以下、添付図面を参照して、本願の開示する小便器装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<小便器装置の構成>
まず、実施形態に係る小便器装置の構成について図1~図4を参照して説明する。図1は、実施形態に係る小便器装置の構成を示すブロック図である。図2は、実施形態に係る小便器装置の斜視図である。図3は、実施形態に係る小便器装置の正面図である。図4は、図3におけるIV-IV線断面図である。
以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。また、以下では、X軸に沿った方向を「前後方向」と規定し、Y軸に沿った方向を「左右方向」と規定する。
図1に示すように、実施形態にかかる小便器装置1は、小便器本体2と、吐水装置3と、検知部4と、光投射装置5と、表示部6と、制御部7とを備える。
小便器本体2は、図2~図4に示すように、壁面Wに取り付けて使用される壁掛け式の小便器であり、たとえば陶器で形成される。小便器本体2は、壁面Wに当接する後端面(背面)から前端部にかけて左右幅が狭くなる形状を有しており、内側には小便を受けるボウル面21が形成される。
ボウル面21は、壁面Wと概ね平行に延びる正面部21aと、正面部21aの左右両側から、小便器本体2の前端部に向かって延びる側面部21bとを含む。側面部21bは、上端から下方に向けて幅が広くなる概ね三角形状に形成されている(図3参照)。ボウル面21は、その上部においては概ね平面状に構成され、下方にかけて前端部側にせり出すように湾曲して形成されている。また、ボウル面21の正面部21aは、両側の側面部21bと滑らかに連なるように湾曲している。
図4に示すように、ボウル面21の底部には、ボウル面21が受けた尿及び洗浄水を小便器本体2外に排出する排水口22が設けられる。小便器本体2には、排水口22と連通する排水管23が設けられ、排水管23は、外部に位置する排水配管(図示せず)に接続される。排水口22には、複数の開口部が形成された目皿24が載置される。
吐水装置3は、ボウル面21に洗浄水を吐出する。吐水装置3は、ボウル面21の上部に設けられるスプレッダ31と、スプレッダ31の下部に設けられた吐水口32(図4参照)と、給水源から供給される洗浄水を吐水口32に導く給水管33と、給水管33を開閉する電磁弁(図示せず)とを備える。吐水口32は、スプレッダ31の取付面に沿って延びる薄型の開口であり、下方に向けて扇形に広がるように構成されている。これにより、図1の矢印Fに示すように、吐水装置3から吐出される洗浄水は、ボウル面21の正面部21aに沿って下方に広がるように流れ、その一部は、ボウル面21の側面部21bに設けられた導水棚21cに載せられ、小便器本体2の前端部まで導かれる。吐水装置3の電磁弁は、制御部7と電気的に接続されており、制御部7からの指令に基づいて開閉する。
検知部4は、たとえばマイクロ波センサであり、マイクロ波を用いて使用者を検知する。検知部4は、たとえば小便器本体2の背面に設けられる。検知部4は、小便器本体2の正面視において吐水装置3の側方に位置決めされており、斜め下方に向けてマイクロ波を発信する。マイクロ波は、小便器本体2の背面側からボウル面21を透過して小便器本体2の前方へ発信され、検知部4は、使用者に当たって反射したマイクロ波を受信することで使用者を検知する。また、検知部4は、使用者の有無だけでなく、たとえば、発信したマイクロ波と受信したマイクロ波との周波数のずれや、受信したマイクロ波の強度変化に基づき、「使用者が接近している」、「使用者が遠ざかっている」などの使用者の動きを検知することもできる。検知部4は、制御部7と電気的に接続されており、検知結果を制御部7へ出力する。
光投射装置5は、スプレッダ31に内蔵される。光投射装置5は、たとえばLED(Light Emitting Diode)等の発光ダイオードを備えており、発光ダイオードにより発光した光をボウル面21に投射することにより、ボウル面21にターゲットマークMを表示する。ターゲットマークMは、使用者が小便を当てるべき位置を示す像である。図2では、ターゲットマークMが円形である場合の例を示しているが、ターゲットマークMの形状は円形に限定されない。光投射装置5は、制御部7と電気的に接続されており、制御部7からの指令に基づいて発光する。
