以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のフォトマスクブランクは、波長が250nm以下、特に200nm以下の露光光、例えば、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)などでパターン転写が行われるフォトマスクを製造するための素材として好適に用いられ、露光光でパターン転写が行われるフォトマスクの素材となるフォトマスクブランクである。
本発明のフォトマスクブランクは、透明基板と、クロム含有膜とを含む。クロム含有膜は、透明基板上に、直接形成されていても、1又は2以上の光学膜を介して形成されていてもよい。透明基板としては、基板の種類や基板サイズに特に制限はないが、露光波長として用いる波長で透明である石英基板などが適用され、例えば、SEMI規格において規定されている、6インチ角、厚さ0.25インチの6025基板と呼ばれる透明基板が好適である。6025基板は、SI単位系を用いた場合、通常、152mm角、厚さ6.35mmの透明基板と表記される。
本発明のクロム含有膜は、酸素を含む塩素系ドライエッチング(酸素ガスと塩素ガスとを含むエッチングガスを用いたドライエッチング)でエッチングされる材料であり、クロムと酸素と炭素を含有するクロム化合物で構成される。クロム含有膜を構成するクロム化合物は、クロム含有膜全体として、クロムと酸素と炭素との他に窒素を含んでいてもよく、更に水素、ハロゲン等の他の軽元素、アルゴンなどを含んでいてもよい。クロム化合物として具体的には、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)などが挙げられる。
このクロム含有膜には、以下の(1)~(3)の3種の態様が含まれる。
(1)クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ透明基板に向かって、クロム含有率が増加し、炭素含有率が減少している領域(A)のみからなるもの。
(2)領域(A)と、領域(A)の透明基板側又は透明基板から離間する側に接して形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に一定である領域(B)とからなるもの。
(3)領域(A)又は領域(A)及び(B)と、クロム含有膜の透明基板から最も離間する側に形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ透明基板に向かって、酸素含有率が減少している領域(C)とからなるもの。
ドライエッチングにおけるパターンとスペースの形状は、以下のように考えることができる。ドライエッチングを実施すると、原理的に考えれば、膜質が均一でも透明基板側においてスペース幅が狭くなる台形となる。この理由は、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとしてエッチングした場合、レジスト膜のパターンもゆっくりとエッチングされてしまい、スペースとなる幅が徐々に拡がっていくためである。また、ハードマスク膜のような、レジスト膜と比べてエッチングされにくい膜をエッチングマスクとしてエッチングした場合であっても、エッチング時間に応じてサイドエッチングが進むため、透明基板側ほどスペース幅が狭くなる。
ところが、実際のエッチングにおいては、透明基板の基板面(膜が形成される面)に垂直な方向(被エッチング膜の膜厚方向)のエッチング速度と、透明基板の基板面に水平な方向(被エッチング膜の膜面方向)のエッチング速度は、必ずしも一致しない。特に、レジスト膜や、ハードマスク膜などに接する部分、特にハードマスク膜に接する部分においては、水平方向へのエッチングに寄与するエッチャントに比べて、垂直方向へのエッチングに寄与するエッチャントの方が多くなってしまうため、サイドエッチング量が少なくなる。この傾向は、レジスト膜や、ハードマスク膜により近いほど顕著である。そのため、このような場合、エッチング終了後に得られた膜のパターンの断面形状は、単純な台形ではなく、膜厚方向の中央部付近で括れた形状となる。
従って、レジスト膜や、ハードマスク膜などに接する部分においては、レジスト膜や、ハードマスク膜により近いほど、透明基板の基板面に垂直な方向のエッチング速度に対して、透明基板の基板面に水平な方向のエッチング速度の比率が高くなるように、被エッチング膜を構成することが有効である。
本発明においては、クロム含有膜を、上述した態様(1)、(2)又は(3)のように構成することで、ドライエッチング、特に、ドライエッチングを行う対象基板(フォトマスクブランク)にバイアス電圧を印加するドライエッチングを用いてクロム含有膜のパターンを形成する場合に、クロム含有膜のパターンの断面形状をより垂直に形成することができる。
領域(A)~(C)を構成するクロム化合物は、個々に、クロムと酸素と炭素との他に窒素を含んでいてもよく、更に水素、ハロゲン等の他の軽元素、アルゴンなどを含んでいてもよい。クロム化合物として具体的には、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)などが挙げられる。
領域(A)において、クロム含有率(at%)の最大値と最小値の差は3以上であることが好ましい。この差の上限は、通常25以下であり、好ましくは20以下である。また、領域(A)において、炭素含有率(at%)の最大値と最小値の差は5以上、特に7以上であることが好ましい。この差の上限は、通常25以下であり、好ましくは20以下である。
領域(A)のクロム含有率は、最も低い部分で45at%以上、特に55at%以上であることが好ましく、最も高い部分で80at%以下、特に75at%以下であることが好ましい。領域(A)の酸素含有率は、最も低い部分で7at%以上、特に10at%以上であることが好ましく、最も高い部分で40at%以下、特に35at%以下であることが好ましい。領域(A)の炭素含有率は、最も低い部分で1at%以上、特に3at%以上であることが好ましく、最も高い部分で25at%以下、特に22at%以下であることが好ましい。領域(A)を構成するクロム化合物は、更に窒素を含有していてもよい。窒素を含有している場合、窒素含有率が厚さ方向に連続的に変化し、透明基板に向かって、窒素含有率が増加していることが好ましい。この場合、窒素含有率(at%)の最大値と最小値の差は1以上、特に2以上であることが好ましい。この差の上限は、通常20以下であり、好ましくは15以下である。また、領域(A)の窒素含有率は、最も低い部分で1at%以上であることが好ましく、最も高い部分で25at%以下、特にサイドエッチング量を低減したいときには、10at%以下、更には5at%以下であることが好ましい。
