[構造部材におけるねじり剛性と振動減衰性との関係に関する検討]
先ず、本願発明者等は、繊維強化樹脂で構成された部分を含む構造部材における、捩り剛性と振動減衰性との関係に関する検討を行った。以下、その検討結果を説明する。
本願発明者等は、繊維強化樹脂で構成された部分を含む構造部材を車両の車体に採用した場合の、捩り剛性と振動減衰性との関係について鋭意検討した。
車体において、乗員が感じる乗り心地に対して影響を与える車体の挙動モードは、主に次の2つの挙動モードに分類される。
〈第1の車体モード〉捩り変形に伴う車体ねじりモードであって、車両の旋回時における車体の中心軸回りの捩りモーメントに基づく位相遅れに起因した車体全体の捩れ変位運動であり、剛性に関連した車体モードである。
〈第2の車体モード〉曲げ変形に伴う膜振動モードであって、路面上に存在する突起物の乗上げ時や荒れた路面の走行時におけるフロアパネルによる上下変位運動であり、振動に関連した車体モードである。
繊維強化樹脂の一種である炭素繊維強化樹脂は異方性材料であり、繊維強化樹脂内の繊維を長手方向へ一方向に配置することで、捩れ損失係数が曲げ損失係数よりも高い値を有する異方性材料であるため、上記特許文献2に開示の帯板材が保有する振動減衰能力(歪エネルギ蓄積能力)をさらに高めることが望ましい。
即ち、上記特許文献2に開示の帯板材を構成する炭素繊維強化樹脂が材料自身の物理的性質として高い歪エネルギ蓄積能力を保有していたとしても、帯板材がフロアパネル(またはフロアパネルに連結されたフレーム部材)と同じ変形挙動を行う場合には、当該挙動に伴うねじり変形に対応した歪エネルギのエネルギ散逸能力が高く、曲げ変形に対応した歪エネルギ散逸能力は低いため、帯板材が保有する振動減衰能力を有効に活用し使い切ることが困難である。
本願発明者等は、上記のような事項を踏まえて、炭素繊維強化樹脂の歪エネルギ蓄積能力について、第1の検証解析を行った。これについて、図16および図17を用いて説明する。
図16に示すように、歪エネルギについて車体の全体構造を見た場合に、通常の車体構造では、バネ定数Kbの車体系機構と、バネ定数Kcfの炭素繊維強化樹脂部およびバネ定数Kjの締結部からなる部材系機構と、が並列接続された簡易バネモデルとして表すことができる。
よって、本願発明者等は、図16に示す簡易バネモデルを数値解析することにより、炭素繊維強化樹脂部の剛性と蓄積される歪エネルギとの相関関係を求めた。
図17に示すように、本願発明者等が行った数値解析の結果、炭素繊維強化樹脂部内に蓄積される歪エネルギは、剛性が極めて低い領域を除いて、剛性が高いほど歪エネルギが低くなり、剛性が低い部分に歪エネルギのピーク点が存在するという物理的性質の知見を得るに至った。
車体全体としては、剛性の低下により車体振動の位相遅れを生じさせない安心感を損ない、乗り心地の低下を招くおそれがある。即ち、車体剛性の確保と、炭素繊維強化樹脂部内に蓄積され散逸される歪エネルギの増加と、の両立を図ることが重要となる。
以上のような知見に基づき提案の、本発明の実施形態を以下で説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
なお、以下の説明で用いる図面のうち、図1から図3における「Fr」は車体前方、「Re」は車体後方、「Le」は車体左方、「Ri」は車体右方を示し、完成車体を想定した場合の車両の前進方向を基準にした方向である。
[第1実施形態]
1.車体1の下面および車室1b内の構成
本実施形態に係る車体1の下面および車室1b内の構成について、図1から図3を用いて説明する。図1は、車体1の下面構成を示す模式下面図であり、図2は、車体1の下面の一部構成を示す模式下面図であり、図3は、車体1における車室1b内の構成を示す模式斜視図である。
本実施形態に係る車両の車体1は、モノコック式の車体である。図1から図3に示すように、車体1は、車室1bの下面(底面)を構成するフロアパネル2と、エンジンルーム1aと車室1bとを仕切るダッシュパネル3と、ダッシュパネル3から前方に向けて延びるように設けられた左右一対のフロントサイドフレーム4と、フロアパネル2の後側端部分から後方に向けて延びるように設けられた左右一対のリヤサイドフレーム5と、を備える。
なお、ダッシュパネル3は、フロアパネル2の前端部分から上方に向けて延びるように設けられている。
さらに、車体1は、フロアパネル2の左右両端部分に配設された左右一対のサイドシル6と、左右一対のサイドシル6の各前端部分から上方に向けて延びるように設けられた左右一対のヒンジピラー7と、左右一対のサイドシル6の各中間部分から上方に向けて延びるように設けられた左右一対のセンターピラー8と、左右一対のヒンジピラー7の各上端部分から斜め後ろに向けて延びるように設けられた左右一対のフロントピラー9と、左右一対のフロントピラー9の各後端部分から後方に向けて延びるように設けられた左右一対のルーフサイドレール10と、を備える。
なお、左右一対のルーフサイドレール10は、センターピラー8に対して、その上端部分であって後端部分にそれぞれ接合されている。
図1から図3に示すように、車体1のフロアパネル2は、下方からの平面視で略矩形状に構成されたトンネル部11を備える。トンネル部11は、車幅方向(Le-Ri方向)の中央部分において、前後方向(Fr-Re方向)に延び、車室1bに対して突出した状態で設けられている。
また、トンネル部11の左右両端部分には、それぞれが前後方向(Fr-Re方向)に延びる左右一対のトンネルフレーム部12が設けられている。左右一対のトンネルフレーム部12のそれぞれは、断面形状が略ハット状であり、フロアパネル2の下面と協働して前後方向(Fr-Re方向)に略並行した状態で延びる略矩形状の閉断面を構成している。
左右一対のサイドシル6のそれぞれと左右一対のトンネルフレーム部12のそれぞれとの各間の部分には、前後方向(Fr-Re方向)に延び、断面形状が略ハット状のフロアフレーム13がそれぞれ設けられている。フロアフレーム13のそれぞれは、車体1の後側(Re側)に行くに従って車体1の外側となるように配設されており、フロアパネル2の下面と協働して前後方向(Fr-Re方向)に略並行した状態で延びる略矩形状の閉断面を構成している。
それぞれのフロアフレーム13の前端部分は、フロントサイドフレーム4の後端部分に接合されている。
フロアパネル2は、車室1b内にトンネル部11を架橋する状態で左右方向(Le-Ri方向)に延びるように設けられたクロスメンバ14,15を備えている。クロスメンバ14,15のそれぞれは、断面形状が略ハット状に設けられている。そして、クロスメンバ14,15のそれぞれは、トンネル部11の側壁部分からサイドシル6の側壁部分に亘りフロアパネル2の上面と協働して左右方向(Le-Ri方向)に延びる略矩形状の閉断面を構成している。
