[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係るモニタ受信器は、入力光を第1の出力光及び第2の出力光に分岐する第1の分岐器と、第1の出力光が入力され、第1の出力光を減衰した第3の出力光を出力する光減衰器と、第3の出力光を第4の出力光及び第5の出力光に分岐する第2の分岐器と、第2の出力光が入力され、第2の出力光の位相を変調させた第6の出力光を出力する位相変調器と、第5の出力光及び第6の出力光を合成した第7の出力光を出力する光合成器と、第7の出力光を受けて第7の出力光に応じた電流を出力する受光素子と、を備える。
このようなモニタ受信器によれば、第1の分岐器によって入力光が第1の出力光及び第2の出力光に分岐され、第2の出力光が位相変調器によって位相変調されて第6の出力光として光合成器に入力される。また、モニタ受信器では、第1の出力光が光減衰器において減衰されて第3の出力光として出力され、第3の出力光が第2の分岐器において第4の出力光及び第5の出力光に分岐され、第5の出力光が光合成器に入力される。そして、光合成器において第5の出力光及び第6の出力光が合成されて第7の出力光として出力され、受光素子が第7の出力光に応じた電流を出力する。受光素子から出力される電流は、入力光に応じた光(第2の出力光)を位相変調した第6の出力光と、出力光に応じた光である第5の出力光とを合成した第7の出力光に応じた電流であるので、受光素子から出力される電流を測定することによって、入力光のパワー及び出力光のパワーの両方を適切にモニタすることができる。そして、このようなモニタ受信器では、1つの受光素子で入力光のパワー及び出力光のパワーの両方をモニタすることができるので、入力用及び出力用としてそれぞれ受光素子を設ける(2つ受光素子を設ける)場合と比較して、モニタ受信器を小型化することができる。以上より、本発明の一態様によれば、入力光及び出力光を適切にモニタしながら小型化に適したモニタ受信器を提供することができる。
また、位相変調器は、第5の出力光及び第6の出力光の位相差が180°以上となるように第6の出力光を出力してもよい。これにより、合成光である第7の出力光に応じて受光素子から出力される電流について、少なくともその最大値と最小値とを測定することができる。電流の最大値及び最小値が測定されることによって、1つの受光素子で入力光のパワー及び出力光のパワーの両方を確実にモニタすることができる。
また、第1の分岐器は、第1の出力光のパワーが第2の出力光のパワーの9倍以上となるように入力光を第1の出力光及び第2の出力光に分岐し、第2の分岐器は、第4の出力光のパワーが第5の出力光のパワーの9倍以上となるように第3の出力光を第4の出力光及び第5の出力光に分岐してもよい。これにより、モニタに利用する分岐光の大きさを極力小さくすることができる。
一実施形態に係る測定方法は、上述したモニタ受信器を用いた測定方法であって、位相変調器に印可する電圧をスイープすることにより第6の出力光の位相を変化させる第1の工程と、受光素子から出力される電流の最大値及び最小値を測定する第2の工程と、電流の最大値及び最小値に基づき、入力光のパワー及び光減衰器による光の減衰量を導出する第3の工程と、を備える。このような測定方法によれば、位相変調器に印可する電圧をスイープすることによって、第6の出力光の位相を適切に変化させて第5の出力光及び第6の出力光の位相差を生じさせ、上記位相差に応じた電流(受光素子から出力される電流)の最大値及び最小値を測定し、最大値及び最小値に基づいて入力光のパワー及び光減衰器による光の減衰量が導出される。このような測定方法では、位相変調器に印可する電圧をスイープするという簡易な工程によって、電流の最大値及び最小値を適切に測定し、最大値及び最小値に基づいて、入力光のパワー及び光減衰器による光の減衰量を確実に導出し、入力光及び出力光を適切にモニタすることができる。そして、当該測定方法においては、1つの受光素子によって入力光のパワー及び出力光のパワーの両方をモニタすることができるので、入力用及び出力用としてそれぞれ受光素子を設ける(2つ受光素子を設ける)場合と比較して、モニタ受信器を小型化することができる。