領域(A)の厚さは、クロム含有膜全体の30%以上、特に50%以上、とりわけ70%以上であることが好ましい。
領域(B)は、透明基板側のみに形成されていても、透明基板から離間する側に形成されていても、双方の側に形成されていてもよいが、透明基板から離間する側のみに形成されていることがより好ましい。
領域(B)のクロム含有率は、45at%以上、特に50at%以上であることが好ましく、70at%以下、特に65at%以下であることが好ましい。領域(B)の酸素含有率は、10at%以上、特に15at%以上であることが好ましく、30at%以下、特に25at%以下であることが好ましい。領域(B)の炭素含有率は、10at%以上、特に15at%以上であることが好ましく、30at%以下、特に25at%以下であることが好ましい。領域(B)を構成するクロム化合物は、更に窒素を含有していてもよい。窒素を含有している場合、領域(B)の窒素含有率は、1at%以上、特に2at%以上であることが好ましく、25at%以下、特にサイドエッチング量を低減したいときには、10at%以下、更には5at%以下であることが好ましい。
領域(B)の厚さ(透明基板側及び透明基板から離間する側の双方に形成されている場合は合計の厚さ)は、(C)領域を含まない場合は、クロム含有膜の領域(A)以外の残部であり、(C)領域を含む場合は、クロム含有膜の領域(A)及び(C)以外の残部である。
領域(C)は、クロム含有膜の透明基板から離間する側の表面部が自然酸化、熱処理、洗浄などによって酸化されることにより形成された領域とすることができる。領域(C)において、酸素含有率(at%)の最大値と最小値の差は10以上、特に15以上であることが好ましい。この差の上限は、通常50以下であり、好ましくは45以下である。
領域(C)のクロム含有率は、最も低い部分で25at%以上、特に30at%以上であることが好ましく、最も高い部分で80at%以下、特に75at%以下であることが好ましい。領域(C)の酸素含有率は、最も低い部分で5at%以上、特に10at%以上であることが好ましく、最も高い部分で40at%以下、特に35at%以下であることが好ましい。領域(C)の炭素含有率は、最も低い部分で1at%以上、特に2at%以上であることが好ましく、最も高い部分で30at%以下、特に25at%以下であることが好ましい。領域(C)を構成するクロム化合物は、更に窒素を含有していてもよい。この場合、領域(C)の窒素含有率は、最も低い部分で1at%以上、特に2at%以上であることが好ましく、最も高い部分で20at%以下、特にサイドエッチング量を低減したいときには、10at%以下、更には5at%以下であることが好ましい。
領域(C)の厚さは、クロム含有膜全体の30%以下、特に10%以下、とりわけ8%以下であることが好ましい。具体的には、5nm未満であることが好ましく、より好ましくは4nm以下、さらに好ましくは3nm以下である。
クロム含有膜の膜厚(全体の厚さ)は50nm以下、特に48nm以下であることが好ましく、35nm以上、特に40nm以上であることが好ましい。また、クロム含有膜の露光光に対する光学濃度は1.5以上、特に1.8以上であることが好ましい。更に、クロム含有膜のシート抵抗は、10,000Ω/□以下、特に8,000Ω/□以下であることが好ましい。このようにすることで、レジスト膜のパターンを電子線描画により形成する際のチャージアップを防止することができる。
本発明のクロム含有膜は、いずれの機能を有する膜でもよく、例えば、遮光膜、反射防止膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜などの光学膜でも、ハードマスク膜(エッチングマスク膜)、エッチングストッパ膜などの加工補助膜でもよい。また、光学膜には、フォトマスクとした後に、フォトマスク上に残して光学膜として機能させる膜であれば、ハードマスク膜やエッチングストッパ膜などとして機能する加工補助膜も含まれる。なお、本発明において、エッチングストッパ膜は、通常、フォトマスクとしたときに、フォトマスクに残存する膜であるが、ハードマスク膜は、フォトマスクとしたときに、フォトマスクに残存させる膜であっても、フォトマスクから完全に除去される膜、いわゆる犠牲膜であってもよい。
クロム含有膜が、遮光膜などの光学機能を有する膜である場合や、ハードマスク膜である場合、その光学機能と共に、高解像性と高パターン転写精度とが求められるが、本発明のクロム含有膜からは、光学濃度などの光学機能を満たし、酸素を含む塩素系ドライエッチングにおいて高いエッチング速度を有し、かつ厚さ方向に線幅変動の少ない優れた断面形状を有するマスクパターンを得ることができる。
本発明のフォトマスクブランクは、クロム含有膜が、フォトマスクに加工する過程において、化学増幅型レジスト等のフォトレジスト膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターン形成されるフォトマスクブランクとして好適である。
このようなフォトマスクブランクとしては、例えば、透明基板上に直接クロム含有膜が形成されているもの(第1の態様)を挙げることができる。図1は、本発明のフォトマスクブランクの第1の態様の一例を示す断面図である。このフォトマスクブランク101は、透明基板1上にクロム含有膜2が形成されている。このフォトマスクブランク101をフォトマスクに加工する際には、通常、クロム含有膜2の上に電子線レジスト膜を形成して、電子線描画が施される。第1の態様のフォトマスクブランクは、バイナリマスクブランクとすることができ、その場合、クロム含有膜を、遮光膜とすることが好適である。
