JP7238402B2 - トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
近年、自動車に対する安全性への要求に伴い、タイヤ用ゴム材料には、ウェットグリップ性能等の改善が望まれているが、最近の厳しい要求に応えること、更には低燃費性や耐摩耗性等を維持しつつ、ウェットグリップ性能を顕著に改善することは一般に困難である。
このような問題を解決する方法として、シリカ(低発熱化充填剤)を使用する方法が知られているが、シリカは、その表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向があり、分散が不充分となるため、所望の性能が得られない、等の問題がある。
そこで、シリカ分散性を向上する材料としてシランカップリング剤が開発され、例えば、特許文献1には、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等が提案されている。しかしながら、高水準のウェットグリップ性能、更にはこれと共に耐摩耗性や低燃費性を両立することに関し、更なる改善が望まれている。
特許第4266248号公報
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能を顕著に改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒径18nm以下の微粒子シリカと、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上であるシランカップリング剤とを含み、前記ゴム成分100質量部に対する総シリカ質量をA質量部、総スチレン質量をB質量部としたときに、A×B≦3000を満たすトレッド用ゴム組成物に関する。
前記ゴム成分100質量部に対する総スチレン質量は、10~35質量部であることが好ましい。
前記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積150m/g以上のシリカを40質量部以上含むことが好ましい。
前記連結する炭素原子の数は、8個以上であることが好ましい。
前記A及びBは、1000≦A×Bを満たすことが好ましい。
本発明はまた、前記ゴム組成物から作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒径18nm以下の微粒子シリカと、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上であるシランカップリング剤とを含み、前記ゴム成分100質量部に対する総シリカ質量をA質量部、総スチレン質量をB質量部としたときに、A×B≦3000を満たすトレッド用ゴム組成物であるので、ウェットグリップ性能を顕著に改善できる。
本発明のトレッド用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒径18nm以下の微粒子シリカと、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上であるシランカップリング剤とを含み、更にゴム成分に対する総シリカ量A、総スチレン量BがA×B≦3000を満たすものである。
本発明では、以下の作用効果により、ウェットグリップ性能、更には該性能、低燃費性、耐摩耗性の性能バランスが顕著に(相乗的に)改善されるものと推察される。
SBR中のスチレン量が多いと、ポリマーの自由な変形が阻害されるおそれがあり、更に比較的粒径の小さなシリカといえども、添加量が多くなれば、スチレン部分が障害になりやすくなると考えられる。一方、アルコキシシリル基と硫黄原子とを連結する部分(以下、スペーサー部分とも称する)が長いシランカップリング剤は、ポリマーがシリカと結合した状態でもある程度自由に変形できると考えられる。従って、本発明では、SBR配合において、スペーサー部分が長いシランカップリング剤を使用し、かつスチレン量とシリカ量との積を所定値以下とすることで、ポリマーの変形の自由度が相乗的に向上するため、ウェットグリップ性能が、更には該性能、耐摩耗性、低燃費性の性能バランスが、相乗的に改善されるものと推察される。
前記ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴム(SBR)を含むゴム成分を含有する。本発明の効果の観点から、該SBRとして、重量平均分子量の異なる2種以上のSBRを併用することが好ましく、例えば、以下の重量平均分子量(Mw)を有するSBR1~SBR3の少なくとも2種、好ましくは3種を併用することが好適である。
SBR1のMwは、好ましくは50000以上、より好ましくは80000以上である。また、該Mwは、好ましくは300000以下、より好ましくは200000以下である。上記範囲内のMwを持つSBRを用いることで、ウェットグリップ性能と加工性のバランスが向上する。
SBR2のMwは、好ましくは400000以上、より好ましくは550000以上である。また、該Mwは、好ましくは900000以下、より好ましくは850000以下である。上記範囲内のMwを持つSBRを用いることで、ウェットグリップ性能と耐摩耗性のバランスが向上する。
SBR3のMwは、好ましくは1000000以上、より好ましくは1050000以上である。また、該Mwは、好ましくは2000000以下、より好ましくは1500000以下である。上記範囲内のMwを持つSBRを用いることで、耐摩耗性が向上する。
なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
前記ゴム組成物において、SBRの合計含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。5質量%以上にすることで、良好な耐摩耗性、ウェットグリップ性能が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。95質量%以下にすることで、良好な低発熱性が得られる傾向がある。
