JP7240226B2 - 異方性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、異方性フィルム、特には異方性導電フィルムに関する。
近年、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などのフラットパネルディスプレイや精密機器の電子部品同士を接続する際には、はんだの代わりに異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)が使用されている。前記異方性導電フィルムは、導電性粒子を含有する絶縁性樹脂から成り、回路電極間に配置され加圧、加熱により圧着することで回路間の電気的接続を行うことができる。
異方性導電フィルムの一般的な製造方法としては、絶縁性樹脂と導電性粒子を混合し、塗工する方法がある。特許文献1では、平均粒径10μm、最大粒径15μmのスズ鉛半田粒子を含有するポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂の混合物を塗工することで異方性導電フィルムを製造している。特許文献2では、平均粒径2μmのニッケル粒子をフェノキシ樹脂と混合し、塗工装置を用いて異方性導電フィルムを製造している。特許文献3では、平均粒子径20μmの銀メッキ樹脂粒子を絶縁性樹脂に混合し塗布することで異方性導電フィルムを製造している。
しかしながら、これらの異方性導電フィルムは、粒子同士の凝集が起こるなどして均一に粒子を分散させることが困難であるため、異方性導電フィルムの平面方向の絶縁性を維持しながら目的の導電性領域を保持することは難しい。粒子同士の凝集を防ぐために粒子濃度を小さくすると、異方性導電フィルムの断面方向の導電性を保持することが難しい。このため微細なパターンを有する回路電極同士を電気的に接続することはできなかった。
特許文献4では導電性粒子の粒子径よりも小さな孔をもつ多孔板に導電性粒子を吸着させ、転写することで導電性粒子が規則正しく配列した、異方性導電フィルムが報告されている。特許文献5では、金型に導電性粒子を配列し、転写することで導電性粒子が規則正しく配列した、異方性導電フィルムが報告されている。
しかしながら、回路電極が導電性粒子と点で接して接続されるため、低温高温を繰り返す熱衝撃などによって不導通となることがある。
特開平5-154857号公報 特開2008-112713号公報 特開2015-147832号公報 特開2005-209454号公報 特開2018-090768号公報
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであって、微細なパターンを有する回路電極同士を電気的に接続し、信頼性の高い異方性導電フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、さらに、導電性の場合に限定されず、粒子群による微細で正確なパターンを有する異方性フィルムを提供することを目的とする。
上記課題を達成するために、本発明では、絶縁性樹脂と粒子群を含有する異方性フィルムであって、前記粒子群は複数の粒子同士がバインダーで結着された粒子の群であり、かつ、前記粒子群は規則的に配列されており、その間隔が1μm~1,000μmである異方性フィルムを提供する。
このような異方性フィルムであれば、微細なパターンを有する回路電極、又は微細な電子部品や素子等をより安定的に接続できるものとなる。さらに、粒子群による微細で正確なパターンを有する異方性フィルムであることから、種々の用途に適用可能である。
また、前記絶縁性樹脂と前記粒子群の-50℃~200℃の範囲における線膨張係数の差が1~200ppm/Kのものであることが好ましい。
このような線膨張係数の差とすれば、温度変化においても電子部品が異方性フィルムからより外れにくくなる。
さらに、前記バインダーを、前記絶縁性樹脂と同じ組成の樹脂組成物とすることができる。
同種の樹脂を用いると、バインダーと絶縁性樹脂が相溶でき、異方性フィルムの強度を高められる。
また、前記バインダーが、前記絶縁性樹脂とは異なる組成の樹脂組成物とすることができる。
異種の樹脂を用いると、組成物(バインダーと粒子の混合物)が粒子を含有していても、該組成物と絶縁性樹脂の線膨張係数を合わせられるため好ましい。
また、前記粒子が導電性粒子であり、前記粒子群が導電性粒子群であってもよい。
粒子をこのようなものとすれば、本発明の異方性フィルムを微細なパターンを有する回路電極同士を電気的に接続でき、信頼性が高い異方性導電フィルムとすることができる。
また、前記粒子が熱伝導性粒子であり、前記粒子群が熱伝導性粒子群であってもよい。
粒子をこのようなものとすれば、本発明の異方性フィルムを異方性熱伝導フィルムとすることができる。
また、前記粒子が蛍光体であり、前記粒子群が蛍光体粒子群であってもよい。
粒子をこのようなものとすれば、本発明の異方性フィルムを異方性蛍光体フィルムとすることができる。
また、前記粒子が磁性粒子であり、前記粒子群が磁性粒子群であってもよい。
粒子をこのようなものとすれば、本発明の異方性フィルムを異方性磁性フィルムとすることができる。
また、前記粒子が電磁波吸収フィラーであり、前記粒子群が電磁波吸収フィラー粒子群であってもよい。
粒子をこのようなものとすれば、本発明の異方性フィルムを異方性電磁波吸収フィルムとすることができる。
また、前記異方性フィルムの厚さが、1μm~2000μmであることが好ましい。
このような異方性フィルムであれば、絶縁性樹脂部分と粒子群との熱膨張率(CTE)の差による影響が小さいので、電子部品が該異方性フィルムからはずれにくくなる。
また、前記粒子の平均粒径がレーザー回折式粒度分布測定装置で測定されたメジアン径として0.01~100μmのものであることが好ましい。
この範囲であれば粒子を高充填することが可能である。
また、前記粒子群が1~1000μmの幅を有するものであることが好ましい。
この範囲内であれば、絶縁性樹脂と粒子群のそれぞれの利点を活用できるため好ましい。
また、前記粒子群の幅が、前記粒子の平均粒径の5倍以上のものであることが好ましい。
この範囲であれば、粒子群として粒子の機能をより確実に発揮できるため好ましい。
また、前記粒子群の理論平均粒子数が、50~1×10個のものであることが好ましい。
この範囲内であれば、粒子群を柱状に形成できるため好ましい。
また、前記粒子群の形状が、円柱状又は角柱状のものであることが好ましい。
この範囲内であれば粒子群の機能として異方性が発揮しやすくなるため好ましい。
また、前記粒子群の上面の面積に対する下面の面積の比が、0.5~10のものであることが好ましい。
この範囲内であれば粒子群の機能として異方性が発揮しやすくなるし、製造も容易となるため好ましい。
また、前記粒子群の厚さが、前記異方性フィルムの厚さの50%以上であることが好ましい。
この場合、例えば、出来上がった異方性導電フィルムの上から電極を押し付けた際に、通電を確保し易くなる。
また、前記粒子群が前記異方性フィルムの少なくとも一方の表面で露出していることが好ましい。
例えば、異方性導電フィルムの少なくとも一方の表面で導電性粒子群が露出することによって、異方性導電フィルムを大きな力で熱圧着することなく、導通を確保できる。
また、前記少なくとも一方の表面における露出している前記粒子群の面積割合が、20~90%であることが好ましい。
この範囲内であれば、異方性フィルムが高い柔軟性を保持しつつ、確実に目的の機能を発揮することができる。
また、前記絶縁性樹脂が、未硬化状態で25℃において可塑性の固体または半固体状であることが好ましい。
絶縁性樹脂がこのような性状を有していると、例えば、電子部品を圧着する際には変形することができ、かつ完全に硬化させることによって良好な接着力を得られる。
また、前記粒子が金属粒子を含むものであることが好ましい。
本発明では、このような粒子を好適に用いることができる。特に、金属粒子は電気抵抗が小さく、高温で焼結させることも可能なため好ましく用いられる。
また、前記絶縁性樹脂が絶縁性無機粒子を含有することが好ましい。
絶縁性無機粒子を含有することで、絶縁性樹脂の硬化物の熱膨張率を下げることができる。
このとき、前記絶縁性無機粒子が、白色顔料であってもよい。
絶縁性無機粒子をこのようなものとすれば、本発明の異方性フィルムを、例えばリフレクターフィルムとすることができる。
また、前記絶縁性樹脂が中空粒子を含有してもよい。
中空粒子を含有することで、本発明の異方性フィルムを中空フィルムとすることができる。
また、前記絶縁性樹脂の硬化物が、10GHzでの比誘電率が3.5以下であることが好ましい。
このような硬化物であれば、例えば、回路デバイスの伝送損失を低減することができる。
また、前記異方性フィルムが、導電フィルム、熱伝導フィルム、蛍光体フィルム、磁性フィルム、電磁波吸収フィルム、リフレクターフィルム、及び中空フィルムのうちのいずれかであってもよい。
本発明の異方性フィルムは、このような用途に用いることができる。
以上のように、本発明は、粒子群による微細で正確なパターンを有する異方性フィルムであることから、種々の用途に適用可能である。特に、本発明は、非常に微細なパターンを有する回路電極同士を電気的に接合でき、それによって電子機器の小型化、薄型化、軽量化を達成でき、かつ熱衝撃などにも耐えられる高信頼性の異方性導電フィルムを提供する。
本発明の異方性導電フィルムの一例を示すイメージ図である。 実施例1で製造したフィルムの厚さ30μm、銀粒子群の幅30μm、厚さ30μm、間隔30μmのパターンを有する異方性導電フィルムの上面図である。 実施例1で製造したフィルムで、銀粒子群を転写したあとの断面図である。 実施例1で製造したフィルムで、熱プレスし、銀粒子群をフィルムの中に押し込んだ後の断面図である。 図4の断面図の一部を拡大したものである。 実施例2で製造したフィルムの厚さ200μm、銅粒子群の幅80μm、厚さ100μm、間隔80μmのパターンを有する異方性導電フィルムの上面図である。 実施例3で製造したフィルムの厚さ10μm、銀粒子群の幅5μm、厚さ5μm、間隔5μmのパターンを有する異方性導電フィルムの上面図である。 実施例4で製造したフィルムの厚さ100μm、銀粒子群の幅80μm、厚さ80μm、間隔80μmのパターンを有する異方性導電フィルムの上面図である。 実施例5で製造したフィルムの厚さ3μm、銀粒子群の幅1μm、厚さ2μm、間隔1.5μmのパターンを有する異方性導電フィルムの上面図である。 実施例6で製造したフィルムの厚さ500μm、銅粒子群の幅1,000μm、厚さ500μm、間隔1,000μmのパターンを有する異方性導電フィルムの上面図である。 実施例7で製造したフィルムの厚さ600μm、銀粒子群の幅500μm、厚さ500μm、間隔500μmのパターンを有する異方性導電フィルムの上面図である。 実施例8で製造したフィルムの厚さ20μm、銅粒子群の幅5μm、厚さ5μm、間隔5μmのパターンを有する異方性導電フィルムの上面図である。 実施例9で製造したフィルムの厚さ500μm、熱伝導粒子群の幅500μm、厚さ500μm、間隔50μmのパターンを有する異方性熱伝導フィルムの上面図である。 実施例10で製造したフィルムの厚さ40μm、蛍光体粒子群の幅40μm、厚さ40μm、間隔40μmのパターンを有する異方性蛍光体フィルムの上面図である。 実施例11で製造したフィルムの厚さ30μm、蛍光体粒子群の幅30μm、厚さ30μm、間隔30μmのパターンを有する異方性蛍光体フィルムの上面図である。 実施例12で製造したフィルムの厚さ2000μm、磁性粒子群の幅800μm、厚さ1500μm、間隔100μmのパターンを有する異方性磁性フィルムの上面図である。 実施例13で製造したフィルムの厚さ100μm、電磁波吸収粒子群の幅200μm、厚さ100μm、間隔40μmのパターンを有する異方性電磁波吸収フィルムの上面図である。 比較例1で製造したフィルムの厚さ8μm、導電性粒子がまばらに存在するフィルムの上面図である。 比較例2で製造したフィルムの厚さ30μm、銀粒子がまばらに存在するフィルムの上面図である。 比較例3で製造したフィルムの厚さ2μm、銀粒子がくっついているフィルムの上面図である。 比較例4で製造したフィルムの厚さ200μm、銀粒子群の幅1,200μm、厚さ200μm、間隔1,200μmのパターンを有する異方性導電フィルムの上面図である。
上述のように、微細なパターンを有する回路電極同士を電気的に接続し、信頼性の高い異方性導電フィルムの開発が求められていた。また、導電性の場合に限定されず、粒子群による微細で正確なパターンを有する異方性フィルムの開発が求められていた。
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、絶縁性樹脂と導電性粒子群を含有する異方性導電フィルムであって、前記導電性粒子群がバインダーで結着された導電性粒子を含み、かつ、前記導電性粒子群は規則的に配列されており、その間隔が1μm~1,000μmである異方性導電フィルムを用いれば、微細なパターンを有する回路電極同士を短絡することなく電気的に接続することができることを見出し、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は、絶縁性樹脂と粒子群を含有する異方性フィルムであって、前記粒子群は複数の粒子同士がバインダーで結着された粒子の群であり、かつ、前記粒子群は規則的に配列されており、その間隔が1μm~1,000μmである異方性フィルムである。以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下では、粒子を導電性粒子、粒子群を導電性粒子群とし、異方性フィルムを異方性導電フィルムとした態様を例に挙げて説明する。ただし、本態様は、粒子を熱伝導性粒子、蛍光体、磁性粒子、電磁波吸収フィラー等とした場合にも同様に適用することができる。
図1は、本発明の異方性導電フィルムの一例を示すイメージ図である。本発明の異方性導電フィルム10は、絶縁性樹脂1と導電性粒子群2を含有する。導電性粒子群2は、バインダー3で結着された導電性粒子4を含み、かつ、規則的に配列されており、その間隔Aが1μm~1,000μmであることを特徴とする。
以下、本発明の異方性導電フィルム10の各成分について詳述する。
[絶縁性樹脂]
本発明に使用される絶縁性樹脂1としては、特に制限はなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などの熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン・エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、パーフルオロポリエーテル樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられるが、耐熱性、耐光性を考慮すると、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましい。
さらに絶縁性樹脂1は、未硬化またはBステージと言われる半硬化状態において、25℃で可塑性の固体または半固体であることが好ましく、未硬化状態で25℃において可塑性の固体または半固体であることがより好ましい。このような性状を有していると、電子部品を圧着する際には変形することができ、かつ完全に硬化させることによって良好な接着力を得られる。
なお、本明細書中において、「半固体」とは可塑性を有し、特定の形状に成形されたときに少なくとも1時間、好ましくは8時間以上その形状を保持し得る物質の状態を指す。したがって、例えば、25℃で非常に高い粘度を有する流動性物質が本質的には流動性を有するものの、非常に高い粘度のために少なくとも1時間という短時間では付与された形状に変化(即ち、くずれ)を肉眼では認めることができないとき、その物質は半固体の状態にあると言える。
絶縁性樹脂1は絶縁性無機粒子を含んでいても良い。絶縁性無機粒子としては特に制限はないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、シリカバルーン、ガラスバルーン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化ベリリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられ、好ましくはシリカ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛である。これらの絶縁性無機粒子を含有することで、絶縁性樹脂1の硬化物の熱膨張率を下げることができる。
