実施形態の幾つかの例示的な態様を以下に説明する。なお、この明細書にて引用された文献に開示された事項や任意の公知技術に係る事項を例示的態様に援用することが可能である。
以下に説明する幾つかの例示的態様は、患者眼に対するオルソKレンズの効果の評価、つまり、オルソKレンズの期待された効果が患者眼に対して十分に発揮されているか否かの判断に用いることが可能である。
この評価には、眼底に関する評価が少なくとも含まれ、角膜に関する評価が更に含まれてもよい。眼底に関する評価は、典型的には、オルソKレンズによって周辺視野の焦点が網膜面よりも手前(角膜側)に配置されているか否かの判断を含む。角膜に関する評価は、典型的には、オルソKレンズにより角膜が目的の形状に矯正されているか否かの評価である。なお、眼底に関する評価と角膜に関する評価とは互いに独立な事項ではない。例えば、オルソKレンズが角膜上の適切な位置に配置されていなければ、角膜が期待通りの形状に変形されず、したがって周辺視野の焦点が期待通りの位置に配置されない。
以下に説明する幾つかの態様において、「矯正中心」とは、オルソKレンズにより変形された角膜の頂点(角膜頂点)の検出位置、及び、オルソKレンズにより変形された角膜形状の中心(変形中心)の推定位置のいずれかを意味していてよい。
なお、ここに言う角膜頂点は、オルソKレンズを外した後の角膜において最も突出した位置であり、一般に、本来の角膜頂点(オルソKレンズによる変形の影響がない状態における角膜の頂点)から偏位している(もちろん、オルソKレンズの影響下の角膜頂点が本来の角膜頂点に一致している状況を除外するものではない)。
角膜頂点の検出は、例えば、前眼部に形成された指標の検出により行われる。その典型的な例として、特開2015-85081号公報は、前眼部に光束を投影しつつ正面から撮影し、それにより取得された前眼部像を解析して輝点像(プルキンエ像)を検出し、この輝点像の位置(2次元位置)を角膜頂点の位置として求める技術を開示している。また、特開2017-74115号公報は、前眼部に光束を投影しつつ2方向から撮影(ステレオ撮影)を行い、それにより取得された2つの前眼部像を解析して輝点像(プルキンエ像)を検出し、この輝点像の位置(3次元位置)を角膜頂点の位置として求める技術を開示している。角膜頂点検出の他の例として、角膜曲率半径を測定するために角膜に投影されたリングパターン光の撮影像の中心位置を求めて角膜頂点の位置(2次元位置)とすることができる。角膜曲率半径を測定するための眼科装置(ケラトメータ)は、例えば、特開平2-65833号公報に開示されている。角膜頂点検出の更に他の例として、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置(例えば、特開2015-157182号公報)により得られた前眼部の画像から角膜頂点の位置(3次元位置)を検出することができる。
変形中心の推定は、例えば、角膜形状を近似する数式(関数)の中心(典型的には、フィッティング曲面の中心、フィッティング曲線の中心)を求めることにより行われる。この数式(関数)は、例えば、中心対称な数式(関数)であってよく、更には非球面式(非球面形状を表す数式(関数))であってよい。この非球面式は、例えばコーニック面の式(関数)又はバイコーニック面の式(関数)を少なくとも含む式(関数)であってよく、更には、コーニック面の式(関数)に偶数次の多項式を加算した式(関数)、又はバイコーニック面の式(関数)に偶数次の多項式を加算した式(関数)であってよい。
なお、オルソKレンズには、中心部(オプティカルゾーン、トリートメントゾーン)と周縁部(ペリフェラルゾーン、ランディングゾーン)との間に、曲率の変曲点が存在する領域(遷移ゾーン、リターンゾーン)があるため、コーニック面やバイコーニック面だけではフィッティング精度が低くなるので、例えば4次、6次又は8次程度までの多項式を加えてフィッティング精度を高めることが望ましいと考えられる。
また、近似される角膜形状は、例えば、角膜曲率分布、角膜曲率半径分布、又は、高さ分布であってよい。角膜曲率分布及び角膜曲率半径分布は、例えば、ケラトメータ、角膜トポグラム(例えば、特開平8-280624号公報を参照)により求められる。高さ分布は、例えば、角膜曲率分布を2回積分することによって求められる。変形中心(特にフィッティング中心)の推定については後述する。
以下の幾つかの態様において、「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路である。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、目的の機能を実現する。
<第1の態様>
第1の態様に係る眼科装置について説明する。本態様に係る眼科装置の構成例を図1に示す。眼科装置1000は、角膜形状測定部1010と、眼底形状測定部1020と、眼球モデル作成部1030と、評価部1040とを含む。眼科装置1000は、これらを制御する制御部1050を更に含む。
角膜形状測定部1010は、眼の角膜形状を測定して角膜形状データを生成する。角膜形状データは、例えば、前述したように、ケラトメータにより得られた角膜曲率分布データ若しくは角膜曲率半径分布データ、角膜トポグラファにより得られた角膜曲率分布データ若しくは角膜曲率半径分布データ、及び、他の測定データのいずれかである。
典型的な角膜形状測定部1010は、角膜にパターン像を形成するための光を投射する投射系と、パターン像が形成されている前眼部を撮影する撮影部(光学系、撮像素子、カメラ等)と、撮影部により得られた画像を解析するプロセッサとを含む。プロセッサは、例えば、角膜形状パラメータの分布データを求めるための解析ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。
眼底形状測定部1020は、眼の眼底形状を測定して眼底形状データを生成する。典型的な眼底形状測定部1020は、眼底のデータを取得する眼底データ取得部(光学系、撮像素子、駆動機構、プロセッサ等)と、取得された眼底のデータを解析するプロセッサとを含む。眼底データ取得部は、例えば、眼底にOCTスキャンを適用するための要素群を含む。或いは、眼底データ取得部は、ステレオ眼底カメラを含んでいてもよい(例えば、特開平09-313443号公報を参照)。プロセッサは、例えば、眼底形状パラメータの分布データを求めるための解析ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。
本態様に適用可能なOCTのタイプは任意であり、典型的にはスウェプトソースOCT又はスペクトラルドメインOCTであるが、他のタイプであってもよい。ここで、スウェプトソースOCTは、波長可変光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光を光検出器で検出し、波長の掃引及び測定光のスキャンに応じて収集された検出データにフーリエ変換等を施して画像を構築する手法である。一方、スペクトラルドメインOCTは、低コヒーレンス光源(広帯域光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル分布を分光器で検出し、検出されたスペクトル分布にフーリエ変換等を施して画像を構築する手法である。すなわち、スウェプトソースOCTは、干渉光のスペクトル分布を時分割で取得するOCT手法であり、スペクトラルドメインOCTは、干渉光のスペクトル分布を空間分割で取得するOCT手法である。
眼底にOCTスキャンを適用する際、典型的には眼科装置1000の光学系の測定光軸上に固視標が投影される。このOCTスキャンは、例えば、黄斑(中心窩)を中心とするラジアルスキャンであってよい。これにより、眼底中心部のBスキャン画像が取得される。また、タンジェンシャル(tangential)面とサジタル(sagital)面に沿ったBスキャン画像が取得される。
眼底形状測定部1020は、OCTスキャンを用いて取得されたBスキャン画像に対してセグメンテーションを施すことにより所定の層領域(例えば、最も輝度値が高いOS-RPE界面(視細胞外節-網膜色素上皮界面)を特定し、Bスキャン画像における層領域の高さデータ[pixel]を取得する。高さデータは、深さ方向に沿って計測された所定の基準位置からの層領域の距離の分布に相当する。
眼底形状測定部1020は、OCT光学系にしたがい規定された装置固有のピクセルスペーシング補正値[mm/pixel]を用いて、pixel単位の値で表現された高さデータをミリメートル単位の値に変換する。このようにして得られた高さデータを眼底形状データとして用いることができる。
なお、眼底形状データは他の態様のデータであってもよい。例えば、角膜形状データと同様に、眼底形状データは、眼底の所定の層組織(例えば、眼底表面(内境界膜(ILM))、OS-RPE界面など)における曲率分布データ又は曲率半径分布データであってもよい。
眼球モデル作成部1030は、角膜形状測定部1010により取得された角膜形状データと眼底形状測定部1020により取得された眼底形状データとに少なくとも基づいて眼球モデルを作成する。
眼球モデル作成部1030は、例えば、角膜形状データ及び眼底形状データを公知の模型眼に適用することによって眼球モデルを作成する。眼球モデル作成において用いられる模型眼の種類は任意であり、例えば、特開2012-93522号公報や特表2017-526517号公報に開示された、Gullstrand模型眼、Navarro模型眼、Liou-Brennan模型眼、Badal模型眼、Arizona模型眼、Indiana模型眼、任意の規格化模型眼、及び、これらのいずれかと同等の模型眼のいずれかであってよい。
眼球モデル作成部1030は、所定の前眼部基準位置と眼底基準位置とに少なくとも基づき角膜形状データと眼底形状データとの相対位置を決定して眼球モデルを作成するように構成されていてよい。例えば、眼球モデル作成部1030は、所定の前眼部基準位置に基づき眼球モデルにおける角膜形状データの位置を決定する処理と、所定の眼底基準位置に基づき眼球モデルにおける眼底形状データの位置を決定する処理とを実行するように構成されていてよい。
例えば、前眼部基準位置は、オルソKレンズを外した後の角膜頂点位置、又は、オルソKレンズを装着する前の角膜頂点位置(本来の角膜頂点位置)であってよく、及び/又は、眼底基準位置は、中心窩位置であってよい。典型的には、眼球モデル作成部1030は、公知の模型眼における角膜頂点に前眼部基準位置(角膜頂点位置)が一致するように角膜形状データを配置し、且つ、当該模型眼に設定された中心窩に眼底基準位置(中心窩位置)が一致するように眼底形状データを配置することによって、眼球モデルを作成することができる。
前眼部基準位置が角膜を基準とする場合(例えば、前眼部基準位置が角膜頂点位置である場合)、眼球モデル作成部1030は、例えば、所定の眼軸長データに少なくとも基づき角膜形状データと眼底形状データとの相対位置を決定して眼球モデルを作成することができる。本例において、眼球モデル作成部1030は、角膜形状データにおける角膜頂点位置と眼底形状データにおける中心窩位置とが眼軸長データが示す距離を介して配置されるように眼球モデルを作成するように構成されてよい。或いは、眼球モデル作成部1030は、眼軸長データが示す距離に基づき模型眼を変形し、変形された模型眼に角膜形状データ及び眼底形状データを適用するように構成されてよい。眼軸長データは、例えば、模型眼における眼軸長値のような標準値でもよいし、患者眼の眼軸長の測定値でもよい。眼軸長測定は、例えば、OCT等の公知の光学的手法、又は、超音波距離計測を用いた公知の手法によって行われる。
前眼部基準位置は、角膜頂点位置には限定されず、例えば瞳孔中心位置であってもよい。この場合において、眼底基準位置は中心窩位置であってよい。典型的には、眼球モデル作成部1030は、前眼部基準位置(瞳孔中心位置)に対応する角膜頂点位置が公知の模型眼における角膜頂点に一致するように角膜形状データを配置し、且つ、当該模型眼に設定された中心窩に眼底基準位置(中心窩位置)が一致するように眼底形状データを配置することによって、眼球モデルを作成することができる。ここで、瞳孔中心位置に対応する角膜頂点位置は、例えば、瞳孔中心位置から模型眼の眼軸方向に沿って所定距離だけ角膜方向に離れた位置として特定されてよく、或いは、瞳孔中心位置と中心窩位置とを結ぶ直線が模型眼の角膜表面に交差する位置として特定されてよい。
前眼部基準位置が瞳孔を基準とする場合(例えば、前眼部基準位置が瞳孔中心位置である場合)、眼球モデル作成部1030は、例えば、所定の眼軸長データ及び前房深度データに少なくとも基づき角膜形状データと眼底形状データとの相対位置を決定して眼球モデルを作成することができる。本例において、眼球モデル作成部1030は、角膜形状データにおいて瞳孔中心から(眼軸に沿って)角膜方向に前房深度データが示す距離だけ偏位した位置(角膜頂点の推定位置)と眼底形状データにおける中心窩位置とが眼軸長データが示す距離を介して配置されるように眼球モデルを作成するように構成されてよい。或いは、眼球モデル作成部1030は、眼軸長データが示す距離及び前房深度データが示す距離に基づき模型眼を変形し、変形された模型眼に角膜形状データ及び眼底形状データを適用するように構成されてよい。眼軸長データは、例えば、模型眼における眼軸長値のような標準値でもよいし、患者眼の眼軸長の測定値でもよい。前房深度データは、例えば、模型眼における前房深度値のような標準値でもよいし、患者眼の前房深度の測定値でもよい。前房深度の測定は、例えば、OCT等の公知の光学的手法、又は、超音波距離計測を用いた公知の手法によって行われる。
典型的な眼球モデル作成部1030は、角膜形状データと眼底形状データとに少なくとも基づき眼球モデルを作成するプロセッサを含む。プロセッサは、眼球モデル作成を実行するための眼球モデル作成ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。
評価部1040は、眼球モデル作成部1030により作成された眼球モデルに少なくとも基づいて、眼に対するオルソKレンズの効果に関する評価(第1評価)を実行する。第1評価は、オルソKレンズの期待された効果が患者眼に対して十分に発揮されているか否かの判断に用いることが可能であり、前述した眼底に関する評価に相当する。第1評価は、典型的には、オルソKレンズによって周辺視野の焦点が網膜面よりも手前(角膜側)に配置されているか否かの判定を含む。
典型的な評価部1040は、少なくとも眼球モデルに基づき第1評価を実行するプロセッサを含む。プロセッサは、第1評価を実行するための評価ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。
制御部1050は、眼科装置1000の各部を制御する。制御部1050は、制御プログラムにしたがって動作するプロセッサを含む。
図示は省略するが、眼科装置1000は、表示デバイス、操作デバイス、通信デバイスなどを更に備えていてもよい。
本態様に係る眼科装置1000の幾つかの変形例を以下に説明する。
第1の変形例を図2Aに示す。本変形例の眼球モデル作成部1030Aは、眼球モデル作成部1030の一例であり、前眼部基準位置特定部1031を含む。前眼部基準位置特定部1031は、角膜形状測定部1010により取得された角膜形状データを解析して前眼部基準位置を特定する。眼球モデル作成部1030Aは、前眼部基準位置特定部1031により角膜形状データから特定された前眼部基準位置を用いて眼球モデルの作成を行うことができる。前眼部基準位置は、典型的には角膜頂点位置又は瞳孔中心位置であるが、他の位置であってもよい。
角膜頂点位置の特定には、例えば、前述したように、プルキンエ像に基づく2次元位置又は3次元位置の検出手法、ケラトリング像に基づく2次元位置の検出手法、前眼部OCTを利用した3次元位置の検出手法、及び、他の検出手法のいずれかが適用される。
瞳孔中心位置の特定には、例えば、前眼部の正面画像の解析による2次元位置の検出手法、2方向からの撮影で得られた2つの前眼部像の解析による3次元位置の検出手法、及び、他の検出手法のいずれかが適用される。
典型的な前眼部基準位置特定部1031は、前眼部を撮影する撮影部(光学系、撮像素子、カメラ等)と、撮影部により得られた画像を解析するプロセッサとを含む。更に、前眼部基準位置特定部1031は、プルキンエ像やケラトリング像を形成するための光束を投射する投射部を備えていてもよい。プロセッサは、例えば、前眼部基準位置を特定するための解析ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。
第2の変形例を図2Bに示す。本変形例の眼底形状測定部1020Aは、眼底形状測定部1020の一例であり、OCT部1021と、眼底形状データ生成部1022とを含む。また、本変形例の眼球モデル作成部1030Bは、眼球モデル作成部1030の一例であり、眼底基準位置特定部1032を含む。
OCT部1021は、眼底形状測定部1020における前述の眼底データ取得部の一例であり、眼底にOCTスキャンを適用してOCTデータを生成する。OCTデータは、OCT干渉光学系により取得された干渉信号データでもよいし、干渉信号データに信号処理(フーリエ変換など)を適用して得られた反射強度プロファイルデータでもよいし、反射強度プロファイルデータを画素値で表現した画像データでもよい。
眼底形状データ生成部1022は、OCT部1021により取得されたOCTデータを解析して眼底形状データを生成する。典型的な眼底形状データ生成部1022は、OCTデータを解析して眼底形状データを生成するプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、眼底形状データを生成するための解析ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。
眼底基準位置特定部1032は、OCT部1021により取得されたOCTデータを解析して眼底基準位置を特定する。眼球モデル作成部1030Bは、眼底基準位置特定部1032によりOCTデータから特定された眼底基準位置を用いて眼球モデルの作成を行うことができる。眼底基準位置は、典型的には中心窩位置であるが、他の位置(視神経乳頭位置など)であってもよい。
中心窩位置の特定は、例えば、OCTデータを解析してILM領域を特定するセグメンテーションと、特定されたILM領域のノイズを除去する平滑化と、平滑化されたILM領域において下に凸の位置を特定する処理とを含む。
典型的な眼底基準位置特定部1032は、OCTデータを解析するプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、眼底基準位置を特定するための解析ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。
第3の変形例を図2Cに示す。本変形例の評価部1040Aは、評価部1040の一例であり、焦点位置特定部1041と、第1評価実行部1042とを含む。
焦点位置特定部1041は、眼球モデル作成部1030により作成された眼球モデルの眼底周辺部に入射する仮想光線の焦点位置を特定する。焦点位置特定部1041は、例えば、眼球モデルに基づいて眼底周辺部に対応する屈折度数を算出する処理と、算出された屈折度数に基づいて眼底周辺部に入射する仮想光線の焦点位置を求める処理とを実行するように構成される。
典型的な焦点位置特定部1041は、眼球モデルに基づき焦点位置を求めるプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、眼球モデルに基づき解析や演算やシミュレーションを実行するためのソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。
第1評価実行部1042は、焦点位置特定部1041により特定された焦点位置と眼底周辺部との位置関係に基づいて第1評価を実行する。例えば、第1評価実行部1042は、眼底周辺部における網膜表面(ILM)よりも角膜側に焦点位置が配置されているか判定する。典型的には、第1評価実行部1042は、焦点位置が硝子体領域内に配置されているか判定する。焦点位置が網膜表面よりも角膜側に配置されている場合(焦点位置が硝子体領域内に配置されている場合)、オルソKレンズによる近視進行抑制効果が発揮されているとの評価結果が得られる。他方、焦点位置が網膜表面よりも奥側に配置されている場合(焦点位置が硝子体領域内に配置されていない場合)、オルソKレンズによる近視進行抑制効果が発揮されていないとの評価結果が得られる。
典型的な第1評価実行部1042は、第1評価のためのソフトウェア(プログラム)にしたがって動作するプロセッサを含む。
眼球モデルに基づき眼底周辺部に対応する屈折度数を算出するために焦点位置特定部1041が実行する処理について、幾つかの例を以下に説明する。眼底周辺部に対応する屈折度数は、眼の周辺領域の屈折度数とも表現される。
周辺屈折度数算出処理の第1の例を説明する。焦点位置特定部1041は、レフラクトメータ等により予め取得された中心領域の屈折度数と、眼球モデル(例えば、眼底形状)とに基づいて、周辺領域の屈折度数を算出する。焦点位置特定部1041は、眼球モデルのパラメータを用いて周辺領域の屈折度数を算出することが可能である。
前述したように、眼球モデルの作成においては、眼底形状データとして高さデータを用いることができる。
図2Dを参照する。図2Dは、眼球モデルのパラメータの一部を模式的に表す。
