JP7248260B1 - 表面キトサン化キチンナノファイバーを含む処理剤 - Google Patents

表面キトサン化キチンナノファイバーを含む処理剤 Download PDF

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Abstract

【課題】天然物材を用いて、充分な耐油性を付与できる耐油剤を提供する。【解決手段】表面キトサン化キチンナノファイバーを含む耐油剤とする。前記表面キトサン化キチンナノファイバーが有機物または無機物の陰イオンと塩を形成しており、前記陰イオンが、カルボキシラートアニオンまたはハロゲン化物イオンである。【選択図】なし

Description

本開示は、表面キトサン化キチンナノファイバーを含む処理剤、特に耐油剤に関する。
使い捨てプラスチック容器の代替として、紙容器が期待されている。紙製の食品包装材および食品容器は、食品の水分および油分が染み出すことを防止することが要求され、耐油剤が紙に内添または外添により適用されている。また、環境配慮の観点から生分解性材料やバイオベース材料のニーズも高まっている。
特許文献1(特開2003-328292号公報)は、キトサンを炭酸ガス水溶液に溶解させ、紙にコートすることで耐油性を発現させることを開示している。しかし、キトサンがナノファイバー形状であること、およびナノファイバーの表面を脱アセチル化させた表面キトサン化構造であることは記載されていない。
特許文献2(特開2011-74535号公報)は、セルロースナノファイバーを紙に塗工することを開示している。しかし、ナノファイバーの素材が表面キトサン化キチンナノファイバーであることは記載されていない。
天然物素材として澱粉およびセルロースが使用されることが多いが、一般に、澱粉およびセルロースは耐油性を発現しない。
特開2003-328292号公報 特開2011-74535号公報
本開示の目的は、環境に調和しながら、バイオマス素材である天然物(キチン)を用いて、充分な耐油性を付与できる処理剤(耐油剤)を提供することにある。
本開示において、表面キトサン化キチンナノファイバーを処理剤の有効成分として使用する。
本開示の好ましい態様は、次のとおりである。
態様1:
表面キトサン化キチンナノファイバーを含む耐油剤。
態様2:
表面キトサン化キチンナノファイバーが有機物または無機物の陰イオンと塩を形成している態様1に記載の耐油剤。
態様3:
前記陰イオンが、カルボキシラートアニオンまたはハロゲン化物イオンである態様2に記載の耐油剤。
態様4:
前記陰イオンが、炭素数1~40の炭化水素基またはハロゲン化物イオンを有する態様2または3に記載の耐油剤。
態様5:
前記陰イオンが、炭素数1~40の炭化水素基を有する態様2~4のいずれか一項に記載の耐油剤。
態様6:
前記陰イオンが、炭素数7~40の炭化水素基を有する態様2~5のいずれか一項に記載の耐油剤。
態様7:
前記陰イオンが、酢酸イオン、乳酸イオン、ステアリン酸イオン、安息香酸イオン、塩化物イオンまたは臭化物イオンである態様2~6のいずれかに記載の耐油剤。
態様8:
表面キトサン化キチンナノファイバーにおいて、平均脱アセチル化度が、20~100%である態様1~7のいずれかに記載の耐油剤。
態様9:
表面キトサン化キチンナノファイバーの直径が2nm~200nmであり、表面キトサン化キチンナノファイバーのアスペクト比(繊維の長さ/繊維の幅)が50~100000である態様1~8のいずれかに記載の耐油剤。
態様10:
水分散組成物である態様1~9のいずれかに記載の耐油剤。
態様11:
前記耐油剤で加工した処理紙が800s/100cc以上の透気度を示す態様1~10のいずれかに記載の耐油剤。
態様12:
表面キトサン化キチンナノファイバーを含み、さらに重合体および無機顔料から選択される少なくとも1つ以上を含む水分散組成物からなる耐油剤。
態様13:
態様1~11のいずれかに記載の耐油剤または態様12に記載の耐油剤における表面キトサン化キチンナノファイバーが付着した耐油紙。
本開示の表面キトサン化キチンナノファイバーは、優れた耐油性を示す。本開示の表面キトサン化キチンナノファイバーを含む水分散組成物は、バイオベース由来であるので、生態環境への負荷を低減できる。
本開示において、処理剤(水分散組成物または耐油剤)は、表面キトサン化キチンナノファイバーを含む。
<表面キトサン化キチンナノファイバー>
表面キトサン化キチンナノファイバーは、キチンナノファイバーの表面を脱アセチル化させた表面キトサン化構造を有する。キチンナノファイバーの表面を脱アセチル化する方法は特に限定されない。脱アセチル化は、塩基(例えば、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ金属)および水の存在下で、キチン(特に、キチンナノファイバー)を反応させることによって行える。
表面キトサン化キチンナノファイバーは、キチンナノファイバーの製造工程のいずれかにおいてキチン材料を脱アセチル化することにより、あるいはキチンナノファイバーを脱アセチル化することにより得ることができる。脱アセチル化方法はいくつかの方法が公知であるが、例えばアルカリ処理法が挙げられる。本明細書において、表面キトサン化キチンナノファイバーをSDACNFまたは表面脱アセチル化キチンナノファイバーということがある。
表面キトサン化キチンナノファイバーの原料となるキチンナノファイバーは、天然界から、例えばキチン含有生物由来の材料から得ることができる。キチン含有生物としては、エビ、カニなどの甲殻類、昆虫類またはオキアミなどが例示されるが、これらに限定されない。好ましくは、キチン含量の多い生物、例えばエビ、カニなどの甲殻類の殻および外皮からキチンナノファイバーを得てもよい。ただし、生体中のキチンナノファイバーは、その周囲および間隙に存在する蛋白および炭酸カルシウムを含むマトリクスを有している
ので、脱マトリクス処理を行わなければ得ることができない。ナノファイバー化されるキチンは、カニ殻やエビ殻由来のキチンなどのα型の結晶構造を有するキチンであってもよく、イカの甲由来のキチンなどのβ型の結晶構造を有するキチンであってもよい。
キチンナノファイバーはいずれの方法・手段にて製造されたものであってもよい。キチンナノファイバーの好ましい製造方法としては、例えば国際公開WO2010/073758の明細書(この内容を参照により本明細書に組み込む)に記載された方法、あるいは高圧湿式粉砕機、湿式超高圧微粒化装置、ブレンダー、コロイドミル、ビーズミル、ボールミルなどを用いる方法などがある。
キチンナノファイバーの好ましい製造方法において、キチン含有生物由来の材料を、少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、次いで、解繊工程に付すことによって、キチンナノファイバーを製造する。脱灰処理されたキチン含有材料を酸性試薬にて処理することにより、キチンナノファイバーの水分散性を向上させることが好ましい。酸性試薬での処理方法は特に限定されず、材料に酸性試薬を浸透させる方法であればよい。酸性試薬での処理は、典型的には酸の水溶液に脱灰処理されたキチン含有材料を浸漬することにより行うことができる。酸性試薬処理では、水分散性の向上のみならず、キチンナノファイバーの繊維の幅(または径)のばらつきを抑えることもできる。
使用できる酸はいずれの酸であってもよく特に限定されない。酸は有機物または無機物の酸である。有機酸としては、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、フルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、クエン酸、マロン酸、アスコルビン酸、安息香酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エイコセン酸などの脂肪酸などが挙げられるがこれらに限らない。好ましい有機酸は酢酸、安息香酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エイコセン酸などの脂肪酸である。無機物の酸としては塩酸などが挙げられるがこれに限らない。
酸の水溶液のpHを通常は約2~約5、好ましくは約2.5~約4.5、例えば、約3~約4に調節する。この工程の温度は、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は約10~約50℃、好ましくは約20~約30℃、例えば、室温であってもよい。この工程の処理時間も、キチン含有生物由来の材料の量、キチン含有生物の種類、部位などに応じて適宜選択されうるが、通常は1時間~約1日、好ましくは約3~約12時間、例えば、一晩であってもよい。この酸による処理工程は、いずれの段階で行ってもよいが、脱蛋白および脱灰の後、キチンナノファイバーの精製がある程度進んだ段階で行うことが好ましく、例えば、解繊工程の直前に行ってもよい。
脱アセチル化は、キチンナノファイバーの製造前に行うのがよいが、キチンナノファイバーの製造後に行ってもよい。例えば、酸による処理工程は、または脱アセチル化の後に行うことが好ましい。
表面キトサン化キチンナノファイバーは修飾または誘導体化されていてもよい。例えば、糖の3位の水酸基、6位の水酸基、または糖鎖の末端の水酸基の水素が、アルキル基などの他の基に置換されていてもよい。あるいはキトサンの糖の2位のアミノ基の水素はアルキル基などの他の基で置換されていてもよい。アミノ基とハロゲン化物イオンなどの陰イオンとの間で塩を形成してもよい。これらの修飾体、誘導体および塩はあくまでも例示であり、限定的なものではない。本明細書では、これらの修飾体、誘導体および塩も表面キトサン化キチンナノファイバーに包含されるものとする。このような誘導体および修飾体は関連の業界において一般に知られており、それらの製造方法も公知である。
表面キトサン化キチンナノファイバーは、幅(または直径)が約2nm~約200nm、好ましくは約2nm~約100nm、より好ましくは約2nm~約50nm、例えば、約5nm~約20nm、約2nm~約20nm等である。このような幅(または直径)の表面キトサン化キチンナノファイバーは、水性媒体への分散性に優れている。
表面キトサン化キチンナノファイバーのアスペクト比(繊維の長さ/繊維の幅)は、通常約50以上(約50~約100000)、好ましくは約100以上、例えば、200~約10000である。
表面キトサン化キチンナノファイバーの平均脱アセチル化度は通常約10%以上、好ましくは約20%以上(約20~100%)、より好ましくは約25%以上、さらに好ましくは約30%以上、例えば約35~100%または約40~90%である。キチンナノファイバーの平均脱アセチル化度は元素分析、電気伝導度滴定、FT-IRなどによって測定することができる。平均脱アセチル化度の計算式の例としては以下の式が挙げられる。
平均脱アセチル化度(%)=[(キチンナノファイバーに含まれるアミノ基数)/(キチンナノファイバーに含まれるアミノ基数+アセトアミド基数)]x100
