JP7233667B2 - 崩壊性単細胞性紅藻の製造方法、及び崩壊性単細胞性紅藻用培地 - Google Patents
崩壊性単細胞性紅藻の製造方法、及び崩壊性単細胞性紅藻用培地 Download PDFInfo
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Description
本願は、2020年8月24日に、日本に出願された特願2020-141202号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
微細藻類を産業利用する場合には、コスト面等から、屋外で大量培養可能な微細藻類であることが望ましい。しかしながら、屋外で大量培養可能な微細藻類であるためには、環境変動(光、温度等)に耐性を有すること、他の生物が生存できないような条件で培養できること、高密度まで増殖可能であること、等の条件が求められる。
[1]単細胞性紅藻細胞を、浸透圧調整剤を80mM以上含有する培地中で培養することを含む、崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
[2]単細胞性紅藻細胞を、浸透圧が150mOsm/kg以上である培地中で培養することを含む、崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
[3]浸透圧調整剤が、糖、糖アルコール、及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
[4]前記単細胞性紅藻細胞が、非崩壊性細胞である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
[5]前記単細胞性紅藻細胞が、倍数体の細胞である、[4]に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
[6]前記単細胞性紅藻細胞が、崩壊性細胞である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
[7]崩壊性単細胞性紅藻細胞を、崩壊性細胞のまま維持する方法である、[6]に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
[8]崩壊性単細胞性紅藻細胞を、増殖させる方法である、[6]に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
[9]浸透圧調整剤を80mM以上含有する、崩壊性単細胞性紅藻用培地。
[10]浸透圧が150mOsm/kg以上である、崩壊性単細胞性紅藻用培地。
[11]浸透圧調整剤が、糖、糖アルコール、及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である、[9]又は[10]に記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
[12]非崩壊性単細胞性紅藻細胞から崩壊性単細胞性紅藻細胞を作出するために用いられる、[9]~[11]のいずれか1つに記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
[13]前記非崩壊性単細胞性紅藻細胞が、倍数体の単細胞性紅藻細胞である、[12]に記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
[14]崩壊性の単細胞性紅藻細胞を、崩壊性細胞のまま維持するために用いられる、[9]~[11]のいずれか1つに記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
[15]崩壊性単細胞性紅藻細胞を、増殖させるために用いられる、[9]~[11]のいずれか1つに記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
本発明の第1の態様は、単細胞性紅藻細胞を、浸透圧調整剤を80mM以上含有する培地中で培養することを含む、崩壊性単細胞性紅藻の製造方法である。
本明細書において、「崩壊性細胞」とは、強固な細胞壁を有さないなどの理由により、温和な処理によっても容易に破壊しうる細胞を意味する。「非崩壊性細胞」とは、強固な細胞壁を有するなどの理由により、温和な処理によって容易には破壊しえない細胞を意味する。ここで言う温和な処理としては、例えば、中和処理、低張処理、凍結融解処理、界面活性剤処理などが挙げられる。