クロスメンバ14は、ヒンジピラー7とセンターピラー8との中間部分に対応する位置に配設され、クロスメンバ14の前側壁部には、フロアフレーム13の前端側部分にフロアパネル2を挟んで接合された上側フレーム16の後端部分が接合されている。
クロスメンバ15は、クロスメンバ14と略並行する状態で配設されており、センターピラー8に対応する位置に配設されている。
車室1b内には、左右一対の前席シート(図示を省略。)が配設されている。各シートは、当該シートの強度および剛性を確保するためのシートフレーム(図示を省略。)をそれぞれ備え、左右一対のシートレール17に対して摺動できるようになっている。
図3に示すように、左右一対のシートレール17のうち、車幅方向の外側のシートレール17は、前端部分(前側シート取付部)がクロスメンバ14の車幅方向の外側部分に固定され、後端部分(後側シート取付部)がクロスメンバ15の車幅方向の外側部分に固定されている。
左右一対のシートレール17のうち、車幅方向の内側のシートレール17は、前端部分(前側シート取付部)がクロスメンバ14の車幅方向の内側部分に固定され、後端部分(後側シート取付部)がクロスメンバ15の車幅方向の内側部分に固定されている。
また、フロアパネル2の下側には、複数の補強部材21~27が配設されている。
2.補強部材21~27の構成と車体1の部材への取付構成
補強部材21~27の構成と車体1の部材への取付構成について、図2および図4を用いて説明する。図4は、補強部材21(補強部材21~27の一例)の構成を示す模式斜視図である。
図2に示すように、本実施形態に係る車体1では、複数の補強部材21~27が左右対称の形態を以って配設されている。そして、補強部材21は、車体1の右側のサイドシル6とトンネルフレーム部12との間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。
補強部材22は、トンネル部11を跨ぐ状態で左右のトンネルフレーム部12の間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。補強部材23は、車体1の左側のサイドシル6とトンネルフレーム部12との間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。
補強部材24は、補強部材23よりも車体1の前方側において、車体1の左側のサイドシル6とトンネルフレーム部12との間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。補強部材25は、トンネル部11を跨ぐ状態で左右のトンネルフレーム部12同士の間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。
補強部材26は、補強部材25よりも車体1の後方側において、トンネル部11を跨ぐ状態で左右のトンネルフレーム部12同士の間に架け渡され、それぞれに固定箇所Pで固定されている。補強部材27は、補強部材26の後端部分と、補強部材22および補強部材21の各一端とを繋ぎ、且つ、トンネルフレーム部12に対して固定箇所Pで固定されている。
なお、本実施形態では、補強部材21~27のうち、補強部材22,25,26については、トンネル部(フロアトンネル)を架橋するトンネルメンバとして配設されている。
図4に示すように、補強部材21は、一の方向に沿って延びるように設けられたバー部(バー部材)21aと、バー部21aの中空部21bに対して各端部から挿入・固定された固定部21c,21dとを有する。各固定部21c,21dには、ボルトの挿通(矢印A,B)を許す孔21e,21fが設けられている。補強部材21の固定部21c,21dは、車体1の各部に対してボルトの締結を以って固定する場合の部分である。
バー部21aは、Y方向に細長い角筒形状をしている。
なお、図4では、図示を省略しているが、補強部材22~27についても、補強部材21と同様の構成を有する。ただし、車体1に対して用いる場所に応じて長尺筒部の長さは適宜設定されている。
ここで、本実施形態に係る補強部材21~27では、バー部21aの主たる部分が炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)を用いて構成されている。具体的な構成については、後述する。
3.補強部材21~27のバー部の断面構成
補強部材21~27のバー部の断面構成について、図5および図6を用いて説明する。図5は、図4のV-V断面を示す図であり、図6は、バー部21aの構成要素である本体構成部材211,212の構成を示す模式図である。なお、図5では、補強部材21のバー部21aを一例として図示しているが、補強部材22~27の各バー部についても略同じ断面構成を有する。
図5に示すように、バー部21aは、バー本体部材210と、第1接着層213と、第2接着層214と、から構成されている。バー本体部材210は、ともにU字形状を有する本体構成部材211,212から構成されている。そして、本体構成部材211,212は、ともにCFRPを用いて形成されており、図6に示すように、母材である樹脂2111と、強化材である炭素繊維2112とからなる。本体構成部材211,212は、バー部21aにおける高剛性部に相当する。
炭素繊維2112は、本体構成部材211,212の長手方向(図5の紙面に垂直な方向)の一端から他端までに亘って連続して、該長手方向に一様に延びる単繊維(フィラメント)が所定の数(例えば、12k)束ねられた繊維束(トウ)で構成されている。炭素繊維2112を構成する単繊維の直径は、例えば、7~10μmである。
母材である樹脂2111としては、例えば、熱硬化性エポキシ系合成樹脂が用いられている。
なお、本体構成部材212についても、本体構成部材211と同じ構成を有する。
図5に戻って、本体構成部材211,212のそれぞれにおいては、断面の端部からX方向の両外側に向けて延びるフランジ部211a,211b,212a,212bを有する。本体構成部材211と本体構成部材212とは、フランジ部211aとフランジ部212a、フランジ部211bとフランジ部212bとの各間に隙間(スリット)G1,G2が空くように、互いに向い合せとなるように対向が位置されている。各隙間G1,G2は、図5の紙面に垂直な方向に連続して形成されている。
なお、隙間G1が第1スリットに相当し、隙間G2が第2スリットに相当する。また、フランジ部211a,211bは、隙間(第1スリット)G1に面する端部に相当し、フランジ部212a,212bは、隙間(第2スリット)G2に面する端部に相当する。
第1接着層213は、隙間G1を塞ぐように充填形成されており(C部)、第2接着層214は、隙間G2を塞ぐように充填形成されている(D部)。換言すると、第1接着層213は、隙間(第1スリット)G1に面するフランジ部211a,212aの間を連結する第1封止部材に相当し、第2接着層214は、隙間(第2スリット)G2に面するフランジ部211b,212bの間を連結する第2封止部材に相当する。