SBRとしては、非変性SBR、変性SBRのいずれも使用可能である。なかでも、ウェットグリップ性能、更には低燃費性、耐摩耗性の観点から、変性SBRを用いることが好ましい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
具体的には、変性SBRとして、例えば、下記式(1)で表される化合物(変性剤)により変性されたSBR(S変性SBR)を好適に使用できる。
Figure 0007238402000001
(式(1)中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
上記S変性SBRとしては、なかでも、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の重合末端(活性末端)を上記式(1)で表される化合物により変性されたスチレンブタジエンゴム(S変性S-SBR(特開2010-111753号公報に記載の変性SBR))が好適に用いられる。
、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R及びRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、前述の性能を良好に改善できる点から、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、具体的には、変性SBRとして、以下に示す変性剤により変性された変性SBRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。
なお、上記化合物による変性は公知の方法により行うことができる。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されている溶液重合SBR等を使用できる。
本発明では、SBRと共に、他のゴム成分を使用してもよい。他のゴム成分としては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRが好ましい。
前記ゴム組成物において、BRの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%以上にすることで、良好な耐摩耗性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。50質量%以下にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性が向上するという理由から、BRのシス含量は95質量%以上が好ましい。
また、BRとしては、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、前記変性SBRと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、平均粒径18nm以下の微粒子シリカを含む。該微粒子シリカにより、良好なウェットグリップ性能等が得られる。好ましくは17.5nm以下、より好ましくは17nm以下の微粒子シリカを含む。一方、下限は特に限定されないが、シリカ分散性の観点から、8nm以上が好ましく、9nm以上がより好ましい。
なお、微粒子シリカの平均粒径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
前記ゴム組成物において、前記微粒子シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは45質量部以上である。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。40質量部以上にすることで、良好なウェットグリップ性能等が得られ、100質量部以下にすることで、良好なシリカ分散性、加工性が得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、窒素吸着比表面積(NSA)150m/g以上のシリカを含むことが好ましい。該NSAは、より好ましくは160m/g以上である。また、該NSAは好ましくは300m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。150m/g以上にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られ、300m/g以下にすることで、良好なシリカ分散、低燃費性が得られる傾向がある。なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-81に準拠して測定できる。
前記ゴム組成物において、NSA150m/g以上のシリカの含有量は、前記微粒子シリカの含有量と同様の範囲が好適である。なお、前記微粒子シリカがNSA150m/g以上の特性も有する場合、該NSA150m/g以上のシリカの含有量は、該微粒子シリカも含む量である。
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上であるシランカップリング剤を含む。ウェットグリップ性能が顕著に改善され、両立が困難なウェットグリップ性能、低燃費性、耐摩耗性の性能バランスを顕著に改善できる点から、該連結する炭素原子の数は、8個以上であることが好ましい。
