以下、シリンダヘッドの一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、シリンダヘッド10は、図示しないシリンダブロックの上面に固定されるシリンダヘッド本体20と、当該シリンダヘッド本体20の上面に固定されるカムシャフトハウジング40とを備えている。カムシャフトハウジング40の内部には、シリンダヘッド本体20に取り付けられる図示しない吸気弁や排気弁を開閉駆動するためのカムシャフト100が収納されている。このカムシャフト100は、クランクシャフトの回転に連動して回転する。なお、図1では、カムシャフト100を2点鎖線で概略的に示している。また、図示は省略するが、カムシャフトハウジング40の上側には、四角形箱型のシリンダヘッドカバーが固定される。シリンダヘッドカバーは下側に開放されている。
図1及び図3に示すように、カムシャフト100は、管状のシャフト本体102を備えている。また、カムシャフト100には、シャフト本体102の軸線方向に等間隔で配置された3組のカムピース対104が固定されている。カムピース対104は、2つの略楕円形板状のカムピース106が厚み方向に対向して配置された構成となっている。3組のカムピース対104は、その各々のカムピース106が厚み方向にシャフト本体102で貫通されている。各カムピース106は、シャフト本体102の回転運動を、直線運動に変換して排気弁や吸気弁に伝達する。なお、カムシャフト100は2本あり、互いに平行に延びている。一方のカムシャフト100は、吸気弁を動作させるための吸気用カムシャフト100Aである。他方のカムシャフト100は、排気弁を動作させるための排気用カムシャフト100Bである。
図1に示すように、シリンダヘッド本体20は、全体として、直方体形状の外形になっている。シリンダヘッド本体20の下面からは上側に向かって3つの燃焼室22が窪んでいる。各燃焼室22は、平面視で円形状になっている。各燃焼室22は、シリンダヘッド本体20の長手方向(カムシャフト100の軸線方向)に等間隔で並んでいるとともに、シリンダヘッド本体20の短手方向の中央に位置している。シリンダヘッド本体20をシリンダブロックに取り付けた状態では、シリンダヘッド本体20の燃焼室22がシリンダブロック内に区画された気筒と対向して配置される。なお、図1では、燃焼室22の開口を破線で図示している。
シリンダヘッド本体20の4つの側面のうち、当該シリンダヘッド本体20の長手方向に沿って延びる側面の1つからは、略四角筒状の吸気ポート23が3つ突出している。各吸気ポート23は、シリンダヘッド本体20の長手方向に等間隔で並んでいる。吸気ポート23の内部空間は、シリンダヘッド本体20の下側に区画されている燃焼室22にまで延びている。この吸気ポート23を介して、燃焼室22内(シリンダブロックの気筒内)に外気が供給される。なお、シリンダヘッド本体20の4つの側面のうち、吸気ポート23が設けられている側面とは反対側の側面からは、上記吸気ポート23と同様の形状の排気ポートが突出している。この排気ポートを介して、燃焼室22内(シリンダブロックの気筒内)からの排気が排出される。
シリンダヘッド本体20の上面においては、上面視で四角形状に凹部24が窪んでいる。その結果として、シリンダヘッド本体20の上側の部分は、長手方向に延びる一対の長壁部24aと短手方向に延びる一対の短壁部24bとを備えた四角形枠状になっている。長壁部24aと短壁部24bの上端面は、シリンダヘッド本体20の上端面21を構成している。凹部24の内部においては、シリンダヘッド本体20の長手方向に取付構造部25が延びている。取付構造部25は、一方の短壁部24bの内面から他方の短壁部24bの内面まで長手方向に延びている。また、取付構造部25は、シリンダヘッド本体20の短手方向の中央に位置している。換言すると、取付構造部25は、燃焼室22の上側に位置している。
取付構造部25においては、燃焼室22内で点火を行う点火プラグを取り付けるためのプラグ取付孔27が上下方向に貫通している。プラグ取付孔27の下端は、燃焼室22内に向けて開口している。また、取付構造部25においては、吸気弁や排気弁を取り付けるためのバルブ取付孔28が略上下方向に貫通している。バルブ取付孔28の下端は、燃焼室22内に向けて開口している。この実施形態では、燃焼室22毎に、プラグ取付孔27が1つ、バルブ取付孔28が4つ設けられていて、これらが燃焼室22に応じて3組設けられている。なお、図1では、一組のプラグ取付孔27及びバルブ取付孔28にのみ符号を付している。