第1接着層213は、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層である。
一方、第2接着層214は、例えば、エポキシ系接着剤が固化されて形成された層である。
本実施形態において、第1接着層213の剛性は、本体構成部材211,212の構成中における炭素繊維2112を除く樹脂2111の剛性(本体構成部材211,212における母材である樹脂2111の剛性)、および第2接着剤214の剛性よりも低い。例えば、第1接着層213の剛性は、本体構成部材211,212の構成中における母材である樹脂2111の剛性、および第2接着層214の剛性に対して、1/1000以下になっている。
より具体的には、本実施形態において、第1接着層213の剛性は略3MPaであるのに対して、本体構成部材211,212の構成中における母材である樹脂2111の剛性、および第2接着剤214の剛性は略3000MPaである。
4.第1接着層213の剛性とバー部21aでの振動減衰性能
第1接着層213の剛性とバー部21aでの振動減衰性能との関係について、図7を用いて説明する。図7は、横軸に第1接着層213の剛性をとり、縦軸に振動減衰性能の指標となるスリット断面再現率比率をとったグラフである。
なお、図7に示すグラフにおいては、本体構成部材211,212の構成中における部材である樹脂2111、および第2接着層214の剛性は、略3000MPaとした。
図7に示すグラフにおいて、スリット断面再現比率が80~100%の範囲が、優れた振動減衰性能を示すものと考えられる。この観点から図7を見ると、第1接着層213の剛性が略3MPa以下の場合に、優れた振動減衰性能を得られることが分かる。
換言すると、第1接着層213の剛性を、本体構成部材211,212の構成中における母材である樹脂2111、および第2接着層214の剛性に対して、1/1000以下とすることで優れた振動減衰性能を得られる。
5.効果
本実施形態に係る補強部材21~27を用いることにより奏される作用・効果について、図8を用いて説明する。図8は、実施例に係るバー部Aと比較例に係るバー部Bとのそれぞれ蓄積された歪エネルギについて比較するグラフである。
図8を用いて作用・効果を説明するに当たり、膜振動モードにおける車体1の変形挙動についてのCAE(Computer Aided Engineering)による解析を行った。
先ず、この解析の基本的な考え方について説明する。
車体1の構造解析モデルを2種類設定し、前後2対のサスペンションを振動入力源として、A,Bの各バー部材に蓄積されたねじり歪エネルギを算出した。
ここで、一方のモデルは、本実施形態と同じ構成のバー部Aを備える補強部材を装着し、他方のモデルは、比較例として中実の矩形断面形状のバー本体部を有するバー部Bを備える補強部材を装着した。なお、バー部Aとバー部Bとの基本材料および寸法については、同一とした。
図8に示すように、バー部Aに蓄積された捩り歪エネルギは、バー部Bに蓄積されたねじり歪エネルギに比べて75%も大きくなることが判明した。この結果より、母材内に蓄積される歪エネルギは、剛性が低いほど歪エネルギの最大ピーク点に接近することが実証され、剛性の低いバー部Aに蓄積された捩り歪エネルギが、中実の矩形断面形状を有するバー部Bに蓄積された捩り歪エネルギよりも大きいことが確認された。
上記の確認結果より、本実施形態に係る補強部材(構造部材)21~27は、以下のような作用・効果を有する。
本実施形態に係る補強部材21~27では、繊維強化樹脂で構成されたバー本体部材210を備えるので、高い曲げ剛性を有する。また、バー本体部材210には、Y方向に延びる隙間(第1スリット)G1が設けられているので、該補強部材21~27に対してねじり荷重が加わった場合に振動減衰効果を得ることもできる。
また、本実施形態に係る補強部材21~27では、バー本体部材210に設けられた隙間(第1スリット)G1が第1接着層(第1連結部)213により塞がれているので、車体の下面に用いられる補強部材21~27においても、バー本体部材210の内方の中空部21bに埃(小石などを含む)や水分が侵入するのを抑制することができる。よって、本実施形態に係る補強部材21~27では、埃に起因するノイズ(小石などが中空部21b内を移動することで発生するノイズなど)の発生が抑制され、また、水分に起因する腐食(金属材料からなる固定部21c,21dにおけるバー本体部材210との電位差による腐食)などの問題発生も抑制される。
さらに、本実施形態に係る補強部材21~27では、第1接着層(第1封止部材)213の剛性をバー本体部材(高剛性部)210の剛性よりも低くしているので、該補強部材21~27に対して捩り荷重が入力された場合に振動減衰効果が低下するのを抑制することができる。
本実施形態に係る補強部材21~27では、第1接着層(第1連結部)213の剛性を第2接着層(第2封止部材)214の剛性よりも低くすることにより、バー本体部材210における高い曲げ剛性を確保しながら、剛性の低い第1接着層213の形成によって、捩り荷重が入力された場合の優れた振動減衰性能を確保することができる。即ち、相対的に剛性の高い第2接着層214は、バー本体部材210とともに高い剛性を確保するのに寄与し、相対的に剛性が低い第1接着層213は、捩り荷重が入力された場合の優れた振動減衰性能を確保するのに寄与する。
また、本実施形態に係る補強部材21~27では、隙間(第1スリット)G1を第1接着層213で塞ぎ、隙間(第2スリット)G2を第2接着層214で塞ぐようにすることにより、バー本体部材210の内方の中空部21b内に埃(小石などを含む)や水分が侵入するのを抑制することができる。
また、本実施形態に係る補強部材21~27では、第1接着層213の剛性を第2接着層214の剛性に対して1/1000以下とすることにより、隙間(第1スリット)G1を第1接着層213で塞いでいても、優れた振動減衰性能を確保することができる。
また、本実施形態に係る補強部材21~27では、第2接着層214が略3000MPaの剛性を有することにより、バー本体部材210とともに高い剛性を確実に確保することができる。
また、本実施形態に係る補強部材21~27では、第1接着層213の剛性を、本体構成部材211,212の構成中における母材である樹脂2111の剛性に対して、1/1000以下とすることにより、隙間(第1スリット)G1を第1接着層213で塞いでいても、優れた振動減衰性能を確保することができる。
また、本実施形態に係る補強部材21~27では、本体構成部材211,212の構成球における母材である樹脂2111の剛性を略3000MPaとすることにより、高い曲げ剛性を確実に確保しつつ、高い振動減衰効果も得ることができる。