表面キトサン化キチンナノファイバーの結晶状態はα型の伸びきり鎖微結晶であることが好ましい。「伸び切り鎖微結晶」とは無数のキチン分子が伸び切った状態で規則的に配列して結晶化した状態のことをいう。
本明細書において、例えば、「表面キトサン化キチンナノファイバーの幅(または径)が約2nm~約20nm」とは、幅(または径)が約2nm~約20nmである表面キトサン化キチンナノファイバーが全体の約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上を占める状態をいう。また例えば、「表面キトサン化キチンナノファイバーのアスペクト比が約100以上」とは、アスペクト比が約100以上である表面キトサン化キチンナノファイバーが全体の約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上を占める状態をいう。
表面キトサン化キチンナノファイバーの表面において、有機物または無機物の酸(酸から形成されている陰イオン)が存在することが好ましい。陰イオンは、カルボキシラートアニオンまたはハロゲン化物イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)であることが好ましい。陰イオンは、炭化水素(炭素数は例えば、1~40、4~40、7~40または7~30または12~25。鎖状(分岐鎖状、直鎖状)又は環状、好ましくは鎖状。脂肪族又は芳香族基であってよく、好ましくは脂肪族。飽和又は不飽和、好ましくは飽和。例えばアルキル基。)基を有していてもよい。例えば、カルボキシラートアニオンは、COO-基含有有機物であり、例えば、炭素数1~40の脂肪酸アニオン(炭素数は例えば、1~40、4~40、7~40または7~30または12~25。鎖状(分岐鎖状、直鎖状)又は環状、好ましくは鎖状。飽和又は不飽和、好ましくは飽和。例えばアルキル基。)、ヒドロキシカルボン酸アニオン、COO-基含有芳香族であってよい。酸(好ましくは有機酸)の具体例は、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、フルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、クエン酸、マロン酸、アスコルビン酸、安息香酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エイコセン酸などの脂肪酸などである。陰イオンが、酢酸イオン、乳酸イオン、安息香酸イオン、カプロン酸イオン、エナント酸イオン、カプリル酸イオン、カプリン酸イオン、ラウリン酸イオン、ミスチリン酸イオン、パルミチン酸イオン、マルガリン酸イオン、ステアリン酸イオン、アラキジン酸イオン、ベヘン酸イオン、リグノセリン酸イオン、ミリストレイン酸イオン、パルミトレイン酸イオン、オレイン酸イオン、エイコセン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンであることが好ましい。特に好ましい陰イオンは酢酸イオン、乳酸イオン、ステアリン酸イオン、ベヘン酸イオン、オレイン酸イオン、安息香酸イオンである。陰イオンは、キトサンのアミノ基(-NH)と塩を形成して、耐油性を向上させる。陰イオンのイオン価数(絶対値)は1以上、2以上、又は3以上であってよい。陰イオンのイオン価数(絶対値)は5以下、又は3以下、又は2以下、又は1以下であってよく、好ましくは3以下、特に1である。
表面キトサン化キチンナノファイバーの陰イオンの含有量は、表面キトサン化キチンナノファイバーの重量に対して、10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、例えば35~100重量%または40~90重量%である。
表面キトサン化キチンナノファイバーの量は、処理剤に対して0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、または30重量%以上であってよい。表面キトサン化キチンナノファイバーの量は、処理剤に対して100重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、または40重量%以下であってよい。例えば、表面キトサン化キチンナノファイバーの量は、処理剤に対して、0.1~100重量%、0.1~80重量%、0.1~50重量%、0.1~30重量%、0.5~20重量%または1~10重量%であってよい。
水分散組成物は、表面キトサン化キチンナノファイバーに加えて、重合体および無機顔料から選択された少なくとも1種を含んでよい。重合体および無機顔料のそれぞれの量は、表面キトサン化キチンナノファイバー100重量部に対して、1~1000重量部、10~500重量部、または20~300重量部であってよい。
重合体は撥水撥油性重合体であることが好ましい。
重合体を使用する場合に、表面キトサン化キチンナノファイバーは、重合体の撥水撥油性(特に耐油剤)を補助するように働く。
(A)撥水撥油性重合体
撥水撥油性重合体は、フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体または炭素数7~40の炭化水素基を有する非フッ素単量体(すなわち、長鎖炭化水素基含有単量体)から誘導された繰り返し単位を有する単独重合体、フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体および長鎖炭化水素基含有単量体から選択された2種以上の単量体から誘導された繰り返し単位を有する共重合体、またはフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体または長鎖炭化水素基含有単量体から誘導された繰り返し単位と共重合可能な他の重合性化合物から誘導された繰り返し単位を有する共重合体である。
撥水撥油性重合体は、含フッ素重合体、またはフッ素原子を有しない非フッ素重合体である。含フッ素重合体は、フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位を有する重合体である、非フッ素重合体は、長鎖炭化水素基含有単量体から誘導された繰り返し単位を有する重合体である。
撥水撥油性重合体は、ランダム重合体であっても、あるいはブロック重合体であってもよい。
撥水撥油性重合体の例は、パーフルオロ化合物、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体(例えば、SBR)であってよい。「パーフルオロ化合物」とは、パーフルオロアルキル基を有する重合体(アクリル系重合体)およびパーフルオロアルキル基を有するポリエーテルを意味する。「(メタ)アクリル系重合体」とは、一般に、炭素数7~40の炭化水素基を有する重合体を意味する。「スチレン系重合体」とは、スチレンの重合体(単独重合体または共重合体)、例えばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を意味する。
本開示において、撥水撥油性重合体(A)は、(A1)フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位および/または(A2)長鎖炭化水素基含有単量体から誘導された繰り返し単位のみからなってよいが、
繰り返し単位(A1)および/または(A2)に加えて、
(A3)非架橋性単量体から誘導された繰り返し単位および(A4)架橋性単量体から誘導された繰り返し単位の一方または両方
を有することが好ましい。
撥水撥油性重合体(A)は、(A1)フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体および(A2)長鎖炭化水素基含有単量体の一方または両方から誘導された繰り返し単位を有する。すなわち、撥水撥油性重合体(A)は、(A1)フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位および(A2)長鎖炭化水素基含有単量体から誘導された繰り返し単位の一方または両方を有する。
(A1)含フッ素単量体
含フッ素単量体は、一般に、パーフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルケニル基およびアクリル酸基もしくはメタクリル酸基もしくはα-置換アクリル酸基を有する重合性化合物である。
含フッ素単量体(A1)は式:
CH=C(-X11)-C(=O)-Y11-Z11-Rf
[式中、X11は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
11は、-O-または-NH-であり、
11は、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物(アクリレートエステルまたはアクリルアミド)であることが好ましい。
11は、水素原子、炭素数1~21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1~21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。X11の具体例は、H、CH、Cl、Br、I、F、CN、CFである。X11は、水素原子、メチル基または塩素原子であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
11は、-O-または-NH-である。Y11は、-O-であることが好ましい。
11は、直接結合、炭素数1~20の直鎖状または分岐状脂肪族基(特に、アルキレン基)、例えば、式-(CH-(式中、xは1~10である。)で示される基、あるいは、炭素数6~18の芳香族基または環状脂肪族基、あるいは、式-R(R)N-SO-または式-R(R)N-CO-で示される基(式中、Rは、炭素数1~10のアルキル基であり、Rは、炭素数1~10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、あるいは、式-CHCH(OR)CH-(Ar-O)p-(式中、Rは、水素原子、または、炭素数1~10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基、pは0または1を表す。)で示される基、あるいは、式-CH-Ar-(O)-(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基、qは0または1である。)で示される基、-(CH2)m-SO2-(CH2)n-基または -(CH2)m-S-(CH2)n-基(但し、mは1~10、nは0~10、である)であってよい。