絶縁性無機粒子の粒径としては特に制限はないが、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されたメジアン径として0.05~10μmが好ましく、0.1~8μmがより好ましく、0.5~5μmが更に好ましい。この範囲内であれば、絶縁性樹脂中に均一に分散させることが容易であり、経時で沈降してしまうこともないため好ましい。更に、絶縁性無機粒子の粒径は、異方性導電フィルム10の厚さTに対して50%以下が好ましい。粒径が異方性導電フィルム10の厚さTに対して50%以下であれば、絶縁性無機粒子を絶縁性樹脂1中に均一に分散させることが容易であり、更に異方性導電フィルム10を平らに塗工することも容易であるため好ましい。
前記絶縁性無機粒子の含有量としては特に制限はないが、絶縁性樹脂1の質量の30~95質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましく、50~85質量%が更に好ましい。この範囲内であれば、絶縁性樹脂1の熱膨張率を効果的に下げることができ、フィルム状に成形し、完全に硬化した後、脆くなってしまうことがないため好ましい。
また、本発明で使用される絶縁性樹脂1は、その硬化物の10GHzでの比誘電率が3.5以下であることが好ましい。このような硬化物であれば、伝送損失を低減することができる。ここで、比誘電率は絶縁性樹脂1を180℃×2時間で完全に硬化させ、その硬化物を縦30mm×横40mm及び厚さ100μmの試験片とし、ネットワークアナライザ(キーサイト社製 E5063-2D5)とストリップライン(キーコム株式会社製)を接続して測定した値を指すものとする。
以下、本発明に使用される絶縁性樹脂、及び絶縁性無機粒子の具体例について述べる。本発明に特に好ましく用いられる絶縁性樹脂としては、上述したもののうち、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂である。また、特に好ましく用いられる絶縁性無機粒子としては、上述したもののうち、白色顔料、及び中空粒子のものである。以下、これらについてさらに詳細に説明する。ただし、中空粒子は無機粒子に限定されない。
<シリコーン樹脂>
本発明において絶縁性樹脂として用いることができるシリコーン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、付加硬化型シリコーン樹脂、縮合硬化型シリコーン樹脂などが挙げられる。
付加硬化型シリコーン樹脂の例としては、(A)非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物(例えば、アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン)、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(C)白金系触媒を必須成分とする組成物が特に好ましい。以下、これら(A)~(C)成分について説明する。
(A)成分:非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物
(A)成分の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(1)で示される、分子鎖両末端が脂肪族不飽和基含有トリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサンなどの、オルガノポリシロキサンが例示される。
Figure 0007240226000001
(式中、R11は非共役二重結合含有一価炭化水素基を示し、R12~R17はそれぞれ同一又は異種の一価炭化水素基を示し、a及びbは0≦a≦500、0≦b≦250、かつ0≦a+b≦500を満たす整数である。)
上記一般式(1)中、R11は非共役二重結合含有一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数2~8、特に好ましくは炭素数2~6のアルケニル基で代表される脂肪族不飽和結合を有する非共役二重結合含有一価炭化水素基である。また、R12~R17はそれぞれ同一又は異種の一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~20、特に好ましくは炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。また、このうちR14~R17は、より好ましくは脂肪族不飽和結合を除く一価炭化水素基であり、特に好ましくはアルケニル基等の脂肪族不飽和結合を持たないアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。更に、このうちR16、R17は芳香族一価炭化水素基であることが好ましく、フェニル基やトリル基等の炭素数6~12のアリール基等であることが特に好ましい。
上記一般式(1)中、a及びbは0≦a≦500、0≦b≦250、かつ0≦a+b≦500を満たす整数であり、aは10≦a≦500であることが好ましく、bは0≦b≦150であることが好ましく、またa+bは10≦a+b≦500を満たすことが好ましい。
上記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンは、例えば、環状ジフェニルポリシロキサン、環状メチルフェニルポリシロキサン等の環状ジオルガノポリシロキサンと、末端基を構成するジフェニルテトラビニルジシロキサン、ジビニルテトラフェニルジシロキサン等のジシロキサンとのアルカリ平衡化反応によって得ることができるが、この場合、アルカリ触媒(特にKOH等の強アルカリ)による平衡化反応においては、少量の触媒でも不可逆反応で重合が進行するため、定量的に開環重合のみが進行し、末端封鎖率も高いため、通常、シラノール基及びクロル分は含有されない。
上記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものが例示される。
Figure 0007240226000002
(上記式において、k、mは、0≦k≦500、0≦m≦250、かつ0≦k+m≦500を満たす整数であり、好ましくは5≦k+m≦250、かつ0≦m/(k+m)≦0.5を満たす整数である。)
(A)成分としては、上記一般式(1)で示される直鎖構造を有するオルガノポリシロキサンの他、下記一般式(2)で示される3官能性シロキサン単位、4官能性シロキサン単位等を含む三次元網目構造を有するオルガノポリシロキサンを使用することもできる。このような非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物は、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
Figure 0007240226000003
(式中、Rは互いに独立に、炭素数1~12の飽和炭化水素基又は炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数2~10のアルケニル基から選ばれる基であり、但しRで示される基の少なくとも2つはアルケニル基であり、rは0~100の整数、sは0~300の整数、tは0~200の整数、uは0~200の整数であり、1≦t+u≦400、2≦r+s+t+u≦800であり、但し、r、s、t及びuは、上記オルガノポリシロキサンが一分子中に少なくとも2つのアルケニル基を有する値である。)
上記一般式(1)で示される直鎖構造を有するオルガノポリシロキサンと上記一般式(2)で示される網目構造を有するオルガノポリシロキサンはそれぞれ単独で用いても良いし、併用しても良い。
(A)成分の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物中の非共役二重結合を有する基(例えば、Si原子に結合するアルケニル基等の二重結合を有する一価炭化水素基)の量は、全一価炭化水素基(Si原子に結合する全ての一価炭化水素基)のうち0.1~20モル%であることが好ましく、より好ましくは0.2~10モル%、特に好ましくは0.2~5モル%である。非共役二重結合を有する基の量が0.1モル%以上であれば硬化させたときに良好な硬化物を得ることができ、20モル%以下であれば硬化させたときの機械的特性が良いため好ましい。
また、(A)成分の非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物は芳香族一価炭化水素基(Si原子に結合する芳香族一価炭化水素基)を有することが好ましく、芳香族一価炭化水素基の含有量は、全一価炭化水素基(Si原子に結合する全ての一価炭化水素基)の0~95モル%であることが好ましく、より好ましくは10~90モル%、特に好ましくは20~80モル%である。芳香族一価炭化水素基は樹脂中に適量含まれた方が、硬化させたときの機械的特性が良く製造もしやすいという利点がある。
(B)成分:オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分としては、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(以下、「SiH基」と称する)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。1分子中にSiH基を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、架橋剤として作用し、(B)成分中のSiH基と(A)成分のビニル基、その他のアルケニル基等の非共役二重結合含有基とが付加反応することにより、硬化物を形成することができる。
また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、芳香族一価炭化水素基を有することが好ましい。このように、芳香族一価炭化水素基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、上記の(A)成分との相溶性を高めることができる。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよく、例えば、芳香族炭化水素基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを(B)成分の一部又は全部として含ませることができる。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、特に限定されないが、例えば1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1-グリシドキシプロピル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-グリシドキシプロピル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-グリシドキシプロピル-5-トリメトキシシリルエチル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシラン重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH)HSiO2/2単位と(CHSiO2/2と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
また、下記構造で示される化合物、あるいはこれらの化合物を材料として使用して得られるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも用いることができる。
Figure 0007240226000004
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよく、1分子中のケイ素原子の数(又は重合体の場合は重合度)は2以上が好ましく、より好ましくは3~500、特に好ましくは4~300程度である。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のアルケニル基等の非共役二重結合を有する基1個当たり(B)成分中のSiH基が0.7~3.0個となる量であることが好ましく、1.0~2.0個であることが特に好ましい。
(C)成分:白金系触媒
(C)成分の白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、キレート構造を有する白金錯体等が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
(C)成分の白金系触媒の配合量は、硬化有効量(いわゆる、触媒量)でよく、通常、(A)成分及び(B)成分の総質量100質量部あたり、白金族金属の質量換算で0.1~500ppmであることが好ましく、特に0.5~100ppmの範囲であることが好ましい。
縮合硬化型シリコーン樹脂の例としては、(A-1)下記平均組成式(3):
Figure 0007240226000005
(式中Rは、独立に、炭素原子数1~12のアルキル基,アルケニル基、アリール基もしくはそれらのハロゲン置換基、または水素原子であり、Xは、独立に、-Si(R)(R、R及びRはアルキル基、アルケニル基、アリール基もしくはそれらのハロゲン置換基、または水素原子である。)、炭素原子数1~6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基、アシル基または水素原子であり、aは1.00~1.50の数であり、bは0<b<2を満たす数であり、但し、1.00<a+b<2.00である。)
で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量の最大値が1×10以上であるオルガノポリシロキサン、
及び(A-2)硬化剤として縮合触媒
を含有する組成物を挙げることができる。以下、該好適組成物について詳細に説明する。
〔(A-1)オルガノポリシロキサン〕
(A-1)成分は、上記平均組成式(3)で表される、ポリスチレン換算の重量平均分子量の最大値が1×10以上であるオルガノポリシロキサンである。
上記式(3)中、Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。これらの中でも、Rとしては、メチル基、フェニル基が好ましい。ハロゲン置換基の例としては、トリクロロメチル基、トリフロロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。
上記式(3)中、Xで表される-Si(R)は、後述するように、加水分解されたオルガノポリシロキサン中の水酸基をシリル化したものであり、シリル基のR,R及びRは非反応性の置換もしくは非置換の1価炭化水素基であって、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、フェニル基などのアリール基、およびそれらのハロゲン置換有機基等が例示される。ハロゲン置換基の例としては、トリクロロメチル基、トリフロロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。
また、上記式(3)中、Xで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基等が挙げられる。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。
上記式(3)中、aは1.00~1.50の数であることが好ましく、bは0<b<2、特に0.01≦b≦1.0、とりわけ0.05≦b≦0.7を満たす数であることが好ましい。aが1.00以上である場合には、得られた組成物シートを硬化させて得られる被膜にクラックが入るおそれがなく、1.50以下の場合には、被膜の靭性が劣り、脆くなるおそれがない。bが0より大きい場合には、基材に対する接着性が十分であり、2未満の場合には、硬化被膜が確実に得られる。また、a+bは、好ましくは、1.00≦a+b≦1.50であり、より好ましくは、1.10≦a+b≦1.30である。
本成分のオルガノポリシロキサンは、例えば下記一般式(4)または(5):
Figure 0007240226000006
(式中、Rは、独立に、前記で定義したRと同じであり、Rは、独立に、前記で定義したXのうち-Si(R)を除くものと同じであり、cは1~3の整数である。)
で表されるシラン化合物を、加水分解縮合させることにより、あるいは上記一般式(4)または(5)で表されるシラン化合物と下記一般式(6)または(7):
Figure 0007240226000007
(式中、Rは、独立に、前記で定義したXのうち-Si(R)を除くものと同じである。)