取付構造部25の上面からは、ボルトを挿通するための円筒状のボス部26が上側に向かって突出している。ボス部26の軸線方向は、上下方向に沿っている。ボス部26の上面は、長壁部24a及び短壁部24bの上端面と同一平面上に位置している。取付構造部25から突出するボス部26は、シリンダヘッド本体20の長手方向に沿って等間隔に4つ設けられている。また、ボス部26は、シリンダヘッド本体20の短手方向の中央に位置している。
また、各長壁部24aの内面からは、円筒状のボス部26が膨出している。ボス部26の軸線方向は、上下方向に沿っている。ボス部26の上面は、長壁部24a及び短壁部24bの上端面と面一になっている。ボス部26は、1つの長壁部24aにつき、シリンダヘッド本体20の長手方向に等間隔毎に4つ設けられている。また、シリンダヘッド本体20の短手方向において、一対の長壁部24aから膨出するボス部26と取付構造部25の上面から突出するボス部26とが、同じ位置に配置されている。換言すると、各長壁部24aの2つのボス部26と取付構造部25の1つのボス部26とは、シリンダヘッド本体20の短手方向に延びる同一直線上に位置している。
図2及び図3に示すように、カムシャフトハウジング40は、互いに平行に延びている一対の棒状の縦フレーム42を備えている。一対の縦フレーム42の間には、4つの棒状の横フレーム50と、1つの棒状の外フレーム44とが架け渡されている。4つの横フレーム50と、外フレーム44は、縦フレーム42の延設方向に直交する方向に延びている。
外フレーム44と、各横フレーム50と、一対の縦フレーム42の上下方向の寸法は一致しており、外フレーム44と、各横フレーム50と、一対の縦フレーム42の上端面は面一になっている。同様に、外フレーム44と、各横フレーム50と、一対の縦フレーム42の下端面も面一になっている。
4つの横フレーム50のうち、縦フレーム42の延設方向一方側の横フレーム50は、縦フレーム42の延設方向一方側の端部同士を繋ぐように架け渡されている。そして、4つの横フレーム50は、縦フレーム42の延設方向に略等間隔毎に並んでいる。なお、各横フレーム50は、シリンダヘッド本体20の短手方向に並んでいる3つのボス部26の上側に位置している。外フレーム44は、4つの横フレーム50よりも、縦フレーム42の延設方向他方側に位置している。外フレーム44と、当該外フレーム44に隣り合っている横フレーム50との間隔は、横フレーム50同士の間隔よりも狭くなっている。
外フレーム44は、縦フレーム42の延設方向他方側の端部同士を繋ぐように架け渡されている。その結果として、外フレーム44と、横フレーム50の1つと、一対の縦フレーム42とが、四角形の枠状に繋がっている。この枠の外周寸法は、シリンダヘッド本体20の上端面21の外周寸法と略一致している。
図2に示すように、各縦フレーム42における上端部は、横フレーム50の延設方向外側へ張り出したフランジ状の張出部Fとなっている。張出部Fは、縦フレーム42の延設方向の全域に亘って設けられている。この張出部Fを含めたカムシャフトハウジング40の枠の外周寸法は、シリンダヘッドカバーの外周寸法と略一致している。そして、シリンダヘッドカバーがシリンダヘッド10に取り付けられた状態では、枠状のカムシャフトハウジング40の上端面に、液体ガスケットを介して、シリンダヘッドカバーの下端面が当接する。なお、シリンダヘッドカバーがカムシャフトハウジング40に固定された状態では、液体ガスケットは、固化した状態にある。
図1~図3に示すように、各横フレーム50の上端面においては、半円状の軸受部52が下側へ窪んでいる。軸受部52は、横フレーム50における延設方向の中央を挟んだ両側に1つずつ設けられている。なお、図1では、一部の軸受部52にのみ符号を付している。
図2及び図3に示すように、各横フレーム50においては、ボルト孔54が上下方向に貫通している。ボルト孔54は、2つの軸受部52の間に1つ、また、2つの軸受部52よりも横フレーム50の延設方向外側に1つずつ、計3つ設けられている。2つの軸受部52の間に位置しているボルト孔54は、横フレーム50における延設方向のほぼ中央に位置している。このボルト孔54の軸線は、シリンダヘッド本体20の取付構造部25から突出しているボス部26の円筒の軸線と一致している。一方、軸受部52よりも横フレーム50の延設方向外側に位置しているボルト孔54は、横フレーム50と縦フレーム42との接続箇所近傍に位置している。このボルト孔54の軸線は、シリンダヘッド本体20における長壁部24aの内面から膨出しているボス部26の円筒の軸線と一致している。