本発明は、崩壊性細胞を安定して維持可能な崩壊性単細胞性紅藻の製造方法を提供することを目的とする。本発明では、2週間を超えて崩壊性細胞を維持できた場合に「崩壊性細胞を安定して維持可能」と判断し得る。
「単細胞性紅藻」とは、紅色植物門(Rhodophyta)に属する藻類であって、単細胞性である藻類を指す。単細胞性紅藻としては、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)、ベニミドロ綱(Stylonematophyceae)、チノリモ綱(Porphyridiophyceae)、及びロデラ綱(Rhodellophyceae)が挙げられる。これらの中でも、崩壊性細胞を安定に維持しやすいことから、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)が好ましい。イデユコゴメ綱には、シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon)属、シアニジウム(Cyanidium)属、及びガルデリア(Galdieria)属が知られている。シアニジウム属、及びガルデリア属は、自然界で非崩壊性細胞として存在する。そのため、イデユコゴメ綱の中でも、シアニジウム属、及びガルデリア属が好ましく、ガルデリア属がより好ましい。
ガルデリア属としては、例えば、G.sulphuraria、G.partita、G.daedala、G.maxima等が挙げられるが、これらに限定されない。ガルデリア属としては、G.sulphurariaが特に好ましい。
シアニジウム属としては、例えば、C.caldarium、C.sp.Monte Rotaro等が挙げられるが、これらに限定されない。
イデユコゴメ綱の藻類株としては、例えば、国際公開第2019/107385号の図10に記載されるもの等が挙げられる。
本態様の方法により、単細胞性紅藻細胞として非崩壊性細胞を培養した場合、培養中に、崩壊性細胞を生じることがある。本態様の方法による培養を継続することにより、崩壊性細胞が非崩壊性細胞に回帰することなく、崩壊性細胞のまま維持することができる。したがって、本態様の方法は、非崩壊性単細胞性紅藻細胞から、崩壊性単細胞性紅藻を作出する方法を包含する。
本態様の方法により、単細胞性紅藻細胞として崩壊性細胞を培養した場合、培養中に、非崩壊性細胞に回帰することなく、崩壊性細胞のまま維持される。したがって、本態様の方法は、崩壊性単細胞性紅藻細胞を維持する方法を包含する。
本態様の方法により、崩壊性単細胞性紅藻細胞は、培養中に崩壊性細胞のまま増殖する。したがって、本態様の方法は、崩壊性単細胞性紅藻を増殖させる方法を包含する。
本態様の方法で用いる培地は、浸透圧調整剤を80mM以上含有する培地である。
「浸透圧調整剤」とは、浸透圧を調整可能な化学物質を指す。浸透圧調整剤は、培地に添加することにより浸透圧を調整可能な化学物質であれば、特に限定されない。浸透圧調整剤としては、例えば、糖、糖アルコール、アミノ酸、金属塩、尿素、タンパク質、ベタイン、イノシトール、多糖等が挙げられる。これらの中でも、糖、糖アルコール、アミノ酸、及び金属塩が好ましい。
単糖としては、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、エリトルロース、エリトロース、トレオース、リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フコース、フクロース、ラムノース、セドヘプツロースが好ましく、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、エリトルロース、エリトロース、リブロース、リボース、アラビノース、キシロース、デオキシリボース、フルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、又はセドヘプツロースがより好ましく、グルコースがさらに好ましい。
二糖としては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、コージビオース、ニゲロース、イソマルトース、β,β―トレハロース、α,β―トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース、ネオラクトース、ガラクトスクロース、シラビオース、ネオヘスペリドース、ルチノース、ルチヌロース、ビシアノース、キシロビオース、プリメベロース、トレハロサミン、マルチトール、セロビオン酸、ラクトサミン、ラクトースジアミン、ラクトビオン酸、ラクチトール、ヒアロビウロン酸、又はスクラロースが好ましく、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、又はセロビオースがより好ましく、スクロースがさらに好ましい。