第1の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜の場合、露光光に対するクロム含有膜の光学濃度は2.5以上、特に2.8以上で、3.5以下、特に3.2以下であることが好ましい。また、第1の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜の場合、クロム含有膜の膜厚は、露光光がArFエキシマレーザの場合は75nm以下、特に70nm以下、とりわけ65nm以下であることが好ましく、50nm以上であることが好ましい。また、露光光がKrFエキシマレーザの場合は、90nm以下、特に80nm以下、とりわけ75nm以下であることが好ましく、55nm以上であることが好ましい。
クロム含有膜が、フォトマスクに加工する過程において、化学増幅型レジスト等のフォトレジスト膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターン形成されるフォトマスクブランクとしては、透明基板上に、1又は2以上の光学膜を介してクロム含有膜が形成されているもの(第2の態様)も好適である。このようなフォトマスクブランクは、例えば、クロム含有膜のパターンが、光学膜のエッチングにおいてハードマスクとして機能する場合、本発明のクロム含有膜から高精度のパターンが形成でき、クロム含有膜のパターンを用いた光学膜のパターンニングにおいても、高精度なパターン形成が可能となることから、特に有利である。この場合のクロム含有膜と光学膜との組み合わせには、遮光膜と、ハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜との組み合わせや、ハードマスク膜と遮光膜との組み合わせなどが挙げられる。
図2は、本発明のフォトマスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図である。このフォトマスクブランク102は、透明基板1上に、透明基板1側から、光学膜3及びクロム含有膜2が順に積層されている。このフォトマスクブランク102をフォトマスクに加工する際には、通常、クロム含有膜2の上に電子線レジスト膜を形成して、電子線描画が施される。第2の態様のフォトマスクブランクは、位相シフトマスクブランクとすることができ、その場合、光学膜を位相シフト膜、クロム含有膜を、遮光膜とすることが好適である。
本発明のフォトマスクブランクは、クロム含有膜が、フォトマスクに加工する過程において、ハードマスク膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターン形成されるフォトマスクブランクとしても好適である。このようなフォトマスクブランクとしては、クロム含有膜上、具体的には、クロム含有膜の透明基板から離間する側に、好ましくはクロム含有膜と接して形成されたハードマスク膜を含むもの(第3の態様)を挙げることができる。
図3は、本発明のフォトマスクブランクの第3の態様の一例を示す断面図である。このフォトマスクブランク103は、透明基板1上に、透明基板1側から、光学膜3、クロム含有膜2及びハードマスク膜4が順に積層されている。このフォトマスクブランク103をフォトマスクに加工する際には、通常、ハードマスク膜4の上に電子線レジスト膜を形成して、電子線描画が施される。第3の態様のフォトマスクブランクは、位相シフトマスクブランクとすることができ、その場合、光学膜を位相シフト膜、クロム含有膜を遮光膜とすることが好適である。
第3の態様のフォトマスクブランクのように、クロム含有膜のエッチングにおけるエッチングマスクとなるハードマスク膜を設けることで、フォトレジスト膜を薄くすることができ、パターンの更なる微細化に対応することが可能となる。このハードマスク膜は、通常、クロム含有膜の犠牲膜として用いられ、その場合、フォトマスクを作製するプロセスの中で完全に除去されるが、ハードマスク膜は、フォトマスクを作製するプロセスの中で完全に除去せずに、その一部を残すこともできる。
クロム含有膜が、透明基板上に光学膜(クロム含有膜とは、同種の光学膜であっても異種の光学膜であってもよい。)を介して形成されている場合、この光学膜は、いずれの機能を有する膜でもよく、例えば、遮光膜、反射防止膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜などが挙げられる。また、光学膜には、フォトマスクとした後に、フォトマスク上に残して光学膜として機能させる膜であれば、エッチングストッパ膜やハードマスク膜などとして機能する加工補助膜も含まれる。
透明基板とクロム含有膜との間に形成される光学膜を構成する材料は、必要とする光学特性やエッチング特性、更には、導電性等の電気特性に応じて、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などの遷移金属、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)などの金属、それらの合金、それら金属又は合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物等の化合物などの材料が用いられる。これらの金属のなかでは、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)が、特に好適に用いられる。
第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、光学膜がハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜である場合、位相シフト膜は、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料、又はケイ素と、遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、特にモリブデンとを含有する材料で形成された位相シフト膜が好適である。このような材料としては、ケイ素単体、ケイ素と、酸素、窒素、炭素などの軽元素、特に、酸素及び窒素の一方又は双方とを含む化合物、更に、これらに遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、例えば、モリブデン、タンタル、タングステン、ジルコニウム、チタンなど、特にモリブデンを添加した化合物が好適である。特に、位相シフト膜がハーフトーン位相シフト膜である場合、ハーフトーン位相シフト膜も光学濃度を有するため、ハーフトーン位相シフト膜を用いないフォトマスクブランクと比べて、クロム含有膜の膜厚を薄くすることができる。
