以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(第1の実施の形態)
図1は本実施の形態に係る橋脚を有する橋梁の一例の側面図である。
橋梁1は、例えば、道路用の橋であり、支持地盤Gに設置された基礎部2と、その上に設置された橋脚3と、その上に設置された上部構造体4とを有している。
基礎部2は、橋脚3および上部構造体4からの荷重を支持地盤Gに伝え、橋脚3および上部構造体4を支える部分であり、例えば、鉄筋コンクリートにより形成されている。なお、ここでは基礎部2の構造として直接基礎を例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ケーソン基礎、杭基礎、鋼管矢板基礎または地中連続壁基礎としても良い。
橋脚3は、橋梁1の長手方向中間に設置され、上部構造体4を支える部分(躯体)であり、基礎部2上に設置された脚柱部(柱部)3Aと、その上に設置された梁部3Bとを有している。脚柱部3Aおよび梁部3Bは、例えば、鉄筋コンクリートまたはプレストレスコンクリートにより形成されている。
上部構造体4は、橋脚3の上に架け渡された部分であり、図示はしないが、主桁と、その上に形成された床版と、床版上面に形成された舗装部と、床版上において橋梁1の幅方向両側に設けられた壁高欄とを有している。主桁は、例えば、鋼材、鉄筋コンクリートまたはプレストレスコンクリートにより形成されている。また、床版は、例えば、鋼材、鉄筋コンクリートまたは鋼・コンクリート合成材により形成されている。
次に、図2は図1の基礎部および脚柱部の要部拡大側面図、図3は図2の脚柱部の拡大斜視図、図4は図3の脚柱部の一部を分解して示した分解斜視図である。
図2~図4に示すように、脚柱部3Aは、高さ方向に沿って分割された複数の層Lを有している。各層Lには、プレキャスト部材Pが設置されている。プレキャスト部材Pは、脚柱部3Aを現場で組み立てるために、工場等で予め成形されたコンクリート製の構成部品である。
本実施の形態においては、図3および図4に示すように、脚柱部3Aが、例えば、円柱状に形成されており、各層Lのプレキャスト部材Pが、例えば、脚柱部3Aの円周方向に沿って2個に等分割されている(第1のプレキャスト部材)。なお、特に限定されるものではないが、脚柱部3Aの直径および各プレキャスト部材Pの高さ(層厚)は、例えば、1500mmである。
次に、図5(a)は脚柱部の上面側からプレキャスト部材内部の配筋を透かして見せた平面図、図5(b)は脚柱部の側面側からプレキャスト部材内部の配筋を透かして見せた側面図である。
各プレキャスト部材Pの内部には、複数の主筋(第1筋)M1と、複数の帯筋(第2筋)M2とが互いに交差するように配置されている。主筋M1および帯筋M2は、例えば、鋼材により構成されている。主筋M1は、プレキャスト部材Pの高さ方向に沿って直線状に延在しており、プレキャスト部材Pの外周に沿って所定の間隔毎に複数並設されている。また、帯筋M2は、複数の主筋M1を取り囲み束ねるようにプレキャスト部材Pの外周に沿って延在しており、プレキャスト部材Pの高さ方向に沿って所定の間隔毎に複数並設されている。
次に、図6(a)は高さ方向に隣接するプレキャスト部材同士を連結する継手を脚柱部の上面側から透かして見せた平面図、図6(b)は高さ方向に隣接するプレキャスト部材同士を連結する継手を脚柱部の側面側から透かして見せた側面図、図7(a)は図6の継手の拡大断面図、図7(b)は図7(a)の下方側の継手の拡大断面図、図7(c)は図7(a)の上方側の継手の拡大断面図である。
図6に示すように、各プレキャスト部材Pは、高さ方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士を連結する複数の鉛直継手JVを備えている。鉛直継手JVは、高さ方向に隣接するプレキャスト部材Pの対向面内において脚柱部3Aの外周に沿って所定の間隔毎に配置されている。なお、特に限定されるものではないが、各プレキャスト部材Pの対向面内に配置された鉛直継手JVの数は、例えば、10個である。
図6および図7に示すように、各鉛直継手JVは、ピン部(第1の凸部)JVa1と、凹部(第1の凹部)JVb1とを有している。図6(b)および図7(a),(b)に示すように、ピン部JVa1は、例えば、円柱状に形成されており、プレキャスト部材Pの上面から上方に突出するように設けられている。ピン部JVa1の根元は基部JVs1に接合されている。基部JVs1の後端面には、プレキャスト部材P側に向かって延びる2本の固定ピンJVp1が接合されている。基部JVs1および固定ピンJVp1は、プレキャスト部材Pに埋設されており、これによりピン部JVa1がプレキャスト部材Pにしっかりと固定されている。