で表されるアルキルシリケート及び/もしくは該アルキルシリケートの縮重合物(アルキルポリシリケート)(両者を合わせて、以下、「アルキル(ポリ)シリケート」ともいう)とを、共加水分解縮合させることにより得られる。これらのシラン化合物およびアルキル(ポリ)シリケートは、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、本成分のオルガノポリシロキサンの合成法はこれに限定されない。
上記式(4)または(5)で表されるシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン等が挙げられ、好ましくはメチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシランである。これらのシラン化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
上記式(6)で表されるアルキルシリケートとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルオキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられ、前記アルキルシリケートの重縮合物(アルキルポリシリケート)としては、例えば、メチルポリシリケート、エチルポリシリケートなどが挙げられる。これらのアルキル(ポリ)シリケートは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
これらの中でも、得られる硬化物が耐クラック性および耐熱性により優れたものとなることから、本成分のオルガノポリシロキサンは、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等のトリアルコキシシラン、トリクロロシラン20~75モル%とジメチルジメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン等のジアルコキシシラン、ジクロロシラン80~25モル%とからなるものが好ましく、トリアルコキシシラン、トリクロロシラン25~65モル%とジアルコキシシラン、ジクロロシラン75~35モル%とからなるものがより好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、本成分のオルガノポリシロキサンは、上記式(4)で表されるシラン化合物を一次加水分解と二次加水分解の二段階の加水分解、縮合反応を行うことにより、あるいは該シラン化合物とアルキル(ポリ)シリケートを一次加水分解と二次加水分解の二段階の加水分解、縮合反応を行うことにより得ることができ、例えば、以下の条件を適用することができる。
上記式(4)で表されるシラン化合物及びアルキル(ポリ)シリケートは、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤に溶解して使用することが好ましい。ここで用いる有機溶剤としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n―ブタノール、2-ブタノール等のアルコール系が好ましく、得られる組成物の硬化性及び硬化物の強靭性が優れたものとなることから、イソブチルアルコールが、より好ましい。
さらに、上記式(4)で表されるシラン化合物、アルキル(ポリ)シリケートは、一次加水分解触媒として例えば、酢酸、塩酸、硫酸、等の酸触媒を併用して、加水分解縮合を行うことが好ましい。一次加水分解縮合させる際に添加される水の量は、上記シラン化合物、あるいは上記シラン化合物とアルキル(ポリ)シリケート中のアルコキシ基の合計量1モルに対して、通常、0.9~1.5モルであり、好ましくは、1.0~1.2モルである。この配合量が0.9~1.5モルの範囲を満たすと、得られる組成物の作業性に優れ、その硬化物が強靭性に優れたものとなる。
一次加水分解、縮合物であるオルガノポリシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量の最大値は、5×10~6×10、特に1×10~4×10であることが好ましい。
なお、ここで、重量平均分子量とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した、ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指すこととする。
[測定条件]
・展開溶媒:THF
・流量:0.6mL/min
・検出器:示差屈折率検出器(RI)
・カラム:TSK GuardcolomnSuperH-L
・TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
・TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
・TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
・カラム温度:40℃
・試料注入量:20μL(濃度0.5重量%のTHF溶液)
更に必要に応じて二次加水分解、縮合反応をしても良い。二次加水分解、縮合反応は、一次加水分解、縮合反応によって得られたオルガノポリシロキサンを二次加水分解、縮合触媒を用いて高分子量のオルガノポリシロキサンを製造するものである。
二次加水分解、縮合触媒としては、陰イオン交換樹脂でポリスチレン系陰イオン交換樹脂が使用される。ポリスチレン系陰イオン交換樹脂としては、ダイヤイオン(三菱化学(株)製)が好適に使用され、製品名としては、ダイヤイオンSAシリ-ズ(SA10A,SA11A,SA12A,NSA100,SA20A,SA21A)、ダイヤイオンPAシリ-ズ(PA308,PA312,PA316,PA406,PA412,PA418)、ダイヤイオンHPAシリ-ズ(HPA25)、ダイヤイオンWAシリ-ズ(WA10,WA20,WA21J,WA30)等が挙げられる。
この内、特に下記構造式(8)で示されるSA10Aが好適に使用される。SA10Aは、水分含有系のポリスチレン系陰イオン交換樹脂であり、SA10A中の水分がSA10Aの塩基性イオン交換樹脂の触媒効果により、反応が進行するものである。
Figure 0007240226000008
この二次加水分解の触媒量は、一次加水分解物ポリシロキサンの不揮発分(150℃/1時間乾燥)に対して、1質量%~50質量%、好ましくは、5質量%~30質量%である。1質量%以上では、高分子量化の反応は十分な速さで進行し、また、50質量%以下では、ゲル化するおそれがない。二次加水分解の触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
この二次加水分解反応の温度は、0℃~40℃が好ましく、特に15℃~30℃であれば良好に反応が進む。0℃以上では、反応が十分な速さで進行し、また40℃以下では、ゲル化するおそれがない。
また、この二次加水分解反応は溶剤中で行うことが好ましく、固形分濃度を50質量%から95質量%、特に65質量%~90質量%とし反応を行うことが好ましい。固形分濃度が50質量%以上では、反応が十分な速さで進行し、また、95質量%以下では、反応が速くゲル化するというおそれがない。
二次加水分解に使用される溶剤は、特に限定されないが、沸点が60℃以上であるものが好ましく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられ、更にセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、ブチロセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、シクロヘキサノール、ジグライム、トリグライムなどの沸点150℃以上の有機溶媒等を用いることができる。これらの有機溶媒は、一種単独または二種以上併用することも可能である。溶媒としては、キシレン、イソブチルアルコール、ジグライム、トリグライムが好ましく、特にイソブチルアルコールが特に好ましい。
二次加水分解、縮合物であるオルガノポリシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量の最大値は、1×10以上で、特に3×10~4×10であることが好ましい。重量平均分子量の最大値が1×10以上では、硬化させた被膜にクラックが入りやすく、50μm以上の厚さの被膜が得難くなるおそれがない。
この二次加水分解によって得られた高分子量のオルガノポリシロキサンは、高分子量であるため、残存する水酸基の縮合により、容易にゲル化しやすい問題点がある。ゲル化の問題点は、残存する水酸基をシリル化し、安定な高分子量のオルガノポリシロキサンを得ることで解決することができる。
オルガノポリシロキサン中の残存する水酸基の非反応性の置換基をもつシリル基によるシリル化法としては、トリアルキルハロシランと反応させる方法、ヘキサアルキルジシラザン、N,N-ジエチルアミノトリアルキルシラン、N-(トリアルキルシリル)アセトアミド、N-メチル(トリアルキルシリル)アセトアミド、N,O―ビス(トリアルキルシリル)アセトアミド、N,O―ビス(トリアルキルシリル)カーバメート、N-トリアルキルシリルイミダゾール等の窒素含有シリル化剤を用いる方法、トリアルキルシラノールと反応させる方法、及びヘキサアルキルジシロキサンと弱酸性下で反応させる方法が例示される。トリアルキルハロシランを用いる場合には、塩基を共存させて、副生するハロゲン化水素を中和してもよい。窒素含有シリル化剤を用いる場合はトリメチルクロロシラン、硫酸アンモニウム等の触媒を添加してもよい。具体的には、トリメチルクロロシランがトリエチルアミン共存下でシリル化剤として使用される方法が好適である。
シリル化の反応は溶媒中でも行えるが、溶媒を省略することも出来る。適当な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、クロロホルム、トリクロロエチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒、さらには、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が例示される。このようなシリル化の反応温度は、0℃~150℃が適当であり、好ましくは、0℃~60℃である。
上記の製造方法よって得られた、(A-1)成分の高分子量のオルガノポリシロキサンを使用するため、硬化させた被膜は、高強度で、かつ可撓性、接着性が良好であり、更に50μm以上の厚膜のシート形成が可能な優れた特性を有するものである。
〔(A-2)縮合触媒〕
(A-2)成分の縮合触媒は、前記(A-1)成分のオルガノポリシロキサンを硬化させるために必要とされる成分である。縮合触媒としては、特に限定されないが、該オルガノポリシロキサンの安定性、得られる硬化物の硬度、無黄変性等に優れることから、通常、有機金属系触媒が用いられる。この有機金属系触媒としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、チタン、錫、コバルト等の原子を含有するものが挙げられ、好ましくは亜鉛、アルミニウム、チタン原子を含有するものであり、具体的には、有機酸亜鉛、ルイス酸触媒、アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物等が好適に用いられ、具体的にはオクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p-tert-ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム,アルミニウムトリイソプロポキシド,アルミニウムアセチルアセトナート,アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、テトラブチルチタネート,テトライソプロピルチタネート、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸錫等が例示され、中でも具体的には、アルミニウムアセチルアセトナート、アセトープ(Acetope)Al-MX3(ホ-プ製薬(株)製)が好ましく使用される。これらの縮合触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
(A-2)成分の縮合触媒の添加量は、(A-1)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.05~10質量部、特に0.1~5質量部とすることが良好であり、添加量が0.05質量部以上では硬化性が乏しくなるおそれがなく、10質量部以下では、ゲル化するおそれがない。
<エポキシ樹脂>
本発明において絶縁性樹脂として用いることができるエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、又は4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂のようなビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂など室温で液状や固体の公知のエポキシ樹脂が挙げられる。また、必要に応じて、上記以外のエポキシ樹脂を目的に応じて一定量併用することができる。
エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂を含む絶縁性樹脂組成物とすることができ、この組成物にはエポキシ樹脂の硬化剤を含めることができる。このような硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、各種アミン誘導体、酸無水物や酸無水物基を一部開環させカルボン酸を生成させたものなどを使用することができる。中でも、フェノールノボラック樹脂を用いることが好ましい。特に、エポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂の混合比をエポキシ基とフェノール性水酸基の比率が1:0.8~1.3となるように混合することが好ましい。
更に、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進するため、反応促進剤(触媒)としてイミダゾール誘導体、ホスフィン誘導体、アミン誘導体、有機アルミニウム化合物などの金属化合物等を使用してもよい。
エポキシ樹脂を含む絶縁性樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的で種々の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤等の添加剤を目的に応じて適宜添加配合することができる。
<マレイミド樹脂>
本発明の絶縁性樹脂として好適に用いられるマレイミド樹脂としては、例えば下記一般式(9)に示すようなマレイミド化合物が挙げられる。
Figure 0007240226000009
一般式(9)中、Aは独立して環状構造を含む4価の有機基を示す。Bは独立して2価のヘテロ原子を含んでもよい炭素数6以上のアルキレン基である。Qは独立して2価のヘテロ原子を含んでもよい炭素数6以上のアリーレン基である。WはBまたはQと同じである。nは0~100であり、mは0~100の数を表す。
一般式(9)中のAは環状構造を含む4価の有機基を示し、特に、下記構造式で示される4価の有機基のいずれかであることが好ましい。
Figure 0007240226000010
(なお、上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、一般式(9)において環状イミド構造を形成するカルボニル炭素と結合するものである。)
また、一般式(9)中のBは独立して2価のヘテロ原子を含んでもよい炭素数6以上のアルキレン基であり、好ましくは炭素数8以上のアルキレン基である。一般式(9)中のBは下記構造式で示される脂肪族環を有するアルキレン基のいずれかであることが更に好ましい。
Figure 0007240226000011
Figure 0007240226000012
(なお、上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、一般式(9)において環状イミド構造を形成する窒素原子と結合するものである。)
Qは独立して2価のヘテロ原子を含んでもよい炭素数6以上のアリーレン基であり、好ましくは炭素数8以上のアリーレン基であり。式(9)中のQは下記構造式で示される芳香族環を有するアリーレン基のいずれかであることが更に好ましい。
Figure 0007240226000013
一般式(9)中のnは0~100の数であり、好ましくは0~70の数である。一般式(9)中のmは0~100の数であり、好ましくは0~70の数である。ただし、nまたはmの少なくとも一方は正の数である。