また、第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜、光学膜がハーフトーン位相シフト膜の場合、露光光に対するクロム含有膜の光学濃度は1.5以上、特に1.8以上で、2.6以下、特に2.5以下、とりわけ2.4以下であることが好ましく、クロム含有膜及び位相シフト膜の露光光に対する光学濃度の合計は2.5以上、特に2.8以上で、3.5以下、特に3.2以下であることが好ましい。クロム含有膜及びハーフトーン位相シフト膜の光学濃度をこのようにすることにより、必要な遮光性が得られる。
更に、第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜、光学膜がハーフトーン位相シフト膜の場合、クロム含有膜の膜厚は、露光光がArFエキシマレーザの場合は60nm以下、特に50nm以下、更に47nm以下、とりわけ44nm以下であることが好ましく、35nm以上であることが好ましい。また、露光光がKrFエキシマレーザの場合は、80nm以下、特に70nm以下、とりわけ65nm以下であることが好ましく、50nm以上であることが好ましい。
一方、ハーフトーン位相シフト膜は、露光光に対する透過率が、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、特に好ましくは11%以上で、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下に設定される。ハーフトーン位相シフト膜の膜厚は、露光光がArFエキシマレーザの場合は80nm以下、特に70nm以下であることが好ましく、50nm以上、特に60nm以上であることが好ましい。また、露光光がKrFエキシマレーザの場合は、110nm以下、特に100nm以下であることが好ましく、70nm以上、特に80nm以上であることが好ましい。
第2の態様のフォトマスクブランクの場合、他の例として、フォトマスクブランクをバイナリマスクブランクとすることもでき、その場合、光学膜を遮光膜、クロム含有膜を、ハードマスク膜とすることが好適である。
波長が250nm以下の露光光でパターン転写が行われるフォトマスクを製造するためのフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が用いられるが、クロム含有膜を、抵抗率が低く、導電性が高いものとする場合は、金属性が高いクロム含有膜が好適である。一方、金属性が低いクロム含有膜は、クロム含有膜の光学特性やエッチング特性の調整における効果が高い。また、金属性が低いクロム含有膜は、透過率の向上に効果的である。金属性が高いクロム含有膜では、反射率が高い膜となり、フォトマスクブランクやフォトマスクの欠陥検査などにおいて不利となる場合があるが、金属性が低いクロム含有膜は、このような場合に適用される反射防止膜としても好適である。
第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、光学膜が遮光膜である場合、遮光膜は、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料、又はケイ素と、遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、特にモリブデンとを含有する材料で形成された遮光膜が好適である。このような材料としては、上述した位相シフト膜の材料として例示したものと同様の材料が挙げられる。
また、第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、光学膜が遮光膜である場合、遮光膜は露光光に対する光学濃度が、通常2.5以上、特に2.8以上で、3.5以下、特に3.2以下に設定されるが、遮光膜の膜厚は、露光光がArFエキシマレーザの場合は80nm以下、特に70nm以下、とりわけ65nm以下であることが好ましく、50nm以上、特に55nm以上であることが好ましい。また、露光光がKrFエキシマレーザの場合は、100nm以下、特に90nm以下、とりわけ80nm以下であることが好ましく、55nm以上、特に60nm以上であることが好ましい。一方、クロム含有膜がハードマスク膜の場合、クロム含有膜の膜厚は3nm以上、特に5nm以上であればよく、20nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。
一方、第3の態様のフォトマスクブランクにおいて、ハードマスク膜の材料としては、例えば、フッ素系ドライエッチングで速やかにエッチングされ、酸素を含む塩素系ドライエッチングではエッチング速度が極端に遅い材料、即ち、実質的にエッチングされない材料が用いられる。このような材料としては、ケイ素を含有する材料が好適であり、例えば、ケイ素単体、ケイ素と、酸素、窒素、炭素などの軽元素を含む化合物、更に、これらに、遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、例えば、モリブデン、タンタル、タングステン、ジルコニウム、チタンなどを添加した化合物が好適である。
第3の態様のフォトマスクブランクにおいて、光学膜がハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜である場合、位相シフト膜は、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料、又はケイ素と、遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、特にモリブデンとを含有する材料で形成された位相シフト膜が好適である。このような材料としては、第2の態様のフォトマスクブランクにおいて例示したものと同様の材料が挙げられる。特に、位相シフト膜がハーフトーン位相シフト膜である場合、ハーフトーン位相シフト膜も光学濃度を有するため、ハーフトーン位相シフト膜を用いないフォトマスクブランクと比べて、クロム含有膜の膜厚を薄くすることができる。