焦点位置特定部1041は、図2Dに示すように、眼球モデルにおいて角膜Ecと眼底Efとの間に装置固有のピボット点Pvを設定する。典型的には、ピボット点Pvは、OCTスキャン系の光スキャナ(例えば、ガルバノミラー)と光学的に共役な位置(瞳孔位置)に相当する位置(例えば、角膜Ecから奥側に3mmだけ偏位した位置)に設定される。ピボット点Pvに対して等距離(等光路長)に位置する領域(ELS)が、OCTスキャンにより得られるBスキャン画像内において平坦な領域に相当する。
眼球モデルにおいて、眼軸長ALと、角膜前面(後面)からピボット点Pvまでの距離Lpとは既知であり、したがって、ピボット点Pvから眼底Efまでの距離(AL-Lp)も既知である。眼底Efの曲率半径が距離(AL-Lp)と等しい場合、上記のようにBスキャン画像中の平坦な領域に眼底Efが相当する。よって、焦点位置特定部1041は、得られた高さデータの距離[mm]から眼底Efの形状(例えば、曲率半径)を特定することができる。
そこで、焦点位置特定部1041は、中心領域(中心窩)に対する周辺領域の高さの差分(眼底形状差分データ)Δh[mm]を求める。差分Δhは、Bスキャン画像におけるAライン毎に求めてもよいし、多項式や非球面式(コーニック定数を含む多項式)等の任意の関数でフィッティングしてもよい。
例えば、焦点位置特定部1041は、眼底形状と屈折度数とを関係付けるために、全眼系の眼球屈折力を定義する。典型的な眼球モデル(Gullstrand模型眼(精密模型眼、調節休止状態))では、全眼系の眼球屈折力は58.64[ディオプタ]である。空気換算長では、全眼系の焦点距離は「1000/58.64=17.05」[mm]となる。ピクセルスペーシング補正値を用いて得られる単位[mm]の情報は、通常は生体組織内(in tissue)における距離を表すため、屈折率を乗算して生体組織内における全眼系の焦点距離が算出される。全眼系の等価屈折率をn=1.38とすると、生体組織内における全眼系の焦点距離ftは、「1000/58.64×1.38=23.53」[mm]となる。
焦点位置特定部1041は、中心領域(中心窩)に対する周辺領域の高さの差分Δhの位置における眼球屈折力の差分ΔDを次式にしたがって算出する:ΔD= (1000/(23.53-Δh)) - (1000/23.53)。差分ΔDは、中心窩を含む中心領域に対する相対的な眼球屈折力の差分に相当する。
例えば、Δh=0.1[mm](in tissue)としたとき、ΔD=0.18[ディオプタ]となる。
焦点位置特定部1041は、次式に示すように、中心領域の等価球面度数SEに対して差分ΔDを適用することにより、周辺領域の屈折度数SEpを求めることができる:SEp = SE + ΔD。
ここで、焦点位置特定部1041は、Bスキャン画像における周辺領域の屈折度数をAライン毎に求めてもよいし、任意の関数でフィッティングしてもよい。
周辺屈折度数算出処理の第2の例を説明する。本例は、眼の眼軸長データ(眼軸長の測定値)を用いて周辺領域の屈折度数を算出する手法を提供する。本例では、眼軸長データを用いて眼球モデルが作成される。
焦点位置特定部1041は、眼軸長データが反映された眼球モデルを用いて、中心領域(中心窩)に対する周辺領域の高さの差分(眼底形状差分データ)Δh[mm]を求める。更に、焦点位置特定部1041は、求められた差分Δhを用いて眼球屈折力の差分ΔDを求め、求められた差分ΔDを用いて周辺領域の屈折度数を算出する。
周辺屈折度数算出処理の第3の例を説明する。本例は、眼の角膜形状データ(角膜形状の測定値)を用いて周辺領域の屈折度数を算出する手法を提供する。前述のように、眼球モデルは角膜形状データに基づき作成される。
焦点位置特定部1041は、角膜形状データが反映された眼球モデルを用いて、中心領域(中心窩)に対する周辺領域の高さの差分Δh[mm]を求める。更に、焦点位置特定部1041は、求められた差分Δhを用いて眼球屈折力の差分ΔDを求め、求められた差分ΔDを用いて周辺領域の屈折度数を算出する。
周辺屈折度数算出処理の第4の例を説明する。本例は、眼の複数の実測データ(例えば、眼軸長、角膜形状、前房深度、水晶体曲率、水晶体厚の測定値)が反映された眼球モデルを用いて光線追跡処理を行うことによって周辺領域の屈折度数を算出する手法を提供する。
焦点位置特定部1041は、複数の実測データが反映された眼球モデルを用いて、角膜Ecから入射し瞳孔を通過して眼底Efに到達する仮想光線について光線追跡処理を行う(例えば、瞳孔径=φ4)。光線追跡処理では、例えば、中心領域における屈折度数(等価球面度数SE)から求まる遠点に相当する位置が、物点の位置として設定される。角膜Ecから遠点に相当する位置までの距離(遠点距離)Lは、「-1000/SE」[mm]である。
まず、焦点位置特定部1041は、中心領域について光線追跡処理を行う。実測データを反映した眼球モデルを使用するため、中心領域においても眼底Efで光線が収束しない可能性がある。この場合、焦点位置特定部1041は、中心領域において光線が収束するように(眼底Efの面が最良像面)となるように眼球モデルのパラメータを微調整することができる。
次に、焦点位置特定部1041は、パラメータが微調整された眼球モデルを用いて、周辺領域について光線追跡処理を行う。すなわち、焦点位置特定部1041は、眼の回旋点を通る測定光軸に対して入射角を設けた光線を追跡する。焦点位置特定部1041は、物点までの距離を変更しつつ光線追跡処理を行うことで、周辺領域において眼底Efで光線が収束するような物点までの距離を求める。求められた物点までの距離が、周辺領域における遠点距離Lpに対応する。焦点位置特定部1041は、次式を用いて周辺領域の屈折度数SEp[ディオプタ]を求めることができる:SEp = -(1000/Lp)。
焦点位置特定部1041は、所定レンジ内において入射角を変更しつつ光線追跡処理を行うことにより、複数の入射角のそれぞれに対応する周辺領域の屈折度数SEpを求める。周辺領域の屈折度数は、入射角ごとの離散値であってもよいし、所定レンジにおいて任意の関数でフィッティングして得られる連続値であってもよい。
本例では、中心領域において光線が眼底Ef上で収束するように眼球モデルを微調整するため、求められる周辺領域の屈折度数は、中心領域に対する相対屈折度数に相当する。
屈折度数算出処理の例を説明する。本例は、眼底の形状を反映した屈折度数を求める手法を提供する。本例では、眼底中心領域の形状として、水平方向(所定の基準方向)に対する眼底の所定の層領域(例えば、OS-RPE界面)のチルト角度が用いられる。
本例では、ピクセルスペーシング補正値[mm/pixel]を用いて高さデータの距離[mm]が取得され、この高さデータを用いて、水平方向のBスキャン画像について眼底面のチルト角度θhと、垂直方向のBスキャン画像について眼底面のチルト角度θvが算出される。チルト角度θh及びθvは、以下に説明するように、チルト角度g1と同様の手法で算出可能である。
図2Eに、水平方向のBスキャン画像を模式的に示す。符号L1は、Bスキャン画像IMGのフレーム左端LTにおける、フレーム上端UTと、眼底Efにおける所定の層領域(例えば、OS-RPE界面又は神経線維層)に相当する画像領域との間の垂直方向の距離を示す。距離L1は、フレーム左端LTにおける高さデータから算出される。同様に、符号R1は、Bスキャン画像IMGのフレーム右端RTにおける、フレーム上端UTと、同じ層領域に相当する画像領域との間の垂直方向の距離を示す。距離R1は、フレーム右端RTにおける高さデータから算出される。
焦点位置特定部1041は、Bスキャン画像IMGにおけるフレーム左端LTとフレーム右端RTにおける当該画像領域の垂直方向における位置の差分(|R1-L1|)を実寸法|d|に換算する。同様に、焦点位置特定部1041は、Bスキャン画像IMGのフレームの水平方向の距離H1を実寸法cに換算する。これら換算処理は、ピクセルスペーシング補正値[mm/pixel]を用いて実行される。
焦点位置特定部1041は、傾斜角度g0[degree]を次式にしたがって求める算出する:g0 = arctan(|d|/c)。焦点位置特定部1041は、測定光軸と眼球光軸とのズレ量に応じて傾斜角度g0を補正することによって眼底面のチルト角度を求める。
測定光軸と眼球光軸(視軸)とが略一致している場合、焦点位置特定部1041は、次式に示すように、Bスキャン画像の傾斜角度g0を補正することなく眼底面のチルト角度g1として出力する:g1 = g0 = arctan(|d|/c)。
測定光軸に対して眼球光軸がシフトしている場合、焦点位置特定部1041は、そのシフト量に基づいてBスキャン画像の傾斜角度g0を補正することによって眼底面のチルト角度g1を求める。
例えば、焦点位置特定部1041は、次に示すシフト量dsを変数とする一次式にしたがって補正角度φ1を求める:φ1 = α1 × ds + c1。ここで、α1及びc1は定数であり、例えば模型眼データを用いて決定される。更に、焦点位置特定部1041は、次式に示すように、求められた補正角度φ1を用いて傾斜角度g0を補正することにより眼底面のチルト角度g1を求める:g1 = g0 - φ1。
測定光軸に対して眼球光軸がチルトしている場合、焦点位置特定部1041は、チルト量に基づいてBスキャン画像の傾斜角度g0を補正することにより眼底面のチルト角度g1を求める。
例えば、焦点位置特定部1041は、次に示すようなチルト量dtを変数とする一次式にしたがって補正角度φ2を求める:φ2 = α2 × dt + c2。ここで、α2及びc2は定数であり、例えば模型眼データを用いて決定される。更に、焦点位置特定部1041は、次に示すように、求められた補正角度φ2を用いて傾斜角度g0を補正することにより眼底面のチルト角度g1を求める:g1 = g0 - φ2。
測定光軸に対して眼球光軸がシフトし且つチルトしている場合、焦点位置特定部1041は、シフト量及びチルト量に基づいてBスキャン画像の傾斜角度g0を補正することにより眼底面のチルト角度g1を求める。
例えば、シフト量ds及びチルト量dtが十分に小さい場合、焦点位置特定部1041は、次に示すようなシフト量ds及びチルト量dtを変数とする式にしたがって補正角度φ3を求める:φ3 = α3 × ds + α4 × dt + c3。同式は、シフト量の補正角度を求める式とチルト量の補正角度を求める式との線形結合である。ここで、α3、α4及びc3は定数であり、例えば模型眼データを用いて決定される。更に、焦点位置特定部1041は、次式に示すように、求められた補正角度φ3を用いて傾斜角度g0を補正することにより眼底面のチルト角度g1を求める:g1 = g0 - φ3。
次に、焦点位置特定部1041は、水平方向及び垂直方向について、それぞれ、眼底面のチルト角度θh及びθvに応じて、レフラクトメータにより事前に取得されたリングパターン像を補正する。焦点位置特定部1041は、補正されたリングパターン像に楕円近似を適用し、得られた楕円形状から公知の手法で屈折度数を求めることができる。
周辺屈折度数算出処理の第5の例を説明する。本例は、図2Eを参照しつつ説明した屈折度数算出処理を応用した周辺度数算出処理を提供する。
焦点位置特定部1041は、上記例と同様に、水平方向のBスキャン画像及び垂直方向のBスキャン画像から、それぞれ、眼底面のチルト角度θh及びθvを算出する。更に、焦点位置特定部1041は、上記例と同様に、水平方向及び垂直方向について、それぞれ、チルト角度θh及びθvに応じて、周辺固視が適用された状態でレフラクトメータにより取得されたリングパターン像を補正する。焦点位置特定部1041は、補正されたリングパターン像に楕円近似を適用し、得られた楕円形状から公知の手法で眼底周辺領域の屈折度数を求める。
以上に説明した第1~第5の例は、本出願人による特願2019-005431に開示されている。これら例示的方法のほか、例えば、本出願人による特願2019-005434に開示された方法や、他の周辺屈折度数算出方法を用いることが可能である。他の方法には様々なものがあるが、その一つとしてアライメント情報を用いるものがある。これについては後述する。
焦点位置特定部1041は、例えば、これら方法のいずれかによって眼底周辺部に対応する屈折度数を算出し、算出された屈折度数に基づいて眼底周辺部に入射する仮想光線の焦点位置を求める。第1評価実行部1042は、焦点位置特定部1041により特定された焦点位置と眼底周辺部との位置関係に基づいて第1評価を実行する。
本態様に係る眼科装置1000の動作について説明する。眼科装置1000の動作の例を図3に示す。眼科装置1000の図示しない記憶装置には、図3に示す動作例を実現するためのソフトウェアが記憶されている。眼科装置1000は、このソフトウェアにしたがって動作することにより、図3に示す一連の処理を実行する。
(S1:オルソKレンズを眼から外す)
まず、評価対象のオルソKレンズを眼から外す。
(S2:アライメント等の準備動作を行う)
次に、後述の検出及び測定を行うための所定の準備動作が行われる。準備動作としては、例えば、眼に対する眼科装置1000の位置合わせ(アライメント)、フォーカス調整などがある。また、後述の検出及び測定のいずれかにおいてOCTが行われる場合、典型的には、光路長調整や偏光調整が準備動作として実行される。これら準備動作は公知の手法及び構成により行われる。
(S3:眼の角膜形状を測定する)
角膜形状測定部1010は、眼の角膜形状を測定する。これにより取得される角膜形状データは、典型的には、角膜曲率分布データ又は角膜曲率半径分布データであってよい。
(S4:眼の眼底形状を測定する)
眼底形状測定部1020は、眼の眼底形状を測定する。これにより取得される眼底形状データは、典型的には、OCTスキャンにより生成されたOCTデータ、これに基づく眼底曲率分布データ若しくは眼底曲率半径データ、又は、これに基づく高さデータであってよい。
(S5:眼球モデルを作成する)
眼球モデル作成部1030は、ステップS3で取得された角膜形状データと、ステップS4で取得された眼底形状データとに少なくとも基づいて、眼球モデルを作成する。眼球モデル作成には、角膜形状データ及び眼底形状データに加え、公知の模型眼、眼の特性の測定データ(典型的には、中心領域の屈折度数、周辺領域の屈折度数、眼軸長、及び、前房深度のいずれか1以上の眼球パラメータ)、眼の画像の解析データなどが用いられてもよい。
(S6:評価を行う)
評価部1040は、ステップS5で作成された眼球モデルに少なくとも基づいて、当該眼に対する当該オルソKレンズの効果に関する第1評価を実行する。
制御部1050は、ステップS6で実行された評価の結果を出力することや、保存することや、記録することができる。例えば、制御部1050は、表示デバイスを制御して評価結果を表示させることや、通信デバイスを制御して他の装置(例えば、電子カルテシステム等の医療情報管理装置)に評価結果を送信することや、眼科装置1000に設けられた記憶装置に評価結果を保存することや、プリンタを制御して評価結果を紙媒体に印刷させることや、ドライブ装置等を制御して評価結果を記録媒体に書き込ませることなどが可能である。
図3に示すステップの順序を任意に変更することができる。例えば、特定部位検出の前に角膜形状測定を行うことができる。
<第2の態様>
第2の態様に係る眼科装置について説明する。本態様に係る眼科装置の構成例を図4に示す。眼科装置1500は、第1の態様に係る眼科装置1000と同様の角膜形状測定部1010、眼底形状測定部1020、眼球モデル作成部1030、評価部1040、及び制御部1050に加え、特定部位検出部1060と、特徴点設定部1070とを含む。なお、以下、特に言及しない限り、第1の態様における用語、符号等を準用する。
特定部位検出部1060は、オルソKレンズを外した後の眼の特定部位を検出する。眼の特定部位は、典型的には角膜頂点又は瞳孔中心であるが、他の部位であってもよい。
角膜頂点の検出には、例えば、前述したように、プルキンエ像に基づく2次元位置又は3次元位置の検出手法、ケラトリング像に基づく2次元位置の検出手法、前眼部OCTを利用した3次元位置の検出手法、及び、他の検出手法のいずれかが適用される。
瞳孔中心の検出には、例えば、前眼部の正面画像の解析による2次元位置の検出手法、2方向からの撮影で得られた2つの前眼部像の解析による3次元位置の検出手法、及び、他の検出手法のいずれかが適用される。
典型的な特定部位検出部1060は、前眼部を撮影する撮影部(光学系、撮像素子、カメラ等)と、撮影部により得られた画像を解析するプロセッサとを含む。更に、特定部位検出部1060は、プルキンエ像やケラトリング像を形成するための光束を投射する投射部を備えていてもよい。プロセッサは、例えば、特定部位を検出するための解析ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。
特徴点設定部1070は、角膜形状測定部1010により取得された角膜形状データから特徴点を設定する。特徴点は、角膜の形状において特徴的な位置を表す。特徴点は、典型的には前述の矯正中心である。矯正中心は、例えば、前述したように、オルソKレンズにより変形した角膜の頂点(角膜頂点)、又は、オルソKレンズにより変形された角膜形状の中心(フィッティング中心等の変形中心)であってよい。
典型的な特徴点設定部1070は、特徴点を検出するために角膜形状データを解析するプロセッサを含む。プロセッサは、角膜形状データから特徴点を設定するための解析ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。解析ソフトウェアは、例えば、角膜形状データから角膜頂点を検出するためのソフトウェア、及び、角膜形状データから変形中心を検出するためのソフトウェアのいずれかを含む。角膜形状データから変形中心を検出するためのソフトウェアは、例えば、角膜形状データの近似曲面(フィッティング曲面)又は近似曲線(フィッティング曲線)を求める処理と、この近似曲面又は近似曲線の中心(フィッティング中心)を求める処理とをプロセッサに実行させるように構成される。
なお、特定部位検出部1060が角膜頂点を特定する場合、角膜形状測定部1010及び特徴点設定部1070は、角膜頂点以外の任意の特徴点(例えば、フィッティング中心等の変形中心)を設定することができる。他方、角膜頂点以外の眼の部位(例えば瞳孔中心)を特定部位検出部1060が特定する場合には、角膜形状測定部1010及び特徴点設定部1070は、任意の矯正中心(例えば、角膜頂点又は変形中心)を特徴点に設定することができる。
本態様の評価部1040は、第1の態様と同様の第1評価(眼球モデルに少なくとも基づく、眼に対するオルソKレンズの効果に関する評価)に加えて、次の第2評価を実行するように構成される。
第2評価において、評価部1040は、特定部位検出部1060により検出された特定部位と、特徴点設定部1070により設定された特徴点とに基づいて、眼に対するオルソKレンズの装着状態の評価を実行する。評価部1040は、例えば、特定部位と特徴点との間の偏位(位置のずれ)に基づいて評価を行う。
例えば、特定部位検出部1060が特定部位として角膜頂点を検出し、且つ、特徴点設定部1070が角膜形状データのフィッティングを行う場合、評価部1040は、特定部位検出部1060により検出された角膜頂点と、特徴点設定部1070により設定されたフィッティング中心との間の偏位に基づき評価を実行する。
他の例において、特定部位検出部1060が特定部位として瞳孔中心を検出し、且つ、特徴点設定部1070が角膜形状データのフィッティングを行う場合、評価部1040は、特定部位検出部1060により検出された瞳孔中心と、特徴点設定部1070により設定されたフィッティング中心との間の偏位に基づき評価を実行する。
特定部位及び特徴点の双方が3次元位置を表す場合、評価部1040は、これら2つの3次元位置を比較することで評価を行う。同様に、特定部位及び特徴点の双方が2次元位置を表す場合、評価部1040は、これら2つの2次元位置を比較することで評価を行う。一方、特定部位及び特徴点の一方が2次元位置を表し、他方が3次元位置を表す場合、評価部1040は、典型的には、前者の2次元位置を表現する2次元座標系に後者の3次元位置を投影することによって両者の比較を行うことができる。
典型的な評価部1040は、特定部位と特徴点とに基づきオルソKレンズの装着状態の評価を実行するプロセッサを含む。プロセッサは、当該評価を実行するための評価ソフトウェア(プログラム)にしたがって動作する。解析ソフトウェアは、例えば、特定部位と特徴点との間の偏位を算出するためのソフトウェアと、算出された偏位と所定の評価基準(評価プロトコル)に基づき評価を行うためのソフトウェアとを含む。
本態様に係る眼科装置1500の動作について説明する。眼科装置1500の動作の例を図5に示す。眼科装置1500の図示しない記憶装置には、図5に示す動作例を実現するためのソフトウェアが記憶されている。眼科装置1500は、このソフトウェアにしたがって動作することにより、図5に示す一連の処理を実行する。
(S11:オルソKレンズを眼から外す)
まず、評価対象のオルソKレンズを眼から外す。
(S12:アライメント等の準備動作を行う)
次に、第1の態様のステップS2と同じ要領で、所定の準備動作が行われる。
(S13:眼の特定部位を検出する)
特定部位検出部1060は、眼の特定部位を検出する。眼の特定部位は、典型的には、角膜頂点又は瞳孔中心である。これにより、眼の特定部位の位置データが得られる。
(S14:眼の角膜形状を測定する)
第1の態様のステップS3と同じ要領で、角膜形状測定部1010は、眼の角膜形状を測定して角膜形状データを取得する。
(S15:角膜形状データから特徴点を設定する)