糖アルコールとしては、グリセロール、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、HSH、又は還元水飴が好ましく、マンニトール、又はソルビトールがより好ましい。
浸透圧調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いでもよい。
培地中の浸透圧調整剤の濃度は、特記しない限り、培養開始前の濃度である。また、浸透圧調整剤を2種以上組み合わせて用いる場合は、前記2種以上の浸透圧調整剤の合計含有量が80mM以上になればよい。上記浸透圧調整剤の濃度として例示した範囲についても同様である。
例えば、浸透圧調整剤がスクロースである場合、培地中のスクロース濃度としては、例えば、80mM~1.1Mが挙げられ、80mM~800mMが好ましく、80mM~600Mがより好ましい。あるいは、培地中のスクロースの濃度は、培地の全質量(100質量%)に対して、2~40質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、3~20質量%がさらに好ましい。
例えば、浸透圧調整剤がグリセロールである場合、培地中のグリセロール濃度としては、例えば、200mM~800mMが挙げられ、300mM~600mMが好ましい。あるいは、培地中のグリセロール濃度は、培地の全質量(100質量%)に対して、3~6質量%が好ましい。
例えば、浸透圧調整剤がマンニトールである場合、培地中のマンニトール濃度としては、例えば、180mM~1.5Mが挙げられ、200mM~1.2Mが好ましく、250mM~1Mがより好ましい。あるいは、4~20質量%が好ましく、5~18質量%がより好ましい。
例えば、浸透圧調整剤がソルビトールである場合、培地中のソルビトール濃度としては、例えば、200mM~2Mが挙げられ、400mM~1.5Mが好ましく、430mM~1.5Mがより好ましい。あるいは、培地中のソルビトール濃度は、培地の全質量(100質量%)に対して、5~40質量%が好ましく、8~27質量%がより好ましい。
例えば、浸透圧調整剤がグリシンである場合、培地中のグリシン濃度としては、例えば、100mM~2Mが挙げられ、120mM~1.5Mが好ましく、130mM~1Mがより好ましい。あるいは、培地中のグリシン濃度は、培地の全質量(100質量%)に対して、0.5~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましい。
例えば、浸透圧調整剤がプロリンである場合、培地中のプロリン濃度としては、例えば、80mM~2Mが挙げられ、500mM~1.5Mが好ましく、600mM~1.5Mがより好ましい。あるいは、培地中のプロリン濃度は、培地の全質量(100質量%)に対して、1~20質量%が好ましく、7~10質量%がより好ましい。
例えば、浸透圧調整剤がアルギニンである場合、培地中のアルギニン濃度としては、例えば、20mM~2Mが挙げられ、30mM~1.5Mが好ましく、50mM~1Mがより好ましい。あるいは、培地中のアルギニン濃度は、培地の全質量(100質量%)に対して、0.5~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。
例えば、浸透圧調整剤が塩化カリウムである場合、培地中の塩化カリウム濃度としては、例えば、50mM~1.5Mが挙げられ、100mM~1Mが好ましく、130mM~500mMがより好ましい。あるいは、培地中の塩化カリウム濃度は、培地の全質量(100質量%)に対して、0.5~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
培地の浸透圧は、特記しない限り、培養開始前の値である。培地の浸透圧は浸透圧計を用いて測定することができる。
非崩壊性細胞から崩壊性細胞を作出する場合には、例えば、浸透圧調整剤の濃度を50mM~2Mとすることが好ましく、100mM~1.5Mとすることがより好ましい。また、培地の浸透圧を150~2610mOsm/kgとすることが好ましく、300~1700mOsm/kgとすることがより好ましい。培地は、液体培地であってもよく、固体培地であってもよいが、崩壊性細胞が生じたことが判別しやすいことから、固体培地を用いることが好ましい。