図1に示すように、枠状のカムシャフトハウジング40の下端面は、シリンダヘッド本体20の上端面21と、液体ガスケットを介して当接している。具体的には、カムシャフトハウジング40における縦フレーム42の下端面は、シリンダヘッド本体20の長壁部24aの上端面に当接している。そして、カムシャフトハウジング40における端側の横フレーム50の下端面及び外フレーム44の下端面は、シリンダヘッド本体20における短壁部24bの上端面に当接している。なお、カムシャフトハウジング40がシリンダヘッド本体20に固定されて、シリンダヘッド10として構成されている状態では、液体ガスケットは、固化した状態にある。
図1に示すように、各横フレーム50の上端面には、横フレーム50の延設方向に延びている棒状のカムキャップ30が固定されている。カムキャップ30の長手方向及び短手方向の寸法(長さ及び幅)は、横フレーム50の長手方向及び短手方向の寸法(長さ及び幅)とほぼ一致している。カムキャップ30の下端面には、半円状の軸受部32が上側へ窪んでいる。軸受部32は、カムキャップ30の延設方向の中央を挟んで両側に1つずつ設けられている。軸受部32は、横フレーム50の軸受部52と対向した位置に配置されている。なお、図1では、一部のカムキャップ30の軸受部32にのみ符号を付している。
横フレーム50の軸受部52とカムキャップ30の軸受部32との間には、吸気用カムシャフト100A及び排気用カムシャフト100Bのそれぞれのシャフト本体102が回転可能に支持されている。具体的には、横フレーム50におけるその延設方向一方側に位置している軸受部52と、当該軸受部52に対向しているカムキャップ30の軸受部32との間に、吸気用カムシャフト100Aのシャフト本体102が挟み込まれている。また、横フレーム50におけるその延設方向他方側に位置している軸受部52と、当該軸受部52に対向しているカムキャップ30の軸受部32との間に、排気用カムシャフト100Bのシャフト本体102が挟み込まれている。図3に示すように、吸気用カムシャフト100A及び排気用カムシャフト100Bのそれぞれのカムピース106は、横フレーム50同士の間に位置している。なお、吸気用カムシャフト100A及び排気用カムシャフト100Bのそれぞれのシャフト本体102の一端は、外フレーム44と、当該外フレーム44に隣り合っている横フレーム50との間に位置している。一方、シャフト本体102の他端は、カムシャフトハウジング40の外部に位置している。
図1に示すように、各カムキャップ30には、キャップボルト孔34が上下方向に貫通している。キャップボルト孔34は、カムキャップ30における2つの軸受部32の間に1つ、また、2つの軸受部32よりもカムキャップ30の延設方向外側に1つずつ、計3つ設けられている。なお、図1では、一部のカムキャップ30のキャップボルト孔34にのみ符号を付している。
図1及び図4に示すように、カムキャップ30の延設方向外側に位置しているキャップボルト孔34の軸線は、横フレーム50におけるその延設方向外側のボルト孔54の軸線、及びシリンダヘッド本体20における長壁部24aの内面から膨出しているボス部26の円筒の軸線と一致している。このキャップボルト孔34には、上側からボルトBが貫通している。ボルトBは、横フレーム50のボルト孔54を貫通し、シリンダヘッド本体20のボス部26に締結されている。
カムキャップ30において、2つの軸受部32の間に位置しているキャップボルト孔34の軸線は、横フレーム50におけるその延設方向の中央のボルト孔54の軸線、及びシリンダヘッド本体20の取付構造部25から突出しているボス部26の円筒の軸線と一致している。そして、このキャップボルト孔34に上側からボルトBが貫通している。ボルトBは、横フレーム50のボルト孔54を貫通し、シリンダヘッド本体20のボス部26に締結されている。こうして、ボルトBによってカムキャップ30とカムシャフトハウジング40とシリンダヘッド本体20とが一体に固定されている。なお、図1では、ボルトBを1つのみ示している。
図3に示すように、縦フレーム42は、当該縦フレーム42の延設方向において4箇所の横フレーム50との接続箇所Pを有している。接続箇所Pは、縦フレーム42における横フレーム50の短手方向の寸法(幅)分に相当する部位である。縦フレーム42における、隣り合う2つの接続箇所P間の全域は、当該縦フレーム42の振動を抑制する振動抑制部60となっている。
