(検討事項)
実施の形態を説明する前に、本発明者が検討した事項について図を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るブレードラバー11を備えるワイパブレード10を示す斜視図であるが、以下で説明する検討例に係るブレードラバー11dを備えるワイパブレード100を示す斜視図も兼ねている。そのため、便宜上同様の部分または構成要素は、同様の符号で説明することがある。また、図13は、検討例に係るブレードラバーにおいて、長手方向の位置と分布圧との関係を示すグラフである。図14は、検討例に係るブレードラバーを備えるワイパブレードにおいて、図1のX-X’線に相当する位置で切断した構造を示す要部断面図である。
図1に示すように、検討例のワイパブレード100は、ワイパアーム110の先端部に回動自在に装着されるプライマリレバー140と、当該プライマリレバー140の長手方向両端部に回動自在に装着される一対のセカンダリレバー150と、各セカンダリレバー(ブレードホルダ)150に保持されるブレードラバー11dとを備えている。ブレードラバー11dは、ワイパアーム110に設けられたバネ(図示せず)により、ワイパブレード100を介してウィンドシールド(払拭面)120に押し付けられる。
図14に示すように、ブレードラバー11dは、長尺状に形成され、ヘッド部16dと、リップ部17dと、ヘッド部16dおよびリップ部17dを互いに連結する連結部(ネック部)18dとを備えている。ブレードラバー11dの横断面形状は、ブレードラバー11dの長手方向において略同一である。
ヘッド部16dは、断面略台形状に形成され、各セカンダリレバー150に抱え込まれるようにして保持される。ヘッド部16dの短手方向に沿う両側(図中左右側)には、セカンダリレバー150に一体に設けられた一対の保持爪150aが係合する一対の係合溝15が設けられている。
リップ部17dは、その先端側(図中下方側)がウィンドシールド120に接触し、当該ウィンドシールド120の払拭範囲130(図1参照)を往復払拭動作する部分である。
連結部18dは、ヘッド部16dとリップ部17dとを連結するとともに、リップ部17dのヘッド部16dに対する傾動を許容するようになっている。ブレードラバー11の往復払拭動作に伴い、リップ部17dがヘッド部16dに対して傾動できるようになっている。
以上で説明した、図1に示す検討例のワイパブレード100は、いわゆるトーナメント方式のワイパブレードである。すなわち、検討例のワイパブレード100では、ブレードラバー11が、セカンダリレバー150に設けられた4か所の保持爪150aにて支持(保持)される構成となっている。そのため、前述したように、ワイパブレード100がウィンドシールド120に押し付けられる際に、ブレードラバー11dは保持爪150aで支持された状態でウィンドシールド120に押し付けられることになる。
ここで、図1に示すように、ブレードラバー11の長手方向において、セカンダリレバー150の保持爪150aが設けられている位置をそれぞれx1,x2,x3,x4(以下、x1~x4という場合がある。)とする。この際、図13に示すように、ブレードラバーの長手方向の位置と、セカンダリレバー(ブレードホルダ)からウィンドシールド(払拭面)側への押圧力(以下、分布圧という。)との関係をみると、ブレードラバーの長手方向において、分布圧は不均一であって、特にブレードラバーの支持点であるx1~x4の各位置において分布圧が最も大きくなることがわかる。
本発明者は、ブレードラバーの剛性(柔軟性)に注目し、以下の課題を確認している。すなわち、図14に示すブレードラバー11d全体の剛性を高めると、分布圧が高いx1~x4付近の位置において、リップ部17dが倒れにくくなり、接触角(リップ部17dとウィンドシールド120との角度)αが適切な大きさとなる。しかし、ブレードラバー11d全体の剛性を高めてしまうと、分布圧が低いx1~x4付近以外の位置においては、リップ部17dが全く傾かなくなり(接触角αが大きくなりすぎてしまい)、いわゆる立ちビビリが発生してしまう。
逆に、ブレードラバー11d全体の柔軟性を高めると、分布圧が低いx1~x4付近以外の位置においては、リップ部17dが適度に傾き、接触角αが適切な大きさとなる。しかし、ブレードラバー11d全体の柔軟性を高めてしまうと、分布圧が高いx1~x4付近の位置において、ブレードラバー11dがウィンドシールド120に強く押し付けられてしまう結果、リップ部17dが横倒しになり(特に接触角αが12°以下)、いわゆる腹拭きが発生してしまう。
なお、トーナメント方式である検討例のワイパブレード100以外のワイパブレードであっても、ブレードホルダに支持されたブレードラバーが払拭面に押し付けられて払拭する構成を有していれば、ブレードラバーの長手方向における分布圧を均一にすることは難しく、前述した課題が同様に発生する。
以上より、ブレードラバーおよびこれを用いたワイパブレードにおいて、ブレードラバーの剛性および柔軟性を部分的に制御し、ブレードラバー全体で接触角を適切な値とし、払拭性能を向上させることが望まれる。
(第1実施形態)
<第1実施形態に係るブレードラバーの構成および効果>
以下、本発明に係るブレードラバーの実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係るブレードラバーを備えるワイパブレードを示す斜視図である。図2は、図1のX-X’線に相当する位置で切断した構造を示す要部断面図である。図3は、第1実施形態に係るブレードラバーを示す斜視図である。図4は、図3のA-A’線に相当する位置で切断した構造を示す要部断面図である。図5は、図3のB-B’線に相当する位置で切断した構造を示す要部断面図である。図6は、第1実施形態に係る発泡性粒子の一部切り欠き斜視断面図である。
