JP7232601B2 - 自動車用ドアのシール構造 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用ドアに設けられるシール構造に関し、特に、ガラスランとベルトライン部との間をシールする構造の技術分野に属する。
従来より、ウインドガラスの周縁部を支持するウインドフレームを備えた自動車用ドアがあり、ウインドフレームには、ウインドガラスの周縁部に接触するシール材からなる前側及び後側ガラスランが上下方向に延びるように設けられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されている自動車用ドアのベルトライン部には、ガラスランとは別体のインナーウエザーストリップが該ベルトライン部に沿って車両の前後方向に延びるように設けられている。そして、インナーウエザーストリップは、その前部と後部が前側ガラスラン及び後側ガラスランに接触した状態でドアパネルに組み付けられている。
特許文献1のインナーウエザーストリップは、上方シールリップと下方シールリップとを備えており、上方及び下方シールリップはウインドガラスの車室内面に摺接するようになっている。上方シールリップの前端部には、ガラスランに接触する端面壁が設けられている。端面壁は、押出成形により形成したインナーウエザーストリップの長手方向端部をプレスカットした後、その長手方向端部を射出成形型に挿入して射出成形によりインナーウエザーストリップの端末に形成されている。
特開2017-144990号公報
ところで、特許文献1のインナーウエザーストリップでは、上方及び下方シールリップを設けて共にウインドガラスに摺接させることによって二重のシール構造となるようにしている。
しかしながら、車室外の騒音の車室内への侵入経路について検討すると、インナーウエザーストリップとウインドガラスとの間だけではなく、インナーウエザーストリップとガラスランとの間からの騒音の侵入も問題になる場合がある。すなわち、車室外の騒音が自動車用ドアの内部に侵入すると、インナーウエザーストリップとガラスランとの間を通って車室内に侵入し、乗員の側方において車室内に放射されることになり、乗員の耳に届きやすい。
特許文献1では、インナーウエザーストリップの上方シールリップの前端部に射出成形による端面壁を設けているので、端壁面をガラスランに接触するような形状に成形して、上方シールリップの前端部とガラスランとの間をシールすることが可能であると考えられる。
ところが、下方シールリップの前端部には射出成形による端面壁が設けられておらず、押出成形部をプレスカットしただけなので、ガラスランとの間には隙間ができてしまい、シール性を確保するのが難しい。つまり、上方シールリップと下方シールリップとを設けているが、ガラスランとの間に関しては上方シールリップのみでシールしていることになり、二重のシール構造とはなっていない。このため、高い遮音性が得られないおそれがある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガラスランとベルトライン部に設けられるシール材とを別体にする場合に、ベルトライン部のシール材とガラスランとの間のシール性を高めて高い遮音性を得ることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、ガラスランとベルトライン部に設けられるシール材との間に二重シール構造を設けるようにした。
第1の発明は、昇降するウインドガラスを支持する自動車用ドアのウインドフレームに上下方向に延びるように組み付けられ、該ウインドガラスの縁部に摺接するガラスランと、上記ガラスランとは別体とされ、上記自動車用ドアのベルトライン部の内周側フランジにおける上記ウインドガラスよりも車室内側に、車両前後方向に延びるように組み付けられるベルトラインシール材とを備えた自動車用ドアのシール構造において、上記ガラスランは、上記ウインドフレームの内部において車室内側に配置される内側壁部と、該内側壁部の車室外面に設けられ、上記ウインドガラスの車室内面に摺接する内側シールリップを有し、上記ベルトラインシール材には、車両前後方向に延び、上記ウインドガラスの車室内面に摺接する上側シールリップ及び下側シールリップが互いに上下方向に間隔をあけて設けられるとともに、上記内周側フランジよりも車室外側に位置する車室外側壁部と、該車室外側壁部の上部に連続する上壁部とが設けられ、上記ベルトラインシール材の車両前後方向の一端部には、開閉動作する金型で成形され、上記ガラスランに対して車両前後方向から接触する型成形部が、上記上側シールリップから上記車室外側壁部を介して上記下側シールリップまで連続して設けられ、上記型成形部は、上記下側シールリップの車両前後方向の一端部から上方へ突出するように形成されるとともに、上記ガラスランに対して車両前後方向から接触する下側突出部と、上記車室外側壁部の車両前後方向の一端部に一体成形された中間部と、上記上壁部の車両前後方向の一端部に一体成形されたリップ状の上部とを有し、上記下側突出部と上記中間部との間にある接続部から下方へ延びる切欠部が形成され、上記接続部及び上記上部は、上記内側シールリップの湾曲面に沿う湾曲面を形成していることを特徴とする。