特徴点設定部1070は、ステップS14で取得された角膜形状データから特徴点を設定する。特徴点は、角膜の形状において特徴的な位置を表し、典型的には矯正中心である。矯正中心は、典型的には、角膜頂点又は変形中心(フィッティング中心等)である。
(S16:第2評価を行う)
評価部1040は、ステップS13で検出された特定部位と、ステップS15で設定された特徴点とに基づいて(例えば、特定部位と特徴点との間の偏位に基づいて)、眼に対するオルソKレンズの装着状態の評価(第2評価)を実行する。
(S17:眼の眼底形状を測定する)
第1の態様のステップS4と同じ要領で、眼底形状測定部1020は、眼の眼底形状を測定して眼底形状データを取得する。
(S18:眼球モデルを作成する)
第1の態様のステップS5と同じ要領で、眼球モデル作成部1030は、ステップS14で取得された角膜形状データと、ステップS17で取得された眼底形状データとに少なくとも基づいて、眼球モデルを作成する。
(S19:第1評価を行う)
第1の態様のステップS6と同じ要領で、評価部1040は、ステップS18で作成された眼球モデルに少なくとも基づいて、当該眼に対する当該オルソKレンズの効果に関する第1評価を実行する。
本態様の第1評価において、ステップS16で実行された第2評価の結果又はこれを得るための情報を参照することができる。例えば、ステップS15で設定された矯正中心(例えば、角膜頂点、瞳孔中心、又はフィッティング中心)を基準として眼底中心部を設定し、その周りの部位を眼底周辺部に設定し、この眼底周辺部について第1評価を行うことができる。
このように、第2評価のために求められる矯正中心(角膜頂点、瞳孔中心、フィッティング中心など)に応じて第1評価の対象となる眼底周辺部が変化する。また、網膜表面形状が一般に非対称であることを考慮すると、第1評価で求められる周辺屈折度数についても、眼底中心(解析中心、評価中心)をどこに設定するかに応じて、算出される値やそれに基づく評価結果が変化する。本例は、角膜形状と網膜形状(眼底形状)の双方を考慮しつつ、角膜の中心(前眼部の中心)と眼底の中心(網膜中心)とを対応付けて解析を行うことが可能であるため、検査の確度や再現性において優れていると言える。
評価部1040は、ステップS16で得られた第2評価の結果とステップS19で得られた第1評価の結果とに基づく総合的な評価を行うことが可能である。
例えば、第2評価及び第1評価の双方の結果が「OK」である場合、つまり、第2評価において当該眼に対する当該オルソKレンズの装着状態が好適であると評価され、且つ、第1評価において狙い通りの近視進行抑制効果が得られていると評価された場合、例えば、当該オルソKレンズの使用を継続することを提案することができる。
第2評価及び第1評価の双方の結果が「NG」である場合、例えば、より当該眼にフィットする形状やサイズを有し(つまり、現在のものとは異なる形状及び/又はサイズを有し)、且つ、現在のものとは異なる周辺屈折度を有するオルソKレンズに変更することを提案することができる。つまり、当該眼に対するオルソKレンズの処方の見直しを提案することができる。
第1評価の結果が「NG」であり、且つ、第2評価の結果が「OK」である場合、例えば、現在のものと同じ形状及びサイズを有し、且つ、現在のものとは異なる周辺屈折度を有するオルソKレンズに変更することを提案することができる。
第1評価の結果が「OK」であり、且つ、第2評価の結果が「NG」である場合、例えば、より当該眼にフィットする形状やサイズを有し(つまり、現在のものとは異なる形状及び/又はサイズを有し)、且つ、現在のものと同じ周辺屈折度を有するオルソKレンズに変更することを提案することができる。
なお、オルソKレンズの処方の見直しが過去にも行われ、今回が2回目以降である場合において、第2評価及び第1評価の少なくとも一方の結果が「NG」である場合が考えられる。例えば、前回処方の見直しにより採用されたオルソKレンズが当該眼の角膜にフィットしない場合や、眼底傾斜の進行により周辺部の屈折状態を矯正可能なオルソKレンズが無いと判断された場合には、オルソケラトロジーの適用外であると判定し、他の治療法を提案することができる。
制御部1050は、ステップS16で得られた第2評価の結果を出力、保存、記録することができる。また、制御部1050は、ステップS19で得られた評価の結果を出力、保存、記録することができる。また、制御部1050は、第2評価と第1評価の双方に基づく総合的な評価の結果を出力、保存、記録することができる。
図5に示すステップの順序を任意に変更することができる。例えば、特定部位検出の前に角膜形状測定を行うことができる。
<第3の態様>
第3の態様に係る眼科装置について説明する。本態様は、眼の角膜頂点を基準にオルソKレンズが処方された場合に適用され、オルソKレンズの角膜頂点に対する位置及び眼底形状に基づいてオルソKレンズの処方(レンズの種類)及びその装着位置が適切であるか否か評価を行う。本態様では、眼の角膜頂点を基準としてオルソKレンズが適切に装着された場合には、オルソKレンズを外した後の角膜頂点が変形中心(フィッティング中心等)に一致するはずであることを前提とする。また、本態様では、眼には乱視がないこと、及び、オルソKレンズにより変形した角膜の形状(非球面性)が等方的であることを仮定する。ここで、眼に乱視がないことは、例えば、眼の乱視度の測定値が所定閾値以下であることを意味し、そのような眼に対して本態様を適用することが可能である。
本態様に係る眼科装置の構成例を図6に示す。眼科装置2000は、眼特性測定機能とOCT機能とを有する。
測定可能な眼特性の例として屈折力と角膜形状がある。屈折力のパラメータの例として、球面度数、乱視度数、乱視軸角度などがある。角膜形状のパラメータの例として、角膜曲率、角膜曲率半径などがある。角膜形状は、典型的には、角膜曲率分布又は角膜曲率半径分布で表現される。なお、一般に曲率と曲率半径とは互いに逆数の関係にあり、角膜曲率と角膜曲率半径とは等価なパラメータである。
本態様に適用可能なOCTのタイプは任意である。本態様ではスウェプトソースOCTが適用されるが、スペクトラルドメインOCT又は他のタイプであってもよい。
眼科装置は、他の他覚測定機能を備えていてもよく、また、自覚検査機能を備えていてもよい。自覚検査は、被検者からの応答を利用して情報を取得する測定手法であり、典型的には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査などがある。他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主に物理的な手法を用いて眼のデータを取得する測定手法である。他覚測定には、眼の特性データを取得するための測定と、眼の画像データを取得するための撮影とが含まれる。他覚測定としては、前述した屈折力測定や角膜形状測定に加え、眼圧測定、前眼部撮影、眼底撮影、OCT等がある。
本態様において、特に言及しない限り、眼の部位と光学系内の位置との間の共役関係は、アライメントが好適な状態における相互の位置関係を意味するものとする。例えば、光学系における眼底共役位置は、アライメントが好適な状態において眼底と光学的に略共役な位置であり、眼底と光学的に共役な位置又はその近傍を意味する。また、瞳孔共役位置は、アライメントが好適な状態において瞳孔と光学的に略共役な位置であり、瞳孔と光学的に共役な位置又はその近傍を意味する。
以下、眼科装置2000の光学系の光軸に沿う方向をZ方向と呼ぶ。また、この光軸(Z座標軸)に直交する平面(XY平面)を定義する2次元直交座標系(XY座標系)の第1座標軸(例えば水平方向に沿う座標軸)及び第2座標軸(例えば上下方向に沿う座標軸)について、第1座標軸(X座標軸)に沿う方向をX方向と呼び、第2座標軸(Y座標軸)に沿う方向をY方向と呼ぶ。
さて、図6に示す眼科装置2000は、Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7、及びOCT光学系8を含む。以下では、例えば、前眼部観察系5が940nm~1000nmの光を用い、レフ測定光学系(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)が830nm~880nmの光を用い、固視投影系4が400nm~700nmの光を用い、OCT光学系8が1000nm~1100nmの光を用いるものとする。
前眼部観察系5は、眼Eの前眼部を動画撮影する。前眼部観察系5を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は瞳孔共役位置に配置されている。前眼部照明光源50は、眼Eの前眼部に照明光(例えば、赤外光)を照射する。眼Eの前眼部により反射された光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52を透過し、絞り(テレセン絞り)53に形成された孔部を通過し、ハーフミラー23を透過し、リレーレンズ55及び56を通過し、ダイクロイックミラー76を透過する。ダイクロイックミラー52は、レフ測定光学系の光路と前眼部観察系5の光路とを結合する。ダイクロイックミラー52は、これらの光路が結合される光路結合面が対物レンズ51の光軸に対して傾斜して配置される。ダイクロイックミラー76を透過した光は、結像レンズ58により撮像素子59(エリアセンサー)の撮像面に結像される。撮像素子59は、所定のレートで撮像及び信号出力を行う。撮像素子59の出力(映像信号)は、後述のコンピュータ9に入力される。コンピュータ9は、この映像信号に基づく前眼部像E´を表示部10の表示画面10aに表示させる。前眼部像E´は、例えば赤外動画像である。
Zアライメント系1は、前眼部観察系5の光軸方向(前後方向、Z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)を眼Eに投射する。Zアライメント光源11から出力された光は、眼Eの角膜Crに斜方から投射され、角膜Crにより反射され、結像レンズ12によりラインセンサー13のセンサー面に結像される。
角膜Cr(角膜頂点)の位置がZ方向に変化すると、ラインセンサー13のセンサー面における光の投射位置が変化する。コンピュータ9は、ラインセンサー13のセンサー面における光の投射位置に基づいて眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づき光学系を移動させる機構を制御してZアライメントを実行する。このZアライメント手法は、光テコを利用したアライメント手法の例である。
ラインセンサー13の代わりに、任意の1次元又は2次元イメージセンサーを用いることができる。すなわち、Zアライメント系に設けられる光検出器は、複数の光検出素子(フォトダイオード等)が1次元的又は2次元的に配列された任意のイメージセンサーであってよい。
XYアライメント系2は、前眼部観察系5の光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光束(赤外光)を眼Eに照射する。XYアライメント系2は、ハーフミラー23により前眼部観察系5の光路から分岐された光路に設けられたXYアライメント光源21とコリメータレンズ22とを含む。XYアライメント光源21から出力された光は、コリメータレンズ22を通過し、ハーフミラー23により反射され、前眼部観察系5を通じて眼Eに投射される。眼Eの角膜Crによる反射光は、前眼部観察系5を通じて撮像素子59に導かれる。
この反射光に基づく像(輝点像)Brは前眼部像E´に含まれる。コンピュータ9は、輝点像Brを含む前眼部像E´とアライメントマークALとを表示部10の表示画面10aに表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマークAL内に輝点像Brを誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、コンピュータ9は、アライメントマークALに対する輝点像Brの偏位がキャンセルされるように、光学系を移動させる機構を制御する。
ケラト測定系3は、眼Eの角膜Crの形状を測定するためのリング状光束(赤外光)を角膜Crに投射する。ケラト板31は、対物レンズ51と眼Eとの間に配置されている。ケラト板31の背面側(対物レンズ51側)にはケラトリング光源32が設けられている。ケラトリング光源32からの光でケラト板31を照明することにより、眼Eの角膜Crにリング状光束(円弧状又は円周状の測定パターン)が投射される。眼Eの角膜Crからの反射光(ケラトリング像)は撮像素子59により前眼部像E´とともに検出される。コンピュータ9は、このケラトリング像を基に公知の演算を行うことで、角膜Crの形状を表す角膜形状パラメータの値を算出する。典型的な角膜形状パラメータとして角膜曲率半径(角膜曲率)がある。
なお、ケラト測定系3の代わりに、又はこれに加えて、眼科装置2000は、角膜トポグラフィ系(角膜トポグラファ)を備えていてもよい。角膜トポグラフィ系は、前述した角膜トポグラムを取得するための要素群を含む(例えば、特開平8-280624号公報を参照)。角膜トポグラフィ系は、プラチドリングと呼ばれる多重同心円パターンを角膜Crに投影する。角膜Crからの反射光(プラチドリング像)は撮像素子59により前眼部像E´とともに検出される。コンピュータ9は、このプラチドリング像を基に公知の演算を行うことで、角膜Crの形状を表す角膜形状パラメータの分布を求める。得られた分布データを擬似カラー表現することにより角膜トポグラムが提供される。
レフ測定光学系は、屈折力測定に用いられるレフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を含む。レフ測定投射系6は、屈折力測定用の光束(例えば、リング状光束)を眼底Efに投射する。この光束は、典型的には赤外光である。レフ測定受光系7は、この光束の眼Eからの戻り光を検出する。レフ測定投射系6は、レフ測定受光系7の光路に設けられた孔開きプリズム65によって分岐された光路に設けられる。孔開きプリズム65に形成されている孔部は、瞳孔共役位置に配置される。レフ測定受光系7を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は眼底共役位置に配置される。
本態様では、レフ測定光源61は、例えば、高輝度光源であるスーパールミネセントダイオード(SLD)であってよい。レフ測定光源61は、光軸方向に移動可能である。レフ測定光源61は、眼底共役位置に配置される。レフ測定光源61から出力された光は、リレーレンズ62を通過し、円錐プリズム63の円錐面に入射する。円錐面に入射した光は偏向され、円錐プリズム63の底面から出射する。円錐プリズム63の底面から出射した光は、リング絞り64にリング状に形成された透光部を通過する。リング絞り64の透光部を通過した光(リング状光束)は、孔開きプリズム65の孔部の周囲に形成された反射面により反射され、ロータリープリズム66を通過し、ダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された光は、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51を通過し、眼Eに投射される。ロータリープリズム66は、眼底Efの血管や疾患部位に対するリング状光束の光量分布を平均化や光源に起因するスペックルノイズの低減のために用いられる。
眼底Efに投射されたリング状光束の戻り光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52及びダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された戻り光は、ロータリープリズム66を通過し、孔開きプリズム65の孔部を通過し、リレーレンズ71を通過し、反射ミラー72により反射され、リレーレンズ73及び合焦レンズ74を通過する。合焦レンズ74は、レフ測定受光系7の光軸に沿って移動可能である。合焦レンズ74を通過した光は、反射ミラー75により反射され、ダイクロイックミラー76により反射され、結像レンズ58により撮像素子59の撮像面に結像される。コンピュータ9は、撮像素子59からの出力を基に公知の演算を行うことで眼Eの屈折力値を算出する。例えば、屈折力値は、球面度数、乱視度数及び乱視軸角度、及び等価球面度数のうちの少なくとも1つを含む。
ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路にOCT光学系8が設けられる。ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路から分岐された光路に固視投影系4が設けられる。
固視投影系4は、固視標を眼Eに呈示する。固視投影系4の光路には、固視ユニット40が配置されている。固視ユニット40は、後述のコンピュータ9からの制御を受け、固視投影系4の光路に沿って移動可能である。固視ユニット40は、液晶パネル41を含む。
コンピュータ9による制御を受けた液晶パネル41は、固視標を表すパターンを表示する。液晶パネル41の画面上におけるパターンの表示位置を変更することにより、眼Eの固視位置を変更できる。固視位置としては、黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。固視標を表すパターンの表示位置を任意に変更することが可能である。なお、液晶パネル41に代えて、フィルム等に視標等が印刷された透過型の視標チャートと、視標チャートを照明する照明用光源とが設けられていてもよい。
液晶パネル41からの光は、リレーレンズ42を通過し、ダイクロイックミラー83を透過し、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射される。ダイクロイックミラー52により反射された光は、対物レンズ51を通過して眼底Efに投射される。幾つかの態様では、液晶パネル41及びリレーレンズ42のそれぞれは、独立に光軸方向に移動可能である。
OCT光学系8は、眼EにOCTを適用するための光学系である。OCTよりも前に実施されたレフ測定結果に基づいて、光ファイバーf1の端面が撮影部位(眼底Ef又は前眼部)と共役となるように合焦レンズ87の位置が調整される。
OCT光学系8は、ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に設けられる。上記の固視投影系4の光路は、ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路に結合される。それにより、OCT光学系8及び固視投影系4のそれぞれの光軸を同軸で結合することができる。
OCT光学系8は、OCTユニット100を含む。図7に示すように、OCTユニット100において、OCT光源101は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を掃引可能な波長可変光源を含む。波長可変光源は、共振器を含むレーザー光源を含む。OCT光源101は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。OCT光源101は、例えば、出射光の波長(1000nm~1100nmの波長範囲)を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。
図7に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は、干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源からの光を測定光と参照光とに分割する機能と、眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成する機能と、この干渉光を検出する機能とを備える。干渉光学系により得られた干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを表す信号であり、コンピュータ9に送られる。また、測定光の光路(測定アーム、サンプルアーム)の長さ、及び、参照光の光路(参照アーム)の長さの少なくとも一方が可変である。
OCT光源101から出力された光L0は、光ファイバー102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。偏光状態が調整された光L0は、光ファイバー104によりファイバーカプラー105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
参照光LRは、光ファイバー110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。コーナーキューブ114は、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバー117に入射する。光ファイバー117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバー119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバー121によりファイバーカプラー122に導かれる。
一方、ファイバーカプラー105により生成された測定光LSは、光ファイバーf1により導かれてコリメータレンズユニット89により平行光束に変換され、光スキャナー88、合焦レンズ87、リレーレンズ85、及び反射ミラー84を経由し、ダイクロイックミラー83により反射される。