また、第3の工程では、入力光のパワーをP、光減衰器による光の減衰量をATT、受光素子から出力される電流の平均値をM_AP、受光素子から出力される電流の振幅をM_FP、暗電流をIdark、第1の分岐器から位相変調器を経て光合成器に至る光路の光損失をR*L1、第1の分岐器から光減衰器及び第2の分岐器を経て光合成器に至る光路の光損失をR*L2とした場合に、以下の(1)式によって入力光のパワーPを導出し、以下の(2)式によって光減衰器による光の減衰量ATTを導出してもよい。
P=(M_AP-Idark)/(R*L2)・・・(1)
ATT=M_FP/(2*P*R*L1)・・・(2)
上記2式を用いることにより、測定した電流(受光素子から出力される電流)から、入力光のパワー及び光の減衰量を確実且つ簡易に導出することができる。
一実施形態に係る光90°ハイブリッド集積回路は、コヒーレント変調されたX偏波光及びY偏波光を受信して復調する光90度ハイブリッド集積回路であって、局部発振光を分岐する光分岐部と、或る軸線を挟む一対の領域にそれぞれ配置された2入力4出力の第1及び第2の多モード光干渉部と、コヒーレント変調されたX偏波光及びY偏波光の少なくとも一方の偏波光を第1の出力光及び第2の出力光に分岐する第1の分岐器と、第1の出力光が入力され、第1の出力光を減衰した第3の出力光を出力する光減衰器と、第3の出力光を第4の出力光及び第5の出力光に分岐する第2の分岐器と、第2の出力光が入力され、第2の出力光の位相を変調させた第6の出力光を出力する位相変調器と、第5の出力光及び第6の出力光を合成した第7の出力光を出力する光合成器と、第7の出力光を受けて第7の出力光に応じた電流を出力する受光素子と、を備える。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光90度ハイブリッド集積回路の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、第1実施形態に係る光90度ハイブリッド集積回路(以下、単に光集積回路と称する)1の構成を概略的に示す平面図である。図1に示される光集積回路1は、偏波多重コヒーレント光通信に使用される光受信器に設けられ、コヒーレント変調信号を含むX偏波光N1、及び別のコヒーレント変調信号を含むY偏波光N2を受信してこれらを復調する。
光集積回路1は、1枚の光導波路基板10を備える。光導波路基板10は、例えばInPといった材料からなる平板状の部材であって、その平面形状は例えば四角形である。光導波路基板10は、平坦な主面を有する。主面は、互いに対向する一対の端辺10b,10cと、端辺10b,10cが対向する方向と交差する(例えば直交する)方向において互いに対向する一対の端辺10d,10eとを有する。端辺10b,10cはそれぞれ直線状に延びており、互いに平行である。端辺10d,10eはそれぞれ直線状に延びており、互いに平行である。端辺10b,10cの延伸方向と端辺10d,10eの延伸方向とは互いに交差(一例では直交)する。端辺10b,10cの長さは例えば3.5mm~4.5mmの範囲内であり、端辺10d,10eの長さは例えば2.0mm~3.0mmの範囲内である。光集積回路1の後述する各構成は、光導波路基板10上に設けられている。
光集積回路1は、偏光ビームスプリッタ4を備える。偏光ビームスプリッタ4は、1つの入力端4aと2つの出力端4b,4cとを有する。入力端4aは、光導波路20を介して、光導波路基板10上の光入力ポート19と光結合されている。入力端4aは、光入力ポート19を介して、偏波多重されたコヒーレント変調信号光N0を外部から受ける。偏光ビームスプリッタ4の一方の出力端4bは、光導波路22を介して多モード光干渉部15の入力端15eと光結合しており、入力端15eに対してコヒーレント変調されたX偏波光N1を出力する。偏光ビームスプリッタ4の他方の出力端4cは、偏波回転部5及び光導波路26を介して多モード光干渉部16の入力端16eと光結合しており、入力端16eに対してコヒーレント変調されたY偏波光N2を出力する。なお、光導波路26には偏波回転部5が設けられている。光集積回路1のように、光導波路基板10上に偏光ビームスプリッタ4を更に集積することによって、装置の小型化及び部品点数の削減により一層寄与できる。