高分子のマレイミドとしては、BMI-2500、BMI-2560、BMI-3000、BMI-5000、BMI-6000、BMI-6100(以上、Designer Molecules Inc.製)等の市販品を用いることができる。また、環状イミド化合物は1種単独で使用しても複数種のものを併用しても構わない。
上記マレイミド樹脂を硬化させるために反応開始剤を含んで組成物としても良い。反応開始剤としては、特に制限はないが、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤、及び光重合開始剤等が挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチ-ルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルへキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等の有機過酸化物、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルプロピル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-プロピル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-エチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、ジメチル-1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)等のアゾ化合物が挙げられ、好ましくはジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[N-(2-メチルエチル)-2-メチルプロピオンアミド]であり、更に好ましくはジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドである。
熱カチオン重合開始剤としては、例えば(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムカチオン、(4-メチルフェニル)(4-イソプロピルフェニル)ヨードニウムカチオン、(4-メチルフェニル)(4-イソブチル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウムカチオン、(2,4,6-トリメチルフェニル)[4-(1-メチル酢酸エチルエーテル)フェニル]ヨードニウムカチオン等の芳香族ヨードニウム塩、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムカチオン、トリフェニルスルホニウムカチオン、アルキルトリフェニルスルホニウムカチオン等の芳香族スルホニウム塩が挙げられ、好ましくは(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムカチオン、(4-メチルフェニル)(4-イソプロピルフェニル)ヨードニウムカチオン、トリフェニルスルホニウムカチオン、アルキルトリフェニルスルホニウムカチオンであり、更に好ましくは(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムカチオン、(4-メチルフェニル)(4-イソプロピルフェニル)ヨードニウムカチオンである。
熱アニオン重合開始剤としては、例えば2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン等のアミン類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン類が挙げられ、好ましくは2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンであり、更に好ましくは2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリフェニルホスフィンである。
光重合開始剤としては特に制限はないが、ベンゾフェノン等のベンゾイル化合物(またはフェニルケトン化合物)、特に、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等のカルボニル基のα-位の炭素原子上にヒドロキシ基を有するベンゾイル化合物(またはフェニルケトン化合物);2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン等のα-アルキルアミノフェノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビスアシルモノオルガノフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4,-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;イソブチルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル化合物;アセトフェノンジエチルケタール等のケタール化合物;チオキサントン系化合物;アセトフェノン系化合物等が挙げられる。特にUV-LEDから発生する放射線は単一波長であるので、UV-LEDを光源として用いる場合、340~400nmの領域に吸収スペクトルのピークを有するα-アルキルアミノフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物の光重合開始剤を使用するのが有効である。
これら開始剤成分は1種類単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
開始剤成分の含有量は特に限定されないが、マレイミド樹脂成分100質量部に対して0.01~10質量部、好ましくは0.05~8質量部、更に好ましくは0.1~5質量部である。この範囲であれば、絶縁性樹脂組成物を十分に硬化させることができる。
<白色顔料>
白色顔料は、リフレクター等の用途向けに必要となる白色度を高めるために配合される。例えば、白色顔料としては、二酸化チタン、酸化イットリウムを代表とする希土類酸化物、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウム等が挙げられ、これらは単独で又は数種を併用して用いることができる。
中でも、白色度をより高めるために二酸化チタンを用いることが好ましい。この二酸化チタンの単位格子は、ルチル型、アナタース型、ブルカイト型があり、いずれも使用できるが、二酸化チタンの白色度や光触媒能の観点からルチル型を用いるのが好ましい。
また、二酸化チタンの平均粒径及び形状も限定されないが、平均粒径は0.05~5.0μmが好ましく、その中でも1.0μm以下のものがより好ましく、0.30μm以下のものが更に好ましい。
上記二酸化チタンは、前記絶縁性樹脂との濡れ性や相溶性及び分散性や流動性を高めるため、表面処理されたものであることが好ましく、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ポリオール、及び有機ケイ素化合物から選ばれる少なくとも1種以上、特には2種以上の処理剤で表面処理されたものであることがより好ましい。
また、白色顔料を配合した絶縁性樹脂の初期反射率を向上し、流動性を高めるためには、有機ケイ素化合物で処理された二酸化チタンが好ましい。有機ケイ素化合物の例としては、クロロシランやシラザン、エポキシ基やアミノ基などの反応性官能基を有するシランカップリング剤などの単量体有機ケイ素化合物、シリコーンオイルやシリコーンレジンなどのオルガノポリシロキサン等が挙げられる。なお、ステアリン酸のような有機酸など、通常、二酸化チタンの表面処理に用いられる他の処理剤を用いてもよく、上記以外の処理剤で表面処理しても、複数の処理剤で表面処理しても構わない。
<中空粒子>
中空粒子としては、無機中空粒子又は熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空粒子、既膨張中空粒子や熱膨張性マイクロカプセルなどが挙げられる。無機中空粒子としては、シリカバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、アルミノシリケートバルーン及びジルコニアバルーンなどが挙げられ、熱により膨張可能な未膨張の、あるいは既膨張の有機樹脂製微小中空粒子、既膨張中空粒子としては、フェノール樹脂バルーン及びプラスチックバルーンなどが挙げられ、熱膨張性マイクロカプセルとしては、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれるモノマーの重合体又は上記モノマーの2種以上の共重合体により形成された有機樹脂からなる外殻を有し、イソブタン、イソペンタン等の炭化水素系溶剤のような揮発性物質または低沸点物質を内包して構成されるものが例示される。
[導電性粒子群]
本発明の導電性粒子群2とは、導電性粒子4がバインダー3で結着された集合体であり、2個以上の導電性粒子4が接触した状態にある部分である(図1)。
<導電性粒子>
導電性粒子4としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば金属粒子、金属被覆粒子、導電性高分子粒子などが挙げられる。
前記金属粒子の例としては、金、銀、銅、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、タングステン、白金、鉛、錫などの金属単体、または半田、鋼、ステンレス鋼などの合金が挙げられる。これらはそれぞれ1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記金属被覆粒子の例としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂粒子の表面を金属で被覆したものや、ガラスやセラミック等の無機粒子の表面を金属で被覆したものでも良い。粒子表面の金属被覆方法としては、特に制限はなく、例えば無電解メッキ法、スパッタリング法などが挙げられる。
ここで粒子表面を被覆する金属の例としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられる。
前記導電性高分子粒子の例としては、カーボン、ポリアセチレンナノ粒子、ポリピロールナノ粒子などが挙げられる。
これら導電性粒子の中でも金属粒子が電気抵抗が小さく、高温で焼結させることも可能なため好ましく用いられる。
導電性粒子4は、回路電極と電気的接続した際に導電性を有していれば良い。例えば、粒子表面に絶縁被膜を施した粒子であっても、電気的に接続した際に粒子が変形し、金属粒子が露出するものであれば、導電性粒子である。
上記の理由により、導電性粒子4としては、バインダー3との混練性、親和性等を改善する目的で、シランカップリング剤などの表面処理剤で処理されたものを用いてもよい。
導電性粒子4の平均粒径としては特に制限はないが、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されたメジアン径として0.01~100μmであることが好ましく、0.01~50μmであることがより好ましく、0.05~30μmがさらに好ましく、0.1~10μmが極めて好ましい。この範囲であれば導電性粒子を高充填することが可能である。また、異なる粒径の導電性粒子4を2種類以上併用してもよい。
本発明の導電性粒子群2のバインダー3は導電性粒子4同士を結着するためのものである。バインダー3としては特に制限はないが、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂であれば、熱圧着した際、通電を確保した状態で硬化させることが可能であるため、高信頼性のものとなる。熱可塑性樹脂であれば、熱圧着した後、室温まで冷却することで通電を確保した状態を維持することが可能である。
また、バインダー3として用いる樹脂の種類は、後述するフィルム状絶縁性樹脂組成物(異方性導電フィルム10の基材をなすもの)で用いる絶縁性樹脂1の種類と同じであっても、異なっていてもよい。同種の樹脂を用いるとバインダー3とフィルム状絶縁性樹脂1が相溶でき、異方性導電フィルム10の強度を高められるため好ましく、異種の樹脂を用いると導電性組成物(バインダー3と導電性粒子4の混合物)が導電性粒子4を含有していたとしても、該導電性組成物とフィルム状絶縁性樹脂1の線膨張係数を合わせられるため好ましい。
前記熱硬化性樹脂としては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン・エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられ、前記熱可塑性樹脂としては、例えばパーフルオロポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、耐熱性、耐光性を考慮すると、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましい。
さらに前記熱硬化性樹脂は、未硬化またはBステージと言われる半硬化状態において、25℃で可塑性の固体または半固体であることが好ましく、未硬化状態において、25℃で可塑性の固体または半固体であることがより好ましい。このような性状を有していると、電子部品を圧着する際には変形することができ、かつ完全に硬化させることによって導電性粒子4との間に良好な接着力が得られる。
導電性粒子群2は、導電性粒子4を60~98質量%に、導電性粒子4に合わせてバインダー3を2~40質量%加え、市販の攪拌機(THINKY CONDITIONING MIXER(シンキー(株)製)等)に入れて、1~5分間程度撹拌することや、3本ロールミル(井上製作所(株)製等)を用いて均一に混合することによって調製が可能である。
ここで、粒子群は、いわゆる機能性フィルムにおいてその機能を発揮するための部分(機能性部分)である。当該機能性部分が一粒子から形成される場合には、その一粒子の形状は球状又は半球状となり、フィルムに接触する素子等との接触は一点のみでなされる。つまり、接続安定性が十分ではない。また、一粒子そのものの形状においては、欠けや形状のばらつきがある場合があり、一粒子で機能性部分を形成した場合には、機能性部分にその欠けや形状のばらつきが反映されるために、やはり接続安定性に悪影響を及ぼす。更に一粒子の場合は、一つ欠落があるとその部分の機能が完全に失われるため、必ず目的の箇所に一粒子を配列させなければならず、コスト面でも不利である。これに対し、本発明の異方性フィルムにおいては、当該機能性部分はバインダーで結着された複数の粒子からなる粒子群であるため、複数点もしくは面で素子と接触できるので、素子等との安定した接続を確保できる。また、粒子群は複数の粒子からなるため、一粒子ごとの欠けや形状のばらつきは、機能性部分(即ち、粒子群)の形状に影響を与えることがなく、この点においても素子などとの安定した接続を確保でき、更には素子の電極部分等の形状に合わせて粒子群の形状を変えることができる。
また、粒子群の有する幅は、好ましくは1~1,000μm、より好ましくは3~800μm、さらにより好ましくは5~500μm、特に好ましくは10~100μmである。この範囲内であれば、絶縁性樹脂と粒子群のそれぞれの利点を活用できるため好ましい。なお、粒子群の幅とは一つの粒子群に属する粒子の最大粒子間距離である。
また、粒子群の幅は粒子よりも大きくなければならず、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上~1,000倍以下である。この範囲であれば、粒子群として粒子の機能を十分に発揮できるため好ましい。
また粒子群の理論平均粒子数が、好ましくは50~1×10個、より好ましくは100~1×10個、更に好ましくは200~1×10個である。この範囲内であれば、容易に粒子群を柱状に形成できるため好ましい。
ここで、理論平均粒子数とは、粒子群に含まれる粒子の密度(体積密度)に相当するパラメータであり、以下のように求めることができる。まず、粒子群を構成する粒子を全て球体とみなし、該粒子の平均粒径から前記粒子の平均体積を求める。次いで、前記粒子群の体積を前記平均体積で割った値を、前記粒子群中の理論平均粒子数とする。なお、平均粒径の異なる2種以上の粒子を併用する場合は、各粒子の平均粒径の加重平均値をその粒子群を構成する粒子の平均粒径とする。
本発明者らは、前記粒子群中の粒子の数、すなわち粒子密度が、粒子群がその粒子の特性を発揮するために重要であることを見出した。しかし、粒子群中の粒子数を実測することは非常に困難であり、非現実的である。発明者らは検討の結果、以下に示す理論平均粒子数が粒子密度の代替パラメータとして有用であることを見出したものである。