この構成によれば、ガラスランがウインドフレームに組み付けられ、ベルトラインシール材がベルトライン部に組み付けられると、ベルトラインシール材の上側シールリップ及び下側シールリップがウインドガラスの車室内面にそれぞれ摺接してベルトラインシール材とウインドガラスとの間が二重シールされる。また、ベルトラインシール材の型成形部がガラスランに対して車両前後方向から接触してベルトラインシール材とガラスランとの間がシールされる。このとき、型成形部は上側シールリップから車室外側壁部を介して下側シールリップまで連続しているので、上側シールリップ側においてガラスランとの間がシールされ、下側シールリップ側においてもガラスランとの間がシールされる。これにより、二重のシール構造になるため、高い遮音性が得られる。
また、下側シールリップの一端部から上方へ延びる下側突出部を設けることで、ガラスランとの接触面積が十分に確保されてシール性がより一層高まる。一方、下側シールリップの一端部に上方へ延びる下側突出部を形成すると、金型を上側突出部と下側突出部との間から抜こうとした際に、下側突出部が開きにくく、金型を抜くのが困難になるおそれがある。この発明では、下側突出部と中間部との接続部から下方へ延びる切欠部が形成されているので、金型を上側突出部と下側突出部との間から抜くときに、下側突出部が開きやすくなり、金型が容易に抜けるようになる。
の発明は、上記下側突出部は、上記ウインドガラスへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がるように変形し、上記下側突出部が上記ウインドガラスへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がると、折れ曲がり前に比べて上記切欠部の幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、下側突出部がウインドガラスに接触して上方かつ車室内側へ折れ曲がると切欠部の幅が狭くなるので、シール性が向上する。
の発明は、上記下側突出部が上記ウインドガラスへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がると、上記切欠部の上端が閉じるように形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、下側突出部がウインドガラスに接触して上方かつ車室内側へ折れ曲がると切欠部の上端が閉じるので、連続したシールを形成することができる。
の発明は、上記下側シールリップには、上記ウインドガラスへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がるように変形する起点となる変形起点部が設けられ、上記切欠部の下端は、上記変形起点部と連なっていることを特徴とする。
この構成によれば、切欠部の下端が変形起点部と連なることで、ウインドガラスへの接触時に下側突出部が上方かつ車室内側へ折れ曲がりやすくなる。
の発明は、上記変形起点部は、車両前後方向に延びる凹部で構成され、上記切欠部の下端は、上記凹部と連なっていることを特徴とする。
この構成によれば、切欠部の下端と凹部とが連なることで、ウインドガラスへの接触時に下側突出部が上方かつ車室内側へより一層折れ曲がりやすくなる。
第1の発明によれば、ベルトラインシール材の一端部に、ガラスランに対して車両前後方向から接触する型成形部が上側シールリップから車室外側壁部を介して下側シールリップまで連続して設けられているので、ベルトライン部のシール材とガラスランとの間のシール性を高めることができ、高い遮音性を得ることができる。
また、下側シールリップの一端部から上方へ突出する下側突出部を設けることでシール性をより一層高める場合に、下側突出部と中間部との間にある接続部から下方へ延びる切欠部を形成したので、金型を上側突出部と下側突出部との間から容易に抜くことができる。また、接続部に切欠部があることで、下側シールリップがウインドガラスに摺接するときの力を弱めることができ、ガラス摺動音を抑制することができる。
の発明によれば、下側突出部の上方かつ車室内側への折れ曲がりによって切欠部の幅が狭くなるようにしたので、シール性を高めることができる。
の発明によれば、下側突出部の上方かつ車室内側への折れ曲がりによって切欠部の上端が閉じるので、連続したシールを形成することができる。