光集積回路1は、光入力ポート13を更に備える。光入力ポート13は、局部発振光L0を光導波路基板10の外部から入力する。本実施形態では、光入力ポート13は光受信器の局部発振光入力ポート(不図示)と光学的に結合されており、局部発振光入力ポートを介して局部発振光L0を受ける。
光集積回路1は、光分岐部14を更に備える。光分岐部14は、1つの入力端14aと、2つの出力端14b,14cとを有する。入力端14aは、光導波路基板10上に設けられた光導波路21を介して、光入力ポート13と光学的に結合されている。光分岐部14は、光入力ポート13から入力された局部発振光L0を、局部発振光L1と局部発振光L2とに分岐する。分岐比率は1:1である。光分岐部14は、一方の局部発振光L1を出力端14bから出力し、他方の局部発振光L2を出力端14cから出力する。
光集積回路1は、4つの多モード光干渉部15~18を更に備える。多モード光干渉部15,16は、2入力4出力のMMI(Multi-Mode Interference)である。多モード光干渉部17,18は、2入力2出力のMMIである。
多モード光干渉部15は、光導波方向に並ぶ一対の端辺15a,15bと、光導波路方向と交差する方向に並ぶ一対の側辺15c,15dとを有する。多モード光干渉部15は、第1の入力端15eと、第2の入力端15fと、第1~第4の出力端15g~15jとを更に有する。入力端15eは、一方の端辺15aに設けられ、光導波路基板10上に設けられた光導波路22を介して、光導波路基板10の外部(本実施形態では偏光ビームスプリッタ4)から、X偏波光N1を受ける。入力端15fは、一方の端辺15aに設けられ、光導波路基板10上に設けられた光導波路23を介して、光分岐部14の一方の出力端14bと光学的に結合されている。入力端15fは、光分岐部14により分岐された一方の局部発振光L1を受ける。第1~第4の出力端15g~15jは、他方の端辺15bに並んで設けられている。出力端15g~15jは、それぞれ干渉光F1~F4を出力する。このうち、干渉光F3は負のXI信号成分(XIN)を含み、干渉光F4は正のXI信号成分(XIP)を含む。
多モード光干渉部17は、入力端17a,17bと、出力端17c,17dとを有する。入力端17aは、光導波路基板10上に設けられた光導波路24を介して、多モード光干渉部15の出力端15gと光学的に結合されている。入力端17aは、出力端15gから干渉光F1を受ける。入力端17bは、光導波路基板10上に設けられた光導波路25を介して、多モード光干渉部15の出力端15hと光学的に結合されている。入力端17bは、出力端15hから干渉光F2を受ける。
光導波路25は、位相シフタ25aを含んでいる。位相シフタ25aは、光導波路25を導波して入力端17bに到達する干渉光F2を、光導波路24を導波して入力端17aに到達する干渉光F1に対して45°の位相分だけ遅延させる。すなわち、光導波路25は光導波路24に対して45°の位相遅れを有し、入力端17bに到達する干渉光F2には、入力端17aに到達する干渉光F1に対して45°の位相差が与えられる。一例では、位相シフタ25aは、位相差に相当する長さの光導波路の余長部分により構成される。
多モード光干渉部17の出力端17c,17dは、それぞれ干渉光F5,F6を出力する。干渉光F5は負のXQ信号成分(XQN)を含み、干渉光F6は正のXQ信号成分(XQP)を含む。
