JP7247669B2 - 取水口ゲート制御方法 - Google Patents

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Description

この発明は、取水口スクリーンを通過した水の水力発電機への取水量を調整する取水口ゲートにおける開閉を制御する取水口ゲート制御方法に関する。
水力発電用などの取水路において、取水路の入り口である取水口の設けられた取水口スクリーンにゴミや流木などの塵芥が多量に付着した時には、取水口スクリーンの破損を防止するため、塵芥を取り除く除塵制御をおこなっている。除塵制御は、取水量を調整するための取水口ゲートを閉じて、それによって、取水口スクリーンに付着した塵芥を河川へ流下させる取水口ゲート自動制御によりおこなうことができる。
具体的には、取水口スクリーンに塵芥が付着すると、取水口スクリーンの上流側と下流側とで水位差が生じる。この水位差を、取水口ゲートを閉じることにより解消すれば、塵芥を取水口スクリーンから剥がして河川へ流下させることができる。
そして、水槽水位が低下した場合には、水力発電機が重故障(「発電機トリップ」)となるため、取水口ゲートを、発電機トリップが発生しない所定の開度、たとえば約10cmまで閉じていた。「発電機トリップ」とは、保護機能が働いて回路が遮断されることである。このようにして、従来から、取水口ゲートの制御により、取水口スクリーンの塵芥の除塵制御をおこなっていた。
関連する技術として、具体的には、たとえば、取水口を2以上有する水路と、取水口それぞれに設置され塵芥を捕捉するスクリーンと、各スクリーンの下流側に配置され膨張しスクリーンが配置された第1取水部、第2取水部を閉鎖可能な閉鎖手段と、を有し、1以上の取水口からの取水を継続し、他の取水口からの取水を停止することで、取水を継続しつつスクリーンに付着する塵芥を除去可能な取水設備に関する技術がある(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
また、関連する技術として、具体的には、たとえば、スクリーンの下流側の取水口の底部に、スクリーンの高さ方向中間部までの高さを有する障害物を、水の流れ方向に間隔をおいて撤去可能に設置し、スクリーンの略下半分を通過した水の流れを障害物に当てて、スクリーンの上流側に戻すことで、水の流れによってスクリーンの略下半分に浮遊物が付着するのを防止するスクリーンの構造に関する技術がある(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
また、関連する技術として、具体的には、たとえば、所定時間範囲における取水の平均水位を、理想水位に近づけるために、取水口ゲートの開度を調整する制御手段を用いて実行する際に、所定時間範囲を前時間帯と後時間帯とに分割する取水量の調整方法に関する技術がある(たとえば、下記特許文献3を参照。)。
特開2018-96088号公報 特開2016-135955号公報 特開2014-099991号公報
しかしながら、取水口ゲートを全閉にせずに、発電機トリップが発生しない所定の開度である、たとえば約10cmまでしか閉じなかった場合は、取水口スクリーンの十分な除塵ができない。すなわち、取水口ゲートを全閉しない状態では、塵芥が取水口スクリーンから完全に外れて流下せず、取水再開時に塵芥が再び取水口スクリーンへ付着してしまう。
これを解消するためには、取水口ゲートの開閉を頻繁に繰り返す必要があったが、取水口ゲートの開閉を頻繁に繰り返すことで、結果として、溢水が多く発生してしまうという問題点があった。
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、取水口スクリーンに付着した塵芥を取水口スクリーンから確実に除去して、流下させることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、塵芥の進入を防ぐ取水口スクリーンを通過した水の水力発電機への取水量を調整する取水口ゲートにおける開閉を制御する取水口ゲート制御方法であって、所定のタイミングで、前記取水口ゲートを全閉にして、前記取水口スクリーンに付着した塵芥を取り除く除塵制御をおこなうことを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記除塵制御が、前記取水口ゲートを所定の時間(以下「全閉時間」という)だけ全閉にすることを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記除塵制御が、前記全閉時間の長さを調整することを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