以下、本開示に係る空気調和機の実施の形態について図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の実施の形態およびその変形例に示す構成のうち、組み合わせ可能な構成のあらゆる組み合わせを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係または形状等が実際のものとは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る空気調和機100の冷媒回路の構成を示す冷媒回路図である。空気調和機100は、室外機1と室内機2との組み合わせにより構成されている。室外機1と室内機2とは互いに冷媒配管30を介して接続されている。冷媒配管30は、例えば銅配管である。冷媒は、冷媒配管30内を流れる。図1においては、説明のため、構成の一部分を透過させ、破線で示している。また、冷房時の冷媒流路方向を実線の矢印で示し、暖房時の冷媒流路方向を一点鎖線で示している。
室外機1は、屋外に設置される。一方、室内機2は、屋内に設置される。室内機2は、例えば、屋内の壁に設置可能な壁掛け形である。図1の例では、1台の室外機1と1台の室内機2とが接続されているが、それらの台数はこの例に限らない。例えば、1台または複数台の室外機1と1台の室内機2、あるいは、1台または複数台の室外機1と複数台の室内機2を接続することも可能である。
室外機1には、図1に示すように、圧縮機3、室外熱交換器4、減圧装置5、および、四方弁6が収容されている。また、室外機1は、制御部20を有している。制御部20は、室外機1ではなく、室内機2に設置されていてもよい。あるいは、制御部20は、室外機1および室内機2の両方に設置されていてもよい。制御部20は、例えば、マイクロコンピュータから構成される。制御部20のハードウェア構成については後述する。
圧縮機3は、圧縮機モータ19(図2参照)を有する。圧縮機3は、圧縮機モータ19を動力源として動作する。圧縮機モータ19は、制御部20の制御に基づくインバータ制御により回転数の変更が可能である。圧縮機3は、例えば、インバータ圧縮機である。圧縮機3は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。圧縮機モータ19は、圧縮機3を駆動するアクチュエータを構成している。
室外熱交換器4は、内部を流通する冷媒と空気との間で熱交換を行う。室外熱交換器4は、例えば、フィンアンドチューブ型熱交換器である。空気調和機100が冷房運転を行っているときは、室外熱交換器4は、凝縮器として機能する。一方、空気調和機100が暖房運転を行っているときは、室外熱交換器4は、蒸発器として機能する。
減圧装置5は、室外熱交換器4と後述する室内熱交換器7との間に接続されている。減圧装置5は、冷媒を減圧させる。減圧装置5は、例えば、膨張弁である。膨張弁としては、細管を用いて減圧させる膨張弁、または、電子式膨張弁などが用いられる。減圧装置5が電子式膨張弁の場合、制御部20により、減圧装置5の冷媒流量は電気的に制御することができる。
四方弁6は、制御部20の制御に基づいて、冷媒回路における冷媒流路方向を切り替える。空気調和機100が冷房運転を行っているときは、四方弁6は、図1の実線の状態となり、圧縮機3の吐出口と室外熱交換器4とを接続する。一方、空気調和機100が暖房運転を行っているときは、四方弁6は、図1の一点鎖線の状態となり、圧縮機3の吐出口と室内熱交換器7とを接続する。暖房運転または冷房運転のいずれか一方のみ運転可能な空気調和機においては、四方弁6の搭載は省略される。
室内機2には、図1に示すように、室内熱交換器7が収容されている。室内熱交換器7は、内部を流通する冷媒と空気との間で熱交換を行う。室内熱交換器7は、例えば、フィンアンドチューブ型熱交換器である。空気調和機100が冷房運転を行っているときは、室内熱交換器7は、蒸発器として機能する。一方、空気調和機100が暖房運転を行っているときは、室内熱交換器7は、凝縮器として機能する。
図1に示すように、圧縮機3、四方弁6、室外熱交換器4、減圧装置5、および、室内熱交換器7は、冷媒配管30により接続されて、冷媒回路を構成している。このように、空気調和機100は、圧縮機3、室外熱交換器4、減圧装置5、および、室内熱交換器7を基本構成とした冷媒回路内を冷媒が循環する冷凍サイクルを備える。