多モード光干渉部16は、光導波方向に並ぶ一対の端辺16a,16bと、光導波方向と交差する方向に並ぶ一対の側辺16c,16dとを有する。多モード光干渉部16は、第3の入力端16eと、第4の入力端16fと、第5~第8の出力端16g~16jとを更に有する。入力端16eは、一方の端辺16aに設けられ、光導波路基板10上に設けられた光導波路26を介して、光導波路基板10の外部(本実施形態では偏光ビームスプリッタ4)から、Y偏波光N2を受ける。入力端16fは、一方の端辺16aに設けられ、光導波路基板10上に設けられた光導波路27を介して、光分岐部14の他方の出力端14cと光学的に結合されている。入力端16fは、光分岐部14により分岐された他方の局部発振光L2を受ける。第5~第8の出力端16g~16jは、他方の端辺16bにおいて順に並んでいる。出力端16g~16jは、それぞれ干渉光F7~F10を出力する。このうち、干渉光F7は正のYI信号成分(YIP)を含み、干渉光F8は負のYI信号成分(YIN)を含む。
多モード光干渉部18は、入力端18a,18bと、出力端18c,18dとを有する。入力端18aは、光導波路基板10上に設けられた光導波路28を介して、多モード光干渉部16の出力端16iと光学的に結合されている。入力端18aは、出力端16iから干渉光F9を受ける。入力端18bは、光導波路基板10上に設けられた光導波路29を介して、多モード光干渉部16の出力端16hと光学的に結合されている。入力端18bは、出力端16jから干渉光F10を受ける。
光導波路29は、位相シフタ29aを含んでいる。位相シフタ29aは、光導波路29を導波して入力端18bに到達する干渉光F10を、光導波路28を導波して入力端18aに到達する干渉光F9に対して135°の位相分だけ遅延させる。すなわち、光導波路29は光導波路28に対して135°の位相遅れを有し、入力端18bに到達する干渉光F10には、入力端18aに到達する干渉光F9に対して135°の位相差が与えられる。一例では、位相シフタ29aは、位相差に相当する長さの光導波路の余長部分により構成される。
多モード光干渉部18の出力端18c,18dは、それぞれ干渉光F11,F12を出力する。干渉光F11は正のYQ信号成分(YQP)を含み、干渉光F12は負のYQ信号成分(YQN)を含む。
光集積回路1は、フォトダイオード31~38を更に備える。フォトダイオード31~38は、基板10の主面10a上において多モード光干渉部15~18等とモノリシックに設けられている。フォトダイオード31~38は、基板10上にフォトダイオードのための各種半導体層を成長することにより形成される。なお、フォトダイオード31~38は基板10の外部に設けられてもよい。
フォトダイオード31,32は、基板10上の光導波路を介して、多モード光干渉部17の出力端17c,17dとそれぞれ光学的に結合されている。フォトダイオード31,32は、それぞれ干渉光F5,F6を電流信号に変換して、XQNに関する電気信号、及びXQPに関する電気信号をそれぞれ生成する。フォトダイオード33,34は、基板10上の光導波路を介して、多モード光干渉部15の出力端15i,15jとそれぞれ光学的に結合されている。フォトダイオード33,34は、それぞれ干渉光F3,F4を電流信号に変換して、XINに関する電気信号、及びXIPに関する電気信号をそれぞれ生成する。フォトダイオード35,36は、基板10上の光導波路を介して、多モード光干渉部16の出力端16g,16hとそれぞれ光学的に結合されている。フォトダイオード35,36は、それぞれ干渉光F7,F8を電流信号に変換して、YIPに関する電気信号、及びYINに関する電気信号をそれぞれ生成する。フォトダイオード37,38は、基板10上の光導波路を介して、多モード光干渉部18の出力端18c,18dとそれぞれ光学的に結合されている。フォトダイオード37,38は、それぞれ干渉光F11,F12を電流信号に変換して、YQPに関する電気信号、及びYQNに関する電気信号をそれぞれ生成する。
ここで、光集積回路1は、モニタ受信器50A,50B(50)を更に備える。モニタ受信器50Aは、光導波路22に設けられている。モニタ受信器50Aは、光導波路22において入力光及び出力光をモニタする機能を有する。なお、モニタ受信器50Aは、入力光及び出力光のそれぞれ一部を分岐することにより、上述した入力光及び出力光のモニタを行うため、厳密には、X偏波光N1のパワーは光導波路22において一定ではない(モニタ受信器50Aの入出力前後でパワーが変化する)。モニタ受信器50Bは、光導波路26に設けられており、より詳細には、モニタ受信器50Bは、光導波路26における偏波回転部5の後段(下流)に設けられている。モニタ受信器50Bは、光導波路26において入力光及び出力光をモニタする機能を有する。なお、モニタ受信器50Bは、入力光及び出力光のそれぞれ一部を分岐することにより、上述した入力光及び出力光のモニタを行うため、厳密には、Y偏波光N2のパワーは光導波路26において一定ではない(モニタ受信器50Bの入出力前後でパワーが変化する)。以下では、図2~図4を参照して、モニタ受信器50の詳細について説明する。