記除塵制御が、前記取水口ゲートを所定の位置まで閉じる第1の制御と、前記第1の制御によって、前記取水口ゲートを前記所定の位置まで閉じた後、前記取水口ゲートを全閉するまで閉じる第2の制御と、を含み、前記第2の制御にかかる時間を所定の時間(以下「第2の制御時間」という)以上とすることを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記第2の制御時間が、サージングが沈静化する時間であることを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記第2の制御が、前記所定の位置から全閉までの距離を複数に分割し、分割された距離分だけ前記取水口ゲートを閉じる制御と、当該制御をおこなった後、所定の時間(以下「休止時間」という)だけ前記取水口ゲートを閉じるのを休止する制御とを、繰り返しておこなうことを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記所定の位置が、前記取水口ゲートを当該所定の位置まで閉じた状態において、前記水力発電機にトリップが発生しない位置であることを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記所定の位置から全閉までの距離を10分割以上に分割することを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記所定の位置が、取水口ゲートの開度が略10cmであることを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記分割された距離分が、略1cmであることを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記休止時間が、略5分間以上であることを特徴とする。
また、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、上記発明において、前記取水口スクリーンの上流と下流との水位差が所定値以上になった場合に、前記除塵制御を開始することを特徴とする。
この発明にかかる取水口ゲート制御方法によれば、取水口スクリーンに付着した塵芥を取水口スクリーンから確実に除去して、流下させることができる。
この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法における取水路の概要を示す説明図である。 この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法を実現する制御装置の機能的構成の一例を示す説明図である。 この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法の制御手順の一例を示すフローチャートである。 この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法の制御の内容の一例を示す説明図(その1)である。 この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法の制御の内容の一例を示す説明図(その2)である。 この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法の制御の内容の一例を示す説明図(その3)である。 この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法の制御の内容の一例を示す説明図(その4)である。 この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法の制御の内容の一例を示す説明図(その5)である。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる取水口ゲート制御方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
(取水路の概要)
図1は、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法における取水路の概要を示す説明図であり、取水路の断面図を示している。図1において、河川から流入した水を、水力発電機150へ供給する取水路100は、図1における左側の取水口から水を取り込んで、取り込んだ水を、右側にある水力発電機150へ供給する。