前記ゴム組成物において、前記シランカップリング剤の含有量は、シリカの合計量100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましく、6質量部以上が更に好ましい。0.5質量部以上にすることで、シランカップリング剤を介したゴムとシリカとの化学的な結合が充分に形成され、良好なシリカ分散性が得られるので、ウェットグリップ性能、低燃費性、耐摩耗性が改善される。該シランカップリング剤は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、13質量部以下が更に好ましい。20質量部以下にすることで、良好な加工性を確保できる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、下記平均組成式(I)で表され、かつ硫黄原子の個数/珪素原子の個数が1.0~1.5である有機珪素化合物が挙げられる。
Figure 0007238402000002
(式中、xは、硫黄原子の平均個数を表す。mは、6~12の整数を表す。R~Rは、同一若しくは異なって炭素数1~6のアルキル基又はアルコキシ基を表し、R~Rの少なくとも1つ及びR~Rの少なくとも1つが前記アルコキシ基である。なお、R~Rは、前記アルキル基又は前記アルコキシ基が結合した環構造を形成したものでもよい。)
シリカを含むゴム配合において、前記式(I)の有機珪素化合物をシランカップリング剤として用いることで、ウェットグリップ性能が顕著に改善されると共に、一般にシリカ配合で問題となる加工性や、ウェットグリップ性能と背反する低燃費性や耐摩耗性をバランス良く改善できる。
このような作用効果が得られた理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
有機珪素化合物(シランカップリング剤)によりシリカとゴムが架橋されるが、シランカップリング剤として、特に、硫黄原子と珪素原子の間の炭素原子の個数が8個である上記式(I)の化合物を用いることで、シリカとゴムとの結合の長さが一般的なシランカップリング剤に比べ長くなる。そのため、架橋部位に、ある程度の柔軟性が付与され、ウェットグリップ性能が改善されると推察される。また、ゴムの破壊に繋がる外部応力に対して、応力を緩和し易く、耐摩耗性も改善されると推察される。従って、良好な低燃費性を維持しつつ、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の両立が可能となり、これらの性能がバランス良く改善される。
xは、前記有機珪素化合物の硫黄数の平均値を表す。つまり、前記平均組成式(I)で表される有機珪素化合物は、異なる硫黄数を持つ化合物の混合物であり、ゴム組成物に含まれる前記有機珪素化合物の硫黄数の平均値がxである。xは、{2×(硫黄原子の個数)}/(珪素原子の個数)で表される。ウェットグリップ性能、低燃費性、耐摩耗性の性能バランスの点から、xは、好ましくは2.0~2.4、より好ましくは2.0~2.3である。特に、xを上限未満とすることで、未加硫ゴムのムーニー粘度上昇を抑制し、良好な加工性が得られる。ここで、硫黄原子の個数、珪素原子の個数は、蛍光X線により組成物中の硫黄量、珪素量を測定しそれぞれの分子量より換算した値である。
mは、6~12の整数を表し、好ましくは6~10、より好ましくは8である。これにより前述の作用効果が発揮され、本発明の効果が充分に得られる。
アルキル基(R~R)は、上記性能バランスの点から、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4である。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
アルコキシ基(R~R)は、上記性能バランスの点から、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4である。アルコキシ基中の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等が挙げられる。
~Rの少なくとも1つ及びR~Rの少なくとも1つが炭素数1~6のアルコキシ基であり、好ましくは、R~R、R~Rのそれぞれ2つ以上がアルコキシ基である。
なお、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基が結合した環構造を形成したものでもよい。例えば、(i)Rがエトキシ基、Rがメチル基が結合した環構造、(ii)Rがエチル基、Rがメチル基が結合した環構造、を形成する場合、それぞれ、R及びRで「-O-C-CH-」、「-C-CH-」という2価の基が形成され、Siに結合した構造が挙げられる。
前記有機珪素化合物は、硫黄原子の個数/珪素原子の個数が1.0~1.5である。つまり、ゴム組成物に含まれる前記平均組成式(I)で表される有機珪素化合物は、全硫黄個数と全珪素個数の比が前記範囲のものである。
硫黄原子の個数/珪素原子の個数は、ウェットグリップ性能、低燃費性、耐摩耗性の性能バランスの点から、好ましくは1.0~1.2、より好ましくは1.0~1.15である。
前記平均組成式(I)で表され、かつ所定範囲の硫黄原子の個数/珪素原子の個数を有する前記有機珪素化合物は、例えば、以下の製法により調製できる。
下記式(I-1)
Figure 0007238402000003
(式中、R~R及びmは、上記と同様である。Xは、ハロゲン原子を表す。)
で表されるハロゲン基含有有機珪素化合物、及びNaSで表される無水硫化ソーダ、更に必要により硫黄を反応させることにより、前記有機珪素化合物を製造できる。
X(ハロゲン原子)としては、Cl、Br、I等が例示される。
平均組成式(I)で示されるスルフィド鎖含有有機珪素化合物等の前記シランカップリング剤の例としては、下記のものが挙げられる。
Figure 0007238402000004
上記式(I-1)のハロゲン基含有有機珪素化合物の例としては、下記のものが挙げられる。
Figure 0007238402000005
上記反応を行う際、スルフィド鎖の調整のため、硫黄の添加は任意であり、所望の平均組成式(I)の化合物となるように、平均組成式(I-1)の化合物と無水硫化ソーダとの配合量から決定すればよい。