あるいは、Z11は、炭素数1~10の脂肪族基、炭素数6~18の芳香族基または環状脂肪族基、-CH2CH2N(R1)SO2-基(但し、R1は炭素数1~4のアルキル基である。)、-CH2CH(OZ1)CH2-(Ph-O)p-基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基、Phはフェニレン基、pは0または1である。)、-(CH2)n-Ph-O-基(但し、Phはフェニレン基、nは0~10である。)、-(CH2)m-SO2-(CH2)n-基または -(CH2)m-S-(CH2)n-基(但し、mは1~10、nは0~10、である)であることが好ましい。脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1~4、例えば1または2である。)であることが好ましい。芳香族基または環状脂肪族基は、置換または非置換であってよい。S 基または SO2基はRf基に直接に結合していてよい。
Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1~12、例えば1~6、特に4~6、特別に6であることが好ましい。Rf基の例は、-CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF(CF3) 2、-CF2CF2CF2CF3、-CF2CF(CF3)2、-C(CF)3、-(CF2)4CF3、-(CF2)2CF(CF3)2、-CF2C(CF3)3、-CF(CF3)CF2CF2CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)3CF(CF3)2、-(CF2)4CF(CF3)2、-C817等である。
含フッ素単量体の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-C6H4-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2N(-CH3) SO2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2N(-C2H5) SO2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-CH2CH(-OH) CH2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-CH2CH(-OCOCH3) CH2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-CF3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF3)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-Rf
CH2=C(-CF3)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF3)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2H)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-CF2H)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2H )-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-Rf
CH2=C(-CF2H )-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2H )-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CN)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-CN)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CN )-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-Rf
CH2=C(-CN )-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CN )-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2CF3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf
CH2=C(-CF2CF3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2CF3 )-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-Rf
CH2=C(-CF2CF3 )-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2CF3 )-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)3-S-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)3-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-F)-C(=O)-NH-(CH2)3-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)3-S-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)3-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF3)-C(=O)-O-(CH2)3-S-Rf
CH2=C(-CF3)-C(=O)-O-(CH2)3-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF3)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-CF3)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2H)-C(=O)-O-(CH2)3-S-Rf
CH2=C(-CF2H)-C(=O)-O-(CH2)3-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2H )-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-CF2H )-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CN)-C(=O)-O-(CH2)3-S-Rf
CH2=C(-CN)-C(=O)-O-(CH2)3-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CN )-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-CN )-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2CF3)-C(=O)-O-(CH2)3-S-Rf
CH2=C(-CF2CF3)-C(=O)-O-(CH2)3-S-(CH2)2-Rf
CH2=C(-CF2CF3 )-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf
CH2=C(-CF2CF3 )-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
(A2)長鎖炭化水素基含有単量体
長鎖炭化水素基含有単量体は、フルオロアルキル基を有しない。長鎖炭化水素基含有単量体は、フッ素原子を含有しない。
長鎖炭化水素基は、飽和または不飽和の基である。長鎖炭化水素基は飽和の炭化水素基、特にアルキル基であることが好ましい。
長鎖炭化水素基は、炭素数7~40の直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。直鎖状または分岐状の炭化水素基の炭素数は、10~40または12~40または18~40であってよい。直鎖状または分岐状の炭化水素基は、炭素数好ましくは12~40、より好ましくは12~30、特に18~28、特別に18~22(または18~24)であることが好ましく、一般に飽和の脂肪族炭化水素基、特にアルキル基であることが好ましい。長鎖炭化水素基はステアリル基、イコシル基またはベヘニル基であることが特に好ましい。
長鎖炭化水素基含有単量体は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Yは、-O-および-NH-から選択された少なくとも1つの基を有する2価~4価の連結基であり、
Rは、炭素数7~40の炭化水素基であり、
nは1~3の整数である。]
で示される単量体であることが好ましい。
Xは、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。Xの例は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基である。Xは、水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましい。
Yは、2価~4価の基である。Yは、2価の基であることが好ましい。
Yは、炭素数1の炭化水素基、-C-、-O-、-C(=O)-、-S(C=O)-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上によって構成される基(但し、炭化水素基を除く)であることが好ましい。炭素数1の炭化水素基の例として、-CH-、-CH=または-C≡が挙げられる。
Yの例は、-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-、-Y’-R’-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-、-Y’-R’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-Y’-、または-Y’-R’-Y’-R’-
[式中、Y’は、直接結合、-O-または-NH-であり、
R’は-(CHm-(mは1~5の整数である)または-C-(フェニレン基)である。]
である。
Yの具体例として、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C-、-O-(CHm-O-、-NH-(CHm-NH-、-O-(CHm-NH-、-NH-(CHm-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-C(=O)-O-、-NH-(CHm-O-C(=O)-、-NH-(CHm-C(=O)-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-O-(CHm-O-C-、-NH-(CHm-O-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-O-、-NH-(CHm-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C-、-NH-(CHm-NH-C