また、第3の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜、光学膜がハーフトーン位相シフト膜の場合、露光光に対するクロム含有膜の光学濃度、クロム含有膜及び位相シフト膜の露光光に対する光学濃度の合計、クロム含有膜の膜厚、ハーフトーン位相シフト膜の透過率、及びハーフトーン位相シフト膜の膜厚は、上述した第2の態様と同様の範囲が好適である。
更に、第3の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜、光学膜がハーフトーン位相シフト膜であり、ハードマスク膜が、フォトマスクを作製するプロセスの中で、完全に除去せずに、その一部を残す膜、即ち、フォトマスク上に残して光学膜として機能させる膜である場合は、露光光に対するクロム含有膜、位相シフト膜及びハードマスク膜の露光光に対する光学濃度の合計は2.5以上、特に2.8以上で、3.5以下、特に3.2以下であることが特に好ましい。一方、ハードマスク膜の膜厚は3nm以上、特に5nm以上であればよく、15nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。
なお、本発明のフォトマスクブランクは、クロム含有膜の透明基板から離間する側に、好ましくはクロム含有膜に接して、他の光学膜を設けたものであってもよい。この他の光学膜としては、例えば、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料又は遷移金属及びケイ素を含有する材料からなる遮光膜が好適である。このような遮光膜を設けた場合、クロム含有膜を、エッチングストッパ膜や、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜とすることができる。
本発明のフォトマスクブランクのクロム含有膜、光学膜、加工補助膜は、光学特性の面内の均一性が高く、かつ欠陥が少ない膜を得ることができるスパッタリングにより成膜することが好ましい。
クロム含有膜を成膜する場合は、例えば、ターゲットとして、クロムターゲットを用い、スパッタリングガスとして、酸素ガス(O2)、酸化炭素ガス(CO、CO2)、炭化水素ガス(例えばCH4など)、窒素ガス(N2)、酸化窒素ガス(N2O,NO2)などの反応性ガスから所望の構成元素に応じて選択して用い、反応性ガスと共に、必要に応じて、アルゴンガス(Ar)などの希ガスを併用して、スパッタリングガスをスパッタリング真空槽(スパッタリングチャンバ)に供給し、クロム含有膜を所定の傾斜組成又は均一組成となるように、ターゲットに印加する電力、及びスパッタリングガスの導入量を調整し、必要に応じて変更しながら成膜すればよい。
一方、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料又は遷移金属及びケイ素を含有する材料からなる位相シフト膜や遮光膜を成膜する場合や、ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜を成膜する場合は、例えば、ターゲットとして、ケイ素ターゲット、遷移金属ターゲット、遷移金属ケイ素ターゲットなどから所望の構成元素に応じて選択して用い、スパッタリングガスとして、酸素ガス(O2)、窒素ガス(N2)、酸化窒素ガス(N2O,NO2)、酸化炭素ガス(CO、CO2)、炭化水素ガス(例えばCH4など)などの反応性ガスから所望の構成元素に応じて選択して用い、反応性ガスと共に、必要に応じて、アルゴンガス(Ar)などの希ガスを併用し、スパッタリングガスをスパッタリング真空槽に供給し、所望の組成となるように、ターゲットに印加する電力、及びスパッタリングガスの導入量を調整し、必要に応じて変更しながら成膜すればよい。
本発明のフォトマスクブランクからは、常法に従ってフォトマスクを製造することができる。例えば、フォトマスクブランク上に、化学増幅型などのレジスト膜を形成し、これに電子線によりパターンを描画して、得られたレジスト膜のパターンを、最初のエッチングマスクとして、その下方のクロム含有膜、位相シフト膜、遮光膜などの光学膜、ハードマスク膜、エッチングストッパ膜などの加工補助膜や透明基板を、それらの材質に応じて、酸素を含む塩素系ドライエッチングやフッ素系ドライエッチングから選択して順次エッチングして、フォトマスクパターンを形成することにより、フォトマスクを得ることができる。従って、本発明のフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する際には、クロム含有膜を、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターンニングする工程が含まれる。なお、レジスト膜上には、有機導電性膜を設けてもよく、これにより電子線描画の際のチャージアップを更に抑制することができる。
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は5sccmとし、320秒後に15sccmとなるように、増加率を一定として流量を増加させて放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
クロム含有膜の膜厚は44nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=40:50:10(原子比)からCr:O:C=60:20:20(原子比)に連続的に変化する領域(C)が形成されていた。また、クロム含有膜の領域(C)より透明基板側の残りの範囲で、透明基板と離間する側から透明基板と接する界面に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)からCr:O:C=80:10:10(原子比)に連続的に変化する領域(A)が形成されていた。組成分析の結果を図4(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.43%(光学濃度ODは2.37)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.09である。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は約80°であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を図4(B)に示す。