表示部6は、光投射装置5と同様にスプレッダ31に内蔵される。表示部6は、たとえばLED等の発光ダイオードを備えており、発光ダイオードにより発光した光をスプレッダ31を介してスプレッダ31の前方に向けて投射することで、小便器本体2の状態を使用者に報知する。表示部6は、制御部7と電気的に接続されており、制御部7からの指令に基づいて発光する。
制御部7は、たとえば、マイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路、及びこれらを作動させるプログラム等を含んで構成される。制御部7は、吐水装置3、検知部4、光投射装置5および表示部6と電気的に接続されており、検知部4の検知結果に基づき、吐水装置3、光投射装置5および表示部6を制御する。
たとえば、制御部7は、検知部4の検知結果に基づいて使用者が存在すると判定した場合に、スプレッダ31に内蔵された光投射装置5に電力を供給して光投射装置5の発光ダイオードを発光させる。これにより、ボウル面21における小便を当てるべき位置にターゲットマークMが表示される。
ここで、ボウル面21は、凹凸が少なく滑らかであり、また、光を反射し易い白色で形成されることが多い。このため、光投射装置5から投射された光がボウル面21で反射することで、小便を当てるべき位置以外の位置にも像が映し出されるおそれがある。
図5は、小便を当てるべき位置以外の場所に像が映し出される様子の一例を示す図である。上述したように、ボウル面21は、その上部においては概ね平面状に構成され、下方にかけて前端部側(使用者が立つ側)にせり出すように湾曲して形成されている。また、ターゲットマークMは、ボウル面21のうち前端部側にせり出すように湾曲した部分に表示される。このため、図5に示すように、ターゲットマークMが表示される位置(小便を当てるべき位置)から反射した光が、当該位置の上方に位置するボウル面21の部分に当たることによって、ターゲットマークMの上方に反射による像MR1が映し出されるおそれがある。
また、上述したように、ボウル面21は、正面部21aが両側の側面部21bと滑らかに連なるように湾曲している。このため、ターゲットマークMが表示される位置から反射した光が、当該位置の両側方に位置するボウル面21の部分に当たることによって、ターゲットマークMの両側方にも反射による像MR2が映し出されるおそれがある。
このように、小便を当てるべき位置以外の位置に像MR1,MR2が映し出されると、使用者は、小便を当てるべき位置を適切に認識することができないおそれがある。
そこで、制御部7は、光投射装置5からボウル面21に光が投射される期間の少なくとも一部の期間と重複して吐水装置3からボウル面21に洗浄水を吐出する反射抑制処理を行うこととした。
吐水装置3は、少なくともターゲットマークMが表示される位置すなわち小便を当てるべき位置に洗浄水が付着するように洗浄水を吐出する。ターゲットマークMが表示される位置に洗浄水を付着させることで、ターゲットマークMが表示される位置から反射する光を洗浄水によって乱反射させることができる。これにより、小便を当てるべき位置以外の位置に像MR1,MR2が映し出されることを抑制することができる。
また、吐水装置3は、像MR1,MR2が映し出される位置にも洗浄水が付着するように洗浄水を吐出する。像MR1,MR2が映し出される位置に洗浄水が付着することで、かかる位置においても光を乱反射させることができるため、これによっても、小便を当てるべき位置以外の位置に像MR1,MR2が映し出されることを抑制することができる。
このように、吐水装置3は、使用者が小便を当てるべき位置と、使用者が小便を当てるべき位置から反射したターゲットマークMの像MR1,MR2が映し出される位置とを含む領域に洗浄水を吐出する。これにより、小便を当てるべき位置以外の位置に像MR1,MR2が映し出されることをより確実に抑制することができる。
<小便器装置の具体的動作>
次に、上述した小便器装置1の具体的動作について図6を参照して説明する。図6は、吐水装置3および光投射装置5の制御タイミングを示すタイミングチャートである。