図2は、図1に示されるモニタ受信器50を概略的に示す図である。図2に示されるように、モニタ受信器50は、スプリッタ51(第1の分岐器)と、VOA(Variable Optical Attenuator)52(光減衰器)と、スプリッタ53(第2の分岐器)と、位相変調器54と、カプラ55(光合成器)と、受光素子56と、を備えている。
スプリッタ51は、入力光F100を第1の出力光F101及び第2の出力光F102に分岐する分岐器である。スプリッタ51は、第1の出力光F101のパワーが第2の出力光F102のパワーの9倍(F101:F102=9:1)以上となるように、入力光F100を第1の出力光F101及び第2の出力光F102に分岐する。スプリッタ51は、より好ましくは、第1の出力光F101のパワーが第2の出力光F102のパワーの19倍~33倍程度となるように、入力光F100の分岐を行ってもよい。図2に示される例では、スプリッタ51は、第1の出力光F101のパワーが第2の出力光F102のパワーの19倍(F101:F102=95:5)となるように入力光F100を分岐している。第1の出力光F101は、光導波路61を介してVOA52に入力される。第2の出力光F102は、光導波路62を介して位相変調器54に入力される。
VOA52は、第1の出力光F101が入力され、第1の出力光F101を適切な信号レベル(パワー)に減衰して調整し、調整後の第3の出力光F103を出力する。図3は、VOA52の詳細を概略的に示す図である。図3に示されるように、VOA52は、例えばマッハツェンダー干渉計により構成されていてもよい。この場合、VOA52は、スプリッタ52aと、位相変調器52bと、カプラ52cとを有しており、スプリッタ52aにおいて分岐した一方の光の位相を位相変調器52bにおいて変調し、位相変調した光と他方の光とをカプラ52cにおいて合成し、第3の出力光F103を出力する。VOA52をマッハツェンダー干渉計により構成することによって、スプリッタ、位相変調器、及びカプラからなる点において、VOA52単体とモニタ受信器50とで同様の構成となる。このことにより製造容易性が向上する。第3の出力光F103は、光導波路63を介してスプリッタ53に入力される。
スプリッタ53は、第3の出力光F103を第4の出力光F104及び第5の出力光F105に分岐する分岐器である。スプリッタ53は、第4の出力光F104のパワーが第5の出力光F105のパワーの9倍(F104:F105=9:1)以上となるように、第3の出力光F103を第4の出力光F104及び第5の出力光F105に分岐する。スプリッタ53は、より好ましくは、第4の出力光F104のパワーが第5の出力光F105のパワーの19倍~33倍程度となるように、第3の出力光F103の分岐を行ってもよい。図2に示される例では、スプリッタ53は、第4の出力光F104のパワーが第5の出力光F105のパワーの19倍(F104:F105=95:5)となるように第3の出力光F103を分岐している。第4の出力光F104は、モニタ受信器50から出力されて、光導波路22によって第1の入力端15eに導かれる。すなわち、第4の出力光F104は、図1に示されるX偏波光N1である。第5の出力光F105は、光導波路65を介してカプラ55に入力される。
