JP7252884B2 - シリコンウェーハの熱処理方法 - Google Patents
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Description
従来、表面部に結晶欠陥が存在しないシリコンウェーハを得るには、例えば特許文献1に開示されるように、チョクラルスキー法(CZ法)によりシリコン単結晶を引き上げる際、結晶引上速度vと単結晶内の引上軸方向の温度勾配の平均値Gとの比(v/G値)を制御することにより無欠陥の単結晶シリコンインゴットを育成し、これをスライスして得ることができる。
前記課題を解決するため、近年では、単結晶シリコンインゴットを高速育成し、スライスしたシリコンウェーハに対して高温での熱処理を施し、ウェーハ表面部に無欠陥層(DZ層:Denuded Zone層)を形成する方法が多く採用されている。
しかしながら、温度が1200℃付近の高温で長時間の熱処理になると、炉体の影響により汚染する、或いは、ウェーハ周端部に接触するウェーハ支持部からスリップ転位が発生し、ウェーハが塑性変形する等の不具合が発生する虞があった。
また、特許文献3に開示されるように数秒~60秒といった短時間の急速昇降温熱処理を行う方法にあっては、特許文献2記載の発明は有する課題(炉体からの汚染、スリップ転位)の発生は抑制されるものの、使用するサンプルによって無欠陥層の厚さが大きくばらつき、均質な無欠陥層の製品を製造することが困難であるという課題があった。
本発明の目的は、シリコンウェーハに熱処理を施すことによりウェーハ表面部に無欠陥層を形成するシリコンウェーハの熱処理方法において、形成される前記無欠陥層の厚さを均一に制御することのできるシリコンウェーハの熱処理方法を提供することにある。
尚、前記式(1)の酸素濃度[Oi]と窒素濃度[N]とに代入する値は、急速昇降温熱処理を施すシリコンウェーハと同一のシリコン単結晶から得られた他のシリコンウェーハの急速昇降温熱処理前の測定値であることが望ましい。
また、前記急速昇降温熱処理における前記最高到達温度Aは、1300℃以上1350℃以下であることが望ましい。
また、前記急速昇降温熱処理において、前記最高到達温度Aで30sec以上の熱処理を行うことが望ましい。
即ち、同一のシリコン単結晶から得た他のシリコンウェーハの酸素濃度及び窒素濃度の測定結果を予め得ておき、それを無欠陥層の目標とする厚さとともに関係式に代入して得た最高到達温度で急速熱処理を行うことにより無欠陥層の厚さを均一にすることができる。
図1は、本発明のシリコンウェーハの熱処理方法に用いられるRTP装置の一例の概要を示す断面図である。
本発明のシリコンウェーハの熱処理方法に用いられるRTP装置10は、図1に示すように、雰囲気ガス導入口20a及び雰囲気ガス排出口20bを備えたチャンバ(反応管)20と、チャンバ20の上部に離間して配置された複数のランプ30と、チャンバ20内の反応空間25にウェーハWを支持するウェーハ支持部40とを備える。また、図示しないが、ウェーハWをその中心軸周りに所定速度で回転させる回転手段を備えている。
すなわち、石英ルツボに充填した多結晶シリコンを加熱してシリコン融液とし、このシリコン融液の液面上方から種結晶を接触させて、種結晶と石英ルツボを回転させながら引上げ、所望の直径まで拡径して直胴部を育成することでシリコン単結晶インゴットを製造する。
すなわち、シリコン単結晶インゴットを内周刃又はワイヤソー等によりウェーハ状にスライスした後、外周部の面取り、ラッピング、エッチング、研磨等の加工工程を経て、シリコンウェーハを製造する(図2のステップS1)。
なお、ここで記載された加工工程は例示的なものであり、本発明は、この加工工程のみに限定されるものではない。
ここで同一のシリコン単結晶から得られた複数のシリコンウェーハのうち1枚を抜き取り、それを酸素濃度及び窒素濃度の測定に用いる(ステップS2)。
ここで、本発明にあっては、シリコンウェーハの熱処理前の酸素濃度を[Oi](×1018atoms/cm3)とし、前記シリコンウェーハの熱処理前の窒素濃度を[N](×1014atoms/cm3)とし、急速昇降温熱処理での最高到達温度をA(℃)としたとき、前記ウェーハ表面部に形成される無欠陥層の厚さの予測値B(μm)は、