の発明によれば、ウインドガラスへの接触時に下側突出部が上方かつ車室内側へ折れ曲がりやすくなる。
の発明によれば、ウインドガラスへの接触時に下側突出部が上方かつ車室内側へより一層折れ曲がりやすくなる。
実施形態に係る自動車用ドアを備えた自動車の左側面図である。 右側リヤドア用インナパネルを車室内側から見た側面図である。 右側リヤドア用ガラスランを車室内側から見た側面図である。 右側リヤドア用ガラスラン及びベルトラインシール材を車室内側から見た側面図である。 図4のベルトラインシール材を車室内側から見た側面図である。 図4におけるA部を拡大して示し、車室外側から見た斜視図である。 図6のベルトラインシール材を前側かつ車室外側から見た斜視図である。 図5におけるVIII-VIII線断面図である。 図6のベルトラインシール材を前側から見た正面図である。 ウインドガラスに接触した状態の図9相当図である。 図9のベルトラインシール材の型成形部の型成形時を説明する断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る自動車100の左側面図である。この自動車100の側部の左右両側には、それぞれフロントドア101とリヤドア102とが配設されている。フロントドア101とリヤドア102は、本発明の自動車用ドアであり、各々の前端部が図示しないヒンジを介して回動可能に車体に取り付けられている。この実施形態では、本発明をリヤドア102に適用した場合について説明するが、これに限らず、フロントドア101に適用することも可能である。また、左右いずれのドア101、102に適用することもできる。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。
(リヤドアの構成)
リヤドア102は、該リヤドア102の略下半部を構成するドア本体103と、略上半部を構成するウインドフレーム104とを有しており、このリヤドア102には、ウインドガラスGが昇降可能に設けられている。ドア本体103の前端部が上記ヒンジを介して車体に取り付けられる。ドア本体103の内部には、ウインドガラスGを昇降動作させるためのウインドレギュレータ(図示せず)やレール等が収容されている。ウインドガラスGは、下降した状態で開状態となり、その大部分がドア本体103の内部に収容される。リヤドア102は、該右側リヤドア102の車室内側を構成するプレス成型品からなるインナパネル(ドアパネル)105(図2に車両右側のものを示す)と、該リヤドア102の車室外側を構成するプレス成型品からなるアウタパネル(ドアパネル)106(図1に車両左側のものを示す)とを備えている。インナパネル105及びアウタパネル106は、例えば鋼鈑等からなるものであり、左右対称形状である。
図1に示すように、ウインドフレーム104は、ウインドガラスGの周縁部を支持する枠状のものであり、サッシュと呼ぶこともできる部材である。ウインドフレーム104によりウインドガラス用開口部108が形成されている。ウインドフレーム104は、前側フレーム縦辺部104aと、後側フレーム縦辺部104bと、フレーム上辺部104cとを有している。前側フレーム縦辺部104aは、リヤドア102の前部において上下方向に延びており、その断面は後側に開放されている。後側フレーム縦辺部104bは、リヤドア102の後部において上下方向に延びている。前側フレーム縦辺部104a及び後側フレーム縦辺部104bの下部はドア本体103の内部に達している。さらに、前側フレーム縦辺部104aと後側フレーム縦辺部104bとの間には、上下方向に延びる支持部材31が後寄りに設けられており、その断面の前側部分は、前側に開放されている。前側フレーム縦辺部104a及び支持部材31は、ウインドガラスGを下降させた際にドア本体103の内部まで案内することができるように構成されている。また、フレーム上辺部104cは、前側フレーム縦辺部104aの上端部から後側フレーム縦辺部104bの上端部まで延びるとともに下側に開放されており、ウインドガラスGの形状に対応して後側へ行くほど下に位置するように傾斜している。
リヤドア102のベルトライン部107は、ウインドガラス用開口部108の下縁部に沿って延びる部分である。この実施形態では、ベルトライン部107が後側へ行くほど上に位置するように、即ち、前側へ向かって下降傾斜しながら延びているが、これは車両のデザイン上の要求によるものであり、略水平に延びていてもよい。図2に示すように、インナパネル105のウインドガラス用開口部108の周縁部、即ち、ウインドフレーム104の内周側には、略全周に亘って内周側フランジ109が設けられており、この内周側フランジ109の下部は前後方向に延びている。
図2に示すように、インナパネル105は、ウインドフレーム104を構成する部分と、ドア本体103を構成する部分とが一体にプレス成形されてなるものである。
