り外すための制御を行う。具体的には、制御部6は、図12に示された状態から、係止機構33の係止部330を係合解除状態とし、移動機構3のスライダ321を後退させるとともに、移動機構3のすべてのプッシャ320のストロークを短くして、支持部310および係止部330をフランジ部材AMから後方向Bに移動させる制御を行なう。また、制御部6は、前後で対になったプッシャ23(図3参照、前側のプッシャは図示を省略)を砥石OPから離間させる制御を行なう。これにより、互いに嵌合したフランジ部材AMおよび砥石OPは、保持部2から取り外し可能な状態となる。そして、互いに嵌合されたフランジ部材AMおよび砥石OPは、保持部2から取り外される。
ここで、図14を参照して、第2の姿勢制御が可能な範囲およびフランジ部材AMの軸部APの許容挿入深さhについて説明する。図14は、本実施形態に係る部材嵌合装置1において制御されるフランジ部材AMの姿勢の一例を模式的に示す図である。
フランジ部材AMの中心軸CL2が、砥石OPの中心軸CL1に対して一定以上の傾斜角度となると、軸部APの外周面が砥石OPの孔部OP1の開口端縁OP2に当接した状態で、フランジ部材AMの中心軸CL2が砥石OPの中心軸CL1と略平行になるようにフランジ部材AMの傾斜を調整するのが困難な場合がある。そのときの傾斜角度は、臨界角度θaと呼ぶことができる。図14は、中心軸CL1と中心軸CL2との間の角度θが臨界角度θaであるときに、フランジ部材AMの外周面が砥石OPの孔部OP1の開口端縁OP2に当接した状態を示している。図14から理解できるように、臨界角度θaは、以下の式(1)により表される。ここで、Rは、砥石OPの孔部OP1の半径であり、rは、フランジ部材AMの軸部APの半径である。
以上の観点から、第2の姿勢制御が可能な範囲は、式(1)で表される臨界角度θa以下とされる。したがって、制御部6は、第1の姿勢制御において、フランジ部材AMの中心軸CL2が砥石OPの中心軸CL1に対してなす傾斜角度θが、0°よりも大きく、臨界角度θa以下となるように姿勢調整機構4を制御することが好ましい。
以上の議論は、中心軸CL1および中心軸CL2が、同一鉛直平面上にある場合を想定している。つまり、砥石OPの中心軸CL1に対してフランジ部材AMの中心軸CL2が、砥石OP側へ斜め上向きに傾斜している場合を想定している。しかし、実際には、砥石OPの中心軸CL1に対して、フランジ部材AMの中心軸CL2が、砥石OP側へ斜め右向きに傾斜するなど、他の向きに傾斜する場合も想定される。そのような場合でも、上述したのと同様の考え方で、臨界角度を決定することが可能である。たとえば、図15は、フランジ部材AMの中心軸CL2の傾斜方向が変化した場合の第2の姿勢制御が可能な範囲を模式的に示している。図15において、縦軸は、斜め上向きの傾斜角度θYを表し、横軸は、斜め左向きまたは斜め右向きの傾斜角度θXを表している。また、ハッチングで示される範囲R1は、制御部6による第2の姿勢制御を行うことが可能な範囲を表し、範囲R1以外の範囲R2は、制御部6による第2の姿勢制御が困難な範囲を表す。制御部6は、第1の姿勢制御において、フランジ部材AMの中心軸CL2が砥石OPの中心軸CL1に対してなす角度θが、図示した範囲R1内の範囲となるように姿勢調整機構4を制御することが好ましい。
また、許容挿入深さhは、砥石OPの孔部OP1にフランジ部材AMの軸部APを挿入する際に挿入することができる軸部APの最大長さと定義することができる。たとえば、許容挿入深さhの理解を容易にするために、図15を参照して説明すると、フランジ部材AMの軸部APの中心軸CL2を臨界角度θaに傾斜させた状態で軸部APを孔部OP1に挿入する場合には、挿入することができる軸部APの最大長さは、以下の式(2)により表される。
h=2r×tanθa ・・・(2)
<部材嵌合方法>
以下、再度図8~図12を参照して、本発明の一実施形態に係る部材嵌合方法を説明する。本実施形態の部材嵌合方法は、上述した部材嵌合装置1を用いて実施することもできるし、上述した部材嵌合装置1以外の装置を用いて実施することもできる。なお、以下で説明する部材嵌合方法は一例にすぎず、本発明の部材嵌合方法は以下の例に限定されることはない。