例えば、平均組成式(I)の化合物のxを2.2にしたい場合、無水硫化ソーダ1.0molと、硫黄1.2molと、式(I-1)の化合物2.0molとを反応させればよい。
その際の溶媒の使用は任意であり、無溶剤でもよいが、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類等の溶媒を用いてもよく、特にテトラヒドロフラン等のエーテル、メタノール、エタノール等のアルコールを用いて反応させることが好ましい。
その際の反応温度は、特に限定されないが、室温~200℃程度でよく、特に60~170℃が好ましく、更に好ましくは60~100℃である。反応時間は30分以上であるが、2~15時間程度で反応は完結する。
本発明において、溶媒を使用した場合、反応終了後生成した塩を濾別する前、又は濾別した後に減圧下で留去すればよい。
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、耐摩耗性、ウェットグリップ性等の観点から、カーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックとしては、N110、N220、N330、N550等のグレード等を使用できる。
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは40m/g以上である。該NSAは好ましくは250m/g以下、より好ましくは235m/g以下である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性が得られ、上限以下にすることで、良好なカーボンブラック分散が得られ、優れた低燃費性が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS-K6217-2:2001に準拠して測定できる。
前記ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。1質量部以上にすることで、良好な耐摩耗性が得られ、15質量部以下にすることで、良好な低燃費性が得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、固体樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)を含むことが好ましい。該固体樹脂としては、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られるα-メチルスチレン系樹脂等の芳香族ビニル重合体などが挙げられる。該固体樹脂は、軟化点が60~120℃であることが好ましい。なお、固体樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
α-メチルスチレン系樹脂としては、ウェットグリップ性能等に優れていることから、α-メチルスチレン若しくはスチレンの単独重合体又はα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。
前記ゴム組成物において、固体樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3~30質量部、より好ましくは5~20質量部である。所定量の固体樹脂を配合することで、ウェットグリップ性能、耐摩耗性等が向上する傾向がある。
固体樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、オイルを含むことが好ましい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、ナフテン系プロセスオイルが好ましい。
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
前記ゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
前記ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
前記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;可塑剤、滑剤などの加工助剤;等を例示できる。
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対する総スチレン質量(ゴム成分全量中に含まれるスチレンの合計含有量)は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。10質量部以上にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。該総スチレン質量は、35質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。35質量部以下にすることで、ウェットグリップ性能と耐摩耗性のバランスが向上する傾向にある。
前記ゴム組成物は、該トレッドに含まれるゴム成分100質量部に対する総シリカ質量をA質量部(ゴム成分100質量部に対するシリカの合計量をA質量部)、総スチレン質量をB質量部(ゴム成分100質量部に含まれるスチレンの合計量をB質量部)とした場合に、A×B≦3000を満たす。これにより、ウェットグリップ性能等が向上し、前記性能バランスが顕著に改善される。好ましくはA×B≦2800、より好ましくはA×B≦2500である。下限は特に限定されないが、良好なウェットグリップ性能が得られるという観点から、1000≦A×Bが好ましく、1500≦A×Bがより好ましい。
なお、総シリカ質量、総スチレン質量は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のトレッド用ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