位相変調器54は、第2の出力光F102が入力され、第2の出力光F102の位相を変調させた第6の出力光F106を出力する。位相変調器54は、上述した第5の出力光F105及び第6の出力光F106の位相差が180°以上となるように第6の出力光F106を出力する。位相変調器54は、例えば印加される電圧に応じて位相を変調させる。本実施形態では、位相変調器54に印可する電圧(位相変調器電圧)をスイープすることによって第6の出力光F106の位相を変化させ、具体的には、第6の出力光F106の位相を少なくとも180°以上変化させる(詳細は後述)。第6の出力光F106は、光導波路66を介してカプラ55に入力される。
カプラ55は、第5の出力光F105及び第6の出力光F106を合成した第7の出力光F107を出力する光合成器である。
受光素子56は、第7の出力光F107を受けて、第7の出力光F107に応じた電流(MPD電流)を出力する。図4は、位相変調器電圧に応じたMPD電流の波形を示す図である。上述したように、位相変調器電圧が変化することに応じて第6の出力光F106の位相が変化する。第5の出力光F105及び第6の出力光F106を合成した第7の出力光F107は、第6の出力光F106の位相と第5の出力光の位相とが互いに最も強め合う位相である場合において最大となり、第6の出力光F106の位相と第5の出力光の位相とが互いに最も弱め合う位相である場合において最小となる。このため、MPD電流も、第6の出力光F106の位相と第5の出力光の位相とが互いに最も強め合う位相である場合において最大(最大電流IPD_MAX)となり、第6の出力光F106の位相と第5の出力光の位相とが互いに最も弱め合う位相である場合において最小(最小電流IPD_MIN)となる。最大電流IPD_MAX及び最小電流IPD_MINは、少なくとも第6の出力光F106の位相が180°以上変化させることにより測定することができる。そして、図4に示されるように、受光素子56から出力される最大電流IPD_MAX及び最小電流IPD_MINが測定されることにより、受光素子56から出力される電流の平均値M_AP(図4中の「IPD平均」)及び受光素子56から出力される電流の振幅M_FP(図4中の「IPD振幅」)を導出することができる。
次に、上述したモニタ受信器50を用いた測定方法(入力光及び出力光のモニタ方法)について説明する。本測定方法は、第1の工程と、第2の工程と、第3の工程とを備えている。
第1の工程は、位相変調器54に印可する電圧をスイープすることにより第6の出力光F106(位相変調器54から出力される光)の位相を変化させる工程である。第1の工程では、位相変調器電圧を徐々に大きくすることにより、第6の出力光F106の位相を少なくとも180°以上変化させる。
第2の工程は、受光素子56から出力される電流であるMPD電流の最大値及び最小値を測定する工程である。MPD電流は、第6の出力光F106の位相と第5の出力光の位相とが互いに最も強め合う位相である場合において最大(最大電流IPD_MAX)となり、第6の出力光F106の位相と第5の出力光の位相とが互いに最も弱め合う位相である場合において最小(最小電流IPD_MIN)となる。上述したように、第1の工程において第6の出力光F106の位相が少なくとも180°以上変化するように位相変調器電圧がスイープされることによって、最大電流IPD_MAX及び最小電流IPD_MINを測定することができる。
第3の工程は、MPD電流の最大値及び最小値に基づき、入力光のパワー及びVOA52による光の減衰量を導出する工程である。VOA52による光の減衰量を導出することによって、出力光のパワーが導出される。具体的には、第3の工程では、以下の(1)式によって入力光F100のパワーPを導出し、以下の(2)式によってVOA52による光の減衰量ATTを導出する。なお、以下の(1)式及び(2)式において、入力光F100のパワーをP、VOA52による光の減衰量をATT、受光素子56から出力される電流の平均値をM_AP、受光素子56から出力される電流の振幅をM_FP、暗電流をIdark、スプリッタ51から位相変調器54を経てカプラ55に至る光路の光損失をR*L1(Rは受光素子56の受光感度、L1はRを考慮しない当該光路の光損失)、スプリッタ51からVOA52及びスプリッタ53を経てカプラ55に至る光路の光損失をR*L2(Rは受光素子56の受光感度、L2はRを考慮しない当該考慮の光損失)とする。