図6に示すように、制御部7は、検知部4による使用者の検知状態が「非検知」(使用者を検知していない状態)から「検知」(使用者を検知している状態)に切り替わった場合に、光投射装置5に電力を供給して光投射装置5の発光ダイオードを発光させる。これにより、光投射装置5がOFF状態からON状態となり、ボウル面21における小便を当てるべき位置にターゲットマークMが表示される。なお、ここでいう「検知部が使用者を検知していない状態」とは、検知部4による検知によって制御部7が小便器本体2から所定範囲内に使用者がいないと判定した場合を含む。
その後、制御部7は、検知部4が使用者を検知し続けている時間が所定時間(たとえば、1~2秒)以上となった場合に、吐水装置3の電磁弁を開いて、吐水装置3を止水状態から吐水状態に切り替える。これにより、ボウル面21に洗浄水が吐出されることで、ターゲットマークMの反射が抑制される。
このように、制御部7は、光投射装置5からボウル面21への光の投射が開始された後で、吐水装置3からボウル面21への吐水を開始させる。これにより、光投射装置5のボウル面21への光の投射が開始された直後においては、ターゲットマークMの反射が抑制されず、像MR1,MR2(図5参照)がボウル面21に映し出されることで、使用者にターゲットマークMの存在を気付かせ易くすることができる。その後、反射抑制処理が開始されてターゲットマークMの反射が抑制されることで、像MR1,MR2が消えるため、使用者にターゲットマークMの位置を正しく認識させることができる。
ところで、制御部7は、たとえば検知部4によって受信されたマイクロ波の強度から、使用者と小便器装置1との距離を算出することができる。また、制御部7は、たとえば検知部4によって受信されたマイクロ波の強度変化から、使用者の小便器装置1への接近速度を算出することができる。そこで、制御部7は、検知部4の検知結果を用いて算出される小便器本体2から使用者までの距離、または、使用者の小便器本体2への接近速度が閾値以下であると判定した場合に、光投射装置5からボウル面21への光の投射および吐水装置3からボウル面21への吐水を開始させてもよい。このようにすることで、小便器装置1の前を横切っただけの人に反応してターゲットマークMが表示されたり、吐水が開始されたりすることを抑制することができる。したがって、無駄水の発生を抑制することができる。また、小便器装置1が故障していると勘違いされることを抑制することもできる。さらに、使用者が小便器装置1に十分に接近して小便器装置1の前で立ち止まったとき、すなわち、使用者が用を足す位置に到達したときにターゲットマークMが表示されるようになることから、ターゲットマークMを適切なタイミングで表示させることができる。
また、小便器装置1の前を人が横切っただけでも、横切る人の位置や移動速度等によっては、小便器本体2から使用者までの距離、または、使用者の小便器本体2への接近速度が閾値以下であると判定されるおそれがある。そこで、制御部7は、まず、小便器本体2から使用者までの距離、または、使用者の小便器本体2への接近速度が閾値以下であると判定した場合に、光投射装置5からボウル面21への光の投射を開始させる。そして、制御部7は、その後、小便器本体2から使用者までの距離、または、使用者の小便器本体2への接近速度が閾値以下であると判定した状態が所定時間以上継続した場合に、吐水装置3からボウル面21への吐水を開始させてもよい。このようにすることで、無駄水の発生や小便器装置1が故障していると勘違いされることをより確実に抑制することができる。また、小便器装置1の前を横切っただけの人に反応して光投射装置5からの光の投射が開始されることを抑制することができる。
なお、上述した反射抑制処理における吐水装置3からボウル面21への吐水は、光投射装置5からボウル面21に光が投射される期間の少なくとも一部の期間と重複して行われればよい。したがって、制御部7は、たとえば、吐水装置3からボウル面21への吐水を開始させ、その後、光投射装置5からボウル面21への光の投射を行ってもよい。