図5に示すように、縦フレーム42の延設方向に直交する断面での断面視(以下、直交断面視と称する。)において、振動抑制部60は、全体としては、上側ほど横フレーム50の延設方向外側に位置するように傾斜している。そして、振動抑制部60は、当該振動抑制部60の上下方向の中央部60aが横フレーム50の延設方向中央側に突出するように湾曲している。つまり、振動抑制部60は、上下方向の中央部60aで、上下方向に対する傾斜角度が急変している。具体的には、振動抑制部60は、その中央部60aよりも上側では、下側よりも、上下方向に対する傾斜角度が大きくなっている。
振動抑制部60は、当該振動抑制部60における横フレーム50の延設方向外側に位置しているとともに上側を向いた平面である上端面62を備えている。上端面62は、シリンダヘッドカバーの下端面と当接する上側当接面となっている。上端面62のうち、横フレーム50の延設方向外側の一部は、張出部Fの外面を構成している。
上端面62における横フレーム50の延設方向中央側の縁からは、横フレーム50の延設方向中央側且つ下側へ向けて湾曲上面70が続いている。湾曲上面70は、直交断面視において横フレーム50の延設方向中央側に向かうほど下側に位置するように傾斜している。また、湾曲上面70は、横フレーム50の延設方向中央側に向かって突出するように湾曲している。
湾曲上面70の下縁からは、横フレーム50の延設方向中央側を向いた面である内向き面72が下側へ続いている。内向き面72の下縁は、逃し面73を介して、下端面64に繋がっている。下端面64は、逃し面73から横フレーム50の延設方向外側へと延びている。下端面64は、下側を向いた平面であり、シリンダヘッド本体20の上端面21と当接する下側当接面となっている。下端面64における横フレーム50の延設方向外側の縁は、上端面62における横フレーム50の延設方向外側の縁よりも横フレーム50の延設方向中央側に位置している。
下端面64における横フレーム50の延設方向外側の縁からは、横フレーム50の延設方向外側且つ上側へ向けて外向き面66が続いている。外向き面66は、湾曲上面70と同様に、直交断面視において、横フレーム50の延設方向中央側に向かって窪むように湾曲している。
ここで、直交断面視において、振動抑制部60の下端面64の中央64aと、上端面62の中央62aとを結ぶ仮想直線を第1仮想直線L1とする。また、湾曲上面70において横フレーム50の延設方向中央側に突出している部分のうち、第1仮想直線L1に直交する方向において、第1仮想直線L1からの距離が最も大きい箇所を振動抑制部60の湾曲の頂点60sとする。そして、第1仮想直線L1に直交し、振動抑制部60における湾曲の頂点60sを通る仮想直線を第2仮想直線L2とする。振動抑制部60においては、第2仮想直線L2上における、第1仮想直線L1から振動抑制部60の厚みの中央Aまでの距離Zは、第2仮想直線L2上における振動抑制部60の厚みの寸法Xよりも大きくなっている。なお、直交断面視において、振動抑制部60の湾曲の頂点60sでの振動抑制部60の厚みの寸法Xは、振動抑制部60における他の部分の厚みの寸法よりも小さくなっている。
また、直交断面視において、振動抑制部60の下端面64の中央64aと、第2仮想直線L2上における振動抑制部60の厚みの中央Aとを結ぶ仮想直線を第3仮想直線L3とする。そして、振動抑制部60の下端面64の中央64aを通過するとともに上下方向に沿う仮想直線を、基準仮想直線Laとする。上記のとおり、振動抑制部60は、当該振動抑制部60の上下方向の中央部60aが横フレーム50の延設方向中央側に突出するように湾曲している。そのため、上述した基準仮想直線Laと第3仮想直線L3とがなす鋭角側の角度は、基準仮想直線Laと第1仮想直線L1とがなす鋭角側の角度よりも小さい。そして、この実施形態では、基準仮想直線Laと第3仮想直線L3とがなす鋭角側の角度が5度よりも小さくなるように、振動抑制部60の湾曲の度合いが定められている。つまり、振動抑制部60における湾曲の頂点60sよりも下側の部分は、上下方向に略沿っている。
以上に説明した振動抑制部60の直交断面視での形状は、隣り合う2つの接続箇所P間に亘って基本的に維持される。一方で、振動抑制部60の湾曲の頂点60sの位置や、振動抑制部60の厚みは、隣り合う2つの接続箇所P間に亘って変化する。