P=(M_AP-Idark)/(R*L2)・・・(1)
ATT=M_FP/(2*P*R*L1)・・・(2)
上記(1)式及び(2)式の導出過程について説明する。カプラ55における第5の出力光F105のパワーをP1、カプラ55における第6の出力光F106のパワーをP2とすると、P1=P*L1*ATT、P2=P*L2である。そして、最大電流IPD_MAX=Idark+R*(P2+P1)、最小電流IPD_MIN=Idark+R*(|P2-P1|)であるので、モニタ電流平均M_AP=(IPD_MAX+IPD_MIN)/2=Idark+R*P2=Idark+P*(R*L2)となり、上記(1)式が導出される。また、モニタ電流振幅M_FP=(IPD_MAX-IPD_MIN)=2*R*P1=2*P*ATT*(R*L1)となり、上記(2)式が導出される。
上記(1)式及び(2)式を用いて、入力光F100のパワーP及びVOA52による光の減衰量ATTが導出される際には、前処理として、Idark、(R*L2)、(R*L1)の値の決定(導出)が行われる。具体的には、Idarkは、光(入力光F100)未入力時のMPD電流に基づいて決定することができる。また、基準パワー光P0(例えば1mW等)の入力光F100を入力したときのモニタ電流平均M_APを測定することによって、(1)式に基づき(R*L2)の値を決定することができる。また、減衰量ATTを0設定(既知のATTの値)として基準パワー光P0(例えば1mW等)の入力光F100を入力したときのモニタ電流振幅M_FPを測定することによって、(2)式に基づき(R*L1)の値を決定することができる。このような前処理を行って、Idark、(R*L2)、(R*L1)の値を決定(導出)し、MPD電流を測定することによって、(1)式及び(2)式に基づき入力光F100のパワーP及びVOA52による光の減衰量ATT(すなわち入力光のパワー及び出力光のパワー)を適切にモニタすることができる。
次に、本実施形態に係るモニタ受信器50の作用効果について説明する。
モニタ受信器50は、入力光F100を第1の出力光F101及び第2の出力光F102に分岐するスプリッタ51と、第1の出力光F101が入力され、第1の出力光F101を減衰した第3の出力光F103を出力するVOA52と、第3の出力光F103を第4の出力光F104及び第5の出力光F105に分岐するスプリッタ53と、第2の出力光F102が入力され、第2の出力光F102の位相を変調させた第6の出力光F106を出力する位相変調器54と、第5の出力光F105及び第6の出力光F106を合成した第7の出力光F107を出力するカプラ55と、第7の出力光F107を受けて第7の出力光F107に応じたMPD電流を出力する受光素子56と、を備える。
このようなモニタ受信器50によれば、スプリッタ51によって入力光F100が第1の出力光F101及び第2の出力光F102に分岐され、第2の出力光F102が位相変調器54によって位相変調されて第6の出力光F106としてカプラ55に入力される。また、モニタ受信器50では、第1の出力光F101がVOA52において減衰されて第3の出力光F103として出力され、第3の出力光F103がスプリッタ53において第4の出力光F104及び第5の出力光F105に分岐され、第5の出力光F105がカプラ55に入力される。そして、カプラ55において第5の出力光F105及び第6の出力光F106が合成されて第7の出力光F107として出力され、受光素子56が第7の出力光F107に応じたMPD電流を出力する。受光素子56から出力されるMPD電流は、入力光F100に応じた光(第2の出力光F102)を位相変調した第6の出力光F106と、出力光(第4の出力光F104)に応じた光である第5の出力光F105とを合成した第7の出力光F107に応じた電流であるので、受光素子56から出力されるMPD電流を測定することによって、入力光のパワー及び出力光パワーの両方を適切にモニタすることができる。