本実施形態の部材嵌合方法は、図8~図12に示されるように、中心軸CL2に沿って延びる軸部APを有するフランジ部材AMと、中心軸CL1に沿って延びる孔部OP1を有する砥石OPとを嵌合させる方法である。この部材嵌合方法では、図8に示されるように、砥石OPが、砥石OPの中心軸CL1が水平方向H(および前後方向FB)に沿うように配置される。このとき、砥石OPは、孔部OP1の開口端縁OP2(フランジ部材AMの軸部APが挿入される側)が後方向Bを向くように設置される。また、フランジ部材AMは、軸部APが前方向Fを向くように配置される。このとき、フランジ部材AMは、後述する姿勢調整が容易になるように、中心軸CL2が前方向Fに向かって斜め上向きに傾斜するように設置されることが好ましい。
本実施形態の部材嵌合方法では、まず、図9に示されるように、フランジ部材AMの中心軸CL2を、砥石OPの中心軸CL1に対して、砥石OP側へ斜め上向きに所定範囲内で傾斜するようにフランジ部材AMの姿勢を調整する。このとき、フランジ部材AMの中心軸CL2の砥石OPの中心軸CL1に対する角度θは、部材嵌合装置1に関して上述した第2の姿勢制御が可能な範囲とされることが好ましい。ただし、フランジ部材AMの中心軸CL2の砥石OPの中心軸CL1に対する角度θは、以下の工程の途中において、第2の姿勢制御が可能な範囲内に調整されてもよい。
このとき、砥石OPの中心軸CL1に対するフランジ部材AMの中心軸CL2の傾斜角度θが変更され得るように、フランジ部材AMを支持する支持部(たとえば、部材嵌合装置1の支持部310)によって、フランジ部材AMを支持部に対して揺動可能に支持することが好ましい。これによって、フランジ部材AMの中心軸CL2と砥石OPの中心軸CL1との間の傾斜角度θの調整を簡単に行うことができる。
本実施形態の部材嵌合方法では、つぎに、図10に示されるように、軸部APの外周面が孔部OP1の開口端縁OP2における下側部分に当接し、軸部APが孔部OP1における第1の深さ位置に進入するまで、フランジ部材AMを砥石OPに対して相対的に移動させる。ここで、第1の深さ位置は、たとえば、軸部APにおける先端から上述の許容挿入深さhに相当する長さの部分までが孔部OP1に挿入されたときの、孔部OP1内における軸部APにおける先端の位置とすることができる。軸部APを許容挿入深さhまで挿入することで、後述するフランジ部材AMの姿勢の調整の際に、軸部APが孔部OP1から抜け出ることを抑制しながら、軸部APの姿勢をより確実に調整することができる。ただし、第1の深さ位置は、これに限定されるものではなく、たとえば、軸部APの先端から許容挿入深さhに相当する長さより小さい長さの部分までが孔部OP1に挿入されたときの、軸部APにおける先端の位置であってもよい。
このとき、上述した支持部(たとえば、部材嵌合装置1の支持部310)によって、フランジ部材AMの中心軸CL2に対して略垂直な面内において支持部に対して揺動し得るようにフランジ部材AMを支持することが好ましい。これにより、部材嵌合装置1に関して説明したように、フランジ部材AMの中心軸CL2と砥石OPの中心軸CL1との間の位置合わせを容易に行うことができる。さらに、上述した支持部によって、フランジ部材AMを点接触または線接触で支持することがさらに好ましい。これにより、フランジ部材AMの中心軸CL2と砥石OPの中心軸CL1との間の位置合わせだけでなく、フランジ部材AMの中心軸CL2と砥石OPの中心軸CL1との間の傾斜角度θの調整も簡単に行うことができる。
本実施形態の部材嵌合方法では、つぎに、図11に示されるように、軸部APの外周面が孔部OP1の開口端縁OP2における下側部分に当接した状態において、フランジ部材AMの中心軸CL2が、砥石OPの中心軸CL1と略平行となるように、フランジ部材AMの姿勢を調整する。