また、図6(b)および図7(a),(c)に示すように、凹部JVb1は、その凹んだ側を下に向けた状態でプレキャスト部材Pの下面に設けられている。凹部JVb1の後端側には、プレキャスト部材P側に向かって延びる2本の固定ピンJVp2が接合されている。凹部JVb1および固定ピンJVp2は、プレキャスト部材Pに埋設されており、これにより凹部JVb1がプレキャスト部材Pにしっかりと固定されている。
そして、図6および図7(a)に示すように、高さ方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士は、下側のプレキャスト部材Pの上面のピン部JVa1を、その上側のプレキャスト部材Pの下面の凹部JVb1内に挿入することで連結されるようになっている。
次に、図8(a)は脚柱部の周方向に隣接するプレキャスト部材同士を連結する継手を脚柱部の上面側から透かして見せた平面図、図8(b)は図8(a)のプレキャスト部材同士を分解して示した分解平面図、図8(c)は図8(a)の破線で囲んだ部分の継手の拡大断面図、図8(d)は図8(c)の一方側の継手の拡大断面図、図8(e)は図8(c)の他方側の継手の拡大断面図である。
図8(a)に示すように、各プレキャスト部材Pは、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士を連結する複数の水平継手JHを備えている。水平継手JHは、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,Pの対向側面内において幅方向両端(図8(a)の左右両端側)の近傍の位置に設置されている。
図8(b),(c)に示すように、各水平継手JHは、凸部(第2の凸部)JHa1と、凹部(第2の凹部)JHb1とを有している。図8(b)~(d)に示すように、凸部JHa1は、一方のプレキャスト部材Pの対向側面から突出するように設けられている。凸部JHa1の先端近傍の幅方向両端には、凸部JHa1に対して交差する方向に突出する楔部JHc(図8(c),(d)参照)が設けられている。凸部JHa1の後端部はプレキャスト部材Pに埋設されており、これにより凸部JHa1がプレキャスト部材Pにしっかりと固定されている。
一方、図8(c),(e)に示すように、凹部JHb1は、その凹んだ側を表側に向けた状態で他方のプレキャスト部材Pの対向側面に設けられている。凹部JHb1内の先端側には、凹部JHb1の幅方向中央に向かって突出する係止部JHdが設けられている。凹部JHb1の後端には2本の固定ピンJHp1が接続されており、これにより凹部JHb1がプレキャスト部材Pにしっかりと固定されている。
そして、図8(c)に示すように、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士は、一方のプレキャスト部材Pの対向側面の凸部JHa1を、他方のプレキャスト部材Pの対向側面の凹部JHb1内に挿入することで連結されるようになっている。この場合、凹部JHb1内に挿入された凸部JHa1は、その先端の楔部JHcが凹部JHb1の係止部JHdに引っ掛かることで係止されるようになっている。
次に、図9(a)は図8(b)の上側のプレキャスト部材の対向側面を示した側面図、図9(b)は図8(b)の下側のプレキャスト部材の対向側面を示した側面図、図9(c)は水平継手の要部拡大斜視図である。
図9(a)に示すように、一方のプレキャスト部材Pの対向側面内において幅方向両端近傍には、上記した水平継手JHの凸部JHa1が、高さ方向に沿って所定の間隔毎に配置されている(オスオスタイプ)。
一方、図9(b),(c)に示すように、他方のプレキャスト部材Pの対向側面内において幅方向両端近傍には、プレキャスト部材Pの上面から下面に向かって延び、下面に達しない位置で終端する溝D1が形成されている。溝D1は、プレキャスト部材Pの上面側から見て凹状に形成されており、その溝D1内には、上記凸部JHa1に対向するように高さ方向に沿って所定の間隔毎に複数の凹部JHb1が設置されている(メスメスタイプ)。
図9(c)に示すように、水平継手の凸部JHa1を凹部JHb1に挿入するには、凸部JHa1を凹部JHb1の上方の溝D1内に挿入してから下にスライドさせて凹部JHb1内に挿入する。
次に、図10(a)は脚柱部の周方向に隣接するプレキャスト部材同士を連結する継手の配置の変形例を示す図であってプレキャスト部材同士を分解して示した分解平面図、図10(b)は図10(a)の上側のプレキャスト部材の対向側面を示した側面図、図10(c)は図10(a)の下側のプレキャスト部材の対向側面を示した側面図である。
