JP5344025B2 - フラックス成分侵入防止層形成用ペーストおよび接合体の接合方法 - Google Patents
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Description
このノコロックろう付けは、主に、アルミニウム部材同士を接合する技術であり、例えばAl−Si系ろう材箔とKAlF4を主成分とするフラックスとを、アルミニウム部材同士の間に配置し、フラックスによってアルミニウム部材の表面に形成された酸化膜を除去するとともに、ろう材の溶融を促進して、接合するものである。
さらに、フラックス成分がセラミックス基板を超えて回路層にまで達する場合には、回路層と金属層との絶縁性が低下してしまい、パワーモジュール用基板として使用できなくなるおそれがあった。
特に、接合体の接合面と、接合体と被接合材の接合界面と、が近接している場合には、フラックス成分侵入防止層を形成し難いが、本発明のフラックス成分侵入防止層形成用ペーストであれば、確実にフラックス成分侵入防止層を形成することができる。
以上のことから、温度25℃でのずり速度10s−1における粘度を、10mPa・s以上20000mPa・s以下の範囲内に設定しているのである。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、温度25℃でのずり速度10s−1における粘度を、100mPa・s以上10000mPa・s以下の範囲内とすることが好ましい。
以上のことから、温度25℃でのずり速度100s−1における粘度を、10mPa・s以上5000mPa・s以下の範囲内に設定しているのである。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、温度25℃でのずり速度100s−1における粘度を、50mPa・s以上2500mPa・s以下の範囲内とすることが好ましい。
これら酸化物はフラックス成分と反応することによりフラックス成分を分解し、フラックスを失活することができる。特に、ノコロックろう付けで使用されるKAlF4を主成分とするフラックスを、確実に分解することが可能となる。
アクリル樹脂は、加熱時に解重合を起こし、不活性ガス雰囲気下においても良好な熱分解特性を有しており、焼成後のフラックス成分侵入防止層内に残存することを抑制できる。
非極性溶媒を用いた場合には、粉末への樹脂の吸着を促すことが可能となり、分散の安定化を図ることができる。なお、非極性溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジブチルエーテル等が挙げられる。
分散剤を用いることにより酸化物成分の分散の安定化を図ることができる。なお、分散剤としてはアニオン性、カチオン性、非イオン性の界面活性剤が挙げられる。
この場合、フラックス成分を分解する酸化物を10質量%以上80質量%以下の範囲内で含有しているので、フラックス成分を確実に分解して無害化することができる。また、前記樹脂の含有量を5質量%以上30質量%以下の範囲内で含有しているので、ペーストを塗布して形成されたフィレット形状を保持することができ、確実にフラックス成分侵入防止層を形成することが可能となる。
本実施形態における接合体の接合方法は、セラミックス基板11と金属板22,23とが接合されてなるパワーモジュール用基板10(接合体)と、ヒートシンク40(被接合材)と、を接合し、ヒートシンク付パワーモジュール用基板30を製造するものである。そして、本実施形態では、パワーモジュール用基板10とヒートシンク40とは、KAlF4を主成分とするフラックスとろう材とを用いて接合を行うノコロックろう付け法によって接合される。
このフラックス成分侵入防止層形成用ペースト50は、フラックス成分を分解する酸化物と、樹脂と、溶剤と、を含有するものであり、より具体的には、酸化物の含有量が10質量%以上80質量%以下、樹脂の含有量が5質量%以上30質量%以下、残部が溶剤とされている。
本実施形態では、上述のように、例えばKAlF4を主成分とするフラックスを用いることから、フラックス成分であるKAlF4を分解する酸化物として好適なTiO2が用いられている。より具体的には、TiO2を10質量%以上80質量%以下の範囲内で含有しているのである。
溶剤としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジブチルエーテル等の非極性溶媒が用いられている。
さらに、本実施形態においては、温度25℃でのずり速度10s−1における粘度を、100mPa・s以上10000mPa・s以下の範囲内とされ、温度25℃でのずり速度100s−1における粘度を、50mPa・s以上2500mPa・s以下の範囲内とされている。
まず、溶剤と樹脂とを混合して遊星式撹拌装置によって撹拌し、溶剤中に樹脂を溶解したビークルを作製する(ビークル作製工程S01)。