また、室外機1には、図1に示すように、さらに、室外送風機モータ8と室外ファン9が収容されている。室外送風機モータ8は、制御部20の制御に基づくインバータ制御により回転数の変更が可能である。室外ファン9は、室外送風機モータ8を動力源として動作する。室外ファン9は、室外送風機モータ8と同じ回転数で回転する。室外ファン9は、例えばプロペラファンである。室外送風機モータ8は、室外ファン9を駆動するアクチュエータを構成している。
また、室内機2には、図1に示すように、さらに、室内送風機モータ10と室内ファン11が収容されている。室内送風機モータ10は、制御部20の制御に基づくインバータ制御により回転数の変更が可能である。室内ファン11は、室内送風機モータ10を動力源として動作する。室内ファン11は、室内送風機モータ10と同じ回転数で回転する。室内ファン11は、例えば、クロスフローファンである。なお、図1の例では、室内ファン11はクロスフローファンとして示されているが、この場合に限定されない。室内ファン11は、室外ファン9と同じように、プロペラファンとすることも可能である。室内送風機モータ10は、室内ファン11を駆動するアクチュエータを構成している。
室外ファン9により、室外熱交換器4で熱交換された空気の送風を行い、室内ファン11により、室内熱交換器7で熱交換された空気の送風を行う。
空気調和機100の動作について説明する。はじめに、空気調和機100が冷房運転を行うときの動作について説明する。圧縮機3は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。吐出された冷媒は、四方弁6を介して、室外熱交換器4に流入される。室外熱交換器4には、室外ファン9から空気が送風される。室外熱交換器4は、冷媒と空気との間の熱交換を行う。このとき、室外熱交換器4は、凝縮器として機能する。従って、熱交換により、冷媒は冷却される。冷却された冷媒は、減圧装置5に流入される。減圧装置5は、当該冷媒を減圧して膨張させる。当該冷媒は、室内熱交換器7に流入される。室内熱交換器7には、室内ファン11から空気が送風される。室内熱交換器7は、冷媒と空気との間の熱交換を行う。室内熱交換器7は、蒸発器として機能する。従って、熱交換により、冷媒は加熱され、空気は冷却される。加熱された冷媒は、四方弁6を介して、圧縮機3に吸入される。
次に、空気調和機100が暖房運転を行うときの動作について説明する。圧縮機3は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。吐出された冷媒は、四方弁6を介して、室内熱交換器7に流入される。室内熱交換器7には、室内ファン11から空気が送風される。室内熱交換器7は、冷媒と空気との間の熱交換を行う。室内熱交換器7は、凝縮器として機能する。従って、熱交換により、冷媒は冷却され、空気は加熱される。冷却された冷媒は、減圧装置5に流入される。減圧装置5は、当該冷媒を減圧して膨張させる。膨張された冷媒は、室外熱交換器4に流入される。室外熱交換器4には、室外ファン9から空気が送風される。室外熱交換器4は、冷媒と空気との間の熱交換を行う。室外熱交換器4は、蒸発器として機能する。従って、熱交換により、冷媒は加熱される。加熱された冷媒は、四方弁6を介して、圧縮機3に吸入される。
また、図1に示すように、圧縮機3、室外熱交換器4および室内熱交換器7のそれぞれには、温度センサ12が設けられている。各温度センサ12は、例えば、サーミスタである。各温度センサ12と制御部20とは電気的に接続されている。制御部20は、各温度センサ12からの情報を基に、各アクチュエータにおける冷媒状態を把握可能となる。図1の例では、温度センサ12の個数は3つとしているが、必要に応じて室外機1と室内機2とに備える温度センサ12の個数を増加または減少することは可能である。
図2は、実施の形態1に係る空気調和機100に設けられたモータ制御回路40の構成を示す回路図である。モータ制御回路40は、室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8の制御を行う。図2に示すように、モータ制御回路40は、ノイズフィルタ回路14と、コンバータ回路15と、回生回路17と、インバータ回路18とを有している。回生回路17とインバータ回路18とは、同一の基板上に実装される。以下では、当該基板を、インバータ基板と呼ぶ。
ノイズフィルタ回路14は、交流電源13に接続されている。ノイズフィルタ回路14には、交流電源13からの電力が供給される。ノイズフィルタ回路14は、一端が正側母線41に接続され、他端が負側母線42に接続されている。ノイズフィルタ回路14は、交流電源13から出力される交流電圧の波形から、ノイズを除去する。