崩壊性細胞を維持する場合には、例えば、浸透圧調整剤の濃度を50mM~2Mとすることが好ましく、100mM~1.5Mとすることがより好ましい。また、培地の浸透圧を150~2610mOsm/kgとすることが好ましく、300~1700mOsm/kgとすることがより好ましい。培地は、液体培地であってもよく、固体培地であってもよいが、長期間安定に維持しやすいことから、固体培地を用いることが好ましい。
崩壊性細胞を増殖させる場合には、例えば、浸透圧調整剤の濃度を50mM~2Mとすることが好ましく、100mM~1.5Mとすることがより好ましい。また、培地の浸透圧を150~2610mOsm/kgとすることが好ましく、300~1700mOsm/kgとすることがより好ましい。培地は、液体培地であってもよく、固体培地であってもよいが、細胞が増殖しやすいことから、液体培地を用いることが好ましい。
本態様の方法は、単細胞性紅藻細胞を、浸透圧調整剤を80mM以上含有する培地で培養する工程を含む。前記培養における培養条件は、特に限定されず、単細胞性紅藻の培養条件として通常用いられる条件を使用することができる。培養条件としては、例えば、pH1~8、温度10~50℃、及びCO2濃度0.3~3%等が挙げられる。光条件は、従属栄養的に培養する場合、暗所であってもよい。独立栄養的に培養する場合、光条件は、例えば、5~2000μmol/m2sが挙げられる。
培養条件は、上記例示したものに限定されず、単細胞性紅藻の種類に応じて適宜選択可能である。例えば、単細胞性紅藻がイデユコゴメ綱である場合、pH条件としては、pH1.0~6.0が挙げられ、pH1.0~5.0が好ましく、pH1.0~3.0がより好ましい。温度条件としては、15~50℃が挙げられ、30~50℃が好ましく、35~50℃がより好ましい。光強度としては、5~2000μmol/m2sが挙げられ、5~1500μmol/m2sが好ましい。連続光で培養してもよく、明暗周期(10L:14Dなど)を設けてもよい。また、従属栄養的に培養する場合には、暗所で培養することもできる。
培養開始時に用いる単細胞性紅藻細胞が崩壊性細胞である場合、培養期間は特に限定されない。本態様の方法では、崩壊性細胞が安定して維持されるため、崩壊性細胞を維持する必要がある期間、培養を継続すればよい。
本態様の方法では、非崩壊性単細胞性紅藻細胞から崩壊性細胞を作出することができ、さらに、崩壊性細胞を2週間以上安定に維持することができる。単細胞性紅藻細胞が崩壊性細胞であることの確認方法は、特に限定されないが、例えば、下記に挙げる方法を用いることができる。
また、崩壊性細胞は、比較的温和な処理(中和処理、低張処理、凍結融解処理、界面活性剤処理など)により、細胞を破壊することができる。例えば、2質量%の界面活性剤を含む培地に細胞を懸濁し、界面活性剤の添加後すぐ~5分経過後に細胞が崩壊した場合には、崩壊性細胞であると判定することができる。前記界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。より具体的には、単細胞性紅藻細胞の培養培地に、2質量%となるようにドデシル硫酸ナトリウムを添加し、添加後5分以内に細胞が崩壊した場合には、崩壊性細胞であると判定することができる。細胞が崩壊したか否かは、光学顕微鏡で細胞を観察することにより確認することができる。
また、固体培地で培養している場合、コロニーの形状により崩壊性細胞であるかを判定することもできる。崩壊性細胞は、通常、強固な細胞壁を有さないため、非崩壊性細胞のコロニーと比較して、扁平で、固体培地の表面に広がる形状となる。固体培地上で、このような形状のコロニーが出現した場合には、崩壊性細胞のコロニーであると判定することができる。
崩壊性単細胞性紅藻を通常の培地で培養した場合、非崩壊性細胞に回帰する細胞が出現し、非崩壊性細胞が増殖してくる。そのため、5日程度の間隔で崩壊性細胞を選択して継代を繰り返す必要がある。一方、本態様の方法によれば、非崩壊性細胞に回帰する細胞の出現を抑制して、継代を行わなくても、崩壊性細胞を、2週間を超えて(好ましくは1カ月以上)維持することができる。
本発明の第2の態様は、浸透圧調整剤を80mM以上含有する、崩壊性単細胞性紅藻用培地である。
単細胞性紅藻として、Galdieria sulphuraria CCCryo127-00株(以下、「CCCryo127-00株」ともいう)を用いた。