本発明の空気入りタイヤは、上記トレッド用ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適に使用可能である。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:下記製造例1で合成した溶液重合変性SBR(スチレン量25質量%、ビニル量60質量%、Mw15万)
SBR2:下記製造例2で合成した溶液重合変性SBR(スチレン量35質量%、ビニル量50質量%、Mw70万)
SBR3:溶液重合非変性SBR(スチレン量40質量%、ビニル量25質量%、Mw120万)
BR:シス含量97質量%、ビニル量1質量%
カーボンブラック1:NSA111m/g
カーボンブラック2:NSA195m/g
シリカ1:NSA175m/g、平均粒径16.7nm
シリカ2:NSA215m/g、平均粒径15.5nm
シリカ3:NSA105m/g、平均粒径19.5nm
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製のハイジライトH-43(平均一次粒子径:1μm)
シランカップリング剤1:3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン
シランカップリング剤2:下記製造例3で合成したシランカップリング剤
シランカップリング剤3:下記製造例4で合成したシランカップリング剤
シランカップリング剤4:下記製造例5で合成したシランカップリング剤
シランカップリング剤5:下記製造例6で合成したシランカップリング剤
オイル:ナフテン系プロセスオイル
樹脂:αメチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃、Tg:43℃)
加工助剤1:飽和脂肪酸亜鉛塩
加工助剤2:四ホウ酸カリウム
ワックス:パラフィン系ワックス
老化防止剤1:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン
老化防止剤2:ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
加硫促進剤2:ジフェニルグアニジン
(製造例1:SBR1の合成)
窒素置換された内容積5Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点でブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性スチレンブタジエンゴム(SBR1)を得た。
(製造例2:SBR2の合成)
撹拌機及びジャケットの付いた反応器を用い、窒素雰囲気下で、シクロヘキサン、1,3-ブタジエン、テトラヒドロフラン及びスチレンを仕込み、30℃に調整した後n-ブチルリチウムを添加し、重合を開始した。70℃まで昇温後、2時間重合を行い、重合転化率100%に達した後、少量の四塩化スズを加え、70℃でカップリング反応を行った。その後、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランを加え、60℃で変性反応を行った。得られた共重合体溶液に2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、更に110℃の熱ロールで乾燥することにより、変性SBR(SBR2)を得た。
(製造例3:シランカップリング剤2の合成(x=2.2、m=8、R~R=OCHCH))
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、無水硫化ソーダ78.0g(1.0モル)、硫黄38.5g(1.2モル)およびエタノール480gを仕込み、80℃に加熱した。その中に、8-クロロオクチルトリエトキシシラン622g(2.0モル)を滴下投入し、80℃にて10時間加熱撹拌した。この反応液を、濾過板を用いて加圧濾過することで、反応の進行とともに生成した塩が除去された濾液を得た。得られた濾液を100℃まで加熱し、10mmHg以下の減圧下でエタノールを留去することで、反応生成物としてシランカップリング剤2を得た。
得られたシランカップリング剤2は、化合物中に含まれる硫黄量が10.8質量%(0.34モル)、珪素量が8.7質量%(0.31モル)であり、硫黄原子の個数/珪素原子の個数は1.1であった。
(製造例4:シランカップリング剤3の合成(x=2.0、m=8、R~R=OCHCH))
硫黄の量を32.1g(1.0モル)に変更した以外は、製造例3と同様の手順で合成し、反応生成物としてシランカップリング剤3を得た。
得られたシランカップリング剤3は、化合物中に含まれる硫黄量が10.0質量%(0.31モル)、珪素量が8.8質量%(0.31モル)であり、硫黄原子の個数/珪素原子の個数は1.0であった。
(製造例5:シランカップリング剤4の合成(x=2.4、m=8、R~R=OCHCH))
硫黄の量を45.0g(1.4モル)に変更した以外は、製造例1と同様の手順で合成し、反応生成物としてシランカップリング剤4を得た。
得られたシランカップリング剤4は、化合物中に含まれる硫黄量が11.9質量%(0.37モル)、珪素量が8.7質量%(0.31モル)であり、硫黄原子の個数/珪素原子の個数は1.2であった。
(製造例6:シランカップリング剤5の合成(x=2.2、m=8、R、R、R、R=OCHCH、R、R=CH))
8-クロロオクチルトリエトキシシランの代わりに8-クロロオクチルジエトキシメチルシラン562g(2.0モル)を用いた以外は、製造例1と同様の手順で合成し、反応生成物としてシランカップリング剤5を得た。
得られたシランカップリング剤5は、化合物中に含まれる硫黄量が11.0質量%(0.34モル)、珪素量が8.7質量%(0.31モル)であり、硫黄原子の個数/珪素原子の個数は1.1であった。