取水路100は、取水口ゲート101と、取水口スクリーン102と、を備える。取水口ゲート101は、開閉することによって、取水路100に取り込まれた水の水位や取水量を調節する。また、取水口スクリーン102は、取水路100の先端の取水口に設けられる。取水口スクリーン102は、図1に示す断面図において、所定の角度をもって斜めに配置される。
河川からの水は、取水口スクリーン102を介して、取水路100に取り込まれる。取水口スクリーン102は、たとえば、格子などが配置されており、塵芥が取水路100内に流入するのを防止することができる。塵芥は、具体的には、たとえば、木の枝やゴミ、流木などの浮遊物を含む。これらの塵芥は、水力発電機150に取り込まれることで、水力発電機150が重大な故障を招くことになるため、確実に取水路100への進入を防止する必要がある。
さらに、取水口スクリーン102の上側には、スクリーン天端103が設けられている。通常時の日中は、このスクリーン天端103の上に、図示を省略するバックホウなどの重機を移動させて、ショベルを用いて、取水口スクリーン102に付着した塵芥を除去する作業をおこなう。
しかし、河川の流入量が増加して、スクリーン天端103が水没した場合には、バックホウなどの重機は使用できないので、それに代わる、塵芥の除塵作業が必要となる。そこで、取水口ゲート101による取水量の調整をすることで、取水口スクリーン102に付着した塵芥を除去する。
また、図示は省略するが、取水口スクリーン102の下側には、排砂取水口ゲート101が設けられていてもよい。排砂取水口ゲート101は、取水口スクリーン102から剥がされた塵芥を流下させることができる。
(制御装置の機能的構成)
図2は、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法を実現する制御装置の機能的構成の一例を示す説明図である。図2において、取水口ゲート101を制御する制御装置200は、取水口ゲート101開閉制御部201と、水位差測定部202と、取水口ゲート101開度検知部203と、計時部(タイマー)204と、を備える構成となっている。
取水口ゲート101開閉制御部201は、取水口ゲート101の開閉を制御する。取水口ゲート101開閉制御部201は、具体的には、たとえば、取水口ゲート101を上下させる機構を備え、取水口ゲート101を上昇させることで、取水口ゲート101における開口部分を広げて、取水量を増加させることができる。反対に、取水口ゲート101開閉制御部201は、取水口ゲート101を降下させることで、取水口ゲート101における開口部分を狭めて、取水量を減少させることができる。
水位差測定部202は、取水口スクリーン102の上流側と下流側のそれぞれの水位を測定し、測定の結果に基づいて両者の水位差を算出し、その算出された水位差に関する情報を取水口ゲート101開閉制御部201へ送る。そして、取水口ゲート101開閉制御部201は、水位差測定部202から受け取った水位差に関する情報に基づいて、取水口スクリーン102の上流側と下流側の水位差が所定の値以上の場合に、除塵制御(取水口ゲート101の閉制御)を開始する。
たとえば、取水口スクリーン102の設計水位差が2.00mであれば、出水により取水口スクリーン102が水没した状態で塵芥が多量に付着した場合、設計水位差を超過し取水口スクリーン102が破損する虞れがあるため、上記所定の値は、設計水位差よりも少ない、1.50m程度であればよい。
取水口ゲート101開度検知部203は、取水口ゲート101の開度を検知して、その検知された開度に関する情報を取水口ゲート101開閉制御部201へ送る。そして、取水口ゲート101開閉制御部201は、取水口ゲート101開度検知部203によって検知された開度に関する情報に基づいて、所定の位置(開度約10cm)に達した場合には、一旦、取水口ゲート101の閉動作を停止する。ここまでの制御を「第1の制御」とする。
また、取水口ゲート101開閉制御部201は、その後、取水口ゲート101開度検知部203によって検知された開度に関する情報に基づいて、約1cm降下させた場合に、取水口ゲート101の閉動作を停止する。取水口ゲート101開閉制御部201は、取水口ゲート101が全閉となるまで、この動作を繰り返す。
計時部(タイマー)204は、時間を計時し、所定時間が経過した場合に、取水口ゲート101開閉制御部201へ伝える。計時部(タイマー)204は、取水口ゲート101を約1cm降下させてから、約5分間を計時し、約5分間が経過した際に、その旨を取水口ゲート101開閉制御部201へ伝える。
そして、取水口ゲート101開閉制御部201から伝えられる時間に基づいて、再び、取水口ゲート101を約1cm降下させる。計時部(タイマー)204と取水口ゲート101開閉制御部201は、取水口ゲート101が全閉となるまで、この動作を繰り返す。具体的には、10cmを1回に1cmずつ降下させるので、「1cmの降下処理」と「5分間の休止処理」の処理のセットを10回(正確には、「1cmの降下処理」を10回と、それらの間の「5分間の休止処理」を9回)繰り返す。ここまでの制御を「第2の制御」とする。