また、粒子群の形状が円柱状または角柱状であることが好ましい。角柱状とは三角柱、四角柱、五角柱、六角柱などが挙げられる。上底面と下底面が全く同じ形状であっても異なっていても良い。
また、粒子群の上面の面積に対する下面の面積の比が、好ましくは0.5~10、より好ましくは0.6~5、さらに好ましくは0.8~2である。この範囲内であれば粒子群の機能として異方性が発揮しやすくなるため好ましい。
また、粒子群は、粒子群に含まれる粒子の種類によって、種々の機能を持つものとすることができる。例えば、粒子としては導電性粒子、熱伝導性粒子、蛍光体、磁性粒子、電磁波吸収フィラーとすることができ、このとき粒子群は、それぞれ、導電性粒子群、熱伝導性粒子群、蛍光体粒子群、磁性粒子群、電磁波吸収フィラー粒子群となる。以下、本発明の粒子群に用いることのできる熱伝導性粒子、蛍光体、磁性粒子、及び電磁波吸収フィラーについて、詳細に説明する。
<熱伝導性粒子>
熱伝導粒子としては、特に制限はないが、熱伝導率を考慮すると金属粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウムから少なくとも1種を選択することが好ましく、中でも金属粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムが好ましい。
前記金属粒子の例としては、金、銀、銅、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、タングステン、白金、鉛、錫などの金属単体、または半田、鋼、ステンレス鋼などの合金が挙げられ、好ましくは銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、タングステン、半田、鋼、ステンレス鋼が挙げられる。これらはそれぞれ1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記熱伝導粒子の形状としては、特に制限はなく、例えば球状、鱗片状、フレーク状、針状、棒状、楕円状などが挙げられ、中でも球状、鱗片状、楕円状、棒状が好ましく、球状、鱗片状、楕円状が更に好ましい。
<蛍光体>
蛍光体としては、無機蛍光体、有機蛍光体のどちらも使用することができ、有機蛍光体としては錯形成した有機蛍光体を使用することもできる。なお、蛍光体の耐熱性など信頼性の観点から、無機蛍光体が好ましい。
無機蛍光体としては、例えば、窒化物系半導体を発光層とする半導体発光ダイオードからの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換するものを使用することができる。このような無機蛍光体としては、例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素により主に賦活される窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体;Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属硫化物蛍光体、希土類硫化物蛍光体、アルカリ土類金属チオガレート蛍光体、アルカリ土類金属窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体;Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体;Eu等のランタノイド系元素で主に賦活されるCa-Al-Si-O-N系オキシ窒化物ガラス蛍光体等を挙げることができる。なお、これらの無機蛍光体は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。具体例として、下記の無機蛍光体を例示できるが、これに限定されない。
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体としては、MSi:Eu、MSi10:Eu、M1.8Si0.2:Eu、M0.9Si0.110:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、及びZnから選ばれる1種以上である)などを例示できる。
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される酸窒化物系蛍光体としては、MSi:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、及びZnから選ばれる1種以上である)などを例示できる。
Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体としては、M(POX:Z(Mは、Sr、Ca、Ba、及びMgから選ばれる1種以上であり、Xは、F、Cl、Br、及びIから選ばれる1種以上であり、Zは、Eu、Mn、及びEuとMnから選ばれる1種以上である)などを例示できる。
Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体としては、MX:Z(Mは、Sr、Ca、Ba、及びMgから選ばれる1種以上である。Xは、F、Cl、Br、及びIから選ばれる1種以上であり、Zは、Eu、Mn、及びEuとMnから選ばれる1種以上である)などを例示できる。
Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体としては、SrAl:Z、SrAl1425:Z、CaAl:Z、BaMgAl1627:Z、BaMgAl1612:Z、BaMgAl1017:Z(Zは、Eu、Mn、及びEuとMnから選ばれる1種以上である)などを例示できる。
Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体としては、(BaMg)Si:Eu、(BaSrCa)SiO:Eu、などを例示できる。
Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属硫化物蛍光体としては、(Ba,Sr、Ca)(Al, Ga)2S4;Euなどを例示できる。
Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活される希土類硫化物蛍光体としては、LaS:Eu、YS:Eu、GdS:Euなどを例示できる。
Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属チオガレート蛍光体としては、MGa:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる1種以上である)などを例示できる。
Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活されるアルカリ土類金属窒化ケイ素蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu,(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu,SrAlSi4N7:Euなどを例示できる。
Eu等のランタノイド系元素、Mn等の遷移金属系元素により主に賦活されるゲルマン酸塩蛍光体としては、ZnGeO:Mnなどを例示できる。
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体としては、YAl12:Ce、(Y0.8Gd0.2Al12:Ce、Y(Al0.8Ga0.212:Ce、(Y,Gd)(Al,Ga)12等のYAG系蛍光体などを例示できる。また、Yの一部もしくは全部をTb、Lu等で置換したTbAl12:Ce、LuAl12:Ceなども使用できる。
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類ケイ酸塩蛍光体としては、YSiO:Ce,Tbなどを例示できる。
Ca-Al-Si-O-N系オキシ窒化物ガラス蛍光体とは、モル%表示で、CaCOをCaOに換算して20~50モル%、Alを0~30モル%、SiOを25~60モル%、AlNを5~50モル%、希土類酸化物又は遷移金属酸化物を0.1~20モル%とし、5成分の合計が100モル%となるオキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体である。なお、オキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体では、窒素含有量が15質量%以下であることが好ましい。また、希土類酸化物イオンの他に増感剤となる他の希土類元素イオンを希土類酸化物の状態で含むことが好ましく、蛍光体中に0.1~10モル%の範囲の含有量で共賦活剤として含むことが好ましい。
その他の無機蛍光体としては、ZnS:Euなどを挙げることができる。また、上記以外のシリケート系蛍光体としては、(BaSrMg)Si:Pb、(BaMgSrZnCa)Si:Pb、ZnSiO:Mn、BaSi:Pbなどが挙げられる。
また、上記の無機蛍光体において、Euに代えて、又はEuに加えて、Tb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、及びTiから選択される1種以上を含むものも使用することができる。
また、上記の無機蛍光体以外の蛍光体であって、上記のものと同様の性能、効果を有するものであれば、本発明の粒子として使用することができる。
上記無機蛍光体の性状は、特に限定されるものではなく、例えば粉末状のものを使用することができる。また、無機蛍光体粉末の形状は、特に限定されるものではなく、例えば球状、鱗片状、フレーク状、針状、棒状、楕円状などが挙げられ、中でも球状、鱗片状、フレーク状が好ましく、球状、フレーク状が更に好ましい。
有機蛍光体としては、例えば、Eu等のランタノイド系元素等で主に賦活される有機蛍光体や有機錯体蛍光体等を使用することができ、9,10-ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4-テトラフェニルブタジエン、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8-キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4-メチル-5-トリフルオロメチル-8-キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4-メチル-5-シアノ-8-キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2-メチル-5-トリフルオロメチル-8-キノリノラート)[4-(4-シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2-メチル-5-シアノ-8-キノリノラート)[4-(4-シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8-キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8-(パラ-トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4-テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ[2,5-ジヘプチルオキシ-p-フェニレンビニレン]、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’-ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’-ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体、あるいはIr錯体等の燐光性発光体などを使用できる。
<磁性粒子>
磁性粒子としては、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属単体、ステンレス、磁性ステンレス(Fe-Cr-Al-Si合金)、センダスト(Fe-Si-Al合金)、パーマロイ(Fe-Ni合金)、ケイ素銅(Fe-Cu-Si合金)、Fe-Si合金、Fe-Si―B(-Cu-Nb)合金、Fe-Si-Cr-Ni合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al-Ni-Cr合金などの磁性金属合金、ヘマタイト(Fe)、マグネタイト(Fe)などの金属酸化物、Mn-Zn系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Mg-Mn系フェライト、Zr-Mn系フェライト、Ti-Mn系フェライト、Mn-Zn-Cu系フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライトなどのフェライト類などが好適に使用される。
前記磁性粒子の形状としては、特に制限はなく、例えば球状、鱗片状、フレーク状
針状、棒状、楕円状、ポーラス状などが挙げられ、中でも球状、鱗片状、楕円状、フレーク状、ポーラス状が好ましく、球状、鱗片状、フレーク状、ポーラス状が更に好ましい。
ポーラス状の磁性粒子を得る場合には、造粒時に、炭酸カルシウム等の空孔調整剤を添加して造粒を行い、焼成することで得ることができる。また、フェライト化反応中の粒子成長を阻害させるような材料を添加することにより、フェライト内部に複雑な空隙を形成することもできる。このような材料としては、酸化タンタル、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
<電磁波吸収フィラー>
電磁波吸収性充填剤としては、導電性粒子、カーボン粒子を代表とする誘電損失性電磁波吸収材やフェライト、軟磁性金属粉を代表とする磁性損失性電磁波吸収材などを適用することができる。
導電性粒子としては、金属粒子、導電性金属酸化物粒子、導電性高分子からなる粒子、金属被覆した粒子などを用いることができる。
金属粒子の例としては、金、銀、銅、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、タングステン、白金、鉛、錫などの金属単体、または半田、鋼、ステンレス鋼などの合金が挙げられる。これらはそれぞれ1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
金属酸化物系粒子としては、導電性を有する金属酸化物である酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズなどからなる粒子を用いることができる。これらはそれぞれ1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
導電性高分子からなる粒子の例としては、ポリアセチレン粒子、ポリチオフェン粒子、ポリアセチレン粒子、ポリピロール粒子、あるいはこれらを表面に被覆した粒子などが挙げられる。
金属被覆した粒子の例としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂粒子の表面を金属で被覆したものや、ガラスやセラミック等の無機粒子の表面を金属で被覆したものでも良い。表面の金属被覆方法としては、特に制限はなく、例えば無電解メッキ法、スパッタリング法などが挙げられる。
ここで粒子表面を被覆する金属の例としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられる。
誘電損失性電磁波吸収材としてはカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、カーボンナノコイル、カーボンマイクロコイル、炭素繊維などを用いることができる。
軟磁性合金粉末としては、供給安定性、価格などの面から鉄元素を含むものが好ましく、特には鉄元素を15質量%以上含むものが好ましい。このような軟磁性合金粉末としては、例えば、カルボニル鉄、電解鉄、Fe-Cr系合金、Fe-Si系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Al系合金、Fe-Co系合金、Fe-Al-Si系合金、Fe-Cr-Si系合金、Fe-Cr-Al系合金、Fe-Si-Ni系合金、Fe-Si-Cr-Ni系合金などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの軟磁性金属粉末は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。軟磁性合金粉末の形状は、扁平状、粒子状のどちらかを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。