そして、酸化物粉末(TiO2粉末)と、ビークルと、を遊星式撹拌装置によって撹拌する(混錬工程S02)。
このようにして、本実施形態であるフラックス成分侵入防止層形成用ペースト50が製出されることになる。
このパワーモジュール1は、回路層12が配設されたパワーモジュール用基板10とヒートシンク40とを有するヒートシンク付パワーモジュール用基板30と、回路層12の表面にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、を備えている。
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
まず、図4に示すように、セラミックス基板11の一面側に、回路層12となる金属板22(4Nアルミニウムの圧延板)が、厚さ5〜50μm(本実施形態では14μm)のろう材箔24を介して積層され、セラミックス基板11の他面側に、金属層13となる金属板23(4Nアルミニウムの圧延板)が厚さ5〜50μm(本実施形態では14μm)のろう材箔25を介して積層される。なお、本実施形態においては、ろう材箔24、25は、融点降下元素であるSiを含有したAl−Si系のろう材とされている。
次に、金属板22、23とセラミックス基板11との界面にそれぞれに形成された溶融金属領域を凝固させることにより、セラミックス基板11と金属板22及び金属板23とを接合する。
そして、次に、セラミックス基板11と金属層13(金属板23)との接合面の周縁に、フラックス成分侵入防止層51を形成する。
ここで、フラックス成分侵入防止層51の形成方法について、図5を用いて説明する。まず、セラミックス基板11と金属層13(金属板23)との接合面の周縁に向けて、ディスペンサー53を用いて、フラックス成分侵入防止層用ペースト50を塗布する(ペースト塗布工程S21)。
塗布したフラックス成分侵入防止層用ペースト50を放置しておく。すると、自重によってフラックス成分侵入防止層用ペーストが適度にダレて、図5に示すようにフィレット形状が形成されることになる(フィレット形状形成工程S22)。
そして、50〜150℃×3〜30分間の条件で乾燥を実施する(乾燥工程S23)。これにより、フラックス成分侵入防止層51が形成されることになる。
次に、図6に示すように、パワーモジュール用基板10の金属層13の他方の面側に、ヒートシンク40を接合する。
具体的には、パワーモジュール用基板10の金属層13とヒートシンク40の天板部41との間に、Al−Si系ろう材箔27と、KAlF4を主成分とするフラックス(図示なし)とを介在させる。
ここで、本実施形態では、雰囲気加熱炉内は、窒素ガス雰囲気とされており、加熱温度は550℃以上630℃以下の範囲内に設定している。
このようにして、ヒートシンク40とパワーモジュール用基板10とが接合されて本実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板30が製造されることになる。
例えば、フラックス成分侵入防止層用ペーストの原料、配合量については、実施形態に記載されたものに限定されることはなく、他の酸化物、樹脂、溶剤を用いてもよい。
さらに、溶剤としてシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジブチルエーテル等の非極性溶媒を用いたもので説明したが、これに限定されることはなく、他の溶剤を用いてもよい。
図1のフロー図に記載した手順で、表1に示す組成のフラックス成分侵入防止層用ペーストを製出した。ここで、有機物混合工程S01においては、遊星式撹拌装置(株式会社シンキー製AR−250)を用いて30分間の撹拌を実施し、樹脂を溶剤に溶解させた。
また、混錬工程S02においては、遊星式撹拌装置(株式会社シンキー製AR−250)を用いて5分間の撹拌を実施した。
ストレスレオメータ(TAインスツルメント株式会社製AR−1000)に、測定治具としてコーン(4°、直径40mm)を用い、このコーンを回転させてフラックス成分侵入防止層用ペーストに対して所定のずり速度を与え、3分後の粘度を測定した。測定結果を表2に示す。
ディスペンサー(武蔵エンジニアリング株式会社製SuperΣ X−V2)に内径0.26mmのニードルを付け、塗布圧0.20kPaにて、上述のパワーモジュール用基板のセラミックス基板と金属層との接合面の周縁にフラックス成分侵入防止層用ペーストを塗布した。塗布後、ホットプレート上で80℃、5分間の乾燥処理を実施した。
フラックス成分侵入防止層を光学顕微鏡にて観察し、フラックス成分侵入防止層用ペーストの抜けや隙間の有無を確認した。抜け若しくは隙間が確認されないものを○、長さ3mm以下の抜け若しくは隙間が1箇所のみ確認されたものを△、長さが3mm超の抜け若しくは隙間が確認された場合、若しくは、長さが3mm以下の抜け若しくは隙間が2箇所以上確認されたものを×と評価した。なお、長さ3mm以下の抜け若しくは隙間が1箇所の場合には実用上問題ないレベルである。