図10に示す例では、各プレキャスト部材Pの対向側面に水平継手の凸部JHa1と凹部JHb1とが設けられている(オスメスタイプ)。すなわち、一方のプレキャスト部材Pの対向側面において、幅方向の一方の片側端近傍には凸部JHa1が設けられ、幅方向の他方の片側端近傍には凹部JHb1が設けられている。また、他方のプレキャスト部材Pの対向側面において、幅方向の一方の片側端近傍には凹部JHb1が設けられ、幅方向の他方の片側端近傍には凸部JHa1が設けられている。凹部JHb1は上記と同様に溝D1内に設置されている。ただし、この場合は、一方のプレキャスト部材Pの溝D1は上側がプレキャスト部材P1の上面まで形成(溝D1は上面側が開放)され、他方のプレキャスト部材Pの溝D1は下側がプレキャスト部材Pの下面まで形成(溝D1は下面側が開放)されている。
次に、脚柱部3Aの組立方法の一例について図11~図16を参照して説明する。図11は脚柱部の組立工程中の側面図、図12は図11の工程後の脚柱部の組立工程中の側面図、図13は図12の脚柱部の要部斜視図、図14は図11の工程後の脚柱部の組立工程の変形例の側面図、図15は図12の工程後の脚柱部の組立工程中の側面図、図16は図15の脚柱部の要部斜視図である。
まず、図11に示すように、型枠(図示せず)内にコンクリートを打設することで支持地盤G上に鉄筋コンクリート製等の基礎部2を形成する。基礎部2の脚柱部設置面には、上記した鉛直継手JVのピン部JVa1(図6および図7等参照)がプレキャスト部材Pと同様に複数設置されている。
続いて、クレーン車等(図示せず)を用いて上記メスメスタイプのプレキャスト部材Pを吊り上げて基礎部2の脚柱部設置面の上方に配置し、プレキャスト部材Pの下面の鉛直継手JVの凹部JVb1(図6および図7等参照)と、基礎部2の鉛直継手JVのピン部JVa1(図6および図7等参照)との位置を合わせる。
その後、プレキャスト部材Pを下降し、プレキャスト部材Pの凹部JVb1内に基礎部2のピン部JVa1を挿入することで、図12および図13に示すように、基礎部2上にメスメスタイプのプレキャスト部材Pを設置する。
次いで、クレーン車等(図示せず)を用いて上記オスオスタイプのプレキャスト部材Pを吊り上げて基礎部2上のメスメスタイプのプレキャスト部材Pの上方に配置する。この時、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの対向側面が既設のメスメスタイプのプレキャスト部材Pの対向側面に対向するように配置する。
続いて、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凸部JHa1(図9(c)参照)を既設のメスメスタイプのプレキャスト部材Pの対向側面の溝D1に挿入した後(この際、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの下面の鉛直継手JVの凹部JVb1(図6参照)と基礎部2の鉛直継手JVのピン部JVa1(図6参照)との位置が合う)、オスオスタイプのプレキャスト部材Pを下降する。
なお、基礎部2の上方に障害物が有る場合には、図14に示すように、オスオスタイプのプレキャスト部材Pを既設のメスメスタイプのプレキャスト部材Pのほぼ横に配置する。このとき、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凸部JHa1の高さが、メスメスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凹部JHb1の高さより若干高い位置になるようにする。続いて、オスオスタイプのプレキャスト部材Pをメスメスタイプのプレキャスト部材Pに向かって横方向(水平方向)近づけて、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凸部JHa1を溝D1内に挿入した後、オスオスタイプのプレキャスト部材Pを下降する。
上記のようにしてプレキャスト部材Pを下降することにより、図15および図16に示すように、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凸部JHa1をメスメスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凹部JHb1内に挿入するとともに、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの鉛直継手JVのピン部JVa1を基礎部2の鉛直継手JVの凹部JVb1内に挿入する。これにより、オスオスタイプのプレキャスト部材Pを基礎部2上に設置する。このような工程を繰り返すことで、複数のプレキャスト部材Pを積み上げるとともに、高さ方向に隣接するプレキャスト部材,PP同士を鉛直継手JVで連結し、かつ、脚柱部3Aの周方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士を水平継手JHで連結して図2に示した脚柱部3Aを組み立てる。なお、上記の説明では、メスメスタイプのプレキャスト部材Pを設置した後にオスオスタイプのプレキャスト部材Pを設置した場合について説明したが、その逆でも良い。その場合は、溝D1は下面側が開放された形状であることが望ましい。