具体的には、図4に示すように、振動抑制部60を横フレーム50の延設方向中央側から視た場合の断面(以下、内側断面視と称する。)において、振動抑制部60の湾曲の頂点60sは、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど下側に位置するように円弧状に延びている。これに付随して、湾曲上面70における、振動抑制部60の湾曲の頂点60sよりも上側の部分は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど下側に位置するように窪んだ円弧状の曲面となっている。また、湾曲上面70における、振動抑制部60の湾曲の頂点60sよりも下側の部分は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど下側に位置するように窪んだ円弧状の曲面となっている。図5の2点鎖線は、接続箇所P近傍における振動抑制部60の外形を示している。図5に示すように、湾曲上面70における振動抑制部60の湾曲の頂点60sの位置を、隣り合う2つの接続箇所Pの中間(実線)と接続箇所P近傍(2点鎖線)とで比較したとき、上記の湾曲上面70の形状を反映して、前者の場合の位置は後者の場合の位置よりも下側になっている。湾曲上面70における振動抑制部60の湾曲の頂点60sより上側の部分及び下側の部分についても同様である。このように、本実施形態では、湾曲上面70は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど、下側に窪んだ曲面となっている。
図3に示すように、振動抑制部60を上側から視た場合の平面において、振動抑制部60の湾曲の頂点60sは、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど横フレーム50の延設方向外側に位置するように円弧状に延びている。これに伴って、図6に示すように、振動抑制部60を上側から視た場合の断面(以下、上側断面視と称する。)において、湾曲上面70における、振動抑制部60の湾曲の頂点60sよりも下側の部分は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど、横フレーム50の延設方向外側に位置するように窪んだ円弧状の曲面になっている。また、湾曲上面70における、振動抑制部60の湾曲の頂点60sよりも上側の部分は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど、横フレーム50の延設方向外側に位置するように窪んだ円弧状の曲面になっている。こうした形状を反映して、図5に示すように、直交断面視では、湾曲上面70での振動抑制部60の湾曲の頂点60sの位置を、隣り合う2つの接続箇所Pの中間(実線)と接続箇所P近傍(2点鎖線)とで比較したとき、前者の場合の位置は後者の場合の位置よりも横フレーム50の延設方向外側になっている。湾曲上面70における振動抑制部60の湾曲の頂点60sより上側の部分及び下側の部分についても同様である。以上のように、本実施形態では、湾曲上面70は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど、横フレーム50の延設方向外側に窪んだ曲面となっている。
図6に示すように、振動抑制部60を上側から視た場合の平面において、内向き面72は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど、横フレーム50の延設方向外側に位置するように窪んだ円弧状の曲面になっている。こうした形状を反映して、図5に示すように、直交断面視では、隣り合う2つの接続箇所Pの中間における内向き面72の位置(実線)は、接続箇所P近傍における内向き面72の位置(2点鎖線)よりも、横フレーム50の延設方向外側となっている。
湾曲上面70及び内向き面72の以上のような形状を反映して、振動抑制部60では、図5に示すように、直交断面視での断面積が縦フレーム42の延設方向において徐々に変化している。具体的には、振動抑制部60は、接続箇所Pから隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど直交断面視での断面積が徐々に小さくなっていき、隣り合う2つの接続箇所Pの中間において、直交断面視での断面積が最も小さくなっている。