このように、除塵制御が、取水口ゲート101を所定の位置まで閉じる第1の制御と、第1の制御によって、取水口ゲート101を所定の位置まで閉じた後、取水口ゲート101を全閉するまで閉じる第2の制御と、を含み、第2の制御にかかる時間を所定の時間(約50分間)以上とする。これにより、第2の制御を、時間をかけて段階的に閉制御することで、水力発電機150のトリップの発生を防止することができる。
さらに、第2の制御が、所定の位置(開度約10cm)から全閉までの距離を複数(10回)に分割し、分割された距離(約1cm)分だけ取水口ゲート101を閉じる制御と、当該制御をおこなった後、所定の休止時間(約5分間)だけ取水口ゲート101を閉じるのを休止する制御とを、繰り返して(10回)おこなうので、これにより、応水停止によるサージングの発生を抑制することができる。なお、サージングについての詳細は後述する。
また、所定の位置(開度約10cm)が、取水口ゲート101を当該所定の位置まで閉じた状態において、水力発電機150にトリップが発生しない位置であり、当該所定の位置までは、水力発電機150のトリップの発生を考慮せずに通常どおりの取水口ゲート101の閉操作をすることができるので、除塵制御の全体時間を短縮することができる。
また、計時部(タイマー)204は、取水口ゲート101が全閉になってから、全閉継続時間(より具体的には約30分間、あるいは、10分間)、さらには、2回目加算時間(より具体的には約30分間、あるいは,約5分間)を計時し、それらの時間が経過した際に、その旨を取水口ゲート101開閉制御部201へ伝える。そして、取水口ゲート101開閉制御部201から伝えられる時間に基づいて、取水口ゲート101を上昇させる。
このように、除塵制御が、前記取水口ゲート101を所定の時間(「全閉継続時間」+「2回目加算時間」=「全閉時間」)だけ全閉にする。溢水を考慮すると、全閉時間は、短い方がよい。そこで、この全閉時間の長さを調整し、十分な除塵の効果が得られる最適な時間を模索することができる。それにより、溢水電力低減を防止しつつ、確実な除塵を実現することができる。
(取水口ゲート制御方法の制御手順)
図3は、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法の制御手順の一例を示すフローチャートである。
図3のフローチャートにおいて、まず、水位差が1.5m以上になったか否かを判断する(ステップS301)。ここで、水位差が1.5m以上になっていない場合(ステップS301:No)は、何もしない(たとえば、後述する図4に示す状態)。そして、たとえば、後述する図5に示す状態のように、水位差が1.5m以上になった場合(ステップS301:Yes)は、除塵制御、すなわち、取水口ゲート101の閉制御を開始する(ステップS302)。
そして、取水口ゲート101の閉制御を(通常の速度で)連続的におこない(ステップS303)、取水口ゲート101の開度が10cmになったか否かを判断する(ステップS304)。ここで、未だに取水口ゲート101の開度が10cmに達していない場合(ステップS304:No)は、ステップS303へ戻って、引き続き、取水口ゲート101の閉制御をおこなう。そして開度が10cmになった場合(ステップS304:Yes)は、ここで、取水口ゲート101の閉制御を一旦停止する(ステップS305)。ここまでが、「第1の制御」である(たとえば、後述する図6に示す状態)。
つぎに、取水口ゲート101を1cmだけ降下させ、取水口ゲート101の開度を-1cmとする(ステップS306)。そして、それにより、取水口ゲート101が全閉となったか否かを判断する(ステップS307)。ここで、取水口ゲート101が全閉となっていない場合(ステップS307:No)は、タイマー204をオンにし、時間を計時する(ステップS308)。
そして、タイマー204の計時が5分を経過したか否かを判断する(ステップS309)。ここで、5分を経過するのを待って(ステップS309:No)、5分が経過した場合(ステップS309:Yes)は、ステップS306へ移行する。そして、さらに、取水口ゲート101を1cmだけ降下させ、取水口ゲート101の開度を-1cmとする(ステップS306)。
開度が10cmで、1cmずつ降下するので、ステップS306~S309のステップを10回繰り返す。そして、それにより、取水口ゲート101が全閉となった場合(ステップS307:Yes)は、たとえば、後述する図7に示す状態となり、ここでも、タイマー204をオンにし、時間を計時する(ステップS310)。