基礎培地として、Gross培地を用いた。Gross培地の組成を表1に示す。また、Gross培地に用いるFe-EDTA Solution及びTrace Elementsの組成を、表2及び表3にそれぞれ示す。
2質量%の界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))を含むGross培地に細胞を懸濁し、崩壊する細胞を崩壊性細胞と判断した。細胞の崩壊は、光学顕微鏡を用いた観察により確認した。光学顕微鏡による観察は、SDSの添加後すぐに行った。また、崩壊性細胞が多数を占めるコロニーは、非崩壊性細胞から形成されるコロニーと比較して、扁平で、寒天培地の表面に広がる形状となる(図1参照:矢印が崩壊性細胞のコロニー。その中心部分には非崩壊性細胞が一部残っている)。そこで、寒天培地上のコロニーの形態も、崩壊性細胞であるかの判断に用いた。
崩壊性細胞の安定的な維持に、浸透圧が影響する可能性を検討するために、浸透圧調整剤としてソルビトールを用いて、培地の浸透圧を調整した。CCCryo127-00株の崩壊性細胞のコロニーから崩壊性細胞を採取し、18%ソルビトール+Gross 1.5%寒天培地に植え継いだ。その後、40℃、暗所、大気雰囲気下で1~2カ月培養した。培養期間中、崩壊性細胞のコロニーは維持されていた(図2)。この結果から、培地中の浸透圧を高くすることにより、崩壊性細胞を2週間超安定して維持できることが確認された。
表4に示す浸透圧調整剤を1~50質量%となるようにGross培地又は1%グルコース+Gross培地に添加した。さらに、前記各培地に1.5質量%の寒天を添加して、1.5%寒天培地をそれぞれ作製した。これらの寒天培地に、CCCryo127-00株の崩壊性細胞を播種し、40℃、暗所、大気雰囲気下で1カ月間以上培養した。培養期間中、寒天培地上のコロニーの形態を観察し、崩壊性細胞のコロニーが維持されているかを確認した。また、コロニーの大きさに基づいて、崩壊性細胞の増殖を評価した。その結果を、以下の評価基準に基づいて、表4に示した。
A:崩壊性細胞の維持期間が1カ月以上
B:崩壊性細胞の維持期間が2週間超1カ月未満
C:崩壊性細胞の維持期間が2週間以内
N:増殖しない
D:培養できない(死滅)
-:未実施
非崩壊性細胞のコロニーに回帰した例を図4に示す。図4は、1%ソルビトール+Gross 1.5%寒天培地で、2週間培養したプレートである。
崩壊性細胞のコロニーが増殖した例を図5に示す。図5は、18%ソルビトール+Gross 1.5%寒天培地で培養したプレートである。左の写真は培養開始時のプレートであり、右の写真は培養3週間後のプレートである。
CCCryo127-00株の非崩壊性細胞を、18%ソルビトール+Gross 1.5%寒天培地に播種した。その後、40℃、暗所、大気雰囲気下で培養した。培養期間中、崩壊性細胞のコロニーが出現するかを確認した。
その結果、2週間程度で、崩壊性細胞のコロニーが出現した(図6、矢印が崩壊性細胞のコロニー)。崩壊性細胞のコロニーから細胞を採取し、18%ソルビトール+Gross 1.5%寒天培地に植え継いだ。植え継いだ培地でも、1カ月以上崩壊性細胞のコロニーが維持できることが確認された(図6)。
CCCryo127-00株の崩壊性細胞を、18%ソルビトール+Gross液体培地に播種した。その後、40℃、暗所、大気雰囲気下で培養した。その結果、崩壊性細胞を維持したまま良好に増殖することが確認された(図7)。
Claims (15)
- 単細胞性紅藻細胞を、浸透圧調整剤を80mM以上含有する培地中で培養することと、
前記培養後、崩壊性の細胞を採取することと、を含み、
前記浸透圧調整剤が、単糖(グルコースを除く)、二糖(スクロースを除く)、糖アルコール(グリセロールを除く)、アミノ酸、及び金属塩(ナトリウム塩を除く)からなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記単細胞性紅藻が、ガルデリア属藻類であり、
前記浸透圧調整剤が単糖(グルコースを除く)又は二糖(スクロースを除く)である場合、前記培地中の浸透圧調整剤の濃度は、1.4M以下であり、
前記浸透圧調整剤が糖アルコール(グリセロールを除く)である場合、前記培地中の浸透圧調整剤の濃度は、1M以下であり、
前記浸透圧調整剤がアミノ酸である場合、前記培地中の浸透圧調整剤の濃度は、2M以下であり、