本実施の形態においては、予め製造されたプレキャスト部材Pを現場で組み立てることで脚柱部3Aを形成することができるので、脚柱部3Aの組立期間を短縮することができる。これにより、橋脚3の工期を短縮することができる。このため、交通への影響を小さくすることができる。また、橋脚3の工費を低減することができる。
また、脚柱部3Aの各層L内を2個のプレキャスト部材Pに分割したことにより、個々のプレキャスト部材Pを軽くすることができるので、脚柱部3Aの組立時に個々のプレキャスト部材Pの取り扱いを容易にすることができる。
(第2の実施の形態)
図17は図2の脚柱部の他の例の拡大斜視図、図18は図17の脚柱部の一部を分解して示した分解斜視図である。
本実施の形態においては、図17および図18に示すように、脚柱部3Aの各層Lのプレキャスト部材Pが、例えば、脚柱部3Aの円周方向に沿って4個に等分割されている(第1のプレキャスト部材)。なお、特に限定されるものではないが、脚柱部3Aの直径は、例えば、1500mm、各プレキャスト部材Pの高さ(層厚)は、例えば、2000mm、1個のプレキャスト部材Pの重量は、例えば、2.2tである。
この場合もプレキャスト部材Pは、例えば、鉄筋コンクリートで形成されており、その内部には、その外形に合わせて、図5に示したように、複数の主筋M1と、複数の帯筋M2とが互いに交差するように配置されている。
また、図18に示すように、各プレキャスト部材Pは、高さ方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士を連結する複数の鉛直継手JV(ピン部JVa2および凹部JVb2)を備えている。鉛直継手JV(ピン部JVa2および凹部JVb2)は、高さ方向に隣接するプレキャスト部材Pの対向面内において脚柱部3Aの外周に沿って所定の間隔毎に配置されている。なお、特に限定されるものではないが、各プレキャスト部材Pに配置された鉛直継手JVの数は、例えば、5個、ピン部JVa2の突出長は、例えば、100mm程度である。
また、各プレキャスト部材Pは、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士を連結する複数の水平継手JHを備えている。水平継手JHは、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,Pの対向側面内において幅方向片端(脚柱部3Aの外周側面側)の近傍に配置されている。
次に、図19(a)は高さ方向に隣接するプレキャスト部材同士を連結する継手を脚柱部の上面側から透かして見せた平面図、図19(b)は高さ方向に隣接するプレキャスト部材同士を連結する継手を脚柱部の側面側から透かして見せた側面図、図20(a)は図19の継手の拡大断面図、図20(b)は図20(a)の上方側の継手の拡大断面図、図20(c)は図20(a)の下方側の継手の拡大断面図である。
図19および図20に示すように、本実施の形態においても、各鉛直継手JVは、ピン部JVa2と、凹部JVb2とを有している。ただし、この例では、ピン部JVa2および凹部JVb2の配置が逆になっている。すなわち、ピン部JVa2はプレキャスト部材Pの下面から下方に突出するように設けられ、凹部JVb2は、その凹んだ側を上に向けた状態でプレキャスト部材Pの上面に設けられている。
また、図20(a),(b)に示すように、ピン部JVa2の根本は基部JVs2と接合されている。基部JVs2は、例えば、円柱形状に形成されており、その後端面には、固定ピンJVp3が接合されている。基部JVs2および固定ピンJVp3は、プレキャスト部材Pに埋設されており、これによりピン部JVa2がプレキャスト部材Pにしっかりと固定されている。
また、ピン部JVa2の外形は、基部JVs2から先端に向かって次第に縮径するように略円錐台形状に形成されている。また、ピン部JVa2は、その幅方向中央にピン部JVa2の先端から基部JVs2に向かって延びる溝Ds1(スリット)が形成され2分割されている。これにより、ピン部JVa2は、板バネとしての機能を有しており、外圧により縮径方向に撓むことが可能な構成になっている。さらに、ピン部JVa2の2つの先端部の外周側には、ピン部JVa2の径方向に突出する爪部JVanが形成されている。