そして、タイマー204の計時が全閉継続時間を経過したか否かを判断する(ステップS311)。ここでタイマー204が計時するのは、全閉継続時間であってもよく、また、2回目加算時間を加算した時間であってもよい。つぎに、全閉継続時間を経過するのを待って(ステップS311:No)、全閉継続時間が経過した場合(ステップS311:Yes)は、全閉状態から、取水口ゲート101の開制御をおこなう(ステップS312)。それが、たとえば、後述する図8に示す状態である。これにより、一連の処理を終了する。
(取水口ゲート101の制御の内容)
つぎに、取水口ゲート101の制御の内容を図4~図8を用いて説明する。図4~図8は、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法の制御の内容の一例を示す説明図である。
図4は、通常時における取水路100の状態を示している。図4において、取水口スクリーン102に塵芥が付着しておらず、塵芥が、取水口スクリーン102を追加する水の流れを阻害しないため、取水口スクリーン102の上流(河川)の水位と下流(取水路100)の水位とで、その水位差はほとんどない。この状態では、除塵制御をする必要はない。
図1においても説明したように、取水口ゲート101は、開度を調整することによって、取水口スクリーン102を通過した水の流入量(取水量)を調整する。調整された水量の水が取水口ゲート101を追加して、図4においては、記載を省略する水力発電機150へ送られる。
その後、時間経過とともに、河川の上流から流れてきた塵芥(ゴミや木の枝などの浮遊物)501が、取水口スクリーン102に付着する。図5は、スクリーンに塵芥501が付着している状況を示している。塵芥501が取水口スクリーン102に付着することによって、水流が取水口スクリーン102によって堰き止められる。そうすると、図5に示すように、取水口スクリーン102の上流(河川側)の水位と下流(取水路100側)の水位とで、水位差が発生する。
出水により取水口スクリーン102が水没した状態で塵芥501が多量に付着した場合に、設計水位差を超過して取水口スクリーン102が破損する虞れがある。また、下流(取水路100)の水位が下がることで、取水量が減少し、発電量の低下を招く虞れがある。したがって、設計水位差に達する前に、水位差を回復させ、塵芥501をスクリーンから離し、排砂取水口ゲート101から流下させる必要がある。
そこで、「第1の制御」として、取水口ゲート101を制御して、開度10cmに達するまで、閉動作がおこなわれるような制御(閉制御)をおこなう。図6は、閉制御をおこない、取水口ゲート101を開度10cmのところまで下げた(閉じた)状態を示している。すなわち、「第1の制御」が完了した状態を示している。
これにより、取水口スクリーン102の上流(河川側)の水位と下流(取水路100側)の水位との間で生じた水位差を回復させることができる。しかしながら、この状態では、図6にも示すように、未だに、取水口スクリーン102の上流(河川側)の水位と下流(取水路100側)の水位との間での水位差が完全に解消されず、水位差は未だに生じているため、塵芥501が取水口スクリーン102から十分に離れない。したがって、取水再開後に再付着してしまう。
すなわち、すぐに、図5に示した状態に戻ってしまうことになる。そして、その戻ってしまう状態を解消するために、何度も水位差運転を繰り返すことによって、その都度発電の応水停止により溢水が発生してしまう。したがって、取水口ゲート101を全閉しないと、水位差をなくすることはできず、十分な除塵処理とはいえない。
一方、取水口ゲート101を全閉してしまうと、発電機トリップが発生する。発電機トリップが発生すると、保護機能が働いて回路が遮断されてしまうため、発・変電課の現地対応が必要であり、水力発電システム全体に大きな影響が出る。
発明者らは、取水口ゲート101を全閉することによって応水停止後、導水路内においてサージングが発生し、水槽水位が増減していることを発見した。サージングとは、水槽で行き場を失った水が上流側へ逆流・流下を繰り返す現象である。よって、発明者らは、取水口ゲート101を全閉することによって応水停止した場合に、水が無くなったことが要因ではなく、取水口全閉までの時間が短いことが原因で、サージングにより一時的に水槽水位が低下し、発電機トリップが発生している可能性が高いことを突き止めた。
そして、検証の結果、速やかな取水口ゲート101の降下かつサージングによる水槽水位の低下を抑えるためには、取水口ゲート101の開度10cmから全閉までの間、すなわち「第2の制御」は、時間をかけて段階的に閉制御することが有効であると発明者らは考えた。