コンバータ回路15は、ノイズフィルタ回路14に並列に接続されている。コンバータ回路15は、一端が正側母線41に接続され、他端が負側母線42に接続されている。コンバータ回路15は、ノイズフィルタ回路14から出力された交流波形を、直流波形に変換する。コンバータ回路15は、ダイオード素子などの複数のスイッチング素子を含む。図2の例においては、コンバータ回路15は、4個のダイオード素子がブリッジ接続されたブリッジ回路である。
コンバータ回路15を構成する一部としてリアクタ16が設けられている。リアクタ16は、正側母線41に直列に接続されている。リアクタ16は、上述したインバータ基板に接続されて、室外機1の中に備えられる。
また、コンバータ回路15は、スイッチ15aおよび15bを有している。スイッチ15aおよび15bのオンとオフとの切り替えは、制御部20によって制御される。スイッチ15aおよび15bは、例えば、半導体スイッチング素子である。
回生回路17は、交流電源13とインバータ回路18との間に接続されている。さらに詳細に言えば、回生回路17は、コンバータ回路15とインバータ回路18との間に接続されている。室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8の駆動時は、回生回路17は、コンバータ回路15から出力された直流電流を、インバータ回路18のそれぞれに供給する。一方、室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8の減速時は、回生回路17は、これらのモータの回生制動を行う。回生回路17は、スイッチング素子を有している。制御部20が当該スイッチング素子のオンオフ動作を制御することで、回生回路17は、室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8の回生制動を行う。回生制動においては、室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8は、発電機として利用される。また、回生回路17は、回生制動で得られた電力を電源側に回生するか、あるいは、蓄電器17a(図3参照)に蓄積する。これにより、省エネルギー効果が得られる。
ここで、回生制動とは、通常は動力源として用いられているモータを、発電機として作動させ、回転の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することで、モータに制動をかける電気ブレーキの一手法である。回生制動では、モータの電機子電圧を電源電圧よりも高くすることにより、モータを発電機として駆動させる。回生制動における制動の大きさは、インバータ回路18に流す電流の大きさに依存する。
図3は、図2の回生回路17の構成を示す拡大図である。図3に示すように、回生回路17は、蓄電器17aと、2つのダイオード17bおよび17dと、2つのスイッチング素子17cおよび17eとを有している。
蓄電器17aは、一端が正側母線41に接続され、他端が負側母線42に接続されている。蓄電器17aと正側母線41との接続点を、接続点45と呼ぶ。また、蓄電器17aと負側母線42との接続点を、接続点46と呼ぶ。蓄電器17aは、室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8の減速時の回生制動により得られる電力を蓄積する。蓄電器17aは、コンデンサまたはバッテリである。
ダイオード17dは、蓄電器17aに並列に接続されている。ダイオード17dは、カソード端子が正側母線41に接続され、アノード端子が負側母線42に接続されている。ダイオード17dと正側母線41との接続点を、接続点47と呼ぶ。また、ダイオード17dと負側母線42との接続点を、接続点48と呼ぶ。スイッチング素子17eは、ダイオード17dに並列に接続されている。
ダイオード17bは、正側母線41に直列に接続されている。ダイオード17bの向きは、正側母線41に流れる電流の向きに対して逆向きである。すなわち、ダイオード17bは、カソード端子が接続点45に接続され、アノード端子が接続点47に接続されている。スイッチング素子17cは、ダイオード17bに並列に接続されている。