フェライト粉末として、具体的には、Mg-Zn系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライトなどのスピネル型フェライト、BaCoFe1222、BaNiFe1222、BaZnFe1222、BaMnFe1222、BaMgFe1222、BaCuFe1222、BaCoFe2441などのフェロクスプレーナー(Y型、Z型)型六方晶フェライト、BaFe1219、SrFe1219及び/又はBaFe1219、SrFe1219のFe元素をTi、Co、Mn、Cu、Zn、Ni、Mgで置換したものを基本組成とするマグネプランバイト(M型)型六方晶フェライト等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらのフェライト粉末は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[異方性フィルム]
また、本発明の異方性フィルムは、上述のように、粒子群に含まれる粒子の種類を選択することにより、例えば、導電フィルム、熱伝導フィルム、蛍光体フィルム、磁性フィルム、電磁波吸収フィルム、リフレクターフィルム、及び中空フィルムとすることができる。以下、本発明の異方性フィルムを、異方性導電フィルムとした態様について詳細に説明するが、本態様は、熱伝導フィルム、蛍光体フィルム、磁性フィルム、電磁波吸収フィルム、リフレクターフィルム、及び中空フィルム等にも適用することができる。
[異方性導電フィルム]
本発明の異方性導電フィルム10は、導電性粒子群2が規則的に配列されており、その間隔Aが1μm~1,000μm、好ましくは3~800μm、より好ましくは5~500μm、さらに好ましくは10~100μmであることを特徴とするものである。この範囲の間隔Aで配列されていないと、厚さ方向Tの導電性を確保しながら、面方向の絶縁性を不良なく確保することが困難になる。
異方性導電フィルム10の厚さTは、1μm~2000μmであることが好ましく、1μm~500μmであることがより好ましく、10μm~300μmであることがさらに好ましい。この範囲内であれば、絶縁性樹脂1部分と導電性粒子群2とのCTEの差による影響が小さいので、チップがはずれやすくなることがないため好ましい。
また、導電性粒子群2の厚さは、異方性導電フィルム10の厚さTによって決められるものであり、異方性導電フィルム10の厚さTに対して、導電性粒子群2の厚さが50%~150%であることが好ましく、70%~100%であることがより好ましい。導電性粒子群2の厚さがこの範囲であれば、出来上がった異方性導電フィルム10の上から電極を押し付けた際に、通電を確保し易くなる。
さらに、導電性粒子群2は、異方性導電フィルム10の少なくとも一方の表面で露出していることが好ましい。導電性粒子群2の厚さが異方性導電フィルム10の厚さTの100%であるということは、導電性粒子群2が、異方性導電フィルム10の両方の表面で露出している、すなわち、貫通していることを指す。少なくとも一方の表面で導電性粒子群2が露出することによって、異方性導電フィルム10を大きな力で熱圧着することなく、導通を確保できるため好ましく、導電性粒子群2が異方性導電フィルム10を貫通していることがより好ましい。
またこのとき、少なくとも一方の表面における露出している粒子群の面積割合が、20~90%であることがより好ましい。この範囲内であれば、異方性フィルムが高い柔軟性を保持しつつ、確実に目的の機能を発揮することができる。
また、絶縁性樹脂と粒子群の-50℃~200℃の範囲における線膨張係数の差が1~200ppm/Kのものであることが好ましい。
このような線膨張係数の差とすれば、温度変化においても電子部品が異方性フィルムからより外れにくくなる。
また、本発明の異方性導電フィルム10は、絶縁性樹脂1に対して離型性を有する樹脂フィルムが配置されていても良い。離型性を有する樹脂フィルムは、絶縁性樹脂1の種類によって最適化されるが、具体的には、フッ素系樹脂コートしたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、シリコーン樹脂コートしたPETフィルム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレン)、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。この離型性を有する樹脂フィルムによって、異方性導電フィルム10が取り扱いやすくなり、埃など異物の付着を防止することができる。
本発明の異方性導電フィルム10の製造方法としては、例えば、バインダー3と導電性粒子4を均一に混合して導電性組成物を調製した後、後述の実施例のように凹凸パターンが施されたシリコンウエハー基材等の型にこの導電性組成物を充填して導電性粒子群2を形成する。そして、導電性粒子群2をフィルム状絶縁性樹脂1上に転写し押し込む。こうして、異方性導電フィルム10を製造できる。
粒子群を絶縁性樹脂に埋設する工程を含むため、粒子群の硬さは、絶縁性樹脂の硬さ以上であることが好ましい。これにより、粒子群はその形状を維持したまま、絶縁性フィルムに埋設することができる。なお、埋設工程におけるJIS K 6253-3:2012に記載の方法に準拠して測定した粒子群の硬度としては、デュロメータタイプA20以上であることが好ましく、デュロメータタイプA40~タイプD50であることがより好ましい。また、このときの絶縁性樹脂の硬度としては、デュロメータタイプE60以上であることが好ましく、デュロメータタイプE80~タイプD30であることがより好ましい。
また、硬化後(即ち、異方性フィルム使用時)におけるJIS K 6253-3:2012に記載の方法に準拠して測定した硬さは、以下の範囲であることが好ましい。即ち、バインダーの硬さは、デュロメータタイプA30以上であることが好ましく、デュロメータタイプD40~D95であることがより好ましい。粒子群の硬さは、デュロメータタイプA30以上であることが好ましく、デュロメータタイプD40~D95であることがより好ましい。絶縁性樹脂の硬さは、デュロメータタイプA20以上であることが好ましく、デュロメータタイプD30~D90であることがより好ましい。
なお、本発明の異方性導電フィルム10の使用方法としては、離型性を有する樹脂フィルムが配置されている場合にはそれを剥離した後、配線基板電極部分と半導体の電極部分の間に異方性導電フィルム10を挟み、加熱圧着することによって異方導電性を得ることができる。加熱する際の温度としては、100℃~300℃が好ましく、より好ましくは120℃~250℃、更に好ましくは150℃~200℃である。圧着する際の圧力としては、0.01MPa~100MPaが好ましく、より好ましくは0.05MPa~80MPa、更に好ましくは0.1MPa~50MPaである。
また、熱圧着温度における導電性粒子群2の貯蔵弾性率は、異方性導電フィルム10の貯蔵弾性率の0.7倍以上であることが好ましく、1.0倍以上であることが好ましい。この範囲であれば、加熱することにより絶縁性樹脂1の粘度が下がり、圧力をかけることにより配線基板電極部分に半導体の電極部分を押し付けることが容易になる。また、低温焼結可能な導電性粒子4の場合は、加熱することによって導電性粒子4が焼結し、安定した導通を得ることができる。
上記導通状態を得たのち、更に加熱硬化することによって、異方性導電フィルム10の絶縁性樹脂1を硬化させる。この硬化条件としては、100~300℃で0.5~5時間加熱することが好ましく、150~250℃で1~4時間がより好ましい。
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
下記実施例において重量平均分子量は、以下の条件によって測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量である。また、下記合成例において、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基である。
[測定条件]
展開溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolomn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
絶縁性樹脂の合成
[合成例1]
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの合成
フェニルトリクロロシラン1142.1g(87.1mol%)、ClMeSiO(MeSiO)33SiMeCl 529g(3.2mol%)、及びジメチルビニルクロロシラン72.4g(9.7mol%)をトルエン溶剤に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤を減圧留去し、25℃で固体状、軟化点45℃のフェニル基含有ビニルシリコーンレジンA1を得た。重量平均分子量は63,000であった。得られたシリコーンレジンA1を分析した結果、下記構造式
Figure 0007240226000014
(式中、ジメチルシロキシ単位は連続したブロック構造を有することを示す)
で示されるシリコーンレジンであることがわかった。
[合成例2]
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合成
フェニルトリクロロシラン1142.1g(87.1mol%)、ClMeSiO(MeSiO)33SiMeCl 529g(3.2mol%)、及びメチルジクロロシラン69g(9.7mol%)をトルエン溶剤に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤を減圧留去し、25℃で固体状、軟化点40℃のフェニル基含有ハイドロジェンシリコーンレジンA2を得た。重量平均分子量は58,000であった。得られたシリコーンレジンA2を分析した結果、下記構造式
Figure 0007240226000015
(式中、ジメチルシロキシ単位は連続したブロック構造を有することを示す)
で示されるシリコーンレジンであることがわかった。
[合成例3]
ビスマレイミドの合成
アセトン196gに1,8-ジアミノオクタン144g(1.0mol)、無水マレイン酸196g(2.0mol)を添加し、室温で3時間撹拌した。得られた溶液から50℃でアセトンを減圧留去し、酢酸ナトリウム82g(1.0mol)、無水酢酸204g(2.0mol)を加え、80℃で1時間撹拌した。その後、トルエン500g加え、更に水洗、脱水後、溶剤を減圧留去し、25℃で固体状、軟化点80℃のα,ω-ビスマレイミドオクタンA3を得た。
組成物(ペースト)の調製
[調製例1]
合成例1で合成したビニルシリコーンレジンA1を10g、合成例2で合成したハイドロジェンシリコーンレジンA2を10g、白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス(白金濃度1質量%)0.2mg、エチニルシクロヘキサノール60mg、トルエン10g、銀フィラー(平均粒径1.5μm)120gを混合し、銀ペースト1を調製した。
[調製例2]
合成例3で合成したα,ω-ビスマレイミドオクタンA3を10g、トルエン5g、銅フィラー(平均粒径1.5μm)100gを混合し、銅ペーストを調製した。
[調製例3]
エポキシ樹脂(jER-1256、三菱ケミカル(株)製)10g、シクロヘキサノン20g、銀ナノフィラー(平均粒径20nm)30gを混合し、銀ペースト2を調製した。
[調製例4]
エポキシ樹脂(jER-1256、三菱ケミカル(株)製)10g、シクロヘキサノン20g、銀フィラー(平均粒径5μm)80g、銀ナノフィラー(平均粒径20nm)10gを混合し、銀ペースト3を調製した。
[調製例5]
BMI-1500(Designer Molecules Inc.社製)10g、トルエン5g、窒化アルミニウム(平均粒径2μm)80gを混合し、熱伝導粒子ペーストを調製した。
[調製例6]
合成例1で合成したビニルシリコーンレジンA1を10g、合成例2で合成したハイドロジェンシリコーンレジンA2を10g、白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス(白金濃度1質量%)0.2mg、エチニルシクロヘキサノール60mg、トルエン10g、黄色蛍光体YAG(三菱化学社製、平均粒径2μm)20gを混合し、黄色蛍光体ペーストを調製した。
[調製例7]
合成例1で合成したビニルシリコーンレジンA1を10g、合成例2で合成したハイドロジェンシリコーンレジンA2を10g、白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス(白金濃度1質量%)0.2mg、エチニルシクロヘキサノール60mg、トルエン10g、赤色蛍光体CASN(三菱化学社製、平均粒径2μm)20gを混合し、赤色蛍光体ペーストを調製した。更にCASNを緑色蛍光体β-SIALON(三菱化学社製、平均粒径3μm)に変更することで緑色蛍光体ペーストを調製した。更にCASNを青色蛍光体SBCA(三菱化学社製、平均粒径2μm)に変更することで青色蛍光体ペーストを調製した。
[調製例8]
BMI-3000(Designer Molecules Inc.社製)10g、トルエン5g、Fe-Cr-Al-Si合金(平均粒径4μm)80gを混合し、磁性粒子ペーストを調製した。
[調製例9]
BMI-5000(Designer Molecules Inc.社製)10g、トルエン5g、BaCoFe1222フェライト(平均粒径6μm)80gを混合し、電磁波吸収粒子ペーストを調製した。
異方性導電フィルムの製造
[実施例1]
合成例1で合成したビニルシリコーンレジンA1を100g、合成例2で合成したハイドロジェンシリコーンレジンA2を100g、白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス(白金濃度1質量%)2mg、エチニルシクロヘキサノール600mg、トルエン100gを混合しオルガノポリシロキサン組成物を作製した。自動塗工装置PI-1210(テスター産業(株)製)を用いて、ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレン)フィルムの上に前記オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、縦150mm×横150mm及び厚さ40μmを有する膜状に成形した。その後、100℃×30分加熱することでトルエンを揮発させ、縦150mm×横150mm及び厚さ30μmの25℃で固体状の未硬化シリコーン樹脂フィルムを作製した。また、シリコンウエハー基材に酸化膜を形成し、公知のフォトリソグラフィー法を用いて、正方形で凸パターンの1辺の長さ30μm、高さ30μm、間隔30μmの凹凸パターンを作製し、縮合硬化タイプの型取り用シリコーンゴムKE-12(信越化学工業(株)製)を流し込んで硬化し、シリコンウエハー基材とは逆の凹パターンの1辺の長さ30μm、高さ30μm、間隔30μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例1で調製した銀ペースト1をシリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銀粒子群を形成し、60℃で前記未硬化シリコーン樹脂フィルムの上に転写した(図3)。その後、未硬化シリコーン樹脂フィルムを100℃×5分間熱プレスして前記銀粒子群を未硬化シリコーン樹脂フィルムの中に押し込み(図4)、フィルムの厚さ30μm、銀粒子群が1辺の長さ30μm、厚さ30μm、間隔30μmで規則的に配列された未硬化の異方性導電フィルムを製造した(図2)。理論平均粒子数は約1900個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。尚、図4-2は、図4を拡大したものであるが、製造した異方性導電フィルムは、導電性粒子群がその形状を維持したまま、絶縁性フィルムに埋設されていることが分かる。