まず、得られたヒートシンク付パワーモジュール用基板に対して、セラミックス基板と金属層との接合面を超音波探傷装置(株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス製Fine SAT FS−200)によって観察し、剥離の有無によって、初期の接合信頼性を評価した。
次に、このヒートシンク付パワーモジュール用基板に対して、−40℃←→125℃の冷熱サイクルを1000サイクル負荷した。そして、セラミックス基板と金属層との接合面を超音波探傷装置(株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス製Fine SAT FS−200)によって観察し、剥離の有無によって、冷熱サイクル後の接合信頼性を評価した。
ノコロック接合時の剥離は金属層の外周部から発生し、超音波探傷像においてこの剥離部は接合部内の白色部として示されることから、金属層外周部に沿った白色部の長さを測定し剥離長さとした。剥離が無い場合を○、剥離長さが接合面の一辺の30%以下の場合を△、剥離長さが接合面の一辺の30%を超える場合を×と評価した。
評価結果を表2に示す。
さらに、温度25℃でのずり速度10s−1における粘度を、100mPa・s以上10000mPa・s以下の範囲内とされ、かつ、温度25℃でのずり速度100s−1における粘度を、50mPa・s以上2500mPa・s以下の範囲内とされた実施例1−4においては、塗布後のフィレット形状が良好であることが確認される。
ここで、フラックス成分を分解する酸化物を含有しない比較例1においては、温度25℃でのずり速度10s−1における粘度が10mPa・s以上10000mPa・s以下の範囲内、温度25℃でのずり速度100s−1における粘度が50mPa・s以上2500mPa・s以下の範囲内とされていることから、塗布形状は良好である。しかしながら、フラックス成分を分解する酸化物を有していないため、フラックス成分を分解できず、フラックス成分がセラミックス基板と金属層の接合面に侵入し、接合信頼性が低下したと推測される。
温度25℃でのずり速度100s−1における粘度が8000mPa・sとされた比較例3においては、ペーストの塗布を良好に行うことができず、フィレット形状が不良となった。これにより、フラックス成分がセラミックス基板と金属層の接合面に侵入し、接合信頼性が低下したと推測される。
11 セラミックス基板(第一部材)
13 金属層(第二部材)
40 ヒートシンク(被接合材)
50 フラックス成分侵入防止層形成用ペースト
Claims (5)
- 接合面を介して接合された第一部材と第二部材を有する接合体と、被接合材とを、フラックスを使用して接合する際に、フラックス成分が前記接合面に侵入することを抑制するフラックス成分侵入防止層を形成するためのフラックス成分侵入防止層形成用ペーストであって、
前記フラックス成分を分解する酸化物と、樹脂と、溶剤と、を含有し、
温度25℃でのずり速度10s−1における粘度が、10mPa・s以上20000mPa・s以下の範囲内とされ、
温度25℃でのずり速度100s−1における粘度が、10mPa・s以上5000mPa・s以下の範囲内とされ、
前記酸化物が、TiO 2 、SiO 2 、Al 2 O 3 のうちのいずれか1種又は2種以上とされており、
前記第一部材と前記第二部材の接合面の周縁部に向けて塗布することにより、前記第一部材と前記第二部材の接合面の周縁部に 、フィレット形状の前記フラックス成分侵入防止層が形成されることを特徴とするフラックス成分侵入防止層形成用ペースト。 - 前記樹脂が、アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のフラックス成分侵入防止層形成用ペースト。
- 前記溶剤が、非極性溶媒であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフラックス成分侵入防止層形成用ペースト。
- 前記酸化物の含有量が10質量%以上80質量%以下、前記樹脂の含有量が5質量%以上30質量%以下、残部が溶剤とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフラックス成分侵入防止層形成用ペースト。
- 接合面を介して接合された第一部材と第二部材を有する接合体と、被接合材とを、フラックスを使用して接合する接合体の接合方法であって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフラックス成分侵入防止層形成用ペーストを使用して、前記接合体の第一部材と第二部材との接合面にフラックス成分が前記接合面に侵入することを抑制するフラックス成分侵入防止層を形成し、
その後、前記接合体と、前記被接合材とを、フラックスを使用して接合することを特徴とする接合体の接合方法。
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