一方、図20(a),(c)に示すように、凹部JVb2は、プレキャスト部材Pの外方から内方に向かって次第に縮径するように形成されているとともに、その先端側に大径となる拡大空間JVrが形成されている。なお、符号JVwは支持板(ワッシャー)を示している。
そして、図20(a)に示すように、高さ方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士は、上側のプレキャスト部材Pの下面のピン部JVa2を、その下側のプレキャスト部材Pの上面の凹部JVb2内に挿入する(押し込む)ことで連結されるようになっている。すなわち、ピン部JVa2を凹部JVb2内に挿入していくと凹部JVb2の径が小さくなるので、ピン部JVa2の2つの先端部の爪部JVanが凹部JVb2の内壁に押されて互いに接近する方向にピン部JVa2が撓む。ここでさらに、ピン部JVa2を凹部JVb2内に押し込み、ピン部JVa2の2つの先端部の爪部JVanが拡大空間JVr内に達すると、ピン部JVa2の2つの先端部の爪部JVanが凹部JVb2の内壁からの圧力から解放されるので、ピン部JVa2の板バネの作用により元の位置に戻る。その結果、ピン部JVa2の2つの先端部の爪部JVanが拡大空間JVr内で引っ掛かることでピン部JVa2が凹部JVb2内に係止されるようになっている。
次に、図21は脚柱部の周方向に隣接するプレキャスト部材同士を連結する継手を脚柱部の上面側から透かして見せるとともに一部のプレキャスト部材を取り出して示した平面図である。
図21に示すように、各プレキャスト部材Pは、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士を連結する複数の水平継手JHを備えている。水平継手JHは、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,Pの対向側面内において幅方向の片側端(脚柱部3Aの外周側)の近傍に配置されている。
各水平継手JHは、凸部(第2の凸部)JHa2と、凹部(第2の凹部)JHb2とを有している。この例では、層L内に、凸部JHa2のみが設けられたオスオスタイプのプレキャスト部材Pと、凹部JHb2のみが設けられたメスメスタイプのプレキャスト部材Pとが脚柱部3Aの円周方向に沿って交互に配置されている。
凸部JHa2は、プレキャスト部材Pの2つの対向側面から突出するように設けられている。特に限定されるものではないが、凸部JHa2の突出長は、例えば、50mm程度である。凹部JHb2は、その凹んだ側を表側に向けた状態でプレキャスト部材Pの2つの対向側面の溝D2内に設けられている。溝D2については後ほど説明する。
次に、図22(a)は脚柱部の上面側から見たときの水平継手の平面図、図22(b)は脚柱部の側面側から見たときの水平継手の側面図、図22(c)は図22(a)のI-I線の断面図、図23(a)は図22(a)の水平継手を分解して示した平面図、図23(b)は図22(b)の水平継手を分解して示した側面図、図23(c)は図23(a)のI-I線の断面図である。
図22および図23に示すように、水平継手JHは、例えば、コッター継手が使用されている。凸部JHa2の先端には、凸部JHa2の幅より大径の中実コーン部JHjが設けられている。図23(b)に示すように、中実コーン部JHjは、凸部JHa2の上面から下面に向かって(挿入方向に沿って)次第に小径になるように形成されている。
凸部JHa2の根本には基部JHs1が一体で形成されている。この基部JHs1の後端部には、プレキャスト部材P側に向かって延びる2本の固定ピンJHp2が接合されている。基部JHs1および固定ピンJHp2は、プレキャスト部材Pに埋設されており、これにより凸部JHa2がプレキャスト部材Pにしっかりと固定されている。
一方、凹部JHb2には、中空コーン部JHkが形成されている。図22(c)および図23(c)に示すように、中空コーン部JHkは、凹部JHb2の上面から下面に向かって(挿入方向に沿って)次第に小径になるように形成されている。また、図22(a)および図23(a)凹部JHb2の先端には、その上面から下面に向かって中空コーン部JHkに連通される溝Ds2(スリット)が形成されている。
凹部JHb2の根本には基部JHs2が一体で形成されている。この基部JHs2の後端部には、プレキャスト部材P側に向かって延びる2本の固定ピンJHp3が接合されている。基部JHs2および固定ピンJHp3は、プレキャスト部材Pに埋設されており、これにより凹部JHb2がプレキャスト部材Pにしっかりと固定されている。