[式中、mは1~5の整数、特に2または4である。]
が挙げられる。
Yは、-O-、-NH-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-
[式中、mは1~5の整数、特に2または4である。]
であることがさらに好ましい。Yは、-O-(CHm-NH-C(=O)-であることが特に好ましい。
Yは、-O-、-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-
[式中、mは1~5の整数、特に2または4である。]
であることが特に好ましい。
Rは、直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、特に直鎖状の炭化水素基であってよい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。炭水水素基の炭素数は、12~30、例えば16~26、特に18~22であることが好ましい。
nは1~3の整数、好ましくは1である。
Yが4価の炭素数1の炭化水素基を有する場合、n=3であることが好ましい。Yが3価の炭素数1の炭化水素基を有する場合、n=2であることが好ましい。Yが3価および4価の炭素数1の炭化水素基を有しない場合に、n=1である。
長鎖炭化水素基含有単量体(A2)の例は、
(a1)C(=O)-O-またはC(=O)-NH-が炭素数7~40の炭化水素基に直接に結合しているアクリル単量体、および
(a2)C(=O)-O-またはC(=O)-NH-が炭素数7~40の炭化水素基に直接に結合していないアクリル単量体である。
アクリル単量体(a2)は、アクリル単量体(a1)と異なった化合物である。
アクリル単量体(a2)は、(C(=O)-O-またはC(=O)-NH-に直接に結合しておらず、炭素数7~40の炭化水素基に直接に結合する)アミド基、ウレタン基またはウレア基を有する(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドであってよい。含窒素単量体は、C(=O)-O-またはC(=O)-NH-に直接に結合していないアミド基であって、炭素数7~40の炭化水素基に直接に結合するアミド基を有するアクリレートであることが好ましい。
(a1)アクリル単量体
アクリル単量体(a1)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O-または-NH-であり、
は、炭素数7~40の炭化水素基である。]
で示される化合物であることが好ましい。
アクリル単量体(a1)は、Yが-O-である長鎖アクリレートエステル単量体、またはYが-NH-である長鎖アクリルアミド単量体である。
は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。Xの例は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基である。Xは、水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましい。
は、-O-または-NH-である。
Rは、直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、特に直鎖状の炭化水素基であってよい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。炭水水素基の炭素数は、7~30または12~30、例えば16~26、特に18~22(または18~24)であってよい。
長鎖アクリレートエステル単量体の具体例は、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、イコシルαクロロアクリレート、ベヘニルαクロロアクリレートである。
長鎖アクリルアミド単量体の具体例は、ノニル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、イコシル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミドである。
長鎖アクリレートエステル単量体または長鎖アクリルアミド単量体が存在することにより、撥水撥油性重合体が与える撥水性、撥油性および風合いが高くなる。
(a2)アクリル単量体
アクリル単量体(a2)は、-O-および-NH-から選択された少なくとも1つの基を有する2価~4価の連結基を、C(=O)-O-またはC(=O)-NH-と炭素数7~40の炭化水素基との間に有する(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドであってよい。
アクリル単量体(a2)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z(-Z-R)
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O-または-NH-であり、
は、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-および-NH-から選択された少なくとも1つの基を有する2価~4価の連結基であり、
は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
pは、1または2である。]
で示される化合物であることが好ましい。
アクリル単量体(a2)は、Yが-O-である長鎖アクリレートエステル単量体、またはYが-NH-である長鎖アクリルアミド単量体である。
は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。Xの例は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基である。得られる重合体の主鎖が剛直でないほど、側鎖の結晶性を阻害しないので、Xは、水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましく、水素原子、メチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
は、-O-または-NH-である。
は、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基(特にアルキル基)であり、枝分かれ構造を有していてもよい。Zの炭素数は、2~4、特に2であることが好ましい。Zの具体例は、直接結合、2価の基として、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHCHCHCH-、枝分かれ構造を有する(3価の基である)-CHCH=、-CH(CH-)CH-、-CHCHCH=、-CHCHCHCHCH=、-CHCH(CH-)CH-、-CHCHCHCH=である。Zは直接結合でないことが好ましい。
の具体例は、直接結合、-O-、-NH-、-(O)k-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-(O)k-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-(O)k-C-、-(O)k-(CHm-O-、-NH-(CHm-NH-、-(O)k-(CHm-NH-、-NH-(CHm-O-、-(O)k-(CHm-O-C(=O)-、-(O)k-(CHm-C(=O)-O-、-NH-(CHm-O-C(=O)-、-NH-(CHm-C(=O)-O-、-(O)k-(CHm-O-C(=O)-NH-、-(O)k-(CHm-NH-C(=O)-O-、-(O)k-(CHm-C(=O)-NH-、-(O)k-(CHm-NH-C(=O)-、-(O)k-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-(O)k-(CHm-O-C-、-NH-(CHm-O-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-O-、-NH-(CHm-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C-、-NH-(CHm-NH-C-である[式中、kは、0または1であり、mは1~5の整数、特に2または4である。]。
は、-(O)k-、-NH-、-(O)k-(CHm-O-C(=O)-、-(O)k-(CHm-NH-C(=O)-、-(O)k-(CHm-O-C(=O)-NH-、-(O)k-(CHm-NH-C(=O)-O-、-(O)k-(CHm-NH-C(=O)-NH-
[式中、kは、0または1であり、mは1~5の整数、特に2または4である。]
であることが特に好ましい。
およびZは同時に直接結合であることはない。
は、直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、特に直鎖状の炭化水素基であってよい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。炭水水素基の炭素数は、12~30、例えば16~26、特に18~22(または18~24)であることが好ましい。
アクリル単量体(a2)は、CH2=C(-X)-C(=O)-O-(CHm-NH-C(=O)-R、CH2=C(-X)-C(=O)-O-Rまたはこれらの組み合わせであることが好ましい[ここで、X、mおよびRは上記と同意義である。]。アクリル単量体(a2)は、CH2=C(-X)-C(=O)-O-(CHm-NH-C(=O)-Rであることが特に好ましい。
アクリル単量体(a2)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドと長鎖アルキルイソシアネートを反応させることによって製造できる。長鎖アルキルイソシアネートとしては例えば、ラウリルイソシアネート、ミリスチルイソシアネート、セチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、オレイルイソシアネート、ベヘニルイソシアネートなどがある。
あるいは、アクリル単量体(a2)は、側鎖にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと長鎖アルキルアミンまたは長鎖アルキルアルコールを反応させることでも製造できる。長鎖アルキルアミンとしては例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミンなどがある。長鎖アルキルアルコールとしては例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどがある。
アクリル単量体(a2)の具体例は、次のとおりである。下記の化学式の化合物は、α位が水素原子であるアクリレートであるが、具体例は、α位がメチル基であるメタクリレートおよびα位が塩素原子であるアクリレートであってよい。