リヤドア102には、図3に示すガラスラン10と、図4及び図5に示すベルトラインシール材とを備えたシール構造が設けられている。以下、シール構造の詳細について説明する。
(ガラスランの構成)
次に、図3に示すガラスラン10について説明する。ガラスラン10は、前側ガラスラン11と、後側ガラスラン12と、ガラスラン上辺部13とを備えており、さらに、前側コーナー部14と後側コーナー部15も備えている。前側ガラスラン11は、リヤドア102の前側フレーム縦辺部104aに組み付けられ、ウインドガラスGの前縁部と、前側フレーム縦辺部104aとの間をシールするためのものであり、弾性材で構成されている。この弾性材としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマーや、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴムを挙げることができる。弾性材としては、一般的には非発泡材を使用するが、剛性が確保可能な範囲であれば、軽量化目的で微発泡材を使用してもよい。
後側ガラスラン12は、リヤドア102の支持部材31に組み付けられ、ウインドガラスGの後縁部と、支持部材31との間をシールするためのものであり、前側ガラスラン11と同様な弾性材で構成されている。また、ガラスラン上辺部13は、リヤドア102のフレーム上辺部104cに組み付けられ、ウインドガラスGの上縁部と、フレーム上辺部104cとの間をシールするためのものであり、前側ガラスラン11と同様な弾性材で構成されている。
前側ガラスラン11、後側ガラスラン12及びガラスラン上辺部13は、それぞれ長手方向両端に亘って略同一断面を有するように押し出し成形された部分である。一方、前側コーナー部14及び後側コーナー部15は、開閉動作する金型(図示せず)で成形された部分である。前側コーナー部14は、ガラスラン10の上部において前側に設けられており、前側ガラスラン11の上端部とガラスラン上辺部13の前端部とを接続している。後側コーナー部15は、ガラスラン10の上部において後側に設けられており、後側ガラスラン12の上端部とガラスラン上辺部13の後端部とを接続している。前側コーナー部14と、前側ガラスラン11及びガラスラン上辺部13との境界線を仮想線L1で示し、後側コーナー部15と、後側ガラスラン12及びガラスラン上辺部13との境界線を仮想線L2で示す。
図6に前側ガラスラン11の断面形状を示している。前側ガラスラン11は、前側フレーム縦辺部104a(図2に示す)の内部において車室外側に配置される外側壁部11aと、前側フレーム縦辺部104a(図2に示す)の内部において車室内側に配置される内側壁部11bと、外側壁部11a及び内側壁部11bを連結する連結壁部11cとを有しており、後側に開放する断面形状となっている。外側壁部11a及び内側壁部11bは、前側フレーム縦辺部104aの内面に沿って延びている。外側壁部11aの先端部である後端部には、ウインドガラスGの車室外面に摺接する外側シールリップ11eが設けられている。また、内側壁部11bの車室外面には、ウインドガラスGの車室内面に摺接する内側シールリップ11dが設けられている。内側壁部11bの先端部である後端部11fには、屈曲板部11gが設けられている。ウインドガラスGが昇降すると、前側ガラスラン11がウインドガラスGの前縁部に摺接することになる(ウインドガラスGの図示は省略)。
後側ガラスラン12は、前側ガラスラン11と同様な断面形状を有しており、前側ガラスラン11とは反対に前側に開放する断面形状となっている。ウインドガラスGが昇降すると、後側ガラスラン12がウインドガラスGの後縁部に摺接することになる。ガラスラン上辺部13は、下側に開放する断面形状であり、基本的には前側ガラスラン11や後側ガラスラン12と同様な断面形状である(ガラスラン上辺部13の図示は省略)。
(ベルトラインシール材の構成)
次にベルトラインシール材20について説明する。図5に示すようにベルトラインシール材20は略直線状に形成されており、図4に示すように、リヤドア102への組付状態で、前側ガラスラン11から後側ガラスラン12に亘って延びている。具体的には、図9に仮想線で示すリヤドア102のベルトライン部107の内周側フランジ109にベルトラインシール材20が組み付けられるようになっており、ベルトラインシール材20はウインドガラスGよりも車室内側に位置している。ベルトラインシール材20はベルトライン部107に沿って前後方向に延びている。
図5に示すように、ベルトラインシール材20は、長手方向両端(本例では前後方向両端)に亘って略同一断面を有するように押し出し成形された押出成形部21と、開閉動作する金型(図11に示す)で成形された前側型成形部22と、図示しない開閉動作する金型で成形された後側型成形部23とで構成されている。