後述するように、第1実施形態に係るブレードラバーは、図1および図2に示すワイパブレード10に適用した場合を例に説明するが、まずは、第1実施形態に係るブレードラバーの主な特徴について説明する。
図4および図5に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11は、ブレードホルダ(例えば図1に示すセカンダリレバー150)に保持されるヘッド部16a,16bと、払拭面(例えば図1に示すウィンドシールド120)を払拭するリップ部17a,17bと、ヘッド部16a,16bとリップ部17a,17bとを連結する連結部(ネック部)18a,18bとを備えている。ブレードラバー11は、ベースポリマ19と発泡剤とを含む発泡エラストマにより構成されている。図4~図6に示すように、前記発泡剤は、熱可塑性樹脂からなる外殻13a,13bと、外殻13a,13bに内包されかつ加熱によって気化する内包物14とにより構成された発泡性粒子12a,12bからなる。
図3~図5に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11は、発泡性粒子12a,12bのうち、発泡した発泡性粒子12bを含む発泡部11bと、発泡していない発泡性粒子12aを含む非発泡部11aとを有し、図4に示すように、発泡していない発泡性粒子12aの外殻13aが架橋されている。
詳細は後述するが、図6に示す発泡性粒子12a,12b,12cのうち、外殻13aが架橋された発泡性粒子を発泡性粒子12aと、発泡した発泡性粒子を発泡性粒子12bと、未反応(未架橋かつ未発泡)の発泡性粒子を発泡性粒子12cと、それぞれ称する。
ここで、「加熱によって気化する」とは、固体または液体である内包物14が、加熱によって蒸発、昇華または熱分解することにより気体になることを意味する。すなわち、「発泡性粒子が発泡する」とは、発泡性粒子12cを加熱した際に、熱可塑性樹脂からなる外殻13cが加熱によって軟化し、かつ、内包物14が加熱によって気化することによって発泡性粒子12c内の圧力が上昇し、外殻13cが膨張することを意味する。発泡した発泡性粒子12bにおいて、内包物14は、(1)そのまま冷却されて内包物14が凝縮した状態で留まるか、(2)外殻13cが膨張した際に生じる亀裂等から脱出するかのいずれかとなる。前記(2)の場合には、外殻13bの内部が空気と置換されて空洞となる。前記(1)および(2)のいずれの場合であっても、発泡した発泡性粒子12bの外殻13bは、冷却によってそのまま硬化し、膨張した状態が維持される。
第1実施形態に係るブレードラバー11は、以上の特徴的な構成を有することで、剛性および柔軟性を両立することができる。以下、その理由について説明する。
今般、本発明者は、図4~図6に示すように、ブレードラバー11を構成する発泡エラストマ中の発泡性粒子12cの外殻13cを架橋することで、発泡性粒子の発泡を抑制できることを見出した。架橋された外殻13aは、網目状構造を有し、分子鎖の動きが抑制されるため、熱変形が抑制される。そのため、架橋された外殻13aを有する発泡性粒子12aを加熱した際に、未架橋の場合に比べて外殻13aが軟化しにくくなり、発泡性粒子12a内の圧力が上昇しても外殻13aが膨張しなくなると考えられる。このように、発泡性粒子の外殻を架橋することで、発泡性粒子の発泡を制御することができる。
従って、図3~図5に示す第1実施形態に係るブレードラバー11にあっては、架橋され発泡していない発泡性粒子12aを含む非発泡部11aが剛性(支持性)を担保し、発泡した発泡性粒子12bを含む発泡部11bが柔軟性(減衰性)を担保することができる。その結果、第1実施形態に係るブレードラバー11にあっては、剛性および柔軟性を両立することができる。
また、図3に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11にあっては、好ましい構成として、長手方向に沿って、第1部分(発泡部)11bと、第1部分11bよりもブレードホルダ(例えば図1に示すセカンダリレバー150)から払拭面(例えば図1に示すウィンドシールド120)側への押圧力(分布圧)が大きい第2部分(非発泡部)11aとを有している。すなわち、第2部分11aが非発泡部11aとして、第1部分11bが発泡部11bとして、それぞれ構成されている。具体的には、ブレードホルダ(図1に示すセカンダリレバー150に設けられた保持爪150a)は、ブレードラバー11のうちの第2部分(非発泡部)11aにおいて、ブレードラバー11(より具体的には図2に示すヘッド部16a)を支持している。
図1に示す第1実施形態に係るブレードラバー11にあっては、前述した検討例のブレードラバー11dと同様に、図13に示すように、ブレードラバー11の長手方向において、分布圧が不均一であり、第1部分(位置x1~x4付近以外)11bと、第1部分よりもブレードホルダ(例えば図1に示すセカンダリレバー150)から払拭面(例えば図1に示すウィンドシールド120)側への押圧力(分布圧)が大きい第2部分(位置x1~x4付近)11aとを有している。
この点、図3および図4に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11にあっては、分布圧が比較的高い第2部分(位置x1~x4付近)11aが、剛性(支持性)を担保する非発泡部11aとして構成されているため、ブレードラバー11がウィンドシールド120に強く押し付けられたとしても、リップ部17aが横倒しになること、すなわち腹拭きの発生を防止することができる。そして、図3および図5に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11にあっては、分布圧が比較的低い第1部分(位置x1~x4付近以外)11bが、柔軟性(減衰性)を担保する発泡部11bとして構成されているため、リップ部17bが適度に傾いて、立ちビビリの発生を防止することができる。