Figure 0007248260000001
Figure 0007248260000002

Figure 0007248260000003

Figure 0007248260000004
Figure 0007248260000005

Figure 0007248260000006

Figure 0007248260000007

Figure 0007248260000008

Figure 0007248260000009
Figure 0007248260000010

Figure 0007248260000011

[上記式中、mは1~5の整数であり、nは7~40の整数である。]、ならびに
上記化学式において、α位がメチル基であるメタクリレートおよびα位が塩素原子であるアクリレート。
アクリル単量体(a2)の代表的な具体例は、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ベヘニン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ミリスチン酸アミドエチル(メタ)アクリレートである。
アクリル単量体(a2)は、式:
22-C(=O)-NH-R23-O-R21
[式中、R21は、エチレン性不飽和重合性基を有する有機残基、
22は、炭素数7~40の炭化水素基、
23は、炭素数1~5の炭化水素基である。]
で示されるアミド基含有単量体であることが特に好ましい。
21は、エチレン性不飽和重合性基を有する有機残基であり、炭素同士の二重結合があれば特に限定されない。具体的には-C(=O)CR24=CH、-CHR24=CH、-CHCHR24=CH等のエチレン性不飽和重合性基を有する有機残基が挙げられ、R24は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。またR21はエチレン性不飽和重合性基以外に種々の有機性基を有してよく、例えば鎖式炭化水素、環式炭化水素、ポリオキシアルキレン基、ポリシロキサン基等の有機性基が挙げられ、これら有機性基は種々の置換基で置換されていても良い。R21は-C(=O)CR24=CHであることが好ましい。
22は、炭素数7~40の炭化水素基、好ましくはアルキル基であり、鎖式炭化水素、環式の炭化水素等が挙げられる。そのなかで、鎖式炭化水素であることが好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基であることが特に好ましい。R21の炭素数は、7~40であるが、好ましくは11~27、特に好ましくは15~23である。
23は、炭素数1~5の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。炭素数1~5の炭化水素基は直鎖状または分岐鎖状のいずれでも良く、不飽和結合を有していても良いが、好ましくは直鎖状が良い。R23の炭素数は、2~4が好ましく、特に2であることが好ましい。R23は、アルキレン基であることが好ましい。
アミド基含有単量体は、R21が単独であるもの(例えば、R21が炭素数17である化合物のみ)、またはR21が複数の組み合わせであるもの(例えば、R21の炭素数が17である化合物と、R21の炭素数が15である化合物との混合物)であってよい。
アミド基含有単量体の例は、カルボン酸アミドアルキル(メタ)アクリレートである。
アミド基含有単量体の具体例としては、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ベヘニン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ミリスチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ラウリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、イソステアリン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、オレイン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、ターシャリーブチルシクロヘキシルカプロン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、アダマンタンカルボン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、ナフタレンカルボン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、アントラセンカルボン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、パルミチン酸アミドプロピル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドプロピル(メタ)アクリレート、パルミチン酸アミドエチルビニルエーテル、ステアリン酸アミドエチルビニルエーテル、パルミチン酸アミドエチルアリルエーテル、ステアリン酸アミドエチルアリルエーテル、またはこれらの混合物が挙げられる。
アミド基含有単量体は、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。アミド基含有単量体は、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートを含む混合物であってよい。ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートを含む混合物において、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートの量は、アミド基含有単量体全体の重量に対して、例えば55~99重量%、好ましくは60~85重量%、更に好ましくは65~80重量%であってよく、残りの単量体は、例えば、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレートであってよい。
(A3)非架橋性単量体
非架橋性単量体(A3)は、長鎖炭化水素基含有単量体(A2)以外の単量体である。非架橋性単量体(A3)は、フッ素原子を含まない単量体である。非架橋性単量体(A3)は、架橋性官能基を有さない。非架橋性単量体(A3)は、架橋性単量体(A4)とは異なり、非架橋性である。非架橋性単量体(A3)は、好ましくは、エチレン性不飽和炭素-炭素二重結合を有する非フッ素単量体である。非架橋性単量体(A3)は、好ましくは、フッ素を含まないビニル単量体である。非架橋性単量体(A3)は一般には、1つのエチレン性不飽和炭素-炭素二重結合を有する化合物である。
好ましい非架橋性単量体(A3)は、式:
CH=CA-T
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
Tは、水素原子、鎖状または環状の炭化水素基、またはエステル結合を(場合により、オキシアルキレン基をも)有する鎖状または環状の有機基である。]
で示される化合物である。
(例えば炭素数1~40の)鎖状または環状の炭化水素基の例は、炭素数1~40の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、炭素数4~40の環状脂肪族基、炭素数6~40の芳香族炭化水素基、炭素数7~40の芳香脂肪族炭化水素基である
エステル結合を有する鎖状または環状の(炭素数1~300または炭素数1~41の)有機基の例は、-C(=O)-O-Q および-O-C(=O)-Q(ここで、Qは、炭素数1~40の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、炭素数4~40の環状脂肪族基、炭素数6~40の芳香族炭化水素基、炭素数7~40の芳香脂肪族炭化水素基であってよく、あるいは1つまたは複数(例えば、2~300)のアルキレングリコール基(炭素数2~4、特に2または3)であってよく、あるいは該グリコール基を有してよい)である。
非架橋性単量体(A3)の好ましい例には、例えば、エチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、およびビニルアルキルエーテルが含まれる。非架橋性単量体(A3)はこれらの例に限定されない。
非架橋性単量体(A3)は、アルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルであってよい。アルキル基の炭素原子の数は1~17であってよい。例えば、非架橋性単量体(A3)は、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、C2n+1(n=1~17)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートであってよい。
含フッ素単量体は、炭素原子数1~17のアルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルから誘導された繰り返し単位を有しなくてもよい。
非架橋性単量体(A3)は、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体であってよい。環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体は、(好ましくは一価の)環状炭化水素基および一価の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。一価の環状炭化水素基と一価の(メタ)アクリレート基は、直接に結合している。環状炭化水素基としては、飽和または不飽和である、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。環状炭化水素基は、飽和であることが好ましい。環状炭化水素基の炭素数は4~20であることが好ましい。環状炭化水素基としては、炭素数4~20、特に5~12の環状脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、炭素数7~20の芳香脂肪族基が挙げられる。環状炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば10以下であることが特に好ましい。環状炭化水素基の環における炭素原子が、(メタ)アクリレート基におけるエステル基に直接に結合することが好ましい。環状炭化水素基は、飽和の環状脂肪族基であることが好ましい。
環状炭化水素基の具体例は、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基である。アクリレート基は、アクリレート基またはメタアクリレート基であることが好ましいが、メタクリレート基が特に好ましい。環状炭化水素基を有する単量体の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
非架橋性単量体(A3)はハロゲン化オレフィンであってもよい。ハロゲン化オレフィンは、1~10の塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されている炭素数2~20のハロゲン化オレフィンであってよい。ハロゲン化オレフィンは、炭素数2~20の塩素化オレフィン、特に1~5の塩素原子を有する炭素数2~5のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィンの好ましい具体例は、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデンである。
(A4)架橋性単量体