また、本実施形態に係る補強部材21~27では、バー本体部材210を構成する本体構成部材211,212として、炭素繊維強化樹脂を用いることにより、高い剛性を確保することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態に係る補強部材31のバー部31aの断面構成について、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態に係る補強部材31におけるバー部31aの構成を示す模式断面図である。なお、本実施形態に係る補強部材31は、図9に示すバー部31aの断面構成を除き、上記第1実施形態に係る補強部材21~27と同じ構成を有する。
図9に示すように、補強部材31のバー部31aは、C字状の断面構成を有するバー本体部材(バー本体部)310と、第1接着層(第1連結部)313と、から構成されている。バー本体部材310は、CFRPを用いて形成されており、母材である樹脂と、強化材である炭素繊維とからなる。バー本体部材310における樹脂や炭素繊維については、上記第1実施形態と同じである。
バー本体部材310においては、隙間(第1スリット)Gに面する断面の端部からX方向の外側に向けて延びるフランジ部310a,310bを有する。バー本体部材310におけるフランジ部310aとフランジ部310bとは、所定の間隔(隙間Gに相当)を空けて対向するように配設されている。本実施形態においても、隙間Gは、図9の紙面に垂直な方向に連続して形成されている。
なお、フランジ部310a,310bは、隙間(第1スリット)Gに面する端部に相当する。
第1接着層313は、隙間Gを塞ぎ、フランジ部310a,310b間を連結するように形成されている(E部)。即ち、本実施形態における第1接着層313は、隙間(第1スリット)Gを塞ぎ、フランジ部(端部)310a,310b間を連結するように形成された連結部に相当する。
第1接着層313は、上記第1実施形態と同様に、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層である。
補強部材31では、C字状の断面構成を有するバー本体部材310の隙間Gが、連結部としての第1接着層313で塞がれることにより、内方の中空部31bが閉じられている。
本実施形態においても、第1接着層313の剛性は、バー本体部材310の剛性よりも低い。具体的に、第1接着層313の剛性は、バー本体部材310の構成中における炭素繊維を除く樹脂の剛性に対して、1/1000以下になっている。
より具体的には、本実施形態においても、第1接着層313の剛性は略3MPaであるのに対して、バー本体部材310の構成中における炭素繊維を除く樹脂の剛性は、略3000MPaである。
本実施形態に係る補強部材31においても、第1接着層313の剛性をバー本体部材310の剛性よりも低くしているので、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
[第3実施形態]
第3実施形態に係る補強部材41のバー部41aの断面構成について、図10を用いて説明する。図10は、本実施形態に係る補強部材41におけるバー部41aの構成を示す模式断面図である。なお、本実施形態に係る補強部材31は、図10に示すバー部41aの断面構成を除き、上記第1実施形態に係る補強部材21~27および上記第2実施形態に係る補強部材31と同じ構成を有する。
図10に示すように、補強部材41のバー部41aは、C字状の断面構成を有するバー本体部材(バー本体部)410と、連結層(第1封止部材)413と、から構成されている。バー本体部材410は、CFRPを用いて形成されており、母材である樹脂と、強化材である炭素繊維とからなる。バー本体部材410における樹脂や炭素繊維については、上記第1実施形態および上記第2実施形態と同じである。
バー本体部材410においても、隙間(第1スリット)Gは、図10の紙面に垂直な方向に連続して形成されている。そして、隙間Gは、連結層413により塞がれているのであるが(F部)、本実施形態では、連結層413が軟質のゴム(例えば、シリコーン系ゴム)から構成されている。
本実施形態に係る補強部材41では、連結層413を構成する長尺板状のゴムを準備し、所謂、二色成形により形成されている。そして、バー本体部材310における隙間Gに面する端部410a,410bの間は、連結層413により液密に塞がれることとなっており、内方の中空部41bが閉じられている。
本実施形態における連結層413は、隙間(第1スリット)Gを塞ぐ封止部材であって低剛性部に相当する。
本実施形態においても、連結層413の剛性は、バー本体部材(高剛性部)410の剛性よりも低い。具体的に、連結層413の剛性は、バー本体部材410の構成中における炭素繊維を除く樹脂の剛性に対して、1/1000以下になっている。
より具体的には、本実施形態においても、連結層413の剛性は略3MPaであるのに対して、バー本体部材310の構成中における炭素繊維を除く樹脂の剛性は、略3000MPaである。
本実施形態に係る補強部材41においても、連結層413の剛性をバー本体部材410の剛性よりも低くしているので、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
[第4実施形態]
第4実施形態に係る補強部材51のバー部51aの断面構成について、図11を用いて説明する。図11は、本実施形態に係る補強部材51におけるバー部51aの構成を示す模式断面図である。なお、本実施形態に係る補強部材51は、図11に示すバー部51aの断面構成を除き、上記第1実施形態に係る補強部材21~27、上記第2実施形態に係る補強部材31などと同じ構成を有する。
図11に示すように、補強部材51のバー部51aは、バー本体部材510と、第1接着層(第1封止部材)515と、第2接着層(第2封止部材)516と、第3接着層517と、第4接着層518から構成されている。バー本体部材(高剛性部)510は、ともにL字状の断面形状を有する本体構成部材511~514から構成されている。そして、本体構成部材511~514のそれぞれは、CFRPを用いて形成されており、母材である樹脂と強化材である炭素繊維とからなる。バー本体部材510における樹脂や炭素繊維については、上記第1実施形態と同じである。
本体構成部材511~514のそれぞれにおいては、断面の端部からX方向またはZ方向の外側に向けて延びるフランジ部511a,511b,512a,512b,513a,513b,514a,514bを有する。本体構成部材511と本体構成部材512とは、フランジ部511aとフランジ部512bとが間に隙間(スリット)G2を空けた状態で対向するように配設されている。
本体構成部材512と本体構成部材514とは、フランジ部512aとフランジ部514bとが間に隙間(第1スリット)G1を空けた状態で対向するように配設されている。同じく、本体構成部材511と本体構成部材513とは、フランジ部511bとフランジ部513aとが間に隙間(スリット)G3を空けた状態で対向するように配設されている。また、本体構成部材513と本体構成部材514とは、フランジ部513bとフランジ部514aとが間に隙間(スリット)G4を空けた状態で対向するように配設されている。