光スキャナー88は、測定光LSを1次元的又は2次元的に偏向する。光スキャナー88は、例えば、第1ガルバノミラーと、第2ガルバノミラーとを含む。第1ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する水平方向(X方向)に撮影部位(眼底Ef又は前眼部)をスキャンするように測定光LSを偏向する。第2ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する上下方向(Y方向)に撮影部位をスキャンするように、第1ガルバノミラーにより偏向された測定光LSを偏向する。このような光スキャナー88による測定光LSのスキャンパターンとしては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある。
ダイクロイックミラー83により反射された測定光LSは、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51により屈折されて眼Eに入射する。測定光LSは、眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバーカプラー105に導かれ、光ファイバー128を経由してファイバーカプラー122に到達する。
ファイバーカプラー122は、光ファイバー128を介して入射された測定光LSと、光ファイバー121を介して入射された参照光LRとを重ね合わせて干渉光を生成する。ファイバーカプラー122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバー123及び124を通じて検出器125に導かれる。
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードである。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらフォトディテクタにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をデータ収集システム(DAQ)130に送る。
DAQ130には、OCT光源101からクロックKCが供給される。クロックKCは、OCT光源101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。OCT光源101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果をコンピュータ9に送られる。コンピュータ9は、例えば一連の波長掃引毎に(Aライン毎に)、サンプリングデータに基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、コンピュータ9は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。
本例では、測定アーム長と参照アーム長との間の差を変更してコヒーレンスゲートを移動するために参照アーム長を変更する要素(移動可能なコーナーキューブ114)が設けられているが、他の要素を採用してもよい。例えば、移動可能なミラーを参照アームに設けることや、移動可能なコーナーキューブ等のリトロリフレクタを測定アームに設けることが可能である。
コンピュータ9は、レフ測定光学系を用いて得られた測定結果から屈折力値を算出し、算出された屈折力値に基づいて、眼底Efとレフ測定光源61と撮像素子59とが共役となる位置に、レフ測定光源61及び合焦レンズ74それぞれを光軸方向に移動させる。幾つかの態様では、コンピュータ9は、合焦レンズ74の移動に連動してOCT光学系8の合焦レンズ87をその光軸方向に移動させる。幾つかの態様では、コンピュータ9は、レフ測定光源61及び合焦レンズ74の移動に連動して液晶パネル41(固視ユニット40)をその光軸方向に移動させる。これらの他にも、コンピュータ9は、各種の制御、各種のデータ処理、各種の演算などを実行する。
眼科装置2000の処理系の構成について説明する。眼科装置2000の処理系の機能的構成の例を図8及び図9に示す。図8は、眼科装置2000の処理系の一例の機能ブロック図を表す。図9は、データ処理部223の一例の機能ブロック図を表す。
コンピュータ9は、眼科装置2000の各部の制御、各種のデータ処理、各種の演算などを実行する。コンピュータ9は、1以上のプロセッサと、1以上の記憶装置とを含む。記憶装置は、例えば、ハードディスクドライブ、RAM、ROM、半導体メモリなどを含む。
記憶装置には、1以上の制御プログラム、1以上のデータ処理プログラム、1以上の演算プログラムなど、各種のプログラム(ソフトウェア)が記憶される。いずれかのプロセッサがいずれかのプログラムにしたがって動作することで、コンピュータ9は、制御、データ処理、演算などを実行する。すなわち、コンピュータ9は、プロセッサ等のハードウェアとソフトウェアとの協働により、制御、データ処理、演算などを実行する。
コンピュータ9は、制御部210と、演算処理部220とを含む。また、眼科装置2000は、移動機構200と、表示部270と、操作部280と、通信部290とを含む。
移動機構200は、眼科装置2000のヘッド部を前後左右方向に移動させるための機構である。ヘッド部には、Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7、及び、OCT光学系8(少なくともOCTユニット100を除く要素群)などが収容されている。例えば、移動機構200には、ヘッド部を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。制御部210(主制御部211)は、アクチュエータに制御信号を送ることによって移動機構200に対する制御を行う。
制御部210は、1以上のプロセッサを含み、眼科装置2000の各部を制御する。制御部210は、主制御部211と、記憶部212とを含む。記憶部212には、眼科装置2000を制御するためのプログラム群が予め格納される。プログラム群には、光源制御用プログラム、検出器制御用プログラム、光スキャナー制御用プログラム、光学系制御用プログラム、アライメント制御用プログラム、演算処理用プログラム、及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなプログラムにしたがって眼科装置2000は演算や制御を実行する。
主制御部211は、眼科装置2000の各種制御を行う。Zアライメント系1に対する制御には、Zアライメント光源11の制御、ラインセンサー13の制御などがある。Zアライメント光源11の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。ラインセンサー13の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。それにより、Zアライメント光源11の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、ラインセンサー13により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいてラインセンサー13に対する光の投影位置を特定する。主制御部211は、特定された投影位置に基づいて眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づき移動機構200を制御してヘッド部を前後方向に移動させる(Zアライメント)。
XYアライメント系2に対する制御には、XYアライメント光源21の制御などがある。XYアライメント光源21の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、XYアライメント光源21の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいてXYアライメント光源21からの光の戻り光に基づく輝点像の位置を特定する。主制御部211は、所定の目標位置(例えば、アライメントマークALの中心位置)に対する輝点像Brの偏位がキャンセルされるように移動機構200を制御してヘッド部を左右上下方向に移動させる(XYアライメント)。
ケラト測定系3に対する制御には、ケラトリング光源32の制御などがある。ケラトリング光源32の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、ケラトリング光源32の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出されたケラトリング像に対する公知の演算を演算処理部220に実行させる。それにより、眼Eの角膜形状パラメータの値が求められる。前述した角膜トポグラフィ系が設けられている場合にも、主制御部211は同様の処理を実行する。
固視投影系4に対する制御には、液晶パネル41の制御や固視ユニット40の移動制御などがある。液晶パネル41の制御には、固視標の表示のオン・オフや、固視標の表示位置の切り替えなどがある。
例えば、固視投影系4には、液晶パネル41(又は固視ユニット40)を光軸方向に移動する移動機構が設けられる。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、少なくとも液晶パネル41を光軸方向に移動させる。それにより、液晶パネル41と眼底Efとが光学的に共役となるように液晶パネル41の位置が調整される。
前眼部観察系5に対する制御には、前眼部照明光源50の制御、撮像素子59の制御などがある。前眼部照明光源50の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、前眼部照明光源50の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。撮像素子59の制御には、撮像素子59の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220に実行させる。
レフ測定投射系6に対する制御には、レフ測定光源61の制御、ロータリープリズム66の制御などがある。レフ測定光源61の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、レフ測定光源61の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。例えば、レフ測定投射系6は、レフ測定光源61を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、レフ測定光源61を光軸方向に移動させる。ロータリープリズム66の制御には、ロータリープリズム66の回転制御などがある。例えば、ロータリープリズム66を回転させる回転機構が設けられており、主制御部211は、この回転機構を制御することによりロータリープリズム66を回転させる。
レフ測定受光系7に対する制御には、合焦レンズ74の制御などがある。合焦レンズ74の制御には、合焦レンズ74の光軸方向への移動制御などがある。例えば、レフ測定受光系7は、合焦レンズ74を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ74を光軸方向に移動させる。主制御部211は、レフ測定光源61と眼底Efと撮像素子59とが光学的に共役となるように、例えば眼Eの屈折力に応じてレフ測定光源61及び合焦レンズ74をそれぞれ光軸方向に移動させることが可能である。
OCT光学系8に対する制御には、OCT光源101の制御、光スキャナー88の制御、合焦レンズ87の制御、コーナーキューブ114の制御、検出器125の制御、DAQ130の制御などがある。OCT光源101の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。光スキャナー88の制御には、第1ガルバノミラーによるスキャン位置やスキャン範囲やスキャン速度の制御、第2ガルバノミラーによるスキャン位置やスキャン範囲やスキャン速度の制御などがある。
合焦レンズ87の制御には、合焦レンズ87の光軸方向への移動制御、撮影部位に対応した合焦基準位置への合焦レンズ87の移動制御、撮影部位に対応した移動範囲(合焦範囲)内での移動制御などがある。例えば、OCT光学系8は、合焦レンズ87を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ87を光軸方向に移動させる。幾つかの態様では、眼科装置2000には、合焦レンズ74及び87を保持する保持部材と、保持部材を駆動する駆動部が設けられる。主制御部211は、駆動部を制御することにより合焦レンズ74及び87の移動制御を行う。主制御部211は、例えば、合焦レンズ74の移動に連動して合焦レンズ87を移動させた後、干渉信号の強度に基づいて合焦レンズ87だけを移動させるようにしてもよい。
コーナーキューブ114の制御には、コーナーキューブ114の光路に沿った移動制御などがある。例えば、OCT光学系8は、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、コーナーキューブ114を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動させる。検出器125の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、検出器125により検出された信号のサンプリングをDAQ130に実行させ、サンプリングされた信号に基づく画像構築等の処理を演算処理部220(画像形成部222)に実行させる。
また、主制御部211は、眼屈折力算出部221により算出された屈折力の測定値、画像形成部222により形成された断層像(OCT画像)、後述のデータ処理部223により得られた結果に対応した情報などを、表示部270に表示させる。
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータの例として、他覚測定により得られたデータ、OCTスキャンにより得られたデータ、断層像の画像データ、前眼部像の画像データ、データ処理部230に供給されるデータ、データ処理部230により生成されたデータ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。
演算処理部220は、眼屈折力算出部221と、画像形成部222と、データ処理部223とを含む。
眼屈折力算出部221は、レフ測定投射系6により眼底Efに投影されたリング状光束(リング状の測定パターン)の戻り光を撮像素子59が検出することにより得られたリング像(パターン像)を解析する。例えば、眼屈折力算出部221は、得られたリング像が描出された画像における輝度分布からリング像の重心位置を求め、この重心位置から放射状に延びる複数のスキャン方向に沿った輝度分布を求め、この輝度分布からリング像を特定する。続いて、眼屈折力算出部221は、特定されたリング像の近似楕円を求め、この近似楕円の長径及び短径を公知の式に代入することによって球面度数、乱視度数及び乱視軸角度(屈折力値)を求める。或いは、眼屈折力算出部221は、基準パターンに対するリング像の変形及び偏位に基づいて眼屈折力のパラメータを求めることができる。
また、眼屈折力算出部221は、前眼部観察系5により取得されたケラトリング像に基づいて角膜曲率半径(角膜曲率)を算出する。例えば、眼屈折力算出部221は、ケラトリング像を解析することにより角膜前面の強主経線の曲率半径と弱主経線の曲率半径とを算出し、これら曲率半径に統計処理を適用して角膜曲率半径を算出する。この統計処理は、例えば、平均化、最大値の選択、又は最小値の選択であってよい。眼屈折力算出部221は、算出された角膜曲率半径に基づいて、角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出することができる。
角膜曲率半径を求めるための手法はケラトリングを用いる手法に限定されない。例えば、前述した角膜トポグラフィ系(プラチドリング)を用いる手法の他にも、スリットスキャンを用いる手法、シャインプルーフカメラを用いる手法、前眼部OCTを用いる手法など、任意の角膜形状解析手法を適用することが可能である。眼屈折力算出部221は、第1及び第2の態様における角膜形状測定部1010の一部としての機能を有する。
画像形成部222は、OCT系8のDAQ130からの出力(サンプリングデータ、干渉信号データ)に基づいて、眼Eの断層像の画像データを形成する。この画像形成処理は、従来の(スウェプトソース)OCTと同様に、フィルター処理、高速フーリエ変換(FFT)などを含む。このような処理によりAライン(眼E内における測定光LSのスキャン経路)における反射強度プロファイルが取得され、この反射強度プロファイルを画像化することでこのAラインの画像データ(Aスキャンデータ)が形成される。
更に、画像形成部222は、OCTスキャン(測定光LSの偏向、Aスキャン位置の移動)のモードにしたがって複数のAスキャンデータを形成し、これらAスキャンデータを配列することで2次元画像データや3次元画像データを構築することができる。
ラスタースキャン等により複数の断層像データ(スタックデータ)が得られた場合、画像形成部222は、これら断層像データに補間処理等のボクセル化処理を適用することによりボクセルデータ(ボリュームデータ)を構築することができる。更に、画像形成部222は、スタックデータ又はボリュームデータをレンダリングすることができる。レンダリングの手法は任意であり、例えば、ボリュームレンダリング、多断面再構成(MPR)、サーフェスレンダリングなどであってよい。また、画像形成部222は、スタックデータ又はボリュームデータから平面画像(例えば、正面画像)を構築することができる。例えば、画像形成部222は、スタックデータ又はボリュームデータを各Aラインに沿って積算することによりプロジェクション画像を構築することができる。
データ処理部223は、様々なデータ処理を実行可能である。データ処理部223は、OCTスキャンを用いて取得されたデータ(OCTデータ)を処理することができる。OCTデータは、例えば、干渉信号データ、反射強度プロファイル又は画像データである。データ処理部223は、前眼部観察系5により得られた画像や、Zアライメント系1のラインセンサー13から出力された信号(データ)を処理することができる。データ処理部223は、ここに例示したデータ以外のデータを処理することも可能である。
例えば、データ処理部223は、スタックデータ又はボリュームデータにセグメンテーションを適用することができる。セグメンテーションは、画像データ中の部分領域を特定するための公知の処理である。データ処理部223は、OCT画像(2次元断層像、3次元画像など)の輝度値に基づきセグメンテーションを行う。例えば、眼底Efにおける複数の層組織はそれぞれ特徴的な反射率を有し、これら層組織の画像領域もそれぞれ特徴的な輝度値を有する。データ処理部223は、これら特徴的な輝度値に基づき目的の画像領域を特定するようにセグメンテーションを実行する。目的の画像領域は、例えば、内境界膜、神経繊維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、視細胞層、網膜色素上皮層、脈絡膜、強膜など、眼底Efの任意の組織に相当する。
図9に示すように、データ処理部223は、第1撮影画像解析部2231と、特徴点設定部2232と、第2評価部2233と、OCTデータ解析部2234と、眼球モデル作成部2235と、第1評価部2236とを含む。前述したように、眼屈折力算出部221は、角膜形状測定部1010の一部(第2撮影画像解析部)として機能する。本態様において、前眼部観察系5は、眼Eの第1撮影画像と第2撮影画像とを取得する。第1撮影画像と第2撮影画像とは、互いに別の画像であってもよいし、同一の画像であってもよい。
第1撮影画像は、眼Eの特定部位(例えば、角膜頂点又は瞳孔中心)を検出するために第1撮影画像解析部2231に提供される。角膜頂点を検出する場合、前眼部観察系5は、XYアライメント系2からの光束が投射されている状態の眼Eを撮影することで、この光束により形成された輝点像(プルキンエ像)が描出された第1撮影画像を取得する。或いは、角膜頂点を検出する場合において、前眼部観察系5は、ケラト測定系3又は角膜トポグラフィ系からのパターン光が投射されている状態の眼Eを撮影することで、このパターン光により形成されたパアーン像(ケラトリング像、プラチドリング像)が描出された第1撮影画像を取得する。瞳孔中心を検出する場合、前眼部観察系5は、眼Eの瞳孔が描出された第1撮影画像を取得する。他の特定部位を検出する場合には、特定部位に応じた第1撮影画像が取得される。第1撮影画像解析部2231は、第2の態様の特定部位検出部1060と同様のデータ処理を実行するように構成されている。
ここで、角膜頂点を検出する場合、XYアライメント系2と、前眼部撮影系5と、第1撮影画像解析部2231とを含む要素群が、第2の態様の特定部位検出部1060として機能する。瞳孔中心を検出する場合、前眼部撮影系5と、第1撮影画像解析部2231とを含む要素群が、第2の態様の特定部位検出部1060として機能する。他の特定部位を検出する場合、前眼部撮影系5と、第1撮影画像解析部2231とを少なくとも含む要素群が、第2の態様の特定部位検出部1060として機能する。