撥水撥油性重合体は、架橋性単量体(A4)から誘導された繰り返し単位を有していてよい。架橋性単量体(A4)は、フッ素原子を含まない単量体である。架橋性単量体(A4)は、少なくとも2つの反応性基および/またはエチレン性不飽和炭素-炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。架橋性単量体(A4)は、少なくとも2つのエチレン性不飽和炭素-炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つのエチレン性不飽和炭素-炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、などである。
架橋性単量体(A4)としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
非架橋性単量体(A3)および/または架橋性単量体(A4)を共重合させることにより、撥水撥油性や防汚性およびこれらの性能の耐クリーニング性、耐洗濯性、溶剤への溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を必要に応じて改善することができる。
撥水撥油性重合体における単量体の特に好ましい組み合わせは、次のとおりである。
含フッ素単量体(A1)+非フッ素単量体(A2)(特に、長鎖(メタ)アクリレートエステル単量体(A2-i))、
長鎖(メタ)アクリレートエステル単量体(A2-i)+アミド基含有単量体(A2-ii)
長鎖(メタ)アクリレートエステル単量体(A2-i)+含窒素単量体(A2-iii)
長鎖(メタ)アクリレートエステル単量体(A2-i)+アクリルアミド単量体(A2-iv)
上記の組み合わせにおいて、さらに、ハロゲン化オレフィンを含むことが好ましい。
含フッ素単量体(A1)および長鎖炭化水素基含有単量体(A2)のそれぞれの量(あるいは単量体(A1)および単量体(A2)の合計)(ただし、単量体(A1)および単量体(A2)の合計は100重量%以下である。)は、撥水撥油性重合体に対して、30~100重量%、好ましくは32~98重量%、例えば35~95重量%、特に40~90重量%であってよい。
撥水撥油性重合体において、含フッ素単量体(A1)および長鎖炭化水素基含有単量体(A2)の合計100重量部に対して、
非架橋性単量体(A3)の量が1000重量部以下、例えば0.1~300重量部、特に1~200重量部であり、
架橋性単量体(A4)の量が50重量部以下、例えば30重量部以下、特に0.1~20重量部であってよい。
非架橋性単量体(A3)の量は、撥水撥油性重合体(または単量体(A1)と単量体(A2)と単量体(A3)の合計)に対して、2~68重量%、例えば5~65重量%、特に10~60重量%であってよい。
撥水撥油性重合体の数平均分子量(Mn)は、一般に1000~1000000、例えば2000~500000、特に3000~200000であってよい。撥水撥油性重合体の数平均分子量(Mn)は、一般に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定する。
処理剤(水分散組成物または耐油剤)が水系エマルションである場合に、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤および両性界面活性剤の中から選択された少なくとも1種であってよい。
ノニオン性界面活性剤の例としては、エーテル、エステル、エステルエーテル、アルカノールアミド、多価アルコールおよびアミンオキシド、およびこれらのポリオキシアルキレン(特にエチレン)付加化合物が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の例として、アミン、アミン塩、4級アンモニウム塩、イミダゾリンおよびイミダゾリニウム塩が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の例として、脂肪酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩が挙げられる。
両性界面活性剤の例としては、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類、酢酸ベタイン等が挙げられる。
界面活性剤の量は、重合体(または単量体の合計)100重量部に対して、0.1~50重量部、例えば、1~20重量部であってよい。
重合体は通常の重合方法の何れでも製造でき、また重合反応の条件も任意に選択できる。このような重合方法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられる。重合体を乳化重合法または溶液重合法により製造することが好ましい。
処理剤は、乳化重合によって、重合体の分散液を形成することが好ましい。処理剤は、水性分散液であること、より詳細には、重合体の粒子が水性媒体に分散する水性分散液であることが好ましい。
重合体を重合により製造した後に、水(または水性媒体)を添加して、重合体を水に分散させることが好ましい。
水(または水性媒体)は、重合体を重合により製造した後に、添加してもよい。例えば、単量体を有機溶媒の存在下で重合して、重合体を製造した後に、重合体混合物に水を添加して、有機溶媒を留去して、重合体を水に分散させてよい。有機溶媒は留去しなくてもよい。界面活性剤は、重合前または重合後に添加してよく、あるいは添加しなくてもよい。界面活性剤を添加しない場合にも、良好な水性分散液が得られる。
重合体の量は、表面キトサン化キチンナノファイバー100重量部に対して、1~1000重量部、10~500重量部、または20~300重量部であってよい。あるいは、重量体の量は、処理剤に対して、0.1~30重量%、0.5~20重量%または1~10重量%であってよい。
水性分散組成物は、無機顔料を含んでも良い。
<無機顔料>
無機顔料の例として、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ、カオリンなど(例えば、これらの層状化合物)が挙げられる。無機顔料の量は、表面キトサン化キチンナノファイバー100重量部に対して、1~1000重量部、10~500重量部、または20~300重量部であってよい。あるいは、無機顔料の量は、処理剤に対して、0.1~30重量%、0.5~20重量%または1~10重量%であってよい。
<処理剤(耐油剤および水性分散組成物)>
処理剤(耐油剤および水性分散組成物)は、一般に、表面キトサン化キチンナノファイバーを含んでなる。処理剤は、耐油性を有し、さらに耐水性、撥水性、撥油性を有してよい。処理剤は表面キトサン化キチンナノファイバーに加えて、液状媒体(水、有機溶媒またはこれらの混合溶液)を含んでよい。処理剤は、さらに、界面活性剤、ブロックイソシアネート化合物および添加剤から選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
表面キトサン化キチンナノファイバーの量は、処理剤に対して0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、または30重量%以上であってよい。表面キトサン化キチンナノファイバーの量は、処理剤に対して100重量%以下、75重量%以下、50重量%以下、または40重量%以下であってよい。
処理剤は、水性媒体を含有してよい。液状媒体は水の単独、有機溶媒(例えば、アルコール、ケトン、エステル)の単独、または水と有機溶媒の混合物であり、好ましくは水の単独である。
処理剤に対して、液状媒体の量は30重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、75重量%以上、または90重量%以上であってよく、液状媒体の量は、99重量%以下、95重量%以下、75重量%以下、または50重量%以下であってよい。
液状媒体が水と有機溶媒の混合物の場合、有機溶媒(例えば、アルコール、エステルおよびケトン)の量は、液状媒体に対して、3重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、または75重量%以上であってよい。有機溶媒の量は、液状媒体に対して、90重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、または10重量%以下であってよい。
処理剤は、表面キトサン化キチンナノファイバーの溶液(特に、水溶液)または分散組成物(特に、水分散液(水分散組成物))であってよい。処理剤において、表面キトサン化キチンナノファイバーの濃度は、例えば、0.01~50重量%または1~30重量%であってよい。
<界面活性剤または分散剤>
処理剤は、界面活性剤(乳化剤)または分散剤を含有しなくてもよいし、あるいは含有していてもよい。一般に、表面キトサン化キチンナノファイバーの製造工程時に界面活性剤または分散剤を少量(例えば、表面キトサン化キチンナノファイバー100重量部に対して0.01~100重量部または0.01~50重量部、例えば、0.1~15重量部)で添加してよく、または、反応後に界面活性剤または分散剤を添加してよい。
被処理物が繊維製品である場合において特に、処理剤において、界面活性剤または分散剤は、ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。さらに、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、および両性界面活性剤から選択された一種以上の界面活性剤を含むことが好ましい。ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の組み合わせを用いることが好ましい。
ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤のそれぞれが一種または二以上の組み合わせであってよい。
界面活性剤または分散剤の量は、天然物(または表面キトサン化キチンナノファイバー)の合計100重量部に対して100重量部以下、50重量部以下、25重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、7.5重量部以下、5重量部以下、または2.5重量部以下であってよい。一般に界面活性剤または分散剤を添加すると、水分散体の安定性や布への浸透性は向上する。
<添加剤>
処理剤は、添加剤を含有してもよい。添加剤の例は、バインダー樹脂、分散剤、耐水剤、耐油剤、撥水剤、撥油剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、風合い調整剤、すべり性調整剤、帯電防止剤、親水化剤、抗菌剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、難燃剤、サイズ剤、紙力増強剤である。添加剤の量は、表面キトサン化キチンナノファイバー100重量部に対して、0.1~20重量部、例えば0.1~10重量部であってよい。
<処理剤および表面キトサン化キチンナノファイバーの特性>
処理紙の透気度は、100s/100cc以上、200s/100cc以上、300s/100cc以上、400s/100cc以上、500s/100cc以上、700s/100cc以上または1000s/100cc以上であることが好ましい。処理紙の透気度が上記値以上にあることで繊維間の空隙が閉塞し、特に耐油性が向上することがある。透気度の測定用の処理紙は、処理剤のポリマー(表面キトサン化キチンナノファイバー)溶液濃度14.8 mg/mLを紙密度が0.58g/cmの坪量45g/mの紙の原紙に0milの設定したベーカー式アプリケータ―で塗工し乾燥を繰り返す操作を三回行い、70℃~180℃(例えば、70℃)で10分アニールすることで作製したものである。
<表面キトサン化キチンナノファイバーの用途>
表面キトサン化キチンナノファイバーは、耐油剤、耐水剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤、汚れ脱離剤、剥離剤または離型剤等の各種剤またはその成分として使用できる。表面キトサン化キチンナノファイバーは、外的処理剤(表面処理剤)または内的処理剤またはその成分として使用できる。