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、前記オルガノポリシロキサン組成物を縦150mm×横150mm及び厚さ300μmの膜状に成形した。その後、100℃×30分間加熱することでトルエンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ200μmの25℃で固体状の未硬化シリコーン樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ80μm、高さ100μm、間隔80μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例2で調製した銅ペーストを前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銅粒子群を形成し、60℃で前記未硬化シリコーン樹脂フィルムの上に転写した。その後、未硬化シリコーン樹脂フィルムを100℃×5分間熱プレスして前記銅粒子群を未硬化シリコーン樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ200μm、銅粒子群が1辺の長さ80μm、厚さ100μm、間隔80μmで規則的に配列された未硬化の異方性導電フィルムを製造した(図5)。理論平均粒子数は約45000個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例3]
合成例3で合成したα,ω-ビスマレイミドオクタンA3を100g、t-ブチルベンゾイルパーオキシド1g、キシレン100gを混合し、マレイミド樹脂組成物を調製した。実施例1と同様の方法で、前記マレイミド樹脂組成物を縦150mm×横150mm×厚さ20μmの膜状に成形した。その後、110℃×30分間加熱することでキシレンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ10μmの25℃で固体状の未硬化マレイミド樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ5μm、高さ5μm、間隔5μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例3で調製した銀ペースト2を前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銀粒子群を形成し、80℃で前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの上に転写した。その後、未硬化マレイミド樹脂フィルムを100℃×5分間熱プレスすることで、前記銀粒子群を未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ10μm、銀粒子群が1辺の長さ5μm、厚さ5μm、間隔5μmで規則的に配列された未硬化の異方性導電フィルムを製造した(図6)。理論平均粒子数は約4×10個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例4]
エポキシ樹脂jER-1256B40(三菱ケミカル(株)製、40質量%メチルエチルケトン[MEK]溶液)100g、jER-828EL(三菱ケミカル(株)製)40g、2-エチル-4-メチルイミダゾール0.8g、MEK40gを混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例1と同様の方法で前記エポキシ樹脂組成物を縦150mm×横150mm×厚さ200μmを有する膜状に成形した。その後、40℃×30分間加熱してMEKを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ100μmの25℃で固体状の未硬化エポキシ樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ80μm、高さ80μm、間隔80μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例4で調製した銀ペースト3を前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銀粒子群を形成し、30℃で前記未硬化エポキシ樹脂フィルムの上に転写した。その後、未硬化エポキシ樹脂フィルムを50℃×5分間熱プレスすることで、銀粒子群を前記未硬化エポキシ樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ100μm、銀粒子群が1辺の長さ80μm、厚さ80μm、間隔80μmで規則的に配列された未硬化の異方性導電フィルムを製造した(図7)。理論平均粒子数は約1000個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例5]
エポキシ樹脂jER-1256B40(三菱ケミカル(株)製、40質量%メチルエチルケトン[MEK]溶液)100g、jER-828EL(三菱ケミカル(株)製)40g、2-エチル-4-メチルイミダゾール0.8g、MEK100gを混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例1と同様の方法で前記エポキシ樹脂組成物を縦150mm×横150mm×厚さ10μmを有する膜状に成形した。その後、40℃×30分間加熱してMEKを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ3μmの25℃で固体状の未硬化エポキシ樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ1μm、高さ2μm、間隔1.5μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例3で調製した銀ペースト2を前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銀粒子群を形成し、30℃で前記未硬化エポキシ樹脂フィルムの上に転写した。その後、未硬化エポキシ樹脂フィルムを50℃×5分間熱プレスすることで、銀粒子群を前記未硬化エポキシ樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ3μm、銀粒子群が1辺の長さ1μm、厚さ2μm、間隔1.5μmで規則的に配列された未硬化の異方性導電フィルムを製造した(図8)。理論平均粒子数は約60000個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例6]
合成例3で合成したα,ω-ビスマレイミドオクタンA3を100gとt-ブチルベンゾイルパーオキシド1gを50℃で加熱しながら混合し、マレイミド樹脂組成物を調製した。実施例1と同様の方法で、前記マレイミド樹脂組成物を50℃で加熱しながら縦150mm×横150mm×厚さ500μmの膜状に成形し、冷却することで、25℃で固体状の未硬化マレイミド樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ1,000μm、高さ500μm、間隔1,000μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例2で調製した銅ペーストを前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銅粒子群を形成し、80℃で前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの上に転写した。その後、未硬化マレイミド樹脂フィルムを100℃×5分間熱プレスすることで、前記銅粒子群を未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ500μm、銅粒子群が1辺の長さ1,000μm、厚さ500μm、間隔1,000μmで規則的に配列された未硬化の異方性導電フィルムを製造した(図9)。理論平均粒子数は約3×10個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例7]
実施例1と同様の方法で、前記オルガノポリシロキサン組成物を縦150mm×横150mm及び厚さ900μmの膜状に成形した。その後、100℃×30分間加熱することでトルエンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ600μmの25℃で固体状の未硬化シリコーン樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ500μm、高さ500μm、間隔500μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例1で調製した銀ペースト1を前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銀粒子群を形成し、60℃で前記未硬化シリコーン樹脂フィルムの上に転写した。その後、未硬化シリコーン樹脂フィルムを100℃×5分間熱プレスして前記銀粒子群を未硬化シリコーン樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ600μm、銀粒子群が1辺の長さ500μm、厚さ500μm、間隔500μmで規則的に配列された未硬化の異方性導電フィルムを製造した(図10)。理論平均粒子数は約9×10個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例8]
合成例3で合成したα,ω-ビスマレイミドオクタンA3を80g、t-ブチルベンゾイルパーオキシド1g、キシレン100gを混合し、マレイミド樹脂組成物を調製した。実施例1と同様の方法で、前記マレイミド樹脂組成物を縦150mm×横150mm×厚さ50μmの膜状に成形した。その後、110℃×30分間加熱することでキシレンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ20μmの25℃で固体状の未硬化マレイミド樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ5μm、高さ5μm、間隔5μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例3で調製した銀ペースト2を前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銀粒子群を形成し、80℃で前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの上に転写した。その後、前記フィルムを100℃×5分間熱プレスすることで、前記銀粒子群を未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ20μm、銀粒子群が1辺の長さ5μm、厚さ5μm、間隔5μmで規則的に配列された未硬化の異方性導電フィルムを製造した(図11)。理論平均粒子数は約4×10個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例9]
BMI-3000J(Designer Molecules Inc.社製)100g、ジクミルパーオキシド1g、キシレン100gを混合し、マレイミド樹脂組成物を調製した。実施例1と同様の方法で、前記マレイミド樹脂組成物を縦150mm×横150mm×厚さ600μmの膜状に成形した。その後、110℃×30分間加熱することでキシレンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ500μmの25℃で固体状の未硬化マレイミド樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で六角形凹パターンの最長の対角線の長さ500μm、高さ500μm、間隔50μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例5で調製した熱伝導粒子ペーストを前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて熱伝導粒子群を形成し、80℃で前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの上に転写した。その後、前記フィルムを100℃×5分間熱プレスすることで、前記熱伝導粒子群を未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ500μm、六角形の熱伝導粒子群の最長の粒子間距離が長さ500μm、厚さ500μm、間隔50μmで規則的に配列された未硬化の異方性熱伝導フィルムを製造した(図12)。理論平均粒子数は約2×10個、粒子群は六角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例10]
合成例1で合成したビニルシリコーンレジンA1を100g、合成例2で合成したハイドロジェンシリコーンレジンA2を100g、二酸化チタンPF-691(石原産業(株)社製)200g、白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス(白金濃度1質量%)2mg、エチニルシクロヘキサノール600mg、トルエン100gを混合しオルガノポリシロキサン組成物を作製した。実施例1と同様の方法で、前記オルガノポリシロキサン組成物を縦150mm×横150mm及び厚さ50μmの膜状に成形した。その後、100℃×30分間加熱することでトルエンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ40μmの25℃で固体状の未硬化シリコーン樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ40μm、高さ40μm、間隔40μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例6で調製した黄色蛍光体ペーストを前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて蛍光体粒子群を形成し、60℃で前記未硬化シリコーン樹脂フィルムの上に転写した。その後、未硬化シリコーン樹脂フィルムを100℃×5分間熱プレスして前記蛍光体粒子群を未硬化シリコーン樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ40μm、蛍光体粒子群の1辺の長さ40μm、厚さ40μm、間隔40μmで規則的に配列された未硬化のリフレクター付き異方性蛍光体フィルムを製造した(図13)。理論平均粒子数は約1900個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例11]
BMI-3000J(Designer Molecules Inc.社製)100g、ジクミルパーオキシド1g、キシレン100gを混合し、マレイミド樹脂組成物を調製した。実施例1と同様の方法で、前記マレイミド樹脂組成物を縦150mm×横150mm×厚さ40μmの膜状に成形した。その後、110℃×30分間加熱することでキシレンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ30μmの25℃で固体状の未硬化マレイミド樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ30μm、高さ30μm、間隔150μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例7で調製した赤色蛍光体ペーストを前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて赤色蛍光体粒子群を形成し、80℃で前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの上に転写した。その後、前記フィルムを100℃×5分間熱プレスすることで、前記赤色蛍光体粒子群を未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込んだ。次いで調製例7で調製した緑色蛍光体ペーストを前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて緑色蛍光体粒子群を形成し、赤色蛍光体粒子群から30μmずらし、80℃で前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの上に転写した。その後、前記フィルムを100℃×5分間熱プレスすることで、前記緑色蛍光体粒子群を未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込んだ。同様に調製例7で調製した青色蛍光体ペーストも30μmずらして転写し、未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込んみ、フィルムの厚さ30μm、蛍光体粒子群の1辺の長さ30μm、厚さ30μm、蛍光体粒子群の間隔30μmで規則的に配列された未硬化の異方性RGB蛍光体フィルムを製造した(図14)。理論平均粒子数は約450個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例12]