なお、本実施形態においても、各隙間G1,G2,G3,G4は、図11の紙面に垂直な方向に連続して形成されている。
また、フランジ部511aとフランジ部512bとは、隙間(第2スリット)G2に面する端部に相当し、フランジ部512aとフランジ部514bとは、隙間(第1スリット)G1に面する端部に相当し、フランジ部511bとフランジ部513aとは、隙間(第2スリット)G3に面する端部に相当し、フランジ部513bとフランジ部514aとは、隙間(第2スリット)G4に面する端部に相当する。
第1接着層515は、隙間G1を塞ぐように充填形成されており(G部)、第2接着層516は、隙間G2を塞ぐように充填形成されており(H部)、第3接着層517は、隙間G3を塞ぐように充填形成されており(I部)、第4接着層518は、隙間G4を塞ぐように充填形成されている(J部)。
本実施形態に係る第1接着層515は、隙間(第1スリット)G1を塞ぎ、フランジ部512a,514b間を連結する第1封止部材に相当し、第2接着層516は、隙間(第2スリット)G2を塞ぎ、フランジ部511a,512b間を連結する第2封止部材に相当し、第3接着層517は、隙間(第2スリット)G3を塞ぎ、フランジ部511b,513a間を連結する第2封止部材に相当し、第4接着層518は、隙間(第2スリット)G4を塞ぎ、フランジ部513b,514a間を連結する第2封止部材に相当する。
第1接着層515は、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層である。
一方、第2接着層516,第3接着層517、および第4接着層518のそれぞれは、例えば、エポキシ系接着剤が固化されて形成された層である。
本実施形態において、第1接着層515の剛性は、バー本体部材510を構成する本体構成部材511~514の剛性、第2接着層516の剛性、第3接着層517の剛性、および第4接着層518の剛性よりも低い。例えば、第1接着層515の剛性は、本体構成部材511~514の各構成中における炭素繊維を除く樹脂の剛性、第2接着層516の剛性、第3接着層517の剛性、および第4接着層518の剛性に対して、1/1000以下になっている。
より具体的には、本実施形態において、第1接着層515の剛性は略3MPaであるのに対して、本体構成部材511~514の各構成中における母材である樹脂の剛性、第2接着層516の剛性、第3接着層517の剛性、および第4接着層518の剛性は略3000MPaである。
本実施形態に係る補強部材51においても、第1接着層515の剛性を、本体構成部材511~514の剛性、第2接着層516の剛性、第3接着層517の剛性、および第4接着層518の剛性よりも低くしているので、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
[第5実施形態]
第5実施形態に係る補強部材61のバー部61aの断面構成について、図12を用いて説明する。図12は、本実施形態に係る補強部材61におけるバー部61aの構成を示す模式断面図である。なお、本実施形態に係る補強部材61は、図12に示すバー部61aの断面構成を除き、上記第1実施形態に係る補強部材21~27、上記第2実施形態に係る補強部材31、上記第3実施形態に係る補強部材41、上記第4実施形態に係る補強部材51などと同じ構成を有する。
図12に示すように、補強部材61のバー部61aは、バー本体部材(バー本体部)610と、第1接着層(第1封止部材)615と、第2接着層(第1封止部材)616と、第3接着層(第1封止部材)617と、第4接着層(第1封止部材)618から構成されている。バー本体部材610は、ともにL字状の断面形状を有する本体構成部材611~614から構成されている。そして、本体構成部材611~614のそれぞれは、CFRPを用いて形成されており、母材である樹脂と強化材である炭素繊維とからなる。バー本体部材610における樹脂や炭素繊維については、上記第1実施形態と同じである。
本体構成部材611~614のそれぞれにおいては、断面の端部からX方向またはZ方向の外側に向けて延びるフランジ部611a,611b,612a,612b,613a,613b,614a,614bを有する。本体構成部材611と本体構成部材612とは、フランジ部611aとフランジ部612bとが間に隙間(第1スリット)G2を空けた状態で対向するように配設されている。
本体構成部材612と本体構成部材614とは、フランジ部612aとフランジ部614bとが間に隙間(第1スリット)G1を空けた状態で対向するように配設されている。同じく、本体構成部材611と本体構成部材613とは、フランジ部611bとフランジ部613aとが間に隙間(第1スリット)G3を空けた状態で対向するように配設されている。また、本体構成部材613と本体構成部材614とは、フランジ部613bとフランジ部614aとが間に隙間(第1スリット)G4を空けた状態で対向するように配設されている。
なお、本実施形態においても、各隙間G1,G2,G3,G4は、図12の紙面に垂直な方向に連続して形成されている。
また、フランジ部611aとフランジ部612bとは、隙間(スリット)G2に面する端部に相当し、フランジ部612aとフランジ部614bとは、隙間(第1スリット)G1に面する端部に相当し、フランジ部611bとフランジ部613aとは、隙間(スリット)G3に面する端部に相当し、フランジ部613bとフランジ部614aとは、隙間(スリット)G4に面する端部に相当する。
第1接着層615は、隙間G1を塞ぐように充填形成されており(K部)、第2接着層616は、隙間G2を塞ぐように充填形成されており(L部)、第3接着層617は、隙間G3を塞ぐように充填形成されており(M部)、第4接着層618は、隙間G4を塞ぐように充填形成されている(N部)。
本実施形態に係る第1接着層615は、隙間(第1スリット)G1を塞ぎ、フランジ部612a,614b間を連結する第1封止部材に相当し、第2接着層616は、隙間(第1スリット)G2を塞ぎ、フランジ部611a,612b間を連結する第1封止部材に相当し、第3接着層617は、隙間(第1スリット)G3を塞ぎ、フランジ部611b,613a間を連結する第1封止部材に相当し、第4接着層618は、隙間(第1スリット)G4を塞ぎ、フランジ部613b,614a間を連結する第1封止部材に相当する。
本実施形態では、第1接着層615、第2接着層616、第3接着層617、および第4接着層618のそれぞれが、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層である。