また、ここでは、光投射装置5からボウル面21への光の投射タイミングと、吐水装置3からボウル面21への吐水タイミングとを1つの検知部4を用いて決定することとしたが、制御部7は、投射タイミングおよび吐水タイミングをそれぞれ異なる検知部を用いて決定してもよい。また、反射抑制処理における吐水装置3からボウル面21への吐水タイミングは、検知部4による検知結果に限らず、たとえば、光投射装置5からボウル面21への光の投射を開始してからの経過時間により決定してもよい。その他、反射抑制処理における吐水装置3からボウル面21への吐水タイミングは、光投射装置5からボウル面21へ光が投射される期間と重複するタイミングであればよく、吐水開始の条件は上述した例に限定されない。
反射抑制処理において、制御部7は、吐水装置3からボウル面21への洗浄水の吐出を開始してから予め設定された時間T1が経過した場合に、吐水装置3の電磁弁を閉じることにより、吐水装置3からボウル面21への洗浄水の吐出を停止させる。
その後、使用者が用を足し終え、小便器装置1から離れると、検知部4による使用者の検知状態は、「検知」から「非検知」に切り替わる。制御部7は、検知部4による使用者の検知状態が「検知」から「非検知」に切り替わった場合に、光投射装置5からボウル面21への光の投射を停止させる。また、制御部7は、吐水装置3の電磁弁を開くことにより、吐水装置3からボウル面21への洗浄水の吐出を開始させる(使用後洗浄処理)。
使用後洗浄処理において、制御部7は、吐水装置3からボウル面21への洗浄水の吐出を開始してから予め設定された時間T2(>時間T1)が経過した場合に、吐水装置3の電磁弁を閉じることにより、吐水装置3からボウル面21への洗浄水の吐出を停止させる。このように、制御部7は、反射抑制処理において、使用後洗浄処理において使用する洗浄水の量よりも少ない量の洗浄水を吐水装置3からボウル面21に吐出させる。これにより、洗浄水の使用量を抑えることができる。
図7は、小便器装置1による一連の処理手順を示すフローチャートである。図7に示すように、制御部7は、検知部4により使用者が検知されたか否かを判定する(ステップS101)。この処理は、検知部4により使用者が検知されるまで繰り返される(ステップS101,No)。
ステップS101において、検知部4により使用者が検知されたと判定すると(ステップS101,Yes)、制御部7は、光投射装置5からボウル面21への光の投射を開始させる。これにより、ボウル面21にターゲットマークMが表示される。
つづいて、制御部7は、検知部4により使用者が検知されている時間が所定時間以上となったか否かを判定する(ステップS103)。すなわち、制御部7は、検知部4により使用者が検知された状態が所定時間以上継続したか否かを判定する。ステップS103において、検知部4により使用者が検知されている時間が所定時間以上となった場合(ステップS103,Yes)、制御部7は、反射抑制処理を行う(ステップS104)。反射抑制処理において、制御部7は、吐水装置3の電磁弁を予め設定された時間T1だけ開くことにより、吐水装置3からボウル面21に洗浄水を吐出させる。これにより、小便を当てるべき位置以外の位置に像MR1,MR2が映し出されることを抑制することができる。
つづいて、制御部7は、検知部4により使用者が検知されなくなったか否かを判定する(ステップS105)。制御部7は、検知部4により使用者が検知されなくなるまでステップS105の処理を繰り返す。
ステップS105において、検知部4により使用者が検知されなくなった場合(ステップS105,No)、すなわち、使用者が用を足し終えて小便器装置1から離れた場合、制御部7は、光投射装置5からボウル面21への光の投射を終了する(ステップS106)。また、制御部7は、使用後洗浄処理を開始する(ステップS107)。使用後洗浄処理において、制御部7は、吐水装置3の電磁弁を予め設定された時間T2だけ開くことにより、吐水装置3からボウル面21に洗浄水を吐出させる。これにより、ボウル面21が洗浄される。使用後洗浄処理を終えると、小便器装置1は、一連の洗浄動作を終える。
また、ステップS103において、検知部4により使用者が検知されている時間が所定時間未満である場合(ステップS103,No)、制御部7は、検知部4により使用者が検知されなくなったか否かを判定する(ステップS108)。そして、ステップS108において、検知部4により使用者が検知されなくなったと判定した場合(ステップS108,Yes)、制御部7は、処理をステップS106に移行する。すなわち、反射抑制処理を行うことなく、光投射装置5からボウル面21への光の投射を終了する。一方、ステップS108において、検知部4により使用者が検知され続けている場合(ステップS108,No)、制御部7は、処理をステップS103に戻す。