第2撮影画像は、眼Eの角膜形状を測定するために眼屈折力算出部221(第2撮影画像解析部)に提供される。前述したように、眼屈折力算出部221は、ケラト測定又は角膜トポグラフィによる測定データである角膜形状データ(典型的には、角膜曲率分布データ又は角膜曲率半径分布データ)を生成する。眼屈折力算出部221(第2撮影画像解析部)は、第1及び第2の態様の角膜形状測定部1010と同様のデータ処理を実行するように構成されている。本態様の前眼部観察系5及び眼屈折力算出部221(第2撮影画像解析部)は、第1及び第2の態様の角膜形状測定部1010として機能する。
眼屈折力算出部221により得られた角膜形状データは、特徴点設定部2232に提供される。特徴点設定部2232は、第2の態様の特徴点設定部1070として機能し、これと同様のデータ処理を実行するように構成されている。
第2評価部2233は、第1撮影画像解析部2231により検出された特定部位と、特徴点設定部2232により設定された特徴点とに基づいて、眼Eに対するオルソKレンズの装着状態の評価(第2評価)を実行する。第2評価部2233は、第2の態様の評価部1040の一部の機能を有し、これと同様のデータ処理を実行するように構成されている。
OCT部300は、第1の態様のOCT部1021の一例であり、典型的にはOCT系8と画像形成部220とを含み、眼Eの眼底EfにOCTを適用してOCTデータを生成する。生成されるOCTデータは、典型的には画像データであり、OCTデータ解析部2234に提供される。
OCTデータ解析部2234は、OCTデータを解析して眼底形状データを生成する。OCTデータ解析部2234は、第1の態様の眼底形状データ生成部1022の一例であり、OCT部300により取得されたOCTデータを解析して眼底形状データを生成する。生成された眼底形状データは、眼球モデル作成部2235に提供される。
前述したように、眼屈折力算出部221(第2撮影画像解析部)は、角膜形状データを生成する。眼屈折力算出部221は、この角膜形状データを眼球モデル作成部2235に提供する。なお、眼球モデル作成部2235に提供される角膜形状データと、特徴点設定部2232に提供される角膜形状データとは、互いに同じものでもよいし、互いに異なるものでもよい。
眼球モデル作成部2235は、眼屈折力算出部221から提供された角膜形状データとOCTデータ解析部2234から提供された眼底形状データとに少なくとも基づいて眼球モデルを作成する。眼球モデル作成部2235は、第1及び第2の態様の眼球モデル作成部1030の一例である。
第1評価部2236は、眼球モデル作成部2235により作成された眼球モデルに少なくとも基づいて、眼Eに対するオルソKレンズの効果に関する評価(第1評価)を実行する。第1評価部2236は、第1及び第2の態様の評価部1040の一例である。
本態様に係る眼科装置2000の動作について説明する。眼科装置2000の動作の例を図10A~図10Cに示す。眼科装置2000の図示しない記憶装置には、図10A~図10Cに示す動作例を実現するためのソフトウェアが記憶されている。眼科装置2000は、このソフトウェアにしたがって動作することにより、図10A~図10Cに示す一連の処理を実行する。
(S31:オルソKレンズを眼から外す)
まず、評価対象のオルソKレンズを眼Eから外す。
(S32:アライメント等の準備動作を行う)
次に、第1の態様のステップS2と同じ要領で、所定の準備動作が行われる。
(S33:角膜へのパターン光の投射を開始する)
次に、眼科装置2000は、ケラト測定系3又は角膜トポグラフィ系によって、眼Eの角膜にパターン光を投射する。パターン光の投射は、少なくとも、前眼部像が取得されるまで継続される。
(S34:前眼部像をキャプチャする)
次に、眼科装置2000は、角膜にパターン光が投射されている状態の眼Eの前眼部像を取得する。典型的には、眼科装置2000は、ステップS32において前眼部観察系5による前眼部の動画撮影を開始し、ステップS33の後に得られたフレームをキャプチャする。
取得された前眼部像は、パターン光により形成されたパターン像だけでなく、XYアライメント系2からの光束の像(輝点像、プルキンエ像)を描出したものであってもよい。或いは、眼科装置2000は、パターン像が描出された前眼部像と、輝点像が描出された前眼部像とを別々に取得してもよい。
(S35:角膜頂点を検出する)
第1撮影画像解析部2231は、ステップS34で取得された前眼部像を解析して角膜頂点を検出する。これにより、オルソKレンズを外した後の眼Eの角膜頂点の位置データが得られる。つまり、オルソKレンズにより角膜が変形された眼Eの角膜頂点の位置データが得られる。
XYアライメント系2からの光束の像(輝点像、プルキンエ像)が前眼部像に描出されている場合、第1撮影画像解析部2231は、この輝点像のX座標及びY座標を角膜頂点の2次元位置データとして求めることができる。また、XYアライメント系2からの光束の像が前眼部像に描出されている場合であって、前述したステレオ撮影が可能である場合、第1撮影画像解析部2231は、互いに異なる方向から撮影された2つの前眼部像にそれぞれ描出された2つの輝点像から、角膜頂点の3次元位置データを求めることができる。一方、XYアライメント系2からの光束の像が前眼部像に描出されていない場合、第1撮影画像解析部2231は、例えば、ケラト測定系3により投影されたケラトリング像(同心円状パターン像)のうち最も径が小さいリング像の中心を角膜頂点の2次元位置データとして求めることができる。
(S36:眼の角膜形状データを生成する)
眼屈折力算出部221(第2撮影画像解析部)は、ステップS34で取得された前眼部像を解析して角膜形状データ(例えば、角膜曲率分布データ又は角膜曲率半径分布データ)を生成する。また、眼屈折力算出部221(第2撮影画像解析部)は、角膜曲率分布データを2回積分して得られる高さ分布データを角膜形状データとして生成してもよい。高さ分布データは、例えば、所定位置(例えば、角膜頂点位置)を基準とした相対的な高さを表現したデータである。
(S37:角膜形状データからフィッティング中心を決定する)
特徴点設定部2232は、ステップS36で取得された角膜形状データから特徴点を設定する。本動作例では、特徴点としてフィッティング中心が求められる。
前述したように、フィッティング中心は、角膜形状データを近似する数式の中心(典型的には、フィッティング曲面の中心、フィッティング曲線の中心)である。この数式は、中心対称な数式であってよく、更には非球面式であってよい。この非球面式は、例えば、コーニック面の式を少なくとも含む式であってよく、更には、コーニック面の式に偶数次の多項式を加算した式であってよい。
コーニック面の式に偶数次の多項式を加算した式は、典型的には、次のように表現される:z = (ch2/(1+√(1-(1+k)c2h2)) + Ah4 + Bh6 +Ch8。ここで、zはZ軸に平行な面のサグ量、hはXY面における任意方向の座標、cは曲率、kはコーニック係数、A、B及びCはそれぞれ多項式の4次、6次及び8次の項の係数である。ここで、hを(h-h0)とすれば、任意の中心位置h0に関する非球面式を表現することができる。
特徴点設定部2232は、このような数式による非球面フィッティングを角膜形状データに適用する。この非球面フィッティングは、例えば、角膜頂点を中心とする非球面フィッティング、又は、任意中心の非球面フィッティングであってよい。
本態様では眼Eは無乱視眼と仮定しているので、特徴点設定部2232は、例えば、角膜の或る経線について、2次元の中心対称な非球面フィッティングを適用し、その中心(フィッティング中心)の座標を求める。或いは、角膜形状データが3次元データである場合においては、特徴点設定部2232は、点対称な非球面フィッティングをこの角膜形状データに適用し、その中心(フィッティング中心)の座標を求めることができる。
(S38:角膜頂点とフィッティング中心の偏位を算出する)
第2評価部2233は、ステップS35で検出された角膜頂点の位置データと、ステップS37で決定されたフィッティング中心の位置データとを比較し、これらの間の偏位Δを算出する。
偏位Δは、例えば、X方向の偏位ΔX、Y方向の偏位ΔY、XY平面における偏位ΔXY=√(ΔX2+ΔY2)、及び、XYZ空間における偏位ΔXYZ=√(ΔX2+ΔY2+ΔZ2)のいずれかであってよい。なお、偏位Δは、YZ平面における偏位ΔYZ、ZX平面における偏位ΔZX、又は、他の定義による偏位であってもよい。
(S39:偏位が閾値を超えるか判定する)
第2評価部2233は、ステップS38で算出された偏位Δを既定の閾値と比較する。ここで、閾値は、例えば0.5mmに設定されるが、他の値に設定されてもよい。眼科装置2000は、この比較結果を表示部270によって表示してもよい。偏位Δと閾値との比較結果は、後述のステップS48で用いられる。
(S40:眼底にOCTを適用してOCTデータを生成する)
次に、OCT部300は、眼Eの眼底EfにOCTスキャンを適用してOCTデータを生成する。
(S41:眼底形状データを生成する)
OCTデータ解析部2234は、ステップS40で生成されたOCTデータを解析して眼底形状データを生成する。
(S42:眼球モデルを作成する)
眼球モデル作成部2235は、ステップS36で生成された角膜形状データと、ステップS41で生成された眼底形状データとに少なくとも基づいて、眼球モデルを作成する。
(S43:角膜頂点を基準とするシミュレーションを開始する)
続いて、第1評価部2236は、ステップS42で作成された眼球モデルを用いたシミュレーションを開始する。本例のシミュレーションは、以下のステップS44~S46に示す一連の処理を含む。
このシミュレーションは、例えば、ステップS35で検出された角膜頂点を基準として実行される。つまり、このシミュレーションは、ステップS35で検出された角膜頂点位置が眼底Efの中心窩位置に対応していると仮定し、この中心窩位置をシミュレーション中心として(換言すると、この仮定的な中心窩位置と角膜頂点位置とを結ぶ直線(眼軸)をシミュレーション中心として)実行される。
前述したように、シミュレーションの基準位置(シミュレーション中心)は第1評価の結果に影響を与える。本例では、ステップS35で検出された角膜頂点(及び、それに対応する網膜中心)がシミュレーション中心であるが、本来の角膜頂点位置をシミュレーション中心としてもよい。本来の角膜頂点位置は、例えば、他の手法で検出された瞳孔(瞳孔中心)、虹彩(虹彩中心)、又は角膜縁(white-to-white、WTW)に対する位置関係から求めることが可能である。
(S44:周辺屈折度数を算出する)
第1評価部2236は、第1の態様の焦点位置特定部1041と同様に、眼E(眼球モデル)の周辺領域の屈折度数(周辺屈折度数)を算出する。
周辺屈折度数は、少なくとも1つの位置について算出される。例えば、眼E(眼球モデル)の周辺領域における屈折度数分布を求めることができる。
(S45:周辺領域の焦点位置を求める)
次に、第1評価部2236は、第1の態様の焦点位置特定部1041と同様に、ステップ44で算出された周辺屈折度数と、ステップS42で作成された眼球モデルとに基づいて、眼球モデルの眼底周辺部に入射する仮想光線の焦点位置を特定する。
焦点位置は、シミュレーション中心(仮想的な眼軸)に対して傾斜した少なくとも1つの仮想光線について求められる。例えば、複数の仮想光線のそれぞれについて焦点位置を求めることで、焦点位置分布を求めることができる。
(S46:焦点位置と網膜面の位置関係を判定する)
次に、第1評価部2236は、第1の態様の第1評価実行部1042と同様に、ステップS45で求められた焦点位置とステップS42で作成された眼球モデルの網膜面との位置関係を判定する。
より詳細には、第1評価部2236は、ステップS45で求められた焦点位置が、ステップS42で作成された眼球モデルの眼底周辺部における網膜表面よりも奥に配置されているか否か判定を行う。
(S47:焦点位置が網膜面より奥?)
ステップS45で求められた焦点位置が、ステップS42で作成された眼球モデルの眼底周辺部における網膜表面よりも奥に配置されていると判定された場合(S47:Yes)、処理はステップS49に移行する。この場合、ステップS49において、ステップS48と同様にステップS39の判定結果が考慮される。
他方、ステップS45で求められた焦点位置が、ステップS42で作成された眼球モデルの眼底周辺部における網膜表面よりも手前に配置されていると判定された場合(S47:No)、処理はステップS48に移行する。
(S48:S39で偏位>閾値?)
焦点位置が網膜表面よりも手前に配置されていると判定された場合(S47:No)、ステップS39で得られた偏位Δと閾値との比較結果を参照する。偏位Δが閾値を超えると判定された場合(S48:Yes)、処理はステップS49に移行する。他方、偏位Δが閾値以下であると判定された場合には(S48:No)、処理はステップS50に移行する。
(S49:オルソKレンズの処方の見直しを提案する)
前述したように、焦点位置が網膜表面よりも奥に配置されていると判定された場合(S47:Yes)、本ステップにおいて、第1評価部2236は、ステップS48と同様に、ステップS39で得られた偏位Δと閾値との比較結果を参照する。偏位Δが閾値を超えると判定された場合、つまり、双方の評価の結果が「NG」である場合、より眼Eにフィットする形状やサイズを有し、且つ、現在のものとは異なる周辺屈折度を有するオルソKレンズに変更することが提案される(エンド)。他方、偏位Δが閾値を超えないと判定された場合には、現在のものとは異なる周辺屈折度を有するオルソKレンズに変更することが提案される(エンド)。
焦点位置が網膜表面よりも手前に配置されていると判定され(S47:No)、且つ、偏位Δが閾値を超えると判定された場合(S48:Yes)、より眼Eにフィットする形状やサイズを有するオルソKレンズに変更することが提案される(エンド)。
(S50:現在のオルソKレンズの使用の継続を提案する)
焦点位置が網膜表面よりも手前に配置されていると判定され(S47:No)、且つ、偏位Δが閾値を超えないと判定された場合(S48:No)、現在のオルソKレンズの使用を継続することが提案される(エンド)。
なお、今回が2回目以降の評価である場合において、ステップS47及びステップS48のいずれかにおいて「Yes」と判定された場合には、オルソケラトロジーの適用外であると判定し、他の治療法を提案することができる。
制御部210は、ステップS39の第2評価の結果(ステップS48の判定結果)、ステップS46の第1評価の結果(ステップS47の判定結果)、ステップS49で提案された内容、ステップS50で提案された内容などを出力、保存、記録することができる。また、図10A~図10Cに示すステップの順序を任意に変更することが可能である。
本態様におけるオルソKレンズの装着状態の評価(第2評価)について図11A及び図11Bを参照しつつ説明する。ここで、図11Aは装着状態が良好な場合に相当し、図11Bは不良な場合に相当する。
図11Aの符号2100は、角膜トポグラフィにより得られた角膜曲率分布データに基づき作成されたマップ(角膜トポマップ)を示す。角膜トポマップ2100が表現する分布は、例えば、角膜曲率分布、角膜曲率半径分布、角膜曲率分布若しくは角膜曲率半径分布に基づく屈折力分布、角膜曲率分布に基づく高さ分布、又は、他の分布であってよい。以下、角膜トポマップ2100は角膜曲率分布を表現したマップであるとして説明するが、これ以外の分布が適用される場合においても同様の事項が成立する。
符号2110は、角膜の所定の経線を示す。符号2120は、経線2110上における曲率分布を表すグラフである。符号2130は、曲率分布グラフ2120に非球面フィッティングを適用して決定された矯正中心(フィッティング中心)を示す。符号2200は、前眼部像を解析して検出された角膜頂点の位置を示す。
ここで、角膜頂点位置2200は図10AのステップS36で生成された角膜形状データの例であり、フィッティング中心2120はステップS37で決定された位置の例である。この場合、ステップS38により、角膜頂点位置2200とフィッティング中心2130との偏位Δ1(経線2110に沿った方向における偏位)が算出される。
ステップS39では、偏位Δ1が閾値を超えるか否か判定される。本例では、偏位Δ1は閾値以下と判定され、現在使用されているオルソKレンズの装着状態は適切であるとの評価結果が得られる。ただし、偏位Δ1、角膜トポマップ2100、曲率分布グラフ2120、他の検査データ、問診データなどを参照してユーザがオルソKレンズの装着状態に関する処方の見直しを行うことを妨げるものではない。
一方、図11Bの符号2300は、別の角膜トポマップを示す。符号2310は、角膜の所定の経線を示す。符号2320は、経線2310上における曲率分布を表すグラフである。符号2330は、曲率分布グラフ2320に非球面フィッティングを適用して決定された矯正中心(フィッティング中心)を示す。符号2400は、前眼部像を解析して検出された角膜頂点の位置を示す。
図11Aに示す例と同様に、角膜頂点位置2400は図10AのステップS36で取得された角膜形状データの例であり、フィッティング中心2320はステップS37で決定された位置の例である。この場合、ステップS38により、角膜頂点位置2400とフィッティング中心2330との偏位Δ2(経線2310に沿った方向における偏位)が算出される。
ステップS39では、偏位Δ2が閾値を超えるか否か判定される。本例では、偏位Δ2は閾値を超えると判定され、現在使用されているオルソKレンズの装着状態は適切ではないとの評価結果が得られる。
ここで、2つの曲率分布グラフ2120及び2320を比較すると、曲率分布グラフ2120では左端部の傾斜と右端部の傾斜とが概ね等しく、グラフ形状が比較的左右対称になっている一方、曲率分布グラフ2320においては、左端部の傾斜が右端部の傾斜よりも緩やかであり、グラフ形状が比較的左右非対称になっている。これは、図11Aに示す例ではオルソKレンズの中心位置と角膜頂点位置とのズレが比較的小さく、オルソKレンズの効果が概ね期待通りに発揮されているのに対し、図11Bに示す例ではズレが比較的大きく、オルソKレンズの効果が十分に得られていないことを示唆している。
このように、図11Aに示す例によれば、角膜頂点と矯正中心との一致度が高く、オルソKレンズのフィッティングが良好であること、非球面形状(オルソKレンズの形状又はその近似形状)が角膜頂点を中心に対称であり、オルソKレンズが角膜に良くマッチしていることが分かる。更には、オルソKレンズの中心領域のベースカーブなどの各種レンズパラメータが適切であり、狙い通りの(狙いに近い)角膜曲率分布が達成されていることが分かる。
一方、図11Bに示す例によれば、角膜頂点と矯正中心との一致度が低く、オルソKレンズのフィッティングが不良であり、、非球面形状が角膜頂点に対して非対称であり、オルソKレンズが角膜にマッチしていないことが分かる。更には、オルソKレンズの中心領域のベースカーブなどの各種レンズパラメータが適切でなく、狙い通りの角膜曲率分布が達成されていないことが分かる。これらは、夜間にオルソKレンズがずれた可能性があることを示唆する。このズレが大きいと、視力に悪影響を及ぼすおそれがある。
第2評価部2233は、これら評価指標を定量化及び/又は定性化するように構成されていてもよい。例えば、第2評価部2233は、角膜頂点と矯正中心との一致度を偏位Δの大きさに基づき定量的及び/又は定性的に表現することや、曲率分布グラフの対称度を定量的及び/又は定性的に表現することが可能である。ここで、対称度の定量化は、例えば、曲率分布グラフの左側部分の面積と右側部分の面積との差又は比を求める演算や、曲率分布グラフと対称曲線との差分の左右差を求める演算などを含んでいてよい。
同様に、第1評価部2236は、ステップS46で得られた焦点位置と網膜面との位置関係を定量化及び/又は定性化するように構成されていてもよい。例えば、第1評価部2236は、網膜面に対して焦点位置がどちら側(奥側又は手前側)に配置されているかだけでなく、網膜面に対する焦点位置の偏位量を算出することができる。
ステップS49(オルソKレンズの処方の見直し)においては、例えば、オルソKレンズの各種パラメータの見直し、最適値の探索、シミュレーションなどが行われる。オルソKレンズのパラメータとしては、レンズ全体の径、レンズ中心部のベースカーブの径、オプティカルゾーン(トリートメントゾーン)の弦(chord)の寸法、遷移ゾーン(リターンゾーン)の幅・深さ、ペリフェラルゾーン(ランディングゾーン)の径・角度・幅、末端部の幅、屈折力などがある。
<第4の態様>
第4の態様に係る眼科装置について説明する。以下、特に言及しない限り、第3の態様における用語、符号等を準用する。
第3の態様と同様に、本態様は、眼の角膜頂点を基準としてオルソKレンズが処方された場合に適用される。また、第3の態様と同様に、本態様は、眼の角膜頂点を基準としてオルソKレンズが適切に装着された場合には、オルソKレンズを外した後の角膜頂点が変形中心(フィッティング中心等)に一致するはずであることを前提とする。
一方、第3の態様と異なり、本態様では、眼に乱視があること、及び、オルソKレンズにより変形した角膜の形状(非球面性)が非等方的であることを仮定する。ここで、眼に乱視があることは、例えば、眼の乱視度の測定値が所定閾値を超えることを意味し、そのような眼に対して本態様を適用することが可能である。
本態様は、第3の態様と同様の構成及び機能を有する眼科装置によって実現可能である。ただし、第3の態様が無乱視眼を対象とするのに対し、本態様は乱視眼を対象としているため、第3の態様における図10AのステップS37の代わりに、例えば、以下に示す近似式(バイコーニック面の式)が角膜形状データのフィッティングに適用される。
本態様において適用される近似式は、典型的には、次のように表現される:z = ((cxx2+cyy2)/(1+√(1-(1+kx)cx