そこで、図6に示した状態から全閉までは、段階制御(「第2の制御」)をおこない、ゆっくりと取水口ゲート101を閉める。具体的には、取水口ゲート101の開度10cmから全閉までは、1cm降下して5分休止を繰り返す。したがって、取水口ゲート101の開度10cmから全閉までは、約50分かけて「第2の制御」をおこなう。
これにより、発電機トリップの発生を防いだ上で、取水口ゲート101の全閉を実現でき、それによって、取水口スクリーン102の除塵を確実におこなうことができるようになった。
図7は、取水口ゲート101を全閉した状態を示している。図7に示すように、取水口ゲート101を全閉し、所定時間(全閉継続時間)、全閉状態を維持することによって、水位差がなくなり、塵芥501がスクリーンから確実に除去されることになる。そのための、全閉継続時間は、具体的には30分程度である。また、その際、2回目加算時間として約30分を加算し、合計して全閉時間は、約60分とするようにしてもよい。
また、全閉継続時間は、具体的には10分程度である。また、その際、2回目加算時間として約5分を加算し、合計して全閉時間を、約15分とするようにしてもよい。この程度でも、塵芥501が取水口スクリーン102から十分に離れることが、実験でわかっている。
そして、全閉時間が経過した後、取水口ゲート101の開制御をおこない、取水口ゲート101を上昇させる。図8は、取水口ゲート101を開制御して、通常時に戻った状態を示している。塵芥501も十分に除去されている。したがって、取水口ゲート101の開閉制御を頻繁におこなわなくて済む。
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、塵芥501の進入を防ぐ取水口スクリーン102を通過した水の水力発電機150への取水量を調整する取水口ゲート101における開閉を制御するにあたり、所定のタイミングで、取水口ゲート101を全閉にして、取水口スクリーン102に付着した塵芥501を取り除く除塵制御をおこなう。
それによって、取水口スクリーン102の上流と下流との水位差をなくすることで、取水口スクリーン102に付着した塵芥501を取水口スクリーン102から確実に除去して、流下させることができる。また、除塵のための取水口ゲート101の制御回数を減らすことができ、結果として、溢水電力を低減させることができる。
また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、除塵制御が、前記取水口ゲート101を所定の時間(「全閉時間」)だけ全閉にする。また、この全閉時間の長さを調整するので、それにより、溢水電力低減を防止しつつ、確実な除塵を実現することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、除塵制御が、取水口ゲート101を所定の位置まで閉じる第1の制御と、第1の制御によって、取水口ゲート101を所定の位置まで閉じた後、取水口ゲート101を全閉するまで閉じる第2の制御と、を含み、第2の制御にかかる時間を所定の時間(「第2の制御時間」)以上とする。これにより、第2の制御を、時間をかけて段階的に(ゆっくりと)閉制御することで、水力発電機150のトリップの発生を防止することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、第2の制御時間が、サージングが沈静化する時間であってもよい。これにより、応水停止によるサージングを原因とする水力発電機150のトリップの発生を防止することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、第2の制御が、所定の位置から全閉までの距離を複数に分割し、分割された距離分だけ取水口ゲート101を閉じる制御と、当該制御をおこなった後、所定の時間(「休止時間」)だけ取水口ゲート101を閉じるのを休止する制御とを、繰り返しておこなうので、これにより、応水停止によるサージングの発生を抑制することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、所定の位置が、取水口ゲート101を当該所定の位置まで閉じた状態において、水力発電機150にトリップが発生しない位置であるので、これにより、当該所定の位置までは、水力発電機150のトリップの発生を考慮せずに通常どおりの取水口ゲート101の閉操作をすることができ、除塵制御の全体時間を短縮することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、所定の位置から全閉までの距離を10分割以上に分割する。