そして、図22に示すように、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,P(図21等参照)同士は、一方のプレキャスト部材Pの対向側面の凸部JHa2の中実コーン部JHjを、他方のプレキャスト部材Pの凹部JHb2の中空コーン部JHk内に挿入することで連結されるようになっている。
次に、図24(a)は図21の矢印X1の方向から見たオスオスタイプのプレキャスト部材の側面図、図24(b)は図21の矢印X2の方向から見たメスメスタイプのプレキャスト部材の側面図、図24(c)はメスメスタイプのプレキャスト部材の対向側面の要部拡大斜視図である。なお、図24(b)では水平継手の一部(左側列)を透かして見せている。
図24(a)に示すように、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの2つの対向側面内において幅方向片端(脚柱部3Aの外周側)近傍には、上記した水平継手JHの凸部JHa2が、高さ方向に沿って所定の間隔毎に配置されている。
一方、図24(b)に示すように、メスメスタイプのプレキャスト部材Pの2つの対向側面内において幅方向片端(脚柱部3Aの外周側)近傍には、溝D2が高さ方向に沿って所定の間隔毎に配置されている。
図24(b),(c)に示すように、溝D2は、浅溝D2aと深溝D2bとを有している。浅溝D2aは、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの凸部JHa2を横方向からメスメスタイプのプレキャスト部材Pの凹部JHb2に挿入できるようにするための窪みであり、脚柱部3Aの外周側からプレキャスト部材Pの内方(中心軸)に向かって次第に深くなるように形成されている。
一方、深溝D2bは、浅溝D2aより深い一定の深さで形成されている。水平継手JHの凹部JHb2は、図24(b)に示すように、平面視で溝D2の幅方向中央よりもプレキャスト部材Pの内方(中心軸)側の深溝D2b内にずれて配置され、かつ、溝D2の高さ方向中央よりも下側にずれて配置されている。水平継手JHの凸部JHa2を凹部JHb2に挿入するには、浅溝D2aを通じて凸部JHa2を凹部JHb2上方の深溝D2b内に配置した後、凸部JHa2を下にスライドさせて凹部JHb2内に挿入する。
なお、特に限定されるものではないが、溝D2(浅溝D2a、深溝D2b)の高さ方向(図24(b)の上下方向)の長さは、例えば、200mm程度、溝D2(浅溝D2a+深溝D2b)の幅(図24(b)の左右方向)は、例えば、110mm程度、深溝D2bの幅は、例えば、55mm程度、深溝D2bの深さは、例えば、50mm程度である。
次に、図25は脚柱部の周方向に隣接するプレキャスト部材同士を連結する継手の配置の変形例を示す図であって1つのプレキャスト部材を取り外して示した平面図、図26(a)は図25の矢印X3の方向から見たオスメスタイプのプレキャスト部材の側面図、図26(b)は図25の矢印X4の方向から見たオスメスタイプのプレキャスト部材の側面図、図26(c)はオスメスタイプのプレキャスト部材の対向側面の要部拡大斜視図である。なお、図26(b)では水平継手の一部(右側列)を透かして見せている。
この例では、図25に示すように、層L内の全てのプレキャスト部材Pが、水平継手JHの凸部JHa2と凹部JHb2とを有するオスメスタイプのプレキャスト部材Pで構成されている。すなわち、プレキャスト部材Pの2つの対向側面のうち、一方の対向側面には水平継手JHの凸部JHa2が設けられ、他方の対向側面には水平継手JHの凹部JHb2が設けられている。
この場合、図26(a)に示すように、オスメスタイプのプレキャスト部材Pの1つの対向側面内において幅方向片端(脚柱部3Aの外周側)近傍に、溝D3が高さ方向に沿って所定の間隔毎に配置されている。
図26(a),(c)に示すように、溝D3は、浅溝D3aと深溝D3bとを有している。浅溝D3aは、オスメスタイプのプレキャスト部材Pの凸部JHa2を横方向からオスメスタイプのプレキャスト部材Pの凹部JHb2に挿入できるようにするための窪みである。ここでは、浅溝D3aが、深溝D3bの左右両側に形成されている。この深溝D3bの左右両側の浅溝D3a,D3aは、深溝D3bに向かって次第に深くなるように形成されている。
一方、深溝D3bは、浅溝D3aより深い一定の深さで形成されている。水平継手JHの凹部JHb2は、図26(a)に示すように、溝D3の幅方向中央の深溝D3bに配置され、かつ、溝D3の高さ方向中央から下側にずれた位置に配置されている。水平継手JHの凸部JHa2を凹部JHb2に挿入するには、浅溝D3aを介して凸部JHa2を凹部JHb2上方の深溝D3b内に配置した後、プレキャスト部材P(すなわち、凸部JHa2)を下にスライドさせて凹部JHb2内に挿入する。なお、溝D3(浅溝D3a、深溝D3b)の各部寸法は、上記した溝D2(浅溝D2a、深溝D2b)と同じである。