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁が垂直に近く、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮することで、設計寸法からのずれが少なく、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクが得られることがわかった。
[実施例2]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は5sccmとし、174秒後に15sccmとなるように、増加率を一定として流量を増加させ、その後、二酸化炭素ガス流量を15sccmで一定として174秒後に放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
クロム含有膜の膜厚は45nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=40:50:10(原子比)からCr:O:C=60:20:20(原子比)に連続的に変化する領域(C)が形成されていた。また、クロム含有膜の領域(C)より透明基板側の範囲は、クロム含有膜の膜厚の透明基板から離間する側の約5/10までの範囲で、膜厚方向に、組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)で一定の領域(B)が形成され、領域(B)より透明基板側の残りの範囲で、透明基板と離間する側から透明基板と接する界面に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)からCr:O:C=80:10:10(原子比)に連続的に変化する領域(A)が形成されていた。組成分析の結果を図5(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.42%(光学濃度ODは2.38)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.10である。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は約82°であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を図5(B)に示す。
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁が垂直に近く、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮することで、設計寸法からのずれが少なく、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクが得られることがわかった。
[実施例3]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、窒素ガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、窒素ガス及び二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は、各々、2sccm及び5sccmとし、174秒後に、各々、0sccm及び15sccmとなるように、窒素ガスは減少率を一定として流量を減少させると同時に、二酸化炭素ガスは増加率を一定として流量を増加させ、その後、窒素ガス流量を0sccm、二酸化炭素ガス流量を15sccmで一定として174秒後に放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
クロム含有膜の膜厚は46nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C:N=40:50:10:0(原子比)からCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)に連続的に変化する領域(C)が形成されていた。また、クロム含有膜の領域(C)より透明基板側の範囲は、クロム含有膜の膜厚の透明基板から離間する側の約5/10までの範囲で、膜厚方向に、組成がCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)で一定の領域(B)が形成され、領域(B)より透明基板側の残りの範囲で、透明基板と離間する側から透明基板と接する界面に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)からCr:O:C:N=75:11:11:3(原子比)に連続的に変化する領域(A)が形成されていた。組成分析の結果を図6(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.42%(光学濃度ODは2.38)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.10である。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は約86°であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を図6(B)に示す。
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁が垂直に近く、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮することで、設計寸法からのずれが少なく、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクが得られることがわかった。