また、図3に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11にあっては、長手方向の領域ごとに、剛性が必要な第2部分(位置x1~x4付近)に非発泡部11aを、柔軟性が必要な第1部分(位置x1~x4付近以外)に発泡部11bをそれぞれ配置している。そのため、第1実施形態に係るブレードラバー11にあっては、剛性および柔軟性の位置制御が可能となる。
また、図3に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11において、発泡部11bと非発泡部11aとは一体に形成されていることが好ましい。発泡部11bと非発泡部11aとを別体で形成し接合した場合は、接合部分に応力が集中し、当該接合部分が破壊される可能性がある。この点、第1実施形態に係るブレードラバー11において、発泡部11bと非発泡部11aとが一体に形成されている場合には、ブレードラバー11全体の強度を低下させることなく、柔軟性を高めた部分と剛性を高めた部分との両方を有するブレードラバー11を実現することができる。
<第1実施形態に係る発泡エラストマの構成>
以下、図3~図5に示す第1実施形態に係るブレードラバー11を構成する発泡エラストマについて図面を参照しながら詳細に説明する。
前述したように、図6に示す発泡性粒子12a,12b,12cのうち、外殻13aが架橋された発泡性粒子を発泡性粒子12aと、発泡した発泡性粒子を発泡性粒子12bと、未反応(未架橋かつ未発泡)の発泡性粒子を発泡性粒子12cと、それぞれ称する。このような発泡性粒子からなる発泡剤の例としては、マイクロカプセル型の発泡剤が挙げられる。
図6に示すように、発泡した発泡性粒子12bの粒子径(外径、長径)φ2は、未反応の発泡性粒子12cの粒子径(外径、長径)φ1よりも大きい。一方、後述の図4に示すように、外殻13aが架橋された発泡性粒子12aの粒子径φ1は、未反応の発泡性粒子12cの粒子径φ1と略同一である。未反応の発泡性粒子12cの粒子径φ1は、例えば5μm以上50μm以下であり、外殻13cの厚さφ3は、例えば2μm以上15μm以下である。また、発泡した発泡性粒子12bの粒子径φ2は、例えば50μm以上300μm以下である。
外殻13a,13b,13cを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、または、アクリル系共重合体等が挙げられる。また、内包物14としては、例えば、イソブタンやイソペンタン等の炭化水素、またはこれらのハロゲン化物、あるいはテトラアルキルシラン等が挙げられる。内包物14は、前記した成分を単独で含んでいてもよいし、2種類以上の前記した成分が併用されていてもよい。
第1実施形態に係る発泡性粒子12cの外殻13cの架橋方法は、特に限定されるものではないが、後述するブレードラバー11の製造方法で説明するように、外殻13cの原材料、あるいは、発泡エラストマの温度または流動性の制限を受けない放射線架橋法が好ましい。
また、第1実施形態に係る発泡性粒子12aは、(1)未架橋の発泡性粒子12cをベースポリマ19と混練させた後に、発泡性粒子12cの外殻13cを架橋してもよいし、(2)発泡性粒子12cの外殻13cを予め架橋して、架橋された外殻13aを有する発泡性粒子12aを準備し、この発泡性粒子12aをベースポリマ19と混練させてもよい。ここで、ベースポリマ19に、架橋された外殻13cを有する発泡性粒子12aを含有させることにより、補強効果により硬度(剛性)を向上することができる。また、比重が低い発泡剤を選択すれば軽量化することもできる。なお、非発泡部11aと発泡部11bとの位置(領域)制御を精度良くかつ容易にするという観点からは、前記(1)の製造方法が好ましい。そのため、後述するブレードラバー11の製造方法では、前記(1)の製造方法を例に説明する。
第1実施形態に係る発泡エラストマにおいて、発泡剤の含有量(添加量)は特に限定されるものではないが、ベースポリマ100質量部に対して、発泡剤を2質量部以上20質量部以下含むことが好ましく、発泡剤を5質量部以上10質量部以下含むことがより好ましい。ベースポリマ100質量部に対する発泡剤の含有量が2質量部未満であると、十分な柔軟性が得られず、発泡剤の含有量が20質量部を超えると、発泡エラストマの加工性の低下や表面荒れ等の問題が生じる。ベースポリマ100質量部に対して、発泡剤を5質量部以上10質量部以下含むことで、発泡エラストマに適切な柔軟性を付与することができる。
第1実施形態に係る発泡エラストマを構成するベースポリマは特に限定されるものではないが、1種または2種以上のゴム(熱硬化性エラストマ)又は熱可塑性エラストマが使用される。ベースポリマとしてゴムを用いる場合には、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。耐老化性、耐オゾン性および耐候性の観点から、ベースポリマとしては、非ジエン系ゴムであるシリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン-プロピレンゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴムが好ましい。
また、ベースポリマとして熱可塑性エラストマを用いる場合は、フッ素系エラストマ、ポリスチレン系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマ、ポリ塩化ビニル系エラストマ、ポリウレタン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、ポリエステル系エラストマが好ましい。