図25および図26の例の場合、プレキャスト部材Pを全て同一にすることができるので、プレキャスト部材Pの製造工程および製造後の管理を簡単化することができる。また、脚柱部3Aの組立時にプレキャスト部材Pの組み合わせを間違うことがないので、脚柱部3Aの組立工程を簡単化することができる。
次に、本実施の形態における脚柱部3Aの組立方法の一例について図27~図32を参照して説明する。図27は脚柱部の組立工程中の側面図、図28は図27の工程の脚柱部の要部斜視図、図29は図27の工程後の脚柱部の側面図、図30は図29の工程後の脚柱部の側面図、図31は図30の工程後の脚柱部の側面図、図32は図31の工程の脚柱部の要部斜視図である。
まず、図27および図28に示すように、上記と同様に基礎部2を形成した後、上記と同様に基礎部2の脚柱部設置面上にメスメスタイプのプレキャスト部材Pを設置する。
続いて、図29に示すように、クレーン車等(図示せず)を用いて上記オスオスタイプのプレキャスト部材Pを吊り上げて既設のメスメスタイプのプレキャスト部材Pのほぼ横に配置する。このとき、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凸部JHa2の高さが、メスメスタイプのプレキャスト部材Pの溝D2内であって水平継手JHの凹部JHb2の高さより若干高い位置になるようにする。
その後、オスオスタイプのプレキャスト部材Pをメスメスタイプのプレキャスト部材Pに向かって横方向(水平方向)近づけて、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凸部JHa2を、浅溝D2aを介して深溝D2b内に挿入する(この際、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの下面の鉛直継手JVの凹部JVb2と基礎部2の鉛直継手JVのピン部JVa2との位置が合う)。
次いで、図30に示すように、オスオスタイプのプレキャスト部材Pを下降することでオスオスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凸部JHa2をメスメスタイプのプレキャスト部材Pの水平継手JHの凹部JHb2内に挿入するとともに、オスオスタイプのプレキャスト部材Pの鉛直継手JVのピン部JVa2を基礎部2の鉛直継手JVの凹部JVb2内に挿入する。
これにより、図31および図32に示すように、オスオスタイプのプレキャスト部材Pを基礎部2上に設置する。このような工程を繰り返すことで、複数のプレキャスト部材Pを高さ方向に積み上げるとともに、高さ方向に隣接するプレキャスト部材,PP同士を鉛直継手JVで連結し、かつ、脚柱部3Aの周方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士を水平継手JHで連結して図2に示した脚柱部3Aを組み立てる。なお、上記の説明では、メスメスタイプのプレキャスト部材Pを設置した後にオスオスタイプのプレキャスト部材Pを設置した場合について説明したが、その逆でも良い。
本実施の形態においては、脚柱部3Aの各層L内を4個のプレキャスト部材Pに分割したことにより、上記第1の実施の形態の場合よりも個々のプレキャスト部材Pを軽くすることができるので、脚柱部3Aの組立時に個々のプレキャスト部材Pの取り扱いを容易にすることができる。これ以外の効果は上記第1の実施の形態と同じである。
(第3の実施の形態)
図33は図2の脚柱部の他の例の拡大斜視図である。
本実施の形態においては、上記の第2の実施の形態と同様にプレキャスト部材Pが脚柱部3Aの円周方向に沿って4分割されているが、高さ方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士の接触位置が、脚柱部3Aの円周方向に沿って隣接するプレキャスト部材P毎に脚柱部3Aの高さ方向にずれている。ここでは、高さ方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士の接触位置が、例えば、脚柱部3Aの円周方向に沿って千鳥状に配置されている。
なお、この例では、脚柱部3Aの最上層および最下層の一部に、プレキャスト部材Pとして相対的に厚さ(高さ方向の寸法)が小さいプレキャスト部材Psが設置されている。その相対的に厚さが小さいプレキャスト部材Psの厚さは、例えば、相対的に厚さが大きいプレキャスト部材Pの厚さの半分程度に設定されている。
このように本実施の形態においては、高さ方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士の接触位置を、脚柱部3Aの周方向に沿ってずらしたことにより、脚柱部3Aの強度を向上させることができる。これ以外の効果は上記第2の実施の形態と同じである。