BMI-3000J(Designer Molecules Inc.社製)100g、ジクミルパーオキシド1gを混合し、マレイミド樹脂組成物を調製した。自動塗工装置PI-1210(テスター産業(株)製)を用いて、100℃に加熱しながらETFE(エチレン-テトラフルオロエチレン)フィルムの上に前記マレイミド樹脂組成物を塗布し、縦150mm×横150mm及び厚さ2000μmの25℃で固体状の未硬化マレイミド樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で円形凹パターンの直径の長さ800μm、高さ1500μm、間隔100μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例8で調製した磁性粒子ペーストを前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて磁性粒子群を形成し、80℃で前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの上に転写した。その後、前記フィルムを100℃×5分間熱プレスすることで、前記磁性粒子群を未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ2000μm、磁性粒子群の直径が長さ800μm、厚さ1500μm、間隔100μmで規則的に配列された未硬化の異方性磁性フィルムを製造した(図15)。理論平均粒子数は約3×10個、粒子群は円柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[実施例13]
BMI-3000J(Designer Molecules Inc.社製)100g、ジクミルパーオキシド1g、中空粒子シリナックス(日鉄鉱業(株)社製、粒径80~130nm)50g、キシレン100gを混合し、マレイミド樹脂組成物を調製した。実施例1と同様の方法で、前記マレイミド樹脂組成物を縦150mm×横150mm×厚さ120μmの膜状に成形した。その後、110℃×30分間加熱することでキシレンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ100μmの25℃で固体状の未硬化マレイミド樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で六角形凹パターンの最長の対角線の長さ200μm、高さ100μm、間隔40μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例9で調製した電磁波吸収粒子ペーストを前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて電磁波吸収粒子群を形成し、80℃で前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの上に転写した。その後、前記フィルムを100℃×5分間熱プレスすることで、前記電磁波吸収粒子群を未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ100μm、電磁波吸収粒子群の最長の粒子間距離が長さ200μm、厚さ100μm、間隔40μmで規則的に配列された未硬化の中空粒子含有異方性電磁波吸収フィルムを製造した(図16)。理論平均粒子数は約2900個、粒子群は六角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[比較例1]
合成例1で合成したビニルシリコーンレジンA1を20g、合成例2で合成したハイドロジェンシリコーンレジンA2を20g、白金(0)-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス(白金濃度1質量%)0.2mg、エチニルシクロヘキサノール60mg、トルエン10g、金メッキ処理された導電性微粒子(商品名:ミクロパールAU、積水化学(株)製、平均粒径7.25μm)1gを混合しオルガノポリシロキサン組成物を作製した。実施例1と同様の方法で前記オルガノポリシロキサン組成物を縦150mm×横150mm×厚さ10μmを有する膜状に成形した。その後、100℃×30分間加熱してトルエンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ8μm、25℃で未硬化の固体状であり、導電性粒子が導電性粒子群を形成せず、まばらに存在する未硬化の導電フィルムを製造した(図17)。
[比較例2]
銀フィラー(平均粒径3μm)10g、シクロペンタノン3gを混合し、バインダーを含まない銀ペーストを調製した。実施例3と同様の方法で、縦150mm×横150mm×厚さ30μmの25℃で未硬化の固体状のマレイミド樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ30μm、高さ30μm、間隔30μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。前記銀ペーストをシリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銀粒子群を形成し、80℃で前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの上に転写したところ、前記銀粒子群が崩れた状態で転写された。その後、未硬化マレイミド樹脂フィルムを100℃×5分間熱プレスして、前記銀粒子群を前記未硬化マレイミド樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ30μm、銀粒子群がまばらに存在する未硬化の導電フィルムを製造した(図18)。
[比較例3]
エポキシ樹脂jER-1256B40(三菱ケミカル(株)製、40質量%メチルエチルケトン[MEK]溶液)100g、jER-828EL(三菱ケミカル(株)製)40g、2-エチル-4-メチルイミダゾール0.8g、MEK200gを混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例1と同様の方法で前記エポキシ樹脂組成物を縦150mm×横150mm×厚さ5μmを有する膜状に成形した。その後、40℃×30分間加熱してMEKを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ2μmの25℃で固体状の未硬化エポキシ樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ1μm、高さ1μm、間隔0.5μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例4で調製した銀ペースト3を前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銀粒子群を形成し、30℃で前記未硬化エポキシ樹脂フィルムの上に転写したが、隣接する銀ナノ粒子がくっついてしまった(図19)。
[比較例4]
実施例1と同様の方法で、前記オルガノポリシロキサン組成物を縦150mm×横150mm及び厚さ300μmの膜状に成形した。その後、100℃×30分間加熱することでトルエンを揮発させ、縦150mm×横150mm×厚さ200μmの25℃で固体状の未硬化シリコーン樹脂フィルムを作製した。実施例1と同様の方法で凹パターンの1辺の長さ1,200μm、高さ200μm、間隔1,200μmの凹凸パターンのついたシリコーン型を作製した。調製例1で調製した銀ペースト1を前記シリコーン型の凹部にスキージし、乾燥させて銀粒子群を形成し、60℃で前記未硬化シリコーン樹脂フィルムの上に転写した。その後、未硬化シリコーン樹脂フィルムを100℃×5分間熱プレスして前記銀粒子群を未硬化シリコーン樹脂フィルムの中に押し込み、フィルムの厚さ200μm、銀粒子群が1辺の長さ1,200μm、厚さ200μm、間隔1,200μmで規則的に配列された未硬化の異方性導電フィルムを製造した(図20)。理論平均粒子数は約2×10個、粒子群は四角柱状であり、上面の面積に対する下面の面積比は約1であった。
[通電試験]
基板の電極上に、実施例1~8、比較例1~4で製造した未硬化の異方性導電フィルムを貼り付け、その上に実施例1,2,4及び比較例1,2では200μm×200μm及び厚さ50μmのフリップチップLEDを、実施例3,5,8及び比較例3では20μm×50μm及び厚さ10μmのフリップチップLEDを、実施例6,7及び比較例4では2,000μm×3,000μm及び厚さ300μmのフリップチップLEDをピックアンドプレイスで押し付け、それぞれ180℃×2時間で本硬化し、試験体を作製した。前記試験体に通電して、点灯した数を計測した。結果を表1に示す。
[熱衝撃試験]
前記通電試験後の該試験体の20個について、-40℃~120℃、1,000回の熱衝撃試験を行い、その後、再び前記通電試験を行って点灯した数を計測した。結果を表1に記載する。
Figure 0007240226000016
表1に示す通り、本発明の異方性導電フィルムは、従来の異方性導電フィルムと異なり、微細な電極を持つ半導体装置に対してもショートすることなく、通電を確保することができ、更に熱衝撃試験後にも通電を確保することができる。
比較例1,2と異なり、実施例1~8の異方性導電フィルムでは、バインダーで結着された導電性粒子を含む導電性粒子群が形成されている。さらに、比較例3,4と異なり、これらの導電性粒子群は間隔が1μm~1,000μmの範囲内で規則的に配列されている。
以上のことから、上記特徴を備える本発明の異方性導電フィルムであれば、非常に微細なパターンを有する回路電極同士を電気的に接続でき、信頼性が高いことが明らかになった。
更に粒子群による微細なパターンを有する異方性フィルムであることから、実施例9~13に示した通り、異方性熱伝導フィルム、異方性蛍光体フィルム、異方性磁性フィルム、異方性電磁波吸収フィルムなど、種々の用途に適用可能であることがわかる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…絶縁性樹脂、 2…導電性粒子群、 3…バインダー、 4…導電性粒子、
1a…未硬化シリコーンフィルム、2a…銀粒子群、
5…ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレン)フィルム
10…異方性導電フィルム、 A…隣接する導電性粒子群の間隔、
T…異方性導電フィルムの厚さ。

Claims (27)

  1. 絶縁性樹脂と粒子群を含有する異方性フィルムであって、前記粒子群は複数の粒子同士がバインダーで結着された粒子の群であり、かつ、前記粒子群は規則的に配列されており、その間隔が1μm~1,000μmであり、かつ、
    前記粒子が蛍光体であり、前記粒子群が蛍光体粒子群であることを特徴とする異方性フィルム。
  2. 絶縁性樹脂と粒子群を含有する異方性フィルムであって、前記粒子群は複数の粒子同士がバインダーで結着された粒子の群であり、かつ、前記粒子群は規則的に配列されており、その間隔が1μm~1,000μmであり、かつ、
    前記絶縁性樹脂が絶縁性無機粒子を含有することを特徴とする異方性フィルム。
  3. 前記絶縁性無機粒子が、白色顔料であることを特徴とする請求項2に記載の異方性フィルム。
  4. 前記絶縁性樹脂が中空粒子を含有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の異方性フィルム。
  5. 絶縁性樹脂と粒子群を含有する異方性フィルムであって、前記粒子群は複数の粒子同士がバインダーで結着された粒子の群であり、かつ、前記粒子群は規則的に配列されており、その間隔が1μm~1,000μmであり、かつ、
    前記絶縁性樹脂が中空粒子を含有することを特徴とする異方性フィルム。
  6. 前記粒子が導電性粒子であり、前記粒子群が導電性粒子群であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  7. 前記粒子が熱伝導性粒子であり、前記粒子群が熱伝導性粒子群であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  8. 前記粒子が蛍光体であり、前記粒子群が蛍光体粒子群であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  9. 前記粒子が磁性粒子であり、前記粒子群が磁性粒子群であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  10. 前記粒子が電磁波吸収フィラーであり、前記粒子群が電磁波吸収フィラー粒子群であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  11. 前記絶縁性樹脂と前記粒子群の-50℃~200℃の範囲における線膨張係数の差が1~200ppm/Kのものであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  12. 前記バインダーが、前記絶縁性樹脂と同じ組成の樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  13. 前記バインダーが、前記絶縁性樹脂とは異なる組成の樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  14. 前記異方性フィルムの厚さが、1μm~2000μmであることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  15. 前記粒子の平均粒径がレーザー回折式粒度分布測定装置で測定されたメジアン径として0.01~100μmのものであることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  16. 前記粒子群が1~1000μmの幅を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  17. 前記粒子群の幅が、前記粒子の平均粒径の5倍以上のものであることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  18. 前記粒子群の理論平均粒子数が、50~1×10個のものであることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  19. 前記粒子群の形状が、円柱状又は角柱状のものであることを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  20. 前記粒子群の上面の面積に対する下面の面積の比が、0.5~10のものであることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  21. 前記粒子群の厚さが、前記異方性フィルムの厚さの50%以上であることを特徴とする請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  22. 前記粒子群が前記異方性フィルムの少なくとも一方の表面で露出していることを特徴とする請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  23. 前記少なくとも一方の表面における露出している前記粒子群の面積割合が、20~90%であることを特徴とする請求項22に記載の異方性フィルム。
  24. 前記絶縁性樹脂が、未硬化状態で25℃において可塑性の固体または半固体状であることを特徴とする請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  25. 前記粒子が金属粒子を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  26. 前記絶縁性樹脂の硬化物が、10GHzでの比誘電率が3.5以下であることを特徴とする請求項1から請求項25のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
  27. 前記異方性フィルムが、導電フィルム、熱伝導フィルム、蛍光体フィルム、磁性フィルム、電磁波吸収フィルム、リフレクターフィルム、及び中空フィルムのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項26のいずれか一項に記載の異方性フィルム。
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