[実施例4]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、酸素ガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、酸素ガス及び二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は、各々、20sccm及び0sccmとし、142秒後に、各々、0sccm及び15sccmとなるように、酸素ガスは減少率を一定として流量を減少させると同時に、二酸化炭素ガスは増加率を一定として流量を増加させ、その後、酸素ガス流量を0sccm、二酸化炭素ガス流量を15sccmで一定として184秒後に放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
クロム含有膜の膜厚は48nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=40:50:10(原子比)からCr:O:C=60:20:20(原子比)に連続的に変化する領域(C)が形成されていた。また、クロム含有膜の領域(C)より透明基板側の範囲は、クロム含有膜の膜厚の透明基板から離間する側の約6/10までの範囲で、膜厚方向に組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)で一定の領域(B)が形成され、領域(B)より透明基板側の残りの範囲で、透明基板と離間する側から透明基板と接する界面に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)からCr:O:C=65:30:5(原子比)に連続的に変化する領域(A)が形成されていた。組成分析の結果を図7(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.49%(光学濃度ODは2.31)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.03である。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は約90°であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を図7(B)に示す。
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁が垂直に近く、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮することで、設計寸法からのずれが少なく、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクが得られることがわかった。
[比較例1]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、窒素ガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、窒素ガス及び二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は、各々、8sccm及び17sccmで一定とし、290秒後に、窒素ガス流量を0sccm、二酸化炭素ガス流量を15sccmで一定として184秒後に放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
クロム含有膜の膜厚は51nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C:N=40:50:10:0(原子比)からCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)に連続的に変化する領域が形成されていた。また、クロム含有膜の領域より透明基板側の範囲は、クロム含有膜の膜厚の透明基板から離間する側の約4/10までの範囲で、膜厚方向に組成がCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)で一定の領域が形成され、この領域より透明基板側の残りの範囲は、膜厚方向に組成がCr:O:C:N=42:29:15:14(原子比)で一定の領域が形成されており、領域間の組成変化は不連続となっていた。組成分析の結果を図8(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.45%(光学濃度ODは2.35であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.07である。
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は90°を超えており、クロム含有膜のパターンの断面形状が、膜厚方向の中央部付近で括れており、サイドエッチングが大きいアンダーカット形状であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を図8(B)に示す。
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁に括れが発生しており、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮しても、設計寸法からずれ易く、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクを得ることができないことがわかった。
以上、実施例により本発明について説明したが、上記実施例は、本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。この実施例を種々変形することは、本発明の範囲内にあり、更に、本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは、上記記載から自明である。