JP7243182B2 - 絶縁回路基板の製造方法及びその絶縁回路基板 - Google Patents
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Description
特許文献2では、銅または銅合金からなる銅部材とセラミックス部材とを接合する際に使用される銅部材接合用ペーストとして、Ag及び活性金属を含む金属粉末成分と、セラミックス粉末と、樹脂と、溶剤と、を含む構成のものを提案している。この場合、金属粉末成分の組成は、活性金属の含有量が1質量%以上30質量%以下とされ、残部がAg及び不可避不純物とされ、金属粉末成分の含有量に対するセラミックス粉末の含有量が1質量%以上15質量%以下とされている。また、活性金属としては、Ti、Hf、Zr、Nbが挙げられている。
これら特許文献1及び特許文献2記載のろう材では、セラミックス基板と銅板との接合界面にAg-Cu共晶層が形成される。
しかしながら、銅板より大きくAg-Ti系ろう材を塗布すると、接合後に銅層の外側に形成されるろう材固化層がセラミックス基板との反応性が弱く、セラミックス基板から剥離して、異物が発生するという問題がある。
このセラミックス基板と銅層との間のAg-Cu共晶層は、銅板から供給されるCuとの共晶反応により形成されるので、薄肉であり、また、銅層の外側にはみ出さずに形成される。
そして、銅層は、第1のろう材層の外側が第2のろう材層により囲まれた状態で加熱接合されているので、外周縁まで確実にセラミックス基板に接合される。
このように第2のろう材層を配置しておくことにより、第1のろう材層が接合後の銅層の外側にはみ出すことがなく、したがって、銅層からはみ出して固化したろう材層の剥離の発生を確実に防止することができる。銅層の外周縁からの距離が50μmを超えると、銅層外周部の接合が不十分になるおそれがある。
第2のろう材層により形成されるAg-Cu共晶を含むろう材固化層はセラミックス基板からの剥離の発生が抑制されるが、銅層の外周縁から200μmを超えてはみ出していると、剥離するおそれがある。
この場合、前記Ag-Cu共晶を含むろう材固化層は、前記銅層の外周縁から50μm以内の範囲内で前記銅層と前記セラミックス基板との接合界面に入り込んでいるとよい。
また、前記銅層の外周縁から前記ろう材固化層がはみ出す量は200μm以下であるとよい。
本実施形態の絶縁回路基板は電源回路に用いられるパワーモジュール用基板である。このパワーモジュール用基板10は、図1に示すように、セラミックス基板11と、そのセラミックス基板11の一方の面に積層された回路層12Aと、セラミックス基板11の他方の面に積層された放熱層12Bと、を有している。
また、このAg-Cu共晶層22とAg-Cu共晶を含むろう材固化層23との境界は、銅層12の外周縁から内側に入り込んでおり、銅層12の外周縁からの距離Lは、50μm以下であることが好ましい。したがって、ろう材固化層23において、銅層12とセラミックス基板11との間に入り込んでいる部分は、Ag-Cu共晶層22とほぼ同じ厚さに形成される。また、銅層12の外周縁からはみ出すAg-Cu共晶を含むろう材固化層23のはみ出し量Hは10μm以上200μm以下であることが好ましい。
(ろう材塗布工程:S1)
まず、図4に示すように、セラミックス基板11の両面にAg及び活性金属からなる金属成分を含有する第1のろう材を塗布して乾燥することにより、第1のろう材層31を形成し、この第1のろう材層31の周囲を囲んだ状態にAg、Cu及び活性金属からなる金属成分を含有する第2のろう材を塗布して乾燥することにより、第2のろう材層32を形成する。活性金属としては、Ti、Hf、Zr、Nb等から選択される1種又は2種以上が用いられる。その中でもTiが好適であり、以下では活性金属としてTiを用いたものとして説明する。つまり、第1のろう材層31はAg-Tiろう材の層であり、第2のろう材層32はAg-Cu-Tiろう材の層である。いずれの層も、ろう材のペーストを塗布して乾燥させることにより形成される。
これら第1のろう材層31及び第2のろう材層32の厚さは、乾燥後で20μm以上300μm以下とされる。
次いで、第1のろう材層31の上に銅板12´を重ねて積層状態とする。この銅板12´は、銅又は銅合金からなる平板のプレス成形により銅層12の外形に打抜き形成されたものである。
セラミックス基板11の両面の第1のろう材層31の上に銅板12´をそれぞれ積層した後、これらを積層方向に加圧した状態とする。この加圧状態においては、セラミックス基板11と銅板12´との間に第1のろう材層31が配置されるとともに、銅板12´の外側を第2のろう材層32が囲むように配置される。第1のろう材層31と第2のろう材層32との境界は、銅板12´のほぼ外周縁の位置か、銅板12´の外周縁よりも若干内側に配置される。
セラミックス基板11と銅板12´との積層体を加圧状態で加熱炉内に設置し、真空雰囲気下で接合温度に加熱した後冷却して、セラミックス基板11に銅板12´をろう付け接合する。この場合の接合条件としては、例えば0.1MPa以上3.5MPa以下の加圧力で積層体を加圧し、10-6Pa以上10-3Pa以下の真空雰囲気下で、Ag-Cu共晶温度以上Agの融点以下(例えば790℃以上850℃以下)の接合温度で、1分~60分の加熱とする。
セラミックス基板11と銅板12´との間に形成されたAg-Cu共晶液相は冷却により固化してAg-Cu共晶層22を形成する。このAg-Cu共晶層22と窒化チタン層21とを介してセラミックス基板11と銅板12´とが接合され、セラミックス基板11の両面に銅層12が形成される。