本実施形態において、第1接着層615、第2接着層616、第3接着層617、および第4接着層618のそれぞれの剛性は、バー本体部材610を構成する本体構成部材611~614の剛性よりも低い。例えば、第1接着層615、第2接着層616、第3接着層617、および第4接着層618のそれぞれの剛性は、本体構成部材611~614の各構成中における炭素繊維を除く樹脂の剛性に対して、1/1000以下になっている。
より具体的には、本実施形態において、第1接着層615、第2接着層616、第3接着層617、および第4接着層618のそれぞれの剛性は略3MPaであるのに対して、本体構成部材611~614の各構成中における炭素繊維を除く樹脂の剛性は、略3000MPaである。
本実施形態に係る補強部材61においても、第1接着層615、第2接着層616、第3接着層617、および第4接着層618のそれぞれの剛性を、本体構成部材611~614の剛性よりも低くしているので、上記第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
[第6実施形態]
第6実施形態に係る補強部材71のバー部71aの断面構成について、図13(a)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部71aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図13(a)に示すように、バー部71aは、バー本体部材(高剛性部)710と、接着層(封止部材)711と、から構成されている。バー本体部材710は、上記同様に、CFRPから形成されている。バー本体部材710は、互いに重なり合う重複部分710a,710bを有する。重複部分710a,710b同士の間には隙間が空いている。該隙間は、接着層711により塞がれている。
接着層711は、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層であって、低剛性部に相当する。なお、バー本体部材710と接着層711との剛性の差異については、上記同様である。
補強部材71では、横断面において、バー本体部材710と接着層711との組み合わせを以って、内方の中空部71bが閉じられた構成となっている。
本実施形態に係るバー部71aでは、上記構成を採用することにより、上記第1実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、次のような効果も得ることができる。
図13(a)の矢印Q1で示すような飛水がバー部71aにかかった場合に、バー本体部材710と接着層711との接合部分への水の被着が抑制される。このため、対候性の向上を図ることができる。
[第7実施形態]
第7実施形態に係る補強部材72のバー部72aの断面構成について、図13(b)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部72aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図13(b)に示すように、バー部72aは、バー本体部材720から構成されており、内方の中空部72bが閉じられている。バー本体部材720は、上記同様に、CFRPから形成されている。バー本体部材720は、横断面の周方向において、薄肉部720aとその他の部分(厚肉部)720bとを有する。
図13(b)のQ2部分に示すように、薄肉部720aの肉厚がT1であるのに対して、他の部分720bの肉厚はそれよりも厚肉のT2である。本実施形態では、薄肉部720aが低剛性部であり、他の部分720bが高剛性部である。
本実施形態に係るバー部72aでは、上記構成を採用することにより、上記第1実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、生産性の向上を図ることもできる。即ち、高剛性部と低剛性部とを1つの部材(バー本体部材720)で構成することにより、低剛性部と高剛性部とを別部材で構成する場合に比べて生産性の向上を図ることができる。
[第8実施形態]
第8実施形態に係る補強部材73のバー部73aの断面構成について、図13(c)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部73aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図13(c)に示すように、バー部73aは、バー本体部材730から構成されており、内方の中空部73bが閉じられている。バー本体部材730は、上記同様に、CFRPから形成されている。図13(c)のQ3部分に示すように、バー本体部材730は、横断面の周方向において、他の部分730bよりも中空部73b側に凹入するように形成された湾曲部730aを有する。
本実施形態では、湾曲部730aが低剛性部であり、他の部分730bが高剛性部である。
本実施形態に係るバー部73aでは、上記構成を採用することにより、上記第1実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、生産性の向上を図ることができ、且つ、低剛性部の強度の確保も可能である。即ち、低剛性部である湾曲部730aを他の部分730bと同じ材料で経営することにより、製造工程の短縮を図ることができ、肉厚を変えずに形状のみで低剛性部を形成することができる。
[第9実施形態]
第9実施形態に係る補強部材81のバー部81aの構成について、図14(a)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部81aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図14(a)に示すように、バー部81aは、バー本体部材(高剛性部)810と、接着層(封止部材)811と、から構成されている。バー本体部材810は、上記同様に、CFRPから形成されている。バー本体部材810では、両端部810a,810b間にY方向に延びる隙間(スリット)G5が設けられており、両端部810a,810bが閉じられている。両端部810a,810b間に設けられた隙間G5は、接着層811により塞がれている。
接着層811は、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層であって、低剛性部に相当する。なお、バー本体部材810と接着層811との剛性の差異については、上記同様である。
本実施形態に係るバー部81aでは、上記構成を採用することにより、上記第1実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、端部810a,810bに取り付ける部材(上記第1実施形態の固定部21c,21d)との高い接合剛性を確保することができる。
[第10実施形態]