スイッチング素子17cおよび17eは、例えば半導体スイッチング素子である。スイッチング素子17cおよび17eのオンとオフとの切り替えは、制御部20によって制御される。スイッチング素子17cがオフの状態のとき、交流電源13からインバータ回路18への電力供給は遮断される。
また、図3に示すように、正側母線41は、接続点43で、3つの正側母線41a、41b、および、41cに分岐する。また、負側母線42は、接続点44で、3つの負側母線42a、42b、および、42cに分岐する。
図2の説明に戻る。インバータ回路18は、3つのインバータ回路18a、18bおよび18cを含む。
インバータ回路18aは、一端が正側母線41aに接続され、他端が負側母線42aに接続されている。インバータ回路18aは、回生回路17から出力された直流電流を3相の交流波形に変換して、室内送風機モータ10に供給する。これにより、室内ファン11が駆動される。
インバータ回路18bは、一端が正側母線41bに接続され、他端が負側母線42bに接続されている。インバータ回路18bは、回生回路17から出力された直流電流を3相の交流波形に変換して、圧縮機モータ19に供給する。これにより、圧縮機3が駆動される。
インバータ回路18cは、一端が正側母線41cに接続され、他端が負側母線42cに接続されている。インバータ回路18cは、回生回路17から出力された直流電流を3相の交流波形に変換して、室外送風機モータ8に供給する。これにより、室外ファン9が駆動される。
インバータ回路18a、18bおよび18cのそれぞれは、複数のスイッチング素子を含む。それらのスイッチング素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのトランジスタである。各トランジスタには、逆流防止用のダイオードが逆並列接続されている。図2の例においては、インバータ回路18a、18bおよび18cのそれぞれは、6個のトランジスタがブリッジ接続された三相ブリッジ回路である。インバータ回路18a、18bおよび18cのそれぞれは、6個のトランジスタのオンオフ動作により、直流母線電圧を三相交流電圧に変換する。それらのトランジスタのオンとオフとの切り替えは、制御部20によって制御される。
次に、図2のモータ制御回路40の動作について説明する。交流電源13から電力が供給され、ノイズフィルタ回路14により交流波形のノイズ除去が行われる。次に、コンバータ回路15が、交流波形から直流波形への変換を行う。次に、回生回路17を通過した直流電流は、インバータ回路18a、18bおよび18cにより、再び、交流波形に変換される。これにより、室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8が駆動される。室内送風機モータ10には室内ファン11が接続され、圧縮機モータ19には圧縮機3が接続され、室外送風機モータ8には室外ファン9が接続されている。室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8の回転数で、それぞれ、室内ファン11、圧縮機3および室外ファン9が回転する。
上述したように、コンバータ回路15、回生回路17およびインバータ回路18は、通電のオンとオフとの切り替えが可能なスイッチング素子を備える。それらスイッチング素子としては、上述したように、例えば半導体スイッチング素子が用いられる。スイッチング素子を切り替えるタイミングは、制御部20によって制御される。
図2に示すモータ制御回路40のうち、回路50A部分は、図4に示す簡易な等価回路50で表すことができる。図4は、図2の回路50Aの等価回路50を示す図である。回路50Aは、回生回路17、インバータ回路18、室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8を含む。ただし、図4において、モータ21は、室内送風機モータ10、圧縮機モータ19および室外送風機モータ8のいずれか1つを表す。
図4に示すように、等価回路50は、キャパシタ22と、抵抗23と、2つのダイオード24および26と、2つのスイッチ25および27と、抵抗28と、インダクタ29とで、表すことができる。
キャパシタ22は、モータ21の回生制動により生じる電荷を蓄えることが可能である。キャパシタ22の正側端子には、抵抗23の一端が直列接続されている。抵抗23の内部抵抗は、配線の合成抵抗を表している。抵抗23の他端には、ダイオード24が逆向きで直列接続されている。すなわち、ダイオード24のカソード端子が抵抗23の当該他端に接続されている。スイッチ25は、ダイオード24に並列接続されている。