基材が表面キトサン化キチンナノファイバーにより処理されることで、表面キトサン化キチンナノファイバーが基材表面に表面コーティング構造を形成し得る。
処理された被処理物(基材)は、撥液性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、表面キトサン化キチンナノファイバーのTg以上の温度、例えば100℃~200℃で加熱されることが好ましい。表面キトサン化キチンナノファイバーのTg以上の温度で処理することにより、基材表面が表面キトサン化キチンナノファイバーに被覆され、さらに側鎖の配列が誘起される。これにより、疎水性に優れた表面コーティング構造が形成され得る。
表面コーティング構造は、表面キトサン化キチンナノファイバーを従来既知の方法により被処理物(基材)に適用して、基材表面に付着させることによって、形成することができる。通常、表面キトサン化キチンナノファイバーを有機溶媒または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤(例えば、ブロックイソシアネート化合物)と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、表面キトサン化キチンナノファイバーに、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤、サイズ剤、紙力増強剤等を添加して併用することも可能である。
表面キトサン化キチンナノファイバーを含む剤で処理される被処理物としては、繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極およびガス拡散支持体)、ガラス、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスター等を挙げることができる。
繊維製品としては、繊維製品としては種々の例を挙げることができるが、例えば布製品や紙製品が挙げられる。
布製品の例としては、綿、麻、羊毛、絹等の動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。布製品には、織物、編物および不織布、衣料品形態の布およびカーペットが含まれるが、布とする前の状態の繊維、糸、中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸等)に対して、処理がなされてもよい。
紙製品の例としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプ等からなる紙、紙でできた容器、紙でできた成形体等が挙げられる。紙製品の具体例としては、食品用包装用紙、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナーおよび中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナーおよび金属合紙、クラフト紙、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙および中性情報用紙、モールド紙(モールド容器)等である。本開示の表面キトサン化キチンナノファイバーは耐油性(例えば、高温耐油性)に優れるため、耐油性が求められる用途、特に食品包装材および食品容器に好適に用いられる。
表面キトサン化キチンナノファイバーは、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品等)に適用することができる。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着または噴霧してよい。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。繊維製品が紙であるときには、紙に塗工してよく、あるいは、紙に溶液を付着または噴霧してよく、あるいは、抄造前のパルプスラリーと混合して処理してもよい。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。
表面キトサン化キチンナノファイバーを、予め形成した繊維製品(特に紙、布等)に適用してよく、または、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。表面キトサン化キチンナノファイバーはクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法等において繊維製品に適用してよい。
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。表面キトサン化キチンナノファイバーを、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
表面キトサン化キチンナノファイバーは外部離型剤としても使用できる。例えば、基材の表面を、他の表面(該基材における他の表面、あるいは他の基材における表面)から容易に剥離することができる。
紙製品の場合、例えば、パルプモールドに天然修飾物溶液を噴霧、加熱乾燥する方法がある。
あるいはパルプスラリー溶液に乳化剤などによって分散した天然修飾物を混合し、脱水成形、加熱プレスを行ってもよい。このパルプスラリーには架橋剤、紙力増強剤、定着剤などを添加してよい。
あるいは、天然修飾物分散溶液中に紙を浸漬、加熱乾燥させてもよい。
布製品の場合、天然修飾物分散溶液中に布を浸漬あるいは噴霧し、脱水後加熱乾燥させる方法がある。
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布等により被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である表面キトサン化キチンナノファイバーが被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
<紙用添加剤>
表面キトサン化キチンナノファイバーは紙用添加剤に好適に用いることができる。表面キトサン化キチンナノファイバーを含む紙用添加剤は耐水剤、耐油剤、撥水剤、および/または撥油剤として用いることができる。紙用添加剤は、溶液(特に、有機溶媒の溶液)、エマルション(特に、水系エマルション)またはエアゾールの形態であることが好ましい。紙用添加剤は、表面キトサン化キチンナノファイバーおよび媒体(例えば、有機溶媒および水などの液状媒体)を含んでなる。紙用添加剤は、表面キトサン化キチンナノファイバーの水分散体であることが好ましい。紙用添加剤において、表面キトサン化キチンナノファイバーの濃度は、例えば、0.01~50重量%であってよい。紙用添加剤は、界面活性剤を含まなくてよい。
紙用添加剤に含まれる有機溶媒の除去は、表面キトサン化キチンナノファイバー溶液を(好ましくは減圧下)(例えば、30℃以上、例えば50~120℃に)加熱することによって行える。
紙用添加剤は、紙基材を処理(例えば、表面処理)するために使用することができる。紙用添加剤は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、紙用添加剤を有機溶剤または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる(表面処理)。被処理物の紙基材としては、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体(例えばパルプモールド)などが挙げられる。本開示の表面キトサン化キチンナノファイバーは、紙基材に良好に付着する。ここで付着とは物理的結合または化学的結合のことをいう。表面キトサン化キチンナノファイバーが紙基材に付着することによって耐油紙が得られる。
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
次に、実施例を挙げて本開示を具体的に説明する。ただし、これらの説明は本開示を限定するものでない。以下において、部、%または比は、特記しない限り、重量部、重量%または重量比を表す。
以下において使用した試験方法は次のとおりである。
処理紙の作成
木材パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)とNBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)の重量比率が、60重量%と40重量%で、かつ、パルプのろ水度が400ml(Canadian Standard Freeness)のパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーに湿潤紙力剤、サイズ剤を添加して長網抄紙機により、紙密度が0.58g/cmの坪量45g/mの紙を外添処理(サイズプレス処理)の原紙として使用した。この原紙の耐油性(KIT値)は0、耐水性(Cobb値)は52g/mであった。
この原紙に対して、1.0 wt%の水分散体または水溶液調整し、ギャップを0mil(0μm)、または7mil(170μm)の設定したベーカー式アプリケータ―で塗工し乾燥を繰り返す操作を三回行い、100℃で10分アニールすることで、処理紙を作成した。
KIT試験
3Mキットテスト(TAPPI T-559 cm-02 ) により測定した。3M キットテスト法は、ヒマシ油、トルエン、ヘプタンが配合された試験油を処理紙の表面におき、15秒後に試験油を拭った際、処理紙への油染みの有無により評価する。キット番号1~6の試験油にて試験を実施し、染みが見られなかった最大のキット番号を耐油性の評価結果とした。
コーン油耐性評価
コーン油を処理紙の表面におき、15 秒後に試験油を拭った際、処理紙への油染みの有無により評価する。
染みがない場合を〇、染みが見られるときを×とする。
透気度
処理紙の透気度(透気抵抗度)を、株式会社安田精機製作所製の自動ガーレー式デンソーメーター(製品No.323-AUTO、通気孔径直径28.6±0.1mm)を用いてJIS P8117(2009)に準拠して測定した。
実施例1
耐油剤として、表面キトサン化キチンナノファイバー 乳酸塩の水分散液(平均脱アセチル化度:50%、乳酸含有量:2.7mmol)を用いた。表面キトサン化キチンナノファイバー 乳酸塩の水分散液のKIT試験および透気度を評価した。結果を表1に示す。
実施例2
耐油剤として、表面キトサン化キチンナノファイバー 酢酸塩の水分散液(平均脱アセチル化度:50%、酢酸含有量:2.7mmol)を用いた。表面キトサン化キチンナノファイバー 酢酸塩の水分散液のKIT試験および透気度を評価した。結果を表1に示す。
実施例3
変性キチン粉末(平均脱アセチル化度:50%)10 gをポリカップに計量した。この変性キチンのアミノ基と同じ物質量2.75 × 10-2 mol (3.35 g)の安息香酸を純水1 Lに完全に溶解した。次いで、変性キチンを添加して真空脱泡スターラーで減圧脱泡を2時間行い、一晩撹拌した後、ディスクミルで粉砕した。粉砕処理は繰り返し5回行った。発生した気泡を自転公転方式ミキサーで脱泡した後、加水して1 wt%に調製することで、表面キトサン化キチンナノファイバー 安息香酸塩の水分散液を得た。得られた表面キトサン化キチンナノファイバー 安息香酸塩の水分散液を用いて、KIT試験および透気度を評価した。結果を表1に示す。
実施例4
1%部分加水分解キチンナノファイバー乳酸分散液100 g(乾燥キチン:1 g, 平均脱アセチル化度:50%,乳酸:0.2 g)にステアリン酸0.2 gを添加し、80℃で攪拌することで、表面キトサン化キチンナノファイバーの乳酸塩とステアリン酸塩混合物の水分散液を得た。得られた表面キトサン化キチンナノファイバー 安息香酸塩の水分散液を用いて、KIT試験および透気度を評価した。結果を表1に示す
比較例1
耐油剤として、カチオン性澱粉を用いてKIT試験、透気度を評価した。結果を表1に示す。
比較例2
耐油剤として、セルロース(0μm Powder)を用いてKIT試験、透気度を評価した。結果を表1に示す。
Figure 0007248260000012