図4に示すように、前側型成形部22はベルトラインシール材20の前部に設けられており、押出成形部21の前端部に一体成形されている。前側型成形部22は前側ガラスラン11に対して後側から接触する部分である。前側型成形部22が前側ガラスラン11に接触することで、ベルトラインシール材20と前側ガラスラン11との間のシール性を確保している。前側型成形部22と押出成形部21との境界線を仮想線L3で示している。
後側型成形部23は、ベルトラインシール材20の後部に設けられており、押出成形部21の後端部に一体成形されている。後側型成形部23は、後側ガラスラン12に対して前側から接触する部分である。後側型成形部23が後側ガラスラン12に接触することで、ベルトラインシール材20と後側ガラスラン12との間のシール性を確保している。後側型成形部23と押出成形部21との境界線を仮想線L4で示している。
図5のVIII-VIII線断面図である図8に示すように、ベルトラインシール材20の押出成形部21は、ベルトライン部107の内周側フランジ109(図9に示す)よりも車室内側に位置する車室内側壁部21aと、ベルトライン部107の内周側フランジ109よりも車室外側に位置する車室外側壁部21bと、上壁部21cとを有している。車室内側壁部21a及び車室外側壁部21bは、共に上下方向に延びている。上壁部21cは車室内側壁部21aの上部と車室外側壁部21bの上部とに連続しており、車室内側壁部21a、車室外側壁部21b及び上壁部21cによって下方に開放する断面形状が形成されている。
車室内側壁部21aの下部と車室外側壁部21bの下部との間は下方に開放されている。これにより、ベルトラインシール材20には、ベルトライン部107の内周側フランジ109が挿入されるパネル挿入溝24が下方に開放するように形成されることになる。このパネル挿入溝24は、ベルトラインシール材20の前後方向(長手方向)両端部に亘って形成されている。
車室内側壁部21aの車室外面には、前後方向に延びる一対の内側係止リップ21d、21dが上下方向に間隔をあけて設けられている。また、車室外側壁部21bの車室内面には、前後方向に延びる一対の外側係止凸部21e、21eが上下方向に間隔をあけて設けられている。車室内側壁部21aと車室外側壁部21bの間、即ちパネル挿入溝24に挿入されたベルトライン部107の内周側フランジ109には、内側係止リップ21d、21dが弾接し、外側係止凸部22e、22eが当接することによって係止するようになっている。
車室外側壁部21bの車室外面の上側には、上側接続部21jを介して上側シールリップ21fが設けられ、車室外側壁部21bの車室外面の下側には、下側接続部21kを介して下側シールリップ21gとが設けられ、それぞれ、車室外側へ突出している。上側シールリップ21f及び下側シールリップ21gは、上記ガラスラン10と同様な弾性材で構成されており、前後方向に延びるとともに互いに上下方向に間隔あけて設けられている。上側シールリップ21fは、車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜しており、上側シールリップ21fの車室外側部分がウインドガラスGの車室内面に摺接してシール性が確保されるようになっている。下側シールリップ21gも上側シールリップ21fと同様に車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜しており、下側シールリップ21gの車室外側部分がウインドガラスGの車室内面に摺接してシール性が確保されるようになっている。上側シールリップ21f及び下側シールリップ21gは、ウインドガラスGへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がるように弾性変形する。上側シールリップ21f及び下側シールリップ21gがウインドガラスGの車室内面に摺接することにより、ウインドガラスGの車室内面とベルトラインシール材20との間には二重のシール構造を設けることができる。
下側シールリップ21gの突出方向中間部には、下側シールリップ21gがウインドガラスGへ接触することによって上方かつ車室内側へ折れ曲がるように変形する起点となる変形起点部21hが設けられている。変形起点部21hは、前後方向に延びる凹部で構成されている。変形起点部21hを凹部で構成することにより、ウインドガラスGが下側シールリップ21gに接触したときに、下側シールリップ21gが上方かつ車室内側へ折れ曲がりやすくなる。これにより、下側シールリップ21gがウインドガラスGに摺接するときの力を弱めることができ、ガラス摺動音を抑制することができる。また、上側シールリップ21fにも下側シールリップ21gと同様に、変形起点部21hを設けている。