また、第1実施形態に係る発泡エラストマは、さらに架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、過酸化物架橋剤が挙げられ、中でも2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。架橋剤は、ベースポリマ19を架橋するためのものである。このように発泡エラストマに架橋剤を添加した場合には、発泡エラストマ全体としての剛性を高めることができる。架橋剤の添加量は特に限定されるものではないが、ベースポリマ100質量部に対して、通常架橋剤を0.1質量部以上10質量部以下含むことが好ましい。
なお、第1実施形態に係る発泡エラストマは、発泡性粒子以外の発泡剤(例えば、熱分解性発泡剤)を含んでいてもよい。この場合には、図5に示す発泡部11bにおいて、発泡性粒子と発泡性粒子以外の発泡剤との両方が発泡している一方、図4に示す非発泡部11aにおいて、発泡性粒子以外の発泡剤のみが発泡していることになる。こうすることで、発泡エラストマ全体として柔軟性を有させるとともに、発泡エラストマの非発泡部11aにも部分的に剛性を有させることができる。
<第1実施形態に係るブレードラバーの製造方法>
以下、第1実施形態に係るブレードラバーの製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。図7は、第1実施形態に係るブレードラバーの製造工程を示すフローである。図8は、第1実施形態に係るブレードラバーの製造工程中、放射線照射工程を示す模式図である。図9は、図8のC-C’線に相当する位置で切断した構造を示す要部断面図である。
第1実施形態に係るブレードラバー11の製造方法は、ベースポリマと発泡剤とを混練し混練物を生成する工程(図7に示す混練工程S1)と、混練工程S1の後に、前記混練物を成形し、図8および図9に示す発泡エラストマ用組成物11cを形成する工程(図7に示す成形工程S2)と、成形工程S2の後に、図8に示すように、発泡エラストマ用組成物11cに放射線を照射する工程(図7に示す放射線照射工程S3)と、放射線照射工程S3の後に、発泡エラストマ用組成物11cを加熱し、発泡エラストマ用組成物11c中の発泡性粒子12cを発泡させ、発泡エラストマからなるブレードラバー11を形成する工程(図7に示す発泡工程S4)とを有している。ここで、「発泡エラストマ用組成物」とは、「発泡剤が発泡する前の状態の発泡エラストマ」を意味している。
以下では、第1実施形態に係るブレードラバー11の製造方法の各工程について、より詳細に説明する。
図7に示す第1実施形態に係る混練工程S1では、好ましくはベースポリマ19と、発泡剤である発泡性粒子12cと、必要に応じて架橋剤と、必要に応じて後述の共架橋剤とを、発泡性粒子12cの内包物14が気化する温度よりも低い温度で混練し混練物を生成する。そして、図7に示す第1実施形態に係る成形工程S2では、好ましくは、前記混練物を、発泡性粒子12cの内包物14が気化する温度よりも低い温度で成形し、発泡エラストマ用組成物11cを形成する。こうすることで、放射線照射工程S3において発泡性粒子12cの外殻13cを架橋する前に発泡性粒子12cが発泡するという事態を確実に防止できる。
ここで、図7に示す第1実施形態に係る混練工程S1および成形工程S2の具体的な内容について、ベースポリマとしてゴム(熱硬化性エラストマ)を用いる場合と、熱可塑性エラストマを用いる場合とに分けて説明する。
まず、ベースポリマとしてゴムを用いる場合は、図7に示す第1実施形態に係る混練工程S1では、ベースポリマ19と、発泡剤である発泡性粒子12cと、架橋剤と、必要に応じて後述の共架橋剤とを混練し、混練物を生成する。そして、図7に示す第1実施形態に係る成形工程S2では、前記混練物を加熱して、架橋剤によりベースポリマ19を架橋して硬化させ、発泡エラストマ用組成物11cとして成形する(図8参照)。
一方、ベースポリマとして熱可塑性エラストマを用いる場合は、図7に示す第1実施形態に係る混練工程S1では、ベースポリマ19と、発泡剤である発泡性粒子12cと、必要に応じて後述の共架橋剤とを混練し、混練物を生成する。そして、図7に示す第1実施形態に係る成形工程S2では、前記混練物を冷却して固化させ、発泡エラストマ用組成物11cとして成形する(図8参照)。なお、図7に示す第1実施形態に係る発泡工程S4では、発泡エラストマ用組成物11cへの加熱を部分的に、または瞬時に行うことによって、発泡エラストマ用組成物11cの熱による溶融を抑制できる。また、成形工程S2で使用した成形型に発泡エラストマ用組成物11cを入れたまま発泡工程S4を行うことで、発泡エラストマ用組成物11cの溶融による変形を抑制できる。
ここで、図7に示す第1実施形態に係る成形工程S2の後であって、放射線照射工程S3の前における発泡エラストマ用組成物11cについて、詳細に説明する。図9に示すように、第1実施形態に係る発泡エラストマ用組成物11cは、ブレードホルダ(例えば図1に示すセカンダリレバー150)に保持されるヘッド部16cと、払拭面(例えば図1に示すウィンドシールド120)を払拭するリップ部17cと、ヘッド部16cとリップ部17cとを連結する連結部18cとを備えている。発泡エラストマ用組成物11cは、ベースポリマ19と発泡性粒子12cとを含んでいる。発泡性粒子12cは、熱可塑性樹脂からなる外殻13cと、外殻13cに内包されかつ加熱によって気化する内包物14とにより構成されている。
次に、第1実施形態に係る放射線照射工程S3では、図8に示すように、発泡性粒子12cのうちの一部、すなわち、発泡エラストマ用組成物11cの領域A1に含まれる発泡性粒子12cに放射線50を照射して、当該発泡性粒子12cの外殻13cを架橋する。その結果、発泡エラストマ用組成物11cの領域A1には、架橋された外殻13aを有する発泡性粒子12aが含まれることになる。一方、発泡エラストマ用組成物11cの領域B1に含まれる発泡性粒子12cには放射線50が照射されないため、当該発泡性粒子12cの外殻13cは架橋されない。