なお、ここでは、検知部4により使用者が検知されなくなった場合に、光投射装置5からボウル面21への光の投射を終了することとしたが、制御部7は、使用者が小便器装置1から離れる前に光投射装置5からボウル面21への光の投射を終了してもよい。
<光投射装置5および表示部6の具体的構成>
次に、上述した光投射装置5および表示部6の具体的な構成について図8を参照して説明する。図8は、光投射装置5および表示部6の斜視図である。
図4に示すように、光投射装置5および表示部6は、スプレッダ31に内蔵される。表示部6は、スプレッダ31の上部に配置され、光投射装置5は、表示部6の下方に配置される。
表示部6は、回路基板61と、回路基板61に設けられた発光ダイオード62と、回路基板61を保持する保持部63とを備える。発光ダイオード62は、スプレッダ31の前面パネル311(図10参照)に設けられた窓部311a(図10参照)を介してスプレッダ31の前方に光を投射する。保持部63は、回路基板61の周囲を囲むように形成され、スプレッダ31の前面パネル311に向かって延在することで、前面パネル311との間に区画された空間を形成している。この空間には、ポッティング材が充填される。これにより、表示部6の回路基板61の防水性を向上させることができる。
光投射装置5は、本体部51と、本体部51の角度を調整するための調整ネジ52および軸受け部材53を備える。本体部51は、光源である発光ダイオードや発光ダイオードにより発光した光を拡大させるレンズ等を含んで構成される。本体部51の具体的な構成については後述する。
調整ネジ52は、軸受け部材53の下面から上方に向かって延びるネジ穴に挿通される。また、調整ネジ52の頭部(下端部)は、スプレッダ31の内部に設けられる図示しない保持部によって回転可能に保持される。
軸受け部材53は、本体部51側の側面に、上記ネジ穴に対して傾斜した方向に延在する溝部(図示せず)を備えており、かかる溝部には、本体部51の側面から軸受け部材53に向けて突出する凸部51aが嵌まり込んでいる。軸受け部材53は、表示部6の保持部63に一体的に形成されたガイド部631によって上下動可能に支持される。
図示しない保持部材によって調整ネジ52の頭部が保持されているため、調整ネジ52を回転させると、軸受け部材53が保持部63に設けられたガイド部に沿って上下動する。そして、軸受け部材53が上下動することで、軸受け部材53の溝部に嵌まり込んだ凸部51aが溝部に押されて前方または後方へ移動する。凸部51aが前方または後方へ移動すると、本体部51が回転軸51bを中心に揺動する。これにより、光投射装置5からの光の投射位置すなわちターゲットマークMの表示位置を調整することができる。なお、光投射装置5は、本体部51の両側部に2つの回転軸51bを有しており、2つの回転軸51bは、表示部6の保持部63に一体的に形成された軸支部632に軸支される。
ここで、スプレッダ31の前後方向における厚みが大きいと、たとえば、使用者の視界がスプレッダ31によって遮られることで、使用者がターゲットマークMを適切に認識することが困難となるおそれがある。このため、スプレッダ31はできるだけ薄く形成されることが望ましい。
また、光投射装置5から投射される光は、ボウル面21の湾曲した部分に投射されるため、単純に光を投射しただけでは、ターゲットマークMの形状が歪になってしまうおそれがある。
そこで、実施形態に係る光投射装置5では、スプレッダ31の厚みを抑えるための工夫や、ターゲットマークMが所望の形状にて表示されるようにするための工夫がなされている。この点について図9および図10を参照して説明する。図9は、光投射装置5の本体部51の分解斜視図である。図10は、図4に示すH部の拡大図である。
図9に示すように、光投射装置5の本体部51は、発光ダイオード511が設けられた回路基板501と、第1レンズ502と、絞り材503と、ケース本体504と、マスク材505と、第2レンズ506と、第3レンズ507と、シール材508と、保護材509と、キャップ510とを備える。