第10実施形態に係る補強部材82のバー部82aの構成について、図14(b)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部82aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図14(b)に示すように、バー部82aは、バー本体部材(高剛性部)820と、接着層(封止部材)821~823と、から構成されている。バー本体部材820は、上記同様に、CFRPから形成されている。バー本体部材820では、両端部820a,820d間に、複数の隙間(スリット)G6~G8が設けられている。両端部820a,820d、および隙間G6~G8同士の間の部分820b,820cは、閉じられている。各隙間G6~G8は、それぞれ接着層821~823により塞がれている。
接着層821~823のそれぞれは、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層であって、低剛性部に相当する。なお、バー本体部材820と接着層821~823との剛性の差異については、上記同様である。
本実施形態に係るバー部81aでは、上記構成を採用することにより、上記第9実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、両端部820a,820dおよび中間の部分820b,820cのY方向長さの調整により、曲げ剛性および捩り剛性のコントロールが可能である。このように、本実施形態に係るバー部82aでは、部材形状を変更することなく剛性コントロールが可能であり、同じ部材部品で捩り歪エネルギのピークを所望の値に設定することが可能である。
[第11実施形態]
第11実施形態に係る補強部材83のバー部83aの構成について、図14(c)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部83aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図14(c)に示すように、バー部83aは、バー本体部材(高剛性部)830と、接着層(封止部材)831と、から構成されている。バー本体部材830は、上記同様に、CFRPから形成されている。バー本体部材830では、両端部830a,830b間にY方向に対して斜め方向に延びる隙間(スリット)G9が設けられており、両端部830a,830bが閉じられている。両端部830a,830b間に設けられた隙間G9は、接着層831により塞がれている。
接着層831は、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層であって、低剛性部に相当する。なお、バー本体部材830と接着層831との剛性の差異については、上記同様である。
本実施形態に係るバー部83aでは、上記構成を採用することにより、上記第9実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、低剛性部である接着層831の捩り強度の向上を図ることができる。即ち、バー本体部部材830の隙間G9をY方向に対して斜め方向に延びるように形成し、これによって低剛性部である接着層831もY方向に対して斜め方向に配置することができ、補強部材83が捩り変形した場合に剛性が低い部分に発生する入力は引張・圧縮成分が多くなる(矢印Fs)。
一方、図14(a)に示した形態では、低剛性部である接着層811がY方向に対して平行に延びているので、低剛性部である接着層811に発生する入力はせん断成分が多くなる(図14(a)の矢印Fs)。材料の強度として、せん断強度は、引張強度に対して1/1.732となるので、本実施形態のように低剛性部である接着層831をY方向に対して斜め方向となるように配置した方が、低剛性部の強度が有利となる。
[第12実施形態]
第12実施形態に係る補強部材84のバー部84aの構成について、図14(d)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部84aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図14(d)に示すように、バー部84aは、バー本体部材(高剛性部)840と、接着層(封止部材)841と、から構成されている。バー本体部材840は、上記同様に、CFRPから形成されている。バー本体部材840では、Y方向に沿ってジグザグ形状(屈曲店を有する形状)に延びる隙間(スリット)が設けられている。隙間は、互いに連続する隙間G10~G15により形成されている。隙間G10~G15は、接着層841により塞がれている。
接着層841は、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層であって、低剛性部に相当する。なお、バー本体部材840と接着層841との剛性の差異については、上記同様である。
本実施形態に係るバー部84aでは、上記構成を採用することにより、上記第9実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、捩り剛性に影響なく高い曲げ剛性を確保することができる。即ち、図14(d)において矢印FBで示すような曲げ荷重が入力された場合に、低剛性部である接着層841の変形長さを短くすることができ、曲げ剛性の低下のみを抑制することができる。
[第13実施形態]
第13実施形態に係る補強部材91のバー部91aの構成について、図15(a)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部91aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図15(a)に示すように、バー部91aは、バー本体部材(高剛性部)910と、接着層(封止部材)911と、から構成されている。バー本体部材910は、上記同様に、CFRPから形成されている。バー本体部材910は、横断面において、略矩形状を有しており、1カ所のコーナー部910aに隙間が設けられている(矢印S1で指し示す部分)。該隙間は、接着層911により塞がれている。
接着層911は、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層であって、低剛性部に相当する。なお、バー本体部材910と接着層911との剛性の差異については、上記同様である。
補強部材91では、横断面において、バー本体部材910と接着層911との組み合わせを以って、内方の中空部91bが閉じられた構成となっている。
本実施形態に係るバー部91aでは、上記構成を採用することにより、上記第1実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、該バー部91aに対して圧縮荷重が入力された場合の破壊モードをコントロールすることができる。このため、本実施形態に係るバー部91aでは、強度剛性を担保する稜線部(コーナー部910a)を意図的に剛性の低い部位とすることで、衝突時における圧縮荷重の入力に対して、破壊方向をコントロールすることが可能となる。