また、第1実施形態に係るブレードラバー11の製造方法において、好ましくは、図7に示す混練工程S1および成形工程S2の後であって、放射線照射工程S3の前に、図8に示すように、発泡エラストマ用組成物11cの表面を放射線遮蔽層52で覆う工程を有している。放射線遮蔽層52は、放射線50を反射または吸収等する材料からなり、具体例としては鉛等の金属や耐放射線性プラスチック等が挙げられる。これにより、放射線照射工程S3では、発泡エラストマ用組成物11cのうち放射線遮蔽層52で覆われない領域A1に含まれる発泡性粒子12cの外殻13cが放射線50により架橋される。なお、図8に示す放射線遮蔽層52は、図7に示す発泡工程S4の前に、発泡エラストマ用組成物11cから除去してもよいし、場合によって、完成した発泡エラストマにそのまま残存させてもよい。
なお、図7に示す第1実施形態に係る成形工程S2において、例えば、発泡エラストマ用組成物11cを押出成形により成形する場合には、図8に示すように、連続的に押し出される発泡エラストマ用組成物11cに対して、放射線50を照射することもできる。すなわち、図7に示す成形工程S2と放射線照射工程S3とをインラインで行うことが可能である。こうすることで、ブレードラバーの製造コストを低減することができる。
また、図7に示す第1実施形態に係る放射線照射工程S3において、図8に示す放射線50としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線、紫外線、X線等の電離性放射線が挙げられ、中でも電子線が好ましい。電子線は粒子線であり、エネルギー付与率(微小な距離を進む間に物質に与えるエネルギーの割合)が高く、かつ、加速方向への高い指向性を有し、吸収線量率が高いためである。
第1実施形態において、図8に示す放射線50に電子線を用いた場合において、電子線の加速電圧は、例えば、10kV以上500kV以下であり、電子線の照射線量は、例えば、10kGy以上500kGy以下である。
次に、第1実施形態に係る発泡工程S4では、発泡エラストマ用組成物11cの領域B1に含まれる発泡性粒子12cを発泡させる。前述したように、発泡エラストマ用組成物11cの領域A1に含まれる架橋された外殻13aを有する発泡性粒子12aは、加熱しても発泡しないため、発泡エラストマ用組成物11c全体を加熱した場合に、領域B1に含まれる発泡性粒子12cは発泡する一方、領域A1に含まれる発泡性粒子12aは発泡しない。
以上より、第1実施形態に係るブレードラバー11の製造方法によれば、ブレードラバー11を構成する発泡エラストマにおいて、発泡した発泡性粒子12bを含み、柔軟性を担保する発泡部11bと、架橋され発泡していない発泡性粒子12aを含み、剛性を担保する非発泡部11aとを一体に形成することができる。その結果、ブレードラバー全体の強度を低下させることなく、柔軟性を高めた部分と剛性を高めた部分との両方を有するブレードラバー11を実現することができる。
また、第1実施形態に係るブレードラバー11の製造方法によれば、発泡エラストマ用組成物11cの任意の平面領域(領域A1)に含まれる発泡性粒子12cを架橋して、発泡を制御することができるため、発泡エラストマにおいて柔軟性および剛性の位置制御が可能となる。従って、混練工程S1において、発泡剤をベースポリマ全体に満遍なく混ぜたとしても、後工程である放射線照射工程S3において発泡させる箇所を選択できる。よって、混練工程S1において、発泡剤を所定の箇所のみに混ぜるなどの作業が不要となり、製造工程を簡易化できる。
特に、第1実施形態に係るブレードラバー11の製造方法において、図7に示す混練工程S1および成形工程S2の後であって、放射線照射工程S3の前に、図8に示すように、発泡エラストマ用組成物11cの表面を放射線遮蔽層52で覆う工程を有する場合には、放射線遮蔽層52によって、発泡エラストマ用組成物11cに対する放射線50の照射領域(領域A1)を自由に選択して、その領域に含まれる発泡性粒子12cの外殻13cを架橋して、発泡を制御することができる。その結果、ブレードラバーにおいて柔軟性および剛性の位置制御を簡便かつ容易に行うことができる。さらに、放射線遮蔽層52をμmオーダーで形成することによって、ブレードラバーにおいて、柔軟性および剛性のμmオーダーでの位置制御が可能となる。
<第1実施形態に係るワイパブレード>
以下、第1実施形態に係るブレードラバーの適用例であるワイパブレードについて、詳細に説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係るワイパブレード10は、自動車等の車両(図示せず)に搭載されるワイパ装置(図示せず)を構成するものである。第1実施形態に係るワイパブレード10は、ワイパアーム110の先端部に装着され、ワイパアーム110の基端部は車両に回動自在に設けられたワイパピボット(図示せず)に固定されている。
第1実施形態に係るワイパ装置は、駆動源としてのワイパモータ(図示せず)を備え、当該ワイパモータは、リンク機構(図示せず)を介してワイパピボットを揺動運動させるようにしている。これによりワイパアーム110は中心線Yを中心に揺動運動する。そして、ワイパブレード10は、ワイパアーム110の揺動運動に伴い、ウィンドシールド120上に形成された払拭範囲130を矢印FWD方向および矢印REV方向に往復払拭動作し、払拭面としてのウィンドシールド120に付着した雨水や埃等を払拭するようになっている。