回路基板501、第1レンズ502、絞り材503、マスク材505、第2レンズ506および第3レンズ507は、上方から下方にかけてこの順番でケース本体504に配置される。また、シール材508および保護材509は、ケース本体504の下部開口にこの順番で取り付けられる。そして、キャップ510は、シール材508および保護材509が取り付けられたケース本体504の下部に取り付けられる。
第1レンズ502は、発光ダイオード511により発光した光を直進させるように束ねる集光レンズとして機能する。光源である発光ダイオード511の近傍に第1レンズ502を配置することで、発光ダイオード511により発光した光の利用効率を高めることができる。
絞り材503は、板状の部材であり、第1レンズ502を通過した光を部分的に遮る開口531を有する。
絞り材503に設けられる開口531の形状は、ターゲットマークMの形状およびターゲットマークMが表示される表示面の形状に応じて決定される。たとえば、ボウル面21に表示させたいターゲットマークMの形状が真円である場合、ターゲットマークMが表示される表示面は湾曲しているため(図4参照)、開口531の形状を真円とすると、表示面に表示されるターゲットマークMの形状は、縦長の楕円状に延びてしまう。そこで、絞り材503の開口531は、横長の楕円状に形成される。これにより、真円状のターゲットマークMを表示面に表示させることができる。
このように、光投射装置5は、湾曲した表示面に表示されるターゲットマークMの形状が所望の形状となるように、第1レンズ502を通過した光の形状を絞り材503により整えることとした。具体的には、ターゲットマークMの所望の形状が真円状である場合に、絞り材503の開口531の形状を横長の楕円形状とすることで、横長の楕円形状の光を湾曲した表示面に投射することとした。これにより、湾曲した表示面に対してターゲットマークMを表示させる場合であっても、ターゲットマークMの形状が歪になることを抑制することができる。
ケース本体504は、上方および下方の両端が開口した筒状の部材である。具体的には、ケース本体504は、前後方向(X軸方向)の厚みが小さい扁平な角筒状に形成される。
図10に示すように、ケース本体504の内部には、上方から下方に向けて拡径する導光路541が形成されており、この導光路541を介してケース本体504の上部空間と下部空間とが連通している。ケース本体504の上部空間には、回路基板501、第1レンズ502および絞り材503が収められ、下部空間には、マスク材505、第2レンズ506および第3レンズ507が収められる。導光路541の上端側の開口は、絞り材503の開口531よりも大きい。
ケース本体504の上部空間には、ポッティング材が充填される。これにより、表示部6の回路基板61の防水性を向上させることができる。光投射装置5に用いられるポッティング材および表示部6に用いられるポッティング材としては、たとえば黒色等の不透明なものが用いられることが好ましい。不透明なポッティング材を用いることで、光投射装置5および表示部6から投射される光が意図しない場所から漏れ出ることを好適に抑制することができる。
マスク材505は、薄板状(シート状)の部材であり、導光路541の下端部と第2レンズ506との間に挟み込まれる。マスク材505の中央部には、絞り材503の開口531よりも大きい開口551が形成される。なお、マスク材505の開口551は、導光路541の上端側の開口よりも小さい。実施形態に係る光投射装置5によれば、マスク材505および導光路541を備えることで、フレアなどの不要な光を削減することができる。また、導光路541の上端側の開口を第2レンズ506の入光側と同等にして、レンズ外からの光を抑制している。したがって、ターゲットマークMの輪郭を明確にすることができる。
なお、マスク材505としては、本実施形態のように別部材でなく塗装されることとしてもよい。また、光を透過し難いレンズ支持材でも代用が可能である。
第2レンズ506および第3レンズ507は、ターゲットマークMを適切な位置に適切な大きさで表示するために設けられる。第3レンズ507は、ターゲットマークMが表示される位置で焦点が合うように第2レンズ506との距離を調整して配置される。