また、上壁部21cの車室内側には、上方へ突出する上部リップ21iが設けられている。この上部リップ21iは、上側へ行くほど車室外側に位置するように形成されている。
ベルトラインシール材20の押出成形部21の外側壁部11aと内側壁部11bおよび連結壁部11cには、上側シールリップ21f及び下側シールリップ21gを構成する弾性材(例えば、JIS A硬度60度~80度のTPS、TPO等のTPEやEPDM等のゴム)よりも硬い硬質材からなる芯材(図示せず)を設けることができる。芯材を構成する硬質材としては、例えばアルミニウム合金、鋼材、ステンレス鋼、硬質樹脂(例えばタルクやガラス繊維を混合した樹脂)等を使用することができ、長手方向について分断することなく連続しており、組付時に作業者が手で引っ張っても長手方向には寸法変化を起こさない、即ち長手方向に伸縮不能な強度を持っている。一方、前側型成形部22及び後側型成形部23は芯材を有しておらず、弾性材のみで構成されている。
図7に示すように、前側型成形部22は、少なくとも上側シールリップ21fから内側壁部21bを介して下側シールリップ21gまで連続している。すなわち、前側型成形部22は、上側シールリップ21fの前端部に一体成形されて上方へ突出するリップ状の上側突出部22aと、下側シールリップ21gの前端部に一体成形されて上方へ突出するリップ状の下側突出部22bとを有している。
ここで、ベルトラインシール材20の前側型成形部22は、図6に示すような位置関係で前側ガラスラン11に対して突き当てられる。そのため、上側突出部22aと下側突出部22bの前端部はいずれも内側シールリップ11dの湾曲形状に沿わせるために、下側部分から上側部分に行くにつれて前側に突出する湾曲形状に形成されている。
また、図7に示すように、この実施形態では、前側型成形部22が更に、車室外側壁部21bの前端部に一体成形された中間部22cと、上壁部21cの前端部に一体成形されたリップ状の上部22dと、車室内側壁部21aの前端部に一体成形された内側部22eと、上部リップ21iの前端部に一体成形されたリップ部22fとを有している。
中間部22cは、上側突出部22aと下側突出部22bとの間に位置しており、上下方向に延びている。中間部22cの上端部に上側突出部22aの車室内端部が連続し、中間部22cの下端部に下側突出部22bの車室内端部が、左右方向に延びる接続部22gを介して連続している。これにより、上側突出部22a、中間部22c及び下側突出部22bが押出成形部21の前端部において上下方向に連続することになる。
また、上部22dは、左右方向に延びるとともに、上方へ突出するリップ状に形成されている。上部22dの車室外端部は、上側突出部22aの車室内端部と連続している。また、内側部22eは上下方向に延びている。内側部22eの上端部は上部22dの車室内端部と連続している。さらに、リップ部22fの下端部は上部22dの車室内端部と連続している。
ここで、ベルトラインシール材20の前側型成形部22は、図6に示すような位置関係で前側ガラスラン11に対して突き当てられる。そのため、上部22dと接続部22gおよび内側部22eは、いずれも内側シールリップ11dと内側壁部11bの先端部である後端部11fおよび屈曲板部11gで構成される湾曲面に沿わせるために、前端部が湾曲面を形成するような形状とされている。
これにより、上側突出部22a、下側突出部22b、中間部22c、接続部22g、上部22d、内側部22e及びリップ部22fが連続し、押出成形部21の前端部を覆うように前側型成形部22が構成されている。そして、図6に示すように、前側ガラスラン11におけるウインドガラスGよりも車室内側の部分である、内側シールリップ11dと内側壁部11bの先端部である後端部11fおよび屈曲板部11gで構成される湾曲面に、前側型成形部22の前端部の湾曲面が接触して弾性変形し、前側グラスラン11との隙間が極小化するようになっている。
また、図9には図8に示すベルトラインシール材20の押出成形部21の一部分を破線で示す。一部分とは、車室外側壁部21bの車外側面と、下側シールリップ21gの車内側面、および、下側接続部21kの上側面である。すなわち、前側型成形部22の端部の、接続部22gの上側面ラインは、押出成形部21の破線ラインより高い位置としてあり、この部分が左右方向に延びる接続部22gの追加壁部としてある。この追加壁部の車両前後方向の厚さは、前側グラスラン11に弾接した際には、容易に撓み変形可能な程度に設定してある。そのため、接続部22gに追加壁部を設定する事により、前側グラスラン11との隙間がより極小化するようになっている。