2x2-(1+ky)cy
2y2))) + AR((1-AP)x2+(1+AP)y2)2 + BR((1-BP)x2+(1+BP)y2)3 + CR((1-CP)x2+(1+CP)y2)4。ここで、zはZ軸に平行な面のサグ量、xはX座標、yはY座標、cxはX方向の曲率、cyはY方向の曲率、kxはX方向のコーニック係数、kyはY方向のコーニック係数、AR、BR及びCRはそれぞれコーニックの4次、6次及び8次の回転対称部の係数、AP、BP及びCPはそれぞれコーニックの4次、6次及び8次の非回転対称部の係数である。ここで、xを(x-x0)とし且つyを(y-y0)とすれば、任意の中心位置(x0,y0)に関する非球面式を表現することができる。なお、特殊な場合として、kx=kyとし且つcx=cyとすれば、第3の態様と同様の点対称のコーニック面の式が得られる。
特徴点設定部2232は、このような数式による非球面フィッティングを角膜形状データに適用する。この非球面フィッティングは、例えば、角膜頂点を中心とする非球面フィッティング、又は、任意中心の非球面フィッティングであってよい。
本態様では眼Eは乱視眼と仮定しているので、互いに異なる2つ(以上)の経線についてフィッティングが実行される。典型的には、互いに直交する2つの経線についてフィッティングが行われる。2つの経線は、典型的には、眼Eの乱視軸方向に沿った経線とこれに直交する経線である。すなわち、特徴点設定部2232は、まず、角膜の第1の経線について、2次元の中心対称な非球面フィッティングを適用し、その中心(フィッティング中心)の座標を求める。次に、特徴点設定部2232は、第1の経線とは異なる第2の経線について同様のフィッティングを行って、その中心(フィッティング中心)の座標を求める。或いは、角膜形状データが3次元データである場合においては、特徴点設定部2232は、バイコーニック面の数式によるフィッティングをこの角膜形状データに適用し、その中心(フィッティング中心)の座標を求めることができる。
以上に説明した事項以外の事項については、第3の態様を本態様に適用することが可能である。
<第5の態様>
第5の態様に係る眼科装置について説明する。以下、特に言及しない限り、第3の態様における用語、符号等を準用する。
第3の態様及び第4の態様とは異なり、本態様は、眼の瞳孔を基準としてオルソKレンズが処方された場合に適用される。本態様では、オルソKレンズを外した後の瞳孔中心が矯正中心に一致するはずであることを前提とする。また、第3の態様と同様に、眼Eが無乱視眼であること、及び、オルソKレンズにより変形した角膜の形状(非球面性)が等方的であることを仮定する。本態様は、第3の態様と同様の構成及び機能を有する眼科装置によって実現可能である。
本態様では、図10AのステップS35の代わりに瞳孔中心の検出を行い、ステップS38の代わりに瞳孔中心とフィッティング中心との偏位の算出を行い、ステップS43で開始されるシミュレーションの代わりに瞳孔中心を基準とするシミュレーションが実行される。
瞳孔中心の検出について説明する。本例において、前眼部観察系5は、眼Eの瞳孔が描出された撮影画像を取得する。第1撮影画像解析部2231は、例えば、前眼部観察系5により眼Eを正面から撮影して得られた撮影画像を解析して瞳孔縁を検出し、この瞳孔縁に楕円フィッティングを適用して瞳孔縁を近似する楕円を求め、この楕円の中心を求める。この楕円中心は、瞳孔中心の2次元位置データとして採用される。他の例において、第1撮影画像解析部2231は、前眼部観察系5により眼Eを正面から撮影して得られた撮影画像を解析して瞳孔縁又は瞳孔領域を検出し、その重心を求めてもよい。この楕円重心は、楕円中心の2次元位置データとして採用される。更に他の例において、前述したステレオ撮影が可能である場合、第1撮影画像解析部2231は、互いに異なる方向から撮影された2つの撮影画像(2つの前眼部像)に対して同様の処理を適用することで、瞳孔中心の3次元位置データを求めることができる。本態様では、前眼部撮影系5と、第1撮影画像解析部2231とを含む要素群が、第2の態様の特定部位検出部1060として機能する。
本態様におけるオルソKレンズの装着状態の評価(第2評価)について図12A及び図12Bを参照しつつ説明する。ここで、図12Aは装着状態が良好な場合に相当し、図12Bは不良な場合に相当する。
図12Aに示す角膜トポマップ2500は角膜曲率分布を表現したマップであるとして説明するが、他の分布が適用される場合においても同様の事項が成立する。符号2510は、角膜の所定の経線を示す。符号2520は、経線2510上における曲率分布を表すグラフである。符号2530は、曲率分布グラフ2520に非球面フィッティングを適用して決定された矯正中心(フィッティング中心)を示す。符号2600は、前眼部像を解析して検出された瞳孔中心の位置を示す。
この場合、瞳孔中心位置2600とフィッティング中心2530との偏位Δ3(経線2510に沿った方向における偏位)が算出され、偏位Δ3が閾値を超えるか否か判定される。本例では、偏位Δ3は閾値以下と判定され、現在使用されているオルソKレンズの装着状態は適切であるとの評価結果が得られる。
一方、図12Bの符号2700は、別の角膜トポマップを示す。符号2710は、角膜の所定の経線を示す。符号2720は、経線2710上における曲率分布を表すグラフである。符号2730は、曲率分布グラフ2720に非球面フィッティングを適用して決定された矯正中心(フィッティング中心)を示す。符号2800は、前眼部像を解析して検出された瞳孔中心の位置を示す。
この場合、瞳孔中心位置2800とフィッティング中心2730との偏位Δ4(経線2710に沿った方向における偏位)が算出され、偏位Δ4が閾値を超えるか否か判定される。本例では、偏位Δ4は閾値を超えると判定され、現在使用されているオルソKレンズの装着状態は適切ではないとの評価結果が得られる。
曲率分布グラフの傾斜、曲率分布グラフの対称性、評価指標の定量化及び定性化、オルソKレンズの処方の見直しなどについては、第3の態様のそれらと同様であってよい。
<第6の態様>
第6の態様に係る眼科装置について説明する。以下、特に言及しない限り、上記の態様における用語、符号等を準用する。
第5の態様と同様に、本態様は、眼の瞳孔を基準としてオルソKレンズが処方された場合に適用される。また、第5の態様と同様に、本態様は、眼の瞳孔中心を基準としてオルソKレンズが適切に装着された場合には、オルソKレンズを外した後の瞳孔中心が矯正中心(角膜中心、フィッティング中心など)に一致するはずであることを前提とする。
一方、第5の態様と異なり、本態様では、眼に乱視があること、及び、オルソKレンズにより変形した角膜の形状(非球面性)が非等方的であることを仮定する。ここで、眼に乱視があることは、例えば、眼の乱視度の測定値が所定閾値を超えることを意味し、そのような眼に対して本態様を適用することが可能である。
本態様は、第5の態様と同様の構成及び機能を有する眼科装置によって実現可能である。ただし、第5の態様が無乱視眼を対象とするのに対し、本態様は乱視眼を対象としているため、第4の態様で説明したバイコーニック面の近似式が角膜形状データのフィッティングに適用される。
本態様では眼Eは乱視眼と仮定しているので、互いに異なる2つ(以上)の経線についてフィッティングが実行される。典型的には、互いに直交する2つの経線についてフィッティングが行われる。2つの経線は、典型的には、眼Eの乱視軸方向に沿った経線とこれに直交する経線である。すなわち、特徴点設定部2232は、まず、角膜の第1の経線について、2次元の中心対称な非球面フィッティングを適用し、その中心(フィッティング中心)の座標を求める。次に、特徴点設定部2232は、第1の経線とは異なる第2の経線について同様のフィッティングを行って、その中心(フィッティング中心)の座標を求める。或いは、角膜形状データが3次元データである場合においては、特徴点設定部2232は、バイコーニック面の数式によるフィッティングをこの角膜形状データに適用し、その中心(フィッティング中心)の座標を求めることができる。
以上に説明した事項以外の事項については、第5の態様を本態様に適用することが可能である。
<効果>
以上に説明した例示的態様に係る眼科装置の幾つかの効果について説明する。
例示的態様に係る眼科装置は、角膜形状測定部と、眼底形状測定部と、眼球モデル作成部と、評価部とを含む。例えば、眼科装置1000(1500)は、角膜形状測定部1010と、眼底形状測定部1020と、眼球モデル作成部1030と、評価部1040とを含む。また、眼科装置2000は、前眼部観察系5及び眼屈折力算出部221(第2撮影画像解析部)を含む角膜形状測定部と、OCT部300及びOCTデータ解析部2234を含む眼底形状測定部と、眼球モデル作成部2235と、第1評価部2236を含む評価部とを含む。
角膜形状測定部は、オルソKレンズを外した後の眼の角膜形状を測定するように構成されている。眼底形状測定部は、当該眼の眼底形状を測定する。眼球モデル作成部は、角膜形状測定部により取得された角膜形状データと眼底形状測定部により取得された眼底形状データとに少なくとも基づいて眼球モデルを作成する。評価部は、眼球モデル作成部により作成された眼球モデルに少なくとも基づいて当該眼に対する当該オルソKレンズの効果に関する第1評価を実行する。
このような例示的態様によれば、オルソKレンズの適否判定を自動で行うことができる。したがって、周辺視野の屈折状態がどのようになっているか(つまり、夜間にオルソKレンズが適切な位置に装着されていたか否か)の判断材料や、期待された屈折矯正効果が実際に得られているか否かの判断材料を、ユーザ(医師等)に提供することが可能である。
例示的態様に係る眼科装置において、評価部は、焦点位置特定部と、第1評価実行部とを含んでいてもよい。眼科装置1000の評価部1040Aは、焦点位置特定部1041と、第1評価実行部1042とを含む(図2Cを参照)。焦点位置特定部は、眼球モデルの眼底周辺部に入射する仮想光線の焦点位置を特定する。第1評価実行部は、特定された焦点位置と眼球モデルの眼底周辺部との位置関係に基づいて第1評価を実行する。
このような構成によれば、オルソKレンズの影響下における周辺視野の焦点位置を求めることで、狙い通りの屈折矯正効果(特に、近視進行抑制効果)が現在のオルソKレンズによって得られているか否かの判断材料を提供することが可能である。
例示的態様に係る眼科装置において、眼球モデル作成部は、所定の前眼部基準位置と眼底基準位置とに少なくとも基づき角膜形状データと眼底形状データとの相対位置を決定して眼球モデルを作成するように構成されてよい。
このような構成によれば、所定の前眼部基準位置及び所定の眼底基準位置を用いて角膜形状データと眼底形状データとの位置決めを行った上で眼球モデルを作成でき、このような眼球モデルを用いつつ前眼部基準位置と眼底基準位置とに基づくシミュレーション中心を基準としてシミュレーションを行うことができるので、第1評価の確度や再現性の向上を図ることが可能である。
例示的態様に係る眼科装置において、角膜を基準として眼球モデルを作成することができる。例えば、眼球モデル作成部は、前眼部基準位置としての角膜頂点位置と眼底基準位置としての中心窩位置とに少なくとも基づき角膜形状データと眼底形状データとの相対位置を決定して眼球モデルを作成するように構成されてよい。ここで、角膜頂点位置は、オルソKレンズを装着する前の位置(本来の角膜頂点位置)、及び、オルソKレンズを外した後の位置のいずれかであってよい。また、眼球モデル作成部は、所定の眼軸長データ(標準値又は測定値)に更に基づき角膜形状データと眼底形状データとの相対位置を決定して眼球モデルを作成するように構成されてよい。
このような構成によれば、角膜頂点位置及び中心窩位置を用いて角膜形状データと眼底形状データとの位置決めを行った上で眼球モデルを作成でき、このような眼球モデルを用いつつ角膜頂点位置と中心窩位置とに基づくシミュレーション中心を基準としてシミュレーションを行うことができるので、第1評価の確度や再現性の向上を図ることが可能である。
例示的態様に係る眼科装置において、瞳孔を基準として眼球モデルを作成することができる。例えば、眼球モデル作成部は、前眼部基準位置としての瞳孔中心位置と眼底基準位置としての中心窩位置とに少なくとも基づき角膜形状データと眼底形状データとの相対位置を決定して眼球モデルを作成するように構成されてよい。ここで、眼球モデル作成部は、所定の眼軸長データ(標準値/測定値)及び前房深度データ(標準値/測定値)に更に基づき角膜形状データと眼底形状データとの相対位置を決定して眼球モデルを作成するように構成されてよい。
このような構成によれば、瞳孔位置及び中心窩位置を用いて角膜形状データと眼底形状データとの位置決めを行った上で眼球モデルを作成でき、このような眼球モデルを用いつつ瞳孔中心位置(又はこれに基づき設定された角膜頂点位置)と中心窩位置とに基づくシミュレーション中心を基準としてシミュレーションを行うことができるので、第1評価の確度や再現性の向上を図ることが可能である。
例示的態様に係る眼科装置において、眼球モデル作成部は、角膜形状データを解析して前眼部基準位置を特定する前眼部基準位置特定部を含んでいてもよい。眼科装置1000の眼球モデル作成部1030Aは、前眼部基準位置特定部1031を含んでいる(図2Aを参照)。このような構成によれば、前眼部基準位置を設定するためのデータ取得(撮影等)を別途で行う必要がない。
例示的態様に係る眼科装置において、眼底形状測定部は、眼の眼底に光コヒーレンストモグラフィを適用してOCTデータを生成するOCT部と、このOCTデータを解析して眼底形状データを生成する眼底形状データ生成部とを含んでいてよい。加えて、眼球モデル作成部は、このOCTデータを解析して眼底基準位置を特定する眼底基準位置特定部を含んでいてよい。眼科装置1000の眼底形状測定部1020Aは、OCT部1021と眼底形状データ生成部1022とを含み、眼球モデル作成部1030Bは、眼底基準位置特定部1032を含む(図2Bを参照)。このような構成によれば、眼底基準位置を設定するためのデータ取得(撮影等)を別途で行う必要がない。
例示的態様に係る眼科装置は、特定部位検出部と特徴点設定部とを更に含んでいてもよい。眼科装置1500は、特定部位検出部1060と特徴点設定部1070とを含む。また、眼科装置2000は、特定部位検出部として機能する第1撮影画像解析部2231と、特徴点設定部2232とを含む。特定部位検出部は、オルソKレンズを外した後の眼の特定部位(例えば、角膜頂点又は瞳孔中心)を検出する。特徴点設定部は、角膜形状測定部により取得された角膜形状データから特徴点を設定する。ここで、特徴点設定部に提供される角膜形状データは、眼球モデル作成部に提供される角膜形状データと同じものでもよいし、互いに異なるものでもよい。本例において、評価部は、特定部位検出部により検出された特定部位と特徴点設定部により設定された特徴点とに基づいて、当該眼に対する当該オルソKレンズの装着状態に関する第2評価を実行するように構成されていてもよい。
このような構成によれば、オルソKレンズの装着位置の適否判定を自動で行うことが可能である。したがって、より多くの診断材料をユーザ(医師等)に提供することが可能になる。また、第1評価の結果と第2評価の結果とに基づく総合的な評価を行うことも可能になる。
例示的態様に係る眼科装置において、特徴点設定部は、中心対称な式による角膜形状データの近似式に基づいて特徴点を設定するように構成されていてもよい。この近似式は、例えば、中心対称な曲面の式又は曲線の式である。このような構成によれば、中心対称な形状のオルソKレンズにより変形された角膜の形状に合わせて近似(フィッティング)を行うことが可能になる。
例示的態様において、近似式として用いられる中心対称な式は、非球面式であってよい。すなわち、特徴点設定部は、所定の非球面式による角膜形状データの近似式に基づき特徴点を設定するように構成されていてもよい。このような構成によれば、非球面形状の部分を有するオルソKレンズにより変形された角膜の形状に合わせてフィッティングを行うことが可能になる。
例示的態様において、所定の非球面式は、コーニック面の式又はバイコーニック面の式を少なくとも含む式であってもよい。このような構成によれば、コーニック形状又はバイコーニック形状の部分を有するオルソKレンズにより変形された角膜の形状に合わせてフィッティングを行うことが可能になる。
例示的態様において、所定の非球面式は、コーニック面の式に偶数次の多項式を加算した式又はバイコーニック面の式に偶数次の多項式を加算した式であってもよい。このような非球面式を用いることで、変曲点を有する形状のオルソKレンズにより変形された角膜の形状に対する非球面フィッティングを高い精度で行うことが可能になる。
例示的態様において、所定の非球面式がコーニック面の式を少なくとも含む場合、角膜の少なくとも1つの方向(経線)に関してフィッティングを行ってもよい。すなわち、特徴点設定部は、コーニック面の式を少なくとも含む非球面式により少なくとも1方向において角膜形状データの近似を行うように構成されていてもよい。このような構成によれば、例えば無乱視眼のように角膜形状の非球面性が等方的であるである場合においては1つ(以上)の経線についてコーニック面の式によるフィッティングを好適に行うことが可能であり、また、例えば乱視眼のように角膜形状の非球面性が非等方的である場合においては2つ(以上)の経線についてコーニック面の式によるフィッティングを好適に行うことが可能である。
例示的態様において、所定の非球面式がコーニック面の式を少なくとも含む場合、角膜の互いに直交する2つの方向(2つの経線)に関してそれぞれフィッティングを行ってもよい。すなわち、特徴点設定部は、コーニック面の式を少なくとも含む非球面式により互いに直交する2方向のそれぞれにおいて角膜形状データの近似を行うように構成されていてもよい。このような構成によれば、例えば乱視眼のように角膜形状の非球面性が非等方的である場合において、互いに直交する2つの経線についてコーニック面の式によるフィッティングを好適に行うことが可能である。
例示的態様において、所定の非球面式がコーニック面の式を少なくとも含む場合、角膜の乱視軸方向及びこれに直交する方向に関してそれぞれフィッティングを行ってもよい。すなわち、特徴点設定部は、コーニック面の式を少なくとも含む非球面式により眼の乱視軸方向及びこれに直交する方向のそれぞれにおいて角膜形状データの近似を行うように構成されていてもよい。このような構成によれば、乱視眼に対するコーニック面の式によるフィッティングを好適に行うことが可能である。
例示的態様において、所定の非球面式がバイコーニック面の式を少なくとも含む場合、3次元的なフィッティングを行ってもよい。すなわち、特徴点設定部は、バイコーニック面の式を少なくとも含む3次元非球面式により角膜形状データの近似を行うように構成されていてもよい。このような構成によれば、角膜の3次元形状に合わせてフィッティングを好適に行うことが可能である。
例示的態様において、特徴点設定部は、中心対称な式による角膜形状データの近似式の中心を、角膜形状データに基づく特徴点として設定するように構成されていてもよい。このような構成によれば、中心対称な形状のオルソKレンズにより変形された角膜の特徴点を、中心対称な式によるフィッティングに基づき好適に設定することが可能である。
例示的態様において、特定部位検出部は、角膜頂点を特定部位として検出するように構成されていてもよく、且つ、評価部は、この角膜頂点と中心対称な式による近似式の中心との間の偏位に基づいて、当該眼に対するオルソKレンズの装着状態の評価を実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、例えば角膜頂点を基準に処方されたオルソKレンズの評価を好適に行うことが可能である。
例示的態様において、特定部位検出部は、瞳孔中心を特定部位として検出するように構成されていてもよく、且つ、評価部は、この瞳孔中心と中心対称な式による近似式の中心との間の偏位に基づいて、当該眼に対するオルソKレンズの装着状態の評価を実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、例えば瞳孔を基準に処方されたオルソKレンズの評価を好適に行うことが可能である。
例示的態様において、角膜形状測定部は、角膜の曲率分布データ又は曲率半径分布データを角膜形状データとして取得するように構成されていてもよい。このような構成によれば、ケラトメータや角膜トポグラファやOCT装置等の一般的な角膜形状測定装置により得られた角膜形状データを、オルソKレンズの評価に利用することが可能になる。
例示的態様において、角膜形状測定部は、角膜の高さ分布データを角膜形状データとして取得するように構成されていてもよい。このような構成によれば、一般的な角膜形状測定装置により得られた角膜形状データを2回積分して求められる高さ分布データを、オルソKレンズの評価に利用することが可能になる。
例示的態様は、眼を撮影する撮影部と、眼底にOCTを適用するOCT部と、プロセッサとを含む眼科装置を制御する方法を提供することができる。例えば、眼科装置1000(1500)は、前眼部を撮影する撮影部(光学系、撮像素子、カメラ等)と、眼底にOCTを適用するOCT部(光学系、撮像素子、駆動機構、プロセッサ等)と、(1以上の)プロセッサとを含んでいる。また、眼科装置2000は、撮影系として機能する前眼部観察系5と、OCT部300と、プロセッサを具備したコンピュータとを含んでいる。