ダイオード26は、ダイオード24の後段に配置されている。ダイオード26は、キャパシタ22に並列に接続されている。ダイオード26のカソード端子が、ダイオード24のアノード端子に接続されている。ダイオード26のアノード端子は、キャパシタ22の負側端子に接続されている。スイッチ27は、ダイオード26に並列接続されている。スイッチ25とスイッチ27とは、制御部20によりオンとオフの切り替えが可能である。
抵抗28は、ダイオード26の後段に配置されている。抵抗28の一端は、ダイオード24のアノード端子に接続されると共に、ダイオード26のカソード端子に接続されている。抵抗28の他端は、インダクタ29の一端に直列接続されている。抵抗28は、モータ21の鉄損および銅損を含んだ巻線抵抗、および、インダクタ29によるインダクタンスとの合成インピーダンスを表している。インダクタ29の他端は、モータ21の一端に接続されている。モータ21の他端は、ダイオード26のアノード端子およびキャパシタ22の負側端子に接続されている。なお、モータ21の外部へ意図的にインダクタ29を接続することも可能である。その場合の抵抗28は、その外部接続されたインダクタ29によるインダクタンスと前述した合成インピーダンスとの合成値を表す。
図4に示す等価回路50において、モータ21の停止中は、制御部20の制御により、スイッチ25とスイッチ27がともにオフの状態であり、交流電源13からのモータ21への電力供給はない。
一方、モータ21の駆動時は、図4に示す等価回路50において、制御部20の制御により、スイッチ25がオン、スイッチ27がオフとなる。これにより、交流電源13からモータ21への電力供給が行われる。このとき、制御部20により制御される周波数でインバータ回路18に備える複数のトランジスタのオンとオフを切り替えることにより、モータ21の駆動時のモータ回転数が可変となる。キャパシタ22の短絡を回避するため、制御部20では、スイッチ25とスイッチ27が同時にオンとならないような規制を行う。具体的には、例えば、スイッチ25およびスイッチ27の一方にオフ信号を与えた時点から、一定時間TD(図8参照)が経過した後に、他方にオン信号を与えるようにすればよい。当該一定時間TDを、短絡防止期間またはデッドタイムという。
次に、モータ21の減速時の等価回路50の動作について説明する。まず、モータ21が駆動中のときは、上述したように、スイッチ25がオン、スイッチ27がオフになっている。このとき、モータ21を減速する場合、制御部20の制御により、スイッチ25がオフとなる。これにより、交流電源13からモータ21への電力供給が遮断される。この状態で、スイッチ27のオンとオフとの切り替えを繰り返し行うことにより、等価回路50において、昇圧チョッパ回路が形成される。これにより、モータ21の減速時に、モータ21側の電圧の昇圧が行われる。その際、等価回路50内に流れる電流の方向により、交流電源13側への電力の回生を行うことが可能となる。
図5は、実施の形態1に係る空気調和機100のモータ制御回路40における電磁エネルギー蓄積時の回路図である。図5は、モータ21の減速時に、図4の等価回路50において、スイッチ25をオフとし、スイッチ27をオンとしたときの回路図を示す。このとき、モータ21には、その回転数に比例した起電力が発生する。駆動時に電動機として作用していたモータ21は、図5において発電機として作用し、インダクタ29には電磁エネルギーが蓄積される。このとき、図5の回路には、モータ21の回転数に応じて時計回りと反時計回りのいずれの方向にも電流Iが流れる可能性がある。
一方、図4の等価回路50において、スイッチ25とスイッチ27とを共にオフとしたとき、図5の回路においてインダクタ29に蓄積された電磁エネルギーが放出される。このとき、回路に流れる電流Iの方向により、図6と図7の回路に場合分けされる。
図6は、実施の形態1に係る空気調和機100のモータ制御回路40における電力回生時の回路図である。図6において、電流Iは、図中の矢印の方向、すなわち、反時計回りに流れる。そのため、モータ21の減速時に生じる電力は、キャパシタ22へ回生される。回生した電力は、空気調和機100の待機電力またはモータ21の再駆動時の電力として利用される。
図7は、実施の形態1に係る空気調和機100のモータ制御回路40における電力非回生時の回路図である。図7において、電流Iは、図中の矢印方向、すなわち、時計回りに流れる。これにより、モータ21の減速時に生じる電力は、抵抗28などで熱として消費される。