<実施例及び比較例>
表1、2に示す配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤を除く各種薬品を、バンバリーミキサーにて、150℃で5分間混練りした。得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を添加して、オープンロールを用いて、170℃で12分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件下で20分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:11×7.10-5)を得た。
得られた試験用タイヤについて、以下の評価を行った。なお、実施例1~11及び比較例1~5は比較例1、比較例6~7は比較例6を基準比較例とした。
(耐摩耗性)
試験用タイヤのトレッドから採取したサンプルを、ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件で摩耗量を測定し、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(基準比較例の摩耗量)/(各配合の摩耗量)×100
(ウェットグリップ性能)
試験用タイヤのトレッドから採取したサンプルを、レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用して、ねじりモードで、粘弾性パラメータを測定した。0℃において周波数10Hz、ひずみ1%でtanδを測定した。基準比較例のtanδを100とし、以下の計算式により指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ指数)=(基準比較例のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
(転がり抵抗)
試験用タイヤのトレッドから採取したサンプルを、(株)上島製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で、60℃における損失正接(tanδ)を測定した。基準比較例のtanδを100とし、以下の計算式により指数表示した。指数が大きいほど、低燃費性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(基準比較例のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
Figure 0007238402000006
Figure 0007238402000007
表1から、SBR、粒径18nm以下の微粒子シリカ、上記式(I)のシランカップリング剤を含み、かつA×B≦3000(総シリカ質量A、総スチレン質量B)を満たす配合を用いることで、該シランカップリング剤を用いていない比較例1、2等に比べて、ウェットグリップ性能、更にはウェットグリップ性能、耐摩耗性、低燃費性の性能バランスが顕著に改善された。
表2から、微粒子シリカを含むBR配合に上記式(I)のシランカップリング剤を用いる場合に比べ、SBR配合に用いる場合の方がウェットグリップ性能、更には前記性能バランスが顕著に改善され、相乗的に性能が改善されることが明らかとなった。

Claims (8)

  1. スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒径18nm以下の微粒子シリカと、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上であるシランカップリング剤と、固体樹脂とを含み、
    前記ゴム成分100質量部に対する総シリカ質量をA質量部、総スチレン質量をB質量部としたときに、A×B≦3000を満たし、
    前記ゴム成分100質量部に対する前記微粒子シリカの含有量が40質量部以上、前記固体樹脂の含有量が3質量部以上であり、
    前記ゴム成分100質量部に対する総スチレン質量が10質量部以上であるトレッド用ゴム組成物。
  2. 前記A及びBが1500≦A×Bを満たし、
    前記ゴム成分100質量部に対する前記微粒子シリカの含有量が80質量部以下である請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
  3. 前記A及びBが1500≦A×Bを満たし、
    前記ゴム成分100質量部に対する総スチレン質量が20質量部以上である請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。
  4. 前記ゴム成分100質量部に対する総スチレン質量が35質量部以下である請求項1~3のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
  5. 前記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積150m/g以上のシリカを40質量部以上含む請求項1~4のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
  6. 前記連結する炭素原子の数が8個以上である請求項1~5のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
  7. 前記A及びBが1000≦A×Bを満たす請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物から作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
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