また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、所定の位置が、取水口ゲート101の開度が略10cm程度である。また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、分割された距離分が、略1cmである。また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、休止時間が、略5分間以上である。このように、発明者らの検証の結果、取得した数値を用いることにより、水力発電機150のトリップの発生を確実に防止することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の取水口ゲート制御方法は、取水口スクリーン102の上流と下流との水位差が所定値以上になった場合に、除塵制御を開始するので、取水口スクリーン102への塵芥501の付着の状況に基づいて、効率的にかつ自動的に除塵制御を実行することができる。
以上のように、この発明にかかる取水口ゲート制御方法は、塵芥の進入を防ぐ取水口スクリーンを通過した水の水力発電機への取水量を調整する取水口ゲートにおける開閉を制御する取水口ゲート制御方法であり、特に、取水口スクリーンに付着した塵芥を取水口スクリーンから確実に除去して、流下させることができる取水口ゲート制御方法に適している。
100 取水路
101 取水口ゲート
102 取水口スクリーン
103 スクリーン天端
150 水力発電機
200 制御装置
201 取水口ゲート開閉制御部
202 水位差測定部
203 取水口ゲート開度検知部
204 計時部(タイマー)
501 塵芥

Claims (11)

  1. 塵芥の進入を防ぐ取水口スクリーンを通過した水の水力発電機への取水量を調整する取水口ゲートにおける開閉を制御する取水口ゲート制御方法であって、
    所定のタイミングで、前記取水口ゲートを全閉にして、前記取水口スクリーンに付着した塵芥を取り除く除塵制御が、
    前記取水口ゲートを所定の位置まで閉じる第1の制御と、
    前記第1の制御によって、前記取水口ゲートを前記所定の位置まで閉じた後、前記取水口ゲートを全閉するまで閉じる第2の制御と、
    を含み、
    前記第2の制御にかかる時間を所定の時間(以下「第2の制御時間」という)以上とすることを特徴とする取水口ゲート制御方法。
  2. 前記除塵制御は、前記取水口ゲートを所定の時間(以下「全閉時間」という)だけ全閉にすることを特徴とする請求項1に記載の取水口ゲート制御方法。
  3. 前記除塵制御は、前記全閉時間の長さを調整することを特徴とする請求項2に記載の取水口ゲート制御方法。
  4. 前記第2の制御時間は、サージングが沈静化する時間であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の取水口ゲート制御方法。
  5. 前記第2の制御は、前記所定の位置から全閉までの距離を複数に分割し、分割された距離分だけ前記取水口ゲートを閉じる制御と、当該制御をおこなった後、所定の時間(以下「休止時間」という)だけ前記取水口ゲートを閉じるのを休止する制御とを、繰り返しておこなうことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の取水口ゲート制御方法。
  6. 前記所定の位置から全閉までの距離を10分割以上に分割することを特徴とする請求項に記載の取水口ゲート制御方法。
  7. 前記分割された距離分は、略1cmであることを特徴とする請求項5または6に記載の取水口ゲート制御方法。
  8. 前記休止時間は、略5分間以上であることを特徴とする請求項5~7のいずれか一つに記載の取水口ゲート制御方法。
  9. 前記所定の位置は、前記取水口ゲートを当該所定の位置まで閉じた状態において、前記水力発電機にトリップが発生しない位置であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の取水口ゲート制御方法。
  10. 前記所定の位置は、取水口ゲートの開度が略10cmであることを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の取水口ゲート制御方法。
  11. 前記取水口スクリーンの上流と下流との水位差が所定値以上になった場合に、前記除塵制御を開始することを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載の取水口ゲート制御方法。

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