モータ21の減速中は、制御部20でスイッチ27を切り替えるスイッチング周期Tを調整することにより、目的のモータ回転数に減速するまでの過渡状態の時間長を制御することが可能となる。過渡状態の時間長は、制動の大きさと反比例する。制御部20は、モータ21の減速中に、スイッチ25がオフの状態において、スイッチ27のスイッチング動作を制御するスイッチング定数を決定する。スイッチング定数は、スイッチ27のオン時間Tonとオフ時間Toffとをそれぞれ示す2つのパラメータである。図8は、実施の形態1に係る空気調和機100の回生回路17に設けられたスイッチ25および27のオン時間Tonとオフ時間Toffとを示す図である。図8において、横軸は時間を示し、縦軸はスイッチ25およびスイッチ27の電圧を示す。また、実線60は、スイッチ25のオンオフの状態を示し、実線61は、スイッチ27のオンオフの状態を示す。図8に示すように、スイッチング周期Tは、スイッチ27のオン時間Tonとオフ時間Toffとを加算した値である。
なお、モータ21の減速中の制動の大きさは、スイッチ27のスイッチング周期T(=Ton+Toff)に対するスイッチ27のオン時間Tonの比(=Ton/T)に依存する。当該比が1に近づくほど、モータ21の目標回転数に至るまでに要する時間が短くなる。したがって、スイッチング定数は、スイッチ27のオン時間Tonとオフ時間Toffとを示す2つのパラメータの代わりに、スイッチ27のオン時間Tonとスイッチ27のスイッチング周期Tとの比(=Ton/T)を示す1つのパラメータとしてもよい。
制御部20は、モータ21の減速中に、凝縮器の凝縮圧力が圧力上限値に近くなるほど、凝縮圧力が過上昇している状態であると判定し、モータ21の減速スピードを遅らせる制御を行う。このとき、制御部20にて、上記のスイッチング定数を変更し、減速中のモータ21のモータ回転数が目標回転数に至るまでに要する時間を長くすることで、凝縮器における熱交換量の急激な減少による設計圧力超過を回避する。
制御部20は、モータ21の減速中に、凝縮器の凝縮圧力が圧力上限値から離れるほど、設計圧力超過に対してマージンが確保できている状態であると判定し、モータ21の減速スピードを速くする制御を行う。このとき、制御部20にて、上記のスイッチング定数を変更し、減速中のモータ21のモータ回転数が目標回転数に至るまでに要する時間を短くすることで、モータ21の回転数の変更の即応性を高め、ユーザの快適性を向上させる。
このように、制御部20は、モータ21の減速中に、凝縮器の凝縮圧力と圧力上限値とに基づいて、回生回路17に設けられたスイッチ27のオンオフ動作を制御する。凝縮器の凝縮圧力は、例えば、以下のようにして求める。図1に示すように、温度センサ12は、室外熱交換器4および室内熱交換器7に設けられている。冷房時は室外熱交換器4が凝縮器として機能し、暖房時は室内熱交換器7が凝縮器として機能する。制御部20は、冷房時は、室外熱交換器4に取り付けられた温度センサ12から温度を取得する。また、制御部20は、暖房時は、室内熱交換器7に取り付けられた温度センサ12から温度を取得する。制御部20は、温度センサ12によって検出された冷媒温度を冷媒圧力に変換する。制御部20は、こうして得た冷媒圧力を、凝縮圧力として用いる。なお、冷媒温度を冷媒圧力に変換する方法は、制御部20が、予め設定された演算式を用いて冷媒温度から冷媒圧力を演算する。あるいは、制御部20が、冷媒温度ごとの冷媒圧力の値を定義したデータテーブルを予め記憶部20d(図9参照)に記憶しておき、当該データテーブルを用いて、冷媒温度から冷媒圧力を求めるようにしてもよい。
制御部20は、空気調和機100の圧力上限値を予め記憶部20d(図9参照)に記憶している。制御部20は、冷媒温度から求めた凝縮圧力と圧力上限値との差を演算し、当該差に基づいて、上述したスイッチング定数の変更を行う。
また、モータ回転数変更の即応性を重点的に設計する場合など、設計意図によっては、特定の減速スピードにてモータ21の減速過程を検討する場合がある。そこで、モータ21が減速する際、制御部20の演算によるスイッチング定数変更のほかに、制御部20は、人為的にスイッチング定数を設定可能なモードも備える。