本実施形態の部材嵌合方法では、つぎに、図12に示されるように、フランジ部材AMの中心軸CL2が砥石OPの中心軸CL1と略平行となった状態において、軸部APが孔部OP1における第2の深さ位置まで進入するように、フランジ部材AMを砥石OPに対して相対的に移動させる。ここで、第2の深さ位置は、フランジ部材AMの軸部APと砥石OPの孔部OP1との嵌合が完了した際に、軸部APが孔部OP1内に侵入したときの軸部APの先端の位置である。第2の深さ位置は、フランジ部材AMの軸部APおよび砥石OPの孔部OP1の大きさや形状などに応じてや、要求される嵌合深さに応じて画定される。本実施形態では、第2の深さ位置は、フランジ部材AMの軸部APの全体が砥石OPの孔部OP1内に進入したときの、軸部APの先端の位置である。
ここで、上述した支持部を、フランジ部材AMの孔部AP1の内部から、フランジ部材AMの孔部AP1を囲繞するフランジ部材AMの内周面に向けて突出するように、フランジ部材AMの孔部AP1の内部に配置して、その支持部により、フランジ部材AMの内周面における周方向の上側部分を支持することが好ましい。これにより、フランジ部材AMの内周面が、フランジ部材AMの内部からフランジ部材AMの内周面に向けて突出する部位で支持されるため、フランジ部材AMの鉛直方向Vの下方への移動をより確実に規制するとともに、孔部OP1の中心軸CL1に対する軸部APの中心軸CL2の傾斜角度θの変更がより容易となり、また、孔部OP1の中心軸CL1と軸部APの中心軸CL2との位置合わせをよりスムーズに行うことができる。
以上において、本発明の一実施形態に係る部材嵌合装置および部材嵌合方法を説明した。本実施形態に係る部材嵌合装置1および部材嵌合方法では、フランジ部材AMを砥石OPに対して移動させる構成であるが、これに限定されるものではない。たとえば、部材嵌合装置および部材嵌合方法は、砥石OPをフランジ部材AMに対して移動させる構成であってもよく、フランジ部材AMおよび砥石OPの双方を、互いに対して移動させる構成であってもよい。
また、本実施形態に係る部材嵌合装置1および部材嵌合方法は、砥石OPの中心軸CL1が水平方向Hに沿うように砥石OPを配置し、フランジ部材AMの姿勢を調整する構成であるが、これに限定されるものではない。たとえば、部材嵌合装置および部材嵌合方法は、フランジ部材AMの中心軸CL2が水平方向Hに沿うようにフランジ部材AMを配置し、砥石OPの姿勢を調整する構成であってもよい。
また、本実施形態に係る部材嵌合装置1および部材嵌合方法は、支持部310によりフランジ部材AMを支持する構成であるが、これに限定されるものではない。たとえば、部材嵌合装置および部材嵌合方法は、支持部310により砥石OPを支持する構成であってもよい。この場合、フランジ部材AMの孔部AP1に対応する孔部が、砥石OPに設けられてもよい。
以上のように、本発明の一実施形態に係る部材嵌合装置は、中心軸CL2に沿って延びる軸部APを有するフランジ部材AMと、中心軸CL1に沿って延びる孔部OP1を有する砥石OPとを嵌合させる装置である。フランジ部材AMおよび砥石OPの一方を一方側部材であるとし、他方を他方側部材であると定義したとき、一方側部材は、一方側部材の中心軸が水平方向Hに沿うように配置される。移動機構3は、一方側部材および他方側部材を、互いに対して相対的に移動させる。姿勢調整機構4は、他方側部材の姿勢を調整する。制御部6は、移動機構3および姿勢調整機構4を制御する。制御部6は、他方側部材の中心軸が、一方側部材の中心軸に対して、一方側部材側へ斜め上向きに所定範囲内で傾斜するように姿勢調整機構4を制御する第1の姿勢制御を行う。また、制御部6は、軸部APの外周面が孔部OP1の開口端縁OP2における下側部分に当接し、軸部APが孔部OP1における第1の深さ位置に進入するまで、移動機構3を制御する第1の移動制御を行う。また、制御部6は、軸部APの外周面が孔部OP1の開口端縁OP2における下側部分に当接した状態において、他方側部材の中心軸が一方側部材の中心軸と略平行となるように姿勢調整機構4を制御する第2の姿勢制御を行う。また、制御部6は、他方側部材の中心軸が一方側部材の中心軸と略平行となった状態において、軸部APが孔部OP1における第2の深さ位置まで進入するように移動機構3を制御する第2の移動制御を行う。