例示的態様に係る制御方法は、第1の制御ステップにおいて、オルソKレンズを外した後の眼の撮影画像を取得するために撮影部を制御する。第2の制御ステップにおいて、当該眼の眼底のOCTデータを取得するためにOCT部を制御する。第3の制御ステップにおいて、当該眼の角膜形状データを取得するために当該撮影画像を解析するようにプロセッサを制御する。第4の制御ステップにおいて、当該眼の眼底形状データを取得するために当該OCTデータを解析するようにプロセッサを制御する。第5の制御ステップにおいて、当該角膜形状データと当該眼底形状データとに少なくとも基づいて眼球モデルを作成するようにプロセッサを制御する。第6の制御ステップにおいて、当該眼球モデルに少なくとも基づいて当該眼に対する当該オルソケラトロジーレンズの効果に関する第1評価を実行するようにプロセッサを制御する。
このような眼科装置の制御方法に対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
例示的態様に係る制御方法をコンピュータを含む眼科装置に実行させるプログラムを提供することができる。このプログラムに対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
このようなプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この記録媒体に対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。この非一時的記録媒体は任意の形態であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
例示的態様は、眼を撮影する撮影部と、プロセッサとを含む眼科装置を制御する方法を提供することができる。例えば、眼科装置1000(1500)は、前眼部を撮影する撮影部(光学系、撮像素子、カメラ等)と、(1以上の)プロセッサとを含んでいる。また、眼科装置2000は、撮影系として機能する前眼部観察系5と、プロセッサを具備したコンピュータとを含んでいる。なお、本態様に係る眼科装置はOCT部を含んでいなくてもよい。
例示的態様に係る制御方法は、第1の制御ステップにおいて、オルソKレンズを外した後の眼の撮影画像を取得するために撮影部を制御する。第2の制御ステップにおいて、当該眼の眼底に光コヒーレンストモグラフィを適用して取得されたOCTデータを受け付けるためにプロセッサを制御する。ここで、プロセッサは、例えば通信デバイス又はドライブ装置を制御することでOCTデータを受け付ける。なお、データ受付については後述する。第3の制御ステップにおいて、当該眼の角膜形状データを取得するために撮影画像を解析するようにプロセッサを制御する。第4の制御ステップにおいて、当該眼の眼底形状データを取得するために当該OCTデータを解析するようにプロセッサを制御する。第5の制御ステップにおいて、当該角膜形状データと当該眼底形状データとに少なくとも基づいて眼球モデルを作成するようにプロセッサを制御する。第6の制御ステップにおいて、当該眼球モデルに少なくとも基づいて当該眼に対する当該オルソKレンズの効果に関する第1評価を実行するようにプロセッサを制御する。
このような眼科装置の制御方法に対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
例示的態様に係る制御方法をコンピュータを含む眼科装置に実行させるプログラムを提供することができる。このプログラムに対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
このようなプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この記録媒体に対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
例示的態様は、眼底にOCTを適用するOCT部と、プロセッサとを含む眼科装置を制御する方法を提供することができる。例えば、眼科装置1000(1500)は、眼底にOCTを適用するOCT部(光学系、撮像素子、駆動機構、プロセッサ等)と、(1以上の)プロセッサとを含んでいる。また、眼科装置2000は、OCT部300と、プロセッサを具備したコンピュータとを含んでいる。
例示的態様に係る制御方法は、第1の制御ステップにおいて、オルソKレンズを外した後の眼を撮影して取得された撮影画像を受け付けるためにプロセッサを制御する。ここで、プロセッサは、例えば通信デバイス又はドライブ装置を制御することで撮影画像を受け付ける。なお、データ受付については後述する。第2の制御ステップにおいて、当該眼の眼底のOCTデータを取得するためにOCT部を制御する。第3の制御ステップにおいて、当該眼の角膜形状データを取得するために当該撮影画像を解析するようにプロセッサを制御する。第4の制御ステップにおいて、当該眼の眼底形状データを取得するために当該OCTデータを解析するようにプロセッサを制御する。第5の制御ステップにおいて、当該角膜形状データと当該眼底形状データとに少なくとも基づいて眼球モデルを作成するようにプロセッサを制御する。第6の制御ステップにおいて、当該眼球モデルに少なくとも基づいて当該眼に対する当該オルソKレンズの効果に関する第1評価を実行するようにプロセッサを制御する。
このような眼科装置の制御方法に対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
例示的態様に係る制御方法をコンピュータを含む眼科装置に実行させるプログラムを提供することができる。このプログラムに対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
このようなプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この記録媒体に対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
例示的態様に係る制御方法、プログラム、又は記録媒体によれば、撮影部及びOCT部の少なくとも一方とプロセッサとを含む眼科装置に、オルソKレンズの適否判定を実行させることが可能になる。
<他の態様>
上記の例示的態様では、イメージング機能(撮影部、OCT部)を具備した眼科装置について説明したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、以下に説明する眼科情報処理装置は、撮影機能を有する他の眼科装置により取得された眼の画像を受けて一連の処理を実行するコンピュータである。
例示的態様に係る眼科情報処理装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、ローカルエリアネットワーク(LAN)上に設けられたサーバ、ワイドエリアネットワーク(WAN)上に設けられたサーバ(クラウドサーバ等)、又は、他の形態のコンピュータを含んでいてよい。
例示的態様に係る眼科情報処理装置の構成を図13に示す。眼科情報処理装置3000は、データ受付部3010と、撮影画像解析部3020と、OCTデータ解析部3030と、眼球モデル作成部3040と、評価部3050と、制御部3060とを含む。
データ受付部3010は、他の眼科装置により取得されたデータを受け付ける。データ受付部3010は、例えば、通信デバイス及びドライブ装置のいずれかを含む。
データ受付部3010の通信デバイスは、例えば、他の眼科装置からネットワークを介してデータを受信する。或いは、データ受付部3010の通信デバイスは、他の眼科装置から医療データベース(例えば、電子カルテシステム、画像アーカイビングシステムなど)に保存されたデータをネットワークを介して受信する。
データ受付部3010のドライブ装置は、他の眼科装置により取得されて記録媒体に記録されたデータを、当該記録媒体から読み出す。
データ受付部3010は、オルソKレンズを外した後の眼の撮影画像と、当該眼の眼底に光コヒーレンストモグラフィを適用して取得されたOCTデータとを受け付ける。典型的には、データ受付部3010により受け付けられた撮影画像及びOCTデータは記憶装置(図示せず)に保存され、撮影画像は制御部3060により撮影画像解析部3020に提供され、OCTデータは制御部3060によりOCTデータ解析部3030に提供される。
撮影画像解析部3020は、眼科装置1000(1500)の角膜形状測定部1010のプロセッサと同様のデータ処理(眼科装置2000の第1撮影画像解析部2231と同様のデータ処理)を実行するように構成されており、オルソKレンズを外した後の眼の撮影画像を解析して角膜形状データを取得するように機能する。
OCTデータ解析部3030は、眼科装置1000(1500)の眼底形状測定部1020のプロセッサと同様のデータ処理(眼科装置2000のOCTデータ解析部2234と同様のデータ処理)を実行するように構成されており、当該眼の眼底のOCTデータを解析して眼底形状データ取得するように機能する。
眼球モデル作成部3040は、眼科装置1000(1500)の眼球モデル作成部1030と同様のデータ処理(眼科装置2000の眼球モデル作成部2235と同様のデータ処理)を実行するように構成されており、撮影画像解析部3020により取得された角膜形状データとOCTデータ解析部3030により取得された眼底形状データとに少なくとも基づいて眼球モデルを作成するように機能する。
評価部3050は、眼科装置1000(1500)の評価部1040と同様のデータ処理(眼科装置2000の第1評価部2236と同様のデータ処理)を実行するように構成されており、眼球モデル作成部3040により作成された眼球モデルに少なくとも基づいて当該眼に対する当該オルソKレンズの効果に関する第1評価を実行するように機能する。
制御部3060は、眼科情報処理装置3000の各部を制御する。制御部3060は、制御プログラムにしたがって動作するプロセッサを含む。
このように構成された眼科情報処理装置3000によれば、他の眼科装置により取得された眼の撮影画像に基づいて、オルソKレンズの適否判定を自動で行うことが可能である。
例示的態様において、眼科情報処理装置3000をネットワーク上に設置し、複数の眼科装置からのデータ(撮影画像、OCTデータなど)を処理可能に構成することができる。これにより、各眼科装置にオルソKレンズ評価機能を設けることなく、眼科情報処理装置3000が評価処理を集中的に(一元的に)行うことができる。この構成によれば、オルソKレンズの評価サービスを広く提供することが可能になる。
このような眼科情報処理装置3000に対して、例示的態様に係る眼科装置(1000、1500、2000)に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
例示的態様は、プロセッサを含む眼科情報処理装置を制御する方法を提供することができる。例えば、眼科情報処理装置3000は、(1以上の)プロセッサを含んでいる。眼科装置2000のコンピュータ9も同様である。
例示的態様に係る制御方法は、第1の制御ステップにおいて、オルソKレンズを外した後の眼を撮影して取得された撮影画像を受け付けるためにプロセッサを制御する。第2の制御ステップにおいて、当該眼の眼底にOCTを適用して取得されたOCTデータを受け付けるためにプロセッサを制御する。これらデータ受付は、例えば、プロセッサが通信デバイス又はドライブ装置を制御することにより実現される。第3の制御ステップにおいて、当該眼の角膜形状データを取得するために当該撮影画像を解析するようにプロセッサを制御する。第4の制御ステップにおいて、当該眼の眼底形状データを取得するために当該OCTデータを解析するようにプロセッサを制御する。第5の制御ステップにおいて、当該角膜形状データと当該眼底形状データとに少なくとも基づいて眼球モデルを作成するようにプロセッサを制御する。第6の制御ステップにおいて、当該眼球モデルに少なくとも基づいて当該眼に対する当該オルソKレンズの効果に関する第1評価を実行するようにプロセッサを制御する。
このような眼科情報処理装置の制御方法に対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。また、このような眼科情報処理装置の制御方法に対して、例示的態様に係る眼科情報処理装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
例示的態様に係る制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することができる。このプログラムに対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。また、このプログラムに対して、例示的態様に係る眼科情報処理装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
このようなプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この記録媒体に対して、例示的態様に係る眼科装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。また、この記録媒体に対して、例示的態様に係る眼科情報処理装置に関して説明された事項のいずれかを組み合わせることが可能である。
例示的態様に係る制御方法、プログラム、又は記録媒体によれば、オルソKレンズの適否判定をコンピュータに実行させることが可能になる。それにより、周辺視野の屈折状態がどのようになっているか(つまり、夜間にオルソKレンズが適切な位置に装着されていたか否か)の判断材料や、期待された屈折矯正効果が実際に得られているか否かの判断材料を、コンピュータからユーザ(医師等)に直接的に又は間接的に提供することが可能になる。
<変形例>
以上に説明した幾つかの態様は、この発明の実施態様の例示に過ぎない。したがって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を施すことが可能である。
例えば、第1の態様において、本出願人による特願2019-005431に開示された方法を用いた眼球モデル作成や、本出願人による特願2019-005434に開示された方法を用いた眼球モデル作成などについて説明したが、実施形態に適用可能な眼球モデル作成方法は前述した方法に限定されない。
眼球モデル作成の変形例として、本出願人による米国特許出願第16/146,144に開示された眼底傾斜補正を利用した方法を以下に説明する。眼底形状データを取得するための計測や撮影が行われたときのアライメントの状態により、眼底の見かけ上の傾斜が変化する。本変形例は、アライメント情報を利用して眼底形状データの傾斜角度(眼底形状データの向き)を補正し、補正された眼底形状データをオルソKレンズの評価に利用するものである。なお、同様の傾斜補正を角膜形状データに施すことも可能である。
本変形例の眼科装置は、典型的には、眼底形状データを取得するためにOCTスキャンを使用し、眼底OCTスキャン時のアライメント情報から眼底形状データの傾斜角度を補正する。具体的には、本変形例の眼科装置は、上記態様に係る角膜形状測定部、眼底形状測定部及び評価部に加えて、アライメント部と、眼底傾斜補正が可能な眼球モデル作成部とを含む。アライメント部は、アライメントを行うための任意の構成を有し、例えば、プルキンエ像を用いたXYアライメント(角膜基準)、光テコを利用したZアライメント(角膜基準)、ステレオ撮影を利用したXYZアライメント(瞳孔基準)、プルキンエ像とステレオ撮影を利用した3次元アライメント(角膜基準)、又は他の方式のアライメントを実行する。眼球モデル作成部は、アライメント部によるアライメント結果(典型的にはアライメントのズレを表す)に基づいて眼底形状データの傾斜角度(眼底形状データの向き、眼底のOCT画像の傾斜角度)を補正するプロセッサ(傾斜角度補正部)を含み、傾斜角度が補正された眼底形状データと角膜形状データとに少なくとも基づいて眼球モデルを作成するように構成される。
本変形例の傾斜角度補正部は、眼底のOCT画像から眼底(眼底形状データ)の傾斜角度を求め、この傾斜角度をアライメント結果を用いて補正するように構成されてよい。本例では、アライメント部は、眼の所定部位を基準としてOCT光学系のアライメントを行う。プロセッサ(画像形成部)は、アライメントが施されたOCT光学系が収集したOCTデータに基づき眼底の断層像を形成する。傾斜角度補正部は、この断層像の傾斜角度(第1傾斜角度)を算出するプロセッサ(第1算出部)と、アライメント結果に基づき第1傾斜角度を補正するプロセッサ(第2算出部)とを含む。第2算出部による出力情報を第2傾斜角度と呼ぶ。
本変形例のアライメント部は、OCT光学系の測定光軸と眼球光軸との間のズレをアライメントのズレとして求めるように構成されていてよい。すなわち、本変形例の眼科装置は、アライメントが実行されたOCT光学系の測定光軸と眼の眼球光軸とのズレ量を特定するプロセッサ(ズレ量特定部)を含んでいてよい。第2算出部は、特定されたズレ量に基づき第1傾斜角度を補正して第2傾斜角度を求めることができる。
本変形例の眼科装置は、測定光軸と眼球光軸とが実質的に一致する場合には第1傾斜角度を補正しないように構成されていてよい。すなわち、本変形例の第2算出部は、測定光軸と眼球光軸とが略一致するか判定し(例えば、測定光軸と眼球光軸との間のズレ量が所定の許容範囲に含まれるか判定し)、略一致すると判定された場合には第1傾斜角度をそのまま第2傾斜角度として出力することができる。
本変形例の眼科装置は、測定光軸と眼球光軸との間のXYシフト量(例えば、XY方向におけるアライメントのズレを示すベクトル)を求めて傾斜角度補正を行うように構成されてよい。すなわち、ズレ量特定部は、測定光軸に交差する方向(XY方向)における測定光軸に対する眼球光軸の変位量をシフト量として特定するように構成されていてよい。第2算出部は、測定光軸に対して眼球光軸がシフトしているか判定し(例えば、シフト量が所定の許容範囲に含まれるか判定し)、測定光軸に対して眼球光軸がシフトしていると判定された場合、特定されたシフト量に基づき第1傾斜角度を補正して第2傾斜角度を求めることができる。
XYシフト量に基づく傾斜角度補正のための構成例として、第2算出部は、特定されたシフト量を変数とする一次式にしたがい第1傾斜角度を補正して第2傾斜角度を求めるように構成されてよい。
本変形例の眼科装置は、測定光軸と眼球光軸との間のチルト量を求めて傾斜角度補正を行うように構成されてよい。すなわち、ズレ量特定部は、測定光軸に対して眼球光軸がなす角度をチルト量として特定するように構成されてよい。第2算出部は、測定光軸に対して眼球光軸がチルトしているか判定し(例えば、チルト量が所定の許容範囲に含まれるか判定し)、測定光軸に対して眼球光軸がチルトしていると判定された場合、特定されたチルト量に基づき第1傾斜角度を補正して第2傾斜角度を求めることができる。
チルト量に基づく傾斜角度補正のための構成例として、第2算出部は、特定されたチルト量を変数とする一次式にしたがい第1傾斜角度を補正して第2傾斜角度を求めるように構成されてよい。
XYシフト量とチルト量の双方を用いて傾斜角度補正を行う場合、第2算出部は、シフト量を変数とする一次式とチルト量を変数とする一次式とを線形結合して得られた結合式にしたがい第1傾斜角度を補正して第2傾斜角度を求めるように構成されてよい。
本変形例の眼科装置は、眼底OCTスキャン時に眼底に固視光束を投影する固視投影系を含んでいてもよい。この場合、典型的には、眼の視軸が眼球光軸として用いられる。
プルキンエ像とステレオ撮影とを利用してアライメントを行う場合、アライメント部は、特開2017-74115号公報に開示された構成と同様に、眼にアライメント光を投射する光学系(XYアライメント系2)と、眼とOCT光学系とを相対的に移動する移動機構(200)と、アライメント光が投射されている眼の前眼部を異なる方向から撮影する2以上の撮影部(典型的には2つの前眼部カメラ)と、プロセッサ(位置決定部)とを含む。位置決定部は、2以上の撮影部により得られた2以上の撮影画像を解析することにより、アライメント光による角膜の反射像の位置(第1位置、典型的にはプルキンエ像の位置)と、アライメントの基準とされた所定部位の位置(第2位置、典型的には角膜頂点の位置)とを特定し、特定された第1位置及び第2位置に基づいてOCT光学系の移動目標位置を決定する。プロセッサ(制御部)は、移動目標位置にOCT光学系を移動するように移動機構を制御する。典型的には、第1位置と第2位置との間の偏位を打ち消すようにアライメントが行われる。このような一連の処理を繰り返すことで、眼の動きにOCT光学系を追従させる動作(トラッキング)を行うことができる。或いは、第1位置と第2位置との間の偏位をモニタし、この偏位が所定の許容範囲を超えたときにOCT光学系の移動を行うようにしてもよい。
本変形例の第1算出部は、眼底のOCT画像(断層像)における所定の層組織の描出位置に基づいて眼底傾斜角度を算出することができる。すなわち、第1算出部は、眼底の断層像のフレーム右端における所定の層領域の画像領域の位置を特定し、フレーム左端における当該画像領域の位置を特定し、特定された2つの位置の垂直方向における距離を算出し、この距離を実寸法(d)に換算し、フレームの水平方向の距離を実寸法(c)に換算し、arctan(|d|/c)を第1傾斜角度として算出するように構成されてよい。