第1実施形態に係るワイパブレード10は、いわゆるトーナメント方式のワイパブレードである。ワイパブレード10は、ワイパアーム110の先端部に回動自在に装着されるプライマリレバー140と、当該プライマリレバー140の長手方向両端部に回動自在に装着される一対のセカンダリレバー150と、各セカンダリレバー150に保持されるブレードラバー11とを備えている。
このように、プライマリレバー140をワイパアーム110に、また、各セカンダリレバー150をプライマリレバー140に、それぞれ回動自在に装着することで、所定の曲率半径を有するウィンドシールド120に対して、ブレードラバー11は追従して弾性変形可能となっている。ここで、各セカンダリレバー150は、それぞれ第1実施形態におけるブレードホルダを構成している。
図2に示すように、ブレードラバー11は、ヘッド部16a,16b,リップ部17a,17bおよび連結部(ネック部)18a,18bを備えている。ブレードラバー11は、その長手方向(図1中左右方向)に沿うよう棒状に形成され、ブレードラバー11の断面形状は、その長手方向に沿う全域で同一形状となっている。
第1実施形態に係るヘッド部16a,16bは、略断面矩形に形成され、各セカンダリレバー150に抱え込まれるようにして保持される。ヘッド部16a,16bの短手方向に沿う両側(幅方向両側、図中左右側)には、セカンダリレバー150に一体に設けられた一対の保持爪150aが係合する一対の係合溝15が設けられている。
なお、ヘッド部16a,16bは、リップ部17a,17bをウィンドシールド120に密着させるためのバーティブラ(板バネ)を有していてもよい。
第1実施形態に係るリップ部17a,17bは、その先端側(図中下方側)がウィンドシールド120に接触し、当該ウィンドシールド120の払拭範囲130(図1参照)を往復払拭動作する部分となっている。リップ部17a,17bの断面形状は、その先端側が先細りとなった略三角形形状に形成され、これによりリップ部17a,17bのウィンドシールド120側の剛性を弱めて柔軟性を持たせ、ひいてはウィンドシールド120に密着できるようにしている。
第1実施形態に係るヘッド部16a,16bとリップ部17a,17bとの間には連結部18a,18bが設けられている。連結部18a,18bは、ヘッド部16a,16bおよびリップ部17a,17bを連結するとともに、リップ部17a,17bのヘッド部16a,16bに対する傾動を許容するようになっている。連結部18a,18bの短手方向に沿う幅寸法は、ヘッド部16a,16bやリップ部17a,17bの短手方向に沿う幅寸法よりも小さい幅寸法に設定され、これにより連結部18a,18bは充分な柔軟性を備えている。これにより、図中二点鎖線で示すように、ブレードラバー11の往復払拭動作に伴い、リップ部17a,17bがヘッド部16a,16bに対して図中矢印SWの方向に容易に傾動(接触角α)できるようになっている。
なお、図示しないが、リップ部17a,17bの先端側(ウィンドシールド120側)には、その表面を覆うようにして塩素処理層やコーティング層、もしくはグラフト層が設けられていてもよい。こうすることで、ブレードラバー11のウィンドシールド120に対する摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減させることができ、その結果、ブレードラバー11の追従性向上と、安定した往復払拭動作を実現できる。
以上で説明したように、図1~図3に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11を適用したワイパブレード10にあっては、一例として、ブレードラバー11が、セカンダリレバー150に設けられた4か所の保持爪150aにて支持(保持)される構成となっている。すなわち、セカンダリレバー150に設けられた保持爪150aは、ブレードラバー11のうちの第2部分(位置x1~x4付近)11aにおいて、ブレードラバー11のヘッド部16aを支持している。そのため、ワイパブレード10がウィンドシールド120に押し付けられる際に、ブレードラバー11は4つの保持爪150aで支持された状態でウィンドシールド120に押し付けられることになる。
この点、図3および図4に示すように、第1実施形態に係るワイパブレード10にあっては、分布圧が比較的高い第2部分(位置x1~x4付近)11aが、剛性(支持性)を担保する非発泡部11aとして構成されているため、ブレードラバー11がウィンドシールド120に強く押し付けられたとしても、リップ部17aが横倒しになること、すなわち腹拭きの発生を防止することができる。そして、図3および図5に示すように、第1実施形態に係るワイパブレード10にあっては、分布圧が比較的低い第1部分(位置x1~x4付近以外)11bが、柔軟性(減衰性)を担保する発泡部11bとして構成されているため、リップ部17bが適度に傾いて、立ちビビリの発生を防止することができる。
なお、図1~図3に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11にあっては、その長手方向において、非発泡部(第2部分)11aが、セカンダリレバー150に設けられた保持爪150aと、ブレードラバー11のヘッド部16aとの接触点(すなわち、ブレードラバーとブレードホルダとの接触点)の近傍に配置されているが、少なくとも非発泡部(第2部分)11aが前記接触点を含むように配置されていればよい。腹拭きの発生をより効果的に防止するためには、ブレードラバー11のうち、非発泡部(第2部分)11aの比率が高くなるように、すなわち前記接触点の周囲の領域をできるだけ多く含むように非発泡部(第2部分)11aを配置することが好ましい。一方、立ちビビリの発生をより効果的に防止するためには、ブレードラバー11のうち、非発泡部(第2部分)11aの比率が高くなりすぎないように、すなわち前記接触点のごく近傍のみの領域を含むように非発泡部(第2部分)11aを配置することが好ましい。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係るブレードラバーについて説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態のブレードラバーと同一または同様の部分または構成要素は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さず、省略する(後述する変形例についても同様)。