また、本発明の一実施形態に係る部材嵌合方法は、中心軸CL2に沿って延びる軸部APを有するフランジ部材AMと、中心軸CL1に沿って延びる孔部OP1を有する砥石OPとを嵌合させる方法である。フランジ部材AMおよび砥石OPの一方を一方側部材であるとし、他方を他方側部材であると定義したとき、一方側部材は、一方側部材の中心軸が水平方向Hに沿うように配置される。当該部材嵌合方法では、他方側部材の中心軸を、一方側部材の中心軸に対して、一方側部材側へ斜め上向きに所定範囲内で傾斜するように、他方側部材の姿勢を調整する。また、軸部APの外周面が孔部OP1の開口端縁OP2における下側部分に当接し、軸部APが孔部OP1における第1の深さ位置に進入するまで、一方側部材および他方側部材を互いに対して相対的に移動させる。また、軸部APの外周面が孔部OP1の開口端縁OP2における下側部分に当接した状態において、他方側部材の中心軸が一方側部材の中心軸と略平行となるように、他方側部材の姿勢を調整する。また、他方側部材の中心軸が一方側部材の中心軸と略平行となった状態において、軸部APが孔部OP1における第2の深さ位置まで進入するように、一方側部材および他方側部材を互いに対して移動させる。
このように、たとえば、一方側部材の中心軸が水平方向Hに沿うように一方側部材を配置して、他方側部材の姿勢を調整しながら、一方側部材と他方側部材とを水平方向Hで嵌合させる構成および方法とすることで、他方側部材の傾きを調整する場合や、孔部OP1の中心軸CL1と軸部APの中心軸CL2との位置合わせを行う場合など、多くの場面で他方側部材に作用する重力を利用することができる。そして、その重力を利用することで、一方側部材および他方側部材が重量物であっても、複雑な機構を導入することなく、たとえば、他方側部材の姿勢を簡単に調整でき、孔部OP1の中心軸CL1と軸部APの中心軸CL2との位置合わせを簡単に行うことができる。したがって、本実施形態の部材嵌合装置および部材嵌合方法によれば、取付部材および被取付部材が重量物であっても、簡単な構成および方法で嵌合を良好に行うことができる。
また、本実施形態に係る部材嵌合装置および部材嵌合方法では、支持部310は、一方側部材の中心軸に対する他方側部材の中心軸の傾斜角度θが変更され得るように、他方側部材を支持部310に対して揺動可能に支持する。
このような構成により、孔部OP1の中心軸CL1に対する軸部APの中心軸CL2の傾斜角度θの変更を容易に行うことができる。
また、本実施形態に係る部材嵌合装置および部材嵌合方法では、支持部310は、他方側部材の中心軸に対して略垂直な面内において支持部310に対して揺動し得るように他方側部材を支持する。
このような構成により、孔部OP1の中心軸CL1と軸部APの中心軸CL2との位置合わせを自動的に行うことができる。
また、本実施形態に係る部材嵌合装置および部材嵌合方法では、支持部310は、他方側部材を点接触または線接触で支持する。
このような構成により、孔部OP1の中心軸CL1に対する軸部APの中心軸CL2の傾斜角度θの変更や、孔部OP1の中心軸CL1と軸部APの中心軸CL2との位置合わせがよりスムーズに行われる。
また、本実施形態に係る部材嵌合装置および部材嵌合方法では、他方側部材は、他方側部材の中心軸に沿って延びる孔部を有する。支持部310は、他方側部材の孔部の内部に配置され、他方側部材の孔部の内部から、他方側部材の孔部を囲繞する他方側部材の内周面に向けて突出し、他方側部材の内周面における周方向の上側部分を支持する。
このような構成により、たとえば、他方側部材の内周面が、他方側部材の内部から他方側部材の内周面に向けて突出する部位で支持されるため、他方側部材の鉛直方向Vの下方への移動をより確実に規制するとともに、孔部OP1の中心軸CL1に対する軸部APの中心軸CL2の傾斜角度θの変更がより容易となり、また、孔部OP1の中心軸CL1と軸部APの中心軸CL2との位置合わせがよりスムーズに行われる。
上記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。