上記のように構成されたシリンダヘッド本体20の材質、カムシャフトハウジング40の材質、及びカムキャップ30の材質は、全て同じである。この実施形態では、これら各部材の材質として、アルミニウム合金を採用している。ここでいうアルミニウム合金とは、アルミニウムを主成分とする合金であって、耐食アルミニウム、ジュラルミン、超ジュラルミン、超々ジュラルミン等と呼称されるものである。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)本実施形態では、カムシャフトハウジング40を構成する縦フレーム42及び横フレーム50のうち、横フレーム50は、当該横フレーム50の延設方向の中央及び両端側の3か所が、ボルトBを介してシリンダヘッド本体20に固定されている。しかも、横フレーム50は、上側からカムキャップ30で押し付けられている。したがって、横フレーム50は、当該横フレーム50の延設方向の途中の位置で撓みが生じるなどの変形が生じにくい。その一方で、縦フレーム42は、ボルトBの締結力が強く及ぶ接続箇所Pを除いては、当該縦フレーム42をシリンダヘッド本体20へと押し付ける力を受けていない。そのため、縦フレーム42における隣り合う2つの接続箇所P間である振動抑制部60は、撓み等の変形が生じやすい部分となっている。
上記構成では、振動抑制部60が、全体としては上側ほど横フレーム50の延設方向外側に位置するように傾斜している。このことから、横フレーム50に締結されている接続箇所P近傍のボルトBの軸力は、振動抑制部60のうち、横フレーム50の延設方向中央側に位置している、当該振動抑制部60の下寄りの部分に及びやすい。ここで、仮に縦フレームが、上側ほど横フレームの延設方向外側に位置するように傾斜した平板形状であるとする。また、こうした構成において、縦フレームにおけるその延設方向に離れた2箇所に対して当該縦フレームの下寄りの部分にボルトの軸力が作用するものとする。この場合、2つのボルトの軸力が作用する部分に挟まれた中央部分が上側へ浮き上がるように、縦フレームが変形する。この結果として、縦フレームの下端面のうち、2つのボルトの軸力が作用する部分に挟まれた中央部分と、シリンダヘッド本体との間の面圧が低下することになる。
これに対して、上記構成では、縦フレーム42の振動抑制部60は、上側ほど横フレーム50の延設方向外側に位置するように傾斜していることに加えて、上下方向の中央部60aが横フレーム50の延設方向の中央側に突出するように湾曲している。すなわち、振動抑制部60においては、縦フレーム42の延設方向に沿う稜線が生じている。したがって、振動抑制部60においては、その稜線に交差する新たな稜線が生じるような変形、すなわち振動抑制部60における縦フレーム42の延設方向の中央部分が上側に撓むような当該振動抑制部の変形に対する剛性が高くなっている。したがって、振動抑制部60における、縦フレーム42の延設方向に離れた2箇所に対して当該振動抑制部60の下寄りの部分にボルトBの軸力が作用しても、2つのボルトB間において振動抑制部60における下寄りの部分が浮き上がるように振動抑制部60が変形することは抑制される。むしろ、振動抑制部60における、縦フレーム42の延設方向に離れた2箇所に対してボルトBの軸力が作用すると、その力は、振動抑制部60に対して、当該振動抑制部60における湾曲により生じている上記の稜線を基点として当該振動抑制部60の上寄りの部分を下寄りの部分に対して上側に起こし上げるような力として作用する。すると、その反力によって、振動抑制部60の下端面64は、シリンダヘッド本体20の上端面21に押し付けられる。したがって、振動抑制部60とシリンダヘッド本体20との面圧が向上する。また、振動抑制部60の上寄りの部分を上側に起こし上げようとする力によって、振動抑制部60の上端面62は、シリンダヘッドカバーの下端面に押し付けられる。したがって、振動抑制部60とシリンダヘッドカバーとの面圧が向上する。
(2)上記のとおり、縦フレーム42はボルトBによって締結されていないことから、シリンダヘッド10に振動が伝わった際には、縦フレーム42が撓むように振動するおそれがある。ここで、縦フレーム42は、横フレーム50に接続されているため、縦フレーム42における横フレーム50との接続箇所Pは、比較的に振動が生じにくい。その一方で、縦フレーム42における隣り合う2つの接続箇所Pの中間部分は振動が生じやすい。すなわち、縦フレーム42は、横フレーム50との接続箇所Pを振動の節、隣り合う2つの接続箇所Pの中間部分を振動の腹として振動しやすい。仮に、このような縦フレーム42の振動の固有周波数と、カムシャフトハウジング40の外部から伝達される振動の周波数とが一致すると、縦フレーム42が共振して過度に大きく振動してしまうことがある。
本実施形態によれば、縦フレーム42における、隣り合う2つの接続箇所P間の全域は、当該縦フレーム42の延設方向において断面積が徐々に変化する振動抑制部60となっている。このように断面積が変化する振動抑制部60においては、はっきりとした固有周波数を有さず、共振が生じにくい。そして、上記構成のように、縦フレーム42における隣り合う2つの接続箇所P間の全域が振動抑制部60となっている場合、隣り合う接続箇所P間の全域に亘って共振が生じにくい。