一方、第2のろう材層32が加熱溶融して固化されたものがろう材固化層23であり、銅層12の周囲のセラミックス基板11上に窒化チタン層21とAg-Cu共晶を含むろう材固化層23が形成され、セラミックス基板11と銅層12との間の窒化チタン層21及びAg-Cu共晶層22とそれぞれ連続して形成される。
なお、前述のろう材塗布工程において、第2のろう材層32は、その内周縁が第1のろう材層31の外周縁と隙間なく設けられるのが好ましいが、両ろう材層31,32は加熱工程で溶融した際に押し広げられるので、この冷却工程後に形成されるAg-Cu共晶層22とろう材固化層23との間に隙間がなくなっていればよく、ろう材塗布工程においては必ずしも第1のろう材層31と第2のろう材層32との間に隙間がないことに限定されない。
この場合、Ag-Cu共晶層22とAg-Cu共晶を含むろう材固化層23との境界は、銅層12の外周縁から内側に50μm以下の範囲内であり、50μmを超えると、銅層12の外周部の接合が不十分になるおそれがある。また、銅層12の外周縁からはみ出すAg-Cu共晶を含むろう材固化層23のはみ出し量Hは10μm以上200μm以下であり、200μmを超えてはみ出していると、剥離するおそれがある。ろう材固化層23が銅層12の外周縁から入り込んでいれば、はみ出し量Hは小さくてもよいが、10μm未満とするのは困難である。
上記実施形態では、活性金属としてTiを用いたが、Ti以外のHf、Zr、Nb等を用いてもよい。
また、第1のろう材層は、その外周縁と接合後に形成されるAg-Cu共晶層の銅層の外周縁との距離が表1に示す寸法となるように大きさを設定した。第2のろう材層は、第1のろう材層の外側に100μmの幅で枠状に形成した。両ろう材層の厚さは10μmとした。
比較例として、セラミックス基板と銅板との間及びその外側ともに、Ag-Tiろう材ペーストを塗布したもの(比較例1)、両方ともにAg-Cu-Tiろう材を塗布したもの(比較例2)も作製した。
Ag-Cu共晶層の外周縁と銅層の外周縁との距離は、接合後の接合体(絶縁回路基板)において、ろう材部(Ag-Cu共晶層及びろう材固化層)の断面を、EPMAによる元素マッピングし、Cuの濃度が10質量%未満の領域をAg-Cu共晶層、10質量%以上の領域をろう材固化層として特定することにより、これらの境界を検出し、その境界と銅層の外周縁との距離を求めた。
接合信頼性は、冷熱サイクル試験装置を使用し、接合体に対して、-40℃の液槽に5分浸漬した後、150℃の液槽に5分浸漬する操作を1000サイクル繰り返し、超音波探傷検査にて接合率を求めた。接合率は、接合すべき面積に対して実際に接合されていた面積の比率であり、95%以上をA、95%未満90%以上をB、90%未満をCとし、90%以上を合格とした。
11 セラミックス基板
12 銅層
12A 回路層
12B 放熱層
12´ 銅板
21 窒化チタン層
22 Ag-Cu共晶層
23 ろう材固化層
31 第1のろう材層
32 第2のろう材層
Claims (6)
- セラミックス基板と銅又は銅合金からなる銅板とを活性金属ろう材を介して接合して、セラミックス基板の表面に銅層を有する絶縁回路基板を製造する方法であって、前記セラミックス基板の表面にAg及び活性金属からなる金属成分を含有する第1のろう材層を形成するとともに、前記第1のろう材層の周囲を囲んだ状態となるようにAg、Cu及び活性金属からなる金属成分を含有する第2のろう材層を形成した後、前記第2のろう材層を前記銅板の外周縁からはみ出させるようにして前記第1のろう材層の上に前記銅板を積層し、その後、前記第1のろう材層及び前記第2のろう材層を加熱することによりAgとCuの共晶反応を生じさせながら前記セラミックス基板と前記銅板を接合して、前記セラミックス基板の表面に前記銅層を形成し、前記銅層の周囲に前記第2のろう材層が溶融固化してなるろう材固化層を形成することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
- 前記第2のろう材層は、接合後の前記ろう材固化層が前記銅層の外周縁から50μm以内の範囲内で前記銅層と前記セラミックス基板との接合界面に入り込むように設けられることを特徴とする請求項1記載の絶縁回路基板の製造方法。
- 前記第2のろう材層は、接合後の前記銅層の外周縁から前記ろう材固化層がはみ出す量が200μm以下となるように設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁回路基板の製造方法。
- セラミックス基板の表面に銅又は銅合金からなる銅層が接合されており、前記セラミックス基板と前記銅層との接合界面にAg-Cu共晶層が形成され、前記銅層の周囲にはみ出して前記Ag-Cu共晶層より厚いAg-Cu共晶を含むろう材固化層が形成され、
さらにCuの濃度が、前記Ag-Cu共晶層で10質量%未満であり、前記ろう材固化層で10質量%以上であることを特徴とする絶縁回路基板。 - 前記Ag-Cu共晶を含むろう材固化層は、前記銅層の外周縁から50μm以内の範囲内で前記銅層と前記セラミックス基板との接合界面に入り込んでいることを特徴とする請求項4記載の絶縁回路基板。
- 前記銅層の外周縁から前記ろう材固化層がはみ出す量は200μm以下であることを特徴とする請求項4又は5記載の絶縁回路基板。
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