ここで、例えば図5に示される比較例に係るモニタ受信器500のように、入力光に応じた光を受光素子561が受け、出力光に応じた光を別の受光素子562が受ける構成においては、モニタ用受光素子を2つ備えることによって、回路(モニタ受信器)500が大型化・複雑化してしまう。この点、本実施形態に係るモニタ受信器50では、1つの受光素子56で入力光のパワー及び出力光のパワーの両方をモニタすることができるので、入力用及び出力用としてそれぞれ受光素子561,562を設ける(2つ受光素子を設ける)構成と比較して、モニタ受信器50を小型化・簡易化することができる。以上より、本実施形態に係る構成によれば、入力光及び出力光を適切にモニタしながら小型化に適したモニタ受信器50を提供することができる。
また、位相変調器54は、第5の出力光F105及び第6の出力光F106の位相差が180°以上となるように第6の出力光F106を出力。これにより、合成光である第7の出力光F107に応じて受光素子56から出力されるMPD電流について、少なくともその最大値と最小値とを測定することができる。電流の最大値及び最小値が測定されることによって、1つの受光素子56で、入力光のパワー及び出力光のパワーの両方を確実にモニタすることができる。
また、スプリッタ51は、第1の出力光F101のパワーが第2の出力光F102のパワーの9倍以上となるように入力光F100を第1の出力光F101及び第2の出力光F102に分岐し、スプリッタ53は、第4の出力光F104のパワーが第5の出力光F105のパワーの9倍以上となるように第3の出力光F103を第4の出力光F104及び第5の出力光F105に分岐する。これにより、モニタに利用する分岐光の大きさを極力小さくすることができる。
また、上述したモニタ受信器を用いた測定方法は、位相変調器54に印可する電圧をスイープすることにより第6の出力光F106の位相を変化させる第1の工程と、受光素子56から出力されるMPD電流の最大値及び最小値を測定する第2の工程と、MPD電流の最大値及び最小値に基づき、入力光F100のパワー及びVOA52による光の減衰量を導出する第3の工程と、を備える。
このような測定方法によれば、位相変調器54に印可する電圧をスイープすることによって、第6の出力光F106の位相を適切に変化させて第5の出力光F105及び第6の出力光F106の位相差を生じさせ、上記位相差に応じた電流(受光素子56から出力されるMPD電流)の最大値及び最小値を測定し、最大値及び最小値に基づいて入力光F100のパワー及びVOA52による光の減衰量が導出される。このような測定方法では、位相変調器54に印可する電圧をスイープするという簡易な工程によって、MPD電流の最大値及び最小値を適切に測定し、最大値及び最小値に基づいて、入力光のパワー及びVOA52による光の減衰量を確実に導出し、入力光及び出力光を適切にモニタすることができる。そして、当該測定方法においては、1つの受光素子56によって入力光のパワー及び出力光のパワーの両方をモニタすることができるので、入力用及び出力用としてそれぞれ受光素子を設ける(2つ受光素子を設ける)場合と比較して、モニタ受信器50を小型化することができる。
また、上述した測定方法の第3の工程では、入力光F100のパワーをP、VOA52による光の減衰量をATT、受光素子56から出力されるMPD電流の平均値をM_AP、受光素子56から出力されるMPD電流の振幅をM_FP、暗電流をIdark、スプリッタ51から位相変調器54を経てカプラ55に至る光路の光損失をR*L1、スプリッタ51からVOA52及びスプリッタ53を経てカプラ55に至る光路の光損失をR*L2とした場合に、以下の(1)式によって入力光F100のパワーPを導出し、以下の(2)式によってVOA52による光の減衰量ATTを導出する。
P=(M_AP-Idark)/(R*L2)・・・(1)
ATT=M_FP/(2*P*R*L1)・・・(2)
上記2式を用いることにより、測定した電流(受光素子56から出力されるMPD電流)から、入力光のパワーP及び光の減衰量ATTを確実且つ簡易に導出することができる。なお、光の減衰量ATTが導出されることによって、出力光のパワーを適切に導出することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。