<第2実施形態に係るブレードラバーの構成>
図10は、第2実施形態に係るブレードラバーを示す斜視図である。図11は、図10のD-D’線に相当する位置で切断した構造を示す要部断面図である。図12は、第2実施形態に係るブレードラバーにおいて、長手方向の位置と分布圧との関係を示すグラフである。
図10に示すように、第2実施形態に係るブレードラバー21は、基本的には第1実施形態に係るブレードラバーと同様に構成されている。ただし、図3に示すように、第1実施形態に係るブレードラバー11は、長手方向の領域ごとに、柔軟性が必要な部分(領域B1)に発泡部11bを、剛性が必要な部分(領域A1)に非発泡部11aをそれぞれ配置していたのに対して、図10に示すように、第2実施形態に係るブレードラバー21は、短手方向の領域ごとに、発泡部21bおよび非発泡部21aをそれぞれ配置している点で、第1実施形態に係るブレードラバーと相違している。
より具体的には、図11に示すように、第2実施形態に係るブレードラバー21は、ブレードホルダ(例えば図1に示すセカンダリレバー150)に保持されるヘッド部16bと、払拭面(例えば図1に示すウィンドシールド120)を払拭するリップ部17aと、ヘッド部16bとリップ部17aとを連結する連結部18aとを備えている。すなわち、ヘッド部16bが発泡部21bとして、リップ部17aおよび連結部18aが非発泡部21aとして、それぞれ構成されている。従って、第2実施形態に係るブレードラバー21にあっては、第1実施形態と同様に、剛性および柔軟性を両立することができる。
前述したように、図1に示す検討例のブレードラバー11dでは、図13に示すように、ブレードラバー11dの長手方向において、分布圧が不均一であった。この点、図10および図11に示すように、第2実施形態に係るブレードラバー21にあっては、ブレードホルダ(例えば図1に示すセカンダリレバー150)によって支持されるヘッド部16bを、柔軟性を担保する発泡部21bとして構成することにより、位置x1~x4付近に高く作用する分布圧を分散し、図12に示すように、ブレードラバー21の長手方向において分布圧を均等にすることができる。
そして、図10および図11に示すように、第2実施形態に係るブレードラバー21にあっては、リップ部17aおよび連結部18aを、剛性を担保する非発泡部21aとして構成することにより、ブレードラバー21がウィンドシールド120に押し付けられた際に、リップ部17aが横倒しになること、すなわち腹拭きの発生を防止することができる。
以上より、第2実施形態に係るブレードラバー21にあっては、リップ部17aの接触角を適切に設定することができ、腹拭きまたは立ちビビリの発生を防止することができる。
なお、第2実施形態に係るブレードラバー21にあっては、ヘッド部16bが発泡部21bとして、リップ部17aおよび連結部18aが非発泡部21aとして、それぞれ構成されている場合を例に説明したが、ブレードラバー21の往復払拭動作時の変形等を考慮して、ヘッド部および連結部が発泡部21bとして、リップ部が非発泡部21aとして、それぞれ構成されていてもよい。
なお、第2実施形態に係るブレードラバー21の製造方法は、第1実施形態に係るブレードラバー11の製造方法と同様であるため、その説明を省略する。
また、第2実施形態に係るブレードラバー21は、第1実施形態に係るブレードラバー11と同様に、ワイパブレード10に採用することが可能である。
(変形例)
以下、前記第1実施形態および前記第2実施形態の変形例について説明する。
<変形例に係るブレードラバーの構成>
以下、変形例に係るブレードラバーを構成する発泡エラストマの構成について説明する。
変形例に係る発泡エラストマは、基本的には第1実施形態の発泡エラストマと同様に構成されているが、変形例に係る発泡エラストマは、さらに共架橋剤を含む点で、第1実施形態の発泡エラストマと相違している。共架橋剤とは、架橋助剤ともよばれ、化学架橋剤(例えば過酸化物架橋剤)または放射線によって、ベースポリマ19とともに架橋される物質のことをいう。すなわち、共架橋剤を添加することによって、ベースポリマ同士だけでなく、ベースポリマと共架橋剤との間、および/または共架橋剤同士がそれぞれ架橋されることになる。
変形例に係る共架橋剤は、特に限定されるものではないが、「分子内に2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物」を用いることが好ましい。「分子内に2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物」とは、分子内にラジカル重合性の不飽和結合であるエチレン性不飽和結合(-C=C-)を複数有する共架橋剤(架橋助剤)であり、前述した架橋剤によっては架橋反応が促進されない一方、図8に示す放射線50によって架橋反応が促進されるという特性を有する。
分子内に2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、以下に示す2官能性化合物、および/または3官能以上の多官能性化合物が挙げられる。なお、以下、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」および「アクリレート」から選ばれる1種以上を指す。