(第4の実施の形態)
図34は図2の脚柱部の他の例の拡大斜視図である。
本実施の形態においては、上記の第2の実施の形態と同様にプレキャスト部材Pが脚柱部3Aの円周方向に沿って4分割されているが、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士の接触位置が、脚柱部3Aの高さ方向に沿って隣接するプレキャスト部材P毎に脚柱部3Aの円周方向にずれている。ここでは、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士の接触位置が、例えば、高さ方向に沿って千鳥状に配置されている。なお、この例では、プレキャスト部材Pの寸法は全て同じである。
このように本実施の形態においては、脚柱部3Aの円周方向に隣接するプレキャスト部材P,P同士の接触位置を、高さ方向に沿ってずらしたことにより、脚柱部3Aの強度を向上させることができる。これ以外の効果は上記第2の実施の形態と同じである。
(第5の実施の形態)
図35は図2の脚柱部の他の例の拡大斜視図である。
本実施の形態においては、脚柱部3Aの最上層に、プレキャスト部材Pとして、脚柱部3Aの円周方向に沿って分割されていない単体構造のプレキャスト部材(第2のプレキャスト部材)Pmが設置されている。プレキャスト部材Pmも上記プレキャスト部材Pと同様に、例えば、鉄筋コンクリートで構成されており、その内部には主筋M1および帯筋M2(図5参照)が互いに交差するように設置されている。
ただし、プレキャスト部材Pmの厚さ(高さ方向の寸法)は、他のプレキャスト部材Pの厚さよりも小さく設定されている。そのプレキャスト部材Pmの厚さは、例えば、他のプレキャスト部材Pの厚さの半分程度に設定されている。このように最上層のプレキャスト部材Pmの厚さを小さくすることにより、最上層のプレキャスト部材Pmを軽くすることができるので、脚柱部3Aの円周方向に沿って分割されているプレキャスト部材Pと同様に、プレキャスト部材Pmの取り扱いを容易にすることができる。また、この場合、脚柱部3Aの上端はプレキャスト部材Pmで固定され、下端は基礎部2で固定されるので、脚柱部3Aをより強固に一体化することができる。
ここでは、上記第3の実施の形態の図33に示した脚柱部3Aの最上層にプレキャスト部材Pmを設置した場合が例示されている。ただし、図3、図17および図34に示した脚柱部3Aの最上層にプレキャスト部材Pmを設置しても良い。また、図3、図17、図34の場合は、脚柱部3Aの最上層以外の1または2以上の層Lにプレキャスト部材Pmを設置することもできる。
(第6の実施の形態)
図36は図2の脚柱部の他の例の拡大斜視図である。
本実施の形態においては、脚柱部3Aの全ての層Lに、プレキャスト部材Pとして、脚柱部3Aの円周方向に沿って分割されていない単体のプレキャスト部材Pmが設置されている。この場合もプレキャスト部材Pmの厚さ(高さ方向の寸法)は、図35で説明したのと同様に、脚柱部3Aの直径よりも小さく設定されている。これにより、プレキャスト部材Pmを軽くすることができるので、脚柱部3Aの円周方向に沿って分割されているプレキャスト部材Pと同様に、プレキャスト部材Pmの取り扱いを容易にすることができる。
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
例えば、前記実施の形態では、橋脚の構造や施工方法に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、橋梁の長手方向の両端に設置された橋台の構造や施工方法に適用することもできる。
また、前記実施の形態では、脚柱部の高さ方向の各層内のプレキャスト部材の分割個数が同じ場合について説明したが、これに限定されるものではなく、脚柱部の高さ方向の各層内のプレキャスト部材の分割個数を変えても良い。例えば、2分割されたプレキャスト部材の層の上または下に4分割されたプレキャスト部材の層を配置しても良い。また、各プレキャスト部材Pの鉛直接手JVおよび水平接手JHは前記実施の形態に限ったものではなく、図6で示したプレキャスト部材Pの鉛直継手JVとしてピン部JVa2と凹部JVb2とを用いるとともに、水平継手JHとして凸部JHa2と凹部JHb2とを用いても良く、図19で示したプレキャスト部材Pに鉛直継手JVとしてピン部JVa1と凹部JVb1とを用いるとともに、水平継手JHとして凸部JHa1と凹部JHb1とを用いても良い。さらに、図6で示したプレキャスト部材Pの溝D1(図9および図10参照)を図24等で示した溝D2に変え、脚柱部3Aの組立方法として図27~図32の組立工程を用いても良い。