ここで、フレームの水平方向の距離の実寸法への換算は、所定のデータに基づいて行われる。例えば、第1算出部は、角膜曲率半径と眼屈折度数と眼軸長に基づいて、断層像のフレームの水平方向の距離を実寸法に換算するように構成されてよい。或いは、第1算出部は、角膜曲率半径と、眼底OCTスキャン時におけるOCT光学系の合焦レンズ(87)の位置と、眼軸長とに基づいて、断層像のフレームの水平方向の距離を実寸法に換算するように構成されてよい。ここで、角膜曲率半径(角膜曲率)は、ケラトメータ、角膜トポグラファ、又は、これらのいずれかと同等の構成を用いて取得される。眼屈折度数は、レフラクトメータ、又はこれと同等の構成を用いて取得される。眼軸長は、OCT眼軸長測定装置、超音波眼軸長測定装置、又は、これらのいずれかと同等の構成を用いて取得される。フレームの水平方向の距離の実寸法への換算に用いられるパラメータに関する測定は、当該眼科装置又は他の眼科装置によって行われる。なお、フレームの水平方向の距離の実寸法への換算に用いられる複数のパラメータのいずれかが、模型眼等に基づく標準的な値であってもよい。或いは、第1算出部は、断層像のフレームの水平方向の距離に、予め設定された画素間隔値を乗算することによって、フレームの水平方向の距離を実寸法に換算するように構成されていてもよい。
以上に説明した幾つかの構成の少なくともいずれかを含む眼科装置の具体例を説明する。本例に係る眼科装置の構成例を図14に示す。眼科装置4000は、第1の態様に係る眼科装置1000の角膜形状測定部1010、眼底形状測定部1020、評価部1040、及び制御部1050とそれぞれ同様の、角膜形状測定部4010、眼底形状測定部4020、評価部4040、及び制御部4050に加え、傾斜角度補正部4031を含む眼球モデル作成部4030と、アライメント部4060とを含む。なお、以下、特に言及しない限り、上記した態様における用語、符号等を準用する。
角膜形状測定部4010、眼底形状測定部4020、評価部4040、及び制御部4050のそれぞれは、例えば第3の態様における対応要素によって実現されるが、それに限定されない。
アライメント部4060は、眼に対する眼底形状測定部4020(その光学系、例えばOCT光学系8)のアライメントを行う。前述したように、アライメント部4060は、例えば次のいずれかの要素(群)を含んでいてよい:プルキンエ像を用いた角膜基準のXYアライメントを行うためのXYアライメント系2;光テコを利用した角膜基準のZアライメントを行うためのZアライメント系1;ステレオ撮影を利用した瞳孔基準のXYZアライメントを行うための2つの前眼部カメラ(例えば特開2017-74115号公報を参照);プルキンエ像とステレオ撮影を利用した角膜基準の3次元アライメントを行うためのアライメント光投射光学系(XYアライメント系2)及び2つの前眼部カメラ(例えば特開2017-74115号公報を参照)。アライメント部4060は、アライメント結果として、アライメントのズレを表す情報を出力する。
眼球モデル作成部4030の傾斜角度補正部4031は、アライメント部4060から出力されたアライメント結果に基づいて眼底形状データの傾斜角度を補正する。傾斜角度補正部4031が実行する処理については後述する。眼球モデル作成部4030は、傾斜角度補正部4031により傾斜角度が補正された眼底形状データと、角膜形状測定部4010により取得された角膜形状データとに少なくとも基づいて、眼球モデルを作成する。少なくとも眼底形状データ及び角膜形状データに基づく眼球モデル作成処理は、前述したいずれかの態様におけるそれと同様であってよい。
傾斜角度補正部4031が実行する処理の幾つかの例、及びそれに付随する各種の処理の幾つかの例を説明する。以下、第3の態様の構成(特に、図6~図8)を参照する。図15に示す本例のアライメント部4060Aは、図14のアライメント部4060の例であり、第3の態様におけるXYアライメント系2と、特開2017-74115号公報と同様の2つの前眼部カメラ4061(4061A、4061B)とを含む。
主制御部211がXYアライメント光源21を点灯させると、前眼部にプルキンエ像が形成される。プルキンエ像は、角膜曲率半径の2分の1の距離だけ角膜頂点から軸方向(Z方向)の奥側に偏位した位置に形成される。アライメント光束が投射されている前眼部は2つの前眼部カメラ4061によって実質的に同時に撮影され、それにより取得された2つの撮影画像が本例の処理に提供される。
傾斜角度補正部4031は、2つの撮影画像のそれぞれを解析してプルキンエ像を特定し、その位置を特定する。プルキンエ像の位置は、少なくともX方向の位置(X座標)及びY方向の位置(Y座標)を含んでよく、更にZ方向の位置(Z座標)を含んでもよい。典型的には、2つの撮影画像は、それぞれ、対物レンズ51の光軸から外れた2つの位置からの撮影により取得される。XYアライメントが実質的に合っているときには、2つの撮影画像中の2つのプルキンエ像はともに対物レンズ51の光軸に対応する位置に描出される。
2つの前眼部カメラ4061の見込角(対物レンズ51の光軸に対する傾斜角度)は既知であり、撮影倍率も既知であるから、2つの撮影画像中の2つのプルキンエ像の位置に基づいて、眼科装置4000(各前眼部カメラ4061)に対するプルキンエ像の相対位置(実空間における3次元位置)を求めることができる。また、一方の撮影画像中の瞳孔領域とプルキンエ像との相対位置(ズレ量)と、他方の撮影画像中の瞳孔領域とプルキンエ像との相対位置(ズレ量)とに基づいて、瞳孔と前眼部に形成されたプルキンエ像との間の相対位置(例えば角膜と瞳孔との偏心量)を求めることができる。
傾斜角度補正部4031は、前眼部カメラ4061により得られた各撮影画像を解析することで、前眼部の所定の特徴点に相当する当該撮影画像中の位置を特定することができる。例えば、傾斜角度補正部4031は、撮影画像の画素値(輝度値)の分布に基づいて瞳孔領域を特定し、その中心位置(瞳孔中心、瞳孔重心)を特定する。更に、傾斜角度補正部4031は、2つの前眼部カメラ4061の位置(及び撮影倍率)と、2つの撮影画像中の瞳孔中心の位置とに基づいて、眼の瞳孔中心の3次元位置を特定することができる。この処理は、典型的には、特開2017-74115号公報に記載のように三角法を利用した演算を利用する。
傾斜角度補正部4031は、特定されたプルキンエ像の位置と、特定された瞳孔中心位置とに基づいて、装置光学系の移動目標位置を決定する。例えば、傾斜角度補正部4031は、プルキンエ像の位置と瞳孔中心位置との差分を求め、求められた差分が既定のアライメント完了条件を満たすように移動目標位置を決定することができる。主制御部211は、傾斜角度補正部4031により決定された移動目標位置に基づいて移動機構200を制御することで3次元的なアライメントを行うことができる。
傾斜角度補正部4031は、アライメントが行われたOCT光学系8の測定光軸と眼の眼球光軸とのズレ量を特定する。本例の測定光軸は対物レンズ51の光軸である。眼球光軸は、視軸、眼軸など、眼球を通過する任意の軸であってよい。眼に固視光束を投影しつつOCTスキャンを行う場合には、視軸を眼球光軸として採用することができる。本例の傾斜角度補正部4031は、測定光軸と眼の視軸とのズレ量が特定される。
ズレ量は、典型的には、測定光軸と眼球光軸(視軸)との間のシフト量及びチルト量の一方又は双方を含む。シフト量は、測定光軸(Z方向)に対して直交する方向(XY方向)における眼球光軸のズレ量に相当する。チルト量は、測定光軸と眼球光軸とがなす角度に相当する。
傾斜角度補正部4031は、プルキンエ像の位置と所定の基準位置との間のズレ量に基づいてシフト量(単位:ミリメートル)を求めることが可能である。この基準位置は、典型的には、測定光軸の位置である。傾斜角度補正部4031は、例えば、プルキンエ像を通過するXY平面(プルキンエ像のZ座標の位置で定義されたXY平面)において、測定光軸の位置に対するプルキンエ像の位置の差分を求めてシフト量(単位:ミリメートル)とすることができる。
傾斜角度補正部4031は、プルキンエ像の位置と瞳孔中心位置とのズレ量に基づいてチルト量(単位:度)を特定することが可能である。傾斜角度補正部4031は、例えば、プルキンエ像の3次元位置と瞳孔中心の3次元位置とに基づいて眼球光軸(視軸)の方向を特定し、特定された視軸の方向と測定光軸とのなす角を求めてチルト量とすることができる。
傾斜角度補正部4031は、少なくともOCTスキャン中に発生したズレの量を求めることが可能である。例えば、傾斜角度補正部4031は、前眼部カメラ4061により得られる時系列撮影画像を逐次に解析することでプルキンエ像の位置の時間変化と瞳孔中心の位置の時間変化とを求めることで、ズレ量の時間変化をリアルタイムで取得することができる。
傾斜角度補正部4031は、画像形成部222により形成された眼底EfのOCT画像(断層像)において指定された距離を実寸法に相当する値に変換する。傾斜角度補正部4031は、断層像におけるZ方向の距離については、装置光学系に固有の眼球組織内の画素間隔値Δp(単位:マイクロメートル/ピクセル)を基準に換算することができる。傾斜角度補正部4031は、断層像におけるXY方向の距離(OCTスキャン範囲)については、以下のように生成されたサイズ情報を基準に換算することができる。
例えば、傾斜角度補正部4031は、標準値データである模型眼データと眼の光学特性の測定値とを用いてサイズ情報を生成する。眼の光学特性の測定値は、例えば、角膜曲率半径、眼屈折度数、及び眼軸長のうち少なくとも1つを含む。角膜曲率半径は、ケラト測定系3を用いて取得することができる。眼屈折度数は、レフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を用いて取得することができる。眼軸長は、OCT光学系8を用いて取得することができる。このような傾斜角度補正部4031による処理は、例えば特開2016-43155号公報に開示された処理と同様であってよい。
傾斜角度補正部4031は、模型眼データと、眼科装置4000により取得された測定値とを用いてサイズ情報を生成する。このサイズ情報の生成処理では、模型眼データに含まれるパラメータのうち、眼科装置4000により測定可能なパラメータについては眼科装置4000により取得された測定値が用いられる。
本例では、傾斜角度補正部4031は、取得された測定値に基づく倍率補正を行うことによりサイズ情報を生成することが可能である。例えば、傾斜角度補正部4031は、眼の眼球光学系による倍率を求め、求められた倍率から眼の断層像における1画素のサイズを示すサイズ情報を生成する。
その具体例として、まず、傾斜角度補正部4031は、眼の光学特性の測定値に基づいて、被検眼の眼球光学系による倍率を演算する。本例では、眼による倍率と、OCT光学系8による倍率との双方を考慮した撮影倍率を求める。ここで、OCT光学系8は、眼の側から順に対物レンズ51、撮影絞り(不図示)、変倍レンズ(合焦レンズ87)及びリレーレンズ85が光軸に配置された一般的な構成を有しているものとする。
傾斜角度補正部4031は、眼屈折度数が角膜頂点における測定値(角膜屈折度数)である場合、必要に応じて、瞳孔における屈折度数(瞳屈折度数)に変換する。この演算は、例えば、従来と同様に、眼鏡装用距離と、角膜頂点から入射瞳までの距離とに基づいて行うことができる。
次に、傾斜角度補正部4031は、対物レンズ51による結像位置を演算する。この演算は、例えば、瞳屈折度数と、対物レンズ51の焦点距離と、入射瞳から対物レンズ51の前側焦点までの距離とを基に、ニュートンの式を用いることにより行うことができる。
次に、傾斜角度補正部4031は、変倍レンズ(合焦レンズ)による撮影倍率を演算する。この演算は、例えば、対物レンズ51による結像位置の演算結果、変倍レンズの焦点距離、主点間距離、物像距離の関係を表す2次式を、撮影倍率について解くことにより行うことができる。
次に、傾斜角度補正部4031は、対物レンズ51からの射出角を演算する。この演算は、例えば、撮影倍率の演算結果と、対物レンズ51の後側主点から撮影絞りまでの距離と、対物レンズ51の焦点距離とに基づいて行うことができる。このとき、像の検出面における像の高さが所定値となるように射出角を演算する。この所定値は、例えば-0.1mmとする(負号は、光軸から下方向に像が形成されることを示す)。
次に、傾斜角度補正部4031は、撮影絞りの絞り面における像の高さが上記の所定値となるような、対物レンズ51への入射角を演算する。この演算は、例えば、対物レンズ51からの射出角の演算結果と、入射瞳と撮影絞りの角倍率とに基づいて行うことができる。
次に、傾斜角度補正部4031は、眼の角膜の後面の曲率半径を演算する。この演算は、例えば、ケラト測定系3を用いて測定された角膜曲率(角膜の前面の曲率)の測定値と、角膜の前面及び後面の曲率の比とに基づいて行うことができる。この曲率の比は、例えば、模型眼データの値を用いることができる。なお、OCT光学系8を用いて角膜Crの後面の曲率(曲率半径)を測定してもよい。
次に、傾斜角度補正部4031は、遠点と物体(角膜頂点)との距離を演算する。この演算は、例えば、角膜頂点における屈折度数と、眼鏡装用距離とに基づいて行うことができる。
次に、傾斜角度補正部4031は、眼の水晶体の後面から網膜面(眼底表面)までの距離を演算する。この演算は、例えば、角膜Crの曲率(曲率半径)の測定値と演算値に基づく近軸光線追跡により行うことができる。このとき、眼球の光学定数は、例えば模型眼データの値を用いることができる。
次に、眼の眼球光学系の光学定数を決定する。眼の光学定数として、例えば、角膜の曲率(曲率半径)の測定値及び演算結果、屈折度数の測定値及び眼軸長の測定値を採用する。また、網膜面(眼底表面)の曲率半径としては、眼底形状データから算出される値、又は、眼軸長の測定値の半分の値を採用することができる。また、水晶体後面から網膜(眼底表面)までの距離として、OCT光学系8を用いて得られた測定値、又は角膜前面から水晶体後面までの距離の標準値(模型眼データの値)を眼軸長の測定値から引いた値を採用する。
眼の光学定数が決定されたら、傾斜角度補正部4031は、眼底形状データから求められる網膜面(眼底表面)における像の高さを演算する。この演算は、たとえば、決定された光学定数と、対物レンズ51への入射角の演算結果とを用いた光線追跡により行うことができる。
最後に、傾斜角度補正部4031は、網膜面における像の高さの演算結果、検出面における像の高さの演算結果、リレーレンズによるリレー倍率(撮影光学系等の影響)などに基づいて、倍率を演算する。この倍率は、眼の眼球光学系による倍率と、撮影光学系による倍率とを考慮したものである。
傾斜角度補正部4031は、求められた倍率から断層像における1画素の縦横それぞれの長さ(単位:マイクロメートル/画素)をサイズ情報として求める。例えば、傾斜角度補正部4031は、複数の倍率のそれぞれに1画素の縦横それぞれの長さを予め関連付けたテーブル情報を含み、当該テーブル情報を参照することにより、求められた倍率から眼底像における1画素の縦横それぞれの長さを求めることができる。なお、複数の離散的な倍率値に関するテーブル情報の代わりに、倍率値の連続的な変化と1画素のサイズの変化とを対応付けたグラフ情報を用いることも可能である。
傾斜角度補正部4031は、画像形成部222により形成された断層像に描出された眼底Efの傾斜角度を算出する。傾斜角度補正部4031は、例えば、公知のセグメンテーションにより特定された所定の層領域の傾斜角度を求める。所定の層領域として、内境界膜、神経繊維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、視細胞層、網膜色素上皮層などがある。
本例で取得される眼底Efの断層像は、例えば、第1の態様で説明した図2Eに示すBスキャン画像IMGである。以下、図2Eを参照する。断層像IMGのフレーム左端LTにおいて、フレーム上端UTから眼底Efにおける所定の層領域(例えば、神経線維層)に相当する部位の画像領域との垂直方向の距離をL1とする。同様に、断層像IMGのフレーム右端RTにおいて、フレーム上端UTから当該層領域に相当する部位の画像領域との垂直方向の距離をR1とする。傾斜角度補正部4031は、断層像IMGにおけるフレーム左端LTとフレーム右端RTにおける当該部位の画像領域の垂直方向の差分(|R1-L1|)に、画素間隔値(ピクセルスペーシング補正値)Δpを乗算することにより、差分(|R1-L1|)について実寸法に相当する値|d|を求める。
次に、傾斜角度補正部4031は、OCTスキャン範囲に相当する断層像IMGのフレームの水平方向の距離H1を上記のサイズ情報を用いて、距離H1について実寸法に相当する値cに換算する。
傾斜角度補正部4031は、断層像の傾斜角度g0(単位:度)を次の式(1)にしたがって求める。
g0=arctan(|d|/c) ・・・(1)
傾斜角度補正部4031は、前述した要領で特定されたズレ量に応じて、断層像の傾斜角度を補正することにより眼底傾斜角度を算出することが可能である。
具体的には、傾斜角度補正部4031は、ズレ量の特定結果に関する判定を実行する。傾斜角度補正部4031は、得られた判定結果に基づいて眼底傾斜角度を算出する。
<測定光軸と眼球光軸とが略一致しているとき>
図16に示すように、測定光軸(対物レンズ51の光軸)Oaxと眼球光軸(視軸)Eaxとが略一致していると判定されたとき、傾斜角度補正部4031は、断層像の傾斜角度g0を補正することなく眼底傾斜角度g1として出力する。すなわち、傾斜角度補正部4031は、次の式(2)に示すように、断層像の傾斜角度g0を眼底傾斜角度g1として出力する。
g1=g0=arctan(|d|/c) ・・・(2)
<測定光軸に対して眼球光軸がシフトしているとき>
図17に示すように、測定光軸Oaxに対して眼球光軸Eaxがシフトしていると判定されたとき、傾斜角度補正部4031は、特定されたシフト量dsに基づいて断層像の傾斜角度g0を補正することによって眼底傾斜角度g1を求める。
傾斜角度補正部4031は、以下の式(3)に示すようなシフト量dsを変数とする一次式にしたがって補正角度φ1を求め、以下の式(4)に示すように、求められた補正角度φ1を用いて断層像の傾斜角度g0を補正することによって眼底傾斜角度g1を求める。式(3)において、α1及びc1は定数であり、例えば模型眼データを用いて求められる。
φ1=α1×ds+c1 ・・・(3)
g1=g0-φ1 ・・・(4)
<測定光軸に対して眼球光軸がチルトしているとき>
図18に示すように、測定光軸Oaxに対して眼球光軸Eaxがチルトしていると判定されたとき、傾斜角度補正部4031は、傾斜角度補正部4031により特定されたチルト量dtに基づいて断層像の傾斜角度g0を補正することによって眼底傾斜角度g1を求める。
傾斜角度補正部4031は、以下の式(5)に示すようなチルト量dtを変数とする一次式にしたがって補正角度φ2を求め、以下の式(6)に示すように、求められた補正角度φ2を用いて断層像の傾斜角度g0を補正することによって眼底傾斜角度g1を求める。式(5)において、α2及びc2は定数であり、例えば模型眼データを用いて求められる。
φ2=α2×dt+c2 ・・・(5)
g1=g0-φ2 ・・・(6)
<測定光軸に対して眼球光軸がシフトし、且つチルトしているとき>
図19に示すように、測定光軸Oaxに対して眼球光軸Eaxがシフトし、且つチルトしていると判定されたとき、傾斜角度補正部4031は、特定されたシフト量ds及びチルト量dtに基づいて断層像の傾斜角度g0を補正することによって眼底傾斜角度g1を求める。
シフト量ds及びチルト量dtが小さい範囲において、傾斜角度補正部4031は、以下の式(7)に示すようなシフト量ds及びチルト量dtを変数とする式にしたがって補正角度φ3を求め、以下の式(8)に示すように、求められた補正角度φ3を用いて断層像の傾斜角度g0を補正することによって眼底傾斜角度g1を求める。幾つかの例において、式(8)は、シフト量の補正角度を求める式と、チルト量の補正角度を求める式とを線形結合することにより得られる結合式である。式(7)において、α3、α4及びc3は定数であり、例えば模型眼データを用いて求められる。
φ3=α3×ds+α4×dt+c3 ・・・(7)
g1=g0-φ3 ・・・(8)
上記の例では、レフ測定光学系により取得された眼屈折度数を用いてOCTスキャン範囲を補正しているが、OCTスキャンの準備として行われるフォーカス調整で決定された合焦レンズ87の位置から眼屈折度数を特定して、OCTスキャン範囲の補正に用いてもよい。この場合、合焦レンズ87の位置と眼屈折度数との間の対応を記録した対応情報を利用することができる。
以上に説明したように、傾斜角度補正部4031は、アライメント部4060によるアライメント結果に基づいて、眼底形状測定部4020により得られた眼底形状データの傾斜角度(向き)を補正する。眼球モデル作成部4030は、角膜形状測定部4010により取得された角膜形状データと、傾斜角度補正部4031により傾斜角度が補正された眼底形状データとに少なくとも基づいて、眼球モデルを作成する。評価部4040は、このような眼底傾斜角度を反映した眼球モデルに少なくとも基づいて、眼に対するオルソKレンズの効果に関する第1評価を実行することができる。
本例によれば、オルソKレンズの自動適否判定をより高い正確性で行うことが可能になる。例えば、眼球モデルを作成するための眼底形状測定時にアライメントにズレが介在した場合であっても、このズレの影響を打ち消すための補正が施された眼球モデルを作成し、これを用いて第1評価を行うことが可能である。
本例において説明された事項のいずれかを、例示的態様に係る眼科装置、その制御方法、眼科情報処理装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体のいずれかに組み合わせることが可能である。