当該モードでは、書き換え可能なデータ形式にて、スイッチ27のオン時間Tonとオフ時間Toffを示す2つのパラメータを、ユーザが外部から制御部20に入力することで、変更可能とする。あるいは、スイッチ27のオン時間Tonとスイッチング周期Tとの比(=Ton/T)を示す1つのパラメータを、ユーザが外部から制御部20に入力することで、変更可能とする。この場合、空気調和機100の圧力が設計圧力を超過しやすい過負荷環境下における実機評価を経て、凝縮圧力の設計圧力超過に対するマージンを考慮し、スイッチング定数の決定を行う。こうすることで、空気調和機100の圧力が設計圧力を超過することを確実に抑制できる。
図9は、実施の形態1に係る空気調和機100の制御部20の構成を示すブロック図である。図9に示すように、制御部20は、温度取得部20aと、演算部20bと、スイッチング制御部20cと、記憶部20dとを有している。
温度取得部20aは、冷房時は、室外熱交換器4に取り付けられた温度センサ12から冷媒温度を取得し、暖房時は、室内熱交換器7に取り付けられた温度センサ12から温度を取得する。このように、温度取得部20aは、凝縮器として機能している室外熱交換器4または室内熱交換器7に取り付けられた温度センサ12から冷媒温度を取得する。
演算部20bは、温度取得部20aが取得した冷媒温度を冷媒圧力に変換することで、凝縮器の凝縮圧力を求める。また、演算部20bは、求めた凝縮圧力と、記憶部20dに記憶された圧力上限値との差を求める。また、演算部20bは、当該差に基づいて、回生回路17のスイッチ27のオンオフ動作を制御するためのスイッチング定数を求める。スイッチング定数は、スイッチ27のオン時間Tonとオフ時間Toffを示す2つのパラメータ、または、スイッチ27のオン時間Tonとスイッチング周期Tとの比(=Ton/T)を示す1つのパラメータである。
このとき、演算部20bは、凝縮器の凝縮圧力が圧力上限値以下で、且つ、凝縮器の凝縮圧力が圧力上限値に近づくほど、モータ21の減速スピードが遅くなるように、スイッチング定数を決定する。すなわち、スイッチ27のオン時間Tonを小さくし、オフ時間Toffを大きくする。また、演算部20bは、凝縮器の凝縮圧力が圧力上限値以下で、且つ、凝縮器の凝縮圧力が圧力上限値から離れるほど、モータ21の減速スピードが速くなるように、スイッチング定数を決定する。すなわち、スイッチ27のオン時間Tonを大きくし、オフ時間Toffを小さくする。なお、演算部20bは、凝縮器の凝縮圧力が圧力上限値を超えている場合には、モータ21の減速スピードが遅くなるように、スイッチング定数を決定する。
スイッチング制御部20cは、回生回路17に設けられたスイッチ25および27のオンオフ動作の制御を行う。また、スイッチング制御部20cは、図2に示したコンバータ回路15に設けられたスイッチ15aおよび15bのオンオフ動作も制御する。さらに、スイッチング制御部20cは、インバータ回路18a、18bおよび18cに設けられた各トランジスタのオンオフ動作の制御も行う。
記憶部20dは、圧力上限値を予め記憶している。さらに、記憶部20dは、温度取得部20aが取得した冷媒温度のデータを記憶する。また、記憶部20dは、演算部20bの演算結果などの各種データを記憶する。また、記憶部20dは、必要に応じて、冷媒温度ごとの冷媒圧力の値を定義した上記データテーブルを記憶する。
ここで、制御部20のハードウェア構成について説明する。制御部20における温度取得部20a、演算部20bおよびスイッチング制御部20cの各機能は、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェア、または、プロセッサから構成される。専用のハードウェアは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などである。プロセッサは、メモリに記憶されるプログラムを実行する。記憶部20dはメモリから構成される。メモリは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、もしくは、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスクなどのディスクである。
図10は、実施の形態1に係る空気調和機100の制御部20の処理の流れを示すフローチャートである。図10のフローの処理は、モータ21の減速時に行われる。
図10に示すように、ステップS1で、制御部20は、回生回路17のスイッチ25をオフにする。これにより、交流電源13からモータ21への電力の供給が遮断される。