B=-6.131×[N]-173.392×[Oi]-0.938×A+1578・・・(1) により求められる。尚、この式(1)の特定については、後述する。
そして、前記式(1)の予測値Bに、無欠陥層の厚さの目標値を代入することにより急速昇降温熱処理での最高到達温度Aを決定する(ステップS3)。
132.12=-6.131×[2.57×1014]-173.392×[1.22×1018]-0.938×A+1578となり、この式からAは1300℃となる。
最高到達温度が1300℃未満であると、ボイド欠陥が消滅しないため好ましくない。また、最高到達温度が1400℃を超えると、シリコンの融点近傍であるため、塑性変形やシリコンウェーハの表面が粗れるため好ましくない。ボイド欠陥の消滅や塑性変形の抑制等の観点から1300℃以上1350℃以下であることが好ましい。
チャンバ20内は、雰囲気ガス導入口20aから酸化性ガスを導入し、ボイド欠陥を消去するために、酸化性ガスがウェーハ表面に曝される状態とする(ステップS5)。
RTP後、チャンバ20からシリコンウェーハWを取り出し、次のウェーハWの処理を行う(ステップS7)。
即ち、同一のシリコン単結晶から得た他のシリコンウェーハの急速熱処理前の酸素濃度及び窒素濃度の測定結果を予め得ておき、それを無欠陥層の目標とする厚さとともに関係式に代入して得た最高到達温度で急速熱処理を行うことにより無欠陥層の厚さを均一にすることができる。
次に、シリコンウェーハの酸素濃度を[Oi](×1018atoms/cm3)とし、前記シリコンウェーハの窒素濃度を[N](×1014atoms/cm3)とし、急速昇降温熱処理での最高到達温度をA(℃)としたとき、前記ウェーハ表面部に形成される無欠陥層の厚さの予測値B(μm)は、
B=-6.131×[N]-173.392×[Oi]-0.938×A+1578
・・・(1)となる。この式(1)は以下に示す実験例から求めた。
また、この式の成立条件は、初期酸素濃度1.13~1.40(×1018atoms/cm3)、初期窒素濃度1.93~6.299(×1014atoms/cm3)、温度1300℃~1350℃の範囲である。
実験1では、図1に示したRTP装置を用い、表1に示す条件(最高到達温度、RTP前の酸素濃度、RTP前の窒素濃度)において急速熱処理を行い、式(1)から得た無欠陥層の厚さと無欠陥層の厚さとを測定し、比較検証した。
図3のグラフにおいて、縦軸は、式(1)より得られた無欠陥層の厚さ予測値(μm)であり、横軸は、RTP後の無欠陥層の厚さの実測値(μm)である。
図3のグラフに示すように実測値と予測値は略一致し、式(1)の関係式が正しいことを確認することができた。
(実験2)
実験2では、図1に示したRTP装置を用い、最高到達温度を変えて複数回の急速熱処理を行い、式(1)から得た無欠陥層の厚さ(目標値)と測定した無欠陥層の厚さ(実測値)とを、比較検証した。
また、熱処理後のウェーハにおいて、ボイド、析出核が消滅したかを観察した。
表2に具体的条件(最高到達温度、処理時間、RTP前の酸素濃度、RTP前の窒素濃度)を示す。
また、実施例10での最高到達温度は1350℃、窒素濃度は2.6(×1018atoms/cm3)、酸素濃度は1.23(×1018atoms/cm3)、無欠陥層の目標値は83μmである。
また、全ての実施例、比較例において最高到達温度での処理時間は30secとした。
実施例1では、無欠陥層の目標値132μmに対し測定値は154μmとなり、実施例2では、無欠陥層の目標値83μmに対し測定値は78μmとなり、いずれも近似した結果を得ることができた。また、無欠陥層においてボイド、析出核の消滅を確認することができた。
比較例2では、無欠陥層の目標値141μmに設定したが、ボイドは消滅しなかった。
比較例3では、ウェーハの表面粗れが発生し、無欠陥層の膜厚測定が不可能であった。
比較例4では、1400℃の最高到達温度での熱処理が装置上不可能であり、実施できなかった。