ここで、振動抑制部60における湾曲上面70は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど下側に位置するように窪んだ円弧状の曲面になっている。こうした円弧状の曲面形状であれば、振動抑制部60は、上下方向の振動に関して、はっきりとした固有振動数を有さない。そのため、振動抑制部60は、上下方向の振動に関して、共振が生じにくい。また、振動抑制部60における湾曲上面70は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど、横フレーム50の延設方向外側に位置するように窪んだ円弧状の曲面となっている。こうした円弧状の曲面形状であれば、振動抑制部60は、横フレーム50の延設方向の振動に関して、はっきりとした固有振動数を有さない。そのため、振動抑制部60は、横フレーム50の延設方向の振動に関して、共振が生じにくい。さらに、振動抑制部60における内向き面72は、隣り合う2つの接続箇所Pの中間に向かうほど、横フレーム50の延設方向外側に位置するように窪んだ円弧状の曲面となっている。こうした円弧状の曲面形状であれば、振動抑制部60は、横フレーム50の延設方向の振動に関して、はっきりとした固有振動数を有さない。そのため、振動抑制部60は、横フレーム50の延設方向の振動に関して、共振が生じにくい。
(3)縦フレーム42は、隣り合う2つの接続箇所P間の全域に亘って共振が抑制されるため、共振を抑制するために過度に太くて剛性の高い縦フレームを採用する必要がない。また、縦フレーム42における隣り合う2つの接続箇所Pの中間部分は、ボルトBの締結力が作用しにくい箇所であるため、隣り合う2つの接続箇所Pの中間部分における断面積が小さくとも、縦フレーム42においては求められる強度を確保できる。そのため、本実施形態の振動抑制部60の構成によれば、縦フレーム42を、直交断面視での断面積が接続箇所P近傍の断面積のまま当該縦フレーム42の延設方向において一定となるように構成した場合に比べて、縦フレーム42における隣り合う2つの接続箇所Pの断面積を相応に小さくできる。その結果、縦フレーム42を含めたカムシャフトハウジング40の体積を小さくして、当該カムシャフトハウジング40の軽量化を実現できる。
(4)シリンダヘッド10が加熱されて、カムシャフトハウジング40とシリンダヘッド本体20とが熱膨張したとする。この場合、カムシャフトハウジング40の膨張量とシリンダヘッド本体20の膨張量との間に差があると、固化した状態の液体ガスケットが破断して、必要な密閉性を確保できないおそれがある。
上記構成では、カムシャフトハウジング40の材質は、シリンダヘッド本体20の材質と同一となっている。そのため、カムシャフトハウジング40の熱膨張係数と、シリンダヘッド本体20の熱膨張係数は同じであり、カムシャフトハウジング40とシリンダヘッド本体20の温度が同じであれば、両者の膨張量がほぼ同じになる。このことに加え、上述のとおり、縦フレーム42における隣り合う2つの接続箇所Pの中間部分では、当該縦フレーム42の直交断面視での断面積が小さくて当該縦フレーム42の体積が比較的に小さい。そのため、縦フレーム42を、シリンダヘッド本体20から伝わる熱やエンジンルーム内の熱で温めやすく、縦フレーム42と、シリンダヘッド本体20の温度差を少なくできる。したがって、カムシャフトハウジング40の膨張量とシリンダヘッド本体20の膨張量との差を小さくできる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・振動抑制部60の直交断面視での形状は、上記実施形態の例に限定されない。振動抑制部60の直交断面視での形状は、次の2つの条件を満たすものであればよい。
(イ)上側ほど横フレーム50の延設方向外側に位置するように傾斜しているとともに、当該縦フレーム42の中央部60aが横フレーム50の延設方向中央側に突出するように湾曲している。
(ロ)第2仮想直線L2上における第1仮想直線L1から振動抑制部60の厚みの中央までの距離Zが、第2仮想直線L2上における振動抑制部60の厚みの寸法Xよりも大きい。
上記の2つの条件を満たしていれば、上記の(1)の効果の欄で説明した力の作用によって、振動抑制部60とシリンダヘッド本体20との面圧を向上させることができる。振動抑制部60の直交断面視での形状を変更する場合の一例として、例えば、逃がし面73を廃止して、湾曲上面70の下縁と下端面64とを直接繋げてもよい。