本開示の表面キトサン化キチンナノファイバーは、耐油剤、耐水剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤、汚れ脱離剤、剥離剤または離型剤として使用でき、特に、耐油剤として使用できる。表面キトサン化キチンナノファイバーは、耐油性が求められる用途、特に食品包装材および食品容器などの食品用途に好適に用いられる。

Claims (12)

  1. 表面キトサン化キチンナノファイバーを含む耐油剤であって、
    表面キトサン化キチンナノファイバーが有機物または無機物の陰イオンと塩を形成している、耐油剤
  2. 前記陰イオンが、カルボキシラートアニオンまたはハロゲン化物イオンである請求項に記載の耐油剤。
  3. 前記陰イオンが、炭素数1~40の炭化水素基またはハロゲン化物イオンを有する請求項に記載の耐油剤。
  4. 前記陰イオンが、炭素数1~40の炭化水素基を有する請求項に記載の耐油剤。
  5. 前記陰イオンが、炭素数7~40の炭化水素基を有する請求項に記載の耐油剤。
  6. 前記陰イオンが、酢酸イオン、乳酸イオン、ステアリン酸イオン、安息香酸イオン、塩化物イオンまたは臭化物イオンである請求項に記載の耐油剤。
  7. 表面キトサン化キチンナノファイバーにおいて、平均脱アセチル化度が、20~100%である請求項1に記載の耐油剤。
  8. 表面キトサン化キチンナノファイバーの直径が2nm~200nmであり、表面キトサン化キチンナノファイバーのアスペクト比(繊維の長さ/繊維の幅)が50~100000である請求項1に記載の耐油剤。
  9. 水分散組成物である請求項1に記載の耐油剤。
  10. 前記耐油剤で加工した処理紙が800s/100cc以上の透気度を示す耐油剤であって、前記処理紙は、表面キトサン化キチンナノファイバー溶液(濃度14.8 mg/mL)を紙密度が0.58g/cm の坪量45g/m の紙の原紙に0milの設定をしたベーカー式アプリケータ―で塗工し乾燥を繰り返す操作を三回行い、70℃~180℃で10分アニールすることで作製したものである、請求項1に記載の耐油剤。
  11. 表面キトサン化キチンナノファイバーを含み、さらに重合体および無機顔料から選択される少なくとも1つ以上を含む水分散組成物からなる耐油剤であって、表面キトサン化キチンナノファイバーが有機物または無機物の陰イオンと塩を形成している、耐油剤
  12. 請求項1~10のいずれかに記載の耐油剤または請求項11に記載の耐油剤における表面キトサン化キチンナノファイバーが付着した耐油紙。
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