実験3では、図1に示したRTP装置を用い、実験1、2で確認した好ましい最高到達温度1300℃において、熱処理時間を変化させ、その好ましい時間について検証した。結果として、式(1)から得た無欠陥層の厚さ(目標値)と測定した無欠陥層の厚さ(実測値)とを、比較検証した。また、熱処理後のウェーハにおいて、ボイド、析出核が消滅したかを観察した。
表3に具体的条件(最高到達温度、処理時間、RTP前の酸素濃度、RTP前の窒素濃度)を示す。
また、実施例11での最高到達温度は1300℃、処理時間は30sec、窒素濃度は5.23(×1018atoms/cm3)、酸素濃度は1.28(×1018atoms/cm3)、無欠陥層の目標値は104μmである。
実施例12での最高到達温度は1300℃、処理時間は35sec、窒素濃度は5.23(×1018atoms/cm3)、酸素濃度は1.28(×1018atoms/cm3)、無欠陥層の目標値は104μmである。
実施例13での最高到達温度は1300℃、処理時間は40sec、窒素濃度は5.23(×1018atoms/cm3)、酸素濃度は1.28(×1018atoms/cm3)、無欠陥層の目標値は104μmである。
比較例6での最高到達温度は1300℃、処理時間は15sec、窒素濃度は2.7(×1018atoms/cm3)、酸素濃度は1.27(×1018atoms/cm3)、無欠陥層の目標値は120μmである。
実施例11では、無欠陥層の目標値104μmに対し測定値は108μmとなり、近似した結果を得ることができた。また、無欠陥層においてボイド、析出核の消滅を確認することができた。
実施例12では、無欠陥層の目標値104μmに対し測定値は112μmとなり、近似した結果を得ることができた。また、無欠陥層においてボイド、析出核の消滅を確認することができた。
実施例13では、無欠陥層の目標値104μmに対し測定値は116μmとなり、近似した結果を得ることができた。また、無欠陥層においてボイド、析出核の消滅を確認することができた。
比較例6では、無欠陥層の目標値120μmに対し測定値は19μmとなり、大きく差異が生じた。また、無欠陥層においてボイド、析出核は消滅しなかった。
20 チャンバ(反応管)
20a 雰囲気ガス導入口
20b 雰囲気ガス排出口
25 反応空間
30 ランプ
40 ウェーハ支持部
40b ステージ
50 放射温度計
W ウェーハ
Claims (4)
- シリコンウェーハに急速昇降温熱処理を施すことによりウェーハ表面部に無欠陥層を形成するシリコンウェーハの熱処理方法において、
シリコンウェーハの酸素濃度を[Oi](×1018atoms/cm3)とし、前記シリコンウェーハの窒素濃度を[N](×1014atoms/cm3)とし、急速昇降温熱処理での最高到達温度をA(℃)としたとき、
前記ウェーハ表面部に形成される無欠陥層の厚さの予測値B(μm)は、
B=-6.131×[N]-173.392×[Oi]-0.938×A+1578
・・・(1)
により求められ、
前記式(1)の予測値Bに、無欠陥層の厚さの目標値を代入することにより求められた最高到達温度Aを用いて急速昇降温熱処理を施すことを特徴とするシリコンウェーハの熱処理方法。 - 前記式(1)の酸素濃度[Oi]と窒素濃度[N]とに代入する値は、急速昇降温熱処理を施すシリコンウェーハと同一のシリコン単結晶から得られた他のシリコンウェーハの急速昇降温熱処理前の測定値であることを特徴とする請求項1に記載されたシリコンウェーハの熱処理方法。
- 前記急速昇降温熱処理における前記最高到達温度Aは、1300℃以上1350℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシリコンウェーハの熱処理方法。
- 前記急速昇降温熱処理において、
前記最高到達温度Aで30sec以上の熱処理を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたシリコンウェーハの熱処理方法。
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