[第14実施形態]
第14実施形態に係る補強部材92のバー部92aの構成について、図15(b)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部92aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図15(b)に示すように、バー部92aは、バー本体部材(高剛性部)920と、接着層(封止部材)921~923と、から構成されている。バー本体部材920は、上記同様に、CFRPから形成されている。バー本体部材920は、横断面において、略矩形状を有しており、1カ所のコーナー部920a、2カ所の周壁部920b,920cにそれぞれ隙間が設けられている(矢印S2~S4で指し示す部分)。該隙間は、それぞれ接着層921~923により塞がれている。
接着層921~923のそれぞれは、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層であって、低剛性部に相当する。なお、バー本体部材920と接着層921~923との剛性の差異については、上記同様である。なお、接着層921~923の剛性について、互いに略同一とすることもできるし、互いに異なるようにすることもできる。
補強部材92では、横断面において、バー本体部材920と接着層921~923との組み合わせを以って、内方の中空部92bが閉じられた構成となっている。
本実施形態に係るバー部92aでは、上記構成を採用することにより、上記第1実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、上記第13実施形態と同様に、該バー部92aに対して圧縮荷重が入力された場合の破壊モードをコントロールすることで衝突時における圧縮荷重の入力に対して、破壊方向をコントロールすることが可能となる。
[第15実施形態]
第15実施形態に係る補強部材93のバー部93aの構成について、図15(c)を用いて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るバー部93aにおける上記第1実施形態等との差異部分だけを説明する。
図15(c)に示すように、バー部93aは、バー本体部材(高剛性部)930と、接着層(封止部材)933,934と、内部構造部材935から構成されている。バー本体部材930は、横断面において、それぞれがU字形状をした本体構成部材931,932の組み合わせを以って構成されている。そして、各本体構成部材931,932は、上記同様に、CFRPから形成されている。
本体構成部材931と本体構成部材932とは、横断面において、互いの周方向の端部同士の間に隙間が空くように配置されている。該隙間は、それぞれ接着層933,934により塞がれている。
接着層933,934のそれぞれは、例えば、シリコーン系接着剤(より具体的には、マスチック接着剤)が固化されて形成された層であって、低剛性部に相当する。なお、バー本体部材930を構成する本体構成部材931,932と接着層933,934との剛性の差異については、上記同様である。なお、接着層933,934の剛性について、互いに略同一とすることもできるし、互いに異なるようにすることもできる。
補強部材93では、横断面において、バー本体部材930と接着層933,934との組み合わせを以って、内方の中空部93bが閉じられた構成となっている。
本実施形態に係るバー部93aでは、内部構造部材935が中空部93bをX方向に横断する状態で配置されている。内部構造部材935は、一端が接着層933によりバー本体部材930に固定され、他端が接着層934によりバー本体部材930に固定されている。
本実施形態に係るバー部93aでは、上記構成を採用することにより、上記第1実施形態等と同様の効果を得ることができるとともに、次のような効果を得ることもできる。
即ち、本実施形態に係るバー部93aでは、曲げ剛性を低下させることなく、圧縮荷重が入力された場合に破壊モードをコントロールすることができる。即ち、バー部93aでは、内部構造部材935の採用により曲げ剛性を担保することができるとともに、低剛性部である接着層933,934を設ける箇所により、圧縮荷重が入力された場合の破壊モードのコントロールが可能となる。
[変形例]
上記第1実施形態から上記第15実施形態では、繊維強化樹脂製の構造部材の一例として、車体1の下面の補強に用いられる補強部材21~27,31,41,51,61,71~73,81~84,91~93を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、車幅方向左右のサスタワー間を架橋するストラットタワーバに用いることも可能である。
また、本発明では、ある部位を補強するための部材だけでなく、構造部材そのものとして、上記のような構成の部材を採用することでも、上記同様の効果を得ることができる。例えば、車体であれば、ルーフサイドレールやセンターピラー、さらにはフロントピラーなどに適用することも可能である。
また、上記構成の構造部材については、自動車等の車体に限らず種々の構造体(例えば、産業機器など)に適用することも可能である。
また、上記実施形態および上記変形例では、繊維強化樹脂製部材の一例として、中空円筒形状のバー部21a,31a,41a,51a,61a,71a,72a,73a,81a,82a,83a,84a,91a,92a,93aを採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、中実の部材への適用も可能であるし、横断面形状についても、四角形に限らず円形や楕円形や長円形、さらには三角形あるいは五角形よりも多角の多角形断面などを採用することも可能である。
また、上記第1実施形態から上記第15実施形態では、繊維強化樹脂の一例として炭素繊維強化樹脂を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)や、アラミド繊維強化樹脂(ArFRP)や、炭化ケイ素繊維強化樹脂(SiCFRP)や、非鉄金属などの金属繊維を用いた繊維強化樹脂などを採用することも可能である。
また、本発明では、高剛性部を構成する材料として、繊維強化樹脂の他にも、鋼材や軽金属材料などを採用することもできる。
さらに、上記第1実施形態から上記第15実施形態では、本発明は、バー本体部材の構成中における繊維を除く樹脂の剛性を、略3000MPaであることとしたが、これに限定を受けるものではない。例えば、繊維や樹脂の材質の選択等により、バー本体部材の構成中における繊維を除く樹脂の剛性を、1000MPa~5000MPaの範囲内で設定することが可能である。