・基準仮想直線Laに対して第3仮想直線L3がなす鋭角側の角度が、5度以上になっていてもよい。つまり、振動抑制部60における湾曲の頂点60sよりも下側の部分は、上下方向に対して相応に傾斜していてもよい。こうした場合でも、振動抑制部60の直交断面視での形状が、上記の条件(イ)及び(ロ)を満たしたものになっていればよい。
・直交断面視での振動抑制部60の厚みの寸法が、振動抑制部60の湾曲の頂点60s以外の部分で最小になっていてもよい。
・隣り合う2つの接続箇所P間における振動抑制部60の形状の変化の態様は、上記実施形態の例に限定されない。すなわち、振動抑制部60の直交断面視での断面積が、隣り合う2つの接続箇所Pの中間において最も小さくなっていることは必須ではない。さらにいうと、振動抑制部60の直交断面視での断面積が、隣り合う2つの接続箇所P間において変化していることも必須ではない。つまり、隣り合う2つの接続箇所Pの中間から離れた位置において、振動抑制部60の直交断面視での断面積が最も小さくなっていてもよいし、隣り合う2つの接続箇所P間に亘って、振動抑制部60の直交断面視での断面積が一定になっていてもよい。隣り合う2つの接続箇所P間に亘って、振動抑制部60の直交断面視での断面積を一定にする場合には、隣り合う2つの接続箇所P間に亘って、振動抑制部60の湾曲の頂点60sの位置を、上下方向及び横フレーム50の延設方向に関して一定にすればよい。こうした場合であっても、振動抑制部60の直交断面視での形状が、上記の条件(イ)及び(ロ)を満たしたものになっていれば、振動抑制部60とシリンダヘッド本体20との面圧を向上させることができる。
・隣り合う2つの接続箇所P間における振動抑制部60の形状の変化の態様に関して、隣り合う2つの接続箇所P間における少なくとも一部の領域において、振動抑制部60の直交断面視での形状が、上記の条件(イ)及び(ロ)を満たしたものになっていればよい。ただし、ボルトBの締結力が及びにくい2つの接続箇所Pの中間を含んだ領域で広域的に面圧を向上させる上では、2つの接続箇所Pの中間を含んだ領域であって隣り合う2つの接続箇所P間における4分の1以上の領域や、3分の1以上の領域といったように相応の領域に亘って上記(イ)及び(ロ)の条件を満たした形状が維持されていることが好ましい。
・カムシャフトハウジング40の全体構成は、適宜変更可能である。例えば、横フレーム50の数は、シリンダブロックの気筒の数に合わせて変更してよい。外フレーム44を廃止してもよい。横フレーム50に設けられるボルト孔54の位置や数を変更してもよい。ただし、振動抑制部60とシリンダヘッド本体20との面圧を確保する上で、軸受部52よりも横フレーム50の延設方向外側にボルト孔54が設けられていることは必須である。
・上記実施形態におけるシリンダヘッド本体20の構成は一例であり、シリンダヘッド本体20の構成は適宜変更可能である。例えば、燃焼室22の数は、シリンダブロックの気筒の数に合わせて変更してよい。また、上記実施形態における取付構造部25の構成は、あくまでも概略的に例示したものであり、寸法や形状は適宜変更してよい。さらに、ボス部26の位置や数は、カムシャフトハウジング40の横フレーム50におけるボルト孔54の位置や数に合わせて変更してよい。なお、ボス部26の位置を変更する場合でも、ボス部26は、カムシャフトハウジング40及びカムキャップ30とともにボルトBで締結される際の締結力を受け止めるのに十分な強度を有している必要がある。
・上記実施形態におけるカムキャップ30の構成も、概略的に例示したものであり、カムキャップ30の形状及び寸法は、適宜変更可能である。カムキャップ30は、カムシャフトハウジング40の上側に固定でき、かつ、横フレーム50との間でカムシャフト100のシャフト本体102を回転可能に支持できる形状であればよい。
・シリンダヘッド本体20の材質、カムシャフトハウジング40の材質、及びカムキャップ30の材質は、上記実施形態に示したものに限定されない。また、シリンダヘッド本体20の材質、カムシャフトハウジング40の材質、及びカムキャップ30の材質は、互いに異なっていてもよいし、これらの3つのうちの2つのみが同じでもよい。
・カムシャフトハウジング40とシリンダヘッド本体20との間に液体ガスケットが介在されていることは必須ではない。例えば、両者の間に金属製のガスケットが介在されていてもよい。ただし、カムシャフトハウジング40とシリンダヘッド本体20との間の密閉性を高める上では、液体ガスケットが両者の間に介在していることが好ましい。カムシャフトハウジング40とシリンダヘッドカバーとの間のガスケットについても同様である。