ここで、第3レンズ507のサイズに合わせてケース本体504を形成しようとすると、ケース本体504の前後幅が大きくなり、ケース本体504を収容するスプレッダ31の前後幅が大きくなる、つまり、スプレッダ31の厚みが増すおそれがある。そこで、実施形態に係る光投射装置5では、第3レンズ507の大きさに合わせてケース本体504を形成するのではなく、ケース本体504の下部空間の前後幅に合わせて、第3レンズ507の前端部571aおよび後端部571bをカットすることとした。
このように、実施形態に係る光投射装置5において、絞り材503を通過した光を拡大させる第3レンズ507を備えており、この第3レンズ507は、ケース本体504の厚み方向における両端部が切り欠かれた形状を有している。第3レンズ507の端部(前端部571aおよび後端部571b)をカットすることでターゲットマークMの明るさが減衰するが、本実施形態では、絞り材503の開口531の形状により横長の投射光となっており、また光を拡大させるように構成し、投射しているため、カットされた端部を通過する光の明るさへの影響は少ない。このような形状とすることで、スプレッダ31の厚みを抑えることができる。なお、ここでは、ケース本体504の厚み方向における両端部を切り欠くこととしたが、第3レンズ507は、ケース本体504の厚み方向における両端部のうち一方の端部を切り欠いた形状であってもよい。
絞り材503を通過した光は、第2レンズ506および第3レンズ507によって所定の広がり角度で拡大される。具体的には、絞り材503を通過した光は、ケース本体504の前後幅よりも大きくなるように拡大される。このように、実施形態に係る光投射装置5によれば、ケース本体504を薄型に形成しつつ、ターゲットマークMの大きさが小さくなることを抑制することができる。
ここでは、絞り材503を通過した光を第2レンズ506および第3レンズ507の2枚のレンズを用いて拡大させる場合の例を示した。これに限らず、たとえばターゲットマークMの明るさが十分に確保できる場合には、1枚のレンズでターゲットマークMの大きさを調整することも可能である。
シール材508は、枠状の部材であり、ケース本体504の下端部および後述する保護材509の上面外周部に配置されることで、ケース本体504の下部空間に水や埃等が入り込むことを防止することができる。
保護材509は、板状の透明部材であり、シール材508を介してケース本体504の下部開口に取り付けられることにより、ケース本体504の下部空間を塞ぐ。保護材509を設けることで、第3レンズ507を保護することができる。
キャップ510は、ケース本体504の下端部を覆うようにケース本体504に取り付けられる。シール材508および保護材509は、キャップ510によりケース本体504の下端部に押しつけられることで、ケース本体504に固定される。
図10に示すように、光投射装置5の下端部は、スプレッダ31の下部に設けられた光投射用の開口よりも上方に位置する。これにより、たとえば、使用者がスプレッダ31の清掃を行った際に、本体部51の保護材509に触れることによって保護材509が汚れたり傷ついたりすることを抑制することができる。
<変形例>
上述した実施形態では、反射抑制処理において、流水状の洗浄水をボウル面21に吐出する場合の例について説明したが、反射抑制処理においては、少なくともボウル面21に洗浄水が付着すればよく、必ずしも洗浄水が流れていることを要しない。したがって、反射抑制処理において、吐水装置3は、霧状あるいはシャワー状の洗浄水をボウル面21に吐出してもよい。この場合、吐水装置3は、使用後洗浄処理において流水状の洗浄水を吐出する第1吐出口と、この第1吐出口とは別に、反射抑制処理において霧状あるいはシャワー状の洗浄水を吐出する第2吐出口とを備える構成であってもよい。
上述してきたように、実施形態に係る小便器装置1は、小便器本体2と、吐水装置3と、検知部4と、光投射装置5と、制御部7とを備える。小便器本体2は、小便を受けるボウル面21を備える。吐水装置3は、ボウル面21に洗浄水を吐出する。検知部4は、使用者を検知する。光投射装置5は、ボウル面21に光を投射することにより、使用者が小便を当てるべき位置を示すターゲットマークMをボウル面21に表示する。制御部7は、吐水装置3を制御する。また、制御部7は、検知部4が使用者を検知している状態から使用者を検知していない状態になった場合に、吐水装置3から洗浄水を吐出させる使用後洗浄処理と、検知部4が使用者を検知している状態において、光投射装置5からボウル面21に光が投射される期間の少なくとも一部の期間と重複して吐水装置3からボウル面21に洗浄水を吐出させる反射抑制処理とを有する。