2官能性化合物としては、例えば、シリコーンジ(メタ)アクリレート、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネートのジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリセリンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、2,2’-ジ(ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールのジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、ペンタンジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(グリシジルオキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。
多官能性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシメチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシプロピル)イソシアヌレート、トリアリルトリメリット酸、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
これらの分子内に2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物は、共架橋剤として、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
変形例のブレードラバーにあっては、非発泡部11aを構成する発泡エラストマが、ベースポリマと共架橋剤とが架橋された組成物である一方、発泡部11bを構成する発泡エラストマが、ベースポリマと共架橋剤とが架橋されていない組成物である。こうすることで、変形例に係るブレードラバーにおいて、発泡部11bの柔軟性を低下させることなく、非発泡部11aの剛性を共架橋剤により高めることができる。
<変形例に係るブレードラバーの製造方法>
以下、変形例に係るブレードラバーの製造方法について説明する。
変形例に係るブレードラバーの製造方法は、基本的には第1実施形態および第2実施形態の発泡エラストマと同様であるが、前述した共架橋剤を含むことによる相違点を以下説明する。
図7に示す混練工程S1では、ベースポリマと発泡剤と架橋剤と共架橋剤とを混練し、混練物を生成する。図7に示す成形工程S2では、前記混練物を成形して、発泡エラストマ用組成物を形成する。ここで、必須ではないが、第1実施形態と同様に、放射線照射工程S3の前に、発泡エラストマ用組成物の表面を放射線遮蔽層(図8参照)で覆う工程を有することが好ましい。
そして、図7に示す放射線照射工程S3では、発泡エラストマ用組成物に放射線を照射し、発泡エラストマ用組成物のうち放射線遮蔽層で覆われない領域に含まれる発泡性粒子の外殻を架橋する。ここで、前述したように、共架橋剤が、放射線によって架橋反応が促進されるという特性を有している場合、図7に示す放射線照射工程S3では、放射線遮蔽層で覆われない領域において、ベースポリマと共架橋剤とが放射線によって架橋される。一方、発泡エラストマ用組成物のうち放射線遮蔽層で覆われた領域では、放射線が照射されないため、ベースポリマと共架橋剤との架橋反応は進行しない。
その後、図7に示す発泡工程S4では、第1実施形態と同様に、発泡エラストマ用組成物を加熱することによって、発泡エラストマ用組成物の放射線が照射された領域に含まれる発泡性粒子12aが発泡しない一方で、放射線が照射されなかった領域に含まれる発泡性粒子12cが発泡する。ここで、共架橋剤は放射線によって架橋反応を促進するが、加熱では反応しないため、発泡工程S4において共架橋剤によりゴム全体の架橋が進み硬化するということはない。
以上より、変形例に係るブレードラバーの製造方法によれば、非発泡部11aを、ベースポリマと共架橋剤とが架橋された発泡エラストマにより構成することができる一方、発泡部11bをベースポリマと共架橋剤とが架橋されていない発泡エラストマにより構成することができる。その結果、変形例に係るブレードラバーにおいて、発泡部11bの柔軟性を低下させることなく、非発泡部11aの剛性を共架橋剤により高めることができる。そして、変形例に係るブレードラバーの製造方法によれば、発泡エラストマ用組成物の任意の平面領域において、発泡制御に加え、共架橋剤による剛性制御も可能となる。
本発明は前記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
図1に示すように、本実施形態ではセカンダリレバーに保持爪が設けられている場合を例に説明したが、これに限定されず、例えばプライマリレバーに保持爪が設けられていてもよい。さらに、セカンダリレバーを有さず、プライマリレバーのみを備える形態としてもよい。これらの場合、プライマリレバーが本発明におけるブレードホルダに相当し、ブレードラバーの長手方向において、第2部分(非発泡部)が、プライマリレバーに設けられた保持爪と、ブレードラバーのヘッド部との接触点の近傍に配置される。
また、セカンダリレバーおよびプライマリレバーと、保持爪とを別体に設けてもよい。例えば、このようなワイパブレードは、ブレードラバーのヘッド部を短手方向に沿う両側(幅方向両側)から挟持するカバー部材をさらに備え、カバー部材は、払拭面側からプライマリレバーまたはバーティブラに係合する係合部を有する。この場合は、セカンダリレバー、プライマリレバーおよびカバー部材が本発明におけるブレードホルダに相当し、さらにカバー部材が保持爪に相当する。このようなワイパブレードにおいても、本発明の適用が可能である。