この実施形態では、図9に示すように、本発明の特徴となる切欠部22kを前側型成形部22に形成している。すなわち、前側型成形部22の下側突出部22bと中間部22cとの間にある接続部22gから下方へ延びる切欠部22kが形成されている。この切欠部22kは、型抜き性を向上させるためと、ウインドガラスGへの接触時の反力を低下させるために形成されているものである。また、切欠部22kの下端は、押出成形部21の変形起点部21hと連なっている。この実施形態では、変形起点部21hが凹部で構成されているので、凹部と切欠部21kの下端とが連なることになる。
型抜き性向上について図11に基づいて説明する。図11は、前側型成形部22を型成形する金型200の型割状態を示している。金型200は、第1金型201と、第2金型202と、第3金型203と、第4金型204とを備えている。第4金型204は固定型である。第1金型201は矢印300の方向に移動し、第2金型202は矢印301の方向に移動し、第3金型203は矢印302の方向に移動するように、図示しない型駆動装置が設けられている。第1金型201は、前側型成形部22の上面を成形する型である。第2金型202は、上側突出部22aと下側突出部22bとの間に位置するようになっており、上側突出部22aの下面と下側突出部22bの上面を成形する型である。第3金型203は、下側突出部22bの下面を成形する型である。
第1金型201、第2金型202、第3金型203及び第4金型204を型閉じした状態でキャビティに材料を供給し、材料が固まると、第1金型201、第2金型202及び第3金型203をそれぞれ各矢印300、301、302に示す方向に移動させて型開きを行う。このとき、第2金型202は、上側突出部22aと下側突出部22bとの間に位置しているので、矢印301方向に無理やり移動させようとすると、接続部22gが破れたり、下側突出部22bが変形してしまう等の不具合が発生する。
そこで、この実施形態では、接続部22gに切欠部22kを形成しているので、図9に仮想線で示すように、切欠部22kの幅が広がって下側突出部22bを矢印304で示すように、下方かつ車室外側へ容易に変形させることができる。これにより、図11に示す金型の型抜き時において、下側突出部22bが矢印304に示すように下方かつ車室外側へ変形させることが容易になるため、型抜き性が向上する。
また、図9に示すように、ウインドガラスGがベルトラインシール材20に接触していない状態では、接続部22gの切欠部22kの幅が成形時の幅と略等しくなっている。一方、図10に示すように、ウインドガラスGがベルトラインシール材20に接触した状態では、下側突出部22がウインドガラスGへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がることになるので、折れ曲がり前に比べて接続部22gの切欠部22kの幅が狭くなる。この実施形態では、下側突出部22bがウインドガラスGへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がると、切欠部22kの上端が略閉じるように形成されている。尚、下側突出部22bがウインドガラスGへ接触したときに、切欠部22kの上端が僅かに開いていてもよい。
接続部22gに切欠部22kが形成されているので、ウインドガラスGへ接触したときの反力を低下させることができる。これにより、ガラス摺動音を抑制することができる。また、切欠部22kは、ウインドガラスG閉時には、略閉じるような大きさに形成されているため、切欠部22kからの音侵入は、ほとんどない。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る自動車用ドアのシール構造によれば、前側ガラスラン11がウインドフレーム104に組み付けられ、ベルトラインシール材20がベルトライン部107の内周側フランジ109に組み付けられると、ベルトラインシール材20の上側シールリップ21f及び下側シールリップ21gがウインドガラスGの車室内面にそれぞれ摺接してベルトラインシール材20とウインドガラスGとの間が二重シールされる。また、ベルトラインシール材20の前側型成形部22が前側ガラスラン11に対して前後方向から接触してベルトラインシール材20と前側ガラスラン11との間がシールされる。このとき、前側型成形部22は上側シールリップ21fから下側シールリップ21gまで連続しているので、上側シールリップ21f側において前側ガラスラン11との間がシールされ、下側シールリップ21g側においても前側ガラスラン11との間がシールされる。これにより、二重のシール構造になるため、高い遮音性が得られる。
また、下側シールリップ21gの前端部から上方へ延びるリップ状の下側突出部22bを前側型成形部22に設けているので、前側ガラスラン11との接触面積が十分に確保されてシール性がより一層高まる。一方、下側シールリップ21gの前端部に上方へ延びる下側突出部22bを形成すると、図11に示す第2金型202を上側突出部22aと下側突出部22bとの間から抜こうとした際に、下側突出部22bが開きにくく、第2金型202を抜くのが困難になるおそれがある。この実施形態では、下側突出部22bと中間部22cとの間にある接続部22gから下方へ延びる切欠部22kが形成されているので、第2金型202を上側突出部22aと下側突出部22bとの間から抜くときに、下側突出部22bが開きやすくなり、第2金型202が容易に抜けるようになる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