光投射装置5からボウル面21に光が投射される期間の少なくとも一部の期間と重複して吐水装置3からボウル面21に洗浄水を吐出させることで、光投射装置5から投射された光のボウル面21での反射を抑えることができる。これにより、小便を当てるべき位置以外の位置に像MR1,MR2が映し出されることが抑制される。したがって、光投射装置5から投射される光を用いて小便を当てるべき位置を使用者に適切に認識させることができる。
光投射装置5は、検知部4が使用者を検知した場合に、ボウル面21への光の投射を開始するようにしてもよい。この場合、制御部7は、光投射装置5からボウル面21への光の投射が開始された後で、反射抑制処理を開始してもよい。
これにより、光投射装置5のボウル面21への光の投射が開始された直後においては、ターゲットマークMの反射が抑制されず、像MR1,MR2がボウル面21に映し出されることで、使用者にターゲットマークMの存在を気付かせ易くすることができる。その後、反射抑制処理が開始されてターゲットマークMの反射が抑制されることで、像MR1,MR2が消えるため、使用者にターゲットマークMの位置を正しく認識させることができる。
制御部7は、検知部4による使用者の検知結果に基づき、小便器本体2から使用者までの距離、または、使用者の小便器本体2への接近速度が閾値以下のときに、反射抑制処理を開始してもよい。
これにより、小便器装置1の前を横切っただけの人に反応して吐水が開始されたりすることを抑制することができる。すなわち、無駄水の発生を抑制することができる。また、使用者が小便器装置1に十分に接近して用を足す位置に到達したときにターゲットマークMが表示されるようになることから、ターゲットマークMを適切なタイミングで表示させることができる。
制御部7は、検知部4による使用者の検知結果に基づき、小便器本体2から使用者までの距離、または、使用者の小便器本体2への接近速度が閾値以下であると判定した場合に、光投射装置5からボウル面21への光の投射を開始させ、使用者までの距離、または、使用者の小便器本体への接近速度が閾値以下であると判定した状態が所定時間以上継続した場合に、反射抑制処理を開始してもよい。
小便器装置1の前を人が横切っただけでも、横切る人の位置や移動速度等によっては、小便器本体2から使用者までの距離、または、使用者の小便器本体2への接近速度が閾値以下であると判定されるおそれがある。これに対し、小便器本体2から使用者までの距離、または、使用者の小便器本体2への接近速度が閾値以下であると判定された状態が所定時間以上継続した場合に、吐水装置3からボウル面21への吐水を開始させることで、無駄水の発生をより確実に抑制することができる。
また、小便器装置1の前を横切っただけの人に反応して光投射装置5からの光の投射が開始されたりすることを抑制することができる。
制御部7は、反射抑制処理において、使用後洗浄処理において使用する洗浄水の量よりも少ない量の洗浄水を吐水装置3からボウル面21に吐出させてもよい。これにより、洗浄水の使用量を抑えることができる。
吐水装置3は、反射抑制処理において、使用者が小便を当てるべき位置と、反射抑制処理を行わないと仮定した場合に使用者が小便を当てるべき位置から反射したターゲットマークMが映し出される位置とを含む領域に洗浄水を吐出してもよい。
ターゲットマークMが表示される位置に洗浄水を付着させることで、ターゲットマークMが表示される位置から反射する光を洗浄水によって乱反射させることができる。これにより、小便を当てるべき位置以外の位置に像MR1,MR2が映し出されることを抑制することができる。また、像MR1,MR2が映し出される位置に洗浄水が付着することで、かかる位置においても光を乱反射させることができる。したがって、これによっても、小便を当てるべき位置以外の位置に像MR1,MR2が映し出されることを抑制することができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。