次に、ステップS2で、制御部20の温度取得部20aは、温度センサ12から冷媒温度を取得する。このとき、温度取得部20aは、凝縮器として機能している室外熱交換器4または室内熱交換器7に取り付けられた温度センサ12から冷媒温度を取得する。
次に、ステップS3で、制御部20の演算部20bは、ステップS2で取得した冷媒温度を冷媒圧力に変換することで、凝縮器の凝縮圧力を求める。
次に、ステップS4で、制御部20の演算部20bは、ステップS3で求めた凝縮圧力と、予め設定された圧力上限値との差を求める。
次に、ステップS5で、制御部20の演算部20bは、ステップS4で求めた差に基づいて、回生回路17のスイッチ27のオンオフ動作を制御するための上記のスイッチング定数を求める。
次に、ステップS6で、制御部20のスイッチング制御部20cは、ステップS5で求めたスイッチング定数に基づいて、回生回路17のスイッチ27のオンオフ動作を制御する。その後、ステップS2の処理に戻る。
以上のように、実施の形態1においては、空気調和機100のモータ21に、スイッチング制御可能な回生制動を適用する。制御部20は、モータ21の減速時に、凝縮器の凝縮圧力と凝縮器の圧力上限値とに基づいて、回生回路17を制御する。これにより、空気調和機100の設計圧力以下の圧力を保持しながら、モータ21の減速が可能となる。また、回生制動によって得られる電力を空気調和機100の待機電力またはモータ21の再駆動時の電力として利用することで、消費電力を抑えた空気調和機100の稼働を実現するという効果を有する。
実施の形態1においては、モータ21の減速中の凝縮器の圧力の過上昇をアクチュエータ制御のみで回避する。そのため、必要以上に、空気調和機100の冷媒回路部品の耐圧性を高める必要がなく、コスト面でのメリットも期待できる。具体的には、冷媒配管30を構成する銅配管を厚くする、あるいは、材料変更による耐圧向上を図るなどの、耐圧向上対策が必要ない。そのため、耐圧向上対策にかかる費用がかからず、空気調和機100のコストアップを抑制することができる。
また、実施の形態1では、モータ21の減速時のスイッチング定数は変更可能であり、制御部20での演算またはユーザの入力により設定可能である。実施の形態1においては、制御部20は、冷媒温度から求めた凝縮圧力と圧力上限値との差を演算し、当該差に基づいて、スイッチング定数の変更を行う。そのため、凝縮圧力が圧力上限値を超えることはなく、その結果、空気調和機100の圧力が設計圧力を超えることはない。また、ユーザがスイッチング定数を入力する場合は、空気調和機100の圧力が設計圧力を超過しやすい過負荷環境下における実機評価に基づいて決定したスイッチング定数を用いる。そのため、凝縮圧力が圧力上限値を超えることはなく、その結果、空気調和機100の圧力が設計圧力を超えることはない。
また、実施の形態1では、モータ21の減速時は、交流電源13からモータ21への電力供給を遮断する。モータ21の減速時の電力消費がないため、さらに、省エネルギー効果が得られる。また、回生回路17の蓄電器17aに蓄電した電力を、空気調和機100の待機電力またはモータ21の再駆動時の電力として利用する。これにより、消費電力を抑えた高効率かつ信頼性の高い空気調和機100を得ることができる。
ユーザの快適性が重要視される空気調和機においては、ユーザがリモコンで設定可能な風速は4速または5速などの多段階に設計されることが多い。このように、モータの最大回転数と最小回転数との差が大きい設計をすることで、モータが最大回転数から最小回転数に減速したときに、空気調和機の圧力が設計圧力を超過してしまうことが一層懸念される。しかしながら、実施の形態1に係る空気調和機100においては、上述したように、空気調和機100のモータ21にスイッチング制御可能な回生制動を適用する。これにより、実施の形態1では、このような場合においても、空気調和機100の設計圧力以下の圧力を保持しながら、モータ21の減速が可能である。
また、現在、ほとんどのメーカが採用している冷媒のR32は、従来用いられてきた冷媒のR22(クロロジフルオロメタン CHClF2)などのハイドロクロロフルオロカーボンと比較して、高い圧力値を示す。このため、空気調和機の圧力が設計圧力を超過することにより引き起こされる機器不具合への対策は、より慎重に検討する必要がある。しかしながら、実施の形態1に係る空気調和機100においては、冷媒としてR32を使用した場合においても、空気調和機100の設計圧力以下の圧力を保持しながら、モータ21の減速が可能である。