以上説明したように、本発明に係る自動車用ドアのシール構造は、例えば、自動車の側部に配設されるドアにガラスラン及びベルトラインシール材を別々に組み付ける際に適用することができる。
11 前側ガラスラン
20 ベルトラインシール材
21 押出成形部
21f 上側シールリップ
21g 下側シールリップ
21h 変形起点部(凹部)
22 前側型成形部
22g 接続部
22k 切欠部
102 リヤドア(自動車用ドア)
104 ウインドフレーム
107 ベルトライン部
G ウインドガラス

Claims (5)

  1. 昇降するウインドガラスを支持する自動車用ドアのウインドフレームに上下方向に延びるように組み付けられ、該ウインドガラスの縁部に摺接するガラスランと、
    上記ガラスランとは別体とされ、上記自動車用ドアのベルトライン部の内周側フランジにおける上記ウインドガラスよりも車室内側に、車両前後方向に延びるように組み付けられるベルトラインシール材とを備えた自動車用ドアのシール構造において、
    上記ガラスランは、上記ウインドフレームの内部において車室内側に配置される内側壁部と、該内側壁部の車室外面に設けられ、上記ウインドガラスの車室内面に摺接する内側シールリップを有し、
    上記ベルトラインシール材には、車両前後方向に延び、上記ウインドガラスの車室内面に摺接する上側シールリップ及び下側シールリップが互いに上下方向に間隔をあけて設けられるとともに、上記内周側フランジよりも車室外側に位置する車室外側壁部と、該車室外側壁部の上部に連続する上壁部とが設けられ、
    上記ベルトラインシール材の車両前後方向の一端部には、開閉動作する金型で成形され、上記ガラスランに対して車両前後方向から接触する型成形部が、上記上側シールリップから上記車室外側壁部を介して上記下側シールリップまで連続して設けられ
    上記型成形部は、上記下側シールリップの車両前後方向の一端部から上方へ突出するように形成されるとともに、上記ガラスランに対して車両前後方向から接触する下側突出部と、上記車室外側壁部の車両前後方向の一端部に一体成形された中間部と、上記上壁部の車両前後方向の一端部に一体成形されたリップ状の上部とを有し、
    上記下側突出部と上記中間部との間にある接続部から下方へ延びる切欠部が形成され、
    上記接続部及び上記上部は、上記内側シールリップの湾曲面に沿う湾曲面を形成していることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
  2. 請求項に記載の自動車用ドアのシール構造において、
    上記下側突出部は、上記ウインドガラスへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がるように変形し、
    上記下側突出部が上記ウインドガラスへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がると、折れ曲がり前に比べて上記切欠部の幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
  3. 請求項に記載の自動車用ドアのシール構造において、
    上記下側突出部が上記ウインドガラスへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がると、上記切欠部の上端が閉じるように形成されていることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
  4. 請求項からのいずれか1つに記載の自動車用ドアのシール構造において、
    上記下側シールリップには、上記ウインドガラスへの接触によって上方かつ車室内側へ折れ曲がるように変形する起点となる変形起点部が設けられ、
    上記切欠部の下端は、上記変形起点部と連なっていることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
  5. 請求項に記載の自動車用ドアのシール構造において、
    上記変形起点部は、車両前後方向に延びる凹部で構成され、
    上記切欠部の下端は、上記凹部と連なっていることを特徴とする自動車用ドアのシール構造。
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