前記浸透圧調整剤が金属塩(ナトリウム塩を除く)である場合、前記培地中の浸透圧調整剤の濃度は、2M以下である、
崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。 - 単細胞性紅藻細胞を、浸透圧が150~2610mOsm/kg以上である培地中で培養することと、
前記培養後、崩壊性の細胞を採取することと、を含み、
前記培地が、単糖(グルコースを除く)、二糖(スクロースを除く)、糖アルコール(グリセロールを除く)、アミノ酸、及び金属塩(ナトリウム塩を除く)からなる群より選択される少なくとも一種の浸透圧調整剤を含み、
前記単細胞性紅藻が、ガルデリア属藻類である、
崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。 - 前記浸透圧調整剤が、単糖(グルコースを除く)、二糖(スクロースを除く)、糖アルコール(グリセロールを除く)、及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
- 前記単細胞性紅藻細胞が、非崩壊性細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
- 前記非崩壊性細胞が、倍数体の細胞である、請求項4に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
- 前記単細胞性紅藻細胞が、崩壊性細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
- 崩壊性単細胞性紅藻細胞を、崩壊性細胞のまま維持する方法である、請求項6に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
- 崩壊性単細胞性紅藻細胞を、増殖させる方法である、請求項6に記載の崩壊性単細胞性紅藻の製造方法。
- 浸透圧調整剤を80mM以上含有し、
前記浸透圧調整剤が、単糖(グルコースを除く)、二糖(スクロースを除く)、糖アルコール(グリセロールを除く)、アミノ酸、及び金属塩(ナトリウム塩を除く)からなる群より選択される少なくとも一種である、崩壊性単細胞性紅藻用培地であって、
前記単細胞性紅藻が、ガルデリア属藻類であり、
前記浸透圧調整剤が単糖(グルコースを除く)又は二糖(スクロースを除く)である場合、前記培地中の浸透圧調整剤の濃度は、1.4M以下であり、
前記浸透圧調整剤が糖アルコール(グリセロールを除く)である場合、前記培地中の浸透圧調整剤の濃度は、1M以下であり、
前記浸透圧調整剤がアミノ酸である場合、前記培地中の浸透圧調整剤の濃度は、2M以下であり、
前記浸透圧調整剤が金属塩(ナトリウム塩を除く)である場合、前記培地中の浸透圧調整剤の濃度は、2M以下である、
崩壊性単細胞性紅藻用培地。 - 浸透圧が150~2610mOsm/kg以上であり、
単糖(グルコースを除く)、二糖(スクロースを除く)、糖アルコール(グリセロールを除く)、アミノ酸、及び金属塩(ナトリウム塩を除く)からなる群より選択される少なくとも一種の浸透圧調整剤を含み、
前記単細胞性紅藻が、ガルデリア属藻類である、
崩壊性単細胞性紅藻用培地。 - 浸透圧調整剤が、単糖(グルコースを除く)、二糖(スクロースを除く)、糖アルコール(グリセロールを除く)、及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項9又は10に記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
- 非崩壊性単細胞性紅藻細胞から崩壊性単細胞性紅藻細胞を作出するために用いられる、請求項9~11のいずれか一項に記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
- 前記非崩壊性単細胞性紅藻細胞が、倍数体の単細胞性紅藻細胞である、請求項12に記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
- 崩壊性単細胞性紅藻細胞を、崩壊性細胞のまま維持するために用いられる、請求項9~11のいずれか一項に記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
- 崩壊性単細胞性紅藻細胞を、増殖させるために用いられる、請求項9~11のいずれか一項に記載の崩壊性単細胞性紅藻用培地。
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